説明

交通情報案内装置

【課題】音声案内を用いて運転者にとって有益な交通情報を確実に案内する交通情報案内装置を提供する。
【解決手段】誘導経路や走行履歴や道路形状に基づいて、車両が走行する予定の走行予定道路を特定し、特定された走行予定道路の交通情報の表示が変化した場合に、車内カメラ20により運転者55の顔の向きや視線方向を検出し、運転者55がディスプレイ15を所定時間以上視認していない状態が継続していると判定された場合に、表示が変化した交通情報を音声により案内するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者に交通情報を案内する交通情報案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載用のナビゲーション装置、PDA(Personal Digital Assistant)や携帯電話機などの携帯情報機器、パーソナルコンピュータ等では、地図情報として一般道路及び高速道路等の道路や施設名称等を各種記憶デバイスに記憶するか、又はサーバ等からダウンロードすることにより、利用者に対して所望のエリアの地図を表示することが可能となっている。
【0003】
更に、従来のナビゲーション装置等では地図を表示するのみでなく、利用者の利便性をより向上させる為に、表示された道路の渋滞情報、事故情報、車線規制情報等の交通情報を地図と併せて表示することについても行われていた。しかし、運転中の運転者はナビゲーション装置のモニタ画面を常に見続けることはできず、赤信号による停車時等の不定期なタイミングで且つ短時間に確認するのみである。従って、モニタ画面に交通情報を表示するのみでは、運転者にとって有益な交通情報を見逃してしまう虞があった。
一方で、交通情報を別途音声で案内することも考えられるが、モニタに表示される全ての交通情報を音声で案内することとすると、運転者にとっては全く関係のない交通情報も音声で出力されてしまうので、運転者の集中力を低下させる結果となっていた。そこで、特開2001−272246号公報には、ナビゲーション装置において誘導経路を設定している場合に、誘導経路に関わる交通情報のみを音声でも出力するナビゲーション装置について記載されている。
【特許文献1】特開2001−272246号公報(第4頁〜第6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した特許文献1に記載されたナビゲーション装置では、誘導経路を設定しない場合には、音声による交通情報の出力が行われなかった。しかし、例えば通勤時に利用者が走行する自宅から職場への通勤経路等は、利用者がよく理解している経路なので一般に誘導経路に設定することは行われないが、このような経路に関する交通情報は利用者にとって非常に有益な情報であり、音声による案内を行うことが望ましい。
ここで、例えばVICS(登録商標)の渋滞情報は、誘導経路が設定されていない道路では渋滞の程度によって異なる2色の矢印を道路脇に表示することによって、その道路が渋滞であることを運転者に報知する。従って、音声による案内を行わない場合には、運転者は今後走行する予定の道路が渋滞していることに気付かない虞がある。
【0005】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、運転者にとって不要な交通情報については音声による案内を行わないことにより運転者の集中力の低下を招かず、また、運転者にとって有益な交通情報を確実に伝えることが可能となり、利便性を向上させた交通情報案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る交通情報案内装置(1)は、交通情報を取得する交通情報取得手段(18)と、所定範囲内の地図画像を表示するとともに、前記所定範囲内の地図画像に含まれる道路網について前記交通情報取得手段により取得した交通情報を表示する表示手段(15)と、運転者が前記表示手段を視認しているか否かを判定する視認判定手段(13)と、車両が走行予定にある道路の交通情報の表示が変化したか否か判定する交通情報表示判定手段(13)と、前記交通情報表示判定手段によって車両が走行予定にある道路の交通情報の表示が変化したと判定された場合であって、且つ前記視認判定手段により運転者が前記表示手段を視認していないと判定された場合に、前記車両の走行予定にある道路の交通情報を音声で出力する音声案内手段(13)と、を有することを特徴とする。
ここで、「交通情報の表示が変化した」とは、(1)表示手段に表示される地図画像のエリアが変更することによって新たに交通情報や交通情報を表示すべき道路が表示手段に表示された場合や、(2)既に表示手段に表示されている交通情報の内容が変化(渋滞度や渋滞長が変化等)した場合や、(3)既に表示手段に表示される地図画像において交通情報が新たに出現(事故や工事等が発生)した場合等が該当する。
【0007】
また、請求項2に係る交通情報案内装置(1)は、請求項1に記載の交通情報案内装置であって、前記交通情報表示判定手段(13)は、車両が走行予定にある道路の交通情報が新たに前記表示手段(15)に表示された場合に車両が走行予定にある道路の交通情報の表示が変化したと判定することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る交通情報案内装置(1)は、請求項1に記載の交通情報案内装置であって、前記交通情報表示判定手段(13)は、車両が走行予定にある道路の交通情報が前記表示手段(15)に表示されている場合であって、その表示内容が変化した場合に車両が走行予定にある道路の交通情報の表示が変化したと判定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る交通情報案内装置(1)は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の交通情報案内装置であって、走行案内を行う誘導経路を設定する誘導経路設定手段(13)を有し、前記交通情報表示判定手段(13)は前記誘導経路設定手段に設定された誘導経路に基づいて車両が走行予定にある道路を特定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る交通情報案内装置(1)は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の交通情報案内装置であって、車両の走行履歴を記憶する走行履歴記憶手段(23)を有し、前記交通情報表示判定手段(13)は前記走行履歴記憶手段に記憶された車両の走行履歴に基づいて車両が走行予定にある道路を特定することを特徴とする。
【0011】
更に、請求項6に係る交通情報案内装置(1)は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の交通情報案内装置であって、道路形状を記憶する道路形状記憶手段(22)を有し、前記交通情報表示判定手段(13)は前記道路形状記憶手段に記憶された道路形状に基づいて車両が走行予定にある道路を特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
前記構成を有する請求項1に記載の交通情報案内装置によれば、運転者にとって不要な交通情報については音声による案内を行わないことにより運転者の集中力の低下を招かず、また、運転者にとって有益な交通情報については音声により確実に伝えることが可能となり、利便性を向上させる。
【0013】
また、請求項2に記載の交通情報案内装置によれば、新たに表示画面に表示された道路に関する交通情報を、音声により確実に伝えることが可能となる。従って、運転者は表示画面を視認していなくとも渋滞や事故等の交通障害が接近していることを把握することができ、運転者の運転に係る負担が軽減する。
【0014】
また、請求項3に記載の交通情報案内装置によれば、表示画面に表示された交通情報の内容が変化したことを、音声により確実に伝えることが可能となる。従って、運転者は表示画面を視認しなくとも渋滞や事故等の交通障害が新たに発生したことや渋滞の程度が変化したことを把握することができ、運転者の運転に係る負担が軽減する。
【0015】
また、請求項4に記載の交通情報案内装置によれば、運転者が今後走行する予定に有る誘導経路に関する交通情報を、音声により確実に伝えることが可能となり、利便性を向上させる。
【0016】
また、請求項5に記載の交通情報案内装置によれば、運転者が今後走行する予定に有る道路を過去の走行履歴から的確に予測することが可能となり、運転者にとって有益な交通情報のみを確実に伝えることが可能となる。
【0017】
更に、請求項6に記載の交通情報案内装置によれば、運転者が今後走行する予定に有る道路を道路形状から的確に予測することが可能となり、運転者にとって有益な交通情報のみを確実に伝えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る交通情報案内装置についてナビゲーション装置に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成図である。
【0019】
図1に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、自車の現在位置を検出する現在地検出処理部11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU(視認判定手段、交通情報表示判定手段、音声案内手段、誘導経路設定手段)13と、操作者からの操作を受け付ける操作部14と、操作者に対して自車周辺の地図や交通情報を表示するディスプレイ(表示手段)15と、経路案内に関する音声ガイダンスや交通情報の案内を出力するスピーカ16と、プログラムを記憶した記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ17、交通情報センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信装置(交通情報取得手段)18と、から構成されている。また、ナビゲーションECU13には、自車の走行速度を検出する車速センサ19と、車内で運転者の顔を撮像する車内カメラ20が接続される。
【0020】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在地検出処理部11は、GPS31、地磁気センサ32、距離センサ33、ステアリングセンサ34、方位検出部としてのジャイロセンサ35、高度計(図示せず)等からなり、現在の自車の位置、方位、目標物(例えば、交差点)までの距離等を検出することが可能となっている。
【0021】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB(道路形状記憶手段)22、自車の走行履歴を累積的に記憶する走行履歴DB(走行履歴記憶手段)23、所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0022】
ここで、地図情報DB22は、経路案内、交通情報案内及び地図表示に必要なデータが記録されている。具体的には、過去の統計データに基づいて出荷時に設定された各リンクに対する渋滞度を記憶したナビ渋滞データ24、道路(リンク)形状に関するリンクデータ25、ノード点に関するノードデータ26、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、施設に関する施設データ、地点を検索するための検索データ、地図、道路、交通情報等の画像をディスプレイ15に描画するための画像描画データ等から構成されている。そして、ナビゲーションECU13は地図情報DB22の特にリンクデータ25に記憶された道路形状に関する情報に基づいて、後述するように今後に車両が走行予定に有る道路を特定する。
【0023】
また、走行履歴DB23は、車両の走行履歴を記憶するDBである。具体的には、過去に車両が走行したリンクが走行時刻とともに累積的に記憶される。そして、ナビゲーションECU13は走行履歴DB23に記憶された走行履歴情報に基づいて、後述するように今後に車両が走行予定に有る道路を特定する。
【0024】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)13は、目的地が選択された場合に現在位置から目的地までの誘導経路を設定する誘導経路設定処理や運転者がディスプレイ15を視認しているか否かの判定結果に応じて交通情報の案内を行う交通情報案内処理等のナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、制御用のプログラムのほか、交通情報案内プログラム(図4参照)等が記録されたROM43、ROM43から読み出したプログラムを記録するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置を備えている。
【0025】
操作部14は、走行開始時の現在位置を修正し、案内開始地点としての出発地及び案内終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU13は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。
【0026】
また、ディスプレイ15には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在位置から目的地までの誘導経路、誘導経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。また、地図画像は複数段階の縮尺(例えば、1/2046万〜1/5000の13段階)で表示することが可能であり、操作部14の操作に基づいて切り替えて表示される。
【0027】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU13からの指示に基づいて誘導経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。ここで、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、特にディスプレイ15に表示された交通情報の内、車両が走行予定にある道路に関する交通情報の表示が変化した場合で、且つ、運転者がディスプレイ15を視認していない場合に、変化した交通情報の案内を出力する。尚、交通情報の表示が変化した場合とは、例えば、(1)ディスプレイ15に表示される地図画像のエリアが変更することによって新たに交通情報や交通情報を表示すべき道路がディスプレイ15に表示された場合や、(2)既にディスプレイ15に表示されている交通情報の内容が変化(渋滞度や渋滞長が変化等)した場合や、(3)既にディスプレイ15に表示される地図画像において交通情報が新たに出現した(事故や工事等が発生)場合等が該当する。
【0028】
また、DVDドライブ17は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて地図情報DB22の更新等が行われる。
【0029】
また、通信装置18は、交通情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ102(図2参照)等から送信された渋滞情報、規制情報、駐車場情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を、道路に沿って配設された電波ビーコン装置、光ビーコン装置等を介して電波ビーコン、光ビーコン等として受信するビーコンレシーバである。
【0030】
一方、車速センサ19は、車両の車輪の回転に応じて車速パルスを発生させ、車両の移動距離や車速を検出するセンサである。
【0031】
また、車内カメラ20は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたものであり、インストルメントパネルの上面に取り付けられ、視線方向を運転席に向けて設置される。そして、運転席に座った運転者の顔を撮像し、運転者の顔の向きや視線方向を検出する。また、ナビゲーションECU13は検出された運転者の顔の向きや視線方向から後述するように運転者がディスプレイ15を視認しているか否かの判定を行う。
【0032】
続いて、上記構成を有するナビゲーション装置1とVICSセンタ102とから構成される通信システム101について説明する。図2はナビゲーション装置1とVICSセンタ102とから構成される通信システム101を示した概略構成図である。図2に示すように、VICSセンタ102とナビゲーション装置1は、ネットワーク104を介して各種の情報の送受信が可能となるように構成されている。
【0033】
また、VICSセンタ102は、サーバ111と、サーバ111に接続された情報記録部としての交通情報DB115と、センタ側通信装置116とを備える。また、サーバ111は、サーバ111の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU112、並びにCPU112が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるRAM113、交通情報DB115に格納された交通情報であるVICS交通情報117から必要な情報を抽出し、ナビゲーション装置1に対して送信するための各種の制御プログラムが記録されたROM114等の内部記憶装置を備えている。
ここで、VICS交通情報117に含まれる情報としては、リンクの渋滞度、渋滞区間を示す渋滞長、工事情報、事故情報、車線規制情報等がある。尚、渋滞度とは、渋滞の程度を示した渋滞情報の一種であり、この渋滞度には、渋滞の程度の高い方から、『渋滞』、『混雑』、『渋滞無し』のデータと『不明』の4段階のデータがある。
【0034】
そして、VICSセンタ102はナビゲーション装置1に対して車両周辺のVICS交通情報117を所定間隔(例えば5分毎)で送信し、一方で、ナビゲーション装置1はVICSセンタ102から送信されたVICS交通情報117をデータ記録部12に一時記憶し、このVICS交通情報117に基づいて経路の案内や探索を行う。また、ディスプレイ15の表示範囲に対して該当するVICS交通情報117がある場合には、ディスプレイ15やスピーカ16によって該当するVICS交通情報117を出力する。
【0035】
次に、図3を用いて本実施形態に係るナビゲーション装置1のディスプレイ15に表示されるナビゲーション画面50について説明する。ここで、ナビゲーション画面50はナビゲーション装置1が起動された後にディスプレイ15に対して表示され、運転者に対して自車周辺の道路形状や施設の位置を把握させる為の画面である。
【0036】
図3に示すように、ナビゲーション画面50には操作部14で選択された縮尺(図3では1/8万)で自車周辺の所定エリア内の地図画像が表示される。そして、自車の位置が移動するのに従って、地図画像が表示されるエリアについても変化する。
また、ナビゲーション画面50には、地図画像に重畳して自車の現在位置を示す自車位置マーク51と、表示された地図画像に含まれるリンクに対する交通情報を示す各種の交通情報マーク52についても表示される。更に、誘導経路が設定されている場合には、目的地を示すマークや設定された誘導経路を示す経路線についても描画される。
【0037】
ここで、交通情報マーク52により例えば渋滞度を表示する際には、「渋滞」に該当する道路(リンク)区間の脇に赤色の矢印を表示する。また、「混雑」に該当するリンク区間の脇に橙色の矢印を表示する。
また、交通情報マーク52により例えば車線規制、工事、事故を表示する際には、車線規制、工事、事故のある各該当箇所にその内容を示唆するマークを表示する。
【0038】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1においてナビゲーションECU13が実行する交通情報案内プログラムについて図4に基づき説明する。図4は本実施形態に係る交通情報案内プログラムのフローチャートである。ここで、交通情報案内プログラムは車両のイグニションがONされた後に所定間隔(例えば200ms毎)で実行され、運転者がディスプレイ15を視認しているか否かを判定し、判定結果に応じた交通情報の案内を行うプログラムである。尚、以下の図4にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM42やROM43に記憶されており、CPU41により実行される。
【0039】
先ず、交通情報案内プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU41はナビゲーション情報を取得する。ここで、前記S1で取得されるナビゲーション情報としては、マップマッチング処理によって特定された車両の現在位置、車両の方位、車両周辺の地図情報、経路設定情報、交通情報(本実施形態では、ナビゲーション装置1が予め有する統計データに基づく交通情報であるナビ渋滞データ24と、VICSセンタ102から取得したリアルタイムの交通情報であるVICS交通情報117の2種類)等がある。
【0040】
そして、S2ではCPU41は、ナビゲーション装置1において誘導経路が設定されているか否かを判定する。そして、誘導経路が設定されていないと判定された場合(S2:NO)にはS3へと移行し、誘導経路が設定されていると判定された場合(S2:YES)にはS7へと移行する。
【0041】
そして、S3でCPU41は車両が今後走行する予定にある道路(以下、走行予定道路という)を特定する。
ここで、前記S3において走行予定道路は、基本的に走行履歴DB23に記憶された車両の過去の走行履歴によって特定される。即ち、先ずCPU41は走行履歴DB23に記憶された走行履歴を読み出し、記憶された走行履歴の内、現在車両が走行する道路と同一の道路を走行した走行履歴を抽出する。そして、同一の道路を走行した走行履歴が有る場合には、その走行履歴に従って走行予定道路が特定される。
一方、現在車両が走行する道路と同一の道路を走行した走行履歴が無い場合には、道路の道路形状に基づいて走行予定道路を特定する。具体的には、先ずCPU41は地図情報DB22からリンクデータを読み出し、現在車両が走行する道路と同じ路線の道路や同じ路線番号の道路があるか判定する。そして、同じ路線の道路や同じ路線番号の道路がある場合には、その道路を走行予定道路と特定する。
更に、現在車両が走行する道路と同じ路線の道路や同じ路線番号の道路についても無い場合には、現在車両が走行する道路と道なりの関係にある道路を走行予定道路と特定する。
【0042】
次に、S4においてCPU41は、前記S3で特定された走行予定道路に関する交通情報の表示が変化したか否か判定される。ここで、交通情報の表示が変化した場合とは、例えば、(1)ディスプレイ15に表示される地図画像のエリアが変更することによって新たに交通情報や交通情報を表示すべき道路がディスプレイ15に表示された場合や、(2)既にディスプレイ15に表示されている交通情報の内容が変化(渋滞度や渋滞長が変化等)した場合や、(3)既にディスプレイ15に表示される地図画像において交通情報が新たに出現(事故や工事等が発生)した場合等が該当する。尚、交通情報の表示の変化に基づくディスプレイ15の表示制御は、別途ナビゲーションECU13によって行われる。それによって、ナビゲーション画面50で交通情報マーク52(図3参照)が新たに表示されたり、既に表示されていた交通情報マーク52が他の交通情報マーク52へと切り替わる。また、上記S4が交通情報表示判定手段の処理に相当する。
【0043】
そして、走行予定道路の交通情報の表示が変化したと判定された場合(S4:YES)には、更に、S5で車両を運転する運転者がディスプレイ15を所定時間以上(例えば5sec以上)視認していない状態が継続しているか否か判定される。ここで、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、車内カメラ20によって運転席に座った運転者の顔を撮像し、撮像画像に所定の画像処理を施すことによって運転者の顔の向きや視線方向を検出する。そして、検出された運転者の顔の向きや視線方向から運転者がディスプレイ15を視認しているか否かを判定する。
一方、走行予定道路の交通情報の表示が変化していないと判定された場合(S4:NO)には、当該交通情報案内プログラムを終了する。尚、上記S5が視認判定手段の処理に相当する。
【0044】
また、前記S5の判定の結果、運転者がディスプレイ15を所定時間以上視認していない状態が継続していると判定された場合(S5:YES)には、表示が変化したと判定された走行予定道路の交通情報をスピーカ16より出力する(S6)。それに対して、運転者がディスプレイ15を視認しているか、或いは視認していない時間が所定時間未満であると判定された場合(S5:NO)には、当該交通情報案内プログラムを終了する。
【0045】
ここで、図5は走行予定道路の渋滞度が『混雑』から『渋滞』へと変化したという内容の交通情報を新たに得た場合の交通情報の案内例を説明した説明図である。
先ず、ナビゲーション画面50には、走行予定道路に表示された『混雑』の交通情報マーク52が『渋滞』の交通情報マーク52へと変化する。
そして、交通情報の表示が変化した際に、図5に示すように運転者55の視線方向Lが前方を向いており、ディスプレイ15を所定時間以上継続して視認していないことが検出された場合には、渋滞度が『渋滞』に変化した道路があることを報知する渋滞情報をスピーカ16より音声で出力する。具体的には、「およそ、○km先、渋滞があります」と案内する。それによって、運転者55はナビゲーション画面50を視認していなくても、今後、走行する予定の道路が渋滞していることを把握することが可能となる。
【0046】
また、図6はディスプレイ15における走行予定道路において新たに車線規制が発生したという内容の交通情報を新たに得た場合の交通情報の案内例を説明した説明図である。
先ず、ナビゲーション画面50には、走行予定道路に『車線規制』を示す交通情報マーク52が新規に表示される。
そして、交通情報の表示が変化した際に、図6に示すように運転者55の視線方向Lが前方を向いており、ディスプレイ15を所定時間以上視認していないことが検出された場合には、新たに『車線規制』が発生した道路を報知する交通情報をスピーカ16より音声で出力する。具体的には、「この先、車線規制があります」と案内する。それによって、運転者55はナビゲーション画面50を視認していなくても、今後、走行する予定の道路に車線規制があることを把握することが可能となる。尚、上記S6が音声案内手段の処理に相当する。
【0047】
一方、前記S2で誘導経路が設定されていると判定された場合に実行されるS7では、CPU41は車両が今後走行する予定にある走行予定道路を特定する。ここで、走行予定道路はナビゲーション装置1で設定されている誘導経路によって特定される。即ち、車両が誘導経路に沿って走行すると仮定して、自車の現在位置から目的地までの誘導経路を走行予定道路として特定する。
【0048】
次に、S8においてCPU41は、走行予定道路、即ち自車の現在位置から目的地までの誘導経路に対して交通情報があるか否か判定される。そして、走行予定道路に対して交通情報があると判定された場合(S8:YES)にはS9へと移行する。一方、走行予定道路に対して交通情報が無いと判定された場合(S8:NO)には当該交通情報案内プログラムを終了する。
【0049】
S9でCPU41は、運転者がディスプレイ15を視認しているか否かに関わらず、ナビゲーション画面50に表示された範囲内及び範囲外にある走行予定道路の交通情報についてスピーカ16より出力する。
【0050】
続いて、S10でCPU41は前記S7で特定された走行予定道路に関する交通情報の表示が変化したか否か判定される。ここで、交通情報の表示が変化した場合とは、例えば、(1)ディスプレイ15に表示される地図画像のエリアが変更することによって新たに交通情報や交通情報を表示すべき道路がディスプレイ15に表示された場合や、(2)既にディスプレイ15に表示されている交通情報の内容が変化(渋滞度や渋滞長が変化等)した場合や、(3)既にディスプレイ15に表示される地図画像において交通情報が新たに出現(事故や工事等が発生)した場合等が該当する。尚、上記S10が交通情報表示判定手段の処理に相当する。
【0051】
そして、走行予定道路の交通情報の表示が変化したと判定された場合(S10:YES)には、更に、S11で車両を運転する運転者がディスプレイ15を所定時間以上(例えば5sec以上)視認していない状態が継続しているか否か判定される。
一方、走行予定道路の交通情報の表示が変化していないと判定された場合(S10:NO)には、当該交通情報案内プログラムを終了する。尚、上記S11が視認判定手段の処理に相当する。
【0052】
また、前記S11の判定の結果、運転者がディスプレイ15を所定時間以上視認していない状態が継続していると判定された場合(S11:YES)には、表示が変化したと判定された走行予定道路の交通情報を再度スピーカ16より出力する(S12)。それに対して、運転者がディスプレイ15を視認しているか、或いは視認していない時間が所定時間未満であると判定された場合(S11:NO)には、当該交通情報案内プログラムを終了する。
【0053】
ここで、図7は誘導経路中に渋滞度が『渋滞』のリンクが存在し、自車の移動に伴って新たにそのリンクがナビゲーション画面50に表示された場合の交通情報の案内例を説明した説明図である。
先ず、ナビゲーション画面50には、『渋滞』を示す交通情報マーク52が表示された該当道路が新たに表示される。
そして、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、図7に示すように、交通情報が変化しているか否かに関わらず、前記S9で少なくとも一回は誘導経路の交通情報が音声により案内される。その後、交通情報の表示が変化した際に、図7に示すように運転者55の視線方向Lが前方を向いており、ディスプレイ15を所定時間以上継続して視認していないことが検出された場合には、新たに渋滞度が『渋滞』の道路がディスプレイ15に表示されたことを報知する渋滞情報をスピーカ16より音声で出力する。具体的には、「画面上の○km先、渋滞があります」と案内する。それによって、運転者55はナビゲーション画面50を視認していなくても、まもなく走行する予定の道路が渋滞していることを把握することが可能となる。尚、上記S12が音声案内手段の処理に相当する。
【0054】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、誘導経路や走行履歴や道路形状に基づいて、車両が走行する予定の走行予定道路を特定し(S3、S7)、特定された走行予定道路の交通情報の表示が変化した場合であって、且つ運転者がディスプレイ15を所定時間以上継続して視認していない場合に、表示が変化した交通情報を音声により案内する(S6、S12)ので、運転者にとって不要な交通情報については音声による案内を行わないことにより運転者の集中力の低下を招かず、また、運転者にとって有益な交通情報については音声により確実に伝えることが可能となり、利便性を向上させる。
また、ディスプレイ15に表示される地図画像のエリアが変更することによって新たに交通情報や交通情報を表示すべき道路がディスプレイ15に表示された場合や、既にディスプレイ15に表示されている交通情報の内容が変化(渋滞度や渋滞長が変化等)した場合や、既にディスプレイ15に表示される地図画像において交通情報が新たに出現(事故や工事等が発生)した場合において、該当する交通情報を運転者に対して音声により確実に伝えることが可能となる。従って、運転者は表示画面を視認していなくとも渋滞や事故等の交通障害が接近していることや交通障害が新たに発生したことや渋滞の程度が変化したことを把握することができ、運転者の運転に係る負担が軽減する。
また、ナビゲーション装置1で誘導経路が設定されている場合には、誘導経路を走行予定道路に特定する(S7)ので、運転者が今後走行する予定に有る誘導経路に関する交通情報を、音声により確実に伝えることが可能となり、利便性を向上させる。
また、ナビゲーション装置1で誘導経路が設定されていない場合であっても、車両の走行履歴に基づいて走行予定道路を特定する(S3)ので、運転者が今後走行する予定に有る道路を過去の走行履歴から的確に予測することが可能となり、運転者にとって有益な交通情報のみを確実に伝えることが可能となる。
更に、ナビゲーション装置1で誘導経路が設定されていない場合であっても、道路形状に基づいて走行予定道路を特定する(S3)ので、運転者が今後走行する予定に有る道路を道路形状から的確に予測することが可能となり、運転者にとって有益な交通情報のみを確実に伝えることが可能となる。
【0055】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では交通情報の表示が変化した場合であって、運転者が所定時間以上継続してディスプレイ15を視認していない場合に、その交通情報を音声で案内することとしていたが、交通情報の表示が変化した時点で運転者がディスプレイ15を視認していない場合に、交通情報を音声で案内するようにしても良い。
【0056】
また、本実施形態では走行予定道路の特定は、設定された誘導経路、走行履歴、道路形状に基づいて行うこととしているが、他に運転者のハンドル操作、アクセル操作、ウィンカーランプの点灯操作等の車両操作に基づいて行うようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施形態に係るナビゲーション装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る通信システムの概略構成図である。
【図3】ディスプレイに表示されるナビゲーション画面の一例を示した図である。
【図4】本実施形態に係る交通情報案内プログラムのフローチャートである。
【図5】ナビゲーション装置による交通情報の案内例を説明した説明図である。
【図6】ナビゲーション装置による交通情報の案内の別例を説明した説明図である。
【図7】ナビゲーション装置による交通情報の案内の別例を説明した説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ナビゲーション装置
13 ナビゲーションECU
15 ディスプレイ
16 スピーカ
18 通信装置
20 車内カメラ
22 地図情報DB
23 走行履歴DB
41 CPU
42 RAM
43 ROM


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通情報を取得する交通情報取得手段と、
所定範囲内の地図画像を表示するとともに、前記所定範囲内の地図画像に含まれる道路網について前記交通情報取得手段により取得した交通情報を表示する表示手段と、
運転者が前記表示手段を視認しているか否かを判定する視認判定手段と、
車両が走行予定にある道路の交通情報の表示が変化したか否か判定する交通情報表示判定手段と、
前記交通情報表示判定手段によって車両が走行予定にある道路の交通情報の表示が変化したと判定された場合であって、且つ前記視認判定手段により運転者が前記表示手段を視認していないと判定された場合に、前記車両の走行予定にある道路の交通情報を音声で出力する音声案内手段と、を有することを特徴とする交通情報案内装置。
【請求項2】
前記交通情報表示判定手段は、車両が走行予定にある道路の交通情報が新たに前記表示手段に表示された場合に車両が走行予定にある道路の交通情報の表示が変化したと判定することを特徴とする請求項1に記載の交通情報案内装置。
【請求項3】
前記交通情報表示判定手段は、車両が走行予定にある道路の交通情報が前記表示手段に表示されている場合であって、その表示内容が変化した場合に車両が走行予定にある道路の交通情報の表示が変化したと判定することを特徴とする請求項1に記載の交通情報案内装置。
【請求項4】
走行案内を行う誘導経路を設定する誘導経路設定手段を有し、
前記交通情報表示判定手段は前記誘導経路設定手段に設定された誘導経路に基づいて車両が走行予定にある道路を特定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の交通情報案内装置。
【請求項5】
車両の走行履歴を記憶する走行履歴記憶手段を有し、
前記交通情報表示判定手段は前記走行履歴記憶手段に記憶された車両の走行履歴に基づいて車両が走行予定にある道路を特定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の交通情報案内装置。
【請求項6】
道路形状を記憶する道路形状記憶手段を有し、
前記交通情報表示判定手段は前記道路形状記憶手段に記憶された道路形状に基づいて車両が走行予定にある道路を特定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の交通情報案内装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−224549(P2008−224549A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65757(P2007−65757)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】