内燃機関の始動制御装置
【課題】低温下であっても良好な機関始動性を確保することができる内燃機関の始動制御装置を提供すること。
【解決手段】ECUは、S10においてモータリング処理を実行し、S13において、モータリングされているときの内燃機関の回転速度に対応する目標吸入空気量を取得する。その後、S14に進み、検出した吸入空気量と、S13で取得した目標吸入空気量とを比較して、インテークマニホールドやサージタンクにおける流路抵抗が増大しているか否かを判定する。そして、流路抵抗が増大していると判定した場合、スロットルバルブのスロットル開度を増大補正する吸入空気量補正始動を実行する。
【解決手段】ECUは、S10においてモータリング処理を実行し、S13において、モータリングされているときの内燃機関の回転速度に対応する目標吸入空気量を取得する。その後、S14に進み、検出した吸入空気量と、S13で取得した目標吸入空気量とを比較して、インテークマニホールドやサージタンクにおける流路抵抗が増大しているか否かを判定する。そして、流路抵抗が増大していると判定した場合、スロットルバルブのスロットル開度を増大補正する吸入空気量補正始動を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR装置を備えた内燃機関の始動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、排気通路と吸気通路とを連通する排気再循環通路を通じて排気通路を流通する排気の一部を吸気通路に再循環させる排気還流装置(以下、EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置という。)を備えた内燃機関の始動制御装置が記載されている。特許文献1に記載の内燃機関の始動制御装置は、内燃機関と電動機とを車両の駆動源として備えたハイブリッド車両に搭載され、例えば、電動機の動力のみで車両の走行が可能なときに内燃機関を自動停止させ、その後、内燃機関の動力が必要になると内燃機関を再始動させる制御を行う。また、特許文献1のようにハイブリッド車両に搭載されるものでなくとも、例えば、信号待ち等において車両が一時的に停止する際に内燃機関を停止させ、この車両が発進する際に内燃機関を再始動させるものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−155813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、EGR装置を備えた内燃機関においては、排気再循環通路を通じて還流されるEGRガスが、例えば、EGRクーラやインタークーラにより冷却されて凝縮し、その凝縮水が吸気通路としての吸気マニホールドやサージタンクで滞留することがある。そして、低温下において、凝縮水が滞留している状態にあると、その凝縮水は、インテークマニホールドやサージタンクの内壁で凍結してしまい、その結果、インテークマニホールドやサージタンクにおいて流路抵抗が増大してしまう。
【0005】
そして、仮に、凝縮水の凍結に起因して流路抵抗が増大しても、内燃機関の定常運転中であれば、所定の吸入空気量補正制御が行われるため内燃機関の運転は続行されるが、始動時であると、内燃機関が十分な量の空気を吸入することができなくなり、始動性が悪化するという問題が生じてしまう。とくに、特許文献1に記載されているような停止及び始動が頻繁に行われる内燃機関では、機関始動性の悪化によって受ける影響は大きいにも拘らず、特許文献1に記載の内燃機関の始動制御装置では、上述したような、凝縮水が凍結することで生じる問題に対して何ら対策を講じておらず、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、EGR装置を備えた内燃機関において、低温下であっても良好な機関始動性を確保することができる内燃機関の始動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、排気通路を流れる排気の一部をEGRガスとして吸気通路に再循環させるEGR装置を備える内燃機関の始動制御装置であって、EGRガスに含まれる凝縮水が前記吸気通路の内壁で凍結することに起因する吸入空気量の減少を、スロットル開度を増大補正することで補償し、同吸入空気量の減少が補償された状況のもとで機関始動を実行する始動制御手段を備えることを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、EGRガスに含まれる凝縮水が吸気通路の内壁で凍結し、これにより吸気通路の流路抵抗が増大して吸入空気量が減少した場合であっても、その減少をスロットル開度の増大補正により補償し、その補償された状況のもとで機関始動が行われるようになる。そのため、低温下であっても良好な機関始動性を確保することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記内燃機関の吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、所定の始動条件が成立したときに電動機によって停止状態の内燃機関を予備駆動する予備駆動手段と、予備駆動中に前記内燃機関の吸入空気量が減少していることを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可する許可手段と、を備えたことを要旨とする。
【0010】
定常運転時に吸気通路に凍結が生じていることによって吸気通路の流路抵抗が増大していても、その凍結していた凍結物が内燃機関の停止中に融解して、始動時には吸気通路の流路抵抗が低下することがある。そのため、仮に、定常運転時の吸入空気量に基づいて、始動制御手段によるスロットル開度の増大補正を行うようにした場合、その後の機関始動時において流路抵抗が低下している場合には、機関回転速度が吹き上がる懸念がある。
【0011】
この点、上記発明では、内燃機関の予備駆動中に吸入空気量が減少していることを条件に、許可手段がスロットル開度の増大補正を許可するようにしているため、スロットル開度の増大補正を行った後、速やかに機関始動を行える。したがって、適切な吸入空気量にして機関始動を行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、機関回転速度に基づいて目標吸入空気量を規定するマップを記憶する記憶手段を備え、前記許可手段は、前記内燃機関の予備駆動時の吸入空気量が予備駆動時の機関回転速度に基づく前記目標吸入空気量よりも小さいことを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可し、前記始動制御手段は、前記内燃機関の吸入空気量を前記目標吸入空気量に近づけるように前記スロットル開度を増大補正することを要旨とする。
【0013】
この発明では、始動制御手段は、スロットル開度を増大補正して、内燃機関の吸入空気量を目標吸入空気量に近づけた後に内燃機関を始動させることができ、良好な機関始動性を確保することができるようになる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記始動制御手段は、前記内燃機関の前記予備駆動時の吸入空気量と前記目標吸入空気量との差分に応じた前記スロットル開度の増大補正を行うことを要旨とする。
【0015】
この発明では、予備駆動時において目標吸入空気量に対して内燃機関の吸入空気量の減少量が大きい程、スロットルバルブを通じて流入する空気を増大させることができる。そのため、内燃機関の始動時に、内燃機関の吸入空気量は目標吸入空気量に対して過不足のない状態にすることができ、より良好な機関始動性を確保することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記EGR装置は前記吸気通路に再循環させる前記EGRガスの量を可変とするEGRバルブを含み、前記内燃機関に対する燃料供給を中断する燃料カット制御を実行する燃料カット制御手段と、前記燃料カット制御手段による燃料カット制御の実行中に前記EGRバルブを強制的に開閉するバルブ制御手段と、前記EGRバルブを開閉したときの前記吸気通路内の圧力推移が予め設定された判定用圧力推移とは異なることを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可する許可手段と、を備えたことを要旨とする。
【0017】
この発明では、吸気通路の流路抵抗の大きさに応じて変わる吸気通路の圧力推移に基づいてスロットル開度の増大補正を行うか否かを決めることができ、良好な機関始動性を確保できる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記許可手段は、前記EGRバルブに強制閉弁指令が出力されてから前記EGRバルブが閉弁する間、又は前記EGRバルブに強制開弁指令が出力されてから前記EGRバルブが開弁する間における前記吸気通路内の圧力推移が、前記判定用圧力推移とは異なることを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可することを要旨とする。
【0019】
ここで、EGRバルブが開弁状態から閉弁状態又は閉弁状態から開弁状態に移行する過渡時において、吸気通路内の圧力変化は大きく、凝縮水の凍結が起きた場合と起きていない場合とにおける圧力変化の違いも顕著になる。そのため、この発明では、EGRバルブの過渡時における吸気通路内の圧力推移を判定用圧力推移と比較することで、スロットル開度の増大補正を許可するか否かを決定するため、吸気通路の流路抵抗に応じてより適切な始動を行うことができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記EGRバルブに強制閉弁指令が出力されてから前記EGRバルブが閉弁する間、又は前記EGRバルブに強制開弁指令が出力されてから前記EGRバルブが開弁する間における前記吸気通路の圧力推移に基づいて、単位時間当たりの圧力変化量を算出する算出手段を備え、前記許可手段は、前記算出手段によって算出された前記圧力変化量が前記判定用圧力推移から求められる圧力変化量とは異なることを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可することを要旨とする。
【0021】
ここで、EGRバルブの開弁状態が過渡状態である期間は内燃機関の運転状況に応じて変わる。そのため、EGRバルブに対して閉弁指令又は開弁指令が出力されてから所定時間後の吸気通路内の圧力値に基づいて、許可手段がスロットル開度の増大補正を許可するか否かを決定する場合、内燃機関の運転状況によっては、EGRバルブが閉弁状態又は開弁状態になった後の吸気通路内の圧力値に基づいてスロットル開度の増大補正を許可するか否かを決定することになる。ところが、このような場合には、凝縮水の凍結が起きた場合と起きていない場合とにおける違いが現れ難いため、許可手段は吸気通路の流路抵抗の大きさに応じた判断を精度よく行えなくなることが懸念される。
【0022】
この点、上記発明では、強制閉弁指令又は強制開弁指令が出力された時点からの単位時間当たりの吸気通路内の圧力変化量を算出し、その圧力変化量を判定用圧力推移から求められる圧力変化量と比較することで、許可手段は、始動制御手段によるスロットル開度の増大補正を許可するか否か決定する。そして、ある任意時間の圧力値に基づいてスロットル開度の増大補正を許可するか否かを決定するものではないため、内燃機関の運転状況に拘らず、吸気通路の状態に応じた適切な始動を行うことができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、走行駆動源として前記内燃機関のみを用いるとともに、一時停止している前記内燃機関をクランキングすることにより始動するアイドリングストップ車両に搭載され、前記内燃機関の吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、定常運転時に前記吸入空気量検出手段の検出結果に応じてスロットル開度を補正するスロットル開度補正手段と、を備え、定常運転時に前記スロットル開度補正手段が吸入空気量の減少を補償するためのスロットル開度の増大補正を実行した場合に、前記始動制御手段はスロットル開度の増大補正を実行することを要旨とする。
【0024】
アイドリングストップ車両では、内燃機関を始動する際にクランキングを長時間行うと、運転者は違和感を受けるため、クランキングの時間には限度がある。そして、クランキングを長時間行えない場合、クランキング時には吸入空気量検出手段が流量検出を行うために必要な流量を確保し難い。そのため、吸入空気量検出手段がクランキング時に吸入空気量を検出し、その検出した吸入空気量に基づいてスロットル開度を増大補正するか否か決定する場合、実際の吸気通路の流路抵抗に応じた始動を精度よく行えなくなる虞があった。
【0025】
この点、上記発明では、吸気通路に十分な流量を確保可能な定常運転時にスロットル開度補正手段がスロットル開度の増大補正を行ったか否かによって、始動制御手段はスロットル開度の増大補正を行うか否かを決定する。したがって、始動制御手段は定常運転時のスロットル開度補正手段の補正態様に応じてスロットル開度の増大補正を行うか否かを決定するため、クランキング時に吸気通路を流れる空気の流量に拘わらず、吸気通路の流路抵抗に応じた適切な始動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかる内燃機関の始動制御装置を具体化した第1実施形態において、これが適用される内燃機関が搭載される車両を示す概略構成図。
【図2】同実施形態の内燃機関とその周辺構成を示す概略構成図。
【図3】同実施形態における再始動制御の処理手順を示すフローチャート。
【図4】目標吸入空気量に対する吸入空気量の差分と、スロットル開度を補正する補正係数との関係を示すグラフ。
【図5】再始動制御を実行したときの吸入空気量及びスロットル開度の変化態様を示すタイミングチャート。
【図6】第2実施形態における再始動制御の処理手順を示すフローチャート。
【図7】同実施形態において閉弁指令を出力した時点からの吸気管圧力の圧力推移及び判定用圧力推移を示すグラフ。
【図8】判定用吸気管圧力値に対する吸気管圧力値の差分と、スロットル開度を補正する補正係数との関係を示すグラフ。
【図9】第3実施形態において閉弁指令を出力した時点からの吸気管圧力の圧力推移及び判定用圧力推移を示すグラフ。
【図10】同実施形態において、判定用圧力の圧力変化量に対する吸気管圧力の圧力変化量の差分と、スロットル開度を補正する補正係数との関係を示すグラフ。
【図11】第4実施形態において、第4実施形態の始動制御装置が適用される内燃機関が搭載される車両の一部を示す概略構成図。
【図12】(a)は内燃機関の定常運転中に行われる吸入空気量補正制御の処理手順を示すフローチャート、(b)は再始動制御の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明にかかる内燃機関の始動制御装置を具体化した第1実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
【0028】
図1に示すように、車両11は、駆動源として内燃機関12と電動機13とを有するハイブリッド車両である。これら内燃機関12及び電動機13により出力された動力は、変速機14を介して駆動輪15に伝達される。
【0029】
そして、この内燃機関12から出力された動力は、同機関12に接続された動力分配機構16により、駆動輪15に伝達する動力と電動発電機18に伝達する動力とに分配される。こうして内燃機関12から伝達された動力に基づき同電動発電機18で発生した電力は、電力変換部19を介してバッテリ20に供給される。なお、内燃機関12の始動時には、バッテリ20から電力が供給されることにより、この電動発電機18がスタータとして機能する。
【0030】
電動機13は、蓄電装置であるバッテリ20に蓄電された電力が供給されることにより動力を出力する。この電動機13は、車両11の減速時や制動時等に駆動輪15から受ける回転力を用いて発電する。発電された電力は電力変換部19に出力されるとともに、同電力変換部19を介してバッテリ20に供給される。
【0031】
電力変換部19は、インバータやコンバータなどから構成されており、電動機13や電動発電機18から入力される交流電力を直流電力に変換するとともにその電圧をバッテリ20の電圧レベルに変換してバッテリ20に出力する。また、バッテリ20から供給される直流電力を交流電力に変換するとともに昇圧して、同電力を電動機13又は電動発電機18に供給する。
【0032】
バッテリ20は、充放電可能な蓄電装置であって、例えばニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池で構成される。このバッテリ20は、電力変換部19を介して電動機13及び電動発電機18へ電力を供給するとともに、電動機13及び電動発電機18から電力変換部19を介して充電される。具体的には、上記電動機13及び電動発電機18で発電されて電力変換部19に出力される電力が充電される。このバッテリ20には、同バッテリ20の充電状態(SOC:State of Charge)を検知するためのバッテリセンサ20aが取り付けられている。
【0033】
次に、図2を参照して、内燃機関12とその周辺構成について説明する。
図2に示すように、内燃機関12の気筒内には、ピストン21が往復動可能に収容されており、このピストン21の頂面と気筒内の内周面とによって燃焼室22が区画形成されている。この燃焼室22には、同燃焼室22に吸入空気を供給する吸気通路23と、同燃焼室22から排気が排出される排気通路24とが接続されている。
【0034】
燃焼室22には、この燃焼室22内に燃料を噴射供給する燃料噴射弁25と、燃焼室22内で空気と燃料との混合気を点火する点火プラグ26とが設けられている。また、ピストン21は、内燃機関12の出力軸であるクランク軸27に接続されている。このクランク軸27は、燃焼室22での混合気の燃焼によるピストン21の往復動に伴い回転する。このクランク軸27の回転は、上述したように、変速機14(図1参照)を介して、車両11の駆動輪15(図1参照)に伝達される。
【0035】
吸気通路23には、同通路23を流通する吸入空気の量(吸入空気量)を調整するスロットルバルブ28と、同バルブ28の開度を調節するスロットル用アクチュエータ29とが設けられている。また、スロットルバルブ28には、同バルブ28の開度に応じた信号を出力するスロットルバルブ開度センサ30が取り付けられている。そして、そのスロットルバルブ28よりも下流側には、吸気通路23の一部であるとともに下流側部分が気筒別に分岐された吸気管23aが設けられている。
【0036】
この吸気管23aには、吸気脈動を抑制するための沈静槽であるサージタンク23bが一体に形成されている。吸気管23aは、その下流側部分が、吸気ポートを介して各気筒の燃焼室22に接続されている。この吸気管23aには、サージタンク23bよりも下流側に、その壁面温度を検出するための吸気温度センサTuが設置されている。
【0037】
そして、内燃機関12には、排気通路24を流通する排気の一部を吸気通路23に再循環させる排気再循環(以下、「EGR」という)装置32が設けられている。
このEGR装置32は、排気通路24と吸気通路23とを連通するEGR通路33と、同EGR通路33を流通する排気の量を調整するEGRバルブ34とを含んで構成されている。EGR通路33は、排気通路24の途中から分岐して、サージタンク23bに接続されている。このEGRバルブ34には、同バルブ34の開度を調節するEGR用アクチュエータ35と、EGRバルブ34の開度に応じた信号を出力するEGRバルブ開度センサ36が設けられている。そして、このEGR用アクチュエータ35の駆動を通じてEGRバルブ34が開弁されると、排気通路24の排気の一部がサージタンク23bに導入されて燃焼室22に再循環される。
【0038】
EGR通路33には、同EGR通路33を流通する排気を冷却するEGRクーラ37が配設されている。このEGRクーラ37は、EGR通路33を流通する排気と機関冷却水との熱交換を行うことにより排気を冷却する。なお、こうした水冷式のEGRクーラのみならず、空冷式のEGRクーラを採用するようにしてもよい。
【0039】
内燃機関12及び上記車両11には、上述した各種センサに加えてさらに種々のセンサが設けられている。こうしたセンサとして、例えば、機関回転速度を検出するための回転速度センサ38、機関冷却水の温度を検出するための機関水温センサ39、吸気通路23においてスロットルバルブ28よりも下流側における吸気の圧力(以下、「吸気管圧力」という)を検出するための吸気管圧力センサ41、内燃機関12の吸入空気量GAを検出するための吸入空気量検出手段としてのエアフロメータ31等が設けられている。
【0040】
これら各センサの出力信号は、電子制御装置(以下、「ECU」という。)40に入力される。ECU40には、各種演算処理を実行する中央処理装置(CPU)、各種制御プログラムや演算マップ及び制御の実行に際して算出されるデータ等が記憶保持されるメモリ、A/D変換器、入出力インターフェイス等が設けられている(いずれも図示略)。また、記憶手段としてのECU40は、内燃機関12の回転速度に応じた目標吸入空気量Gbを規定したマップを記憶している。そして、ECU40は、入力された信号に基づき車両11の走行状態や内燃機関12の運転状態等、各種装置の状態を把握して各種制御を実行する。例えば、ECU40は、燃料噴射弁25から適切な時期に適切な量の燃料を噴射供給する燃料噴射制御、点火プラグ26の点火時期を調整して点火する点火時期制御、スロットルバルブ28の開度を調整すべくスロットル用アクチュエータ29を駆動するスロットル制御を適宜実行する。また、その他に、ECU40はバッテリセンサ20aからの信号に基づきバッテリ20の充電状態(SOC)を検知して、同SOCを所定範囲に保持するバッテリ20の充放電制御を適宜実行する。
【0041】
さらに、ECU40は、窒素酸化物(NOx)の排出量の低減や燃費の向上を図るべく、EGR通路33を通じて排気の一部を燃焼室22に再循環させるEGR制御を実行するようになっている。EGR制御は、内燃機関12の運転中、所定の条件が成立したときに実行される。EGR制御では、回転速度センサ38により検出される機関回転速度や、エアフロメータ31により検出される吸入空気量GA等に基づいて内燃機関の運転状態が把握される。そして、この把握された機関運転状態に適合した排気量がEGR通路33を介して燃焼室22に再循環されるように、EGR用アクチュエータ35の駆動を通じてEGRバルブ34の開度が調整される。EGR制御によってEGR通路33に流入した排気は、上述したEGRクーラ37において冷却された後、燃焼室22に再循環されるようになっている。
【0042】
また、ECU40は、車両11の走行中、燃料噴射弁25からの燃料噴射を中断する燃料カット制御を実行し、なおかつ、EGRバルブ34を強制的に開閉する制御を行うことがある。例えば、このような制御としては、車両11の減速走行中に、EGR装置32の異常の有無を診断するために行われる異常診断制御がある。異常診断制御では、EGRバルブ34の開閉に伴う吸気管圧力の圧力変化量を求め、この圧力変化量に基づいてEGR装置32の異常の有無を診断する。燃料カット制御手段は、ECU40によって構成されている。また、バルブ制御手段は、ECU40及びEGR用アクチュエータ35によって構成されている。
【0043】
また、ECU40は、車両11の要求駆動力や内燃機関12の要求負荷、及びバッテリ20のSOC等を考慮して、内燃機関12及び電動機13の両方に要求される出力をそれぞれ算出するとともに、要求される出力が得られるようにこれら内燃機関12及び電動機13を制御する。
【0044】
具体的には、ECU40は、車両11の要求駆動力が電動機13の動力のみで得られると判定し、且つバッテリ20のSOCが所定範囲にあると判定した場合には、内燃機関12の「停止条件」が成立したと判定する。このときに、ECU40は、内燃機関12の自動停止制御を実行して、内燃機関12を停止状態とし電動機13の動力のみを利用して車両11を走行させる。
【0045】
一方、ECU40は車両11の要求駆動力を得るためには内燃機関12の動力が必要であると判定した場合や、バッテリ20のSOCが所定値を下回っていると判定した場合には、内燃機関12の「停止条件」が不成立で内燃機関12の「始動条件」が成立していると判定する。このとき、ECU40は内燃機関12を再始動するための再始動制御を実行するようになる。
【0046】
そして、内燃機関12が始動されると、内燃機関12及び電動機13の両方の動力により車両11が走行状態になる。すなわち、本実施形態の車両11は、内燃機関12の停止及び再始動を繰り返し行うことで内燃機関12の間欠運転が行われるようになっている。
【0047】
次に、図3を参照して、再始動制御の処理手順を説明する。
まず、再始動制御が開始されると、S10に進み、モータリング処理が実行される。このモータリング処理では、電動発電機18の動力が内燃機関12に伝達されて内燃機関12が予備駆動される状態になる。そして、ECU40は、S11に進み、吸気温度センサTuの検出結果に基づいて、吸気温度が0℃よりも小さいか否か、すなわち、外気温が氷点下であるか否かを判定する。このとき、否定判定であると凝縮水が凍結する可能性は低いため、S12に進み、通常の機関始動を実行する。通常の機関始動が実行されると、スロットル開度が閉じ側に設定された状態で、所定の燃料噴射制御及び所定の点火時期制御が実行される。その結果、内燃機関12は自律運転するようになる。
【0048】
一方、S11において、ECU40は、肯定判定すると、S13に進む。S13において、ECU40はマップからモータリング時の内燃機関12の回転速度に対応する目標吸入空気量Gbを読み出す。その後、S14に進み、S14において、マップから読み出した目標吸入空気量Gbと、エアフロメータ31の検出結果から得た実際の吸入空気量とを比較する。そして、吸入空気量と目標吸入空気量Gbとが等しい場合、ECU40は、凝縮水の凍結は起きておらず、吸気管23aやサージタンク23bの流路抵抗が小さいと判定し、S12に進む。一方、ECU40は、吸入空気量が目標吸入空気量Gbよりも小さい場合、凝縮水の凍結物が大量にあり吸気管23aやサージタンク23bの流路抵抗が増大していると判定し、S15に進む。
【0049】
S15では、目標吸入空気量Gbと吸入空気量との差分αを算出し、その算出結果に基づいてスロットル開度TAの増大補正を行った後、機関始動を実行する。具体的には、ECU40は、図4に示すマップを参照し、目標吸入空気量Gbと吸入空気量GAとの差分αに対応する補正係数を読み出し、予め設定した基準スロットル開度に対して読み出した補正係数を乗算することで、目標スロットル開度Taを算出する。なお、図4に示すように、目標吸入空気量Gbに対する吸入空気量の差分αと補正係数との関係は、比例関係となっており、目標吸入空気量Gbと吸入空気量との差分αが0の場合、補正係数は1となり、目標吸入空気量Gbと吸入空気量との差分αが大きくなるにつれて補正係数も大きくなる。そして、S15では、ECU40は、スロットルバルブ28のスロットル開度を段階的に増大させるように制御し、最終的に目標スロットル開度Taまで開く。その後、ECU40は、燃料噴射制御及び点火プラグ26の点火時期制御を実行して、内燃機関12を自律運転状態にさせる。なお、ECU40が、S12及びS14で行う燃料噴射制御では、内燃機関12の定常運転時に比べて燃料噴射量が増量されている。また、S10、S14、S15の処理は、それぞれ予備駆動手段、許可手段、始動制御手段の処理に相当する。また、ECU40は、モータリングによって内燃機関12の予備駆動を行う予備駆動手段、及び内燃機関12を始動させる始動制御手段に相当する。
【0050】
次に、ECU40が再始動制御を実行したときの、スロットル開度及び吸入空気量の推移を図5に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。
図5において、時刻t1では、電動発電機18によって内燃機関12のモータリングが開始され、内燃機関12が空気の吸入を開始するようになる。ここで、スロットルバルブ28のスロットル開度TAが閉じ側に設定されているため、凝縮水の凍結が生じていると、内燃機関12の吸入空気量は目標吸入空気量Gbに達せずに、目標吸入空気量Gbよりも少ない状態で推移する。しかし、その後、時刻t2になると、ECU40がスロットル開度の増大補正を開始することで、時刻t2以降、スロットルバルブ28のスロットル開度TAは段階的に増大するようになる。そして、時刻t3において、スロットルバルブ28のスロットル開度TAは目標スロットル開度Taまで達し、それ以降、スロットルバルブ28は目標スロットル開度Taまで開かれた状態で保持される。そのため、時刻t3以降、吸入空気量は目標吸入空気量Gbで保持され、その状態で燃料噴射制御及び点火プラグ26の点火制御が実行されると、内燃機関12は自律運転するようになる。
【0051】
次に、本実施形態における内燃機関の始動制御装置の制御内容を説明する。
車両11では、走行中、燃焼室22での燃焼温度を低下させるために燃焼室22へ排気を再循環させるEGR制御を実行することがある。そのため、車両11においては、燃焼室22への排気の充填効率を向上させることができるとともに、燃焼室22における燃焼温度を低下させることができ、より効果的にNOxの低減や燃費の向上を図ることができるようになる。
【0052】
そして、車両11においては、燃焼室22に排気を再循環させる際、EGRクーラ37によって排気が冷却されることにより凝縮水が発生することがある。この状況で車両11が内燃機関12及び電動機13の両方の動力により走行している状態から、内燃機関12の運転を停止して電動機13の動力のみで走行する状態に移行すると、凝縮水は吸気管23aやサージタンク23bで滞留する。とくに、本実施形態の車両11は、内燃機関12の停止及び始動が頻繁に行われるため内燃機関12が停止状態になる機会が多く、凝縮水はよく滞留する。そして、このような本実施形態の車両11が氷点下の状況にあると、吸気管23aやサージタンク23bで滞留している凝縮水が吸気管23aやサージタンク23bの内壁で凍結してしまい、その結果、吸気管23aやサージタンク23bにおいて流路抵抗が増大する。この状態で内燃機関12の再始動制御が実行されると内燃機関12の吸入空気量が不足して内燃機関12の始動性が悪化する虞があるが、本実施形態では、スロットル開度の増大補正を行うことでスロットルバルブ28を通じて流入する空気を増量させ、内燃機関12の吸入空気量の減少を補償する。そのため、再始動時における内燃機関12の吸入空気量が不足することはなく、氷点下であっても内燃機関12は良好に始動するようになる。
【0053】
この実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)内燃機関12が氷点下の状況にあることで吸気管23aやサージタンク23b内の凝縮水が凍結し、吸気管23aやサージタンク23bで流路抵抗が増大している場合には、内燃機関12を始動する際に、スロットルバルブ28のスロットル開度を増大補正して、内燃機関12の吸入空気量の減少を補償する。したがって、氷点下であっても、始動時に必要な吸入空気量を確保することができ、内燃機関12の良好な始動性を確保できるようになる。
【0054】
(2)内燃機関12の定常運転時にはサージタンク23bや吸気管23a内に凍結物があり流路抵抗が増大していても、内燃機関12が停止している間に外気温度が上昇して凍結物が融解し、始動時にはサージタンク23bや吸気管23aの流路抵抗が低下することがある。そのため、仮に、定常運転時に行う吸入空気量の補正制御によって得られた学習値に基づいて再始動時にスロットルバルブ28の開度を補正する方法を採用すると、定常運転後の内燃機関12の始動時において流路抵抗が低下している場合には、内燃機関12の吸入空気量が過剰になり内燃機関12の回転速度が吹き上がってしまう懸念がある。これに対して、本実施形態では、内燃機関12が始動される直前であるモータリング中における内燃機関12の吸入空気量が目標吸入空気量よりも小さいことを条件に、スロットル開度の増大補正を行うようにしているため、スロットル開度の増大補正を行った後、速やかに機関始動を行える。したがって、吸入空気量が適切な状態で、機関始動を行うことができる。
【0055】
(3)ECU40は、S14において吸入空気量補正始動を実行する場合、モータリング時の内燃機関12の吸入空気量と、マップに記憶された目標吸入空気量Gbとの差分αに応じた補正係数を決定し、その補正係数を基準スロットル開度に乗算して、目標スロットル開度Taを算出する。そして、スロットル開度TAを目標スロットル開度Taまで増大させ、吸入空気量の減少を補償する。したがって、目標吸入空気量Gbに対する実際の内燃機関12の吸入空気量の差分αが大きい程、スロットルバルブ28を通じて多くの空気を流入させることができるようになり、始動時の内燃機関12の吸入空気量は目標吸入空気量に対して過不足のない状態にすることができるため、より良好な機関始動性を確保できる。
【0056】
(4)始動時に行われる燃料噴射制御では、燃料噴射量を定常運転時よりも増量するようになっているため、始動時に吸入空気量が減少すると始動時に噴射された燃料が点火プラグ26にかぶる懸念がある。しかし、本実施形態では、氷点下における始動時の吸入空気量の減少を補償しているため、内燃機関12の始動時に吸入空気量が足りないことで、始動時に噴射された燃料が過剰になり点火プラグ26にかぶることを抑制できる。
【0057】
(5)EGRガスに含まれる凝縮水が凍結して固体になり、そのために始動時の内燃機関12の吸入空気量が減少しても、スロットル開度の増大補正を行うことで内燃機関12の吸入空気量の減少を補償するため、EGRガスの相状態に拘わらず内燃機関12の良好な始動性を確保できる。
【0058】
(6)車両11が氷点下の状況にあっても、ECU40はEGR装置32に対してEGR制御を実行して、排気の一部を還流させることができる。したがって、EGRガスの凝縮水の凍結を回避するために外気温度が氷点下になった場合に排気の還流を中断する制御を行う場合に比べて、本実施形態の内燃機関の始動制御装置では、EGR制御を行う機会を増やすことができる。そのため、内燃機関12の燃費向上に寄与することができる。
【0059】
(7)ECU40は、再始動制御を実行する都度、内燃機関12のモータリング時の吸入空気量に基づいて流路抵抗が増大しているか否かの判定を行うようにしている。すなわち、再始動制御を実行する都度、流路抵抗が増大しているか否かの判定を行うため、機関始動を行う前に吸気管23aやサージタンク23bの流路抵抗の大きさが変わる可能性は低く、実際の流路抵抗に応じた機関始動を行うことができる。
【0060】
(8)ECU40は、電動機13の動力のみを利用した車両11の運転が可能であるとの「停止条件」が成立したと判定した場合には、内燃機関12の自動停止制御を実行する。本実施形態によれば、内燃機関12の良好な再始動性を確保しているため、内燃機関12の間欠運転が行われることで、内燃機関12が頻繁に始動されても、車両11は支障なく走行できる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の始動制御装置を具体化した第2実施形態について、図6〜図8を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、先に説明した再始動制御の処理が図6に示す処理にて変更されて実行される。上記第1実施形態では、モータリング時における内燃機関12の吸入空気量に基づいて吸気管23aやサージタンク23bの流路抵抗が増大しているか否かについての判定処理が行われていたが、本実施形態では、定常運転時の吸気管圧力を検出し、吸気管圧力の圧力推移に基づいて吸気管23aやサージタンク23bの流路抵抗が増大しているか否かについての判定処理を行う点が異なっている。以下、そうした相違点を中心に説明する。
【0062】
まず、ECU40は、定常運転時において、例えば異常診断制御等を実行することで、燃料噴射弁25からの燃料噴射を中断する燃料カット制御を実行している最中にEGRバルブ34を強制的に開閉し、そのときに吸気管圧力を検出する。そして、ECU40は、検出した吸気管圧力を、異常診断制御を開始してからの時刻と対応付けて圧力推移として記憶するようになっている。なお、ECU40が検出する任意時間の吸気管圧力は、その直前の所定期間における値を読み込んで算出した平均値である。また、ECU40は、吸気管23aやサージタンク23bにおける流路抵抗が小さいとみなすことができる圧力推移と同じ判定用圧力推移を予め記憶している。この判定用圧力推移は、予め計算又は実験により求められている。ここで、EGRバルブ34に閉弁指令が入力されてからEGRバルブ34が閉弁する間、すなわち、EGRバルブ34の過渡時に、吸気管圧力の負圧状態は時間の経過と共に高まる。そして、吸気管23aやサージタンク23bに凍結物がある場合には吸気通路23の容積が減少しているため、吸気管圧力が単位時間当たりに負圧になる割合は大きくなる。そのため、吸気管23aやサージタンク23bに凍結物がある場合には吸気管圧力の圧力推移が判定用圧力推移とは異なることになり、吸気管圧力の圧力推移と判定用圧力推移とを比較すれば、吸気管23aやサージタンク23bに凍結物があるか否かを判定できる。
【0063】
次に、図6を参照して、本実施形態において、ECU40が実行する再始動制御の処理手順を説明する。
本制御が実行されると、ECU40は、上記S10、S11と同様の処理であるS20、S21の処理を実行する。そして、S21において、否定判定されると、S22に進み、通常の機関始動が実行される。また、S21において、肯定判定されると、S23に進み、ECU40に記憶している吸気管圧力の圧力推移を読み込む。その後、S24に進み、S24において、読み込んだ吸気管圧力の圧力推移と、ECU40に記憶されている判定用圧力推移とを比較し、サージタンク23bや吸気管23aにおける流路抵抗が増大しているか否かを判定する処理を行う。ここで、吸気管圧力の変化はEGRバルブ34が開弁状態から閉弁状態に移行する過渡時において大きく、凝縮水の凍結が起きた場合と起きていない場合とにおける圧力変化の違いも顕著である。そのため、S24では、EGRバルブ34に閉弁指令が出力された時点から所定時間経過した時刻T1における吸気管圧力値H2を吸気管圧力推移から把握し、把握した吸気管圧力値H2に基づいて判定処理を行う。すなわち、時刻T1において、吸気管圧力推移から把握できる吸気管圧力値H2と、判定用圧力推移から把握できる判定用吸気管圧力値H1とを比較する。なお、時刻T1は、EGRバルブ34が閉弁する前の時刻となるように設定されている。
【0064】
そこで、S24において、ECU40は、EGRバルブ34に閉弁指令を出力してからの時刻T1における吸気管圧力値と判定用吸気管圧力値とが等しい場合、凝縮水の凍結が生じておらず、流路抵抗が小さいと判定し、S22に進む。一方、S24において、ECU40は、図7のA線で示す吸気管圧力の圧力推移と図7のB線で示す判定用圧力推移とが異なっており、吸気管圧力値H2と判定用吸気管圧力値H1との間に差分βが生じている場合、凝縮水の凍結に起因して流路抵抗が大きくなっていると判定し、S25に進む。なお、S24において、ECU40は、時刻T1における吸気管圧力値H2と判定用吸気管圧力値H1との間に差分βが生じている場合、吸気管圧力値H2と判定用吸気管圧力値H1との差分βを一時的に記憶する。S24では、ECU40は、予め記憶しているマップを参照し、吸気管圧力値H2と判定用吸気管圧力値H1との差分βに基づいてスロットル開度TAの増大補正を行う。具体的には、ECU40は、図8に示すマップを参照し、吸気管圧力値H2と判定用吸気管圧力値H1との差分βに対応する補正係数を読み出し、予め設定した基準スロットル開度に対して決定した補正係数を乗算することで、目標スロットル開度Taを算出する。なお、図8に示すように、EGRバルブ34に閉弁指令を出力してからの時刻T1における吸気管圧力値H2と判定用吸気管圧力値H1との差分βと補正係数との関係は、第1実施形態の目標吸入空気量Gbに対する吸入空気量GAの差分αと補正係数との関係と等しくなっている。
【0065】
そして、S25では、スロットルバルブ28のスロットル開度が段階的に増大されるにように制御されて、スロットルバルブ28は目標スロットル開度Taまで開かれる。そのうえで、ECU40は、燃料噴射制御及び点火プラグ26の点火時期制御を実行して、内燃機関12を自立運転状態にさせる。なお、S20、S24、S25の処理は、それぞれ予備駆動手段、許可手段、始動制御手段の処理に相当する。
【0066】
この実施形態によれば、第1実施形態において記載した(1)、(4)〜(8)の作用効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(9)ECU40は、燃料噴射を中断する燃料カット制御の実行中にEGRバルブ34を開閉し、そのときの吸気管23aの圧力推移を記憶する。そして、ECU40は、再始動制御の実行中に、吸気管23aの圧力推移と判定用吸気管圧力推移とを比較して、吸気管23aの圧力推移が判定用圧力推移とは異なることを条件に、スロットル開度の増大補正を行うことを決定する。したがって、吸気管23aやサージタンク23bにおける流路抵抗が増大しているときにはスロットル開度を増大させるようになり、良好な機関始動性を確保することができる。
【0067】
(10)ECU40は、記憶した吸気管23a内の圧力推移を参照し、時刻T1における吸気管23a内の圧力値が予め設定された判定用吸気管圧力値H1よりも負圧になっている場合に、流路抵抗が増大していると判定する。ECU40は、EGRバルブ34が開弁状態から閉弁状態に移行する過渡時における吸気管圧力値H2を同じ時刻T1における判定用吸気管圧力値H1と比較することで、スロットル開度の増大補正を行うか否かを決定する。したがって、吸気管23aやサージタンク23bにおける流路抵抗に応じてより適切な機関始動を実行することができる。
【0068】
(第3実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の始動制御装置を具体化した第3実施形態について、図9及び図10を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、第2実施形態のS24において流路抵抗が増大しているか否かの判定処理を行う際の方法が第2実施形態と異なっており、以下、そうした相違点を中心に説明する。
【0069】
本実施形態では、ECU40が再始動制御を実行したとき、S24において、吸気管圧力推移に基づいて単位時間当たりの吸気管圧力の圧力変化量、及び判定用圧力推移に基づいて単位時間当たりの判定用圧力の圧力変化量を算出する。ここで、吸気管圧力の圧力変化量は閉弁指令が出力されてからEGRバルブ34が閉弁されるまでにおける吸気管23aの圧力推移に基づいて算出されるものである。また、判定用圧力の圧力変化量は、閉弁指令が出力されてからEGRバルブ34が閉弁されるまでの時刻に対応する判定用圧力推移に基づいて算出されるものである。ここで、吸気管23aやサージタンク23bに凍結物がある場合には吸気通路23の容積が減少しているため、吸気管23aの圧力推移は、図9のD線で示すようになり、図9のC線で示す判定用圧力推移よりも吸気管圧力の圧力変化量が増大する側に移行している。そのため、S24において、吸気管圧力の圧力変化量と判定用圧力推移の圧力変化量とを比較し、両者の差分γが所定値よりも小さい場合、ECU40は、凝縮水の凍結が生じておらず、流路抵抗が小さいと判定し、S22に進む。一方、S24において、ECU40は、吸気管圧力の圧力変化量と判定用圧力の圧力変化量とを比較し、両者の差分γが所定値以上である場合、流路抵抗が増大していると判定し、両者の差分γを一時的に記憶する。
【0070】
そして、S25では、ECU40が記憶したマップを参照し、吸気管圧力の圧力変化量と判定用圧力の圧力変化量との差分γから補正係数を決定する。S25では、予め設定した基準スロットル開度に対して決定した補正係数を乗算することで、目標スロットル開度Taを算出する。そして、S25では、スロットルバルブ28のスロットル開度を段階的に増大させて、スロットルバルブ28を目標スロットル開度Taにまで開く。そのうえで、ECU40は、燃料噴射制御及び点火プラグ26の点火時期制御を実行して、内燃機関12を自立運転状態にする。なお、S24の処理は、算出手段の処理に相当する。
【0071】
この実施形態によれば、第1実施形態及び第2実施形態において記載した(1)、(4)〜(9)の作用効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(11)ここで、EGRバルブ34に閉弁指令が入力されてからEGRバルブ34が閉弁状態になるまでのEGRバルブ34の過渡状態である期間は内燃機関の運転状況に応じて変わる。そのため、第2実施形態のようにEGRバルブ34に閉弁指令が入力されてから時刻T1経過したときの吸気管23a内の圧力値から流路抵抗が増大しているか否か判定する場合、内燃機関12の運転状況によっては、EGRバルブ34が閉弁状態になった後の吸気管23a内の圧力値に基づいてスロットル開度の増大補正を行うか否かを決定することになる。ところが、このような場合には、凝縮水の凍結が起きた場合と起きていない場合とにおける違いが現れ難いため、ECU40は、流路抵抗の大きさに応じた判断を精度よく行えなくなることが懸念される。この点、本実施形態のECU40は、記憶した吸気管23a内の圧力推移を参照し、EGRバルブ34に閉弁指令を出力してからの単位時間当たりの吸気管23a内の圧力変化量が予め設定された判定用圧力変化量とは異なっている場合に、流路抵抗が増大していると判定する。したがって、内燃機関12の運転状況によらず、正確な判定を行うことができる。
【0072】
(第4実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の始動制御装置を具体化した第4実施形態について、図11及び図12を参照しつつ、第1実施形態〜第3実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、本発明にかかる内燃機関の始動制御装置が、内燃機関12のみを走行駆動源とする車両11に搭載されている点、内燃機関12の定常運転時の吸入空気量変化に基づいて、流路抵抗が増大しているか否かについて判定処理を行う点が主に異なっている。
【0073】
本実施形態の車両11は、アイドリングストップ車両であり、図11に示すように、内燃機関12は、その機関出力軸であるクランク軸27が、動力分配機構16を介さずに、変速機14と接続されている。内燃機関12の出力は、変速機14によって変速された後、車輪軸(図示しない)に伝達されるようになっている。また、内燃機関12には、機関始動用の電動機であるスタータモータ52が固定されている。そして、スタータモータ52は、クランク軸27に対して駆動連結されている。すなわち、スタータモータ52は、歯車機構53を介してクランク軸27に回転力を伝達可能に構成されている。
【0074】
ECU40は、内燃機関12の始動前に、スタータモータ52を駆動して内燃機関12を所定の速度(例えば、約250rpm)で回転させる予備駆動としてのクランキングを実行する。ECU40は、内燃機関12をクランキングした状態で、燃料噴射制御及び点火時期制御を行い、それによって、内燃機関12を自律運転させるようになっている。
【0075】
また、ECU40には、内燃機関12の回転数及び負荷と、目標吸入空気量Gbとの関係を示すマップが記憶されている。そして、ECU40は、内燃機関12の定常運転時に、実際の吸入空気量と内燃機関12の回転数及び負荷に対応する目標吸入空気量Gbとの間に差分が生じている場合に、その差分を補償するための補正制御を所定の制御周期で実行するようになっている。また、ECU40は、内燃機関12の定常運転時の補正制御で得た、学習値を一時的に保存するように構成されている。
【0076】
次に、図12(a)を参照して、補正制御の処理手順を説明する。
まず、ECU40は、S30において、エアフロメータ31の検出結果に基づいて吸入空気量を得て、S31に進む。S31では、マップから定常運転時の内燃機関12の回転数及び負荷に対応する目標吸入空気量Gbを読み出し、目標吸入空気量GbとS30で得た吸入空気量の差分に基づいて補正値を求める。そして、その補正値に基づいて、スロットルバルブ28のスロットル開度を補正して、吸入空気量の補正を行う。そして、S32に進み、S32では、S31で求めた補正値を学習値として一時的に保存して、補正制御を終了する。なお、S31は、スロットル開度補正手段の処理に相当する。
【0077】
次に、図12(b)を参照して、本実施形態において、一時的に停止された内燃機関12を再始動するときにECU40が実行する再始動制御の処理手順を説明する。
本制御が実行されると、ECU40は、S30において、スタータモータ52を駆動することによって内燃機関12をクランキングする。そして、S41において、ECU40は、ECU40が記憶している学習値を読み込んだ後、S42に進む。S42では、S32で記憶した学習値を用いて、目標スロットル開度Taを算出する。このとき、内燃機関12の定常運転時に凝縮水の凍結が生じて吸入空気量の減少が生じているならば、学習値はスロットル開度を増大補正する値になっている。そのため、S42では、凝縮水の凍結により吸入空気量が減少する場合、その減少を補償するための増大補正を行うようになり、スロットルバルブ28のスロットル開度は段階的に増大される。その後、ECU40は、燃料噴射制御及び点火プラグ26の点火時期制御を実行して、内燃機関12を自立運転状態にさせる。なお、S40、S42の処理は、それぞれ予備駆動手段、始動制御手段の処理に相当する。
【0078】
次に、本実施形態における内燃機関の始動制御装置の制御内容を説明する。
車両11の走行中、内燃機関12は定常運転されており、このときに、内燃機関12の吸入空気量の補正を行ったときに得た学習値が保存される。この状態から、車両11が信号待ち等において一時的に停止した場合、内燃機関12は自動的に停止する。そして、この状態から、車両11が走行を開始する場合に、内燃機関12が氷点下にあることで凝縮水が凍結していても、その場合には、学習値を用いてスロットル開度TAの増大補正を行うため、内燃機関12を支障なく再始動でき、車両11の走行が開始されるようになる。また、ECU40が行う再始動制御では、定常運転時の学習値を用いてスロットル開度TAの増大補正を行うため、内燃機関12のみを駆動源とする車両であって、クランキング時における吸気通路23の空気の流量が少なくとも、凝縮水の凍結に起因して流路抵抗が増大している場合にはスロットル開度TAの増大補正を行って、内燃機関12の良好な機関始動性を確保できる。
【0079】
この実施形態によれば、第1実施形態において記載した(1)、(4)〜(7)の作用効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(12)ここで、アイドリングストップ車両では、内燃機関12を始動する際に、スタータモータ52によるクランキングを長時間行うと、運転者は違和感を受けるため、スタータモータ52によって行われるクランキングの時間には限度がある。しかし、クランキングを長時間行えないと、クランキング時においてエアフロメータ31が流量検出を行うために必要な流量を確保し難く、エアフロメータ31が検出した吸入空気量に基づいてスロットル開度を増大補正するか否かを決定する場合、実際の流路抵抗に応じた始動を精度よく行えなくなる虞があった。この点、この実施形態では、定常運転時の学習値を用いて、再始動時に吸入空気量の減少を補償するためにスロットル開度TAの増大補正を行う。そのため、ECU40は、内燃機関12のみを走行駆動源とする車両11であっても、クランキング時における吸気通路の流量の大小に拘わらず、吸気通路の流路抵抗に応じた適切な機関始動を行うことができる。
【0080】
(13)ECU40は、定常運転時に、定常運転時の内燃機関12の吸入空気量と、マップに記憶された目標吸入空気量Gbとの差分に応じた補正値を決定し、その補正値を学習値とする。そして、再始動制御時には、その学習値を用いて、スロットル開度TAの増大補正を行う。したがって、定常運転時において目標吸入空気量Gbに対して実際の内燃機関12の吸入空気量の差分が大きい程、再始動時にはスロットルバルブ28を通じて流入する空気を多くすることができる。そのため、内燃機関12の始動時に、内燃機関12は過不足なく空気を吸入することができ、より良好な始動性を確保することができる。
【0081】
上述した実施形態は、以下のようにこれを適宜変更した形態にて実施することもできる。
・第1実施形態において、S14で算出した内燃機関12の吸入空気量と比較する目標吸入空気量を求める方法については、とくに限定するものではなく、周知の方法を適宜採用すればよい。例えば、吸気系を、内燃機関のスロットル弁、吸気管、吸気弁等の要素毎に分けて、それぞれの物理特性をモデル化して数式で表すエアモデルを利用して吸入空気量を算出してもよい。そして、算出した吸入空気量を内燃機関12の回転速度、アクセル開度、及びエアフロメータ31の検出結果に対応付けて目標吸入空気量としてECU40に予め記憶させてもよい。この場合、再始動制御時には、S14において、エアモデルを利用して算出した目標吸入空気量と、エアフロメータ31の検出結果から算出した吸入空気量とを比較する。そして、吸入空気量が目標吸入空気量よりも小さい場合には、目標吸入空気量と吸入空気量との差分を算出し、その差分に応じた補正係数を決定して、スロットル開度の増大補正を行う。
【0082】
・第2実施形態において、S24で行う比較処理の内容を変更してもよい。例えば、ECU40は、S24において、EGRバルブ34に開弁指令を出力してから所定時間経過したときの吸気管圧力推移を判定用吸気管圧力推移と比較して、流路抵抗が増大しているか否かを判定するようにしてもよい。この場合、ECU40は、EGRバルブ34に開弁指令を出力してからEGRバルブ34が開弁する間における吸気管圧力推移に基づいて、単位時間当たりの吸気管圧力の圧力変化量を算出する。また、ECU40は、開弁指令が出力されてからEGRバルブ34が開弁されるまでの時刻に対応する判定用圧力推移に基づいて、判定用圧力の圧力変化量を算出する。そして、ECU40は、算出した吸気管圧力の圧力変化量と判定用吸気管の圧力変化量とが等しい場合に凝縮水の凍結が生じておらず流路抵抗が小さいと判定する一方、吸気管圧力の圧力変化量と判定用吸気管の圧力変化量とが異なる場合に流路抵抗が増大していると判定する。そして、このような方法で流路抵抗が増大しているか否かを判定するようにすれば、吸気通路23の流路抵抗に応じた適切な始動を行うことができる。
【0083】
・第4実施形態においては、スロットル開度の増大補正を行うか否かを決定する処理を行うようにしてもよい。すなわち、定常運転中の補正制御時に得た学習値に基づいて、流路抵抗が増大しているか否かを判定する処理を行うようにすればよい。そして、例えば、学習値を用いて流路抵抗が増大していると判定した場合には吸入空気量補正始動をONにする一方、流路抵抗が小さいと判定した場合には、通常始動をONにする。そして、吸入空気量補正始動がONの状態で再始動制御を行う場合には、S40〜42の処理を実行し、通常始動がONの状態で再始動制御を行う場合には、通常の始動を実行すればよい。
【0084】
・スロットル開度の増大補正を行うか否かを決定する処理は、再始動制御の実行中に行わなくともよい。例えば、第2実施形態において、定常運転時に行うようにしてもよい。この場合、定常運転時に、吸気管圧力の圧力推移と判定用圧力推移とを比較する処理を行い、流路抵抗が増大しているか否かを判定するようにしてもよい。ECU40によって流路抵抗が増大していると判定された場合には、定常運転時に吸入空気量補正始動をONにする一方、ECU40によって流路抵抗が小さいと判定された場合には、定常運転時に通常始動をONにする。そして、吸入空気量補正始動がONの状態で再始動制御を行う場合には、S23及びS25の処理を実行し、通常始動がONの状態で再始動制御を行う場合には、S22の処理を実行するようにすれば、内燃機関12の良好な始動性を確保できる。
【0085】
・流路抵抗が増大しているか否かを判定する処理の内容を変更してもよい。例えば、第1実施形態におけるS14の処理を省略し、S11において、ECU40は、吸気温度が0℃よりも小さいか否かを判定し、吸気温度が0℃以上であるならば、凝縮水の凍結は起きておらず、流路抵抗も小さいと判定して、S13に進むようにしてもよい。
【0086】
・EGRバルブ開度センサ36を省略してもよい。例えば、EGR用アクチュエータ35がステッパモータによって構成されているのであれば、EGR用アクチュエータ35の他に、EGRバルブ34の開度の検出を目的としたセンサを設けなくともEGRバルブ34の開度を検出することができるため、EGRバルブ開度センサ36を省略してもよい。
【0087】
・本実施形態の始動制御装置が行う機関始動は、ハイブリッド車両やアイドリングストップ車両に搭載された内燃機関12が一時的に停止されている状態で行われるものに限らず、運転者がキースイッチをオンしたときに実行するものであってもよい。
【符号の説明】
【0088】
11…車両、12…内燃機関、18…電動発電機、23…吸気通路、23a…吸気管、23b…サージタンク、24…排気通路、28…スロットルバルブ、29…スロットル用アクチュエータ、31…エアフロメータ、32…EGR装置、33…EGR通路、34…EGRバルブ、35…EGR用アクチュエータ、40…許可手段、始動制御手段、予備駆動手段、燃料カット制御手段、算出手段、及びスロットル開度補正手段としてのECU、41…吸気管圧力センサ、52…スタータモータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR装置を備えた内燃機関の始動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、排気通路と吸気通路とを連通する排気再循環通路を通じて排気通路を流通する排気の一部を吸気通路に再循環させる排気還流装置(以下、EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置という。)を備えた内燃機関の始動制御装置が記載されている。特許文献1に記載の内燃機関の始動制御装置は、内燃機関と電動機とを車両の駆動源として備えたハイブリッド車両に搭載され、例えば、電動機の動力のみで車両の走行が可能なときに内燃機関を自動停止させ、その後、内燃機関の動力が必要になると内燃機関を再始動させる制御を行う。また、特許文献1のようにハイブリッド車両に搭載されるものでなくとも、例えば、信号待ち等において車両が一時的に停止する際に内燃機関を停止させ、この車両が発進する際に内燃機関を再始動させるものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−155813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、EGR装置を備えた内燃機関においては、排気再循環通路を通じて還流されるEGRガスが、例えば、EGRクーラやインタークーラにより冷却されて凝縮し、その凝縮水が吸気通路としての吸気マニホールドやサージタンクで滞留することがある。そして、低温下において、凝縮水が滞留している状態にあると、その凝縮水は、インテークマニホールドやサージタンクの内壁で凍結してしまい、その結果、インテークマニホールドやサージタンクにおいて流路抵抗が増大してしまう。
【0005】
そして、仮に、凝縮水の凍結に起因して流路抵抗が増大しても、内燃機関の定常運転中であれば、所定の吸入空気量補正制御が行われるため内燃機関の運転は続行されるが、始動時であると、内燃機関が十分な量の空気を吸入することができなくなり、始動性が悪化するという問題が生じてしまう。とくに、特許文献1に記載されているような停止及び始動が頻繁に行われる内燃機関では、機関始動性の悪化によって受ける影響は大きいにも拘らず、特許文献1に記載の内燃機関の始動制御装置では、上述したような、凝縮水が凍結することで生じる問題に対して何ら対策を講じておらず、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、EGR装置を備えた内燃機関において、低温下であっても良好な機関始動性を確保することができる内燃機関の始動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、排気通路を流れる排気の一部をEGRガスとして吸気通路に再循環させるEGR装置を備える内燃機関の始動制御装置であって、EGRガスに含まれる凝縮水が前記吸気通路の内壁で凍結することに起因する吸入空気量の減少を、スロットル開度を増大補正することで補償し、同吸入空気量の減少が補償された状況のもとで機関始動を実行する始動制御手段を備えることを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、EGRガスに含まれる凝縮水が吸気通路の内壁で凍結し、これにより吸気通路の流路抵抗が増大して吸入空気量が減少した場合であっても、その減少をスロットル開度の増大補正により補償し、その補償された状況のもとで機関始動が行われるようになる。そのため、低温下であっても良好な機関始動性を確保することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記内燃機関の吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、所定の始動条件が成立したときに電動機によって停止状態の内燃機関を予備駆動する予備駆動手段と、予備駆動中に前記内燃機関の吸入空気量が減少していることを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可する許可手段と、を備えたことを要旨とする。
【0010】
定常運転時に吸気通路に凍結が生じていることによって吸気通路の流路抵抗が増大していても、その凍結していた凍結物が内燃機関の停止中に融解して、始動時には吸気通路の流路抵抗が低下することがある。そのため、仮に、定常運転時の吸入空気量に基づいて、始動制御手段によるスロットル開度の増大補正を行うようにした場合、その後の機関始動時において流路抵抗が低下している場合には、機関回転速度が吹き上がる懸念がある。
【0011】
この点、上記発明では、内燃機関の予備駆動中に吸入空気量が減少していることを条件に、許可手段がスロットル開度の増大補正を許可するようにしているため、スロットル開度の増大補正を行った後、速やかに機関始動を行える。したがって、適切な吸入空気量にして機関始動を行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、機関回転速度に基づいて目標吸入空気量を規定するマップを記憶する記憶手段を備え、前記許可手段は、前記内燃機関の予備駆動時の吸入空気量が予備駆動時の機関回転速度に基づく前記目標吸入空気量よりも小さいことを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可し、前記始動制御手段は、前記内燃機関の吸入空気量を前記目標吸入空気量に近づけるように前記スロットル開度を増大補正することを要旨とする。
【0013】
この発明では、始動制御手段は、スロットル開度を増大補正して、内燃機関の吸入空気量を目標吸入空気量に近づけた後に内燃機関を始動させることができ、良好な機関始動性を確保することができるようになる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記始動制御手段は、前記内燃機関の前記予備駆動時の吸入空気量と前記目標吸入空気量との差分に応じた前記スロットル開度の増大補正を行うことを要旨とする。
【0015】
この発明では、予備駆動時において目標吸入空気量に対して内燃機関の吸入空気量の減少量が大きい程、スロットルバルブを通じて流入する空気を増大させることができる。そのため、内燃機関の始動時に、内燃機関の吸入空気量は目標吸入空気量に対して過不足のない状態にすることができ、より良好な機関始動性を確保することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記EGR装置は前記吸気通路に再循環させる前記EGRガスの量を可変とするEGRバルブを含み、前記内燃機関に対する燃料供給を中断する燃料カット制御を実行する燃料カット制御手段と、前記燃料カット制御手段による燃料カット制御の実行中に前記EGRバルブを強制的に開閉するバルブ制御手段と、前記EGRバルブを開閉したときの前記吸気通路内の圧力推移が予め設定された判定用圧力推移とは異なることを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可する許可手段と、を備えたことを要旨とする。
【0017】
この発明では、吸気通路の流路抵抗の大きさに応じて変わる吸気通路の圧力推移に基づいてスロットル開度の増大補正を行うか否かを決めることができ、良好な機関始動性を確保できる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記許可手段は、前記EGRバルブに強制閉弁指令が出力されてから前記EGRバルブが閉弁する間、又は前記EGRバルブに強制開弁指令が出力されてから前記EGRバルブが開弁する間における前記吸気通路内の圧力推移が、前記判定用圧力推移とは異なることを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可することを要旨とする。
【0019】
ここで、EGRバルブが開弁状態から閉弁状態又は閉弁状態から開弁状態に移行する過渡時において、吸気通路内の圧力変化は大きく、凝縮水の凍結が起きた場合と起きていない場合とにおける圧力変化の違いも顕著になる。そのため、この発明では、EGRバルブの過渡時における吸気通路内の圧力推移を判定用圧力推移と比較することで、スロットル開度の増大補正を許可するか否かを決定するため、吸気通路の流路抵抗に応じてより適切な始動を行うことができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記EGRバルブに強制閉弁指令が出力されてから前記EGRバルブが閉弁する間、又は前記EGRバルブに強制開弁指令が出力されてから前記EGRバルブが開弁する間における前記吸気通路の圧力推移に基づいて、単位時間当たりの圧力変化量を算出する算出手段を備え、前記許可手段は、前記算出手段によって算出された前記圧力変化量が前記判定用圧力推移から求められる圧力変化量とは異なることを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可することを要旨とする。
【0021】
ここで、EGRバルブの開弁状態が過渡状態である期間は内燃機関の運転状況に応じて変わる。そのため、EGRバルブに対して閉弁指令又は開弁指令が出力されてから所定時間後の吸気通路内の圧力値に基づいて、許可手段がスロットル開度の増大補正を許可するか否かを決定する場合、内燃機関の運転状況によっては、EGRバルブが閉弁状態又は開弁状態になった後の吸気通路内の圧力値に基づいてスロットル開度の増大補正を許可するか否かを決定することになる。ところが、このような場合には、凝縮水の凍結が起きた場合と起きていない場合とにおける違いが現れ難いため、許可手段は吸気通路の流路抵抗の大きさに応じた判断を精度よく行えなくなることが懸念される。
【0022】
この点、上記発明では、強制閉弁指令又は強制開弁指令が出力された時点からの単位時間当たりの吸気通路内の圧力変化量を算出し、その圧力変化量を判定用圧力推移から求められる圧力変化量と比較することで、許可手段は、始動制御手段によるスロットル開度の増大補正を許可するか否か決定する。そして、ある任意時間の圧力値に基づいてスロットル開度の増大補正を許可するか否かを決定するものではないため、内燃機関の運転状況に拘らず、吸気通路の状態に応じた適切な始動を行うことができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、走行駆動源として前記内燃機関のみを用いるとともに、一時停止している前記内燃機関をクランキングすることにより始動するアイドリングストップ車両に搭載され、前記内燃機関の吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、定常運転時に前記吸入空気量検出手段の検出結果に応じてスロットル開度を補正するスロットル開度補正手段と、を備え、定常運転時に前記スロットル開度補正手段が吸入空気量の減少を補償するためのスロットル開度の増大補正を実行した場合に、前記始動制御手段はスロットル開度の増大補正を実行することを要旨とする。
【0024】
アイドリングストップ車両では、内燃機関を始動する際にクランキングを長時間行うと、運転者は違和感を受けるため、クランキングの時間には限度がある。そして、クランキングを長時間行えない場合、クランキング時には吸入空気量検出手段が流量検出を行うために必要な流量を確保し難い。そのため、吸入空気量検出手段がクランキング時に吸入空気量を検出し、その検出した吸入空気量に基づいてスロットル開度を増大補正するか否か決定する場合、実際の吸気通路の流路抵抗に応じた始動を精度よく行えなくなる虞があった。
【0025】
この点、上記発明では、吸気通路に十分な流量を確保可能な定常運転時にスロットル開度補正手段がスロットル開度の増大補正を行ったか否かによって、始動制御手段はスロットル開度の増大補正を行うか否かを決定する。したがって、始動制御手段は定常運転時のスロットル開度補正手段の補正態様に応じてスロットル開度の増大補正を行うか否かを決定するため、クランキング時に吸気通路を流れる空気の流量に拘わらず、吸気通路の流路抵抗に応じた適切な始動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかる内燃機関の始動制御装置を具体化した第1実施形態において、これが適用される内燃機関が搭載される車両を示す概略構成図。
【図2】同実施形態の内燃機関とその周辺構成を示す概略構成図。
【図3】同実施形態における再始動制御の処理手順を示すフローチャート。
【図4】目標吸入空気量に対する吸入空気量の差分と、スロットル開度を補正する補正係数との関係を示すグラフ。
【図5】再始動制御を実行したときの吸入空気量及びスロットル開度の変化態様を示すタイミングチャート。
【図6】第2実施形態における再始動制御の処理手順を示すフローチャート。
【図7】同実施形態において閉弁指令を出力した時点からの吸気管圧力の圧力推移及び判定用圧力推移を示すグラフ。
【図8】判定用吸気管圧力値に対する吸気管圧力値の差分と、スロットル開度を補正する補正係数との関係を示すグラフ。
【図9】第3実施形態において閉弁指令を出力した時点からの吸気管圧力の圧力推移及び判定用圧力推移を示すグラフ。
【図10】同実施形態において、判定用圧力の圧力変化量に対する吸気管圧力の圧力変化量の差分と、スロットル開度を補正する補正係数との関係を示すグラフ。
【図11】第4実施形態において、第4実施形態の始動制御装置が適用される内燃機関が搭載される車両の一部を示す概略構成図。
【図12】(a)は内燃機関の定常運転中に行われる吸入空気量補正制御の処理手順を示すフローチャート、(b)は再始動制御の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明にかかる内燃機関の始動制御装置を具体化した第1実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
【0028】
図1に示すように、車両11は、駆動源として内燃機関12と電動機13とを有するハイブリッド車両である。これら内燃機関12及び電動機13により出力された動力は、変速機14を介して駆動輪15に伝達される。
【0029】
そして、この内燃機関12から出力された動力は、同機関12に接続された動力分配機構16により、駆動輪15に伝達する動力と電動発電機18に伝達する動力とに分配される。こうして内燃機関12から伝達された動力に基づき同電動発電機18で発生した電力は、電力変換部19を介してバッテリ20に供給される。なお、内燃機関12の始動時には、バッテリ20から電力が供給されることにより、この電動発電機18がスタータとして機能する。
【0030】
電動機13は、蓄電装置であるバッテリ20に蓄電された電力が供給されることにより動力を出力する。この電動機13は、車両11の減速時や制動時等に駆動輪15から受ける回転力を用いて発電する。発電された電力は電力変換部19に出力されるとともに、同電力変換部19を介してバッテリ20に供給される。
【0031】
電力変換部19は、インバータやコンバータなどから構成されており、電動機13や電動発電機18から入力される交流電力を直流電力に変換するとともにその電圧をバッテリ20の電圧レベルに変換してバッテリ20に出力する。また、バッテリ20から供給される直流電力を交流電力に変換するとともに昇圧して、同電力を電動機13又は電動発電機18に供給する。
【0032】
バッテリ20は、充放電可能な蓄電装置であって、例えばニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池で構成される。このバッテリ20は、電力変換部19を介して電動機13及び電動発電機18へ電力を供給するとともに、電動機13及び電動発電機18から電力変換部19を介して充電される。具体的には、上記電動機13及び電動発電機18で発電されて電力変換部19に出力される電力が充電される。このバッテリ20には、同バッテリ20の充電状態(SOC:State of Charge)を検知するためのバッテリセンサ20aが取り付けられている。
【0033】
次に、図2を参照して、内燃機関12とその周辺構成について説明する。
図2に示すように、内燃機関12の気筒内には、ピストン21が往復動可能に収容されており、このピストン21の頂面と気筒内の内周面とによって燃焼室22が区画形成されている。この燃焼室22には、同燃焼室22に吸入空気を供給する吸気通路23と、同燃焼室22から排気が排出される排気通路24とが接続されている。
【0034】
燃焼室22には、この燃焼室22内に燃料を噴射供給する燃料噴射弁25と、燃焼室22内で空気と燃料との混合気を点火する点火プラグ26とが設けられている。また、ピストン21は、内燃機関12の出力軸であるクランク軸27に接続されている。このクランク軸27は、燃焼室22での混合気の燃焼によるピストン21の往復動に伴い回転する。このクランク軸27の回転は、上述したように、変速機14(図1参照)を介して、車両11の駆動輪15(図1参照)に伝達される。
【0035】
吸気通路23には、同通路23を流通する吸入空気の量(吸入空気量)を調整するスロットルバルブ28と、同バルブ28の開度を調節するスロットル用アクチュエータ29とが設けられている。また、スロットルバルブ28には、同バルブ28の開度に応じた信号を出力するスロットルバルブ開度センサ30が取り付けられている。そして、そのスロットルバルブ28よりも下流側には、吸気通路23の一部であるとともに下流側部分が気筒別に分岐された吸気管23aが設けられている。
【0036】
この吸気管23aには、吸気脈動を抑制するための沈静槽であるサージタンク23bが一体に形成されている。吸気管23aは、その下流側部分が、吸気ポートを介して各気筒の燃焼室22に接続されている。この吸気管23aには、サージタンク23bよりも下流側に、その壁面温度を検出するための吸気温度センサTuが設置されている。
【0037】
そして、内燃機関12には、排気通路24を流通する排気の一部を吸気通路23に再循環させる排気再循環(以下、「EGR」という)装置32が設けられている。
このEGR装置32は、排気通路24と吸気通路23とを連通するEGR通路33と、同EGR通路33を流通する排気の量を調整するEGRバルブ34とを含んで構成されている。EGR通路33は、排気通路24の途中から分岐して、サージタンク23bに接続されている。このEGRバルブ34には、同バルブ34の開度を調節するEGR用アクチュエータ35と、EGRバルブ34の開度に応じた信号を出力するEGRバルブ開度センサ36が設けられている。そして、このEGR用アクチュエータ35の駆動を通じてEGRバルブ34が開弁されると、排気通路24の排気の一部がサージタンク23bに導入されて燃焼室22に再循環される。
【0038】
EGR通路33には、同EGR通路33を流通する排気を冷却するEGRクーラ37が配設されている。このEGRクーラ37は、EGR通路33を流通する排気と機関冷却水との熱交換を行うことにより排気を冷却する。なお、こうした水冷式のEGRクーラのみならず、空冷式のEGRクーラを採用するようにしてもよい。
【0039】
内燃機関12及び上記車両11には、上述した各種センサに加えてさらに種々のセンサが設けられている。こうしたセンサとして、例えば、機関回転速度を検出するための回転速度センサ38、機関冷却水の温度を検出するための機関水温センサ39、吸気通路23においてスロットルバルブ28よりも下流側における吸気の圧力(以下、「吸気管圧力」という)を検出するための吸気管圧力センサ41、内燃機関12の吸入空気量GAを検出するための吸入空気量検出手段としてのエアフロメータ31等が設けられている。
【0040】
これら各センサの出力信号は、電子制御装置(以下、「ECU」という。)40に入力される。ECU40には、各種演算処理を実行する中央処理装置(CPU)、各種制御プログラムや演算マップ及び制御の実行に際して算出されるデータ等が記憶保持されるメモリ、A/D変換器、入出力インターフェイス等が設けられている(いずれも図示略)。また、記憶手段としてのECU40は、内燃機関12の回転速度に応じた目標吸入空気量Gbを規定したマップを記憶している。そして、ECU40は、入力された信号に基づき車両11の走行状態や内燃機関12の運転状態等、各種装置の状態を把握して各種制御を実行する。例えば、ECU40は、燃料噴射弁25から適切な時期に適切な量の燃料を噴射供給する燃料噴射制御、点火プラグ26の点火時期を調整して点火する点火時期制御、スロットルバルブ28の開度を調整すべくスロットル用アクチュエータ29を駆動するスロットル制御を適宜実行する。また、その他に、ECU40はバッテリセンサ20aからの信号に基づきバッテリ20の充電状態(SOC)を検知して、同SOCを所定範囲に保持するバッテリ20の充放電制御を適宜実行する。
【0041】
さらに、ECU40は、窒素酸化物(NOx)の排出量の低減や燃費の向上を図るべく、EGR通路33を通じて排気の一部を燃焼室22に再循環させるEGR制御を実行するようになっている。EGR制御は、内燃機関12の運転中、所定の条件が成立したときに実行される。EGR制御では、回転速度センサ38により検出される機関回転速度や、エアフロメータ31により検出される吸入空気量GA等に基づいて内燃機関の運転状態が把握される。そして、この把握された機関運転状態に適合した排気量がEGR通路33を介して燃焼室22に再循環されるように、EGR用アクチュエータ35の駆動を通じてEGRバルブ34の開度が調整される。EGR制御によってEGR通路33に流入した排気は、上述したEGRクーラ37において冷却された後、燃焼室22に再循環されるようになっている。
【0042】
また、ECU40は、車両11の走行中、燃料噴射弁25からの燃料噴射を中断する燃料カット制御を実行し、なおかつ、EGRバルブ34を強制的に開閉する制御を行うことがある。例えば、このような制御としては、車両11の減速走行中に、EGR装置32の異常の有無を診断するために行われる異常診断制御がある。異常診断制御では、EGRバルブ34の開閉に伴う吸気管圧力の圧力変化量を求め、この圧力変化量に基づいてEGR装置32の異常の有無を診断する。燃料カット制御手段は、ECU40によって構成されている。また、バルブ制御手段は、ECU40及びEGR用アクチュエータ35によって構成されている。
【0043】
また、ECU40は、車両11の要求駆動力や内燃機関12の要求負荷、及びバッテリ20のSOC等を考慮して、内燃機関12及び電動機13の両方に要求される出力をそれぞれ算出するとともに、要求される出力が得られるようにこれら内燃機関12及び電動機13を制御する。
【0044】
具体的には、ECU40は、車両11の要求駆動力が電動機13の動力のみで得られると判定し、且つバッテリ20のSOCが所定範囲にあると判定した場合には、内燃機関12の「停止条件」が成立したと判定する。このときに、ECU40は、内燃機関12の自動停止制御を実行して、内燃機関12を停止状態とし電動機13の動力のみを利用して車両11を走行させる。
【0045】
一方、ECU40は車両11の要求駆動力を得るためには内燃機関12の動力が必要であると判定した場合や、バッテリ20のSOCが所定値を下回っていると判定した場合には、内燃機関12の「停止条件」が不成立で内燃機関12の「始動条件」が成立していると判定する。このとき、ECU40は内燃機関12を再始動するための再始動制御を実行するようになる。
【0046】
そして、内燃機関12が始動されると、内燃機関12及び電動機13の両方の動力により車両11が走行状態になる。すなわち、本実施形態の車両11は、内燃機関12の停止及び再始動を繰り返し行うことで内燃機関12の間欠運転が行われるようになっている。
【0047】
次に、図3を参照して、再始動制御の処理手順を説明する。
まず、再始動制御が開始されると、S10に進み、モータリング処理が実行される。このモータリング処理では、電動発電機18の動力が内燃機関12に伝達されて内燃機関12が予備駆動される状態になる。そして、ECU40は、S11に進み、吸気温度センサTuの検出結果に基づいて、吸気温度が0℃よりも小さいか否か、すなわち、外気温が氷点下であるか否かを判定する。このとき、否定判定であると凝縮水が凍結する可能性は低いため、S12に進み、通常の機関始動を実行する。通常の機関始動が実行されると、スロットル開度が閉じ側に設定された状態で、所定の燃料噴射制御及び所定の点火時期制御が実行される。その結果、内燃機関12は自律運転するようになる。
【0048】
一方、S11において、ECU40は、肯定判定すると、S13に進む。S13において、ECU40はマップからモータリング時の内燃機関12の回転速度に対応する目標吸入空気量Gbを読み出す。その後、S14に進み、S14において、マップから読み出した目標吸入空気量Gbと、エアフロメータ31の検出結果から得た実際の吸入空気量とを比較する。そして、吸入空気量と目標吸入空気量Gbとが等しい場合、ECU40は、凝縮水の凍結は起きておらず、吸気管23aやサージタンク23bの流路抵抗が小さいと判定し、S12に進む。一方、ECU40は、吸入空気量が目標吸入空気量Gbよりも小さい場合、凝縮水の凍結物が大量にあり吸気管23aやサージタンク23bの流路抵抗が増大していると判定し、S15に進む。
【0049】
S15では、目標吸入空気量Gbと吸入空気量との差分αを算出し、その算出結果に基づいてスロットル開度TAの増大補正を行った後、機関始動を実行する。具体的には、ECU40は、図4に示すマップを参照し、目標吸入空気量Gbと吸入空気量GAとの差分αに対応する補正係数を読み出し、予め設定した基準スロットル開度に対して読み出した補正係数を乗算することで、目標スロットル開度Taを算出する。なお、図4に示すように、目標吸入空気量Gbに対する吸入空気量の差分αと補正係数との関係は、比例関係となっており、目標吸入空気量Gbと吸入空気量との差分αが0の場合、補正係数は1となり、目標吸入空気量Gbと吸入空気量との差分αが大きくなるにつれて補正係数も大きくなる。そして、S15では、ECU40は、スロットルバルブ28のスロットル開度を段階的に増大させるように制御し、最終的に目標スロットル開度Taまで開く。その後、ECU40は、燃料噴射制御及び点火プラグ26の点火時期制御を実行して、内燃機関12を自律運転状態にさせる。なお、ECU40が、S12及びS14で行う燃料噴射制御では、内燃機関12の定常運転時に比べて燃料噴射量が増量されている。また、S10、S14、S15の処理は、それぞれ予備駆動手段、許可手段、始動制御手段の処理に相当する。また、ECU40は、モータリングによって内燃機関12の予備駆動を行う予備駆動手段、及び内燃機関12を始動させる始動制御手段に相当する。
【0050】
次に、ECU40が再始動制御を実行したときの、スロットル開度及び吸入空気量の推移を図5に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。
図5において、時刻t1では、電動発電機18によって内燃機関12のモータリングが開始され、内燃機関12が空気の吸入を開始するようになる。ここで、スロットルバルブ28のスロットル開度TAが閉じ側に設定されているため、凝縮水の凍結が生じていると、内燃機関12の吸入空気量は目標吸入空気量Gbに達せずに、目標吸入空気量Gbよりも少ない状態で推移する。しかし、その後、時刻t2になると、ECU40がスロットル開度の増大補正を開始することで、時刻t2以降、スロットルバルブ28のスロットル開度TAは段階的に増大するようになる。そして、時刻t3において、スロットルバルブ28のスロットル開度TAは目標スロットル開度Taまで達し、それ以降、スロットルバルブ28は目標スロットル開度Taまで開かれた状態で保持される。そのため、時刻t3以降、吸入空気量は目標吸入空気量Gbで保持され、その状態で燃料噴射制御及び点火プラグ26の点火制御が実行されると、内燃機関12は自律運転するようになる。
【0051】
次に、本実施形態における内燃機関の始動制御装置の制御内容を説明する。
車両11では、走行中、燃焼室22での燃焼温度を低下させるために燃焼室22へ排気を再循環させるEGR制御を実行することがある。そのため、車両11においては、燃焼室22への排気の充填効率を向上させることができるとともに、燃焼室22における燃焼温度を低下させることができ、より効果的にNOxの低減や燃費の向上を図ることができるようになる。
【0052】
そして、車両11においては、燃焼室22に排気を再循環させる際、EGRクーラ37によって排気が冷却されることにより凝縮水が発生することがある。この状況で車両11が内燃機関12及び電動機13の両方の動力により走行している状態から、内燃機関12の運転を停止して電動機13の動力のみで走行する状態に移行すると、凝縮水は吸気管23aやサージタンク23bで滞留する。とくに、本実施形態の車両11は、内燃機関12の停止及び始動が頻繁に行われるため内燃機関12が停止状態になる機会が多く、凝縮水はよく滞留する。そして、このような本実施形態の車両11が氷点下の状況にあると、吸気管23aやサージタンク23bで滞留している凝縮水が吸気管23aやサージタンク23bの内壁で凍結してしまい、その結果、吸気管23aやサージタンク23bにおいて流路抵抗が増大する。この状態で内燃機関12の再始動制御が実行されると内燃機関12の吸入空気量が不足して内燃機関12の始動性が悪化する虞があるが、本実施形態では、スロットル開度の増大補正を行うことでスロットルバルブ28を通じて流入する空気を増量させ、内燃機関12の吸入空気量の減少を補償する。そのため、再始動時における内燃機関12の吸入空気量が不足することはなく、氷点下であっても内燃機関12は良好に始動するようになる。
【0053】
この実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)内燃機関12が氷点下の状況にあることで吸気管23aやサージタンク23b内の凝縮水が凍結し、吸気管23aやサージタンク23bで流路抵抗が増大している場合には、内燃機関12を始動する際に、スロットルバルブ28のスロットル開度を増大補正して、内燃機関12の吸入空気量の減少を補償する。したがって、氷点下であっても、始動時に必要な吸入空気量を確保することができ、内燃機関12の良好な始動性を確保できるようになる。
【0054】
(2)内燃機関12の定常運転時にはサージタンク23bや吸気管23a内に凍結物があり流路抵抗が増大していても、内燃機関12が停止している間に外気温度が上昇して凍結物が融解し、始動時にはサージタンク23bや吸気管23aの流路抵抗が低下することがある。そのため、仮に、定常運転時に行う吸入空気量の補正制御によって得られた学習値に基づいて再始動時にスロットルバルブ28の開度を補正する方法を採用すると、定常運転後の内燃機関12の始動時において流路抵抗が低下している場合には、内燃機関12の吸入空気量が過剰になり内燃機関12の回転速度が吹き上がってしまう懸念がある。これに対して、本実施形態では、内燃機関12が始動される直前であるモータリング中における内燃機関12の吸入空気量が目標吸入空気量よりも小さいことを条件に、スロットル開度の増大補正を行うようにしているため、スロットル開度の増大補正を行った後、速やかに機関始動を行える。したがって、吸入空気量が適切な状態で、機関始動を行うことができる。
【0055】
(3)ECU40は、S14において吸入空気量補正始動を実行する場合、モータリング時の内燃機関12の吸入空気量と、マップに記憶された目標吸入空気量Gbとの差分αに応じた補正係数を決定し、その補正係数を基準スロットル開度に乗算して、目標スロットル開度Taを算出する。そして、スロットル開度TAを目標スロットル開度Taまで増大させ、吸入空気量の減少を補償する。したがって、目標吸入空気量Gbに対する実際の内燃機関12の吸入空気量の差分αが大きい程、スロットルバルブ28を通じて多くの空気を流入させることができるようになり、始動時の内燃機関12の吸入空気量は目標吸入空気量に対して過不足のない状態にすることができるため、より良好な機関始動性を確保できる。
【0056】
(4)始動時に行われる燃料噴射制御では、燃料噴射量を定常運転時よりも増量するようになっているため、始動時に吸入空気量が減少すると始動時に噴射された燃料が点火プラグ26にかぶる懸念がある。しかし、本実施形態では、氷点下における始動時の吸入空気量の減少を補償しているため、内燃機関12の始動時に吸入空気量が足りないことで、始動時に噴射された燃料が過剰になり点火プラグ26にかぶることを抑制できる。
【0057】
(5)EGRガスに含まれる凝縮水が凍結して固体になり、そのために始動時の内燃機関12の吸入空気量が減少しても、スロットル開度の増大補正を行うことで内燃機関12の吸入空気量の減少を補償するため、EGRガスの相状態に拘わらず内燃機関12の良好な始動性を確保できる。
【0058】
(6)車両11が氷点下の状況にあっても、ECU40はEGR装置32に対してEGR制御を実行して、排気の一部を還流させることができる。したがって、EGRガスの凝縮水の凍結を回避するために外気温度が氷点下になった場合に排気の還流を中断する制御を行う場合に比べて、本実施形態の内燃機関の始動制御装置では、EGR制御を行う機会を増やすことができる。そのため、内燃機関12の燃費向上に寄与することができる。
【0059】
(7)ECU40は、再始動制御を実行する都度、内燃機関12のモータリング時の吸入空気量に基づいて流路抵抗が増大しているか否かの判定を行うようにしている。すなわち、再始動制御を実行する都度、流路抵抗が増大しているか否かの判定を行うため、機関始動を行う前に吸気管23aやサージタンク23bの流路抵抗の大きさが変わる可能性は低く、実際の流路抵抗に応じた機関始動を行うことができる。
【0060】
(8)ECU40は、電動機13の動力のみを利用した車両11の運転が可能であるとの「停止条件」が成立したと判定した場合には、内燃機関12の自動停止制御を実行する。本実施形態によれば、内燃機関12の良好な再始動性を確保しているため、内燃機関12の間欠運転が行われることで、内燃機関12が頻繁に始動されても、車両11は支障なく走行できる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の始動制御装置を具体化した第2実施形態について、図6〜図8を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、先に説明した再始動制御の処理が図6に示す処理にて変更されて実行される。上記第1実施形態では、モータリング時における内燃機関12の吸入空気量に基づいて吸気管23aやサージタンク23bの流路抵抗が増大しているか否かについての判定処理が行われていたが、本実施形態では、定常運転時の吸気管圧力を検出し、吸気管圧力の圧力推移に基づいて吸気管23aやサージタンク23bの流路抵抗が増大しているか否かについての判定処理を行う点が異なっている。以下、そうした相違点を中心に説明する。
【0062】
まず、ECU40は、定常運転時において、例えば異常診断制御等を実行することで、燃料噴射弁25からの燃料噴射を中断する燃料カット制御を実行している最中にEGRバルブ34を強制的に開閉し、そのときに吸気管圧力を検出する。そして、ECU40は、検出した吸気管圧力を、異常診断制御を開始してからの時刻と対応付けて圧力推移として記憶するようになっている。なお、ECU40が検出する任意時間の吸気管圧力は、その直前の所定期間における値を読み込んで算出した平均値である。また、ECU40は、吸気管23aやサージタンク23bにおける流路抵抗が小さいとみなすことができる圧力推移と同じ判定用圧力推移を予め記憶している。この判定用圧力推移は、予め計算又は実験により求められている。ここで、EGRバルブ34に閉弁指令が入力されてからEGRバルブ34が閉弁する間、すなわち、EGRバルブ34の過渡時に、吸気管圧力の負圧状態は時間の経過と共に高まる。そして、吸気管23aやサージタンク23bに凍結物がある場合には吸気通路23の容積が減少しているため、吸気管圧力が単位時間当たりに負圧になる割合は大きくなる。そのため、吸気管23aやサージタンク23bに凍結物がある場合には吸気管圧力の圧力推移が判定用圧力推移とは異なることになり、吸気管圧力の圧力推移と判定用圧力推移とを比較すれば、吸気管23aやサージタンク23bに凍結物があるか否かを判定できる。
【0063】
次に、図6を参照して、本実施形態において、ECU40が実行する再始動制御の処理手順を説明する。
本制御が実行されると、ECU40は、上記S10、S11と同様の処理であるS20、S21の処理を実行する。そして、S21において、否定判定されると、S22に進み、通常の機関始動が実行される。また、S21において、肯定判定されると、S23に進み、ECU40に記憶している吸気管圧力の圧力推移を読み込む。その後、S24に進み、S24において、読み込んだ吸気管圧力の圧力推移と、ECU40に記憶されている判定用圧力推移とを比較し、サージタンク23bや吸気管23aにおける流路抵抗が増大しているか否かを判定する処理を行う。ここで、吸気管圧力の変化はEGRバルブ34が開弁状態から閉弁状態に移行する過渡時において大きく、凝縮水の凍結が起きた場合と起きていない場合とにおける圧力変化の違いも顕著である。そのため、S24では、EGRバルブ34に閉弁指令が出力された時点から所定時間経過した時刻T1における吸気管圧力値H2を吸気管圧力推移から把握し、把握した吸気管圧力値H2に基づいて判定処理を行う。すなわち、時刻T1において、吸気管圧力推移から把握できる吸気管圧力値H2と、判定用圧力推移から把握できる判定用吸気管圧力値H1とを比較する。なお、時刻T1は、EGRバルブ34が閉弁する前の時刻となるように設定されている。
【0064】
そこで、S24において、ECU40は、EGRバルブ34に閉弁指令を出力してからの時刻T1における吸気管圧力値と判定用吸気管圧力値とが等しい場合、凝縮水の凍結が生じておらず、流路抵抗が小さいと判定し、S22に進む。一方、S24において、ECU40は、図7のA線で示す吸気管圧力の圧力推移と図7のB線で示す判定用圧力推移とが異なっており、吸気管圧力値H2と判定用吸気管圧力値H1との間に差分βが生じている場合、凝縮水の凍結に起因して流路抵抗が大きくなっていると判定し、S25に進む。なお、S24において、ECU40は、時刻T1における吸気管圧力値H2と判定用吸気管圧力値H1との間に差分βが生じている場合、吸気管圧力値H2と判定用吸気管圧力値H1との差分βを一時的に記憶する。S24では、ECU40は、予め記憶しているマップを参照し、吸気管圧力値H2と判定用吸気管圧力値H1との差分βに基づいてスロットル開度TAの増大補正を行う。具体的には、ECU40は、図8に示すマップを参照し、吸気管圧力値H2と判定用吸気管圧力値H1との差分βに対応する補正係数を読み出し、予め設定した基準スロットル開度に対して決定した補正係数を乗算することで、目標スロットル開度Taを算出する。なお、図8に示すように、EGRバルブ34に閉弁指令を出力してからの時刻T1における吸気管圧力値H2と判定用吸気管圧力値H1との差分βと補正係数との関係は、第1実施形態の目標吸入空気量Gbに対する吸入空気量GAの差分αと補正係数との関係と等しくなっている。
【0065】
そして、S25では、スロットルバルブ28のスロットル開度が段階的に増大されるにように制御されて、スロットルバルブ28は目標スロットル開度Taまで開かれる。そのうえで、ECU40は、燃料噴射制御及び点火プラグ26の点火時期制御を実行して、内燃機関12を自立運転状態にさせる。なお、S20、S24、S25の処理は、それぞれ予備駆動手段、許可手段、始動制御手段の処理に相当する。
【0066】
この実施形態によれば、第1実施形態において記載した(1)、(4)〜(8)の作用効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(9)ECU40は、燃料噴射を中断する燃料カット制御の実行中にEGRバルブ34を開閉し、そのときの吸気管23aの圧力推移を記憶する。そして、ECU40は、再始動制御の実行中に、吸気管23aの圧力推移と判定用吸気管圧力推移とを比較して、吸気管23aの圧力推移が判定用圧力推移とは異なることを条件に、スロットル開度の増大補正を行うことを決定する。したがって、吸気管23aやサージタンク23bにおける流路抵抗が増大しているときにはスロットル開度を増大させるようになり、良好な機関始動性を確保することができる。
【0067】
(10)ECU40は、記憶した吸気管23a内の圧力推移を参照し、時刻T1における吸気管23a内の圧力値が予め設定された判定用吸気管圧力値H1よりも負圧になっている場合に、流路抵抗が増大していると判定する。ECU40は、EGRバルブ34が開弁状態から閉弁状態に移行する過渡時における吸気管圧力値H2を同じ時刻T1における判定用吸気管圧力値H1と比較することで、スロットル開度の増大補正を行うか否かを決定する。したがって、吸気管23aやサージタンク23bにおける流路抵抗に応じてより適切な機関始動を実行することができる。
【0068】
(第3実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の始動制御装置を具体化した第3実施形態について、図9及び図10を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、第2実施形態のS24において流路抵抗が増大しているか否かの判定処理を行う際の方法が第2実施形態と異なっており、以下、そうした相違点を中心に説明する。
【0069】
本実施形態では、ECU40が再始動制御を実行したとき、S24において、吸気管圧力推移に基づいて単位時間当たりの吸気管圧力の圧力変化量、及び判定用圧力推移に基づいて単位時間当たりの判定用圧力の圧力変化量を算出する。ここで、吸気管圧力の圧力変化量は閉弁指令が出力されてからEGRバルブ34が閉弁されるまでにおける吸気管23aの圧力推移に基づいて算出されるものである。また、判定用圧力の圧力変化量は、閉弁指令が出力されてからEGRバルブ34が閉弁されるまでの時刻に対応する判定用圧力推移に基づいて算出されるものである。ここで、吸気管23aやサージタンク23bに凍結物がある場合には吸気通路23の容積が減少しているため、吸気管23aの圧力推移は、図9のD線で示すようになり、図9のC線で示す判定用圧力推移よりも吸気管圧力の圧力変化量が増大する側に移行している。そのため、S24において、吸気管圧力の圧力変化量と判定用圧力推移の圧力変化量とを比較し、両者の差分γが所定値よりも小さい場合、ECU40は、凝縮水の凍結が生じておらず、流路抵抗が小さいと判定し、S22に進む。一方、S24において、ECU40は、吸気管圧力の圧力変化量と判定用圧力の圧力変化量とを比較し、両者の差分γが所定値以上である場合、流路抵抗が増大していると判定し、両者の差分γを一時的に記憶する。
【0070】
そして、S25では、ECU40が記憶したマップを参照し、吸気管圧力の圧力変化量と判定用圧力の圧力変化量との差分γから補正係数を決定する。S25では、予め設定した基準スロットル開度に対して決定した補正係数を乗算することで、目標スロットル開度Taを算出する。そして、S25では、スロットルバルブ28のスロットル開度を段階的に増大させて、スロットルバルブ28を目標スロットル開度Taにまで開く。そのうえで、ECU40は、燃料噴射制御及び点火プラグ26の点火時期制御を実行して、内燃機関12を自立運転状態にする。なお、S24の処理は、算出手段の処理に相当する。
【0071】
この実施形態によれば、第1実施形態及び第2実施形態において記載した(1)、(4)〜(9)の作用効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(11)ここで、EGRバルブ34に閉弁指令が入力されてからEGRバルブ34が閉弁状態になるまでのEGRバルブ34の過渡状態である期間は内燃機関の運転状況に応じて変わる。そのため、第2実施形態のようにEGRバルブ34に閉弁指令が入力されてから時刻T1経過したときの吸気管23a内の圧力値から流路抵抗が増大しているか否か判定する場合、内燃機関12の運転状況によっては、EGRバルブ34が閉弁状態になった後の吸気管23a内の圧力値に基づいてスロットル開度の増大補正を行うか否かを決定することになる。ところが、このような場合には、凝縮水の凍結が起きた場合と起きていない場合とにおける違いが現れ難いため、ECU40は、流路抵抗の大きさに応じた判断を精度よく行えなくなることが懸念される。この点、本実施形態のECU40は、記憶した吸気管23a内の圧力推移を参照し、EGRバルブ34に閉弁指令を出力してからの単位時間当たりの吸気管23a内の圧力変化量が予め設定された判定用圧力変化量とは異なっている場合に、流路抵抗が増大していると判定する。したがって、内燃機関12の運転状況によらず、正確な判定を行うことができる。
【0072】
(第4実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の始動制御装置を具体化した第4実施形態について、図11及び図12を参照しつつ、第1実施形態〜第3実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、本発明にかかる内燃機関の始動制御装置が、内燃機関12のみを走行駆動源とする車両11に搭載されている点、内燃機関12の定常運転時の吸入空気量変化に基づいて、流路抵抗が増大しているか否かについて判定処理を行う点が主に異なっている。
【0073】
本実施形態の車両11は、アイドリングストップ車両であり、図11に示すように、内燃機関12は、その機関出力軸であるクランク軸27が、動力分配機構16を介さずに、変速機14と接続されている。内燃機関12の出力は、変速機14によって変速された後、車輪軸(図示しない)に伝達されるようになっている。また、内燃機関12には、機関始動用の電動機であるスタータモータ52が固定されている。そして、スタータモータ52は、クランク軸27に対して駆動連結されている。すなわち、スタータモータ52は、歯車機構53を介してクランク軸27に回転力を伝達可能に構成されている。
【0074】
ECU40は、内燃機関12の始動前に、スタータモータ52を駆動して内燃機関12を所定の速度(例えば、約250rpm)で回転させる予備駆動としてのクランキングを実行する。ECU40は、内燃機関12をクランキングした状態で、燃料噴射制御及び点火時期制御を行い、それによって、内燃機関12を自律運転させるようになっている。
【0075】
また、ECU40には、内燃機関12の回転数及び負荷と、目標吸入空気量Gbとの関係を示すマップが記憶されている。そして、ECU40は、内燃機関12の定常運転時に、実際の吸入空気量と内燃機関12の回転数及び負荷に対応する目標吸入空気量Gbとの間に差分が生じている場合に、その差分を補償するための補正制御を所定の制御周期で実行するようになっている。また、ECU40は、内燃機関12の定常運転時の補正制御で得た、学習値を一時的に保存するように構成されている。
【0076】
次に、図12(a)を参照して、補正制御の処理手順を説明する。
まず、ECU40は、S30において、エアフロメータ31の検出結果に基づいて吸入空気量を得て、S31に進む。S31では、マップから定常運転時の内燃機関12の回転数及び負荷に対応する目標吸入空気量Gbを読み出し、目標吸入空気量GbとS30で得た吸入空気量の差分に基づいて補正値を求める。そして、その補正値に基づいて、スロットルバルブ28のスロットル開度を補正して、吸入空気量の補正を行う。そして、S32に進み、S32では、S31で求めた補正値を学習値として一時的に保存して、補正制御を終了する。なお、S31は、スロットル開度補正手段の処理に相当する。
【0077】
次に、図12(b)を参照して、本実施形態において、一時的に停止された内燃機関12を再始動するときにECU40が実行する再始動制御の処理手順を説明する。
本制御が実行されると、ECU40は、S30において、スタータモータ52を駆動することによって内燃機関12をクランキングする。そして、S41において、ECU40は、ECU40が記憶している学習値を読み込んだ後、S42に進む。S42では、S32で記憶した学習値を用いて、目標スロットル開度Taを算出する。このとき、内燃機関12の定常運転時に凝縮水の凍結が生じて吸入空気量の減少が生じているならば、学習値はスロットル開度を増大補正する値になっている。そのため、S42では、凝縮水の凍結により吸入空気量が減少する場合、その減少を補償するための増大補正を行うようになり、スロットルバルブ28のスロットル開度は段階的に増大される。その後、ECU40は、燃料噴射制御及び点火プラグ26の点火時期制御を実行して、内燃機関12を自立運転状態にさせる。なお、S40、S42の処理は、それぞれ予備駆動手段、始動制御手段の処理に相当する。
【0078】
次に、本実施形態における内燃機関の始動制御装置の制御内容を説明する。
車両11の走行中、内燃機関12は定常運転されており、このときに、内燃機関12の吸入空気量の補正を行ったときに得た学習値が保存される。この状態から、車両11が信号待ち等において一時的に停止した場合、内燃機関12は自動的に停止する。そして、この状態から、車両11が走行を開始する場合に、内燃機関12が氷点下にあることで凝縮水が凍結していても、その場合には、学習値を用いてスロットル開度TAの増大補正を行うため、内燃機関12を支障なく再始動でき、車両11の走行が開始されるようになる。また、ECU40が行う再始動制御では、定常運転時の学習値を用いてスロットル開度TAの増大補正を行うため、内燃機関12のみを駆動源とする車両であって、クランキング時における吸気通路23の空気の流量が少なくとも、凝縮水の凍結に起因して流路抵抗が増大している場合にはスロットル開度TAの増大補正を行って、内燃機関12の良好な機関始動性を確保できる。
【0079】
この実施形態によれば、第1実施形態において記載した(1)、(4)〜(7)の作用効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(12)ここで、アイドリングストップ車両では、内燃機関12を始動する際に、スタータモータ52によるクランキングを長時間行うと、運転者は違和感を受けるため、スタータモータ52によって行われるクランキングの時間には限度がある。しかし、クランキングを長時間行えないと、クランキング時においてエアフロメータ31が流量検出を行うために必要な流量を確保し難く、エアフロメータ31が検出した吸入空気量に基づいてスロットル開度を増大補正するか否かを決定する場合、実際の流路抵抗に応じた始動を精度よく行えなくなる虞があった。この点、この実施形態では、定常運転時の学習値を用いて、再始動時に吸入空気量の減少を補償するためにスロットル開度TAの増大補正を行う。そのため、ECU40は、内燃機関12のみを走行駆動源とする車両11であっても、クランキング時における吸気通路の流量の大小に拘わらず、吸気通路の流路抵抗に応じた適切な機関始動を行うことができる。
【0080】
(13)ECU40は、定常運転時に、定常運転時の内燃機関12の吸入空気量と、マップに記憶された目標吸入空気量Gbとの差分に応じた補正値を決定し、その補正値を学習値とする。そして、再始動制御時には、その学習値を用いて、スロットル開度TAの増大補正を行う。したがって、定常運転時において目標吸入空気量Gbに対して実際の内燃機関12の吸入空気量の差分が大きい程、再始動時にはスロットルバルブ28を通じて流入する空気を多くすることができる。そのため、内燃機関12の始動時に、内燃機関12は過不足なく空気を吸入することができ、より良好な始動性を確保することができる。
【0081】
上述した実施形態は、以下のようにこれを適宜変更した形態にて実施することもできる。
・第1実施形態において、S14で算出した内燃機関12の吸入空気量と比較する目標吸入空気量を求める方法については、とくに限定するものではなく、周知の方法を適宜採用すればよい。例えば、吸気系を、内燃機関のスロットル弁、吸気管、吸気弁等の要素毎に分けて、それぞれの物理特性をモデル化して数式で表すエアモデルを利用して吸入空気量を算出してもよい。そして、算出した吸入空気量を内燃機関12の回転速度、アクセル開度、及びエアフロメータ31の検出結果に対応付けて目標吸入空気量としてECU40に予め記憶させてもよい。この場合、再始動制御時には、S14において、エアモデルを利用して算出した目標吸入空気量と、エアフロメータ31の検出結果から算出した吸入空気量とを比較する。そして、吸入空気量が目標吸入空気量よりも小さい場合には、目標吸入空気量と吸入空気量との差分を算出し、その差分に応じた補正係数を決定して、スロットル開度の増大補正を行う。
【0082】
・第2実施形態において、S24で行う比較処理の内容を変更してもよい。例えば、ECU40は、S24において、EGRバルブ34に開弁指令を出力してから所定時間経過したときの吸気管圧力推移を判定用吸気管圧力推移と比較して、流路抵抗が増大しているか否かを判定するようにしてもよい。この場合、ECU40は、EGRバルブ34に開弁指令を出力してからEGRバルブ34が開弁する間における吸気管圧力推移に基づいて、単位時間当たりの吸気管圧力の圧力変化量を算出する。また、ECU40は、開弁指令が出力されてからEGRバルブ34が開弁されるまでの時刻に対応する判定用圧力推移に基づいて、判定用圧力の圧力変化量を算出する。そして、ECU40は、算出した吸気管圧力の圧力変化量と判定用吸気管の圧力変化量とが等しい場合に凝縮水の凍結が生じておらず流路抵抗が小さいと判定する一方、吸気管圧力の圧力変化量と判定用吸気管の圧力変化量とが異なる場合に流路抵抗が増大していると判定する。そして、このような方法で流路抵抗が増大しているか否かを判定するようにすれば、吸気通路23の流路抵抗に応じた適切な始動を行うことができる。
【0083】
・第4実施形態においては、スロットル開度の増大補正を行うか否かを決定する処理を行うようにしてもよい。すなわち、定常運転中の補正制御時に得た学習値に基づいて、流路抵抗が増大しているか否かを判定する処理を行うようにすればよい。そして、例えば、学習値を用いて流路抵抗が増大していると判定した場合には吸入空気量補正始動をONにする一方、流路抵抗が小さいと判定した場合には、通常始動をONにする。そして、吸入空気量補正始動がONの状態で再始動制御を行う場合には、S40〜42の処理を実行し、通常始動がONの状態で再始動制御を行う場合には、通常の始動を実行すればよい。
【0084】
・スロットル開度の増大補正を行うか否かを決定する処理は、再始動制御の実行中に行わなくともよい。例えば、第2実施形態において、定常運転時に行うようにしてもよい。この場合、定常運転時に、吸気管圧力の圧力推移と判定用圧力推移とを比較する処理を行い、流路抵抗が増大しているか否かを判定するようにしてもよい。ECU40によって流路抵抗が増大していると判定された場合には、定常運転時に吸入空気量補正始動をONにする一方、ECU40によって流路抵抗が小さいと判定された場合には、定常運転時に通常始動をONにする。そして、吸入空気量補正始動がONの状態で再始動制御を行う場合には、S23及びS25の処理を実行し、通常始動がONの状態で再始動制御を行う場合には、S22の処理を実行するようにすれば、内燃機関12の良好な始動性を確保できる。
【0085】
・流路抵抗が増大しているか否かを判定する処理の内容を変更してもよい。例えば、第1実施形態におけるS14の処理を省略し、S11において、ECU40は、吸気温度が0℃よりも小さいか否かを判定し、吸気温度が0℃以上であるならば、凝縮水の凍結は起きておらず、流路抵抗も小さいと判定して、S13に進むようにしてもよい。
【0086】
・EGRバルブ開度センサ36を省略してもよい。例えば、EGR用アクチュエータ35がステッパモータによって構成されているのであれば、EGR用アクチュエータ35の他に、EGRバルブ34の開度の検出を目的としたセンサを設けなくともEGRバルブ34の開度を検出することができるため、EGRバルブ開度センサ36を省略してもよい。
【0087】
・本実施形態の始動制御装置が行う機関始動は、ハイブリッド車両やアイドリングストップ車両に搭載された内燃機関12が一時的に停止されている状態で行われるものに限らず、運転者がキースイッチをオンしたときに実行するものであってもよい。
【符号の説明】
【0088】
11…車両、12…内燃機関、18…電動発電機、23…吸気通路、23a…吸気管、23b…サージタンク、24…排気通路、28…スロットルバルブ、29…スロットル用アクチュエータ、31…エアフロメータ、32…EGR装置、33…EGR通路、34…EGRバルブ、35…EGR用アクチュエータ、40…許可手段、始動制御手段、予備駆動手段、燃料カット制御手段、算出手段、及びスロットル開度補正手段としてのECU、41…吸気管圧力センサ、52…スタータモータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路を流れる排気の一部をEGRガスとして吸気通路に再循環させるEGR装置を備える内燃機関の始動制御装置であって、
EGRガスに含まれる凝縮水が前記吸気通路の内壁で凍結することに起因する吸入空気量の減少を、スロットル開度を増大補正することで補償し、同吸入空気量の減少が補償された状況のもとで機関始動を実行する始動制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の始動制御装置。
【請求項2】
前記内燃機関の吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
所定の始動条件が成立したときに電動機によって停止状態の内燃機関を予備駆動する予備駆動手段と、
予備駆動中に前記内燃機関の吸入空気量が減少していることを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可する許可手段と、を備えた
請求項1に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項3】
機関回転速度に基づいて目標吸入空気量を規定するマップを記憶する記憶手段を備え、
前記許可手段は、前記内燃機関の予備駆動時の吸入空気量が予備駆動時の機関回転速度に基づく前記目標吸入空気量よりも小さいことを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可し、
前記始動制御手段は、前記内燃機関の吸入空気量を前記目標吸入空気量に近づけるように前記スロットル開度を増大補正する
請求項2に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項4】
前記始動制御手段は、前記内燃機関の前記予備駆動時の吸入空気量と前記目標吸入空気量との差分に応じた前記スロットル開度の増大補正を行う
請求項3に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項5】
前記EGR装置は前記吸気通路に再循環させる前記EGRガスの量を可変とするEGRバルブを含み、
前記内燃機関に対する燃料供給を中断する燃料カット制御を実行する燃料カット制御手段と、
前記燃料カット制御手段による燃料カット制御の実行中に前記EGRバルブを強制的に開閉するバルブ制御手段と、
前記EGRバルブを開閉したときの前記吸気通路内の圧力推移が予め設定された判定用圧力推移とは異なることを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可する許可手段と、を備えた
請求項1に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項6】
前記許可手段は、前記EGRバルブに強制閉弁指令が出力されてから前記EGRバルブが閉弁する間、又は前記EGRバルブに強制開弁指令が出力されてから前記EGRバルブが開弁する間における前記吸気通路内の圧力推移が、前記判定用圧力推移とは異なることを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可する
請求項5に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項7】
前記EGRバルブに強制閉弁指令が出力されてから前記EGRバルブが閉弁する間、又は前記EGRバルブに強制開弁指令が出力されてから前記EGRバルブが開弁する間における前記吸気通路の圧力推移に基づいて、単位時間当たりの圧力変化量を算出する算出手段を備え、
前記許可手段は、前記算出手段によって算出された前記圧力変化量が前記判定用圧力推移から求められる圧力変化量とは異なることを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可する
請求項6に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項8】
走行駆動源として前記内燃機関のみを用いるとともに、一時停止している前記内燃機関をクランキングすることにより始動するアイドリングストップ車両に搭載され、
前記内燃機関の吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
定常運転時に前記吸入空気量検出手段の検出結果に応じてスロットル開度を補正するスロットル開度補正手段と、を備え、
定常運転時に前記スロットル開度補正手段が吸入空気量の減少を補償するためのスロットル開度の増大補正を実行した場合に、前記始動制御手段はスロットル開度の増大補正を実行する
請求項1に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項1】
排気通路を流れる排気の一部をEGRガスとして吸気通路に再循環させるEGR装置を備える内燃機関の始動制御装置であって、
EGRガスに含まれる凝縮水が前記吸気通路の内壁で凍結することに起因する吸入空気量の減少を、スロットル開度を増大補正することで補償し、同吸入空気量の減少が補償された状況のもとで機関始動を実行する始動制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の始動制御装置。
【請求項2】
前記内燃機関の吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
所定の始動条件が成立したときに電動機によって停止状態の内燃機関を予備駆動する予備駆動手段と、
予備駆動中に前記内燃機関の吸入空気量が減少していることを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可する許可手段と、を備えた
請求項1に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項3】
機関回転速度に基づいて目標吸入空気量を規定するマップを記憶する記憶手段を備え、
前記許可手段は、前記内燃機関の予備駆動時の吸入空気量が予備駆動時の機関回転速度に基づく前記目標吸入空気量よりも小さいことを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可し、
前記始動制御手段は、前記内燃機関の吸入空気量を前記目標吸入空気量に近づけるように前記スロットル開度を増大補正する
請求項2に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項4】
前記始動制御手段は、前記内燃機関の前記予備駆動時の吸入空気量と前記目標吸入空気量との差分に応じた前記スロットル開度の増大補正を行う
請求項3に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項5】
前記EGR装置は前記吸気通路に再循環させる前記EGRガスの量を可変とするEGRバルブを含み、
前記内燃機関に対する燃料供給を中断する燃料カット制御を実行する燃料カット制御手段と、
前記燃料カット制御手段による燃料カット制御の実行中に前記EGRバルブを強制的に開閉するバルブ制御手段と、
前記EGRバルブを開閉したときの前記吸気通路内の圧力推移が予め設定された判定用圧力推移とは異なることを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可する許可手段と、を備えた
請求項1に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項6】
前記許可手段は、前記EGRバルブに強制閉弁指令が出力されてから前記EGRバルブが閉弁する間、又は前記EGRバルブに強制開弁指令が出力されてから前記EGRバルブが開弁する間における前記吸気通路内の圧力推移が、前記判定用圧力推移とは異なることを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可する
請求項5に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項7】
前記EGRバルブに強制閉弁指令が出力されてから前記EGRバルブが閉弁する間、又は前記EGRバルブに強制開弁指令が出力されてから前記EGRバルブが開弁する間における前記吸気通路の圧力推移に基づいて、単位時間当たりの圧力変化量を算出する算出手段を備え、
前記許可手段は、前記算出手段によって算出された前記圧力変化量が前記判定用圧力推移から求められる圧力変化量とは異なることを条件に、前記始動制御手段による前記スロットル開度の増大補正を許可する
請求項6に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項8】
走行駆動源として前記内燃機関のみを用いるとともに、一時停止している前記内燃機関をクランキングすることにより始動するアイドリングストップ車両に搭載され、
前記内燃機関の吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
定常運転時に前記吸入空気量検出手段の検出結果に応じてスロットル開度を補正するスロットル開度補正手段と、を備え、
定常運転時に前記スロットル開度補正手段が吸入空気量の減少を補償するためのスロットル開度の増大補正を実行した場合に、前記始動制御手段はスロットル開度の増大補正を実行する
請求項1に記載の内燃機関の始動制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−281286(P2010−281286A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136378(P2009−136378)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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