説明

プラズマ処理方法

プラズマ反応処理を用いたフルオロカーボン層の形成方法は、マイクロ波出力及びRFバイアスを印加する工程を有する。前記マイクロ波出力及びRFバイアスは、20mTorr〜60mTorrの範囲の圧力下で印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス及び当該半導体デバイスの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、フルオロカーボン(CFx)層の誘電率を低い値に維持しながら、CFx層と他の金属又は絶縁層との接合を改善するフルオロカーボン(CFx)形成処理に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多層配線構造が、半導体デバイスの高速動作及び小型化を実現するのに利用されてきた。しかしこれらの構造は、全体の配線抵抗及び配線層の寄生容量の増大に起因する、配線に係る遅延を生じさせてきた。
【0003】
低抵抗配線材料−たとえば銅(Cu)−を相互接続体として用いることで配線抵抗は減少する。他方、寄生容量を減少させるのに低誘電率すなわちlow-k材料を用いることが可能である。具体的には、フッ素添加カーボン(フルオロカーボン:CFx)が、寄生容量を減少させて、半導体デバイスの動作速度を改善する絶縁層として用いることができる。
【0004】
従来のプラズマ反応処理は、低誘電率のフルオロカーボン(CFx)層を形成するのに用いられる。プラズマ反応処理は、マイクロ波プラズマ処理装置を用いることによって実行される。前記マイクロ波プラズマ処理装置内では、外部マイクロ波源からのマイクロ波を用いて、プラズマガス−たとえばアルゴン(Ar)又はクリプトン(Kr)−を励起することによって、プラズマが生成される。CF系処理気体−たとえばC5F8又はC6F6気体が、少なくとも約50mTorrの圧力に維持されたプラズマ領域へ導入されるとき、堆積処理は、プラズマ化学気相成長(PE-CVD)法を用いて行われる。これにより、フルオロカーボン(CFx)層の形成について、エッチング速度よりも速い膜形成速度が供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、プラズマ励起源としてただ1つのエネルギー源−たとえばマイクロ波プラズマ−を用いることにより、上述の形成条件下で形成されるフルオロカーボン(CFx)は、CFx層の絶縁特性及び脱離気体特性に関して望ましくない結果を与える恐れがある。その結果、CFx層と他の層−たとえば金属又は絶縁層−の表面との接合は、堆積時に劣化する恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題の観点から本発明が提案される。本発明は、低誘電率を維持しながら、優れた絶縁特性及び脱離気体特性を有するフルオロカーボン(CFx)層を形成する方法を供する。
【0007】
本発明の第1態様によると、フルオロカーボン(CFx)絶縁層を形成する方法が供される。当該方法は、20mTorrよりも大きく60mTorr未満の圧力下でマイクロ波出力及びRFバイアスを印加する工程を有する。
【0008】
本発明の第2態様によると、フルオロカーボン(CFx)絶縁層を形成する方法が供される。当該方法は、マイクロ波出力及びRFバイアスを印加する工程であって、前記フルオロカーボン層は前記RFバイアスを印加しなければ堆積されず、かつ前記圧力は20mTorrよりも大きい、工程を有する。
【0009】
本発明の第3態様によると、絶縁層としてフルオロカーボン層を有する半導体デバイスを製造する方法が供される。当該方法は、プラズマ反応処理を用いて基板全体にわたって前記フルオロカーボン層を形成する工程を有する。前記のフルオロカーボン層を形成する工程は、マイクロ波出力及びRFバイアスが20mTorr〜60mTorrの範囲の圧力下で印加されるときに実行される。
【0010】
本発明の第4態様によると、プラズマ反応処理を用いてフルオロカーボン層を形成する方法が供される。当該方法は、マイクロ波出力及びRFバイアスを印加する工程、並びに、プラズマ励起気体及びCF系処理気体に加えて、酸素(O)を処理チャンバへ導入する工程を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】プラズマ処理反応において圧力の関数としての堆積速度の例を概略的に表している。
【図2】圧力の関数としてのフルオロカーボン(CFx)層の誘電率曲線を概略的に表している。
【図3】絶縁膜を形成する装置の実施例の概略図を表している。
【図4】目標の構造及び実験用試料をそのストレステストの結果と共に表している。
【図5】CF4試料の厚さ及び屈折率の測定に用いられる等高線図を表している。
【図6】表面モフォロジーの評価に用いられるCFxの実験用試料の断面図を表している。
【図7】様々な実験用試料について、印加された電場の関数としての漏れ電流を表している。
【図8】様々な実験用試料のTDS強度を表している。
【図9】様々な実験用試料のTDS強度を表している。
【図10】様々な実験用試料について、RFバイアスの関数としての漏れ電流を表している。
【図11】様々な実験用試料について、フルオロカーボン層の厚さの関数としての漏れ電流を表している。
【図12】様々な実験用試料について、圧力の関数としての相対誘電率を表している。
【図13】様々な実験用試料について、圧力の関数としての平均相対誘電率を表している。
【図14】代替実施例の等高線図を表している。
【図15】屈折率の関数としての様々な実験用試料の相対誘電率を表している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以降では、本発明の好適な典型的実施例が図示された添付図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【0013】
本開示は概して、半導体デバイス及び当該半導体デバイスの製造方法に関する。より具体的には、本開示は、フルオロカーボン(CFx)層の誘電率を低い値に維持しながら、CFx層と他の金属又は絶縁層との接合を改善する新たなフルオロカーボン(CFx)形成処理に関する。
【0014】
本発明の実施例は、低誘電率(k:約2.3未満)を維持しながら、絶縁特性及び脱離気体特性が改善されたフルオロカーボン(CFx)絶縁層を形成することで、前記CFx層の接合を改善する処理に関する。このことは、マイクロ波プラズマ出力によるRFバイアス印加がなければ前記フルオロカーボン(CFx)層を堆積できないような所定の処理条件を選ぶことによって実現される。このようにして、処理のエッチング速度を減少させながら、フルオロカーボンの堆積処理の形成速度が増大する。
【0015】
前記所定の処理条件を選ぶことによって、反応副生成物−つまり前記マイクロ波出力によって生成される従来のフルオロカーボン(CFx)−の組成比が最小限に抑制される。それに加えて、前記所定の処理条件は、マイクロ波プラズマの多くが、プラズマ気体−たとえばアルゴン(Ar)気体−を励起し、及び前記プラズマ条件を維持することを可能にする。他方、前記RFバイアスが数百ワットの範囲内で印加される場合には、前記フルオロカーボン(CFx)絶縁層の相対誘電率は、前記RFバイアスの存在による有害な影響を受けない。
【0016】
しかもフルオロカーボン(CFx)絶縁層を形成するのに高周波(RF)バイアスが印加されるとき、炭素とフッ素との組成比は約0.9〜1.0である。このことは、炭素とフッ素との組成比は約1.1〜1.2となる、前記高周波(RF)バイアスが印加されることなく前記フルオロカーボン(CFx)層が形成される従来の結果とは対照的である。前記フルオロカーボン(CFx)絶縁層と、主として金属元素−たとえばチタン(Ti)−で構成されるバリア層との接合を考慮すると、本発明の前記フルオロカーボン(CFx)形成処理を用いることがより好ましい。
【0017】
最初に図1を参照すると、プラズマ反応処理における圧力の関数としての堆積速度の例が図示されている。図1に図示されているように、2つのエネルギー源について、圧力の関数としての堆積速度が図示されている。前記2つのエネルギー源とは、1)プラズマ励起源−たとえばマイクロ波出力源−及び2)高周波(RF)出力源である。プラズマ励起源−たとえばマイクロ波源−が唯一のエネルギー源として用いられるときには、プラズマ気体の圧力が約30mTorr(付近)に維持されるときに堆積が起こることに留意して欲しい。図1に図示されているように、この圧力領域は大雑把に2つの領域に分けられる。前記2つの領域とは、1)20mTorr〜30mTorrの範囲の圧力を有する第1領域、及び2)30mTorr〜60mTorrの範囲の圧力を有する第2領域である。前記第1領域−「エッチングプラズマ領域」とも呼ばれる−は、マイクロ波出力源と共に高周波(RF)出力を印加しなければ堆積が起こりえない領域である。前記第2領域は、高周波(RF)出力を印加せずに、唯一のエネルギー源としてマイクロ波出力源を用いることによって堆積が起こりうる領域である。しかし高周波(RF)源を加えることで、低誘電率を維持しながら、優れた絶縁特性及び脱離気体特性を有するフルオロカーボン(CFx)層の形成が可能となる。これらの好ましい結果は、エッチングプラズマ領域(20mTorr〜30mTorrの圧力)でフルオロカーボン(CFx)層を形成するときにも与えられる。
【0018】
上述の圧力領域でフルオロカーボン(CFx)層を形成するとき、フルオロカーボン形成速度の増大に加えて、フルオロカーボン(CFx)エッチング速度を減少させることができる。プラズマ反応処理における形成速度とエッチング速度は、マイクロ波出力源に直接相関するので、マイクロ波出力源は、2.45GHzの周波数で約1kW〜3.5kWの範囲のマイクロ波出力を発生させるように設定される。
【0019】
さらに前述したように、上述の圧力領域で形成されたフルオロカーボン(CFx)層は、好ましい絶縁特性及び脱離気体特性を供する。これらの好ましい結果を実現するため、RF出力源は、約400kHzの周波数で、約20W〜120Wの範囲のRF出力で用いられる。
【0020】
本発明の一の態様によると、フルオロカーボン(CFx)層の相対誘電率は、RFバイアス源の存在によって有害な影響を受けない。しかし後述するように、相対誘電率が約2.3未満のフルオロカーボン(CFx)層は、圧力領域が所定の範囲に限定されるときに実現される。
【0021】
次に図2を参照すると、圧力の関数としてのフルオロカーボン(CFx)層の誘電率曲線が概略的に表されている。プラズマ気体の圧力が60mTorr以下に維持されるとき、本発明の実施例によるフルオロカーボン(CFx)絶縁層は、マイクロ波出力源に加えてRF出力源を用いることによって堆積可能である。しかし図2に図示されているように、CFx層の相対誘電率は、圧力があまりに低いときに増加する傾向にある。このことは主として、プラズマ気体の圧力及びマイクロ波出力が低いときに、生成されたプラズマと反応する処理気体−たとえばCF系気体−の量は相対的に増大するという事実に起因する。その結果、フルオロカーボン(CFx)層の相対誘電率は、プラズマの圧力があまりに低いときに増大する。
【0022】
本発明の処理によって形成されるCFx絶縁層の相対誘電率の増大を回避するためには、プラズマ気体の圧力は、所定の範囲内に維持されることが好ましい。好適実施例では、圧力の所定範囲は、20mTorr〜60mTorrの範囲内に設定される。この範囲は、優れた絶縁特性及び脱離気体特性を有するフルオロカーボン(CFx)層を得るのに用いられる圧力範囲と同一である。
【0023】
本発明の好適実施例によるフルオロカーボン(CFx)絶縁層は、絶縁層形成装置を用いて形成される。図3は、絶縁層形成装置30の実施例の概略図を表している。図3に図示されているように、絶縁層形成装置30は、処理容器50、半径ラインスロットアンテナ62、及び載置台51を有する。
【0024】
処理容器50の内部は、ラジアルラインスロットアンテナ62側のプラズマ生成領域R1と、載置台51側の膜形成領域R2に区分けされている。外部マイクロ波源66は、所定周波数−たとえば2.45GHz−のマイクロ波出力をラジアルラインスロットアンテナ62へ供する。マイクロ波源66からのマイクロ波は、気体供給ポート70からプラズマ生成領域R1へ放出されるプラズマ気体一たとえばアルゴン(Ar)気体−の励起を引き起こす。プラズマ気体は、プラズマ気体供給源71から、気体リング72を介して気体供給ボート70へ供給される。続いてプラズマ気体は、プラズマ生成領域R1へ放出される。
【0025】
絶縁層形成装置30は、シャワープレートとも呼ばれる処理気体供給構造80をさらに有する。処理気体供給構造80の上面もまた図3に図示されている。処理気体供総構造80は処理気体パイプ81を有する。処理気体パイプ81は、載置台51上に載置された基板Wに対向するグリッドとして、プラズマ生成領域R1と膜形成領域R2との間に設けられている。処理気体供給パイプ81は、環状パイプ81aとグリッドパイプ81bを有して良い。環状パイプ81aは、処理気体供給構造80の外郷周辺部にて輪を形成するように設けられている。グリッドパイプ81bは、複数のマトリックスパイプが環状パイプ81aの内面で互いに直交するように設けられている。
【0026】
処理気体供給構造80の下面では、多数の処理気体供給ボート83が、基板W全体にわたって均一に形戒されている。処理気体供給源84は、気体パイプ85を介して処理気体供給パイプ81と接続する。この実施例では、処理気体供給源84は、希釈気体として、アルゴン(Ar)気体とCF系気体−たとえばC−の混合気体を、気体パイプ85を介して処理気体供給パイプ81へ供する。続いて希釈気体は、各処理気体供給ポート83から膜形成領域R2へ向かって下方に放出される。気体−たとえばCF系気体−の流速は、シャワープレート80上の処理気体供給ボート83の位置に依存して、2つの速度に分類することがでぎる。2つの速度とは、1)”sh-c”流速と、2)”sh-e”流速である。”sh-c”流速は、シャワープレート80の中央部に位置する処理気体供給ポード83での流速を指称する。”sh-e”流速は、シャワープレート8Oの端部に位置する処理気体供給ポート83での流速を指称する。
【0027】
[実験用試料]
フルオロカーボン(CF)絶縁層の絶縁特性、接合、及び信頼性のある動作を評価するため、本開示に記載された処理に従って複数の実験用試料が作製された。続いて上述の特性を評価するため、実験用試料は様々なテストを受けた。各実験用試料では、フルオロカーボン(CFx4)絶縁層は、高周波HF出力及びマイクロプラズマ源を用いることによって形成される。以降では明示的に記載されない限り、以下のフルオロカーボン層を形成するのに以下の設定条件が用いられた。具体的には、1)CFx4層:周波数2.45GHzで約1kW〜3.5kWのマイクロ波出力、周波数ユ00kIIzで約2OW〜12OWの高周波RF出力、2)CFx2層:周波数2.15GHzで約1.5kWのマイクロ波出力、高周波RFバイアスは印加されず、3OmTorr未満の低圧で形成、及び3)CF層:周波数245GHzで約3kWのマイクロ波出力、高周波RFバイアスは印加されず、50mTorr未満の低圧で形成、である。様々なフルオロカーボン(CF、CFx2、及びCFx4)絶縁層を有する全ての実験用試料は、約330℃〜400℃の基板温度で形成された。以降では、これらの評価結果について詳細に説明する。
【0028】
図4を参照すると、標的構造、並びに、ストレステスト、テープテスト、及び、ブリスターテストを実行するのに用いられる実験用試料の上面図が図示されている。これらの評価に用いられる構造は、第1アモルファスカーボン層、フルオロカーボン(CFx4)層、第2アモルファスカーボン層、及び密閉キャップ層を有する。第1アモルファスカーボン層はバルクのシリコン(Si)基板上に形成される一方で、第2アモルファスカーボン層はフルオロカーボン(CFx4)層全体にわたって形成される。いずれのアモルファスカーボン層も、約10nmの厚さを有し、かっエッチングプラズマ領域内に形成される。エッチングプラズマ領域内では、外部RF電源83からの高周波(RF)バイアスが、絶縁層形成装置30の載置台51上に載置された基板Wに印加される。RFバイアスは、約120WのRF出力で100kHzの周波数を有する。フルオロカーボン(CFx4)層もまた、エッチングプラズマ領域と同一の形成条件下で形成される。従ってアモルファスカーボン層の形成に用いられたRFバイアス源と同一のものが、基板Wに用いられる。密閉キャップ層は、CFx4層から生成された脱離気体と反応するように形成される。
【0029】
続いて事前評価アニーリングが、約350℃で24時間行われた。事前評価アニーリングの実行後、実験用試料はそれぞれ、ストレステスト、ブリスターテスト、及びテープテストを受けた。ストレステストは、約400℃で2時間行われた。この実験用試料は、すべての堆積層、アモノシファスカーボン層、及びCFx4層でのストレステストに合格した。スコッチテープを実験用試料の表面に貼り付けた後の実験朗試料の上面図もまた図4に図示されている。ストレステストと同様に、RFバイアスが印加されたエッチングプラズマ領域内で形成されたすべての層は、ブリスターテストとテープテストに合格した。このことは、この試料については、層の気泡及び剥離が観測されなかったことを意味する。
【0030】
以降では、本発明の処理に従って形成されたフルオロカーボン(CFx4)層の屈折率及び厚さについて調査した。この日的のため、複数の実験用試料が作製された.しかし現時点での最高であるCFx4試料だけを、この評価に用いられるものとして選んだ。図5は、フルオロカーボン(CFx4)層の屈折率及び厚さを測定するのに用いられる現時点での最高の実験用試料の等高線図を表している。表1は、実験用試料の厚さ及び屈折率についての等高線図から得られた平均値、最小値、最大値、及び不均一値をまとめたものである。
【0031】
【表1】

図5に図示され、また表1にまとめられているように、フルオロカーボン(CF系)試料の厚さと屈折率に関する不均一性の問題は、新たなフルオロカーボン形成処理でも依然として存在する。しかし屈折率及び相対誘電率は、フルオロカーボン(CFx4)実験用試料全体で低いまま(k<〜2.3)である。
続いて、本発明の処理に従って形成されたフルオロカーボン(CF)絶縁層の表面モフォロジーを調査した。この目的のため、各異なるフルオロカーボン(CFとCFx4)層を有する2つの実験用試料が、バルクシリコン基板全体にわたって形戒された。CF試料とCFx4試料のいずれも、絶縁層形成装置30を用いることによって、[0026]に記載された設定条件と同一の設定条件で形成される。
【0032】
次に図6を参照すると、各ウェハの中央に対して様々な点からとられた2つの実験用試料の断面像が図示されている。両実験用試料の断面像が、図6の上側と下側に図示されている。CF実験用試料については、1)A(0,0)と2)B(−135,0)の座標で表される2つの点で断面像がとられた。他方、CF実験用試料の断面像は3点でとられた。最初の2点はCFx実験用試料について用いられた座標と同一で、第3点はC(−150,0)の座標を有する。図6に図示されているように、CFx4絶縁層を有する実験用試料は、CFx絶縁層を有する実験用試料と比較して凹凸が少ない。従ってCFx4絶縁層の表面モフォロジーは、CF層の場合と比較して改善されている。その結果、CFx4絶縁層についてはより滑らかな表面が得られた。
図7を参照すると、様々な実験用試料にっいて、印加電圧の関数としての漏れ電流が図示されている。漏れ電流は、約400℃の温度で2時間の熱処理が行われる熱応力の地点で測定された。この評価のため、3つの実験用試料CF、CFx2、及びCFx4が形成された。CF絶縁層とCFx2絶縁層のいずれも、高周波RFバイアスを印加することなく形成される。CFx絶縁層は約50mTorrの圧力下で形成される一方で、CFx2絶縁層は低圧(30mTorr未満)下で形成される。[0026]に記載された条件と同一の条件でCFx4絶縁層を有する実験用試料を形成するため、高周波RFバイアスが印加される。
【0033】
図7に図示されているように、印加電圧が約−2MV/cm〜−0.5MV/cmの範囲内であるときには、CFx4絶縁層を有する実験用試料の漏れ電流は小さい。表2は、印加電場が約1.5MV/cmであるときの各実験用試料にっいての漏れ電流(Jg@1.5MV/cm)の値をまとめたものである。表2に示されているように、1.5MV/cmでのCFx4絶縁層の漏れ電流の値は小さい。
【0034】
【表2】

3つの実験用試料(CF、CFx2、及びCFx4)は、本発明のフルオロカーボン形成処理に従って形成され、かっ熱脱離分光(TDS)測定力直行われた.この実験は、各実験用試料でのフッ素(F)の分子量又は原子量を検出するように行われる。各試料の熱脱離分光測定が行われ、かっその結果が図8に図示されている。縦軸は、質量が19の揚合(M/z=19)でのフッ素(F)気体測定された強度値である。横軸は、温度が所定の速度で上昇する間の処理時聞である。この実験では、質量19のフッ素(F)気体が検出された。図8に図示されたスペクトルでは、2つのピークP1とP2が存在する。表3は、各実験用試料の両ピークの強度をまとめたものである。図8と表3でも示されているように、質量が19の場合(M/z=19)でのCF絶縁層の脱ガス速度は低い。
【0035】
【表3】

次の実験では、分子量が85(M/z=85)のSiFに属する脱ガス又は脱離気体を調査した。この目的のため、3つの実験用試料(CF、CFx2、及びCFx4)熱脱離分光が測定された。その結果が図9に図示されている。図8で示された先の実験と同様に、縦軸は、質量が85の場合(M/z=85)でのフッ素(F)気体測定された強度値である。横軸は、温度が所定の速度で上昇する間の処理時間である。この実験では、質量が85のSiF気体が検出された。図9のスペクトル中に一のピークが観測された。表4は、各実験用試料についてのピーク強度をまとめたものである。図9と表4で示されているように、CFx4絶縁層ではSiFピークは観測されなかった.従ってCFx4層のSiFに属する脱ガス量は、3つの実験用試料の中で最小である。
【0036】
【表4】

以降では、現時点で最高のフルオロカーボン(CFx4)実験用試料を形成するのに用いられる設定条件について詳述する。表5は、現時点で最高のCFx4試料を形成するための設定条件をまとめたものである.
【0037】
【表5】

現時点で最高のCFx4絶縁層の実験結果は表6にまとめられている.
【0038】
【表6】

次に図10を参照すると、4つの実験用試料について、RFバイアスの関数としでの漏れ電流が図示されている。すべての実験用試料は、[0026]で述べた設定条件で、本発明の膜形成処理を用いることによって作製された。CFx4絶縁層を有する3つの実験用試料は、RFバイアスがそれぞれ、0W、60W、及び120Wに設定された状態で形成された。第4の実験用試料は、絶縁層としてCF層を有する.この試料について、RF出力は0Wに設定された.図10に図示されたように、RFバイアス電力が増大することで、漏れ電流は減少する傾向にある。印加電圧が1MV/cm(Jg@1MV/cm)に設定されるときに漏れ電流値力測定されたことに留意して欲しい。
【0039】
図11は、フルオロカーボン(CFx4)層の厚さの関数としでの漏れ電流を表している。この目的のため、3組の実験用試料が作製された。各組では、ほぼ同一のフルオロカーボン(CFx4)層の厚さを有する5つの実験用試料が形成された、第1組、第2組、及び第3組の実験用試料のフルオロカーボン絶縁層の平均厚さはそれぞれ、85.49nm、137.11nm、及び190.26nmである。図11に図示されているように、フルオロカーボン(CFx4)層の厚さが大きくなればなるほど、漏れ電流の値は小さくなる。印加電圧力が1MV/cm(Jg@1MV/cm)に設定されるときに漏れ電流値が測定されたことに留意して欲しい。
【0040】
次に図12を参照すると、圧力の関数としてのフルオロカーボン(CFx4)層の相対誘電率が示されている。この評価のため、2組の実験用試料が、絶縁層形成装置30を用いて形成された。各組では、3組の実験用試料が以下の条件で形成された。具体的には、25mTorr、30mTorr及び35mTorrである。第1及び第2組でのRFバイアスはそれぞれ90Wと120Wに設定された。図12に図示されているように、圧力についての設定条件が大きければ大きいほど、相対誘電率の値は大きくなる。線形回帰分析を用いることによって、各データ組についての最善の線形近似フィッティングが計算される。図12に図示されているように、各実験用試料の組について非常に良好な相関が得られた(RFバイアス:90W→R=0.97及びRFバイアス:120W→R=0.98)。
【0041】
様々な実験用試料について、圧力の関数としての平均誘電率が図13に図示されている。図13に図示されているように、圧力が22mTorrでは2.38の最小平均値が得られる一方で、圧力が28mTorrでは2.62の最大平均値が得られる。この結果によると、22mTorrの圧力値は最低値の相対誘電率を供する。このことは、フルオロカーボン(CFx4)絶縁層の形成に用いられる圧力の最善値が約22mTorrであることを意味している。
【0042】
以降では、フルオロカーボン(CFx4)絶縁層の特性をさらにより改善する代替実施例が評価される。この代替実施例では、絶縁層形成装置30の気体リング72を介して、処理容器50へ酸素(O)が導入される。この代替実施例の有効性を評価するため、厳密に同一の設定条件−ただし酸素(O)は除く−を有する2つの実験用試料(#1と#2)が作製された。表7は、両実験用試料についての設定条件をまとめたものである。前述したように、”sh-c”と”sh-e”はそれぞれ、シャワープレート80の中心部と端部での流速を表す一方で、”gr”は気体リング72での気体の流速を表す。
【0043】
【表7】

図14を参照すると、屈折率の測定に用いられた両実験用試料の等高線図が図示されている。図14に図示されているように、酸素(O)が処理容器50の雰囲気に加えられた実験用試料#2の屈折率の最大値、最小値、及び平均値は低い。この結果、第2実験用試料の誘電率は低く(low−kと)なる。表8は、両実験用試料の厚さ、屈折率、及び相対誘電率をまとめたものである.表8に示されているように、酸素が雰囲気中に導入されるときには、厚さの値と相対誘電率(k)もまた低くなる。この評価は、酸素(O)を用いることによって低い値の誘電率を得ることができることを確認した。
【0044】
【表8】

続いで、フルオロカーボン(CF、CFx2、及びCFx4)の動作信頼性を調査した。この目的のため、各々が異なるフルオロカーボン(CF、CFx2、及びCFx4)絶縁層を有する3組の実験用試料が作製された。各組では、同様のフルオロカーボン(CF、CFx2、及びCFx4)絶縁層を有する3つの同一試料が、シリコン(Si)バルク基板全体にわたって形成される。
【0045】
各実験用試料の組でのフルオロカーボン(CF、CFx2、及びCFx4)絶縁層を形成するための設定条件が表9にまとめられている。
【0046】
【表9】

フルオロカーボン(CF、CFx2、及びCFx4)の動作信頼性を評価するため、各組の実験用試料は、評価用の「霧浴(mist bath)」とも呼ばれる加速試験を受けた。従って各組のフルオロカーボン(CF、CFx2、及びCFx4)絶縁層の形成後、各組の実験用試料は、高湿度−たとえば85%(H20)−の浴で一定温度−たとえば80℃−の状態に置かれる。その実験を実行するため、各組の第1試料は加速試験を受けないことにする。よって、実験用試料を霧浴へ1〜10分間置くことによって、各組の第2試料が加速試験を受けることになる。各組の最後の実験用試料もまた、100分間加速試験を受ける。
【0047】
図15は、各実験用試料の組について、屈折率の関数としての相対誘電率(k値)を表している。高湿度環境中で一定温度に保たれた状態での絶縁層の屈折率変化が小さければ小さいほど、その絶縁層の絶縁特性ひいては全体的な信頼性力が良好になる。
【0048】
図15に図示されているように、第3組の実験用試料で、屈折率変化、ひいては相対誘電率の変化が最小となる.表9に示されているように、第3組の実験用試料のフルオロカーボン(CFx4)絶縁層は、RFバイアスの印加、さらには窒素(H)気体を雰囲気中にカロえることによって形成される。窪素(N)気体を雰屈気中に加えることによって、窒素(N)原子ば励起され、CF蕊恕絶縁層の表面へ向かって発光する。この結果、フルオロカーボン(CFx4)絶縁層への硬化すなわち改質効果が生じる.これにより、屈折率ひいては相対誘電率の変化が小さくなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ反応処理を用いることによってフルオロカーボン層を形成する方法であって、20mTorrよりも大きく60mTorr未満の圧力下でマイクロ波出力及びRFバイアスを印加する工程を有する、方法。
【請求項2】
前記RFバイアスの出力は、20Wよりも大きくて60W未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マイクロ波出力は、1.0kWよりも大きくて3.5kW未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロ波の周波数が2.45GHzである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記RFバイアスの周波数が400kHzである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フルオロカーボン層がCFx4を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
プラズマ反応処理を用いることによってフルオロカーボン層を形成する方法であって、当該方法はマイクロ波出力及びHFバイアスを印加する工程を有し、前記フルオロカーボン層は前記RFバイアスを印加しなければ堆積されず、かつ前記圧力は20mTorrよりも大きい、方法。
【請求項8】
前記RFバイアスの出力は、20Wよりも大きくて120W未満である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記圧力は30mTorr未満である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロ波出力は、1.0kWよりも大きくて3.5kW未満である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロ波の周波数が2.45GHzである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記RFバイアスの周波数が400kHzである、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記フルオロカーボン層がCFx4を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
絶縁層としてフルオロカーボン層を有する半導体デバイスを製造する方法であって、
当該方法はプラズマ反応処理を用いて基板全体にわたって前記フルオロカーボン層を形成する工程を有し、
前記のフルオロカーボン層を形成する工程中、マイクロ波出力及びRFバイアスが20mTorr〜60mTorrの範囲の圧力下で印加される、方法。
【請求項15】
前記RFバイアスの出力は、20Wよりも大きくて120W未満である、請求項14に記載の方法.
【請求項16】
前記マイクロ波出力は、2.45GHzの周波数では1.0kwよりも大きくて3.5kw未満である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記RFバイアスの周波数が400kHzである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
プラズマ反応処理を用いてフルオロカーボン層を形成する方法であって:
マイクロ波出力及びRFバイアスを印加する工程;並びに、
プラズマ励起気体及びCF系処理気体に加えて、酸素(O)を処理チャンバへ導入する工程;
を有する方法。
【請求項19】
前記RFバイアスの出力は、20Wよりも大きくて120W未満である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記マイクロ波出力及びRFバイアスは、20mTorrよりも大きく60mTorr未満の圧力下で印加される、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−518276(P2012−518276A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550137(P2011−550137)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/000468
【国際公開番号】WO2010/096172
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】