内燃機関の制御装置
【課題】自動停止時にピストンを所定位置に精度良く停止させることができるとともに、自動停止後の再始動時における自着火の発生を防止することができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】本発明のエンジン3の制御装置1は、エンジン3がアイドルストップされた後、気筒3a内の温度がリフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP以上のときに、吸気リフトLIFTINを高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに制御する(ステップ9)ことによって、有効圧縮比ECRを低下させ、再始動時における自着火の発生を防止できる。また、目標スロットル弁開度TH_CMDを吸気リフトLIFTINに応じて制御する(ステップ28)ことによって、吸気リフトLIFTINに応じて変化する有効圧縮比ECRをきめ細かく反映させながら、ピストン3aを所定位置に精度良く停止させることができる。
【解決手段】本発明のエンジン3の制御装置1は、エンジン3がアイドルストップされた後、気筒3a内の温度がリフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP以上のときに、吸気リフトLIFTINを高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに制御する(ステップ9)ことによって、有効圧縮比ECRを低下させ、再始動時における自着火の発生を防止できる。また、目標スロットル弁開度TH_CMDを吸気リフトLIFTINに応じて制御する(ステップ28)ことによって、吸気リフトLIFTINに応じて変化する有効圧縮比ECRをきめ細かく反映させながら、ピストン3aを所定位置に精度良く停止させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の自動停止時に、吸気弁のリフトを変更可能な可変動弁機構と、吸気量を調整するスロットル弁を制御する内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃機関の制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この内燃機関は、吸気量の調整手段として、吸気通路に設けられたスロットル弁と、吸気弁のリフトを変更する可変動弁機構を備えている。また、この制御装置では、アイドル運転状態において、内燃機関が停止する直前の状態であると判定されたときには、スロットル弁によって吸気量を調整するとともに、吸気弁のリフトを、スロットル弁により発生する吸入負圧が急激に変化しないようにしながら、所定の始動用リフトまで徐々に増加させる。以上のように、内燃機関の停止時に吸気弁のリフトが大きな始動用リフトに制御されることで、次回の始動時に必要な吸気量を確保し、始動性を向上させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−56711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関が自動停止(アイドルストップ)状態から再始動される際には、停止時から再始動時までの時間が比較的短いため、気筒内の温度が高くなっている場合があり、その場合には自着火が発生しやすい。この制御装置では、吸気弁のリフトを始動に必要な吸気量が確保できるような始動用リフトまで増加させるにすぎないため、この始動用リフトが比較的小さい場合には、内燃機関の再始動時に、有効圧縮比が高くなることで、自着火が発生するおそれがある。
【0005】
また、内燃機関の始動性を向上させるために、内燃機関の停止時に、スロットル弁の開度を制御することによって、ピストンを吸気弁と排気弁とのバルブオーバーラップが発生しないような所定位置に停止させる停止位置制御が知られている。このような停止位置制御を従来の制御装置に適用した場合には、吸気弁のリフトが始動用リフトに達する前に内燃機関が停止され、その状態で停止位置制御が行われることがある。その場合には、そのときの吸気弁のリフトに応じて有効圧縮比が変化し、それに応じてピストンの止まり方も変化するため、ピストンを所定位置に精度良く停止させることができない。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、自動停止時にピストンを所定位置に精度良く停止させることができるとともに、自動停止後の再始動時における自着火の発生を防止することができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、吸気弁8のリフト(実施形態における(以下、本項において同じ)吸気リフトLIFTIN)を連続的に変更可能な可変動弁機構(吸気リフト可変機構50)と、吸気通路(吸気管12)に設けられ、開度(目標スロットル弁開度TH_CMD)を変更することによって吸気量GAIRを調整するスロットル弁13aとを有し、所定の停止条件が成立したときに自動停止される内燃機関の制御装置1であって、内燃機関3が自動停止された後、スロットル弁13aの開度を制御することによって、内燃機関3のピストン3bの停止位置を所定位置に制御する停止位置制御手段(ECU2、THアクチュエータ13b、図9のステップ29,30)と、内燃機関3の気筒3a内の温度(推定筒内温度TENG)を取得する筒内温度取得手段(ECU2、図6のステップ7、図8)と、内燃機関3が自動停止された後、取得された気筒3a内の温度が所定温度(リフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP)以上のときに、吸気弁8のリフトを所定の最小リフト(低温時再始動用リフトALCMDST_COLD)よりも大きな所定リフト(高温時再始動用リフトALCMDST_HOT)に制御する停止時リフト制御手段(ECU2、モータ58、図6のステップ8〜9)と、を備え、停止位置制御手段は、停止時リフト制御手段によって制御される吸気弁8のリフトに応じて、スロットル弁13aの開度を制御する(図9のステップ30、図10)ことを特徴とする。
【0008】
この内燃機関の制御装置によれば、所定の停止条件が成立するのに伴って内燃機関が自動停止された後、気筒内の温度が所定温度以上のときに、吸気弁のリフトを最小リフトよりも大きな所定リフトに制御する。このように、吸気弁のリフトを大きな所定リフトに制御することによって、自動停止後の再始動時における有効圧縮比が低下するので、気筒内の温度が高い場合でも、再始動時における自着火の発生を防止することができる。
【0009】
また、内燃機関が自動停止された後、スロットル弁の開度を制御する。これにより、吸気量が調整され、ピストンで圧縮された吸気からピストンに作用する反力が調整されることによって、ピストンの停止位置が制御される。さらに、このときのスロットル弁の開度を所定リフトに向かって変化する吸気弁のリフトに応じて制御する。吸気弁のリフトが変化すると、内燃機関の有効圧縮比が変化し、それに伴ってピストンに作用する反力も変化する。したがって、上記のように、スロットル弁の開度を吸気弁のリフトに応じて制御することによって、吸気弁のリフトに応じて変化する有効圧縮比をきめ細かく反映させながら、ピストンを所定位置に精度良く停止させることができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置1において、内燃機関3の回転数(エンジン回転数NE)を検出する回転数検出手段(クランク角センサ22)をさらに備え、停止時リフト制御手段は、検出された内燃機関3の回転数が所定回転数(リフトアップ開始回転数NELIFTUP)以下になるまで、吸気弁8のリフトを最小リフトに保持し(図6のステップ5,6)、内燃機関3の回転数が所定回転数以下になったときに、所定リフトへの制御を開始する(図6のステップ5,9)ことを特徴とする。
【0011】
自動停止の直後における吸気弁のリフトが大きいと、気筒内に流入する吸気が比較的多くなるため、気筒内に残留した燃料の後燃えが発生しやすくなる。この構成によれば、内燃機関の回転数が所定回転数以下になるまで、吸気弁のリフトを最小リフトに保持するので、上記のような燃料の燃焼を抑制し、この燃焼に起因する内燃機関の回転数の上昇を防止できる。その後、内燃機関の回転数が所定回転数以下になったときに、所定リフトへの制御が開始される。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の内燃機関の制御装置1において、停止位置制御手段は、内燃機関3の回転数が所定回転数以下になるまで、スロットル弁13aを閉弁側に制御し(図9のステップ24,25)、内燃機関3の回転数が所定回転数以下になったときに、吸気弁8のリフトに応じたスロットル弁13aの制御を開始する(図9のステップ24,30)ことを特徴とする。
【0013】
内燃機関の自動停止後にスロットル弁の開度をすぐに大きくすると、気筒内への吸気量が増大し、それに伴って不快な振動や異音が発生することがある。この構成によれば、内燃機関の自動停止後にスロットル弁を一旦、閉じ側に制御するので、内燃機関の回転数を確実に低下させるとともに、不快な振動や異音の発生を防止することができる。また、内燃機関の回転数が所定回転数以下になったときに、吸気弁のリフトに応じたスロットル弁の制御を開始するので、振動や異音が発生するおそれのない状態で、停止位置制御を行うことができる。さらに、吸気弁のリフトの所定リフトへの制御と同時に停止位置制御を開始するので、吸気弁のリフトに応じたスロットル弁の開度の制御を適切に行うことができ、それにより、停止位置制御の精度をさらに向上させることができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の内燃機関の制御装置1において、可変動弁機構は、吸気弁8のリフトが最小リフトから増大するにつれて、有効圧縮比ECRが一旦、増加した後、減少するように構成されており、停止位置制御手段は、内燃機関3の回転数が所定回転数以下になった後、吸気弁8のリフトに応じて、スロットル弁13aを一旦、閉弁側に制御してから、開弁側に制御する(図9のステップ30、図10)ことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、可変動弁機構の特性により、有効圧縮比は、吸気弁のリフトが最小リフトから増大するにつれて、一旦、増加した後、減少し、それに伴い、ピストンに作用する反力も同様に増減する。これに対し、スロットル弁の開度を、吸気弁のリフトに応じ、一旦、減少させてから増加させるので、反力が増加する状況では吸気量を減少させるとともに、反力が減少する状況では吸気量を増加させることによって、反力を適切に制御することができ、したがって、停止位置制御の精度をさらに向上させることができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の内燃機関の制御装置1において、可変動弁機構は、吸気弁8のリフトが変化するにつれて、吸気弁8の閉弁時期が変化するように構成されており、停止位置制御手段によるスロットル弁13aの開弁側への制御を開始するタイミングは、吸気弁8のリフトの増大に応じて変化する吸気弁8の閉弁時期がピストン3bが下死点に位置するタイミングと一致するタイミングに設定されている(図3、図10)ことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、可変動弁機構の特性により、吸気弁の閉弁時期は、吸気弁のリフトに応じて変化する。有効圧縮比は、吸気弁の閉弁時期がピストンが下死点に位置するタイミング(以下「ピストン下死点」という)よりも早いときには、閉弁時期が遅いほど、より高くなるのに対し、吸気弁の閉弁時期がピストン下死点よりも遅いときには、閉弁時期が遅いほど、より低くなる。本発明によれば、吸気弁の閉弁時期が、ピストン下死点に一致するタイミング、すなわち、有効圧縮比が減少し始めるタイミングで、スロットル弁の開弁制御を開始するので、有効圧縮比の変化に応じて反力を適切に制御することができ、したがって、停止位置制御の精度をさらに向上させることができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置1において、可変動弁機構は、電動式のアクチュエータ(モータ58)と、アクチュエータへの電力供給が停止されたときに吸気弁8のリフトを所定リフトよりも小さな所定のデフォルト状態に復帰させる復帰機構(吸気リフト復帰機構60)と、をさらに有し、停止時リフト制御手段は、吸気弁8のリフトを所定リフトに制御した後、内燃機関3の自動停止中に、吸気弁8のリフトを所定リフトに保持するようにアクチュエータへの電力供給を継続する(ECU2、図5のステップ9)ことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、アクチュエータへの電力供給が停止されたときには、吸気弁のリフトは、復帰機構により所定リフトよりも小さな所定のデフォルト状態に復帰させられる。このように吸気弁のリフトをデフォルト状態に復帰させることによって、内燃機関の再始動時に筒内流動が発生しやすくなるので、それにより、内燃機関の始動性を向上させることができる。また、気筒内の温度が所定温度以上のときに、吸気弁のリフトを、停止位置制御中に、所定リフトに制御するとともに、その後の内燃機関の自動停止中においても、引き続き所定リフトに保持する。このため、上記のような復帰機構が設けられている場合においても、内燃機関の再始動時における自着火の発生を確実に防止することができる。
【0020】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置1において、内燃機関3に吸入される吸気の温度(吸気温TA)、および内燃機関3の温度(エンジン水温TW)の少なくとも一方を検出する温度検出手段(吸気温センサ29、水温センサ26)をさらに備え、筒内温度取得手段は、検出された吸気の温度および内燃機関の温度の少なくとも一方に応じて、気筒3a内の温度を算出する(図6のステップ7、図8)ことを特徴とする。
【0021】
吸気の温度および内燃機関の温度は気筒内の温度を良好に反映する。この構成によれば、検出された吸気温および内燃機関の温度の少なくとも一方に応じて、気筒内の温度を算出するので、より正確な気筒内の温度を取得することができる。また、このようにして算出された正確な気筒内の温度を、上述した停止時リフト制御に用いることによって、自着火の発生をより確実に防止できるとともに、自着火の発生のおそれがないときには、吸気弁のリフトが所定リフトに増大されることを回避でき、それにより、内燃機関の始動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態による内燃機関の制御装置を、内燃機関とともに概略的に示す図である。
【図2】吸気リフト可変機構の概略構成を示す模式図である。
【図3】吸気リフト可変機構による吸気リフトの変更に応じた吸気弁のバルブリフト曲線を示す図である。
【図4】吸気リフト可変機構による吸気リフトの変更に応じた有効圧縮比の変化を示す図である。
【図5】吸気リフト復帰機構の概略構成を示す模式図である。
【図6】目標吸気リフトの設定処理を表すフローチャートである。
【図7】アイドルストップ条件の判定処理を表すフローチャートである。
【図8】推定筒内温度を算出するためのマップである。
【図9】目標スロットル弁開度の設定処理を表すフローチャートである。
【図10】推定筒内温度が高いときの目標スロットル弁開度を算出するためのマップである。
【図11】第1実施形態によるエンジンの再始動条件の判定処理を表すフローチャートである。
【図12】第1実施形態による内燃機関の制御処理によって得られる動作例を、推定筒内温度が高い場合について示す図である。
【図13】第1実施形態の変形例による内燃機関の制御処理によって得られる動作例を、推定筒内温度が高い場合について示す図である。
【図14】第2実施形態によるエンジンの再始動条件の判定処理を表すフローチャートである。
【図15】第2実施形態による吸気リフト可変機構のモータへの電力供給停止条件の判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本実施形態による制御装置1、およびこれを適用した内燃機関(以下「エンジン」という)3の概略構成を示している。
【0024】
エンジン3は、車両(図示せず)に搭載された、例えば4つの気筒3a(1つのみ図示)を有するガソリンエンジンであり、自動変速機などを介して、駆動輪(いずれも図示せず)に連結されている。各気筒3aのピストン3bとシリンダヘッド3cの間には、燃焼室3dが形成されている。ピストン3bの上面の中央部には、凹部3eが形成されている。また、シリンダヘッド3cには、燃焼室3dに臨むように燃料噴射弁(以下「インジェクタ」という)4および点火プラグ5が取り付けられており、燃料は燃焼室3d内に直接、噴射される。すなわちエンジン3は、筒内噴射式のものである。
【0025】
また、エンジン3は、アイドルストップ機能を備えており、所定のアイドルストップ条件が成立したときに、自動的に停止され、その後、アイドルストップ条件が解除されたときに、再始動される。アイドルストップ条件の詳細については、後述する。
【0026】
自動変速機は、前進4段の自動変速機であり、L,2,D,N,R,Pの6つのシフトポジションを備えており、シフトレバー(図示せず)の操作により、1つのシフトポジションが選択される。
【0027】
インジェクタ4は、シリンダヘッド3cの中央に配置されており、高圧ポンプで昇圧された後、レギュレータ(いずれも図示せず)で調圧された高圧の燃料を、ピストン3bの凹部3eに向かって噴射する。インジェクタ4の動作は、後述するECU2によって制御される。
【0028】
また、点火プラグ5は、ECU2からの制御信号により、点火時期IGに応じたタイミングで高電圧が加えられることによって放電し、燃焼室3d内の混合気を燃焼させる。
【0029】
エンジン3のシリンダヘッド3cには、気筒3aごとに、吸気管12および排気管14が接続されるとともに、一対の吸気弁8、8(1つのみ図示)および一対の排気弁9、9(1つのみ図示)が設けられている。吸気弁8は吸気側動弁機構40によって開閉され、排気弁9は排気側動弁機構70によって開閉される。
【0030】
図2に示すように、吸気側動弁機構40は、吸気カムシャフト51、吸気カム52、吸気リフト可変機構50および吸気リフト復帰機構60などを備えている。本実施形態では、この吸気リフト可変機構50によって吸気弁8のリフトが無段階に変更される。なお、吸気弁8のリフト(以下「吸気リフトLIFTIN」という)は、吸気弁8の最大揚程を表すものとする。
【0031】
吸気カムシャフト51は、吸気スプロケットおよびタイミングチェーン(いずれも図示せず)を介して、クランクシャフト3f(図1参照)に連結されており、クランクシャフト3fが2回転するごとに1回転する。
【0032】
図2に示すように、吸気リフト可変機構50は、吸気カム52が一体に設けられた吸気カムシャフト51と、シリンダヘッド3cに軸55aを中心として回動自在に支持されたコントロールアーム55と、コントロールアーム55を回動させるコントロールカム57が一体に設けられたコントロールシャフト56と、コントロールアーム55に支軸53bを介して回動自在に支持され、吸気カム52に従動して回動するサブカム53と、サブカム53に従動し、吸気弁8を駆動するロッカアーム54とを備えている。ロッカアーム54は、コントロールアーム55に回動自在に支持されている。
【0033】
サブカム53は、吸気カム52に当接するローラ53aを有し、吸気カムシャフト51の回転に伴い、軸53bを中心として回動する。ロッカアーム54は、サブカム53に当接するローラ54aを有し、サブカム53の動きが、ローラ54aを介して、ロッカアーム54に伝達される。
【0034】
コントロールアーム55は、コントロールカム57に当接するローラ55bを有し、回動するコントロールシャフト56によって押圧され、軸55aを中心として回動する。コントロールシャフト56が最も反時計回り側に位置する図2(a)の状態では、サブカム53の動きはロッカアーム54にほとんど伝達されないため、吸気弁8はほぼ全閉の状態に維持される。一方、コントロールシャフト56が最も時計回り側に位置する同図(b)の状態では、サブカム53の動きがロッカアーム54を介して吸気弁8に伝達され、吸気リフトLIFTINは最大リフトLINMAXになる。
【0035】
したがって、モータ58でコントロールシャフト56を回動させることにより、吸気リフトLIFTINは、図3に示す最大リフトLINMAXと最小リフトLINMINの間で、無段階に変更される。なお、吸気リフトLIFTINが最小リフトLINMINのときには、エンジン3の始動が可能な程度の最小限の吸気量GAIRが気筒3aに供給される。また、吸気弁8の閉弁時期は、吸気リフトLIFTINが大きいほど遅くなり、吸気リフトLIFTINが所定のBDCリフトLINBDCのときに、ピストン下死点(BDC)に一致する。
【0036】
また、図4に示すように、有効圧縮比ECRは、吸気弁リフトLIFTINが最小リフトLINMINのときに値ECR0になり、最小リフトLINMINとBDCリフトLINBDCの間では、吸気リフトLIFTINが大きいほど、より高くなり、BDCリフトLINBDCのときに最大値ECRMAXになる。また、吸気弁リフトLIFTINがBDCリフトLINBDCよりも大きい領域では、有効圧縮比ECRは、吸気リフトLIFTINが大きいほど、より低くなり、最大リフトLINMAXのときに最小値ECRMINになる。
【0037】
また、吸気リフト可変機構50は、モータ58を駆動するための電源として、バッテリ59を備えている。このバッテリ59は、クランクシャフト3fに接続されたジェネレータ(図示せず)に接続されている。このジェネレータがエンジン3で回転駆動されることによって発電が行われ、発電された電力はバッテリ59に充電される。
【0038】
図5に示すように、吸気リフト復帰機構60は、アーム61および2つのコイルばね62,63を備えている。このアーム61は、その基端部がコントロールシャフト56に固定されており、それにより、コントロールシャフト56と一体に回動する。
【0039】
また、コイルばね62は、その両端部がアーム61の先端部とシリンダヘッド3cの取付部64にそれぞれ固定されており、アーム61と取付部64の間に圧縮状態で設けられている。同様に、コイルばね63は、その両端部がアーム61の先端部とシリンダヘッド3cの取付部65にそれぞれ固定されており、アーム61と取付部65の間に圧縮状態で設けられている。
【0040】
以上の構成により、コントロールシャフト56モータ58への電力供給が停止されると、コントロールシャフト56は、例えば図5(a)に示す位置から、コイルばね62,63のばね力によって、同図(b)に示すデフォルト位置に復帰する。このデフォルト位置は、吸気リフトLIFTINが最小リフトLINMINになる位置に設定されている。
【0041】
また、吸気リフト可変機構50には、コントロールシャフト56の回転角度(以下「CS角」という)ACSを検出するCS角センサ21が設けられており、その検出信号はECU2に出力される。
【0042】
一方、排気側動弁機構70は、カム駆動式のものであり、回転自在の排気カムシャフト81と、排気カムシャフト81に一体に設けられた排気カム82と、ロッカアームシャフト(図示せず)と、ロッカアームシャフトに回動自在に支持されるとともに、排気弁9,9の上端にそれぞれ当接する2つのロッカアーム(図示せず)などを備えている。
【0043】
排気カムシャフト81は、排気スプロケットおよびタイミングチェーン(いずれも図示せず)を介して、クランクシャフト3fに連結されており、クランクシャフト3fが2回転するごとに1回転する。排気カムシャフト81が回転すると、ロッカアームが排気カム82で押圧され、ロッカアームシャフトを中心として回動することにより、排気弁9,9が開閉される。
【0044】
一方、前記クランクシャフト3fには、クランク角センサ22が設けられている。このクランク角センサ22は、クランクシャフト3fに取り付けられたマグネットロータ22aと、MREピックアップ22bで構成され、クランクシャフト3fの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号およびTDC信号を出力する。
【0045】
CRK信号は、所定のクランク角(例えば30゜)ごとに出力される。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。TDC信号は、いずれかの気筒3aにおいてピストン3bが吸気行程開始時のTDC(上死点)付近の所定クランク角度位置にあることを表す信号であり、エンジン3が4気筒タイプの本例では、クランク角180゜ごとに出力される。
【0046】
また、ECU2には、イグニッションスイッチ41から、そのオン/オフ状態を表す検出信号が出力される。なお、エンジン3の運転時に、イグニッションスイッチ41がオフされたときには、インジェクタ4から気筒3a内への燃料の供給が停止され、エンジン3が停止される。
【0047】
また、ECU2には、ブレーキスイッチ42から、ブレーキペダル(図示せず)の踏み込み状態を表す検出信号が出力される。この検出信号は、ブレーキペダルが所定量以上、踏み込まれたときにオンになり、それ以外のときにオフになる。
【0048】
さらに、ECU2には、車速センサ23から、車両の速度である車速VPを表す検出信号が、アクセル開度センサ24から、アクセルペダル(図示せず)の開度(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が、シフトポジションセンサ25から、シフトレバーのシフトポジションを表す検出信号が、水温センサ26からエンジン3の冷却水の温度(以下「エンジン水温」という)TWを表す検出信号が、それぞれ出力される。
【0049】
さらに、ECU2には、電流電圧センサ31から、バッテリ59に入出力される電流・電圧値を表す検出信号が、出力される。ECU2は、この検出信号に基づいて、バッテリ59の充電残量(以下「バッテリ残量」という)SOCを算出する。
【0050】
また、エンジン3の吸気管12には、スロットル弁13aが設けられている。このスロットル弁13aには、THアクチュエータ13bが連結されている。スロットル弁13aの開度は、ECU2からの制御信号により、THアクチュエータ13bを駆動することによって制御され、それにより、エンジン3に吸入される吸気量GAIRおよび吸気圧PBが制御される。
【0051】
さらに、スロットル弁13aには、リターンスプリング(図示せず)が取り付けられている。THアクチュエータ13bへの電力供給が停止されたときに、スロットル弁13aの開度は、このリターンスプリングのばね力により、所定の初期開度THDEFに復帰する。
【0052】
また、吸気管12には、スロットル弁13aの上流側に吸気量センサ27が設けられ、下流側には吸気圧センサ28および吸気温センサ29が設けられている。吸気量センサ27は吸気量GAIRを検出し、吸気温センサ29はスロットル弁13aの下流側の吸気の温度(以下「吸気温」という)TAを検出し、それらの検出信号はECU2に出力される。
【0053】
また、吸気圧センサ28は、スロットル弁13aの下流側の吸気圧PBを絶対圧として検出し、その検出信号をECU2に出力する。ECU2は、吸気圧PBと大気圧センサ30で検出された大気圧PAとの差(=PA−PB)を、吸気負圧PBGAとして算出する。
【0054】
また、ECU2は、CPU2a、RAM2b、ROM2cおよび入出力インターフェース(図示せず)などから成るマイクロコンピュータ(図示せず)で構成されている。前述したセンサ21〜30およびスイッチ31,32の検出信号はそれぞれ、ECU2に入力され、入力インターフェースでA/D変換や整形がなされた後、CPU2aに入力される。CPU2aは、これらの検出信号に応じ、ROM2cに記憶された制御プログラムなどに基づいて、各種の演算処理を実行する。例えば、ECU2は、アイドルストップの条件判定処理や、それに伴う制御処理を実行する。
【0055】
なお、本実施形態では、ECU2は、停止位置制御手段、筒内温度取得手段および停止時リフト制御手段に相当する。
【0056】
次に、図6〜図13を参照しながら、本発明の第1実施形態によるエンジン3の制御処理について説明する。本処理は、所定時間ごとに実行される。
【0057】
図6は、吸気弁8の目標リフトALCMDの設定処理を示す。この設定処理では特に、気筒3a内の温度が高いときに、アイドルストップからのエンジン3の再始動時における自着火を防止すべく、吸気リフトLIFTINを増大させる(以下「リフトアップ」という)ために、目標リフトALCMDがより大きな値に設定される。本処理ではまず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、アイドルストップ条件の判定処理を実行する。図7は、そのサブルーチンを示す。本処理ではまず、ステップ11〜17において、以下の(a)〜(g)の条件が成立しているか否かをそれぞれ判別する。
(a)イグニッションスイッチ(SW)41がON状態であること
(b)エンジン回転数NEが所定値NEISTP以上であること
(c)車速VPが所定値VPREF以下であること
(d)アクセル開度APが所定値APREF以下であること
(e)シフトポジション(SP)がP,R,N以外であること
(f)ブレーキスイッチ(SW)42がON状態であること
(g)バッテリ残量SOCが所定値SOCISTP以上であること
【0058】
これらのステップ11〜17の答のいずれかがNOで、(a)〜(g)の条件のいずれかが成立していないときには、アイドルストップ条件が成立していないと判定し、本処理を終了する。一方、ステップ11〜17のすべての答がYESのときには、アイドルストップ条件が成立していると判定し、そのことを表すために、ステップ18において、アイドルストップフラグF_IDLSTPを「1」にセットし、本処理を終了する。このようにアイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」にセットされると、エンジン3を自動停止させるためのアイドルストップ制御が開始される。
【0059】
図6に戻り、前記ステップ1に続くステップ2では、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、アイドルストップ制御中でないときには、ステップ3において、要求トルクPMCMDに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標吸気量GAIRCMDを算出する。このマップでは、目標吸気量GAIRCMDは、要求トルクPMCMDが大きいほど、より大きな値に設定されている。なお、この要求トルクPMCMDは、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて算出される。
【0060】
次に、ステップ4において、算出された目標吸気量GAIRCMDに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標リフトALCMDを算出し、本処理を終了する。このマップでは、目標リフトALCMDは、目標吸気量GAIRCMDが大きいほど、より大きな値に設定されている。なお、図示しないが、エンジン3がアイドル運転状態であるときには、目標リフトALCMDは、最小リフトLINMINに等しいアイドルリフトLINIDL(例えば1mm)に設定される。
【0061】
一方、前記ステップ2の答がYESで、アイドルストップ制御中のときには、ステップ5において、エンジン回転数NEが所定のリフトアップ開始回転数NELIFTUP(例えば400rpm)以下であるか否かを判別する。この答がNOで、NE>NELIFTUPのときには、ステップ6において、目標リフトALCMDを最小リフトLINMINに等しい低温時再始動用リフトALCMDST_COLD(例えば1mm)に設定し、本処理を終了する。
【0062】
一方、上記ステップ5の答がYESで、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUPを下回ったときには、ステップ7において、吸気温TAおよびエンジン水温TWに応じ、図8に示すマップを検索することによって、推定筒内温度TENGを算出する。この推定筒内温度TENGは、エンジン3が完全に停止したとき(NE=0)の気筒3a内の温度の推定値である。図8のマップでは、推定筒内温度TENGは、3つの吸気温TA1〜TA3(TA1>TA2>TA3)に対し、吸気温TAが高いほど、またエンジン水温TWが高いほど、より大きな値に設定されている。なお、吸気温TAが上記の3つの値以外のときには、補間計算により推定筒内温度TENGを算出する。
【0063】
次に、ステップ8において、算出された推定筒内温度TENGが所定のリフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP(例えば100℃)以上であるか否かを判別する。この答がNOで、TENG<TENGLIFTUPのときには、気筒3aの温度が低いことで、自着火が発生するおそれがないため、リフトアップを実施しないものとして、前記ステップ6を実行し、目標リフトALCMDを低温時再始動用リフトALCMDST_COLDに設定する。
【0064】
一方、上記ステップ8の答がYESで、推定筒内温度TENGがリフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP以上のときには、気筒3aの温度が高いことで、自着火が発生するおそれがあるため、リフトアップを実施するものとして、ステップ9において、目標リフトALCMDを低温時再始動用リフトALCMDST_COLDよりも大きな所定の高温時再始動用リフトALCMDST_HOT(例えば10mm)に設定し、本処理を終了する。
【0065】
以上のように吸気弁8の目標リフトALCMDが設定されると、それに対応するコントロールシャフト56のCS角ACSである目標CS角ACSCMDを設定するとともに、検出されたCS角ACSが目標CS角ACSCMDに収束するように、所定の時定数を用いたフィードバック制御によって、CS制御入力U_ACSを算出する。算出されたCS制御入力U_ACSによって、モータ58を駆動し、CS角ACSが目標CS角ACSCMDに収束するように制御され、それにより、吸気リフトLIFTINは、目標リフトALCMDに対して遅れを伴いながら、収束するように制御される。
【0066】
図9は、目標スロットル弁開度TH_CMDの設定処理を示す。本処理ではまず、ステップ21において、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、アイドルストップ制御中でないときには、ステップ22において、エンジン回転数NEに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標負圧PBGACMDを算出する。このマップでは、目標負圧PBGACMDは、エンジン回転数NEが高いほど、より小さな値に、すなわち負圧が小さくなるように設定されている。
【0067】
次に、ステップ23において、吸気負圧PBGAが算出された目標負圧PBGACMDになるように、フィードバック制御によって目標スロットル弁開度TH_CMDを算出し、本処理を終了する。なお、図示しないが、エンジン3がアイドル運転状態であるときには、目標スロットル弁開度TH_CMDは、アイドル開度THIDLに設定される。このアイドル開度THIDLは、エンジン回転数NEが所定のアイドル回転数NEIDLになるように、フィードバック制御によって設定される。
【0068】
一方、上記ステップ21の答がYESで、アイドルストップ制御中のときには、ステップ24において、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUP以下であるか否かを判別する。この答がNOで、NE>NELIFTUPのときには、ステップ25において、目標スロットル弁開度TH_CMDを小さな所定の1段目制御開度TH1(例えば1°)に設定し、本処理を終了する。
【0069】
一方、上記ステップ24の答がYESで、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUPを下回ったときには、ステップ26において、エンジン回転数NEが0であるか否かを判別する。この答がYESで、エンジン3が完全に停止したときには、ステップ27において、目標スロットル弁開度TH_CMDを初期開度THDEFに設定し、本処理を終了する。エンジン3が完全に停止すると、THアクチュエータ13bへの電力供給が停止され、リターンスプリングのばね力により、スロットル弁13aの開度が初期開度THDEFになる。
【0070】
一方、上記ステップ26の答がNOで、エンジン3がまだ停止していないときには、ステップ28において、推定筒内温度TENGがリフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP以上であるか否かを判別する。この答がNOで、TENG<TENGLIFTUPのときには、ステップ28において、目標スロットル弁開度TH_CMDを1段目制御開度TH1よりも大きな所定の2段目制御開度TH2(例えば5°)に設定し、本処理を終了する。
【0071】
一方、上記ステップ28の答がYESのときには、ステップ30において、吸気リフトLIFTINに応じ、図10に示すマップを検索することによって、目標スロットル弁開度TH_CMDを算出し、本処理を終了する。
【0072】
図4との比較から明らかなように、このマップでは、目標スロットル弁開度TH_CMDは、吸気リフトLIFTINに応じ、前述した有効圧縮比ECRと逆の増減傾向になるように設定されている。具体的には、吸気弁リフトLIFTINが低温時再始動用リフトALCMDST_COLDのときに1段目制御開度TH1に設定され、低温時再始動用リフトALCMDST_COLDとBDCリフトLINBDCの間では、吸気リフトLIFTINが大きいほど、より小さくなり、BDCリフトLINBDCのときに最小値THBDCに設定されている。また、吸気弁リフトLIFTINがBDCリフトLINBDCよりも大きい領域では、目標スロットル弁開度TH_CMDは、吸気リフトLIFTINが大きいほど、より大きくなり、高温時再始動用リフトALCMDST_HOTのときに2段目制御開度TH2に設定されている。
【0073】
図11は、本発明の第1実施形態によるアイドルストップからのエンジン3の再始動条件の判定処理を示す。本処理ではまず、ステップ41において、イグニッションスイッチ41がON状態であるか否かを判別し、ステップ42において、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」であるか否かを判別する。ステップ41,42の答のいずれかがNOで、アイドルストップ制御中ではないときには、本処理を終了する。
【0074】
一方、ステップ41,42の答がいずれもYESで、アイドルストップ制御中のときには、ステップ43〜45において、以下の(h)〜(j)の条件が成立しているか否かをそれぞれ判別する。
(h)シフトポジションがDであること
(i)アクセル開度APが所定値APREFよりも大きいこと
(j)ブレーキスイッチ42がOFF状態であること
これらのステップ43〜45の答のいずれかがNOで、(h)〜(j)の条件のいずれかが成立していないときには、ステップ46において、バッテリ残量SOCが所定の下限値SOCLOW1(例えば30%)以下であるか否かを判別する。この答がNOで、SOC>SOCLOW1のときには、本処理を終了する。
【0075】
一方、上記ステップ46の答がYESで、SOC≦SOCLOW1のとき、または、前記ステップ43〜45のすべての答がYESのときには、アイドルストップからのエンジン3の再始動条件が成立していると判定し、そのことを表すために、ステップ47において、アイドルストップフラグF_IDLSTPを「0」にセットするとともに、再始動フラグF_ENGRSTを「1」にセットし、本処理を終了する。
【0076】
図12は、これまでに説明したエンジン3の制御処理によって得られる動作例を、推定筒内温度TENGが高い場合について示している。この例では、時点t1までは、車両は停止しており(VP=0)、また、アイドルストップ条件が成立していないため、アイドルストップフラグF_IDLSTPは「0」にセットされ、アイドル運転が行われている。また、目標リフトALCMDは、アイドルリフトLINIDLに設定され、目標スロットル弁開度TH_CMDはアイドル開度THIDLに設定されている。
【0077】
この状態からアイドルストップ条件が成立すると(t1)、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」にセットされ(ステップ18)、アイドルストップ制御が開始され、エンジン3への燃料供給が停止されるのに伴い、エンジン回転数NEが低下し始める。また、それと同時に、目標リフトALCMDが小さな低温時再始動用リフトALCMDST_COLDに設定されるとともに、目標スロットル弁開度TH_CMDが1段目制御開度TH1に設定される(ステップ25)。また、バッテリ残量SOCは、エンジン回転数NEの低下に伴い、ジェネレータの発電量が減少することで、次第に低下する。なお、実施形態では、低温時再始動用リフトALCMDST_COLDがアイドルリフトTHIDLと同じ値に設定されていることから、アイドルストップ制御の開始前後で、目標リフトALCMDは変化しない。
【0078】
その後、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUPまで低下すると(t2)、目標リフトALCMDは、より大きな高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに設定される(ステップ9)。これに伴い、吸気リフトLIFTINは、前述したフィードバック制御により、高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに向かって遅れを伴いながら次第に増加する。
【0079】
また、目標スロットル弁開度TH_CMDは、図10による設定により、次第に増加する吸気リフトLIFTINに応じて減少し、吸気リフトLIFTINがBDCリフトTHBDCになったときに(t3)、BDC開度THBDCに設定され、その後、増加する。そして、吸気リフトLIFTINが高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに達したときに(t4)、目標スロットル弁開度TH_CMDは、1段目制御開度TH1よりも大きな2段目制御開度TH2に到達する。
【0080】
その後、エンジン回転数NEが0になり(t5)、エンジン3が停止したときに、目標スロットル弁開度TH_CMDが初期開度THDEFに設定される(ステップ30)。一方、目標リフトALCMDは、エンジン3の停止後においても高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに保持され、それに応じて、吸気リフトLIFTINも同様に保持される(t5以降)。
【0081】
その後、エンジン3の停止に伴ってバッテリ59の充電が停止されるのに応じて、バッテリ残量SOCが下限値SOCLOW1まで低下すると(t6)、エンジン3の再始動条件が成立し(ステップ46:YES)、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「0」にセットされ(ステップ47)、吸気リフトLIFTINが高温時再始動用リフトALCMDST_HOTの状態で、エンジン3が再始動される。また、エンジン3の再始動に伴い、目標スロットル弁開度TH_CMDおよびバッテリ残量SOCは増加する(t6以降)。
【0082】
図13は、第1実施形態の変形例による制御処理を図12と同じ運転条件に適用した場合の動作例を示す。図12との比較から明らかなように、この変形例では、アイドルストップ制御が開始されたときに(t1’)、目標スロットル弁開度TH_CMDが、図12の1段目制御開度TH1よりも小さな1段目制御開度TH1B(例えば0.5°)に設定される。このため、その後、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUPまで低下すると(t2’)、目標スロットル弁開度TH_CMDは、より小さな1段目制御開度TH1Bから、一旦、吸気リフトLIFTINに応じた値まで増加した後、吸気リフトLIFTINがBDCリフトLINBDCになるまで減少し、BDC開度THBDCに達する(t3’)。その後の動作は、図12の場合と同じである。
【0083】
以上のように、本実施形態によれば、推定筒内温度TENGがリフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP以上のときに、吸気リフトLIFTINを高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに制御することによって、アイドルストップからの再始動時における有効圧縮比ECRが低下するので、推定筒内温度TENGが高い場合でも、再始動時における自着火の発生を防止することができる。
【0084】
また、目標スロットル弁開度TH_CMDを吸気リフトLIFTINに応じて制御することによって、吸気リフトLIFTINに応じて変化する有効圧縮比ECRをきめ細かく反映させながら、ピストン3bを吸気弁8と排気弁9とのバルブオーバーラップが発生しないような所定位置に精度良く停止させることができる。
【0085】
また、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUP以下になるまで、吸気リフトLIFTINを低温時再始動用リフトALCMDST_COLDに保持するので、気筒3b内に残留した燃料の後燃えを抑制し、この燃焼に起因するエンジン回転数NEの上昇を防止できる。
【0086】
また、アイドルストップ開始直後に目標スロットル弁開度TH_CMDを一旦、1段目制御開度TH1(またはTH1B)に制御するので、エンジン回転数NEを確実に低下させるとともに、不快な振動や異音の発生を防止することができる。また、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUP以下になったときに、吸気リフトLIFTINに応じた目標スロットル弁開度TH_CMDの設定を開始するので、振動や異音が発生するおそれのない状態で、停止位置制御を行うことができる。さらに、吸気リフトLIFTINの高温時再始動用リフトALCMDST_HOTへの制御と同時に停止位置制御を開始するので、吸気リフトLIFTINに応じた目標スロットル弁開度TH_CMDの設定を適切に行うことができ、それにより、停止位置制御の精度をさらに向上させることができる。
【0087】
また、目標スロットル弁の開度TH_CMDを、吸気リフトLIFTINに応じ、一旦、減少させてから増加させるので、反力が増加する状況では吸気量GAIRを減少させるとともに、反力が減少する状況では吸気量GAIRを増加させることによって、反力を適切に制御することができ、したがって、停止位置制御の精度をさらに向上させることができる。
【0088】
また、吸気弁8の閉弁時期が、ピストン下死点に一致するタイミング、すなわち、有効圧縮比ECRが減少し始めるタイミングで、目標スロットル弁開度TH_CMDを増加させる制御を開始するので、有効圧縮比ECRの変化に応じて反力を適切に制御することができ、したがって、停止位置制御の精度をさらに向上させることができる。
【0089】
また、モータ58への電力供給が停止されたときには、吸気リフト復帰機構60によって吸気弁リフトLIFTINを最小リフトLINMINにするので、エンジン3の再始動時に筒内流動を発生させることができ、それにより、エンジン3の始動性を向上させることができる。また、推定筒内温度TENGがリフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP以上のときに、吸気リフトLIFTINを、アイドルストップ制御中に、高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに制御するとともに、その後のエンジン3の停止中においても、引き続き高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに保持するので、吸気リフト復帰機構60が設けられている場合においても、エンジン3の再始動時における自着火の発生を確実に防止することができる。
【0090】
また、吸気温TAおよびエンジン水温TWに応じて、推定筒内温度TENGを算出するので、より正確な推定筒内温度TENGを取得することができる。また、このようにして算出された推定筒内温度TENGを、上述した停止時リフト制御に用いることによって、自着火の発生をより確実に防止できるとともに、自着火の発生のおそれがないときには、吸気リフトLIFTINが高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに増大されることを回避でき、それにより、エンジン3の始動性を向上させることができる。
【0091】
次に、図14および図15を参照しながら、本発明の第2実施形態によるエンジン3の停止制御処理について説明する。前述した第1実施形態では、バッテリ残量SOCが下限値SOCLOW1を下回ったときに、エンジン3を再始動させるのに対し、本実施形態は、バッテリ残量SOCに応じたエンジン3の再始動は行わず、アイドルストップ制御中にバッテリ残量SOCが下限値SOCLOW2を下回ったこと、および、アイドルストップ制御が開始されてから所定時間T1が経過したことの少なくとも一方の条件が成立したときに、吸気リフト可変機構50への電力の供給を停止するものである。
【0092】
図14は、エンジン3の再始動条件の判定処理を示す。この処理は、第1実施形態のエンジン3の再始動条件の判定処理から、ステップ46を削除したものである。このため、第1実施形態では、前述した(h)〜(j)の条件のいずれかが成立していない場合でも、バッテリ残量SOCが下限値SOCLOW1以下であれば、再始動条件が成立するのに対し、第2実施形態では、(h)〜(j)のすべての条件が成立したときに限り、再始動条件が成立する。
【0093】
図15は、吸気リフト可変機構50のモータ58への電力供給停止条件の判定処理を示す。本処理ではまず、ステップ51において、イグニッションスイッチ41がON状態であるか否かを判別する。この答がNOのときには、ステップ56において、電力供給停止フラグF_ELCUTを「1」にセットすることによって、吸気リフト可変機構50のモータ58への電力供給を停止し、本処理を終了する。
【0094】
一方、上記ステップ51の答がYESのときには、ステップ52において、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、アイドルストップ制御中でないときには、ステップ53において、アイドルストップ制御開始後の経過時間を計測するダウンカウント式のアイドルストップタイマの値TMDISTPを所定時間T1(例えば60sec)にセットし、本処理を終了する。
【0095】
一方、上記ステップ52の答がYESで、アイドルストップ制御中のときには、ステップ54において、バッテリ残量SOCが所定の下限値SOCLOW2(例えば30%)以下であるか否かを判別する。この答がNOで、SOC>SOCLOW2のときには、ステップ55において、アイドルストップタイマの値TMDISTPが0であるか否かを判別する。この答がNOのときには、本処理を終了する。
【0096】
一方、上記ステップ55の答がYESで、アイドルストップ制御の開始後、所定時間T1が経過したときには、前記ステップ56に進み、電力供給停止フラグF_ELCUTを「1」にセットし、吸気リフト可変機構50のモータ58への電力供給を停止する。
【0097】
また、上記ステップ54の答がYESで、バッテリ残量SOCが下限値SOCLOW2以下になったときには、前記ステップ56に進み、電力供給停止フラグF_ELCUTを「1」にセットし、吸気リフト可変機構50のモータ58への電力供給を停止する。
【0098】
以上のように、本実施形態によれば、アイドルストップ制御の開始後、所定時間T1が経過したとき、または、アイドルストップ制御中にバッテリ残量SOCが下限値SOCLOW2以下になったときに、吸気リフト可変機構50のモータ58への電力供給を停止するので、アイドルストップ時間が長くなったときにバッテリ残量SOCが過小になることを防止し、吸気リフト可変機構50の駆動に必要な電力を確保することができる。また、所定時間T1の経過に伴い、気筒3b内の温度が低下し、自着火の発生のおそれがなくなったと推定されるときに、吸気リフトLIFTINを最小リフトLINMINに復帰させるので、それにより、エンジン3の始動性を向上させることができる。
【0099】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、アイドルストップ開始直後に目標リフトALCMDとして設定される低温時再始動用リフトALCMDST_COLDを、最小リフトLINMINに設定しているが、これに限らず、高温時再始動用リフトALCMDST_HOTよりも小さな他の適当な値に設定してもよい。
【0100】
また、実施形態では、吸気リフトLIFTINとして、CS角ACSに応じて算出し、停止時リフト制御に用いているが、吸気リフトLIFTINを直接、検出してもよく、あるいは、吸気リフトLIFTINに代えて、これを表す他の適当なパラメータ、例えばCS角ACSをそのまま用いてもよい。
【0101】
また、実施形態では、推定筒内温度TENGの算出を、吸気温TAおよびエンジン水温TWの両方に応じて行っているが、いずれか一方に応じて行ってもよい。また、エンジン3の温度としてエンジン水温TWを用いているが、これに代えて、エンジン3の温度を表す他の適当なパラメータ、例えば排気管14内の温度を検出し、その検出値を用いてもよい。
【0102】
また、実施形態では、低温時再始動用リフトALCMDST_COLD、高温時再始動用リフトALCMDST_HOT、リフトアップ開始回転数NELIFTUP、リフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP、1段目制御開度TH2および2段目制御開度TH2は固定値であるが、大気圧PAや吸気温TAに応じて補正してもよい。
【0103】
また、実施形態は、本発明を車両に搭載されたガソリンエンジンに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、ガソリンエンジン以外のディーゼルエンジンなどの各種のエンジンに適用してもよく、また、車両用以外のエンジン、例えば、クランク軸を鉛直に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジンにも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 制御装置
2 ECU(停止位置制御手段、筒内温度取得手段、停止時リフト制御手段)
3 エンジン(内燃機関)
3a 気筒
3b ピストン
8 吸気弁
12 吸気管(吸気通路)
13a スロットル弁(吸気量調整弁)
13b THアクチュエータ(停止位置制御手段)
22 クランク角センサ(回転数検出手段)
26 水温センサ(温度検出手段)
29 吸気温センサ(温度検出手段)
50 吸気リフト可変機構(可変動弁機構)
58 モータ(停止時リフト制御手段、アクチュエータ)
60 吸気リフト復帰機構(復帰機構)
LIFTIN 吸気リフト(吸気弁のリフト)
TH_CMD 目標スロットル弁開度(スロットル弁の開度)
GAIR 吸気量
TENG 推定筒内温度(気筒内の温度)
TENGLIFTUP リフトアップ実施筒内温度(所定温度)
ALCMDST_COLD 低温時再始動用リフト(最小リフト)
ALCMDST_HOT 高温時再始動用リフト(所定リフト)
NE エンジン回転数(内燃機関の回転数)
NELIFTUP リフトアップ実施回転数(所定回転数)
ECR 有効圧縮比
TA 吸気温(吸気の温度)
TW エンジン水温(内燃機関の温度)
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の自動停止時に、吸気弁のリフトを変更可能な可変動弁機構と、吸気量を調整するスロットル弁を制御する内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃機関の制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この内燃機関は、吸気量の調整手段として、吸気通路に設けられたスロットル弁と、吸気弁のリフトを変更する可変動弁機構を備えている。また、この制御装置では、アイドル運転状態において、内燃機関が停止する直前の状態であると判定されたときには、スロットル弁によって吸気量を調整するとともに、吸気弁のリフトを、スロットル弁により発生する吸入負圧が急激に変化しないようにしながら、所定の始動用リフトまで徐々に増加させる。以上のように、内燃機関の停止時に吸気弁のリフトが大きな始動用リフトに制御されることで、次回の始動時に必要な吸気量を確保し、始動性を向上させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−56711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関が自動停止(アイドルストップ)状態から再始動される際には、停止時から再始動時までの時間が比較的短いため、気筒内の温度が高くなっている場合があり、その場合には自着火が発生しやすい。この制御装置では、吸気弁のリフトを始動に必要な吸気量が確保できるような始動用リフトまで増加させるにすぎないため、この始動用リフトが比較的小さい場合には、内燃機関の再始動時に、有効圧縮比が高くなることで、自着火が発生するおそれがある。
【0005】
また、内燃機関の始動性を向上させるために、内燃機関の停止時に、スロットル弁の開度を制御することによって、ピストンを吸気弁と排気弁とのバルブオーバーラップが発生しないような所定位置に停止させる停止位置制御が知られている。このような停止位置制御を従来の制御装置に適用した場合には、吸気弁のリフトが始動用リフトに達する前に内燃機関が停止され、その状態で停止位置制御が行われることがある。その場合には、そのときの吸気弁のリフトに応じて有効圧縮比が変化し、それに応じてピストンの止まり方も変化するため、ピストンを所定位置に精度良く停止させることができない。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、自動停止時にピストンを所定位置に精度良く停止させることができるとともに、自動停止後の再始動時における自着火の発生を防止することができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、吸気弁8のリフト(実施形態における(以下、本項において同じ)吸気リフトLIFTIN)を連続的に変更可能な可変動弁機構(吸気リフト可変機構50)と、吸気通路(吸気管12)に設けられ、開度(目標スロットル弁開度TH_CMD)を変更することによって吸気量GAIRを調整するスロットル弁13aとを有し、所定の停止条件が成立したときに自動停止される内燃機関の制御装置1であって、内燃機関3が自動停止された後、スロットル弁13aの開度を制御することによって、内燃機関3のピストン3bの停止位置を所定位置に制御する停止位置制御手段(ECU2、THアクチュエータ13b、図9のステップ29,30)と、内燃機関3の気筒3a内の温度(推定筒内温度TENG)を取得する筒内温度取得手段(ECU2、図6のステップ7、図8)と、内燃機関3が自動停止された後、取得された気筒3a内の温度が所定温度(リフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP)以上のときに、吸気弁8のリフトを所定の最小リフト(低温時再始動用リフトALCMDST_COLD)よりも大きな所定リフト(高温時再始動用リフトALCMDST_HOT)に制御する停止時リフト制御手段(ECU2、モータ58、図6のステップ8〜9)と、を備え、停止位置制御手段は、停止時リフト制御手段によって制御される吸気弁8のリフトに応じて、スロットル弁13aの開度を制御する(図9のステップ30、図10)ことを特徴とする。
【0008】
この内燃機関の制御装置によれば、所定の停止条件が成立するのに伴って内燃機関が自動停止された後、気筒内の温度が所定温度以上のときに、吸気弁のリフトを最小リフトよりも大きな所定リフトに制御する。このように、吸気弁のリフトを大きな所定リフトに制御することによって、自動停止後の再始動時における有効圧縮比が低下するので、気筒内の温度が高い場合でも、再始動時における自着火の発生を防止することができる。
【0009】
また、内燃機関が自動停止された後、スロットル弁の開度を制御する。これにより、吸気量が調整され、ピストンで圧縮された吸気からピストンに作用する反力が調整されることによって、ピストンの停止位置が制御される。さらに、このときのスロットル弁の開度を所定リフトに向かって変化する吸気弁のリフトに応じて制御する。吸気弁のリフトが変化すると、内燃機関の有効圧縮比が変化し、それに伴ってピストンに作用する反力も変化する。したがって、上記のように、スロットル弁の開度を吸気弁のリフトに応じて制御することによって、吸気弁のリフトに応じて変化する有効圧縮比をきめ細かく反映させながら、ピストンを所定位置に精度良く停止させることができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置1において、内燃機関3の回転数(エンジン回転数NE)を検出する回転数検出手段(クランク角センサ22)をさらに備え、停止時リフト制御手段は、検出された内燃機関3の回転数が所定回転数(リフトアップ開始回転数NELIFTUP)以下になるまで、吸気弁8のリフトを最小リフトに保持し(図6のステップ5,6)、内燃機関3の回転数が所定回転数以下になったときに、所定リフトへの制御を開始する(図6のステップ5,9)ことを特徴とする。
【0011】
自動停止の直後における吸気弁のリフトが大きいと、気筒内に流入する吸気が比較的多くなるため、気筒内に残留した燃料の後燃えが発生しやすくなる。この構成によれば、内燃機関の回転数が所定回転数以下になるまで、吸気弁のリフトを最小リフトに保持するので、上記のような燃料の燃焼を抑制し、この燃焼に起因する内燃機関の回転数の上昇を防止できる。その後、内燃機関の回転数が所定回転数以下になったときに、所定リフトへの制御が開始される。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の内燃機関の制御装置1において、停止位置制御手段は、内燃機関3の回転数が所定回転数以下になるまで、スロットル弁13aを閉弁側に制御し(図9のステップ24,25)、内燃機関3の回転数が所定回転数以下になったときに、吸気弁8のリフトに応じたスロットル弁13aの制御を開始する(図9のステップ24,30)ことを特徴とする。
【0013】
内燃機関の自動停止後にスロットル弁の開度をすぐに大きくすると、気筒内への吸気量が増大し、それに伴って不快な振動や異音が発生することがある。この構成によれば、内燃機関の自動停止後にスロットル弁を一旦、閉じ側に制御するので、内燃機関の回転数を確実に低下させるとともに、不快な振動や異音の発生を防止することができる。また、内燃機関の回転数が所定回転数以下になったときに、吸気弁のリフトに応じたスロットル弁の制御を開始するので、振動や異音が発生するおそれのない状態で、停止位置制御を行うことができる。さらに、吸気弁のリフトの所定リフトへの制御と同時に停止位置制御を開始するので、吸気弁のリフトに応じたスロットル弁の開度の制御を適切に行うことができ、それにより、停止位置制御の精度をさらに向上させることができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の内燃機関の制御装置1において、可変動弁機構は、吸気弁8のリフトが最小リフトから増大するにつれて、有効圧縮比ECRが一旦、増加した後、減少するように構成されており、停止位置制御手段は、内燃機関3の回転数が所定回転数以下になった後、吸気弁8のリフトに応じて、スロットル弁13aを一旦、閉弁側に制御してから、開弁側に制御する(図9のステップ30、図10)ことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、可変動弁機構の特性により、有効圧縮比は、吸気弁のリフトが最小リフトから増大するにつれて、一旦、増加した後、減少し、それに伴い、ピストンに作用する反力も同様に増減する。これに対し、スロットル弁の開度を、吸気弁のリフトに応じ、一旦、減少させてから増加させるので、反力が増加する状況では吸気量を減少させるとともに、反力が減少する状況では吸気量を増加させることによって、反力を適切に制御することができ、したがって、停止位置制御の精度をさらに向上させることができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の内燃機関の制御装置1において、可変動弁機構は、吸気弁8のリフトが変化するにつれて、吸気弁8の閉弁時期が変化するように構成されており、停止位置制御手段によるスロットル弁13aの開弁側への制御を開始するタイミングは、吸気弁8のリフトの増大に応じて変化する吸気弁8の閉弁時期がピストン3bが下死点に位置するタイミングと一致するタイミングに設定されている(図3、図10)ことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、可変動弁機構の特性により、吸気弁の閉弁時期は、吸気弁のリフトに応じて変化する。有効圧縮比は、吸気弁の閉弁時期がピストンが下死点に位置するタイミング(以下「ピストン下死点」という)よりも早いときには、閉弁時期が遅いほど、より高くなるのに対し、吸気弁の閉弁時期がピストン下死点よりも遅いときには、閉弁時期が遅いほど、より低くなる。本発明によれば、吸気弁の閉弁時期が、ピストン下死点に一致するタイミング、すなわち、有効圧縮比が減少し始めるタイミングで、スロットル弁の開弁制御を開始するので、有効圧縮比の変化に応じて反力を適切に制御することができ、したがって、停止位置制御の精度をさらに向上させることができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置1において、可変動弁機構は、電動式のアクチュエータ(モータ58)と、アクチュエータへの電力供給が停止されたときに吸気弁8のリフトを所定リフトよりも小さな所定のデフォルト状態に復帰させる復帰機構(吸気リフト復帰機構60)と、をさらに有し、停止時リフト制御手段は、吸気弁8のリフトを所定リフトに制御した後、内燃機関3の自動停止中に、吸気弁8のリフトを所定リフトに保持するようにアクチュエータへの電力供給を継続する(ECU2、図5のステップ9)ことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、アクチュエータへの電力供給が停止されたときには、吸気弁のリフトは、復帰機構により所定リフトよりも小さな所定のデフォルト状態に復帰させられる。このように吸気弁のリフトをデフォルト状態に復帰させることによって、内燃機関の再始動時に筒内流動が発生しやすくなるので、それにより、内燃機関の始動性を向上させることができる。また、気筒内の温度が所定温度以上のときに、吸気弁のリフトを、停止位置制御中に、所定リフトに制御するとともに、その後の内燃機関の自動停止中においても、引き続き所定リフトに保持する。このため、上記のような復帰機構が設けられている場合においても、内燃機関の再始動時における自着火の発生を確実に防止することができる。
【0020】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置1において、内燃機関3に吸入される吸気の温度(吸気温TA)、および内燃機関3の温度(エンジン水温TW)の少なくとも一方を検出する温度検出手段(吸気温センサ29、水温センサ26)をさらに備え、筒内温度取得手段は、検出された吸気の温度および内燃機関の温度の少なくとも一方に応じて、気筒3a内の温度を算出する(図6のステップ7、図8)ことを特徴とする。
【0021】
吸気の温度および内燃機関の温度は気筒内の温度を良好に反映する。この構成によれば、検出された吸気温および内燃機関の温度の少なくとも一方に応じて、気筒内の温度を算出するので、より正確な気筒内の温度を取得することができる。また、このようにして算出された正確な気筒内の温度を、上述した停止時リフト制御に用いることによって、自着火の発生をより確実に防止できるとともに、自着火の発生のおそれがないときには、吸気弁のリフトが所定リフトに増大されることを回避でき、それにより、内燃機関の始動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態による内燃機関の制御装置を、内燃機関とともに概略的に示す図である。
【図2】吸気リフト可変機構の概略構成を示す模式図である。
【図3】吸気リフト可変機構による吸気リフトの変更に応じた吸気弁のバルブリフト曲線を示す図である。
【図4】吸気リフト可変機構による吸気リフトの変更に応じた有効圧縮比の変化を示す図である。
【図5】吸気リフト復帰機構の概略構成を示す模式図である。
【図6】目標吸気リフトの設定処理を表すフローチャートである。
【図7】アイドルストップ条件の判定処理を表すフローチャートである。
【図8】推定筒内温度を算出するためのマップである。
【図9】目標スロットル弁開度の設定処理を表すフローチャートである。
【図10】推定筒内温度が高いときの目標スロットル弁開度を算出するためのマップである。
【図11】第1実施形態によるエンジンの再始動条件の判定処理を表すフローチャートである。
【図12】第1実施形態による内燃機関の制御処理によって得られる動作例を、推定筒内温度が高い場合について示す図である。
【図13】第1実施形態の変形例による内燃機関の制御処理によって得られる動作例を、推定筒内温度が高い場合について示す図である。
【図14】第2実施形態によるエンジンの再始動条件の判定処理を表すフローチャートである。
【図15】第2実施形態による吸気リフト可変機構のモータへの電力供給停止条件の判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本実施形態による制御装置1、およびこれを適用した内燃機関(以下「エンジン」という)3の概略構成を示している。
【0024】
エンジン3は、車両(図示せず)に搭載された、例えば4つの気筒3a(1つのみ図示)を有するガソリンエンジンであり、自動変速機などを介して、駆動輪(いずれも図示せず)に連結されている。各気筒3aのピストン3bとシリンダヘッド3cの間には、燃焼室3dが形成されている。ピストン3bの上面の中央部には、凹部3eが形成されている。また、シリンダヘッド3cには、燃焼室3dに臨むように燃料噴射弁(以下「インジェクタ」という)4および点火プラグ5が取り付けられており、燃料は燃焼室3d内に直接、噴射される。すなわちエンジン3は、筒内噴射式のものである。
【0025】
また、エンジン3は、アイドルストップ機能を備えており、所定のアイドルストップ条件が成立したときに、自動的に停止され、その後、アイドルストップ条件が解除されたときに、再始動される。アイドルストップ条件の詳細については、後述する。
【0026】
自動変速機は、前進4段の自動変速機であり、L,2,D,N,R,Pの6つのシフトポジションを備えており、シフトレバー(図示せず)の操作により、1つのシフトポジションが選択される。
【0027】
インジェクタ4は、シリンダヘッド3cの中央に配置されており、高圧ポンプで昇圧された後、レギュレータ(いずれも図示せず)で調圧された高圧の燃料を、ピストン3bの凹部3eに向かって噴射する。インジェクタ4の動作は、後述するECU2によって制御される。
【0028】
また、点火プラグ5は、ECU2からの制御信号により、点火時期IGに応じたタイミングで高電圧が加えられることによって放電し、燃焼室3d内の混合気を燃焼させる。
【0029】
エンジン3のシリンダヘッド3cには、気筒3aごとに、吸気管12および排気管14が接続されるとともに、一対の吸気弁8、8(1つのみ図示)および一対の排気弁9、9(1つのみ図示)が設けられている。吸気弁8は吸気側動弁機構40によって開閉され、排気弁9は排気側動弁機構70によって開閉される。
【0030】
図2に示すように、吸気側動弁機構40は、吸気カムシャフト51、吸気カム52、吸気リフト可変機構50および吸気リフト復帰機構60などを備えている。本実施形態では、この吸気リフト可変機構50によって吸気弁8のリフトが無段階に変更される。なお、吸気弁8のリフト(以下「吸気リフトLIFTIN」という)は、吸気弁8の最大揚程を表すものとする。
【0031】
吸気カムシャフト51は、吸気スプロケットおよびタイミングチェーン(いずれも図示せず)を介して、クランクシャフト3f(図1参照)に連結されており、クランクシャフト3fが2回転するごとに1回転する。
【0032】
図2に示すように、吸気リフト可変機構50は、吸気カム52が一体に設けられた吸気カムシャフト51と、シリンダヘッド3cに軸55aを中心として回動自在に支持されたコントロールアーム55と、コントロールアーム55を回動させるコントロールカム57が一体に設けられたコントロールシャフト56と、コントロールアーム55に支軸53bを介して回動自在に支持され、吸気カム52に従動して回動するサブカム53と、サブカム53に従動し、吸気弁8を駆動するロッカアーム54とを備えている。ロッカアーム54は、コントロールアーム55に回動自在に支持されている。
【0033】
サブカム53は、吸気カム52に当接するローラ53aを有し、吸気カムシャフト51の回転に伴い、軸53bを中心として回動する。ロッカアーム54は、サブカム53に当接するローラ54aを有し、サブカム53の動きが、ローラ54aを介して、ロッカアーム54に伝達される。
【0034】
コントロールアーム55は、コントロールカム57に当接するローラ55bを有し、回動するコントロールシャフト56によって押圧され、軸55aを中心として回動する。コントロールシャフト56が最も反時計回り側に位置する図2(a)の状態では、サブカム53の動きはロッカアーム54にほとんど伝達されないため、吸気弁8はほぼ全閉の状態に維持される。一方、コントロールシャフト56が最も時計回り側に位置する同図(b)の状態では、サブカム53の動きがロッカアーム54を介して吸気弁8に伝達され、吸気リフトLIFTINは最大リフトLINMAXになる。
【0035】
したがって、モータ58でコントロールシャフト56を回動させることにより、吸気リフトLIFTINは、図3に示す最大リフトLINMAXと最小リフトLINMINの間で、無段階に変更される。なお、吸気リフトLIFTINが最小リフトLINMINのときには、エンジン3の始動が可能な程度の最小限の吸気量GAIRが気筒3aに供給される。また、吸気弁8の閉弁時期は、吸気リフトLIFTINが大きいほど遅くなり、吸気リフトLIFTINが所定のBDCリフトLINBDCのときに、ピストン下死点(BDC)に一致する。
【0036】
また、図4に示すように、有効圧縮比ECRは、吸気弁リフトLIFTINが最小リフトLINMINのときに値ECR0になり、最小リフトLINMINとBDCリフトLINBDCの間では、吸気リフトLIFTINが大きいほど、より高くなり、BDCリフトLINBDCのときに最大値ECRMAXになる。また、吸気弁リフトLIFTINがBDCリフトLINBDCよりも大きい領域では、有効圧縮比ECRは、吸気リフトLIFTINが大きいほど、より低くなり、最大リフトLINMAXのときに最小値ECRMINになる。
【0037】
また、吸気リフト可変機構50は、モータ58を駆動するための電源として、バッテリ59を備えている。このバッテリ59は、クランクシャフト3fに接続されたジェネレータ(図示せず)に接続されている。このジェネレータがエンジン3で回転駆動されることによって発電が行われ、発電された電力はバッテリ59に充電される。
【0038】
図5に示すように、吸気リフト復帰機構60は、アーム61および2つのコイルばね62,63を備えている。このアーム61は、その基端部がコントロールシャフト56に固定されており、それにより、コントロールシャフト56と一体に回動する。
【0039】
また、コイルばね62は、その両端部がアーム61の先端部とシリンダヘッド3cの取付部64にそれぞれ固定されており、アーム61と取付部64の間に圧縮状態で設けられている。同様に、コイルばね63は、その両端部がアーム61の先端部とシリンダヘッド3cの取付部65にそれぞれ固定されており、アーム61と取付部65の間に圧縮状態で設けられている。
【0040】
以上の構成により、コントロールシャフト56モータ58への電力供給が停止されると、コントロールシャフト56は、例えば図5(a)に示す位置から、コイルばね62,63のばね力によって、同図(b)に示すデフォルト位置に復帰する。このデフォルト位置は、吸気リフトLIFTINが最小リフトLINMINになる位置に設定されている。
【0041】
また、吸気リフト可変機構50には、コントロールシャフト56の回転角度(以下「CS角」という)ACSを検出するCS角センサ21が設けられており、その検出信号はECU2に出力される。
【0042】
一方、排気側動弁機構70は、カム駆動式のものであり、回転自在の排気カムシャフト81と、排気カムシャフト81に一体に設けられた排気カム82と、ロッカアームシャフト(図示せず)と、ロッカアームシャフトに回動自在に支持されるとともに、排気弁9,9の上端にそれぞれ当接する2つのロッカアーム(図示せず)などを備えている。
【0043】
排気カムシャフト81は、排気スプロケットおよびタイミングチェーン(いずれも図示せず)を介して、クランクシャフト3fに連結されており、クランクシャフト3fが2回転するごとに1回転する。排気カムシャフト81が回転すると、ロッカアームが排気カム82で押圧され、ロッカアームシャフトを中心として回動することにより、排気弁9,9が開閉される。
【0044】
一方、前記クランクシャフト3fには、クランク角センサ22が設けられている。このクランク角センサ22は、クランクシャフト3fに取り付けられたマグネットロータ22aと、MREピックアップ22bで構成され、クランクシャフト3fの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号およびTDC信号を出力する。
【0045】
CRK信号は、所定のクランク角(例えば30゜)ごとに出力される。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。TDC信号は、いずれかの気筒3aにおいてピストン3bが吸気行程開始時のTDC(上死点)付近の所定クランク角度位置にあることを表す信号であり、エンジン3が4気筒タイプの本例では、クランク角180゜ごとに出力される。
【0046】
また、ECU2には、イグニッションスイッチ41から、そのオン/オフ状態を表す検出信号が出力される。なお、エンジン3の運転時に、イグニッションスイッチ41がオフされたときには、インジェクタ4から気筒3a内への燃料の供給が停止され、エンジン3が停止される。
【0047】
また、ECU2には、ブレーキスイッチ42から、ブレーキペダル(図示せず)の踏み込み状態を表す検出信号が出力される。この検出信号は、ブレーキペダルが所定量以上、踏み込まれたときにオンになり、それ以外のときにオフになる。
【0048】
さらに、ECU2には、車速センサ23から、車両の速度である車速VPを表す検出信号が、アクセル開度センサ24から、アクセルペダル(図示せず)の開度(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が、シフトポジションセンサ25から、シフトレバーのシフトポジションを表す検出信号が、水温センサ26からエンジン3の冷却水の温度(以下「エンジン水温」という)TWを表す検出信号が、それぞれ出力される。
【0049】
さらに、ECU2には、電流電圧センサ31から、バッテリ59に入出力される電流・電圧値を表す検出信号が、出力される。ECU2は、この検出信号に基づいて、バッテリ59の充電残量(以下「バッテリ残量」という)SOCを算出する。
【0050】
また、エンジン3の吸気管12には、スロットル弁13aが設けられている。このスロットル弁13aには、THアクチュエータ13bが連結されている。スロットル弁13aの開度は、ECU2からの制御信号により、THアクチュエータ13bを駆動することによって制御され、それにより、エンジン3に吸入される吸気量GAIRおよび吸気圧PBが制御される。
【0051】
さらに、スロットル弁13aには、リターンスプリング(図示せず)が取り付けられている。THアクチュエータ13bへの電力供給が停止されたときに、スロットル弁13aの開度は、このリターンスプリングのばね力により、所定の初期開度THDEFに復帰する。
【0052】
また、吸気管12には、スロットル弁13aの上流側に吸気量センサ27が設けられ、下流側には吸気圧センサ28および吸気温センサ29が設けられている。吸気量センサ27は吸気量GAIRを検出し、吸気温センサ29はスロットル弁13aの下流側の吸気の温度(以下「吸気温」という)TAを検出し、それらの検出信号はECU2に出力される。
【0053】
また、吸気圧センサ28は、スロットル弁13aの下流側の吸気圧PBを絶対圧として検出し、その検出信号をECU2に出力する。ECU2は、吸気圧PBと大気圧センサ30で検出された大気圧PAとの差(=PA−PB)を、吸気負圧PBGAとして算出する。
【0054】
また、ECU2は、CPU2a、RAM2b、ROM2cおよび入出力インターフェース(図示せず)などから成るマイクロコンピュータ(図示せず)で構成されている。前述したセンサ21〜30およびスイッチ31,32の検出信号はそれぞれ、ECU2に入力され、入力インターフェースでA/D変換や整形がなされた後、CPU2aに入力される。CPU2aは、これらの検出信号に応じ、ROM2cに記憶された制御プログラムなどに基づいて、各種の演算処理を実行する。例えば、ECU2は、アイドルストップの条件判定処理や、それに伴う制御処理を実行する。
【0055】
なお、本実施形態では、ECU2は、停止位置制御手段、筒内温度取得手段および停止時リフト制御手段に相当する。
【0056】
次に、図6〜図13を参照しながら、本発明の第1実施形態によるエンジン3の制御処理について説明する。本処理は、所定時間ごとに実行される。
【0057】
図6は、吸気弁8の目標リフトALCMDの設定処理を示す。この設定処理では特に、気筒3a内の温度が高いときに、アイドルストップからのエンジン3の再始動時における自着火を防止すべく、吸気リフトLIFTINを増大させる(以下「リフトアップ」という)ために、目標リフトALCMDがより大きな値に設定される。本処理ではまず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、アイドルストップ条件の判定処理を実行する。図7は、そのサブルーチンを示す。本処理ではまず、ステップ11〜17において、以下の(a)〜(g)の条件が成立しているか否かをそれぞれ判別する。
(a)イグニッションスイッチ(SW)41がON状態であること
(b)エンジン回転数NEが所定値NEISTP以上であること
(c)車速VPが所定値VPREF以下であること
(d)アクセル開度APが所定値APREF以下であること
(e)シフトポジション(SP)がP,R,N以外であること
(f)ブレーキスイッチ(SW)42がON状態であること
(g)バッテリ残量SOCが所定値SOCISTP以上であること
【0058】
これらのステップ11〜17の答のいずれかがNOで、(a)〜(g)の条件のいずれかが成立していないときには、アイドルストップ条件が成立していないと判定し、本処理を終了する。一方、ステップ11〜17のすべての答がYESのときには、アイドルストップ条件が成立していると判定し、そのことを表すために、ステップ18において、アイドルストップフラグF_IDLSTPを「1」にセットし、本処理を終了する。このようにアイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」にセットされると、エンジン3を自動停止させるためのアイドルストップ制御が開始される。
【0059】
図6に戻り、前記ステップ1に続くステップ2では、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、アイドルストップ制御中でないときには、ステップ3において、要求トルクPMCMDに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標吸気量GAIRCMDを算出する。このマップでは、目標吸気量GAIRCMDは、要求トルクPMCMDが大きいほど、より大きな値に設定されている。なお、この要求トルクPMCMDは、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて算出される。
【0060】
次に、ステップ4において、算出された目標吸気量GAIRCMDに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標リフトALCMDを算出し、本処理を終了する。このマップでは、目標リフトALCMDは、目標吸気量GAIRCMDが大きいほど、より大きな値に設定されている。なお、図示しないが、エンジン3がアイドル運転状態であるときには、目標リフトALCMDは、最小リフトLINMINに等しいアイドルリフトLINIDL(例えば1mm)に設定される。
【0061】
一方、前記ステップ2の答がYESで、アイドルストップ制御中のときには、ステップ5において、エンジン回転数NEが所定のリフトアップ開始回転数NELIFTUP(例えば400rpm)以下であるか否かを判別する。この答がNOで、NE>NELIFTUPのときには、ステップ6において、目標リフトALCMDを最小リフトLINMINに等しい低温時再始動用リフトALCMDST_COLD(例えば1mm)に設定し、本処理を終了する。
【0062】
一方、上記ステップ5の答がYESで、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUPを下回ったときには、ステップ7において、吸気温TAおよびエンジン水温TWに応じ、図8に示すマップを検索することによって、推定筒内温度TENGを算出する。この推定筒内温度TENGは、エンジン3が完全に停止したとき(NE=0)の気筒3a内の温度の推定値である。図8のマップでは、推定筒内温度TENGは、3つの吸気温TA1〜TA3(TA1>TA2>TA3)に対し、吸気温TAが高いほど、またエンジン水温TWが高いほど、より大きな値に設定されている。なお、吸気温TAが上記の3つの値以外のときには、補間計算により推定筒内温度TENGを算出する。
【0063】
次に、ステップ8において、算出された推定筒内温度TENGが所定のリフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP(例えば100℃)以上であるか否かを判別する。この答がNOで、TENG<TENGLIFTUPのときには、気筒3aの温度が低いことで、自着火が発生するおそれがないため、リフトアップを実施しないものとして、前記ステップ6を実行し、目標リフトALCMDを低温時再始動用リフトALCMDST_COLDに設定する。
【0064】
一方、上記ステップ8の答がYESで、推定筒内温度TENGがリフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP以上のときには、気筒3aの温度が高いことで、自着火が発生するおそれがあるため、リフトアップを実施するものとして、ステップ9において、目標リフトALCMDを低温時再始動用リフトALCMDST_COLDよりも大きな所定の高温時再始動用リフトALCMDST_HOT(例えば10mm)に設定し、本処理を終了する。
【0065】
以上のように吸気弁8の目標リフトALCMDが設定されると、それに対応するコントロールシャフト56のCS角ACSである目標CS角ACSCMDを設定するとともに、検出されたCS角ACSが目標CS角ACSCMDに収束するように、所定の時定数を用いたフィードバック制御によって、CS制御入力U_ACSを算出する。算出されたCS制御入力U_ACSによって、モータ58を駆動し、CS角ACSが目標CS角ACSCMDに収束するように制御され、それにより、吸気リフトLIFTINは、目標リフトALCMDに対して遅れを伴いながら、収束するように制御される。
【0066】
図9は、目標スロットル弁開度TH_CMDの設定処理を示す。本処理ではまず、ステップ21において、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、アイドルストップ制御中でないときには、ステップ22において、エンジン回転数NEに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標負圧PBGACMDを算出する。このマップでは、目標負圧PBGACMDは、エンジン回転数NEが高いほど、より小さな値に、すなわち負圧が小さくなるように設定されている。
【0067】
次に、ステップ23において、吸気負圧PBGAが算出された目標負圧PBGACMDになるように、フィードバック制御によって目標スロットル弁開度TH_CMDを算出し、本処理を終了する。なお、図示しないが、エンジン3がアイドル運転状態であるときには、目標スロットル弁開度TH_CMDは、アイドル開度THIDLに設定される。このアイドル開度THIDLは、エンジン回転数NEが所定のアイドル回転数NEIDLになるように、フィードバック制御によって設定される。
【0068】
一方、上記ステップ21の答がYESで、アイドルストップ制御中のときには、ステップ24において、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUP以下であるか否かを判別する。この答がNOで、NE>NELIFTUPのときには、ステップ25において、目標スロットル弁開度TH_CMDを小さな所定の1段目制御開度TH1(例えば1°)に設定し、本処理を終了する。
【0069】
一方、上記ステップ24の答がYESで、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUPを下回ったときには、ステップ26において、エンジン回転数NEが0であるか否かを判別する。この答がYESで、エンジン3が完全に停止したときには、ステップ27において、目標スロットル弁開度TH_CMDを初期開度THDEFに設定し、本処理を終了する。エンジン3が完全に停止すると、THアクチュエータ13bへの電力供給が停止され、リターンスプリングのばね力により、スロットル弁13aの開度が初期開度THDEFになる。
【0070】
一方、上記ステップ26の答がNOで、エンジン3がまだ停止していないときには、ステップ28において、推定筒内温度TENGがリフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP以上であるか否かを判別する。この答がNOで、TENG<TENGLIFTUPのときには、ステップ28において、目標スロットル弁開度TH_CMDを1段目制御開度TH1よりも大きな所定の2段目制御開度TH2(例えば5°)に設定し、本処理を終了する。
【0071】
一方、上記ステップ28の答がYESのときには、ステップ30において、吸気リフトLIFTINに応じ、図10に示すマップを検索することによって、目標スロットル弁開度TH_CMDを算出し、本処理を終了する。
【0072】
図4との比較から明らかなように、このマップでは、目標スロットル弁開度TH_CMDは、吸気リフトLIFTINに応じ、前述した有効圧縮比ECRと逆の増減傾向になるように設定されている。具体的には、吸気弁リフトLIFTINが低温時再始動用リフトALCMDST_COLDのときに1段目制御開度TH1に設定され、低温時再始動用リフトALCMDST_COLDとBDCリフトLINBDCの間では、吸気リフトLIFTINが大きいほど、より小さくなり、BDCリフトLINBDCのときに最小値THBDCに設定されている。また、吸気弁リフトLIFTINがBDCリフトLINBDCよりも大きい領域では、目標スロットル弁開度TH_CMDは、吸気リフトLIFTINが大きいほど、より大きくなり、高温時再始動用リフトALCMDST_HOTのときに2段目制御開度TH2に設定されている。
【0073】
図11は、本発明の第1実施形態によるアイドルストップからのエンジン3の再始動条件の判定処理を示す。本処理ではまず、ステップ41において、イグニッションスイッチ41がON状態であるか否かを判別し、ステップ42において、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」であるか否かを判別する。ステップ41,42の答のいずれかがNOで、アイドルストップ制御中ではないときには、本処理を終了する。
【0074】
一方、ステップ41,42の答がいずれもYESで、アイドルストップ制御中のときには、ステップ43〜45において、以下の(h)〜(j)の条件が成立しているか否かをそれぞれ判別する。
(h)シフトポジションがDであること
(i)アクセル開度APが所定値APREFよりも大きいこと
(j)ブレーキスイッチ42がOFF状態であること
これらのステップ43〜45の答のいずれかがNOで、(h)〜(j)の条件のいずれかが成立していないときには、ステップ46において、バッテリ残量SOCが所定の下限値SOCLOW1(例えば30%)以下であるか否かを判別する。この答がNOで、SOC>SOCLOW1のときには、本処理を終了する。
【0075】
一方、上記ステップ46の答がYESで、SOC≦SOCLOW1のとき、または、前記ステップ43〜45のすべての答がYESのときには、アイドルストップからのエンジン3の再始動条件が成立していると判定し、そのことを表すために、ステップ47において、アイドルストップフラグF_IDLSTPを「0」にセットするとともに、再始動フラグF_ENGRSTを「1」にセットし、本処理を終了する。
【0076】
図12は、これまでに説明したエンジン3の制御処理によって得られる動作例を、推定筒内温度TENGが高い場合について示している。この例では、時点t1までは、車両は停止しており(VP=0)、また、アイドルストップ条件が成立していないため、アイドルストップフラグF_IDLSTPは「0」にセットされ、アイドル運転が行われている。また、目標リフトALCMDは、アイドルリフトLINIDLに設定され、目標スロットル弁開度TH_CMDはアイドル開度THIDLに設定されている。
【0077】
この状態からアイドルストップ条件が成立すると(t1)、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」にセットされ(ステップ18)、アイドルストップ制御が開始され、エンジン3への燃料供給が停止されるのに伴い、エンジン回転数NEが低下し始める。また、それと同時に、目標リフトALCMDが小さな低温時再始動用リフトALCMDST_COLDに設定されるとともに、目標スロットル弁開度TH_CMDが1段目制御開度TH1に設定される(ステップ25)。また、バッテリ残量SOCは、エンジン回転数NEの低下に伴い、ジェネレータの発電量が減少することで、次第に低下する。なお、実施形態では、低温時再始動用リフトALCMDST_COLDがアイドルリフトTHIDLと同じ値に設定されていることから、アイドルストップ制御の開始前後で、目標リフトALCMDは変化しない。
【0078】
その後、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUPまで低下すると(t2)、目標リフトALCMDは、より大きな高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに設定される(ステップ9)。これに伴い、吸気リフトLIFTINは、前述したフィードバック制御により、高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに向かって遅れを伴いながら次第に増加する。
【0079】
また、目標スロットル弁開度TH_CMDは、図10による設定により、次第に増加する吸気リフトLIFTINに応じて減少し、吸気リフトLIFTINがBDCリフトTHBDCになったときに(t3)、BDC開度THBDCに設定され、その後、増加する。そして、吸気リフトLIFTINが高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに達したときに(t4)、目標スロットル弁開度TH_CMDは、1段目制御開度TH1よりも大きな2段目制御開度TH2に到達する。
【0080】
その後、エンジン回転数NEが0になり(t5)、エンジン3が停止したときに、目標スロットル弁開度TH_CMDが初期開度THDEFに設定される(ステップ30)。一方、目標リフトALCMDは、エンジン3の停止後においても高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに保持され、それに応じて、吸気リフトLIFTINも同様に保持される(t5以降)。
【0081】
その後、エンジン3の停止に伴ってバッテリ59の充電が停止されるのに応じて、バッテリ残量SOCが下限値SOCLOW1まで低下すると(t6)、エンジン3の再始動条件が成立し(ステップ46:YES)、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「0」にセットされ(ステップ47)、吸気リフトLIFTINが高温時再始動用リフトALCMDST_HOTの状態で、エンジン3が再始動される。また、エンジン3の再始動に伴い、目標スロットル弁開度TH_CMDおよびバッテリ残量SOCは増加する(t6以降)。
【0082】
図13は、第1実施形態の変形例による制御処理を図12と同じ運転条件に適用した場合の動作例を示す。図12との比較から明らかなように、この変形例では、アイドルストップ制御が開始されたときに(t1’)、目標スロットル弁開度TH_CMDが、図12の1段目制御開度TH1よりも小さな1段目制御開度TH1B(例えば0.5°)に設定される。このため、その後、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUPまで低下すると(t2’)、目標スロットル弁開度TH_CMDは、より小さな1段目制御開度TH1Bから、一旦、吸気リフトLIFTINに応じた値まで増加した後、吸気リフトLIFTINがBDCリフトLINBDCになるまで減少し、BDC開度THBDCに達する(t3’)。その後の動作は、図12の場合と同じである。
【0083】
以上のように、本実施形態によれば、推定筒内温度TENGがリフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP以上のときに、吸気リフトLIFTINを高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに制御することによって、アイドルストップからの再始動時における有効圧縮比ECRが低下するので、推定筒内温度TENGが高い場合でも、再始動時における自着火の発生を防止することができる。
【0084】
また、目標スロットル弁開度TH_CMDを吸気リフトLIFTINに応じて制御することによって、吸気リフトLIFTINに応じて変化する有効圧縮比ECRをきめ細かく反映させながら、ピストン3bを吸気弁8と排気弁9とのバルブオーバーラップが発生しないような所定位置に精度良く停止させることができる。
【0085】
また、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUP以下になるまで、吸気リフトLIFTINを低温時再始動用リフトALCMDST_COLDに保持するので、気筒3b内に残留した燃料の後燃えを抑制し、この燃焼に起因するエンジン回転数NEの上昇を防止できる。
【0086】
また、アイドルストップ開始直後に目標スロットル弁開度TH_CMDを一旦、1段目制御開度TH1(またはTH1B)に制御するので、エンジン回転数NEを確実に低下させるとともに、不快な振動や異音の発生を防止することができる。また、エンジン回転数NEがリフトアップ開始回転数NELIFTUP以下になったときに、吸気リフトLIFTINに応じた目標スロットル弁開度TH_CMDの設定を開始するので、振動や異音が発生するおそれのない状態で、停止位置制御を行うことができる。さらに、吸気リフトLIFTINの高温時再始動用リフトALCMDST_HOTへの制御と同時に停止位置制御を開始するので、吸気リフトLIFTINに応じた目標スロットル弁開度TH_CMDの設定を適切に行うことができ、それにより、停止位置制御の精度をさらに向上させることができる。
【0087】
また、目標スロットル弁の開度TH_CMDを、吸気リフトLIFTINに応じ、一旦、減少させてから増加させるので、反力が増加する状況では吸気量GAIRを減少させるとともに、反力が減少する状況では吸気量GAIRを増加させることによって、反力を適切に制御することができ、したがって、停止位置制御の精度をさらに向上させることができる。
【0088】
また、吸気弁8の閉弁時期が、ピストン下死点に一致するタイミング、すなわち、有効圧縮比ECRが減少し始めるタイミングで、目標スロットル弁開度TH_CMDを増加させる制御を開始するので、有効圧縮比ECRの変化に応じて反力を適切に制御することができ、したがって、停止位置制御の精度をさらに向上させることができる。
【0089】
また、モータ58への電力供給が停止されたときには、吸気リフト復帰機構60によって吸気弁リフトLIFTINを最小リフトLINMINにするので、エンジン3の再始動時に筒内流動を発生させることができ、それにより、エンジン3の始動性を向上させることができる。また、推定筒内温度TENGがリフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP以上のときに、吸気リフトLIFTINを、アイドルストップ制御中に、高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに制御するとともに、その後のエンジン3の停止中においても、引き続き高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに保持するので、吸気リフト復帰機構60が設けられている場合においても、エンジン3の再始動時における自着火の発生を確実に防止することができる。
【0090】
また、吸気温TAおよびエンジン水温TWに応じて、推定筒内温度TENGを算出するので、より正確な推定筒内温度TENGを取得することができる。また、このようにして算出された推定筒内温度TENGを、上述した停止時リフト制御に用いることによって、自着火の発生をより確実に防止できるとともに、自着火の発生のおそれがないときには、吸気リフトLIFTINが高温時再始動用リフトALCMDST_HOTに増大されることを回避でき、それにより、エンジン3の始動性を向上させることができる。
【0091】
次に、図14および図15を参照しながら、本発明の第2実施形態によるエンジン3の停止制御処理について説明する。前述した第1実施形態では、バッテリ残量SOCが下限値SOCLOW1を下回ったときに、エンジン3を再始動させるのに対し、本実施形態は、バッテリ残量SOCに応じたエンジン3の再始動は行わず、アイドルストップ制御中にバッテリ残量SOCが下限値SOCLOW2を下回ったこと、および、アイドルストップ制御が開始されてから所定時間T1が経過したことの少なくとも一方の条件が成立したときに、吸気リフト可変機構50への電力の供給を停止するものである。
【0092】
図14は、エンジン3の再始動条件の判定処理を示す。この処理は、第1実施形態のエンジン3の再始動条件の判定処理から、ステップ46を削除したものである。このため、第1実施形態では、前述した(h)〜(j)の条件のいずれかが成立していない場合でも、バッテリ残量SOCが下限値SOCLOW1以下であれば、再始動条件が成立するのに対し、第2実施形態では、(h)〜(j)のすべての条件が成立したときに限り、再始動条件が成立する。
【0093】
図15は、吸気リフト可変機構50のモータ58への電力供給停止条件の判定処理を示す。本処理ではまず、ステップ51において、イグニッションスイッチ41がON状態であるか否かを判別する。この答がNOのときには、ステップ56において、電力供給停止フラグF_ELCUTを「1」にセットすることによって、吸気リフト可変機構50のモータ58への電力供給を停止し、本処理を終了する。
【0094】
一方、上記ステップ51の答がYESのときには、ステップ52において、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、アイドルストップ制御中でないときには、ステップ53において、アイドルストップ制御開始後の経過時間を計測するダウンカウント式のアイドルストップタイマの値TMDISTPを所定時間T1(例えば60sec)にセットし、本処理を終了する。
【0095】
一方、上記ステップ52の答がYESで、アイドルストップ制御中のときには、ステップ54において、バッテリ残量SOCが所定の下限値SOCLOW2(例えば30%)以下であるか否かを判別する。この答がNOで、SOC>SOCLOW2のときには、ステップ55において、アイドルストップタイマの値TMDISTPが0であるか否かを判別する。この答がNOのときには、本処理を終了する。
【0096】
一方、上記ステップ55の答がYESで、アイドルストップ制御の開始後、所定時間T1が経過したときには、前記ステップ56に進み、電力供給停止フラグF_ELCUTを「1」にセットし、吸気リフト可変機構50のモータ58への電力供給を停止する。
【0097】
また、上記ステップ54の答がYESで、バッテリ残量SOCが下限値SOCLOW2以下になったときには、前記ステップ56に進み、電力供給停止フラグF_ELCUTを「1」にセットし、吸気リフト可変機構50のモータ58への電力供給を停止する。
【0098】
以上のように、本実施形態によれば、アイドルストップ制御の開始後、所定時間T1が経過したとき、または、アイドルストップ制御中にバッテリ残量SOCが下限値SOCLOW2以下になったときに、吸気リフト可変機構50のモータ58への電力供給を停止するので、アイドルストップ時間が長くなったときにバッテリ残量SOCが過小になることを防止し、吸気リフト可変機構50の駆動に必要な電力を確保することができる。また、所定時間T1の経過に伴い、気筒3b内の温度が低下し、自着火の発生のおそれがなくなったと推定されるときに、吸気リフトLIFTINを最小リフトLINMINに復帰させるので、それにより、エンジン3の始動性を向上させることができる。
【0099】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、アイドルストップ開始直後に目標リフトALCMDとして設定される低温時再始動用リフトALCMDST_COLDを、最小リフトLINMINに設定しているが、これに限らず、高温時再始動用リフトALCMDST_HOTよりも小さな他の適当な値に設定してもよい。
【0100】
また、実施形態では、吸気リフトLIFTINとして、CS角ACSに応じて算出し、停止時リフト制御に用いているが、吸気リフトLIFTINを直接、検出してもよく、あるいは、吸気リフトLIFTINに代えて、これを表す他の適当なパラメータ、例えばCS角ACSをそのまま用いてもよい。
【0101】
また、実施形態では、推定筒内温度TENGの算出を、吸気温TAおよびエンジン水温TWの両方に応じて行っているが、いずれか一方に応じて行ってもよい。また、エンジン3の温度としてエンジン水温TWを用いているが、これに代えて、エンジン3の温度を表す他の適当なパラメータ、例えば排気管14内の温度を検出し、その検出値を用いてもよい。
【0102】
また、実施形態では、低温時再始動用リフトALCMDST_COLD、高温時再始動用リフトALCMDST_HOT、リフトアップ開始回転数NELIFTUP、リフトアップ実施筒内温度TENGLIFTUP、1段目制御開度TH2および2段目制御開度TH2は固定値であるが、大気圧PAや吸気温TAに応じて補正してもよい。
【0103】
また、実施形態は、本発明を車両に搭載されたガソリンエンジンに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、ガソリンエンジン以外のディーゼルエンジンなどの各種のエンジンに適用してもよく、また、車両用以外のエンジン、例えば、クランク軸を鉛直に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジンにも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 制御装置
2 ECU(停止位置制御手段、筒内温度取得手段、停止時リフト制御手段)
3 エンジン(内燃機関)
3a 気筒
3b ピストン
8 吸気弁
12 吸気管(吸気通路)
13a スロットル弁(吸気量調整弁)
13b THアクチュエータ(停止位置制御手段)
22 クランク角センサ(回転数検出手段)
26 水温センサ(温度検出手段)
29 吸気温センサ(温度検出手段)
50 吸気リフト可変機構(可変動弁機構)
58 モータ(停止時リフト制御手段、アクチュエータ)
60 吸気リフト復帰機構(復帰機構)
LIFTIN 吸気リフト(吸気弁のリフト)
TH_CMD 目標スロットル弁開度(スロットル弁の開度)
GAIR 吸気量
TENG 推定筒内温度(気筒内の温度)
TENGLIFTUP リフトアップ実施筒内温度(所定温度)
ALCMDST_COLD 低温時再始動用リフト(最小リフト)
ALCMDST_HOT 高温時再始動用リフト(所定リフト)
NE エンジン回転数(内燃機関の回転数)
NELIFTUP リフトアップ実施回転数(所定回転数)
ECR 有効圧縮比
TA 吸気温(吸気の温度)
TW エンジン水温(内燃機関の温度)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気弁のリフトを連続的に変更可能な可変動弁機構と、吸気通路に設けられ、開度を変更することによって吸気量を調整するスロットル弁とを有し、所定の停止条件が成立したときに自動停止される内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関が自動停止された後、前記スロットル弁の開度を制御することによって、前記内燃機関のピストンの停止位置を所定位置に制御する停止位置制御手段と、
前記内燃機関の気筒内の温度を取得する筒内温度取得手段と、
前記内燃機関が自動停止された後、前記取得された気筒内の温度が前記所定温度以上のときに、前記吸気弁のリフトを所定の最小リフトよりも大きな所定リフトに制御する停止時リフト制御手段と、を備え、
前記停止位置制御手段は、前記停止時リフト制御手段によって制御される前記吸気弁のリフトに応じて、前記スロットル弁の開度を制御することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段をさらに備え、
前記停止時リフト制御手段は、前記検出された内燃機関の回転数が所定回転数以下になるまで、前記吸気弁のリフトを前記最小リフトに保持し、前記内燃機関の回転数が前記所定回転数以下になったときに、前記所定リフトへの制御を開始することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記停止位置制御手段は、前記内燃機関の回転数が前記所定回転数以下になるまで、前記スロットル弁を閉弁側に制御し、前記内燃機関の回転数が前記所定回転数以下になったときに、前記吸気弁のリフトに応じた前記スロットル弁の制御を開始することを特徴とする、請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記可変動弁機構は、前記吸気弁のリフトが前記最小リフトから増大するにつれて、有効圧縮比が一旦、増加した後、減少するように構成されており、
前記停止位置制御手段は、前記内燃機関の回転数が前記所定回転数以下になった後、前記吸気弁のリフトに応じて、前記スロットル弁を一旦、閉弁側に制御してから、開弁側に制御することを特徴とする、請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記可変動弁機構は、前記吸気弁のリフトが変化するにつれて、前記吸気弁の閉弁時期が変化するように構成されており、
前記停止位置制御手段による前記スロットル弁の開弁側への制御を開始するタイミングは、前記吸気弁のリフトの増大に応じて変化する前記吸気弁の閉弁時期が前記ピストンが下死点に位置するタイミングと一致するタイミングに設定されていることを特徴とする、請求項4に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記可変動弁機構は、電動式のアクチュエータと、当該アクチュエータへの電力供給が停止されたときに前記吸気弁のリフトを前記所定リフトよりも小さな所定のデフォルト状態に復帰させる復帰機構と、をさらに有し、
前記停止時リフト制御手段は、前記吸気弁のリフトを前記所定リフトに制御した後、前記内燃機関の自動停止中に、前記吸気弁のリフトを前記所定リフトに保持するように前記アクチュエータへの電力供給を継続することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記内燃機関に吸入される吸気の温度、および前記内燃機関の温度の少なくとも一方を検出する温度検出手段をさらに備え、
前記筒内温度取得手段は、前記検出された吸気の温度および内燃機関の温度の少なくとも一方に応じて、前記気筒内の温度を算出することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項1】
吸気弁のリフトを連続的に変更可能な可変動弁機構と、吸気通路に設けられ、開度を変更することによって吸気量を調整するスロットル弁とを有し、所定の停止条件が成立したときに自動停止される内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関が自動停止された後、前記スロットル弁の開度を制御することによって、前記内燃機関のピストンの停止位置を所定位置に制御する停止位置制御手段と、
前記内燃機関の気筒内の温度を取得する筒内温度取得手段と、
前記内燃機関が自動停止された後、前記取得された気筒内の温度が前記所定温度以上のときに、前記吸気弁のリフトを所定の最小リフトよりも大きな所定リフトに制御する停止時リフト制御手段と、を備え、
前記停止位置制御手段は、前記停止時リフト制御手段によって制御される前記吸気弁のリフトに応じて、前記スロットル弁の開度を制御することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段をさらに備え、
前記停止時リフト制御手段は、前記検出された内燃機関の回転数が所定回転数以下になるまで、前記吸気弁のリフトを前記最小リフトに保持し、前記内燃機関の回転数が前記所定回転数以下になったときに、前記所定リフトへの制御を開始することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記停止位置制御手段は、前記内燃機関の回転数が前記所定回転数以下になるまで、前記スロットル弁を閉弁側に制御し、前記内燃機関の回転数が前記所定回転数以下になったときに、前記吸気弁のリフトに応じた前記スロットル弁の制御を開始することを特徴とする、請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記可変動弁機構は、前記吸気弁のリフトが前記最小リフトから増大するにつれて、有効圧縮比が一旦、増加した後、減少するように構成されており、
前記停止位置制御手段は、前記内燃機関の回転数が前記所定回転数以下になった後、前記吸気弁のリフトに応じて、前記スロットル弁を一旦、閉弁側に制御してから、開弁側に制御することを特徴とする、請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記可変動弁機構は、前記吸気弁のリフトが変化するにつれて、前記吸気弁の閉弁時期が変化するように構成されており、
前記停止位置制御手段による前記スロットル弁の開弁側への制御を開始するタイミングは、前記吸気弁のリフトの増大に応じて変化する前記吸気弁の閉弁時期が前記ピストンが下死点に位置するタイミングと一致するタイミングに設定されていることを特徴とする、請求項4に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記可変動弁機構は、電動式のアクチュエータと、当該アクチュエータへの電力供給が停止されたときに前記吸気弁のリフトを前記所定リフトよりも小さな所定のデフォルト状態に復帰させる復帰機構と、をさらに有し、
前記停止時リフト制御手段は、前記吸気弁のリフトを前記所定リフトに制御した後、前記内燃機関の自動停止中に、前記吸気弁のリフトを前記所定リフトに保持するように前記アクチュエータへの電力供給を継続することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記内燃機関に吸入される吸気の温度、および前記内燃機関の温度の少なくとも一方を検出する温度検出手段をさらに備え、
前記筒内温度取得手段は、前記検出された吸気の温度および内燃機関の温度の少なくとも一方に応じて、前記気筒内の温度を算出することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−140896(P2011−140896A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1401(P2010−1401)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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