説明

作業管理システム、作業管理方法、及び管理計算機

【課題】従来は、作業員の動作・位置と商品等の動き・位置を同時に正確に把握できず、正しい作業内容の把握・評価ができないという問題があった。この問題を解決し、作業管理とさらに品質管理も実現できるシステムを提供する。
【解決手段】センサネットワークを利用し、第1のセンサノードにより作業員の動作情報および位置情報を取得し、第2のセンサノードにより物品の状態情報と位置情報の少なくとも一方を取得し、これらの取得情報を組み合わせて、作業員の動作解析、作業内容の特定、作業状況評価を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流通の現場などにおける作業員の作業管理システムおよび物品の品質管理システムに係り、特にセンサネットワークを利用した作業員の作業管理システムおよび物品の品質管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな物品の流通の現場において、トレーサビリティの導入などにより、流通全体で物品の品質管理を行う動きが強まっている。トレーサビリティは、物品の生産・製造から加工、配送、販売にいたるまで、その生産・流通履歴を管理するが、そのために物品にバーコード、二次元コード(二次元バーコード)、ICタグ、あるいはセンサノードを取り付ける。ICタグは内部メモリに情報の書き込みが可能なことや、バーコードや二次元コードに比べて読み取り距離が大きいことなどから、その利用が増えつつある。ただし、物品の品質管理では、流通経路の管理だけでは不十分であり、温度や衝撃など、その物品が周囲環境から受ける影響を測定する必要がある。ICタグ自体はそれらの影響を測定する機能を持たないので、センサ等を利用して環境の影響を測定し、その測定結果をICタグに関連付けて記録・管理する必要がある。そこで温度や衝撃を測定できるセンサを内蔵するセンサノードを利用した、センサネットワークによる品質管理も提案されている。
【0003】
しかし、単に検出した状態の履歴を記録するだけでは、履歴を参照した段階までの品質をモニタできるにすぎない。品質を保証する高機能なトレーサビリティの実現には、例えば品質を悪化させる作業が行われていないかどうか、作業の進捗が遅れて品質低下の危険性はないか、などの作業状況をリアルタイムに把握して評価することが必要となり、物品、環境、人(作業員)のそれぞれの状態の管理を一体で行うことが必須になってくる。
【0004】
また、作業管理の観点からは、前述の流通の現場のみならず、工場などの生産現場、建設現場、設備点検の現場、さらにはオフィスに至るまで、さまざまな場面で作業効率の向上・安全性の向上が求められている。そのためには、作業員の作業場所や作業内容を把握する必要があり、さらには作業員の取り扱う商品・部品などの物品の位置や状況も同時に把握することが、より的確な作業内容の把握に必要である。また、その把握結果により、作業の無駄、誤り、危険性、さらにはそれらを発生させる原因を特定する作業評価を行って、作業員の作業内容や作業計画等にフィードバックをかけることも必要である。
【0005】
以上のように、流通、製造など物品を取り扱う様々な分野において品質管理からも作業管理からも、人(作業員)と物品(商品・部品等)の両方の場所や状態、さらには周囲環境の状態を互いに関連付けて把握することが重要になってくる。前述のトレーサビリティにおいては、トレーサビリティシステムを導入することによって発生するコストアップの課題に対して、作業管理の実施による作業員の作業効率化の実現によって物流全体のコストダウンを図るためにも、物品、環境、人のそれぞれの状態の管理を一体で行うことが必要である。
【0006】
人の状態(動作)を把握するためには、ビデオカメラによって撮影し分析する方法があるが、移動する人や複数の人の認識の困難さ、処理の複雑さなどの問題があり、それらを解決するために、加速度センサ等を人に取り付けて動作を検出する方法が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。
【0007】
また、物品の状態を把握する例としては、商品やその設置場所に商品の残量検知用のセンサを設置して残量・在庫状況を把握して、その検出結果に基づいて発注作業を行う方法が提案されている(例えば下記特許文献2参照)。
【0008】
さらに、人と物品にICタグを取り付けて、人の作業を物品の状態も利用して判定する方法が提案されている(例えば下記特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第3570163号公報
【特許文献2】特開2005−112499号公報
【特許文献3】特開2005−63352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、作業や品質の適切な管理のためには、人(作業員等)と物品(商品・部品等)の両方の場所や状態、さらには周囲環境の状態を互いに関連付けて把握することが重要であるが、従来の方法には以下に示すような問題があった。
【0010】
上記特許文献1は、人の動作や行動の認識を、観測したい人に取り付けたセンサによる計測データと測位データにより実行する例を開示する。作業している人の動作と作業している場所を対応付けることで、その場所に設置してある機械を操作している、といった作業内容の推定が可能になるが、作業対象物の計測を行わないので、推定の精度が必ずしも高くない、という問題があった。さらに作業内容の評価の観点から以下に示す問題があった。
(1−1)作業誤りの指摘ができない:例えば商品の運搬作業をする場合、何かを運搬してことは推定できるが、それが運搬すべき商品かどうかは判別できないため、誤った商品を運搬しても、その指摘ができない。
(1−2)無駄な作業の指摘ができない:例えば棚から商品を降ろす作業をする場合、降ろすべき商品がどれかを作業員が判別できなかったために別の商品を一度降ろし、違っていることを確認して棚に戻し、正しい商品を取り出せるまでその動作を繰り返した場合、その作業が無駄であることを指摘できない。
(1−3)作業員への機械の接近が検知できない:例えば作業員に動き回る機械が接近していることを検知することができない。
(1−4)危険な動作を行っていることの検知ができない:例えば二人で運ばなければ危険である重い商品を一人で運んでいることが検知できない。
(1−5)作業員による商品の品質管理状況の検知ができない:壊れやすい商品の運搬作業をしていることがわかっているときに、壊れない程度に静かに運んでいるかを検知できない。そもそも、壊れやすい商品を運んでいるかどうかも作業員の観測データからは認識できない。あるいは、温度管理の必要な商品に対して、作業員が商品を適切に温度管理しているかどうかを認識できない。
【0011】
上記特許文献2は、物品の残量や在庫を、物品やその設置場所に物品の残量検知用のセンサを設置して残量・在庫状況を把握して、その検出結果に基づいて発注作業を行う方法を開示する。物品を計測するために、物品の状態把握は可能ではあるが、人の作業に関しては、その物品が使われた、補充された、といった物品の状態を変化させる作業が行われたことを推定できるのみである。
【0012】
上記特許文献3は、人(レストランの従業員)と物品(皿など)にICタグを取り付けて作業内容を認識する例を開示する。人の動作はICタグをリーダで読みとる、といったICタグに対する操作は認識可能であるが、それ以外の動作は、ある人と物品が特定の場所にある(移動する)ことで推定できるのみである。やはり上記特許文献1と同様、推定の精度が必ずしも高くないという問題があった。さらに前述の特許文献1の説明で示した問題(1−1)〜(1−5)に関しては(1−1)および(1−3)は物品と人の場所の把握によりある程度検知できるようになるが、(1−2)、(1−4)、(1−5)についてはやはり検知できないという問題があった。さらにICタグの利用であるために、通信距離が短く、作業や商品を切れ目なく連続的に把握することためには、タグリーダを密に配置する必要があり、原理的には可能であっても全く実用的でない、という問題があった。
【0013】
以上の従来技術の問題点をまとめると、
(2−1)人のセンシングだけでは、一般に作業内容を精度よく特定できない。この場所にいてこのような動作をしているからこの作業をしているらしい、というレベルの把握しかできない。
(2−2)人のセンシングだけでは、作業の対象の物品の状況は把握できない。
(2−3)物品のセンシングだけでは、一般に作業内容を特定できない。物品がここにあるから、動いているから、あるいはここに移動したからこの作業が行われているらしい、というレベルの把握しかできない。また物品の品質に関係することは(例えば高温下に放置されている)わかるが、なぜそうなのか、作業に関連付けた認識ができない。
(2−4)人と物品にICタグをつけた場合には、双方の位置は特定できるが、人・物品の両方を組み合わせても、作業内容を精度よく特定できない。人やものがここにいる(ある)から、動いているから、あるいはここに移動したからこの作業が行われているらしいというレベルの把握しかできない。また、センサノードに比べて通信距離が短いため、タグリーダのある場所でしか認識できない。
【0014】
このように、作業内容を精度よく特定できない、品質も作業に関連づけて把握できないことから、さらに
(2−5)作業内容を適切に評価することができない、
という問題があった。
【0015】
作業内容の評価とは、前述のように、作業が誤りなく行われているか、無駄な作業・行動が行われていないか、安全に作業が行われているか、品質管理は正しく行われているか、等であり、さらには、何か問題がある場合にそれを発生させる原因の特定を含む。
【0016】
本発明は、上記の問題を解決するために、人と物品の両方の状態をセンシングし、さらにセンシングした両者の状態を関連づけることによって、リアルタイムに
(3−1)作業内容を的確に把握する、
(3−2)商品など物品の状態を的確に把握する、
(3−3)それらの結果に基づいて作業内容が適切かどうかを評価し、さらに作業員や管理者へフィードバックを行う、
ことを特徴とする物品管理を含めた作業管理システムを提供することを目的とする。前記作業員や管理者へのフィードバックには、作業指示、危険の通知、作業進捗状況の通知等がある。例えば作業進捗状況の通知において、作業管理者が管理者端末等で各作業員の進捗状況を一括で管理することに加え、作業者が自分の進捗や成果を把握したり、他の作業者の進捗も確認できるようにし、作業者のモチベーションの向上に利用することもできる。
【0017】
さらに、本発明の更に他の目的は、リアルタイム解析ばかりでなく、人と物品のセンシング結果を蓄積し、オフライン解析のためのデータを提供することである。オフラインでの作業分析としては例えば、非効率性の分析、危険性の分析、個人の作業評価などがあり、その結果を作業フローの見直し、商品配置の見直し、ベテランと新人の作業比較やスキル評価・教育等に利用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の作業管理システムは、センサネットワークを利用し、第1のセンサノードにより作業員の動作情報および位置情報を取得し、第2のセンサノードにより物品の状態情報と位置情報の少なくとも一方を取得し、上記作業員の動作情報から作業員の動作解析を行い、上記作業員の動作解析結果と上記作業員の位置情報、さらに上記物品の状態情報と位置情報の少なくとも一方を用いて作業者の作業内容を特定し、上記作業内容、上記作業員の動作解析結果、上記作業員の位置情報、さらに上記物品の状態情報と位置情報の少なくとも一方を用いて上記作業者の作業状況評価を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、人と物品の両方の状態をセンシングし、さらにセンシングした両者の状態(例えば、人の動き及び場所と物の動き及び場所など)を関連付けることによって、リアルタイムに、人が行った作業内容を的確に把握し、商品など物品の状態を的確に把握し、作業内容が適切かどうかを評価し、さらに作業員や管理者へフィードバックを行う、物品管理を含めた作業管理を可能にする。作業内容については、作業の無駄や誤り、安全性、品質保持、等を評価することにより、安全で効率的な作業を可能にする。さらにオフライン解析のためのデータを提供し、非効率性の分析、危険性の分析、個人の作業評価などの結果を作業フローの見直し、商品配置の見直し、ベテランと新人の作業比較やスキル評価・教育等に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1の実施形態>
以下、本発明を実施するための一実施形態を、図を用いて説明する。本実施形態は、倉庫管理システムにセンサネットワークシステムを適用した作業管理システムの一例を示し、倉庫に保管してある商品を出荷するために、作業員は予め付与された出荷伝票に基づいて倉庫の中の棚に陳列(又は格納)してある商品をピッキングし、倉庫内に設けた出荷検品エリアに移送する例に本発明を適用したものを説明する。
【0021】
図1は、本実施形態のシステム構成と作業手順を示した図である。また、図2は、本実施形態の処理フローを示した図である。
【0022】
以下の説明においては、特に断りのない限り、センサネットワークは、センサノードと基地局の間の通信が無線であるワイヤレス・センサネットワークである。しかし、有線部分があることを排除するものではない。センサネットワークは人・物品などに取り付けてその状態を計測するための1個以上のセンサを持つセンサノードSNと、1個以上の基地局(中継局も含む)BST、センサネットワークを管理するシステム管理サーバ(管理計算機)TSNS及び管理者端末ADTで構成する。
【0023】
本実施形態では、センサノードSNとして、作業員に装着して作業員の動きを検出するセンサノードMSNと、商品や機械などの物に装着して物の動きを検出するセンサノードGSNと、商品を載置する棚などに設置されてセンサノードMSN、GSNの位置を検出する測位用センサノードLSNと、倉庫内の温度や湿度などの環境について測定を行うセンサノードESNを含む例を示す。
【0024】
作業員に装着するセンサノードMSNは、センサSSRとして3軸加速度センサを含み、作業員の前後動を検出する第1の加速度センサと、作業員の上下動を検出する第2の加速度センサと、作業員の左右の動きを検出する第3の加速度センサを備える。また、センサノードMSNには、作業員を識別するための固有の識別子を格納する識別情報記録回路を備える。センサノードMSNは、検出した加速度と、識別子を基地局BSTへ転送する。基地局BSTはセンサノードMSNから受信したセンシングデータ(加速度、識別子)をシステム管理サーバTSNSへ転送する。
【0025】
また、商品などの物に装着するセンサノードGSNも、上記センサノードMSNと同様に、センサSSRは商品などの動きを検出し、第1の加速度センサで商品の前後動を検出し、第2の加速度センサで商品の上下動を検出し、第3の加速度センサで商品の水平方向の動きを検出する。また、センサノードGSNの識別情報記録回路には、商品や機械の個体を識別するための識別子を格納する。センサノードGSNは、検出した加速度と識別子を基地局BSTへ転送する。
【0026】
また、環境を測定するセンサノードESNは、センサSSRとして温度センサや湿度センサを備え、センサSSRが検出した環境に関する情報を基地局BSTへ転送する。
【0027】
また、測位用センサノードLSNは、センサノードMSN、GSNと通信を行って、電界強度などからセンサノードMSN、GSNを装着した作業員や商品の位置を特定する。例えば、測位用センサノードLSNは、電界強度が閾値を超えたセンサノードMSN、GSNの識別子を取得して基地局BSTへ転送し、このセンサノードMSN、GSNの位置が測位用センサノードLSNの近傍にあることを通知する。基地局BSTから測位用センサノードLSNからのデータを受信したシステム管理サーバTSNSは、倉庫内における作業員や商品の位置を測位用センサノードLSNの近傍として特定することができる。
【0028】
なお、センサノードSNは、センサノードSN間の通信も可能なマルチホップネットワークであるとする。基地局BSTとシステム管理サーバTSNSはLAN、インターネットなどのネットワークNWKで相互に接続されている。また、各センサノードMSN、GSN、LSN、ESNの総称を、センサノードSNとする。
【0029】
基地局BSTは、上記各センサノードSNから受信したデータ(以下、センシングデータとする)をシステム管理サーバTSNSへ転送する。
【0030】
システム管理サーバTSNSは、CPUとメモリ及びストレージ装置を備えた計算機であり、センサネットワークシステムの管理を行うセンサネット管理システムと、作業員や商品の管理を行う倉庫管理システムを実行する。
【0031】
センサネット管理システムは、センサノードSN及び基地局BSTの構成を管理し、また、センシングデータの管理を行う。本実施形態では、センサネット管理システムがセンサノードSNから取得したセンシングデータを倉庫管理システムに受け渡し、また、センサネット管理システムは、倉庫管理システムからセンサノードSNに当てた指令などを基地局BSTから各センサノードSNへ転送する。
【0032】
倉庫管理システムは、後述するように、センサネット管理システムから取得したセンシングデータに基づいて、作業員や商品の管理を行う。つまり、倉庫管理システムは人・物品などの作業計画・管理、在庫管理等を行うシステムであり、管理表示端末ADTを介して管理者へ管理の内容を通知する。
【0033】
本実施形態においては、図1に示すように、システム管理サーバTSNSに、センサネット管理システムと倉庫管理システムを統合した例を示すが、センサネット管理システムと倉庫管理システムを独立した計算機で実行し、これらのシステムとセンサネットワークをネットワークNWKを介して統合してもよい。
【0034】
また、倉庫管理システムは、後述の作業計画を格納するための作業計画データベース(図中では作業計画DBと記述)PDBおよびセンシングデータや解析結果等の各種履歴を格納するための履歴データベース(図中では履歴DBと記述)LDBも備える。なお、以下では、上記センサネット管理システムと倉庫管理システムを統合したひとつの統合システムとして説明する。本統合システムは以下のように構成される。
【0035】
(TSS−1)管理対象となる各作業員MにはセンサノードMSNを取り付ける。
【0036】
(TSS−2)管理対象の物品は、流通対象となる商品、それら商品を保管陳列する棚あるいは床、商品を運搬するためのフォークリフト等の機械でありこれらの物品GにもセンサノードGSNを取り付ける。
【0037】
(TSS−3)倉庫など商品の置かれる場所の環境を計測するためにもセンサノードESNを取り付ける。図1においては、倉庫の保管エリアにセンサノードESNを取り付けてある。
【0038】
(TSS−4)移動するセンサノードMSN、GSNの測位用のセンサノードLSNを設置する。これは、移動するセンサノードMSN、GSNが発する電波を検知し、検知した場合にその移動ノードが当該測位用のセンサノードLSNの近傍にあると判定する。複数の測位用のセンサノードLSNが同一の移動するセンサノードMSN、GSNを検知した場合には、それぞれの測位用センサノードLSNの感度を自動的に弱め、最終的に1個の測位用センサノードLSNが移動するセンサノードMSN、GSNを検知できるようにし、測位を行う。測位用のセンサノードLSNとしては、物品に取り付ける移動しないセンサノードGSNがその役目を兼ねてもよい。なお、図1では、測位用センサノードLSNを棚1から棚4にそれぞれ設置した例を示す。
【0039】
これら作業員、物品、環境にとりつけられた各センサノードSNのIDは予めシステム管理サーバTSNSに登録され、システム管理サーバTSNSで管理される。また作業手順WFにおける各作業フェーズごとに商品Gの保管場所は、商品Gに設置したセンサノードGSNのIDごとにシステム管理サーバTSNSで管理されている。
【0040】
(TSS−5)各センサノードSNは基地局BSTと通信する。基地局BSTは、各センサノードSNの測定データ(センシングデータ)を漏れなく、リアルタイムで観測できるよう、十分な個数を設置する。図1においては、倉庫の保管エリア、出荷エリアにそれぞれ基地局BSTを取り付けてある。
【0041】
(TSS−6)システム管理サーバTSNSは、センサネットの管理機能、倉庫管理システムの管理機能を有し、倉庫管理システムは後述する作業員や商品の場所や作業内容の管理機能など、本発明で必要な各種機能を備える。なお、システム管理サーバTSNSは1個のサーバで各機能を提供する必要はなく、複数個のサーバで分散処理してもよい。また、これらの機能を提供するハードウェアとしては、専用サーバ、パーソナル・コンピュータ等、機種は限定されない。
【0042】
次に、センサノードSN(MSN、GSN、ESN、LSN)の構成と動作について図2を参照しながら説明する。
【0043】
センサノードSNは、図2のブロック図に示すように、その中枢機能を実現する制御部LSI、基地局BSTとのデータの送受信を行うアンテナANT、外部環境を測定するセンサSSR、通知装置NTC、赤外線発光器INFR及び、制御部LSIとセンサSSRに電力を供給する電源POWから構成される。
【0044】
電源POWは1次電池、充電可能な2次電池、及び発電素子(太陽光発電素子、振動発電素子、マイクロ波発電素子等)と発電エネルギーを蓄えるコンデンサあるいは2次電池、あるいはこれらの電池の組み合わせである。
【0045】
制御部LSIは、アンテナANTに接続され、基地局BSTとのデータの送受信を制御する無線送受信回路RFと、制御部LSIの全体制御を行うCPU(Central Processing Unit)であるコントローラ回路CNT、センサノードSNに固有の識別情報を記録する不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリ)である識別情報記録回路IDM、センサSSRから入力したデータをA/D(Analog / Digital)変換するA/D変換回路ADC、プログラムを記録するROM(Read Only Memory)であるプログラムメモリPM、一定間隔の信号(クロック信号)を発生させるタイマ回路RTC、及び、電源POWから供給される電力を一定の電圧に調整すると共に、電力不要のときに電源を切断し、消費電力を抑制する制御を行う電源制御回路PCNTから構成される。制御部LSIは1チップに限定されてもよいし、あるいは、複数チップを搭載したボード又はMCP(Multi Chip Package)であってもよい。
【0046】
センサノードSNは限りある電力で長時間センサSSRによる測定を可能にするために、センサSSR及びコントローラ回路CNTを間欠的に動作させて消費電力を削減させることが望ましい。そのために、例えばスリープ状態では、コントローラ回路CNTはセンサSSRの動作を停止し、所定のタイミングで、すなわちタイマ回路RTCの発生するクロック信号による割り込みによりセンサSSRを間欠的に動作状態へ切り替えて測定データを送信するように構成する。
【0047】
また、センサノードSNは装着している人とのコミュニケーションのための機構である通知装置NTCを持つ。通知装置NTCは、ブザー、発光ダイオード(LED)、液晶パネル、赤外線発光器、返答ボタン等で構成することができる。これらの機構は1つのセンサノードSNが複数の通知装置NTCをもってもよい。
【0048】
次に、倉庫管理システムの品質管理と作業管理に必要な要件の例について説明する。
【0049】
作業員Mに取り付けるセンサノードMSNには、センサSSRとして加速度センサ、温度センサ、赤外線センサを設け、通知装置NTCとして赤外線発光器、ブザー、発光ダイオード、液晶パネル、返答ボタンを搭載する。
【0050】
商品Gに取り付けられているセンサノードGSNにはセンサSSRとして加速度センサ、温度センサ、赤外線センサを設け、通知装置NTCとして赤外線発光器、発光ダイオードを搭載する。
【0051】
棚に取り付けられているセンサノードGSNにはセンサSSRとして温度センサ、赤外線センサを設け、通知装置NTCとして赤外線発光器、発光ダイオードを搭載する。
【0052】
環境に取り付けられているセンサノードESNにはセンサSSRとして温度センサを搭載する。
【0053】
さらに、測位用センサノードLSNを上記各棚に設置し、各センサノードMSN、GSNの電波強度を測定する。測位用センサノードLSNは、検出したセンサノードMSN、GSNの電波強度の状態により、作業員Mに取り付けられたセンサノードMSNと商品Gに取り付けられたセンサノードGSNの位置を知ることができる。
【0054】
次に、倉庫で行われる作業員Mの作業手順WFについて説明する。
【0055】
作業手順WFには、一連の作業を構成する作業項目毎に以下の項目を記載する。
(WF−1)作業名称:入荷検品、輸送、などの名称を示す。
(WF−2)作業順番:一連の作業の中での順番を示す。
(WF−3)作業予定時刻:作業開始、終了の予定時刻を示す。
(WF−4)作業担当者M:作業担当者名、センサノードMSNを身に付けている場合はそのID。
(WF−5)利用機材・装置:当該作業に用いる機材や装置名称。センサノードGSNがついていればそのID。例えばピッキングカート、フォークリフト、トラックなど。
(WF−6)作業対象商品G(各センサノードのID)と作業者指示方法:当該作業において、直接の作業対象商品GのセンサノードGSNのIDと、センサノードが作業者Mに行う指示方法を示す。
(WF−7)作業対象商品Gの場所:作業開始時と終了時のそれぞれの作業対象商品Gの置かれている場所を示す。それらの場所には基地局BSTが1個以上設置され、その場所と基地局BSTは関連づけられている。
(WF−8)設定パラメータ(商品Gに取り付けられているセンサノードGSN毎):当該作業において、直接の作業対象商品Gに取り付けられたセンサノードGSNと、関連する商品Gに取り付けられたセンサノードGSNのそれぞれのIDとその設定パラメータ。設定パラメータは温度、加速度などのセンサ毎にその測定間隔(間欠動作間隔)を定義する。例えばトラックに積まれた商品Gの一部を降ろす作業であれば、直接の作業対象商品Gとはトラックから降ろす商品であり、関連する商品Gとはトラックから降ろさず載せたままにする商品である。
(WF−9)環境測定用センサノードID:作業場所に設置されている環境測定用のセンサノードESNのID。
(WF−10)作業内容:作業の内容を示す。
これらの作業手順の内容は、システム管理サーバTSNSにおいて、センサノードSNのIDと関連付けられている。また、作業手順の内容は、管理表示端末ADTに表示することもできる。
【0056】
次に、図3に示す処理フローPFを説明する。なお、作業を行う作業員は、システム管理サーバTSNSから予め作業伝票を取得し、システム管理サーバTSNSは作業計画データベースPDBの作業手順WFと、作業員のセンサノードMSNのIDを対応付けておく。
【0057】
図3において、まず初期解析処理PF1においては、作業員、物品及び環境に取り付けた各センサノードSNからのセンシングデータを入力し、以下の解析を行う。
(1)作業員Mに取り付けたセンサノードMSNの加速度データによる基本動作の解析。
センサノードMSNのセンサSSRに含まれる3軸加速度センサの測定データをもとに、システム管理サーバTSNSは作業員の基本動作を解析する。作業員の基本動作とは静止、歩く、走る、腕を上げる・下げる、立ち上がる・座る、など作業を構成する基本的な動作である。センサノードMSNの加速度センサによる動作解析は種々の方法が提案されており、本発明においては、動作解析の方法を特に限定するものではない。簡単な例としては、加速度センサを胸や腰に取り付けた場合の歩行動作の場合、上下方向の加速度が周期的に変化する(一歩ごとの着地)、前後方向の加速度が上下方向の加速度と同期して規則的に前方向と後ろ方向を繰り返す(着地するごとの速度変化)、左右方向の加速度が上下方向の加速度に同期して規則的に繰り返す(一歩ごとの体の左右へのゆれ)、といった波形が観測できる。加速度センサを腕に取り付けた場合には、これに腕の振りが重なった波形として観測できる(図4a)。以上の規則性がほぼ同時に、かつほぼ等間隔に現れるとき、ほぼ一定速度で歩いている、とシステム管理サーバTSNSで推定できる。あるいは、加速度の波形ではなく、加速度データを高速フーリエ変換し、周波数成分を解析することによりシステム管理サーバTSNSが作業員の動作を判定してもよい。
【0058】
また、腕の上げ下ろしの場合には、加速度センサを腕に取り付けた場合、図4bに示すように、腕を下に下げた状態での上下方向の軸の加速度と前後方向の軸の加速度が途中で交差するような波形となる。以上のように、センサノードMSNの加速度センサの取り付け場所ごとに各基本動作の特徴量を抽出してあらかじめ作業計画データベースPDB等に登録しておき、システム管理サーバTSNSではパターンマッチングにより動作を判定することができる。
【0059】
(2)作業員Mに取り付けたセンサノードMSNの測位データによる場所の特定。
【0060】
システム管理サーバTSNSは、センサノードMSN、GSNと通信した測位用センサノードLSNのIDと測位ノード用センサノードLSNの設置場所により作業員Mや商品Gの場所を特定する。なお、測位用センサノードLSNの設置場所は、予め登録された物とする。
【0061】
(3)作業員Mに取り付けたセンサノードMSNの赤外線センサのデータによる対面解析。
【0062】
作業員が対面したセンサノード(他の作業員に取り付けたセンサノードMSN、商品・棚・機械等の物品に取り付けたセンサノードGSN)から発光された赤外線を受光し、その赤外線データのIDより、対面したセンサノードSN、すなわち対面した作業員、商品、機械、棚などを特定する。
【0063】
(4)作業員Mに取り付けたセンサノードMSNの温度センサのデータによる環境解析。
【0064】
センサノードMSNのセンサSSRに含まれる温度センサのセンシングデータから、作業員の作業場所の温度を特定する。
【0065】
以上(1)〜(4)のセンシングデータは、加速度データは例えば2秒以上というようなある程度の連続した測定時間範囲の結果で解析する。それ以外の場合にはセンサの測定した瞬間の時刻におけるデータでよい。
【0066】
(5)商品Gに取り付けたセンサノードGSNの加速度センサの加速度データおよび温度センサの温度データによるによる商品の動きの解析。
【0067】
センサノードGSNのセンシングデータから静止状態と異なる加速度の測定結果が得られた場合、システム管理サーバTSNSは、商品Gに動きがあったと判定できる(図4d)。センサノードGSNが検出した加速度の大きさによって、商品Gに加えられた衝撃を検知することもできる。また温度変化によっても商品Gに動きがあったと判定できる(図4c)。
【0068】
(6)その他の商品取り付けたセンサノードGSNや環境に取り付けたセンサノードESNの赤外線センサ、温度センサのデータは、作業員に取り付けたセンサノードと同様にシステム管理サーバTSNSで処理される。
【0069】
以上、初期解析処理においては、作業員の基本動作、位置、商品の動き、位置、作業員や商品、環境の温度、対面状況などを把握する。また、上記センシングデータに基づく操作の解析結果は履歴データベースLDBに測定時刻とセンサノードSNのIDともに格納する。
【0070】
次に作業内容解析処理PF2は、上記初期解析処理PF1の結果から必要に応じて作業計画データベースPDB、履歴データベースLDBを参照して作業員Mの作業内容や商品の状態を把握する。
【0071】
作業員Mの作業内容は、例えば保管棚の前で腕の上げ下ろしが行われたら、ピッキング(取り出し)または格納の作業の可能性があると判定でき、同時に棚に保管されていた商品Gが動いたことがわかれば、ピッキングの可能性が大きいと判定でき、さらに作業手順WFで、出荷作業であることがわかれば、ピッキングであるとほぼ確定できる。このように作業員の基本動作に加えて、作業員の位置、取り扱っている商品の動きや位置などを組み合わせることにより、さらには作業手順WFを含めた作業計画データベースPDBの内容も参照することにより、確度の高い作業内容の把握が可能になる。
【0072】
一方、商品Gの状態は、例えば上記の場合、システム管理サーバTSNSでは、作業員のセンサノードMSNから検出した加速度と商品GのセンサノードGSNから検出した加速度から「ピッキングによって棚から降ろされた」ということが判定できる。他の例としては20℃の環境に15分間置かれている、等の状況の把握がある。
【0073】
システム管理サーバTSNSでは、これらの解析処理を各作業員M、各商品Gに対して随時行っていく。またシステム管理サーバTSNSは、解析処理の結果を履歴データベースLDBに格納する。
【0074】
次に作業評価処理PF3は、上記作業内容解析処理PF2の結果と、必要に応じて作業計画データベースPDB、履歴データベースLDBを参照して、作業員Mの作業内容や商品Gの品質を評価する。作業評価処理PF3の評価項目は作業員に割り当てられた作業項目等によって異なるが、作業の誤りや無駄、安全性、品質悪化、等である。さらにこれらの評価結果により作業員Mへフィードバックをかける必要があるかどうか、センサの測定間隔等の測定条件の変更が必要かどうかを判定する。またシステム管理サーバTSNSは、これらの結果を履歴データベースLDBに格納する。
【0075】
さらにフィードバック処理PF4は、システム管理サーバTSNSが上記作業評価処理でフィードバックの必要ありと判定した場合に、作業員MのセンサノードMSNに対して適切なメッセージを送信したり、センサSSRの測定間隔を変更したりする。作業員Mにメッセージを送信する場合、返答要求のあるものについては、返答確認、再送信等も含めて行う。またこれらの結果を履歴データベースLDBに格納する。作業計画に変更があった場合には、作業計画データベースPDBの変更も行う。
【0076】
以上、処理フローPFの概略を説明したが、さらに具体的な処理を上述の出荷におけるピッキング作業を例に、図5、図6、図11〜図20に基づいて説明する。
【0077】
図5、図6に示す作業内容は、作業員Mがピッキング伝票を受け取り、伝票に記載された商品Gを保管棚から探してピッキングカートに入れ、出荷検品エリアに運ぶことである。また作業者Mの体には複数のセンサノードMSNを取り付けても良いが、ここでは、歩行、腕の上げ下ろし、静止状態が観測できるように、腕に1つのセンサノードMSNを取り付けるものとする。さらにピッキング伝票には、複数のピッキングすべき商品が記載されており、商品Gの記載順にピッキングを行えば、最短経路でピッキング作業ができるものとする。また図11〜図20に示す各テーブルは、当該処理を実現するために作成するテーブルである。
【0078】
まず作業手順WFの内容を説明する。各作業ごとに、作業手順WFは以下のように定義されている。
(WF1−1)作業名称:作業4(出荷のためのピッキング作業)
(WF1−2)作業順番:4
(WF1−3)作業予定時刻:開始時刻=2006年9月1日9時10分、終了時刻=2006年9月1日9時20分。
(WF1−4)作業担当者:作業員M(佐藤)。
(WF1−5)利用機材・装置:ピッキングカート。
(WF1−6)作業対象商品Gの場所:作業開始時=倉庫の保管棚、作業終了時=出荷検品エリア。
(WF1−7)作業対象商品G:G1(ID=0001)、G2(ID=0002)、G3(ID=0003)、G4(ID=0004)。
作業対象商品Gの場所保管場所
G1:棚1、3段目、C
G2:棚1、3段目、C
G3:棚1、2段目、E
G4:棚3、2段目、D
(WF1−8)設定パラメータ:G1(ID=0001)の温度測定間隔=1分、G2(ID=0002)の温度測定間隔=1分、G3(ID=0003)の温度測定間隔=1分、G4(ID=0004)の温度測定間隔=1分。
(WF1−9)環境測定用センサノードID:保管エリア温度測定用のセンサノードID=1001。
(WF1−10)作業内容:作業者は出荷伝票を伝票出力場所で受け取り、伝票に記載された商品Gを倉庫の保管エリアから取り出しピッキングカートに入れ、出荷検品場所に運ぶ。
【0079】
以上が作業順番4の作業手順である。ほかの作業については説明の都合上省略する。
【0080】
次に各センサノードSNに搭載されているセンサ、その他部品の動作間隔、送信間隔は以下のように予め設定されたものとする。
【0081】
(1)作業員Mに取り付けるセンサノードMSN
加速度センサ、温度センサ、赤外線センサは20ミリ秒間隔で測定する。測定データは1秒間隔で送信するものとする。赤外線発光器は10ミリ秒間隔で発光、停止を繰り返す。ブザー、発光ダイオード、液晶パネルは前記送信信号を受信したことの返答信号が基地局から返ってきたときにフィードバックのための割り込み信号が含まれていれば動作する。返答ボタンは随時動作する。
【0082】
(2)商品Gに取り付けるセンサノードGSN
加速度センサ、温度センサ、赤外線センサは20ミリ秒間隔で測定する。測定データは1秒間隔で送信するものとする。赤外線発光器は10ミリ秒間隔で発光、停止を繰り返す。発光ダイオードは前記送信信号を受信したことの返答信号が基地局から返ってきたときにフィードバックのための割り込み信号が含まれていれば動作する。
【0083】
(3)棚に取り付けるセンサノードGSN
温度センサ、赤外線センサは20ミリ秒間隔で測定する。測定データは1秒間隔で送信するものとする。赤外線発光器は10ミリ秒間隔で発光、停止を繰り返す。発光ダイオードは前記送信信号を受信したことの返答信号が基地局から返ってきたときにフィードバックのための割り込み信号が含まれていれば動作する。
【0084】
(4)環境に取り付けるセンサノードESN
温度センサは10秒間隔で測定。測定データは20秒間隔で送信するものとする。
【0085】
(5)測位用センサノードLSN
近くにあるセンサノードの電波強度を20ミリ秒間隔で測定する。測定データは1秒間隔で送信するものとする。
【0086】
また、初期解析処理PF1は5秒間の測定データをまとめて解析し、順次、作業内容解析処理PF2、作業評価処理PF3、フィードバック処理PF4が行われるものとする。これらの処理PF1〜PF4は繰り返し実行される。
【0087】
まず、作業員M(佐藤)が作業開始を作業者端末ADTから入力すると、当該作業の開始を上位システム(システム管理サーバTSNS)が判定する。この作業開始時点は、作業員Mが出荷伝票の出力場所で伝票を受け取った時点とする。システム管理サーバTSNSでは、作業者端末ADTから作業の開始を受け付けて、作業員のセンサノードMSNのIDと、作業伝票に対応して予め設定された作業手順WFを作業計画データベースPDBから読み込んで、作業員Mに作業手順WFを対応付ける。また、システム管理サーバTSNSは、図11〜図20に示す作業手順テーブル群TBWF、作業員・機材・商品テーブル群TBA、位置・動作・状態テーブル群TBBを作成し、作業員Mが行った作業の判定結果を、履歴データベースLDBへ逐次書き込んでいく。
【0088】
この時点でシステム管理サーバTSNSは、作業員M(佐藤)が伝票を受け取ったことを判定できたものとする。以後、システム管理サーバTSNSは作業員Mが出荷のためのピッキング作業を行っているものとして、各種処理を実行する。まず作業手順WFに基づいて、図11に示す作業手順テーブル群TBWFを構成する作業手順テーブルTBWF1、作業担当者テーブルTBWF2、利用機材・装置テーブルTBWF3、作業対象商品テーブルTBWF4、作業内容テーブルTBWF5を作成する。また図12に示す作業員・機材・商品テーブル群TBAを構成する作業員テーブルTBA1、機材・装置テーブルTBA2、商品テーブルTBA3、環境測定センサノードテーブルTBA4、測位用センサノードテーブルTBA5もそれぞれ作成する。ここで作業手順テーブル群TBWFは現在開始された作業に関して作業手順WFの内容を登録して作成するが、作業員・機材・商品テーブル群TBAは、当該倉庫で行われる作業全般に関係する作業員・機材・商品の情報を格納するテーブルである。次に図13〜図20に示す位置・動作・状態テーブル群TBBが作業の進行にしたがって作成されていく。位置・動作・状態テーブル群TBBは作業員位置・状態テーブルTBBA1、商品位置・状態テーブルTBBB(TBBB1〜TBBB5)、機器状態テーブルTBBC1を各作業員、各商品、各機器に関してそれぞれ作成する。最初は作業開始時にエントリ#1(時刻9:10:00)の作業開始が登録される。この段階では、作業内容テーブルTBWF5のエントリ#1の作業内容である。
【0089】
作業員Mは伝票の最初に記載された商品の保管場所である棚1への移動を開始する(図5参照)(作業内容テーブルTBWF5のエントリ#2)。位置・動作・状態テーブル群TBBのエントリ#2が追加され、各テーブルに日付・時刻を書き込む。
【0090】
初期解析処理PF1:作業員MのセンサノードMSNが検出した加速度センサのデータを解析し、歩行と判定する。ピッキングカートに設けたセンサノードGSNの加速度センサのデータ(大きな振動を検知)からピッキングカートは移動していると判定する。
【0091】
作業員Mの位置は棚1へ向かう通路(通路0)、ピッキングカートの位置も棚1へ向かう通路(通路0)と測位結果から判定する。作業員Mの作業員位置・状態テーブルTBBA1のエントリ#2には判定位置は「通路0」、判定動作は「歩行」と書き込む。またピッキングカートの機器状態テーブルTBBC1のエントリ#2には判定位置は「通路0」、判定状態は「大きな振動」と書き込む。さらに、各商品の商品位置・状態テーブルTBBBのエントリ#2にも、たとえば商品G1の商品位置・状態テーブルTBBB1では判定位置は商品G1が検知される「棚1」、判定状態は加速度が検知されないので「静止」と書き込む。
【0092】
作業内容解析処理PF2:作業員Mが歩行し、ピッキングカートの測位結果が通路で作業員Mと同じ位置であることから、システム管理サーバTSNSでは、「作業員Mがピッキングカートを押して歩いている(すなわち移動)」と判定する。そこで作業員Mの作業員位置・状態テーブルTBBA1のエントリ#2には判定作業は「移動」と書き込む。またピッキングカートの機器状態テーブルTBBC1のエントリ#2には判定作業は「移動」と書き込む。さらに、各商品の商品位置・状態テーブルTBBBのエントリ#2にも、たとえば商品G1の商品位置・状態テーブルTBBB1では判定作業は商品G1に対しては何の作業も行われていないため「無し」と書き込む。
【0093】
作業評価処理PF3:上記作業内容と位置から保管棚に向かっていると判定し、正しい作業が行われていると判定する。そこで作業員Mの作業員位置・状態テーブルTBBA1のエントリ#2には評価は「○」と書き込む。またピッキングカートの機器状態テーブルTBBC1のエントリ#2には評価は「○」と書き込む。さらに、各商品の商品位置・状態テーブルTBBBのエントリ#2にも、たとえば商品G1の商品位置・状態テーブルTBBB1では判定作業は商品G1に対しては何の作業も行われておらず誤りではないため「○」と書き込む。したがってフィードバック処理PF4は行われない。
この段階で図13〜図20に示す位置・動作・状態テーブル群TBBのエントリ#2までが登録されている。前記各図の下部にはエントリ#13まで登録された状態が示してある。これは本実施形態で後述する、作業員Mが棚3の前へ移動し停止した状態までを示している。以下では各エントリの追加方法は省略するが、上記エントリ#2と同様に登録していく。
【0094】
作業開始2分後に作業員Mは最初のピッキング位置である棚1の前に到着したとする。それまでの間は上記各処理が上記と同様に繰り返され、同じ判定結果が得られている。
【0095】
初期解析処理:作業員のセンサノードの加速度センサのデータを解析し、歩行から静止状態へ移行したと判定する。ピッキングカートのセンサノードGSNから取得した加速度センサのデータからもシステム管理サーバTSNSは、作業員及びピッキングカートが移動から静止状態へ移行したと判定する。システム管理サーバTSNSは、測位用センサノードLSNの測定結果から作業員の位置は棚1の前、ピッキングカートの位置も棚1の前と判定する。
【0096】
作業内容解析処理:作業員もピッキングカートも棚1の前で停止したことから、システム管理サーバTSNSでは「作業員とピッキングカートが棚1の前で停止した」と判定する。
【0097】
作業評価処理:作業計画によれば、棚1で最初のピッキング作業を行うことになっているので、上記作業内容と位置からピッキング作業を行うために停止したと判定し、正しい作業が行われていると判定する。
したがってシステム管理サーバTSNSは、作業手順に関して作業員に対するフィードバック処理は行われない。
【0098】
次に作業員Mがピッキングを開始する。作業員Mが棚1から商品G1を取り出してピッキングカートに入れたとする。
【0099】
初期解析処理PF1:システム管理サーバTSNSは、作業員MのセンサノードMSNの加速度センサのデータを解析し、腕を上げて下ろしたと判定する。システム管理サーバTSNSでピッキングカートのセンサノードGSNの加速度センサのデータを解析すると、1秒間振動が検知され、軽い衝撃を受けたと判定する。測位用センサノードLSNの検出結果に基づいて、作業員Mの位置は棚1の前、ピッキングカートの位置も棚1の前と判定する。さらに商品G1の加速度センサが商品G1の動きを検知し、システム管理サーバTSNSは、商品G1が動かされたと判定する。
【0100】
作業内容解析処理PF2:システム管理サーバTSNSは、作業員MのセンサノードMSNから取得したセンシングデータと商品G1のセンサノードGSNから取得したセンシングデータ及び棚1に設置した測位用センサノードLSNから取得したセンシングデータより、作業員Mの腕の上げ下ろし、商品G1の動き、ピッキングカートの衝撃、作業員位置もピッキングカート位置も棚1であることから、「作業員が商品G1を棚1から取り出しピッキングカートに入れた」と判定する。
【0101】
作業評価処理PF3:作業計画データベースPDBに格納されている作業計画によれば、棚1で最初のピッキング作業を行うことになっており、かつ商品G1をピッキングする予定であるので、システム管理サーバTSNSは、上記作業員Mの作業内容と位置からピッキング作業が正しく行われたと判定する。
【0102】
正常に作業が行われたので、システム管理サーバTSNSは、図4に示したフィードバック処理PF4は行われない。
【0103】
引き続き作業員Mが棚1から予定の商品G2ではなく商品G5を取り出してピッキングカートに入れたとする(図6参照)。
【0104】
初期解析処理PF1:上記と同様にシステム管理サーバTSNSは、作業員MのセンサノードMSNから取得した加速度センサのデータを解析し、腕を上げて下ろしたと判定する。また、システム管理サーバTSNSは、ピッキングカートのセンサノードGSNの加速度センサのデータを解析すると、1秒間振動が検知され、軽い衝撃を受けたと判定する。システム管理サーバTSNSは、作業員Mの位置は測位用センサノードLSNのセンシングデータより棚1の前、ピッキングカートの位置も棚1の前と判定する。さらに商品G5の加速度センサが商品G5の動きを検知し、商品G5が動かされたと判定する。一方、商品G2の加速度センサは動きを検知していない。すなわち商品G2は動いていないと判定する。
【0105】
ここで、システム管理サーバTSNSは、作業員Mが取得した出荷伝票に対応する作業手順WFを作業計画データベースPDBから参照し、ピッキングが完了していない作業対象の商品G2,G3,G4について監視を行う。
【0106】
作業内容解析処理PF2:作業員Mの腕の上げ下ろし、商品G5の動き、ピッキングカートの衝撃、作業員Mの位置もピッキングカート位置も棚1であることから、「作業員Mが商品G5を棚1から取り出しピッキングカートに入れた」とシステム管理サーバTSNSは判定する。
【0107】
作業評価処理PF3:作業計画(作業手順WF)によれば、棚1で商品G2、G3のピッキング作業を行うことになっているが、前記作業内容解析処理PF2では商品G2、G3は動かず、商品G5がピッキングされたと判定されたので、システム管理サーバTSNSは「予定の商品G2、G3をピッキングせず商品G5を降ろしたので作業誤り」と判定する。さらにシステム管理サーバTSNSは、「作業員Mに作業誤りを伝える必要あり」と判定し、フィードバック処理PF4を実施する。
【0108】
フィードバック処理PF4:前記作業評価処理PF3の結果から、「商品G5は誤り。商品G2、G3を降ろしてください」とのメッセージを作業員MのセンサノードMSNにシステム管理サーバTSNSが送信する。同時に作業員MのセンサノードMSNのブザーを鳴らすよう、システム管理サーバTSNSは所定のコマンドを送信する。システム管理サーバTSNSが送信したメッセージは作業員MのセンサノードMSNの液晶パネルに表示され、作業員Mはメッセージを確認し、了解したら「了解」ボタンを押して返答する。システム管理サーバTSNSはフィードバック処理で「了解」の返答を受け取ったため、処理終了とする。
【0109】
その結果、作業員Mは商品G5を棚に戻したとする。このときは以下のように処理が行われる。
【0110】
初期解析処理PF1:システム管理サーバTSNSは、作業員MのセンサノードMSNの加速度センサのデータを解析し、腕を上げて下ろしたと判定する。システム管理サーバTSNSがピッキングカートのセンサノードの加速度センサのデータを解析すると、1秒間振動が検知され、軽い衝撃を受けたと判定する。作業員の位置は棚1の前、ピッキングカートの位置も棚1の前と判定する。さらに商品G5の加速度センサが商品G5の動きを検知し、商品G5が動かされたと判定する。
【0111】
作業内容解析処理PF2:システム管理サーバTSNSは、作業員Mの腕の上げ下ろし、商品の動き、ピッキングカートの衝撃、作業員の位置もピッキングカート位置も棚1であることから、「作業員が商品G5をピッキングカートから取り出し棚1に置いた」と判定する。
【0112】
作業評価処理PF3:システム管理サーバTSNSは、作業計画と作業履歴(前述の結果)によれば、商品G5を誤ってピッキングし、作業者1がその誤りを判定しているので、商品G5を棚1に置いたことは正しいと判定する。
したがってシステム管理サーバTSNSはフィードバック処理PF4を行わない。
【0113】
次に作業員Mが棚1から予定の商品G2を取り出してピッキングカートに入れたとする。この場合、システム管理サーバTSNSは、読み込んだ作業手順WFから前記の商品G1の場合と同様、正しい処理が行われたと判定される。棚1の商品G3についても、作業員Mは、作業手順WFどおりにピッキングを実施すると、
次に、作業員Mが商品次のピッキング場所へ移動するためにピッキングカートを押して棚1の前を離れ、通路へ出たとする。
【0114】
初期解析処理PF1:システム管理サーバTSNSは、作業員MのセンサノードMSNの加速度センサのデータを解析し、歩行と判定する。システム管理サーバTSNSは、ピッキングカートのセンサノードGSNの加速度センサのデータからも移動していると判定する。システム管理サーバTSNSは、各測位用センサノードLSNのセンシングデータに基づいて作業員Mの位置は棚3へ向かう通路上で、ピッキングカートの位置も棚3へ向かう通路上と判定する。
【0115】
作業内容解析処理PF2:システム管理サーバTSNSは、作業員Mが歩行し、ピッキングカートの測位結果が通路で作業員Mと同じ位置であることから、「作業員Mがピッキングカートを押して歩いている」と判定する。
【0116】
作業評価処理PF3:システム管理サーバTSNSは、作業計画と上記作業内容と位置から次の保管棚に向かっていると判定し、作業が正しく行われたと判定する。
したがってフィードバック処理PF4は行われない。
【0117】
次に、作業員が次のピッキング場所である棚3付近を通り過ぎ、棚4に接近しているとする。(棚3付近を通り過ぎたことは測位用センサノードLSNで検知できたものとする。)
初期解析処理PF1:システム管理サーバTSNSは、作業員MのセンサノードMSNの加速度センサのデータを解析して歩行と判定する。同様にシステム管理サーバTSNSは、ピッキングカートのセンサノードGSNの加速度センサのデータからも移動していると判定する。システム管理サーバTSNSは、各測位用センサノードLSNのセンシングデータに基づいて、作業員Mの位置は棚4の近く、ピッキングカートの位置も棚4近くと判定する。
【0118】
作業内容解析処理PF2:システム管理サーバTSNSは、作業員Mが歩行し、ピッキングカートの測位結果が通路で作業員Mと同じ位置であることから、「作業員Mがピッキングカートを押して歩いている」と判定する。
【0119】
作業評価処理PF3:システム管理サーバTSNSは、作業計画データベースPDBに格納されている計画(作業手順WF)では棚3で商品G4をピッキングする必要があるが、履歴データベースLDBに格納されている作業履歴から棚3を通りすぎて棚4に近いことから、「移動場所が誤っている」判定する。さらに「作業員Mに作業誤りを伝える必要あり」と判定する。
【0120】
フィードバック処理PF4:システム管理サーバTSNSは、前記作業評価処理PF3の結果から、「棚4は誤り。棚3へ行ってください」とのメッセージを作業員MのセンサノードMSNに送信する。同時にシステム管理サーバTSNSは所定のコマンドを送信して作業員MのセンサノードMSNのブザーを鳴らす。メッセージは作業員MのセンサノードMSNの液晶パネルに表示され、作業員Mはメッセージを確認し、了解したら「了解」ボタンを押して返答する。システム管理サーバTSNSは、この応答を受けると、フィードバック処理PF4に対して「了解」の返答を受け取ったため、処理終了とする。
【0121】
次に、作業員Mが次のピッキング場所である棚3の前へ移動したとする。詳細は省略するが、前記と同様にシステム管理サーバTSNSで処理が行われ、棚3の前で停止したため、正しいと判定する。
【0122】
このような処理を、作業員Mの作業(作業手順WF)が終了するまで、すなわち作業員Mが出荷検品場所にピッキング対象商品をすべてピッキングカートに載せて移動終了するまで、繰り返し行う。
【0123】
以上の処理は、システム管理サーバTSNSが5秒ごとに検出したセンシングデータに基づいての繰り返し処理であったが、5秒の範囲では各処理における判定が不可能な場合がある。例えば、「作業員が腕を上げた」ことだけがわかった場合、その後の動作を解析しないとピッキングであるかどうかはわからない。このようにシステム管理サーバTSNSで判定ができない場合には、判定できるまでのデータが揃ってから、例えば15秒間のデータがそろった段階で作業内容解析処理PF2や作業評価処理PF3、フィードバック処理PF4を行うようにすれば良い。
【0124】
さらに、棚に設置した測位用センサノードLSNと作業員に取り付けてあるセンサノードMSNが正対したときに、双方のいずれかの赤外線センサが相手のセンサノードを検知することにより、移動場所の誤りを検知することもできる。この場合、センサノードMSNまたは測位用センサノードLSNの少なくとも一方が、所定の周期で赤外線の発光を実行する。作業員Mに取り付けてあるセンサノードMSNが赤外線発光し、棚に設置した測位用センサノードLSNが受光することにより場所を判定する、あるいは逆に、棚に設置した測位用センサノードLSNが赤外線発光し、作業員Mに取り付けてあるセンサノードMSNが受光することにより場所判定する、のいずれかで検知できる。
【0125】
また、システム管理サーバTSNSは作業員Mが所定の作業場所に来たことを判定したときに、対象商品Gに取り付けたセンサノードGSNの発光ダイオードを光らせたり、棚に設置した測位用センサノードLSNの発光ダイオードを光らせたりすることで商品Gやその位置を可視化することで、あらかじめミスを防止することも可能である。
【0126】
以上のように、作業員Mの作業中に移動場所の誤りの検知や取り出す商品Gの誤りの検知を行い、直ちに作業者Mに通知することにより、作業の早い段階から誤り検知を可能にし、手戻りを少なくすることができる。
【0127】
<第2の実施形態>
本第2の実施の形態では、無駄な作業・動作の検知の例を説明する。第1の実施形態同様、出荷におけるピッキング作業を例に説明する。なお、センサネットワークシステムやシステム管理サーバTSNSは、前記第1の実施形態と同様の構成である。
【0128】
作業員が第1の実施形態同様、正しい棚の前に来たものとする。この棚から商品を5個取り出す必要があるとする。作業員の腕の上げ下ろしは5回あればよいことになる。作業員の腕の動きを検知し、作業内容解析処理PF2でピッキング作業と判定するが、合計9回のピッキング作業が判定されたとする。作業員の腕の上げ下ろし動作とピッキング対象商品の動きが同時に検知されたときに正しいピッキング作業であると判定される。正しいピッキング作業が5回であれば、4回の余分なピッキング作業があったことになる。
【0129】
余分なピッキング作業の可能性として以下の場合を考える。
(1)商品を取り出して誤ったことがわかったため戻す。
(2)作業員が、目的の商品が棚に陳列してある状態では商品の判別ができず、商品を取り出して手にとってみたところ、目的の商品と異なることがわかり、棚に戻す。
(3)作業員が商品を取り出そうと棚に手を伸ばしたが、目的の商品ではないことが取り出す前にわかり、手を戻す。
(4)作業員が、疲れをとるために腕の上げ下ろしを行った。
【0130】
上記4回の余分な動作は、システム管理サーバTSNSの作業評価処理PF3において、誤りとして検出されるものと、それ以外とがある。
【0131】
上記(1)と(2)はシステム管理サーバTSNSにおいて誤りとして判定される。いずれの場合も、商品Gに取り付けたセンサノードGSNの加速度センサの測定データからシステム管理サーバTSNSで判定可能である。すなわちピッキング対象外の商品Gの加速度が検知されることで判定できる。上記(2)は本来誤りではないが、作業員にメッセージを出す意味で、誤り判定としても良い。ただし、作業員の個人の能力評価を行うような場合、作業員個人の問題にもかかわらず誤りとして記録されると問題が発生することもあるので、別途原因分析を行う必要がある。上記(3)と(4)は商品の動きは検出されないので、無駄な動きと判定する。
【0132】
システム管理サーバTSNSにおけるリアルタイム解析では、以上の処理までを行い、これらの結果を履歴データベースLDBに保存し、別途オフラインで誤りを含めた無駄動作の発生原因を分析する。
【0133】
例えば以下のような分析を行う。
【0134】
まず、システム管理サーバTSNSでは、上記の誤りを含めた無駄動作がどのような状況で発生しているかを判定する。
【0135】
もし、作業員に関係なく特定の場所、あるいは特定の商品に対して集中する場合には、商品陳列方法に問題がある可能性がある(ラベルが見えにくい、類似商品が並んでいて区別が難しい)。作業場所は関係なく特定の作業員に多く検出される場合には、個人の能力の問題である可能性が高い。また作業員の累積作業量に応じて増えてくる場合には疲労によって誤りが増えたり、疲れをとるための動きが増えている可能性が高い。
【0136】
このような可能性を検証するために、倉庫の管理者が現場を確認したり、作業者からヒヤリングを行って、これらの原因を特定し、フィードバックをかける。例えば商品の陳列方法やラベルの貼り方の工夫により、商品を取り出さなくても目視可能にする、作業員の教育を行う、スケジューリングの見直し、などである。作業員の累積作業量に応じて増えてくる場合には、今後の作業評価処理PF3において、累積作業量に応じて動的にスケジュールを変更することも可能である。例えば従事中の作業が終了したら、休憩予定はなかったが休憩をさせるなどである。
【0137】
以上のように、無駄な動作の検知は、無駄の原因の特定をリアルタイムに行うことは容易ではないので、履歴を一度履歴データベースLDBに格納し、オフラインで解析できるようにするとよい。その結果を今後の作業計画、商品の配置・陳列方法、作業員教育等、必要な対策をとるために利用できる。
【0138】
<第3の実施形態>
本第3の実施の形態では、作業員の一箇所への集中を検知あるいは予測し、作業場所を分散させる例に本発明を適用した例を説明する。ここでも第1および第2の実施の形態と同様にピッキング作業を例により説明する。なお、センサネットワークシステムやシステム管理サーバTSNSは、前記第1の実施形態と同様の構成である。
【0139】
まず図7に基づいて、すでに集中が発生した場合について説明する。
【0140】
各棚で行われる商品のピッキング作業は、同時に3人までが効率的な作業のために許容される人数であるとする。
【0141】
システム管理サーバTSNSは、初期解析処理PF1および作業内容解析処理PF2によって、棚1の前に作業員5人(作業員A〜作業員E)が同時に存在し、作業計画データベースPDBからの情報も含め、作業員全員A〜Eがピッキング作業のためにそこに存在していることが判明したとする。
【0142】
さらに作業評価処理PF3において、システム管理サーバTSNSは、各作業員A〜Eの動作がピッキングのための腕のあげおろし動作が単位時間あたり標準的回数より少ない、ピッキング商品の動きが同様に少ない、などが判明したとする。これは作業員A〜Eが棚1の前に5人いることにより明らかに作業効率が低下していることになり、そこで効率性をあげるために作業員2人の作業場所を変更(作業順序の変更)することに決定する。つまり、システム管理サーバTSNSは、所定の許容人数=3人を超えた人数について作業場所を変更すべきと判定する。
【0143】
変更を決定する要素はいくつかあるが、ここでは例えば全体の移動距離を最小にする方法をとることにする。その解として作業員C、作業員Eのピッキング場所を棚2にいったん変更し、そこでの作業をおこなってから元の場所である棚1にもどることにする。この解を求める方法の一例を述べる。まず、各作業員A〜Eについて、棚1の次の移動先の棚が棚1から近い棚の順に並べる。次に前記作業員の並び順に、本来の次の移動先の棚で作業を行ってから棚1に戻るという変更を必要人数分、すなわち許容人数3人を超えた2人について変更する。さらに具体的には、各棚は棚1に近い順に棚2、棚3、棚4となっており、棚2で作業予定の作業員C、作業員E、棚3で作業予定の作業員B、棚4で作業予定の作業員A、作業員D、という順になる。ここで作業員C、作業員Eは棚2で作業予定なのでID順といった規則で順位をつけてよい。作業員A、作業員Dについても同様である。所定の許容人数は3人を超えた2人として、順位の上位の作業員C、作業員Eを選択し、作業場所を上記のように変更するように決定する。 システム管理サーバTSNSは、フィードバック処理PF4において作業員C、作業員EのセンサノードMSNに対しては、「ピッキング場所を棚2に変更してください」というメッセージを送信し、作業員C,Eが受信したら「了解」のボタンで返答し、作業変更する。
【0144】
この結果、棚1での集中を解消し、作業効率を向上させることができる。
【0145】
次に、図8に基づいて、集中が予測される場合について説明する。
【0146】
前述のケースでは、集中が発生してから集中解消を行うように対応したが、あらかじめ集中の予測を行えば、集中発生前に対応が可能である。
【0147】
ここでは、本来は作業計画(作業手順WF)が作業員の集中を避けるようにスケジューリングされていたが、他の作業の進捗遅れで、時刻t0において実際の作業進捗が計画に対してずれが発生していることが作業評価処理PF3で判明したとする。この作業評価処理PFでは、ある時刻に各作業員A〜Eがいるべき棚の位置と、実際に各作業員A〜Eの位置を検出した結果から、実際の作業の進捗と、作業手順WFとのずれを判定する。例えば、図8において、システム管理サーバTSNSは、時刻t0において作業員Bの位置を棚1と検出し、作業手順WFでは時刻t0においては次工程の棚4に作業員Bがいるべきことから、作業員Bの進捗の遅延を検出する。システム管理サーバTSNSは、他の作業員についても時刻t0における作業員の位置と、作業手順WFに基づく作業員がいるべき位置とを比較して、作業の進捗状況を、進捗の遅延、適正な進捗、進捗の進みのいずれかに判定する。
【0148】
図8において、作業員Cは進捗が予定より進んでおり、作業員B、作業員Dは進捗遅れが発生している。
【0149】
今、現時点t0以降では作業が順調に行われるとすると仮定すると、システム管理サーバTSNSは、棚4で5人集中する時間帯が発生することが予測することができる。つまり、システム管理サーバTSNSは、現在時刻t0から作業手順WFどおりに作業が進捗した場合の各作業員A〜Eの位置を、所定の時間間隔毎に演算し、演算した時刻t毎に、各作業員A〜Eがどの棚にいるのかを判定する。この判定の結果、システム管理サーバTSNSは、時刻t1で全作業員A〜Eが棚4に位置することを予測する。そこで上記と同様に全体の移動距離を最小にする方法のように作業順序の変更を決定する。その解として、作業員A、作業員D、作業員Eの作業順序を入れ替えることにより、棚4への集中を最大3人にする。他の棚についても最大3人を超えないようにする。この変更が仮に出荷伝票発行前に行えるなら、フィードバック処理PF4において、システム管理サーバTSNSは、出荷伝票出力に作業順序を反映させて出力するように作業計画の変更を行えるが、この場合には出荷伝票発行後であるため、システム管理サーバTSNSは、フィードバック処理PF4において、変更対象作業員に上記と同様にメッセージを送信する。また作業計画の変更は作業計画データベースPDB、履歴データベースLDBに反映させる。
【0150】
以上のように、作業評価処理PF3においては、現時点で発生している問題を判定するばかりでなく、今後発生しそうな問題を予測し作業計画変更に反映させれば、より効率的な作業を可能にする作業管理が可能になる。
【0151】
<第4の実施形態>
本第4の実施の形態では、本来の作業中に、緊急に処理しなければならない突発的作業が発生した場合について、図9に基づいて説明する。なお、センサネットワークシステムやシステム管理サーバTSNSは、前記第1の実施形態と同様の構成である。
【0152】
入荷エリアの床には圧力センサを備えた着荷検知用センサノードGSNが埋め込まれており、商品の着荷を検知できるようになっている。着荷検知用センサノードGSNは、倉庫に商品が到着したことを検出する。また、入荷エリアには、図示しないタグリーダやバーコードリーダが設置され、これらタグリーダやバーコードリーダに到着した商品のタグやバーコードを読み取らせ、システム管理サーバTSNSに送信する。システム管理サーバTSNSは、受信した商品のタグやバーコードから、作業計画データベースPDBを参照し、当該商品の作業の優先度と、入荷エリアから棚に移動するまでの許容時間を読み出して、緊急に作業を行うべき商品であるか否かを判定する。
【0153】
システム管理サーバTSNSは、上記初期解析処理PF1において、時刻t0において着荷が入荷エリアの床に設置されたセンサノードGSNで検知されるとする。入荷された商品は鮮度の問題によりすぐに倉庫に入庫しなければばらないとする。すなわち、時刻t2までに入庫完了が必要であり、時刻t1までに入庫作業を開始できる場合に必要な要員は2人であるとする。1人で作業する場合には時刻t0より前に作業開始の必要があるとする。したがって召集したい作業員は2人である。緊急時の召集の判定ロジックは以下のようになっているものとする。ここで作業1、作業2といった作業は、同一の番号の作業は同一時間帯に割り当てられる、すなわち複数作業員で行う場合にはそれら作業員が同時に作業するものとする。
(1)作業中、あるいは直近に行う作業については、優先度の高い作業は極力変更(中断、後ろ倒し)しない。
(2)作業員は、休憩中、直近に休憩予定または作業予定なし、作業中、の順に選択する。
(3)作業全体の終了時刻の遅延を最小にする。
【0154】
システム管理サーバTSNSは、履歴データベースLDBから各作業員A〜Eの状態を取得し、作業内容解析処理PF2の結果、時刻t0では各作業員A〜作業員Eが全員で作業中であることがわかる。作業評価処理PF3において、システム管理サーバTSNSがさらに各作業員の作業計画を時系列的に辿ると、作業員B以外は時刻t1以前にまもなく休憩に入ることがわかる。また作業の優先度は作業3が高いことがわかる。したがって、まず作業3は上記(1)より中断させずに続行させることとし、作業員Bは選択の候補から除外される。次に残り4人の直近の作業予定を見ると、作業4、5、6であるが、作業5、6の優先度が低いので、休憩後に作業5、6を予定している作業員A、Cの2人に本突発的作業作業を実行させるように決定する。なお、作業の優先度は、作業手順WFに予め設定された値であり、システム管理サーバTSNSは作業手順WFから読み込んだ優先度で上記判定を行う。上記決定に基づき、システム管理サーバTSNSは、作業員A、Cについて、さらには他の作業員についても作業の再スケジューリングをする。具体的には、作業員Aについては、休憩予定を変更して突発作業を入れたので、突発作業後に休憩を入れる。作業員Cも同様である。作業5と作業6が開始時刻を遅らせる必要があるが、作業6は1人で行うので、作業員Bが作業3の終了後に行うことにする。作業5は作業員A、Cの2人が前記休憩後に行うようにする。さらに作業7は本来作業員A、Cの2人の予定であるが、終了時間を早めるために、作業員B、Dに割り当てる。
【0155】
システム管理サーバTSNSはフィードバック処理PF4で、その後作業員A、Cに「現在の作業終了後、入荷エリアに来てください」とセンサノードMSNの通知装置NTCにメッセージを送信して召集をかける。作業員A、Cから「了解」の返答があれば、召集完了となる。
【0156】
以上のように、システム管理サーバTSNSが作業手順WFに基づいて再度スケジューリングを行うことで、緊急作業が発生した場合でも、各作業員の作業状況やスケジュールにより、適切な作業員召集をかけることができる。
【0157】
<第5の実施形態>
本第5の実施の形態では、作業員Mが予定と異なる状況にあるときの判定例を説明する。なお、センサネットワークシステムやシステム管理サーバTSNSは、前記第1の実施形態と同様の構成である。
【0158】
前記第1〜第4実施形態においては、作業員Mの本来のスケジュールはピッキング作業を行って検品場所への商品を移送することとなっている。
【0159】
まず、予定のピッキング作業開始時刻から2分以上経過したにもかかわらず、作業員Mがほぼ静止状態と観測され続けているとする。作業員の測位の結果は休憩室であるとする。
【0160】
システム管理サーバTSNSは、作業内容解析処理PF2において、休憩室で休憩中と判定し、作業評価処理PF3においては、作業手順WFから読み込んだスケジュールではピッキング作業開始時刻が過ぎているので、作業開始を忘れて休憩中であると判定し、フィードバック処理PF4において作業員MのセンサノードMSNに作業開始を通知する。システム管理サーバTSNSは、作業員MのセンサノードMSNから「了解」の返答はあればよいが、もし返答がない場合には、管理端末ADTに所定のメッセージを送信して管理者を呼び出し、休憩室に確認に向かわせる。前述では作業開始時刻から2分以上経過した段階で作業員Mの呼び出しを行っているが、その時間は作業項目等に応じて適宜設定されていれば良い。
【0161】
次に作業内容解析処理PF2で一度ピッキング作業に入ったと判定されたにもかかわらず、途中で作業員Mの移動・作業が検出されなくなったとする。作業員Mが床に倒れる場合にはセンサノードMSNの加速度センサのセンシングデータからシステム管理サーバTSNSで検知することができる。そして、システム管理サーバTSNSは、作業評価処理PF3で作業員Mが倒れたため管理者が現場に向かう必要あり、と判定し、フィードバック処理PF4にて作業管理者に通知する。しかし作業員Mは、気分が悪くてしゃがみこんでいる場合には、しゃがむことは検知されても、気分が悪い状態はセンサノードMSNの加速度センサで検知できないので、作業評価処理では異常が発生している可能性があると判定して、システム管理サーバTSNSは、まず作業員Mと作業管理者に同時に所定のメッセージを通知し、すぐに応答がなければ、現場に管理者が急行するようメッセージを管理表示端末ADTに送信する。もちろんビデオカメラが設置してあれば、管理者がそれをモニタしても良い。
【0162】
以上のように、作業者の作業忘れや異常を検知して、作業者や管理者に通知することが可能になる。
【0163】
<第6の実施形態>
本第6の実施の形態では、ピッキング作業中の作業員Mとフォークリフトが接近し、危険があることを双方に通知する例を説明する。なお、センサネットワークシステムやシステム管理サーバTSNSは、前記第1の実施形態と同様の構成である。
【0164】
前記第1実施形態の倉庫において、作業員Mとフォークリフトの運転手には人に取り付けるセンサノードMSN、フォークリフトには機械に取り付けるセンサノードGSNが取り付けられているとする。また、システム管理サーバTSNSには作業現場のマップが格納されているとする。
【0165】
作業員Mは通路を歩いて移動中であるとする。一方、フォークリフトも別の通路を移動中であり、両者は双方の通路の交点に向かって移動しているとする。
【0166】
システム管理サーバTSNSは、作業内容判定処理PF2において、作業員Mが歩いていることと、測位用センサノードLSNの測位データから作業員Mの移動方向が上記通路の交点方面であることを判定する。一方、システム管理サーバTSNSは、フォークリフトとその運転者についても、測位用センサノードLSNの測位データから移動方向が上記通路の交点方面であることを判定する。
【0167】
システム管理サーバTSNSの作業評価処理PF3においては、作業員Mとフォークリフトの位置および移動方向をマップと対応させ、双方が上記通路の交点に向かって接近中であり、危険性があると判断し、作業員Mとフォークリフトの運転者のセンサノードMSNに対して双方が接近中であることを通知し、注意を促すことを決定する。システム管理サーバTSNSはフィードバック処理PF4において、作業員MのセンサノードMSNに対しては「フォークリフトが接近中」というメッセージを送信して、センサノードMSNの液晶パネルに警告を表示させ、さらに商品のコマンドを送信してセンサノードMSNのブザーを鳴らし、作業員が「了解」の返答を行うまで一定間隔(例えば1秒間隔)でブザーを鳴らす。
【0168】
一方、システム管理サーバTSNSは、フォークリフトの運転者のセンサノードMSNに対しても、「作業員が接近中」というメッセージを送信し、かつ所定のコマンドを送信してセンサノードMSNのブザーを鳴らし、運転者が「了解」の返答を行うまで一定間隔(例えば1秒間隔)でブザーを鳴らす。フォークリフト運転者の場合、一度移動を停止するなどして返答する必要がある。
【0169】
以上のように、作業員と機械の接近など、危険性の検知と通知により安全確保を行うことができる。
【0170】
<第7の実施形態>
本第7の実施の形態では、ピッキング終了時点から出荷検品、出荷エリアへの移送、商品のトラックへの積み込みまでの出荷作業における品質管理を伴う作業管理について、図10に基づいて説明する。なお、センサネットワークシステムやシステム管理サーバTSNSは、前記第1の実施形態の構成に出荷エリア21〜24を加えたものであり、その他の構成は前記第1の実施形態と同様である。
【0171】
図10において、各商品は温度管理が必要な生鮮食料品の入った箱であり、商品に取り付けられたセンサノードGSNで温度測定が所定の周期で実行されている。各商品は、原則として5℃以下で保管する必要があるが、環境に設けたセンサノードESNが検出した倉庫内各所の現在の温度が10℃〜15℃の範囲であり、品質保証の観点からは、15℃での環境での許容時間は30分であり、したがって、トラックへの積み込みまでの許容時間は30分であるとシステム管理サーバTSNSは判定する。システム管理サーバTSNSが、各商品の環境に対する制限を作業手順WFから読み込み、センサノードESNから取得した倉庫の環境が制限値を超えている場合に、商品毎に予め設定された温度と許容時間の関係からを実際の許容時間を決定する。
【0172】
また倉庫の各出荷エリアの床には圧力センサを備えたセンサノードGSNが埋め込まれており、商品の着荷を検知できるようになっている。なお、商品の種別などは、前記第4実施形態と同様にタグリーダやバーコードリーダで、商品に付されたタグや伝票を読み取ってシステム管理サーバTSNSが特定する。
【0173】
上記商品の倉庫における作業の予定スケジュールは図10に示すようになっている。
【0174】
(1)出荷対象商品の合計は40個で、4台のトラックに10個づつを積み込む。なお、トラック11〜14は、それぞれ出荷エリア21〜24に停車している。また、図10において、移送1〜4は商品を出荷検品エリアから出荷エリア21〜24へ移動することを示し、同じく、積み込み1〜4は、出荷エリア21〜24でトラック11〜14にそれぞれ10個の商品を積み込む作業手順WFを示す。
【0175】
(2)作業計画データベースPDBの作業手順WFに予め設定された予定の作業スケジュールは以下の通りである。
(2−1)出荷検品:作業員Cが担当し、予想所要時間は5分。
(2−2)商品の移送:作業員Aが出荷エリア21および23へ商品を10個づつ移送し、予想所要時間は計10分。また作業員Bが出荷エリア22および24へ商品を10個づつ移送し、予想所要時間は計16分(移送距離が作業員Aに比べてやや長いため)。1回に移送できる商品は5個、すなわち1箇所への移送で2往復かかるものとする。
(2−3)トラック11〜14への商品の積み込み:作業員Aは出荷エリア21でトラック11の運転手と2人で積み込み作業を行い、予想所要時間は4分。その後、出荷エリア23でトラック13の運転手と2人で積み込み作業を行い、予想所要時間は4分。作業員Bは出荷エリア22でトラック12の運転手と2人で積み込み作業を行い、予想所要時間は4分、その後、出荷エリア24でトラック14の運転手と2人で積み込み作業を行い、予想所要時間は4分。いずれの積み込み作業の所要時間は作業員の人数に反比例し、3人で積み込み作業をすれば2分40秒、4人であれば2分とする。
【0176】
以上が予定の作業スケジュールである。
【0177】
すでに出荷検品は予定通り終了したとし(図中5分)、移送作業で遅れが発生する例を説明する。
【0178】
ここでは、遅れを検知した場合には、現在の作業の次の作業以降に順次補助作業員を投入すること、投入した結果の作業終了予定時刻は、トラックへの積み込みまでの許容時間は30分に対して1分の余裕を確保し29分以内とするものとする。
【0179】
出荷エリアへの商品の到着の検知についてまず説明する。各作業員A〜Bが倉庫から商品を移送して出荷エリア21,22に商品を置くと、出荷エリアの床のセンサノードGSNが圧力を検知する。センサノードGSNのセンシングデータはシステム管理サーバTSNSに送信される。システム管理サーバTSNSは、初期解析処理PF1において、取得した圧力データとさらに作業員A〜Cの位置、商品の位置を各センサノードMSN、GSN及び測位用センサノードLSNのセンシングデータから判定する。
【0180】
システム管理サーバTSNSでは作業内容解析処理PF2において、作業員A〜Cの位置、商品の位置が作業手順WFに設定された出荷エリア21、22と一致すれば、作業員A〜Cが当該所定の出荷エリア21,22に商品を置いたと判定する。
【0181】
さらにシステム管理サーバTSNSは、作業評価処理PF3において、出荷エリア21,22、作業員A、Bと商品が作業計画と一致していれば、正しい商品を移送してきたと判定する。当該出荷エリア21、22に移送すべきすべての商品が当該エリアにあれば、当該エリアへの移送作業は終了であり、まだすべてでなければ作業中と判定する。同時に作業予定時刻との比較も行う。
【0182】
次に、システム管理サーバTSNSは、出荷検品開始後14分経過した段階で、作業員Aの作業は出荷エリア21への移送(移送1)が終了し、出荷エリア23へ2回目の移送中(移送3)とする。システム管理サーバTSNSは予め設定した作業手順WFと実際の作業員A〜C及び商品の動きから作業評価処理PF3で、作業進捗は予定通りと判定する。一方、14分経過した時点で作業員Bの作業は出荷エリア22への移送(移送2)が終了しているが、出荷エリア24において1回目の移送のために商品をカートにこれから積み始める段階であるとする。すなわち移送4の開始時点であるとする。システム管理サーバTSNSは、作業内容解析処理PF2で作業員Bの位置、出荷エリア24へ運ぶ予定の商品の位置が出荷検品エリアに近いことを測位用センサノードLSNのセンシングデータとセンサノードMSN、GSNのセンシングデータから判定する。また、システム管理サーバTSNSは作業員Bが出荷エリア24への5個は加速度検知によりカートにまだ積んでいない状態を判定する。
【0183】
システム管理サーバTSNSは作業評価処理PF3において、出荷エリア22への移送処理が9分かかっていることから、残りも9分程度かかること予想する。積み込み時間は予定通りとしても、終了予想時刻は出荷検品開始から31分後となり、トラックへの積み込みまでの許容時間である30分を超えてしまう。そこで現在の作業である移送4の次の作業以降に補助作業員を投入し、時間短縮の効果を見積もる。積み込み2に補助作業員を1人すると、2人で作業する場合の4分から2分40秒となり、1分20秒短縮でき、許容時間である30分に収まることになる。しかし余裕は20秒で1分に満たないので、同じ補助作業員を積み込み4にも投入するとさらに1分20秒、合計で2分40秒短縮でき、1分40秒の余裕ができる。そこで、積み込み2および4の要員を1人確保する必要があると判断する。システム管理サーバTSNSはフィードバック処理PF4で前記第4の実施の形態で述べたように呼び出し可能な作業員Eを探して呼び出し、出荷エリア2へ行かせ、作業員Bの補助にあたらせる。
【0184】
システム管理サーバTSNSは温度について、商品に付したセンサノードGSNで監視し、倉庫に設けた環境のセンサノードESNでモニタし、双方の温度が15℃以下に収まっているかどうか常時監視する。もし何れか一方の温度が15度を越える場合には、システム管理サーバTSNSは作業管理者に対して警告を示すメッセージを送信し、また15℃を越える状態が持続する場合には、再スケジューリング等も行う。
【0185】
また、温度の測定間隔についても、定温で管理されている保管場所においては商品の温度測定間隔を5分間隔であったものを、出荷作業に入る時点で30秒間隔に変更する、といった作業内容・環境に応じたパラメータ設定変更をフィードバック処理において行うことも可能である。
【0186】
さらに作業進捗の管理について補足する。各作業員の作業の進捗状況は、管理者が管理表示端末ADTに一括表示させたり、個別の作業者ごとに詳細な進捗状況を表示して管理することができる。さらには、各作業員の所持するセンサノードMSNに当該作業員の進捗状況を表示したり、作業現場に設置した表示端末に各作業員の進捗状況を一括あるいは個別表示して進捗状況の可視化を行う。可視化によって各作業員が自分の置かれている状況を的確に把握でき、またモチベーションの向上を図ることも可能である。
【0187】
以上のように、温度などの品質を左右する条件も含めて作業進捗の管理が可能になる。また作業員のモチベーション向上も可能になる。
【0188】
以上、実施の形態を説明したが、人の動作を検知するためのセンサは加速度センサのほかにも角速度、脈波、などその種類を限定するものではない。物品あるいは環境の状態も、加速度や温度のほかに湿度、照度、などその種類を限定するものではない。
【0189】
以上のように、本発明は、作業員の作業管理に係り、特にセンサネットワークを利用した作業管理システムに用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、作業管理システムの構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態を示し、センサノードのブロック図。
【図3】本発明の第1の実施形態を示し、作業管理の処理フローを示す説明図。
【図4a】本発明の第1の実施形態を示し、作業員Mのセンサノードで測定した加速度データを示し、上段が上下方向の加速度と時刻の関係を示し、下段が前後方向加速度と時刻の関係を示すグラフである。
【図4b】本発明の第1の実施形態を示し、作業員Mのセンサノードで測定した加速度データを示し、上下方向の加速度及び前後方向加速度と時刻の関係を示すグラフである。
【図4c】本発明の第1の実施形態を示し、商品のセンサノードで測定した温度と時刻の関係を示すグラフである。
【図4d】本発明の第1の実施形態を示し、商品のセンサノードで測定した加速度と時刻の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第1の実施形態を示し、システム管理サーバTSNSで行われる作業内容の評価処理の説明図。
【図6】本発明の第1の実施形態を示し、システム管理サーバTSNSで行われる作業内容の誤りの指摘処理の説明図。
【図7】本発明の第3の実施形態を示し、作業員集中の検知の説明図。
【図8】本発明の第3の実施形態を示し、作業員集中の検知の他の例を示す説明図。
【図9】本発明の第4の実施形態を示し、突発的作業発生時の作業員の選択・召集を行う処理の説明図。
【図10】本発明の第7の実施形態を示し、作業の進捗管理と品質管理の説明図。
【図11】本発明の第1の実施形態を示し、システム管理サーバTSNSで作成する作業手順テーブル群の説明図。
【図12】本発明の第1の実施形態を示し、システム管理サーバTSNSで作成する作業・機材・商品テーブル群の説明図。
【図13】本発明の第1の実施形態を示し、システム管理サーバTSNSで作成する位置・動作・状態テーブル群のうち作業員Mの位置・状態テーブルの説明図。
【図14】本発明の第1の実施形態を示し、システム管理サーバTSNSで作成する位置・動作・状態テーブル群のうち商品G1の位置・状態テーブルの説明図。
【図15】本発明の第1の実施形態を示し、システム管理サーバTSNSで作成する位置・動作・状態テーブル群のうち商品G2の位置・状態テーブルの説明図。
【図16】本発明の第1の実施形態を示し、システム管理サーバTSNSで作成する位置・動作・状態テーブル群のうち商品G3の位置・状態テーブルの説明図。
【図17】本発明の第1の実施形態を示し、システム管理サーバTSNSで作成する位置・動作・状態テーブル群のうち商品G4の位置・状態テーブルの説明図。
【図18】本発明の第1の実施形態を示し、システム管理サーバTSNSで作成する位置・動作・状態テーブル群のうち商品G5の位置・状態テーブルの説明図。
【図19】本発明の第1の実施形態を示し、システム管理サーバTSNSで作成する位置・動作・状態テーブル群のうち機器状態テーブルの説明図。
【図20】本発明の第1の実施形態を示し、システム管理サーバTSNSで作成する環境状態テーブルの説明図。
【符号の説明】
【0191】
TSNS:システム管理サーバ
SN:センサノード
BST:基地局
NWK:ネットワーク
ADT:管理表示端末
PDB:作業計画データベース
LDB:履歴データベース
WF:作業手順

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人に装着されて当該装着者の動作情報を検出する第1のセンサノードと、物品に取り付けられて当該物品の状態情報を検出する第2のセンサノードと、前記第1または第2のセンサノードの位置情報を取得する第3のセンサノードと、前記第1のセンサノードと第2のセンサノード及び第3のセンサノードが検出した前記動作情報と前記状態情報及び前記位置情報を収集する管理計算機と、を備えて前記管理計算機が前記装着者の行動を管理する作業管理システムであって、
前記管理計算機は、
前記第1のセンサノードが検出した動作情報と、前記第3のセンサノードが検出した前記第1のセンサノードの位置情報に基づいて前記装着者の動作結果を解析する第1解析処理部と、
前記第2のセンサノードが検出した状態情報と、前記第3のセンサノードが検出した前記第2のセンサノードの位置情報に基づいて前記物品の状態を解析する第2解析処理部と、
前記第1解析処理部が解析した前記装着者の動作結果と、前記第2解析処理部が解析した前記物品の状態に基づいて、前記装着者が物品に対して行った作業内容を特定する作業内容解析部と、
予め設定した作業計画と、前記特定した作業内容と、前記物品の状態とを比較して、前記装着者の作業内容の評価結果を生成する作業評価部と
を具備して成ることを特徴とする作業管理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記物品が存在する環境の状態情報を取得する第4のセンサノードをさらに備え、
前記作業評価部は、
予め設定した作業計画と、前記特定した作業内容と、前記物品の状態と、前記第4のセンサノードが取得した前記環境の状態情報とを比較して、前記装着者の作業内容の評価結果を生成する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記管理計算機は、前記作業内容解析部が特定した作業内容の履歴を格納する履歴蓄積部を有し、
前記作業評価部は、前記履歴蓄積部を参照して前記装着者の作業内容の評価結果を生成する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記作業評価部は、前記作業内容に基づいて物品の品質に関する評価結果を生成する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記管理計算機は、前記作業評価部が生成した作業内容の評価結果を前記第1のセンサノードへ通知する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項6】
請求項1において、
前記管理計算機に接続されて前記管理計算機からの通知を表示する管理端末をさらに有し、
前記管理計算機は、前記作業評価部が生成した作業内容の評価結果を前記管理端末へ通知する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項7】
請求項1において、
前記作業評価部は、前記評価結果が前記作業計画とは異なる場合に、前記第1のセンサノードへ前記作業計画に設定された作業内容を通知する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項8】
請求項1において、
前記作業評価部は、前記評価結果が前記作業計画とは異なる場合に、前記作業計画を修正する作業計画修正部を有し、当該作業計画修正部は、前記第1のセンサノードへ前記修正後の作業計画に設定された作業内容を通知する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項9】
人に装着されて当該装着者の動作情報を検出する第1のセンサノードと、物品に取り付けられて当該物品の状態情報を検出する第2のセンサノードと、前記第1または第2のセンサノードの位置情報を取得する第3のセンサノードと、前記第1のセンサノードと第2のセンサノード及び第3のセンサノードが検出した前記動作情報と前記状態情報及び前記位置情報に基づいて前記装着者の行動を管理する作業管理方法であって、
前記第1のセンサノードが検出した動作情報と、前記第3のセンサノードが検出した前記第1のセンサノードの位置情報に基づいて前記装着者の動作結果を解析する処理と、
前記第2のセンサノードが検出した状態情報と、前記第3のセンサノードが検出した前記第2のセンサノードの位置情報に基づいて前記物品の状態を解析する処理と、
前記第1解析処理部が解析した前記装着者の動作結果と、前記第2解析処理部が解析した前記物品の状態に基づいて、前記装着者が物品に対して行った作業内容を特定する処理と、
予め設定した作業計画と、前記特定した作業内容と、前記物品の状態とを比較して、前記装着者の作業内容の評価結果を生成する処理と
を含むことを特徴とする作業管理方法。
【請求項10】
人に装着されて当該装着者の動作情報を検出する第1のセンサノードと、物品に取り付けられて当該物品の状態情報を検出する第2のセンサノードと、前記第1または第2のセンサノードの位置情報を取得する第3のセンサノードと、前記第1のセンサノードと第2のセンサノード及び第3のセンサノードが検出した前記動作情報と前記状態情報及び前記位置情報を収集し、前記装着者の行動を管理する管理計算機であって、
前記管理計算機は、
前記第1のセンサノードが検出した動作情報と、前記第3のセンサノードが検出した前記第1のセンサノードの位置情報に基づいて前記装着者の動作結果を解析する第1解析処理部と、
前記第2のセンサノードが検出した状態情報と、前記第3のセンサノードが検出した前記第2のセンサノードの位置情報に基づいて前記物品の状態を解析する第2解析処理部と、
前記第1解析処理部が解析した前記装着者の動作結果と、前記第2解析処理部が解析した前記物品の状態に基づいて、前記装着者が物品に対して行った作業内容を特定する作業内容解析部と、
予め設定した作業計画と、前記特定した作業内容と、前記物品の状態とを比較して、前記装着者の作業内容の評価結果を生成する作業評価部と
を具備して成ることを特徴とする管理計算機。

【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−201569(P2008−201569A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42355(P2007−42355)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】