説明

半導体ウェハ

【課題】半導体チップを形成するチップ形成領域の設定領域を狭くすることなく、SOSウェハ等の半導体ウェハの認識率を向上させる手段を提供する。
【解決手段】透光性を有する絶縁基板と、絶縁基板上に形成されたシリコン半導体層とで形成され、スクライブライン領域により区画された複数のチップ形成領域を有する半導体ウェハにおいて、スクライブライン領域に、互いに隙間を介して離間する複数の不透明図形を配置した不透明パターン層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性を有する絶縁基板を用いたSOS(Silicon On Sapphire)ウェハ等の半導体ウェハに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの製造工程においては、半導体ウェハを製造装置で処理する際に、製造装置側で半導体ウェハの有無を認識させる必要がある。この場合の半導体ウェハの認識には、LED(Light Emitting Diode)を光源とした670〜940nmの波長の光の透過、遮断により光学的に半導体ウェハの有無を検出する透過型センサが一般に用いられている。
【0003】
シリコン(Si)ウェハの場合には、670〜940nmの波長を用いた透過型センサによる半導体ウェハの検出時の不具合は生じないが、近年、RF(Radio Frequency)デバイス等の高付加価値商品の製造に用いられる、サファイア基板上に薄いシリコン半導体層を形成したSOSウェハにおいては、基板に用いられるサファイアが透光性を有するために670〜940nmの波長の光を透過してしまい、半導体チップの製造工程におけるSOSウェハの存在を認識ができない誤認識が生ずる場合がある。
【0004】
これは、半導体チップの製造に用いるSOSウェハには、半導体チップを構成する半導体素子を形成した後に、半導体チップを切出すためのスクライブラインを形成するが、このスクライブライン上には、通常、フォトリソグラフィに用いるアライメントマーク、および半導体素子の電気特性確認用のTEG(Test Element Group)が形成され、それ以外のものは何もない透明な領域となっているので、透過型センサから照射した光がスクライブラインを透過する割合が多くなって、SOSウェハが存在していたとしても、誤認識を生じさせる要因の一つになるからである。
【0005】
このような誤認識が生じると、SOSウェハが未処理のまま当該工程を通過してしまい、半導体チップの製造歩留りが低下して半導体チップの製造効率が低下するという問題が生ずる。
上記のSOSウェハ用いた場合の誤認識を防止するために、透過型センサで用いる光の波長を変化させて、SOSウェハの認識率を高めることが、一般に行われている。
【0006】
また、SOSウェハ用いた場合の誤認識を防止するために、SOSウェハの周縁部に5mm程度の幅を有する外輪部を設け、シリコン半導体層上に、フォトリソグラフィにより外輪部を露出させたレジストマスクを形成し、これをマスクとして外輪部のシリコン半導体層にイオンを注入してアモルファス化し、アモルファス化された外輪部の不透明性を用いてSOSウェハの有無の検出を行っているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−223304号公報(第4頁段落0018−第5頁段落0025、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した一般的な技術においては、透過型センサの光の波長を670〜940nmとした場合に較べて、半導体ウェハの認識率は改善されるものの、シリコンウェハに較べると認識率が低く、技術的に満足できるものは得られておらず、半導体チップの製造歩留りが低下して半導体チップの製造効率が低下するという問題がある。
また、特許文献1の技術においては、SOSウェハの周縁部に設けた外輪部をアモルファス化して不透明な層を形成しているため、アモルファス化した外輪部を半導体チップの製造に用いることができず、半導体チップを形成するチップ形成領域の設定領域が狭くなり、1枚のSOSウェハから製造できる半導体チップの数量が減少し、半導体チップの製造効率が低下するという問題がある。
【0008】
更に、特許文献1の技術においては、外輪部をアモルファス化するための工程を新たに追加する必要があり、半導体チップの製造に時間を要し、半導体チップの製造コストが増加するという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、半導体チップを形成するチップ形成領域の設定領域を狭くすることなく、SOSウェハ等の半導体ウェハの認識率を向上させる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、透光性を有する絶縁基板と、該絶縁基板上に形成されたシリコン半導体層とで形成され、スクライブライン領域により区画された複数のチップ形成領域を有する半導体ウェハにおいて、前記スクライブライン領域に、互いに隙間を介して離間する複数の不透明図形を配置した不透明パターン層を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
これにより、本発明は、チップ形成領域の設定領域を狭くすることなく、不透明図形の不透明性を利用してSOSウェハの認識率を向上させることができ、半導体チップの製造における歩留りを向上させて、その製造効率を向上させることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図面を参照して本発明による半導体ウェハの実施例について説明する。
【実施例】
【0012】
図1は実施例の半導体ウェハの上面を示す説明図、図2は図1のA部におけるスクライブラインを示す拡大図、図3は図2のB部を示す拡大図、図4は図3のC−C断面線に沿った断面を示す説明図、図5は実施例の第1の不透明パターン層を示す説明図、図6は実施例の第2の不透明パターン層を示す説明図、図7は実施例の第3の不透明パターン層を示す説明図、図8は図1のD部におけるスクライブラインを示す拡大図である。
【0013】
図1において、1は半導体ウェハとしてのSOSウェハである。
2は絶縁基板としてのサファイア基板(図4参照)であり、単結晶の酸化アルミニウム(Al)からなる円盤状の薄板であって、透光性および優れた絶縁性を有している。
3はシリコン半導体層(図4参照)であり、サファイア基板2上に、シリコン結晶の固相エピタキシャル成長等により形成された単結晶シリコンからなる薄い半導体層である。
【0014】
本実施例のSOSウェハ1には、nMOS(Metal Oxide Semiconductor)素子等のMOSFET(MOS Field Effect Transistor)やメモリ素子等の半導体素子を回路配線で接続して形成されるLSI(Large Scale Integrated circuit)等の半導体チップを形成するためのチップ形成領域5が複数設定され、各チップ形成領域は、SOSウェハ1を個片に分割して半導体チップを製造するときの縦横に設定された分割線であるスクライブライン6を形成するためのスクライブライン形成領域7により区画されている。
【0015】
本実施例のスクライブライン形成領域7の幅方向(チップ形成領域5とスクライブライン形成領域7との境界線に直交し、SOSウェハ1の上面に平行な方向をいう。)の長さは、50〜300μmに設定され、そこに形成されるスクライブライン6は、図2、図3、図4に示すように、第1の不透明図形9a、第2の不透明図形9b、第3の不透明図形9cを、それぞれ複数配置した第1の不透明パターン層10a、第2の不透明パターン層10b、第3の不透明パターン層10cを、後述する第1の層間絶縁膜25および第2の層間絶縁膜29それぞれの間に形成した状態で、積層して形成されている。
【0016】
最下層に形成される第1の不透明パターン層10aの不透明図形9aは、後述するゲート電極18を形成するときのポリシリコン膜18aを、フォトリソグラフィによりパターニングし、その上に金属導電膜としてのシリサイド層22を積層して形成され、図5に示すように、その形状は、最小露光可能寸法をS(単位:μm)としてときに、1辺を1.5S以上、5S以下の範囲で設定した矩形に形成され、互いの不透明図形9a間の距離を1S以上の長さとして縦横に配置されている。
【0017】
第2の不透明パターン層10bの不透明図形9bは、後述する第1の層間絶縁膜25上に、第1の配線27を形成するときの導電材料で形成された金属導電膜としての第1の配線層27aを、フォトリソグラフィによりパターニングして形成され、図3、図5に示すように、その形状は、互いに隣合う4つの第1の不透明図形9aの中央部の隙間を覆うように8角形に形成され、千鳥状に配置されている。
【0018】
第3の不透明パターン層10cの不透明図形9cは、後述する第2の層間絶縁膜29上に、第2の配線31を形成するときの第1の配線層27aと同様の導電材料で形成された金属導電膜としての第2の配線層31aを、フォトリソグラフィによりパターニングして形成され、図3、図6に示すように、その形状は、千鳥状に配置された第2の不透明図形10b間の大きい隙間を覆うように、第2の不透明図形10bと重ね代K(本実施例では、0.1〜2.0μm)で対向させた矩形に形成され、千鳥状に配置されている。
【0019】
これにより、スクライブライン6は、上面から見たときに、図3に示すように、一の不透明パターン層10に配置された不透明図形9の間の隙間を、他の不透明パターン層10に配置された不透明図形9で覆って、隙間がない状態に形成されている。
図8において、12はTEG形成領域であり、スクライブライン形成領域7の幅方向の中央部に、周囲を不透明図形9で囲まれた矩形の領域として、スクライブライン形成領域7の複数箇所に設定されて、チップ形成領域5に形成される各種の半導体素子と同じ、またはサイズ違いの複数の素子で構成されるTEGが形成されており、このTEGを用いてチップ形成領域5に形成される各種の半導体素子の電気的な特性が確認される。
【0020】
図9、図10は実施例のSOSウェハの製造方法を示す説明図である。
図9、図10においては、チップ形成領域5に形成される半導体素子の1つであるnMOS素子15の断面を左側に、スクライブライン形成領域7に形成されるスクライブライン6の部分断面を右側に示す。
nMOS素子15は、SOSウェハ1のチップ形成領域5に設定された、周囲を酸化シリコン(SiO)等の絶縁材料で形成された素子分離層16により絶縁分離された領域である素子形成領域のサファイア基板2上のシリコン半導体層3に形成され、図10(P6)に示すように、比較的低濃度のボロン(B)等のP型不純物を拡散させたシリコン半導体層3上に形成された酸化シリコン等からなるゲート絶縁膜17、このゲート絶縁膜17を介してシリコン半導体層3に対向配置されたポリシリコン等からなるゲート電極18、ゲート電極18の側面に形成された窒化シリコン(Si)等からなるサイドウォール19、ゲート電極18の両側に比較的高濃度のリン(P)や砒素(As)等のN型不純物を拡散させて形成されたソース層20およびドレイン層21、ゲート電極18とソース層20とドレイン層21の上部に形成されたコバルト(Co)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)等の金属材料とシリコンとの化合物からなるシリサイド層22等で構成されており、ソース層20とドレイン層21に挟まれたゲート電極18下の低濃度のP型不純物等を拡散させたシリコン半導体層3がnMOS素子5のチャネル領域23として機能し、ゲート電極18にしきい電圧が印加されたときにチャネル領域23に形成されるチャネルにより、ソース層20とドレイン層21との間を流れる電流を制御する機能を有している。
【0021】
また、nMOS素子15を覆う酸化シリコン等からなる第1の層間絶縁膜25上には、nMOS素子15のゲート電極18、ソース層20およびドレイン層21のシリサイド層22に、タングステンやアルミニウム(Al)等の導電材料で形成されたコンタクトプラグ26を介して電気的に接続された、コンタクトプラグ26と同様の導電材料からなる第1の配線27が形成され、この第1の配線27を覆う第1の層間絶縁膜と同様の絶縁材料からなる第2の層間絶縁膜29上には、第1の配線17にコンタクトプラグ26と同様の導電材料からなる導電プラグ30を介して電気的に接続された、コンタクトプラグ26と同様の導電材料からなる第2の配線31が形成されている。
【0022】
図9、図10において、35はマスク部材としてのレジストマスクであり、フォトリソグラフィによりSOSウェハ1上に塗布されたポジ型またはネガ型のレジストを露光および現像処理して形成されたマスクパターンであって、本実施例のエッチングやイオン注入におけるマスクとして機能する。
以下に、図9、図10にPで示す工程に従って、本実施例のスクライブライン6を形成したSOSウェハ1の製造方法について説明する。
【0023】
P1(図9)、サファイア基板2上に、P型不純物を低濃度に拡散させたシリコン半導体層3を形成したSOSウェハ1を準備し、そのシリコン半導体層3にスクライブライン形成領域7を縦横に設定すると共に、スクライブライン形成領域7に区画された複数のチップ形成領域5を設定する。
スクライブライン形成領域7およびチップ形成領域5を設定したSOSウェハ1のシリコン半導体層3上に、熱酸化法によりパッド酸化膜を形成し、そのパッド酸化膜上にCVD(Chemical Vapor Deposition)法により窒化シリコンからなるシリコン窒化膜を形成し、フォトリソグラフィによりシリコン窒化膜上に、チップ形成領域5およびTEG形成領域12に設定された素子形成領域、並びにスクライブライン形成領域7を覆うレジストマスク35(不図示)を形成し、これをマスクとして、異方性エッチングによりシリコン窒化膜をエッチングしてパッド酸化膜を露出させる。
【0024】
前記のレジストマスク35の除去後に、シリコン窒化膜をマスクとしてLOCOS(Local Oxidation Of Silicon)法により、露出しているパッド酸化膜下のシリコン半導体層3を酸化して素子分離層16を形成し、ウェットエッチングによりシリコン窒化膜およびパッド酸化膜を除去する。
そして、熱酸化法によりシリコン半導体層3の上面を熱酸化してゲート絶縁膜17を形成するための酸化シリコンからなるシリコン酸化膜17aを形成する。
【0025】
P2(図9)、シリコン酸化膜17a上にCVD法によりゲート電極18を形成するためのポリシリコンを堆積して比較的厚膜のポリシリコン膜18aを形成し、フォトリソグラフィによりチップ形成領域5およびTEG形成領域12のゲート電極18の形成領域、並びにスクライブライン形成領域7のTEG形成領域12を除く第1の不透明図形9aの形成領域を覆うレジストマスク35を形成し、これをマスクとして、異方性エッチングにより露出しているポリシリコン膜18aをエッチングしてシリコン酸化膜17aを露出させ、チップ形成領域5およびTEG形成領域12のシリコン半導体層3上にゲート電極18を形成すると共に、スクライブライン形成領域7のシリコン半導体層3上のTEG形成領域12を除く領域に、第1の不透明パターン層10aを構成する縦横に配置されたポリシリコン膜18aからなる第1の不透明図形9a(図5参照)を形成する。
【0026】
P3(図9)、工程P2で形成したレジストマスク35を除去し、ゲート電極18および不透明図形9a上等のSOSウェハ1上の全面にCVD法により窒化シリコンを堆積してサイドウォール19を形成するためのシリコン窒化膜19aを形成し、異方性エッチングによりシリコン窒化膜19aおよびシリコン酸化膜18aをエッチングして、ゲート電極18の上面およびシリコン半導体層3の上面、並びに不透明図形9aの上面を露出させ、ゲート電極18とシリコン半導体層3との間にゲート絶縁膜18を形成すると共に、ゲート電極18の側面にサイドウォール19を形成する。
【0027】
このとき、不透明図形9aとシリコン半導体層3との間にシリコン酸化膜18aが、その側面にサイドウォール形状のシリコン窒化膜19aが残留する。
次いで、フォトリソグラフィにより、チップ形成領域5およびTEG形成領域12に設定された素子形成領域を露出させたレジストマスク35(不図示)を形成し、このレジストマスク35とゲート電極18およびサイドウォール19とをマスクとして、露出しているシリコン半導体層3にN型不純物イオンを注入して、ゲート電極18の両側のシリコン半導体層3にN型不純物を比較的高濃度に拡散させたソース層20およびドレイン層21を形成し、前記のレジストマスク35を除去する。
【0028】
これにより、シリコン半導体層3のソース層20とドレイン層21とに挟まれたゲート電極18下の領域にチャネル領域23が形成される。
P4(図9)、ゲート電極18および不透明図形9a、ソース層20、ドレイン層21上等のSOSウェハ1上の全面にスパッタ法等によりコバルトを堆積して金属材料層を形成し、サリサイド処理によりゲート電極18上、ソース層20およびドレイン層21上、並びに不透明図形9a上のシリコンと接している金属材料層をシリサイド化してそれぞれ部位にシリサイド層22を形成する。
【0029】
この場合のサリサイド処理は、アニール処理を施してから未反応の金属材料層を除去するまでの処理をいう。
P5(図10)、シリサイド層22の形成後に、シリサイド層22および素子分離層16上等のSOSウェハ1上の全面に、CVD法により酸化シリコンを比較的厚く堆積し、その上面を平坦化処理して第1の層間絶縁膜25を形成し、フォトリソグラフィにより第1の層間絶縁膜25上に、ソース層20およびドレイン層21のそれぞれのシリサイド層22上のコンタクトプラグ26の形成領域の第1の層間絶縁膜25を露出させた開口部を有するレジストマスク35(不図示)を形成し、これをマスクとして異方性エッチングにより第1の層間絶縁膜25を貫通してソース層20およびドレイン層21のシリサイド層22に達するコンタクトホールを形成し、前記のレジストマスク35の除去後に、それぞれのコンタクトホール内にスパッタ法等により導電材料を埋め込んでコンタクトプラグ26を形成し、その上面を平坦化処理して第1の層間絶縁膜25の上面を露出させる。
【0030】
次いで、前記と同様にして、ゲート電極18のシリサイド層22に達するコンタクトホールに導電材料を埋込んでコンタクトプラグ26を形成し、平坦化処理を施して第1の層間絶縁膜25の上面を露出させる。
その後に、スパッタ法等により、第1の層間絶縁膜25上にコンタクトプラグ26と同じ導電材料で第1の配線27を形成するための第1の配線層27aを形成し、フォトリソグラフィによりチップ形成領域5およびTEG形成領域12の第1の配線27の形成領域、およびスクライブライン形成領域7のTEG形成領域12を除く第2の不透明図形9bの形成領域を覆うレジストマスク35を形成し、これをマスクとして第1の配線層27aをエッチングしてコンタクトプラグ26に電気的に接続する第1の配線27を形成すると共に、スクライブライン形成領域7の第1の層間絶縁膜25上のTEG形成領域12を除く領域に、第2の不透明パターン層10bを構成する千鳥状に配置された第1の配線層27aからなる第2の不透明図形9b(図6参照)を形成する。
【0031】
P6(図10)、工程P5で形成したレジストマスク35を除去し、第1の配線27および第2の不透明図形9b上等のSOSウェハ1上の全面に、第1の層間絶縁膜25と同様にして第2の層間絶縁膜29を形成し、フォトリソグラフィにより第2の層間絶縁膜29上に、第1の配線27上の導電プラグ30の形成領域の第2の層間絶縁膜29を露出させた開口部を有するレジストマスク35(不図示)を形成し、これをマスクとして異方性エッチングにより第2の層間絶縁膜29を貫通して第1の配線27に達する貫通穴を形成し、前記のレジストマスク35の除去後に、それぞれの貫通穴内および第2の層間絶縁膜29上にスパッタ法等によりコンタクトプラグ26と同じ導電材料を堆積して導電プラグ30を形成すると共に、第2の層間絶縁膜29上に第2の配線31を形成するための第2の配線層31aを形成する。
【0032】
そして、フォトリソグラフィによりチップ形成領域5およびTEG形成領域12の第2の配線31の形成領域、およびスクライブライン形成領域7のTEG形成領域12を除く第3の不透明図形9cの形成領域を覆うレジストマスク35(不図示)を形成し、これをマスクとして第2の配線層31aをエッチングして導電プラグ30に電気的に接続する第2の配線31を形成すると共に、スクライブライン形成領域7の第2の層間絶縁膜29上のTEG形成領域12を除く領域に、第3の不透明パターン層10cを構成する千鳥状に配置された第2の配線層31aからなる第3の不透明図形9c(図7参照)を形成する。
【0033】
このようにして、本実施例のスクライブライン6を形成したSOSウェハ1が製造され、TEG形成領域12に形成されたTEGの各素子により、チップ形成領域5に形成された半導体素子の電気特性を確認した後に、スクライブライン6の中心線上をダイシングブレードにより切断し、SOSウェハ1を個片に分割して本実施例の半導体チップが製造される。
【0034】
上記のように、本実施例のスクライブライン形成領域7には、各不透明パターン層10に、第1の不透明図形9a、第2の不透明図形9b、第3の不透明図形9cが配置されているので、チップ形成領域5の設定領域を狭くすることなく、各不透明図形9の不透明性を利用して、それぞれの不透明図形9の形成後の製造工程で用いられる各製造装置おける処理の際のSOSウェハ1の認識率を高めることができ、SOSウェハ1が未処理のまま当該工程を通過することを抑制して、半導体チップの製造効率を向上させることができる。
【0035】
このことは、SOSウェハ1の中央部によりその存在を認識する透過型センサを備えた製造装置におけるSOSウェハ1の認識率を高める場合に、特に有効である。
また、スクライブライン形成領域7は、SOSウェハ1の周縁部にも設定されているので、周縁部によりSOSウェハ1の存在を認識する製造装置においても、SOSウェハ1の認識率を高めることが可能になる。
【0036】
また、本実施例のスクライブライン形成領域7には、ポリシリコン膜18aからなる第1の不透明図形9a、第1の配線層27aからなる第2の不透明図形9b、第2の配線層31aからなる第3の不透明図形9cが形成されているので、チップ形成領域5に形成する半導体素子、例えばnMOS素子15のゲート電極18や第1の配線27、第2の配線31を形成するときのレジストマスク35をそのまま用いて、新たな工程を追加することなく、SOSウェハ1の認識率を高めるための不透明図形9の形成を行うことができる他、670〜940nmの波長を用いた透過型センサを用いたとしても、SOSウェハ1を容易に検出することができ、シリコンウェハを用いて半導体チップを製造する製造工程で、SOSウェハ1を用いた半導体チップの製造を行うことが可能になる。
【0037】
この場合に、ポリシリコン膜18aからなる第1の不透明図形9aに金属導電膜としてのシリサイド層22を形成すれば、第1の不透明図形9aの不透明性を更に高めることができる。
更に、例えば第1の配線層27aによりスクライブライン形成領域7の全面に不透明層を形成し、そのスクライブライン6をダイシングブレードにより切断したときには、金属導電膜からなる細長い髭状の切屑が形成され、ダイシングブレードに目詰まりが生じたり、洗浄により切屑を除去することが難しく、ボンディングパッド間の短絡を生じたりする懸念があるが、本実施例のスクライブライン6の各不透明パターン層10のそれぞれの間には、第1の層間絶縁膜25および第2の層間絶縁膜29が形成され、各不透明パターン層10には互いに隙間を介して離間する複数の不透明図形9が配置されているので、SOSウェハ1のスクライブライン6をダイシングブレードにより切断したときに形成される金属導電膜からなる切屑を細かくすることが可能になり、ダイシングブレードの目詰まりによる切断不良を防止することができると共に、切屑を洗浄により容易に除去することが可能になり、切屑によるボンディングパッド間の短絡を防止することができる。
【0038】
更に、スクライブライン領域7に設定されたTEG形成領域12の周囲を、不透明図形9で囲ってあるので、透過型センサによりSOSウェハ1をトレースしたときに、照射された光がTEG形成領域12を通過したとしても、その光はTEG形成領域12の周囲に形成された不透明図形9に必ず遮断され、透過型センサによるSOSウェハ1の認識率が低下することはない。
【0039】
以上説明したように、本実施例では、スクライブライン領域に、互いに隙間を介して離間する複数の不透明図形を配置した不透明パターン層を設けたことによって、チップ形成領域の設定領域を狭くすることなく、不透明図形の不透明性を利用してSOSウェハの認識率を向上させることができ、半導体チップの製造における歩留りを向上させて、その製造効率を向上させることができる。
【0040】
また、不透明図形を形成した不透明パターン層を複数設け、各不透明パターン層の間に、層間絶縁膜を形成し、一の不透明パターン層の不透明図形の間の隙間を、他の不透明パターン層の不透明図形で覆うようにしたことによって、透過型センサから照射される光を確実に遮断することができると共に、SOSウェハを個片に分割する際の切屑を細かくすることができ、切屑の洗浄による除去を容易にして、ボンディングパッド間の短絡を防止することができる。
【0041】
更に、スクライブライン形成領域の各不透明パターン層に配置する第1の不透明図形をポリシリコン膜で、第2の不透明図形を第1の配線層で、第3の不透明図形を第2の配線層で形成すようにしたことによって、チップ形成領域に形成する半導体素子のゲート電極や第1の配線、第2の配線を形成するときのレジストマスクをそのまま用いて、新たな工程を追加することなく、SOSウェハの認識率を高めるための不透明図形の形成を行うことができる。
【0042】
更に、スクライブライン領域に設定されたTEG形成領域の周囲を、不透明図形で囲うようにしたことによって、透過型センサによりSOSウェハをトレースしたときに、照射された光がTEG形成領域を通過したとしても、その光をTEG形成領域の周囲に形成された不透明図形により、必ず遮断することができる。
なお、上記実施例においては、光学式の透過型センサによりSOSウェハの存在を認識するとして説明したが、光学式の反射型センサの用いて、不透明図形で反射された光を検出してSOSウェハの存在を認識するようにしてもよい。
【0043】
また、上記実施例においては、第1の不透明図形は矩形、第2の不透明図形は8角形、第3の不透明図形は矩形であるとして説明したが、これらの不透明図形の形状は前記に限らず、他の多角形形状であってもよい。要はSOSウェハの分割時に細かい切屑となる形状であれは、どのような形状であってもよい。
更に、上記実施例においては、層間絶縁膜を2層設けるとして説明したが、層間絶縁膜を3層以上形成するSOSウェハの場合には、ポリシリコン膜からなる不透明図形を省略して、各層間絶縁膜上に形成される配線層を用いて各不透明パターン層の不透明図形を形成するようにしてもよい。
【0044】
更に、上記実施例においては、半導体ウェハはSOSウェハであるとして説明したが、透光性を有する絶縁基板としてのクォーツ基板上にシリコン半導体層を形成したSOQ(Silicon On Quartz)基板等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例のSOSウェハの上面を示す説明図
【図2】図1のA部におけるスクライブラインを示す拡大図
【図3】図2のB部を示す拡大図
【図4】図3のC−C断面線に沿った断面を示す説明図
【図5】実施例の第1の不透明パターン層を示す説明図
【図6】実施例の第2の不透明パターン層を示す説明図
【図7】実施例の第3の不透明パターン層を示す説明図
【図8】図1のD部におけるスクライブラインを示す拡大図
【図9】実施例の半導体ウェハの製造方法を示す説明図
【図10】実施例の半導体ウェハの製造方法を示す説明図
【符号の説明】
【0046】
1 半導体ウェハ
2 サファイア基板
3 シリコン半導体層
5 チップ形成領域
6 スクライブライン
7 スクライブライン形成領域
9 不透明図形
9a 第1の不透明図形
9b 第2の不透明図形
9c 第3の不透明図形
10 不透明パターン層
10a 第1の不透明パターン層
10b 第2の不透明パターン層
10c 第3の不透明パターン層
12 TEG形成領域
15 nMOS素子
16 素子分離層
17 ゲート絶縁膜
17a シリコン酸化膜
18 ゲート電極
18a ポリシリコン膜
19 サイドウォール
19a シリコン窒化膜
20 ソース層
21 ドレイン層
22 シリサイド層
23 チャネル領域
25 第1の層間絶縁膜
26 コンタクトプラグ
27 第1の配線
27a 第1の配線層
29 第2の層間絶縁膜
30 導電プラグ
31 第2の配線
31a 第2の配線層
35 レジストマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する絶縁基板と、該絶縁基板上に形成されたシリコン半導体層とで形成され、スクライブライン領域により区画された複数のチップ形成領域を有する半導体ウェハにおいて、
前記スクライブライン領域に、互いに隙間を介して離間する複数の不透明図形を配置した不透明パターン層を設けたことを特徴とする半導体ウェハ。
【請求項2】
請求項1において、
前記不透明パターン層を複数設け、
前記各不透明パターン層の間に、層間絶縁膜を形成すると共に、一の不透明パターン層の不透明図形の間の隙間を、他の不透明パターン層の不透明図形で覆ったことを特徴とする半導体ウェハ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記不透明パターン層の不透明図形が、金属導電膜により形成されていることを特徴とする半導体ウェハ。
【請求項4】
請求項2において、
最下層の前記不透明パターン層の不透明図形が、ポリシリコン膜で形成されていることを特徴とする半導体ウェハ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記各不透明パターン層に形成された不透明図形の間の隙間が、それぞれ最小露光可能寸法以上の長さに形成されていることを特徴とする半導体ウェハ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記スクライブライン領域に、前記不透明図形で囲まれた、半導体素子の電気特性確認用のTEGを形成するTEG形成領域を設けたことを特徴とする半導体ウェハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−10140(P2009−10140A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169660(P2007−169660)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(390008855)宮崎沖電気株式会社 (151)
【Fターム(参考)】