説明

内燃機関の排気再循環制御装置

【課題】燃料カット制御およびEGR制御のオンオフに伴うトルク変動を運転者に感じさせないようにする内燃機関の排気再循環制御装置を提供する。
【解決手段】制御部100は、エンジン回転数Neおよびスロットル開度THをパラメータとするEGR作動領域マップ101に基づいて、EGR制御の作動非作動を切り替えるアクチュエータ61を制御し、自動二輪車1の減速時等に燃料カット条件が満たされると燃料噴射をカットする。燃料カット条件は、車速V、エンジン回転数Neおよびスロットル開度THで規定される燃料カットマップで規定されると共に、エンジン回転数Neが低側所定値NeLを下回ると燃料噴射のカットを終了して燃料噴射を復帰するように設定される。EGR作動領域マップ101のEGR作動領域Dを構成するエンジン回転数Neの最低値Ne1を、燃料カット条件の低側所定値NeLよりも高い値に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気再循環制御装置に係り、特に、排気ガスの一部を燃焼室内に戻して吸気ガスと共に再燃焼させる内燃機関の排気再循環制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関の排気ガスの一部を吸気側から再度吸入させて再燃焼させることで、排気ガスの浄化や燃費向上等の効果を得る排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)システムが知られている。また、燃料噴射装置を備えた内燃機関では、所定車速以上でスロットルを全閉にした減速時等に燃料噴射を停止する、いわゆる燃料カット制御が実行されることがある。
【0003】
特許文献1には、吸気ポートと排気ポートとを連通させるバイパス通路によって排気ガスの一部を吸気ポートから燃焼室内に戻す方式のEGRシステムを適用した内燃機関において、バイパス通路を開閉するEGRバルブの基準開度を不純物の付着等の経年変化に応じて適性化するための学習処理を、燃料カット制御の実行期間中に実行するようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−108329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、燃料カット制御中にEGRバルブの開度学習処理を行うものであるため、燃料カット中は常にEGR制御が実行され、かつ燃料カット制御が終了した後にEGR制御がオンからオフに切り替えられるものと考えられる。これにより、EGR制御をオフに切り替えることで内燃機関の燃焼状態が変わり、内燃機関が発生しているトルクに変動を与える可能性がある。特に、燃料カット後は、スロットル開度が低くかつエンジントルクが小さい状態であることが多いため、EGR制御のオフによるトルク変動を運転者が感じやすくなる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、燃料カット制御およびEGR制御のオンオフに伴うトルク変動を運転者に感じさせないようにする内燃機関の排気再循環制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、アクチュエータ(61)の作動に伴って内燃機関(10)の排気バルブ(34)を排気行程以外の行程で開くことにより、排気ガスの一部を燃焼室(15z)に戻して再燃焼させるEGR制御を実行する内燃機関の排気再循環制御装置において、前記EGR制御の作動非作動状態の切り替えは、前記アクチュエータ(61)を作動させて、動弁カム軸(41)と同期回転する可変カム部材(50)のカムプロフィールに基づいて前記排気バルブ(34)を作動させる状態と、前記カム部材(50)のカムプロフィールに基づく前記排気バルブ(34)の作動が行われない状態とを切り替えることで実行されるように構成されており、少なくともエンジン回転数(Ne)およびスロットル開度(TH)をパラメータとするEGR作動領域マップ(101)に基づいて前記アクチュエータ(61)を制御する制御部(100)を備え、前記制御部(100)は、車両(1)の減速時等に、燃料カット条件が満たされると、燃料噴射装置による燃料噴射をカットするように構成されており、前記燃料カット条件は、少なくとも、車速(V)、エンジン回転数(Ne)およびスロットル開度(TH)で規定される燃料カットマップで規定されると共に、エンジン回転数(Ne)が低側所定値(NeL)を下回ると燃料噴射のカットを終了して燃料噴射を復帰するように設定されており、前記EGR作動領域マップ(101)のEGR作動領域(D)を構成するエンジン回転数(Ne)の最低値(Ne1)が、前記燃料カット条件の低側所定値(NeL)よりも高い値に設定されている点に第1の特徴がある。
【0008】
また、前記アクチュエータ(61)は、前記排気バルブ(34)を駆動する動弁カム軸(41)に対して軸方向に摺動可能かつ相対回転不能に取り付けられた可変カム部材(50)を摺動動作可能に構成されており、前記EGR制御の作動非作動状態の切り替えは、前記アクチュエータ(61)によって可変カム部材(50)を摺動動作させて前記排気バルブ(34)との係合非係合状態を切り替えることで実行され、前記排気バルブ(34)は、EGR制御の非作動時には、前記動弁カム軸(41)に固定された排気カムロブ(42e)と排気ロッカーアーム(44e)とが係合した状態で駆動されると共に、EGR制御の作動時には、前記可変カム部材(50)および前記排気カムロブ(42e)の両方が前記排気ロッカーアーム(44e)と係合した状態で駆動されるように構成されている点に第2の特徴がある。
【0009】
また、前記EGR作動領域(D)を構成するエンジン回転数(Ne)の最低値(Ne1)と、前記燃料カット条件の低側所定値(NeL)との間に、燃料カット量を徐々に減らす燃料カット量漸減制御の開始タイミングとしての高側所定値(NeH)が設定されている点に第3の特徴がある。
【0010】
また、前記低側所定値(NeL)と前記高側所定値(NeH)との差より、前記高側所定値(NeH)と前記最低値(Ne1)との差の方が大きくなるように設定されている点に第4の特徴がある。
【0011】
また、前記制御部(100)は、燃料カット量漸減制御の開始に伴ってカウンタを起動し、該カウンタが所定値に達することで前記燃料カット量漸減制御および燃料カットを終了して燃料噴射を復帰するように構成されている点に第5の特徴がある。
【0012】
また、前記EGR作動領域マップ(101)は、エンジン回転数(Ne)およびスロットル開度(TH)からなる二次元マップによって規定され、前記EGR作動領域(D)は、前記エンジン回転数(Ne)の所定範囲(Ne1〜Ne2)と、前記スロットル開度(TH)の所定範囲(0〜TH2)とによって形成される長方形から、低エンジン回転数(Ne)かつ高スロットル開度(TH)となる略三角形の所定範囲を除外することで形成されている点に第6の特徴がある。
【0013】
また、前記燃料カット条件は、スロットル開度(TH)が全閉状態であることを含む点に第7の特徴がある。
【0014】
さらに、前記EGR作動領域マップ(101)には、前記EGR作動領域(D)にヒステリシス特性を与えるためのヒステリシス設定領域(E)が設けられている点に第8の特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
第1,2の特徴によれば、アクチュエータは、排気バルブを駆動する動弁カム軸に対して軸方向に摺動可能かつ相対回転不能に取り付けられた可変カム部材を摺動動作可能に構成されており、EGR制御の作動非作動状態の切り替えは、アクチュエータによって可変カム部材を摺動動作させて排気バルブとの係合非係合状態を切り替えることで実行され、排気バルブは、EGR制御の非作動時には、動弁カム軸に固定された排気カムロブと排気ロッカーアームとが係合した状態で駆動されると共に、EGR制御の作動時には、可変カム部材および排気カムロブの両方が排気ロッカーアームと係合した状態で駆動されるように構成されており、少なくともエンジン回転数およびスロットル開度をパラメータとするEGR作動領域マップに基づいてアクチュエータを制御する制御部を備え、制御部は、車両の減速時等に、燃料カット条件が満たされると、燃料噴射装置による燃料噴射をカットするように構成されており、燃料カット条件は、少なくとも、車速、エンジン回転数およびスロットル開度で規定される燃料カットマップで規定されると共に、エンジン回転数が低側所定値を下回ると燃料噴射のカットを終了して燃料噴射を復帰するように設定されており、EGR作動領域マップのEGR作動領域を構成するエンジン回転数の最低値が、燃料カット条件の低側所定値よりも高い値に設定されているので、減速時に燃料噴射が実行されている状態で、EGR作動領域とEGR非作動領域との間をまたぐことが防止される。
【0016】
例えば、減速時に燃料噴射が実行されている状態で、EGR非作動領域からEGR作動領域に切り替わると、EGR制御によって燃焼状態がより好ましい状態となって、エンジン出力が向上する方向に変化する可能性がある。すると、スロットルオフでの減速時にエンジン出力が向上することとなり、ドライバビリティに影響を与える可能性がある。これに対し、本発明に係る設定によれば、EGR作動領域をまたぐのは、燃料噴射が行われていない燃料カット制御中となるので、エンジン出力に影響を与えることなくEGR制御の作動非作動を切り替えることが可能となる。
【0017】
第3の特徴によれば、EGR作動領域を構成するエンジン回転数の最低値と、燃料カット条件の低側所定値との間に、燃料カット量を徐々に減らす燃料カット量漸減制御の開始タイミングとしての高側所定値が設定されているので、燃料カット制御状態から燃料カット量を徐々に減らすことにより、燃料の再噴射時(燃料噴射の復帰時)のエンジン出力の変動等を抑えて、さらにドライバビリティを向上させることが可能となる。
【0018】
第4の特徴によれば、低側所定値と高側所定値との差より、高側所定値と最低値との差の方が大きくなるように設定されているので、燃料カット量漸減制御の開始から終了までの期間を短く設定して、この期間における燃料消費量を低減することができる。
【0019】
第5の特徴によれば、制御部は、燃料カット量漸減制御の開始に伴ってカウンタを起動し、該カウンタが所定値に達することで燃料カット量漸減制御および燃料カットを終了して燃料噴射を復帰するように構成されているので、カウンタをインクリメントする条件や所定値の設定を変更することで、燃料カット量漸減制御の開始から終了までの期間を任意に変更することが可能となる。これにより、内燃機関の形式等が異なる場合等でも燃料カット量漸減制御をスムーズに実行することができる。
【0020】
第6の特徴によれば、EGR作動領域マップは、エンジン回転数およびスロットル開度からなる二次元マップによって規定され、EGR作動領域は、エンジン回転数の所定範囲と、スロットル開度の所定範囲とによって形成される長方形から、低エンジン回転数かつ高スロットル開度となる略三角形の所定範囲を除外することで形成されているので、二次元マップにおける所定の三角形領域でEGR制御を非作動とすることで、エンジン出力の向上や排気ガス浄化の効果を向上させることができる。
【0021】
第7の特徴によれば、燃料カット条件は、スロットル開度が全閉状態であることを含むので、スロットル開度に基づいて乗員の減速意思を確認した上で、燃料カット制御を実行することが可能となる。
【0022】
第8の特徴によれば、EGR作動領域マップには、EGR作動領域にヒステリシス特性を与えるためのヒステリシス設定領域が設けられているので、EGR作動領域の境界付近で電磁ソレノイドの励磁と消磁が繰り返されることを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気再循環制御装置を適用した自動二輪車の左側面図である。
【図2】内燃機関の拡大側面図である。
【図3】車体右側から見た内燃機関の一部拡大断面図である。
【図4】車体後方から見た内燃機関の一部拡大断面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】動弁カム軸、定常カム部材および可変カム部材の分解斜視図である。
【図7】動弁カム軸、定常カム部材および可変カム部材の組立断面図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】揺動アームの斜視図である。
【図10】シリンダヘッドの上面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気再循環制御装置の構成を示すブロック図である。
【図12】吸排気バルブの駆動タイミングを示すグラフである。
【図13】EGR制御を実行する領域を規定するデータマップである。
【図14】EGRカム駆動ソレノイド制御の手順を示すフローチャートである。
【図15】減速時燃料カット制御の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気再循環制御装置を適用した自動二輪車1の左側面図である。また、図2は、内燃機関10の拡大側面図である。4サイクル単気筒のガソリンエンジンである内燃機関10は、クランク軸11を車幅方向に指向させた状態で自動二輪車1の車体フレーム2に搭載される。
【0025】
車体フレーム2には、ヘッドパイプ2h、ヘッドパイプ2hから車体後方下方へ延びる左右一対のメインフレーム2m,2mおよび該メインフレーム2m,2mの後端から下方に屈曲する急傾斜部2ma,2maが含まれる。さらに、ヘッドパイプ2hから急角度に後方下方へ延びる1本のダウンフレーム2dは、メインフレーム2m,2mの急傾斜部2ma,2maと略平行に配設されている。
【0026】
急傾斜部2ma,2maの上部からは、ガセット2g,2gを介して左右一対のシートレール2s,2sが後方に延出している。シートレール2s,2sは、急傾斜部2ma,2maの下部に連結されたバックステー2b,2bによって下方から支持されている。
【0027】
ヘッドパイプ2hには、左右一対のフロントフォーク3が揺動可能に支持されており、その下端に前輪Fwが回転自在に軸支されている。急傾斜部2ma,2maの下部には、後輪Rwを回転自在に軸支するスイングアーム4が揺動自在に軸支されており、スイングアーム4とガセット2g,2gとの間にリヤクッション5が介装されている。メインフレーム2m,2mの上部には、上方から跨るように燃料タンク6が架設されており、燃料タンク6の後方には、シートレール2s,2sに支持されたシート7が配設されている。
【0028】
メインフレーム2m,2mおよびダウンフレーム2d,2dに懸架される内燃機関10は、変速機一体式のSOHC型エンジンであり、シリンダブロック14、シリンダヘッド15およびヘッドカバー20は、若干前傾した姿勢で配設されている。シリンダヘッド15の後部には、スロットルバルブが内設される吸気管8を介してエアクリーナボックス8aが取り付けられている。一方、シリンダヘッド15の前部には、車体後部のマフラ9mに接続される排気管9が取り付けられている。
【0029】
本実施形態に係る内燃機関10は、吸気行程中の任意のタイミングで排気バルブを開くことで、排気ガスの一部を排気ポートから燃焼室内に戻して再燃焼させる排気再循環装置(EGRシステム)を備えている。具体的には、排気バルブを駆動するカムシャフトに、通常運転用のカムロブとEGR制御用のカムロブとが備えられており、EGR制御用のカムロブを任意に作動させることで、通常運転時には行われないEGR制御用の排気バルブ動作が実行されるように構成されている。内燃機関10のヘッドカバー20には、EGR制御用のカムロブを駆動するためのアクチュエータとしての電磁ソレノイド61が取り付けられている。
【0030】
図2を参照して、クランク軸11を軸支するクランクケース13には、クランク軸11が配置されるクランク室13Cの後方に変速機を収容するミッション室13Mが形成されており、その後部からは変速機の出力軸12が車幅方向左側に突出している。クランク室13Cの下方には、オイルを貯留するオイル溜め13Pが一体に形成されている。
【0031】
さらに、図3を併せて参照する。図3は、車体右側から見た内燃機関10の一部拡大断面図である。クランク室13C、ミッション室13M、オイル溜め13Pを形成するクランクケース13は、それぞれ車幅方向に左右割構造とされている。クランク室13Cの上部には、スリーブ14aが挿嵌されるシリンダブロック14および動弁機構40を備えるシリンダヘッド15が重ねられている。
【0032】
カムシャフトホルダ16、シリンダヘッド15およびシリンダブロック14は、ヘッドボルト17によってクランクケース13に一体に締結されている。シリンダヘッド15の上部には、弾性シール部材18を介してヘッドカバー20が配設されている。シリンダブロック14のスリーブ14aには、ピストン31が往復摺動自在に嵌合されており、このピストン31およびクランク軸11がコンロッド32で連結されることにより、クランク機構が構成されている。
【0033】
シリンダヘッド15には、シリンダ軸線方向でピストン31に対向するように燃焼室15zが形成されており、該燃焼室15zから車体後方に吸気ポート15iが延出し、一方、燃焼室15zから車体前方に排気ポート15eが延出している。
【0034】
吸気バルブ33および排気バルブ34は、シリンダヘッド15に一体に嵌着された弁ガイドにそれぞれ摺動可能に支持されている。吸気バルブ33および排気バルブ34は、動弁機構40により駆動されることで、クランク軸11の回転に同期して吸気ポート15iの吸気開口および排気ポート15eの排気開口を開閉する。
【0035】
図4は、車体後方から見た内燃機関10の一部拡大断面図である。点火プラグ19は、その先端が燃焼室15zの天井側から挿入されるようにシリンダヘッド15に取り付けられている。動弁機構40は、カムシャフトホルダ16によって車幅方向に軸支される1本の動弁カム軸(カムシャフト)41で駆動される。
【0036】
カムシャフトホルダ16には、動弁カム軸41の上方かつ車体前後の位置に、ロッカーアームシャフト43e,43iが支持されている。後方のロッカーアームシャフト43iには吸気ロッカーアーム44iが揺動自在に軸支されており、一方、前方のロッカーアームシャフト43eには排気ロッカーアーム44eが揺動自在に軸支されている。
【0037】
動弁カム軸41には、外周面に吸気カムロブ42iおよび排気カムロブ42eが並んで形成された円筒状の定常カム部材42が圧入されている。動弁カム軸41の車幅方向左側の端部には、被動カムチェーンスプロケット36が固定されている。
【0038】
クランク軸11には、駆動カムチェーンスプロケット35が固定されており、該駆動カムチェーンスプロケット35と被動カムチェーンスプロケット36との間に無端状のカムチェーン37が掛け渡されている(図2参照)。クランク軸11の回転動力は、クランク軸11の1/2の回転数で動弁カム軸41に伝達される。これにより、クランク軸11に同期して吸気ロッカーアーム44iおよび排気ロッカーアーム44eが揺動し、吸気バルブ33および排気バルブ34が所要のタイミングで開閉駆動する。
【0039】
シリンダブロック14、シリンダヘッド15およびヘッドカバー20の車幅方向左側には、カムチェーン室14c,15c,20cが1つの連通した空洞として形成されている。カムチェーン37は、カムチェーン室14c,15c,20c内で、上下に直線状に延びたチェーンガイド38によってその前側部分がガイドされると共に、弓形に湾曲したテンションスリッパ39によってその後側部分が抑えられて、適度な張りを維持している。テンションスリッパ39の後側は、テンショナリフタ39tによって押圧されている。
【0040】
図5は、図4のV−V線断面図である。また、図6は、動弁カム軸41、定常カム部材42および可変カム部材50の分解斜視図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。動弁カム軸41は、中心軸孔41hを有する円筒状部材であり、冷間鍛造により精度よく形成される。
【0041】
動弁カム軸41の軸方向中央には、6条のスプライン溝条41csを有する最大外形のスプライン形成部41cが形成されている。スプライン形成部41cの車幅方向右側には、段部を経て縮径されたカム固定部41rが形成され、その右端にはさらに縮径されたジャーナル部41jが形成されている。また、スプライン形成部41cの左方には、若干縮径された左側円筒部41lが形成されている。対角に位置する2つのスプライン溝条41cs,41csには、軸方向に長尺の同形状の長孔41s,41sがそれぞれ形成されている。動弁カム軸41の左端には、キー溝41kが形成されている。
【0042】
カム固定部41rには、排気カムロブ42eおよび吸気カムロブ42iを有する定常カム部材42が所定の相対角度で圧入固定される。定常カム部材42は、排気カムロブ42eが車幅方向左側に位置するようにして、カム固定部41rの右側からスプライン形成部41cに接するまで圧入される。これにより、排気カムロブ42eは、スプライン形成部41cに隣接して動弁カム軸41と一体化する。
【0043】
一方、吸気行程中に排気バルブ34を開いてEGR制御を実行するためのEGRカムとしての可変カム部材50は、動弁カム軸41のスプライン形成部41cにスプライン嵌合される。可変カム部材50の内周面には、動弁カム軸41に形成されたスプライン溝条41csに嵌合する6条のスプライン突条50csが形成されている。可変カム部材50の外周面の車幅方向右端部には、可変カムロブ50eが形成されている。
【0044】
可変カムロブ50eの外周の大部分は、排気カムロブ42eの基礎円と同径または若干小径の基礎円をなしており、リフト量の小さいEGR制御用のカム山が所定の位相角度に突出している。一方、可変カムロブ50eが形成されていない円筒部分には、可変カム部材50の内周部に形成されたスプライン突条50cs,50csを貫通すると共に、中心軸に直交するピン孔50p,50pが形成されている。また、この円筒部分の外周面には、ピン孔50p,50pの外側開口を通る外周溝50vが形成されている。
【0045】
この可変カム部材50を、動弁カム軸41のスプライン形成部41cに対して車幅方向左側から所定の相対角度でスプライン嵌合すると、可変カム部材50のピン孔50p,50pが動弁カム軸41の長孔41s,41sに一致することとなる。
【0046】
図7は、動弁カム軸41、定常カム部材42および可変カム部材50の組立断面図である。また、図8は、図7の8−8線断面図である。動弁カム軸41は、その右端のジャーナル部41jに嵌合するベアリング46と、その左端の左側円筒部41lに嵌合するベアリング45とによって、カムシャフトホルダ16(図4参照)に対して回転自在に軸支されている。ベアリング45は、左側円筒部41lにフランジ部材47がキー49を介して所定の相対角度で圧入されることにより、スプライン形成部41cとの間に挟み付けられる。
【0047】
フランジ部材47の図示左端部には、径方向に膨出したフランジ部47f,47fが形成されている。駆動カムチェーンスプロケット36は、ねじ孔36h,36hおよびフランジ部47f,47fに形成されたねじ孔47h,47hにねじ48,48を螺合することによって、フランジ部材47に取り付けられる。駆動カムチェーンスプロケット36の中心孔36cには、動弁カム軸41の左端部が係合する。
【0048】
動弁カム軸41の中心軸孔41hには、可変カム部材50を摺動変位させるためのスライダ機構52を構成するスライドロッド53が、軸方向に摺動自在に挿嵌される。スライドロッド53は、中央大径部53cの両側がそれぞれ僅かに縮径されると共に、中央大径部53cに軸方向に直交するようにピン孔53pが形成されている。
【0049】
スライド機構52は、動弁カム軸41の中心軸孔41hにスライドロッド53を挿入し、次に、動弁カム軸41の長孔41s,41sおよび可変カム部材50のピン孔50p,50pにピン孔53pを合致させ、合致したピン孔50p,50pと長孔41s,41sとピン孔53pの間に1本の連結ピン54を挿嵌させることで組み立てられる。
【0050】
連結ピン54は、可変カム部材50に形成された外周溝50vの内径より短く形成されており、外周溝50vに嵌合される止め輪55により抜け止めが行われる。これにより、連結ピン54は、その両端可変カム部材50のピン孔50p,50pに係合して可変カム部材50と一体に移動する。したがって、スライドロッド53が中心軸孔41h内で左右軸方向に摺動すると、これに伴って連結ピン54が長孔41s,41sに案内されて移動し、連結ピン54と一体に可変カム部材50が軸方向に移動する。
【0051】
動弁カム軸41の中心軸孔41hには、その右端内周面に雌ねじが形成されている。中心軸孔41hには、右方からコイルスプリング56が挿入されてからフランジ付きボルト57が螺合される、これにより、スライドロッド53の中央大径部53cとフランジ付きボルト57との間にコイルスプリング56が挟まれて、スライドロッド53が常時左方に付勢されるスライダ機構52が構成されることとなる。
【0052】
動弁カム軸41は、その外周に、定常カム部材42、可変カム部材50、被動カムチェーンスプロケット36およびベアリング45,46を取り付けた小組状態で、カムシャフトホルダ16の左右に相対向して突出する左右軸受壁16(16L,16R。図4参照)の軸孔に車幅方向左側から挿入される。そして、動弁カム軸41は、右側のベアリング46が右軸受壁16Rの軸孔に嵌合し、かつ左側のベアリング45が左側軸受壁16Lの軸孔に嵌合することでカムシャフトホルダ16に回転自在に軸支されて、定常カム部材42と一体かつ可変カム部材50と共に回転することとなる。
【0053】
なお、右側のベアリング46は、右軸受壁16Rの段部に当接して位置決めされており、左側のベアリング45は、ボルト58で左軸受壁16Lに固定される止め板59によって位置決めされている(図4参照)。
【0054】
図4を参照して、コイルスプリング56により左方に付勢されたスライドロッド53が、コイルスプリング56の付勢力に抗して右方に押されると、図中に実線で示すように、連結ピン54を介して可変カム部材50が図示右方に摺動変位する。これにより、可変カム部材50が排気カムロブ42eに近接し、排気ロッカーアーム44eのローラ44erが、排気カムロブ42eおよび可変カムロブ50eの双方に跨るようにして接することとなる。このため、排気カムロブ42eによる排気バルブ34の通常の開閉タイミングとは別に、EGR(排気再循環)を実行するための排気バルブ34の開閉を生じさせることができる。なお、吸気ロッカーアーム44iのローラ44ir(図3参照)は、吸気カムロブ42iにのみ接触するように構成されている。
【0055】
一方、スライドロッド53がコイルスプリング56により左方に移動すると、図4に2点鎖線で示すように、可変カム部材50が図示左方に摺動変位し、排気ロッカーアーム44eのローラ44erと可変カムロブ50eとが接触しなくなる。これにより、排気バルブ34は、排気カムロブ42eによる通常の排気バルブタイミングで開閉する。
【0056】
スライドロッド53を右方に押圧する可変バルブタイミング駆動機構60は、被動カムチェーンスプロケット36の車幅方向左側に設けられている。可変バルブタイミング駆動機構60は、アクチュエータとしての電磁ソレノイド61と、該電磁ソレノイド61の駆動をスライダ機構52に伝達する揺動アーム65からなる。電磁ソレノイド61は、ヘッドカバー20の天井壁20uの上方に固定され、揺動アーム65はヘッドカバー20のカムチェーン室20c内に揺動自在に軸支されている。
【0057】
ヘッドカバー20は、天井壁20uおよび周壁20sによって概ね矩形椀状に形成されている。天井壁20uには、円筒状の電磁ソレノイド61が収まる凹部20uhと、該凹部20uhの車体前後方向に隣接する凸部20up,20upとが形成されている(図3,4参照)。ヘッドカバー20の車幅方向左側には、電磁ソレノイド61を覆う位置まで上方に延出した中央突出部21が形成されており、該中央突出部21の車体前後方向には、突出ボス部22,22が形成されている(図5参照)。
【0058】
中央突出部21には、揺動アーム65が挿入可能な幅を有する中央空隙21cが形成されている。この中央突出部21には、電磁ソレノイド61の軸線上の車幅方向に指向する円孔21hが、中央空隙21cに達するように形成されている。電磁ソレノイド61の一端面には、円孔21hに嵌合する取付円筒部62bが設けられており、この取付円筒部62bから作動軸としてのプランジャ61pが突出している。電磁ソレノイド61の外周面の車体前後部分には、取付フランジ部62f,62fが延出している(図4参照)。
【0059】
電磁ソレノイド61は、取付円筒部62bを円孔21hに挿入すると共に、突出ボス部22,22に取付フランジ62f,62fを当接させたうえで、突出ボス部22,22に形成された雌ねじにボルト63,63を螺合することによってヘッドカバー20に固定される。電磁ソレノイド61のプランジャ61pの軸線方向は、動弁カム軸41およびその中心軸孔41h内のスライドロッド53の軸線方向と平行とされる。
【0060】
ヘッドカバー20は、凹部20uhおよび凸部20up,20upが形成されることで剛性が高められている。また、電磁ソレノイド61を凹部20uhに収まるように固定することで、電磁ソレノイド61の上方への突出量が低減されている。
【0061】
中央突出部21に形成された中央空隙21cの前後両側には、一対のガイド壁23,23が下方に延出して形成されている。ヘッドカバー20の周壁20sには、揺動アーム65が周壁20sに当接することを防ぐ弾性ストッパ部片29が貼着されている。
【0062】
図9は、揺動アーム65の斜視図である。揺動アーム65は、相対向する長尺同形状の側板部65b,65bを長尺の連結板部65aが連結した断面コの字状をなす部材である。揺動アーム65は、シリンダ軸線方向と略平行に指向されてヘッドカバー20のカムチェーン室20cに配設される。側板部65b,65bには、中央より上部に偏った位置に軸支孔65bh,65bhが設けられており、軸支孔65bh,65bhから上下に向かうにつれて先細形状となるように形成されている。
【0063】
揺動アーム65は、その上半部を中央突出部21の中央空隙21cに挿入すると共に、軸支孔65bh、65bhを中央空隙21cの前後側面に形成された枢軸孔と一致させて枢軸ボルト64を貫通螺合させることで、ヘッドカバー20に揺動自在に軸支される。
【0064】
動弁カム軸41内を摺動するスライドロッド53は、ヘッドカバー20とシリンダヘッド15との合わせ面S(弾性シール部材18の下面)と略同一面上に配設されており、揺動アーム65の下端は、この合わせ面Sより下方に若干突出している。一方、中央突出部21から下方に延出した前後一対のガイド壁23,23の下端23a,23aは、スライドロッド53より上方に位置している。揺動アーム65が当接するストッパ部片24,24は、ガイド壁23,23の下端より上方位置に配設されている(図5参照)。
【0065】
揺動アーム65は、中央より上部に片寄った位置を枢軸ボルト64で軸支されるので、枢軸ボルト64より下側部分の方が長尺であり、図4に示すように、揺動アーム65の支点Pとなる枢軸ボルト64は、動弁カム軸41に固着された被動カムチェーンスプロケット36よりも上方に位置する。電磁ソレノイド61のプランジャ61pは、上側端部の連結板部65aに当接し、コイルスプリング56で付勢されたスライドロッド53は、枢軸ボルト64より下側端部の連結板部65aに当接する。
【0066】
電磁ソレノイド61の取付円筒部62bが中央突出部21の円孔21hに嵌入されると、電磁ソレノイド61の消磁状態で後退したプランジャ61pが揺動アーム65の上端に当接して押し、揺動した揺動アーム65の下端は、コイルスプリング56により付勢されたスライドロッド53の左端に当接して、図4に2点鎖線で示した状態となる。すなわち、揺動アーム65は、その下端がスライドロッド53を介してコイルスプリング56により付勢された状態にあり、自由に揺動しないようになっている。したがって、電磁ソレノイド61の駆動でプランジャ61pが後退しても、プランジャ61pと揺動アーム65の上端とは常に当接状態が維持され、揺動アーム65の下端とスライドロッド53も常に当接状態が維持された状態でスライドロッド53に動力が伝達されるので、揺動アーム65とスライドロッド53との衝突音が発生することはない。
【0067】
なお、電磁ソレノイド61が駆動したとき、揺動アーム65の揺動はストッパ部片24に当接して規制されることで、スライドロッド53と共に可変カム部材50の右方への摺動も所定位置に規制され、可変カム部材50は定常カム部材42からわずかに離れた近接した位置に停止する。
【0068】
ヘッドカバー20に支持された電磁ソレノイド61は、燃料タンク6の下方に位置するため、その作動音は燃料タンク6に遮断されて乗員に伝わりにくい。さらに、燃料タンク6により電磁ソレノイド61が保護されるので、電磁ソレノイド専用の遮蔽部材が不要となり、部品点数の低減も図られる。
【0069】
図4を参照して、揺動アーム65は、枢軸ボルト64による揺動中心を支点Pとすると、電磁ソレノイド61のプランジャ61pが当接する上端が力点Qとなり、スライドロッド53に当接する下端の点が作用点Rとなる。揺動アーム65は、電磁ソレノイド61の励磁駆動で左方に突出したプランジャ61pを力点Qで受け、揺動して下端の作用点Rでスライドロッド53を右方に摺動する。一方、電磁ソレノイド61が消磁すると、コイルスプリング56の付勢力でスライドロッド53が左方に摺動すると共に、電磁ソレノイド61のプランジャ61pが右方に押し込まれる。
【0070】
すなわち、電磁ソレノイド61が消磁しているとき、スライドロッド53はコイルスプリング56の付勢力により左方に摺動し、可変カム部材50が左方に摺動変位して定常カム部材42から離れ、排気バルブ34は通常の排気バルブタイミングで開閉する。これに対し、電磁ソレノイド61を励磁すると、プランジャ61pが左方に突出することでスライドロッド53がコイルスプリング56の付勢力に抗して右方に摺動し、連結ピン54を介して可変カム部材50が右方に摺動変位して、排気カムロブ42eによる排気バルブ34の通常の開閉タイミングとは別に、可変カムロブ50eによる排気バルブ34の開閉が行われる状態に切り替わる。
【0071】
この通常の排気タイミングとは異なる排気バルブ34の開閉タイミングは、吸気バルブ33の開弁タイミングに重なる所定のタイミングで実行され、この排気バルブ34の開弁によって排気ポートに残留した排気ガスを燃焼室15zに戻すことが可能となる。
【0072】
揺動アーム65は、その長尺方向がシリンダ軸線方向と略平行に(略上下方向に)指向して配設されると共に、動弁カム41に固着された被動カムチェーンスプロケット36よりも上方に支点Pが位置するように構成されるので、レバー比を大きく構成しながら揺動アーム65を動弁装置40にコンパクトに組み込むことができる。
【0073】
また、揺動アーム65は、力点Q、支点Pおよび作用点Rが上から下へ順に直線的に位置しているので、揺動アーム65をカムチェーン室20cの狭いスペースに組み込みやすく、揺動アーム65の軽量化を図りつつ、揺動アーム65にねじれ方向の力がかかることを防止している。さらに、揺動アーム65が断面コ字状とされるため、揺動アーム65の軽量化を図りつつ、剛性を確保して揺動アーム65のたわみが防止されている。これにより、電磁ソレノイド61の動作を常に正確に移動してスライダ機構52に伝達して可変カム部材50を変位させることが可能となり、バルブタイミングの変更を円滑に精度よく実行してEGR制御を効率よく行うことが可能となる。
【0074】
なお、ヘッドカバー20の裏面側には、特に、中央突出部21の下方に多くの補強リブが設けられている。これにより、電磁ソレノイド61を片持ち支持する中央突出部21および突出ボス部22,22の剛性が確保され、突出ボス部22,22に固定される電磁ソレノイド61のプランジャ61pの駆動がスライダ機構52に正確に伝達されることとなる。また、揺動アーム65のレバー比が大きいので、電磁ソレノイド61の駆動量が少なくて済み、小型のアクチュエータを用いることができる。さらに、ヘッドカバー20が、揺動軸64を支持すると共に一対のガイド壁23,23を一体に形成するので、部品点数の少ない簡素な構造とすることができる。
【0075】
図10は、シリンダヘッド15の上面図である。ヘッドカバー20の天井壁20uの裏面には、車体前後方向に対して前方が左側に位置するように延びたオイル通路26が形成されている。オイル通路26には、下方に向けた4つの噴射孔27が設けられている。また、シリンダヘッド15の上面には、3つのノック孔15nが形成されており、該ノック孔15にそれぞれノック部材72が嵌合されている。
【0076】
シリンダヘッド15の上部にヘッドカバー20を被せる際には、ヘッドカバー20側に設けられたノック孔15nにノック部材72を嵌合させて位置決めを行い、取付ボルト穴15bに弾性部材71を介してフランジ付きボルト70を貫通させて締め付ける。これにより、ヘッドカバー20は、ノック部材72によってシリンダ軸線に直交する方向の位置ずれが規制されると共にシリンダヘッド15に対して弾性支持されることとなり、これにより、可変バルブタイミング駆動機構60の動作に影響を与えるような振動が吸収されて、バルブタイミングの変更を精度よく実行することができる。
【0077】
なお、シリンダヘッド15の後側でオイル通路26に近接するノック穴15nは、シリンダブロック14側から延出するオイル供給路15aと連通し、かつオイル通路26に連通している。これにより、オイル供給路15aから供給されるオイルは、円筒状のノック部材72を介してオイル通路26に供給されることとなる。
【0078】
図10に2点鎖線で示すように、オイル通路26は、吸気ロッカーアーム44iと排気ロッカーアーム44eの上方で斜め前後方向に延びるように形成されている。オイル通路26の途中には、4つの噴射孔27が設けられており、吸気ロッカーアーム44iおよび排気ロッカーアーム44eの上にオイルが散布されて動弁機構40が潤滑される。
【0079】
オイル通路26の噴射孔27から動弁機構40に散布されたオイルは、可変カム部材50が摺動する動弁カム軸41とのスプライン嵌合部も潤滑するので、可変カム部材50が定常カム部材42に近接したときの両者の間隙にもオイルは侵入する。しかしながら、本実施形態では、揺動アーム65がストッパ部片24に当接して振動を規制されることで、可変カム部材50と定常カム部材42との間に間隙が設けられるため、オイルの粘性によって可変カム部材50と定常カム部材42とが離れにくくなることはない。
【0080】
動弁機構40に散布されたオイルやカムチェーン37により掻き上げられたオイルは、動弁カム軸41の回転に伴うロッカーアーム44i,44eの揺動およびカムチェーン37の回動等により跳ね上げられる。これにより、揺動アーム65の揺動軸部分も常にオイルによって潤滑されると共に、揺動アーム65とスライドロッド53との当接部の摩耗も防止される。
【0081】
図11は、本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気再循環制御装置の構成を示すブロック図である。内燃機関の排気再循環制御装置として機能する制御部としてのECU100には、Ne(エンジン回転数)センサ102、Tw(温度)センサ103、TH(スロットル開度)センサ104およびPb(吸気圧)センサ105からの情報がそれぞれ入力される。なお、内燃機関10がクランク軸2回転(720度)中のどの位置にあるかは、Neセンサ102で検知されるクランク軸11のクランクパルス情報およびPbセンサ105の出力値に基づく行程判別(表裏判定)によって算出される。ECU100は、各センサ情報に基づいて、点火プラグ19の点火タイミングや燃焼室への燃料噴射量等の決定も行う。なお、Twセンサ103は、内燃機関10が空冷エンジンの場合には潤滑油温を検知し、また、内燃機関10が水冷エンジンの場合には冷却水温を検知するように構成できる。
【0082】
本実施形態では、ECU100の内部に、EGR制御を実行する運転状態を規定するEGR作動領域マップ101(図13参照)が収納されている。ECU100は、Neセンサ102およびTHセンサ104のセンサ情報をEGR作動領域マップ101に照らし合わせることにより、現在の内燃機関10の運転状態がEGR制御に適した運転状態であるか否かを判断するように構成されている。
【0083】
そして、ECU100は、EGR制御に適した運転状態であると判断すると、電磁ソレノイド61を励磁して可変カム部材50(図4参照)を排気ロッカーアーム44eに係合させてEGR制御を実行する一方、EGR制御に適した運転状態でないと判断すると、電磁ソレノイド61を消磁して可変カム部材50と排気ロッカーアーム44eとの係合を解除して、EGR制御を停止(通常運転)する。
【0084】
図12は、吸排気バルブの駆動タイミングを示すグラフである。吸気バルブ33の作動タイミングB(実線)および排気バルブ34の作動タイミングA(一点鎖線)は、それぞれ、定常カム部材42に形成された吸気カムロブ42iおよび排気カムロブ42e(図4参照)によって規定されている。
【0085】
通常、4サイクルエンジンにおける吸排気バルブのバルブタイミングにおいては、クランク角度ゼロ(排気上死点)を跨ぐ所定範囲にオーバーラップ期間が設けられるほかは、吸排気バルブが同時に開くことはない。しかしながら、実施形態に係る内燃機関10では、排気ガスの一部を排気ポートから燃焼室内に戻して再燃焼するEGR制御を実行するために、電磁ソレノイド61を励磁して可変カム部材50を排気ロッカーアーム44eに係合させることで、吸気バルブ33が開いている期間中に排気バルブ34を開くことができるように構成されている。
【0086】
具体的には、図示破線(C)で示すように、吸気行程から圧縮行程にかけての開弁期間T(例えば、クランク角度180度を跨いで前後90度の期間)の間に、比較的小さなバルブリフト量で排気バルブ34を開くことで、EGR制御を実行するように構成されている。このEGR制御におけるバルブタイミングおよびバルブバルブリフト量は、可変カム部材50に形成された可変カムロブ50eよって規定される。
【0087】
図13は、EGR作動領域マップ101である。EGR制御は、内燃機関10が所定の運転状態にあるときに排気ガスの浄化等の効果が大きくなる一方、この所定の運転状態から大きく離れた状態では、EGR制御を非作動としたほうがよいことが知られている。この二次元マップとしてのEGR作動領域マップでは、エンジン回転数Neおよびスロットル開度THによって、EGRの作動領域を規定している。EGR作動領域は、例えば、スロットル開度THが小さく(例えば、開度0〜35%)、かつエンジン回転数が中程度(例えば、2750〜4500rpm)の領域に設定することができる。
【0088】
本実施形態では、エンジン回転数NeがNe1〜Ne2の範囲で、かつスロットル開度THが0(ゼロ)〜TH2の範囲からなる長方形から、図示左上を三角形状に切り取った領域を、EGR作動領域D(実線)として設定している。長方形の領域の一部をこのように除外するのは、Ne1〜Neaの範囲において、EGR制御を実行するスロットル開度THを、TH1〜TH2の範囲内で直線的に増加させるためであり、出願人の実験によれば、この三角形領域でEGR制御を非作動とすることで、エンジン出力の向上や排気ガス浄化能力の向上が確認されたという。
【0089】
また、EGR作動領域Dには、EGR制御を解除する際に適用されるヒステリシス設定領域E(二点鎖線部)が設定されている。例えば、スロットル開度THがTHaのままエンジン回転数NeがNe3から減少する場合には、EGR制御領域Dを規定するエンジン回転数Ne2に達することでEGR制御が開始される。これに対し、スロットル開度THがTHaのままエンジン回転数NeがNe2に向かって増大する場合には、Ne2より大きくヒステリシス設定領域Eを規定しているNe3に達することで、EGR制御を終了させるように設定されている。これにより、EGR作動領域Dの境界付近で電磁ソレノイド61の励磁と消磁が繰り返されることを防止することができる。
【0090】
上記したように、ECU100は、内燃機関10の運転状態がEGR作動領域Dに入るとEGR制御を開始し、逆に、EGR作動領域Dから外れるとEGR制御を終了するように構成されている。しかしながら、EGR作動領域Dに入った、または、EGR作動領域Dから外れたことを検知して直ちに電磁ソレノイド61を作動させると、可変バルブタイミング機構60において切り替え作動音が生じる可能性がある。
【0091】
具体的には、EGR制御を終了する場合には、可変カム部材50を摺動させて可変カムロブ50eと排気ロッカーアーム44eとの係合状態を解除するが、このとき、可変カムロブ50eによって排気バルブ34が開いた状態であると、可変カムロブ50eを軸方向に引き抜く際に、排気バルブ34を閉方向に付勢するバルブスプリング(不図示)の付勢力によって排気バルブ34が勢いよく閉じることとなる。これにより、排気バルブ34の傘部分(バルブフェース)と排気ポート15eに設けられたバルブ当接部(バルブシート)とが勢いよく当接する際の接触音が生じてしまう。
【0092】
そこで、本実施形態では、クランクパルスおよびPbセンサ出力に基づいて排気バルブ34の駆動状態を検知し、EGR制御を終了しようとする際に可変カム部材50によって排気バルブ34が開いている場合には、排気バルブ34が全閉状態となるまで待機してから、電磁ソレノイド61を消磁して可変カムロブ50eを摺動させるように設定されている。これにより、EGR制御を終了する際に、排気バルブ34がバルブシートに当接する音が生じることを防ぐことができる。なお、本実施形態では、EGR制御を開始する際も、可変カム部材50によって排気バルブ34が開く開弁期間Tにある場合には、排気バルブ34が全閉状態となるまで待機してから電磁ソレノイド61を励磁するように設定されている。
【0093】
また、本実施形態に係る内燃機関10では、燃料噴射制御を実行するECU100が、所定車速以上での減速時等に燃料噴射を停止する燃料カット制御を実行するように構成されている。この燃料カット制御は、例えば、所定車速以上でスロットル開度THが全閉状態とされた場合に、所定のエンジン回転領域で燃料噴射を停止するように設定される。
【0094】
ここで、エンジンが高回転状態からスロットルオフによるエンジンブレーキで減速する場合を想定すると、スロットルオフからの経過時間の増加に伴って、車速およびエンジン回転数が共に減少するが、ある所定の低回転領域にまで減速された場合には、スロットル開度が全閉であっても、エンジンストールを避けるために燃料噴射を再開する必要がある。しかしながら、あるエンジン回転数に至った時点で通常噴射を再開すると、エンジン出力が変化してドライバビリティに影響を与える可能性がある。そこで、本実施形態では、減速時の燃料カット状態から噴射制御を復帰させる際に、燃料カット量を徐々に減らしていく燃料カット量漸減制御を実行することで、再噴射時のエンジン出力の変化が小さくなるように設定されている。
【0095】
本実施形態では、燃料カット制御から復帰して燃料噴射を開始するエンジン回転数が、EGR作動領域Dの最低回転数より低く設定されている点に特徴がある。具体的には、図13を参照して、スロットルオフによる減速時の燃料カット制御を終了するエンジン回転数NeL(例えば、2000rpm)は、EGR作動領域Dの最低回転数Ne1(例えば、2750rpm)より低い値に設定されている。さらに、燃料カット量漸減制御を開始するエンジン回転数NeH(例えば、2200rpm)も、EGR作動領域Dの最低回転数Ne1より低い値に設定されている。
【0096】
上記したような設定によれば、減速時に燃料噴射が実行されている状態で、EGR作動領域とEGR非作動領域との間をまたぐことが防止される。例えば、減速時に燃料噴射が実行されている状態で、EGR非作動領域からEGR作動領域に切り替わると、EGR制御によって燃焼状態がより好ましい状態となって、エンジン出力が向上する方向に変化する可能性がある。すると、スロットルオフでの減速時にエンジン出力が向上することとなり、ドライバビリティに影響を与える可能性がある。これに対し、上記した設定によれば、EGR作動領域Dをまたぐのは、燃料噴射が行われていない燃料カット制御中となり、エンジン出力に影響を与えることなく、EGR制御の作動非作動を切り替えることが可能となる。
【0097】
図14は、EGRカム駆動ソレノイド制御の手順を示すフローチャートである。このフローチャートでは、ECU100によるEGRカム(可変カム部材)50の制御手順を示す。ステップS1では、THセンサ104によってスロットル開度THが検知され、続くステップS2では、Neセンサ102によってエンジン回転数Neが検知される。
【0098】
ステップS3では、ECU100内のEGR作動領域マップ101の検索が実行される。ステップS4では、スロットル開度THが所定範囲内であるか否かが判定され、肯定判定されるとステップS5に進み、エンジン回転数Neが所定範囲内であるか否かが判定される。ステップS5で肯定判定されるとステップS6に進み、エンジン温度Twが所定値TwS以上であるか否かが判定される。このように、本実施形態では、EGR制御の開始条件として、スロットル開度THおよびエンジン回転数Neに加えて、エンジン温度Twも考慮される。
【0099】
ステップS6で肯定判定されると、EGR作動条件が満たされたとして、ステップS7に進み、EGRカム駆動条件フラグF=1が設定される。一方、ステップS4,5,6のいずれかで否定判定されると、EGR作動条件が満たされていないとして、ステップS8に進み、EGRカム駆動条件フラグF=0が設定される。
【0100】
そして、ステップS9では、クランクパルスおよびPbセンサ出力に基づいて、可変カム部材による排気バルブ作動領域であるか否かが判定される。この判定は、現在のクランク軸11の位相が、可変カム部材50の可変カムロブ50eによって排気バルブ34が開く領域、すなわち、開弁期間Tにあるか否かを判定するものである。
【0101】
ステップS9で肯定判定される、すなわち、EGR制御中であれば、可変カム部材50によって排気バルブ34が開いている状態であると判定されると、ステップS10に進んで、可変カム部材による排気バルブ作動領域(開弁期間T)を外れたか否かが判定される。ステップS10で否定判定された場合には、ステップS11に進んで待機状態となり、ステップS9の判定に戻る。
【0102】
一方、ステップS10で肯定判定される、すなわち、EGR制御中であれば、可変カム部材50による排気バルブ34の駆動が終了して排気バルブ34が全閉状態(EGR制御中でなければ排気バルブはもともと全閉状態)になったと判定されると、ステップS12に進む。
【0103】
ステップS12では、ステップS7,8で設定されたEGRカム駆動条件フラグF=1であるか否かが判定される。ステップS12で肯定判定されると、ステップS13に進んで電磁ソレノイド61がオンに切り替えられてEGR制御が開始され、一連の制御が終了する。一方、ステップS12で否定判定されると、ステップS14に進んで電磁ソレノイド61がオフに切り替えられてEGR制御が終了し、一連の制御を終了する。
【0104】
図15は、減速時燃料カット制御の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示した符号等は、図13に示したEGR作動領域マップ中の記載に対応している。ステップS20では、ECU100に記憶される燃料カットマップ(不図示)に基づいて、燃料カット条件が成立したか否かが判定される。燃料カット条件のパラメータは、例えば、車速V、エンジン回転数Neおよびスロットル開度THとすることができる。
【0105】
ステップS21では、燃料カット中であるか否かが判定され、続くステップS22では、スロットルが全閉であるか否かが判定される。ステップS20,21,22で肯定判定されると、ステップS23に進んで、エンジン回転数Neが高側所定値NeH(例えば、2200rpm)以上であるか否かが判定される。ステップS23で肯定判定されると、ステップS24に進んで、エンジン温度Twが所定値TwL(例えば、40度)以上であるか否かが判定される。
【0106】
ステップS23で否定判定される、すなわち、エンジン回転数Neが所定の低回転状態であると判定されると、ステップS25に進む。また、ステップS24で否定判定される、すなわち、エンジン温度Twが所定の低温状態であると判定されると、ステップS25に進む。一方、ステップS24で肯定判定される、すなわち、エンジン温度Twが所定の高温状態であると判定されると、そのまま一連の制御を終了する。
【0107】
ステップS25では、エンジン回転数Neが低側所定値NeL(例えば、2000rpm)を超えているか否かが判定される。ステップS25で肯定判定されると、ステップS26に進んで、燃料カット量漸減制御が開始され、続くステップS27では、燃料カット量漸減制御カウンタがインクリメントされる。燃料カット量漸減制御カウンタは、ECU100の内部に備えることができる。
【0108】
ステップS28では、燃料カット量漸減制御カウンタが所定値に到達したか否かが判定され、肯定判定されると、ステップS29に進んで燃料カット制御を終了(燃料噴射制御が復帰)し、一方、否定判定されると、そのまま一連の制御を終了する。なお、ステップS25で否定判定されると、そのままステップS29に進んで燃料カット制御を強制終了して、一連の制御を終了する。上記したような燃料カット制御によれば、燃料カット制御状態から燃料カット量を徐々に減らすことにより、燃料の再噴射時(燃料噴射の復帰時)のエンジン出力の変動等を抑えて、ドライバビリティを向上させることが可能となる。
【0109】
なお、可変バルブタイミング機構の構造、EGR作動領域マップの設定、燃料カット制御を終了するエンジン回転数の設定値等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。本発明に係る内燃機関の排気再循環制御装置は、自動二輪車に限られず、鞍乗型の三/四輪車等の各種車両および汎用エンジン等に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0110】
1…自動二輪車、2m…メインフレーム、10…内燃機関(エンジン)、33…吸気バルブ、34…排気バルブ、40…動弁機構、41…動弁カム軸、42…定常カム部材、42i…吸気カムロブ、42e…排気カムロブ、44i…吸気ロッカーアーム、44e…排気ロッカーアーム、50…可変カム部材、50e…可変カムロブ、60…可変バルブタイミング機構、61…電磁ソレノイド(アクチュエータ)、65…揺動アーム、100…ECU(制御装置)、101…EGR作動領域マップ、102…Ne(エンジン回転数)センサ、103…Tw(エンジン温度)センサ、104…TH(スロットル開度)センサ、105…Pbセンサ、D…EGR作動領域、E…ヒステリシス設定領域、NeH…燃料カット量漸減制御開始エンジン回転数、NeL…燃料カット制御終了エンジン回転数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ(61)の作動に伴って内燃機関(10)の排気バルブ(34)を排気行程以外の行程で開くことにより、排気ガスの一部を燃焼室(15z)に戻して再燃焼させるEGR制御を実行する内燃機関の排気再循環制御装置において、
前記EGR制御の作動非作動状態の切り替えは、前記アクチュエータ(61)を作動させて、動弁カム軸(41)と同期回転する可変カム部材(50)のカムプロフィールに基づいて前記排気バルブ(34)を作動させる状態と、前記カム部材(50)のカムプロフィールに基づく前記排気バルブ(34)の作動が行われない状態とを切り替えることで実行されるように構成されており、
少なくともエンジン回転数(Ne)およびスロットル開度(TH)をパラメータとするEGR作動領域マップ(101)に基づいて前記アクチュエータ(61)を制御する制御部(100)を備え、
前記制御部(100)は、車両(1)の減速時等に、燃料カット条件が満たされると、燃料噴射装置による燃料噴射をカットするように構成されており、
前記燃料カット条件は、少なくとも、車速(V)、エンジン回転数(Ne)およびスロットル開度(TH)で規定される燃料カットマップで規定されると共に、エンジン回転数(Ne)が低側所定値(NeL)を下回ると燃料噴射のカットを終了して燃料噴射を復帰するように設定されており、
前記EGR作動領域マップ(101)のEGR作動領域(D)を構成するエンジン回転数(Ne)の最低値(Ne1)が、前記燃料カット条件の低側所定値(NeL)よりも高い値に設定されていることを特徴とする内燃機関の排気再循環制御装置。
【請求項2】
前記アクチュエータ(61)は、前記排気バルブ(34)を駆動する動弁カム軸(41)に対して軸方向に摺動可能かつ相対回転不能に取り付けられた可変カム部材(50)を摺動動作可能に構成されており、
前記EGR制御の作動非作動状態の切り替えは、前記アクチュエータ(61)によって可変カム部材(50)を摺動動作させて前記排気バルブ(34)との係合非係合状態を切り替えることで実行され、
前記排気バルブ(34)は、EGR制御の非作動時には、前記動弁カム軸(41)に固定された排気カムロブ(42e)と排気ロッカーアーム(44e)とが係合した状態で駆動されると共に、EGR制御の作動時には、前記可変カム部材(50)および前記排気カムロブ(42e)の両方が前記排気ロッカーアーム(44e)と係合した状態で駆動されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気再循環制御装置。
【請求項3】
前記EGR作動領域(D)を構成するエンジン回転数(Ne)の最低値(Ne1)と、前記燃料カット条件の低側所定値(NeL)との間に、燃料カット量を徐々に減らす燃料カット量漸減制御の開始タイミングとしての高側所定値(NeH)が設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の排気再循環制御装置。
【請求項4】
前記低側所定値(NeL)と前記高側所定値(NeH)との差より、前記高側所定値(NeH)と前記最低値(Ne1)との差の方が大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の排気再循環制御装置。
【請求項5】
前記制御部(100)は、燃料カット量漸減制御の開始に伴ってカウンタを起動し、該カウンタが所定値に達することで前記燃料カット量漸減制御および燃料カットを終了して燃料噴射を復帰するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の排気再循環制御装置。
【請求項6】
前記EGR作動領域マップ(101)は、エンジン回転数(Ne)およびスロットル開度(TH)からなる二次元マップによって規定され、
前記EGR作動領域(D)は、前記エンジン回転数(Ne)の所定範囲(Ne1〜Ne2)と、前記スロットル開度(TH)の所定範囲(0〜TH2)とによって形成される長方形から、低エンジン回転数(Ne)かつ高スロットル開度(TH)となる略三角形の所定範囲を除外することで形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の内燃機関の排気再循環制御装置。
【請求項7】
前記燃料カット条件は、スロットル開度(TH)が全閉状態であることを含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の内燃機関の排気再循環制御装置。
【請求項8】
前記EGR作動領域マップ(101)には、前記EGR作動領域(D)にヒステリシス特性を与えるためのヒステリシス設定領域(E)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の内燃機関の排気再循環制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−241584(P2012−241584A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111326(P2011−111326)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】