説明

ポジ型感光性樹脂組成物

【課題】感度、解像度といったポジ型のリソグラフィー性能にすぐれるばかりでなく、残留応力が低減された塗膜を低い熱処理温度で得ることができる、ポジ型感光性樹脂組成物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するヒドロキシポリアミド100質量部と、特定のイソシアヌル酸誘導体20〜80質量部と、感光性ジアゾキノン化合物1〜100質量部を含むポジ型感光性樹脂組成物。


(式中、X1 は少なくとも2個以上の炭素原子を有する4価の有機基、X2 ,Y1 およびY2 は少なくとも2個以上の炭素原子を有する2価の有機基、mは2〜1000の整数、nは0〜500の整数であって、m/(m+n)≧0.5である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の表面保護膜、層間絶縁膜として使用するポジ型感光性樹脂組成物、該ポジ型感光性樹脂組成物を用いた耐熱性を有する硬化レリーフパターンの製造方法、及び該硬化レリーフパターンを有してなる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の表面保護膜、層間絶縁膜には、優れた耐熱性と電気的特性、機械的特性などを併せ持つポリイミド樹脂が用いられている。このポリイミド樹脂は、現在は一般的には感光性ポリイミド前駆体組成物の形で供され、塗布、活性光線によるパターニング、現像、熱イミド化処理等を施すことによって、半導体装置上に表面保護膜、層間絶縁膜等を容易に形成させることが出来、従来の非感光性ポリイミド前駆体組成物に比べて大幅な工程短縮が可能となるという特徴を有している。
ところが、感光性ポリイミド前駆体組成物は、その現像工程においては、現像液としてN−メチル−2−ピロリドンなどの大量の有機溶剤を用いる必要があり、近年の環境問題の高まりなどから、脱有機溶剤対策が求められてきている。これを受け、最近になって、フォトレジストと同様に、アルカリ性水溶液で現像可能な耐熱性感光性樹脂材料の提案が各種なされている。
中でも、アルカリ性水溶液可溶性のヒドロキシポリアミド、例えばポリベンゾオキサゾール(以下、PBOともいう)前駆体を、感光性ジアゾキノン化合物などの光活性成分と混合したPBO前駆体組成物をポジ型感光性樹脂組成物として用いる方法が、近年注目されている。
【0003】
このポジ型感光性樹脂の現像メカニズムは、未露光部の感光性ジアゾキノン化合物がアルカリ性水溶液に不溶であるのに対し、露光することにより該感光性ジアゾキノン化合物が化学変化を起こしインデンカルボン酸化合物となってアルカリ性水溶液に可溶となることを利用したものである。この露光部と未露光部の間の現像液に対する溶解速度の差を利用し、未露光部のみのレリーフパターンの作成が可能となる。
上述のPBO前駆体組成物は、露光およびアルカリ性水溶液による現像でポジ型レリーフパターンの形成が可能である。さらに熱により、オキサゾール環が生成し、硬化後のPBO膜はポリイミド膜と同等の熱硬化膜特性を有するようになるため、PBO前駆体組成物は、有機溶剤現像型ポリイミド前駆体の有望な代替材料として注目されている。しかしながら、これまで提案されている方法によって得られるPBO前駆体組成物には、未だ改良すべき点も多い。
【0004】
例えば、近年では、配線材料として従来用いられてきたアルミニウムよりも電気抵抗の点で優れる銅を使用した半導体装置が開発されている。また、配線絶縁膜として従来用いられてきた酸化ケイ素より機械的強度には劣るが、低誘電率である層間絶縁膜を使用した半導体装置が開発されている。このような半導体装置の場合、銅配線や低誘電率層間絶縁膜にダメージを与えないよう、表面保護膜は従来より低い温度で形成可能であり、かつ低残留応力であることが求められる。しかしながら、従来のPBO前駆体組成物は一般的に350℃以上の温度でキュアする必要があり、より低いキュア温度で形成できる材料が望まれていた。
また、残留応力の点でも40MPa前後の引張応力を有することが多く、低誘電率層間絶縁膜を採用した半導体装置に使用するには膜厚を厚くできないなどの制約があった。
【0005】
このような問題を解決するため、例えば特許文献1には、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体にゴム弾性を有する成分を添加することにより、残留応力を低減させることができる旨の技術思想が開示されている。
特許文献1によれば、ポリイミド前駆体にシリコーンなどからなるゴム弾性を有する成分を加えることにより、得られる被膜の弾性率が大幅に低下するとの結果が開示されている。しかしながら、この結果を得るためには350℃で材料をキュアする必要がある上、残留応力が実際にどの程度低減されるか、数値的な記載はない。
また特許文献2には、特定構造のPBO前駆体を採用することにより、得られる被膜の残留応力が最小で13MPaまで低減できる旨が開示されている。しかしながらこの技術も、キュア温度として400℃を要するという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−131905号公報
【特許文献2】特開2001−075280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、感度、解像度といったポジ型のリソグラフィー性能を損なうことがなく、低応力の硬化膜を得ることができる新規なポジ型感光性樹脂組成物、該組成物を用いた硬化レリーフパターンの製造方法、及び該硬化レリーフパターンを有してなる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するヒドロキシポリアミドに特定構造のイソシアヌル酸誘導体を特定添加量組み合わせることで、上記の課題を解決するポジ型感光性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の第一は、
(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するヒドロキシポリアミド100質量部に対して、
(B)下記一般式(2)で表されるイソシアヌル酸誘導体20質量部〜80質量部、
(C)感光性ジアゾキノン化合物1〜100質量部、
を含むことを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物である。
【化1】

(式中、X1 は少なくとも2個以上の炭素原子を有する4価の有機基、X2 ,Y1 およびY2 は少なくとも2個以上の炭素原子を有する2価の有機基、mは2〜1000の整数、nは0〜500の整数であって、m/(m+n)≧0.5である。なお、X1 およびY1 を含むm個のジヒドロキシジアミド単位、並びにX2 およびY2 を含むn個のジアミド単位の配列順序は問わない。)
【0009】
【化2】

(式中、Q1 はそれぞれ独立に、下記式(3)で表される一価の置換基である。)
【0010】
【化3】

(式中、Q2 はエチレン基またはプロピレン基、Q3 は下記式(4)で表される一価の置換基であり、rは1から4までの整数、pは4から6までの整数である。qは0から3までの整数であるが、すべてのQ1 について同時に0であることはない。)
【化4】

(式中、Q4 は水素原子又はメチル基を表す。)
【0011】
本発明の第二は、(1)第一発明のポジ型感光性樹脂組成物を層またはフィルムの形で基板上に形成し、(2)マスクを介して化学線で露光するか、光線、電子線またはイオン線を直接照射し、(3)露光部または照射部を現像液で溶出除去し、(4)得られたレリーフパターンを加熱処理する、ことを特徴とする硬化レリーフパターンの製造方法を提供するものである。
本発明の第三は、第二発明の硬化レリーフパターンを有してなる半導体装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、感度、解像度といったポジ型のリソグラフィー性能に優れるばかりでなく、熱処理後の硬化膜の残留応力が低減されたポジ型感光性樹脂組成物、該ポジ型感光性樹脂組成物を用いた硬化レリーフパターンの製造方法、および該硬化レリーフパターンを有してなる半導体装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<ポジ型感光性樹脂組成物>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物を構成する各成分について、以下に具体的に説明する。
(A)ヒドロキシポリアミド
本発明のポジ型感光性樹脂組成物のベースポリマーであるヒドロキシポリアミドは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有し、Y1 (COOH)2 の構造を有するジカルボン酸およびX1 (NH2 2 (OH)2 の構造を有するビスアミノフェノールを重縮合させて得ることができるヒドロキシジアミド単位m個を必須とする。ここで、該ビスアミノフェノールの2組のアミノ基とヒドロキシ基はそれぞれ互いにオルト位にあるものであり、該ヒドロキシポリアミドを約280〜400℃で加熱することによって閉環して、耐熱性樹脂であるポリベンゾオキサゾールに変化する。mは2〜1000の範囲が好ましく、3〜50の範囲がより好ましく、3〜20の範囲であることが最も好ましい。
【化5】

(式中、X1 は少なくとも2個以上の炭素原子を有する4価の有機基、X2 ,Y1 およびY2 は少なくとも2個以上の炭素原子を有する2価の有機基、mは2〜1000の整数、nは0〜500の整数であって、m/(m+n)≧0.5である。なお、X1 およびY1 を含むm個のジヒドロキシジアミド単位、並びにX2 およびY2 を含むn個のジアミド単位の配列順序は問わない。)
【0014】
該ヒドロキシポリアミドには、必要に応じて、上記一般式(1)のジアミド単位n個を縮合させてもよい。該ジアミド単位は、X2 (NH2 2 の構造を有するジアミンおよびY2 (COOH)2 の構造を有するジカルボン酸を重縮合させて得ることができる。nは0〜500の範囲が好ましく、0〜10の範囲がより好ましい。ヒドロキシポリアミド中における該ジアミド単位の割合が高すぎると現像液として使用するアルカリ性水溶液への溶解性が低下するので、n/(m+n)の値は0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、0.8以上であることが最も好ましい。
【0015】
1 (NH2 2 (OH)2 の構造を有するビスアミノフェノールとしては、例えば、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。これらのビスアミノフェノールは単独あるいは混合して使用してもよい。
【0016】
これらのX1 (NH2 2 (OH)2 の構造を有するビスアミノフェノールのうち特に好ましいものは、X1 が下記の構造式から選ばれる芳香族基の場合である。
【化6】

【0017】
2 (NH2 2 の構造を有するジアミンとしては、芳香族ジアミン、シリコンジアミンなどが挙げられる。このうち芳香族ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、
【0018】
1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4−メチル−2,4−ビス(4−アミノフェニル)−1−ペンテン、4−メチル−2,4−ビス(4−アミノフェニル)−2−ペンテン、1,4−ビス(α,α−ジメチル−4−アミノベンジル)ベンゼン、イミノ−ジ−p−フェニレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、4−メチル−2,4−ビス(4−アミノフェニル)ペンタン、5(または6)−アミノ−1−(4−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、ビス(p−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニル尿素、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ベンゾフェノン、
【0019】
4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(α,α−ジメチル−4−アミノベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(α,α−ジメチル−4−アミノベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、
4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、フェニルインダンジアミン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、o−トルイジンスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルフィド、1,4−(4−アミノフェノキシフェニル)ベンゼン、1,3−(4−アミノフェノキシフェニル)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−ジ−(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等、およびこれら芳香族ジアミンの芳香核の水素原子が、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基、フェニル基からなる群より選ばれる少なくとも一種の基または原子によって置換された化合物が挙げられる。
また、基材との接着性を高めるためにシリコンジアミンを選択することができ、この例としては、ビス(4−アミノフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)テトラメチルシロキサン、ビス(4−アミノフェニル)テトラメチルジシロキサン、ビス(γ−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,4−ビス(γ−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、ビス(γ−アミノプロピル)テトラフェニルジシロキサン等が挙げられる。
【0020】
1 (COOH)2 及びY2 (COOH)2 構造を有するジカルボン酸としては、Y1 、Y2 が下記の構造式から選ばれた芳香族基の場合が挙げられる。
【化7】

(式中、Aは−CH2 −、−O−、−S−、−SO2 −、−CO−、−NHCO−、−C(CF3 2 −からなる群から選択される2価の基を有する。)
【0021】
また、Y1 又はY2 成分として、テトラカルボン酸二無水物を、モノアルコール、モノアミン等で開環したジカルボン酸として使用することもできる。ここで、モノアルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール等が挙げられ、モノアミンの例としては、ブチルアミン、アニリン、等が挙げられる。テトラカルボン酸の例としては、以下のもの等が挙げられる。
【化8】

(式中、Bは−CH2 −、−O−、−S−、−SO2 −、−CO−、−NHCO−、−C(CF3 2 −からなる群から選択される2価の基を意味する。)
【0022】
また、ビスアミノフェノールに対してトリメリット酸クロリドを反応させて、テトラカルボン酸二無水物を生成し、上記と同様の方法で開環してジカルボン酸として使用することもできる。ここで得られるテトラカルボン酸二無水物としては以下のものが挙げられる。
【化9】

(式中、X3 は上述のビスアミノフェノールを表す。)
【0023】
さらには、テトラカルボン酸二無水物とビスアミノフェノール(ジアミンを含んでいてもよい)を反応させることによって生成したヒドロキシポリアミドの有するカルボン酸残基を、モノアルコールまたはモノアミンにより、エステル化またはアミド化することもできる。
上記、ジカルボン酸とビスアミノフェノールの重縮合の方法としては、ジカルボン酸を塩化チオニルを使用して、ジ酸クロライドを生成したのちにビスアミノフェノールを作用させる方法、ジカルボン酸とビスアミノフェノールをジシクロヘキシルカルボジイミドにより重縮合させる方法等が挙げられる。ジシクロヘキシルカルボジイミドを使用する方法においては、同時にヒドロキシベンズトリアゾールを作用させることもできる。
【0024】
前記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するヒドロキシポリアミドにおいて、その末端基を熱重合性官能基を有する有機基(以下、封止基という)で封止して使用する。ヒドロキシポリアミドの重縮合において、ジカルボン酸成分をビスアミノフェノール成分とジアミン成分の和に比べて過剰に使用した場合には、封止基としては、アミノ基、水酸基等を有する化合物を用いる。この場合の例としては、エチニルアニリン、エチニルシクロヘキシルアミン、ノルボルネンアミン、プロパルギルアミン、プロパルギルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。
逆にビスアミノフェノール成分とジアミン成分の和をジカルボン酸成分に比べて過剰に使用した場合には、封止基としては、酸無水物、カルボン酸、酸クロリド、イソシアネート基等を有する化合物を用いる。この場合の例としては、ノルボルネンジカルボン酸無水物、ノルボルネンカルボン酸、エチニルフタル酸無水物、無水マレイン酸、シクロへキセンジカルボン酸無水物、メタクロイルオキシエチルメタクリレート、等が挙げられる。
【0025】
(B)イソシアヌル酸誘導体
次に、イソシアヌル酸誘導体である(B)成分について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物の(B)成分として用いられるイソシアヌル酸誘導体は、下記式(2)で表されるエチレンオキシド変性イソシアヌル酸誘導体である。
【化10】

(式中、Q1 はそれぞれ独立に、下記式(3)で表される一価の置換基である。)
【化11】

(式中、Q2 はエチレン基またはプロピレン基、Q3 は下記式(4)で表される一価の置換基であり、rは1から4までの整数、pは4から6までの整数である。qは0から3までの整数であるが、すべてのQ1 について同時に0であることはない。)
【化12】

(式中、Q4 は水素原子又はメチル基を表す。)
【0026】
式(2)において、それぞれ独立に式(3)で表される置換基Q1 は3個あるが、本発明の目的を達成するには、これら3個のうち少なくとも1個はカプロラクトン変性基である必要がある。すなわち、Q1 のうち少なくとも1個は、式(3)においてqが1から3までの整数値を取る。既に述べた(A)ヒドロキシポリアミドとの相溶性の点では3つのQ1 がすべてカプロラクトン変性基であるのが特に好ましい。式(3)において、Q2 はエチレン基またはプロピレン基であるが、エチレン基が特に好ましい。またpの値は4から6までの整数であればよいが、特にp=5の場合が好適に用いられる。以上の条件を満たすのであれば、各置換基Q1 として単一のr、p、およびqの値のものを用いても、異なるr、p、およびqの値のものを混合物として用いてもよい。カプロラクトン変性基の数が2または3の場合には、式(3)におけるrやqの値は、それぞれの置換基により同一であっても異なっていてもよい。商業的に入手可能な(B)イソシアヌル酸誘導体としては、例えば東亞合成株式会社製、M−325(カプロラクトン変性基の数が1の場合に相当)や同じくM−327(同じく3の場合に相当)などを用いることができる。
【0027】
(A)ヒドロキシポリアミドとの相溶性を確保しつつ本発明の目的を達成するには、(A)ヒドロキシポリアミド100質量部に対する(B)イソシアヌル酸誘導体の添加量を20〜80質量とするのが好ましく、20〜55質量部の範囲とするのがより好ましい。この範囲内であれば(B)イソシアヌル酸誘導体の添加量は任意に選ぶことができるが、特に20ミクロン以上の膜厚が必要な場合には(B)イソシアヌル酸誘導体の添加量を40質量部以上とするのが好ましい。イソシアヌル酸誘導体の添加量が20質量部以上で低応力の硬化膜を得ることができ、80質量部以下でヒドロキシポリアミドとの相溶性を保つことができる。
【0028】
(C)感光性ジアゾキノン化合物
本発明で用いる感光性ジアゾキノン化合物は、1,2−ベンゾキノンジアジド構造あるいは1,2−ナフトキノンジアジド構造を有する化合物であり、米国特許第2772972号、第2797213号、第3669658号の各明細書等により公知の物質である。好ましいものの例としては、例えば、下記の構造式のものが挙げられる。
【化13】

(式中、Qは水素原子またはナフトキノンジアジドスルホン酸エステル基であり、すべてのQが同時に水素原子であることはない。)
【0029】
好ましいナフトキノンジアジドスルホン酸エステル基としては、下記の構造式のものが挙げられる。
【化14】

【0030】
これらの感光性ジアゾキノン化合物の中で特に好ましいものとしては下記の構造式のものがある。
【化15】

(Qは水素原子または下記の構造を有するナフトキノジアジドスルホン酸エステル基であるが、すべてのQが同時に水素原子であることはない。)
【化16】

感光性ジアゾキノン化合物のヒドロキシポリアミドへの配合量は、該ヒドロキシポリアミド100質量部に対し、1〜100質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。感光性ジアゾキノン化合物の配合量が1質量部以上で樹脂のパターニング性が向上し、逆に100質量部以下で硬化後の膜の引張り伸び率が向上し、露光部の現像残さ(スカム)が減少する。
【0031】
(D)その他の添加剤
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、必要に応じて、従来、感光性樹脂組成物の添加剤として用いられている、フェノール化合物、染料、界面活性剤、及び安定剤を加えることができ、また、基板との密着性を高めるための接着助剤等を添加することも可能である。
上記添加剤について更に具体的に述べると、フェノール化合物は、上記感光性ジアゾキノン化合物に使用しているバラスト剤、並びにパラクミルフェノール、ビスアミノフェノール、及びレゾルシノール等が挙げられる。該フェノール化合物の添加により、現像時のレリーフパターンの密着性を向上させ残渣の発生をおさえることができる。
フェノール化合物を加える場合の添加量は、ヒドロキシポリアミド100質量部に対し、0〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましい。添加量が50質量部以下であれば、現像時のレリーフパターンの密着性を向上させ残渣の発生をおさえることができる。
【0032】
界面活性剤としては、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリグリコール類、及びポリグリコール類の誘導体からなる非イオン系界面活性剤が挙げられる。また、フロラード(商品名;住友3M社製)、メガファック(商品名;大日本インキ化学工業社製)、及びスルフロン(商品名;旭硝子社製)等のフッ素系界面活性剤が挙げられる。さらに、KP341(商品名;信越化学工業社製)、DBE(商品名;チッソ社製)、及びグラノール(商品名;共栄社化学社製)等の有機シロキサン界面活性剤が挙げられる。該界面活性剤の添加により、塗布時のウエハーエッジでの塗膜のハジキを、より発生しにくくすることができる。
界面活性剤を加える場合の添加量は、ヒドロキシポリアミド100質量部に対し、0〜10質量部が好ましく、0.01〜1質量部がより好ましい。添加量が10質量部以下であれば、塗布時のウエハーエッジでの塗膜のハジキを、より発生しにくくすることができる。
【0033】
接着助剤としては、アルキルイミダゾリン、酪酸、アルキル酸、ポリヒドロキシスチレン、ポリビニルメチルエーテル、t−ブチルノボラック、エポキシポリマー、およびエポキシシランなどの各種シランカップリング剤が挙げられる。
シランカップリング剤の具体的な好ましい例としては、例えば、N−フェニル−3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、2−(トリアルコキシシリルエチル)ピリジン、3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジアルコキシアルキルシラン、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルジアルコキシアルキルシラン、3−アミノプロピルトリアルコキシシランまたは3−アミノプロピルジアルコキシアルキルシラン(あわせてアミノシランという。)、アミノシランと酸無水物または酸二無水物の反応物、及びアミノシランのアミノ基をウレタン基またはウレア基に変換したものなどを挙げることができる。
【0034】
なお、この際のアルキル基としてはメチル基、エチル基、及びブチル基などが、酸無水物としてはマレイン酸無水物、及びフタル酸無水物などが、酸二無水物としてはピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、及び4,4’−オキシジフタル酸二無水物などが、ウレタン基としてはt−ブトキシカルボニルアミノ基などが、ウレア基としてはフェニルアミノカルボニルアミノ基などが挙げられる。接着助剤の添加により、塗膜のウエハーに対する密着力を向上させることができる。接着助剤を加える場合の添加量は、ヒドロキシポリアミド100質量部に対し、0〜30質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。添加量が30質量部以下であれば、塗膜のウエハーに対する密着力を向上させることができる。
【0035】
本発明においては、これらの成分を溶剤に溶解してワニス状にし、ポジ型感光性樹脂組成物として使用する。このような溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン(以下、GBLともいう。)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcともいう。)、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル(以下、DMDGともいう。)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート等を単独または混合して使用できる。これらの溶媒のうち、非アミド系溶媒がフォトレジストなどへの影響が少ない点から好ましい。具体的なより好ましい例としては、γ−ブチロラクトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロンなどを挙げることができる。
溶媒の添加量は、ヒドロキシポリアミド100質量部に対し、50〜1000質量部が好ましい。溶媒の添加量は、上記の範囲内で塗布装置、及び塗布厚みに適した粘度に設定することが、硬化レリーフパターンの製造を容易にすることができるので好ましい。
【0036】
<硬化レリーフパターン、及び半導体装置の製造方法>
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を基板に塗布して硬化レリーフパターンを製造する方法について、以下具体的に説明する。
第一に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を、例えば、シリコンウエハー、セラミック基板、もしくはアルミ基板等の基板に、スピナーを用いた回転塗布、ダイコーター、もしくはロールコーター等のコーターにより塗布する。これをオーブンやホットプレートを用いて50〜140℃で乾燥して溶媒を除去する。
第二に、マスクを介して、コンタクトアライナーやステッパーを用いて化学線による露光を行うか、光線、電子線またはイオン線を直接照射する。
第三に、露光部、又は照射部を現像液で溶解除去し、引き続きリンス液によるリンスを行うことで所望のレリーフパターンを得る。現像方法としてはスプレー、パドル、ディップ、超音波等の方式が可能である。リンス液は蒸留水、脱イオン水等が使用できる。
【0037】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物により形成された感光性樹脂膜を現像するために用いられる現像液は、アルカリ可溶性ポリマーを溶解除去するものであり、アルカリ化合物を溶解したアルカリ性水溶液であることが必要である。現像液中に溶解されるアルカリ化合物は、無機アルカリ化合物、有機アルカリ化合物のいずれであってもよい。
該無機アルカリ化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、アンモニア等が挙げられる。
【0038】
また、該有機アルカリ化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
さらに、必要に応じて、上記アルカリ性水溶液に、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール等の水溶性有機溶媒、界面活性剤、保存安定剤、樹脂の溶解抑止剤等を適量添加することができる。
最後に、得られたレリーフパターンを加熱処理して、ポリベンゾオキサゾール構造を有する耐熱性硬化レリーフパターンを形成することができる。
上述の製造方法によって作成した硬化レリーフパターンは、表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、あるいはバンプ構造を有する装置の保護膜として、公知の半導体装置の製造方法と組み合わせることで、半導体装置を製造することができる。また、多層回路の層間絶縁やフレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜や液晶配向膜等としても有用である。
【実施例】
【0039】
本発明を参考例、実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
<ヒドロキシポリアミドの合成>
〔参考例1〕
容量2リットルのセパラブルフラスコ中で、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン197.8g(0.54mol)、ピリジン75.9g(0.96mol)、DMAc692gを室温(25℃)で混合攪拌し溶解させた。これに、別途DMDG88g中に5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物19.7g(0.12mol)を溶解させたものを、滴下ロートより滴下した。滴下に要した時間は40分、反応液温は最大で28℃であった。
滴下終了後、湯浴により50℃に加温し18時間撹拌したのち、反応液のIRスペクトルの測定を行い1385cm-1および1772cm-1のイミド基の特性吸収が現れたことを確認した。
次に、これを水浴により8℃に冷却し、これに別途DMDG398g中に4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロライド142.3g(0.48mol)を溶解させたものを、滴下ロートより滴下した。滴下に要した時間は80分、反応液温は最大で12℃であった。滴下終了から3時間後、上記反応液を12リットルの水に高速攪拌下で滴下し重合体を分散析出させ、これを回収し、適宜水洗、脱水の後に真空乾燥を施し、ヒドロキシポリアミド(P−1)を得た。このようにして合成されたヒドロキシポリアミドのGPCによる重量平均分子量は、ポリスチレン換算で14000であった。
【0040】
〔参考例2〕
容量1リットルのセパラブルフラスコに2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン109.9g(0.3mol)、テトラヒドロフラン(THF)330g、ピリジン47.5g(0.6mol)を入れ、これに室温下で5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物98.5g(0.6mol)を粉体のまま加えた。そのまま室温で3日間撹拌反応を行ったあと、HPLCにて反応を確認したところ、原料は全く検出されず、生成物が単一ピークとして純度99%で検出された。この反応液をそのまま1リットルのイオン交換水中に撹拌下で滴下し、析出物を濾別した後、これにTHF500mlを加え撹拌溶解し、この均一溶液を陽イオン交換樹脂(アンバーリスト15;オルガノ社製)100gが充填されたガラスカラムを通し、残存するピリジンを除去した。次に、この溶液を3リットルのイオン交換水中に高速撹拌下で滴下することにより生成物を析出させ、これを濾別した後、真空乾燥した。
生成物がイミド化していることは、IRスペクトルで1394cm-1および1774cm-1のイミド基の特性吸収が現れ1540cm-1および1650cm-1付近のアミド基の特性吸収が存在しないこと、およびNMRスペクトルでアミドおよびカルボン酸のプロトンのピークが存在しないことにより確認した。
【0041】
次に、該生成物65.9g(0.1mol)、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロライドを53.7g(0.2mol)、アセトン560g加え、20℃で撹拌溶解した。これに、トリエチルアミン21.2g(0.21mol)をアセトン106.2gで希釈したものを、30分かけて一定速度で滴下した。この際、反応液は氷水浴などを用いて20〜30℃の範囲で温度制御した。
滴下終了後、更に30分間、20℃で撹拌放置した後、36重量%濃度の塩酸水溶液5.6gを一気に投入し、次いで反応液を氷水浴で冷却し、析出した固形分を吸引濾別した。この際得られた濾液を、0.5重量%濃度の塩酸水溶液5リットルに、その撹拌下で1時間かけて滴下し、目的物を析出させ、吸引濾別して回収した。得られたケーク状回収物を、再度イオン交換水5リットルに分散させ、撹拌、洗浄、濾別回収し、この水洗操作を3回繰り返した。最後に得られたケーク状物を、40℃で24時間真空乾燥し、感光性ジアゾキノン化合物(Q−1)を得た。
【0042】
[実施例1〜4、比較例1]
<ポジ型感光性樹脂組成物の調製>
上記参考例1にて得られたヒドロキシポリアミド(P−1)100質量部に対し、上記参考例2にて得られた感光性ジアゾキノン化合物(Q−1)を20質量部、およびイソシアヌル酸誘導体として東亞合成株式会社製;M−327を0〜80質量部配合したものをGBL170質量部に溶解した後、0.2μmのフィルターで濾過して、表1に記載した実施例1〜4、及び比較例1のポジ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0043】
<ポジ型感光性樹脂組成物の評価>
(1)パターニング特性評価
上記ポジ型感光性樹脂組成物を大日本スクリーン製造社製;スピンコーター(Dspin636)にて、5インチシリコンウエハーにスピン塗布し、ホットプレートにて130℃、180秒間プリベークを行い、膜厚10.0μmの塗膜を形成した。膜厚は大日本スクリーン製造社製;膜厚測定装置(ラムダエース)にて測定した。
この塗膜に、テストパターン付きレチクルを通してi線(365nm)の露光波長を有するニコン社製;ステッパー(NSR2005i8A)を用いて露光量を段階的に変化させて露光した。これをクラリアントジャパン社製;アルカリ現像液(AZ300MIFデベロッパー、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)を用い、23℃の条件下で現像後膜厚が8μmとなるように現像時間を調整して現像し、純水にてリンスを行い、ポジ型のレリーフパターンを形成した。ポジ型感光性樹脂組成物の感度、解像度を表2に示した。
なお、ポジ型感光性樹脂組成物の感度、解像度は、次のようにして評価した。
[感度(mJ/cm2 )]
上記現像時間において、塗膜の露光部を完全に溶解除去しうる最小露光量。
[解像度(μm)]
上記露光量での最小解像パターン寸法。
【0044】
(2)残留応力評価
本評価においては、予め板厚を測定した5インチシリコンウェハーの反り量を、KLA−Tencor社製;薄膜ストレス評価装置:FLX−2320にて測定したものを基板として使用した。
上記ポジ型感光性樹脂組成物を大日本スクリーン製造社製;スピンコーター(Dspin636)にて、上記基板にスピン塗布し、ホットプレートにて120℃、180秒間プリベークを行い、膜厚11.0μmの塗膜を形成した。この塗膜を縦型キュア炉(光陽リンドバーグ社製)にて、窒素雰囲気中、300度で2時間のキュア(加熱硬化処理)を施し、耐熱性被膜であるポリベンゾオキサゾール(PBO)膜とした。その後、上記の薄膜ストレス測定装置にて反り量を測定し、塗膜形成前後の反り量の差および塗膜の膜厚からそれぞれの塗膜の残留応力を算出した。その結果を表1に合わせて示した。実施例1〜4および比較例1のいずれも良好なレリーフパターンを形成できるが、比較例1では残留応力が40MPa近くなるのに対し、実施例1〜4ではいずれも残留応力が低減されていることがわかる。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、半導体装置の表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、及びバンプ構造を有する装置の保護膜、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、並びに液晶配向膜等として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するヒドロキシポリアミド100質量部に対して、(B)下記一般式(2)で表されるイソシアヌル酸誘導体20〜80質量部、(C)感光性ジアゾキノン化合物1〜100質量部、を含むことを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、X1 は少なくとも2個以上の炭素原子を有する4価の有機基、X2 、Y1 およびY2 は少なくとも2個以上の炭素原子を有する2価の有機基、mは2〜1000の整数、nは0〜500の整数であって、m/(m+n)≧0.5である。なお、X1 およびY1 を含むm個のジヒドロキシジアミド単位、並びにX2 およびY2 を含むn個のジアミド単位の配列順序は問わない。)
【化2】

(式中、Q1 はそれぞれ独立に、下記式(3)で表される一価の置換基である。)
【化3】

(式中、Q2 はエチレン基またはプロピレン基、Q3 は下記式(4)で表される一価の置換基であり、rは1から4までの整数、pは4から6までの整数である。qは0から3までの整数であるが、すべてのQ1 について同時に0であることはない。)
【化4】

(式中、Q4 は水素原子又はメチル基を表す。)
【請求項2】
(1)請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物を層またはフィルムの形で基板上に形成し、(2)マスクを介して化学線で露光するか、光線、電子線またはイオン線を直接照射し、(3)露光部または照射部を現像液で溶出除去し、(4)得られたレリーフパターンを加熱処理する、ことを特徴とする硬化レリーフパターンの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の硬化レリーフパターンの製造方法により得られる硬化レリーフパターンを有してなることを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2008−129071(P2008−129071A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310420(P2006−310420)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】