説明

光センサー

【課題】光センサーの光学系において光源光の使用波長が変動しても、1/4波長板が確実に直線偏光を円偏光に変換して、良好なセンサー感度を確保維持する。
【解決手段】振動検出用光センサー1は光源2、偏光ビームスプリッター3、対物レンズ4、波長板ユニット5及び1個の受光素子6を備える。波長板ユニットは、構造性複屈折を利用した1/4波長板7と、反射面を有する振動板8との一体構造である。受光素子はその光軸x2を反射光の光軸x1と平行かつ僅かにずらして配置され、入射するビームスポット形状がその中心cを受光面6aの中心Oから僅かにずらした位置に投影されるので、検出される光量が振動板の変位に対応して増減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば流体の圧力や音圧、被測定面の変位、振動等を検出するための光センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CD等の光ディスクから情報を再生したり記録するための光ピックアップにおいて、ディスク面に対する対物レンズの焦点位置を自動的に検出するために、ナイフエッジ法、非点収差法、臨界角法、フーコー法等の光学的手法が採用されている。また、これらの手法を用いて、光学的に測定対象物の位置や変位、表面粗さを測定するための様々な方法や装置が提案されている。
【0003】
例えば、ナイフエッジ法を用いて物体の微小変位や表面粗さを測定するために、レーザービームを測定対象物にその表面で焦点を結ぶように投射し、その反射光を2分割ダイオードで受光する計測器が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この光学系は、光路の途中にナイフエッジが配置されて、2分割ダイオードに入射する反射ビームの断面が半円になる。測定対象物の表面が焦点位置より後方にずれると、反射ビームは2分割ダイオードの下方にシフトし、前方にずれると上方にシフトするので、2分割ダイオードの信号の関数として、焦点位置に対する測定対象物表面の変位量が得られる。
【0004】
非点収差法を用いて測定面の表面形状や表面粗さを測定する光学式変位センサーは、レーザー光を微小スポットとして測定面に投射し、その反射光に円柱レンズを通過させて非点収差を与え、ビームスポットの中心を4分割受光素子の中心に合わせて入射させる(例えば、特許文献2,3を参照)。測定面がレーザー光の焦点位置にあると、各受光素子の出力信号は等しいが、該焦点位置の後方又は前方にずれると、一方の対角位置にある受光素子の出力信号は他方の対角位置にある受光素子の出力信号より大きくなる。従って、各受光素子の出力信号から測定面の変位信号を算出することによって、測定面の焦点位置からの変位量が得られる。
【0005】
また、非点収差法を用いて音圧の変化を検知するマイクロホン装置として、レーザー光等の光を利用した振動検出装置が知られている(例えば、特許文献4を参照)。この振動検出装置は、直線偏光のレーザー光が1/4波長板により円偏光に変換されて振動板で反射され、反射光は、該1/4波長板により円偏光が出射光と直交する直線偏光に変換されて4分割光検出器に検出される。振動板は、集束レンズによりレーザー光が焦点を結ぶ位置に配置され、該振動板が振動したときに、その焦点位置からのずれを光検出器に当たるレーザー光の強度分布の変化として電気信号に変換することにより、音波を検知する。
【0006】
更に、圧力に応動する受圧要素の変位を電気信号の形で検出する光学式圧力センサーが知られている(例えば、特許文献5を参照)。この光学式圧力センサーは、光ヘッドに用いられる光学系を利用しており、レーザー光をビームスプリッター、1/4波長板、対物レンズを通してダイアフラム面に集光照射し、その反射光をフォトダイオードで検出し、圧力に応動してダイアフラム面が完全集光している位置からずれると、フォトダイオードの出力電圧の変動から圧力を検知する。
【0007】
一般に1/4波長板には、延伸処理により複屈折性をもたせたポリカーボネート等の有機系材料からなる樹脂フィルム、高分子液晶層を透明基板の間に挟持した液晶セルからなる位相差板、水晶等の複屈折性を有する無機結晶材料の結晶板が使用される。更に、使用する光の波長よりも微細なサブ波長の周期構造による構造性複屈折を利用した波長板が知られている(例えば、非特許文献1,2を参照)。
【0008】
この構造性複屈折波長板は、微細周期構造の寸法を選択することによって、複屈折の大きさ即ち位相差量や広帯域性を制御できるという特徴がある。しかし、微細周期構造は、これを形成する凸部のピッチ(構造周期)に対する高さの割合即ちアスペクト比が大きくなると、高精度に製作することが困難で、高い透過率を維持できなくなる虞がある。そこで、微細周期構造の高さを所望の使用波長又は使用波長範囲に必要な高さの約半分にした2つの波長板を、各周期構造の凸部を対向させて一体に組み合わせた1/4波長板が開発されている(例えば、非特許文献1,2を参照)。
【0009】
また、1/4波長板において、入射面の反射率が高かったり透過率の入射角依存性が大きい場合には、透過光強度の低下によって、例えば光センサーに使用したときその感度が低下したり、光ピックアップにおいて記録再生機能を低下させる虞がある。そこで、微細周期構造の凸部を先細テーパ状に形成することによって、光入射面に反射防止構造を形成した構造性複屈折波長板が提案されている(例えば、特許文献6,7を参照)。更に、レンズ等の光学素子において、光学性能を低下させることなく反射を抑制するために、その入射面に例えば円錐状の微細な凹凸を光の波長以下のピッチで多数形成した反射防止膜を設けることが知られている(例えば、特許文献8,9を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−4914号公報
【特許文献2】特開平5−231848号公報
【特許文献3】特開平8−29664号公報
【特許文献4】特開昭58−145299号公報
【特許文献5】特開平1−253626号公報
【特許文献6】特許第3913765号公報
【特許文献7】特開2005−44429号公報
【特許文献8】特開2008−197216号公報
【特許文献9】特開2009−31610号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】今栄真紀子、外3名、「構造性複屈折を用いた広帯域1/4波長板の最適設計」、KONICA MINOLTA TECHNOLOGYREPORT、コニカミノルタテクノロジーセンター株式会社、2006年、VOL.3、p.62−67
【非特許文献2】増田修、外4名、「ナノインプリント技術を用いた広帯域波長板の作成」、KONICA MINOLTA TECHNOLOGYREPORT、コニカミノルタテクノロジーセンター株式会社、2008年、VOL.5、p.101−106
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した光センサーや光ピックアップの光学系では、光源として使用する半導体レーザーの短波長化や使用温度範囲の設定によって、光学部品が相当な高温に晒される虞がある。そのため、これらの光学装置に使用される光学素子は、十分な耐熱性及び/又は耐光性を要求されることがある。
【0013】
また、半導体レーザーは、光源として使用したとき、高熱を発生して発振レーザーの波長ドリフトを生じる虞がある。特に、直線偏光を円偏光に変換する1/4波長板は、レーザー光の波長ドリフトにより出射光に位相のずれが発生し、楕円偏光が出射されることになる。そのため、光センサーに使用した場合には、光検出器が測定対象物の反射面から受光する光強度が減少し、センサー感度を低下させる虞がある。従って、1/4波長板は、それを搭載する光センサー等の光学装置がより安定して良好な性能を発揮し得るように、より広帯域な使用波長範囲を有することが好ましい。
【0014】
更に、上述した従来の光センサーは、いずれも光学部品の点数が多く、大型であったり、構造が複雑で高価であるという問題がある。
【0015】
そこで本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光センサーの光学系において、使用する光源光の波長が、例えば半導体レーザーの波長ドリフト等によって変動する場合でも、1/4波長板が確実に直線偏光を円偏光に変換することができ、良好なセンサー感度を確保維持できるようにすることである。更に本発明の目的は、光学部品の点数を少なくしかつ構造を簡単化して、小型化及びコストの低減を実現し得る光センサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の光センサーは、上記目的を達成するために、光源と、光検出器と、振動板からなる測定対象物と、光源からの出射光を振動板の反射面で合焦するように集光する第1光学系と、反射面からの反射光を光検出器の受光面に集光する第2光学系とを備え、
光検出器の受光面が、その光軸を反射光の光軸と平行にかつ該反射光の光軸からずらして配置され、そのずれ量が、常に反射光のビームスポット形状の一部だけが受光面に入射するように決定され、
第1光学系が、光源からの出射光を透過又は反射させる偏光ビームスプリッターと、該偏光ビームスプリッターを透過又は反射した出射光を振動板の反射面に集光する対物レンズと、該対物レンズの偏光ビームスプリッターとは反対側に配置されかつ出射光が透過する1/4波長板とからなり、
該1/4波長板が、複数の凸部を出射光の使用波長より小さい一定のピッチで配列した微細周期構造を有する構造性複屈折波長板からなり、
1/4波長板と振動板とが一体化されていることを特徴とする。
【0017】
この光センサーでは、光源からの出射光から偏光ビームスプリッターで分離された第1の直線偏光が、対物レンズにより収束され、1/4波長板により円偏光に変換されて振動板の反射面に入射し、逆方向の円偏光となって反射され、再び1/4波長板により第2の直線偏光に変換されて光検出器に入射する。光検出器の受光面が受けるビームスポット形状は振動板の反射面の光軸上での位置によって変化し、該光検出器から検出される光量が反射面の合焦位置からの変位に対応して増減するので、この光量の変化を検出することによって反射面の変位量を求めることができる。
【0018】
構造性複屈折波長板は、微細周期構造の寸法によって位相差量や広帯域性を変化させることができる。これを第1光学系の1/4波長板に用いかつその寸法を適当に設定することによって、光源からの出射光の波長が多少変動しても、それに対応して直線偏光をより完全に円偏光に変換することができる。従って、本発明の光センサーは、良好なセンサー感度を安定して確保維持することができる。
【0019】
更に、1/4波長板と振動板とを一体化することによって、光学部品の点数を従来よりも少なくし、振動板から光検出器までの光路長を短くし、光センサーの組立時に1/4波長板と振動板との位置合わせを省略し、それらと他の光学系とのとの位置合わせを1度で済ませることができる。従って、装置全体を小型化し、構造及び組立を簡単にし、より高精度で高信頼性の光センサーを低コストで得ることができる。
【0020】
或る実施例では、1/4波長板が、それぞれに基板の一方の主面に微細周期構造を形成した1対の構造性複屈折波長板からなり、該1対の構造性複屈折波長板を互いに微細周期構造の凸部を対向させて配置して構成される。これによって、各構造性複屈折波長板は、微細周期構造の凸部の高さを、所望の使用波長又は使用波長範囲に必要な高さの約半分にし、構造周期に対してアスペクト比を小さくできるので、より簡単に高精度に製作することができる。その結果、低コストで高性能な1/4波長板を用いて、光センサーのセンサー感度を安定させかつ向上させることができる。
【0021】
別の実施例では、1/4波長板が、振動板とは反対側に設けられた多数の微細凹凸構造からなる反射防止膜を有することによって、入射角依存性を小さくし、斜め入射に対しても高い透過率を確保できるので、光センサーのセンサー感度をより安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(A)図は本発明による光センサーの第1実施例の構成図、(B)図は受光素子上のビーム形状を示す図。
【図2】(A)図は波長板ユニットの第1実施例を示す断面図、(B)図は1/4波長板の斜視図。
【図3】(A)図は第1実施例の波長板ユニットの変形例を示す断面図、(B)図は反射防止膜の凹凸面を示す部分拡大図。
【図4】波長板ユニットの第2実施例を示す断面図。
【図5】第2実施例の波長板ユニットの変形例を示す断面図。
【図6】波長板ユニットの第3実施例を示す断面図。
【図7】第3実施例の波長板ユニットの変形例を示す断面図。
【図8】本発明による光センサーの第2実施例の構成図。
【図9】本発明による光センサーの第3実施例の構成図。
【図10】(A)〜(C)図は第3実施例の光センサーにおいて、振動板がそれぞれ異なる位置にあるときに4分割受光素子に入射したビームスポット形状を示す図、(D)図は振動板の変位信号を示す線図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。尚、添付図面において、同一又は類似の構成要素には同一又は類似の参照符号を付して示す。
【0024】
図1(A)は、本発明による光センサーの第1実施例の構成を示している。本実施例の光センサー1は、振動を検出するためのものであって、レーザーダイオードからなる光源2と、平板型の偏光ビームスプリッター3と、対物レンズ4と、波長板ユニット5と、光検出部として1個の受光素子6とを備える。波長板ユニット5は、1/4波長板7と、測定対象物としての振動板8とを一体に組合せたものである。
【0025】
図2(A)は、本発明の波長板ユニットの第1実施例を示している。本実施例の波長板ユニット5は、構造性複屈折波長板からなる1/4波長板7と、金属平板からなる振動板8とが、それらの周辺部でスペーサー9を挟んで一体に接合されている。1/4波長板7は、図2(B)に示すように、所定の厚さを有する平坦な基板10と、該基板の一方の主面に形成した多数の微細な凸部11からなる微細周期構造12とを有する。凸部11は、光源2から出力されるレーザー光の波長又は使用波長範囲の最小波長より小さい一定のピッチで配列されている。
【0026】
このようなサブ波長オーダーの微細周期構造は、例えば上記非特許文献1に記載されるように、有効媒質理論で言えば、周期方向とそれに直交する方向とで異なる有効屈折率nTE、nTMを持ち、この有効屈折率差によって各偏波方向の光の伝播速度に差が生じ、あたかも複屈折材料であるかのように、通過する光が位相差を生じて波長板としての機能を発現することが知られている。微細周期構造12の凸部11の線幅をL、高さをH、ピッチをPとし、微細周期構造12を形成する材質の屈折率をn、凸部11間の溝を充填する材質(本実施例では空気)の屈折率をnとすると、微細周期構造12の有効屈折率nTE、nTMは次式(1)(2)で表される。
【0027】
nTE ={f・nexp2+(1−f)・nexp2}exp(1/2) …(1)
nTM ={f・nexp(−2)+(1−f)・nexp(−2)}exp(−1/2) …(2)
但し、f =L/Pとする。
【0028】
使用するレーザー光の波長をλとすると、入射波長λに対する微細周期構造12の位相差δは次式(3)となる。
【0029】
δ=(nTE−nTM )・H …(3)
従って、上記(3)式でδ=λ/4を満足するように高さHを選ぶことによって、所望の1/4波長板が得られる。
【0030】
上述したサブ波長構造の1/4波長板7は、例えばポリオレフィン系、アクリル系、ポリカーボネイト等の樹脂材料を用いて、例えばナノインプリント法や精密成型等の公知方法により一体に成形することができる。1/4波長板7の微細周期構造12は、ガラス材料のような無機材料をエッチングすることにより加工することもできる。
【0031】
また、1/4波長板7は、基板10と凸部11とを別個に形成することもできる。例えば、基板10の主面上に別の材料を付着させ、該別の材料を加工することによって微細周期構造12を形成することができる。また、微細周期構造12を独立した別個の部品として形成し、基板10の主面に一体に結合することもできる。
【0032】
光源2から出射したレーザー光を測定対象物の振動板8に集光させる第1光学系を構成する偏光ビームスプリッター3、対物レンズ4及び波長板ユニット5は、1/4波長板7を前記対物レンズ側にして、光源2の光軸に直交する同一の光軸x1上に配置される。受光素子6は、例えばフォトダイオードからなり、その光軸x2が偏光ビームスプリッター3等の光軸x1と平行にかつそれから僅かな距離dだけずらして配置される。
【0033】
光源2は、その電源でありかつ出射するレーザー光の出力を制御する駆動回路19に接続されている。受光素子6は、その出力信号を処理して振動板8の変位信号を出力する信号処理回路20に接続されている。信号処理回路20は、例えば光電変換器、差動増幅器等から構成される。
【0034】
光センサー1において、光源2から発散光として出射されたレーザー光Lは、偏光ビームスプリッター3によりS偏光の直線偏光成分が反射され、対物レンズ4により収束されて波長板ユニット5に入射する。前記波長板ユニットに入射したレーザー光Lは、1/4波長板7を通過する際に直線偏光から円偏光に変換されて振動板8の表面に投射され、逆方向の円偏光となって反射される。振動板8表面からの反射光は、再び1/4波長板7を通過してP偏光の直線偏光に変換され、対物レンズ4により収束され、偏光ビームスプリッター3を透過し、結像した後に拡散して受光素子6に入射する。
【0035】
図1(B)は、受光素子6の受光面6aに入射するビームスポット形状を示している。受光素子6の光軸x2は、上述したように偏光ビームスプリッター3の光軸x1からずらして配置されている。そのため、ビームスポット形状m0は、その中心cを光軸x1が通る位置に、即ち受光面6aの中心Oから距離dだけ離れた位置に置いて投影される。
【0036】
振動板8は、図1(A)に示すように、不変位状態のとき、その反射面8aでレーザー光Lが合焦するように配置される。このとき、反射面8aからの反射光R0は、入射時と同じ光路を辿って、入射時と同じビーム断面を維持しながら偏光ビームスプリッター3に至り、これを透過して受光素子6に入射する。
【0037】
振動板8が不変位位置S0から光軸方向手前に即ち1/4波長板7側に位置S1まで変位すると、レーザー光Lは焦点位置S0より手前で反射面8aに反射される。従って、反射光R1は、入射時よりも内側の光路を辿って、入射時よりも幾分細いビーム断面で偏光ビームスプリッター3に至り、これを透過して受光素子6に入射する。反射光R1は、反射光R0よりも手前で結像するので、受光面6aでのビームスポット形状m1は、元のビームスポット形状m0と同心にかつそれよりも大きく現れる。
【0038】
振動板8が不変位位置S0から光軸方向後方に即ち1/4波長板7とは反対側に位置S2まで変位すると、レーザー光Lは焦点位置S0より後方で反射面8aに反射される。従って、反射光R2は、入射時よりも外側の光路を辿って、入射時よりも幾分太いビーム断面で偏光ビームスプリッター3に至り、これを透過して受光素子6に入射する。反射光R2は、反射光R0よりも後方で結像するので、受光面6aでのビームスポット形状m2は、元のビームスポット形状m0と同心にかつそれよりも小さく現れる。
【0039】
従って、受光面6aの中心cとビームスポット形状の中心Oとのずれである距離dは、振動板8の光軸上の位置に拘わらず、常にビームスポット形状の一部だけが受光面6aに入射するように設定する。これにより、受光面6aでのビームスポット形状は、上述したように振動板8の位置によって変化する。従って、受光素子6から検出される光量は、振動板8の変位に対応して増減し、この光量の変化を検出することによって、振動板8の変位量を求めることができる。
【0040】
本実施例の光センサー1は、光学部品の点数が従来よりも大幅に少ない。しかも、1/4波長板7と振動板8とを一体化した波長板ユニット5を用いることによって、振動板8から受光素子6までの光路長を大幅に短くできる。更に、光センサー1の組立時に、1/4波長板7と振動板8との位置合わせを行う必要が無く、かつそれらと対物レンズ4との位置合わせが1度で済む。その結果、装置全体を小型化し、光センサー1の組立を簡単にし、より高精度で高信頼性の装置をより低コストで得ることができる。
【0041】
図3(A)は、図2の波長板ユニット5の変形例を示している。本実施例の波長板ユニット5は、その入射面即ち1/4波長板7の微細周期構造12とは反対側の面に反射防止膜13を有する点において、図2の波長板ユニットと異なる。反射防止膜13は、図3(B)に示すように、その表面に正四角錐状の微細な多数の突起13aが形成されている。突起13aは、入射光の波長より小さいピッチで配列され、それによって空気と反射防止膜13との界面での急激な屈折率変化を解消し、波長板ユニット5に入射する光の反射を有効に抑制している。反射防止膜13は、例えば合成石英ガラス等の透明な無機材料基板をエッチング加工することによって、又は樹脂材料をモールド成形加工することによって製造され、1/4波長板7の入射面に接合される。
【0042】
図4は、本発明の波長板ユニットの第2実施例を示している。本実施例の波長板ユニット5は、1/4波長板7の基板10が測定対象物の振動板を兼用し、それにより小型薄型化されている。基板10の入射側の主面には、上記各実施例の波長板ユニットと同様に、多数の微細な凸部11からなる微細周期構造12が形成されている。基板10の前記微細周期構造とは反対側の外面には、金属膜14を施して反射面8aが形成されている。波長板ユニット5に入射する直線偏光は、微細周期構造12を通過して円偏光に変換され、更に基板10を透過して反射面8aで逆向きの円偏光となって反射される。
【0043】
図5は、図4の波長板ユニット5の変形例を示している。本実施例の波長板ユニット5は、同様に1/4波長板7の基板10が測定対象物の振動板を兼用しているが、多数の微細な凸部11からなる微細周期構造12とは別個の部品として構成されている。基板10は、入射側の主面に金属膜14を施して反射面8aが形成されている。微細周期構造12は、独立した別個の部品として形成され、金属膜14の上に一体に結合されている。波長板ユニット5に入射する直線偏光は、微細周期構造12を通過して円偏光に変換され、反射面8aで逆向きの円偏光となって反射される。本実施例の基板10は、その材質として光学特性を全く考慮することなく様々な材料を選択することができる。また、基板10が金属板からなりかつその表面が高い反射率を有する場合には、金属膜14を省略することができる。
【0044】
図6は、本発明の波長板ユニットの第3実施例を示している。本実施例の波長板ユニット5は、1/4波長板7が1対の構造性複屈折波長板15a,15bを有する。各構造性複屈折波長板15a,15bは、図2の1/4波長板7と同様に構成され、それぞれ所定の厚さを有する平坦な基板10,10と、該基板の一方の主面に形成した多数の微細な凸部11,11からなる微細周期構造12,12とを有する。構造性複屈折波長板15a,15bは、互いに微細周期構造側を対向させ、それらの周辺部でスペーサー9を挟んで一体に接合されている。このとき、構造性複屈折波長板15a,15bは、それらの位相差の合計が90°になるように、それらの光学軸を非平行に配置する。
【0045】
振動板8は薄板からなり、その入射側の片面には金属膜14を施して反射面8aが形成され、その周縁部が補強のために短い矩形筒状に厚く形成されている。振動板8は、その矩形筒状部分において1/4波長板7の入射側とは反対側の外面に一体に接合されている。波長板ユニット5に入射する直線偏光は、1/4波長板7を通過して円偏光に変換され、反射面8aで逆向きの円偏光となって反射される。尚、振動板8が金属材料からなりかつその表面が高い反射率を有する場合には、金属膜14を省略することができる。
【0046】
図7は、図6の波長板ユニット5の変形例を示している。本実施例の波長板ユニット5は、図3の波長板ユニット5と同じ反射防止膜13が1/4波長板7の入射面に設けられている点において、図6の波長板ユニットと異なる。反射防止膜13の表面には、正四角錐状の微細な多数の突起13aが入射光の波長より小さいピッチで形成され、入射光の反射を有効に抑制している。
【0047】
図8は、本発明による振動検出用光センサーの第2実施例の構成を示している。本実施例の光センサー21は、第1実施例と同様に配置されたレーザーダイオードからなる光源2、平板型の偏光ビームスプリッター3、対物レンズ4、波長板ユニット5、及び光検出部として1個の受光素子6に加えて、光源2と偏光ビームスプリッター3間にそれと同一光軸上に配置されたコリメートレンズ22を更に備える。光源2には駆動回路19が接続され、受光素子6には信号処理回路20が接続されている。波長板ユニット5は、図2の構造を有するものであるが、図3乃至図7の波長板ユニットを置き換えて用いることができる。
【0048】
光センサー21において、光源2から出射されたレーザー光Lは、コリメートレンズ22により平行光とされ、偏光ビームスプリッター3によりS偏光の直線偏光成分が反射され、対物レンズ4により収束されて波長板ユニット5に入射する。前記波長板ユニットに入射したレーザー光Lは、1/4波長板7を通過する際に直線偏光から円偏光に変換されて振動板8の表面に投射され、逆方向の円偏光となって反射される。振動板8表面からの反射光は、再び1/4波長板7を通過してP偏光の直線偏光に変換され、対物レンズ4により平行光とされ、偏光ビームスプリッター3を透過して受光素子6に入射する。
【0049】
振動板8は、不変位状態のとき、その反射面8aでレーザー光Lが合焦するように配置される。このとき、反射面8aからの反射光は、入射時と同じ光路を辿って、入射時と同じビーム断面を維持して偏光ビームスプリッター3を透過し、受光素子6に入射する。受光素子6の受光面に入射するビームスポット形状は、その中心を光軸x1が通る位置に、即ち前記受光面の中心から距離dだけ離れた位置に置いて投影される。
【0050】
振動板8が不変位位置S0から光軸方向手前に即ち1/4波長板7側に位置S1まで変位すると、レーザー光Lは焦点位置S0より手前で反射面8aに反射される。反射光Rは、入射時よりも内側の光路を辿って、入射時よりも幾分細いビーム断面で偏光ビームスプリッター3を透過し、受光素子6に入射する。この場合、受光素子6の前記受光面でのビームスポット形状は、元のビームスポット形状よりも小さくなる。
【0051】
振動板8が不変位位置S0から光軸方向後方に即ち1/4波長板7とは反対側に位置S2まで変位すると、レーザー光Lは焦点位置S0より後方で反射面8aに反射される。反射光Rは、入射時よりも外側の光路を辿って、入射時よりも幾分太いビーム断面で偏光ビームスプリッター3を透過し、受光素子6に入射する。この場合、受光素子6の前記受光面でのビームスポット形状は、元のビームスポット形状よりも大きくなる。
【0052】
本実施例においても、このように、受光素子6の前記受光面に入射するビームスポット形状が振動板8の位置によって変化するので、受光素子6から検出される光量は、振動板8の変位に対応して増減する。従って、この光量の変化を検出することによって、振動板8の変位量を求めることができる。
【0053】
本実施例においても、光学部品の点数が従来より大幅に少なくなる。更に、1/4波長板7と振動板8とを一体化した波長板ユニット5によって、振動板8から受光素子6までの光路長を大幅に短くでき、光センサー1の組立時に1/4波長板7と振動板8との位置合わせが不要で、それらと対物レンズ4との位置合わせが1度で済む。従って、装置全体を小型化し、構造及び組立を簡単にし、より高精度で高信頼性の光センサーをより低コストで得ることができる。
【0054】
図9は、本発明による振動検出用光センサーの第3実施例の構成を示している。本実施例の光センサー31は、第2実施例と同様に配置されたレーザーダイオードからなる光源2、コリメートレンズ22、平板型の偏光ビームスプリッター3、対物レンズ4、波長板ユニット5を備え、光検出部としての4分割受光素子32が使用され、該4分割受光素子と偏光ビームスプリッター3間に円柱レンズ33が配置されている。4分割受光素子32及び円柱レンズ33は、偏光ビームスプリッター3と同一光軸上に配置されている。4分割受光素子32は、例えば4分割フォトダイオードが用いられる。波長板ユニット5は、図2の構造を有するものであるが、図3乃至図7の波長板ユニットを置き換えて用いることができる。
【0055】
光センサー21において、光源2から出射されたレーザー光Lは、コリメートレンズ22により平行光とされ、偏光ビームスプリッター3によりS偏光の直線偏光成分が反射され、対物レンズ4により収束されて波長板ユニット5に入射する。前記波長板ユニットに入射したレーザー光Lは、1/4波長板7を通過する際に直線偏光から円偏光に変換されて振動板8の表面に投射され、逆方向の円偏光となって反射される。振動板8表面からの反射光は、再び1/4波長板7を通過してP偏光の直線偏光に変換され、対物レンズ4により平行光とされ、偏光ビームスプリッター3を透過し、円柱レンズ33により収束されかつ非点収差を与えられて、4分割受光素子32に入射する。
【0056】
振動板8は、不変位状態のとき、その反射面8aでレーザー光Lが合焦するように配置される。このとき、反射面8aからの反射光Rは、入射時と同じ光路を辿って、入射時と同じビーム断面を維持して偏光ビームスプリッター3を透過し、円柱レンズ33に収束されて結像した後、4分割受光素子32に入射する。図10(A)は、このとき前記4分割受光素子の受光面32aに入射したビームスポット形状M0を示している。ビームスポット形状M0は、その中心を4分割受光素子32の中心に置いた円形である。
【0057】
振動板8が不変位位置S0から光軸方向手前に即ち1/4波長板7側に位置S1まで変位すると、レーザー光Lは焦点位置S0より手前で反射面8aに反射される。反射光Rは、入射時よりも内側の光路を辿って、入射時よりも幾分細いビーム断面で偏光ビームスプリッター3を透過し、円柱レンズ33に収束されて結像した後、4分割受光素子32に入射する。図10(B)は、このとき前記4分割受光素子の受光面32aに入射したビームスポット形状M1を示している。ビームスポット形状M1は、その中心を4分割受光素子32の中心に置いた横長の楕円形になる。
【0058】
振動板8が不変位位置S0から光軸方向後方に即ち1/4波長板7とは反対側に位置S2まで変位すると、レーザー光Lは焦点位置S0より後方で反射面8aに反射される。反射光Rは、入射時よりも外側の光路を辿って、入射時よりも幾分太いビーム断面で偏光ビームスプリッター3を透過し、円柱レンズ33に収束されて結像した後、4分割受光素子32に入射する。図10(C)は、このとき前記4分割受光素子の受光面32aに入射したビームスポット形状M2を示している。ビームスポット形状M2は、その中心を4分割受光素子32の中心に置いた縦長の楕円形になる。
【0059】
4分割受光素子32の各受光素子の出力信号を、図示するように、それらの位置からVa,Vb,Vc,Vdとする。このとき、振動板8の変位信号V0は、V0=(Va+Vd)−(Vb+Vc)で表される。図10(D)は、横軸に0点をレーザー光Lの合焦位置として振動板8の変位量をとり、縦軸に変位信号V0を表したものである。変位信号V0は、0点を挟んで+/−両側に或る範囲が概ね直線状に変化するS次状曲線となる。従って、この直線状の範囲で、変位信号V0から振動板8の変位量を求めることができる。
【0060】
本実施例においても、1/4波長板7と振動板8とを一体化した波長板ユニット5によって、光学部品の点数を従来より少なくし、振動板8から受光素子6までの光路長を大幅に短くし、光センサー1の組立時に1/4波長板7と振動板8との位置合わせが不要で、それらと対物レンズ4との位置合わせが1度で済ませることができる。従って、装置全体を小型化し、構造及び組立を簡単にし、より高精度で高信頼性の光センサーをより低コストで得ることができる。
【0061】
上記各実施例は、振動検出用の光センサーであり、そのために振動板を備えている。しかしながら、本発明は、光センサーとは別個の測定対象物について、その位置や変位、被測定面の振動等を測定するために用いることができる。その場合には、波長板ユニットを1/4波長板と位相補正素子とからなる構成に置き換えて振動板を省略し、レーザー光が測定対象物の被測定面で合焦するように設定すればよい。
【0062】
また、振動板にレーザー光を集光させて投射する光学系、及び振動板からの反射光を受光素子に入射させる光学系として、上記実施例以外の様々な構成が考えられる。例えば、光源から出射して偏光ビームスプリッターを透過したレーザー光の直線偏光成分を振動板に投射し、その反射光を偏光ビームスプリッターで反射して光検出器に入射するように構成することもできる。
【0063】
本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、第1及び第2実施例において、同様に振動板の変位を光量の変化として検出できる限り、複数の受光素子で光検出部を構成することもできる。偏光ビームスプリッターはプリズム型のものを用いることもできる。また、光源は、レーザーダイオード以外に公知の様々なものを用いることができる。
【符号の説明】
【0064】
1,21,31…光センサー、2…光源、3…偏光ビームスプリッター、4…対物レンズ、5…波長板ユニット、6…受光素子、6a,32a…受光面、7…1/4波長板、8…振動板、8a…反射面、9…スペーサー、10…基板、11…凸部、12…微細周期構造、13…反射防止膜、13a…突起、14…反射膜、15a,15b…構造性複屈折波長板、19…駆動回路、20…信号処理回路、22…コリメートレンズ、32…4分割受光素子、33…円柱レンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、光検出器と、振動板からなる測定対象物と、前記光源からの出射光を前記振動板の反射面で合焦するように集光する第1光学系と、前記反射面からの反射光を前記光検出器の受光面に集光する第2光学系とを備え、
前記光検出器の前記受光面が、その光軸を前記反射光の光軸と平行にかつ該反射光の光軸からずらして配置され、そのずれ量が、常に前記反射光のビームスポット形状の一部だけが前記受光面に入射するように決定され、
前記第1光学系が、前記光源からの出射光を透過又は反射させる偏光ビームスプリッターと、前記偏光ビームスプリッターを透過又は反射した前記出射光を前記振動板の前記反射面に集光する対物レンズと、前記対物レンズの偏光ビームスプリッターとは反対側に配置されかつ前記出射光が透過する1/4波長板とからなり、
前記1/4波長板が、複数の凸部を前記出射光の使用波長より小さい一定のピッチで配列した微細周期構造を有する構造性複屈折波長板からなり、
前記1/4波長板と前記振動板とが一体化されていることを特徴とする光センサー。
【請求項2】
前記1/4波長板が、それぞれに基板の一方の主面に前記微細周期構造を形成した1対の構造性複屈折波長板からなり、前記1対の構造性複屈折波長板を互いに前記微細周期構造の前記凸部を対向させて配置したことを特徴とする請求項1記載の光センサー。
【請求項3】
前記1/4波長板が、前記振動板とは反対側に設けられた多数の微細凹凸構造からなる反射防止膜を有することを特徴とする請求項1又は2記載の光センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−37460(P2012−37460A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179879(P2010−179879)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】