フォトニック結晶ファイバおよびフォトニック結晶ファイバを含む医療システム
通常、ある態様においては、本発明は、導波路軸に沿って延びるコア(210)を含むフォトニック結晶ファイバ(120)と、コアを囲む誘電体閉じ込め領域(220)とを含むシステムを特徴とする。誘電体閉じ込め領域(220)は、フォトニック結晶ファイバ(120)の入力端部から出力端部に導波路軸に沿って放射線を誘導するように構成されている。システムは、また、フォトニック結晶ファイバ(120)に取り付けられているハンドピース(680)を含む。この場合、ハンドピースにより、オペレータは、患者の標的部位に放射線を向けるために出力端部の向きを制御することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトニック結晶ファイバおよびフォトニック結晶ファイバを含む医療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願への相互参照)
米国特許法第119条第(e)項(1)により、本願は、2004年4月8日付けの「フォトニック結晶ファイバの用途」(PHOTONIC CRYSTAL FIBER APPLICATIONS)という名称の米国仮特許出願第60/560,458号;2004年4月9日付けの「フォトニック結晶ファイバの用途」(PHOTONIC CRYSTAL FIBER APPLICATIONS)という名称の米国仮特許出願第60/561,020号;2004年6月30日付けの「フォトニック結晶ファイバの用途」(PHOTONIC CRYSTAL FIBER APPLICATIONS)という名称の米国仮特許出願第60/584,098号;2004年11月16日付けの「フォトニック結晶ファイバの用途」(PHOTONIC CRYSTAL FIBER APPLICATIONS)という名称の米国仮特許出願第60/628,462号;2004年12月30日付けの「喉頭病学におけるCO2レーザを柔軟に供給するためのオムニガイド・フォトニック・バンドギャップ・ファイバ」(OMNIGUIDE PHOTONIC BANDGAP FIBERS FOR FLEXIBLE DELIVERY OF CO2 LASERS IN LARYNGOLOGY)という名称の米国仮特許出願第60/640,536号;および2005年3月4日付けの「フォトニック結晶ファイバ」(PHOTONIC CRYSTAL FIBERS)という名称の米国仮特許出願第60/658,531号の利益を主張する。上記すべての米国仮特許出願の内容は、参照により全体を本明細書に組み込むものとする。
【0003】
今日、レーザは多くの医療の分野で広く使用されている。例えば、レーザは、外科手術、獣医医学、歯科医学、眼科学および美容医療処置のような種々の医療分野で使用されている。
【0004】
これらの用途のうちの多くの用途においては、患者の標的領域にレーザからの放射線を供給するために光ファイバを使用している。従来の光ファイバは、電磁スペクトル(例えば、約2ミクロン以下の波長)の可視または近赤外線部分に波長を有する放射線に対する優れた導波路である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の光ファイバは、通常、比較的長い波長の高パワーのレーザ放射線を使用する用途には適していない。それ故、高パワー(例えば、約10ワット以上)、長い波長(例えば、約2ミクロンより長い)を供給する多くの医療レーザ・システムは、硬質の導管または自由空間を通して、レーザから標的までレーザ放射線を誘導する光学部品を含む関節付きのアームを使用してレーザを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
フォトニック結晶ファイバは、放射線源(例えば、レーザ)から患者の標的部位に放射線を誘導するために医療レーザ・システムで使用することができる。通常、フォトニック結晶ファイバは、コアにある放射線の波長を非常に効果的に封じ込めるコアを取り囲む領域を含む。これらのいわゆる閉じ込め領域は、無定型誘電体材料(例えば、ガラスおよび/またはポリマー)だけから形成することができ、比較的薄くても効果的な閉じ込めを行うことができる。それ故、フォトニック結晶ファイバは、非常に高パワーの放射線を導くことができる薄くて、可撓性ファイバを含むことができる。
【0007】
さらに、フォトニック結晶ファイバは、プリフォームから線引きすることができ、この線引き加工により、線引き加工を行わない他の導波路と比較すると、比較的安価に製造することができるファイバができる。また、ファイバ製造技術を使用すれば、かなり大量に製造することができ、例えば、1つのプリフォームから数千メートルのファイバを線引きすることができる。比較的短いプリフォームから非常に長いファイバへの線引き工程中の変換により、プリフォーム内に存在する所望の構造からすべての突起を効果的に除去することができ、損失が少なく、欠陥が少ないファイバができる。
【0008】
通常、第1の態様においては、本発明は、導波路軸に沿って延びるコア、およびコアを囲む誘電体閉じ込め領域を含むフォトニック結晶ファイバを含むシステムを特徴とする。誘電体閉じ込め領域は、フォトニック結晶ファイバの入力端部から出力端部に導波路軸に沿って放射線を誘導するように構成されている。システムは、また、フォトニック結晶ファイバに取り付けられているハンドピースを含む。この場合、ハンドピースによりオペレータは、患者の標的部位に放射線を向けるために出力端部の向きを制御することができる。
【0009】
システムの実施形態は、下記の機能および/または他の態様の機能のうちの1つまたは複数を含むことができる。
ハンドピースは内視鏡を含むことができる。内視鏡は可撓性導管を含むことができ、フォトニック結晶ファイバの一部は可撓性導管内のチャネルを通してねじ込まれる。内視鏡は、可撓性導管の一部を曲げるように構成されていて、それによりオペレータが出力端部の向きを変えることができる可撓性導管と機械的に結合しているアクチュエータを含むことができる。アクチュエータは、可撓性導管の曲がった部分の曲率半径が、約12センチメートル以下(例えば、約10センチメートル以下、約8センチメートル以下、約5センチメートル以下、約3センチメートル以下)になるように、可撓性導管の一部を曲げるように構成することができる。アクチュエータは、曲げ平面内で可撓性導管を曲げるように構成することができる。ハンドピースは、可撓性導管内でその導波路軸を中心にして、フォトニック結晶ファイバの向きを制御する目的で、誘電体閉じ込め領域の向きを維持するようにフォトニック結晶ファイバに取り付けることができる。ハンドピースとフォトニック結晶ファイバとの間のこの取り付けにより、動作ができる状態に維持しながらファイバが、約10度以上(例えば、約5度以上)捩れるのを防止することができる。内視鏡は、さらに、可撓性導管と結合している第1の部分を含む補助導管を含むことができる。この場合、フォトニック結晶ファイバは、補助導管内のチャネルを通して可撓性導管のチャネル内にねじ込まれる。補助導管は、さらに、第1の部分に対して移動することができる第2の部分を備える。この場合、フォトニック結晶ファイバは、第2の部分に取り付けられ、第2の部分を移動することにより、オペレータは可撓性導管の端部に対して出力端部を延ばしたり、縮めたりすることができる。第2の部分は、第1の部分に対して延ばしたり、縮めたりすることができる。補助導管は、硬質の導管であってもよい。
【0010】
ある実施形態の場合には、ハンドピースは、導管を含んでいて、フォトニック結晶ファイバの一部は導管を通してねじ込まれる。導管は曲がった部分を含むことができる。導管は変形可能な材料から形成することができる。ハンドピースは、さらに導管の一部を曲げるように構成されていて、それによりオペレータが出力端部の向きを変えることができる導管と機械的に結合しているアクチュエータを含むことができる。
【0011】
ハンドピースは、出力端部と標的部位との間に約1ミリメートル以上の最小の隔離距離を形成する出力端部を通して延びる先端部を含むことができる。
フォトニック結晶ファイバは、標的部位に放射線を誘導するために十分柔軟なものであってもよい。一方、フォトニック結晶ファイバの一部は、約90度以上の角度で曲がり、この部分の曲率半径は約12センチメートル以下である。放射線は、出力端部のところで約1ワット以上の平均パワーを有することができ、一方、フォトニック結晶ファイバの一部は、約90度以上の角度で曲がり、この部分の曲率半径は約12センチメートル以下である。放射線は、出力端部のところで約5ワット以上の平均パワーを有することができ、一方、フォトニック結晶ファイバの一部は、約90度以上の角度で曲がり、この部分の曲率半径は約12センチメートル以下である。フォトニック結晶ファイバは、標的部位に放射線を誘導するために十分柔軟なものであってもよい。一方、フォトニック結晶ファイバの一部は、約90度以上の角度で曲がり、この部分の曲率半径は約10センチメートル以下(例えば、約5センチメートル以下)である。
【0012】
誘電体閉じ込め領域は、導波路軸の周囲に螺旋状に巻かれた第1の誘電体材料の層を含むことができる。誘電体閉じ込め領域は、さらに、導波路軸の周囲に螺旋状に巻かれた第2の誘電体材料の層を含むことができ、第2の誘電体材料は、第1の誘電体材料とは異なる屈折率を有する。第1の誘電体材料は、ガラス(例えば、カルコゲニド・ガラス)であってもよい。第2の誘電体材料はポリマーであってもよい。誘電体閉じ込め領域は、カルコゲニド・ガラスの少なくとも1つの層を含むことができる。誘電体閉じ込め領域は、ポリマー材料の少なくとも1つの層を含むことができる。ある実施形態の場合には、誘電体閉じ込め領域は、導波路軸に沿って延びる第1の誘電体材料の少なくとも1つの層、および導波路軸に沿って延びる第2の誘電体材料の少なくとも1つの層を含む。この場合、第1および第2の誘電体材料は、第1の誘電体材料と一緒に線引きすることができる。
【0013】
コアは中空のコアであってもよい。システムは、さらに、入力端部または出力端部と結合している流体源を含むことができる。この場合、動作中、流体源は、コアを通して流体を供給する。流体はガスであってもよい。
【0014】
コアは、約1,000ミクロン以下(例えば、約500ミクロン以下)の直径を有することができる。フォトニック結晶ファイバは、出力端部に約2,000ミクロン以下の外径を有することができる。
【0015】
ある実施形態の場合には、システムは、さらに、光導波路および光導波路をフォトニック結晶ファイバに取り付けるコネクタを含む。光導波路は、第2のフォトニック結晶ファイバであってもよい。また、システムは、光導波路を囲む導管を含むことができる。導管は、光導波路より硬質のものであってもよい。システムは、導管と結合している流体源を含むことができる。この場合、動作中、流体源は導管に流体を供給する。
【0016】
システム、さらに、放射線を生成し、それをフォトニック結晶ファイバの入力端部の方向に向けるレーザを含むことができる。レーザはCO2レーザであってもよい。放射線は、約2ミクロン以上の波長を有することができる。ある実施形態の場合には、放射線は約10.6ミクロンの波長を有する。
【0017】
ある実施形態の場合には、システムは、さらに、補助放射線源およびフォトニック結晶ファイバと機械的に結合している少なくとも1つの追加のファイバを含む。追加の導波路は、補助放射線源から標的部位に補助放射線を供給するように構成されている。追加のファイバは、ハンドピースによりフォトニック結晶ファイバに機械的に結合することができる。補助放射線源は、放射線をフォトニック結晶ファイバの入力端部に向けるように位置するレーザとは異なる第2のレーザであってもよい。第2のレーザは、Nd:YAGレーザ、ダイオード・レーザまたはパルス・ダイ・レーザであってもよい。補助放射線は、電磁スペクトルの可視部分内の波長を有することができる。
【0018】
フォトニック結晶の少なくとも一部は殺菌することができる。
通常、他の態様においては、本発明は、導波路軸に沿って延びるコアを含む所定の長さのフォトニック結晶ファイバと、コアを囲む誘電体閉じ込め領域を含む物品を特徴とする。誘電体閉じ込め領域は、フォトニック結晶ファイバの入力端部から出力端部に導波路軸に沿って放射線を誘導するように構成されている。この場合、フォトニック結晶ファイバの全長は殺菌される。
【0019】
この物品は、さらに、フォトニック結晶ファイバの全長を含む密封パッケージを含むことができる。この物品の実施形態は、他の態様の機能のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0020】
通常、他の態様においては、本発明は、放射線をフォトニック結晶ファイバの入力端部に向けるステップと、フォトニック結晶ファイバの出力端部の向きを制御し、出力端部から放射された放射線を患者の標的部位に向けるために、フォトニック結晶ファイバに取り付けられているハンドピースを使用するステップとを含む方法を特徴とする。この方法の実施形態は、他の態様の1つまたは複数の機能を含むことができる。
【0021】
通常、他の態様においては、本発明は、フォトニック結晶ファイバを通して患者の標的部位に放射線を向けるステップを含む方法を特徴とする。フォトニック結晶ファイバは、中空のコアを有し、流体は中空のコアを通して患者の標的部位に流れる。
【0022】
この方法の実施形態は、下記の機能および/または他の態様の機能のうちの1つまたは複数を含むことができる。
放射線は、標的部位のところで組織を切開し、切除し、または切断するのに十分なパワーを有することができる。流体は、標的部位のところで血液を凝固するだけの十分な圧力および温度を有することができる。
【0023】
この方法は、放射線および流体を標的部位に向けながら、フォトニック結晶ファイバを曲げるステップを含むことができる。ファイバを曲げるステップは、曲率半径が約12センチメートル以下になるように、約45度以上にファイバの一部を曲げるステップを含むことができる。
【0024】
標的部位に放射線および流体を向けるステップは、フォトニック結晶ファイバに取り付けられているハンドピースの一部を保持するステップと、ハンドピースにより出力端部の向きを制御するステップとを含むことができる。
【0025】
流体は、ガス、液体または超流体であってもよい。流体がガスである実施形態の場合には、ガスは、出力端部のところで約3.5kPa(0.5PSI)以上(例えば、約6.9kPa(1PSI)以上)の圧力を有することができる。ガスは、標的部位のところで約50℃以上(例えば、約80℃以上)の温度を有することができる。ガスは空気であってもよい。ガスは、二酸化炭素、酸素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、またはキセノンを含むことができる。ガスは、実質的に純粋なガスであってもよい。例えば、ガスは、約98%以上の単一成分ガスを含むことができる。別の方法としては、ある実施形態の場合には、ガスはガスの混合物である。
【0026】
流体は、約1リットル/分以上(例えば、約2リットル/分以上、約5リットル/分以上、約8リットル/分以上)の速度で中空のコア内に流入することができる。
放射線は、約2ミクロン以上(例えば、約10.6ミクロン)の波長を有することができる。放射線は、標的部位のところで約1ワット以上の平均パワーを有することができる。
【0027】
通常、他の態様においては、本発明は、導波路軸に沿って延びるコアを含むフォトニック結晶ファイバ、およびコアを囲んでいて、放射線を導波路軸に沿ってフォトニック結晶ファイバの入力端部から出力端部へ導くように構成されている誘電体閉じ込め領域を、放射線がスリーブを通過して一次開口部を通ってスリーブから出ることができるようにフォトニック結晶ファイバの出力端部と結合していて、さらに、スリーブ内に流入したガスが二次開口部を通してスリーブから出るように位置する1つまたは複数の二次開口部を有するスリーブを含む装置を特徴とする。
【0028】
この装置の実施形態は、下記の機能および/または他の態様の機能のうちの1つまたは複数を含むことができる。
スリーブ内に流入したガスは、二次開口部のほかに一次開口部を通してスリーブから出ることができる。この装置は、さらに、スリーブを通過する際に放射線を実質的に放射する一次開口部および二次開口部との間に位置する透明な素子を含むことができる。透明な素子は、一次開口部を通してスリーブからガスが出るのを実質的に防止することができる。透明な素子はZnSeを含むことができる。
【0029】
この装置は、さらに、二次開口部を通してスリーブから出るガスが、導管の入力端部内に吸い込まれるように二次開口部に対して位置する導管を含むことができる。
二次開口部は、一次開口部の近くに設置することができる。一次開口部は、出力端部のところのフォトニック結晶ファイバの外径より小さい直径を有することができる。この装置は、さらに、スリーブを通過する放射線の焦点を結ぶためにスリーブに取り付けられている焦点素子を含むことができる。別の方法としては、または追加として、この装置は、スリーブを通過する放射線を反射するためにスリーブに取り付けられている反射素子を含むことができる。
【0030】
通常、他の態様においては、本発明は、放射線源からの放射線を受光するように構成されている放射線入力ポート、および放射線をフォトニック結晶ファイバと結合するように構成されている出力ポートを含むアセンブリを含む装置を特徴とする。このアセンブリは、さらに、フォトニック結晶ファイバと結合する前に、放射線源から受光した放射線の偏光状態を修正するために位置する位相差素子を含む。
【0031】
この装置の実施形態は、下記の機能および/または他の態様の機能のうちの1つまたは複数を含むことができる。
このアセンブリは、さらに、ガス源からガスを受け取るように構成されているガス入力ポートを含むことができる。フォトニック結晶ファイバは、中空のコアを有することができる。出力ポートは、さらに、ガス源から受け取ったガスをフォトニック結晶ファイバの中空のコアに結合するように構成することもできる。この装置はガス源を含むことができる。
【0032】
位相差素子は、反射型位相差素子であってもよい。この装置は、放射線源を含むことができる。この場合、放射線源からの放射線は、波長λの放射線を含む。反射型位相差素子は、ミラーおよびミラーの表面に配置された約λ以下の光学的厚さを有する位相差層を含むことができる。位相差層は、ミラーの表面への法線に対して約45度の方向に沿って約λ/4の光学的厚さを有することができる。λは約2ミクロン以上であってもよい。例えば、λは約10.6ミクロンであってもよい。
【0033】
放射線素子は、透過型位相差素子であってもよい。
位相差素子は、実質的に直線状の偏光状態から実質的に非直線状の偏光状態に放射線の偏光状態を修正することができる。実質的に非直線状の偏光状態は、実質的に円偏光状態であってもよい。
【0034】
アセンブリは、さらに、出力ポートの近くのウェストのところに、放射線入力ポートのところでアセンブリに入る放射線の焦点を結ぶように構成されている焦点素子を含むことができる。焦点素子は、約1,000ミクロン以下(例えば、約500ミクロン以下)のウェストの直径に放射線の焦点を結ぶことができる。焦点素子はレンズであってもよい。レンズはZnSeを含むことができる。
【0035】
この装置は、さらに、フォトニック結晶ファイバを含むことができる。
通常、他の態様においては、本発明は、レーザから放射した放射線の偏光状態を修正するステップと、修正した偏光状態を有する放射線を、中空のコアを有するフォトニック結晶ファイバの入力端部内に向けるステップと、ガス源からのガスを中空のコアの入力端部内に結合するステップとを含む方法を特徴とする。
【0036】
この方法の実施形態は、この機能または他の態様のうちの1つまたは複数を含むことができる。
通常、他の態様においては、本発明は、光導波路が中空のコアを有している場合に、患者の組織に光導波路を通して放射線を誘導するステップと、放射線を誘導しながら組織にガスを向けるステップとを含む方法を特徴とする。この場合、放射線およびガスは、組織を切り取る(例えば、切除するまたは切断する)のに十分なものであり、流れた血液を実質的に凝固するのに十分なものである。
【0037】
通常、さらに他の態様においては、本発明は、レーザ、中空のコアを有する光導波路、送出装置、組織にガスを供給するように構成されているガス源(例えば、ガスのシリンダ、コンプレッサ、ブロワ)を含む医療レーザ・システムを特徴とする。この場合、動作中、レーザからの放射線およびガス源からのガスは患者の組織に供給され、放射線およびガスは組織を切開し、流れた血液を実質的に凝固するのに十分なものである。
【0038】
通常、他の態様においては、本発明は、出力端子を有するレーザ、出力端子が放射した放射線を受け入れるように構成されている入力端部および出力端部を有するフォトニック結晶ファイバ、およびオペレータが出力端部から放射した放射線を標的組織に向けることができるようにする送出装置を含むシステムを特徴とする。
【0039】
通常、他の態様においては、本発明は、CO2レーザ、内視鏡、およびフォトニック結晶ファイバを含むシステムを特徴とする。この場合、動作中、フォトニック結晶ファイバは、CO2レーザからの放射線を内視鏡を通して標的組織に誘導する。
【0040】
通常、他の態様においては、本発明は、ガスおよび放射線をファイバの中空のコアの一方の端部に結合するカプラを特徴とする。
本発明の実施形態は、下記の機能のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0041】
ガスは光導波路の中空のコアを通して供給することもできるし、またはガスは中空のコアから独立しているチューブを通して組織に供給することもできる。放射線は、レーザ(例えば、CO2レーザ)から供給することができる。レーザは、約5ワット以上(例えば、約10ワット以上、約15ワット以上、約20ワット以上、約50ワット以上、約100ワット以上)の出力パワーを有することができる。組織に供給された放射線は、光導波路の先端部で測定した場合、約1ワット以上(例えば、約2ワット以上、5ワット以上、8ワット以上、10ワット以上、約20ワット以上、約50ワット以上)のパワーを有することができる。放射線は、約10.6ミクロンの波長を有することができる。ガスは、約1リットル/分以上(例えば、約2リットル/分以上、約5リットル/分以上、約8リットル/分以上、約10リットル/分以上、約12リットル/分以上、約15リットル/分以上、約20リットル/分以上)の流速を有することができる。
【0042】
中空のコアから出るガスの圧力は、比較的高くてもよい。例えば、ファイバから出るガス圧は、約500μmのコア直径を有する1メートルの長さのファイバを通して、約1リットル/分以上(例えば、約2リットル/分以上、約5リットル/分以上、約8リットル/分以上、約10リットル/分以上、約12リットル/分以上、約15リットル/分以上、約20リットル/分以上)の流速に対応することができる。
【0043】
ガスは、空気、窒素、酸素、二酸化炭素または希ガス(例えば、He、Ne、Ar、Krおよび/またはXe)を含むことができる。ガスは、実質的に1つだけの化合物(例えば、約98%以上、約99%以上、約99.5%以上、約99.8%以上、約99.9%以上の1つの化合物)を含むことができる。別の方法としては、ある実施形態の場合には、ガスは、異なる化合物(例えば、空気)の混合物を含むことができる。
【0044】
この方法は、さらに、放射線により組織を切除するステップを含むことができる。光導波路は、フォトニック結晶ファイバ(例えば、ブラッグ・ファイバ)であってもよい。ガスは、組織のところで約50℃以上(例えば、約60℃以上、約70℃以上、約80℃以上、約90℃以上、約100℃以上)の温度を有することができる。この方法は、さらに、組織に放射線を供給しながら、ファイバを曲げるステップを含むことができる。ファイバの曲がりは、約12cm以下(例えば、約10cm以下、約8cm以下、約7cm以下、約6cm以下、約5cm以下、約4cm以下、約3cm以下、約2cm以下)の曲率半径を有することができる。
【0045】
いくつかの参照文献は、参照により本明細書に組み込むものとする。競合した場合、本出願が優先する。
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細を添付の図に示し以下に説明する。説明を読み、図面を見、特許請求の範囲を読めば、本発明の他の特徴および利点を理解することができるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
いくつかの図面内の類似の参照番号は類似の要素を示す。
図1を参照すると、医療レーザ・システム100は、CO2レーザ110、およびレーザからの放射線112を患者の標的部位99に誘導するための中空のコアを有するフォトニック結晶ファイバ120を含む。放射線112は、10.6ミクロンの波長を有する。レーザ放射線112は、結合アセンブリ130によりフォトニック結晶ファイバ120の中空のコア内に結合され、フォトニック結晶ファイバは、放射線をハンドピース140を通して標的部位99に供給する。使用中、オペレータ(例えば、外科医、歯科医、眼科医または獣医のような医療実務者)は、ハンドピース140の一部142を握り、標的部位に治療行為を行うために、フォトニック結晶ファイバ120の出力端部から放射されたレーザ放射線113を標的部位99に向けるためのハンドピースを操作する。例えば、放射線は、標的部位のところの組織を切除し、切開し、切断しまたは蒸発させるために使用することができる。
【0047】
CO2レーザ110は、システムの動作パラメータを設定し、表示するために電子コントローラ150により制御される。オペレータは、フットペダルのような遠隔制御装置152によりレーザ放射線の供給を制御する。ある実施形態の場合には、遠隔制御装置は、ハンドピース140の構成要素であり、オペレータは、片方の手または両方の手で、放射されたレーザ放射線の向き、レーザ放射線の供給を制御することができる。
【0048】
グリップ部分142の他に、ハンドピース140は、ファイバ120の出力端部および標的組織99の間に所望の間隔(例えば、約0.1ミリメートル〜約30ミリメートル)を維持する独立している先端部144を含む。独立している先端部により、オペレータは、標的部位99からのフォトニック結晶ファイバ120の出力端部を容易に位置決めすることができ、標的部位のところのゴミによる出力端部の詰まりを軽減することもできる。ある実施形態の場合には、ハンドピース140は、ファイバから放射されたビームを所望のスポットサイズになるように焦点を合わせる、光学部品(例えば、1つまたは複数のレンズ)を含む。焦点を合わせたビームのウェスト部分を、独立している先端の遠位端にまたはその近くに位置させることができる。
【0049】
ある実施形態の場合には、ファイバ120は、(例えば、従来の光ファイバ・コネクタにより)結合アセンブリ130およびハンドピース140に容易に取り付けたり、取り外したりすることができる。これにより、各処置の後でファイバを交換する使い捨て用途の場合にシステムを容易に使用することができる。
【0050】
通常、CO2レーザ110は、10.6ミクロンで、約5ワット〜約80ワット(例えば、約10ワット以上、約20ワット以上)の平均出力パワーを有する。多くの用途の場合、システムが意図する機能を行うには約5ワット〜約30ワットのレーザパワーで十分である。例えば、システム100を組織を切除または切開するために使用する場合には、放射線は小さなスポット・サイズに閉じこめられ、この範囲内の平均出力パワーを有するレーザで十分である。
【0051】
しかし、ある実施形態の場合には、レーザ110は、約100ワット以上(例えば、最高約500ワット)の出力パワーを有することができる。例えば、比較的広い領域(例えば、数平方ミリメートルまたは数平方センチメートル)上の組織を気化するためにシステム100を使用する場合には、非常に高いパワーのレーザが望ましい場合がある。
【0052】
フォトニック結晶ファイバは、比較的高い効率でレーザ110から標的部位に放射線を供給することができる。例えば、ファイバの平均出力パワーは、ファイバ入力エネルギーの約50%以上(例えば、約60%以上、約70%以上、約80%以上)であってもよい。それ故、ファイバの出力パワーは、約3ワット以上(例えば、約8ワット以上、約10ワット以上、約15ワット以上)であってもよい。しかし、ある実施形態の場合には、ファイバからの平均出力パワーは、レーザパワーの50%未満であってもよく、それでも目的とする処置を行うのには十分高い。例えば、ある実施形態の場合には、ファイバ平均出力パワーは、レーザ平均出力パワーの約20%〜約50%であってもよい。
【0053】
フォトニック結晶ファイバ120の長さは、必要に応じて変えることができる。ある実施形態の場合には、ファイバの長さは、約1.2メートル以上(例えば、約1.5メートル以上、約2メートル以上、約3メートル以上、約5メートル以上)である。この長さは、通常、レーザ・システムが使用される特定の用途により異なる。レーザ110を患者の近くに設置することができる用途の場合には、および/またはその用途のために所望するハンドピースの運動範囲が比較的狭い場合には、ファイバの長さは、比較的短くすることができる(例えば、約1.5メートル以下、約1.2メートル以下、約1メートル以下)。ある用途の場合には、ファイバ120の長さは、非常に短くすることができる(例えば、約50センチメートル以下、約20センチメートル以下、約10センチメートル以下)。例えば、システムが、ある他の手段(例えば、異なる導波路または関節付きアーム)によりレーザからファイバに放射線を供給することができる処理の場合には、非常に短いフォトニック結晶ファイバが役に立つ場合もある。例えば、鼻および耳の処置の場合には、非常に短いファイバが役に立つ場合がある。
【0054】
しかし、患者の近傍にレーザを設置するのが難しい場合および/またはハンドピースを広い範囲内で移動しなければならない場合、ファイバの長さは、もっと長くなる(例えば、約2メートル以上、約5メートル以上、約8メートル以上)。例えば、多数の医療実務者が患者の近傍にいる必要がある外科手術の場合には、(例えば、手術室または全く異なる室内のコーナーの)手術台から離れた場所にレーザを設置するのが望ましい場合がある。このような場合には、もっと長いファイバが望ましい場合がある。
【0055】
通常、フォトニック結晶ファイバ120は柔軟なものであり、その性能に有意な影響を与えないで(例えば、ファイバに故障を起こさないで、またはファイバが曲がっている場合、その目的とする使用のためにシステムを使用することができないレベルへのファイバの透過性を低減しないで)比較的広い角度範囲内で比較的小さな曲率半径で曲げることができる。ある実施形態の場合には、オペレータは、依然としてシステムがその機能を行う標的部位に十分なパワーを供給しながら、約15cm以下(例えば、約10cm以下、約8cm以下、約5cm以下、約3cm以下)のような比較的小さな曲率半径になるようにフォトニック結晶ファイバ120を曲げることができる。
【0056】
通常、ファイバが曲がる角度は変えることができ、通常、行う処置により異なる。例えば、ある実施形態の場合には、約90度以上(例えば、約120度以上、約150度以上)の角度範囲でファイバを曲げることができる。
【0057】
オペレータがフォトニック結晶ファイバ120を曲げたことによる送信パワーの損失は比較的小さい。通常、曲げによる損失は、例えば、故障を起こすようなファイバに有意な損傷を与えるものであってはならないし、またはファイバの出力パワーを、システムがもはやそれを設計した機能を行うことができないようなレベルに低減するものであってはならない。フォトニック結晶ファイバ120(例えば、長さ約1メートル以上)は、約5センチメートル以下の曲げ半径で90度の角度範囲で曲げることができ、誘導された波長でファイバに結合された放射線の約30%以上(例えば、約50%以上、約70%以上)を依然として伝送することができる。これらのファイバは、このような伝送特性を提供することができ、約3ワット以上(例えば、約5ワット以上、約8ワット以上、約10ワット以上)の平均出力パワーを供給することができる。
【0058】
ファイバ120の出力端部から放射したレーザ放射線のビームの品質は、比較的優れている。例えば、ビームは、約4以下(例えば、約3以下、約2.5以下、約2以下)のような低いM2値を有することができる。M2は、レーザ・ビームの品質を記述する際に通常使用されるパラメータである。この場合、約1のM2値は、完全なガウス・プロファイルを有するレーザから放射されたTEM00ビームに対応する。M2値は、下式によるビームから形成することができる最小スポット・サイズに関連する。
【0059】
【数1】
ここで、dsは最小スポット直径であり、dbは焦点距離がfであるレンズによりスポットに焦点を結ぶ前のビーム直径である。それ故、ビームが焦点を結ぶことができる可能な最小スポット・サイズは、ビームのM2値に比例する。実際には、もっと小さなM2値を有するビームは、スポット・サイズが小さくなったために組織の周囲への損傷を少なくして、標的領域にもっと高い放射線パワー密度を供給することができる。
【0060】
標的組織にフォトニック結晶ファイバ120が供給する放射線のスポット・サイズは、比較的小さい。例えば、ある実施形態の場合には、スポットは、ファイバの出力端部(例えば、約0.1mm〜約3mm)から所望の使用距離のところで、約500ミクロン以下(例えば、約300ミクロン以下、約200ミクロン以下、約100ミクロン以下)の直径を有することができる。すでに説明したように、組織を切除または切開するためにシステム100を使用する場合、または放射線を供給する際にかなりの精度が所望される他の用途に使用する場合、小さいスポット・サイズが望ましい。別の方法としては、組織を除去または吸引する場合および/またはもっと低い精度レベルで十分な場合には、スポット・サイズを、比較的大きなスポット・サイズ(例えば、約2ミリメートル以上、約3ミリメートル以上、約4ミリメートル以上の直径を有する)とすることができる。
【0061】
レーザ110がCO2レーザである場合には、10.6ミクロン以外の波長で動作する他のタイプのレーザを使用する医療レーザ・システムでフォトニック結晶ファイバを使用することができる。通常、医療レーザ・システムは、紫外線(UV)、可視または赤外線(IR)波長で放射線を供給することができる。例えば、IR放射線を供給するレーザは、約0.7ミクロン〜約20ミクロン(例えば、約2〜約5ミクロン、または約8〜約12ミクロン)の波長を有する放射線を放射する。フォトニック結晶ファイバ120のような中空のコアを有する導波路は、約2ミクロン以上の波長を有するレーザ・システムと一緒に使用するのに適している。何故なら、コアを満たすガスは、多くの誘電体材料(例えば、シリカをベースとするガラス、および種々のポリマー)と比較すると、これらの波長のところの吸収が比較的低いからである。CO2レーザの他に、IR放射線を放射することができるレーザの他の例としては、Nd:YAGレーザ(例えば、1.064ミクロンの)、Er:YAGレーザ(例えば、2.94ミクロンの)、Er,Cr:YSGG(イットリウム・スカンジウム・ガリウム・ガーネットでドーピングしたエルビウム、クロム)レーザ(例えば、2.796ミクロンの)、Ho:YAGレーザ(例えば、2.1ミクロンの)、自由電子レーザ(例えば、6〜7ミクロンの範囲内の)、および量子カスケード・レーザ(例えば、3〜5ミクロンの範囲内の)等がある。
【0062】
通常、医療レーザ・システムで使用するレーザのタイプは、システムが設計された目的により異なる。レーザのタイプは、システムが、外科手術処置に使用されるのか、診断に使用されるのか、または生理学的研究に使用されるのかにより選択することができる。例えば、488nmおよび514nmのところに2つのエネルギー・ピークを有する可視光線スペクトルの青および緑の領域内で供給するアルゴン・レーザは、光凝固用に使用することができる。そのビームが可視光線スペクトル内に位置する活性媒体としての溶媒内に溶けている有機ダイを含むダイ・レーザは、光線力学的治療の際に使用することができる。エキシマ・レーザは、紫外線スペクトルで放射線を供給し、短い距離だけ組織を貫通し、組織を破壊するために熱を発生する代わりに、組織の分子の化学結合を破壊するために使用することができる。このようなレーザは、眼科処置およびレーザ血管形成の際に使用することができる。Ho:YAGレーザは、近赤外線スペクトルで放射線を供給することができ、光凝固および光除去用に使用することができる。クリプトン・レーザは、黄−赤可視光線スペクトル内で放射線を供給することができ、光凝固の際に使用することができる。KTPレーザからの放射線は、緑の可視光線スペクトル内で放射線を供給するために周波数を倍増することができ、光除去および光凝固用に使用することができる。Nd:YAGレーザは、光凝固および光除去用に使用することができる。パルス・ダイ・レーザは、それぞれ数マイクロ秒のオンおよびオフ段階で交互に動作する黄色の可視光線スペクトル(例えば、577nmまたは585nmの波長を含む)で供給するために使用することができ、色素で着色した損傷を脱色するために使用することができる。
【0063】
通常、レーザ・システムは、連続発振レーザまたはパルス・レーザを使用することができる。さらに、CO2レーザは、通常、約5ワット〜約100ワットの平均出力パワーで使用されるが、フォトニック結晶ファイバは、通常、種々のレーザ出力で使用することができる。例えば、あるシステムにおいては、平均レーザパワーをミリワットの範囲にすることができ、非常に高パワーのシステムの場合には、最大数百ワット(例えば、約200ワット以上)にすることができる。
【0064】
通常、高パワーシステムの場合には、ファイバ120により誘導される平均パワー密度は、非常に高い場合がある。例えば、ファイバ内またはファイバのコアから出るパワー密度は、約103W/cm2以上(例えば、約104W/cm2以上、約105W/cm2以上、約106W/cm2以上)である場合もある。
【0065】
図2Aを参照すると、通常、フォトニック結晶ファイバ120は、(図2Aの面に垂直な)導波路軸299に沿って延びる閉じ込め領域220により囲まれているコア210を含む。閉じ込め領域220は、機械的に支持し、コアおよび閉じ込め領域を環境災害から保護する、クラッディング230(例えば、ポリマー・クラッディング)により囲まれている。閉じ込め領域220は、コア210に波長λの放射線を実質的に閉じ込めるフォトニック結晶構造を含む。このような構造の例については、図2B〜図2Dを参照しながら以下に説明する。本明細書で使用する場合、フォトニック結晶は、フォトニック結晶でフォトニック・バンドギャップの幅を形成する屈折率変調(例えば、周期的屈折率変調)を含む構造(例えば、誘電体構造)を意味する。一次元屈折率変調を行うこのような構造の一例としては、高および低屈折率の誘電体層のスタックがある。この場合、この層は実質的に同じ光学的厚さを有する。本明細書で使用する場合、フォトニック・バンドギャップの幅は、誘電体構造でアクセスすることができる延長した状態が存在しない(すなわち、伝搬性で局所化されない)周波数の範囲を意味する。通常、構造は、周期的誘電体構造であるが、構造は、例えば、もっと複雑な「準結晶」を含むこともできる。バンドギャップの幅は、フォトニック結晶をバンドギャップの幅構造による「欠陥」領域と結合することにより、光を閉じ込め、誘導しおよび/または局所化するために使用することができる。さらに、バンドギャップの幅の上下の周波数に対してアクセスすることができる延長状態が存在し、光を(屈折率導波TIR構造とは対照的な)低屈折率領域にさえ閉じ込めることができる。「アクセスすることができる」状態という用語は、システムのある対象または保存の法則により結合がまだ禁止されていないこれらの状態を意味する。例えば、二次元システムの場合には偏光は保存されるので、類似の偏光状態だけをバンドギャップの幅から除外する必要がある。均一な断面(典型的なファイバなど)を有する導波路の場合には、波動ベクトルβが保存されるので、フォトニック結晶導波モードをサポートするには、所与のβの状態だけをバンドギャップの幅から除外する必要がある。さらに、円筒対称の導波路の場合には、「角運動量」指数mが保存されるので、同じmを含むモードだけをバンドギャップの幅から除外しさえすればよい。要するに、対称性の高いシステムの場合には、フォトニック・バンドギャップの幅に対する要件は、対称であってもすべての状態が除外される「完全な」バンドギャップの幅と比較するとかなり緩やかになる。
【0066】
理論的には、フォトニック結晶は、フォトニック結晶内の屈折率変調が無限の長さを有する場合だけ、バンドギャップの幅内の反射が完全に行われる。そうでない場合、入射放射線は、フォトニック結晶のどちらかの側面上で伝搬モードを結合する束の間のモードを介してフォトニック結晶を通して「トンネル」することができる。しかし、実際には、このようなトンネリングの速度は、フォトニック結晶の厚さ(例えば、交互層の数)が増大するにつれて指数的に低減する。また、上記トンネリングの速度は、閉じ込め領域内の屈折率コントラストの大きさが増大すると低減する。
【0067】
さらに、フォトニック・バンドギャップの幅は、伝搬ベクトルの比較的小さな領域だけを延びることができる。例えば、誘電体のスタックは、垂直に入射する光線に対しては高い反射性を有するが、斜めの入射光線の場合にはその一部しか反射しない。「完全なフォトニック・バンドギャップの幅」とは、すべての可能な波動ベクトルおよびすべての偏光上を延びるバンドギャップの幅である。通常、完全なフォトニック・バンドギャップの幅は、三次元に沿って屈折率変調を有するフォトニック結晶とだけ関連する。しかし、隣接する誘電体材料からフォトニック結晶上に入射するEM放射線の場合には、隣接する誘電体材料が伝搬EMモードをサポートするすべての可能な波動ベクトルおよび偏光に対するフォトニック・バンドギャップの幅である、「全方向フォトニック・バンドギャップの幅」も定義することができる。同様に、全方向フォトニック・バンドギャップの幅は、光のラインより上のすべてのEMモードに対するフォトニック・バンドギャップの幅として定義することもできる。この場合、光のラインは、フォトニック結晶に隣接する材料によりサポートされている最低周波数伝搬モードを定義する。例えば、空気中においては、光のラインはほぼω=cβで表すことができる。この場合、ωは放射線の角度周波数であり、βは波動ベクトルであり、cは光の速度である。米国特許第6,130,780号に全方向平面反射器が開示されている。この米国特許の全文は参照により本明細書に組み込むものとする。さらに、PCT出願WO 00/22466号公報に円筒状導波路の幾何学形状に(平面制限内で)全方向反射を行うための交互誘電体層の使用が開示されている。その全文は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0068】
閉じ込め領域220が、コア210に対して全方向バンドギャップの幅を形成すると、導波モードが強力に閉じ込められる。何故なら、原則的に、コアから閉じ込め領域上に入射するすべてのEM放射線を完全に反射するからである。しかし、すでに説明したように、このような完全な反射は、層の数が無限である場合にしか起こらない。層の数が有限(例えば、層の数が約20)である場合には、全方向フォトニック・バンドギャップの幅は、0度〜80度の範囲内のすべての入射角度および全方向バンドギャップの幅内の周波数を有するEM放射線のすべての偏光に対する少なくとも95%の平面配位の反射率に対応することができる。さらに、ファイバ120が全方向でないバンドギャップの幅を有する閉じ込め領域を有している場合でも、ファイバは、例えば、バンドギャップの幅内の周波数のある範囲に対して0.1dB/kmより小さい放射線損失を含むモードのような強力に誘導されたモードを依然としてサポートすることができる。通常、バンドギャップの幅が全方向であるかどうかは、(一般的に、2つの層の屈折率コントラストでスケーリングされる)交互層が形成するバンドギャップの幅の広さ、およびフォトニック結晶の最低の屈折率成分により決まる。
【0069】
フォトニック結晶ファイバ120の構造の場合には、通常、(図2Aに参照番号211で示す)コア210の直径は、システム100の最終使用用途により異なる。例えば、大きなスポット・サイズが所望される場合には、コアを比較的大きくすることができる(例えば、約1mm以上、約2mm以上)。別の方法としては、小さなスポット・サイズが所望される場合には、コアの直径211を遥かに小さくすることができる(例えば、約500ミクロン以下、約300ミクロン以下、約200ミクロン以下、約100ミクロン以下)。
【0070】
より一般的に言うと、ファイバ120を他のタイプのレーザを含むシステムで使用する場合には、および/または10.6ミクロン以外の波長を誘導するために使用する場合には、コアの直径は、ファイバにより誘導されるエネルギーの波長または波長範囲、およびファイバが単一モード・ファイバなのかまたは多モード・ファイバなのかにより異なる。例えば、ファイバが、可視波長(例えば、約400nm〜約800nmの範囲)を誘導するための単一モード・ファイバである場合には、コアの半径を、サブミクロンから数ミクロンの範囲(例えば、約0.5ミクロン〜約5ミクロン)にすることができる。しかし、例えば、ファイバがIR波長を誘導するための多モード・ファイバである場合には、コアの半径を、数十から数千ミクロンの範囲(例えば、約500ミクロン〜約1,000ミクロンのような約10ミクロン〜約2,000ミクロン)にすることができる。コアの半径を、約5λ以上(例えば、約10λ以上、約20λ以上、約50λ以上、約100λ以上)にすることができる。この場合、λは誘導したエネルギーの波長である。
【0071】
フォトニック結晶ファイバの利点は、小さなコア直径を有するファイバを容易に製造することができることである。何故なら、その構造の寸法を制御された方法で小さなサイズに低減しながら、ファイバの断面構造の相対的な割合を維持しながら、ファイバをプリフォームから線引きすることができることである。
【0072】
フォトニック結晶ファイバ120、コア220は中空である。別の方法としては、コアを通して流体を供給しない実施形態の場合には、コア220は、閉じ込め領域220を形成している材料と流動学的に相容性を有し、また誘導波長において十分高い透過特性を有する任意の材料または材料の組み合わせを含むことができる。ある実施形態の場合には、コア220は、無機ガラスまたはポリマーのような誘電体材料(例えば、無定型誘電体材料)を含む。ある実施形態の場合には、コア220は、2002年4月12日付けの「高屈折率コントラスト・ファイバ導波路および用途」(HIGH INDEX−CONTRAST FIBER WAVEGUIDES AND APPLICATIONS)という名称の米国特許出願第10/121,452号であり、現在のUS−2003−0044158−A1号公報に開示されているような1つまたは複数のドーパント材料を含むことができる。その全文は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0073】
クラッディング230は、ポリマー(例えば、アクリル酸塩またはシリコーン・ポリマー)または他の材料から形成することができる。クラッディング230は、以下に説明する閉じ込め領域220の一部としても使用される材料から形成することができる。クラッディングが患者と接触する用途の場合には、クラッディングを医療デバイスのためのFDA規格に適合する材料から形成することができる。これらの場合、例えば、シリコーン・ポリマーは、クラッディング材料として使用するのに特に適している。通常、クラッディング230は、ファイバを外部損傷から保護する。適当な厚さ、組成および/または構造を選択することにより、クラッディング230は、また、例えば、小さな曲率半径の曲げによる損傷を防止する目的で、ファイバの柔軟性を制限するように設計することもできる。
【0074】
通常、ファイバ120の厚さを変えることができる。厚さは、図2Aの外径(OD)231により表される。外径231は、ファイバ120が装置の他の部材と互換性を有するように選択することができる。例えば、ファイバが、内視鏡または他のツール内のチャネルを通り抜けることができるようにするために、外径231が十分小さくなるようにファイバ120を作ることができる(例えば、外径231は約2,000ミクロン以下であってもよい)。ある実施形態の場合には、ファイバ120は、比較的小さな外径(例えば、約1,000ミクロン以下)を有する。細いファイバは、患者の尿道を通す場合のような狭い空間内に挿入する場合に役に立つ場合がある。別の方法としては、ある実施形態の場合には、直径231は、比較的太くてもよい(例えば、約3,000ミクロン以上)。外径が大きいと、ファイバの機械的柔軟性が低減する恐れがあり、ファイバを損傷するか、その透過をシステムがもはやその意図する機能を行うことができないレベルまで低減するような小さな曲率半径にファイバが曲がるのを防止することができる。
【0075】
クラッディング230の他に、ファイバ200は、曲げ半径を制限するために追加の構成要素を含むことができる。例えば、ファイバは、その外径の周囲に螺旋状に巻かれている材料(例えば、螺旋状に巻いたワイヤ)を含むことができる。別の方法としては、または追加として、ファイバは追加の機械的支持を行うために追加のクラッディングを含むことができる。
【0076】
(すでに説明したように)ファイバは曲げることができるが、ある実施形態の場合には、それように設計された用途での通常の使用中、約20cm以下(例えば、約10cm以下、8cm以下、5cm以下)の曲率半径に曲がることができない。
【0077】
クラッディング材料は、ファイバが殺菌されるように選択することができる。例えば、クラッディング材料を、ファイバが高温(例えば、オートクレーブ内で受ける温度)に耐えることができるように選択することができる。
【0078】
ここで閉じ込め領域220の構造および組成について説明すると、ある実施形態の場合には、フォトニック結晶ファイバ120はブラッグ・ファイバであり、閉じ込め領域220は、高および低屈折率を有する複数の交互層を含む。この場合、高屈折率層および低屈折率層は類似の光学的厚さを有する。例えば、図2Bを参照すると、ある実施形態の場合には、閉じ込め領域220Aは、層212、213、214、215、216、217、218、219、222および223で示す、異なる屈折率を有する複数の環状誘電体層(すなわち、屈折率nHを有する高屈折率材料からなる層、および屈折率nLを有する低屈折率層からなる層)を含む。この場合、nH>nLであり、nH−nLは、例えば、約0.01以上、約0.05以上、約0.1以上、約0.2以上、約0.5以上であってもよい。便宜上、図2Bには、数個の誘電体閉じ込め層だけを示す。実際には、閉じ込め領域220Aは、多くの層(例えば、約15層以上、約20層以上、約30層以上、約40層以上、約50層以上、約80層以上)を含むことができる。
【0079】
ある実施形態の場合には、閉じ込め領域220は、コア210に対して全方向バンドギャップの幅を形成することができる。この場合、導波モードは強力に閉じ込められる。何故なら、原則的に、コアから閉じ込め領域に入射する任意のEM放射線は、完全に反射されるからである。しかし、このような完全な反射は、層の数が無限である場合に限って起こる。層の数が有限(例えば、約20層)である場合には、全方向フォトニック・バンドギャップの幅は、0度〜80度の範囲内のすべての入射角度および全方向バンドギャップの幅内の周波数を有するEM放射線のすべての偏光に対する少なくとも95%の平面配位の反射率に対応することができる。さらに、ファイバ120が全方向でないバンドギャップの幅を有する閉じ込め領域を有している場合でも、ファイバは、例えば、バンドギャップの幅内の周波数のある範囲に対して0.1dB/kmより小さい放射線損失を含むモードのような強力に誘導されたモードを依然としてサポートする。通常、バンドギャップの幅が全方向であるかどうかは、(通常、2つの層の屈折率コントラストでスケーリングされる)交互層が形成するバンドギャップの幅の広さおよびフォトニック結晶の最低の屈折率成分により決まる。
【0080】
しかし、全方向バンドギャップの幅の存在は、ファイバ120の役に立つ用途に対して必要ない場合がある。例えば、ある実施形態の場合には、ファイバ内に伝搬フィールドを確立するために使用するレーザ・ビームは、TEM00モードである。このモードは、高い効率で適当に設計されたファイバのHE11モードと結合することができる。それ故、レーザ・エネルギーの伝達のためにファイバをうまく使用するには、この1つのモードの損失を十分低くするだけでよい。より一般的に説明すると、ファイバは、多数の低損失モード(例えば、HE11モードおよびファイバの曲げのような単純な摂動からそれと結合するモード)だけをサポートすれば十分である場合がある。すなわち、フォトニック・バンドギャップの幅ファイバは、必ずしも全方向フォトニック・バンドギャップの幅を持たなくても、ファイバのモードのうちの1つまたはグループの損失を最小限度にするように設計することができる。
【0081】
平面誘電体リフレクタの場合には、垂直入射の場合、各層が等しい光学的厚さλ/4、または等価的にnhidhi=nlodlo=λ/4を有する「1/4波長」のスタックのための最大のバンドギャップの幅が入手されることは周知である。この場合、dhi/loおよびnhi/loは、それぞれ、スタック内の高屈折率層および低屈折率層の厚さおよび屈折率を示す。しかし、垂直入射は、β=0に対応する。一方、円筒状導波路の場合には、所望のモードは、通常、光のラインω=cβの付近に位置する(大きなRの制限内においては、最低次モードは、本質的には、z軸、すなわち導波路軸に沿って伝搬する平面波である)。この場合、1/4波長条件は下式のようになる。
【0082】
【数2】
この式は正確に最適なものではない。何故なら、1/4波長条件が、その半径座標に沿って滑らかに変化するように、各層の光学的厚さを必要とする円筒配位により修正されるからである。さらに、高屈折率材料および低屈折率材料の吸収が違うので、その1/4波長の値からの最適な層の厚さが変化する恐れがある。
【0083】
ある実施形態の場合には、閉じ込め領域220は、式2の1/4波長条件を満たさない層を含む。すなわち、図2Bの例の場合には、層212、213、214、215、216、217、218、219、222および223のうちの1つまたは複数は、dλ/4よりも厚かったり、薄かったりする。この場合、
【0084】
【数3】
であり、nは層の屈折率である(すなわち、dλ/4は1/4波長の厚さに等しい光学的厚さに対応する)。例えば、閉じ込め領域内の1つまたは複数の層は、約0.9dλ/4以下(例えば、約0.8dλ/4以下、約0.7dλ/4以下、約0.6dλ/4以下、約0.5dλ/4以下、約0.4dλ/4以下、約0.3dλ/4以下)の厚さを有することができ、または約1.1dλ/4以上(例えば、約1.2dλ/4以上、約1.3dλ/4以上、約1.4dλ/4以上、約1.5dλ/4以上、約1.8dλ/4以上、約2.0dλ/4以上)の厚さを有することができる。ある実施形態の場合には、閉じ込め領域内のすべての層は、1/4波長条件からずらすことができる。ある実施形態の場合には、高屈折率層のうちの1つまたは複数の厚さを、他の高屈折率層の厚さから(例えば、もっと厚くまたはもっと薄く)変えることができる。例えば、最も内側の高屈折率層の厚さを他の高屈折率層の厚さとは異なるものにすることができる。別の方法としては、または追加として、低屈折率層のうちの1つまたは複数の厚さを、(例えば、もっと厚くまたはもっと薄くして)他の低屈折率層の厚さとは異なるものにすることができる。例えば、最も内側の低屈折率層の厚さを他の低屈折率層の厚さとは異なるものにすることができる。
【0085】
1/4波長条件から閉じ込め領域内の層の厚さをずらすことにより、1/4波長条件が閉じ込め領域内のすべての層に対して満たされるという点を除けば、フォトニック結晶ファイバ120と同じファイバである試験ファイバと比較すると、フォトニック結晶ファイバ120の減衰を低減することができる(すなわち、試験ファイバは、同じコアを有し、その閉じ込め領域は、フォトニック結晶ファイバ120と同じ組成を有する同じ数の層を有する)。例えば、ファイバ120は、試験ファイバの減衰と比較すると、約2以上の係数で減衰する(例えば、約3以上、約4以上、約5以上、約10以上、約20以上、約50以上、約100以上の係数で減衰する)1つまたは複数の導波モード用の減衰を有することができる。2004年11月1日付けの「フォトニック結晶導波路およびこのような導波路を使用するシステム」(PHOTONIC CRYSTAL WAVEGUIDES AND SYSTEMS USING SUCH WAVEGUIDES)という名称の米国特許出願第10/978,605号に、少ない減衰を示すフォトニック結晶ファイバの例が記載されている。その全文は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0086】
閉じ込め領域内の各層の厚さは、フォトニック結晶ファイバの組成および構造により変化することができる。また、厚さも、フォトニック結晶ファイバが最適化される波長、モードまたはモードのグループにより変化することができる。各層の厚さは理論的および/または実験的方法により決めることができる。理論的方法としては、計算モデル化等がある。ある計算アプローチは、異なる層の厚さの場合のファイバの減衰を決定し、導波モードに対するファイバの減衰を最小にする層の厚さの値を決定するために、最適化ルーチン(例えば、非線形最適化ルーチン)を使用する。例えば、W.Press、S.Teukolsky、W.VetterlingおよびB.Flanneryのテキスト「FORTRANにおける数値レシピ(第二版)」(Numerical Recipes in FORTRAN(second edition))に記載の「ダウンヒル・シンプル法」(downhill simplex method)を最適化を行うために使用することができる。
【0087】
このようなモデルは、ファイバの異なる減衰機構を説明できるものでなければならない。導波EMモードからエネルギーを奪うことができる2つの機構は、吸収損失および放射損失によるものである。吸収損失は材料の吸収による損失を意味する。放射損失は、不完全な閉じ込めによるファイバから漏洩するエネルギーを意味する。損失の両方のモードは、ファイバ減衰を起こし、例えば、転送マトリックス法および摂動論により理論的に研究することができる。J.Opt.Soc.Am.,68の1196ページ(1978年)掲載のP.Yeh他の論文が、転送マトリックス法を記載している。Optics Express,10の1227ページ(2002年)掲載のM.Skorobogatiy他の論文が摂動論の説明を掲載している。特に、転送マトリックス・コードにより、フォトニック結晶ファイバ構造内で共鳴する「漏洩」モードの伝搬定数βが分かる。βの虚数部分は、モード放射損失、すなわちLossradiation〜Im(β)を定義する。材料吸収による損失は、摂動論の展開により計算され、モード・フィールド重なり積分により、下式で表すことができる。
【0088】
【数4】
ここで、ωは放射線周波数であり、rはファイバ半径であり、αは材料の総合吸収であり、
【0089】
【数5】
は電界ベクトルである。
【0090】
別の方法としては、ファイバ内を伝搬することができる所望のモード・フィールドは、B−スプライン関数のような適当な一組の関数で展開することができる(例えば、C.deBoorの、「スプライン関数への実用的手引き」(A Practical Guide to Splines)参照)。ガレルキン条件(例えば、C.A.J.Fletcherの、「計算ガレルキン法」(Computational Galerkin Methods)、Springer−Verlag(1984年)参照)のアプリケーションが、次に、マクスウェルの式を標準固有値−固有ベクトル問題に変換する。この問題は、LAPACKソフトウェア・パッケージ(例えば、「http://www.netlib.org」でインターネット上のnetlibリポジトリから無料で入手できる)により解くことができる。材料損失および放射損失の両方を含む所望の複雑な伝搬定数は、固有値から直接入手することができる。
【0091】
導波モードは、3つのタイプ、すなわち純横断電気(TE);純横断磁気(TM);および混合モードのうちの1つとして分類することができる。多くの場合、損失はモードのタイプにより異なる。例えば、TEモードは、TM/混合モードよりも低い放射および吸収損失を表すことができる。それ故、低い放射および/または吸収損失を被るモードを誘導するためにファイバを最適化することができる。
【0092】
閉じ込め領域220Aは、半径方向の屈折率変調を行う複数の環状層を含んでいるが、通常、閉じ込め領域は、また、閉じ込め特性を供給する他の構造を含むこともできる。例えば、図2Cを参照すると、閉じ込め領域220Bは、複数の個々の同心層とは反対の異なる屈折率を有する誘電体材料(例えば、ポリマー、ガラス)の連続層240および250を含む。連続層240および250は、軸299の周囲に螺旋を形成する。例えば、層240のような1つまたは複数の層は、屈折率nHおよび厚さdHを有する高屈折率層であり、例えば、層250のような層は、屈折率nLおよび厚さdLを有する低屈折率層である。この場合、nH>nLである(例えば、nH−nLは、約0.01以上、約0.05以上、約0.1以上、約0.2以上、約0.5以上であってもよい)。
【0093】
層240および250は軸199の周囲を螺旋状に巻いているので、軸199から延びる半径方向の断面は、層とそれぞれ2回以上交差し、交互に高屈折率層および低屈折率層を含む半径方向のプロファイルを形成する。
【0094】
閉じ込め領域220B内の螺旋状の層は、半径方向の断面に沿って屈折率の周期的な変化を起こし、この場合、周期は、層240および250の光学的厚さに対応する。通常、半径方向の周期的な変化は、n240d240+n250d250に対応する光学的周期を有する。
【0095】
層240および250の厚さ(d240およびd250)および光学的厚さ(n240d240およびn250d250)は、上記閉じ込め領域220Aのところで説明したのと同じ考慮に基づいて選択される。
【0096】
図2Cの実施形態の場合には、閉じ込め領域220Bは5光学的周期の厚さを有する。しかし、実際には、螺旋閉じ込め領域は、もっと多くの光学的周期(例えば、約8光学的周期以上、約10光学的周期以上、約15光学的周期以上、約20光学的周期以上、約25光学的周期以上、約40光学的周期以上)を含むことができる。
【0097】
螺旋状閉じ込め領域を有するファイバは、平面多層膜を螺旋状に巻き、螺旋の隣接する層を溶融(例えば、加熱による)により一緒に螺旋を固結することにより、螺旋状プリフォームから形成することができる。ある実施形態の場合には、平面多層膜をマンドレル(例えば、ガラス円筒またはロッド)の周囲に螺旋状に巻くことができ、螺旋状の円筒を供給するために、固結の後で(例えば、螺旋形の外装からマンドレルをエッチングまたは分離して、外装からマンドレルを引き出すことにより)マンドレルを取り外すことができる。マンドレルは、1つの材料から形成することができるし、または異なる材料の部分を含むこともできる。例えば、ある実施形態の場合には、マンドレルを、巻いた螺旋形構造の固結の後で取り外されない1つまたは複数の層でコーティングすることができる。一例を挙げて説明すると、マンドレルは、中空のロッドの形をしている第1の材料(例えば、珪酸ガラス)、および中空のロッドの外面にコーティングされている第2の材料(例えば、カルコゲニド・ガラスのような他のガラス)から形成することができる。第2の材料は、多層膜を形成するために使用した材料のうちの1つと同じものであってもよい。固結の後で、第1の材料はエッチングされ、第2の材料がファイバプリフォームの一部を形成する。
【0098】
ある実施形態の場合には、追加の材料を巻いた多層膜の外面上に堆積することができる。例えば、高分子膜を螺旋の外面の周囲に巻くことができ、その後で環状の高分子層(例えば、クラッディング)を形成するために螺旋に溶融することができる。ある実施形態の場合には、多層膜および付加膜の両方をマンドレルの周囲に巻き、1回の溶融ステップで固結することができる。ある実施形態の場合には、多層膜をマンドレルの周囲に巻いて固結し、次に付加膜を溶融した螺旋の周囲に巻き、第2の溶融ステップで固結することができる。第2の固結は、マンドレルのエッチングの前または後に行うことができる。そうしたい場合には、1つまたは複数の追加の層を、付加膜で巻く前に螺旋内に(例えば、CVDにより)堆積させることができる。
【0099】
2003年12月10日付けの「ファイバ導波路およびその製造方法」(FIBER WAVEGUIDES AND METHODS OF MAKING SAME)という名称の米国特許出願第10/733,873号に螺旋物品の製造方法が記載されている。その全文は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0100】
図2Dを参照すると、ある実施形態の場合には、フォトニック結晶ファイバ120は、螺旋状部分260および環状部分270を含む閉じ込め領域220Cを含むことができる。(ファイバ軸から半径方向に沿った)環状部分270および螺旋状部分260内の層の数は、必要に応じて変えることができる。ある実施形態の場合には、環状部分は1つの層を含むことができる。別の方法としては、図2Dに示すように、環状部分270は、複数の層(例えば、2つ以上の層、3つ以上の層、4つ以上の層、5つ以上の層、10以上の層)を含むことができる。
【0101】
環状部分270が2つ以上の層を含む実施形態の場合には、各層の光学的厚さは、環状部分内の他の層の厚さと同じであってもよいし、違っていてもよい。ある実施形態の場合には、環状部分270内の1つまたは複数の層は、1/4波長の厚さ(すなわち、式(2)が示す厚さ)に対応する光学的厚さを有することができる。別の方法としては、または追加として、環状部分270の1つまたは複数の層は、1/4波長の厚さとは異なる厚さを有することができる。層の厚さは、本明細書に開示する最適化方法により、誘導された放射線の減衰を低減する(例えば、最小にする)ために最適化することができる。
【0102】
ある実施形態の場合には、環状部分270は、フォトニック結晶ファイバ120により誘導された放射線を散乱および/または吸収する、欠陥の数が比較的少ない材料から形成することができる。例えば、環状部分270は、不均一および/または不純物の数が比較的少ない1つまたは複数のガラスを含むことができる。不均一および不純物は、例えば、光学的または電子顕微鏡により識別することができる。フォトニック結晶ファイバの不均一および/または不純物を監視するために、ラマン分光分析法、グロー放電質量分光測定法、スパッタ中性質量分光測定法、またはフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)を使用することもできる。
【0103】
ある実施形態の場合には、環状部分270は、螺旋部分260より欠陥の数が少ない材料から形成される。通常、これらの欠陥は、構造上の欠陥(例えば、層間剥離、亀裂)および材料の不均一(例えば、化学組成および/または結晶構造の変動)の両方を含む。
【0104】
図2Dに示すような閉じ込め領域を有するファイバは、プリフォームを形成するために螺旋状断面を有する円筒の表面上に1つまたは複数の環状層を堆積することにより形成することができる。次に、フォトニック結晶ファイバをプリフォームから線引きすることができる。
【0105】
環状層は、種々の堆積方法により螺旋状円筒の表面上に堆積することができる。例えば、螺旋状部分が環状部分とコアとの間に位置する場合には、プリフォームを形成するために螺旋状物品の外面上に材料を蒸着またはスパッタすることができる。
【0106】
フォトニック結晶ファイバの環状部分が螺旋状部分とコアとの間に位置する実施形態の場合には、材料を、例えば、化学蒸着(例えば、プラズマ強化化学蒸着)により螺旋状物品の内面上に堆積することができる。2003年11月24日付けの「誘電体導波路およびその製造方法」(DIELECTRIC WAVEGUIDE AND METHOD OF MAKING THE SAME)という名称の米国特許出願第10/720,453号に、円筒状プリフォームの内面上に、例えば、1つまたは複数のガラスの層を堆積するための方法が記載されている。その全文は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0107】
通常、閉じ込め領域は、多層構成とは異なるフォトニック結晶構造を含むことができる。例えば、閉じ込め領域220Cは、螺旋部分および環状部分の両方を含んでいて、ある実施形態の場合には、閉じ込め領域は、他の螺旋状でない構造を含む部分を含むことができる。例えば、閉じ込め領域は、螺旋状部分および孔部の多い部分(例えば、ファイバ軸に沿って延びる多数の孔部を含む中実円筒からなる)を含むことができる。孔部は同心円に沿って配置することができ、閉じ込め領域の孔部の多い部分の屈折率は半径方向で変化する。
【0108】
閉じ込め領域220の組成について説明すると、高屈折率層および低屈折率層の組成は、通常、ファイバの動作波長のところで層間に所望の屈折率コントラストができるように選択される。各高屈折率層の組成は、他の高屈折率層の組成と同じものであってもよいし、異なるものであってもよいし、全く同様に各低屈折率層の組成は、他の低屈折率層の組成と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0109】
高屈折率層および低屈折率層に適している材料としては、無機ガラスまたは無定型合金のような有機材料等がある。無機ガラスの例としては、酸化物ガラス(例えば、酸化重金属ガラス)、塩化物ガラスおよび/またはカルコゲニド・ガラス、およびポリマーのような無機材料等がある。ポリマーの例としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、酢酸セルロース・ブチレート(CAB)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)(例えば、コポリマー・スチレン−ブタジエン(SBC)、メチレスチレン−アクリロニトリル、スチレン−キシリレン、スチレン−エチレン、スチレン−プロピレン、スチレン−アクリロニトリル(SAN)を含む)、ポリエーテルイミド(PEI)、酢酸ポリビニル(PVAC)、ポリビニル・アルコール(PVA)、塩化ポリビニル(PVC)、ポリオキシメチレン;ポリフォルムアルデヒド(ポリアセタル)(POM)、酢酸エチレン・ビニル・コポリマー(EVAC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン・テレフタレート(PETP)、フルオロポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリパーフルオロアルコキシシレン(PFA)、フッ化エチレン・プロピレン(FEP)を含む)、ポリブチレン・テレフタレート(PBTP)、低密度ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチル・ペンテン(PMP)(および環状ポリオレフィンを含む他のポリオレフィン)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスルフィド(例えば、ポリフェニレン・スルフィド(PPS)を含む)、およびポリスルホン類(例えば、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリアリルアルキルスルホン、およびポリスルフォネートを含む)がある。ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマー(例えば、(コ)ポリ(アクリルアミド−アクリロニトリル)および/またはアクリロニトリル・スチレン・コポリマー)であってもよい。ポリマーは、例えば、ポリアミド−ポリオレフィン、ポリアミド−ポリカーボネート、および/またはPES−ポリオレフィンの混合物のようなポリマー混合物を含むことができる。
【0110】
使用することができるポリマーの他の例としては、環状オレフィン・ポリマー(COP)、および環状オレフィン・コポリマー(COC)等がある。ある実施形態の場合には、COPおよびCOCは、ノルボルネン系モノマーを重合することにより、またはノルボルネン系モノマーおよび他のポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)を共重合することにより作ることができる。例えば、両方ともZeon Chemicals L.P.(ケンタッキー州ルイスビル所在)が市販しているZeonex(登録商標)ポリマー(例えば、Zeonex(登録商標)E48R)、およびZeonor(登録商標)コポリマー(例えば、Zeonor(登録商標)1600)を含む市販のCOPおよび/またはCOCを使用することができる。COCは、また、Promerus LLC(オハイオ州ブレックスビル所在)(例えば、FS1700)から入手することもできる。
【0111】
別の方法としては、または追加として、高屈折率の層または領域を分離するために、低屈折率領域を、シリカ球体または中空のファイバのような中空の構造サポート材料により形成することができる。「複屈折光ファイバ」(BIREFRINGENT OPTICAL FIBRES)という名称の国際出願第WO 03/058308号公報に、このような構造サポートを含んでいるファイバの例が記載されている。その全文は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0112】
ある実施形態の場合には、閉じ込め領域は、1つまたは複数のガラスおよび/または1つまたは複数の誘電ポリマーのような実質的にすべてが誘電体材料からできている誘電閉じ込め領域である。通常、誘電閉じ込め領域は、ほとんど金属層を含んでいない。
【0113】
ある実施形態の場合には、閉じ込め領域の高屈折率層または低屈折率層は、カルコゲニド・ガラス(例えば、硫黄、セレンおよび/またはテルリウムのようなカルコゲニド元素を含むガラス)を含むことができる。カルコゲニド元素の他に、カルコゲニド・ガラスは、下記の元素、すなわち、硼素、アルミニウム、シリコン、燐、硫黄、ガリウム、ゲルマニウム、砒素、インジウム、錫、アンチモニ、タリウム、鉛、ビスマス、カドミウム、ランタンおよびハロゲン化物(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0114】
カルコゲニド・ガラスは、例えば、As−S、As−Se、Ge−S、Ge−Se、As−Te、Sb−Se、As−S−Se、S−Se−Te、As−Se−Te、As−S−Te、Ge−S−Te、Ge−Se−Te、Ge−S−Se、As−Ge−Se、As−Ge−Te、As−Se−Pb、As−S−Tl、As−Se−Tl、As−Te−Tl、As−Se−Ga、Ga−La−S、Ge−Sb−Seまたは錯化合物、As−Ga−Ge−S、Pb−Ga−Ge−S等のようなこれらの元素をベースとする多成分ガラスのような二元または三元ガラスであってもよい。カルコゲニド・ガラス内の各元素の比率は変えることができる。
【0115】
ある実施形態の場合には、1つまたは複数のカルコゲニド・ガラスの他にまたは代わりに、閉じ込め領域220内の1つまたは複数の層は、1つまたは複数の酸化物ガラス(例えば、酸化重金属ガラス)、ハロゲン化ガラス、無定型合金、またはこれらの組合わせを含むことができる。
【0116】
通常、高および低屈折率層の吸収は、その組成およびファイバの動作波長により変化する。ある実施形態の場合には、高および低屈折率層の両方を形成している材料の吸収は低くてもよい。低吸収材料は、動作波長において、約100dB/m以下の吸収(例えば、約20dB/m以下、約10dB/m以下、約5dB/m以下、約1dB/m以下、0.1dB/m以下)を有する。低吸収材料の例としては、約3ミクロンの波長で約4dB/mの吸収係数を有するカルコゲニド・ガラス等がある。約10.6ミクロンの波長の場合、カルコゲニド・ガラスの吸収係数は約10dB/mである。他の例としては、酸化物ガラス(例えば、鉛硼珪酸塩ガラスまたはシリカ)は、約1〜2ミクロンの波長の場合、吸収は低くなる。ある種の酸化物ガラスのこの波長範囲内の吸収係数は約1dB/m〜0.0002dB/mである。
【0117】
別の方法としては、高屈折率材料および低屈折率材料のうちの一方または両方は、高い吸収(例えば、約1,000dB/m以上、約10,000dB/m以上、約20,000dB/m以上、約50,000dB/m以上のような約100dB/m以上)を有することができる。例えば、多くのポリマーは、約3〜約11ミクロンの波長の場合、約105dB/mの吸収係数を有する。このようなポリマーの例としては、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリクロロトリフルオロ・エチレン(PCTFE)、ポリフルオロアルコキシエチレン(PFA)、およびポリエチレン・ナフタレート(PEN)等がある。PEIは、3ミクロンの波長で約105dB/mより大きい吸収を有し、一方、PCTFE、PFAおよびPENは、10.6ミクロンの波長で約105dB/mより大きい吸収を有する。
【0118】
ある実施形態の場合には、高屈折率材料は低い吸収係数を有し、低吸収材料は高い吸収係数を有し、またはその逆になる。
材料の吸収は、材料の少なくとも2つの異なる厚さT1およびT2を通しての相対的透過を測定することにより測定することができる。材料内のフィールドが、Pが材料上に入射するパワーを表している場合、Pe−αTにより厚さTが厚くなると低減すると仮定した場合、厚さT1およびT2を通して透過する測定パワーは、
【0119】
【数6】
および
【0120】
【数7】
となる。この場合、吸収係数αは、
【0121】
【数8】
で表される。必要に応じて、いくつかの厚さを使用し、透過パワーの対数に最小自乗適合を行うことにより、αのより正確な評価を入手することができる。
【0122】
すでに説明したように、有利な光学的特性(例えば、導波された波長における適当な屈折率を有する低い吸収性)を供給するために、閉じ込め領域に対して材料を選択することができる。しかし、材料は、ファイバを製造するのに使用するプロセスと互換性を有するものでなければならない。ある実施形態の場合には、好適には、高および低屈折率材料は、同時線引き加工に対して互換性を有するものでなければならない。同時線引き加工の互換性の基準は、「高屈折率コントラスト・ファイバ導波路および用途」(HIGH INDEX−CONTRAST FIBER WAVEGUIDES AND APPLICATIONS)という名称の上記米国特許出願第10/121,452号に記載されている。さらに、好適には、高および低屈折率材料は、結晶、相分離、ケミカルアタック、およびファイバが形成され、展開され、使用される条件(例えば、温度、湿度および周囲ガス環境のような環境条件)に対する望ましくない反応に対して十分安定しているものでなければならない。
【0123】
線引き工程を使用する丈夫なファイバ導波路を作る場合、所望の光学的特性を有する材料の各組合わせは必ずしも適していない。通常、流動学的に、熱−機械的におよび物理化学的に相容性を有する材料を選択しなければならない。相容性を有する材料を選択するためのいくつかの基準について以下に説明する。
【0124】
第1の基準は、流動学的に相容性を有する材料を選択するための基準である。すなわち、ファイバの線引きおよび動作のいくつかの段階中に受ける温度に対応する広い温度範囲内で類似の粘度を有する材料を選択しなければならない。粘度は、加えられたセン断応力の下での流れに対する流体の抵抗である。この場合、粘度はポイズ単位で表される。流動学的相容性について説明する前に、所与の材料が特定の粘度を有する温度である所与の材料の一組の特性温度を定義することが好ましい。
【0125】
焼き鈍し点Taは、材料が1013ポイズの粘度を有する温度である。Taは、Orton Ceramic Foundation(オハイオ州ウェスタービル所在)のモデルSP−2Aシステムで測定することができる。通常、Taは、ガラス片の粘度が残りの応力を解放することができる十分低い温度である。
【0126】
軟化点Tsは、材料の粘度が107.65ポイズになる温度である。Tsは、軟化点測定器(例えば、Orton Ceramic Foundation(オハイオ州ウェスタービル所在)のモデルSP−3A)で測定することができる。軟化点は、材料の流れの性質が可塑性から粘性に変わる温度に関連する。
【0127】
動作点Twは、材料の粘度が104ポイズになる温度である。Twは、粘度計(例えば、Orton Ceramic Foundation(オハイオ州ウェスタービル所在)のモデルSP−4A)で測定することができる。動作点は、ガラスがファイバに容易に線引きすることができる温度に関連する。例えば、材料が無機ガラスであるある実施形態の場合には、材料の動作点温度は、約300℃、400℃、500℃以上のような250℃より高い温度であってもよい。
【0128】
融点Tmは、材料の粘度が102ポイズになる温度である。Tmも、粘度計(例えば、Orton Ceramic Foundation(オハイオ州ウェスタービル所在)のモデルSP−4A)で測定することができる。融点は、ガラスが液体になり、ファイバの幾何学的維持に関するファイバ線引き工程の制御が非常に難しくなる温度に関連する。
【0129】
流動学的に相容性を有するように、2つの材料は、例えば、ファイバが、目で見てわかる速度(例えば、Taにおけるような)またはそれ以下の速度で分離できる速度でもはや応力を解放することができない温度にファイバが線引きされる温度からの広い温度範囲で類似の粘度を有するものでなければならない。それ故、2つの相容性を有する材料の動作温度は、線引きする場合、2つの材料が類似の速度で流れるように類似のものでなければならない。例えば、第2の材料の動作温度Tw2で第1の材料の粘度η1(T)を測定した場合、η1(Tw2)は、例えば、104ポイズまたは105ポイズのような少なくとも103ポイズでなければならないし、107ポイズ以上であってはならない。さらに、線引きしたファイバが冷却する際に、両方の材料の行動は、類似の温度で粘性から弾性に変化しなければならない。すなわち、2つの材料の軟化温度は、類似の温度でなければならない。例えば、第2の材料の軟化温度Ts2で、第1の材料の粘度η1(Ts2)は、107ポイズまたは108ポイズのように少なくとも106ポイズでなければならないし、109ポイズ以上であってはならない。好ましい実施形態の場合には、両方の材料を一緒に焼き鈍すことができなければならない。それ故、第2の材料の焼鈍温度Ta2において、第1の材料の粘度η1(Ta2)は、少なくとも108ポイズ(例えば、少なくとも109ポイズ、少なくとも1010ポイズ、少なくとも1011ポイズ、少なくとも1012ポイズ、少なくとも1013ポイズ、少なくとも1014ポイズ)でなければならない。
【0130】
さらに、流動学的に相容性を有するように、好適には、両方の材料の温度の関数としての粘度の変化(すなわち、粘度勾配)は、できる限り一致することが好ましい。
第2の選択基準は、各材料の熱膨張係数(TEC)は、焼鈍温度と室温間の温度において類似していなければならないことである。すなわち、ファイバが冷却し、その流動学が液状から固体状に変化した場合、両方の材料の容積は類似の量だけ変化しなければならない。2つの材料のTECが十分一致しない場合には、2つのファイバ部分間の大きな容積変化の違いが大きな残留応力を発生し、これにより1つまたは複数の部分が亀裂を起こしたり、および/または剥離したりする恐れがある。残留応力は、また、材料の破壊応力よりかなり低い応力でも遅延破壊を起こす恐れがある。
【0131】
TECは、温度の変化によるサンプルの長さの部分的な変化の基準である。所与の材料に対するこのパラメータは、温度−長さ(または、等価的に温度−容積)曲線の勾配から計算することができる。材料の温度−長さ曲線は、例えば、Orton Ceramic Foundation(オハイオ州ウェスタービル所在)のモデル1200D膨張計のような膨張計により測定することができる。TECは、選択した温度範囲上で、または所与の温度での瞬間的な変化として測定することができる。この数値は℃−1という単位を有する。
【0132】
多くの材料の場合、異なる勾配を有する温度−長さ曲線内に2つの直線領域が存在する。曲線が第1の直径領域から第2の直線領域へ変化する遷移領域が存在する。この領域は、ガラス・サンプルの行動が、固体材料に通常関連するものから粘性流体に通常関連するものに遷移するガラス遷移に関連する。これは連続している遷移であり、勾配の不連続の変化とは反対に、温度−容積曲線の勾配のゆっくりした変化を特徴とする。ガラス遷移温度Tgは、補外ガラス固化体ラインおよび粘性流体ラインが交差する温度であると定義することができる。ガラス遷移温度は、材料流動学の脆性固体から流動することができる固体への変化に関連する温度である。物理的に、ガラス遷移温度は、材料内の種々の分子並進モードおよび回転モードを励起するのに必要な熱エネルギーに関連する。ガラス遷移温度は、多くの場合、粘度が1013ポイズであるが、実際には、測定したTgが相対値であり、測定技術に依存する大体の焼き鈍し点と見なされる。
【0133】
膨張計は、また、膨張計の軟化点Tdsを測定するために使用することができる。膨張計は、サンプル上に小さな圧縮負荷を加え、サンプルを加熱することにより動作する。サンプルの温度が十分高くなると、材料は軟化を始め、圧縮負荷により、観察時には容積または長さの減少としての反りがサンプル内に生じる。この相対値は、膨張計軟化点と呼ばれ、通常、材料の粘度が1010〜1012.5ポイズの時に現れる。ある材料の正確なTds値は、通常、機器パラメータおよび測定パラメータに依存する。類似の機器パラメータおよび測定パラメータを使用する場合には、この温度は、この粘度レジーム内での異なる材料の流動学的相容性の有用な基準となる。
【0134】
すでに説明したように、TECの一致は、線引き工程中にファイバ内に発生する恐れがある、過度の残留応力を含んでいないファイバを入手するための重要な考慮事項である。通常、2つの材料のTECが十分一致しない場合には、残留応力は弾性応力として生じる。弾性応力成分は、ガラス遷移温度から室温(例えば、25℃)に冷却する場合のファイバの異なる材料間の容積収縮の違いによるものである。容積の変化は、TECおよび温度の変化より測定される。ファイバの材料が、線引き工程中に任意の界面で溶融し、または接着する実施形態の場合には、その各TEC内の違いにより界面のところに応力が発生する。ある材料には張力(正の応力)がかかり、他の材料には圧縮力(負の応力)がかかり、そのため応力全体はゼロになる。中程度の圧縮応力自体は、通常、ガラス・ファイバにとって重要な問題ではないが、引っ張り応力は望ましものではなく、時間の経過中に故障を起こす恐れがある。それ故、線引き作業中のファイバの弾性応力の発生を最小限度に小さくするために、成分材料のTECの違いを最小限度に小さくすることが望ましい。例えば、2つの異なる材料から形成した合成ファイバの場合には、Tgと3℃/分の加熱速度で膨張計で測定した室温との間の各ガラスのTEC間の絶対的な違いは、約5×10−6℃−1程度(例えば、約4×10−6℃−1程度、約3×10−6℃−1程度、約2×10−6℃−1程度、約1×10−6℃−1程度、約5×10−7℃−1程度、約4×10−7℃−1程度、約3×10−7℃−1程度、約2×10−7℃−1程度)でなければならない。
【0135】
類似のTECを有する材料を選択すれば、弾性応力成分を最小限度に低減することができるが、同様に、残留応力も粘弾性応力成分から発生する恐れがある。粘弾性応力成分は、成分材料の歪み点またはガラス遷移温度間に十分な違いがある場合に発生する。材料の温度がTg以下に下がると、材料はかなりの量の収縮を起こす。冷却する場合、この遷移中に粘度が変化するので、応力を解放するのに要する時間はゼロ(瞬間)から数分に増大する。例えば、異なるガラス遷移範囲(および異なるTg)を有するガラスおよびポリマーからできている複合材用プリフォームについて考えてみよう。最初の線引き作業中、ガラスおよびポリマーは、粘性流体として行動し、線引き歪みによる応力は瞬間的に解放される。線引き炉の最も高温の部分を過ぎると、ファイバは急速に熱を失い、応力解放時間が経過するにつれてファイバ材料の粘度を指数的に増大させる。そのTgまで温度が下がると、ガラスおよびポリマーは、実際にはそれ以上応力を解放することができない。何故なら、線引き速度と比較すると、応力解放時間が非常に長くなっているからである。それ故、成分材料が異なるTg値を有していると仮定した場合、そのTgに温度が下がる第1の材料はもはや応力を低減することができないが、第2の材料の温度は依然としてTgより高く、材料間に発生した応力を解放することができる。第2の材料の温度がそのTgまで下がると、材料間に発生する応力をもはや効果的に解放することができない。さらに、この時点で、第2のガラスの容積収縮は、(この時点で温度がそのTg以下に下がっていて、脆性固体として挙動している)第1の材料の容積収縮より遥かに大きい。このような状況の場合には、ガラスとポリマーとの間に十分な応力が形成される恐れがあり、そのためその部分の一方または両方が機械的に壊れる。そのためファイバ材料を選択するための第3の選択基準が登場する。線引き作業中、ファイバの粘弾性応力の発生を最小限度に低減するために、成分材料のTgの違いを最小限度に低減することが望ましい。好適には、第1の材料のガラス遷移温度Tg1は、第2の材料のガラス遷移温度Tg2の100℃以内であることが好ましい(例えば、|Tg1−Tg2|は、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下、30℃以下、20℃以下、10℃以下でなければならない)。
【0136】
成分材料間の違いにより線引きしたファイバ内に永久的な応力を発生する2つの機構(すなわち、弾性機構および粘弾性機構)があるために、これらの機構を相互に相殺するために使用することができる。例えば、ファイバを構成している材料が、材料のTgの不一致により符号が反対の応力を発生する場合には、熱膨張の不一致による応力を当然相殺することができる。逆に、材料の熱膨張が永久的応力全体を低減する場合には、材料間のTgがもっと大きく異なっていても構わない。熱膨張およびガラス遷移温度の違いの総合的効果を査定する1つの方法は、各成分材料の温度−長さ曲線を比較する方法である。上記勾配−接線方法で各材料のTgを発見した後で、曲線がもっと低いTg温度値のところで一致するように座標軸に沿って曲線のうちの1本を移動する。ガラスが一緒に結合していない場合には、室温でのy軸の切片の違いは予想した歪みεを生じる。Tgから室温までの温度範囲でもっと大きな収縮量を示す材料の予想引っ張り応力σは、下式から簡単に計算することができる。
【0137】
【数9】
ここで、Eはその材料の弾性係数である。通常、約100MPa以下(例えば、約50MPa以下、約30MPa以下)の残留応力値は、十分小さく、2つの材料が相容性を有することを示す。
【0138】
第4の選択基準は、候補材料の熱安定性を一致させることである。熱安定性の基準は、温度間隔(Tx−Tg)で表される。この場合、Txは、各分子がその最も低いエネルギー状態を発見することができるように、材料が十分ゆっくり冷却する場合の結晶化のスタート時の温度である。それ故、結晶相は、ガラス相よりもある材料にとってエネルギー的にもっと有利な状態である。しかし、材料のガラス相は、通常、ファイバ導波路用途に使用した場合、結晶相よりも性能上の利点および/または製造上の利点を有する。結晶化温度がガラス遷移温度に近づけば近づくほど、線引き作業中、材料は結晶しやすくなる。このことは、ファイバにとって有害な場合がある(例えば、ファイバ内に光学的に不均一な部分ができ、そのため透過損失が増大するので)。通常、少なくとも約80℃(例えば、少なくとも約100℃)の熱安定性間隔(Tx−Tg)は、プリフォームからファイバを線引きすることにより材料のファイバ形成を行うのに十分なものである。好ましい実施形態の場合には、熱安定性間隔は、約150℃以上、約200℃以上のような少なくとも約120℃である。Txは、示差熱分析装置(DTA)または示差走査熱量計(DSC)のような熱分析装置により測定することができる。
【0139】
一緒に線引きすることができる材料を選択する際のもう1つの考慮事項は、材料の溶融温度Tmである。溶融温度で、材料の粘度は非常に低くなるので、ファイバ線引き工程中うまく正確な形状寸法を維持することができない。それ故、好ましい実施形態の場合には、ある材料の溶融温度は、第2の流動学的に相容性を有する材料の加工温度より高い。すなわち、プリフォームを加熱する場合、プリフォームは、プリフォーム内のどちらかの材料が溶融する前に、プリフォームをうまく線引きすることができる温度に達する。
【0140】
一緒に線引きすることができ、閉じ込め領域の層間の高い屈折率コントラストを有するフォトニック結晶ファイバ導波路を供給する一対の材料の1つの例は、As2Se3およびポリマーPESである。As2Se3は、約180℃のガラス遷移温度(Tg)を有し、約24×10−6/℃の熱膨張係数(TEC)を有する。10.6μmにおいて、As2Se3は、Hartouniおよび共同研究者が測定し、Proc.SPIE、505、11(1984年)に記載しているように2.7775の屈折率を有し、VoigtおよびLinkeが測定し、NATO ASIシリーズ、3.High Technology、36巻、155ページ(1996年)掲載のEd.A.AndrieshおよびM.Bertolottiの「オプトエレクトロニクスの非晶質半導体の物理学および用途」(Physics and Applications of Non−Crystalline Semiconductors in Optoelectronics)に記載している5.8dB/mの吸収係数αを有する。これら両方の参照文献の全文は参照により本明細書に組み込むものとする。PESは、約55×10−6/℃のTECを有し、約1.65の屈折率を有する。
【0141】
下記の特許および特許出願に、フォトニック結晶ファイバおよびフォトニック結晶ファイバの形成方法の実施形態が記載されている。「大きいコア半径を有する低損失フォトニック結晶導波路」(LOW−LOSS PHOTONIC CRYSTAL WAVEGUIDE HAVING LARGE CORE RADIUS)という名称の米国特許第6,625,364号;「フォトニック結晶多モード導波路での電磁モード変換」(ELECTROMAGNETIC MODE CONVERSION IN PHOTONIC CRYSTAL MULTIMODE WAVEGUIDES)という名称の米国特許第6,563,981号;2002年1月25日付けの「調整済み分散プロファイルを有するフォトニック結晶光導波路」(PHOTONIC CRYSTAL OPTICAL WAVEGUIDES HAVING TAILORED DISPERSION PROFILES)という名称の米国特許出願第10/057,440号;2002年4月12日付けの「高屈折率コントラスト・ファイバ導波路および用途」(HIGH INDEX−CONTRAST FIBER WAVEGUIDES AND APPLICATIONS)という名称の米国特許出願第10/121,452号;「強化光導波のための全方向多層デバイス」(OMNIDIRECTIONAL MULTILAYER DEVICE FOR ENHANCED OPTICAL WAVEGUIDING)という名称の米国特許第6,463,200号;2002年11月22日づけの「高パワー導波路」(HIGH POWER WAVEGUIDE)という名称の仮特許出願第60/428,382号;2002年6月16日付けの「反射誘電体ミラーを形成するための方法」(METHOD OF FORMING REFLECTING DIELECTRIC MIRRORS)という名称の米国特許出願第10/196,403号;2003年11月24日付けの「誘電体導波路およびその製造方法」(DIELECTRIC WAVEGUIDE AND METHOD OF MAKING THE SAME)という名称の米国特許出願第10/720,606号;2003年12月10日付けの「ファイバ導波路およびその製造方法」(FIBER WAVEGUIDES AND METHODS OF MAKING SAME)という名称の米国特許出願第10/733,873号。上記各特許および特許出願の内容は、参照により全体を本明細書に組み込むものとする。
【0142】
図1を参照すると、ある実施形態の場合には、フォトニック結晶ファイバ120は、ファイバが、好適にはある面内で曲がるように設計することができる。例えば、図3を参照すると、フォトニック結晶ファイバ300は、長い軸361に直交する短い軸362に沿ったその直径より長い軸に沿ったより長い直径を有する非対称の断面を有するクラッディング360を含む。長い軸および短い軸は軸399と直交している。非対称の断面も、異なる湾曲の部分を含むクラッディングの外面の形を明示している。より詳細に説明すると、クラッディング360は、円弧状部分331および332および2つの直線部分333および334を含む。円弧状部分331および332は、長い軸321に沿ってクラッディングの対向側面上に位置する。直線部分333および334は、短い軸322に沿ってクラッディングの対向側面上に位置する。
【0143】
通常、クラッディング360の断面の非対称性は、ファイバの通常の使用中にファイバの軸399および短い軸362が形成する面内で好適にファイバ300を曲げるのには十分なものである。
【0144】
短い軸に沿ったその直径に対する長い軸に沿ったファイバ300の直径の比は、変えることができる。通常、この比は、ファイバ300が好適には曲げ平面内で曲がるように選択され、一方、クラッディング300は、所望の機械的サポートまたはそれが設計される他の機能(例えば、光学的機能、熱管理)を依然として提供する。ある実施形態の場合には、この比率は、約1.5:1以下(例えば、約1.3:1以下、約1.1:1以下)のように比較的小さくすることができる。別の方法としては、ある実施形態の場合には、この比率は、約1.5:1より大きくすることができる(例えば、約1.8:1以上、約2:1以上)。
【0145】
フォトニック結晶ファイバ300は、また、コア320を含んでいて、螺旋層330、340および350を含む閉じ込め領域310を含んでいて、そこから閉じ込め領域が形成される連続している層の縁部に対応する内部継目321および外部継目322を有する。内部継目321は、短い軸362から角度αだけ移動する方位角323に沿って位置する。αは、約10度以上(例えば、約20度以上、約30度以上、約40度以上、約50度以上、約60度以上、約70度以上、約80度以上)であってもよい。ある実施形態の場合には、αは約90度である。
【0146】
内部継目は、ファイバの好適な曲げ平面内に位置していない。ファイバ300においては、このことは内部継目321を短い軸から離して配置することにより行うことができる。好適な曲げ平面から離して内部継目を配置すると有利な場合がある。何故なら、誘導された放射線の損失は(例えば、散乱および/または吸収による)、閉じ込め領域の他の部分と比較した場合、継目のところの方が大きいと考えられるからである。さらに、コア内の誘導された放射線のエネルギー密度は、コアの他の部分のところのエネルギー密度と比較した場合、ファイバの曲げの外側に向かってより高くなると考えられる。継目が好適な曲げ平面内にできるだけ位置しないように短い軸に対して内部継目を位置させることにより(例えば、αが約90度の場合)内部継目がファイバの曲げの外側に向かって移動する確率が低減する。それ故、誘導された放射線のエネルギー密度が高い領域のところの閉じ込め領域の比較的損失が高い部分を有する複合効果を避けることができ、ファイバの曲がりに関連する損失が低減する。
【0147】
内部継目321および外部継目322は、ファイバ300内の軸399に対して同じ方位角位置に位置しているが、他の実施形態の場合には、内部および外部継目は、ファイバの軸に対して異なる相対的方位角位置に沿って位置させることができる。
【0148】
すでに説明したように、クラッディングは、ファイバの閉じ込め領域に対して機械的サポートを供給する。それ故、クラッディング360の厚さは、長い軸361に沿って必要に応じて変えることができる。短い軸362に沿ったクラッディング360の厚さも変えることができるが、通常、長い軸に沿った厚さよりも薄い。ある実施形態の場合には、クラッディング360は、閉じ込め領域310よりも長い軸に沿ってかなり厚くなっている。例えば、クラッディング360は、長い軸に沿って閉じ込め領域310より約10倍以上厚くすることができる(例えば、約20倍以上厚い、約30倍以上厚い、約50倍以上厚いというように)。
【0149】
プリフォームを削り、次に、非対称な断面を有するプリフォームからファイバを線引きすることによりファイバを非対称にすることができる。別の方法としては、ある実施形態の場合には、プリフォームからファイバを線引きした後で、ファイバを非対称にすることができる。例えば、ファイバを線引きした後のしかしスプールする前の製造プロセスの一部としてファイバを削ったりあるいは研磨したりすることができる。
【0150】
ファイバ300は、継目を有する閉じ込め領域を含んでいるが、通常、非対称ファイバの実施形態は、継目を持たない閉じ込め領域(例えば、多数の環状層からできている閉じ込め領域)を含むことができる。
【0151】
さらに、ファイバ300は、2つの円形のアークおよび2つの直線からなる形状を有しているが、通常、ファイバは他の形を有することもできる。例えば、ファイバは非対称な多角形の形を有することができ、異なる曲率半径を有する円弧状部分から形成することができ、および/または反対方向に曲がる円弧状部分から形成することができる。通常、この形状は、ファイバに好適な曲げ平面を供給しなければならない。
【0152】
上記ファイバは、その断面の形状に対して非対称であるが、通常、ファイバは好適な曲げ平面を供給するために種々の方法で非対称になることができる。例えば、ある実施形態の場合には、ファイバは、好適な曲げ平面を形成する非対称の材料を含むことができる。非対称な材料とは、好適にはファイバを特定の方法で曲げるファイバの異なる部分の材料の特性間に違いがあることを意味する。例えば、ファイバ・クラッディングの一部は、他の部分より機械的な剛性が弱い材料から形成することができ、好適にはファイバをその部分で曲げることができる。機械的な変動は、組成上の変化または同じ組成を有する部分内の物理的違いにより起こすことができる。例えば、ファイバまたはファイバのプリフォームの一部を、ファイバの機械的特性を変えるドーパントでドーピングすることにより組成を変えることができる。もう1つの例の場合には、異なる化合物からファイバの異なる部分を形成することにより組成を変えることができる。物理的な違いは、例えば、ファイバの異なる部分の結晶性の程度の違いを意味する。ファイバの製造中にファイバの一部を選択的に加熱および/または冷却することにより、および/またはファイバの異なる部分を異なる速度で加熱/冷却することにより、結晶性の違いのような物理的な違いを生じさせることができる。
【0153】
さらに、ある実施形態の場合には、ファイバは、対称的な第1のクラッディングを含むことができるが、ファイバを好適に特定の面内で曲げる追加の構造をクラッディングの外側に含むことができる。例えば、ファイバを、ファイバを曲げることができる場合に、非対称になる1つまたは複数の被覆内に収容することができる。
【0154】
図1を再度参照すると、レーザ・システム100は、また、供給チューブ171および結合アセンブリ130を介してファイバ120に、冷却流体(例えば、ガスまたは液体)を供給する冷却装置170を含む。冷却流体は、コアを通してポンプで汲み上げられ、コアに隣接するファイバ面から熱を吸収する。この実施形態の場合には、冷却流体は、レーザ110からの放射線と同じ方向に流れるが、ある実施形態の場合には、冷却流体をレーザ放射線の伝搬方向とは反対の方向にポンプで汲み出すことができる。
【0155】
フォトニック結晶ファイバ120のコアを通る冷却流体の流速は、必要に応じて変えることができる。通常、この流速は、例えば、レーザの動作パワー、動作波長でのファイバの吸収、ファイバの長さ、ファイバ・コアのサイズに依存する。通常、流速は、その動作パワーでファイバを十分冷却できるものでなければならない。ある実施形態の場合には、流速は、約0.1リットル/分以上(例えば、約0.5リットル/分以上、約1リットル/分以上、約2リットル/分以上、約5リットル/分以上、約8リットル/分以上、約9リットル/分以上、約10リットル/分以上)であってもよい。
【0156】
ファイバから排出される冷却流体の圧力は変えることができる。ある実施形態の場合には、冷却流体の圧力は比較的高くてもよい。例えば、流体が放射線と同じファイバの端部から出る場合には、冷却ガスの圧力を患者の標的組織から破片を除去するだけの十分高い圧力にすることができる。ガス圧は、約1.4kPa(0.2PSI)以上(例えば、約3.5kPa(0.5PSI)以上、約6.9kPa(1PSI)以上)とすることができる。ある実施形態の場合には、ファイバのコアから出るガスの圧力は、約500μmのコア直径を有する1メートルの長さのファイバを通る約1リットル/分以上(例えば、約2リットル/分以上、約5リットル/分以上、約8リットル/分以上、約10リットル/分以上)の流速に対応することができる。
【0157】
流速は、システムが作動している間、名目上一定とすることもできるし、またはレーザ・システムの状態動作に従って変えることもできる。例えば、ある実施形態の場合には、流速は、放射線がファイバ120を通して送られているかどうかにより調整することができる。レーザが作動していて、放射線がファイバを通して送られている場合には、流速は、ファイバを適当に冷却するのに十分なレベルにすることができる。しかし、放射線の線量間で、システムは、もっと低いレベル(例えば、レーザが作動している間にファイバを冷却するのに使用する流速よりも約10%以下)に流速を低減することができる。ガスの流速は、遠隔制御装置152、またはシステムを使用しながら、オペレータが容易に操作することができる追加の遠隔制御装置によりトリガすることができる。
【0158】
通常、ファイバに送られる冷却流体の温度を変えることができる。ある実施形態の場合には、冷却流体は、周囲温度(例えば、室温)でファイバに送られる。ある実施形態の場合には、冷却流体は、ファイバを冷却する前に周囲温度以下に冷却される。冷却流体は、ファイバから排出される流体がある温度範囲内になるように冷却することができる。例えば、冷却流体を、患者と接触した場合に、ファイバから排出される流体が患者を火傷させないように十分冷却することができる。他の例としては、冷却流体を、ファイバから排出される流体が室温と体温との間になるように十分冷却することができる。ある実施形態の場合には、ファイバに送られる冷却流体を、その温度が室温以下になるように冷却することができる。例えば、流体は、約20℃以下(例えば、約10℃以下、約0℃以下、約−10℃以下、約−20℃以下、約−50℃以下)の温度になることができる。
【0159】
冷却流体がレーザ放射線伝搬方向にファイバ・コアを通して流れるある実施形態の場合には、冷却流体は、患者の標的組織を照射した場合に、追加の機能を行うことができる。例えば、ある実施形態の場合には、ファイバから出る加熱した流体(例えば、ガス)は、血液の凝固を促進することにより、切除した血管(または他の組織)からの出血を低減することができる。血液の凝固は、約60℃以上の温度で加速すると考えられている。それ故、標的組織を照射しているファイバから出るガスが約60℃以上である場合には、血液が凝固する速度を増大し、手術している部位から血液を吸収する必要を低減することにより、外科医を補助することができる。ある実施形態の場合には、ファイバから出るガスの温度は、例えば、約50℃以上、約60℃以上、約65℃以上、約70℃以上、約80℃以上、約90℃以上、約100℃以上にすることができる。別の方法としては、ある実施形態の場合には、ファイバから出るガスの温度は、室温以下(例えば、約10℃以下、約0℃以下)であってもよい。例えば、システムは、組織を照射する前に組織を冷却するほうが有利である処置の場合には、標的部位に冷却したガスを供給することができる。ある実施形態の場合には、ファイバから出るガスの温度を、ほぼ体温(例えば、約37℃)にすることができる。
【0160】
ファイバ・コアを流れるガスは、入力パワーの約5〜10℃/ワット(例えば、約7〜8℃/ワット)により加熱することができる。例えば、約20ワットの入力パワーを有するファイバは、そのコアを流れるガスを約100〜200℃だけ加熱することができる。
【0161】
ある実施形態の場合には、ファイバのコアを流れる流体を、標的組織に他の物質を供給するために使用することができる。例えば、噴霧状の医薬化合物をコアを通して流れているガス内に導入し、フォトニック結晶ファイバを介して標的組織に供給することができる。
【0162】
通常、冷却流体のタイプは、必要に応じて変えることができる。冷却流体は、液体であっても、ガスであっても、超流体であってもよい。ある実施形態の場合には、冷却流体は、希ガス(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、および/またはキセノン)、酸素、二酸化炭素および/または窒素を含む。冷却流体は、(例えば、約98%の純度以上、約99%の純度以上、約99.5%の純度以上、約99.8%の純度以上、約99.9%の純度以上の)実質的に1つの化合物から作ることができるし、または混合物(例えば、空気またはヘリオックス)であってもよい。
【0163】
ある実施形態の場合には、冷却流体は、ファイバを冷却する能力に基づいて選択することができる。流体の冷却能力は、流体の流速および/または流体の熱伝導性に依存する。例えば、ヘリウム・ガスは、他のガスと比較すると比較的高い熱伝導性を有する。さらに、所与の圧力降下の場合、ヘリウムは、窒素のような他のガスより速い流速を有することができる。それ故、ある実施形態の場合には、ヘリウムを、他のガスより優れているファイバを冷却する能力に基づいて選択することができる。
【0164】
別の方法としては、または追加として、冷却流体を、患者に対して何らかの望ましくない相互作用を有しているかどうかに基づいて選択することができる。例えば、冷却流体が患者に近接している実施形態の場合には、冷却流体をその比較的低い毒性に基づいて選択することができる。ある実施形態の場合には、冷却流体を、他の流体と比較した場合の可溶性に基づいて選択することができる。血液内での可溶性が比較的低い流体は、冷却流体に曝されることにより塞栓症を有する患者のリスクを低減することができる。比較的毒性が低く、比較的可溶性が低い流体の一例としてはヘリウム・ガスがある。
【0165】
また、冷却流体を、他の元素との反応性(例えば、可燃性)のような他の基準に基づいて選択することもできる。ある実施形態の場合には、ヘリウムのような冷却流体を、その不活性特性(例えば、不燃性)に基づいて選択することができる。
【0166】
ある実施形態の場合には、保護スリーブをフォトニック結晶ファイバ120の出力端部に取り付けることができる。スリーブは、ファイバの出力端部のところでのゴミの蓄積および詰まりを防止するために使用することができる。図4Aは、スリーブ401の一例を示す。スリーブ401は、フォトニック結晶ファイバ410の出力端部に取り付けられる。スリーブ401は、ファイバの出力端部とスリーブの先端開口部430との間に隔離距離405を維持するカラー425を含む。通常、隔離距離405は、約0.5cm〜約4cmである。ファイバ410のコア420から出る放射線411は、先端開口部430を通してスリーブから出る。
【0167】
また、スリーブ401は、ファイバの先端開口部430から出る流体の圧力を低減するための穿孔を含むことができる。例えば、スリーブ401は、先端開口部430に沿って、コア420から出る流体がスリーブから出ることができる経路を供給する二次開口部435および436を含む。
【0168】
通常、スリーブは、容易に殺菌することができる硬質の材料から形成される。例えば、スリーブは、ステンレス鋼から形成することができる。スリーブは、使い捨てのものであっても、再使用できるものであってもよい。
【0169】
図4Bは、スリーブのもう1つの例であるスリーブ401Aを示す。スリーブ401Aは、その全長に沿って狭くなっていて、先端開口部近くの直径402Aと比較した場合、ファイバ401の出力端部にスリーブが取り付けられるところの直径402Bが大きくなっている。スリーブが狭くなっているので、スリーブ内のコア420からの流体の圧力が増大し、開口部435Aおよび435Bのところの流体圧力が増大し、それによりこれら開口部を通してスリーブ内にゴミが吸い込まれる可能性が低減する。
【0170】
ある実施形態の場合には、スリーブは、1つまたは複数の光学部品を含むことができる。例えば、図4Cに示すように、スリーブ401Bは、先端開口部の近くに取り付けられているリフレクタ440(例えば、ミラー)を含むことができる。リフレクタ440は、コア420から出る放射線411の向きを変え、オペレータが他の方法ではアクセスすることができない狭い空間内に放射線を向けることができるようにする。
【0171】
ある実施形態の場合には、スリーブは、また、透過型光学部品を含むことができる。例えば、図4Dに示すように、スリーブ401Cは、先端開口部430の近くに装着されているレンズ450を含む。レンズは、レンズ・マウント451によりスリーブ内に装着されていて、このレンズ・マウントは、ファイバからの流体が開口部435および436を通してスリーブ401Cから依然として出ることができるように、先端開口部430と二次開口部435および436との間に位置する。レンズ450は、コア420から出る放射線411の焦点を先端開口部430を越えたある位置のウェストに結ぶ。スリーブ内に装着することができる透過型光学部品のもう1つの例は、流体が先端開口部430を通して流れるのを防止しながら、ファイバ・コアから出る放射線を透過するための窓としての働きをすることができる透過型光学的平面である。
【0172】
すでに説明したように、レーザ・システム100においては、レーザ110からの光および流体源170からの流体が、結合アセンブリ130によりファイバ120内に結合される。図5Aを参照すると、フォトニック結晶ファイバ内にガスおよび放射線を結合するためのカプラの一例は、結合アセンブリ500である。結合アセンブリ500は、レーザからの放射線およびガス源からのガスを受け取る第1の部分510、およびフォトニック結晶ファイバ120に接続する第2の部分520を含む。第1の部分510は、柔軟な接合部505(例えば、金属ベローまたはゴム・チューブ)により第2の部分520と結合している。
【0173】
第1の部分510は、レンズ・ホルダー502およびレンズ・ホルダー用のアダプタ504を含む。レンズ・ホルダーは、市販のレンズ・ホルダーであってもよい。レンズ・ホルダー502と結合した場合、アダプタ504はレンズ501をレンズ・ホルダー内に固定する。Oリング503は、アダプタ504とレンズ501との間を密封する。アダプタ504は、また、システムにガスを供給するチューブに接続するための管継手504aを含む。ある実施形態の場合には、管継手504aは、逆止ホース管継手を含む。
【0174】
部分520は、光ファイバ・コネクタ容器を含むコネクタ整合段508(例えば、Newport(カリフォルニア州アービン所在)が市販している構成要素LP−1Aのような市販の段)を含む。段508は、アダプタ506により柔軟な接合部505に接続している。Oリング507は、段508とアダプタ506との間を密封する。光ファイバ・コネクタ509は、フォトニック結晶ファイバ510を段508に結合する。もう1つのOリング511は、光ファイバ・コネクタ509および段508間を密封する。
【0175】
図5Bは、結合アセンブリのもう1つの例を示す。結合アセンブリ530は、レーザ110の出力端子111に取り付けるレーザ・コネクタ540を含む。結合アセンブリ530は、レーザ・コネクタ540に取り付けられているハウジング531を含む。ハウジングは、流体入口ポート533および放射線出口ポート534を含む。光ファイバ・コネクタ550は、放射線出口ポート534に取り付けられ、放射線出口ポートに対してフォトニック結晶ファイバ551の端部を位置決めする。さらに、コネクタ560は、流体入口ポート533に取り付けることにより、流体導管561をハウジングに接続する。
【0176】
位相差リフレクタ532は、ハウジング531内に位置する。位相差リフレクタ532は、レーザからハウジングに入る直線的に偏光された放射線541を放射線出口端部534の方向に向け、反射した放射線542が円偏光されるように偏光状態を修正する。より一般的に説明すると、反射型遅延装置は、ファイバ551のもっと低損失の偏光を行うために、レーザ放射線の偏光状態を修正する。ある実施形態の場合には、円偏光した放射線の平均損失は、ファイバが偏光面と一致する場合がある高損失の領域を有する直線的に偏光した放射線よりも低い場合がある。例えば、継目を有する閉じ込め領域を有するフォトニック結晶ファイバは、円偏光した光と比較した場合、継目の面内で偏光した放射線に対してもっと高い損失を示すことができる。別の方法としては、または遅延装置とを有する他に、ファイバ551を、レーザからの放射線の偏光状態に対して特定の向きで、その継目(または他の高損失領域)に取り付けることができる。
【0177】
10.6ミクロンの放射線に適している反射型遅延装置の例としては、直列PRR:シリコンおよび銅相位相差リフレクタ(Laser Research Optics(ロード・アイランド州プロビデンス所在)が市販している)がある。透過型遅延装置(例えば、複屈折結晶からできている)は、位相差リフレクタ532の代わりに、またはそれの追加として使用することができる。
【0178】
また、結合アセンブリ530は、マウント535によりハウジング531内に装着されるレンズ545を含む。このマウントは、反射した放射線542の焦点を、放射線がファイバ551のコア内に結合する放射線出口ポート534のところのウェストの部分に結ぶ。10.6ミクロンの波長のところで使用するのに適しているレンズは、例えば、ZnSeから形成することができる。
【0179】
冷却流体がファイバのコア内に結合されない実施形態の場合には、他の結合アセンブリを使用することができる。通常、このような実施形態の場合には、レーザ・システムが動作する波長および輝度に適している任意のカプラを使用することができる。Applied Optics、34巻、3号、372〜380ページ(1996年)掲載の「高パワー工業用CO2レーザ用中空導波路供給システム」(Hollow−waveguide delivery systems for high−power, industrial CO2 lasers)内にカプラの1つのタイプをR.NublingおよびJ.Harringtonが記載している。カプラの他の例としては、1つまたは複数のレンズのような1つまたは複数の焦点素子等がある。より一般的に説明すると、カプラは、ビーム整形光学系、ビーム・フィルタ等のような追加の光学部品を含むことができる。
【0180】
通常、結合効率は、比較的高くすることができる。例えば、結合アセンブリ130は、導波された波長でレーザ出力の約70%以上を、ファイバの導波モード(例えば、約80%以上、90%以上、95%以上、98%以上)に結合することができる。結合効率という用語は、ファイバ上に入射した全パワーに対する所望のモードにより外に誘導されたパワーの比率を意味する。
【0181】
レーザ・システム100はハンドピース140を含んでいるが、システムは、システムを使用する医療用途により、異なるタイプのハンドピースを含むことができる。通常、ハンドピースは、例えば、オペレータが自分の手のひらまたは指先で握ることができる部分を含んでいて、他の構成要素も含むことができる。ある実施形態の場合には、ハンドピースは、(患者の膀胱を検査するための)膀胱鏡、(患者の腎臓を検査するための)腎臓鏡、(患者の気管支を検査するための)気管支鏡、(患者の喉頭を検査するための)喉頭鏡、(患者の耳を検査するための)耳鏡、(患者の関節を検査するための)関節鏡、(患者の腹部を検査するための)腹腔鏡、および胃腸内視鏡のような内視鏡(例えば、可撓性または硬性内視鏡)を含むことができる。ハンドピースのもう1つの例は、オペレータがフォトニック結晶ファイバの出力端部を、管、血管、通路および/または体腔内に位置させることができるカテーテルである。
【0182】
さらに、他の構成要素をハンドピースに内蔵させないで、ハンドピースを他の構成要素と一緒に使用することができる。例えば、ハンドピースを、フォトニック結晶ファイバの出力端部を患者の腹腔内に位置させるために、トロカールと一緒に使用することができる。他の例の場合には、硬性内視鏡と一緒にハンドピースを使用することができる。この場合、硬質な内視鏡は、ハンドピースの握り部分またはフォトニック結晶ファイバに取り付けられない。
【0183】
図6を参照すると、ある実施形態の場合には、ハンドピース680は、フォトニック結晶ファイバ120が挿入されるチャネルを含む狭い導管684を含む。導管684は、硬質ではあるが、変形することができる材料(例えば、ステンレス鋼)から作ることができる。これにより、オペレータは、(例えば、手でまたはツールにより)オペレータが導管をまっすぐに延ばすか、別の方法で曲げるまで導管が曲がりを保持する場合、処置のために(例えば、曲げ686のように)所望の角度で導管を曲げることができる。ハンドピース680は、また、導管684に取り付けられている握り部分682を含み、これによりオペレータは、ハンドピースを快適に握ることができる。
【0184】
ある実施形態の場合には、ハンドピースは、例えばシステムの動作中にオペレータがファイバを遠くから曲げることができるようにするアクチュエータを含むことができる。例えば、図7Aを参照すると、ある実施形態の場合には、レーザ放射線112を、内視鏡610により患者601内の標的組織699に供給することができる。内視鏡610は、握り部分611および内視鏡本体616により相互に接続している可撓性導管615を含む。一束の光ファイバを収容している撮像ケーブル622が、握り部分611および可撓性導管615内のチャネルを通してねじ込まれる。撮像ケーブル622は、可撓性導管615を介して標的組織699を照明する。撮像ケーブルは、また、標的組織から反射した光をコントローラ620に誘導する。この場合、標的組織は画像化され、表示され、オペレータに視覚的情報を提供する。別の方法としては、または追加として、内視鏡は、オペレータが撮像ケーブルを通して標的領域を直接見ることができるようにする接眼レンズを含むことができる。
【0185】
内視鏡610は、また、オペレータが可撓性導管615を曲げたりまっすぐに延ばしたりすることができるようにするアクチュエータ640を含む。ある実施形態の場合には、アクチュエータ640により、可撓性導管615を1つの平面内だけで曲げることができる。別の方法としては、ある実施形態の場合には、アクチュエータにより、可撓性導管を2つ以上の平面内で曲げることができる。
【0186】
内視鏡610は、さらに、ファイバ120が挿入されるチャネルを含む補助導管630(例えば、取り外すことができる導管)を含む。チャネルは、可撓性導管615内の第2のチャネルに接続していて、ファイバ120を補助導管を通して可撓性導管615内に挿入することができる。ファイバ120は、可撓性導管615を通してチャネルに対してファイバの向きを維持し、それにより可撓性導管内の導波路軸を中心にしてフォトニック結晶ファイバの捻れを最小限度に低減するように、補助導管に取り付けられる。フォトニック結晶ファイバ120が継目を含む閉じ込め領域を有する実施形態の場合には、ファイバを、継目が可撓性導管の曲げ平面と一致しないように補助導管に取り付けることができる。
【0187】
通常、フォトニック結晶ファイバは、PENTAX Medical Company(ニュージャージー州モントベール所在)、およびOlympus Surgical & Industrial America,Inc.(ニューヨーク州オレンジバーグ所在)が市販している内視鏡のような市販の内視鏡と一緒に使用することができる。
【0188】
補助導管630は、ユーザが、可撓性導管615内のフォトニック結晶ファイバの出力端部を延ばしたりおよび/または縮めたりすることができるように構成することができる。例えば、図7Bを参照すると、ある実施形態の場合には、内視鏡610の補助導管630は、相互に移動することができる2つの部分631および632を含むことができる。部分632は、内視鏡本体616に取り付けられ、一方、部分631は部分632に対してはまり込むように接続している。部分632は、ファイバ120に取り付けられているファイバ・コネクタ638に接続するコネクタ636を含む。コネクタ636およびファイバ・コネクタ638の嵌合機構により、内視鏡にフォトニック結晶ファイバを迅速にまた簡単に取り付けたり取り外したりすることができる。取り付けた場合、コネクタ636およびファイバ・コネクタ638は、ファイバ120が捻れるのを実質的に防止し、可撓性導管615内でファイバ軸を中心にしてその向きを維持する。コネクタは、例えば、導管の曲げ平面から遠ざかる方向を向いているファイバの継目に対して、導管内でのファイバの向きを維持することができる。さらに、部分631が部分632に対して伸び縮みさせた場合、部分631は、可撓性導管615の先端部618に対してファイバ120の出力端部645を伸び縮みさせる。補助導管630も、ユーザが部分632に対して部分631を固定することができるように、ロック機構634(例えば、ラッチまたはクランプ)を含む。ロック機構は、可撓性導管615内でのファイバ120の望ましくない運動を防止し、放射線が患者に供給される。
【0189】
レーザ・システム100および600は、放射線をレーザ110から標的部位に供給する単一の長さのフォトニック結晶ファイバを含んでいるが、複数の接続している長さのフォトニック結晶ファイバも使用することができる。例えば、図7Cを参照すると、レーザ・システム700は、レーザ・システム100および600として、単一の長さのフォトニック結晶ファイバではなく、2つの長さのフォトニック結晶ファイバ720および721を含む。フォトニック結晶ファイバ長さ720および721は、内視鏡610の補助導管630に取り付けるコネクタ730により一緒に結合される。
【0190】
レーザ・システム700は、冷却装置170の他にまたは代わりに二次冷却装置740を含む。フォトニック結晶ファイバ長さ720は、供給チューブ742により二次冷却装置740に接続している外装744内に位置する。二次冷却装置740は、外装744を通して冷却流体をポンプで汲み出すことにより、フォトニック結晶ファイバ長さ720を冷却する。
【0191】
二次冷却装置740は、外装744を通してポンプで汲み上げる冷却流体を再循環することができる。例えば、外装744は、二次冷却装置740に冷却流体を還流する追加の導管を含むことができる。二次冷却システムを備える熱交換器は、二次冷却システムがポンプにより流体を外装744に還流する前に、排出された冷却流体を積極的に冷却することができる。
【0192】
冷却流体は、冷却装置170によりフォトニック結晶ファイバのコア内にポンプで汲み出される冷却流体と同じものであっても、異なるものであってもよい。ある実施形態の場合には、冷却装置170は、ファイバのコアを通してガスをポンプでくみ出し、一方、二次冷却装置740は、液体(例えば、水)でファイバを冷却する。
【0193】
外装744は保護作用を行うことができ、フォトニック結晶ファイバ長さ720を環境災害から保護する。ある実施形態の場合には、外装744は、比較的硬質の材料を含み(例えば、外装744はフォトニック結晶ファイバ長さ720より硬くなるように)、フォトニック結晶ファイバ長さ720の曲がりを低減する。ある実施形態の場合には、外装744は、ニチノール(コネチカット州ベセル所在のMemry,Inc.が市販している)のような比較的硬質の材料から作られる。
【0194】
ある実施形態の場合には、2つの長さのフォトニック結晶ファイバを使用することにより、長さの少なくとも一方の使用可能な寿命を延ばすことができる。例えば、冷却装置740および/または外装744によるファイバの長さによる追加の冷却および/または保護により、フォトニック結晶ファイバ長さ720の交換頻度をファイバ長さ721よりも少なくすることができる。ある実施形態の場合には、ファイバ長さ721は、複数回使用することができるが、ファイバ長さ721は使い捨てにすることもできる。
【0195】
レーザ・システム700は2つの接続している長さのフォトニック結晶ファイバを使用しているが、より一般的に、フォトニック結晶導波路以外の導波路も、レーザから標的部位に放射線を供給するための導管を供給するために、所定の長さのフォトニック結晶ファイバに接続することができる。例えば、所定の長さの中空の金属導波路を、IR放射線用の導管を供給するために所定の長さのフォトニック結晶ファイバに接続することができる。
【0196】
さらに、通常、例えば、処置中、標的組織にあるものを供給し、標的組織からあるものを除去し、または標的組織を観察するために、医療レーザ・システム内で他の導管をフォトニック結晶ファイバと一緒に束ねることができる。例えば、図7Aのところで説明したように、フォトニック結晶ファイバを撮像システムにより標的組織を照明および/または画像化するために使用する撮像ケーブルのような、他の光導波路と一緒に束ねることができる。ある実施形態の場合には、レーザ・システムは、フォトニック結晶ファイバを通してレーザ放射線から放射線を、および他の導管(例えば、光ファイバ)を通して第2のソース(例えば、第2のレーザ)から放射線を供給することにより、患者に2つ以上の放射線源から放射線を供給することができる。一例を挙げて説明すると、図8に示すように、ある実施形態の場合には、システム800は、ファイバ導波路830およびフォトニック結晶ファイバ810を含む。この場合、ファイバ導波路830およびフォトニック結晶ファイバ810の一部は、ジャケット850(例えば、可撓性ポリマー・ジャケットのような可撓性ジャケット)内で束ねられる。フォトニック結晶ファイバ810は、フォトニック結晶ファイバ810のコア812を通して、波長λ1で放射線を供給するレーザ820と結合している。ファイバ導波路830は、ファイバ導波路830のコア832を通して、異なる波長λ2で放射線を供給する他の放射線源840と結合している。フォトニック結晶ファイバ810およびファイバ導波路830は、共通の位置にそれぞれ波長λ1およびλ2で放射線(それぞれ参照番号822および842で示す)を供給する。
【0197】
ファイバ導波路830は、例えば、光ファイバまたはフォトニック結晶ファイバであってもよい。放射線源840は、レーザまたは他の光源(例えば、電球または発光ダイオード)であってもよい。一例を挙げて説明すると、ある実施形態の場合には、放射線源840は、HeNeレーザのような可視放射線(例えば、λ2が633nmのような約400nm〜約800nmの範囲内に入る)を放射するレーザであり、ファイバ導波路830は光ファイバである。ファイバ830が放射する可視放射線により、オペレータは、レーザ820からレーザ放射線を供給する前に、フォトニック結晶ファイバの出力端部を適当な組織に向けることができる。他の例の場合には、他の放射線源840は、光凝固または光切断のために患者に放射線を供給するためにも使用することができるNd:YAGレーザである。
【0198】
ジャケット850は、ジャケットを種々のハンドピースと一緒に使用することができるようにするために、その外径を十分小さくすることができる。例えば、ジャケットは約2mm以下の外径を有することができ、ジャケットを内視鏡の標準サイズのチャネル内に挿入することができる。
【0199】
ある実施形態の場合には、フォトニック結晶ファイバを、ファイバ導波路と一緒に束ねるのとは別にまたはそれに加えて、ガス(例えば、血液凝固のための高温ガス)を供給し、標的部位でゴミを吸引するためのチューブと一緒に束ねることができる。
【0200】
例えば、図9を参照すると、システム900において、フォトニック結晶ファイバ910は、ファイバの出力端部のところでフォトニック結晶ファイバのコア912から出てくる流体(例えば、冷却流体)を排出するためにチューブ930と一緒に結束される。図9のシステムは、レーザ920および結合アセンブリ924を介してフォトニック結晶ファイバのコア912に放射線および流体を供給する流体源926を含む。システムは、また、患者からチューブ930を通して既存のコア912から出てくる流体を吸い込むポンプを含む。
【0201】
ファイバ910の出力端部およびチューブ930の入力端部は、ファイバおよびチューブの端部を覆っているキャップ960により一緒に結合している。キャップ960は、レーザ920から供給される放射線の波長に対して実質的に透明な材料でできている窓962を含む。キャップ960は、窓962をコア912から出てくる放射線922の経路内に位置させ、システムが患者に放射線を供給することができるようにする。しかし、コア912から出てくる流体は、排気ポート964を通してチューブ942に吸い込まれる。チューブ930の対向端部に接続しているポンプ940は、チューブを通して患者から流体942を吸い込む。
【0202】
チューブ930およびフォトニック結晶ファイバ910の一部は、ジャケット950内で一緒に束ねられ、可撓性ダクトをハンドピース(例えば、内視鏡を含むハンドピース)内のチャネルを通してねじ込むことができる。
【0203】
システム900は、放射線で照射されている組織に流体(例えば、冷却流体)を放出するのが望ましくない処置で使用することができる。例えば、放射線が内部に供給される場合、排出した流体が有毒である場合、または望ましくない温度(例えば、露出した組織を火傷させるほどの高い温度)である場合には、組織が流体に触れるのを防止するために、排出チューブとフォトニック結晶ファイバとを一緒にすることができる。
【0204】
場合によっては、医療レーザ・システム内のハンドピースの代わりに、遠隔操作することができるロボットを使用することができる。例えば、患者(例えば、戦場で負傷した兵士)に外科医が容易にまたは迅速に近づくことができない場合には、ロボットによる外科手術が考慮の対象になる。
【0205】
フォトニック結晶ファイバは医療処置の際に使用されるので、フォトニック結晶ファイバは殺菌できるものでなければならない。例えば、フォトニック結晶ファイバは、オートクレーブ殺菌のような殺菌処置に耐えることができるものでなければならない。通常、数種類の長さのフォトニック結晶ファイバが、容器内に予め殺菌され密封されて(例えば、保管および出荷中に、ファイバの全長が汚染されるのを防止するのに十分なバリア特性を有する容器内に真空密封されて)ユーザに供給される。例えば、種々の長さ(例えば、約0.5メートル〜約2.5メートルの長さ)の殺菌されたフォトニック結晶ファイバを、プラスチック容器(例えば、バリア膜層を含む)に入れて密封状態(例えば、真空密封)で供給することができる。
【0206】
通常、上記レーザ・システムは、多数の異なる医療用途で使用することができる。通常、他のシステム・パラメータの中で、レーザのタイプ、波長、ファイバの長さ、ファイバの外径、およびファイバの内径が用途により選択される。医療用途としては、美容医療処置、外科医療処置、眼科処置、獣医処置および歯科処置等がある。
【0207】
美容処置としては、毛髪の除去;小さなしわのライン、日焼け、シミ、そばかす、ある種のアザ、酒さ、異常な色素沈着、毛細管の破損、良性茶色素および色素沈着を低減するためのパルス光による皮膚の治療;皮膚の再被覆;脚部静脈;脈管病変;色素性病変;座瘡;乾癬および白斑;および/または化粧色素沈着のための治療等がある。
【0208】
外科処置としては、婦人科、腹腔鏡検査、外性器のコンジロームおよび病変、および/または白斑症に対する処置等がある。また、外科的用途としては、レーザ援用口蓋垂口蓋形成(LAUP)(すなわち、いびきを止めるための);鼻の閉塞を除去するための処置;あぶみ骨切開;気管気管支内視鏡検査;扁桃切除;および/または良性喉頭病変の除去のような耳/鼻/喉(ENT)処置等がある。また、外科的用途としては、胸部生検、転移疾患のための膀胱整復、床ずれまたはうっ血性潰瘍(statis ulcers)の治療、痔核切除、腹腔鏡外科手術、乳房切除、および/または整復乳房形成等がある。また、外科処置としては、神経腫、爪の周囲、爪の下および足の底のいぼの治療、多孔角化腫(porokeratoma)の切除、および/または徹底的な爪の切除のような足治療の分野での処置等がある。レーザを使用することができる外科手術の他の分野としては、整形外科、泌尿器科学、胃腸病学、および胸部および肺の外科手術等がある。
【0209】
眼科用の用途としては、緑内障、老化によるシミの変質(AMD)、増殖性糖尿病性網膜症、若年性網膜症、網膜裂傷および剥離、網膜血管の閉塞の治療、および/または屈折誤差を低減または除去するための屈折外科治療等がある。
【0210】
獣医学の用途としては、小動物の処置および大型動物の処置の両方がある。
歯科の用途の例としては、硬組織、軟組織および歯内治療処置等がある。硬組織歯科処置としては、カリエス除去、腔形成およびレーザ・エッチング等がある。軟組織歯科処置としては、切開、切除および気化、gummy smileの治療、凝固(止血)、生えない歯の露出、アフタ潰瘍、歯肉形成、歯肉切除、歯冠印象のための歯肉のトルフ形成、インプラント露出、小帯切除、弁外科手術、繊維腫除去、弁蓋切除、膿瘍の切開および排膿、口腔乳頭切除(oral papilectomy)、歯肉肥大の整復、補綴前の外科手術、歯冠周囲炎、ペリ‐インプラント炎(peri implantitis)、口腔病変、およびsulcular壊死組織切除等がある。歯内治療処置としては、歯髄切除、歯根管壊死組織切除および清掃等がある。また、歯科の処置としては歯を白くする処置がある。
【0211】
通常、他のシステム・パラメータもあるが、レーザのタイプ、波長、ファイバの長さ、ファイバの外径、ファイバの内径が用途により選択される。例えば、レーザがCO2レーザである実施形態の場合には、切断、気化、切除、切開および軟組織の凝固を必要とする外科処置のためにレーザ・システムを使用することができる。CO2レーザ・システムは、美容専門分野(例えば、皮膚科および/または形成外科)、足の治療、耳鼻咽喉科(例えば、ENT)、婦人科(腹腔鏡検査を含む)、神経外科、整形外科(例えば、軟組織整形外科)、関節鏡検査(例えば、膝関節鏡検査)、一般的および胸部外科手術(開外科手術および内視鏡外科手術を含む)、歯科および口腔外科手術、眼科、泌尿器科外科手術、および獣医科外科手術を含む種々の医療専門分野で外科用途用に使用することができる。
【0212】
ある実施形態の場合には、CO2レーザ・システムは、レーザ皮膚再被覆、レーザ皮膚剥離、および/またはレーザ火傷壊死組織切除を行う際に、皮膚科学および/または形成外科手術中に、組織(例えば、軟組織)の切断、気化、切除、切開および/または凝固の場合に使用することができる。レーザ皮膚再被覆は(例えば、切除および/または気化による)、例えば、しわ、しわ皮および/またはくぼみ(細い線および肌理の凹凸を含む)の治療の際に使用することができる。レーザ皮膚再被覆は、角化症(日光性角化症を含む)、尋常性脂漏(seborrhoecae vulgares)、脂漏性いぼおよび/または脂漏性疣贅;口唇の赤唇切除;皮角;天日性/光化学作用性弾力線維症;口唇炎(光線性口唇炎を含む);ほくろ(悪性ほくろまたはハッチンソンの悪性そばかすを含む);不均一な色素沈着/色素異常;座創跡;外科手術跡、ケロイド(項部息肉性座創(acne keloidalis nuchae)を含む);血管腫(バッカル、ポートワインおよび/または化膿性肉芽腫/化膿性肉芽胞/血管拡張性肉芽腫を含む);入れ墨;毛細血管拡張症;皮膚腫瘍の除去(爪周囲および/または爪下線維腫を含む);表面の色素性病変;腺皮脂性肥大(adenosebaceous hypertrophy)および/または脂肪分泌増殖;酒さ鼻の整復;皮膚乳頭腫;稗粒腫;湿疹性および/または感染した皮膚の壊死組織切除;基底および有棘細胞癌(角化性棘皮細胞腫、ブラウン疾患、および/またはボウエノイド丘疹症病変部を含む);母斑(クモ、表皮性、および/または突出を含む);神経繊維腫;レーザ脱上皮化;トリコ上皮腫(tricoepitheliomas);眼瞼黄色板症;および/または汗管腫(syringoma)の整復、除去および/または治療に使用することができる。CO2レーザ・システムは、全体および/または部分的爪の基質切除(matrixectomy)のためのレーザ切除、気化および/または切除、皮膚障害の気化および/または凝固(例えば、良性および/または悪性血管および/または無血管の)、および/または脂肪除去のためのMohの外科手術のために使用することができる。他の例としては、上および/または下の瞼の瞼形成、および/または植毛のための収容場所の生成を行うための軟組織のレーザ切開および/または切除のためのレーザ・システム1300の使用を含む。
【0213】
ある実施形態の場合には、CO2レーザ・システムは、尋常性疣贅(verrucae vulgares)/足底のいぼ(爪郭炎、爪周囲および爪下いぼを含む);多孔角化腫(porokeratoma)の切除;内に延びる爪の治療;神経腫瘍/繊維腫(モートン神経腫を含む);潰瘍の壊死組織切除;および/または他の軟組織病変部の整復、除去および/または治療のための足病学の処置の際の軟組織のレーザ切断、気化および/または切除の際に使用することができる。CO2レーザ・システムは、また、全体および/または部分的基質切除のための足病学の際のレーザ切断、気化および/または切除のために使用することができる。
【0214】
CO2レーザ・システムは、後鼻孔閉鎖;白斑症(口腔、喉頭、口蓋垂、口蓋、上側咽頭組織を含む);鼻詰まり;成人および/または若年性乳頭腫ポリープ;鼻および/または鼻の通路のポリープ切除;リン管腫の除去;声帯/ひだ結節(cord/fold nodule)、ポリープおよび嚢腫の除去;口腔、鼻腔、喉頭、咽頭および気管内の再発乳頭腫の除去(口蓋垂、口蓋、上側咽頭組織、舌および声帯を含む);喉頭、咽頭、鼻、耳および口の構造および組織内のレーザ/腫瘍外科手術;ツェンカー憩室/咽頭食道憩室(例えば、内視鏡によるレーザ援用食道憩室切除);狭窄(声門下狭窄を含む);扁桃切除(扁桃cryptolysis、腫瘍を含む)および扁桃切除/扁桃切除;肺気管および気管支病変部の除去;良性および悪性小結節、腫瘍および繊維腫(例えば、喉頭、咽頭、気管、気管気管支/内気管支);良性および/または悪性病変部および/または繊維腫(例えば、鼻または鼻の通路);良性および/または悪性腫瘍および/または繊維腫(例えば、経口);あぶみ骨切開/あぶみ骨切除(stapedotomy/stapedectomy);耳内の音響神経腫;耳の表面病変部(慢性結節性軟骨皮膚炎を含む);喉頭、咽頭および/または気管(口蓋垂、口蓋、および/または上側咽頭組織を含む)の毛細血管拡張症/血管腫;声帯切除、コルドトミー(例えば、声帯麻痺/声帯ひだ運動障害の治療のための)、および/または喉頭、咽頭および/または気管のコード病変部(codal lesion);鼓膜切開(myringotomy)/鼓膜切除(例えば、鼓膜開窓術);口蓋垂口蓋形成(例えば、LAUP);鼻甲介切除および/または鼻甲介整復/切除;隔膜表面切除/整復および/または隔膜形成;部分舌切除;口、顔面および/または頸部組織の腫瘍切除;鼻形成;尋常性疣贅;および/または歯肉形成/歯肉切除の治療のための耳鼻咽喉学内の軟組織のレーザ切開、切除、切断および/または気化のために使用することができる。
【0215】
ある実施形態の場合には、CO2レーザ・システムは、子宮頸の円錐切除(conizaton)(子宮頸内上皮腫瘍、外陰および/または膣内上皮腫瘍を含む);尖圭コンジローマ(子宮頸、生殖、外陰、会陰(preineal)および/またはブラウン疾患および/またはボウエノイド丘疹症病変部を含む);白板症(例えば、外陰ジストロフィー);バルトリンおよび/またはnubuthian嚢胞の切開および排膿;ヘルペス気化;尿道カルンクル気化;子宮頸形成異常;良性および/または悪性腫瘍;および/または血管腫の治療ための婦人科の軟組織のレーザ切開、切除、切断および/または気化のために使用することができる。
【0216】
CO2レーザ・システムは、子宮内膜病変(子宮内膜炎の切除を含む);癒着の切除/溶解;卵管開口;卵巣摘出/卵巣切除;卵管采形成(fimbroplasty);子宮形成;管顕微鏡手術;子宮筋腫および/または類繊維腫;卵巣繊維腫および/または嚢腫状濾胞;子宮仙骨靭帯(uterosacral ligament)切断;および/または子宮摘出の治療のための婦人科腹腔鏡検査を含む内視鏡外科手術および/または腹腔鏡外科手術の際の軟組織の気化、切開、切除、切断および/または凝固のために使用することができる。
【0217】
ある実施形態の場合には、CO2レーザ・システムは、後部窩腫瘍;周辺神経切除;良性および/または悪性腫瘍および/または嚢腫(例えば、グリオーム(gliomos)、髄膜腫、聴覚神経腫、脂肪腫および/または大型腫瘍);動静脈奇形;および/または下垂体腺腫瘍を含む頭蓋症状の治療のための神経外科手術の際の軟組織のレーザ切開、切除、切断および/または気化のために使用することができる。ある実施形態の場合には、CO2レーザ・システムは、良性および/または悪性の腫瘍および/または嚢腫の切開/切除および気化;内部および/または外部二重病変;および/または椎弓切除/層切除/顕微鏡切除を含む脊髄症状の治療のための神経外科手術の際の軟組織のレーザ切開、切除、切断および/または気化のために使用される。
【0218】
CO2レーザ・システムは、関節鏡によるおよび/または一般的な外科手術を含む用途の整形外科手術の際の軟組織の切開、切除および/または気化のために使用することができる。関節鏡の用途は、menisectomy;軟骨腫;軟骨形成;靱帯解放(例えば、横靱帯解放);ひだの切除;および/または部分滑膜切除等がある。一般的な外科手術用途としては、傷部外傷の壊死組織切除;床ずれおよび/または糖尿潰瘍の壊死組織切除;顕微鏡手術;人工関節の修正;および/またはポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート)の除去等がある。
【0219】
CO2レーザ・システムは、また、内視鏡によるおよび/または開いたままの処置を含む一般的および/または胸部外科手術の際の軟組織の切開、切除、および/または気化のために使用することもできる。このような用途としては、床ずれによる潰瘍、鬱血、糖尿病およびほかの潰瘍の壊死組織切除;乳房切除;火傷の壊死組織切除;直腸および/または肛門痔核切除;胸部生検;整復乳房形成;転移疾患のための嚢腫整復;開腹および/または腹腔鏡用途;縦隔および/または胸部病変部および/または異常;皮膚タグ気化;アテローム;嚢腫(皮脂腺嚢腫、毛髪嚢腫、および/または唇の粘膜嚢腫を含む);毛巣嚢腫除去および/または修復;膿瘍;および/または他の軟組織用途などがある。
【0220】
ある実施形態の場合には、CO2レーザ・システムは、歯肉切除;歯肉形成;切開および/または切除生検;潰瘍病変(アフタ性潰瘍を含む)の治療;抗生物質治療と併用する場合の感染の切開;小帯切除;良性および/または悪性病変部の切除および/または切断;ホメオスタシス;蓋切除;歯冠の延長;軟組織、嚢腫および/または腫瘍の除去;口腔腫瘍および/または血管腫;膿腫;抽出部位の鬱血;唾液腺病理学;装着前ガム製剤(preprosthetic gum preparation);白斑症;部分舌切除;および/または歯根歯肉切除を含む、歯科および/または口腔外科手術の際の軟組織の切開、切除および/または気化のために使用することができる。
【0221】
ある実施形態の場合には、CO2レーザ・システムは、外性器の良性および/または悪性の病変;コンジローム;包茎;および/または紅色肥厚を含む尿生殖器処置の際の軟組織の切開、切除および/または気化のために使用することができる。
【0222】
例
10.6ミクロンで動作しているCO2レーザ・システムにより、犬から喉頭の一部を除去するために外科手術を行った。この処置の際に使用したフォトニック結晶ファイバは、直径約550ミクロンの中空のコアを備えていた。ファイバは、約20PES/As2Se3二層の半径プロファイルを含む螺旋状の閉じ込め領域を備えていた。二層の厚さは、約3ミクロンであり、約2:1(PES:As2SE3)の厚さ割当てを含んでいた。ファイバのクラッディングは、PESから形成し、ファイバの外径は約1500ミクロンであった。ファイバの長さは1.5mであった。
【0223】
声帯切除を含む完全な一括声門上喉頭切除を行った。半硬質ハンドピースを備えるフォトニック結晶ファイバによりレーザ放射線を供給した。ハンドピースを硬質喉頭鏡を通して挿入した。ファイバへの入力パワーは、約20ワットであった。ファイバから出る放射線パワーは約7ワットであった。ファイバを通して放射線と同じ方向に窒素を吹き込んだ。窒素の流速は約1リットル/分であった。
【0224】
放射線を、ファイバの先端部と標的組織との間の数ミリメートル(例えば、約5mm〜1cm)の隔離距離で標的組織に供給した。切開した血管を焼灼し、または標的領域から流出した血液を吸い取るために1回中断しただけで声門を除去した。最小の出血が観察され、切開した血管からの血液は、ファイバからの出力に触れると凝固した。処置には約45分かかったが、その間に声門および残りのコードを犬から除去した。
【0225】
追加の実施形態
本発明の多数の実施形態について説明してきた。しかし、本発明の精神および範囲から逸脱することなしに、種々の変更を行うことができることを理解されたい。それ故、他の実施形態も添付の特許請求の範囲内に入る。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】フォトニック結晶ファイバを含むレーザ医療システムのある実施形態の略図。
【図2A】フォトニック結晶ファイバのある実施形態の断面図。
【図2B】フォトニック結晶ファイバ用の閉じ込め領域のある実施形態の断面図。
【図2C】フォトニック結晶ファイバ用の閉じ込め領域のある実施形態の断面図。
【図2D】フォトニック結晶ファイバ用の閉じ込め領域のある実施形態の断面図。
【図3】非対称の断面を有するクラッディングを含むフォトニック結晶ファイバの断面図。
【図4A】フォトニック結晶ファイバの出力端部に取り付けられているスリーブのある実施形態の断面図。
【図4B】フォトニック結晶ファイバの出力端部に取り付けられているスリーブのある実施形態の断面図。
【図4C】フォトニック結晶ファイバの出力端部に取り付けられているスリーブのある実施形態の断面図。
【図4D】フォトニック結晶ファイバの出力端部に取り付けられているスリーブのある実施形態の断面図。
【図5A】放射線および流体をフォトニック結晶ファイバの中空のコア内に結合するための結合アセンブリの実施形態の図面。
【図5B】放射線および流体をフォトニック結晶ファイバの中空のコア内に結合するための結合アセンブリの実施形態の図面。
【図6】可鍛性導管を含むハンドピースの図面。
【図7A】フォトニック結晶ファイバを含むレーザ医療システムの他の実施形態の略図。
【図7B】内視鏡の図面。
【図7C】フォトニック結晶ファイバを含むレーザ医療システムのもう1つの実施形態の略図。
【図8】フォトニック結晶ファイバおよび第2のファイバ導波路を含む医療レーザ・システムの一部の略図。
【図9】フォトニック結晶ファイバおよびファイバから流体を排出するためのチューブを含む医療レーザ・システムの一部の略図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトニック結晶ファイバおよびフォトニック結晶ファイバを含む医療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願への相互参照)
米国特許法第119条第(e)項(1)により、本願は、2004年4月8日付けの「フォトニック結晶ファイバの用途」(PHOTONIC CRYSTAL FIBER APPLICATIONS)という名称の米国仮特許出願第60/560,458号;2004年4月9日付けの「フォトニック結晶ファイバの用途」(PHOTONIC CRYSTAL FIBER APPLICATIONS)という名称の米国仮特許出願第60/561,020号;2004年6月30日付けの「フォトニック結晶ファイバの用途」(PHOTONIC CRYSTAL FIBER APPLICATIONS)という名称の米国仮特許出願第60/584,098号;2004年11月16日付けの「フォトニック結晶ファイバの用途」(PHOTONIC CRYSTAL FIBER APPLICATIONS)という名称の米国仮特許出願第60/628,462号;2004年12月30日付けの「喉頭病学におけるCO2レーザを柔軟に供給するためのオムニガイド・フォトニック・バンドギャップ・ファイバ」(OMNIGUIDE PHOTONIC BANDGAP FIBERS FOR FLEXIBLE DELIVERY OF CO2 LASERS IN LARYNGOLOGY)という名称の米国仮特許出願第60/640,536号;および2005年3月4日付けの「フォトニック結晶ファイバ」(PHOTONIC CRYSTAL FIBERS)という名称の米国仮特許出願第60/658,531号の利益を主張する。上記すべての米国仮特許出願の内容は、参照により全体を本明細書に組み込むものとする。
【0003】
今日、レーザは多くの医療の分野で広く使用されている。例えば、レーザは、外科手術、獣医医学、歯科医学、眼科学および美容医療処置のような種々の医療分野で使用されている。
【0004】
これらの用途のうちの多くの用途においては、患者の標的領域にレーザからの放射線を供給するために光ファイバを使用している。従来の光ファイバは、電磁スペクトル(例えば、約2ミクロン以下の波長)の可視または近赤外線部分に波長を有する放射線に対する優れた導波路である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の光ファイバは、通常、比較的長い波長の高パワーのレーザ放射線を使用する用途には適していない。それ故、高パワー(例えば、約10ワット以上)、長い波長(例えば、約2ミクロンより長い)を供給する多くの医療レーザ・システムは、硬質の導管または自由空間を通して、レーザから標的までレーザ放射線を誘導する光学部品を含む関節付きのアームを使用してレーザを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
フォトニック結晶ファイバは、放射線源(例えば、レーザ)から患者の標的部位に放射線を誘導するために医療レーザ・システムで使用することができる。通常、フォトニック結晶ファイバは、コアにある放射線の波長を非常に効果的に封じ込めるコアを取り囲む領域を含む。これらのいわゆる閉じ込め領域は、無定型誘電体材料(例えば、ガラスおよび/またはポリマー)だけから形成することができ、比較的薄くても効果的な閉じ込めを行うことができる。それ故、フォトニック結晶ファイバは、非常に高パワーの放射線を導くことができる薄くて、可撓性ファイバを含むことができる。
【0007】
さらに、フォトニック結晶ファイバは、プリフォームから線引きすることができ、この線引き加工により、線引き加工を行わない他の導波路と比較すると、比較的安価に製造することができるファイバができる。また、ファイバ製造技術を使用すれば、かなり大量に製造することができ、例えば、1つのプリフォームから数千メートルのファイバを線引きすることができる。比較的短いプリフォームから非常に長いファイバへの線引き工程中の変換により、プリフォーム内に存在する所望の構造からすべての突起を効果的に除去することができ、損失が少なく、欠陥が少ないファイバができる。
【0008】
通常、第1の態様においては、本発明は、導波路軸に沿って延びるコア、およびコアを囲む誘電体閉じ込め領域を含むフォトニック結晶ファイバを含むシステムを特徴とする。誘電体閉じ込め領域は、フォトニック結晶ファイバの入力端部から出力端部に導波路軸に沿って放射線を誘導するように構成されている。システムは、また、フォトニック結晶ファイバに取り付けられているハンドピースを含む。この場合、ハンドピースによりオペレータは、患者の標的部位に放射線を向けるために出力端部の向きを制御することができる。
【0009】
システムの実施形態は、下記の機能および/または他の態様の機能のうちの1つまたは複数を含むことができる。
ハンドピースは内視鏡を含むことができる。内視鏡は可撓性導管を含むことができ、フォトニック結晶ファイバの一部は可撓性導管内のチャネルを通してねじ込まれる。内視鏡は、可撓性導管の一部を曲げるように構成されていて、それによりオペレータが出力端部の向きを変えることができる可撓性導管と機械的に結合しているアクチュエータを含むことができる。アクチュエータは、可撓性導管の曲がった部分の曲率半径が、約12センチメートル以下(例えば、約10センチメートル以下、約8センチメートル以下、約5センチメートル以下、約3センチメートル以下)になるように、可撓性導管の一部を曲げるように構成することができる。アクチュエータは、曲げ平面内で可撓性導管を曲げるように構成することができる。ハンドピースは、可撓性導管内でその導波路軸を中心にして、フォトニック結晶ファイバの向きを制御する目的で、誘電体閉じ込め領域の向きを維持するようにフォトニック結晶ファイバに取り付けることができる。ハンドピースとフォトニック結晶ファイバとの間のこの取り付けにより、動作ができる状態に維持しながらファイバが、約10度以上(例えば、約5度以上)捩れるのを防止することができる。内視鏡は、さらに、可撓性導管と結合している第1の部分を含む補助導管を含むことができる。この場合、フォトニック結晶ファイバは、補助導管内のチャネルを通して可撓性導管のチャネル内にねじ込まれる。補助導管は、さらに、第1の部分に対して移動することができる第2の部分を備える。この場合、フォトニック結晶ファイバは、第2の部分に取り付けられ、第2の部分を移動することにより、オペレータは可撓性導管の端部に対して出力端部を延ばしたり、縮めたりすることができる。第2の部分は、第1の部分に対して延ばしたり、縮めたりすることができる。補助導管は、硬質の導管であってもよい。
【0010】
ある実施形態の場合には、ハンドピースは、導管を含んでいて、フォトニック結晶ファイバの一部は導管を通してねじ込まれる。導管は曲がった部分を含むことができる。導管は変形可能な材料から形成することができる。ハンドピースは、さらに導管の一部を曲げるように構成されていて、それによりオペレータが出力端部の向きを変えることができる導管と機械的に結合しているアクチュエータを含むことができる。
【0011】
ハンドピースは、出力端部と標的部位との間に約1ミリメートル以上の最小の隔離距離を形成する出力端部を通して延びる先端部を含むことができる。
フォトニック結晶ファイバは、標的部位に放射線を誘導するために十分柔軟なものであってもよい。一方、フォトニック結晶ファイバの一部は、約90度以上の角度で曲がり、この部分の曲率半径は約12センチメートル以下である。放射線は、出力端部のところで約1ワット以上の平均パワーを有することができ、一方、フォトニック結晶ファイバの一部は、約90度以上の角度で曲がり、この部分の曲率半径は約12センチメートル以下である。放射線は、出力端部のところで約5ワット以上の平均パワーを有することができ、一方、フォトニック結晶ファイバの一部は、約90度以上の角度で曲がり、この部分の曲率半径は約12センチメートル以下である。フォトニック結晶ファイバは、標的部位に放射線を誘導するために十分柔軟なものであってもよい。一方、フォトニック結晶ファイバの一部は、約90度以上の角度で曲がり、この部分の曲率半径は約10センチメートル以下(例えば、約5センチメートル以下)である。
【0012】
誘電体閉じ込め領域は、導波路軸の周囲に螺旋状に巻かれた第1の誘電体材料の層を含むことができる。誘電体閉じ込め領域は、さらに、導波路軸の周囲に螺旋状に巻かれた第2の誘電体材料の層を含むことができ、第2の誘電体材料は、第1の誘電体材料とは異なる屈折率を有する。第1の誘電体材料は、ガラス(例えば、カルコゲニド・ガラス)であってもよい。第2の誘電体材料はポリマーであってもよい。誘電体閉じ込め領域は、カルコゲニド・ガラスの少なくとも1つの層を含むことができる。誘電体閉じ込め領域は、ポリマー材料の少なくとも1つの層を含むことができる。ある実施形態の場合には、誘電体閉じ込め領域は、導波路軸に沿って延びる第1の誘電体材料の少なくとも1つの層、および導波路軸に沿って延びる第2の誘電体材料の少なくとも1つの層を含む。この場合、第1および第2の誘電体材料は、第1の誘電体材料と一緒に線引きすることができる。
【0013】
コアは中空のコアであってもよい。システムは、さらに、入力端部または出力端部と結合している流体源を含むことができる。この場合、動作中、流体源は、コアを通して流体を供給する。流体はガスであってもよい。
【0014】
コアは、約1,000ミクロン以下(例えば、約500ミクロン以下)の直径を有することができる。フォトニック結晶ファイバは、出力端部に約2,000ミクロン以下の外径を有することができる。
【0015】
ある実施形態の場合には、システムは、さらに、光導波路および光導波路をフォトニック結晶ファイバに取り付けるコネクタを含む。光導波路は、第2のフォトニック結晶ファイバであってもよい。また、システムは、光導波路を囲む導管を含むことができる。導管は、光導波路より硬質のものであってもよい。システムは、導管と結合している流体源を含むことができる。この場合、動作中、流体源は導管に流体を供給する。
【0016】
システム、さらに、放射線を生成し、それをフォトニック結晶ファイバの入力端部の方向に向けるレーザを含むことができる。レーザはCO2レーザであってもよい。放射線は、約2ミクロン以上の波長を有することができる。ある実施形態の場合には、放射線は約10.6ミクロンの波長を有する。
【0017】
ある実施形態の場合には、システムは、さらに、補助放射線源およびフォトニック結晶ファイバと機械的に結合している少なくとも1つの追加のファイバを含む。追加の導波路は、補助放射線源から標的部位に補助放射線を供給するように構成されている。追加のファイバは、ハンドピースによりフォトニック結晶ファイバに機械的に結合することができる。補助放射線源は、放射線をフォトニック結晶ファイバの入力端部に向けるように位置するレーザとは異なる第2のレーザであってもよい。第2のレーザは、Nd:YAGレーザ、ダイオード・レーザまたはパルス・ダイ・レーザであってもよい。補助放射線は、電磁スペクトルの可視部分内の波長を有することができる。
【0018】
フォトニック結晶の少なくとも一部は殺菌することができる。
通常、他の態様においては、本発明は、導波路軸に沿って延びるコアを含む所定の長さのフォトニック結晶ファイバと、コアを囲む誘電体閉じ込め領域を含む物品を特徴とする。誘電体閉じ込め領域は、フォトニック結晶ファイバの入力端部から出力端部に導波路軸に沿って放射線を誘導するように構成されている。この場合、フォトニック結晶ファイバの全長は殺菌される。
【0019】
この物品は、さらに、フォトニック結晶ファイバの全長を含む密封パッケージを含むことができる。この物品の実施形態は、他の態様の機能のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0020】
通常、他の態様においては、本発明は、放射線をフォトニック結晶ファイバの入力端部に向けるステップと、フォトニック結晶ファイバの出力端部の向きを制御し、出力端部から放射された放射線を患者の標的部位に向けるために、フォトニック結晶ファイバに取り付けられているハンドピースを使用するステップとを含む方法を特徴とする。この方法の実施形態は、他の態様の1つまたは複数の機能を含むことができる。
【0021】
通常、他の態様においては、本発明は、フォトニック結晶ファイバを通して患者の標的部位に放射線を向けるステップを含む方法を特徴とする。フォトニック結晶ファイバは、中空のコアを有し、流体は中空のコアを通して患者の標的部位に流れる。
【0022】
この方法の実施形態は、下記の機能および/または他の態様の機能のうちの1つまたは複数を含むことができる。
放射線は、標的部位のところで組織を切開し、切除し、または切断するのに十分なパワーを有することができる。流体は、標的部位のところで血液を凝固するだけの十分な圧力および温度を有することができる。
【0023】
この方法は、放射線および流体を標的部位に向けながら、フォトニック結晶ファイバを曲げるステップを含むことができる。ファイバを曲げるステップは、曲率半径が約12センチメートル以下になるように、約45度以上にファイバの一部を曲げるステップを含むことができる。
【0024】
標的部位に放射線および流体を向けるステップは、フォトニック結晶ファイバに取り付けられているハンドピースの一部を保持するステップと、ハンドピースにより出力端部の向きを制御するステップとを含むことができる。
【0025】
流体は、ガス、液体または超流体であってもよい。流体がガスである実施形態の場合には、ガスは、出力端部のところで約3.5kPa(0.5PSI)以上(例えば、約6.9kPa(1PSI)以上)の圧力を有することができる。ガスは、標的部位のところで約50℃以上(例えば、約80℃以上)の温度を有することができる。ガスは空気であってもよい。ガスは、二酸化炭素、酸素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、またはキセノンを含むことができる。ガスは、実質的に純粋なガスであってもよい。例えば、ガスは、約98%以上の単一成分ガスを含むことができる。別の方法としては、ある実施形態の場合には、ガスはガスの混合物である。
【0026】
流体は、約1リットル/分以上(例えば、約2リットル/分以上、約5リットル/分以上、約8リットル/分以上)の速度で中空のコア内に流入することができる。
放射線は、約2ミクロン以上(例えば、約10.6ミクロン)の波長を有することができる。放射線は、標的部位のところで約1ワット以上の平均パワーを有することができる。
【0027】
通常、他の態様においては、本発明は、導波路軸に沿って延びるコアを含むフォトニック結晶ファイバ、およびコアを囲んでいて、放射線を導波路軸に沿ってフォトニック結晶ファイバの入力端部から出力端部へ導くように構成されている誘電体閉じ込め領域を、放射線がスリーブを通過して一次開口部を通ってスリーブから出ることができるようにフォトニック結晶ファイバの出力端部と結合していて、さらに、スリーブ内に流入したガスが二次開口部を通してスリーブから出るように位置する1つまたは複数の二次開口部を有するスリーブを含む装置を特徴とする。
【0028】
この装置の実施形態は、下記の機能および/または他の態様の機能のうちの1つまたは複数を含むことができる。
スリーブ内に流入したガスは、二次開口部のほかに一次開口部を通してスリーブから出ることができる。この装置は、さらに、スリーブを通過する際に放射線を実質的に放射する一次開口部および二次開口部との間に位置する透明な素子を含むことができる。透明な素子は、一次開口部を通してスリーブからガスが出るのを実質的に防止することができる。透明な素子はZnSeを含むことができる。
【0029】
この装置は、さらに、二次開口部を通してスリーブから出るガスが、導管の入力端部内に吸い込まれるように二次開口部に対して位置する導管を含むことができる。
二次開口部は、一次開口部の近くに設置することができる。一次開口部は、出力端部のところのフォトニック結晶ファイバの外径より小さい直径を有することができる。この装置は、さらに、スリーブを通過する放射線の焦点を結ぶためにスリーブに取り付けられている焦点素子を含むことができる。別の方法としては、または追加として、この装置は、スリーブを通過する放射線を反射するためにスリーブに取り付けられている反射素子を含むことができる。
【0030】
通常、他の態様においては、本発明は、放射線源からの放射線を受光するように構成されている放射線入力ポート、および放射線をフォトニック結晶ファイバと結合するように構成されている出力ポートを含むアセンブリを含む装置を特徴とする。このアセンブリは、さらに、フォトニック結晶ファイバと結合する前に、放射線源から受光した放射線の偏光状態を修正するために位置する位相差素子を含む。
【0031】
この装置の実施形態は、下記の機能および/または他の態様の機能のうちの1つまたは複数を含むことができる。
このアセンブリは、さらに、ガス源からガスを受け取るように構成されているガス入力ポートを含むことができる。フォトニック結晶ファイバは、中空のコアを有することができる。出力ポートは、さらに、ガス源から受け取ったガスをフォトニック結晶ファイバの中空のコアに結合するように構成することもできる。この装置はガス源を含むことができる。
【0032】
位相差素子は、反射型位相差素子であってもよい。この装置は、放射線源を含むことができる。この場合、放射線源からの放射線は、波長λの放射線を含む。反射型位相差素子は、ミラーおよびミラーの表面に配置された約λ以下の光学的厚さを有する位相差層を含むことができる。位相差層は、ミラーの表面への法線に対して約45度の方向に沿って約λ/4の光学的厚さを有することができる。λは約2ミクロン以上であってもよい。例えば、λは約10.6ミクロンであってもよい。
【0033】
放射線素子は、透過型位相差素子であってもよい。
位相差素子は、実質的に直線状の偏光状態から実質的に非直線状の偏光状態に放射線の偏光状態を修正することができる。実質的に非直線状の偏光状態は、実質的に円偏光状態であってもよい。
【0034】
アセンブリは、さらに、出力ポートの近くのウェストのところに、放射線入力ポートのところでアセンブリに入る放射線の焦点を結ぶように構成されている焦点素子を含むことができる。焦点素子は、約1,000ミクロン以下(例えば、約500ミクロン以下)のウェストの直径に放射線の焦点を結ぶことができる。焦点素子はレンズであってもよい。レンズはZnSeを含むことができる。
【0035】
この装置は、さらに、フォトニック結晶ファイバを含むことができる。
通常、他の態様においては、本発明は、レーザから放射した放射線の偏光状態を修正するステップと、修正した偏光状態を有する放射線を、中空のコアを有するフォトニック結晶ファイバの入力端部内に向けるステップと、ガス源からのガスを中空のコアの入力端部内に結合するステップとを含む方法を特徴とする。
【0036】
この方法の実施形態は、この機能または他の態様のうちの1つまたは複数を含むことができる。
通常、他の態様においては、本発明は、光導波路が中空のコアを有している場合に、患者の組織に光導波路を通して放射線を誘導するステップと、放射線を誘導しながら組織にガスを向けるステップとを含む方法を特徴とする。この場合、放射線およびガスは、組織を切り取る(例えば、切除するまたは切断する)のに十分なものであり、流れた血液を実質的に凝固するのに十分なものである。
【0037】
通常、さらに他の態様においては、本発明は、レーザ、中空のコアを有する光導波路、送出装置、組織にガスを供給するように構成されているガス源(例えば、ガスのシリンダ、コンプレッサ、ブロワ)を含む医療レーザ・システムを特徴とする。この場合、動作中、レーザからの放射線およびガス源からのガスは患者の組織に供給され、放射線およびガスは組織を切開し、流れた血液を実質的に凝固するのに十分なものである。
【0038】
通常、他の態様においては、本発明は、出力端子を有するレーザ、出力端子が放射した放射線を受け入れるように構成されている入力端部および出力端部を有するフォトニック結晶ファイバ、およびオペレータが出力端部から放射した放射線を標的組織に向けることができるようにする送出装置を含むシステムを特徴とする。
【0039】
通常、他の態様においては、本発明は、CO2レーザ、内視鏡、およびフォトニック結晶ファイバを含むシステムを特徴とする。この場合、動作中、フォトニック結晶ファイバは、CO2レーザからの放射線を内視鏡を通して標的組織に誘導する。
【0040】
通常、他の態様においては、本発明は、ガスおよび放射線をファイバの中空のコアの一方の端部に結合するカプラを特徴とする。
本発明の実施形態は、下記の機能のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0041】
ガスは光導波路の中空のコアを通して供給することもできるし、またはガスは中空のコアから独立しているチューブを通して組織に供給することもできる。放射線は、レーザ(例えば、CO2レーザ)から供給することができる。レーザは、約5ワット以上(例えば、約10ワット以上、約15ワット以上、約20ワット以上、約50ワット以上、約100ワット以上)の出力パワーを有することができる。組織に供給された放射線は、光導波路の先端部で測定した場合、約1ワット以上(例えば、約2ワット以上、5ワット以上、8ワット以上、10ワット以上、約20ワット以上、約50ワット以上)のパワーを有することができる。放射線は、約10.6ミクロンの波長を有することができる。ガスは、約1リットル/分以上(例えば、約2リットル/分以上、約5リットル/分以上、約8リットル/分以上、約10リットル/分以上、約12リットル/分以上、約15リットル/分以上、約20リットル/分以上)の流速を有することができる。
【0042】
中空のコアから出るガスの圧力は、比較的高くてもよい。例えば、ファイバから出るガス圧は、約500μmのコア直径を有する1メートルの長さのファイバを通して、約1リットル/分以上(例えば、約2リットル/分以上、約5リットル/分以上、約8リットル/分以上、約10リットル/分以上、約12リットル/分以上、約15リットル/分以上、約20リットル/分以上)の流速に対応することができる。
【0043】
ガスは、空気、窒素、酸素、二酸化炭素または希ガス(例えば、He、Ne、Ar、Krおよび/またはXe)を含むことができる。ガスは、実質的に1つだけの化合物(例えば、約98%以上、約99%以上、約99.5%以上、約99.8%以上、約99.9%以上の1つの化合物)を含むことができる。別の方法としては、ある実施形態の場合には、ガスは、異なる化合物(例えば、空気)の混合物を含むことができる。
【0044】
この方法は、さらに、放射線により組織を切除するステップを含むことができる。光導波路は、フォトニック結晶ファイバ(例えば、ブラッグ・ファイバ)であってもよい。ガスは、組織のところで約50℃以上(例えば、約60℃以上、約70℃以上、約80℃以上、約90℃以上、約100℃以上)の温度を有することができる。この方法は、さらに、組織に放射線を供給しながら、ファイバを曲げるステップを含むことができる。ファイバの曲がりは、約12cm以下(例えば、約10cm以下、約8cm以下、約7cm以下、約6cm以下、約5cm以下、約4cm以下、約3cm以下、約2cm以下)の曲率半径を有することができる。
【0045】
いくつかの参照文献は、参照により本明細書に組み込むものとする。競合した場合、本出願が優先する。
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細を添付の図に示し以下に説明する。説明を読み、図面を見、特許請求の範囲を読めば、本発明の他の特徴および利点を理解することができるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
いくつかの図面内の類似の参照番号は類似の要素を示す。
図1を参照すると、医療レーザ・システム100は、CO2レーザ110、およびレーザからの放射線112を患者の標的部位99に誘導するための中空のコアを有するフォトニック結晶ファイバ120を含む。放射線112は、10.6ミクロンの波長を有する。レーザ放射線112は、結合アセンブリ130によりフォトニック結晶ファイバ120の中空のコア内に結合され、フォトニック結晶ファイバは、放射線をハンドピース140を通して標的部位99に供給する。使用中、オペレータ(例えば、外科医、歯科医、眼科医または獣医のような医療実務者)は、ハンドピース140の一部142を握り、標的部位に治療行為を行うために、フォトニック結晶ファイバ120の出力端部から放射されたレーザ放射線113を標的部位99に向けるためのハンドピースを操作する。例えば、放射線は、標的部位のところの組織を切除し、切開し、切断しまたは蒸発させるために使用することができる。
【0047】
CO2レーザ110は、システムの動作パラメータを設定し、表示するために電子コントローラ150により制御される。オペレータは、フットペダルのような遠隔制御装置152によりレーザ放射線の供給を制御する。ある実施形態の場合には、遠隔制御装置は、ハンドピース140の構成要素であり、オペレータは、片方の手または両方の手で、放射されたレーザ放射線の向き、レーザ放射線の供給を制御することができる。
【0048】
グリップ部分142の他に、ハンドピース140は、ファイバ120の出力端部および標的組織99の間に所望の間隔(例えば、約0.1ミリメートル〜約30ミリメートル)を維持する独立している先端部144を含む。独立している先端部により、オペレータは、標的部位99からのフォトニック結晶ファイバ120の出力端部を容易に位置決めすることができ、標的部位のところのゴミによる出力端部の詰まりを軽減することもできる。ある実施形態の場合には、ハンドピース140は、ファイバから放射されたビームを所望のスポットサイズになるように焦点を合わせる、光学部品(例えば、1つまたは複数のレンズ)を含む。焦点を合わせたビームのウェスト部分を、独立している先端の遠位端にまたはその近くに位置させることができる。
【0049】
ある実施形態の場合には、ファイバ120は、(例えば、従来の光ファイバ・コネクタにより)結合アセンブリ130およびハンドピース140に容易に取り付けたり、取り外したりすることができる。これにより、各処置の後でファイバを交換する使い捨て用途の場合にシステムを容易に使用することができる。
【0050】
通常、CO2レーザ110は、10.6ミクロンで、約5ワット〜約80ワット(例えば、約10ワット以上、約20ワット以上)の平均出力パワーを有する。多くの用途の場合、システムが意図する機能を行うには約5ワット〜約30ワットのレーザパワーで十分である。例えば、システム100を組織を切除または切開するために使用する場合には、放射線は小さなスポット・サイズに閉じこめられ、この範囲内の平均出力パワーを有するレーザで十分である。
【0051】
しかし、ある実施形態の場合には、レーザ110は、約100ワット以上(例えば、最高約500ワット)の出力パワーを有することができる。例えば、比較的広い領域(例えば、数平方ミリメートルまたは数平方センチメートル)上の組織を気化するためにシステム100を使用する場合には、非常に高いパワーのレーザが望ましい場合がある。
【0052】
フォトニック結晶ファイバは、比較的高い効率でレーザ110から標的部位に放射線を供給することができる。例えば、ファイバの平均出力パワーは、ファイバ入力エネルギーの約50%以上(例えば、約60%以上、約70%以上、約80%以上)であってもよい。それ故、ファイバの出力パワーは、約3ワット以上(例えば、約8ワット以上、約10ワット以上、約15ワット以上)であってもよい。しかし、ある実施形態の場合には、ファイバからの平均出力パワーは、レーザパワーの50%未満であってもよく、それでも目的とする処置を行うのには十分高い。例えば、ある実施形態の場合には、ファイバ平均出力パワーは、レーザ平均出力パワーの約20%〜約50%であってもよい。
【0053】
フォトニック結晶ファイバ120の長さは、必要に応じて変えることができる。ある実施形態の場合には、ファイバの長さは、約1.2メートル以上(例えば、約1.5メートル以上、約2メートル以上、約3メートル以上、約5メートル以上)である。この長さは、通常、レーザ・システムが使用される特定の用途により異なる。レーザ110を患者の近くに設置することができる用途の場合には、および/またはその用途のために所望するハンドピースの運動範囲が比較的狭い場合には、ファイバの長さは、比較的短くすることができる(例えば、約1.5メートル以下、約1.2メートル以下、約1メートル以下)。ある用途の場合には、ファイバ120の長さは、非常に短くすることができる(例えば、約50センチメートル以下、約20センチメートル以下、約10センチメートル以下)。例えば、システムが、ある他の手段(例えば、異なる導波路または関節付きアーム)によりレーザからファイバに放射線を供給することができる処理の場合には、非常に短いフォトニック結晶ファイバが役に立つ場合もある。例えば、鼻および耳の処置の場合には、非常に短いファイバが役に立つ場合がある。
【0054】
しかし、患者の近傍にレーザを設置するのが難しい場合および/またはハンドピースを広い範囲内で移動しなければならない場合、ファイバの長さは、もっと長くなる(例えば、約2メートル以上、約5メートル以上、約8メートル以上)。例えば、多数の医療実務者が患者の近傍にいる必要がある外科手術の場合には、(例えば、手術室または全く異なる室内のコーナーの)手術台から離れた場所にレーザを設置するのが望ましい場合がある。このような場合には、もっと長いファイバが望ましい場合がある。
【0055】
通常、フォトニック結晶ファイバ120は柔軟なものであり、その性能に有意な影響を与えないで(例えば、ファイバに故障を起こさないで、またはファイバが曲がっている場合、その目的とする使用のためにシステムを使用することができないレベルへのファイバの透過性を低減しないで)比較的広い角度範囲内で比較的小さな曲率半径で曲げることができる。ある実施形態の場合には、オペレータは、依然としてシステムがその機能を行う標的部位に十分なパワーを供給しながら、約15cm以下(例えば、約10cm以下、約8cm以下、約5cm以下、約3cm以下)のような比較的小さな曲率半径になるようにフォトニック結晶ファイバ120を曲げることができる。
【0056】
通常、ファイバが曲がる角度は変えることができ、通常、行う処置により異なる。例えば、ある実施形態の場合には、約90度以上(例えば、約120度以上、約150度以上)の角度範囲でファイバを曲げることができる。
【0057】
オペレータがフォトニック結晶ファイバ120を曲げたことによる送信パワーの損失は比較的小さい。通常、曲げによる損失は、例えば、故障を起こすようなファイバに有意な損傷を与えるものであってはならないし、またはファイバの出力パワーを、システムがもはやそれを設計した機能を行うことができないようなレベルに低減するものであってはならない。フォトニック結晶ファイバ120(例えば、長さ約1メートル以上)は、約5センチメートル以下の曲げ半径で90度の角度範囲で曲げることができ、誘導された波長でファイバに結合された放射線の約30%以上(例えば、約50%以上、約70%以上)を依然として伝送することができる。これらのファイバは、このような伝送特性を提供することができ、約3ワット以上(例えば、約5ワット以上、約8ワット以上、約10ワット以上)の平均出力パワーを供給することができる。
【0058】
ファイバ120の出力端部から放射したレーザ放射線のビームの品質は、比較的優れている。例えば、ビームは、約4以下(例えば、約3以下、約2.5以下、約2以下)のような低いM2値を有することができる。M2は、レーザ・ビームの品質を記述する際に通常使用されるパラメータである。この場合、約1のM2値は、完全なガウス・プロファイルを有するレーザから放射されたTEM00ビームに対応する。M2値は、下式によるビームから形成することができる最小スポット・サイズに関連する。
【0059】
【数1】
ここで、dsは最小スポット直径であり、dbは焦点距離がfであるレンズによりスポットに焦点を結ぶ前のビーム直径である。それ故、ビームが焦点を結ぶことができる可能な最小スポット・サイズは、ビームのM2値に比例する。実際には、もっと小さなM2値を有するビームは、スポット・サイズが小さくなったために組織の周囲への損傷を少なくして、標的領域にもっと高い放射線パワー密度を供給することができる。
【0060】
標的組織にフォトニック結晶ファイバ120が供給する放射線のスポット・サイズは、比較的小さい。例えば、ある実施形態の場合には、スポットは、ファイバの出力端部(例えば、約0.1mm〜約3mm)から所望の使用距離のところで、約500ミクロン以下(例えば、約300ミクロン以下、約200ミクロン以下、約100ミクロン以下)の直径を有することができる。すでに説明したように、組織を切除または切開するためにシステム100を使用する場合、または放射線を供給する際にかなりの精度が所望される他の用途に使用する場合、小さいスポット・サイズが望ましい。別の方法としては、組織を除去または吸引する場合および/またはもっと低い精度レベルで十分な場合には、スポット・サイズを、比較的大きなスポット・サイズ(例えば、約2ミリメートル以上、約3ミリメートル以上、約4ミリメートル以上の直径を有する)とすることができる。
【0061】
レーザ110がCO2レーザである場合には、10.6ミクロン以外の波長で動作する他のタイプのレーザを使用する医療レーザ・システムでフォトニック結晶ファイバを使用することができる。通常、医療レーザ・システムは、紫外線(UV)、可視または赤外線(IR)波長で放射線を供給することができる。例えば、IR放射線を供給するレーザは、約0.7ミクロン〜約20ミクロン(例えば、約2〜約5ミクロン、または約8〜約12ミクロン)の波長を有する放射線を放射する。フォトニック結晶ファイバ120のような中空のコアを有する導波路は、約2ミクロン以上の波長を有するレーザ・システムと一緒に使用するのに適している。何故なら、コアを満たすガスは、多くの誘電体材料(例えば、シリカをベースとするガラス、および種々のポリマー)と比較すると、これらの波長のところの吸収が比較的低いからである。CO2レーザの他に、IR放射線を放射することができるレーザの他の例としては、Nd:YAGレーザ(例えば、1.064ミクロンの)、Er:YAGレーザ(例えば、2.94ミクロンの)、Er,Cr:YSGG(イットリウム・スカンジウム・ガリウム・ガーネットでドーピングしたエルビウム、クロム)レーザ(例えば、2.796ミクロンの)、Ho:YAGレーザ(例えば、2.1ミクロンの)、自由電子レーザ(例えば、6〜7ミクロンの範囲内の)、および量子カスケード・レーザ(例えば、3〜5ミクロンの範囲内の)等がある。
【0062】
通常、医療レーザ・システムで使用するレーザのタイプは、システムが設計された目的により異なる。レーザのタイプは、システムが、外科手術処置に使用されるのか、診断に使用されるのか、または生理学的研究に使用されるのかにより選択することができる。例えば、488nmおよび514nmのところに2つのエネルギー・ピークを有する可視光線スペクトルの青および緑の領域内で供給するアルゴン・レーザは、光凝固用に使用することができる。そのビームが可視光線スペクトル内に位置する活性媒体としての溶媒内に溶けている有機ダイを含むダイ・レーザは、光線力学的治療の際に使用することができる。エキシマ・レーザは、紫外線スペクトルで放射線を供給し、短い距離だけ組織を貫通し、組織を破壊するために熱を発生する代わりに、組織の分子の化学結合を破壊するために使用することができる。このようなレーザは、眼科処置およびレーザ血管形成の際に使用することができる。Ho:YAGレーザは、近赤外線スペクトルで放射線を供給することができ、光凝固および光除去用に使用することができる。クリプトン・レーザは、黄−赤可視光線スペクトル内で放射線を供給することができ、光凝固の際に使用することができる。KTPレーザからの放射線は、緑の可視光線スペクトル内で放射線を供給するために周波数を倍増することができ、光除去および光凝固用に使用することができる。Nd:YAGレーザは、光凝固および光除去用に使用することができる。パルス・ダイ・レーザは、それぞれ数マイクロ秒のオンおよびオフ段階で交互に動作する黄色の可視光線スペクトル(例えば、577nmまたは585nmの波長を含む)で供給するために使用することができ、色素で着色した損傷を脱色するために使用することができる。
【0063】
通常、レーザ・システムは、連続発振レーザまたはパルス・レーザを使用することができる。さらに、CO2レーザは、通常、約5ワット〜約100ワットの平均出力パワーで使用されるが、フォトニック結晶ファイバは、通常、種々のレーザ出力で使用することができる。例えば、あるシステムにおいては、平均レーザパワーをミリワットの範囲にすることができ、非常に高パワーのシステムの場合には、最大数百ワット(例えば、約200ワット以上)にすることができる。
【0064】
通常、高パワーシステムの場合には、ファイバ120により誘導される平均パワー密度は、非常に高い場合がある。例えば、ファイバ内またはファイバのコアから出るパワー密度は、約103W/cm2以上(例えば、約104W/cm2以上、約105W/cm2以上、約106W/cm2以上)である場合もある。
【0065】
図2Aを参照すると、通常、フォトニック結晶ファイバ120は、(図2Aの面に垂直な)導波路軸299に沿って延びる閉じ込め領域220により囲まれているコア210を含む。閉じ込め領域220は、機械的に支持し、コアおよび閉じ込め領域を環境災害から保護する、クラッディング230(例えば、ポリマー・クラッディング)により囲まれている。閉じ込め領域220は、コア210に波長λの放射線を実質的に閉じ込めるフォトニック結晶構造を含む。このような構造の例については、図2B〜図2Dを参照しながら以下に説明する。本明細書で使用する場合、フォトニック結晶は、フォトニック結晶でフォトニック・バンドギャップの幅を形成する屈折率変調(例えば、周期的屈折率変調)を含む構造(例えば、誘電体構造)を意味する。一次元屈折率変調を行うこのような構造の一例としては、高および低屈折率の誘電体層のスタックがある。この場合、この層は実質的に同じ光学的厚さを有する。本明細書で使用する場合、フォトニック・バンドギャップの幅は、誘電体構造でアクセスすることができる延長した状態が存在しない(すなわち、伝搬性で局所化されない)周波数の範囲を意味する。通常、構造は、周期的誘電体構造であるが、構造は、例えば、もっと複雑な「準結晶」を含むこともできる。バンドギャップの幅は、フォトニック結晶をバンドギャップの幅構造による「欠陥」領域と結合することにより、光を閉じ込め、誘導しおよび/または局所化するために使用することができる。さらに、バンドギャップの幅の上下の周波数に対してアクセスすることができる延長状態が存在し、光を(屈折率導波TIR構造とは対照的な)低屈折率領域にさえ閉じ込めることができる。「アクセスすることができる」状態という用語は、システムのある対象または保存の法則により結合がまだ禁止されていないこれらの状態を意味する。例えば、二次元システムの場合には偏光は保存されるので、類似の偏光状態だけをバンドギャップの幅から除外する必要がある。均一な断面(典型的なファイバなど)を有する導波路の場合には、波動ベクトルβが保存されるので、フォトニック結晶導波モードをサポートするには、所与のβの状態だけをバンドギャップの幅から除外する必要がある。さらに、円筒対称の導波路の場合には、「角運動量」指数mが保存されるので、同じmを含むモードだけをバンドギャップの幅から除外しさえすればよい。要するに、対称性の高いシステムの場合には、フォトニック・バンドギャップの幅に対する要件は、対称であってもすべての状態が除外される「完全な」バンドギャップの幅と比較するとかなり緩やかになる。
【0066】
理論的には、フォトニック結晶は、フォトニック結晶内の屈折率変調が無限の長さを有する場合だけ、バンドギャップの幅内の反射が完全に行われる。そうでない場合、入射放射線は、フォトニック結晶のどちらかの側面上で伝搬モードを結合する束の間のモードを介してフォトニック結晶を通して「トンネル」することができる。しかし、実際には、このようなトンネリングの速度は、フォトニック結晶の厚さ(例えば、交互層の数)が増大するにつれて指数的に低減する。また、上記トンネリングの速度は、閉じ込め領域内の屈折率コントラストの大きさが増大すると低減する。
【0067】
さらに、フォトニック・バンドギャップの幅は、伝搬ベクトルの比較的小さな領域だけを延びることができる。例えば、誘電体のスタックは、垂直に入射する光線に対しては高い反射性を有するが、斜めの入射光線の場合にはその一部しか反射しない。「完全なフォトニック・バンドギャップの幅」とは、すべての可能な波動ベクトルおよびすべての偏光上を延びるバンドギャップの幅である。通常、完全なフォトニック・バンドギャップの幅は、三次元に沿って屈折率変調を有するフォトニック結晶とだけ関連する。しかし、隣接する誘電体材料からフォトニック結晶上に入射するEM放射線の場合には、隣接する誘電体材料が伝搬EMモードをサポートするすべての可能な波動ベクトルおよび偏光に対するフォトニック・バンドギャップの幅である、「全方向フォトニック・バンドギャップの幅」も定義することができる。同様に、全方向フォトニック・バンドギャップの幅は、光のラインより上のすべてのEMモードに対するフォトニック・バンドギャップの幅として定義することもできる。この場合、光のラインは、フォトニック結晶に隣接する材料によりサポートされている最低周波数伝搬モードを定義する。例えば、空気中においては、光のラインはほぼω=cβで表すことができる。この場合、ωは放射線の角度周波数であり、βは波動ベクトルであり、cは光の速度である。米国特許第6,130,780号に全方向平面反射器が開示されている。この米国特許の全文は参照により本明細書に組み込むものとする。さらに、PCT出願WO 00/22466号公報に円筒状導波路の幾何学形状に(平面制限内で)全方向反射を行うための交互誘電体層の使用が開示されている。その全文は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0068】
閉じ込め領域220が、コア210に対して全方向バンドギャップの幅を形成すると、導波モードが強力に閉じ込められる。何故なら、原則的に、コアから閉じ込め領域上に入射するすべてのEM放射線を完全に反射するからである。しかし、すでに説明したように、このような完全な反射は、層の数が無限である場合にしか起こらない。層の数が有限(例えば、層の数が約20)である場合には、全方向フォトニック・バンドギャップの幅は、0度〜80度の範囲内のすべての入射角度および全方向バンドギャップの幅内の周波数を有するEM放射線のすべての偏光に対する少なくとも95%の平面配位の反射率に対応することができる。さらに、ファイバ120が全方向でないバンドギャップの幅を有する閉じ込め領域を有している場合でも、ファイバは、例えば、バンドギャップの幅内の周波数のある範囲に対して0.1dB/kmより小さい放射線損失を含むモードのような強力に誘導されたモードを依然としてサポートすることができる。通常、バンドギャップの幅が全方向であるかどうかは、(一般的に、2つの層の屈折率コントラストでスケーリングされる)交互層が形成するバンドギャップの幅の広さ、およびフォトニック結晶の最低の屈折率成分により決まる。
【0069】
フォトニック結晶ファイバ120の構造の場合には、通常、(図2Aに参照番号211で示す)コア210の直径は、システム100の最終使用用途により異なる。例えば、大きなスポット・サイズが所望される場合には、コアを比較的大きくすることができる(例えば、約1mm以上、約2mm以上)。別の方法としては、小さなスポット・サイズが所望される場合には、コアの直径211を遥かに小さくすることができる(例えば、約500ミクロン以下、約300ミクロン以下、約200ミクロン以下、約100ミクロン以下)。
【0070】
より一般的に言うと、ファイバ120を他のタイプのレーザを含むシステムで使用する場合には、および/または10.6ミクロン以外の波長を誘導するために使用する場合には、コアの直径は、ファイバにより誘導されるエネルギーの波長または波長範囲、およびファイバが単一モード・ファイバなのかまたは多モード・ファイバなのかにより異なる。例えば、ファイバが、可視波長(例えば、約400nm〜約800nmの範囲)を誘導するための単一モード・ファイバである場合には、コアの半径を、サブミクロンから数ミクロンの範囲(例えば、約0.5ミクロン〜約5ミクロン)にすることができる。しかし、例えば、ファイバがIR波長を誘導するための多モード・ファイバである場合には、コアの半径を、数十から数千ミクロンの範囲(例えば、約500ミクロン〜約1,000ミクロンのような約10ミクロン〜約2,000ミクロン)にすることができる。コアの半径を、約5λ以上(例えば、約10λ以上、約20λ以上、約50λ以上、約100λ以上)にすることができる。この場合、λは誘導したエネルギーの波長である。
【0071】
フォトニック結晶ファイバの利点は、小さなコア直径を有するファイバを容易に製造することができることである。何故なら、その構造の寸法を制御された方法で小さなサイズに低減しながら、ファイバの断面構造の相対的な割合を維持しながら、ファイバをプリフォームから線引きすることができることである。
【0072】
フォトニック結晶ファイバ120、コア220は中空である。別の方法としては、コアを通して流体を供給しない実施形態の場合には、コア220は、閉じ込め領域220を形成している材料と流動学的に相容性を有し、また誘導波長において十分高い透過特性を有する任意の材料または材料の組み合わせを含むことができる。ある実施形態の場合には、コア220は、無機ガラスまたはポリマーのような誘電体材料(例えば、無定型誘電体材料)を含む。ある実施形態の場合には、コア220は、2002年4月12日付けの「高屈折率コントラスト・ファイバ導波路および用途」(HIGH INDEX−CONTRAST FIBER WAVEGUIDES AND APPLICATIONS)という名称の米国特許出願第10/121,452号であり、現在のUS−2003−0044158−A1号公報に開示されているような1つまたは複数のドーパント材料を含むことができる。その全文は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0073】
クラッディング230は、ポリマー(例えば、アクリル酸塩またはシリコーン・ポリマー)または他の材料から形成することができる。クラッディング230は、以下に説明する閉じ込め領域220の一部としても使用される材料から形成することができる。クラッディングが患者と接触する用途の場合には、クラッディングを医療デバイスのためのFDA規格に適合する材料から形成することができる。これらの場合、例えば、シリコーン・ポリマーは、クラッディング材料として使用するのに特に適している。通常、クラッディング230は、ファイバを外部損傷から保護する。適当な厚さ、組成および/または構造を選択することにより、クラッディング230は、また、例えば、小さな曲率半径の曲げによる損傷を防止する目的で、ファイバの柔軟性を制限するように設計することもできる。
【0074】
通常、ファイバ120の厚さを変えることができる。厚さは、図2Aの外径(OD)231により表される。外径231は、ファイバ120が装置の他の部材と互換性を有するように選択することができる。例えば、ファイバが、内視鏡または他のツール内のチャネルを通り抜けることができるようにするために、外径231が十分小さくなるようにファイバ120を作ることができる(例えば、外径231は約2,000ミクロン以下であってもよい)。ある実施形態の場合には、ファイバ120は、比較的小さな外径(例えば、約1,000ミクロン以下)を有する。細いファイバは、患者の尿道を通す場合のような狭い空間内に挿入する場合に役に立つ場合がある。別の方法としては、ある実施形態の場合には、直径231は、比較的太くてもよい(例えば、約3,000ミクロン以上)。外径が大きいと、ファイバの機械的柔軟性が低減する恐れがあり、ファイバを損傷するか、その透過をシステムがもはやその意図する機能を行うことができないレベルまで低減するような小さな曲率半径にファイバが曲がるのを防止することができる。
【0075】
クラッディング230の他に、ファイバ200は、曲げ半径を制限するために追加の構成要素を含むことができる。例えば、ファイバは、その外径の周囲に螺旋状に巻かれている材料(例えば、螺旋状に巻いたワイヤ)を含むことができる。別の方法としては、または追加として、ファイバは追加の機械的支持を行うために追加のクラッディングを含むことができる。
【0076】
(すでに説明したように)ファイバは曲げることができるが、ある実施形態の場合には、それように設計された用途での通常の使用中、約20cm以下(例えば、約10cm以下、8cm以下、5cm以下)の曲率半径に曲がることができない。
【0077】
クラッディング材料は、ファイバが殺菌されるように選択することができる。例えば、クラッディング材料を、ファイバが高温(例えば、オートクレーブ内で受ける温度)に耐えることができるように選択することができる。
【0078】
ここで閉じ込め領域220の構造および組成について説明すると、ある実施形態の場合には、フォトニック結晶ファイバ120はブラッグ・ファイバであり、閉じ込め領域220は、高および低屈折率を有する複数の交互層を含む。この場合、高屈折率層および低屈折率層は類似の光学的厚さを有する。例えば、図2Bを参照すると、ある実施形態の場合には、閉じ込め領域220Aは、層212、213、214、215、216、217、218、219、222および223で示す、異なる屈折率を有する複数の環状誘電体層(すなわち、屈折率nHを有する高屈折率材料からなる層、および屈折率nLを有する低屈折率層からなる層)を含む。この場合、nH>nLであり、nH−nLは、例えば、約0.01以上、約0.05以上、約0.1以上、約0.2以上、約0.5以上であってもよい。便宜上、図2Bには、数個の誘電体閉じ込め層だけを示す。実際には、閉じ込め領域220Aは、多くの層(例えば、約15層以上、約20層以上、約30層以上、約40層以上、約50層以上、約80層以上)を含むことができる。
【0079】
ある実施形態の場合には、閉じ込め領域220は、コア210に対して全方向バンドギャップの幅を形成することができる。この場合、導波モードは強力に閉じ込められる。何故なら、原則的に、コアから閉じ込め領域に入射する任意のEM放射線は、完全に反射されるからである。しかし、このような完全な反射は、層の数が無限である場合に限って起こる。層の数が有限(例えば、約20層)である場合には、全方向フォトニック・バンドギャップの幅は、0度〜80度の範囲内のすべての入射角度および全方向バンドギャップの幅内の周波数を有するEM放射線のすべての偏光に対する少なくとも95%の平面配位の反射率に対応することができる。さらに、ファイバ120が全方向でないバンドギャップの幅を有する閉じ込め領域を有している場合でも、ファイバは、例えば、バンドギャップの幅内の周波数のある範囲に対して0.1dB/kmより小さい放射線損失を含むモードのような強力に誘導されたモードを依然としてサポートする。通常、バンドギャップの幅が全方向であるかどうかは、(通常、2つの層の屈折率コントラストでスケーリングされる)交互層が形成するバンドギャップの幅の広さおよびフォトニック結晶の最低の屈折率成分により決まる。
【0080】
しかし、全方向バンドギャップの幅の存在は、ファイバ120の役に立つ用途に対して必要ない場合がある。例えば、ある実施形態の場合には、ファイバ内に伝搬フィールドを確立するために使用するレーザ・ビームは、TEM00モードである。このモードは、高い効率で適当に設計されたファイバのHE11モードと結合することができる。それ故、レーザ・エネルギーの伝達のためにファイバをうまく使用するには、この1つのモードの損失を十分低くするだけでよい。より一般的に説明すると、ファイバは、多数の低損失モード(例えば、HE11モードおよびファイバの曲げのような単純な摂動からそれと結合するモード)だけをサポートすれば十分である場合がある。すなわち、フォトニック・バンドギャップの幅ファイバは、必ずしも全方向フォトニック・バンドギャップの幅を持たなくても、ファイバのモードのうちの1つまたはグループの損失を最小限度にするように設計することができる。
【0081】
平面誘電体リフレクタの場合には、垂直入射の場合、各層が等しい光学的厚さλ/4、または等価的にnhidhi=nlodlo=λ/4を有する「1/4波長」のスタックのための最大のバンドギャップの幅が入手されることは周知である。この場合、dhi/loおよびnhi/loは、それぞれ、スタック内の高屈折率層および低屈折率層の厚さおよび屈折率を示す。しかし、垂直入射は、β=0に対応する。一方、円筒状導波路の場合には、所望のモードは、通常、光のラインω=cβの付近に位置する(大きなRの制限内においては、最低次モードは、本質的には、z軸、すなわち導波路軸に沿って伝搬する平面波である)。この場合、1/4波長条件は下式のようになる。
【0082】
【数2】
この式は正確に最適なものではない。何故なら、1/4波長条件が、その半径座標に沿って滑らかに変化するように、各層の光学的厚さを必要とする円筒配位により修正されるからである。さらに、高屈折率材料および低屈折率材料の吸収が違うので、その1/4波長の値からの最適な層の厚さが変化する恐れがある。
【0083】
ある実施形態の場合には、閉じ込め領域220は、式2の1/4波長条件を満たさない層を含む。すなわち、図2Bの例の場合には、層212、213、214、215、216、217、218、219、222および223のうちの1つまたは複数は、dλ/4よりも厚かったり、薄かったりする。この場合、
【0084】
【数3】
であり、nは層の屈折率である(すなわち、dλ/4は1/4波長の厚さに等しい光学的厚さに対応する)。例えば、閉じ込め領域内の1つまたは複数の層は、約0.9dλ/4以下(例えば、約0.8dλ/4以下、約0.7dλ/4以下、約0.6dλ/4以下、約0.5dλ/4以下、約0.4dλ/4以下、約0.3dλ/4以下)の厚さを有することができ、または約1.1dλ/4以上(例えば、約1.2dλ/4以上、約1.3dλ/4以上、約1.4dλ/4以上、約1.5dλ/4以上、約1.8dλ/4以上、約2.0dλ/4以上)の厚さを有することができる。ある実施形態の場合には、閉じ込め領域内のすべての層は、1/4波長条件からずらすことができる。ある実施形態の場合には、高屈折率層のうちの1つまたは複数の厚さを、他の高屈折率層の厚さから(例えば、もっと厚くまたはもっと薄く)変えることができる。例えば、最も内側の高屈折率層の厚さを他の高屈折率層の厚さとは異なるものにすることができる。別の方法としては、または追加として、低屈折率層のうちの1つまたは複数の厚さを、(例えば、もっと厚くまたはもっと薄くして)他の低屈折率層の厚さとは異なるものにすることができる。例えば、最も内側の低屈折率層の厚さを他の低屈折率層の厚さとは異なるものにすることができる。
【0085】
1/4波長条件から閉じ込め領域内の層の厚さをずらすことにより、1/4波長条件が閉じ込め領域内のすべての層に対して満たされるという点を除けば、フォトニック結晶ファイバ120と同じファイバである試験ファイバと比較すると、フォトニック結晶ファイバ120の減衰を低減することができる(すなわち、試験ファイバは、同じコアを有し、その閉じ込め領域は、フォトニック結晶ファイバ120と同じ組成を有する同じ数の層を有する)。例えば、ファイバ120は、試験ファイバの減衰と比較すると、約2以上の係数で減衰する(例えば、約3以上、約4以上、約5以上、約10以上、約20以上、約50以上、約100以上の係数で減衰する)1つまたは複数の導波モード用の減衰を有することができる。2004年11月1日付けの「フォトニック結晶導波路およびこのような導波路を使用するシステム」(PHOTONIC CRYSTAL WAVEGUIDES AND SYSTEMS USING SUCH WAVEGUIDES)という名称の米国特許出願第10/978,605号に、少ない減衰を示すフォトニック結晶ファイバの例が記載されている。その全文は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0086】
閉じ込め領域内の各層の厚さは、フォトニック結晶ファイバの組成および構造により変化することができる。また、厚さも、フォトニック結晶ファイバが最適化される波長、モードまたはモードのグループにより変化することができる。各層の厚さは理論的および/または実験的方法により決めることができる。理論的方法としては、計算モデル化等がある。ある計算アプローチは、異なる層の厚さの場合のファイバの減衰を決定し、導波モードに対するファイバの減衰を最小にする層の厚さの値を決定するために、最適化ルーチン(例えば、非線形最適化ルーチン)を使用する。例えば、W.Press、S.Teukolsky、W.VetterlingおよびB.Flanneryのテキスト「FORTRANにおける数値レシピ(第二版)」(Numerical Recipes in FORTRAN(second edition))に記載の「ダウンヒル・シンプル法」(downhill simplex method)を最適化を行うために使用することができる。
【0087】
このようなモデルは、ファイバの異なる減衰機構を説明できるものでなければならない。導波EMモードからエネルギーを奪うことができる2つの機構は、吸収損失および放射損失によるものである。吸収損失は材料の吸収による損失を意味する。放射損失は、不完全な閉じ込めによるファイバから漏洩するエネルギーを意味する。損失の両方のモードは、ファイバ減衰を起こし、例えば、転送マトリックス法および摂動論により理論的に研究することができる。J.Opt.Soc.Am.,68の1196ページ(1978年)掲載のP.Yeh他の論文が、転送マトリックス法を記載している。Optics Express,10の1227ページ(2002年)掲載のM.Skorobogatiy他の論文が摂動論の説明を掲載している。特に、転送マトリックス・コードにより、フォトニック結晶ファイバ構造内で共鳴する「漏洩」モードの伝搬定数βが分かる。βの虚数部分は、モード放射損失、すなわちLossradiation〜Im(β)を定義する。材料吸収による損失は、摂動論の展開により計算され、モード・フィールド重なり積分により、下式で表すことができる。
【0088】
【数4】
ここで、ωは放射線周波数であり、rはファイバ半径であり、αは材料の総合吸収であり、
【0089】
【数5】
は電界ベクトルである。
【0090】
別の方法としては、ファイバ内を伝搬することができる所望のモード・フィールドは、B−スプライン関数のような適当な一組の関数で展開することができる(例えば、C.deBoorの、「スプライン関数への実用的手引き」(A Practical Guide to Splines)参照)。ガレルキン条件(例えば、C.A.J.Fletcherの、「計算ガレルキン法」(Computational Galerkin Methods)、Springer−Verlag(1984年)参照)のアプリケーションが、次に、マクスウェルの式を標準固有値−固有ベクトル問題に変換する。この問題は、LAPACKソフトウェア・パッケージ(例えば、「http://www.netlib.org」でインターネット上のnetlibリポジトリから無料で入手できる)により解くことができる。材料損失および放射損失の両方を含む所望の複雑な伝搬定数は、固有値から直接入手することができる。
【0091】
導波モードは、3つのタイプ、すなわち純横断電気(TE);純横断磁気(TM);および混合モードのうちの1つとして分類することができる。多くの場合、損失はモードのタイプにより異なる。例えば、TEモードは、TM/混合モードよりも低い放射および吸収損失を表すことができる。それ故、低い放射および/または吸収損失を被るモードを誘導するためにファイバを最適化することができる。
【0092】
閉じ込め領域220Aは、半径方向の屈折率変調を行う複数の環状層を含んでいるが、通常、閉じ込め領域は、また、閉じ込め特性を供給する他の構造を含むこともできる。例えば、図2Cを参照すると、閉じ込め領域220Bは、複数の個々の同心層とは反対の異なる屈折率を有する誘電体材料(例えば、ポリマー、ガラス)の連続層240および250を含む。連続層240および250は、軸299の周囲に螺旋を形成する。例えば、層240のような1つまたは複数の層は、屈折率nHおよび厚さdHを有する高屈折率層であり、例えば、層250のような層は、屈折率nLおよび厚さdLを有する低屈折率層である。この場合、nH>nLである(例えば、nH−nLは、約0.01以上、約0.05以上、約0.1以上、約0.2以上、約0.5以上であってもよい)。
【0093】
層240および250は軸199の周囲を螺旋状に巻いているので、軸199から延びる半径方向の断面は、層とそれぞれ2回以上交差し、交互に高屈折率層および低屈折率層を含む半径方向のプロファイルを形成する。
【0094】
閉じ込め領域220B内の螺旋状の層は、半径方向の断面に沿って屈折率の周期的な変化を起こし、この場合、周期は、層240および250の光学的厚さに対応する。通常、半径方向の周期的な変化は、n240d240+n250d250に対応する光学的周期を有する。
【0095】
層240および250の厚さ(d240およびd250)および光学的厚さ(n240d240およびn250d250)は、上記閉じ込め領域220Aのところで説明したのと同じ考慮に基づいて選択される。
【0096】
図2Cの実施形態の場合には、閉じ込め領域220Bは5光学的周期の厚さを有する。しかし、実際には、螺旋閉じ込め領域は、もっと多くの光学的周期(例えば、約8光学的周期以上、約10光学的周期以上、約15光学的周期以上、約20光学的周期以上、約25光学的周期以上、約40光学的周期以上)を含むことができる。
【0097】
螺旋状閉じ込め領域を有するファイバは、平面多層膜を螺旋状に巻き、螺旋の隣接する層を溶融(例えば、加熱による)により一緒に螺旋を固結することにより、螺旋状プリフォームから形成することができる。ある実施形態の場合には、平面多層膜をマンドレル(例えば、ガラス円筒またはロッド)の周囲に螺旋状に巻くことができ、螺旋状の円筒を供給するために、固結の後で(例えば、螺旋形の外装からマンドレルをエッチングまたは分離して、外装からマンドレルを引き出すことにより)マンドレルを取り外すことができる。マンドレルは、1つの材料から形成することができるし、または異なる材料の部分を含むこともできる。例えば、ある実施形態の場合には、マンドレルを、巻いた螺旋形構造の固結の後で取り外されない1つまたは複数の層でコーティングすることができる。一例を挙げて説明すると、マンドレルは、中空のロッドの形をしている第1の材料(例えば、珪酸ガラス)、および中空のロッドの外面にコーティングされている第2の材料(例えば、カルコゲニド・ガラスのような他のガラス)から形成することができる。第2の材料は、多層膜を形成するために使用した材料のうちの1つと同じものであってもよい。固結の後で、第1の材料はエッチングされ、第2の材料がファイバプリフォームの一部を形成する。
【0098】
ある実施形態の場合には、追加の材料を巻いた多層膜の外面上に堆積することができる。例えば、高分子膜を螺旋の外面の周囲に巻くことができ、その後で環状の高分子層(例えば、クラッディング)を形成するために螺旋に溶融することができる。ある実施形態の場合には、多層膜および付加膜の両方をマンドレルの周囲に巻き、1回の溶融ステップで固結することができる。ある実施形態の場合には、多層膜をマンドレルの周囲に巻いて固結し、次に付加膜を溶融した螺旋の周囲に巻き、第2の溶融ステップで固結することができる。第2の固結は、マンドレルのエッチングの前または後に行うことができる。そうしたい場合には、1つまたは複数の追加の層を、付加膜で巻く前に螺旋内に(例えば、CVDにより)堆積させることができる。
【0099】
2003年12月10日付けの「ファイバ導波路およびその製造方法」(FIBER WAVEGUIDES AND METHODS OF MAKING SAME)という名称の米国特許出願第10/733,873号に螺旋物品の製造方法が記載されている。その全文は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0100】
図2Dを参照すると、ある実施形態の場合には、フォトニック結晶ファイバ120は、螺旋状部分260および環状部分270を含む閉じ込め領域220Cを含むことができる。(ファイバ軸から半径方向に沿った)環状部分270および螺旋状部分260内の層の数は、必要に応じて変えることができる。ある実施形態の場合には、環状部分は1つの層を含むことができる。別の方法としては、図2Dに示すように、環状部分270は、複数の層(例えば、2つ以上の層、3つ以上の層、4つ以上の層、5つ以上の層、10以上の層)を含むことができる。
【0101】
環状部分270が2つ以上の層を含む実施形態の場合には、各層の光学的厚さは、環状部分内の他の層の厚さと同じであってもよいし、違っていてもよい。ある実施形態の場合には、環状部分270内の1つまたは複数の層は、1/4波長の厚さ(すなわち、式(2)が示す厚さ)に対応する光学的厚さを有することができる。別の方法としては、または追加として、環状部分270の1つまたは複数の層は、1/4波長の厚さとは異なる厚さを有することができる。層の厚さは、本明細書に開示する最適化方法により、誘導された放射線の減衰を低減する(例えば、最小にする)ために最適化することができる。
【0102】
ある実施形態の場合には、環状部分270は、フォトニック結晶ファイバ120により誘導された放射線を散乱および/または吸収する、欠陥の数が比較的少ない材料から形成することができる。例えば、環状部分270は、不均一および/または不純物の数が比較的少ない1つまたは複数のガラスを含むことができる。不均一および不純物は、例えば、光学的または電子顕微鏡により識別することができる。フォトニック結晶ファイバの不均一および/または不純物を監視するために、ラマン分光分析法、グロー放電質量分光測定法、スパッタ中性質量分光測定法、またはフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)を使用することもできる。
【0103】
ある実施形態の場合には、環状部分270は、螺旋部分260より欠陥の数が少ない材料から形成される。通常、これらの欠陥は、構造上の欠陥(例えば、層間剥離、亀裂)および材料の不均一(例えば、化学組成および/または結晶構造の変動)の両方を含む。
【0104】
図2Dに示すような閉じ込め領域を有するファイバは、プリフォームを形成するために螺旋状断面を有する円筒の表面上に1つまたは複数の環状層を堆積することにより形成することができる。次に、フォトニック結晶ファイバをプリフォームから線引きすることができる。
【0105】
環状層は、種々の堆積方法により螺旋状円筒の表面上に堆積することができる。例えば、螺旋状部分が環状部分とコアとの間に位置する場合には、プリフォームを形成するために螺旋状物品の外面上に材料を蒸着またはスパッタすることができる。
【0106】
フォトニック結晶ファイバの環状部分が螺旋状部分とコアとの間に位置する実施形態の場合には、材料を、例えば、化学蒸着(例えば、プラズマ強化化学蒸着)により螺旋状物品の内面上に堆積することができる。2003年11月24日付けの「誘電体導波路およびその製造方法」(DIELECTRIC WAVEGUIDE AND METHOD OF MAKING THE SAME)という名称の米国特許出願第10/720,453号に、円筒状プリフォームの内面上に、例えば、1つまたは複数のガラスの層を堆積するための方法が記載されている。その全文は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0107】
通常、閉じ込め領域は、多層構成とは異なるフォトニック結晶構造を含むことができる。例えば、閉じ込め領域220Cは、螺旋部分および環状部分の両方を含んでいて、ある実施形態の場合には、閉じ込め領域は、他の螺旋状でない構造を含む部分を含むことができる。例えば、閉じ込め領域は、螺旋状部分および孔部の多い部分(例えば、ファイバ軸に沿って延びる多数の孔部を含む中実円筒からなる)を含むことができる。孔部は同心円に沿って配置することができ、閉じ込め領域の孔部の多い部分の屈折率は半径方向で変化する。
【0108】
閉じ込め領域220の組成について説明すると、高屈折率層および低屈折率層の組成は、通常、ファイバの動作波長のところで層間に所望の屈折率コントラストができるように選択される。各高屈折率層の組成は、他の高屈折率層の組成と同じものであってもよいし、異なるものであってもよいし、全く同様に各低屈折率層の組成は、他の低屈折率層の組成と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0109】
高屈折率層および低屈折率層に適している材料としては、無機ガラスまたは無定型合金のような有機材料等がある。無機ガラスの例としては、酸化物ガラス(例えば、酸化重金属ガラス)、塩化物ガラスおよび/またはカルコゲニド・ガラス、およびポリマーのような無機材料等がある。ポリマーの例としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、酢酸セルロース・ブチレート(CAB)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)(例えば、コポリマー・スチレン−ブタジエン(SBC)、メチレスチレン−アクリロニトリル、スチレン−キシリレン、スチレン−エチレン、スチレン−プロピレン、スチレン−アクリロニトリル(SAN)を含む)、ポリエーテルイミド(PEI)、酢酸ポリビニル(PVAC)、ポリビニル・アルコール(PVA)、塩化ポリビニル(PVC)、ポリオキシメチレン;ポリフォルムアルデヒド(ポリアセタル)(POM)、酢酸エチレン・ビニル・コポリマー(EVAC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン・テレフタレート(PETP)、フルオロポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリパーフルオロアルコキシシレン(PFA)、フッ化エチレン・プロピレン(FEP)を含む)、ポリブチレン・テレフタレート(PBTP)、低密度ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチル・ペンテン(PMP)(および環状ポリオレフィンを含む他のポリオレフィン)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスルフィド(例えば、ポリフェニレン・スルフィド(PPS)を含む)、およびポリスルホン類(例えば、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリアリルアルキルスルホン、およびポリスルフォネートを含む)がある。ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマー(例えば、(コ)ポリ(アクリルアミド−アクリロニトリル)および/またはアクリロニトリル・スチレン・コポリマー)であってもよい。ポリマーは、例えば、ポリアミド−ポリオレフィン、ポリアミド−ポリカーボネート、および/またはPES−ポリオレフィンの混合物のようなポリマー混合物を含むことができる。
【0110】
使用することができるポリマーの他の例としては、環状オレフィン・ポリマー(COP)、および環状オレフィン・コポリマー(COC)等がある。ある実施形態の場合には、COPおよびCOCは、ノルボルネン系モノマーを重合することにより、またはノルボルネン系モノマーおよび他のポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)を共重合することにより作ることができる。例えば、両方ともZeon Chemicals L.P.(ケンタッキー州ルイスビル所在)が市販しているZeonex(登録商標)ポリマー(例えば、Zeonex(登録商標)E48R)、およびZeonor(登録商標)コポリマー(例えば、Zeonor(登録商標)1600)を含む市販のCOPおよび/またはCOCを使用することができる。COCは、また、Promerus LLC(オハイオ州ブレックスビル所在)(例えば、FS1700)から入手することもできる。
【0111】
別の方法としては、または追加として、高屈折率の層または領域を分離するために、低屈折率領域を、シリカ球体または中空のファイバのような中空の構造サポート材料により形成することができる。「複屈折光ファイバ」(BIREFRINGENT OPTICAL FIBRES)という名称の国際出願第WO 03/058308号公報に、このような構造サポートを含んでいるファイバの例が記載されている。その全文は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0112】
ある実施形態の場合には、閉じ込め領域は、1つまたは複数のガラスおよび/または1つまたは複数の誘電ポリマーのような実質的にすべてが誘電体材料からできている誘電閉じ込め領域である。通常、誘電閉じ込め領域は、ほとんど金属層を含んでいない。
【0113】
ある実施形態の場合には、閉じ込め領域の高屈折率層または低屈折率層は、カルコゲニド・ガラス(例えば、硫黄、セレンおよび/またはテルリウムのようなカルコゲニド元素を含むガラス)を含むことができる。カルコゲニド元素の他に、カルコゲニド・ガラスは、下記の元素、すなわち、硼素、アルミニウム、シリコン、燐、硫黄、ガリウム、ゲルマニウム、砒素、インジウム、錫、アンチモニ、タリウム、鉛、ビスマス、カドミウム、ランタンおよびハロゲン化物(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0114】
カルコゲニド・ガラスは、例えば、As−S、As−Se、Ge−S、Ge−Se、As−Te、Sb−Se、As−S−Se、S−Se−Te、As−Se−Te、As−S−Te、Ge−S−Te、Ge−Se−Te、Ge−S−Se、As−Ge−Se、As−Ge−Te、As−Se−Pb、As−S−Tl、As−Se−Tl、As−Te−Tl、As−Se−Ga、Ga−La−S、Ge−Sb−Seまたは錯化合物、As−Ga−Ge−S、Pb−Ga−Ge−S等のようなこれらの元素をベースとする多成分ガラスのような二元または三元ガラスであってもよい。カルコゲニド・ガラス内の各元素の比率は変えることができる。
【0115】
ある実施形態の場合には、1つまたは複数のカルコゲニド・ガラスの他にまたは代わりに、閉じ込め領域220内の1つまたは複数の層は、1つまたは複数の酸化物ガラス(例えば、酸化重金属ガラス)、ハロゲン化ガラス、無定型合金、またはこれらの組合わせを含むことができる。
【0116】
通常、高および低屈折率層の吸収は、その組成およびファイバの動作波長により変化する。ある実施形態の場合には、高および低屈折率層の両方を形成している材料の吸収は低くてもよい。低吸収材料は、動作波長において、約100dB/m以下の吸収(例えば、約20dB/m以下、約10dB/m以下、約5dB/m以下、約1dB/m以下、0.1dB/m以下)を有する。低吸収材料の例としては、約3ミクロンの波長で約4dB/mの吸収係数を有するカルコゲニド・ガラス等がある。約10.6ミクロンの波長の場合、カルコゲニド・ガラスの吸収係数は約10dB/mである。他の例としては、酸化物ガラス(例えば、鉛硼珪酸塩ガラスまたはシリカ)は、約1〜2ミクロンの波長の場合、吸収は低くなる。ある種の酸化物ガラスのこの波長範囲内の吸収係数は約1dB/m〜0.0002dB/mである。
【0117】
別の方法としては、高屈折率材料および低屈折率材料のうちの一方または両方は、高い吸収(例えば、約1,000dB/m以上、約10,000dB/m以上、約20,000dB/m以上、約50,000dB/m以上のような約100dB/m以上)を有することができる。例えば、多くのポリマーは、約3〜約11ミクロンの波長の場合、約105dB/mの吸収係数を有する。このようなポリマーの例としては、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリクロロトリフルオロ・エチレン(PCTFE)、ポリフルオロアルコキシエチレン(PFA)、およびポリエチレン・ナフタレート(PEN)等がある。PEIは、3ミクロンの波長で約105dB/mより大きい吸収を有し、一方、PCTFE、PFAおよびPENは、10.6ミクロンの波長で約105dB/mより大きい吸収を有する。
【0118】
ある実施形態の場合には、高屈折率材料は低い吸収係数を有し、低吸収材料は高い吸収係数を有し、またはその逆になる。
材料の吸収は、材料の少なくとも2つの異なる厚さT1およびT2を通しての相対的透過を測定することにより測定することができる。材料内のフィールドが、Pが材料上に入射するパワーを表している場合、Pe−αTにより厚さTが厚くなると低減すると仮定した場合、厚さT1およびT2を通して透過する測定パワーは、
【0119】
【数6】
および
【0120】
【数7】
となる。この場合、吸収係数αは、
【0121】
【数8】
で表される。必要に応じて、いくつかの厚さを使用し、透過パワーの対数に最小自乗適合を行うことにより、αのより正確な評価を入手することができる。
【0122】
すでに説明したように、有利な光学的特性(例えば、導波された波長における適当な屈折率を有する低い吸収性)を供給するために、閉じ込め領域に対して材料を選択することができる。しかし、材料は、ファイバを製造するのに使用するプロセスと互換性を有するものでなければならない。ある実施形態の場合には、好適には、高および低屈折率材料は、同時線引き加工に対して互換性を有するものでなければならない。同時線引き加工の互換性の基準は、「高屈折率コントラスト・ファイバ導波路および用途」(HIGH INDEX−CONTRAST FIBER WAVEGUIDES AND APPLICATIONS)という名称の上記米国特許出願第10/121,452号に記載されている。さらに、好適には、高および低屈折率材料は、結晶、相分離、ケミカルアタック、およびファイバが形成され、展開され、使用される条件(例えば、温度、湿度および周囲ガス環境のような環境条件)に対する望ましくない反応に対して十分安定しているものでなければならない。
【0123】
線引き工程を使用する丈夫なファイバ導波路を作る場合、所望の光学的特性を有する材料の各組合わせは必ずしも適していない。通常、流動学的に、熱−機械的におよび物理化学的に相容性を有する材料を選択しなければならない。相容性を有する材料を選択するためのいくつかの基準について以下に説明する。
【0124】
第1の基準は、流動学的に相容性を有する材料を選択するための基準である。すなわち、ファイバの線引きおよび動作のいくつかの段階中に受ける温度に対応する広い温度範囲内で類似の粘度を有する材料を選択しなければならない。粘度は、加えられたセン断応力の下での流れに対する流体の抵抗である。この場合、粘度はポイズ単位で表される。流動学的相容性について説明する前に、所与の材料が特定の粘度を有する温度である所与の材料の一組の特性温度を定義することが好ましい。
【0125】
焼き鈍し点Taは、材料が1013ポイズの粘度を有する温度である。Taは、Orton Ceramic Foundation(オハイオ州ウェスタービル所在)のモデルSP−2Aシステムで測定することができる。通常、Taは、ガラス片の粘度が残りの応力を解放することができる十分低い温度である。
【0126】
軟化点Tsは、材料の粘度が107.65ポイズになる温度である。Tsは、軟化点測定器(例えば、Orton Ceramic Foundation(オハイオ州ウェスタービル所在)のモデルSP−3A)で測定することができる。軟化点は、材料の流れの性質が可塑性から粘性に変わる温度に関連する。
【0127】
動作点Twは、材料の粘度が104ポイズになる温度である。Twは、粘度計(例えば、Orton Ceramic Foundation(オハイオ州ウェスタービル所在)のモデルSP−4A)で測定することができる。動作点は、ガラスがファイバに容易に線引きすることができる温度に関連する。例えば、材料が無機ガラスであるある実施形態の場合には、材料の動作点温度は、約300℃、400℃、500℃以上のような250℃より高い温度であってもよい。
【0128】
融点Tmは、材料の粘度が102ポイズになる温度である。Tmも、粘度計(例えば、Orton Ceramic Foundation(オハイオ州ウェスタービル所在)のモデルSP−4A)で測定することができる。融点は、ガラスが液体になり、ファイバの幾何学的維持に関するファイバ線引き工程の制御が非常に難しくなる温度に関連する。
【0129】
流動学的に相容性を有するように、2つの材料は、例えば、ファイバが、目で見てわかる速度(例えば、Taにおけるような)またはそれ以下の速度で分離できる速度でもはや応力を解放することができない温度にファイバが線引きされる温度からの広い温度範囲で類似の粘度を有するものでなければならない。それ故、2つの相容性を有する材料の動作温度は、線引きする場合、2つの材料が類似の速度で流れるように類似のものでなければならない。例えば、第2の材料の動作温度Tw2で第1の材料の粘度η1(T)を測定した場合、η1(Tw2)は、例えば、104ポイズまたは105ポイズのような少なくとも103ポイズでなければならないし、107ポイズ以上であってはならない。さらに、線引きしたファイバが冷却する際に、両方の材料の行動は、類似の温度で粘性から弾性に変化しなければならない。すなわち、2つの材料の軟化温度は、類似の温度でなければならない。例えば、第2の材料の軟化温度Ts2で、第1の材料の粘度η1(Ts2)は、107ポイズまたは108ポイズのように少なくとも106ポイズでなければならないし、109ポイズ以上であってはならない。好ましい実施形態の場合には、両方の材料を一緒に焼き鈍すことができなければならない。それ故、第2の材料の焼鈍温度Ta2において、第1の材料の粘度η1(Ta2)は、少なくとも108ポイズ(例えば、少なくとも109ポイズ、少なくとも1010ポイズ、少なくとも1011ポイズ、少なくとも1012ポイズ、少なくとも1013ポイズ、少なくとも1014ポイズ)でなければならない。
【0130】
さらに、流動学的に相容性を有するように、好適には、両方の材料の温度の関数としての粘度の変化(すなわち、粘度勾配)は、できる限り一致することが好ましい。
第2の選択基準は、各材料の熱膨張係数(TEC)は、焼鈍温度と室温間の温度において類似していなければならないことである。すなわち、ファイバが冷却し、その流動学が液状から固体状に変化した場合、両方の材料の容積は類似の量だけ変化しなければならない。2つの材料のTECが十分一致しない場合には、2つのファイバ部分間の大きな容積変化の違いが大きな残留応力を発生し、これにより1つまたは複数の部分が亀裂を起こしたり、および/または剥離したりする恐れがある。残留応力は、また、材料の破壊応力よりかなり低い応力でも遅延破壊を起こす恐れがある。
【0131】
TECは、温度の変化によるサンプルの長さの部分的な変化の基準である。所与の材料に対するこのパラメータは、温度−長さ(または、等価的に温度−容積)曲線の勾配から計算することができる。材料の温度−長さ曲線は、例えば、Orton Ceramic Foundation(オハイオ州ウェスタービル所在)のモデル1200D膨張計のような膨張計により測定することができる。TECは、選択した温度範囲上で、または所与の温度での瞬間的な変化として測定することができる。この数値は℃−1という単位を有する。
【0132】
多くの材料の場合、異なる勾配を有する温度−長さ曲線内に2つの直線領域が存在する。曲線が第1の直径領域から第2の直線領域へ変化する遷移領域が存在する。この領域は、ガラス・サンプルの行動が、固体材料に通常関連するものから粘性流体に通常関連するものに遷移するガラス遷移に関連する。これは連続している遷移であり、勾配の不連続の変化とは反対に、温度−容積曲線の勾配のゆっくりした変化を特徴とする。ガラス遷移温度Tgは、補外ガラス固化体ラインおよび粘性流体ラインが交差する温度であると定義することができる。ガラス遷移温度は、材料流動学の脆性固体から流動することができる固体への変化に関連する温度である。物理的に、ガラス遷移温度は、材料内の種々の分子並進モードおよび回転モードを励起するのに必要な熱エネルギーに関連する。ガラス遷移温度は、多くの場合、粘度が1013ポイズであるが、実際には、測定したTgが相対値であり、測定技術に依存する大体の焼き鈍し点と見なされる。
【0133】
膨張計は、また、膨張計の軟化点Tdsを測定するために使用することができる。膨張計は、サンプル上に小さな圧縮負荷を加え、サンプルを加熱することにより動作する。サンプルの温度が十分高くなると、材料は軟化を始め、圧縮負荷により、観察時には容積または長さの減少としての反りがサンプル内に生じる。この相対値は、膨張計軟化点と呼ばれ、通常、材料の粘度が1010〜1012.5ポイズの時に現れる。ある材料の正確なTds値は、通常、機器パラメータおよび測定パラメータに依存する。類似の機器パラメータおよび測定パラメータを使用する場合には、この温度は、この粘度レジーム内での異なる材料の流動学的相容性の有用な基準となる。
【0134】
すでに説明したように、TECの一致は、線引き工程中にファイバ内に発生する恐れがある、過度の残留応力を含んでいないファイバを入手するための重要な考慮事項である。通常、2つの材料のTECが十分一致しない場合には、残留応力は弾性応力として生じる。弾性応力成分は、ガラス遷移温度から室温(例えば、25℃)に冷却する場合のファイバの異なる材料間の容積収縮の違いによるものである。容積の変化は、TECおよび温度の変化より測定される。ファイバの材料が、線引き工程中に任意の界面で溶融し、または接着する実施形態の場合には、その各TEC内の違いにより界面のところに応力が発生する。ある材料には張力(正の応力)がかかり、他の材料には圧縮力(負の応力)がかかり、そのため応力全体はゼロになる。中程度の圧縮応力自体は、通常、ガラス・ファイバにとって重要な問題ではないが、引っ張り応力は望ましものではなく、時間の経過中に故障を起こす恐れがある。それ故、線引き作業中のファイバの弾性応力の発生を最小限度に小さくするために、成分材料のTECの違いを最小限度に小さくすることが望ましい。例えば、2つの異なる材料から形成した合成ファイバの場合には、Tgと3℃/分の加熱速度で膨張計で測定した室温との間の各ガラスのTEC間の絶対的な違いは、約5×10−6℃−1程度(例えば、約4×10−6℃−1程度、約3×10−6℃−1程度、約2×10−6℃−1程度、約1×10−6℃−1程度、約5×10−7℃−1程度、約4×10−7℃−1程度、約3×10−7℃−1程度、約2×10−7℃−1程度)でなければならない。
【0135】
類似のTECを有する材料を選択すれば、弾性応力成分を最小限度に低減することができるが、同様に、残留応力も粘弾性応力成分から発生する恐れがある。粘弾性応力成分は、成分材料の歪み点またはガラス遷移温度間に十分な違いがある場合に発生する。材料の温度がTg以下に下がると、材料はかなりの量の収縮を起こす。冷却する場合、この遷移中に粘度が変化するので、応力を解放するのに要する時間はゼロ(瞬間)から数分に増大する。例えば、異なるガラス遷移範囲(および異なるTg)を有するガラスおよびポリマーからできている複合材用プリフォームについて考えてみよう。最初の線引き作業中、ガラスおよびポリマーは、粘性流体として行動し、線引き歪みによる応力は瞬間的に解放される。線引き炉の最も高温の部分を過ぎると、ファイバは急速に熱を失い、応力解放時間が経過するにつれてファイバ材料の粘度を指数的に増大させる。そのTgまで温度が下がると、ガラスおよびポリマーは、実際にはそれ以上応力を解放することができない。何故なら、線引き速度と比較すると、応力解放時間が非常に長くなっているからである。それ故、成分材料が異なるTg値を有していると仮定した場合、そのTgに温度が下がる第1の材料はもはや応力を低減することができないが、第2の材料の温度は依然としてTgより高く、材料間に発生した応力を解放することができる。第2の材料の温度がそのTgまで下がると、材料間に発生する応力をもはや効果的に解放することができない。さらに、この時点で、第2のガラスの容積収縮は、(この時点で温度がそのTg以下に下がっていて、脆性固体として挙動している)第1の材料の容積収縮より遥かに大きい。このような状況の場合には、ガラスとポリマーとの間に十分な応力が形成される恐れがあり、そのためその部分の一方または両方が機械的に壊れる。そのためファイバ材料を選択するための第3の選択基準が登場する。線引き作業中、ファイバの粘弾性応力の発生を最小限度に低減するために、成分材料のTgの違いを最小限度に低減することが望ましい。好適には、第1の材料のガラス遷移温度Tg1は、第2の材料のガラス遷移温度Tg2の100℃以内であることが好ましい(例えば、|Tg1−Tg2|は、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下、30℃以下、20℃以下、10℃以下でなければならない)。
【0136】
成分材料間の違いにより線引きしたファイバ内に永久的な応力を発生する2つの機構(すなわち、弾性機構および粘弾性機構)があるために、これらの機構を相互に相殺するために使用することができる。例えば、ファイバを構成している材料が、材料のTgの不一致により符号が反対の応力を発生する場合には、熱膨張の不一致による応力を当然相殺することができる。逆に、材料の熱膨張が永久的応力全体を低減する場合には、材料間のTgがもっと大きく異なっていても構わない。熱膨張およびガラス遷移温度の違いの総合的効果を査定する1つの方法は、各成分材料の温度−長さ曲線を比較する方法である。上記勾配−接線方法で各材料のTgを発見した後で、曲線がもっと低いTg温度値のところで一致するように座標軸に沿って曲線のうちの1本を移動する。ガラスが一緒に結合していない場合には、室温でのy軸の切片の違いは予想した歪みεを生じる。Tgから室温までの温度範囲でもっと大きな収縮量を示す材料の予想引っ張り応力σは、下式から簡単に計算することができる。
【0137】
【数9】
ここで、Eはその材料の弾性係数である。通常、約100MPa以下(例えば、約50MPa以下、約30MPa以下)の残留応力値は、十分小さく、2つの材料が相容性を有することを示す。
【0138】
第4の選択基準は、候補材料の熱安定性を一致させることである。熱安定性の基準は、温度間隔(Tx−Tg)で表される。この場合、Txは、各分子がその最も低いエネルギー状態を発見することができるように、材料が十分ゆっくり冷却する場合の結晶化のスタート時の温度である。それ故、結晶相は、ガラス相よりもある材料にとってエネルギー的にもっと有利な状態である。しかし、材料のガラス相は、通常、ファイバ導波路用途に使用した場合、結晶相よりも性能上の利点および/または製造上の利点を有する。結晶化温度がガラス遷移温度に近づけば近づくほど、線引き作業中、材料は結晶しやすくなる。このことは、ファイバにとって有害な場合がある(例えば、ファイバ内に光学的に不均一な部分ができ、そのため透過損失が増大するので)。通常、少なくとも約80℃(例えば、少なくとも約100℃)の熱安定性間隔(Tx−Tg)は、プリフォームからファイバを線引きすることにより材料のファイバ形成を行うのに十分なものである。好ましい実施形態の場合には、熱安定性間隔は、約150℃以上、約200℃以上のような少なくとも約120℃である。Txは、示差熱分析装置(DTA)または示差走査熱量計(DSC)のような熱分析装置により測定することができる。
【0139】
一緒に線引きすることができる材料を選択する際のもう1つの考慮事項は、材料の溶融温度Tmである。溶融温度で、材料の粘度は非常に低くなるので、ファイバ線引き工程中うまく正確な形状寸法を維持することができない。それ故、好ましい実施形態の場合には、ある材料の溶融温度は、第2の流動学的に相容性を有する材料の加工温度より高い。すなわち、プリフォームを加熱する場合、プリフォームは、プリフォーム内のどちらかの材料が溶融する前に、プリフォームをうまく線引きすることができる温度に達する。
【0140】
一緒に線引きすることができ、閉じ込め領域の層間の高い屈折率コントラストを有するフォトニック結晶ファイバ導波路を供給する一対の材料の1つの例は、As2Se3およびポリマーPESである。As2Se3は、約180℃のガラス遷移温度(Tg)を有し、約24×10−6/℃の熱膨張係数(TEC)を有する。10.6μmにおいて、As2Se3は、Hartouniおよび共同研究者が測定し、Proc.SPIE、505、11(1984年)に記載しているように2.7775の屈折率を有し、VoigtおよびLinkeが測定し、NATO ASIシリーズ、3.High Technology、36巻、155ページ(1996年)掲載のEd.A.AndrieshおよびM.Bertolottiの「オプトエレクトロニクスの非晶質半導体の物理学および用途」(Physics and Applications of Non−Crystalline Semiconductors in Optoelectronics)に記載している5.8dB/mの吸収係数αを有する。これら両方の参照文献の全文は参照により本明細書に組み込むものとする。PESは、約55×10−6/℃のTECを有し、約1.65の屈折率を有する。
【0141】
下記の特許および特許出願に、フォトニック結晶ファイバおよびフォトニック結晶ファイバの形成方法の実施形態が記載されている。「大きいコア半径を有する低損失フォトニック結晶導波路」(LOW−LOSS PHOTONIC CRYSTAL WAVEGUIDE HAVING LARGE CORE RADIUS)という名称の米国特許第6,625,364号;「フォトニック結晶多モード導波路での電磁モード変換」(ELECTROMAGNETIC MODE CONVERSION IN PHOTONIC CRYSTAL MULTIMODE WAVEGUIDES)という名称の米国特許第6,563,981号;2002年1月25日付けの「調整済み分散プロファイルを有するフォトニック結晶光導波路」(PHOTONIC CRYSTAL OPTICAL WAVEGUIDES HAVING TAILORED DISPERSION PROFILES)という名称の米国特許出願第10/057,440号;2002年4月12日付けの「高屈折率コントラスト・ファイバ導波路および用途」(HIGH INDEX−CONTRAST FIBER WAVEGUIDES AND APPLICATIONS)という名称の米国特許出願第10/121,452号;「強化光導波のための全方向多層デバイス」(OMNIDIRECTIONAL MULTILAYER DEVICE FOR ENHANCED OPTICAL WAVEGUIDING)という名称の米国特許第6,463,200号;2002年11月22日づけの「高パワー導波路」(HIGH POWER WAVEGUIDE)という名称の仮特許出願第60/428,382号;2002年6月16日付けの「反射誘電体ミラーを形成するための方法」(METHOD OF FORMING REFLECTING DIELECTRIC MIRRORS)という名称の米国特許出願第10/196,403号;2003年11月24日付けの「誘電体導波路およびその製造方法」(DIELECTRIC WAVEGUIDE AND METHOD OF MAKING THE SAME)という名称の米国特許出願第10/720,606号;2003年12月10日付けの「ファイバ導波路およびその製造方法」(FIBER WAVEGUIDES AND METHODS OF MAKING SAME)という名称の米国特許出願第10/733,873号。上記各特許および特許出願の内容は、参照により全体を本明細書に組み込むものとする。
【0142】
図1を参照すると、ある実施形態の場合には、フォトニック結晶ファイバ120は、ファイバが、好適にはある面内で曲がるように設計することができる。例えば、図3を参照すると、フォトニック結晶ファイバ300は、長い軸361に直交する短い軸362に沿ったその直径より長い軸に沿ったより長い直径を有する非対称の断面を有するクラッディング360を含む。長い軸および短い軸は軸399と直交している。非対称の断面も、異なる湾曲の部分を含むクラッディングの外面の形を明示している。より詳細に説明すると、クラッディング360は、円弧状部分331および332および2つの直線部分333および334を含む。円弧状部分331および332は、長い軸321に沿ってクラッディングの対向側面上に位置する。直線部分333および334は、短い軸322に沿ってクラッディングの対向側面上に位置する。
【0143】
通常、クラッディング360の断面の非対称性は、ファイバの通常の使用中にファイバの軸399および短い軸362が形成する面内で好適にファイバ300を曲げるのには十分なものである。
【0144】
短い軸に沿ったその直径に対する長い軸に沿ったファイバ300の直径の比は、変えることができる。通常、この比は、ファイバ300が好適には曲げ平面内で曲がるように選択され、一方、クラッディング300は、所望の機械的サポートまたはそれが設計される他の機能(例えば、光学的機能、熱管理)を依然として提供する。ある実施形態の場合には、この比率は、約1.5:1以下(例えば、約1.3:1以下、約1.1:1以下)のように比較的小さくすることができる。別の方法としては、ある実施形態の場合には、この比率は、約1.5:1より大きくすることができる(例えば、約1.8:1以上、約2:1以上)。
【0145】
フォトニック結晶ファイバ300は、また、コア320を含んでいて、螺旋層330、340および350を含む閉じ込め領域310を含んでいて、そこから閉じ込め領域が形成される連続している層の縁部に対応する内部継目321および外部継目322を有する。内部継目321は、短い軸362から角度αだけ移動する方位角323に沿って位置する。αは、約10度以上(例えば、約20度以上、約30度以上、約40度以上、約50度以上、約60度以上、約70度以上、約80度以上)であってもよい。ある実施形態の場合には、αは約90度である。
【0146】
内部継目は、ファイバの好適な曲げ平面内に位置していない。ファイバ300においては、このことは内部継目321を短い軸から離して配置することにより行うことができる。好適な曲げ平面から離して内部継目を配置すると有利な場合がある。何故なら、誘導された放射線の損失は(例えば、散乱および/または吸収による)、閉じ込め領域の他の部分と比較した場合、継目のところの方が大きいと考えられるからである。さらに、コア内の誘導された放射線のエネルギー密度は、コアの他の部分のところのエネルギー密度と比較した場合、ファイバの曲げの外側に向かってより高くなると考えられる。継目が好適な曲げ平面内にできるだけ位置しないように短い軸に対して内部継目を位置させることにより(例えば、αが約90度の場合)内部継目がファイバの曲げの外側に向かって移動する確率が低減する。それ故、誘導された放射線のエネルギー密度が高い領域のところの閉じ込め領域の比較的損失が高い部分を有する複合効果を避けることができ、ファイバの曲がりに関連する損失が低減する。
【0147】
内部継目321および外部継目322は、ファイバ300内の軸399に対して同じ方位角位置に位置しているが、他の実施形態の場合には、内部および外部継目は、ファイバの軸に対して異なる相対的方位角位置に沿って位置させることができる。
【0148】
すでに説明したように、クラッディングは、ファイバの閉じ込め領域に対して機械的サポートを供給する。それ故、クラッディング360の厚さは、長い軸361に沿って必要に応じて変えることができる。短い軸362に沿ったクラッディング360の厚さも変えることができるが、通常、長い軸に沿った厚さよりも薄い。ある実施形態の場合には、クラッディング360は、閉じ込め領域310よりも長い軸に沿ってかなり厚くなっている。例えば、クラッディング360は、長い軸に沿って閉じ込め領域310より約10倍以上厚くすることができる(例えば、約20倍以上厚い、約30倍以上厚い、約50倍以上厚いというように)。
【0149】
プリフォームを削り、次に、非対称な断面を有するプリフォームからファイバを線引きすることによりファイバを非対称にすることができる。別の方法としては、ある実施形態の場合には、プリフォームからファイバを線引きした後で、ファイバを非対称にすることができる。例えば、ファイバを線引きした後のしかしスプールする前の製造プロセスの一部としてファイバを削ったりあるいは研磨したりすることができる。
【0150】
ファイバ300は、継目を有する閉じ込め領域を含んでいるが、通常、非対称ファイバの実施形態は、継目を持たない閉じ込め領域(例えば、多数の環状層からできている閉じ込め領域)を含むことができる。
【0151】
さらに、ファイバ300は、2つの円形のアークおよび2つの直線からなる形状を有しているが、通常、ファイバは他の形を有することもできる。例えば、ファイバは非対称な多角形の形を有することができ、異なる曲率半径を有する円弧状部分から形成することができ、および/または反対方向に曲がる円弧状部分から形成することができる。通常、この形状は、ファイバに好適な曲げ平面を供給しなければならない。
【0152】
上記ファイバは、その断面の形状に対して非対称であるが、通常、ファイバは好適な曲げ平面を供給するために種々の方法で非対称になることができる。例えば、ある実施形態の場合には、ファイバは、好適な曲げ平面を形成する非対称の材料を含むことができる。非対称な材料とは、好適にはファイバを特定の方法で曲げるファイバの異なる部分の材料の特性間に違いがあることを意味する。例えば、ファイバ・クラッディングの一部は、他の部分より機械的な剛性が弱い材料から形成することができ、好適にはファイバをその部分で曲げることができる。機械的な変動は、組成上の変化または同じ組成を有する部分内の物理的違いにより起こすことができる。例えば、ファイバまたはファイバのプリフォームの一部を、ファイバの機械的特性を変えるドーパントでドーピングすることにより組成を変えることができる。もう1つの例の場合には、異なる化合物からファイバの異なる部分を形成することにより組成を変えることができる。物理的な違いは、例えば、ファイバの異なる部分の結晶性の程度の違いを意味する。ファイバの製造中にファイバの一部を選択的に加熱および/または冷却することにより、および/またはファイバの異なる部分を異なる速度で加熱/冷却することにより、結晶性の違いのような物理的な違いを生じさせることができる。
【0153】
さらに、ある実施形態の場合には、ファイバは、対称的な第1のクラッディングを含むことができるが、ファイバを好適に特定の面内で曲げる追加の構造をクラッディングの外側に含むことができる。例えば、ファイバを、ファイバを曲げることができる場合に、非対称になる1つまたは複数の被覆内に収容することができる。
【0154】
図1を再度参照すると、レーザ・システム100は、また、供給チューブ171および結合アセンブリ130を介してファイバ120に、冷却流体(例えば、ガスまたは液体)を供給する冷却装置170を含む。冷却流体は、コアを通してポンプで汲み上げられ、コアに隣接するファイバ面から熱を吸収する。この実施形態の場合には、冷却流体は、レーザ110からの放射線と同じ方向に流れるが、ある実施形態の場合には、冷却流体をレーザ放射線の伝搬方向とは反対の方向にポンプで汲み出すことができる。
【0155】
フォトニック結晶ファイバ120のコアを通る冷却流体の流速は、必要に応じて変えることができる。通常、この流速は、例えば、レーザの動作パワー、動作波長でのファイバの吸収、ファイバの長さ、ファイバ・コアのサイズに依存する。通常、流速は、その動作パワーでファイバを十分冷却できるものでなければならない。ある実施形態の場合には、流速は、約0.1リットル/分以上(例えば、約0.5リットル/分以上、約1リットル/分以上、約2リットル/分以上、約5リットル/分以上、約8リットル/分以上、約9リットル/分以上、約10リットル/分以上)であってもよい。
【0156】
ファイバから排出される冷却流体の圧力は変えることができる。ある実施形態の場合には、冷却流体の圧力は比較的高くてもよい。例えば、流体が放射線と同じファイバの端部から出る場合には、冷却ガスの圧力を患者の標的組織から破片を除去するだけの十分高い圧力にすることができる。ガス圧は、約1.4kPa(0.2PSI)以上(例えば、約3.5kPa(0.5PSI)以上、約6.9kPa(1PSI)以上)とすることができる。ある実施形態の場合には、ファイバのコアから出るガスの圧力は、約500μmのコア直径を有する1メートルの長さのファイバを通る約1リットル/分以上(例えば、約2リットル/分以上、約5リットル/分以上、約8リットル/分以上、約10リットル/分以上)の流速に対応することができる。
【0157】
流速は、システムが作動している間、名目上一定とすることもできるし、またはレーザ・システムの状態動作に従って変えることもできる。例えば、ある実施形態の場合には、流速は、放射線がファイバ120を通して送られているかどうかにより調整することができる。レーザが作動していて、放射線がファイバを通して送られている場合には、流速は、ファイバを適当に冷却するのに十分なレベルにすることができる。しかし、放射線の線量間で、システムは、もっと低いレベル(例えば、レーザが作動している間にファイバを冷却するのに使用する流速よりも約10%以下)に流速を低減することができる。ガスの流速は、遠隔制御装置152、またはシステムを使用しながら、オペレータが容易に操作することができる追加の遠隔制御装置によりトリガすることができる。
【0158】
通常、ファイバに送られる冷却流体の温度を変えることができる。ある実施形態の場合には、冷却流体は、周囲温度(例えば、室温)でファイバに送られる。ある実施形態の場合には、冷却流体は、ファイバを冷却する前に周囲温度以下に冷却される。冷却流体は、ファイバから排出される流体がある温度範囲内になるように冷却することができる。例えば、冷却流体を、患者と接触した場合に、ファイバから排出される流体が患者を火傷させないように十分冷却することができる。他の例としては、冷却流体を、ファイバから排出される流体が室温と体温との間になるように十分冷却することができる。ある実施形態の場合には、ファイバに送られる冷却流体を、その温度が室温以下になるように冷却することができる。例えば、流体は、約20℃以下(例えば、約10℃以下、約0℃以下、約−10℃以下、約−20℃以下、約−50℃以下)の温度になることができる。
【0159】
冷却流体がレーザ放射線伝搬方向にファイバ・コアを通して流れるある実施形態の場合には、冷却流体は、患者の標的組織を照射した場合に、追加の機能を行うことができる。例えば、ある実施形態の場合には、ファイバから出る加熱した流体(例えば、ガス)は、血液の凝固を促進することにより、切除した血管(または他の組織)からの出血を低減することができる。血液の凝固は、約60℃以上の温度で加速すると考えられている。それ故、標的組織を照射しているファイバから出るガスが約60℃以上である場合には、血液が凝固する速度を増大し、手術している部位から血液を吸収する必要を低減することにより、外科医を補助することができる。ある実施形態の場合には、ファイバから出るガスの温度は、例えば、約50℃以上、約60℃以上、約65℃以上、約70℃以上、約80℃以上、約90℃以上、約100℃以上にすることができる。別の方法としては、ある実施形態の場合には、ファイバから出るガスの温度は、室温以下(例えば、約10℃以下、約0℃以下)であってもよい。例えば、システムは、組織を照射する前に組織を冷却するほうが有利である処置の場合には、標的部位に冷却したガスを供給することができる。ある実施形態の場合には、ファイバから出るガスの温度を、ほぼ体温(例えば、約37℃)にすることができる。
【0160】
ファイバ・コアを流れるガスは、入力パワーの約5〜10℃/ワット(例えば、約7〜8℃/ワット)により加熱することができる。例えば、約20ワットの入力パワーを有するファイバは、そのコアを流れるガスを約100〜200℃だけ加熱することができる。
【0161】
ある実施形態の場合には、ファイバのコアを流れる流体を、標的組織に他の物質を供給するために使用することができる。例えば、噴霧状の医薬化合物をコアを通して流れているガス内に導入し、フォトニック結晶ファイバを介して標的組織に供給することができる。
【0162】
通常、冷却流体のタイプは、必要に応じて変えることができる。冷却流体は、液体であっても、ガスであっても、超流体であってもよい。ある実施形態の場合には、冷却流体は、希ガス(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、および/またはキセノン)、酸素、二酸化炭素および/または窒素を含む。冷却流体は、(例えば、約98%の純度以上、約99%の純度以上、約99.5%の純度以上、約99.8%の純度以上、約99.9%の純度以上の)実質的に1つの化合物から作ることができるし、または混合物(例えば、空気またはヘリオックス)であってもよい。
【0163】
ある実施形態の場合には、冷却流体は、ファイバを冷却する能力に基づいて選択することができる。流体の冷却能力は、流体の流速および/または流体の熱伝導性に依存する。例えば、ヘリウム・ガスは、他のガスと比較すると比較的高い熱伝導性を有する。さらに、所与の圧力降下の場合、ヘリウムは、窒素のような他のガスより速い流速を有することができる。それ故、ある実施形態の場合には、ヘリウムを、他のガスより優れているファイバを冷却する能力に基づいて選択することができる。
【0164】
別の方法としては、または追加として、冷却流体を、患者に対して何らかの望ましくない相互作用を有しているかどうかに基づいて選択することができる。例えば、冷却流体が患者に近接している実施形態の場合には、冷却流体をその比較的低い毒性に基づいて選択することができる。ある実施形態の場合には、冷却流体を、他の流体と比較した場合の可溶性に基づいて選択することができる。血液内での可溶性が比較的低い流体は、冷却流体に曝されることにより塞栓症を有する患者のリスクを低減することができる。比較的毒性が低く、比較的可溶性が低い流体の一例としてはヘリウム・ガスがある。
【0165】
また、冷却流体を、他の元素との反応性(例えば、可燃性)のような他の基準に基づいて選択することもできる。ある実施形態の場合には、ヘリウムのような冷却流体を、その不活性特性(例えば、不燃性)に基づいて選択することができる。
【0166】
ある実施形態の場合には、保護スリーブをフォトニック結晶ファイバ120の出力端部に取り付けることができる。スリーブは、ファイバの出力端部のところでのゴミの蓄積および詰まりを防止するために使用することができる。図4Aは、スリーブ401の一例を示す。スリーブ401は、フォトニック結晶ファイバ410の出力端部に取り付けられる。スリーブ401は、ファイバの出力端部とスリーブの先端開口部430との間に隔離距離405を維持するカラー425を含む。通常、隔離距離405は、約0.5cm〜約4cmである。ファイバ410のコア420から出る放射線411は、先端開口部430を通してスリーブから出る。
【0167】
また、スリーブ401は、ファイバの先端開口部430から出る流体の圧力を低減するための穿孔を含むことができる。例えば、スリーブ401は、先端開口部430に沿って、コア420から出る流体がスリーブから出ることができる経路を供給する二次開口部435および436を含む。
【0168】
通常、スリーブは、容易に殺菌することができる硬質の材料から形成される。例えば、スリーブは、ステンレス鋼から形成することができる。スリーブは、使い捨てのものであっても、再使用できるものであってもよい。
【0169】
図4Bは、スリーブのもう1つの例であるスリーブ401Aを示す。スリーブ401Aは、その全長に沿って狭くなっていて、先端開口部近くの直径402Aと比較した場合、ファイバ401の出力端部にスリーブが取り付けられるところの直径402Bが大きくなっている。スリーブが狭くなっているので、スリーブ内のコア420からの流体の圧力が増大し、開口部435Aおよび435Bのところの流体圧力が増大し、それによりこれら開口部を通してスリーブ内にゴミが吸い込まれる可能性が低減する。
【0170】
ある実施形態の場合には、スリーブは、1つまたは複数の光学部品を含むことができる。例えば、図4Cに示すように、スリーブ401Bは、先端開口部の近くに取り付けられているリフレクタ440(例えば、ミラー)を含むことができる。リフレクタ440は、コア420から出る放射線411の向きを変え、オペレータが他の方法ではアクセスすることができない狭い空間内に放射線を向けることができるようにする。
【0171】
ある実施形態の場合には、スリーブは、また、透過型光学部品を含むことができる。例えば、図4Dに示すように、スリーブ401Cは、先端開口部430の近くに装着されているレンズ450を含む。レンズは、レンズ・マウント451によりスリーブ内に装着されていて、このレンズ・マウントは、ファイバからの流体が開口部435および436を通してスリーブ401Cから依然として出ることができるように、先端開口部430と二次開口部435および436との間に位置する。レンズ450は、コア420から出る放射線411の焦点を先端開口部430を越えたある位置のウェストに結ぶ。スリーブ内に装着することができる透過型光学部品のもう1つの例は、流体が先端開口部430を通して流れるのを防止しながら、ファイバ・コアから出る放射線を透過するための窓としての働きをすることができる透過型光学的平面である。
【0172】
すでに説明したように、レーザ・システム100においては、レーザ110からの光および流体源170からの流体が、結合アセンブリ130によりファイバ120内に結合される。図5Aを参照すると、フォトニック結晶ファイバ内にガスおよび放射線を結合するためのカプラの一例は、結合アセンブリ500である。結合アセンブリ500は、レーザからの放射線およびガス源からのガスを受け取る第1の部分510、およびフォトニック結晶ファイバ120に接続する第2の部分520を含む。第1の部分510は、柔軟な接合部505(例えば、金属ベローまたはゴム・チューブ)により第2の部分520と結合している。
【0173】
第1の部分510は、レンズ・ホルダー502およびレンズ・ホルダー用のアダプタ504を含む。レンズ・ホルダーは、市販のレンズ・ホルダーであってもよい。レンズ・ホルダー502と結合した場合、アダプタ504はレンズ501をレンズ・ホルダー内に固定する。Oリング503は、アダプタ504とレンズ501との間を密封する。アダプタ504は、また、システムにガスを供給するチューブに接続するための管継手504aを含む。ある実施形態の場合には、管継手504aは、逆止ホース管継手を含む。
【0174】
部分520は、光ファイバ・コネクタ容器を含むコネクタ整合段508(例えば、Newport(カリフォルニア州アービン所在)が市販している構成要素LP−1Aのような市販の段)を含む。段508は、アダプタ506により柔軟な接合部505に接続している。Oリング507は、段508とアダプタ506との間を密封する。光ファイバ・コネクタ509は、フォトニック結晶ファイバ510を段508に結合する。もう1つのOリング511は、光ファイバ・コネクタ509および段508間を密封する。
【0175】
図5Bは、結合アセンブリのもう1つの例を示す。結合アセンブリ530は、レーザ110の出力端子111に取り付けるレーザ・コネクタ540を含む。結合アセンブリ530は、レーザ・コネクタ540に取り付けられているハウジング531を含む。ハウジングは、流体入口ポート533および放射線出口ポート534を含む。光ファイバ・コネクタ550は、放射線出口ポート534に取り付けられ、放射線出口ポートに対してフォトニック結晶ファイバ551の端部を位置決めする。さらに、コネクタ560は、流体入口ポート533に取り付けることにより、流体導管561をハウジングに接続する。
【0176】
位相差リフレクタ532は、ハウジング531内に位置する。位相差リフレクタ532は、レーザからハウジングに入る直線的に偏光された放射線541を放射線出口端部534の方向に向け、反射した放射線542が円偏光されるように偏光状態を修正する。より一般的に説明すると、反射型遅延装置は、ファイバ551のもっと低損失の偏光を行うために、レーザ放射線の偏光状態を修正する。ある実施形態の場合には、円偏光した放射線の平均損失は、ファイバが偏光面と一致する場合がある高損失の領域を有する直線的に偏光した放射線よりも低い場合がある。例えば、継目を有する閉じ込め領域を有するフォトニック結晶ファイバは、円偏光した光と比較した場合、継目の面内で偏光した放射線に対してもっと高い損失を示すことができる。別の方法としては、または遅延装置とを有する他に、ファイバ551を、レーザからの放射線の偏光状態に対して特定の向きで、その継目(または他の高損失領域)に取り付けることができる。
【0177】
10.6ミクロンの放射線に適している反射型遅延装置の例としては、直列PRR:シリコンおよび銅相位相差リフレクタ(Laser Research Optics(ロード・アイランド州プロビデンス所在)が市販している)がある。透過型遅延装置(例えば、複屈折結晶からできている)は、位相差リフレクタ532の代わりに、またはそれの追加として使用することができる。
【0178】
また、結合アセンブリ530は、マウント535によりハウジング531内に装着されるレンズ545を含む。このマウントは、反射した放射線542の焦点を、放射線がファイバ551のコア内に結合する放射線出口ポート534のところのウェストの部分に結ぶ。10.6ミクロンの波長のところで使用するのに適しているレンズは、例えば、ZnSeから形成することができる。
【0179】
冷却流体がファイバのコア内に結合されない実施形態の場合には、他の結合アセンブリを使用することができる。通常、このような実施形態の場合には、レーザ・システムが動作する波長および輝度に適している任意のカプラを使用することができる。Applied Optics、34巻、3号、372〜380ページ(1996年)掲載の「高パワー工業用CO2レーザ用中空導波路供給システム」(Hollow−waveguide delivery systems for high−power, industrial CO2 lasers)内にカプラの1つのタイプをR.NublingおよびJ.Harringtonが記載している。カプラの他の例としては、1つまたは複数のレンズのような1つまたは複数の焦点素子等がある。より一般的に説明すると、カプラは、ビーム整形光学系、ビーム・フィルタ等のような追加の光学部品を含むことができる。
【0180】
通常、結合効率は、比較的高くすることができる。例えば、結合アセンブリ130は、導波された波長でレーザ出力の約70%以上を、ファイバの導波モード(例えば、約80%以上、90%以上、95%以上、98%以上)に結合することができる。結合効率という用語は、ファイバ上に入射した全パワーに対する所望のモードにより外に誘導されたパワーの比率を意味する。
【0181】
レーザ・システム100はハンドピース140を含んでいるが、システムは、システムを使用する医療用途により、異なるタイプのハンドピースを含むことができる。通常、ハンドピースは、例えば、オペレータが自分の手のひらまたは指先で握ることができる部分を含んでいて、他の構成要素も含むことができる。ある実施形態の場合には、ハンドピースは、(患者の膀胱を検査するための)膀胱鏡、(患者の腎臓を検査するための)腎臓鏡、(患者の気管支を検査するための)気管支鏡、(患者の喉頭を検査するための)喉頭鏡、(患者の耳を検査するための)耳鏡、(患者の関節を検査するための)関節鏡、(患者の腹部を検査するための)腹腔鏡、および胃腸内視鏡のような内視鏡(例えば、可撓性または硬性内視鏡)を含むことができる。ハンドピースのもう1つの例は、オペレータがフォトニック結晶ファイバの出力端部を、管、血管、通路および/または体腔内に位置させることができるカテーテルである。
【0182】
さらに、他の構成要素をハンドピースに内蔵させないで、ハンドピースを他の構成要素と一緒に使用することができる。例えば、ハンドピースを、フォトニック結晶ファイバの出力端部を患者の腹腔内に位置させるために、トロカールと一緒に使用することができる。他の例の場合には、硬性内視鏡と一緒にハンドピースを使用することができる。この場合、硬質な内視鏡は、ハンドピースの握り部分またはフォトニック結晶ファイバに取り付けられない。
【0183】
図6を参照すると、ある実施形態の場合には、ハンドピース680は、フォトニック結晶ファイバ120が挿入されるチャネルを含む狭い導管684を含む。導管684は、硬質ではあるが、変形することができる材料(例えば、ステンレス鋼)から作ることができる。これにより、オペレータは、(例えば、手でまたはツールにより)オペレータが導管をまっすぐに延ばすか、別の方法で曲げるまで導管が曲がりを保持する場合、処置のために(例えば、曲げ686のように)所望の角度で導管を曲げることができる。ハンドピース680は、また、導管684に取り付けられている握り部分682を含み、これによりオペレータは、ハンドピースを快適に握ることができる。
【0184】
ある実施形態の場合には、ハンドピースは、例えばシステムの動作中にオペレータがファイバを遠くから曲げることができるようにするアクチュエータを含むことができる。例えば、図7Aを参照すると、ある実施形態の場合には、レーザ放射線112を、内視鏡610により患者601内の標的組織699に供給することができる。内視鏡610は、握り部分611および内視鏡本体616により相互に接続している可撓性導管615を含む。一束の光ファイバを収容している撮像ケーブル622が、握り部分611および可撓性導管615内のチャネルを通してねじ込まれる。撮像ケーブル622は、可撓性導管615を介して標的組織699を照明する。撮像ケーブルは、また、標的組織から反射した光をコントローラ620に誘導する。この場合、標的組織は画像化され、表示され、オペレータに視覚的情報を提供する。別の方法としては、または追加として、内視鏡は、オペレータが撮像ケーブルを通して標的領域を直接見ることができるようにする接眼レンズを含むことができる。
【0185】
内視鏡610は、また、オペレータが可撓性導管615を曲げたりまっすぐに延ばしたりすることができるようにするアクチュエータ640を含む。ある実施形態の場合には、アクチュエータ640により、可撓性導管615を1つの平面内だけで曲げることができる。別の方法としては、ある実施形態の場合には、アクチュエータにより、可撓性導管を2つ以上の平面内で曲げることができる。
【0186】
内視鏡610は、さらに、ファイバ120が挿入されるチャネルを含む補助導管630(例えば、取り外すことができる導管)を含む。チャネルは、可撓性導管615内の第2のチャネルに接続していて、ファイバ120を補助導管を通して可撓性導管615内に挿入することができる。ファイバ120は、可撓性導管615を通してチャネルに対してファイバの向きを維持し、それにより可撓性導管内の導波路軸を中心にしてフォトニック結晶ファイバの捻れを最小限度に低減するように、補助導管に取り付けられる。フォトニック結晶ファイバ120が継目を含む閉じ込め領域を有する実施形態の場合には、ファイバを、継目が可撓性導管の曲げ平面と一致しないように補助導管に取り付けることができる。
【0187】
通常、フォトニック結晶ファイバは、PENTAX Medical Company(ニュージャージー州モントベール所在)、およびOlympus Surgical & Industrial America,Inc.(ニューヨーク州オレンジバーグ所在)が市販している内視鏡のような市販の内視鏡と一緒に使用することができる。
【0188】
補助導管630は、ユーザが、可撓性導管615内のフォトニック結晶ファイバの出力端部を延ばしたりおよび/または縮めたりすることができるように構成することができる。例えば、図7Bを参照すると、ある実施形態の場合には、内視鏡610の補助導管630は、相互に移動することができる2つの部分631および632を含むことができる。部分632は、内視鏡本体616に取り付けられ、一方、部分631は部分632に対してはまり込むように接続している。部分632は、ファイバ120に取り付けられているファイバ・コネクタ638に接続するコネクタ636を含む。コネクタ636およびファイバ・コネクタ638の嵌合機構により、内視鏡にフォトニック結晶ファイバを迅速にまた簡単に取り付けたり取り外したりすることができる。取り付けた場合、コネクタ636およびファイバ・コネクタ638は、ファイバ120が捻れるのを実質的に防止し、可撓性導管615内でファイバ軸を中心にしてその向きを維持する。コネクタは、例えば、導管の曲げ平面から遠ざかる方向を向いているファイバの継目に対して、導管内でのファイバの向きを維持することができる。さらに、部分631が部分632に対して伸び縮みさせた場合、部分631は、可撓性導管615の先端部618に対してファイバ120の出力端部645を伸び縮みさせる。補助導管630も、ユーザが部分632に対して部分631を固定することができるように、ロック機構634(例えば、ラッチまたはクランプ)を含む。ロック機構は、可撓性導管615内でのファイバ120の望ましくない運動を防止し、放射線が患者に供給される。
【0189】
レーザ・システム100および600は、放射線をレーザ110から標的部位に供給する単一の長さのフォトニック結晶ファイバを含んでいるが、複数の接続している長さのフォトニック結晶ファイバも使用することができる。例えば、図7Cを参照すると、レーザ・システム700は、レーザ・システム100および600として、単一の長さのフォトニック結晶ファイバではなく、2つの長さのフォトニック結晶ファイバ720および721を含む。フォトニック結晶ファイバ長さ720および721は、内視鏡610の補助導管630に取り付けるコネクタ730により一緒に結合される。
【0190】
レーザ・システム700は、冷却装置170の他にまたは代わりに二次冷却装置740を含む。フォトニック結晶ファイバ長さ720は、供給チューブ742により二次冷却装置740に接続している外装744内に位置する。二次冷却装置740は、外装744を通して冷却流体をポンプで汲み出すことにより、フォトニック結晶ファイバ長さ720を冷却する。
【0191】
二次冷却装置740は、外装744を通してポンプで汲み上げる冷却流体を再循環することができる。例えば、外装744は、二次冷却装置740に冷却流体を還流する追加の導管を含むことができる。二次冷却システムを備える熱交換器は、二次冷却システムがポンプにより流体を外装744に還流する前に、排出された冷却流体を積極的に冷却することができる。
【0192】
冷却流体は、冷却装置170によりフォトニック結晶ファイバのコア内にポンプで汲み出される冷却流体と同じものであっても、異なるものであってもよい。ある実施形態の場合には、冷却装置170は、ファイバのコアを通してガスをポンプでくみ出し、一方、二次冷却装置740は、液体(例えば、水)でファイバを冷却する。
【0193】
外装744は保護作用を行うことができ、フォトニック結晶ファイバ長さ720を環境災害から保護する。ある実施形態の場合には、外装744は、比較的硬質の材料を含み(例えば、外装744はフォトニック結晶ファイバ長さ720より硬くなるように)、フォトニック結晶ファイバ長さ720の曲がりを低減する。ある実施形態の場合には、外装744は、ニチノール(コネチカット州ベセル所在のMemry,Inc.が市販している)のような比較的硬質の材料から作られる。
【0194】
ある実施形態の場合には、2つの長さのフォトニック結晶ファイバを使用することにより、長さの少なくとも一方の使用可能な寿命を延ばすことができる。例えば、冷却装置740および/または外装744によるファイバの長さによる追加の冷却および/または保護により、フォトニック結晶ファイバ長さ720の交換頻度をファイバ長さ721よりも少なくすることができる。ある実施形態の場合には、ファイバ長さ721は、複数回使用することができるが、ファイバ長さ721は使い捨てにすることもできる。
【0195】
レーザ・システム700は2つの接続している長さのフォトニック結晶ファイバを使用しているが、より一般的に、フォトニック結晶導波路以外の導波路も、レーザから標的部位に放射線を供給するための導管を供給するために、所定の長さのフォトニック結晶ファイバに接続することができる。例えば、所定の長さの中空の金属導波路を、IR放射線用の導管を供給するために所定の長さのフォトニック結晶ファイバに接続することができる。
【0196】
さらに、通常、例えば、処置中、標的組織にあるものを供給し、標的組織からあるものを除去し、または標的組織を観察するために、医療レーザ・システム内で他の導管をフォトニック結晶ファイバと一緒に束ねることができる。例えば、図7Aのところで説明したように、フォトニック結晶ファイバを撮像システムにより標的組織を照明および/または画像化するために使用する撮像ケーブルのような、他の光導波路と一緒に束ねることができる。ある実施形態の場合には、レーザ・システムは、フォトニック結晶ファイバを通してレーザ放射線から放射線を、および他の導管(例えば、光ファイバ)を通して第2のソース(例えば、第2のレーザ)から放射線を供給することにより、患者に2つ以上の放射線源から放射線を供給することができる。一例を挙げて説明すると、図8に示すように、ある実施形態の場合には、システム800は、ファイバ導波路830およびフォトニック結晶ファイバ810を含む。この場合、ファイバ導波路830およびフォトニック結晶ファイバ810の一部は、ジャケット850(例えば、可撓性ポリマー・ジャケットのような可撓性ジャケット)内で束ねられる。フォトニック結晶ファイバ810は、フォトニック結晶ファイバ810のコア812を通して、波長λ1で放射線を供給するレーザ820と結合している。ファイバ導波路830は、ファイバ導波路830のコア832を通して、異なる波長λ2で放射線を供給する他の放射線源840と結合している。フォトニック結晶ファイバ810およびファイバ導波路830は、共通の位置にそれぞれ波長λ1およびλ2で放射線(それぞれ参照番号822および842で示す)を供給する。
【0197】
ファイバ導波路830は、例えば、光ファイバまたはフォトニック結晶ファイバであってもよい。放射線源840は、レーザまたは他の光源(例えば、電球または発光ダイオード)であってもよい。一例を挙げて説明すると、ある実施形態の場合には、放射線源840は、HeNeレーザのような可視放射線(例えば、λ2が633nmのような約400nm〜約800nmの範囲内に入る)を放射するレーザであり、ファイバ導波路830は光ファイバである。ファイバ830が放射する可視放射線により、オペレータは、レーザ820からレーザ放射線を供給する前に、フォトニック結晶ファイバの出力端部を適当な組織に向けることができる。他の例の場合には、他の放射線源840は、光凝固または光切断のために患者に放射線を供給するためにも使用することができるNd:YAGレーザである。
【0198】
ジャケット850は、ジャケットを種々のハンドピースと一緒に使用することができるようにするために、その外径を十分小さくすることができる。例えば、ジャケットは約2mm以下の外径を有することができ、ジャケットを内視鏡の標準サイズのチャネル内に挿入することができる。
【0199】
ある実施形態の場合には、フォトニック結晶ファイバを、ファイバ導波路と一緒に束ねるのとは別にまたはそれに加えて、ガス(例えば、血液凝固のための高温ガス)を供給し、標的部位でゴミを吸引するためのチューブと一緒に束ねることができる。
【0200】
例えば、図9を参照すると、システム900において、フォトニック結晶ファイバ910は、ファイバの出力端部のところでフォトニック結晶ファイバのコア912から出てくる流体(例えば、冷却流体)を排出するためにチューブ930と一緒に結束される。図9のシステムは、レーザ920および結合アセンブリ924を介してフォトニック結晶ファイバのコア912に放射線および流体を供給する流体源926を含む。システムは、また、患者からチューブ930を通して既存のコア912から出てくる流体を吸い込むポンプを含む。
【0201】
ファイバ910の出力端部およびチューブ930の入力端部は、ファイバおよびチューブの端部を覆っているキャップ960により一緒に結合している。キャップ960は、レーザ920から供給される放射線の波長に対して実質的に透明な材料でできている窓962を含む。キャップ960は、窓962をコア912から出てくる放射線922の経路内に位置させ、システムが患者に放射線を供給することができるようにする。しかし、コア912から出てくる流体は、排気ポート964を通してチューブ942に吸い込まれる。チューブ930の対向端部に接続しているポンプ940は、チューブを通して患者から流体942を吸い込む。
【0202】
チューブ930およびフォトニック結晶ファイバ910の一部は、ジャケット950内で一緒に束ねられ、可撓性ダクトをハンドピース(例えば、内視鏡を含むハンドピース)内のチャネルを通してねじ込むことができる。
【0203】
システム900は、放射線で照射されている組織に流体(例えば、冷却流体)を放出するのが望ましくない処置で使用することができる。例えば、放射線が内部に供給される場合、排出した流体が有毒である場合、または望ましくない温度(例えば、露出した組織を火傷させるほどの高い温度)である場合には、組織が流体に触れるのを防止するために、排出チューブとフォトニック結晶ファイバとを一緒にすることができる。
【0204】
場合によっては、医療レーザ・システム内のハンドピースの代わりに、遠隔操作することができるロボットを使用することができる。例えば、患者(例えば、戦場で負傷した兵士)に外科医が容易にまたは迅速に近づくことができない場合には、ロボットによる外科手術が考慮の対象になる。
【0205】
フォトニック結晶ファイバは医療処置の際に使用されるので、フォトニック結晶ファイバは殺菌できるものでなければならない。例えば、フォトニック結晶ファイバは、オートクレーブ殺菌のような殺菌処置に耐えることができるものでなければならない。通常、数種類の長さのフォトニック結晶ファイバが、容器内に予め殺菌され密封されて(例えば、保管および出荷中に、ファイバの全長が汚染されるのを防止するのに十分なバリア特性を有する容器内に真空密封されて)ユーザに供給される。例えば、種々の長さ(例えば、約0.5メートル〜約2.5メートルの長さ)の殺菌されたフォトニック結晶ファイバを、プラスチック容器(例えば、バリア膜層を含む)に入れて密封状態(例えば、真空密封)で供給することができる。
【0206】
通常、上記レーザ・システムは、多数の異なる医療用途で使用することができる。通常、他のシステム・パラメータの中で、レーザのタイプ、波長、ファイバの長さ、ファイバの外径、およびファイバの内径が用途により選択される。医療用途としては、美容医療処置、外科医療処置、眼科処置、獣医処置および歯科処置等がある。
【0207】
美容処置としては、毛髪の除去;小さなしわのライン、日焼け、シミ、そばかす、ある種のアザ、酒さ、異常な色素沈着、毛細管の破損、良性茶色素および色素沈着を低減するためのパルス光による皮膚の治療;皮膚の再被覆;脚部静脈;脈管病変;色素性病変;座瘡;乾癬および白斑;および/または化粧色素沈着のための治療等がある。
【0208】
外科処置としては、婦人科、腹腔鏡検査、外性器のコンジロームおよび病変、および/または白斑症に対する処置等がある。また、外科的用途としては、レーザ援用口蓋垂口蓋形成(LAUP)(すなわち、いびきを止めるための);鼻の閉塞を除去するための処置;あぶみ骨切開;気管気管支内視鏡検査;扁桃切除;および/または良性喉頭病変の除去のような耳/鼻/喉(ENT)処置等がある。また、外科的用途としては、胸部生検、転移疾患のための膀胱整復、床ずれまたはうっ血性潰瘍(statis ulcers)の治療、痔核切除、腹腔鏡外科手術、乳房切除、および/または整復乳房形成等がある。また、外科処置としては、神経腫、爪の周囲、爪の下および足の底のいぼの治療、多孔角化腫(porokeratoma)の切除、および/または徹底的な爪の切除のような足治療の分野での処置等がある。レーザを使用することができる外科手術の他の分野としては、整形外科、泌尿器科学、胃腸病学、および胸部および肺の外科手術等がある。
【0209】
眼科用の用途としては、緑内障、老化によるシミの変質(AMD)、増殖性糖尿病性網膜症、若年性網膜症、網膜裂傷および剥離、網膜血管の閉塞の治療、および/または屈折誤差を低減または除去するための屈折外科治療等がある。
【0210】
獣医学の用途としては、小動物の処置および大型動物の処置の両方がある。
歯科の用途の例としては、硬組織、軟組織および歯内治療処置等がある。硬組織歯科処置としては、カリエス除去、腔形成およびレーザ・エッチング等がある。軟組織歯科処置としては、切開、切除および気化、gummy smileの治療、凝固(止血)、生えない歯の露出、アフタ潰瘍、歯肉形成、歯肉切除、歯冠印象のための歯肉のトルフ形成、インプラント露出、小帯切除、弁外科手術、繊維腫除去、弁蓋切除、膿瘍の切開および排膿、口腔乳頭切除(oral papilectomy)、歯肉肥大の整復、補綴前の外科手術、歯冠周囲炎、ペリ‐インプラント炎(peri implantitis)、口腔病変、およびsulcular壊死組織切除等がある。歯内治療処置としては、歯髄切除、歯根管壊死組織切除および清掃等がある。また、歯科の処置としては歯を白くする処置がある。
【0211】
通常、他のシステム・パラメータもあるが、レーザのタイプ、波長、ファイバの長さ、ファイバの外径、ファイバの内径が用途により選択される。例えば、レーザがCO2レーザである実施形態の場合には、切断、気化、切除、切開および軟組織の凝固を必要とする外科処置のためにレーザ・システムを使用することができる。CO2レーザ・システムは、美容専門分野(例えば、皮膚科および/または形成外科)、足の治療、耳鼻咽喉科(例えば、ENT)、婦人科(腹腔鏡検査を含む)、神経外科、整形外科(例えば、軟組織整形外科)、関節鏡検査(例えば、膝関節鏡検査)、一般的および胸部外科手術(開外科手術および内視鏡外科手術を含む)、歯科および口腔外科手術、眼科、泌尿器科外科手術、および獣医科外科手術を含む種々の医療専門分野で外科用途用に使用することができる。
【0212】
ある実施形態の場合には、CO2レーザ・システムは、レーザ皮膚再被覆、レーザ皮膚剥離、および/またはレーザ火傷壊死組織切除を行う際に、皮膚科学および/または形成外科手術中に、組織(例えば、軟組織)の切断、気化、切除、切開および/または凝固の場合に使用することができる。レーザ皮膚再被覆は(例えば、切除および/または気化による)、例えば、しわ、しわ皮および/またはくぼみ(細い線および肌理の凹凸を含む)の治療の際に使用することができる。レーザ皮膚再被覆は、角化症(日光性角化症を含む)、尋常性脂漏(seborrhoecae vulgares)、脂漏性いぼおよび/または脂漏性疣贅;口唇の赤唇切除;皮角;天日性/光化学作用性弾力線維症;口唇炎(光線性口唇炎を含む);ほくろ(悪性ほくろまたはハッチンソンの悪性そばかすを含む);不均一な色素沈着/色素異常;座創跡;外科手術跡、ケロイド(項部息肉性座創(acne keloidalis nuchae)を含む);血管腫(バッカル、ポートワインおよび/または化膿性肉芽腫/化膿性肉芽胞/血管拡張性肉芽腫を含む);入れ墨;毛細血管拡張症;皮膚腫瘍の除去(爪周囲および/または爪下線維腫を含む);表面の色素性病変;腺皮脂性肥大(adenosebaceous hypertrophy)および/または脂肪分泌増殖;酒さ鼻の整復;皮膚乳頭腫;稗粒腫;湿疹性および/または感染した皮膚の壊死組織切除;基底および有棘細胞癌(角化性棘皮細胞腫、ブラウン疾患、および/またはボウエノイド丘疹症病変部を含む);母斑(クモ、表皮性、および/または突出を含む);神経繊維腫;レーザ脱上皮化;トリコ上皮腫(tricoepitheliomas);眼瞼黄色板症;および/または汗管腫(syringoma)の整復、除去および/または治療に使用することができる。CO2レーザ・システムは、全体および/または部分的爪の基質切除(matrixectomy)のためのレーザ切除、気化および/または切除、皮膚障害の気化および/または凝固(例えば、良性および/または悪性血管および/または無血管の)、および/または脂肪除去のためのMohの外科手術のために使用することができる。他の例としては、上および/または下の瞼の瞼形成、および/または植毛のための収容場所の生成を行うための軟組織のレーザ切開および/または切除のためのレーザ・システム1300の使用を含む。
【0213】
ある実施形態の場合には、CO2レーザ・システムは、尋常性疣贅(verrucae vulgares)/足底のいぼ(爪郭炎、爪周囲および爪下いぼを含む);多孔角化腫(porokeratoma)の切除;内に延びる爪の治療;神経腫瘍/繊維腫(モートン神経腫を含む);潰瘍の壊死組織切除;および/または他の軟組織病変部の整復、除去および/または治療のための足病学の処置の際の軟組織のレーザ切断、気化および/または切除の際に使用することができる。CO2レーザ・システムは、また、全体および/または部分的基質切除のための足病学の際のレーザ切断、気化および/または切除のために使用することができる。
【0214】
CO2レーザ・システムは、後鼻孔閉鎖;白斑症(口腔、喉頭、口蓋垂、口蓋、上側咽頭組織を含む);鼻詰まり;成人および/または若年性乳頭腫ポリープ;鼻および/または鼻の通路のポリープ切除;リン管腫の除去;声帯/ひだ結節(cord/fold nodule)、ポリープおよび嚢腫の除去;口腔、鼻腔、喉頭、咽頭および気管内の再発乳頭腫の除去(口蓋垂、口蓋、上側咽頭組織、舌および声帯を含む);喉頭、咽頭、鼻、耳および口の構造および組織内のレーザ/腫瘍外科手術;ツェンカー憩室/咽頭食道憩室(例えば、内視鏡によるレーザ援用食道憩室切除);狭窄(声門下狭窄を含む);扁桃切除(扁桃cryptolysis、腫瘍を含む)および扁桃切除/扁桃切除;肺気管および気管支病変部の除去;良性および悪性小結節、腫瘍および繊維腫(例えば、喉頭、咽頭、気管、気管気管支/内気管支);良性および/または悪性病変部および/または繊維腫(例えば、鼻または鼻の通路);良性および/または悪性腫瘍および/または繊維腫(例えば、経口);あぶみ骨切開/あぶみ骨切除(stapedotomy/stapedectomy);耳内の音響神経腫;耳の表面病変部(慢性結節性軟骨皮膚炎を含む);喉頭、咽頭および/または気管(口蓋垂、口蓋、および/または上側咽頭組織を含む)の毛細血管拡張症/血管腫;声帯切除、コルドトミー(例えば、声帯麻痺/声帯ひだ運動障害の治療のための)、および/または喉頭、咽頭および/または気管のコード病変部(codal lesion);鼓膜切開(myringotomy)/鼓膜切除(例えば、鼓膜開窓術);口蓋垂口蓋形成(例えば、LAUP);鼻甲介切除および/または鼻甲介整復/切除;隔膜表面切除/整復および/または隔膜形成;部分舌切除;口、顔面および/または頸部組織の腫瘍切除;鼻形成;尋常性疣贅;および/または歯肉形成/歯肉切除の治療のための耳鼻咽喉学内の軟組織のレーザ切開、切除、切断および/または気化のために使用することができる。
【0215】
ある実施形態の場合には、CO2レーザ・システムは、子宮頸の円錐切除(conizaton)(子宮頸内上皮腫瘍、外陰および/または膣内上皮腫瘍を含む);尖圭コンジローマ(子宮頸、生殖、外陰、会陰(preineal)および/またはブラウン疾患および/またはボウエノイド丘疹症病変部を含む);白板症(例えば、外陰ジストロフィー);バルトリンおよび/またはnubuthian嚢胞の切開および排膿;ヘルペス気化;尿道カルンクル気化;子宮頸形成異常;良性および/または悪性腫瘍;および/または血管腫の治療ための婦人科の軟組織のレーザ切開、切除、切断および/または気化のために使用することができる。
【0216】
CO2レーザ・システムは、子宮内膜病変(子宮内膜炎の切除を含む);癒着の切除/溶解;卵管開口;卵巣摘出/卵巣切除;卵管采形成(fimbroplasty);子宮形成;管顕微鏡手術;子宮筋腫および/または類繊維腫;卵巣繊維腫および/または嚢腫状濾胞;子宮仙骨靭帯(uterosacral ligament)切断;および/または子宮摘出の治療のための婦人科腹腔鏡検査を含む内視鏡外科手術および/または腹腔鏡外科手術の際の軟組織の気化、切開、切除、切断および/または凝固のために使用することができる。
【0217】
ある実施形態の場合には、CO2レーザ・システムは、後部窩腫瘍;周辺神経切除;良性および/または悪性腫瘍および/または嚢腫(例えば、グリオーム(gliomos)、髄膜腫、聴覚神経腫、脂肪腫および/または大型腫瘍);動静脈奇形;および/または下垂体腺腫瘍を含む頭蓋症状の治療のための神経外科手術の際の軟組織のレーザ切開、切除、切断および/または気化のために使用することができる。ある実施形態の場合には、CO2レーザ・システムは、良性および/または悪性の腫瘍および/または嚢腫の切開/切除および気化;内部および/または外部二重病変;および/または椎弓切除/層切除/顕微鏡切除を含む脊髄症状の治療のための神経外科手術の際の軟組織のレーザ切開、切除、切断および/または気化のために使用される。
【0218】
CO2レーザ・システムは、関節鏡によるおよび/または一般的な外科手術を含む用途の整形外科手術の際の軟組織の切開、切除および/または気化のために使用することができる。関節鏡の用途は、menisectomy;軟骨腫;軟骨形成;靱帯解放(例えば、横靱帯解放);ひだの切除;および/または部分滑膜切除等がある。一般的な外科手術用途としては、傷部外傷の壊死組織切除;床ずれおよび/または糖尿潰瘍の壊死組織切除;顕微鏡手術;人工関節の修正;および/またはポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート)の除去等がある。
【0219】
CO2レーザ・システムは、また、内視鏡によるおよび/または開いたままの処置を含む一般的および/または胸部外科手術の際の軟組織の切開、切除、および/または気化のために使用することもできる。このような用途としては、床ずれによる潰瘍、鬱血、糖尿病およびほかの潰瘍の壊死組織切除;乳房切除;火傷の壊死組織切除;直腸および/または肛門痔核切除;胸部生検;整復乳房形成;転移疾患のための嚢腫整復;開腹および/または腹腔鏡用途;縦隔および/または胸部病変部および/または異常;皮膚タグ気化;アテローム;嚢腫(皮脂腺嚢腫、毛髪嚢腫、および/または唇の粘膜嚢腫を含む);毛巣嚢腫除去および/または修復;膿瘍;および/または他の軟組織用途などがある。
【0220】
ある実施形態の場合には、CO2レーザ・システムは、歯肉切除;歯肉形成;切開および/または切除生検;潰瘍病変(アフタ性潰瘍を含む)の治療;抗生物質治療と併用する場合の感染の切開;小帯切除;良性および/または悪性病変部の切除および/または切断;ホメオスタシス;蓋切除;歯冠の延長;軟組織、嚢腫および/または腫瘍の除去;口腔腫瘍および/または血管腫;膿腫;抽出部位の鬱血;唾液腺病理学;装着前ガム製剤(preprosthetic gum preparation);白斑症;部分舌切除;および/または歯根歯肉切除を含む、歯科および/または口腔外科手術の際の軟組織の切開、切除および/または気化のために使用することができる。
【0221】
ある実施形態の場合には、CO2レーザ・システムは、外性器の良性および/または悪性の病変;コンジローム;包茎;および/または紅色肥厚を含む尿生殖器処置の際の軟組織の切開、切除および/または気化のために使用することができる。
【0222】
例
10.6ミクロンで動作しているCO2レーザ・システムにより、犬から喉頭の一部を除去するために外科手術を行った。この処置の際に使用したフォトニック結晶ファイバは、直径約550ミクロンの中空のコアを備えていた。ファイバは、約20PES/As2Se3二層の半径プロファイルを含む螺旋状の閉じ込め領域を備えていた。二層の厚さは、約3ミクロンであり、約2:1(PES:As2SE3)の厚さ割当てを含んでいた。ファイバのクラッディングは、PESから形成し、ファイバの外径は約1500ミクロンであった。ファイバの長さは1.5mであった。
【0223】
声帯切除を含む完全な一括声門上喉頭切除を行った。半硬質ハンドピースを備えるフォトニック結晶ファイバによりレーザ放射線を供給した。ハンドピースを硬質喉頭鏡を通して挿入した。ファイバへの入力パワーは、約20ワットであった。ファイバから出る放射線パワーは約7ワットであった。ファイバを通して放射線と同じ方向に窒素を吹き込んだ。窒素の流速は約1リットル/分であった。
【0224】
放射線を、ファイバの先端部と標的組織との間の数ミリメートル(例えば、約5mm〜1cm)の隔離距離で標的組織に供給した。切開した血管を焼灼し、または標的領域から流出した血液を吸い取るために1回中断しただけで声門を除去した。最小の出血が観察され、切開した血管からの血液は、ファイバからの出力に触れると凝固した。処置には約45分かかったが、その間に声門および残りのコードを犬から除去した。
【0225】
追加の実施形態
本発明の多数の実施形態について説明してきた。しかし、本発明の精神および範囲から逸脱することなしに、種々の変更を行うことができることを理解されたい。それ故、他の実施形態も添付の特許請求の範囲内に入る。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】フォトニック結晶ファイバを含むレーザ医療システムのある実施形態の略図。
【図2A】フォトニック結晶ファイバのある実施形態の断面図。
【図2B】フォトニック結晶ファイバ用の閉じ込め領域のある実施形態の断面図。
【図2C】フォトニック結晶ファイバ用の閉じ込め領域のある実施形態の断面図。
【図2D】フォトニック結晶ファイバ用の閉じ込め領域のある実施形態の断面図。
【図3】非対称の断面を有するクラッディングを含むフォトニック結晶ファイバの断面図。
【図4A】フォトニック結晶ファイバの出力端部に取り付けられているスリーブのある実施形態の断面図。
【図4B】フォトニック結晶ファイバの出力端部に取り付けられているスリーブのある実施形態の断面図。
【図4C】フォトニック結晶ファイバの出力端部に取り付けられているスリーブのある実施形態の断面図。
【図4D】フォトニック結晶ファイバの出力端部に取り付けられているスリーブのある実施形態の断面図。
【図5A】放射線および流体をフォトニック結晶ファイバの中空のコア内に結合するための結合アセンブリの実施形態の図面。
【図5B】放射線および流体をフォトニック結晶ファイバの中空のコア内に結合するための結合アセンブリの実施形態の図面。
【図6】可鍛性導管を含むハンドピースの図面。
【図7A】フォトニック結晶ファイバを含むレーザ医療システムの他の実施形態の略図。
【図7B】内視鏡の図面。
【図7C】フォトニック結晶ファイバを含むレーザ医療システムのもう1つの実施形態の略図。
【図8】フォトニック結晶ファイバおよび第2のファイバ導波路を含む医療レーザ・システムの一部の略図。
【図9】フォトニック結晶ファイバおよびファイバから流体を排出するためのチューブを含む医療レーザ・システムの一部の略図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
導波路軸に沿って延びるコアと、前記コアを囲んでいる誘電体閉じ込め領域とを備えるフォトニック結晶ファイバであって、前記誘電体閉じ込め領域が前記フォトニック結晶ファイバの入力端部から出力端部に前記導波路軸に沿って放射線を誘導するように構成されているフォトニック結晶ファイバと、
前記フォトニック結晶ファイバに取り付けられているハンドピースと、
を備え、前記ハンドピースにより、オペレータが、患者の標的部位に前記放射線を向けるために前記出力端部の向きを制御することができる、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記ハンドピースが内視鏡を含む、システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記内視鏡が可撓性導管を含み、前記フォトニック結晶ファイバの一部が前記可撓性導管内のチャネルを通してねじ込まれている、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記内視鏡が、前記可撓性導管の一部を曲げ、それにより前記オペレータが前記出力端部の向きを変えることができるように構成されている前記可撓性導管に機械的に結合しているアクチュエータを含む、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記可撓性導管の曲がった部分が、約12センチメートル以下の曲率半径を有するように、前記アクチュエータが、前記可撓性導管の一部を曲げるように構成されていている、システム。
【請求項6】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記アクチュエータが、所定の曲げ平面内で前記可撓性導管を曲げるように構成されている、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、前記ハンドピースが、前記可撓性導管内のその導波路軸を中心にして前記フォトニック結晶ファイバの向きを制御する目的で、前記誘電体閉じ込め領域の向きを維持するように前記フォトニック結晶ファイバに取り付けられている、システム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムにおいて、前記ハンドピースと前記フォトニック結晶ファイバとの間の前記取り付けが、動作を維持しながら、約10度以上前記ファイバが捻れるのを防止する、システム。
【請求項9】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記内視鏡が、前記可撓性導管に結合されている第1の部分を有する補助導管をさらに含み、前記フォトニック結晶ファイバが、前記補助導管内のチャネルを通して前記可撓性導管のチャネル内にねじ込まれ、前記補助導管が、前記第1の部分に対して移動することができる第2の部分をさらに含み、前記フォトニック結晶ファイバが、前記第2の部分に取り付けられ、前記第2の部分の移動により、前記オペレータが前記可撓性導管の端部に対して前記出力端部を引き延ばすか、あるいは後退させることができる、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記第2の部分が、前記第1の部分に対して引き延ばされるか、あるいは後退させられ得る、システム。
【請求項11】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記補助導管が硬質の導管である、システム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記ハンドピースが導管を含み、前記フォトニック結晶ファイバの一部が前記導管を通してねじ込まれる、システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記導管が、曲がった部分を含む、システム。
【請求項14】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記導管が、変形可能な材料により形成されている、システム。
【請求項15】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記ハンドピースが、前記導管の一部を曲げるように構成されている前記導管に機械的に取り付けられているアクチュエータを含み、それにより前記オペレータが前記出力端部の向きを変えることができる、システム。
【請求項16】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記ハンドピースが、前記出力端部と前記標的部位との間に約1mm以上の最小の隔離距離を提供する前記出力端部を越えて延びる先端部を含む、システム。
【請求項17】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記フォトニック結晶ファイバが、前記フォトニック結晶ファイバの一部が約90度以上の角度で曲がっていて、前記部分が約12センチメートル以下の曲率半径を有している状態で、前記放射線を前記標的部位に誘導できる程度に十分柔軟である、システム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムにおいて、前記フォトニック結晶ファイバの前記部分が約90度以上の角度で曲がっていて、前記部分が約12センチメートル以下の曲率半径を有している状態で、前記放射線が前記出力端部のところで約1ワット以上の平均パワーを有する、システム。
【請求項19】
請求項17に記載のシステムにおいて、前記フォトニック結晶ファイバの前記部分が約90度以上の角度で曲がっていて、前記部分が約12センチメートル以下の曲率半径を有している状態で、前記放射線が前記出力端部のところで約5ワット以上の平均パワーを有する、システム。
【請求項20】
請求項17に記載のシステムにおいて、前記フォトニック結晶ファイバの前記部分が約90度以上の角度で曲がっていて、前記部分が約10センチメートル以下の曲率半径を有している状態で、前記フォトニック結晶ファイバが、前記放射線を前記標的部位に誘導することができる程度に十分柔軟なものである、システム。
【請求項21】
請求項20に記載のシステムにおいて、前記フォトニック結晶ファイバの前記部分が約90度以上の角度で曲がっていて、前記部分が約5センチメートル以下の曲率半径を有している状態で、前記フォトニック結晶ファイバが、前記放射線を前記標的部位に誘導することができる程度に十分柔軟なものである、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記誘電体閉じ込め領域が、前記導波路軸の周囲に螺旋状に配置されている第1の誘電体材料の層を有する、システム。
【請求項23】
請求項22に記載のシステムにおいて、前記誘電体閉じ込め領域が、前記導波路軸の周囲に螺旋状に配置されている第2の誘電体材料の層をさらに有し、前記第2の誘電体材料が、前記第1の誘電体材料とは異なる屈折率を有する、システム。
【請求項24】
請求項23に記載のシステムにおいて、前記第1の誘電体材料がガラスである、システム。
【請求項25】
請求項24に記載のシステムにおいて、前記ガラスがカルコゲニド・ガラスである、システム。
【請求項26】
請求項25に記載のシステムにおいて、前記第2の誘電体材料がポリマーである、システム。
【請求項27】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記誘電体閉じ込め領域が、カルコゲニド・ガラスの少なくとも1つの層を有する、システム。
【請求項28】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記誘電体閉じ込め領域が、ポリマー性材料の少なくとも1つの層を有する、システム。
【請求項29】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記誘電体閉じ込め領域が、前記導波路軸に沿って延びる第1の誘電体材料の少なくとも1つの層と、前記導波路軸に沿って延びる第2の誘電体材料の少なくとも1つの層とを含み、前記第1および第2の誘電体材料を前記第1の誘電体材料と一緒に線引きすることができる、システム。
【請求項30】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記コアが中空のコアである、システム。
【請求項31】
請求項30に記載のシステムであって、前記入力端部または出力端部に結合されている流体源をさらに備え、動作中、前記流体源が前記コアを通して流体を供給する、システム。
【請求項32】
請求項31に記載のシステムにおいて、前記流体がガスである、システム。
【請求項33】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記コアが、約1,000ミクロン以下の直径を有する、システム。
【請求項34】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記コアが、約500ミクロン以下の直径を有する、システム。
【請求項35】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記フォトニック結晶ファイバが、前記出力端部において約2,000ミクロン以下の外径を有する、システム。
【請求項36】
請求項1に記載のシステムであって、光導波路と、前記光導波路を前記フォトニック結晶ファイバに取り付けるコネクタとをさらに備えるシステム。
【請求項37】
請求項36に記載のシステムにおいて、前記光導波路が、第2のフォトニック結晶ファイバである、システム。
【請求項38】
請求項36に記載のシステムであって、前記光導波路を囲む導管をさらに備えるシステム。
【請求項39】
請求項38に記載のシステムにおいて、前記導管が前記光導波路より硬い、システム。
【請求項40】
請求項38に記載のシステムであって、前記導管に結合されている流体源をさらに備え、動作中、前記流体源が前記導管に流体を供給する、システム。
【請求項41】
請求項1に記載のシステムであって、前記放射線を生成し、該放射線を前記フォトニック結晶ファイバの前記入力端部に向かって導くレーザをさらに備えるシステム。
【請求項42】
請求項41に記載のシステムにおいて、前記レーザがCO2レーザである、システム。
【請求項43】
請求項41に記載のシステムにおいて、前記放射線が約2ミクロン以上の波長を有する、システム。
【請求項44】
請求項41に記載のシステムにおいて、前記放射線が約10.6ミクロンの波長を有する、システム。
【請求項45】
請求項41に記載のシステムであって、補助放射線源と、前記フォトニック結晶ファイバに機械的に結合されている少なくとも1つの追加のファイバとをさらに備え、前記追加の導波路が、補助放射線を前記補助放射線源から前記標的部位に供給するように構成されている、システム。
【請求項46】
請求項45に記載のシステムにおいて、前記追加ファイバが、前記ハンドピースにより前記フォトニック結晶ファイバに機械的に結合されている、システム。
【請求項47】
請求項45に記載のシステムにおいて、前記補助放射線源が、前記放射線を前記フォトニック結晶ファイバの前記入力端部に導くように配置されている前記レーザとは異なる第2のレーザである、システム。
【請求項48】
請求項47に記載のシステムにおいて、前記第2のレーザが、Nd:YAGレーザ、ダイオード・レーザ、またはパルス・ダイ・レーザである、システム。
【請求項49】
請求項42に記載のシステムにおいて、前記補助放射線が、電磁スペクトルの可視部分に波長を有する、システム。
【請求項50】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記フォトニック結晶の少なくとも一部が殺菌されている、システム。
【請求項51】
物品であって、
所定の長さのフォトニック結晶ファイバを備え、前記フォトニック結晶ファイバが、導波路軸に沿って延びるコアと、前記コアを囲む誘電体閉じ込め領域とを含み、前記誘電体閉じ込め領域が、放射線を前記導波路軸に沿って前記フォトニック結晶ファイバの入力端部から出力端部に誘導するように構成され、
前記所定の長さのフォトニック結晶ファイバが殺菌されている、物品。
【請求項52】
請求項51に記載の物品であって、前記所定の長さのフォトニック結晶ファイバを含む密封パッケージをさらに備える物品。
【請求項53】
方法であって、
放射線をフォトニック結晶ファイバの入力端部内に導くこと、
前記フォトニック結晶ファイバに取り付けられているハンドピースを使用して、前記フォトニック結晶ファイバの出力端部の向きを制御し、前記出力端部から放射された放射線を患者の標的部位に導くこと、
を備える方法。
【請求項54】
方法であって、
放射線を中空のコアを有するフォトニック結晶ファイバを通して患者の標的部位に導くこと、
前記中空のコアを通して流体を前記患者の標的部位に流すこと、
を備える方法。
【請求項55】
請求項54に記載の方法において、前記放射線が、前記標的部位において組織を切開し、切除しまたは切断するのに十分なパワーを有する、方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法において、前記流体が、前記標的部位において血液を凝固させるのに十分な圧力および温度を有する、方法。
【請求項57】
請求項54に記載の方法であって、前記標的部位に前記放射線および前記流体を導きながら、前記フォトニック結晶ファイバを曲げることをさらに備える方法。
【請求項58】
請求項57に記載の方法において、前記ファイバを曲げることが、曲率半径が約12センチメートル以下になるように、約45度以上の角度で前記ファイバの一部を曲げることを含む、方法。
【請求項59】
請求項54に記載の方法において、前記標的部位に前記放射線および前記流体を導くことが、前記フォトニック結晶ファイバに取り付けられているハンドピースの一部を保持すること、前記ハンドピースを用いて前記出力端部の向きを制御することを含む、方法。
【請求項60】
請求項54に記載の方法において、前記流体がガスである、方法。
【請求項61】
請求項60に記載の方法において、前記ガスが、前記出力端部において約3.5kPa(0.5PSI)以上の圧力を有する、方法。
【請求項62】
請求項60に記載の方法において、前記ガスが、前記出力端部において約6.9kPa(1.0PSI)以上の圧力を有する、方法。
【請求項63】
請求項60に記載の方法において、前記ガスが、前記標的部位において約50℃以上の温度を有する、方法。
【請求項64】
請求項60に記載の方法において、前記ガスが、前記標的部位において約80℃以上の温度を有する、方法。
【請求項65】
請求項60に記載の方法において、前記ガスが空気である、方法。
【請求項66】
請求項60に記載の方法において、前記ガスが、二酸化炭素、酸素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンまたはキセノンを含む、方法。
【請求項67】
請求項66に記載の方法において、前記ガスが、約98%以上の単一成分ガスを含む、方法。
【請求項68】
請求項60に記載の方法において、前記ガスが、ガスの混合物である、方法。
【請求項69】
請求項54に記載の方法において、前記流体が、約1リットル/分以上の速度で前記中空のコア内に流入する、方法。
【請求項70】
請求項54に記載の方法において、前記流体が、約2リットル/分以上の速度で前記中空のコア内に流入する、方法。
【請求項71】
請求項54に記載の方法において、前記流体が、約8リットル/分以上の速度で前記中空のコア内に流入する、方法。
【請求項72】
請求項54に記載の方法において、前記放射線が、約2ミクロン以上の波長を有する、方法。
【請求項73】
請求項54に記載の方法において、前記放射線が、約10.6ミクロンの波長を有する、方法。
【請求項74】
請求項54に記載の方法において、前記放射線が、前記標的部位において約1ワット以上の平均パワーを有する、方法。
【請求項75】
装置であって、
導波路軸に沿って延びるコアと、前記コアを囲んでいる誘電体閉じ込め領域とを含むフォトニック結晶ファイバであって、前記誘電体閉じ込め領域が、前記フォトニック結晶ファイバの入力端部から出力端部に前記導波路軸に沿って放射線を誘導するように構成されている、フォトニック結晶ファイバと、
前記フォトニック結晶ファイバの前記出力端部に結合されているスリーブであって、前記放射線が前記スリーブを通過し、一次開口部を通して前記スリーブから出ることができる、スリーブと、
を備え、前記スリーブが、1つまたは複数の二次開口部をさらに含み、該1つまたは複数の二次開口部は、前記スリーブに流入したガスが前記二次開口部を通して前記スリーブから出るように配置されている、装置。
【請求項76】
請求項75に記載の装置において、前記スリーブに流入した前記ガスが、前記二次開口部を通るだけでなく、前記一次開口部も通って前記スリーブから出る、装置。
【請求項77】
請求項75に記載の装置であって、前記一次開口部と前記二次開口部との間に配置され、前記放射線が前記スリーブを通過する際に、前記放射線を実質的に通過させる透明な素子をさらに備える装置。
【請求項78】
請求項77に記載の装置において、前記透明な素子が、ガスが前記一次開口部を通して前記スリーブから流出するのを実質的に防止する、装置。
【請求項79】
請求項77に記載の装置において、前記透明な素子がZnSeを含む、装置。
【請求項80】
請求項75に記載の装置であって、前記二次開口部を通して前記スリーブから流出するガスが、前記導管の入力端部内に吸い込まれるように前記二次開口部に対して配置された導管をさらに備える装置。
【請求項81】
請求項75に記載の装置において、前記二次開口部が、前記一次開口部の近くに配置されている、装置。
【請求項82】
請求項75に記載の装置において、前記一次開口部が、前記出力端部において前記フォトニック結晶ファイバの外径よりも小さい直径を有する、装置。
【請求項83】
請求項75に記載の装置であって、前記スリーブに取り付けられ、かつ前記スリーブを通過する前記放射線の焦点を結ぶ焦点素子をさらに備える装置。
【請求項84】
請求項75に記載の装置であって、前記スリーブに取り付けられ、かつ前記スリーブを通過する前記放射線を反射する反射素子をさらに備える装置。
【請求項85】
装置であって、
放射線源からの放射線を受け入れるように構成されている放射線入力ポートと、前記放射線をフォトニック結晶ファイバに結合するように構成されている出力ポートとを含むアセンブリを備え、
前記アセンブリが、前記放射線源から受け入れた前記放射線の偏光状態を、該放射線が前記フォトニック結晶ファイバに結合される前に、修正するように配置された位相差素子をさらに含む、装置。
【請求項86】
請求項85に記載の装置において、前記アセンブリが、ガス源からのガスを受け入れるように構成されているガス入力ポートをさらに含む、装置。
【請求項87】
請求項86に記載の装置において、前記フォトニック結晶ファイバが、中空のコアを有する、装置。
【請求項88】
請求項87に記載の装置において、前記出力ポートが、前記ガス源から受け取った前記ガスを前記フォトニック結晶ファイバの前記中空のコア内に結合するようにさらに構成されている、装置。
【請求項89】
請求項85に記載の装置において、前記位相差素子が、反射型位相差素子である、装置。
【請求項90】
請求項85に記載の装置であって、前記放射線源をさらに備え、前記放射線源からの放射線が波長λを有する放射線を含む、装置。
【請求項91】
請求項90に記載の装置において、前記反射型位相差素子が、ミラーと、前記ミラーの表面上に配置される約λ以下の光学的厚さを有する位相差層を含む、装置。
【請求項92】
請求項91に記載の装置において、前記位相差層が、前記ミラーの表面への法線に対して約45度の方向に沿って約λ/4の光学的厚さを有する、装置。
【請求項93】
請求項90に記載の装置において、λが約2ミクロン以上である、装置。
【請求項94】
請求項90に記載の装置において、λが約10.6ミクロンである、装置。
【請求項95】
請求項85に記載の装置において、前記位相差素子が、透過型位相差素子である、装置。
【請求項96】
請求項85に記載の装置において、前記位相差素子が前記放射線の偏光状態を実質的に直線状の偏光状態から実質的に非直線状の偏光状態に修正する、装置。
【請求項97】
請求項96に記載の装置において、前記実質的に非直線状の偏光状態が、実質的に円偏光状態である、装置。
【請求項98】
請求項85に記載の装置において、前記アセンブリが、前記放射線入力ポートにおいて前記アセンブリに入る前記放射線の焦点を前記出力ポートに近いウェスト部分に結ぶように構成されている焦点素子をさらに含む、装置。
【請求項99】
請求項98に記載の装置において、前記焦点素子が、前記放射線の焦点を約1,000ミクロン以下のウェスト直径に結ぶ、装置。
【請求項100】
請求項98に記載の装置において、前記焦点素子が、前記放射線の焦点を約500ミクロン以下のウェスト直径に結ぶ、装置。
【請求項101】
請求項98に記載の装置において、前記焦点素子がレンズである、装置。
【請求項102】
請求項101に記載の装置において、前記レンズがZnSeを含む、装置。
【請求項103】
請求項86に記載の装置であって、前記ガス源をさらに備える装置。
【請求項104】
請求項85に記載の装置であって、前記フォトニック結晶ファイバをさらに備える装置。
【請求項105】
方法であって、
レーザが放射した放射線の偏光状態を修正すること、
前記修正された偏光状態を有する前記放射線を、中空のコアを有するフォトニック結晶ファイバの入力端部に導くこと、
ガス源からのガスを前記中空のコアの前記入力端部内に結合すること、
を備える方法。
【請求項1】
システムであって、
導波路軸に沿って延びるコアと、前記コアを囲んでいる誘電体閉じ込め領域とを備えるフォトニック結晶ファイバであって、前記誘電体閉じ込め領域が前記フォトニック結晶ファイバの入力端部から出力端部に前記導波路軸に沿って放射線を誘導するように構成されているフォトニック結晶ファイバと、
前記フォトニック結晶ファイバに取り付けられているハンドピースと、
を備え、前記ハンドピースにより、オペレータが、患者の標的部位に前記放射線を向けるために前記出力端部の向きを制御することができる、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記ハンドピースが内視鏡を含む、システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記内視鏡が可撓性導管を含み、前記フォトニック結晶ファイバの一部が前記可撓性導管内のチャネルを通してねじ込まれている、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記内視鏡が、前記可撓性導管の一部を曲げ、それにより前記オペレータが前記出力端部の向きを変えることができるように構成されている前記可撓性導管に機械的に結合しているアクチュエータを含む、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記可撓性導管の曲がった部分が、約12センチメートル以下の曲率半径を有するように、前記アクチュエータが、前記可撓性導管の一部を曲げるように構成されていている、システム。
【請求項6】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記アクチュエータが、所定の曲げ平面内で前記可撓性導管を曲げるように構成されている、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、前記ハンドピースが、前記可撓性導管内のその導波路軸を中心にして前記フォトニック結晶ファイバの向きを制御する目的で、前記誘電体閉じ込め領域の向きを維持するように前記フォトニック結晶ファイバに取り付けられている、システム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムにおいて、前記ハンドピースと前記フォトニック結晶ファイバとの間の前記取り付けが、動作を維持しながら、約10度以上前記ファイバが捻れるのを防止する、システム。
【請求項9】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記内視鏡が、前記可撓性導管に結合されている第1の部分を有する補助導管をさらに含み、前記フォトニック結晶ファイバが、前記補助導管内のチャネルを通して前記可撓性導管のチャネル内にねじ込まれ、前記補助導管が、前記第1の部分に対して移動することができる第2の部分をさらに含み、前記フォトニック結晶ファイバが、前記第2の部分に取り付けられ、前記第2の部分の移動により、前記オペレータが前記可撓性導管の端部に対して前記出力端部を引き延ばすか、あるいは後退させることができる、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記第2の部分が、前記第1の部分に対して引き延ばされるか、あるいは後退させられ得る、システム。
【請求項11】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記補助導管が硬質の導管である、システム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記ハンドピースが導管を含み、前記フォトニック結晶ファイバの一部が前記導管を通してねじ込まれる、システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記導管が、曲がった部分を含む、システム。
【請求項14】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記導管が、変形可能な材料により形成されている、システム。
【請求項15】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記ハンドピースが、前記導管の一部を曲げるように構成されている前記導管に機械的に取り付けられているアクチュエータを含み、それにより前記オペレータが前記出力端部の向きを変えることができる、システム。
【請求項16】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記ハンドピースが、前記出力端部と前記標的部位との間に約1mm以上の最小の隔離距離を提供する前記出力端部を越えて延びる先端部を含む、システム。
【請求項17】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記フォトニック結晶ファイバが、前記フォトニック結晶ファイバの一部が約90度以上の角度で曲がっていて、前記部分が約12センチメートル以下の曲率半径を有している状態で、前記放射線を前記標的部位に誘導できる程度に十分柔軟である、システム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムにおいて、前記フォトニック結晶ファイバの前記部分が約90度以上の角度で曲がっていて、前記部分が約12センチメートル以下の曲率半径を有している状態で、前記放射線が前記出力端部のところで約1ワット以上の平均パワーを有する、システム。
【請求項19】
請求項17に記載のシステムにおいて、前記フォトニック結晶ファイバの前記部分が約90度以上の角度で曲がっていて、前記部分が約12センチメートル以下の曲率半径を有している状態で、前記放射線が前記出力端部のところで約5ワット以上の平均パワーを有する、システム。
【請求項20】
請求項17に記載のシステムにおいて、前記フォトニック結晶ファイバの前記部分が約90度以上の角度で曲がっていて、前記部分が約10センチメートル以下の曲率半径を有している状態で、前記フォトニック結晶ファイバが、前記放射線を前記標的部位に誘導することができる程度に十分柔軟なものである、システム。
【請求項21】
請求項20に記載のシステムにおいて、前記フォトニック結晶ファイバの前記部分が約90度以上の角度で曲がっていて、前記部分が約5センチメートル以下の曲率半径を有している状態で、前記フォトニック結晶ファイバが、前記放射線を前記標的部位に誘導することができる程度に十分柔軟なものである、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記誘電体閉じ込め領域が、前記導波路軸の周囲に螺旋状に配置されている第1の誘電体材料の層を有する、システム。
【請求項23】
請求項22に記載のシステムにおいて、前記誘電体閉じ込め領域が、前記導波路軸の周囲に螺旋状に配置されている第2の誘電体材料の層をさらに有し、前記第2の誘電体材料が、前記第1の誘電体材料とは異なる屈折率を有する、システム。
【請求項24】
請求項23に記載のシステムにおいて、前記第1の誘電体材料がガラスである、システム。
【請求項25】
請求項24に記載のシステムにおいて、前記ガラスがカルコゲニド・ガラスである、システム。
【請求項26】
請求項25に記載のシステムにおいて、前記第2の誘電体材料がポリマーである、システム。
【請求項27】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記誘電体閉じ込め領域が、カルコゲニド・ガラスの少なくとも1つの層を有する、システム。
【請求項28】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記誘電体閉じ込め領域が、ポリマー性材料の少なくとも1つの層を有する、システム。
【請求項29】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記誘電体閉じ込め領域が、前記導波路軸に沿って延びる第1の誘電体材料の少なくとも1つの層と、前記導波路軸に沿って延びる第2の誘電体材料の少なくとも1つの層とを含み、前記第1および第2の誘電体材料を前記第1の誘電体材料と一緒に線引きすることができる、システム。
【請求項30】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記コアが中空のコアである、システム。
【請求項31】
請求項30に記載のシステムであって、前記入力端部または出力端部に結合されている流体源をさらに備え、動作中、前記流体源が前記コアを通して流体を供給する、システム。
【請求項32】
請求項31に記載のシステムにおいて、前記流体がガスである、システム。
【請求項33】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記コアが、約1,000ミクロン以下の直径を有する、システム。
【請求項34】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記コアが、約500ミクロン以下の直径を有する、システム。
【請求項35】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記フォトニック結晶ファイバが、前記出力端部において約2,000ミクロン以下の外径を有する、システム。
【請求項36】
請求項1に記載のシステムであって、光導波路と、前記光導波路を前記フォトニック結晶ファイバに取り付けるコネクタとをさらに備えるシステム。
【請求項37】
請求項36に記載のシステムにおいて、前記光導波路が、第2のフォトニック結晶ファイバである、システム。
【請求項38】
請求項36に記載のシステムであって、前記光導波路を囲む導管をさらに備えるシステム。
【請求項39】
請求項38に記載のシステムにおいて、前記導管が前記光導波路より硬い、システム。
【請求項40】
請求項38に記載のシステムであって、前記導管に結合されている流体源をさらに備え、動作中、前記流体源が前記導管に流体を供給する、システム。
【請求項41】
請求項1に記載のシステムであって、前記放射線を生成し、該放射線を前記フォトニック結晶ファイバの前記入力端部に向かって導くレーザをさらに備えるシステム。
【請求項42】
請求項41に記載のシステムにおいて、前記レーザがCO2レーザである、システム。
【請求項43】
請求項41に記載のシステムにおいて、前記放射線が約2ミクロン以上の波長を有する、システム。
【請求項44】
請求項41に記載のシステムにおいて、前記放射線が約10.6ミクロンの波長を有する、システム。
【請求項45】
請求項41に記載のシステムであって、補助放射線源と、前記フォトニック結晶ファイバに機械的に結合されている少なくとも1つの追加のファイバとをさらに備え、前記追加の導波路が、補助放射線を前記補助放射線源から前記標的部位に供給するように構成されている、システム。
【請求項46】
請求項45に記載のシステムにおいて、前記追加ファイバが、前記ハンドピースにより前記フォトニック結晶ファイバに機械的に結合されている、システム。
【請求項47】
請求項45に記載のシステムにおいて、前記補助放射線源が、前記放射線を前記フォトニック結晶ファイバの前記入力端部に導くように配置されている前記レーザとは異なる第2のレーザである、システム。
【請求項48】
請求項47に記載のシステムにおいて、前記第2のレーザが、Nd:YAGレーザ、ダイオード・レーザ、またはパルス・ダイ・レーザである、システム。
【請求項49】
請求項42に記載のシステムにおいて、前記補助放射線が、電磁スペクトルの可視部分に波長を有する、システム。
【請求項50】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記フォトニック結晶の少なくとも一部が殺菌されている、システム。
【請求項51】
物品であって、
所定の長さのフォトニック結晶ファイバを備え、前記フォトニック結晶ファイバが、導波路軸に沿って延びるコアと、前記コアを囲む誘電体閉じ込め領域とを含み、前記誘電体閉じ込め領域が、放射線を前記導波路軸に沿って前記フォトニック結晶ファイバの入力端部から出力端部に誘導するように構成され、
前記所定の長さのフォトニック結晶ファイバが殺菌されている、物品。
【請求項52】
請求項51に記載の物品であって、前記所定の長さのフォトニック結晶ファイバを含む密封パッケージをさらに備える物品。
【請求項53】
方法であって、
放射線をフォトニック結晶ファイバの入力端部内に導くこと、
前記フォトニック結晶ファイバに取り付けられているハンドピースを使用して、前記フォトニック結晶ファイバの出力端部の向きを制御し、前記出力端部から放射された放射線を患者の標的部位に導くこと、
を備える方法。
【請求項54】
方法であって、
放射線を中空のコアを有するフォトニック結晶ファイバを通して患者の標的部位に導くこと、
前記中空のコアを通して流体を前記患者の標的部位に流すこと、
を備える方法。
【請求項55】
請求項54に記載の方法において、前記放射線が、前記標的部位において組織を切開し、切除しまたは切断するのに十分なパワーを有する、方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法において、前記流体が、前記標的部位において血液を凝固させるのに十分な圧力および温度を有する、方法。
【請求項57】
請求項54に記載の方法であって、前記標的部位に前記放射線および前記流体を導きながら、前記フォトニック結晶ファイバを曲げることをさらに備える方法。
【請求項58】
請求項57に記載の方法において、前記ファイバを曲げることが、曲率半径が約12センチメートル以下になるように、約45度以上の角度で前記ファイバの一部を曲げることを含む、方法。
【請求項59】
請求項54に記載の方法において、前記標的部位に前記放射線および前記流体を導くことが、前記フォトニック結晶ファイバに取り付けられているハンドピースの一部を保持すること、前記ハンドピースを用いて前記出力端部の向きを制御することを含む、方法。
【請求項60】
請求項54に記載の方法において、前記流体がガスである、方法。
【請求項61】
請求項60に記載の方法において、前記ガスが、前記出力端部において約3.5kPa(0.5PSI)以上の圧力を有する、方法。
【請求項62】
請求項60に記載の方法において、前記ガスが、前記出力端部において約6.9kPa(1.0PSI)以上の圧力を有する、方法。
【請求項63】
請求項60に記載の方法において、前記ガスが、前記標的部位において約50℃以上の温度を有する、方法。
【請求項64】
請求項60に記載の方法において、前記ガスが、前記標的部位において約80℃以上の温度を有する、方法。
【請求項65】
請求項60に記載の方法において、前記ガスが空気である、方法。
【請求項66】
請求項60に記載の方法において、前記ガスが、二酸化炭素、酸素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンまたはキセノンを含む、方法。
【請求項67】
請求項66に記載の方法において、前記ガスが、約98%以上の単一成分ガスを含む、方法。
【請求項68】
請求項60に記載の方法において、前記ガスが、ガスの混合物である、方法。
【請求項69】
請求項54に記載の方法において、前記流体が、約1リットル/分以上の速度で前記中空のコア内に流入する、方法。
【請求項70】
請求項54に記載の方法において、前記流体が、約2リットル/分以上の速度で前記中空のコア内に流入する、方法。
【請求項71】
請求項54に記載の方法において、前記流体が、約8リットル/分以上の速度で前記中空のコア内に流入する、方法。
【請求項72】
請求項54に記載の方法において、前記放射線が、約2ミクロン以上の波長を有する、方法。
【請求項73】
請求項54に記載の方法において、前記放射線が、約10.6ミクロンの波長を有する、方法。
【請求項74】
請求項54に記載の方法において、前記放射線が、前記標的部位において約1ワット以上の平均パワーを有する、方法。
【請求項75】
装置であって、
導波路軸に沿って延びるコアと、前記コアを囲んでいる誘電体閉じ込め領域とを含むフォトニック結晶ファイバであって、前記誘電体閉じ込め領域が、前記フォトニック結晶ファイバの入力端部から出力端部に前記導波路軸に沿って放射線を誘導するように構成されている、フォトニック結晶ファイバと、
前記フォトニック結晶ファイバの前記出力端部に結合されているスリーブであって、前記放射線が前記スリーブを通過し、一次開口部を通して前記スリーブから出ることができる、スリーブと、
を備え、前記スリーブが、1つまたは複数の二次開口部をさらに含み、該1つまたは複数の二次開口部は、前記スリーブに流入したガスが前記二次開口部を通して前記スリーブから出るように配置されている、装置。
【請求項76】
請求項75に記載の装置において、前記スリーブに流入した前記ガスが、前記二次開口部を通るだけでなく、前記一次開口部も通って前記スリーブから出る、装置。
【請求項77】
請求項75に記載の装置であって、前記一次開口部と前記二次開口部との間に配置され、前記放射線が前記スリーブを通過する際に、前記放射線を実質的に通過させる透明な素子をさらに備える装置。
【請求項78】
請求項77に記載の装置において、前記透明な素子が、ガスが前記一次開口部を通して前記スリーブから流出するのを実質的に防止する、装置。
【請求項79】
請求項77に記載の装置において、前記透明な素子がZnSeを含む、装置。
【請求項80】
請求項75に記載の装置であって、前記二次開口部を通して前記スリーブから流出するガスが、前記導管の入力端部内に吸い込まれるように前記二次開口部に対して配置された導管をさらに備える装置。
【請求項81】
請求項75に記載の装置において、前記二次開口部が、前記一次開口部の近くに配置されている、装置。
【請求項82】
請求項75に記載の装置において、前記一次開口部が、前記出力端部において前記フォトニック結晶ファイバの外径よりも小さい直径を有する、装置。
【請求項83】
請求項75に記載の装置であって、前記スリーブに取り付けられ、かつ前記スリーブを通過する前記放射線の焦点を結ぶ焦点素子をさらに備える装置。
【請求項84】
請求項75に記載の装置であって、前記スリーブに取り付けられ、かつ前記スリーブを通過する前記放射線を反射する反射素子をさらに備える装置。
【請求項85】
装置であって、
放射線源からの放射線を受け入れるように構成されている放射線入力ポートと、前記放射線をフォトニック結晶ファイバに結合するように構成されている出力ポートとを含むアセンブリを備え、
前記アセンブリが、前記放射線源から受け入れた前記放射線の偏光状態を、該放射線が前記フォトニック結晶ファイバに結合される前に、修正するように配置された位相差素子をさらに含む、装置。
【請求項86】
請求項85に記載の装置において、前記アセンブリが、ガス源からのガスを受け入れるように構成されているガス入力ポートをさらに含む、装置。
【請求項87】
請求項86に記載の装置において、前記フォトニック結晶ファイバが、中空のコアを有する、装置。
【請求項88】
請求項87に記載の装置において、前記出力ポートが、前記ガス源から受け取った前記ガスを前記フォトニック結晶ファイバの前記中空のコア内に結合するようにさらに構成されている、装置。
【請求項89】
請求項85に記載の装置において、前記位相差素子が、反射型位相差素子である、装置。
【請求項90】
請求項85に記載の装置であって、前記放射線源をさらに備え、前記放射線源からの放射線が波長λを有する放射線を含む、装置。
【請求項91】
請求項90に記載の装置において、前記反射型位相差素子が、ミラーと、前記ミラーの表面上に配置される約λ以下の光学的厚さを有する位相差層を含む、装置。
【請求項92】
請求項91に記載の装置において、前記位相差層が、前記ミラーの表面への法線に対して約45度の方向に沿って約λ/4の光学的厚さを有する、装置。
【請求項93】
請求項90に記載の装置において、λが約2ミクロン以上である、装置。
【請求項94】
請求項90に記載の装置において、λが約10.6ミクロンである、装置。
【請求項95】
請求項85に記載の装置において、前記位相差素子が、透過型位相差素子である、装置。
【請求項96】
請求項85に記載の装置において、前記位相差素子が前記放射線の偏光状態を実質的に直線状の偏光状態から実質的に非直線状の偏光状態に修正する、装置。
【請求項97】
請求項96に記載の装置において、前記実質的に非直線状の偏光状態が、実質的に円偏光状態である、装置。
【請求項98】
請求項85に記載の装置において、前記アセンブリが、前記放射線入力ポートにおいて前記アセンブリに入る前記放射線の焦点を前記出力ポートに近いウェスト部分に結ぶように構成されている焦点素子をさらに含む、装置。
【請求項99】
請求項98に記載の装置において、前記焦点素子が、前記放射線の焦点を約1,000ミクロン以下のウェスト直径に結ぶ、装置。
【請求項100】
請求項98に記載の装置において、前記焦点素子が、前記放射線の焦点を約500ミクロン以下のウェスト直径に結ぶ、装置。
【請求項101】
請求項98に記載の装置において、前記焦点素子がレンズである、装置。
【請求項102】
請求項101に記載の装置において、前記レンズがZnSeを含む、装置。
【請求項103】
請求項86に記載の装置であって、前記ガス源をさらに備える装置。
【請求項104】
請求項85に記載の装置であって、前記フォトニック結晶ファイバをさらに備える装置。
【請求項105】
方法であって、
レーザが放射した放射線の偏光状態を修正すること、
前記修正された偏光状態を有する前記放射線を、中空のコアを有するフォトニック結晶ファイバの入力端部に導くこと、
ガス源からのガスを前記中空のコアの前記入力端部内に結合すること、
を備える方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2007−533374(P2007−533374A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507545(P2007−507545)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/012047
【国際公開番号】WO2005/096783
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506340758)オムニガイド インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】OMNIGUIDE,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/012047
【国際公開番号】WO2005/096783
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506340758)オムニガイド インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】OMNIGUIDE,INC.
【Fターム(参考)】
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