内燃機関の制御装置
【課題】弁停止機構を利用して機関の低温始動性を向上させることのできる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】排気バルブ10のリフト動作を停止させることにより排気バルブ10を閉弁状態にする排気側弁停止機構25をエンジン1に設ける。そして、機関始動に際しては、排気バルブ10のリフト動作を停止させた状態でクランキングを行うポンピング制御を所定期間実行した後に燃料噴射及び点火を開始する。
【解決手段】排気バルブ10のリフト動作を停止させることにより排気バルブ10を閉弁状態にする排気側弁停止機構25をエンジン1に設ける。そして、機関始動に際しては、排気バルブ10のリフト動作を停止させた状態でクランキングを行うポンピング制御を所定期間実行した後に燃料噴射及び点火を開始する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一部の気筒の機関バルブ(吸気バルブや排気バルブ)のリフト動作を停止させることにより、同機関バルブを閉弁状態にする弁停止機構を備えた多気筒内燃機関が知られている(例えば特許文献1等)。
【0003】
機関運転中に一部の気筒の稼働を停止させる、いわゆる減筒運転を行うことにより、燃費等の改善を図るようにした多気筒内燃機関が種々提案されている(例えば特許文献1等)。
【0004】
こうした内燃機関では、一部の気筒の機関バルブ(吸気バルブや排気バルブ)のリフト動作を停止させて同機関バルブを閉弁状態にする弁停止機構を備えるようにしている。そして、減筒運転の実行に際しては、弁停止機構が設けられた気筒の機関バルブのリフト動作、燃料噴射、及び点火をそれぞれ停止させることにより、一部の気筒の稼働を停止させるようにしている。
【特許文献1】特開平5−163971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内燃機関を低温環境下で始動させるときには、機関燃料が気化しにくく燃料霧化が促進されにくいことから、機関の始動性が悪化する傾向にある。
ここで、上記弁停止機構によるリフト動作の停止は、機関運転中に行われることが一般的であるが、そうした弁停止機構を機関始動時にも適切に利用することで、上述したような低温始動性を改善することができることを本発明者は見出した。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、弁停止機構を利用して機関の低温始動性を向上させることのできる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、排気バルブのリフト動作を停止させて同排気バルブを閉弁状態にする弁停止機構を備える内燃機関の制御装置において、機関始動に際して、排気バルブのリフト動作を停止させた状態でクランキングを行うポンピング制御を所定期間実行した後に燃料噴射及び点火を開始することをその要旨とする。
【0008】
同構成によれば、機関始動に際して、まず、弁停止機構による排気バルブのリフト動作の停止が行われ、同排気バルブが閉弁状態にされている状態でクランキングを行うポンピング制御が実行される。これにより、ポンピング制御中には、吸気が気筒内と吸気通路内とを往来するようになる。ここで、クランキング中には、シリンダ内壁とピストンリングとの摩擦によって熱が発生し、気筒内と吸気通路内とを往来する吸気の温度は、そうした摩擦熱によって徐々に上昇するようになる。こうしたポンピング制御を所定期間実行して吸気の温度を上昇させた後に、燃料噴射及び点火が開始されることにより、噴射された燃料の霧化が促進されて混合気の着火が好適に行われるようになる。このように、同構成によれば、弁停止機構を利用して機関の低温始動性を向上させることができるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、前記ポンピング制御の実行後に行われる前記燃料噴射に先立って、同ポンピング制御の実行中に予備噴射を行うことをその要旨とする。
【0010】
同構成によれば、ポンピング制御の実行中に行われる上記予備噴射により、そのポンピング制御の実行中において混合気の昇温が行われ、同混合気中の燃料の霧化が促進される。従って、ポンピング制御が終了した後の点火開始時において、混合気をより確実に着火させることができるようになる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置において、前記内燃機関は、吸気バルブの最大リフト量を可変とする可変リフト機構を備え、前記ポンピング制御の実行中は、非実行時と比較して前記最大リフト量が減少されることをその要旨とする。
【0012】
吸気バルブの最大リフト量を小さくすると、吸気ポートのバルブシートと吸気バルブの弁部との間を通過する吸気の流速が上昇するようになり、そうしたバルブシートと弁部との間を通過する吸気には摩擦熱が発生するようになる。従って、吸気バルブの最大リフト量を小さくすることにより、気筒内に流入する吸気の温度が上昇するようになる。そこで、同構成では、吸気バルブの最大リフト量を可変とする可変リフト機構を前記内燃機関に備えるようにしており、上述したポンピング制御の実行中は、非実行時と比較して吸気バルブ9の最大リフト量を減少させるようにしている。そのため、ポンピング制御実行中の吸気の温度をさらに上昇させることができるようになる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、前記内燃機関の冷却水温及び吸気温の少なくとも一方が予め設定された低温判定条件を満たすときに前記ポンピング制御を実行することをその要旨とする。
【0014】
同構成によれば、低温始動性が悪化するときにのみ、上記ポンピング制御を実行することができるようになり、不必要なポンピング制御の実行を抑えることができるようになる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、前記内燃機関が、アルコール燃料を使用可能な機関であることをその要旨とする。
【0016】
アルコール燃料は、ガソリン燃料と比較して気化しにくいため、アルコール燃料を使用可能な内燃機関において実際にアルコール燃料が使用される場合には、ガソリン燃料のみが使用される場合と比較して、低温始動性がさらに悪化しやすくなる。この点、同構成によれば、上記ポンピング制御が実行されることにより、アルコール燃料を使用する場合の低温始動性を向上させることができるようになる。なお、同構成においては、使用される機関燃料が、アルコール燃料及びガソリン燃料の混合燃料であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、この発明にかかる内燃機関の制御装置を具体化した第1実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
【0018】
図1に示すエンジン1は、複数の気筒を有した多気筒内燃機関であって、機関燃料としてガソリン燃料のみならず、アルコール燃料や、ガソリン燃料とアルコール燃料との混合燃料も使用可能な機関となっている。
【0019】
エンジン1の吸気通路3にはスロットルバルブ29が設けられており、スロットルバルブ29の開度がアクセルペダル17の踏み込み量(アクセル踏込量)等に基づき調整されることにより、そのスロットルバルブ29の開度に対応した量の空気が吸気通路3を介して各気筒の燃焼室2に供給される。また、エンジン1のシリンダヘッドには燃料噴射弁4が設けられており、エンジン1の吸入空気量に対応した量の燃料が燃料噴射弁4から気筒内に向けて直接噴射供給される。その結果、エンジン1における各気筒の燃焼室2内に空気と燃料とからなる混合気が形成され、その混合気に対し点火プラグ5による点火が行われると、同混合気が燃焼してピストン6が往復移動し、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト7が回転する。そして、燃焼後の混合気は、排気として各燃焼室2から排気通路8に送り出されるようになる。クランクシャフト7は、機関始動時にスタータモータ200で回転されることによりクランキングされる。
【0020】
エンジン1の各気筒において、燃焼室2と吸気通路3との間は吸気バルブ9の開閉動作によって連通・遮断され、燃焼室2と排気通路8との間は排気バルブ10の開閉動作によって連通・遮断される。これら吸気バルブ9及び排気バルブ10に関しては、クランクシャフト7の回転が伝達される吸気カムシャフト11及び排気カムシャフト12の回転に伴って開閉動作する。より詳しくは、吸気バルブ9は、吸気側バルブスプリング40によって閉弁方向に付勢されており、吸気カムシャフト11に固定された吸気カム11aと上記吸気バルブ9との間には、ローラ18を備えたロッカアーム19が設けられている。そして、回転する吸気カム11aがローラ18を押圧することにより、ロッカアーム19はその一端を支持するラッシュアジャスタ20との接点を中心に揺動し、吸気側バルブスプリング40の反力に抗して吸気バルブ9を押圧する。こうしたロッカアーム19による吸気バルブ9の押圧及び吸気側バルブスプリング40の反力によって同吸気バルブ9は開閉動作される。また、排気バルブ10は、排気側バルブスプリング41によって閉弁方向に付勢されており、排気カムシャフト12に固定された排気カム12aと上記排気バルブ10との間にもローラ21を備えたロッカアーム22が設けられている。そして、回転する排気カム12aがロッカアーム22を押圧することにより、同ロッカアーム22はその一端を支持するラッシュアジャスタ23との接点を中心に揺動し、排気側バルブスプリング41の反力に抗して排気バルブ10を押圧する。こうしたロッカアーム22による排気バルブ10の押圧及び排気側バルブスプリング41の反力によって同排気バルブ10は開閉動作される。
【0021】
上記エンジン1においては、全気筒を稼働させる全筒運転の他に、一部の気筒の稼働を停止させて残りの気筒のみを稼働させることで燃費改善等を図る、いわゆる減筒運転が実行される。こうした減筒運転は、エンジン1における一部の気筒において、燃料噴射弁4からの燃料噴射の停止及び混合気への点火のための点火プラグ5への通電の停止を行うとともに、吸気バルブ9及び排気バルブ10のリフト動作を停止させることによって実現される。こうした吸気バルブ9のリフト停止は、ロッカアーム19に設けられた吸気側弁停止機構24によって行われ、排気バルブ10のリフト停止は、ロッカアーム22に設けられた排気側弁停止機構25によって行われる。
【0022】
吸気カム11aと吸気バルブ9との間のロッカアーム19に設けられた吸気側弁停止機構24は、吸気カム11aの同ロッカアーム19(ローラ18)への押圧に基づく吸気バルブ9のリフト(開閉)を停止させることが可能になっている。
【0023】
この吸気側弁停止機構24の作動時には、ローラ18がロッカアーム19に対して上記押圧の方向に相対移動可能にされ、非作動時にはそうした相対移動が規制される。この吸気側弁停止機構24の非作動時にあっては、ローラ18のロッカアーム19に対する相対移動が規制されることにより、吸気カム11aによってローラ18が押圧されると、それに基づきロッカアーム19が上記のように揺動して吸気バルブ9は開閉動作される。一方、吸気側弁停止機構24の作動時にあっては、ローラ18がロッカアーム19に対して相対移動するため、吸気カム11aによってローラ18が押圧されると、同ローラ18はロッカアーム19に対して相対移動し、いわば空振りのような状態になる。そのため、ロッカアーム19の揺動は停止され、これにより吸気カム11aの回転に伴う吸気バルブ9のリフト動作は停止されて、吸気バルブ9は閉弁状態にされる。
【0024】
排気カム12aと排気バルブ10との間のロッカアーム19に設けられた排気側弁停止機構25は、上記排気カム12aの同ロッカアーム22(ローラ21)への押圧に基づく排気バルブ10のリフト(開閉)を停止させることが可能になっている。
【0025】
この排気側弁停止機構25も、上述した吸気側弁停止機構24と同様の構造を有しており、排気側弁停止機構25の作動時には、ローラ21がロッカアーム22に対して上記押圧の方向に相対移動可能にされ、非作動時にはそうした相対移動が規制される。この排気側弁停止機構25の非作動時にあっては、ローラ21のロッカアーム22に対する相対移動が規制されることにより、排気カム12aによってローラ21が押圧されると、それに基づきロッカアーム22が上記のように揺動して排気バルブ10は開閉動作される。従って、図2に示すように、排気側弁停止機構25の作動が停止されているときには、排気バルブ10のリフト量が「0」から最大リフト量VLにかけて連続的に変化する。
【0026】
一方、排気側弁停止機構25の作動時にあっては、ローラ21がロッカアーム22に対して相対移動するため、排気カム12aによってローラ21が押圧されると、同ローラ21はロッカアーム22に対して相対移動し、いわば空振りのような状態になる。そのため、ロッカアーム22の揺動が停止され、これにより、排気カム12aの回転に伴う排気バルブ10のリフト動作は停止されて、排気バルブ10も閉弁状態にされる。すなわち、先の図2に示すように、排気側弁停止機構25の作動時には、排気バルブ10のリフト量が「0」に保持される。
【0027】
先の図1に示すように、エンジン1には各種センサが設けられている。例えば、アクセルポジションセンサ28により、自動車の運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダル17の踏み込み量(アクセル踏込量)が検出される。また、スロットルポジションセンサ30により、吸気通路3に設けられたスロットルバルブ29の開度(スロットル開度)が検出される。また、エアフロメータ32により、吸気通路3を通じて燃焼室2に吸入される空気の量(吸入空気量GA)が検出される。また、クランクポジションセンサ34により、クランクシャフト7の回転角度、すなわちクランク角が検出され、その検出信号に基づいて機関回転速度NEが算出される。また、吸気カムシャフト11の近傍に設けられたカム角センサ35により、吸気カムシャフト11の回転位相が検出され、同カム角センサ35及び上記クランクポジションセンサ34の検出値に基づいて気筒判別がなされる。また、吸気温センサ36によって吸気の温度(吸気温)THAが検出され、水温センサ37によって機関冷却水の温度(冷却水温)THWが検出される。また、イグニッションスイッチ(以下、IGスイッチという)38によって、運転者による機関始動要求及び機関停止要求が検出され、このIGスイッチ38がオン操作されると、上記スタータモータ200の駆動が、すなわちクランキングが開始される。
【0028】
エンジン1の各種制御は、電子制御装置26によって行われる。この電子制御装置26は、上記各種制御にかかる演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。その入力ポートには、上記各種センサやスイッチなどの信号線が接続されている。また、出力ポートには、燃料噴射弁4、点火プラグ5、スロットルバルブ29、吸気側弁停止機構24、排気側弁停止機構25、及びスタータモータ200の駆動回路等が接続されており、電子制御装置26は、各種センサにて検出された機関運転状態に応じて、上記出力ポートに接続された各種駆動回路に指令信号を出力する。こうして燃料噴射弁4の燃料噴射制御、点火プラグ5の点火時期制御、スロットルバルブ29の開度制御、吸気側弁停止機構24、排気側弁停止機構25の駆動制御、スタータモータ200の駆動制御等が電子制御装置26によって実施される。
【0029】
エンジン1の減筒運転及び全筒運転は、機関運転状態に応じて切り替えられる。すなわち、図3に示すように、機関回転速度及び機関負荷に基づいて把握される機関運転状態が、低回転低負荷状態になっており、予め設定された減筒運転領域G内にあるときには減筒運転が実行される。なお、機関回転速度が過度に低い領域で減筒運転を行うと、エンジン1から出力されるトルクの変動が顕著になってしまうため、本実施形態では、上記減筒運転領域Gから極低回転領域を除くようにしている。
【0030】
この減筒運転時には、一部の気筒について燃料噴射弁4による燃料噴射及び点火プラグ5による点火の停止が行われるとともに、その燃料噴射及び点火が停止された気筒の吸気バルブ9及び排気バルブ10の開閉動作が吸気側弁停止機構24及び排気側弁停止機構25の作動によって停止される。このように低回転低負荷時、すなわち稼働気筒に対し1サイクル当たりに吸入される空気(混合気)の量が少なくなる状況のときには、減筒運転により一部の気筒の稼働が停止されることにより、残りの稼働気筒に対し1サイクル当たりに吸入される空気(混合気)の量が多くされる。その結果、減筒運転中の稼働気筒において、1サイクル当たりの吸入空気量(混合気の量)が、全気筒運転で高負荷運転となったときの稼働気筒における1サイクル当たりの吸入空気量(混合気の量)に近い値となる。ここで、機関の高負荷運転時には、低負荷運転時と比較して燃焼効率が高くなる傾向があるため、減筒運転が行われる低負荷運転時において、エンジン1の燃費改善が図られるようになる。また、稼働が停止された気筒については、吸気のポンピングロスが発生しないため、これによってもエンジン1の燃費改善が図られるようになる。
【0031】
他方、機関運転状態が上述した減筒運転領域Gよりも外の領域にあるとき、換言すれば全筒運転領域A内にあるときには全筒運転が実行される。この全筒運転時には、全ての気筒について燃料噴射弁4による燃料噴射及び点火プラグ5による点火が行われるとともに、吸気側弁停止機構24及び排気側弁停止機構25が非作動にされることにより、全ての吸気バルブ9及び排気バルブ10は開閉動作される。
【0032】
ところで、エンジン1を低温環境下で始動させるときには、機関燃料が気化しにくく燃料霧化が促進されにくいことから、機関の始動性が悪化する傾向にある。特に、エンジン1で、アルコール燃料や上記混合燃料が使用される場合には、そうした燃料が、ガソリン燃料よりも気化しにくいため、ガソリン燃料のみが使用される場合として、低温始動性がさらに悪化しやすくなる。そこで、本実施形態では、上述した弁停止機構、特に排気側弁停止機構25を機関始動時において適切に利用することで、エンジン1の低温始動性を向上させるようにしている。
【0033】
図4に、機関始動時に実行されるポンピング処理の手順を示す。なお、本処理は、機関始動がなされたとき、換言すればIGスイッチ38がオフ状態からオン状態に操作されたときに、電子制御装置26によって開始される。
【0034】
本処理が開始されるとまず、スタータモータ200の駆動が開始される(S100)。
そして、今回の始動が低温始動であるか否かが判定される(S110)。ここでは、「吸気温THA≦判定温度TA」または「冷却水温THW≦判定温度TB」といった各低温判定条件の少なくとも一方が満たされる場合に肯定判定される。なお、判定温度TA及び判定温度TBとしては、アルコール燃料が気化しにくく、エンジン1の低温始動性が低下する低温環境下での機関始動であることを判定することのできる値が適宜設定されている。
【0035】
そして、低温始動ではない場合には(S110:NO)、気筒判別が完了しているか否かが判定され(S160)、否定判定される場合には(S160:NO)、気筒判別が完了するまで、ステップS160の処理が繰り返し行われる。一方、気筒判別が完了している場合には(S160:YES)、全気筒に対して同期噴射による燃料噴射が実行されるとともに、点火プラグ5による点火が実行されて(S180)、本処理は終了される。
【0036】
上記ステップS110にて、低温始動であると判定される場合には(S110:YES)、上述した各弁停止機構のうちで排気側弁停止機構25のみが作動されて(S120)、カウンタKの計測が開始される(S130)。このカウンタKは、排気側弁停止機構25の作動時間を計測するものであり、所定時間毎に一定値ずつ増大されていく。そして、排気側弁停止機構25の作動が停止されると「0」にリセットされる。
【0037】
次に、現在のカウンタKが判定値C以上であるか否かが判定され(S140)、否定判定される場合には(S140:NO)、カウンタKが判定値C以上になるまで、ステップS140の処理が繰り返し行われる。一方、カウンタKが判定値C以上の場合には(S140:YES)、気筒判別が完了しているか否かが判定され(S150)、否定判定される場合には(S150:NO)、気筒判別が完了するまで、ステップS150の処理が繰り返し行われる。一方、気筒判別が完了している場合には(S150:YES)、排気側弁停止機構25の作動が停止される(S170)。
【0038】
そして、全気筒に対して同期噴射による燃料噴射が実行されるとともに、点火プラグ5による点火が実行されて(S180)、本処理は終了される。
次に、図5を併せ参照して、上記ポンピング処理の作用効果を説明する。
【0039】
スタータモータ200の駆動が開始された時点で(時刻t1)、低温始動であると判定される場合には、排気側弁停止機構25が作動されることにより、排気バルブ10のリフト動作が停止された状態、より詳細には排気バルブ10が閉弁状態に保持された状態でクランキングを行うポンピング制御が実行される。また、排気側弁停止機構25の作動開始によって上記カウンタKの計測も開始される。
【0040】
上記ポンピング制御の実行中は、吸気バルブ9はリフト動作する一方で、排気バルブ10は閉弁状態に保持されるため、吸気が気筒内と吸気通路3内とを往来するようになる。ここで、クランキング中には、気筒のシリンダ内壁とピストンリングとの摩擦によって熱が発生するため、ポンピング制御によって気筒内と吸気通路3内とを往来する吸気の温度は、そうした摩擦熱によって徐々に上昇するようになる。
【0041】
そして、カウンタKが判定値C以上になると(時刻t2)、ポンピング制御を所定期間実行したことにより、吸気の温度は、アルコール燃料の霧化に適した温度にまで上昇したと判断される。そして、この時点で気筒判別が完了している場合には、ポンピング制御が終了されて排気側弁停止機構25の作動が停止されることにより排気バルブ10のリフト動作が開始されるとともに、機関始動に伴う燃料噴射及び点火が開始される。この燃料噴射及び点火の開始時には、ポンピング制御によって昇温された吸気に対して燃料噴射が行われることにより、燃料の霧化が促進される。そして、ある程度温度が上昇しており、かつ燃料霧化が促進された状態の混合気に対して点火プラグ5による点火が行われるため、混合気の着火が確実に行われる。
【0042】
こうした一連の処理が行われることにより、低温環境下での機関始動時でも、燃料の霧化を促進させて混合気の着火が確実に行われるようになり、機関の低温始動性が向上するようになる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば次のような効果を得ることができる。
(1)機関始動に際し、排気側弁停止機構25の作動を通じて排気バルブ10を閉弁状態に保持した状態にてクランキングを行うポンピング制御を所定期間実行することで吸気の昇温を図るようにしている。そして、そのポンピング制御を所定期間実行した後に燃料噴射及び点火を開始するようにしている。このように、機関始動に際して排気側弁停止機構25を利用することにより、機関の低温始動性を向上させることができるようになる。
【0044】
(2)吸気温THA及び冷却水温THWの少なくとも一方が予め設定された低温判定条件を満たすときに上記ポンピング制御を実行するようにしている。従って、エンジン1の低温始動性が悪化するときにのみ、上記ポンピング制御を実行することができるようになり、不必要なポンピング制御の実行を抑えることができるようになる。
【0045】
(3)アルコール燃料を使用可能なエンジン1において、機関始動時には上記ポンピング処理を行うようにしている。従って、低温始動性が悪化しやすいアルコール燃料を機関燃料として使用する場合でも、エンジン1の低温始動性を向上させることができるようになる。
(第2実施形態)
次に、この発明にかかる内燃機関の制御装置を具体化した第2実施形態について、図6〜図10を参照して説明する。
【0046】
本実施形態では、吸気バルブ9の最大リフト量を可変とする可変リフト機構をエンジン1に設けるようにしており、上述したポンピング制御の実行に際しては、その可変リフト機構も利用することにより、ポンピング制御実行中の吸気の温度をさらに上昇させることができるようにしている。
【0047】
以下、上記第1実施形態との相違点を中心にして、本実施形態における内燃機関の制御装置を説明する。
図6に、本実施形態におけるエンジン1の構成を示す。なお、図6に示す各部材について、先の図1で説明した部材と同一のものについては、同じ符号を付している。
【0048】
この図6に示すように、吸気カムシャフト11と吸気側のロッカアーム19との間には、吸気バルブ9の最大リフト量VLを可変とする可変リフト機構14が設けられている。この可変リフト機構14は、電動モータ15によってその作動量が制御される。また、電動モータ15には、その駆動量を検出する駆動量検出センサ39が設けられている。
【0049】
上記可変リフト機構14には、吸気カム11aに当接する入力アーム14a、ロッカアーム19のローラ18に当接する出力アーム14b、及び入力アーム14aと出力アーム14bとの相対位相を連続的に変更する機構であって電動モータ15によりその作動量が制御される位相変更機構などが設けられている。
【0050】
この可変リフト機構14では、入力アーム14aと出力アーム14bとが互いに接近するように相対位相が変更されることにより、ロッカアーム19の揺動量が減少して、吸気バルブ9の最大リフト量VLは減少するようになる。逆に、入力アーム14aと出力アーム14bとが互いに離間するように相対位相が変更されることにより、ロッカアーム19の揺動量が増大して、吸気バルブ9の最大リフト量VLは増大するようになる。すなわち、入力アーム14aと出力アーム14bとの相対位相を電動モータ15で連続的に変更することにより、図7に示すごとく、吸気バルブ9の最大リフト量VLは、最小値VLminから最大値VLmaxの間で連続的に変更される。ちなみに、最大リフト量VLの目標値である目標リフト量VLpは、例えばアクセルペダルの操作量等に基づいて算出される。また、吸気バルブ9の実際の最大リフト量VLは、上記駆動量検出センサ39の検出信号に基づいて把握される。そして、目標リフト量VLpと実際の最大リフト量VLとが一致するように、電子制御装置26によって電動モータ15の駆動量が制御される。
【0051】
ところで、図8に示すように、吸気バルブ9の最大リフト量VLを小さくすると、吸気ポートの開口部、より詳細にはバルブシート50aと吸気バルブ9の弁部9aとの間を通過する吸気の流速が上昇するようになり、バルブシート50aと弁部9aとの間を通過する吸気には摩擦熱が発生するようになる。従って、吸気バルブ9の最大リフト量VLを小さくすることにより、気筒内に流入する吸気の温度が上昇するようになる。
【0052】
そこで、本実施形態では、上述したポンピング制御の実行中は、非実行時と比較して吸気バルブ9の最大リフト量VLを減少させることにより、ポンピング制御実行中の吸気の温度をさらに上昇させて低温始動性の向上を図るようにしている。
【0053】
以下、本実施形態におけるポンピング処理について説明する。
図9に、本実施形態において、機関始動時に実行されるポンピング処理の手順を示す。なお、本処理も、機関始動がなされたとき、換言すればIGスイッチ38がオフ状態からオン状態に操作されたときに、電子制御装置26によって開始される。
【0054】
本処理が開始されるとまず、スタータモータ200の駆動が開始される(S200)。
そして、今回の始動が低温始動であるか否かが判定される(S210)。ここでも、「吸気温THA≦判定温度TA」または「冷却水温THW≦判定温度TB」といった各低温判定条件の少なくとも一方が満たされる場合に肯定判定される。なお、判定温度TA及び判定温度TBは、上記第1実施形態と同一である。
【0055】
そして、低温始動ではない場合には(S210:NO)、気筒判別が完了しているか否かが判定され(S270)、否定判定される場合には(S270:NO)、気筒判別が完了するまで、ステップS270の処理が繰り返し行われる。一方、気筒判別が完了している場合には(S270:YES)、全気筒に対して同期噴射による燃料噴射が実行されるとともに、点火プラグ5による点火が実行されて(S310)、本処理は終了される。
【0056】
上記ステップS210にて、低温始動であると判定される場合には(S210:YES)、上述した各弁停止機構のうちで排気側弁停止機構25のみが作動されて(S220)、カウンタKの計測が開始される(S230)。このカウンタKも、排気側弁停止機構25の作動時間を計測するものであり、所定時間毎に一定値ずつ増大されていく。そして、排気側弁停止機構25の作動が停止されると「0」にリセットされる。
【0057】
次に、目標リフト量VLpとしてポンピング用リフト量VLpumが設定され、これにより吸気バルブ9の最大リフト量VLはポンピング用リフト量VLpumに変更される(S240)。
【0058】
次に、現在のカウンタKが上述した判定値C以上であるか否かが判定され(S250)、否定判定される場合には(S250:NO)、カウンタKが判定値C以上になるまで、ステップS250の処理が繰り返し行われる。一方、カウンタKが判定値C以上の場合には(S250:YES)、気筒判別が完了しているか否かが判定され(S260)、否定判定される場合には(S260:NO)、気筒判別が完了するまで、ステップS260の処理が繰り返し行われる。一方、気筒判別が完了している場合には(S260:YES)、排気側弁停止機構25の作動が停止される(S280)。
【0059】
そして、全気筒に対して同期噴射による燃料噴射が実行されるとともに、点火プラグ5による点火が実行されるとともに(S290)、目標リフト量VLpとして始動時用リフト量VLstaが設定され、これにより吸気バルブ9の最大リフト量VLは始動時用リフト量VLstaに変更されて(S300)。本処理は終了される。
【0060】
次に、図10を併せ参照して、上記ポンピング処理の作用効果を説明する。
スタータモータ200の駆動が開始された時点で(時刻t1)、低温始動であると判定される場合には、排気側弁停止機構25が作動されることにより、排気バルブ10のリフト動作が停止された状態、より詳細には排気バルブ10が閉弁状態に保持された状態でクランキングを行うポンピング制御が実行される。また、排気側弁停止機構25の作動開始によって上記カウンタKの計測も開始される。さらには、ポンピング制御の実行開始に合わせて、吸気バルブ9の最大リフト量VLがポンピング用リフト量VLpumに変更されることにより、ポンピング制御の非実行時よりも最大リフト量VLが減少される。
【0061】
上記ポンピング制御の実行中は、第1実施形態にて説明したように、吸気バルブ9はリフト動作する一方で、排気バルブ10は閉弁状態に保持されるため、吸気が気筒内と吸気通路3内とを往来するとともに、気筒のシリンダ内壁とピストンリングとの摩擦によって生じる熱によって往来中の吸気の温度が上昇するようになる。さらに、本実施形態では、そうしたポンピング制御の実行中には、非実行時よりも吸気バルブ9の最大リフト量VLが減少されることにより、ポンピング制御のみを行う場合と比較して、吸気の温度がさらに上昇するようになる。
【0062】
そして、カウンタKが判定値C以上になると(時刻t2)、吸気の温度は、アルコール燃料の霧化に適した温度にまで上昇したと判断される。そして、この時点で気筒判別が完了している場合には、ポンピング制御が終了されて排気側弁停止機構25の作動が停止されることにより排気バルブ10のリフト動作が開始されるとともに、機関始動に伴う燃料噴射及び点火が開始される。この燃料噴射及び点火の開始時には、ポンピング制御及び吸気バルブ9の最大リフト量VLの減少によって昇温された吸気に対し、燃料噴射が行われることにより、燃料の霧化がさらに促進される。そして、ある程度温度が上昇しており、かつ燃料霧化が促進された状態の混合気に対して点火プラグ5による点火が行われるため、混合気の着火が確実に行われる。そして、吸気バルブ9の最大リフト量VLは、ポンピング用リフト量VLpumから機関始動に適した始動時用リフト量VLstaにまで増大される。
【0063】
こうした一連の処理が行われることにより、低温環境下での機関始動時でも、燃料の霧化をさらに促進させて混合気の着火が確実に行われるようになり、機関の低温始動性が向上するようになる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1実施形態による効果に加えて、さらに次のような効果を得ることができる。
(4)吸気バルブ9の最大リフト量VLを可変とする可変リフト機構14をエンジン1に備えるようにしており、上記ポンピング制御の実行中は、非実行時と比較して最大リフト量VLを減少させるようにしている。そのため、ポンピング制御実行中の吸気の温度をさらに上昇させることができるようになる。
【0065】
なお、上記各実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・気筒判別の完了を確認してから燃料噴射及び点火を開始するようにしたが、ポンピング制御の実行中に必ず気筒判別が完了する程度に同ポンピング制御の実行時間が長く設定されている場合には、気筒判別の完了を判定する処理を省略してもよい。
【0066】
・ポンピング制御による排気側弁停止機構25の作動時間をカウンタKで計測するようにした。この他、排気側弁停止機構25の作動が開始されてからのクランクシャフト7の回転量(クランク角)を計測することで、作動時間を把握するようにしてもよい。
【0067】
・上記第1実施形態では、ポンピング制御によって吸気を、より厳密には気筒内に吸入される空気の温度を上昇させるようにした。この他、図11に示すように、ポンピング制御の実行後に行われる燃料噴射(時刻t2)に先立って、ポンピング制御の実行中(排気側弁停止機構25の作動中)に予備噴射を行うようにしてもよい(時刻t1+α)。例えば、ポンピング制御の開始後であって気筒判別が完了した時点で、全気筒に対して同期噴射による燃料噴射を1回ずつ実行するようにしてもよい。この場合には、ポンピング制御の実行中に行われる予備噴射により、そのポンピング制御の実行中において混合気の昇温が行われ、同混合気中の燃料の霧化が促進される。従って、ポンピング制御が終了した後の点火開始時において、混合気をより確実に着火させることができるようになる。なお、この変形例は、上記第2実施形態においても実施可能である。
【0068】
ちなみに、上記予備噴射を行う場合には、ポンピング制御が終了してから開始される燃料噴射の1回目における噴射量を、予備噴射時の噴射量に応じて減量することが望ましい。
【0069】
・第2実施形態では、上記判定値Cを第1実施形態と同一の値にしたが、ポンピング制御による吸気の昇温度合を第1実施形態と同一程度にするのであれば、判定値Cをより小さい値にすることも可能である。この場合には、ポンピング制御の実行時間が短くなることで、燃料噴射及び点火の開始時期を早めることができるようになる。
【0070】
・低温始動であると判定された場合に、上記ポンピング制御を実行するようにしたが、必ずしも低温始動であることを判定する必要はなく、機関始動時には環境温度にかかわらずポンピング制御を実行するようにしてもよい。この場合にも、低温環境下での機関始動時において、低温始動性を向上させることができる。
【0071】
・排気側弁停止機構25が油圧駆動式であって、クランクシャフト7の回転により油圧ポンプが駆動される場合には、機関始動時などのような低回転時において油圧を十分に確保することができず、排気側弁停止機構25を作動させることができないおそれがある。そこで、電動式の油圧ポンプを設けて、機関始動に際しては、まず、電動式の油圧ポンプを駆動して油圧を確保する。そして油圧が確保された後で排気側弁停止機構25の作動を開始させるようにすれば、排気側弁停止機構25が油圧駆動式であっても機関始動時に作動させることが可能になる。
【0072】
・排気側弁停止機構25の作動によって排気バルブ10を閉弁状態に保持するようにした。この他、排気側弁停止機構25の作動停止によって排気バルブ10が閉弁状態に保持され、排気側弁停止機構25の作動によって排気バルブ10のリフト動作が行われるように、上記排気側弁停止機構25を構成し、機関始動に際しては、排気側弁停止機構25を非作動状態にしておくようにしてもよい。この場合でも、上述したようなポンピング制御を実行することができる。なお、この変形例においては、排気側弁停止機構25が油圧駆動式であり、クランクシャフト7の回転によって油圧ポンプが駆動される場合でも、機関始動時に排気バルブを閉弁状態に保持することが可能になる。
【0073】
・上記エンジン1は、吸気側弁停止機構24及び排気側弁停止機構25を備える機関であったが、本発明は、吸気側弁停止機構24を備えていない機関であっても実施可能である。
【0074】
・上記エンジン1は、気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射式の内燃機関であった。この他、吸気通路内に燃料を噴射するポート噴射式の内燃機関にも本発明は同様に適用することができる。この場合には、気筒判別の完了を待たずに非同期噴射にて燃料噴射を開始することができる。また、上記予備噴射も、気筒判別の完了を待たずに非同期噴射にて実行することができる。ちなみに、筒内噴射用の燃料噴射弁のみ、あるいはポート噴射用の燃料噴射弁のみを備える内燃機関だけではなく、筒内噴射用及びポート噴射用の燃料噴射弁をともに備える内燃機関にも本発明は適用可能である。
【0075】
・第2実施形態で説明した可変リフト機構14に限らず、他の構成で吸気バルブ9の最大リフト量VLを可変とする可変リフト機構であってもよい。
・エンジン1は、アルコール燃料を使用可能な機関であったが、ガソリン燃料のみを使用可能な機関であっても、本発明は同様に適用することができ、この場合にも低温始動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明にかかる内燃機関の制御装置の第1実施形態について、これが適用される内燃機関及びその周辺構成を示す概略図。
【図2】同実施形態の排気側弁停止機構の作動時及び停止時における排気バルブのリフト量を示す概念図。
【図3】全筒運転領域と減筒運転領域とを示す概念図。
【図4】同実施形態におけるポンピング処理についてその手順を示すフローチャート。
【図5】同実施形態のポンピング処理による制御態様を示すタイミングチャート。
【図6】第2実施形態における内燃機関及びその周辺構成を示す概略図。
【図7】同実施形態における吸気バルブの最大リフト量の変化態様を示すバルブ特性図。
【図8】吸気ポートの開口部付近の拡大図。
【図9】同実施形態におけるポンピング処理についてその手順を示すフローチャート。
【図10】同実施形態のポンピング処理による制御態様を示すタイミングチャート。
【図11】第1実施形態の変形例におけるポンピング処理による制御態様を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0077】
1…エンジン、2…燃焼室、3…吸気通路、4…燃料噴射弁、5…点火プラグ、6…ピストン、7…クランクシャフト、8…排気通路、9…吸気バルブ、9a…弁部、10…排気バルブ、11…吸気カムシャフト、11a…吸気カム、12…排気カムシャフト、12a…排気カム、14…可変リフト機構、14a…入力アーム、14b…出力アーム、15…電動モータ、17…アクセルペダル、18…ローラ、19…ロッカアーム、20…ラッシュアジャスタ、21…ローラ、22…ロッカアーム、23…ラッシュアジャスタ、24…吸気側弁停止機構、25…排気側弁停止機構、26…電子制御装置、28…アクセルポジションセンサ、29…スロットルバルブ、30…スロットルポジションセンサ、50a…バルブシート、32…エアフロメータ、34…クランクポジションセンサ、35…カム角センサ、36…吸気温センサ、37…水温センサ、38…イグニッションスイッチ(IGスイッチ)、39…駆動量検出センサ、40…吸気側バルブスプリング、41…排気側バルブスプリング、200…スタータモータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一部の気筒の機関バルブ(吸気バルブや排気バルブ)のリフト動作を停止させることにより、同機関バルブを閉弁状態にする弁停止機構を備えた多気筒内燃機関が知られている(例えば特許文献1等)。
【0003】
機関運転中に一部の気筒の稼働を停止させる、いわゆる減筒運転を行うことにより、燃費等の改善を図るようにした多気筒内燃機関が種々提案されている(例えば特許文献1等)。
【0004】
こうした内燃機関では、一部の気筒の機関バルブ(吸気バルブや排気バルブ)のリフト動作を停止させて同機関バルブを閉弁状態にする弁停止機構を備えるようにしている。そして、減筒運転の実行に際しては、弁停止機構が設けられた気筒の機関バルブのリフト動作、燃料噴射、及び点火をそれぞれ停止させることにより、一部の気筒の稼働を停止させるようにしている。
【特許文献1】特開平5−163971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内燃機関を低温環境下で始動させるときには、機関燃料が気化しにくく燃料霧化が促進されにくいことから、機関の始動性が悪化する傾向にある。
ここで、上記弁停止機構によるリフト動作の停止は、機関運転中に行われることが一般的であるが、そうした弁停止機構を機関始動時にも適切に利用することで、上述したような低温始動性を改善することができることを本発明者は見出した。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、弁停止機構を利用して機関の低温始動性を向上させることのできる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、排気バルブのリフト動作を停止させて同排気バルブを閉弁状態にする弁停止機構を備える内燃機関の制御装置において、機関始動に際して、排気バルブのリフト動作を停止させた状態でクランキングを行うポンピング制御を所定期間実行した後に燃料噴射及び点火を開始することをその要旨とする。
【0008】
同構成によれば、機関始動に際して、まず、弁停止機構による排気バルブのリフト動作の停止が行われ、同排気バルブが閉弁状態にされている状態でクランキングを行うポンピング制御が実行される。これにより、ポンピング制御中には、吸気が気筒内と吸気通路内とを往来するようになる。ここで、クランキング中には、シリンダ内壁とピストンリングとの摩擦によって熱が発生し、気筒内と吸気通路内とを往来する吸気の温度は、そうした摩擦熱によって徐々に上昇するようになる。こうしたポンピング制御を所定期間実行して吸気の温度を上昇させた後に、燃料噴射及び点火が開始されることにより、噴射された燃料の霧化が促進されて混合気の着火が好適に行われるようになる。このように、同構成によれば、弁停止機構を利用して機関の低温始動性を向上させることができるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、前記ポンピング制御の実行後に行われる前記燃料噴射に先立って、同ポンピング制御の実行中に予備噴射を行うことをその要旨とする。
【0010】
同構成によれば、ポンピング制御の実行中に行われる上記予備噴射により、そのポンピング制御の実行中において混合気の昇温が行われ、同混合気中の燃料の霧化が促進される。従って、ポンピング制御が終了した後の点火開始時において、混合気をより確実に着火させることができるようになる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置において、前記内燃機関は、吸気バルブの最大リフト量を可変とする可変リフト機構を備え、前記ポンピング制御の実行中は、非実行時と比較して前記最大リフト量が減少されることをその要旨とする。
【0012】
吸気バルブの最大リフト量を小さくすると、吸気ポートのバルブシートと吸気バルブの弁部との間を通過する吸気の流速が上昇するようになり、そうしたバルブシートと弁部との間を通過する吸気には摩擦熱が発生するようになる。従って、吸気バルブの最大リフト量を小さくすることにより、気筒内に流入する吸気の温度が上昇するようになる。そこで、同構成では、吸気バルブの最大リフト量を可変とする可変リフト機構を前記内燃機関に備えるようにしており、上述したポンピング制御の実行中は、非実行時と比較して吸気バルブ9の最大リフト量を減少させるようにしている。そのため、ポンピング制御実行中の吸気の温度をさらに上昇させることができるようになる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、前記内燃機関の冷却水温及び吸気温の少なくとも一方が予め設定された低温判定条件を満たすときに前記ポンピング制御を実行することをその要旨とする。
【0014】
同構成によれば、低温始動性が悪化するときにのみ、上記ポンピング制御を実行することができるようになり、不必要なポンピング制御の実行を抑えることができるようになる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、前記内燃機関が、アルコール燃料を使用可能な機関であることをその要旨とする。
【0016】
アルコール燃料は、ガソリン燃料と比較して気化しにくいため、アルコール燃料を使用可能な内燃機関において実際にアルコール燃料が使用される場合には、ガソリン燃料のみが使用される場合と比較して、低温始動性がさらに悪化しやすくなる。この点、同構成によれば、上記ポンピング制御が実行されることにより、アルコール燃料を使用する場合の低温始動性を向上させることができるようになる。なお、同構成においては、使用される機関燃料が、アルコール燃料及びガソリン燃料の混合燃料であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、この発明にかかる内燃機関の制御装置を具体化した第1実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
【0018】
図1に示すエンジン1は、複数の気筒を有した多気筒内燃機関であって、機関燃料としてガソリン燃料のみならず、アルコール燃料や、ガソリン燃料とアルコール燃料との混合燃料も使用可能な機関となっている。
【0019】
エンジン1の吸気通路3にはスロットルバルブ29が設けられており、スロットルバルブ29の開度がアクセルペダル17の踏み込み量(アクセル踏込量)等に基づき調整されることにより、そのスロットルバルブ29の開度に対応した量の空気が吸気通路3を介して各気筒の燃焼室2に供給される。また、エンジン1のシリンダヘッドには燃料噴射弁4が設けられており、エンジン1の吸入空気量に対応した量の燃料が燃料噴射弁4から気筒内に向けて直接噴射供給される。その結果、エンジン1における各気筒の燃焼室2内に空気と燃料とからなる混合気が形成され、その混合気に対し点火プラグ5による点火が行われると、同混合気が燃焼してピストン6が往復移動し、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト7が回転する。そして、燃焼後の混合気は、排気として各燃焼室2から排気通路8に送り出されるようになる。クランクシャフト7は、機関始動時にスタータモータ200で回転されることによりクランキングされる。
【0020】
エンジン1の各気筒において、燃焼室2と吸気通路3との間は吸気バルブ9の開閉動作によって連通・遮断され、燃焼室2と排気通路8との間は排気バルブ10の開閉動作によって連通・遮断される。これら吸気バルブ9及び排気バルブ10に関しては、クランクシャフト7の回転が伝達される吸気カムシャフト11及び排気カムシャフト12の回転に伴って開閉動作する。より詳しくは、吸気バルブ9は、吸気側バルブスプリング40によって閉弁方向に付勢されており、吸気カムシャフト11に固定された吸気カム11aと上記吸気バルブ9との間には、ローラ18を備えたロッカアーム19が設けられている。そして、回転する吸気カム11aがローラ18を押圧することにより、ロッカアーム19はその一端を支持するラッシュアジャスタ20との接点を中心に揺動し、吸気側バルブスプリング40の反力に抗して吸気バルブ9を押圧する。こうしたロッカアーム19による吸気バルブ9の押圧及び吸気側バルブスプリング40の反力によって同吸気バルブ9は開閉動作される。また、排気バルブ10は、排気側バルブスプリング41によって閉弁方向に付勢されており、排気カムシャフト12に固定された排気カム12aと上記排気バルブ10との間にもローラ21を備えたロッカアーム22が設けられている。そして、回転する排気カム12aがロッカアーム22を押圧することにより、同ロッカアーム22はその一端を支持するラッシュアジャスタ23との接点を中心に揺動し、排気側バルブスプリング41の反力に抗して排気バルブ10を押圧する。こうしたロッカアーム22による排気バルブ10の押圧及び排気側バルブスプリング41の反力によって同排気バルブ10は開閉動作される。
【0021】
上記エンジン1においては、全気筒を稼働させる全筒運転の他に、一部の気筒の稼働を停止させて残りの気筒のみを稼働させることで燃費改善等を図る、いわゆる減筒運転が実行される。こうした減筒運転は、エンジン1における一部の気筒において、燃料噴射弁4からの燃料噴射の停止及び混合気への点火のための点火プラグ5への通電の停止を行うとともに、吸気バルブ9及び排気バルブ10のリフト動作を停止させることによって実現される。こうした吸気バルブ9のリフト停止は、ロッカアーム19に設けられた吸気側弁停止機構24によって行われ、排気バルブ10のリフト停止は、ロッカアーム22に設けられた排気側弁停止機構25によって行われる。
【0022】
吸気カム11aと吸気バルブ9との間のロッカアーム19に設けられた吸気側弁停止機構24は、吸気カム11aの同ロッカアーム19(ローラ18)への押圧に基づく吸気バルブ9のリフト(開閉)を停止させることが可能になっている。
【0023】
この吸気側弁停止機構24の作動時には、ローラ18がロッカアーム19に対して上記押圧の方向に相対移動可能にされ、非作動時にはそうした相対移動が規制される。この吸気側弁停止機構24の非作動時にあっては、ローラ18のロッカアーム19に対する相対移動が規制されることにより、吸気カム11aによってローラ18が押圧されると、それに基づきロッカアーム19が上記のように揺動して吸気バルブ9は開閉動作される。一方、吸気側弁停止機構24の作動時にあっては、ローラ18がロッカアーム19に対して相対移動するため、吸気カム11aによってローラ18が押圧されると、同ローラ18はロッカアーム19に対して相対移動し、いわば空振りのような状態になる。そのため、ロッカアーム19の揺動は停止され、これにより吸気カム11aの回転に伴う吸気バルブ9のリフト動作は停止されて、吸気バルブ9は閉弁状態にされる。
【0024】
排気カム12aと排気バルブ10との間のロッカアーム19に設けられた排気側弁停止機構25は、上記排気カム12aの同ロッカアーム22(ローラ21)への押圧に基づく排気バルブ10のリフト(開閉)を停止させることが可能になっている。
【0025】
この排気側弁停止機構25も、上述した吸気側弁停止機構24と同様の構造を有しており、排気側弁停止機構25の作動時には、ローラ21がロッカアーム22に対して上記押圧の方向に相対移動可能にされ、非作動時にはそうした相対移動が規制される。この排気側弁停止機構25の非作動時にあっては、ローラ21のロッカアーム22に対する相対移動が規制されることにより、排気カム12aによってローラ21が押圧されると、それに基づきロッカアーム22が上記のように揺動して排気バルブ10は開閉動作される。従って、図2に示すように、排気側弁停止機構25の作動が停止されているときには、排気バルブ10のリフト量が「0」から最大リフト量VLにかけて連続的に変化する。
【0026】
一方、排気側弁停止機構25の作動時にあっては、ローラ21がロッカアーム22に対して相対移動するため、排気カム12aによってローラ21が押圧されると、同ローラ21はロッカアーム22に対して相対移動し、いわば空振りのような状態になる。そのため、ロッカアーム22の揺動が停止され、これにより、排気カム12aの回転に伴う排気バルブ10のリフト動作は停止されて、排気バルブ10も閉弁状態にされる。すなわち、先の図2に示すように、排気側弁停止機構25の作動時には、排気バルブ10のリフト量が「0」に保持される。
【0027】
先の図1に示すように、エンジン1には各種センサが設けられている。例えば、アクセルポジションセンサ28により、自動車の運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダル17の踏み込み量(アクセル踏込量)が検出される。また、スロットルポジションセンサ30により、吸気通路3に設けられたスロットルバルブ29の開度(スロットル開度)が検出される。また、エアフロメータ32により、吸気通路3を通じて燃焼室2に吸入される空気の量(吸入空気量GA)が検出される。また、クランクポジションセンサ34により、クランクシャフト7の回転角度、すなわちクランク角が検出され、その検出信号に基づいて機関回転速度NEが算出される。また、吸気カムシャフト11の近傍に設けられたカム角センサ35により、吸気カムシャフト11の回転位相が検出され、同カム角センサ35及び上記クランクポジションセンサ34の検出値に基づいて気筒判別がなされる。また、吸気温センサ36によって吸気の温度(吸気温)THAが検出され、水温センサ37によって機関冷却水の温度(冷却水温)THWが検出される。また、イグニッションスイッチ(以下、IGスイッチという)38によって、運転者による機関始動要求及び機関停止要求が検出され、このIGスイッチ38がオン操作されると、上記スタータモータ200の駆動が、すなわちクランキングが開始される。
【0028】
エンジン1の各種制御は、電子制御装置26によって行われる。この電子制御装置26は、上記各種制御にかかる演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。その入力ポートには、上記各種センサやスイッチなどの信号線が接続されている。また、出力ポートには、燃料噴射弁4、点火プラグ5、スロットルバルブ29、吸気側弁停止機構24、排気側弁停止機構25、及びスタータモータ200の駆動回路等が接続されており、電子制御装置26は、各種センサにて検出された機関運転状態に応じて、上記出力ポートに接続された各種駆動回路に指令信号を出力する。こうして燃料噴射弁4の燃料噴射制御、点火プラグ5の点火時期制御、スロットルバルブ29の開度制御、吸気側弁停止機構24、排気側弁停止機構25の駆動制御、スタータモータ200の駆動制御等が電子制御装置26によって実施される。
【0029】
エンジン1の減筒運転及び全筒運転は、機関運転状態に応じて切り替えられる。すなわち、図3に示すように、機関回転速度及び機関負荷に基づいて把握される機関運転状態が、低回転低負荷状態になっており、予め設定された減筒運転領域G内にあるときには減筒運転が実行される。なお、機関回転速度が過度に低い領域で減筒運転を行うと、エンジン1から出力されるトルクの変動が顕著になってしまうため、本実施形態では、上記減筒運転領域Gから極低回転領域を除くようにしている。
【0030】
この減筒運転時には、一部の気筒について燃料噴射弁4による燃料噴射及び点火プラグ5による点火の停止が行われるとともに、その燃料噴射及び点火が停止された気筒の吸気バルブ9及び排気バルブ10の開閉動作が吸気側弁停止機構24及び排気側弁停止機構25の作動によって停止される。このように低回転低負荷時、すなわち稼働気筒に対し1サイクル当たりに吸入される空気(混合気)の量が少なくなる状況のときには、減筒運転により一部の気筒の稼働が停止されることにより、残りの稼働気筒に対し1サイクル当たりに吸入される空気(混合気)の量が多くされる。その結果、減筒運転中の稼働気筒において、1サイクル当たりの吸入空気量(混合気の量)が、全気筒運転で高負荷運転となったときの稼働気筒における1サイクル当たりの吸入空気量(混合気の量)に近い値となる。ここで、機関の高負荷運転時には、低負荷運転時と比較して燃焼効率が高くなる傾向があるため、減筒運転が行われる低負荷運転時において、エンジン1の燃費改善が図られるようになる。また、稼働が停止された気筒については、吸気のポンピングロスが発生しないため、これによってもエンジン1の燃費改善が図られるようになる。
【0031】
他方、機関運転状態が上述した減筒運転領域Gよりも外の領域にあるとき、換言すれば全筒運転領域A内にあるときには全筒運転が実行される。この全筒運転時には、全ての気筒について燃料噴射弁4による燃料噴射及び点火プラグ5による点火が行われるとともに、吸気側弁停止機構24及び排気側弁停止機構25が非作動にされることにより、全ての吸気バルブ9及び排気バルブ10は開閉動作される。
【0032】
ところで、エンジン1を低温環境下で始動させるときには、機関燃料が気化しにくく燃料霧化が促進されにくいことから、機関の始動性が悪化する傾向にある。特に、エンジン1で、アルコール燃料や上記混合燃料が使用される場合には、そうした燃料が、ガソリン燃料よりも気化しにくいため、ガソリン燃料のみが使用される場合として、低温始動性がさらに悪化しやすくなる。そこで、本実施形態では、上述した弁停止機構、特に排気側弁停止機構25を機関始動時において適切に利用することで、エンジン1の低温始動性を向上させるようにしている。
【0033】
図4に、機関始動時に実行されるポンピング処理の手順を示す。なお、本処理は、機関始動がなされたとき、換言すればIGスイッチ38がオフ状態からオン状態に操作されたときに、電子制御装置26によって開始される。
【0034】
本処理が開始されるとまず、スタータモータ200の駆動が開始される(S100)。
そして、今回の始動が低温始動であるか否かが判定される(S110)。ここでは、「吸気温THA≦判定温度TA」または「冷却水温THW≦判定温度TB」といった各低温判定条件の少なくとも一方が満たされる場合に肯定判定される。なお、判定温度TA及び判定温度TBとしては、アルコール燃料が気化しにくく、エンジン1の低温始動性が低下する低温環境下での機関始動であることを判定することのできる値が適宜設定されている。
【0035】
そして、低温始動ではない場合には(S110:NO)、気筒判別が完了しているか否かが判定され(S160)、否定判定される場合には(S160:NO)、気筒判別が完了するまで、ステップS160の処理が繰り返し行われる。一方、気筒判別が完了している場合には(S160:YES)、全気筒に対して同期噴射による燃料噴射が実行されるとともに、点火プラグ5による点火が実行されて(S180)、本処理は終了される。
【0036】
上記ステップS110にて、低温始動であると判定される場合には(S110:YES)、上述した各弁停止機構のうちで排気側弁停止機構25のみが作動されて(S120)、カウンタKの計測が開始される(S130)。このカウンタKは、排気側弁停止機構25の作動時間を計測するものであり、所定時間毎に一定値ずつ増大されていく。そして、排気側弁停止機構25の作動が停止されると「0」にリセットされる。
【0037】
次に、現在のカウンタKが判定値C以上であるか否かが判定され(S140)、否定判定される場合には(S140:NO)、カウンタKが判定値C以上になるまで、ステップS140の処理が繰り返し行われる。一方、カウンタKが判定値C以上の場合には(S140:YES)、気筒判別が完了しているか否かが判定され(S150)、否定判定される場合には(S150:NO)、気筒判別が完了するまで、ステップS150の処理が繰り返し行われる。一方、気筒判別が完了している場合には(S150:YES)、排気側弁停止機構25の作動が停止される(S170)。
【0038】
そして、全気筒に対して同期噴射による燃料噴射が実行されるとともに、点火プラグ5による点火が実行されて(S180)、本処理は終了される。
次に、図5を併せ参照して、上記ポンピング処理の作用効果を説明する。
【0039】
スタータモータ200の駆動が開始された時点で(時刻t1)、低温始動であると判定される場合には、排気側弁停止機構25が作動されることにより、排気バルブ10のリフト動作が停止された状態、より詳細には排気バルブ10が閉弁状態に保持された状態でクランキングを行うポンピング制御が実行される。また、排気側弁停止機構25の作動開始によって上記カウンタKの計測も開始される。
【0040】
上記ポンピング制御の実行中は、吸気バルブ9はリフト動作する一方で、排気バルブ10は閉弁状態に保持されるため、吸気が気筒内と吸気通路3内とを往来するようになる。ここで、クランキング中には、気筒のシリンダ内壁とピストンリングとの摩擦によって熱が発生するため、ポンピング制御によって気筒内と吸気通路3内とを往来する吸気の温度は、そうした摩擦熱によって徐々に上昇するようになる。
【0041】
そして、カウンタKが判定値C以上になると(時刻t2)、ポンピング制御を所定期間実行したことにより、吸気の温度は、アルコール燃料の霧化に適した温度にまで上昇したと判断される。そして、この時点で気筒判別が完了している場合には、ポンピング制御が終了されて排気側弁停止機構25の作動が停止されることにより排気バルブ10のリフト動作が開始されるとともに、機関始動に伴う燃料噴射及び点火が開始される。この燃料噴射及び点火の開始時には、ポンピング制御によって昇温された吸気に対して燃料噴射が行われることにより、燃料の霧化が促進される。そして、ある程度温度が上昇しており、かつ燃料霧化が促進された状態の混合気に対して点火プラグ5による点火が行われるため、混合気の着火が確実に行われる。
【0042】
こうした一連の処理が行われることにより、低温環境下での機関始動時でも、燃料の霧化を促進させて混合気の着火が確実に行われるようになり、機関の低温始動性が向上するようになる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば次のような効果を得ることができる。
(1)機関始動に際し、排気側弁停止機構25の作動を通じて排気バルブ10を閉弁状態に保持した状態にてクランキングを行うポンピング制御を所定期間実行することで吸気の昇温を図るようにしている。そして、そのポンピング制御を所定期間実行した後に燃料噴射及び点火を開始するようにしている。このように、機関始動に際して排気側弁停止機構25を利用することにより、機関の低温始動性を向上させることができるようになる。
【0044】
(2)吸気温THA及び冷却水温THWの少なくとも一方が予め設定された低温判定条件を満たすときに上記ポンピング制御を実行するようにしている。従って、エンジン1の低温始動性が悪化するときにのみ、上記ポンピング制御を実行することができるようになり、不必要なポンピング制御の実行を抑えることができるようになる。
【0045】
(3)アルコール燃料を使用可能なエンジン1において、機関始動時には上記ポンピング処理を行うようにしている。従って、低温始動性が悪化しやすいアルコール燃料を機関燃料として使用する場合でも、エンジン1の低温始動性を向上させることができるようになる。
(第2実施形態)
次に、この発明にかかる内燃機関の制御装置を具体化した第2実施形態について、図6〜図10を参照して説明する。
【0046】
本実施形態では、吸気バルブ9の最大リフト量を可変とする可変リフト機構をエンジン1に設けるようにしており、上述したポンピング制御の実行に際しては、その可変リフト機構も利用することにより、ポンピング制御実行中の吸気の温度をさらに上昇させることができるようにしている。
【0047】
以下、上記第1実施形態との相違点を中心にして、本実施形態における内燃機関の制御装置を説明する。
図6に、本実施形態におけるエンジン1の構成を示す。なお、図6に示す各部材について、先の図1で説明した部材と同一のものについては、同じ符号を付している。
【0048】
この図6に示すように、吸気カムシャフト11と吸気側のロッカアーム19との間には、吸気バルブ9の最大リフト量VLを可変とする可変リフト機構14が設けられている。この可変リフト機構14は、電動モータ15によってその作動量が制御される。また、電動モータ15には、その駆動量を検出する駆動量検出センサ39が設けられている。
【0049】
上記可変リフト機構14には、吸気カム11aに当接する入力アーム14a、ロッカアーム19のローラ18に当接する出力アーム14b、及び入力アーム14aと出力アーム14bとの相対位相を連続的に変更する機構であって電動モータ15によりその作動量が制御される位相変更機構などが設けられている。
【0050】
この可変リフト機構14では、入力アーム14aと出力アーム14bとが互いに接近するように相対位相が変更されることにより、ロッカアーム19の揺動量が減少して、吸気バルブ9の最大リフト量VLは減少するようになる。逆に、入力アーム14aと出力アーム14bとが互いに離間するように相対位相が変更されることにより、ロッカアーム19の揺動量が増大して、吸気バルブ9の最大リフト量VLは増大するようになる。すなわち、入力アーム14aと出力アーム14bとの相対位相を電動モータ15で連続的に変更することにより、図7に示すごとく、吸気バルブ9の最大リフト量VLは、最小値VLminから最大値VLmaxの間で連続的に変更される。ちなみに、最大リフト量VLの目標値である目標リフト量VLpは、例えばアクセルペダルの操作量等に基づいて算出される。また、吸気バルブ9の実際の最大リフト量VLは、上記駆動量検出センサ39の検出信号に基づいて把握される。そして、目標リフト量VLpと実際の最大リフト量VLとが一致するように、電子制御装置26によって電動モータ15の駆動量が制御される。
【0051】
ところで、図8に示すように、吸気バルブ9の最大リフト量VLを小さくすると、吸気ポートの開口部、より詳細にはバルブシート50aと吸気バルブ9の弁部9aとの間を通過する吸気の流速が上昇するようになり、バルブシート50aと弁部9aとの間を通過する吸気には摩擦熱が発生するようになる。従って、吸気バルブ9の最大リフト量VLを小さくすることにより、気筒内に流入する吸気の温度が上昇するようになる。
【0052】
そこで、本実施形態では、上述したポンピング制御の実行中は、非実行時と比較して吸気バルブ9の最大リフト量VLを減少させることにより、ポンピング制御実行中の吸気の温度をさらに上昇させて低温始動性の向上を図るようにしている。
【0053】
以下、本実施形態におけるポンピング処理について説明する。
図9に、本実施形態において、機関始動時に実行されるポンピング処理の手順を示す。なお、本処理も、機関始動がなされたとき、換言すればIGスイッチ38がオフ状態からオン状態に操作されたときに、電子制御装置26によって開始される。
【0054】
本処理が開始されるとまず、スタータモータ200の駆動が開始される(S200)。
そして、今回の始動が低温始動であるか否かが判定される(S210)。ここでも、「吸気温THA≦判定温度TA」または「冷却水温THW≦判定温度TB」といった各低温判定条件の少なくとも一方が満たされる場合に肯定判定される。なお、判定温度TA及び判定温度TBは、上記第1実施形態と同一である。
【0055】
そして、低温始動ではない場合には(S210:NO)、気筒判別が完了しているか否かが判定され(S270)、否定判定される場合には(S270:NO)、気筒判別が完了するまで、ステップS270の処理が繰り返し行われる。一方、気筒判別が完了している場合には(S270:YES)、全気筒に対して同期噴射による燃料噴射が実行されるとともに、点火プラグ5による点火が実行されて(S310)、本処理は終了される。
【0056】
上記ステップS210にて、低温始動であると判定される場合には(S210:YES)、上述した各弁停止機構のうちで排気側弁停止機構25のみが作動されて(S220)、カウンタKの計測が開始される(S230)。このカウンタKも、排気側弁停止機構25の作動時間を計測するものであり、所定時間毎に一定値ずつ増大されていく。そして、排気側弁停止機構25の作動が停止されると「0」にリセットされる。
【0057】
次に、目標リフト量VLpとしてポンピング用リフト量VLpumが設定され、これにより吸気バルブ9の最大リフト量VLはポンピング用リフト量VLpumに変更される(S240)。
【0058】
次に、現在のカウンタKが上述した判定値C以上であるか否かが判定され(S250)、否定判定される場合には(S250:NO)、カウンタKが判定値C以上になるまで、ステップS250の処理が繰り返し行われる。一方、カウンタKが判定値C以上の場合には(S250:YES)、気筒判別が完了しているか否かが判定され(S260)、否定判定される場合には(S260:NO)、気筒判別が完了するまで、ステップS260の処理が繰り返し行われる。一方、気筒判別が完了している場合には(S260:YES)、排気側弁停止機構25の作動が停止される(S280)。
【0059】
そして、全気筒に対して同期噴射による燃料噴射が実行されるとともに、点火プラグ5による点火が実行されるとともに(S290)、目標リフト量VLpとして始動時用リフト量VLstaが設定され、これにより吸気バルブ9の最大リフト量VLは始動時用リフト量VLstaに変更されて(S300)。本処理は終了される。
【0060】
次に、図10を併せ参照して、上記ポンピング処理の作用効果を説明する。
スタータモータ200の駆動が開始された時点で(時刻t1)、低温始動であると判定される場合には、排気側弁停止機構25が作動されることにより、排気バルブ10のリフト動作が停止された状態、より詳細には排気バルブ10が閉弁状態に保持された状態でクランキングを行うポンピング制御が実行される。また、排気側弁停止機構25の作動開始によって上記カウンタKの計測も開始される。さらには、ポンピング制御の実行開始に合わせて、吸気バルブ9の最大リフト量VLがポンピング用リフト量VLpumに変更されることにより、ポンピング制御の非実行時よりも最大リフト量VLが減少される。
【0061】
上記ポンピング制御の実行中は、第1実施形態にて説明したように、吸気バルブ9はリフト動作する一方で、排気バルブ10は閉弁状態に保持されるため、吸気が気筒内と吸気通路3内とを往来するとともに、気筒のシリンダ内壁とピストンリングとの摩擦によって生じる熱によって往来中の吸気の温度が上昇するようになる。さらに、本実施形態では、そうしたポンピング制御の実行中には、非実行時よりも吸気バルブ9の最大リフト量VLが減少されることにより、ポンピング制御のみを行う場合と比較して、吸気の温度がさらに上昇するようになる。
【0062】
そして、カウンタKが判定値C以上になると(時刻t2)、吸気の温度は、アルコール燃料の霧化に適した温度にまで上昇したと判断される。そして、この時点で気筒判別が完了している場合には、ポンピング制御が終了されて排気側弁停止機構25の作動が停止されることにより排気バルブ10のリフト動作が開始されるとともに、機関始動に伴う燃料噴射及び点火が開始される。この燃料噴射及び点火の開始時には、ポンピング制御及び吸気バルブ9の最大リフト量VLの減少によって昇温された吸気に対し、燃料噴射が行われることにより、燃料の霧化がさらに促進される。そして、ある程度温度が上昇しており、かつ燃料霧化が促進された状態の混合気に対して点火プラグ5による点火が行われるため、混合気の着火が確実に行われる。そして、吸気バルブ9の最大リフト量VLは、ポンピング用リフト量VLpumから機関始動に適した始動時用リフト量VLstaにまで増大される。
【0063】
こうした一連の処理が行われることにより、低温環境下での機関始動時でも、燃料の霧化をさらに促進させて混合気の着火が確実に行われるようになり、機関の低温始動性が向上するようになる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1実施形態による効果に加えて、さらに次のような効果を得ることができる。
(4)吸気バルブ9の最大リフト量VLを可変とする可変リフト機構14をエンジン1に備えるようにしており、上記ポンピング制御の実行中は、非実行時と比較して最大リフト量VLを減少させるようにしている。そのため、ポンピング制御実行中の吸気の温度をさらに上昇させることができるようになる。
【0065】
なお、上記各実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・気筒判別の完了を確認してから燃料噴射及び点火を開始するようにしたが、ポンピング制御の実行中に必ず気筒判別が完了する程度に同ポンピング制御の実行時間が長く設定されている場合には、気筒判別の完了を判定する処理を省略してもよい。
【0066】
・ポンピング制御による排気側弁停止機構25の作動時間をカウンタKで計測するようにした。この他、排気側弁停止機構25の作動が開始されてからのクランクシャフト7の回転量(クランク角)を計測することで、作動時間を把握するようにしてもよい。
【0067】
・上記第1実施形態では、ポンピング制御によって吸気を、より厳密には気筒内に吸入される空気の温度を上昇させるようにした。この他、図11に示すように、ポンピング制御の実行後に行われる燃料噴射(時刻t2)に先立って、ポンピング制御の実行中(排気側弁停止機構25の作動中)に予備噴射を行うようにしてもよい(時刻t1+α)。例えば、ポンピング制御の開始後であって気筒判別が完了した時点で、全気筒に対して同期噴射による燃料噴射を1回ずつ実行するようにしてもよい。この場合には、ポンピング制御の実行中に行われる予備噴射により、そのポンピング制御の実行中において混合気の昇温が行われ、同混合気中の燃料の霧化が促進される。従って、ポンピング制御が終了した後の点火開始時において、混合気をより確実に着火させることができるようになる。なお、この変形例は、上記第2実施形態においても実施可能である。
【0068】
ちなみに、上記予備噴射を行う場合には、ポンピング制御が終了してから開始される燃料噴射の1回目における噴射量を、予備噴射時の噴射量に応じて減量することが望ましい。
【0069】
・第2実施形態では、上記判定値Cを第1実施形態と同一の値にしたが、ポンピング制御による吸気の昇温度合を第1実施形態と同一程度にするのであれば、判定値Cをより小さい値にすることも可能である。この場合には、ポンピング制御の実行時間が短くなることで、燃料噴射及び点火の開始時期を早めることができるようになる。
【0070】
・低温始動であると判定された場合に、上記ポンピング制御を実行するようにしたが、必ずしも低温始動であることを判定する必要はなく、機関始動時には環境温度にかかわらずポンピング制御を実行するようにしてもよい。この場合にも、低温環境下での機関始動時において、低温始動性を向上させることができる。
【0071】
・排気側弁停止機構25が油圧駆動式であって、クランクシャフト7の回転により油圧ポンプが駆動される場合には、機関始動時などのような低回転時において油圧を十分に確保することができず、排気側弁停止機構25を作動させることができないおそれがある。そこで、電動式の油圧ポンプを設けて、機関始動に際しては、まず、電動式の油圧ポンプを駆動して油圧を確保する。そして油圧が確保された後で排気側弁停止機構25の作動を開始させるようにすれば、排気側弁停止機構25が油圧駆動式であっても機関始動時に作動させることが可能になる。
【0072】
・排気側弁停止機構25の作動によって排気バルブ10を閉弁状態に保持するようにした。この他、排気側弁停止機構25の作動停止によって排気バルブ10が閉弁状態に保持され、排気側弁停止機構25の作動によって排気バルブ10のリフト動作が行われるように、上記排気側弁停止機構25を構成し、機関始動に際しては、排気側弁停止機構25を非作動状態にしておくようにしてもよい。この場合でも、上述したようなポンピング制御を実行することができる。なお、この変形例においては、排気側弁停止機構25が油圧駆動式であり、クランクシャフト7の回転によって油圧ポンプが駆動される場合でも、機関始動時に排気バルブを閉弁状態に保持することが可能になる。
【0073】
・上記エンジン1は、吸気側弁停止機構24及び排気側弁停止機構25を備える機関であったが、本発明は、吸気側弁停止機構24を備えていない機関であっても実施可能である。
【0074】
・上記エンジン1は、気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射式の内燃機関であった。この他、吸気通路内に燃料を噴射するポート噴射式の内燃機関にも本発明は同様に適用することができる。この場合には、気筒判別の完了を待たずに非同期噴射にて燃料噴射を開始することができる。また、上記予備噴射も、気筒判別の完了を待たずに非同期噴射にて実行することができる。ちなみに、筒内噴射用の燃料噴射弁のみ、あるいはポート噴射用の燃料噴射弁のみを備える内燃機関だけではなく、筒内噴射用及びポート噴射用の燃料噴射弁をともに備える内燃機関にも本発明は適用可能である。
【0075】
・第2実施形態で説明した可変リフト機構14に限らず、他の構成で吸気バルブ9の最大リフト量VLを可変とする可変リフト機構であってもよい。
・エンジン1は、アルコール燃料を使用可能な機関であったが、ガソリン燃料のみを使用可能な機関であっても、本発明は同様に適用することができ、この場合にも低温始動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明にかかる内燃機関の制御装置の第1実施形態について、これが適用される内燃機関及びその周辺構成を示す概略図。
【図2】同実施形態の排気側弁停止機構の作動時及び停止時における排気バルブのリフト量を示す概念図。
【図3】全筒運転領域と減筒運転領域とを示す概念図。
【図4】同実施形態におけるポンピング処理についてその手順を示すフローチャート。
【図5】同実施形態のポンピング処理による制御態様を示すタイミングチャート。
【図6】第2実施形態における内燃機関及びその周辺構成を示す概略図。
【図7】同実施形態における吸気バルブの最大リフト量の変化態様を示すバルブ特性図。
【図8】吸気ポートの開口部付近の拡大図。
【図9】同実施形態におけるポンピング処理についてその手順を示すフローチャート。
【図10】同実施形態のポンピング処理による制御態様を示すタイミングチャート。
【図11】第1実施形態の変形例におけるポンピング処理による制御態様を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0077】
1…エンジン、2…燃焼室、3…吸気通路、4…燃料噴射弁、5…点火プラグ、6…ピストン、7…クランクシャフト、8…排気通路、9…吸気バルブ、9a…弁部、10…排気バルブ、11…吸気カムシャフト、11a…吸気カム、12…排気カムシャフト、12a…排気カム、14…可変リフト機構、14a…入力アーム、14b…出力アーム、15…電動モータ、17…アクセルペダル、18…ローラ、19…ロッカアーム、20…ラッシュアジャスタ、21…ローラ、22…ロッカアーム、23…ラッシュアジャスタ、24…吸気側弁停止機構、25…排気側弁停止機構、26…電子制御装置、28…アクセルポジションセンサ、29…スロットルバルブ、30…スロットルポジションセンサ、50a…バルブシート、32…エアフロメータ、34…クランクポジションセンサ、35…カム角センサ、36…吸気温センサ、37…水温センサ、38…イグニッションスイッチ(IGスイッチ)、39…駆動量検出センサ、40…吸気側バルブスプリング、41…排気側バルブスプリング、200…スタータモータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気バルブのリフト動作を停止させて同排気バルブを閉弁状態にする弁停止機構を備える内燃機関の制御装置において、
機関始動に際して、排気バルブのリフト動作を停止させた状態でクランキングを行うポンピング制御を所定期間実行した後に燃料噴射及び点火を開始する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記ポンピング制御の実行後に行われる前記燃料噴射に先立って、同ポンピング制御の実行中に予備噴射を行う
請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記内燃機関は、吸気バルブの最大リフト量を可変とする可変リフト機構を備え、前記ポンピング制御の実行中は、非実行時と比較して前記最大リフト量が減少される
請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関の冷却水温及び吸気温の少なくとも一方が予め設定された低温判定条件を満たすときに前記ポンピング制御を実行する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関が、アルコール燃料を使用可能な機関である
請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項1】
排気バルブのリフト動作を停止させて同排気バルブを閉弁状態にする弁停止機構を備える内燃機関の制御装置において、
機関始動に際して、排気バルブのリフト動作を停止させた状態でクランキングを行うポンピング制御を所定期間実行した後に燃料噴射及び点火を開始する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記ポンピング制御の実行後に行われる前記燃料噴射に先立って、同ポンピング制御の実行中に予備噴射を行う
請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記内燃機関は、吸気バルブの最大リフト量を可変とする可変リフト機構を備え、前記ポンピング制御の実行中は、非実行時と比較して前記最大リフト量が減少される
請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関の冷却水温及び吸気温の少なくとも一方が予め設定された低温判定条件を満たすときに前記ポンピング制御を実行する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関が、アルコール燃料を使用可能な機関である
請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−216050(P2009−216050A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62900(P2008−62900)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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