説明

処理装置及び処理装置の運転方法

【課題】複数の液処理モジュール間で共有されている共通用力系の負荷を抑えた処理装置等を提供する。
【解決手段】処理モジュール群は、基板に対して各々同一の処理を行うための多数の処理モジュールを、n個(n≧2)を1組としてk組(k≧2)備え、各組の処理モジュールには各組の処理モジュールに対して共通化されると共にその最大能力がm個(m≦n)分の大きさの共通用力系が設けられている。搬送機構は各組の処理モジュールに基板を順次1個づつ搬入する動作を繰り返し、このとき(1)共通用力系が使用されている一の処理モジュールにおける処理が終了した後にその組の他の処理モジュールへ基板を搬入するか、または(2)当該一の処理モジュールの処理の終了を待たずに他の処理モジュールへ基板を搬入してから当該一の処理モジュールにおける処理が終了した後に他の処理モジュールの処理を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウエハなどの基板に対して液処理や洗浄処理、真空乾燥などの処理を行う処理装置及びその運転方法に係り、特に、処理を実行する処理モジュールを複数個利用して基板を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)の製造工程には、半導体ウエハ(以下、ウエハという)やガラス基板などの基板の表面に薬液や純水などの処理液を供給して基板に付着したパーティクルや汚染物質の除去を行う液処理工程がある。
【0003】
こうした液処理工程を行う液処理装置の一つに、スピンチャック上に基板を一枚ずつ載置し、基板を回転させながら基板表面に処理液を供給することにより液処理を行う液処理装置がある。この種の液処理装置には液処理を実行する複数の液処理モジュールを共通の基板搬送部に接続することにより複数の液処理モジュールにて並行して液処理を実行しながら連続的に基板を入れ替えることができるようになっているものがある(例えば特許文献1)。
【0004】
図14は例えば12個の液処理モジュールを備えた液処理装置による液処理スケジュールの一例を表している。図14に係る液処理装置は、各液処理モジュールにおいて、ウエハの搬入→アルカリ性の薬液によるパーティクルや有機性の汚染物質などの除去(アルカリ性薬液処理)→純水による残存するアルカリ性薬液の除去及び振切乾燥(リンス洗浄)→酸性の薬液によるウエハ表面の自然酸化膜の除去(酸性薬液処理)→純水による残存する酸性薬液の除去(リンス洗浄)→イソプロピルアルコール(IPA)を供給しながらの振切乾燥(IPA乾燥)→ウエハの搬出、といった一連の処理を実行するようになっている。なお簡単のため、図14には上記の一連の液処理工程を1サイクル分だけ示してある。
【0005】
この液処理装置では、例えば液処理モジュールの配置順にモジュール番号(モジュール1〜モジュール12)を付し、モジュール番号の若い順にウエハを搬入して、順次、上述の処理が実行される。この場合には、図14に示すように例えば隣り合って配置されているモジュール1とモジュール2とにおいて、一方側のモジュール1にてアルカリ性薬液処理を実行しているときに、他方側のモジュール2においても並行して同じ処理を実行するタイミングが定期的に発生する。
【0006】
このため液処理装置の複数のモジュールで薬液の供給、排液、排気などに係る各種の設備が共通に設けられている場合(以下、これらの設備を共通用力系という)は、共通用力系はこれら複数モジュール分の薬液の最大消費量や最大排液、排気量を満足する能力を備えている必要があり、この結果これら共通用力系が大型化して、設備費用の増大に繋がる要因となっている。また液処理装置の排液、排気は工場全体の排液処理、排気処理設備へと送られることが一般的であるが、上述の共通用力系を介して液処理装置を工場側に接続する場合には、各共通用力系の最大排液、排気量を設計上の最大負荷として工場側に要求する必要があり、こうした工場側に要求される負荷の削減も大きな課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−34490号公報:第0020段落、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の処理モジュールに対して用力系を共通化しながら、その用力系に要求される最大能力を抑えることができ、これにより能力の小さな用力系を用いることができる処理装置及び当該処理装置の運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る処理装置は、基板に対して各々同一の処理を行うための多数の処理モジュールを、n個(nは2以上の自然数)を1組とするk組(kは2以上の自然数)に分けて構成した処理モジュール群と、
各組毎に独立して設けられ、各組のn個の処理モジュールに対して共通化されると共にその能力がm個(mはnよりも小さい自然数)の処理モジュールの処理まで許容し、かつその能力が各組の間で同じである共通用力系と、
前記処理モジュールに対して基板の受け渡しを行う搬送機構と、
前記処理モジュールの1番目の組からk番目の組に基板を順次搬入する搬入動作を繰り返し行うように搬送機構を制御し、
各組においてm個の処理モジュールに対して前記共通用力系が使用されている場合には、(1)当該共通用力系が使用されている一の処理モジュールにおける処理が終了した後にその組における他の処理モジュールへ基板を搬入するように搬送機構を制御するか、または(2)当該一の処理モジュールにおける処理の終了を待たずに他の処理モジュールへ基板を搬入すると共に当該一の処理モジュールにおける処理が終了した後に当該他の処理モジュールの処理を開始するように処理モジュールを制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
ここで前記「m個(mはnよりも小さい自然数)の処理モジュールの処理」とは、m=1である場合には当該1個の処理モジュールで実行される処理であり、m≧2である場合には、これらm個の処理モジュールで同時に実行される処理のことである。
【0010】
前記処理装置は、以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記共通用力系は、前記(1)の基板の搬入、または(2)の処理の開始に合わせて、当該共通用力系の使用先を前記一の処理モジュールから他の処理モジュールへと切り替える切替部を備えていること。
(b)前記処理モジュールにて行われる処理は、処理液を基板に供給する処理を含み、前記共通用力系は、処理液を供給する雰囲気を排気するための排気系であること。
(c)前記処理モジュールにて行われる処理は、薬液を基板に供給する薬液処理が薬液の種別を変えて複数回連続して行われる処理であり、前記共通用力系は、薬液の種別ごとに設けられると共に薬液処理が行われる間、薬液を供給する雰囲気を排気するための排気系であること。
(d)前記処理モジュールにて行われる処理が薬液処理であり、当該薬液処理は基板を洗浄するための処理であること。
(e)前記処理モジュールにて行われる処理は、処理液を基板に供給する処理を含み、前記共通用力系は、処理液を供給する処理液供給系であること。
(f)前記処理モジュールにて行われる処理は、処理液を基板に供給する処理を含み、前記共通用力系は、基板から飛散あるいはこぼれ落ちた排液を排出する排液系であること。
【0011】
次いで他の発明に係る処理装置の運転方法は、基板に対して各々同一の処理を行うための多数の処理モジュールを、n個(nは2以上の自然数)を1組とするk組(kは2以上の自然数)に分けて構成した処理モジュール群と、
各組毎に独立して設けられ、各組のn個の処理モジュールに対して共通化されると共にその能力がm個(mはnよりも小さい自然数)の処理モジュールの処理まで許容し、かつその能力が各組の間で同じである共通用力系と、を備えた処理装置の運転方法であって、
搬送機構により前記処理モジュールの1番目の組からk番目の組に基板を順次搬入する搬入動作を繰り返し行う工程と、
各組においてm個の処理モジュールに対して前記共通用力系が使用されている場合には、(1)当該共通用力系が使用されている一の処理モジュールにおける処理が終了した後にその組における他の処理モジュールへ基板を搬入するか、または(2)当該一の処理モジュールにおける処理の終了を待たずに他の処理モジュールへ基板を搬入すると共に当該一の処理モジュールにおける処理が終了した後に当該他の処理モジュールの処理を開始する工程と、を含むことを特徴とする。
ここで前記「m個(mはnよりも小さい自然数)の処理モジュールの処理」とは、m=1である場合には当該1個の処理モジュールで実行される処理であり、m≧2である場合には、これらm個の処理モジュールで同時に実行される処理のことである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えば薬液の供給や排液、処理モジュール内の排気に用いられる用力系を複数の処理モジュールで共有している処理装置において、これらの共通用力系を共有する全ての処理モジュールが同時に同一の処理を実行することがないように各モジュールにおける処理の実行タイミングが調整されているので、共通用力系に要求される最大能力を抑えることができる。このため設備費用の低廉化及び省エネルギー化に貢献することができると共に、処理装置から工場側に要求される設計上の負荷も削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る液処置装置の全体構成を示す横断平面図である。
【図2】前記液処理装置の液処理部に設けられている液処理モジュールの配置状態を示す模式図である。
【図3】前記液処理モジュールを共通用力系毎にグループ分けした状態を示す説明図である。
【図4】共通用力系毎の液処理モジュール及びこれらの液処理モジュールに設けられた薬液供給系統及び排液系統の構成を示す説明図である。
【図5】共通用力系毎に設けられた排気系統の構成を示す説明図である。
【図6】各液処理モジュールにて実行される処理に応じた共通用力系の接続先を示す説明図である。
【図7】前記液処理装置の各液処理モジュールで実行される液処理の処理スケジュールの一例を示す説明図である。
【図8】前記処理スケジュールの他の例を示す説明図である。
【図9】前記処理スケジュールのさらに他の例を示す説明図である。
【図10】前記処理スケジュールの変形例を示す説明図である。
【図11】他の例に係る液処理部に設けられている液処理モジュールの配置状態を示す模式図である。
【図12】前記他の例に係る液処理部の各液処理モジュールで実行される液処理の処理スケジュールの一例を示す説明図である。
【図13】前記他の例に係る液処理部の各液処理モジュールで実行される液処理の処理スケジュールの他の例を示す説明図である。
【図14】従来の液処理装置にて実行される液処理の処理スケジュールを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る処理装置の一例として、基板であるウエハWに薬液を供給して液処理を行う液処理装置1の実施の形態について説明する。図1は液処理装置1の全体構成を示す横断平面図であり、当該図に向かって左側を前方とすると、液処理装置1は複数枚のウエハWを収納したキャリアCが載置されるキャリア載置部11と、このキャリアCからウエハWを取り出して液処理装置1内に搬入する搬送部12と、搬送部12にて取り出されたウエハWを後段の液処理部14に受け渡すための受け渡し部13と、受け渡し部13から受け渡されたウエハWを各液処理モジュール2内に搬入して液処理を実行する液処理部14と、を前方からこの順番に接続した構造となっている。
【0015】
キャリア載置部11は、例えば4個のキャリアCを載置可能な載置台として構成され、載置台上に載置された各キャリアCを固定して、搬送部12に接続する役割を果たす。搬送部12は、各キャリアCとの接続面に設けられた開閉扉を開閉する不図示の開閉機構と、キャリアCからウエハWを取り出して受け渡し部13へと搬送するための第1の搬送機構121とを共通の筐体内に設けた構造となっている。第1の搬送機構121は例えば前後方向に進退自在、左右方向に移動自在、及び回動、昇降自在に構成された搬送アーム及びその駆動部から構成されており、搬送部12と受け渡し部13とを区画する区画壁に設けられた第1の開口部122を介して、ウエハWを受け渡し部13に搬入出する役割を果たす。
【0016】
受け渡し部13は、前後を搬送部12と液処理部14とに挟まれた位置に設けられた筐体内の空間であり、例えば搬送部12側の既述の第1の開口部122と、液処理部14側の区画壁に設けられた第2の開口部132との間に、液処理前後のウエハWを載置するための受け渡し棚131が設けられている。受け渡し棚131は例えば8枚のウエハWを載置可能であり、受け渡し棚131は搬送部12側から搬入出されるウエハWと、液処理部14側から搬入出されるウエハWとを一時的に載置するバッファとしての役割を果たしている。
【0017】
液処理部14は受け渡し部13の後段に接続された筐体内に、ウエハWに対する液処理を実行する例えば12個の液処理モジュール2からなる処理モジュール群を備えている。液処理部14内には、受け渡し部13との区画壁に設けられた既述の第2の開口部132から前後方向に伸びるウエハWの搬送路142が設けられており、12個の液処理モジュール2は第2の開口部132から見て左右に6個ずつ、搬送路142に沿って列設されている。搬送路142内には、搬送路142に沿って移動可能、搬送路142の左右に設けられた各液処理モジュール2に向けて進退可能、そして回動、昇降可能に構成された搬送アーム及びその駆動部からなる第2の搬送機構141(特許請求の範囲の搬送機構に相当する)が設けられており、ウエハWを既述の受け渡し棚131と各液処理モジュール2との間で搬送することができるようになっている。図1には1組の第2の搬送機構141を設けた例を示したが、設けられている液処理モジュール2の個数に応じて液処理部14は2組以上の第2の搬送機構141を備えていてもよい。
【0018】
液処理モジュール2には、例えば図2に示すように前方側(第2の開口部132側)から見て左側に列設された各液処理モジュール2に、手前から奥に向かって1番〜6番までのモジュール番号が付されており、右側に列設された各液処理モジュール2には同様に7番〜12番までのモジュール番号が付されている。またこれらの液処理モジュール2は、図2中に破線で囲んで示した互いに隣り合う2つの液処理モジュール2を1組とし、各組にて、後述する薬液の供給系統や排液系統、排気系統に係る共通用力系を共有している。以下の説明では液処理モジュール2の組を共有グループ20と呼ぶものとし、これらの共有グループ20にも1番〜6番までのグループ番号(組番号)が付されており、前記のモジュール番号とグループ番号との関係は図3に示した通りである。
【0019】
図4は各共有グループ20をなす液処理モジュール2の概略構成及び各種薬液の供給系統及びその排液系統を示しており、図5は液処理モジュール2の排気系統を示している。図4、図5の各図においては、共有グループ20の一方側の液処理モジュールに「2a」の符号を付し、他方側の液処理モジュールに「2b」の符号を付してある。
【0020】
各共有グループ20を構成している液処理モジュール2a、2bはほぼ同様の構成を備えているので、図4の左側に示した液処理モジュール2aを参照しながら液処理モジュール2の構成について説明する。液処理モジュール2aは、ウエハWに対する液処理、リンス洗浄、振切乾燥の各処理が実行される密閉された処理空間を形成するアウターチャンバー21aと、このアウターチャンバー21a内に設けられ、ウエハWをほぼ水平に保持した状態で回転させるウエハ保持機構23aと、ウエハ保持機構23aに保持されたウエハWの上面側に薬液を供給するノズルアーム24aと、ウエハ保持機構23aを取り囲むようにアウターチャンバー21a内に設けられ、回転するウエハWから周囲に飛散した薬液を受けるためのインナーカップ22aとを備えている。
【0021】
アウターチャンバー21aは、図1、図2に示すように互いに隣り合う他の液処理モジュール2とは区画された筐体内に設けられており、不図示のウエハ搬入口を介して第2の搬送機構141によりウエハWが搬入出される。またウエハ保持機構23aの内部には薬液供給路231aが形成されており、回転するウエハWの下面に当該薬液供給路231aを介して薬液を供給することができる。
【0022】
ノズルアーム24aは、先端部に薬液供給用のノズルを備えており、不図示の駆動機構によってウエハ保持機構23aに保持されたウエハW中央側の上方位置と、アウターチャンバー21aの外部に設けられた待機位置との間で前記ノズルを移動させることができる。インナーカップ22aは、ウエハ保持機構23aに保持されたウエハWを取り囲む処理位置と、この処理位置の下方へ退避した退避位置との間を昇降することができるようになっている。図4においては、右側の液処理モジュール2bにインナーカップ22bを処理位置まで上昇させた状態を示し、左側の液処理モジュール2aにインナーカップ22aを退避位置まで下降させた状態を示している。
【0023】
次に液処理モジュール2aへの薬液の供給機構について説明すると、ノズルアーム24aに設けられたノズルは上面側供給ライン43aに接続されており、この上面側供給ライン43aはIPA供給中間ライン41aと薬液供給中間ライン42aとに分岐している。IPA供給中間ライン41aは切替部である切替弁312、IPA供給ライン313を介してIPA供給部31に接続されており、このIPA供給部31は高い揮発性を利用してウエハW表面を乾燥させるためのIPAをウエハWの上面側に供給する役割を果たす。IPA供給部31は例えばIPAを貯留する薬液槽及び薬液ポンプからなり(いずれも不図示)、IPA供給ライン313に介設されたマスフローコントローラ311により所定量のIPAをノズルアーム24aに供給することができる。
【0024】
上面側供給ライン43aから分岐したもう一方側の薬液供給中間ライン42aは、切替部である切替弁300を介して3系統の薬液供給ライン321、331、341に接続されている。これらのうち、DHF供給ライン321の上流には、ウエハW表面の自然酸化膜を除去する酸性薬液である希フッ酸水溶液(以下、DHF(Diluted HydroFluoric acid)液という)を供給するDHF供給部32が設けられている。またSC1供給ライン331の上流にはウエハW表面のパーティクルや有機性の汚染物質を除去する薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)を供給するSC1供給部33が設けられている。そして残る純水供給ライン341の上流には薬液処理後のウエハWに残存するDHF液やSC1液を除去するリンス液である純水を供給するための純水供給部34が設けられている。これらDHF供給部32、SC1供給部33、純水供給部34の各々についても、IPA供給部31と同様に例えば不図示の薬液槽及び薬液ポンプから構成されている。
【0025】
またこれらのDHF供給部32、SC1供給部33、純水供給部34が接続された薬液供給中間ライン42aは、ウエハWの下面に薬液を供給する薬液供給路231aとも下面側供給ライン44aを介して接続されている。図4中、421a、422aは、各々ノズルアーム24a側、ウエハ保持機構23a側への薬液供給量を調整するマスフローコントローラである。
【0026】
以上に説明した構成を備えることにより、液処理モジュール2aは、ウエハ保持機構23aに保持されたウエハWの上面側にはノズルアーム24aを介して薬液であるIPA、DHF液、SC1液、純水を供給することができ、またウエハWの下面側にはウエハ保持機構23a内に形成された薬液供給路231aを介して薬液であるDHF液、SC1液、純水を供給することができる。
【0027】
次いで、排液系統の構成について説明する。インナーカップ22aの例えば底面には、IPA、DHF液、SC1液を排出するための排液ライン51aが接続されており、この排液ライン51aの下流側には、IPAの排出先である有機物ドレインライン53、SC1液の排出先であるアルカリ性ドレインライン54、DHF液の排出先である酸性ドレインライン55が、切替部である切替弁511を介して接続されている。
【0028】
またアウターチャンバー21aの底面には排水ライン56aが設けられており、リンス洗浄時にインナーカップ22aを下降させた状態でウエハWを回転させたときに、アウターチャンバー21aの底部に溜まるリンス液(低濃度のDHF液やSC1液を含む水)を排出することができる。
【0029】
以上に説明した液処理モジュール2aの構成、及び薬液の供給系統及び排液系統の構成は、同じ共有グループ20に設けられた他方側の液処理モジュール2bについても同様であり、数字符号に「b」の添え字を付した各構成要素は、対応する数字符号を付した液処理モジュール2a側の構成要素と同様の構造、機能を有している。そして「a、b」の添え字が付されていない、薬液の供給系統のIPA供給部31、DHF供給部32、SC1供給部33、純水供給部34や各切替弁312、300など、また排液系統の有機物ドレインライン53、アルカリ性ドレインライン54、酸性ドレインライン55や切替弁511などは、本実施の形態における液処理モジュール2a、2bの共通用力系に相当している。これらの共通用力系は、後述するように液処理モジュール2a側と液処理モジュール2b側とに切り替えられて使用され、同時に使用されることがないようになっていることから、例えばIPA供給部31等に設けられた薬液ポンプの能力や、切替弁312等の配管径は、例えば液処理モジュール2a、2bの1個分の最大負荷を満足する能力に設計されている。
【0030】
次に、図5に示した排気系の構成について説明する。排気についても液処理モジュール2a、2bはほぼ同様の構成を備えているので、図5の左側に示した液処理モジュール2aを参照しながら説明する。アウターチャンバー21aの底面には共通排気ライン61aが接続されており、この共通排気ライン61aは例えば管路の先端がアウターチャンバー21aの底面から上方に突出していて、同じくアウターチャンバー21aの底面から排水ライン56aへ排出される排液が共通排気ライン61a側へと流れ込まないようになっている。共通排気ライン61aの下流側はIPAのミストを含む気流の排気先である有機物排気ライン62、SC1液のミストを含む気流の排気先であるアルカリ性排気ライン63、DHF液のミストを含む気流の排気先である酸性排気ライン64と接続されている。これらの各排気ライン62、63、64は切替部である切替弁611によって共通排気ライン61aに対して切り替えて接続することが可能である。また各排気ライン62、63、64には排気ファン621、631、641が設けられており、アウターチャンバー21a内からの排気を行う動力源となっている。
【0031】
図5に示した排気系統の場合においても、各数字符号に「b」の添え字を付した構成要素は、対応する数字符号を付した液処理モジュール2a側の構成要素と同様の構造、機能を有している。また「a、b」の添え字が付されていない有機物排気ライン62、アルカリ性排気ライン63、酸性排気ライン64や切替弁611、各排気ファン621、631、641は本実施の形態における液処理モジュール2a、2bの共通用力系に相当している。そして、これらの共通用力系についても、液処理モジュール2a側と液処理モジュール2b側とに切り替えられて使用され、同時に使用されることがないようになっており、例えば各排気ファン621、631、641の能力や、排気ライン62、63、64の配管径は、例えば液処理モジュール2a、2bの1個分の最大負荷を満足する能力となっている。
【0032】
液処理装置1全体の説明に戻ると、当該液処理装置1には、図1、図4、図5に示すように制御部7が接続されている。制御部7は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には当該液処理装置1の作用、つまり、各液処理モジュール2内にウエハWを搬入し、ウエハ保持機構23a、23bに保持されたウエハWに液処理を施してから、乾燥させ、搬出するまでの動作に係わる制御等についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0033】
ここで本実施の形態に係る液処理装置1は、背景技術において説明した各共有グループ20内の共通用力系への負荷の集中を避けるため、各共通用力系が液処理モジュール2a、2bのいずれか一方側でのみ使用され、同時に使用されることがないように制御される。こうした制御を実現するため、図1、図4、図5に示した制御部7は、一の液処理モジュール2a、2bにおける処理の終了を待たずに当該一の液処理モジュール2a、2bと共通用力系を共有する他の処理モジュール2b、2aへウエハWを搬入すると共に、一の液処理モジュール2a、2bにおける処理が終了した後に他の液処理モジュール2b、2aの処理を開始するように、第2の搬送装置141や各切替弁300、312、511、611などを動作させる。切替弁300、312、511、611は、共通用力系である各種供給部31、32、33、34やドレインライン53、54、55、排気ライン62、63、64を液処理モジュール2a側、液処理モジュール2b側のいずれかに接続し、またはいずれの液処理モジュール2a、2bからも切り離された状態となるように切り替えることができる。
【0034】
ここで制御部7は、各液処理モジュール2a、2b内で実行されている処理の種類に応じて薬液供給系統や排液系統、排気系統を図6に示す切り替え先に切り替えるよう構成されている。各液処理モジュール2(2a、2b)では、ウエハ搬入(P1)→アルカリ性薬液処理(P2)→リンス洗浄(P3)→振切乾燥(P4)→酸性薬液処理(P5)→リンス洗浄(P6)→IPA乾燥(P7)→ウエハのい入れ替え(P8)の各動作が繰り返し行われており(以下、P2〜P8の一連の処理を1サイクルとする。またウエハ搬入(P1)については、1回目のサイクルにおいてのみ実行される)、これらの動作に対応して薬液供給系統や排液系統、排気系統が切り替えられる。
【0035】
即ち、薬液供給系統については、アルカリ性薬液処理(P2)時にSC1液、リンス洗浄(P3、P6)時に純水、酸性薬液処理(P5)時にDHF液がウエハWの上面側、下面側の双方に供給され、またIPA乾燥(P7)時にはウエハWの上面にIPAが供給されるように各共通用力系が切り替えられる。
【0036】
また排液系統については、アルカリ性薬液処理(P2)時にはアルカリ性ドレインライン54、酸性薬液処理(P5)時には酸性ドレインライン55、IPA乾燥(P7)時及びその後のウエハ入れ替え時(P8)には有機物ドレインライン53となるように各共通用力系が切り替えられる。またリンス洗浄(P3、P6)時、通常の振切乾燥(P4)時にはインナーカップ22aを退避位置まで下降させることにより排水ライン56a、56bへの排液が実行されることとなる。なお、このとき排液ライン51a、51bの接続先は、例えば一つ手前の処理にて切り替えたドレインライン54、55に接続したままの状態となっている。
【0037】
そして排気系統においては、アルカリ性薬液処理(P2)〜振切乾燥(P4)までの期間中はアルカリ性排気ライン63、酸性薬液処理(P5)〜リンス洗浄(P6)までの期間中が酸性排気ライン64、IPA乾燥(P7)〜ウエハ入れ替え(P8)の期間中が有機物排気ライン62となるように各共通用力系が切り替えられる。これらの共通用力系の切り替えタイミングは、例えば液処理装置1における薬液処理の処理レシピとして予め制御部7の記憶部内に記憶されている。
【0038】
以上に説明した構成を備えた本実施の形態に係る液処理装置1の作用について説明する。液処理装置1が液処理を開始すると、第1の搬送機構121はキャリア載置部11に載置されたキャリアCからウエハWを取り出し、受け渡し部13内の受け渡し棚131に順次載置する。第2の搬送機構141は、例えば図7に例示した処理スケジュールに基づいてまず「グループ1のモジュール1」、例えば図4、図5に示した液処理モジュール2a内に進入し、ウエハ保持機構23aにウエハWを受け渡す(P1)。第2の搬送機構141が受け渡し棚131よりウエハWを取り出して液処理モジュール2a内への搬入を終えるまでに必要な時間は、後段の各液処理に待ち時間を発生させない程度の時間となっている。
【0039】
液処理モジュール2a内へのウエハWの搬入を終えたらノズルアーム24aをウエハW中央側の上方位置まで移動させ、インナーカップ22aを処理位置まで上昇させて、ウエハ保持機構23aによりウエハWを例えば10rpm〜30rpm程度の回転速度で回転させながらSC1供給部33より当該ウエハWの上面側及び下面側にSC1液を供給する。これによりウエハWの上下面に薬液の液膜が形成されてアルカリ性薬液洗浄が行われる(P2)。このとき図6に示したように液処理モジュール2aの排液系統はアルカリ性ドレインライン54に、また排気系統はアルカリ性排気ライン63に接続されており、インナーカップ22aにて受け止められたSC1液はアルカリ性ドレインライン54へ排出され、またSC1液のミストを含む気流はアルカリ性排気ライン63へ排出される。アルカリ性薬液洗浄に要する時間は例えば60秒である。
【0040】
このモジュール1の動作と並行しながら、第2の搬送機構141は予め定められた順番で順次、他の液処理モジュール2へとウエハWの搬入を行う。このとき第2の搬送機構141は、「グループ2のモジュール3→グループ3のモジュール5→グループ4のモジュール7→…」と、各共有グループ20の一方側の液処理モジュール2aにウエハWを搬入する。そして各々の液処理モジュール2aにてウエハWの搬入が完了した順に、これらの液処理モジュール2aにて並行してアルカリ性薬液洗浄が実行されるが、各共有グループ20に注目すると一方側の液処理モジュール2aのみにおいてアルカリ性薬液洗浄が行われていることになる。
【0041】
「グループ1のモジュール1」においてアルカリ性薬液洗浄が終了すると、インナーカップ22aが退避位置に移動し、またノズルアーム24a及びウエハ保持機構23aの薬液供給路231aへの薬液の供給系統を純水供給部34に切り替えてウエハWの上面側、下面側に純水を供給することによりウエハW表面のSC1液を除去するリンス洗浄が実行され(P3)、次いでウエハWへの純水の供給を停止した後、ウエハWの回転速度を例えば2000rpmに上げ、ウエハWの振切乾燥を実行する(P4)。
【0042】
これらの処理時において液処理モジュール2aの排液系統はアルカリ性ドレインライン54に接続されており、インナーカップ22aにこぼれ落ちたリンス後の純水は、アルカリ性ドレインライン54へ排出され、またアウターチャンバー21aに受け止められたリンス後の純水は排水ライン56aより排出される。また排気系統はアルカリ性排気ライン63に接続されており、リンス後の純水のミストを含む気流はアルカリ性排気ライン63へ排出される。リンス洗浄及び振切乾燥に要する時間は合計で例えば30秒である。また、「グループ2のモジュール3→グループ3のモジュール5→グループ4のモジュール7→…」においてもこれらのリンス洗浄、振切乾燥が順次実行されることは図7に示した通りである。このときノズルアーム24a及びウエハ保持機構23aの薬液供給路231aに窒素ガスの供給系統を設け、振切乾燥の実行時にウエハW表面に窒素ガスを吹き付けてウエハWの乾燥を促進させてもよい。
【0043】
こうして「グループ1のモジュール1」にてリンス洗浄、振切乾燥が実行され、例えば振切乾燥が終了する直前のタイミングにて、例えば図7に示すように第2の搬送機構141は「グループ1のモジュール2」である例えば液処理モジュール2bへのウエハWの搬入を実行する。そして「モジュール1」側での振切乾燥が終了し、続く酸性薬液処理が開始されるタイミングにてSC1供給部33、アルカリ性ドレインライン54、アルカリ性排気ライン63の接続先を液処理モジュール2b側に切り替えて、「モジュール2」におけるアルカリ性薬液洗浄を開始する。
【0044】
また他の共有グループ20においても「グループ2のモジュール4→グループ3のモジュール6→グループ4のモジュール8→…」とウエハWを搬入し、各共有グループ20の一方側の液処理モジュール2aにて振切乾燥が終了するタイミングにてSC1供給部33、アルカリ性ドレインライン54、アルカリ性排気ライン63の接続先を液処理モジュール2b側に切り替え、各々の液処理モジュール2bにてアルカリ性薬液洗浄を開始する。このように各共有グループ20では一方側の液処理モジュール2aのアルカリ洗浄が終了してから他方側の液処理モジュール2bのアルカリ洗浄を開始するので、負荷を集中させないように共通用力系であるSC1供給部33やアルカリ性ドレインライン54、アルカリ性排気ライン63を稼動させることができる。
【0045】
「グループ1のモジュール1」の動作説明に戻ると、振切乾燥の終了後、再びインナーカップ22aを処理位置まで上昇させ、ノズルアーム24a及びウエハ保持機構23aの薬液供給路231aへの薬液の供給系統をDHF供給部32に切り替えた後、例えば10rpm〜30rpm程度で回転させながら、ウエハWの上下面にDHF液を供給する。これによりこれらの面にDHF液の液膜が形成され、酸性薬液洗浄が行われる(P5)。そして所定時間の経過後、インナーカップ22aを退避位置に下降させ、薬液の供給系統が純水供給部34に切り替えられてリンス洗浄が行われる(P6)。酸性洗浄に要する時間は例えば60秒、リンス洗浄に要する時間は例えば30秒である。
【0046】
このとき図6に示したように液処理モジュール2aの排液系統は酸性ドレインライン55に接続され、また排気系統は酸性排気ライン64に接続されており、酸性薬液洗浄時にはインナーカップ22aにて受け止められたDHF液は酸性ドレインライン55へ排出される一方、DHF液のミストを含む気流は酸性排気ライン64へ排出される。またリンス洗浄時には、インナーカップ22aにこぼれ落ちたリンス後の純水は酸性ドレインライン55へ排出され、またアウターチャンバー21aに受け止められたリンス後の純水は排水ライン56aより排出されると共に、リンス後の純水のミストを含む気流はアルカリ性排気ライン63へ排出される。
【0047】
そして図7に示したように、この酸性薬液洗浄も「グループ2のモジュール3→グループ3のモジュール5→グループ4のモジュール7→…」にて順次実行され、また他方側の「グループ1のモジュール2→グループ2のモジュール4→グループ3のモジュール6→…」では並行してアルカリ性薬液洗浄、リンス洗浄及び振切乾燥が順次実行される。
【0048】
そして「グループ1のモジュール1」における酸性薬液処理、リンス洗浄が完了しIPA乾燥へと処理が切り替わるタイミングにて、「グループ1のモジュール2」である液処理モジュール2bにおいてはアルカリ性薬液処理後のリンス洗浄及びその振切乾燥が終了し、酸性薬液洗浄が開始されることとなる。このため、このタイミングにて直前まで液処理モジュール2a側に接続されていた酸性ドレインライン55、酸性排気ライン64は液処理モジュール2b側に接続先が切り替えられ、液処理モジュール2a側には新たにIPA供給部31、有機物ドレインライン53、有機物排気ライン62が接続されてIPA乾燥が開始されるため、この場合にも共通用力系の負荷が分散されている。
【0049】
そして他の共有グループ20においても「グループ2のモジュール3→グループ3のモジュール5→グループ4のモジュール7→…」の順にリンス洗浄からIPA乾燥に処理が切り替わるタイミングにて「グループ2のモジュール4→グループ3のモジュール6→グループ4のモジュール8→…」の順に酸性薬液洗浄が開始され共通用力系の負荷が分散される。
【0050】
そして「グループ1のモジュール1」ではインナーカップ22aが処理位置まで上昇し、ウエハWの上面にIPAを供給しながらウエハWを例えば2000rpm程度の回転速度で回転さることにより、IPAの揮発性を利用したIPA乾燥が実行され、ウエハW表面に残存するリンス後の純水が完全に除去される(P7)。そしてインナーカップ22aを退避位置まで退避させ、処理後のウエハWは第2の搬送機構141によって搬出され、液処理モジュール2b内には新たなウエハWが搬入される(P8)。
【0051】
これらの処理時において液処理モジュール2aの排液系統は有機物ドレインライン53に接続されており、インナーカップ22aにこぼれ落ちたIPAは有機物ドレインライン53へ排出され、また排気系統は有機物排気ライン62に接続されており、IPAを含む気流は有機物排気ライン62へ排出される。IPA乾燥に要する時間は例えば45秒であり、ウエハWの入れ替えは数秒程度と、各液処理と比較して十分に短い時間で終えることができる。
【0052】
そして「グループ2のモジュール3→グループ3のモジュール5→グループ4のモジュール7→…」についても同様に、IPA乾燥、ウエハの入れ替えが行われた後、各共有グループ20の一方側の液処理モジュール2aにて次のサイクルのアルカリ性薬液処理が開始される(P1)。
【0053】
一方各共有グループ20の他方側の液処理モジュール2bでは、「グループ1のモジュール2→グループ2のモジュール4→グループ3のモジュール6→…」の順に、酸性薬液処理(P5)、リンス洗浄(P6)が実施され、次いでIPA洗浄が実行されるが、このときには相手側の液処理モジュール2aにおいては次のサイクルのアルカリ性薬液洗浄が実行されており、この場合においても液処理モジュール2a、2bの共通用力系は異なる接続先に接続され、負荷が集中しないようになっている。
【0054】
そして、各共有グループ20の他方側の液処理モジュール2bにおいてもIPA乾燥が終了し、ウエハWが入れ替えられて次のサイクルのアルカリ性薬液処理が開始されるタイミングにて、相手側の各液処理モジュール2aでは先行する次のサイクルにおけるアルカリ性薬液洗浄後のリンス洗浄、振切乾燥が終了し、酸性薬液洗浄が開始される。このように、本実施の形態に係る液処理装置1では、各共有グループ20の液処理モジュール2a、2bに係る一連の液処理サイクルにおいて、負荷が集中することなく最大で1個分の負荷にて各共通用力系が稼動できるよう、液処理が実行される。
【0055】
液処理を終え各液処理モジュール2から取り出されたウエハWは第2の搬送機構141によって受け渡し棚131に搬送された後、第1の搬送機構121により取り出されてキャリア載置部11のキャリアC内に格納される。これらの動作を連続的に行うことにより液処理装置1は各液処理モジュール2にて並行して液処理を実行しながら複数枚のウエハWを洗浄することができる。
【0056】
本実施の形態に係る液処理装置1によれば以下の効果がある。液処理装置1は薬液の供給や排液、処理モジュール内の排気に用いられる用力系(各薬液供給部31〜34、ドレインライン53〜55、排気ライン62〜64や排気ファン621、631、641など)を複数の液処理モジュール2a、2bで共有しており、これらの共通用力系を共有する両液処理モジュール2a、2bが同時に同一の処理を実行することがないように各液処理モジュール2a、2bにおける処理の実行タイミングを調整しているので共通用力系に要求される最大能力を抑えることができる。この結果、設備費用の低廉化及び省エネルギー化に貢献することができると共に、当該液処理装置1から工場側に要求される設計上の負荷も削減することができる。
【0057】
ここで図7に示した処理スケジュールにおいては、例えばアルカリ性薬液処理及びその後のリンス洗浄、振切乾燥に要する時間(例えば合計90秒)と、酸性薬液処理及びその後のリンス洗浄に要する時間(例えば合計90秒)とが一致している例を示した。これに対して図8は、例えば酸性薬液処理に要する時間がアルカリ性薬液処理よりも例えば10秒程度長く、上述の処理時間が一致していない場合の処理スケジュールの例を示している。
【0058】
例えばグループ1のモジュール1及びモジュール2に注目すると、本例において既述の図7に示した処理スケジュールと同様にモジュール1側にて酸性薬液処理が開始されるタイミングと同時にモジュール2側にてアルカリ性薬液処理を開始するように処理スケジュールを計画した場合には、モジュール2側にてアルカリ性薬液処理後の振切乾燥を終えるタイミングにおいては、モジュール1側では依然、酸性薬液処理後のリンス洗浄が終了していない。このためモジュール2側で酸性薬液洗浄を開始すると、共通用力系である酸性ドレインライン55や酸性排気ライン64、排気ファン641にモジュール1、2の2個分の負荷が同時にかかってしまうことになる。
【0059】
そこで図8に示した処理スケジュールでは、モジュール2側にウエハWを搬入するタイミングを遅らせることによりモジュール1側の酸性薬液処理後のリンス洗浄を終えるタイミングと、モジュール2側のアルカリ性薬液処理後の振切乾燥を終えるタイミングとを一致させることにより共通用力系の負荷の集中を回避している。
【0060】
またこの場合に、ウエハWの搬入タイミングの調整に替えて、例えば図9に示すように、モジュール2側にてウエハWの搬入動作を終えた後、待ち時間を設けることによりモジュール1側における酸性薬液処理後のリンス洗浄と、モジュール2側での酸性薬液処理とが重ならないようにしてもよい。
このようにウエハWの搬入タイミングをずらしたり、待ち時間を適宜設けたりすることにより、搬送スケジュールが種々変更された場合においても共通用力系における負荷の集中を回避することができる。
【0061】
さらにまた同一グループ内の共通用力系の負荷の集中を回避する手法は、図8や図9を用いて説明したように「アルカリ性薬液処理」や「酸性薬液処理」など、一連の液処理工程に含まれる各処理が重ならないように、ウエハWの搬入出動作や処理の実行タイミングを調整する手法に限定されるものではない。例えば図6に示したアルカリ性薬液処理(P1)〜IPA乾燥(P7)までの一連の処理を全体として1つの「液処理」と考え、図10に示すようにこの液処理全体の実行タイミングが同じグループ内のモジュール2同士で重ならないように例えばウエハWの搬入出タイミングを調整してもよい。図10に示した例においては、ハッチで塗りつぶした領域が上述の液処理全体を示しており、空白の領域は待ち時間となる。この例では、2つのモジュール2にてウエハWの搬入出動作が重なるタイミングが発生しているが、この場合は液処理装置1の搬送路142に第2の搬送機構141を例えば2組設けるなどすればよい。また、本例においてもモジュール2内にウエハWを予め搬入しておき、液処理全体の実行開始タイミングを調整することにより、共通用力系の負荷の集中を回避してもよいことは勿論である。
【0062】
また液処理装置1に備わる液処理モジュール2の数は、図2に示したように2個の液処理モジュール2を含む共有グループ20を6グループ設ける場合に限定されず、n個(nは2以上の自然数)の液処理モジュール2を備える共有グループ20をk組(kは2以上の自然数)備えていればよい。
【0063】
例えば図11に示す液処理部14は、3個の液処理モジュール2を備えた共有グループ20を2組備えたモジュール群として構成されており、例えばこの場合には図12に示すように各モジュールへの搬入タイミングを調整することにより、最大負荷が液処理モジュール2の1個分となるように各共通用力系の負荷を分散させて稼動させることができる。ここで図11及び図12では液処理装置1内で実行される処理を一般化して、例えば「第1の処理〜第3の処理」までの3種類の処理が実行され、これら3つの処理において3個のモジュール2間で共通用力系が切り替えられる場合を示している。
【0064】
また、図13に示した処理スケジュールは、図11に示した液処理部14の各共有グループ20において、共通用力系の最大負荷が液処理モジュール2の2個分となるように構成した場合の例であり、この場合には図12に示した処理スケジュールと比較して単位時間当たりにより多くのウエハWを処理することができる。一般的には、n個の液処理モジュール2を備える共有グループ20においては、共通用力系の最大負荷がm個分(mはnよりも小さい自然数)となる処理スケジュールとすることにより共通用力系の負荷の平準化の効果を得ることができる。図12に示した例においても2つのモジュール2にてウエハWの搬入出動作が重なるタイミングが発生しているが、第2の搬送機構141を例えば2組設けるなどすればよいことは図10に示した例と同様である。
【0065】
また上述の各実施の形態では、アルカリ性薬液処理後のリンス洗浄及び振切乾燥、酸性薬液洗浄後のリンス洗浄において排液系統及び排気系統を各々アルカリ性ドレインライン54及びアルカリ性排気ライン63、若しくは酸性ドレインライン55及び酸性排気ライン64とする例を示したが、これらのリンス洗浄、振切乾燥専用の排液系統、排気系統を設けてもよい。この場合には、図7に示した処理スケジュールにおいて、例えばモジュール1側のアルカリ性薬液処理後の振切乾燥の終了を待たずに、当該アルカリ性薬液処理を終えたタイミングでモジュール2においてアルカリ性薬液洗浄を開始できる。
【0066】
これらに加え、上述の実施の形態では、排気ライン62、63、64にのみ排気ファン621、631、641を設けた例を示したが、図4に示した各ドレインライン53、54、55の下流に、これらドレインライン53、54、55に排出された排液を排出するためのポンプを設けてもよい。この場合にも本発明を適用することにより、これらのポンプの能力や負荷を低減することができる。
【0067】
また例えば各排気ライン62、63、64に排気ファン621、631、641を設ける代わりに、これらの排気ライン62、63、64を例えば工場の共通排気ラインに接続することにより排気を実行する場合において、共通排気ラインの受け入れ可能容量が制限されている場合にも、本発明を適用することにより各排気ライン62、63、64へ排出される最大負荷を抑制して、共通排気ラインにて受け入れ可能容な排気量に抑えることが可能となる。これは各ドレインライン53、54、55から工場の共通排液ラインを介して排液を実行する場合において、共通排液ラインの受け入れ可能容量が制限されている場合にも同様である。
【0068】
またこのとき、例えば(1)排気系統の共通用力系については各組の共通グループ20に設けられた全液処理モジュール2についての排気能力が確保され、排液系統の共通用力系については排液量が制限されている場合、反対に、(2)排液系統の共通用力系については各組の共通グループ20に設けられた全液処理モジュール2についての排液能力が確保され、排気系統の共通用力系については排気量が制限されている場合についても本発明は適用することができる。
【0069】
また本発明を適用可能な処理モジュールは既述の液処理モジュール2に限定されず、例えば基板表面に処理液を塗布して塗布膜を形成する塗布装置、塗布した塗布膜に含まれる溶剤を真空雰囲気下で乾燥させる真空乾燥処理装置や、例えばウエハの液浸露光を行う前に純水によるスクラバー洗浄を行うスクラバー装置などの各種処理装置においても適用できる。スクラバー装置の場合には純水が処理液に相当する。
【符号の説明】
【0070】
W ウエハ
1 液処理装置
11 キャリア載置部
12 搬送部
121 第1の搬送機構
14 液処理部
141 第2の搬送機構
2、2a、2b
液処理モジュール
20 共有グループ
21a、21b
アウターチャンバー
22a、22b
インナーカップ
23a、23b
ウエハ保持機構
231a、231b
薬液供給路
24a、24b
ノズルアーム
300、312
切替弁
31 IPA供給部
32 DHF供給部
33 SC1供給部
34 純水供給部
51a、51b
排液ライン
511 切替弁
53 有機物ドレインライン
54 アルカリ性ドレインライン
55 酸性ドレインライン
56a、56b
排水ライン
61a、61b
共通排気ライン
611 切替弁
621、631、641
排気ファン
62 有機物排気ライン
63 アルカリ性排気ライン
64 酸性排気ライン
7 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して各々同一の処理を行うための多数の処理モジュールを、n個(nは2以上の自然数)を1組とするk組(kは2以上の自然数)に分けて構成した処理モジュール群と、
各組毎に独立して設けられ、各組のn個の処理モジュールに対して共通化されると共にその能力がm個(mはnよりも小さい自然数)の処理モジュールの処理まで許容し、かつその能力が各組の間で同じである共通用力系と、
前記処理モジュールに対して基板の受け渡しを行う搬送機構と、
前記処理モジュールの1番目の組からk番目の組に基板を順次搬入する搬入動作を繰り返し行うように搬送機構を制御し、
各組においてm個の処理モジュールに対して前記共通用力系が使用されている場合には、(1)当該共通用力系が使用されている一の処理モジュールにおける処理が終了した後にその組における他の処理モジュールへ基板を搬入するように搬送機構を制御するか、または(2)当該一の処理モジュールにおける処理の終了を待たずに他の処理モジュールへ基板を搬入すると共に当該一の処理モジュールにおける処理が終了した後に当該他の処理モジュールの処理を開始するように処理モジュールを制御する制御部と、を備えたことを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記共通用力系は、前記(1)の基板の搬入、または(2)の処理の開始に合わせて、当該共通用力系の使用先を前記一の処理モジュールから他の処理モジュールへと切り替える切替部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記処理モジュールにて行われる処理は、処理液を基板に供給する処理を含み、
前記共通用力系は、処理液を供給する雰囲気を排気するための排気系であることを特徴とする請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記処理モジュールにて行われる処理は、薬液を基板に供給する薬液処理が薬液の種別を変えて複数回連続して行われる処理であり、
前記共通用力系は、薬液の種別ごとに設けられると共に薬液処理が行われる間、薬液を供給する雰囲気を排気するための排気系であることを特徴とする請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項5】
前記薬液処理は、基板を洗浄するための処理であることを特徴とする請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記処理モジュールにて行われる処理は、処理液を基板に供給する処理を含み、
前記共通用力系は、処理液を供給する処理液供給系であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の処理装置。
【請求項7】
前記処理モジュールにて行われる処理は、処理液を基板に供給する処理を含み、
前記共通用力系は、基板から飛散あるいはこぼれ落ちた排液を排出する排液系であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の処理装置。
【請求項8】
基板に対して各々同一の処理を行うための多数の処理モジュールを、n個(nは2以上の自然数)を1組とするk組(kは2以上の自然数)に分けて構成した処理モジュール群と、
各組毎に独立して設けられ、各組のn個の処理モジュールに対して共通化されると共にその能力がm個(mはnよりも小さい自然数)の処理モジュールの処理まで許容し、かつその能力が各組の間で同じである共通用力系と、を備えた処理装置の運転方法であって、
搬送機構により前記処理モジュールの1番目の組からk番目の組に基板を順次搬入する搬入動作を繰り返し行う工程と、
各組においてm個の処理モジュールに対して前記共通用力系が使用されている場合には、(1)当該共通用力系が使用されている一の処理モジュールにおける処理が終了した後にその組における他の処理モジュールへ基板を搬入するか、または(2)当該一の処理モジュールにおける処理の終了を待たずに他の処理モジュールへ基板を搬入すると共に当該一の処理モジュールにおける処理が終了した後に当該他の処理モジュールの処理を開始する工程と、を含むことを特徴とする処理装置の運転方法。
【請求項9】
前記(1)の基板の搬入または、(2)の処理の開始に合わせて、前記共通用力系の使用先を前記一の処理モジュールから他の処理モジュールへと切り替える工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の処理装置の運転方法。
【請求項10】
前記処理モジュールにて行われる処理は、処理液を基板に供給する処理を含み、
前記共通用力系は、処理液を供給する雰囲気を排気するための排気系であることを特徴とする請求項8または9に記載の処理装置の運転方法。
【請求項11】
前記処理モジュールにて行われる処理は、薬液を基板に供給する薬液処理が薬液の種別を変えて複数回連続して行われる処理であり、
前記共通用力系は、薬液の種別ごとに設けられると共に薬液処理が行われる間、薬液を供給する雰囲気を排気するための排気系であることを特徴とする請求項8または9に記載の処理装置の運転方法。
【請求項12】
前記薬液処理は、基板を洗浄するための処理であることを特徴とする請求項11に記載の処理装置の運転方法。
【請求項13】
前記処理モジュールにて行われる処理は、処理液を基板に供給する処理を含み、
前記共通用力系は、処理液を供給する処理液供給系であることを特徴とする請求項8ないし12のいずれか一つに記載の処理装置の運転方法。
【請求項14】
前記処理モジュールにて行われる処理は、処理液を基板に供給する処理を含み、
前記共通用力系は、基板から飛散あるいはこぼれ落ちた排液を排出する排液系であることを特徴とする請求項8ないし13のいずれか一つに記載の処理装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−161164(P2010−161164A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1775(P2009−1775)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】