光デバイス、光走査装置及び画像形成装置
【課題】高コスト化を招くことなく、小型で、光量変動の少ない安定した光を射出する光デバイスを提供する。
【解決手段】 複数の発光部を有するレーザチップ100、パッケージ部材200及びカバーガラス300などを有している。カバーガラス300は、レーザチップ100から射出された光束の光路上に配置され、レーザチップ100から射出された光束が入射する入射面が、レーザチップ100の射出面に対して傾斜しており、その傾斜角は、複数の発光部において最も離れている2つの発光部の一方から射出された光を反射して他方に入射させるときの傾斜角よりも小さい。
【解決手段】 複数の発光部を有するレーザチップ100、パッケージ部材200及びカバーガラス300などを有している。カバーガラス300は、レーザチップ100から射出された光束の光路上に配置され、レーザチップ100から射出された光束が入射する入射面が、レーザチップ100の射出面に対して傾斜しており、その傾斜角は、複数の発光部において最も離れている2つの発光部の一方から射出された光を反射して他方に入射させるときの傾斜角よりも小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、光走査装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、光を射出する光デバイス、該光デバイスを有する光走査装置、及び該光走査装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
面発光型レーザ(VCSEL)は、基板に対して垂直方向に光を出射する半導体レーザであり、端面発光型レーザに比べて低コストで高性能、かつアレイ化が容易であるため、光インターコネクションなどの光通信の光源、光ピックアップ用の光源、さらにはレーザプリンタ等の画像形成装置の光源として期待され盛んに研究開発が行われており、その一部は実用化されている。
【0003】
また、近年、射出面上に光学的に透明な誘電体膜を形成し、中心部と周辺部とで反射率に差をつけることで、高次の横モードを抑制する面発光レーザ素子、及び誘電体膜に形状異方性をもたせてさらに偏光方向を安定させた面発光レーザ素子が提案された(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0004】
ところで、一般的に、レーザ光を射出するレーザ素子は、光学系とともに用いられると、光学系に含まれるレンズあるいはガラスの表面で反射した光が戻り光として入射し、射出されるレーザ光に光量変動を引き起こすおそれがあった。そこで、戻り光に対して高い耐性をもつレーザ素子が提案された。
【0005】
例えば、特許文献5には、下部多層膜反射鏡と上部多層膜反射鏡とによって共振器を形成し、共振器内のバイアス点における緩和振動周波数が、面発光レーザ素子から出力されるレーザ光を変調する光通信周波数を超えて設定される面発光レーザ素子が開示されている。
【0006】
また、特許文献6には、半導体基板と、半導体基板の上方に設けられた活性層と、活性層の上方に設けられ、活性層にて生じたレーザ光を半導体基板と垂直方向に出射する出射面と、出射面上に設けられ、レーザ光の一部を吸収する吸収層と、を含む面発光型半導体レーザが開示されている。
【0007】
また、戻り光自体を抑制することについても考案された。
【0008】
例えば、特許文献7には、TOヘッダー上に少なくとも面発光レーザチップ及びモニタ用フォトディテクタがマウントされ、40%以下の透過率を持つ膜がコーティングされた窓を備えたキャップを有する光送信用の面発光レーザモジュールが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献5に開示されている面発光レーザ素子では、素子の構造が複雑で、かつ駆動回路も複雑化するため、高コスト化を招くという不都合があった。
【0010】
また、特許文献6に開示されている面発光型半導体レーザでも、素子の構造が複雑で、かつ効果が不十分であるという不都合があった。
【0011】
また、特許文献7に開示されている面発光レーザモジュールでは、面発光レーザアレイに適用した場合、窓ガラスの傾斜角度が大きくなり、キャップの加工が困難で、かつ外形が大きくなるという不都合があった。
【0012】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、高コスト化を招くことなく、小型で、光量変動の少ない安定した光を射出することができる光デバイスを提供することにある。
【0013】
また、本発明の第2の目的は、高コスト化を招くことなく、高精度の光走査を行うことができる光走査装置を提供することにある。
【0014】
また、本発明の第3の目的は、高品質の画像を形成することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、第1の観点からすると、複数の発光部を有する面発光レーザアレイと、前記面発光レーザアレイを保持するパッケージ部材と、該パッケージ部材に保持され、前記面発光レーザアレイから射出された光束の光路上に配置された透明部材とを備える光デバイスにおいて、前記透明部材は、前記面発光レーザアレイから射出された光束が入射する入射面が、前記面発光レーザアレイの射出面に対して傾斜しており、前記入射面の前記射出面に対する傾斜角は、前記複数の発光部において最も離れている2つの発光部の一方から射出された光を反射して他方に入射させるときの傾斜角よりも小さいことを特徴とする光デバイスである。
【0016】
これによれば、高コスト化を招くことなく、小型で、光量変動の少ない安定した光を射出することができる。
【0017】
本発明は、第2の観点からすると、光によって被走査面を走査する光走査装置であって、本発明の光デバイスを有する光源と;前記光源からの光を偏向する偏向器と;前記偏光器で偏向された光を被走査面上に集光する走査光学系と;を備える光走査装置である。
【0018】
これによれば、光源が本発明の光デバイスを有しているため、高コスト化を招くことなく、高精度の光走査を行うことができる。
【0019】
本発明は、第3の観点からすると、少なくとも1つの像担持体と;前記少なくとも1つの像担持体に対して画像情報が含まれる光を走査する本発明の光走査装置と;を備える画像形成装置である。
【0020】
これによれば、本発明の光走査装置を備えているため、結果として、高品質の画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの概略構成を説明するための図である。
【図2】図1における光走査装置を示す概略図である。
【図3】図2における光源ユニットを説明するための図である。
【図4】光源ユニットに含まれている光デバイスを説明するための図(その1)である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】光源ユニットに含まれている光デバイスを説明するための図(その2)である。
【図7】パッケージ部材の平面図である。
【図8】図7のA−A断面図である。
【図9】レーザチップを説明するための図である。
【図10】レーザチップにおける複数の発光部の配列状態を説明するための図である。
【図11】各発光部の構成・構造を説明するための図である。
【図12】図11のA−A断面図である。
【図13】レーザチップの製造方法を説明するための図(その1)である。
【図14】レーザチップの製造方法を説明するための図(その2)である。
【図15】レーザチップの製造方法を説明するための図(その3)である。
【図16】レーザチップの製造方法を説明するための図(その4)である。
【図17】マスクMを説明するための図である。
【図18】レーザチップの製造方法を説明するための図(その5)である。
【図19】図18の平面図である。
【図20】レーザチップの製造方法を説明するための図(その6)である。
【図21】レーザチップの製造方法を説明するための図(その7)である。
【図22】共振波長と反射率との関係を説明するための図(その1)である。
【図23】共振器内の入射角を説明するための図である。
【図24】共振波長と反射率との関係を説明するための図(その2)である。
【図25】共振器への入射角と反射率との関係を説明するための図である。
【図26】ビーム広がり角を説明するための図である。
【図27】ガラス板の傾斜角と発光部から射出された光の軌跡との関係を説明するための図(その1)である。
【図28】ガラス板の傾斜角と発光部から射出された光の軌跡との関係を説明するための図(その2)である。
【図29】異常な出力波形を説明するための図である。
【図30】ドループ率を説明するための図である。
【図31】光デバイスAにおける各発光部のドループ率(計測値)を説明するための図である。
【図32】光デバイスBにおける各発光部のドループ率(計測値)を説明するための図である。
【図33】光デバイスの変形例を説明するための図である。
【図34】図33のA−A断面図である。
【図35】光通信などに用いることができる光デバイス510Cを説明するための図である。
【図36】光通信などに用いることができる光デバイス510Dを説明するための図である。
【図37】図37(A)及び図37(B)は、それぞれ光デバイス510Fを説明するための図である。
【図38】カラープリンタの概略構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図32を用いて説明する。図1には、一実施形態に係るレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
【0023】
このレーザプリンタ1000は、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングユニット1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、排紙トレイ1043、通信制御装置1050、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置1060などを備えている。なお、これらは、プリンタ筐体1044の中の所定位置に収容されている。
【0024】
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0025】
感光体ドラム1030は、円柱状の部材であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、図1における矢印方向に回転するようになっている。
【0026】
帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングユニット1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に沿って、帯電チャージャ1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングユニット1035の順に配置されている。
【0027】
帯電チャージャ1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。
【0028】
光走査装置1010は、帯電チャージャ1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、上位装置からの画像情報に基づいて変調された光束により走査し、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した潜像を形成する。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。
【0029】
トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ1032に供給される。
【0030】
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着した潜像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
【0031】
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、該給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。該レジストローラ対1039は、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、該記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
【0032】
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。
【0033】
定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次スタックされる。
【0034】
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
【0035】
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電チャージャ1031に対向する位置に戻る。
【0036】
次に、前記光走査装置1010の構成について説明する。
【0037】
この光走査装置1010は、一例として図2に示されるように、偏向器側走査レンズ11a、像面側走査レンズ11b、ポリゴンミラー13、光源ユニット14、シリンドリカルレンズ17、反射ミラー18、及び走査制御装置(図示省略)などを備えている。そして、これらは、光学ハウジング30の所定位置に組み付けられている。
【0038】
なお、本明細書では、光源ユニット14からの光の射出方向をZ軸方向、このZ軸方向に垂直な平面内で互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向として説明する。また、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
【0039】
光源ユニット14は、一例として図3に示されるように、レーザモジュール500と光学モジュール600を有している。
【0040】
レーザモジュール500は、光デバイス510、該光デバイス510を駆動制御するレーザ制御装置(図示省略)、前記光デバイス510及びレーザ制御装置が実装されているPCB(Printed Circuit Board)基板580を有している。
【0041】
光学モジュール600は、第1の部分610と第2の部分630から構成されている。第1の部分610は、ハーフミラー611、集光レンズ612、及び受光素子613を有している。また、第2の部分630は、カップリングレンズ631、及び開口板632を有している。
【0042】
第1の部分610は、光デバイス510の+Z側であって、光デバイス510から射出された光の光路上にハーフミラー611が位置するように配置されている。ハーフミラー611に入射した光の一部は−Y方向に反射され、集光レンズ612を介して受光素子613で受光される。受光素子613は、受光光量に応じた信号(光電変換信号)をレーザモジュール500のレーザ制御装置に出力する。
【0043】
第2の部分630は、第1の部分610の+Z側であって、ハーフミラー611を透過した光の光路上にカップリングレンズ631が位置するように配置されている。カップリングレンズ631は、ハーフミラー611を透過した光を略平行光とする。開口板632は、開口部を有し、カップリングレンズ631を介した光を整形する。開口板632の開口部を通過した光が、光源ユニット14から射出される光となる。
【0044】
図2に戻り、シリンドリカルレンズ17は、光源ユニット14から射出された光を反射ミラー18を介してポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に集光する。
【0045】
光デバイス510とポリゴンミラー13との間の光路上に配置される光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。本実施形態では、偏向器前光学系は、カップリングレンズ631と開口板632とシリンドリカルレンズ17と反射ミラー18とから構成されている。
【0046】
ポリゴンミラー13は、高さの低い正六角柱状部材からなり、側面に6面の偏向反射面が形成されている。そして、不図示の回転機構により、図2に示される矢印の方向に一定の角速度で回転されている。従って、光源ユニット14から射出され、シリンドリカルレンズ17によってポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に集光された光は、ポリゴンミラー13の回転により一定の角速度で偏向される。
【0047】
偏向器側走査レンズ11aは、ポリゴンミラー13で偏向された光の光路上に配置されている。
【0048】
像面側走査レンズ11bは、偏向器側走査レンズ11aを介した光の光路上に配置されている。そして、この像面側走査レンズ11bを介した光が、感光体ドラム1030の表面に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー13の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム1030上を走査する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」である。また、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
【0049】
ポリゴンミラー13と感光体ドラム1030との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施形態では、走査光学系は、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bとから構成されている。なお、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bの間の光路上、及び像面側走査レンズ11bと感光体ドラム1030の間の光路上の少なくとも一方に、少なくとも1つの折り返しミラーが配置されても良い。
【0050】
前記光デバイス510は、一例として図4〜図6に示されるように、レーザチップ100、該レーザチップ100を保持するパッケージ部材200、カバーガラス300、キャップ310、及びリング320などを有している。
【0051】
なお、図4は、光デバイス510の平面図であり、図5は、図4のA−A断面図である。また、図6は、光デバイス510から、カバーガラス300、キャップ310、及びリング320を除いたときの平面図である。また、図5及び図6では、煩雑さを避けるため、レーザチップ100とパッケージ部材200とを繋ぐボンディングワイヤの図示は省略している。
【0052】
パッケージ部材200は、CLCC(Ceramic leaded chip carrier)と呼ばれるフラットパッケージであり、その+Z側には、周囲が壁で囲まれている空間領域を有している。
【0053】
このパッケージ部材200は、図7及び図7のA−A断面図である図8に示されるように、セラミック201と複数の金属配線203の多層構造となっている。
【0054】
複数の金属配線203は、パッケージ側面の複数の金属キャスター207に個別につながっており、パッケージ部材の周辺から中央に向かって伸びている。
【0055】
空間領域の底面中央には、金属膜205が設けられている。この金属膜205は、ダイアタッチエリアとも呼ばれており、共通電極になっている。ここでは、4隅に位置する8本の金属配線が金属膜205に接続されている。
【0056】
レーザチップ100は、空間領域121の底面のほぼ中央であって、金属膜205上にAuSn等の半田材を用いてダイボンドされている。すなわち、レーザチップ100は、周囲が壁で囲まれている領域の底面上に保持されている。
【0057】
上記レーザチップ100は、一例として図9に示されるように、2次元的に配列されている32個の発光部、及び32個の発光部の周囲に設けられ、各発光部に対応した32個の電極パッドを有している。また、各電極パッドは、対応する発光部と配線部材によって電気的に接続されている。
【0058】
そして、各電極パッドは、対応する金属配線203とワイヤボンディングで接続されている。
【0059】
32個の発光部は、図10に示されるように、全ての発光部をX軸方向に延びる仮想線上に正射影したときに、発光部間隔が等しく(図10では「d1」)なるように配置されている。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいう。
【0060】
ここでは、各発光部は、発振波長が780nm帯の垂直共振器型の面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)である。すなわち、レーザチップ100は、いわゆる面発光レーザアレイチップである。
【0061】
各発光部は、図11及び図12に示されるように、基板101、バッファ層102、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109、p側電極113、n側電極114、及びモードフィルタ115などを有している。なお、図11は、1つの発光部の平面図であり、図12は、図11のA−A断面図である。
【0062】
基板101は、n−GaAs単結晶基板である。
【0063】
バッファ層102は、基板101の+Z側の面上に積層され、n−GaAsからなる層である。
【0064】
下部半導体DBR103は、バッファ層102の+Z側に積層され、n−AlAsからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを40.5ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学的厚さとなるように設定されている。なお、光学的厚さがλ/4のとき、その層の実際の厚さDは、D=λ/4n(但し、nはその層の媒質の屈折率)である。
【0065】
下部スペーサ層104は、下部半導体DBR103の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
【0066】
活性層105は、下部スペーサ層104の+Z側に積層され、GaInAsP/GaInPの3重量子井戸構造の活性層である。
【0067】
量子井戸層は780nm帯の発振波長を得るために、GaInP混晶にAsを導入したものであり0.7%の圧縮歪みを有する。
【0068】
バリア層は、0.6%の引張歪みを導入することによってバンドギャップを大きくし、高いキャリア閉じ込めを実現するとともに、量子井戸層の歪み補償構造を形成している。
【0069】
上部スペーサ層106は、活性層105の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
【0070】
下部スペーサ層104と活性層105と上部スペーサ層106とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、その厚さが1波長の光学的厚さとなるように設定されている。なお、活性層105は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
【0071】
上部半導体DBR107は、上部スペーサ層106の+Z側に積層され、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを25ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
【0072】
上部半導体DBR107における低屈折率層の1つには、p−AlAsからなる被選択酸化層108が厚さ33nmで挿入されている。
【0073】
この被選択酸化層108の挿入位置は、電界の定在波分布において、活性層105から3番目となる節に対応する位置である。
【0074】
コンタクト層109は、上部半導体DBR107の+Z側に積層され、p−GaAsからなる層である。
【0075】
なお、上記のように、基板101上に複数の半導体層が積層されたものを、以下では、便宜上「積層体」ともいう。
【0076】
モードフィルタ115は、コンタクト層109の+Z側であって、射出領域内でその中心部から外れた部分に設けられ、該部分の反射率を中心部の反射率よりも低くする透明な誘電体膜からなる。
【0077】
次に、レーザチップ100の製造方法について簡単に説明する。
【0078】
(1)上記積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)あるいは分子線エピタキシャル成長法(MBE法)による結晶成長によって作成する(図13参照)。
【0079】
ここでは、MOCVD法の場合には、III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料には、フォスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を用いている。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)、ジメチルジンク(DMZn)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
【0080】
(2)積層体の表面に一辺が25μmの正方形状のレジストパターンを形成する。
【0081】
(3)Cl2ガスを用いるECRエッチング法で、上記レジストパターンをフォトマスクとして四角柱状のメサ構造体(以下では、便宜上「メサ」と略述する)を形成する。ここでは、エッチングの底面は下部スペーサ層104中に位置するようにした。
【0082】
(4)フォトマスクを除去する(図14参照)。
【0083】
(5)積層体を水蒸気中で熱処理する。これにより、被選択酸化層108中のAl(アルミニウム)がメサの外周部から選択的に酸化され、メサの中央部に、Alの酸化層108aによって囲まれた酸化されていない領域108bが残留する(図15参照)。すなわち、発光部の駆動電流の経路をメサの中央部だけに制限する、いわゆる酸化狭窄構造体が形成される。上記酸化されていない領域108bが電流通過領域(電流注入領域)である。このようにして、例えば幅4μm程度の略正方形状の電流通過領域が形成される。
【0084】
(6)気相化学堆積法(CVD法)を用いて、SiNからなる保護層111を形成する(図16参照)。ここでは、保護層111の光学的厚さがλ/4となるようにした。具体的には、SiNの屈折率nが1.86、発振波長λが780nmであるため、実際の膜厚(=λ/4n)は約105nmに設定した。
【0085】
(7)レーザ光の射出面となるメサ上部にp側電極コンタクトの窓開けを行うためのエッチングマスク(マスクMという)を作成する。ここでは、一例として図17に示されるように、メサの周囲、メサの側面、メサ上面の周囲、及びメサ上面の中心部を挟んで所望の偏光方向P(ここでは、X軸方向)に平行な方向に関して対向している2つの小領域(第1の小領域と第2の小領域)がエッチングされないようにマスクMを作成する。
【0086】
(8)BHFにて保護層111をエッチングし、p側電極コンタクトの窓開けを行う。
【0087】
(9)マスクMを除去する(図18及び図19参照)。そして、第1の小領域に残存している保護層111がモードフィルタ115Aとなり、第2の小領域に残存している保護層111がモードフィルタ115Bとなる。すなわち、モードフィルタ115は、モードフィルタ115Aとモードフィルタ115Bから構成されている。そして、モードフィルタ115Aとモードフィルタ115Bによって挟まれる領域は、形状異方性を有している。
【0088】
(10)メサ上部の光射出部となる領域(射出領域)に一辺10μmの正方形状のレジストパターンを形成し、p側の電極材料の蒸着を行なう。p側の電極材料としてはCr/AuZn/Auからなる多層膜、もしくはTi/Pt/Auからなる多層膜が用いられる。
【0089】
(11)光射出部となる領域に蒸着された電極材料をリフトオフし、p側電極113を形成する(図20参照)。このp側電極113で囲まれた領域が射出領域である。本実施形態では、射出領域内の2つの小領域(第1の小領域、第2の小領域)に、光学的厚さがλ/4のSiNからなる透明な誘電体膜としてモードフィルタ115Aとモードフィルタ115Bが存在している。これにより、2つの小領域(第1の小領域、第2の小領域)の反射率は、射出領域の中心部の反射率よりも低くなる。
【0090】
(12)基板101の裏側を所定の厚さ(例えば100μm程度)まで研磨した後、n側電極114を形成する(図21参照)。ここでは、n側電極114はAuGe/Ni/Auからなる多層膜である。
【0091】
(13)アニールによって、p側電極113とn側電極114のオーミック導通をとる。これにより、メサは発光部となる。
【0092】
(14)チップ毎に切断する。
【0093】
そして、種々の後工程を経て、レーザチップ100となる。
【0094】
カバーガラス300は、その両面に反射防止膜がコーティングされており、透過率が99%以上である。
【0095】
キャップ310は、コバール製のキャップである。このキャップ310には、レーザチップ100の射出面に対して傾斜して、カバーガラス300が低融点ガラスで取り付けられている。
【0096】
パッケージ部材200の+Z側の面には、シーム用のコバール製のリング320が銀ロウで固定されている。
【0097】
そして、カバーガラス300が取り付けられたキャップ310は、リング320を介してパッケージ部材200にシーム溶接で固着されている。このシーム溶接は、500gの加重を加えながら90A(アンペア)の電流を流して行われる。
【0098】
ところで、ファブリ・ペロ共振器の透過率Tは、次の(1)式で表せることが知られている。
【0099】
【数1】
【0100】
ここで、I0は入射光量、RDBRは共振器の反射率、nは共振器の屈折率、dは共振器の長さ、θは光の共振器内への入射角、λは波長である。
【0101】
図22には、面発光レーザにおける共振器反射スペクトルの計算結果の一例が示されている。
【0102】
本実施形態では、共振波長λは780nm、共振器の屈折率nは3.3156、共振器の反射率RDBRは99.8%、共振器の長さdは235.25nmである。図22に示されるように、共振波長λ=780nmで、急峻に反射率が0(%)に低下している。
【0103】
上記(1)式から、共振器内の入射角(図23参照)が0°から大きくなると、透過率Tが低下、つまり反射率R(=1−T)が高くなることがわかる。従って、戻り光の影響を無くすためには、戻り光の原因であるカバーガラスを傾斜させ、戻り光の反射角を大きくし、共振器に入射する光の入射角ψを十分大きくとれば、その結果、出力変動をなくすことができる。
【0104】
戻り光の共振器への入射角Ψと共振器内への入射角θとの関係は、次の(2)式で表わせる。ここで、nは、共振器の屈折率である。
【0105】
【数2】
【0106】
図24には、戻り光の共振器への入射角Ψを、0°、10°、15°に変えた場合の、共振器内での戻り光に対する反射率(以下、便宜上、「共振器反射率」と略述する)が示されている。
【0107】
図25は、図24に基づいて、横軸を共振器への入射角Ψ、縦軸を780nmでの反射率及び反射率が最小になる共振波長としたものである。これによると、入射角Ψが大きくなると共振器反射率Rは大きくなり、Ψが10°ではR=94.9%、Ψが20°ではR=99.6%まで高くすることができる。このときは、戻り光をほとんど反射させるため、出力変動をなくすことができる。
【0108】
発明者らの実験の結果、共振器反射率Rを99%以上にすれば、戻り光による不都合が解消することが分かっている。
【0109】
なお、以下では、このように、戻り光による不都合がなくなるときの、共振器への入射角Ψを「臨界入射角Ψ0」という。
【0110】
臨界入射角Ψ0は、図25を用いて容易に設定することができる。例えば、R=99%になる角度を臨界入射角Ψ0とすると、図25からΨ0は15°が求まる。その角度で入射した戻り光の共振波長は、図25から777.6nmであり、角度0°のときの共振波長(780nm)との差Δλは2.4nmとなる。
【0111】
また、戻り光の入射角を変えることで共振波長が短波長側にシフトするため、面発光レーザアレイの複数の発光部間に波長のばらつきがある場合には、シフトした共振波長の光が入射し、別の出力変動(雑音)として影響を与えることが予測される。
【0112】
従って、Δλとしては、波長のばらつき及び温度変化も考慮しなければならない。例えば、発光部の数が32個(32chアレイ)の場合、波長のばらつきが、0.5nm程度あることが実験で分かっている。また温度に関しては、面発光レーザは熱抵抗が極めて高いため、動作前後では30℃程度の温度差が生じる場合がある。これは、波長の温度係数0.05(nm/K)を用いると、1.5nm程度の波長変化を引き起こすものと推測される。以上のことを勘案すれば、Δλとしては、最低でも温度変化に起因する1.5nm以上、複数の発光部間に波長のばらつきをも考慮すると、2.0nm以上とすれば良い。
【0113】
なお、共振器反射率Rは、一般的な面発光レーザでは、99%以上で設計することが望ましい。
【0114】
上記(1)式から、共振波長λと入射角θとの関係は、次の(3)式で求まる。
【0115】
【数3】
【0116】
次に、上記(2)式を用いて、θをΨで置き換えると、次の(4)式及び(5)式が得られる。
【0117】
【数4】
【0118】
【数5】
【0119】
例えば、共振波長λ=780nm、屈折率n=3.3156、共振器反射率R=99.8%、共振器長d=235.25(nm)の場合、Δλを2.4nmとすれば、上記(5)式から、臨界入射角Ψ0は15°となり、図25から得られた結果と一致する。
【0120】
実際の半導体レーザでは、その戻り光の入射角Ψは、光の広がり角度を考慮して設定する必要がある。図26は、面発光レーザのファーフィールドパターン(FFP)の例が示されている。このFFPは、ガウス分布形状を呈しており、FWHM=8°で、標準偏差(半幅)σ=3.4°である。発明者らは、戻り光の影響を無くすためには、半導体レーザから射出される光として、少なくとも2σ、好ましくは3σ以上をビーム広がり角θLDとすれば良いことを実験で確認した。
【0121】
図27には、ビーム広がり角θLDを考慮した場合に、発光部の直上にガラス板を配置し、該ガラス板を発光部の射出面の法線に対して傾斜(傾斜角φ)させたときの、戻り光の軌跡が示されている。
【0122】
図27に示されるように、発光部0から射出された広がり角±θLDの光は、X軸上の点x1とx2に戻り光として入射する。このとき、戻り光の入射角Ψは2φ±θLDとなる。
【0123】
従って、戻り光の影響を無くすためには、入射角Ψを臨界入射角Ψ0以上にする必要があり、ガラス板の傾斜角度φは、上記(5)式から次の(6)式で示される。
【0124】
【数6】
【0125】
上記(6)式で求めた角度で配置すれば、戻り光の入射角Ψは常に臨界入射角Ψ0より大きくすることができる。例えば、臨界入射角Ψ0=15°、ビーム広がり角θLD=15°であれば、ガラス板の傾斜角φは、15°以上に設定すれば良い。
【0126】
また、同じ半導体レーザで、図26のFFPにおいて、広がり角を2σ(=6.8°)とした場合には、φ=10.9°となり、ガラス板の傾斜角をさらに小さくすることができる。
【0127】
以上説明したように、ここでは、(1)屈折率n、反射率R、長さdの共振器の共振波長において、該共振器へ入射角Ψで入射した戻り光の影響がなくなる共振周波数のシフト量Δλを設定することで、戻り光の影響がなくなる臨界入射角Ψ0を求め、(2)ビーム広がり角θLDを考慮して、ガラス板(カバーガラス)の傾斜角φを一義的に設定する、ことを可能にした。
【0128】
従来例として、特許文献7(特開2007−103576号公報)に開示されている面発光レーザモジュールを考える。この面発光レーザモジュールのパッケージ構造では、金属製ステム(φ5.6mm)中央のヒートシンク部に導電性ペーストで面発光レーザがマウントされている。この面発光レーザは、21チャネルアレイ(7×3)であり、発光部間隔は38μmと仮定する。このアレイでは、各発光部は等間隔に方形に配置され、その大きさは228μm×76μmとする。
【0129】
このような従来の設計では、3σを考慮した広がり角θLDを15°と仮定すれば、図28に示されるように、最も端に位置する発光部0から射出した広がり角θLDの光が、角度φのガラス板に当たる高さHが0.5mmの場合、ガラス板で反射した戻り光が他方のアレイ端x(x=228μm)の発光部に入射しないための角度φは次の(7)式から求まる。
【0130】
【数7】
【0131】
ここで、xはアレイの長さ、Hは広がり角θLDの光がガラス板に当たる高さである。
【0132】
前記数値を上記(7)式に代入すると、ガラス板の角度φ=25.5°と求まり、本実施形態よりも10°以上も大きくする必要がある。発光部数の増加あるいは発光部間隔の拡大があれば、さらに角度φを大きくしなければならず、その実施はより一層困難になることが予想される。上記(7)式に示されるように、従来は、アレイに適用した場合、戻り光が入射しないようにするためには、ガラス板の高さHを高くするか、発光部数を減らすしかなく、設計の自由度が狭かった。
【0133】
本実施形態では、ガラス板の傾斜角が、一方の端部にある発光部から射出された広がり角θLDの光が、ガラス板で反射して他方の端部にある発光部に入射する際のガラス板の傾斜角よりも小さい角度であっても、戻り光の影響を抑制することができる。そのため、発光部数や発光部間隔に制限を受けない設計自由度の高い光デバイスを提供することができる。
【0134】
本実施形態では、上部半導体DBR107の反射率Rfは=99.67%、下部半導体DBR103の反射率Rrは99.98%であり、共振器反射率RDBRは、√(Rf×Rr)=99.82%となる。
【0135】
この場合に、半導体DBR層を増やして反射率を高くするほど臨界入射角Ψ0が小さく、発振電流の閾値も小さくなる利点があるが、スロープ効率が低下する。逆に、半導体DBR層を減らしてスロープ効率を上げても、発振電流の閾値が増加し、臨界入射角Ψ0が大きくなる。実用的には、半導体DBR層の層数や材料により、共振器反射率Rの下限を99.6%で設計する。
【0136】
本実施形態では、共振波長λ=780nm、共振器の屈折率n=3.3156、共振器反射率R=0.998、共振器長d=235.25(nm)であることから、上記説明した原理に基づいて、Δλを2.4nmに設定し、臨界入射角Ψ0として15°を得た。そこで、レーザチップ100の射出面の法線方向に対するカバーガラス300の傾斜角φは、加工誤差を考慮し、17°とした。
【0137】
ところで、レーザモジュール及び光源ユニットは、図3の構成・構造を模した光学系を利用して評価される。評価項目は、射出される光の光量の時間変化(出力波形)であり、フォトダイオード(PD)を用いて検出する。仮に、戻り光の影響があると、光量が不安定になり、その変動(光量変動)が観察される。
【0138】
よく現れる光量変動(異常波形)が、模式的に図29に示されている。図29に示されるように、異常波形は、出力波形の前半部分に現れることが多いが、これに限らず、後半部分に現れる場合もある。また、周波数も1kHzの場合や、もっと大きい、例えば、数100kHzの出力波形においても、異常変動が現れる。
【0139】
出力波形は、画像形成装置に必要な1ラインを安定して描くのに必要な特性の1つである。画像形成装置によっては、数%レベルでの光量変動も問題となる。
【0140】
環境温度25°、目標出力1.4mWとし、各発光部に、パルス周期が1ms、パルス幅が500μsの方形波電流パルスをそれぞれ供給したとき、供給後1μs(Ta)での光出力Pa、供給後480μs(Tb)での光出力Pbを用いて、次の(8)式で得られるDrをドループ率(単位:%)として定義する(図30参照)。このドループ率は、上記光量変動を定量化したものと考えることができる。
【0141】
Dr=(Pa−Pb)/Pa×100 ……(8)
【0142】
発明者らは、複数種類の面発光レーザアレイを作成し、種々の実験を繰り返し行ったところ、ドループ率の最大値Dr(max)とドループ率の最小値Dr(min)との差(以下、便宜上、「ドループばらつき」という)が3%以上になる面発光レーザアレイを用いると、出力画像における視認性が顕著に悪化するという新しい知見を得た。
【0143】
一例として、40個の発光部(ch1〜ch40)を有する面発光レーザアレイを含む光デバイスについて、本実施形態と同様な光デバイス(光デバイスAという)、及び従来の面発光レーザモジュールと同様な光デバイス(光デバイスBという)を作成した。そして、各光デバイスにおいて、40個の発光部すべてのドループ率を計測した。光デバイスAの計測結果が図31に示され、光デバイスBの計測結果が図32に示されている。
【0144】
図31によると、Dr(max)=2%、Dr(min)=0.5%であり、その差は1.5%であった。一方、図32によると、Dr(max)=4%、Dr(min)=−1%であり、その差は5%であった。
【0145】
このように、本実施形態と同様な光デバイスは、戻り光への耐性が強くなり、異常波形が抑制され、その結果、光量変動を抑えることが可能となる。
【0146】
以上説明したように、本実施形態に係る光デバイス510によると、レーザチップ100、該レーザチップ100を保持するパッケージ部材200、及びカバーガラス300などを有している。
【0147】
レーザチップ100は、複数の発光部を有する面発光レーザアレイチップであり、カバーガラス300は、レーザチップ100から射出された光束の光路上に配置されている。
【0148】
そして、カバーガラス300は、レーザチップ100から射出された光束が入射する入射面が、レーザチップ100の射出面に対して傾斜しており、その傾斜角は、複数の発光部において最も離れている2つの発光部の一方から射出された光を反射して他方に入射させるときの傾斜角よりも小さい。
【0149】
この場合は、高コスト化を招くことなく、小型で、光量変動の少ない安定した光を射出することができる。
【0150】
また、各発光部では、射出領域内に設けられ、周辺部の反射率を中心部の反射率よりも低くする透明な誘電体膜からなるモードフィルタ115を有しているため、横モード抑制効果を得ることができる。そして、モードフィルタ115は、中央部を挟んで配置された2つのモードフィルタ115Aとモードフィルタ115Bとから構成され、各モードフィルタで挟まれた相対的に反射率が高い領域が形状異方性を有しているため、偏光方向を揃えることができる。
【0151】
そして、本実施形態に係る光走査装置1010によると、光源ユニット14が光デバイス510を有しているため、高コスト化を招くことなく、高精度の光走査を行うことができる。
【0152】
また、本実施形態に係るレーザプリンタ1000によると、光走査装置1010を備えているため、結果として、高品質の画像を形成することができる。
【0153】
ところで、レーザチップ100では、各発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光部間隔が等間隔d1であるので、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム1030上では副走査方向に等間隔で発光部が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。
【0154】
そして、例えば、上記間隔d1を2.65μm、光走査装置1010の光学系の倍率を2倍とすれば、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書込みができる。もちろん、主走査対応方向の発光部数を増加したり、副走査対応方向のピッチd2を狭くして間隔d1を更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、発光部の点灯のタイミングで容易に制御できる。
【0155】
また、この場合には、レーザプリンタ1000では書きこみドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷することができる。また、同じ書きこみドット密度の場合には印刷速度を更に速くすることができる。
【0156】
また、この場合には、各発光部からの光束の偏光方向が安定して揃っているため、レーザプリンタ1000では、高品質の画像を安定して形成することができる。
【0157】
なお、上記実施形態では、レーザチップ100が32個の発光部を有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0158】
また、上記実施形態では、保護層111がSiNの場合について説明したが、これに限らず、例えば、SiNx、SiOx、TiOx及びSiONのいずれかであっても良い。それぞれの材料の屈折率に合わせて膜厚を設計することで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0159】
また、上記実施形態では、第1の小領域と第2の小領域が、射出領域の中心を通りY軸に平行な軸に対して対称になるように設けられている場合について説明したが、これに限定されるものではない。射出領域の中心を通りY軸に平行な軸の一側に第1の小領域があり、他側に第2の小領域があれば良い。
【0160】
また、上記実施形態では、モードフィルタ115A及びモードフィルタ115Bが保護層111と同じ材質である場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0161】
また、上記実施形態では、各小領域の形状が長方形である場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、半円状など任意の形状であっても良い。
【0162】
また、上記実施形態では、モードフィルタ115が、2つの誘電体膜から構成される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、射出領域の中心部を取り囲む1つの円環状の誘電体膜で構成されていても良い。
【0163】
また、上記実施形態では、モードフィルタ115A及びモードフィルタ115Bの光学的厚さがλ/4の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、モードフィルタ115A及びモードフィルタ115Bの光学的厚さが3λ/4であっても良い。要するに、モードフィルタ115A及びモードフィルタ115Bの光学的厚さがλ/4の奇数倍であれば、上記実施形態のレーザチップ100と同様な横モード抑制効果を得ることができる。
【0164】
また、射出領域の中心部が、光学的厚さがλ/4の偶数倍の誘電体膜で被覆されても良い。この場合は、該中心部は反射率を低下させることがなく、誘電体膜がない場合と同等の光学特性が得られた。
【0165】
また、射出領域内のモードフィルタ以外の部分を、光学的厚さがλ/4の偶数倍である誘電体膜で被覆し、射出領域全部を誘電体膜で被覆しても良い。これにより、射出領域の酸化や汚染を抑制することができる。
【0166】
すなわち、反射率を低下させたい部分の光学的厚さがλ/4の奇数倍、それ以外の部分の光学的厚さがλ/4の偶数倍であれば、同様の横モード抑制効果が得られる。
【0167】
また、図33及び図34には、変形例の光デバイス510Aが示されている。この光デバイス510Aでは、金属製のステムにレーザチップ100がマウントされている。そして、上記光デバイス510と同様な傾斜角でカバーガラス300が取り付けられているキャップが、ステムに溶接されている。光デバイス510Aにおいても、光デバイス510と同様な効果を得ることができる。なお、図34は、図33のA−A断面図である。
【0168】
図35及び図36には、上記実施形態の光デバイス510の考え方を光通信(光伝送)などに用いられる光デバイスに適用した例が示されている。これらの場合も、高コスト化を招くことなく、小型で、光量変動の少ない安定した光を射出することができる。
【0169】
図35の光デバイス510Cは、基板上に、樹脂性のOEフェルールが配置され、該フェルールの一方の端部に、面発光レーザ素子がフリップチップでマウントされている。そして、この面発光レーザ素子の前方に、端面にテーパが付与されている光ファイバが固定されている。
【0170】
光ファイバのテーパ角度φとしては、対向している面発光レーザ素子の共振波長λ=780nm、共振器の屈折率n=3.3156、共振器反射率R=0.998、共振器長d=235.25(nm)から、上記原理に基づいて、Δλを2.4nmと設定し、臨界入射角Ψ0として15°を得た。そこで、面発光レーザ素子に対向する端面のテーパ角度φが16°となるように、光ファイバの端面を加工している。
【0171】
これにより、面発光レーザ素子と光ファイバとの結合における、光ファイバ端からの戻り光の影響を低減することができ、良好な光伝送特性を得ることができた。
【0172】
図36の光デバイス510Dは、基板上に、樹脂性のOEフェルールが配置されている。ここでは、フェルールの一方の端部に、光ファイバの端面に対して角度φでテーパが形成されており、該テーパ面に面発光レーザ素子がフリップチップでマウントされている。そして、面発光レーザ素子の前方に光ファイバが固定されている。
【0173】
面発光レーザ素子がマウントされる部分のテーパ角度φとしては、面発光レーザ素子の共振波長λ=780nm、共振器の屈折率n=3.3156、共振器反射率R=0.998、共振器長d=235.25(nm)から、上記原理に基づいて、Δλを2.4nmと設定し、臨界入射角Ψ0として15°を得た。そこで、面発光レーザ素子がマウントされる部分のテーパ角度φが16°となるように、フェルールを加工している。
【0174】
これにより、面発光レーザ素子と光ファイバとの結合における、光ファイバ端からの戻り光の影響を低減することができ、良好な光伝送特性を得ることができた。
【0175】
また、一例として図37(A)及び図37(B)には、上記光デバイス510Aよりも低コストで製造することができる光デバイス510Fが示されている。なお、図37(B)は、図37(A)のA−A断面図である。
【0176】
この光デバイス510Fでは、リードフレーム上にマウントされた面発光レーザアレイは、透明な樹脂でモールドされている。すなわち、面発光レーザアレイは、透明な樹脂成型部材に包含されている。そして、該樹脂成形部材は、光入射面が、面発光レーザアレイの射出面に対して前記光デバイス500と同様に所定の角度だけ傾斜するように成形されている。この場合は、高価なカバーガラス付きの金属製キャップが不要となる。そして、製造時の溶接工程が不要となる。
【0177】
光デバイス510Fの製造方法について簡単に説明する。
【0178】
(a)面発光レーザアレイ100を、リードフレームの中央部に導電性接着剤を用いてマウントする。
【0179】
(b)各発光部と対応するリードとをボンディングワイヤで接続する。
【0180】
(c)キャスティング法あるいはトランスファーモールド法により、粉末あるいは液状のエポキシ樹脂を光入射面が所定の角度になるように設計された金型に加圧注入し、同時に熱硬化させる。
【0181】
このように、光デバイス510Fは、低コストで製造することができるという利点がある。
【0182】
なお、上記実施形態では、光走査装置1010がプリンタに用いられる場合について説明したが、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機にも用いることができる。
【0183】
また、上記実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0184】
また、画像形成装置が、像担持体に直接画像を形成する画像形成装置であっても良い。
【0185】
例えば、CTP(Computer to Plate)として知られている印刷版の作成にも好適に利用できる。つまり、光デバイス510と同様な光デバイスを有する光走査装置によって、像担持体である印刷版材料にレーザアブレーションによって直接画像形成を行い、印刷版を形成する画像形成装置であっても良い。
【0186】
また、レーザ光によって発色に可逆性を与えることができる媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
【0187】
例えば、媒体が、いわゆるリライタブルペーパーであっても良い。これは、例えば紙や樹脂フィルム等の支持体上に、以下に説明するような材料が記録層として塗布されている。そして、レーザ光による熱エネルギー制御によって発色に可逆性を与え、表示/消去を可逆的に行うものである。
【0188】
透明白濁型リライタブルマーキング法とロイコ染料を用いた発消色型リライタブルマーキング法があり、いずれも適用できる。
【0189】
透明白濁型は、高分子薄膜の中に脂肪酸の微粒子を分散したもので、110℃以上に加熱すると脂肪酸の溶融により樹脂が膨張する。その後、冷却すると脂肪酸は過冷却状態になり液体のまま存在し、膨張した樹脂が固化する。その後、脂肪酸が固化収縮して多結晶の微粒子となり樹脂と微粒子間に空隙が生まれる。この空隙により光が散乱されて白色に見える。次に、80℃から110℃の消去温度範囲に加熱すると、脂肪酸は一部溶融し、樹脂は熱膨張して空隙を埋める。この状態で冷却すると透明状態となり画像の消去が行われる。
【0190】
ロイコ染料を用いたリライタブルマーキング法は、無色のロイコ型染料と長鎖アルキル基を有する顕消色剤との可逆的な発色及び消色反応を利用している。レーザ光により加熱されるとロイコ染料と顕消色剤が反応して発色し、そのまま急冷すると発色状態が保持される。そして、加熱後、ゆっくり冷却すると顕消色剤の長鎖アルキル基の自己凝集作用により相分離が起こり、ロイコ染料と顕消色剤が物理的に分離されて消色する。
【0191】
また、媒体が、紫外光を当てるとC(シアン)に発色し、可視光のR(レッド)の光で消色するフォトクロミック化合物、紫外光を当てるとM(マゼンタ)に発色し、可視光のG(グリーン)の光で消色するフォトクロミック化合物、紫外光を当てるとY(イエロー)に発色し、可視光のB(ブルー)の光で消色するフォトクロミック化合物が、紙や樹脂フィルム等の支持体上に設けられた、いわゆるカラーリライタブルペーパーであっても良い。
【0192】
これは、一旦紫外光を当てて真っ黒にし、R・G・Bの光を当てる時間や強さで、Y・M・Cに発色する3種類の材料の発色濃度を制御してフルカラーを表現し、仮に、R・G・Bの強力な光を当て続ければ3種類とも消色して真っ白にすることもできる。
【0193】
このような、光エネルギー制御によって発色に可逆性を与えるものも上記実施形態と同様な光走査装置を備える画像形成装置として実現できる。
【0194】
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
【0195】
また、一例として図37に示されるように、複数の感光体ドラムを備えるカラープリンタ2000であっても良い。
【0196】
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、ブラック用の「感光体ドラムK1、帯電装置K2、現像装置K4、クリーニングユニットK5、及び転写装置K6」と、シアン用の「感光体ドラムC1、帯電装置C2、現像装置C4、クリーニングユニットC5、及び転写装置C6」と、マゼンタ用の「感光体ドラムM1、帯電装置M2、現像装置M4、クリーニングユニットM5、及び転写装置M6」と、イエロー用の「感光体ドラムY1、帯電装置Y2、現像装置Y4、クリーニングユニットY5、及び転写装置Y6」と、光走査装置2010と、転写ベルト2080と、定着ユニット2030などを備えている。
【0197】
各感光体ドラムは、図37中の矢印の方向に回転し、各感光体ドラムの周囲には、回転方向に沿って、それぞれ帯電装置、現像装置、転写装置、クリーニングユニットが配置されている。各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。帯電装置によって帯電された各感光体ドラム表面に光走査装置2010により光が照射され、各感光体ドラムに潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像装置により各感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写装置により、転写ベルト2080上の記録紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着ユニット2030により記録紙に画像が定着される。
【0198】
光走査装置2010は、前記光デバイス510と同様な光デバイスを、色毎に有している。そこで、上記光走査装置1010と同様の効果を得ることができる。また、カラープリンタ2000は、この光走査装置2010を備えているため、上記レーザプリンタ1000と同様の効果を得ることができる。
【0199】
ところで、カラープリンタ2000では、各部品の製造誤差や位置誤差等によって色ずれが発生する場合がある。このような場合であっても、点灯させる発光部を選択することで色ずれを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0200】
以上説明したように、本発明の光デバイスによれば、高コスト化を招くことなく、小型で、光量変動の少ない安定した光を射出するのに適している。また、本発明の光走査装置によれば、高コスト化を招くことなく、高精度の光走査を行うのに適している。また、本発明の画像形成装置によれば、高品質の画像を形成するのに適している。
【符号の説明】
【0201】
11a…偏向器側走査レンズ(走査光学系の一部)、11b…像面側走査レンズ(走査光学系の一部)、13…ポリゴンミラー(偏向器)、14…光源ユニット、100…レーザチップ(面発光レーザアレイ)、115A…モードフィルタ(誘電体膜の一部)、115B…モードフィルタ(誘電体膜の一部)、200…パッケージ部材、300…カバーガラス(透明部材)、510…光デバイス、510A…光デバイス、510C…光デバイス、510D…光デバイス、1000…レーザプリンタ、1010…光走査装置、1030…感光体ドラム(像担持体)、2000…カラープリンタ(画像形成装置)、2010…光走査装置、K1,C1,M1,Y1…感光体ドラム(像担持体)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0202】
【特許文献1】特開2001−156395号公報
【特許文献2】特許第3955925号公報
【特許文献3】特開2007−201398号公報
【特許文献4】特開2004−289033号公報
【特許文献5】特開2005−252032号公報
【特許文献6】特開2005−086027号公報
【特許文献7】特開2007−103576号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、光走査装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、光を射出する光デバイス、該光デバイスを有する光走査装置、及び該光走査装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
面発光型レーザ(VCSEL)は、基板に対して垂直方向に光を出射する半導体レーザであり、端面発光型レーザに比べて低コストで高性能、かつアレイ化が容易であるため、光インターコネクションなどの光通信の光源、光ピックアップ用の光源、さらにはレーザプリンタ等の画像形成装置の光源として期待され盛んに研究開発が行われており、その一部は実用化されている。
【0003】
また、近年、射出面上に光学的に透明な誘電体膜を形成し、中心部と周辺部とで反射率に差をつけることで、高次の横モードを抑制する面発光レーザ素子、及び誘電体膜に形状異方性をもたせてさらに偏光方向を安定させた面発光レーザ素子が提案された(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0004】
ところで、一般的に、レーザ光を射出するレーザ素子は、光学系とともに用いられると、光学系に含まれるレンズあるいはガラスの表面で反射した光が戻り光として入射し、射出されるレーザ光に光量変動を引き起こすおそれがあった。そこで、戻り光に対して高い耐性をもつレーザ素子が提案された。
【0005】
例えば、特許文献5には、下部多層膜反射鏡と上部多層膜反射鏡とによって共振器を形成し、共振器内のバイアス点における緩和振動周波数が、面発光レーザ素子から出力されるレーザ光を変調する光通信周波数を超えて設定される面発光レーザ素子が開示されている。
【0006】
また、特許文献6には、半導体基板と、半導体基板の上方に設けられた活性層と、活性層の上方に設けられ、活性層にて生じたレーザ光を半導体基板と垂直方向に出射する出射面と、出射面上に設けられ、レーザ光の一部を吸収する吸収層と、を含む面発光型半導体レーザが開示されている。
【0007】
また、戻り光自体を抑制することについても考案された。
【0008】
例えば、特許文献7には、TOヘッダー上に少なくとも面発光レーザチップ及びモニタ用フォトディテクタがマウントされ、40%以下の透過率を持つ膜がコーティングされた窓を備えたキャップを有する光送信用の面発光レーザモジュールが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献5に開示されている面発光レーザ素子では、素子の構造が複雑で、かつ駆動回路も複雑化するため、高コスト化を招くという不都合があった。
【0010】
また、特許文献6に開示されている面発光型半導体レーザでも、素子の構造が複雑で、かつ効果が不十分であるという不都合があった。
【0011】
また、特許文献7に開示されている面発光レーザモジュールでは、面発光レーザアレイに適用した場合、窓ガラスの傾斜角度が大きくなり、キャップの加工が困難で、かつ外形が大きくなるという不都合があった。
【0012】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、高コスト化を招くことなく、小型で、光量変動の少ない安定した光を射出することができる光デバイスを提供することにある。
【0013】
また、本発明の第2の目的は、高コスト化を招くことなく、高精度の光走査を行うことができる光走査装置を提供することにある。
【0014】
また、本発明の第3の目的は、高品質の画像を形成することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、第1の観点からすると、複数の発光部を有する面発光レーザアレイと、前記面発光レーザアレイを保持するパッケージ部材と、該パッケージ部材に保持され、前記面発光レーザアレイから射出された光束の光路上に配置された透明部材とを備える光デバイスにおいて、前記透明部材は、前記面発光レーザアレイから射出された光束が入射する入射面が、前記面発光レーザアレイの射出面に対して傾斜しており、前記入射面の前記射出面に対する傾斜角は、前記複数の発光部において最も離れている2つの発光部の一方から射出された光を反射して他方に入射させるときの傾斜角よりも小さいことを特徴とする光デバイスである。
【0016】
これによれば、高コスト化を招くことなく、小型で、光量変動の少ない安定した光を射出することができる。
【0017】
本発明は、第2の観点からすると、光によって被走査面を走査する光走査装置であって、本発明の光デバイスを有する光源と;前記光源からの光を偏向する偏向器と;前記偏光器で偏向された光を被走査面上に集光する走査光学系と;を備える光走査装置である。
【0018】
これによれば、光源が本発明の光デバイスを有しているため、高コスト化を招くことなく、高精度の光走査を行うことができる。
【0019】
本発明は、第3の観点からすると、少なくとも1つの像担持体と;前記少なくとも1つの像担持体に対して画像情報が含まれる光を走査する本発明の光走査装置と;を備える画像形成装置である。
【0020】
これによれば、本発明の光走査装置を備えているため、結果として、高品質の画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの概略構成を説明するための図である。
【図2】図1における光走査装置を示す概略図である。
【図3】図2における光源ユニットを説明するための図である。
【図4】光源ユニットに含まれている光デバイスを説明するための図(その1)である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】光源ユニットに含まれている光デバイスを説明するための図(その2)である。
【図7】パッケージ部材の平面図である。
【図8】図7のA−A断面図である。
【図9】レーザチップを説明するための図である。
【図10】レーザチップにおける複数の発光部の配列状態を説明するための図である。
【図11】各発光部の構成・構造を説明するための図である。
【図12】図11のA−A断面図である。
【図13】レーザチップの製造方法を説明するための図(その1)である。
【図14】レーザチップの製造方法を説明するための図(その2)である。
【図15】レーザチップの製造方法を説明するための図(その3)である。
【図16】レーザチップの製造方法を説明するための図(その4)である。
【図17】マスクMを説明するための図である。
【図18】レーザチップの製造方法を説明するための図(その5)である。
【図19】図18の平面図である。
【図20】レーザチップの製造方法を説明するための図(その6)である。
【図21】レーザチップの製造方法を説明するための図(その7)である。
【図22】共振波長と反射率との関係を説明するための図(その1)である。
【図23】共振器内の入射角を説明するための図である。
【図24】共振波長と反射率との関係を説明するための図(その2)である。
【図25】共振器への入射角と反射率との関係を説明するための図である。
【図26】ビーム広がり角を説明するための図である。
【図27】ガラス板の傾斜角と発光部から射出された光の軌跡との関係を説明するための図(その1)である。
【図28】ガラス板の傾斜角と発光部から射出された光の軌跡との関係を説明するための図(その2)である。
【図29】異常な出力波形を説明するための図である。
【図30】ドループ率を説明するための図である。
【図31】光デバイスAにおける各発光部のドループ率(計測値)を説明するための図である。
【図32】光デバイスBにおける各発光部のドループ率(計測値)を説明するための図である。
【図33】光デバイスの変形例を説明するための図である。
【図34】図33のA−A断面図である。
【図35】光通信などに用いることができる光デバイス510Cを説明するための図である。
【図36】光通信などに用いることができる光デバイス510Dを説明するための図である。
【図37】図37(A)及び図37(B)は、それぞれ光デバイス510Fを説明するための図である。
【図38】カラープリンタの概略構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図32を用いて説明する。図1には、一実施形態に係るレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
【0023】
このレーザプリンタ1000は、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングユニット1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、排紙トレイ1043、通信制御装置1050、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置1060などを備えている。なお、これらは、プリンタ筐体1044の中の所定位置に収容されている。
【0024】
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0025】
感光体ドラム1030は、円柱状の部材であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、図1における矢印方向に回転するようになっている。
【0026】
帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングユニット1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に沿って、帯電チャージャ1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングユニット1035の順に配置されている。
【0027】
帯電チャージャ1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。
【0028】
光走査装置1010は、帯電チャージャ1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、上位装置からの画像情報に基づいて変調された光束により走査し、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した潜像を形成する。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。
【0029】
トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ1032に供給される。
【0030】
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着した潜像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
【0031】
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、該給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。該レジストローラ対1039は、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、該記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
【0032】
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。
【0033】
定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次スタックされる。
【0034】
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
【0035】
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電チャージャ1031に対向する位置に戻る。
【0036】
次に、前記光走査装置1010の構成について説明する。
【0037】
この光走査装置1010は、一例として図2に示されるように、偏向器側走査レンズ11a、像面側走査レンズ11b、ポリゴンミラー13、光源ユニット14、シリンドリカルレンズ17、反射ミラー18、及び走査制御装置(図示省略)などを備えている。そして、これらは、光学ハウジング30の所定位置に組み付けられている。
【0038】
なお、本明細書では、光源ユニット14からの光の射出方向をZ軸方向、このZ軸方向に垂直な平面内で互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向として説明する。また、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
【0039】
光源ユニット14は、一例として図3に示されるように、レーザモジュール500と光学モジュール600を有している。
【0040】
レーザモジュール500は、光デバイス510、該光デバイス510を駆動制御するレーザ制御装置(図示省略)、前記光デバイス510及びレーザ制御装置が実装されているPCB(Printed Circuit Board)基板580を有している。
【0041】
光学モジュール600は、第1の部分610と第2の部分630から構成されている。第1の部分610は、ハーフミラー611、集光レンズ612、及び受光素子613を有している。また、第2の部分630は、カップリングレンズ631、及び開口板632を有している。
【0042】
第1の部分610は、光デバイス510の+Z側であって、光デバイス510から射出された光の光路上にハーフミラー611が位置するように配置されている。ハーフミラー611に入射した光の一部は−Y方向に反射され、集光レンズ612を介して受光素子613で受光される。受光素子613は、受光光量に応じた信号(光電変換信号)をレーザモジュール500のレーザ制御装置に出力する。
【0043】
第2の部分630は、第1の部分610の+Z側であって、ハーフミラー611を透過した光の光路上にカップリングレンズ631が位置するように配置されている。カップリングレンズ631は、ハーフミラー611を透過した光を略平行光とする。開口板632は、開口部を有し、カップリングレンズ631を介した光を整形する。開口板632の開口部を通過した光が、光源ユニット14から射出される光となる。
【0044】
図2に戻り、シリンドリカルレンズ17は、光源ユニット14から射出された光を反射ミラー18を介してポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に集光する。
【0045】
光デバイス510とポリゴンミラー13との間の光路上に配置される光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。本実施形態では、偏向器前光学系は、カップリングレンズ631と開口板632とシリンドリカルレンズ17と反射ミラー18とから構成されている。
【0046】
ポリゴンミラー13は、高さの低い正六角柱状部材からなり、側面に6面の偏向反射面が形成されている。そして、不図示の回転機構により、図2に示される矢印の方向に一定の角速度で回転されている。従って、光源ユニット14から射出され、シリンドリカルレンズ17によってポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に集光された光は、ポリゴンミラー13の回転により一定の角速度で偏向される。
【0047】
偏向器側走査レンズ11aは、ポリゴンミラー13で偏向された光の光路上に配置されている。
【0048】
像面側走査レンズ11bは、偏向器側走査レンズ11aを介した光の光路上に配置されている。そして、この像面側走査レンズ11bを介した光が、感光体ドラム1030の表面に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー13の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム1030上を走査する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」である。また、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
【0049】
ポリゴンミラー13と感光体ドラム1030との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施形態では、走査光学系は、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bとから構成されている。なお、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bの間の光路上、及び像面側走査レンズ11bと感光体ドラム1030の間の光路上の少なくとも一方に、少なくとも1つの折り返しミラーが配置されても良い。
【0050】
前記光デバイス510は、一例として図4〜図6に示されるように、レーザチップ100、該レーザチップ100を保持するパッケージ部材200、カバーガラス300、キャップ310、及びリング320などを有している。
【0051】
なお、図4は、光デバイス510の平面図であり、図5は、図4のA−A断面図である。また、図6は、光デバイス510から、カバーガラス300、キャップ310、及びリング320を除いたときの平面図である。また、図5及び図6では、煩雑さを避けるため、レーザチップ100とパッケージ部材200とを繋ぐボンディングワイヤの図示は省略している。
【0052】
パッケージ部材200は、CLCC(Ceramic leaded chip carrier)と呼ばれるフラットパッケージであり、その+Z側には、周囲が壁で囲まれている空間領域を有している。
【0053】
このパッケージ部材200は、図7及び図7のA−A断面図である図8に示されるように、セラミック201と複数の金属配線203の多層構造となっている。
【0054】
複数の金属配線203は、パッケージ側面の複数の金属キャスター207に個別につながっており、パッケージ部材の周辺から中央に向かって伸びている。
【0055】
空間領域の底面中央には、金属膜205が設けられている。この金属膜205は、ダイアタッチエリアとも呼ばれており、共通電極になっている。ここでは、4隅に位置する8本の金属配線が金属膜205に接続されている。
【0056】
レーザチップ100は、空間領域121の底面のほぼ中央であって、金属膜205上にAuSn等の半田材を用いてダイボンドされている。すなわち、レーザチップ100は、周囲が壁で囲まれている領域の底面上に保持されている。
【0057】
上記レーザチップ100は、一例として図9に示されるように、2次元的に配列されている32個の発光部、及び32個の発光部の周囲に設けられ、各発光部に対応した32個の電極パッドを有している。また、各電極パッドは、対応する発光部と配線部材によって電気的に接続されている。
【0058】
そして、各電極パッドは、対応する金属配線203とワイヤボンディングで接続されている。
【0059】
32個の発光部は、図10に示されるように、全ての発光部をX軸方向に延びる仮想線上に正射影したときに、発光部間隔が等しく(図10では「d1」)なるように配置されている。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいう。
【0060】
ここでは、各発光部は、発振波長が780nm帯の垂直共振器型の面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)である。すなわち、レーザチップ100は、いわゆる面発光レーザアレイチップである。
【0061】
各発光部は、図11及び図12に示されるように、基板101、バッファ層102、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109、p側電極113、n側電極114、及びモードフィルタ115などを有している。なお、図11は、1つの発光部の平面図であり、図12は、図11のA−A断面図である。
【0062】
基板101は、n−GaAs単結晶基板である。
【0063】
バッファ層102は、基板101の+Z側の面上に積層され、n−GaAsからなる層である。
【0064】
下部半導体DBR103は、バッファ層102の+Z側に積層され、n−AlAsからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを40.5ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学的厚さとなるように設定されている。なお、光学的厚さがλ/4のとき、その層の実際の厚さDは、D=λ/4n(但し、nはその層の媒質の屈折率)である。
【0065】
下部スペーサ層104は、下部半導体DBR103の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
【0066】
活性層105は、下部スペーサ層104の+Z側に積層され、GaInAsP/GaInPの3重量子井戸構造の活性層である。
【0067】
量子井戸層は780nm帯の発振波長を得るために、GaInP混晶にAsを導入したものであり0.7%の圧縮歪みを有する。
【0068】
バリア層は、0.6%の引張歪みを導入することによってバンドギャップを大きくし、高いキャリア閉じ込めを実現するとともに、量子井戸層の歪み補償構造を形成している。
【0069】
上部スペーサ層106は、活性層105の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
【0070】
下部スペーサ層104と活性層105と上部スペーサ層106とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、その厚さが1波長の光学的厚さとなるように設定されている。なお、活性層105は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
【0071】
上部半導体DBR107は、上部スペーサ層106の+Z側に積層され、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを25ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
【0072】
上部半導体DBR107における低屈折率層の1つには、p−AlAsからなる被選択酸化層108が厚さ33nmで挿入されている。
【0073】
この被選択酸化層108の挿入位置は、電界の定在波分布において、活性層105から3番目となる節に対応する位置である。
【0074】
コンタクト層109は、上部半導体DBR107の+Z側に積層され、p−GaAsからなる層である。
【0075】
なお、上記のように、基板101上に複数の半導体層が積層されたものを、以下では、便宜上「積層体」ともいう。
【0076】
モードフィルタ115は、コンタクト層109の+Z側であって、射出領域内でその中心部から外れた部分に設けられ、該部分の反射率を中心部の反射率よりも低くする透明な誘電体膜からなる。
【0077】
次に、レーザチップ100の製造方法について簡単に説明する。
【0078】
(1)上記積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)あるいは分子線エピタキシャル成長法(MBE法)による結晶成長によって作成する(図13参照)。
【0079】
ここでは、MOCVD法の場合には、III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料には、フォスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を用いている。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)、ジメチルジンク(DMZn)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
【0080】
(2)積層体の表面に一辺が25μmの正方形状のレジストパターンを形成する。
【0081】
(3)Cl2ガスを用いるECRエッチング法で、上記レジストパターンをフォトマスクとして四角柱状のメサ構造体(以下では、便宜上「メサ」と略述する)を形成する。ここでは、エッチングの底面は下部スペーサ層104中に位置するようにした。
【0082】
(4)フォトマスクを除去する(図14参照)。
【0083】
(5)積層体を水蒸気中で熱処理する。これにより、被選択酸化層108中のAl(アルミニウム)がメサの外周部から選択的に酸化され、メサの中央部に、Alの酸化層108aによって囲まれた酸化されていない領域108bが残留する(図15参照)。すなわち、発光部の駆動電流の経路をメサの中央部だけに制限する、いわゆる酸化狭窄構造体が形成される。上記酸化されていない領域108bが電流通過領域(電流注入領域)である。このようにして、例えば幅4μm程度の略正方形状の電流通過領域が形成される。
【0084】
(6)気相化学堆積法(CVD法)を用いて、SiNからなる保護層111を形成する(図16参照)。ここでは、保護層111の光学的厚さがλ/4となるようにした。具体的には、SiNの屈折率nが1.86、発振波長λが780nmであるため、実際の膜厚(=λ/4n)は約105nmに設定した。
【0085】
(7)レーザ光の射出面となるメサ上部にp側電極コンタクトの窓開けを行うためのエッチングマスク(マスクMという)を作成する。ここでは、一例として図17に示されるように、メサの周囲、メサの側面、メサ上面の周囲、及びメサ上面の中心部を挟んで所望の偏光方向P(ここでは、X軸方向)に平行な方向に関して対向している2つの小領域(第1の小領域と第2の小領域)がエッチングされないようにマスクMを作成する。
【0086】
(8)BHFにて保護層111をエッチングし、p側電極コンタクトの窓開けを行う。
【0087】
(9)マスクMを除去する(図18及び図19参照)。そして、第1の小領域に残存している保護層111がモードフィルタ115Aとなり、第2の小領域に残存している保護層111がモードフィルタ115Bとなる。すなわち、モードフィルタ115は、モードフィルタ115Aとモードフィルタ115Bから構成されている。そして、モードフィルタ115Aとモードフィルタ115Bによって挟まれる領域は、形状異方性を有している。
【0088】
(10)メサ上部の光射出部となる領域(射出領域)に一辺10μmの正方形状のレジストパターンを形成し、p側の電極材料の蒸着を行なう。p側の電極材料としてはCr/AuZn/Auからなる多層膜、もしくはTi/Pt/Auからなる多層膜が用いられる。
【0089】
(11)光射出部となる領域に蒸着された電極材料をリフトオフし、p側電極113を形成する(図20参照)。このp側電極113で囲まれた領域が射出領域である。本実施形態では、射出領域内の2つの小領域(第1の小領域、第2の小領域)に、光学的厚さがλ/4のSiNからなる透明な誘電体膜としてモードフィルタ115Aとモードフィルタ115Bが存在している。これにより、2つの小領域(第1の小領域、第2の小領域)の反射率は、射出領域の中心部の反射率よりも低くなる。
【0090】
(12)基板101の裏側を所定の厚さ(例えば100μm程度)まで研磨した後、n側電極114を形成する(図21参照)。ここでは、n側電極114はAuGe/Ni/Auからなる多層膜である。
【0091】
(13)アニールによって、p側電極113とn側電極114のオーミック導通をとる。これにより、メサは発光部となる。
【0092】
(14)チップ毎に切断する。
【0093】
そして、種々の後工程を経て、レーザチップ100となる。
【0094】
カバーガラス300は、その両面に反射防止膜がコーティングされており、透過率が99%以上である。
【0095】
キャップ310は、コバール製のキャップである。このキャップ310には、レーザチップ100の射出面に対して傾斜して、カバーガラス300が低融点ガラスで取り付けられている。
【0096】
パッケージ部材200の+Z側の面には、シーム用のコバール製のリング320が銀ロウで固定されている。
【0097】
そして、カバーガラス300が取り付けられたキャップ310は、リング320を介してパッケージ部材200にシーム溶接で固着されている。このシーム溶接は、500gの加重を加えながら90A(アンペア)の電流を流して行われる。
【0098】
ところで、ファブリ・ペロ共振器の透過率Tは、次の(1)式で表せることが知られている。
【0099】
【数1】
【0100】
ここで、I0は入射光量、RDBRは共振器の反射率、nは共振器の屈折率、dは共振器の長さ、θは光の共振器内への入射角、λは波長である。
【0101】
図22には、面発光レーザにおける共振器反射スペクトルの計算結果の一例が示されている。
【0102】
本実施形態では、共振波長λは780nm、共振器の屈折率nは3.3156、共振器の反射率RDBRは99.8%、共振器の長さdは235.25nmである。図22に示されるように、共振波長λ=780nmで、急峻に反射率が0(%)に低下している。
【0103】
上記(1)式から、共振器内の入射角(図23参照)が0°から大きくなると、透過率Tが低下、つまり反射率R(=1−T)が高くなることがわかる。従って、戻り光の影響を無くすためには、戻り光の原因であるカバーガラスを傾斜させ、戻り光の反射角を大きくし、共振器に入射する光の入射角ψを十分大きくとれば、その結果、出力変動をなくすことができる。
【0104】
戻り光の共振器への入射角Ψと共振器内への入射角θとの関係は、次の(2)式で表わせる。ここで、nは、共振器の屈折率である。
【0105】
【数2】
【0106】
図24には、戻り光の共振器への入射角Ψを、0°、10°、15°に変えた場合の、共振器内での戻り光に対する反射率(以下、便宜上、「共振器反射率」と略述する)が示されている。
【0107】
図25は、図24に基づいて、横軸を共振器への入射角Ψ、縦軸を780nmでの反射率及び反射率が最小になる共振波長としたものである。これによると、入射角Ψが大きくなると共振器反射率Rは大きくなり、Ψが10°ではR=94.9%、Ψが20°ではR=99.6%まで高くすることができる。このときは、戻り光をほとんど反射させるため、出力変動をなくすことができる。
【0108】
発明者らの実験の結果、共振器反射率Rを99%以上にすれば、戻り光による不都合が解消することが分かっている。
【0109】
なお、以下では、このように、戻り光による不都合がなくなるときの、共振器への入射角Ψを「臨界入射角Ψ0」という。
【0110】
臨界入射角Ψ0は、図25を用いて容易に設定することができる。例えば、R=99%になる角度を臨界入射角Ψ0とすると、図25からΨ0は15°が求まる。その角度で入射した戻り光の共振波長は、図25から777.6nmであり、角度0°のときの共振波長(780nm)との差Δλは2.4nmとなる。
【0111】
また、戻り光の入射角を変えることで共振波長が短波長側にシフトするため、面発光レーザアレイの複数の発光部間に波長のばらつきがある場合には、シフトした共振波長の光が入射し、別の出力変動(雑音)として影響を与えることが予測される。
【0112】
従って、Δλとしては、波長のばらつき及び温度変化も考慮しなければならない。例えば、発光部の数が32個(32chアレイ)の場合、波長のばらつきが、0.5nm程度あることが実験で分かっている。また温度に関しては、面発光レーザは熱抵抗が極めて高いため、動作前後では30℃程度の温度差が生じる場合がある。これは、波長の温度係数0.05(nm/K)を用いると、1.5nm程度の波長変化を引き起こすものと推測される。以上のことを勘案すれば、Δλとしては、最低でも温度変化に起因する1.5nm以上、複数の発光部間に波長のばらつきをも考慮すると、2.0nm以上とすれば良い。
【0113】
なお、共振器反射率Rは、一般的な面発光レーザでは、99%以上で設計することが望ましい。
【0114】
上記(1)式から、共振波長λと入射角θとの関係は、次の(3)式で求まる。
【0115】
【数3】
【0116】
次に、上記(2)式を用いて、θをΨで置き換えると、次の(4)式及び(5)式が得られる。
【0117】
【数4】
【0118】
【数5】
【0119】
例えば、共振波長λ=780nm、屈折率n=3.3156、共振器反射率R=99.8%、共振器長d=235.25(nm)の場合、Δλを2.4nmとすれば、上記(5)式から、臨界入射角Ψ0は15°となり、図25から得られた結果と一致する。
【0120】
実際の半導体レーザでは、その戻り光の入射角Ψは、光の広がり角度を考慮して設定する必要がある。図26は、面発光レーザのファーフィールドパターン(FFP)の例が示されている。このFFPは、ガウス分布形状を呈しており、FWHM=8°で、標準偏差(半幅)σ=3.4°である。発明者らは、戻り光の影響を無くすためには、半導体レーザから射出される光として、少なくとも2σ、好ましくは3σ以上をビーム広がり角θLDとすれば良いことを実験で確認した。
【0121】
図27には、ビーム広がり角θLDを考慮した場合に、発光部の直上にガラス板を配置し、該ガラス板を発光部の射出面の法線に対して傾斜(傾斜角φ)させたときの、戻り光の軌跡が示されている。
【0122】
図27に示されるように、発光部0から射出された広がり角±θLDの光は、X軸上の点x1とx2に戻り光として入射する。このとき、戻り光の入射角Ψは2φ±θLDとなる。
【0123】
従って、戻り光の影響を無くすためには、入射角Ψを臨界入射角Ψ0以上にする必要があり、ガラス板の傾斜角度φは、上記(5)式から次の(6)式で示される。
【0124】
【数6】
【0125】
上記(6)式で求めた角度で配置すれば、戻り光の入射角Ψは常に臨界入射角Ψ0より大きくすることができる。例えば、臨界入射角Ψ0=15°、ビーム広がり角θLD=15°であれば、ガラス板の傾斜角φは、15°以上に設定すれば良い。
【0126】
また、同じ半導体レーザで、図26のFFPにおいて、広がり角を2σ(=6.8°)とした場合には、φ=10.9°となり、ガラス板の傾斜角をさらに小さくすることができる。
【0127】
以上説明したように、ここでは、(1)屈折率n、反射率R、長さdの共振器の共振波長において、該共振器へ入射角Ψで入射した戻り光の影響がなくなる共振周波数のシフト量Δλを設定することで、戻り光の影響がなくなる臨界入射角Ψ0を求め、(2)ビーム広がり角θLDを考慮して、ガラス板(カバーガラス)の傾斜角φを一義的に設定する、ことを可能にした。
【0128】
従来例として、特許文献7(特開2007−103576号公報)に開示されている面発光レーザモジュールを考える。この面発光レーザモジュールのパッケージ構造では、金属製ステム(φ5.6mm)中央のヒートシンク部に導電性ペーストで面発光レーザがマウントされている。この面発光レーザは、21チャネルアレイ(7×3)であり、発光部間隔は38μmと仮定する。このアレイでは、各発光部は等間隔に方形に配置され、その大きさは228μm×76μmとする。
【0129】
このような従来の設計では、3σを考慮した広がり角θLDを15°と仮定すれば、図28に示されるように、最も端に位置する発光部0から射出した広がり角θLDの光が、角度φのガラス板に当たる高さHが0.5mmの場合、ガラス板で反射した戻り光が他方のアレイ端x(x=228μm)の発光部に入射しないための角度φは次の(7)式から求まる。
【0130】
【数7】
【0131】
ここで、xはアレイの長さ、Hは広がり角θLDの光がガラス板に当たる高さである。
【0132】
前記数値を上記(7)式に代入すると、ガラス板の角度φ=25.5°と求まり、本実施形態よりも10°以上も大きくする必要がある。発光部数の増加あるいは発光部間隔の拡大があれば、さらに角度φを大きくしなければならず、その実施はより一層困難になることが予想される。上記(7)式に示されるように、従来は、アレイに適用した場合、戻り光が入射しないようにするためには、ガラス板の高さHを高くするか、発光部数を減らすしかなく、設計の自由度が狭かった。
【0133】
本実施形態では、ガラス板の傾斜角が、一方の端部にある発光部から射出された広がり角θLDの光が、ガラス板で反射して他方の端部にある発光部に入射する際のガラス板の傾斜角よりも小さい角度であっても、戻り光の影響を抑制することができる。そのため、発光部数や発光部間隔に制限を受けない設計自由度の高い光デバイスを提供することができる。
【0134】
本実施形態では、上部半導体DBR107の反射率Rfは=99.67%、下部半導体DBR103の反射率Rrは99.98%であり、共振器反射率RDBRは、√(Rf×Rr)=99.82%となる。
【0135】
この場合に、半導体DBR層を増やして反射率を高くするほど臨界入射角Ψ0が小さく、発振電流の閾値も小さくなる利点があるが、スロープ効率が低下する。逆に、半導体DBR層を減らしてスロープ効率を上げても、発振電流の閾値が増加し、臨界入射角Ψ0が大きくなる。実用的には、半導体DBR層の層数や材料により、共振器反射率Rの下限を99.6%で設計する。
【0136】
本実施形態では、共振波長λ=780nm、共振器の屈折率n=3.3156、共振器反射率R=0.998、共振器長d=235.25(nm)であることから、上記説明した原理に基づいて、Δλを2.4nmに設定し、臨界入射角Ψ0として15°を得た。そこで、レーザチップ100の射出面の法線方向に対するカバーガラス300の傾斜角φは、加工誤差を考慮し、17°とした。
【0137】
ところで、レーザモジュール及び光源ユニットは、図3の構成・構造を模した光学系を利用して評価される。評価項目は、射出される光の光量の時間変化(出力波形)であり、フォトダイオード(PD)を用いて検出する。仮に、戻り光の影響があると、光量が不安定になり、その変動(光量変動)が観察される。
【0138】
よく現れる光量変動(異常波形)が、模式的に図29に示されている。図29に示されるように、異常波形は、出力波形の前半部分に現れることが多いが、これに限らず、後半部分に現れる場合もある。また、周波数も1kHzの場合や、もっと大きい、例えば、数100kHzの出力波形においても、異常変動が現れる。
【0139】
出力波形は、画像形成装置に必要な1ラインを安定して描くのに必要な特性の1つである。画像形成装置によっては、数%レベルでの光量変動も問題となる。
【0140】
環境温度25°、目標出力1.4mWとし、各発光部に、パルス周期が1ms、パルス幅が500μsの方形波電流パルスをそれぞれ供給したとき、供給後1μs(Ta)での光出力Pa、供給後480μs(Tb)での光出力Pbを用いて、次の(8)式で得られるDrをドループ率(単位:%)として定義する(図30参照)。このドループ率は、上記光量変動を定量化したものと考えることができる。
【0141】
Dr=(Pa−Pb)/Pa×100 ……(8)
【0142】
発明者らは、複数種類の面発光レーザアレイを作成し、種々の実験を繰り返し行ったところ、ドループ率の最大値Dr(max)とドループ率の最小値Dr(min)との差(以下、便宜上、「ドループばらつき」という)が3%以上になる面発光レーザアレイを用いると、出力画像における視認性が顕著に悪化するという新しい知見を得た。
【0143】
一例として、40個の発光部(ch1〜ch40)を有する面発光レーザアレイを含む光デバイスについて、本実施形態と同様な光デバイス(光デバイスAという)、及び従来の面発光レーザモジュールと同様な光デバイス(光デバイスBという)を作成した。そして、各光デバイスにおいて、40個の発光部すべてのドループ率を計測した。光デバイスAの計測結果が図31に示され、光デバイスBの計測結果が図32に示されている。
【0144】
図31によると、Dr(max)=2%、Dr(min)=0.5%であり、その差は1.5%であった。一方、図32によると、Dr(max)=4%、Dr(min)=−1%であり、その差は5%であった。
【0145】
このように、本実施形態と同様な光デバイスは、戻り光への耐性が強くなり、異常波形が抑制され、その結果、光量変動を抑えることが可能となる。
【0146】
以上説明したように、本実施形態に係る光デバイス510によると、レーザチップ100、該レーザチップ100を保持するパッケージ部材200、及びカバーガラス300などを有している。
【0147】
レーザチップ100は、複数の発光部を有する面発光レーザアレイチップであり、カバーガラス300は、レーザチップ100から射出された光束の光路上に配置されている。
【0148】
そして、カバーガラス300は、レーザチップ100から射出された光束が入射する入射面が、レーザチップ100の射出面に対して傾斜しており、その傾斜角は、複数の発光部において最も離れている2つの発光部の一方から射出された光を反射して他方に入射させるときの傾斜角よりも小さい。
【0149】
この場合は、高コスト化を招くことなく、小型で、光量変動の少ない安定した光を射出することができる。
【0150】
また、各発光部では、射出領域内に設けられ、周辺部の反射率を中心部の反射率よりも低くする透明な誘電体膜からなるモードフィルタ115を有しているため、横モード抑制効果を得ることができる。そして、モードフィルタ115は、中央部を挟んで配置された2つのモードフィルタ115Aとモードフィルタ115Bとから構成され、各モードフィルタで挟まれた相対的に反射率が高い領域が形状異方性を有しているため、偏光方向を揃えることができる。
【0151】
そして、本実施形態に係る光走査装置1010によると、光源ユニット14が光デバイス510を有しているため、高コスト化を招くことなく、高精度の光走査を行うことができる。
【0152】
また、本実施形態に係るレーザプリンタ1000によると、光走査装置1010を備えているため、結果として、高品質の画像を形成することができる。
【0153】
ところで、レーザチップ100では、各発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光部間隔が等間隔d1であるので、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム1030上では副走査方向に等間隔で発光部が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。
【0154】
そして、例えば、上記間隔d1を2.65μm、光走査装置1010の光学系の倍率を2倍とすれば、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書込みができる。もちろん、主走査対応方向の発光部数を増加したり、副走査対応方向のピッチd2を狭くして間隔d1を更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、発光部の点灯のタイミングで容易に制御できる。
【0155】
また、この場合には、レーザプリンタ1000では書きこみドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷することができる。また、同じ書きこみドット密度の場合には印刷速度を更に速くすることができる。
【0156】
また、この場合には、各発光部からの光束の偏光方向が安定して揃っているため、レーザプリンタ1000では、高品質の画像を安定して形成することができる。
【0157】
なお、上記実施形態では、レーザチップ100が32個の発光部を有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0158】
また、上記実施形態では、保護層111がSiNの場合について説明したが、これに限らず、例えば、SiNx、SiOx、TiOx及びSiONのいずれかであっても良い。それぞれの材料の屈折率に合わせて膜厚を設計することで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0159】
また、上記実施形態では、第1の小領域と第2の小領域が、射出領域の中心を通りY軸に平行な軸に対して対称になるように設けられている場合について説明したが、これに限定されるものではない。射出領域の中心を通りY軸に平行な軸の一側に第1の小領域があり、他側に第2の小領域があれば良い。
【0160】
また、上記実施形態では、モードフィルタ115A及びモードフィルタ115Bが保護層111と同じ材質である場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0161】
また、上記実施形態では、各小領域の形状が長方形である場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、半円状など任意の形状であっても良い。
【0162】
また、上記実施形態では、モードフィルタ115が、2つの誘電体膜から構成される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、射出領域の中心部を取り囲む1つの円環状の誘電体膜で構成されていても良い。
【0163】
また、上記実施形態では、モードフィルタ115A及びモードフィルタ115Bの光学的厚さがλ/4の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、モードフィルタ115A及びモードフィルタ115Bの光学的厚さが3λ/4であっても良い。要するに、モードフィルタ115A及びモードフィルタ115Bの光学的厚さがλ/4の奇数倍であれば、上記実施形態のレーザチップ100と同様な横モード抑制効果を得ることができる。
【0164】
また、射出領域の中心部が、光学的厚さがλ/4の偶数倍の誘電体膜で被覆されても良い。この場合は、該中心部は反射率を低下させることがなく、誘電体膜がない場合と同等の光学特性が得られた。
【0165】
また、射出領域内のモードフィルタ以外の部分を、光学的厚さがλ/4の偶数倍である誘電体膜で被覆し、射出領域全部を誘電体膜で被覆しても良い。これにより、射出領域の酸化や汚染を抑制することができる。
【0166】
すなわち、反射率を低下させたい部分の光学的厚さがλ/4の奇数倍、それ以外の部分の光学的厚さがλ/4の偶数倍であれば、同様の横モード抑制効果が得られる。
【0167】
また、図33及び図34には、変形例の光デバイス510Aが示されている。この光デバイス510Aでは、金属製のステムにレーザチップ100がマウントされている。そして、上記光デバイス510と同様な傾斜角でカバーガラス300が取り付けられているキャップが、ステムに溶接されている。光デバイス510Aにおいても、光デバイス510と同様な効果を得ることができる。なお、図34は、図33のA−A断面図である。
【0168】
図35及び図36には、上記実施形態の光デバイス510の考え方を光通信(光伝送)などに用いられる光デバイスに適用した例が示されている。これらの場合も、高コスト化を招くことなく、小型で、光量変動の少ない安定した光を射出することができる。
【0169】
図35の光デバイス510Cは、基板上に、樹脂性のOEフェルールが配置され、該フェルールの一方の端部に、面発光レーザ素子がフリップチップでマウントされている。そして、この面発光レーザ素子の前方に、端面にテーパが付与されている光ファイバが固定されている。
【0170】
光ファイバのテーパ角度φとしては、対向している面発光レーザ素子の共振波長λ=780nm、共振器の屈折率n=3.3156、共振器反射率R=0.998、共振器長d=235.25(nm)から、上記原理に基づいて、Δλを2.4nmと設定し、臨界入射角Ψ0として15°を得た。そこで、面発光レーザ素子に対向する端面のテーパ角度φが16°となるように、光ファイバの端面を加工している。
【0171】
これにより、面発光レーザ素子と光ファイバとの結合における、光ファイバ端からの戻り光の影響を低減することができ、良好な光伝送特性を得ることができた。
【0172】
図36の光デバイス510Dは、基板上に、樹脂性のOEフェルールが配置されている。ここでは、フェルールの一方の端部に、光ファイバの端面に対して角度φでテーパが形成されており、該テーパ面に面発光レーザ素子がフリップチップでマウントされている。そして、面発光レーザ素子の前方に光ファイバが固定されている。
【0173】
面発光レーザ素子がマウントされる部分のテーパ角度φとしては、面発光レーザ素子の共振波長λ=780nm、共振器の屈折率n=3.3156、共振器反射率R=0.998、共振器長d=235.25(nm)から、上記原理に基づいて、Δλを2.4nmと設定し、臨界入射角Ψ0として15°を得た。そこで、面発光レーザ素子がマウントされる部分のテーパ角度φが16°となるように、フェルールを加工している。
【0174】
これにより、面発光レーザ素子と光ファイバとの結合における、光ファイバ端からの戻り光の影響を低減することができ、良好な光伝送特性を得ることができた。
【0175】
また、一例として図37(A)及び図37(B)には、上記光デバイス510Aよりも低コストで製造することができる光デバイス510Fが示されている。なお、図37(B)は、図37(A)のA−A断面図である。
【0176】
この光デバイス510Fでは、リードフレーム上にマウントされた面発光レーザアレイは、透明な樹脂でモールドされている。すなわち、面発光レーザアレイは、透明な樹脂成型部材に包含されている。そして、該樹脂成形部材は、光入射面が、面発光レーザアレイの射出面に対して前記光デバイス500と同様に所定の角度だけ傾斜するように成形されている。この場合は、高価なカバーガラス付きの金属製キャップが不要となる。そして、製造時の溶接工程が不要となる。
【0177】
光デバイス510Fの製造方法について簡単に説明する。
【0178】
(a)面発光レーザアレイ100を、リードフレームの中央部に導電性接着剤を用いてマウントする。
【0179】
(b)各発光部と対応するリードとをボンディングワイヤで接続する。
【0180】
(c)キャスティング法あるいはトランスファーモールド法により、粉末あるいは液状のエポキシ樹脂を光入射面が所定の角度になるように設計された金型に加圧注入し、同時に熱硬化させる。
【0181】
このように、光デバイス510Fは、低コストで製造することができるという利点がある。
【0182】
なお、上記実施形態では、光走査装置1010がプリンタに用いられる場合について説明したが、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機にも用いることができる。
【0183】
また、上記実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0184】
また、画像形成装置が、像担持体に直接画像を形成する画像形成装置であっても良い。
【0185】
例えば、CTP(Computer to Plate)として知られている印刷版の作成にも好適に利用できる。つまり、光デバイス510と同様な光デバイスを有する光走査装置によって、像担持体である印刷版材料にレーザアブレーションによって直接画像形成を行い、印刷版を形成する画像形成装置であっても良い。
【0186】
また、レーザ光によって発色に可逆性を与えることができる媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
【0187】
例えば、媒体が、いわゆるリライタブルペーパーであっても良い。これは、例えば紙や樹脂フィルム等の支持体上に、以下に説明するような材料が記録層として塗布されている。そして、レーザ光による熱エネルギー制御によって発色に可逆性を与え、表示/消去を可逆的に行うものである。
【0188】
透明白濁型リライタブルマーキング法とロイコ染料を用いた発消色型リライタブルマーキング法があり、いずれも適用できる。
【0189】
透明白濁型は、高分子薄膜の中に脂肪酸の微粒子を分散したもので、110℃以上に加熱すると脂肪酸の溶融により樹脂が膨張する。その後、冷却すると脂肪酸は過冷却状態になり液体のまま存在し、膨張した樹脂が固化する。その後、脂肪酸が固化収縮して多結晶の微粒子となり樹脂と微粒子間に空隙が生まれる。この空隙により光が散乱されて白色に見える。次に、80℃から110℃の消去温度範囲に加熱すると、脂肪酸は一部溶融し、樹脂は熱膨張して空隙を埋める。この状態で冷却すると透明状態となり画像の消去が行われる。
【0190】
ロイコ染料を用いたリライタブルマーキング法は、無色のロイコ型染料と長鎖アルキル基を有する顕消色剤との可逆的な発色及び消色反応を利用している。レーザ光により加熱されるとロイコ染料と顕消色剤が反応して発色し、そのまま急冷すると発色状態が保持される。そして、加熱後、ゆっくり冷却すると顕消色剤の長鎖アルキル基の自己凝集作用により相分離が起こり、ロイコ染料と顕消色剤が物理的に分離されて消色する。
【0191】
また、媒体が、紫外光を当てるとC(シアン)に発色し、可視光のR(レッド)の光で消色するフォトクロミック化合物、紫外光を当てるとM(マゼンタ)に発色し、可視光のG(グリーン)の光で消色するフォトクロミック化合物、紫外光を当てるとY(イエロー)に発色し、可視光のB(ブルー)の光で消色するフォトクロミック化合物が、紙や樹脂フィルム等の支持体上に設けられた、いわゆるカラーリライタブルペーパーであっても良い。
【0192】
これは、一旦紫外光を当てて真っ黒にし、R・G・Bの光を当てる時間や強さで、Y・M・Cに発色する3種類の材料の発色濃度を制御してフルカラーを表現し、仮に、R・G・Bの強力な光を当て続ければ3種類とも消色して真っ白にすることもできる。
【0193】
このような、光エネルギー制御によって発色に可逆性を与えるものも上記実施形態と同様な光走査装置を備える画像形成装置として実現できる。
【0194】
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
【0195】
また、一例として図37に示されるように、複数の感光体ドラムを備えるカラープリンタ2000であっても良い。
【0196】
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、ブラック用の「感光体ドラムK1、帯電装置K2、現像装置K4、クリーニングユニットK5、及び転写装置K6」と、シアン用の「感光体ドラムC1、帯電装置C2、現像装置C4、クリーニングユニットC5、及び転写装置C6」と、マゼンタ用の「感光体ドラムM1、帯電装置M2、現像装置M4、クリーニングユニットM5、及び転写装置M6」と、イエロー用の「感光体ドラムY1、帯電装置Y2、現像装置Y4、クリーニングユニットY5、及び転写装置Y6」と、光走査装置2010と、転写ベルト2080と、定着ユニット2030などを備えている。
【0197】
各感光体ドラムは、図37中の矢印の方向に回転し、各感光体ドラムの周囲には、回転方向に沿って、それぞれ帯電装置、現像装置、転写装置、クリーニングユニットが配置されている。各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。帯電装置によって帯電された各感光体ドラム表面に光走査装置2010により光が照射され、各感光体ドラムに潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像装置により各感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写装置により、転写ベルト2080上の記録紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着ユニット2030により記録紙に画像が定着される。
【0198】
光走査装置2010は、前記光デバイス510と同様な光デバイスを、色毎に有している。そこで、上記光走査装置1010と同様の効果を得ることができる。また、カラープリンタ2000は、この光走査装置2010を備えているため、上記レーザプリンタ1000と同様の効果を得ることができる。
【0199】
ところで、カラープリンタ2000では、各部品の製造誤差や位置誤差等によって色ずれが発生する場合がある。このような場合であっても、点灯させる発光部を選択することで色ずれを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0200】
以上説明したように、本発明の光デバイスによれば、高コスト化を招くことなく、小型で、光量変動の少ない安定した光を射出するのに適している。また、本発明の光走査装置によれば、高コスト化を招くことなく、高精度の光走査を行うのに適している。また、本発明の画像形成装置によれば、高品質の画像を形成するのに適している。
【符号の説明】
【0201】
11a…偏向器側走査レンズ(走査光学系の一部)、11b…像面側走査レンズ(走査光学系の一部)、13…ポリゴンミラー(偏向器)、14…光源ユニット、100…レーザチップ(面発光レーザアレイ)、115A…モードフィルタ(誘電体膜の一部)、115B…モードフィルタ(誘電体膜の一部)、200…パッケージ部材、300…カバーガラス(透明部材)、510…光デバイス、510A…光デバイス、510C…光デバイス、510D…光デバイス、1000…レーザプリンタ、1010…光走査装置、1030…感光体ドラム(像担持体)、2000…カラープリンタ(画像形成装置)、2010…光走査装置、K1,C1,M1,Y1…感光体ドラム(像担持体)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0202】
【特許文献1】特開2001−156395号公報
【特許文献2】特許第3955925号公報
【特許文献3】特開2007−201398号公報
【特許文献4】特開2004−289033号公報
【特許文献5】特開2005−252032号公報
【特許文献6】特開2005−086027号公報
【特許文献7】特開2007−103576号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光部を有する面発光レーザアレイと、前記面発光レーザアレイを保持するパッケージ部材と、該パッケージ部材に保持され、前記面発光レーザアレイから射出された光束の光路上に配置された透明部材とを備える光デバイスにおいて、
前記透明部材は、前記面発光レーザアレイから射出された光束が入射する入射面が、前記面発光レーザアレイの射出面に対して傾斜しており、
前記入射面の前記射出面に対する傾斜角は、前記複数の発光部において最も離れている2つの発光部の一方から射出された光を反射して他方に入射させるときの傾斜角よりも小さいことを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記面発光レーザアレイの各発光部は、活性層を含む共振器構造体を有し、
射出される光のファーフィールドパターンにおける2σ以上に対応するビーム広がり角θLD、及び前記透明部材で反射された光が前記共振器構造体に入射する際の入射角であって、前記共振器構造体の屈折率とその長さから求められる共振波長の光に対する、前記共振器構造体での反射率が99%以上になる臨界入射角Ψ0、を用いて、
前記入射面の前記射出面に対する傾斜角は、(θLD+Ψ0)/2、以上であることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記ビーム広がり角θLDは、前記ファーフィールドパターンにおける3σ以上に対応するビーム広がり角であることを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記臨界入射角Ψ0で入射した光に対する共振波長は、共振器構造体の屈折率とその長さから求められる共振波長よりも短く、その差は2nm以上であることを特徴とする請求項2又は3に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記面発光レーザアレイの各発光部は、射出領域内に反射率を低くする透明な誘電体膜を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記射出領域内における、相対的に反射率が高い領域は、射出方向からみたときに、形状異方性を有することを特徴とする請求項5に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記透明部材は、透明な樹脂が成形された樹脂成型部材であり、該樹脂成型部材には、前記面発光レーザアレイが包含されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記透明部材は、光ファイバであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項9】
前記光ファイバの端面は、前記光ファイバの長さ方向に対して直交し、
前記面発光レーザ素子の射出面の法線方向は、前記光ファイバの長さ方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項8に記載の光デバイス。
【請求項10】
前記光ファイバの端面は、前記光ファイバの長さ方向に対して傾斜し、
前記面発光レーザ素子の射出面の法線方向は、前記光ファイバの長さ方向に平行であることを特徴とする請求項8に記載の光デバイス。
【請求項11】
光によって被走査面を走査する光走査装置であって、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の光デバイスを有する光源と;
前記光源からの光を偏向する偏向器と;
前記偏光器で偏向された光を被走査面上に集光する走査光学系と;を備える光走査装置。
【請求項12】
少なくとも1つの像担持体と;
前記少なくとも1つの像担持体に対して画像情報が含まれる光を走査する請求項11に記載の光走査装置と;を備える画像形成装置。
【請求項13】
前記画像情報は、多色のカラー画像情報であることを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項1】
複数の発光部を有する面発光レーザアレイと、前記面発光レーザアレイを保持するパッケージ部材と、該パッケージ部材に保持され、前記面発光レーザアレイから射出された光束の光路上に配置された透明部材とを備える光デバイスにおいて、
前記透明部材は、前記面発光レーザアレイから射出された光束が入射する入射面が、前記面発光レーザアレイの射出面に対して傾斜しており、
前記入射面の前記射出面に対する傾斜角は、前記複数の発光部において最も離れている2つの発光部の一方から射出された光を反射して他方に入射させるときの傾斜角よりも小さいことを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記面発光レーザアレイの各発光部は、活性層を含む共振器構造体を有し、
射出される光のファーフィールドパターンにおける2σ以上に対応するビーム広がり角θLD、及び前記透明部材で反射された光が前記共振器構造体に入射する際の入射角であって、前記共振器構造体の屈折率とその長さから求められる共振波長の光に対する、前記共振器構造体での反射率が99%以上になる臨界入射角Ψ0、を用いて、
前記入射面の前記射出面に対する傾斜角は、(θLD+Ψ0)/2、以上であることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記ビーム広がり角θLDは、前記ファーフィールドパターンにおける3σ以上に対応するビーム広がり角であることを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記臨界入射角Ψ0で入射した光に対する共振波長は、共振器構造体の屈折率とその長さから求められる共振波長よりも短く、その差は2nm以上であることを特徴とする請求項2又は3に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記面発光レーザアレイの各発光部は、射出領域内に反射率を低くする透明な誘電体膜を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記射出領域内における、相対的に反射率が高い領域は、射出方向からみたときに、形状異方性を有することを特徴とする請求項5に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記透明部材は、透明な樹脂が成形された樹脂成型部材であり、該樹脂成型部材には、前記面発光レーザアレイが包含されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記透明部材は、光ファイバであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項9】
前記光ファイバの端面は、前記光ファイバの長さ方向に対して直交し、
前記面発光レーザ素子の射出面の法線方向は、前記光ファイバの長さ方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項8に記載の光デバイス。
【請求項10】
前記光ファイバの端面は、前記光ファイバの長さ方向に対して傾斜し、
前記面発光レーザ素子の射出面の法線方向は、前記光ファイバの長さ方向に平行であることを特徴とする請求項8に記載の光デバイス。
【請求項11】
光によって被走査面を走査する光走査装置であって、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の光デバイスを有する光源と;
前記光源からの光を偏向する偏向器と;
前記偏光器で偏向された光を被走査面上に集光する走査光学系と;を備える光走査装置。
【請求項12】
少なくとも1つの像担持体と;
前記少なくとも1つの像担持体に対して画像情報が含まれる光を走査する請求項11に記載の光走査装置と;を備える画像形成装置。
【請求項13】
前記画像情報は、多色のカラー画像情報であることを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図3】
【公開番号】特開2011−151357(P2011−151357A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240266(P2010−240266)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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