説明

半導体光増幅器モジュール

【課題】小型でありかつ製造性が高い半導体光増幅器モジュールを提供すること。
【解決手段】半導体光増幅器と、前記半導体光増幅器への入力光または該半導体光増幅器からの出力光の一部をモニタするための第1半導体光検出器とを同一基板上に集積した半導体装置部と、前記半導体装置部に接続し、前記半導体光増幅器に対して前記入力光の入力または前記出力光の出力を行なう第1受動導波路と、前記第1受動導波路から分岐し前記入力光または前記出力光の一部を前記第1半導体光検出器に入力させる第2受動導波路とを同一基板上に形成した受動導波路部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光増幅器モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信においては、光ファイバの伝送損失、あるいはAWG(Arrayed Waveguide Grating)等の光コンポーネントの挿入損失を補償するために、低雑音で高利得な光増幅器が大変重要となる。近年、電流励起型の半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)は、Er添加型光ファイバ増幅器(EDFA:Er-Doped Fiber Amplifier)とは異なり、ポンプレーザが不要であり、小型、かつ安価な光増幅器であるため、大変注目されてきている。また、半導体光増幅器は、その小型性のために、シリコン(Si)導波路や平面光波回路(PLC;Planar Lightwave Circuit)等の石英系光導波路とハイブリッド集積し、導波路損失の補償や光スイッチング等の機能を持たせることができる(たとえば非特許文献1参照)。なお、半導体光増幅器の開発当初は、EDFAと比較すると飽和出力、雑音指数(NF:Noise Figure)の特性において劣っていたが、近年開発が進み、飽和出力、雑音指数の点でEDFAと遜色ない半導体光増幅器が報告されてきている(たとえば非特許文献2参照)。
【0003】
このようにサイズ及びコストの点でメリットのある半導体光増幅器を実システムに用いる際には、光入出力強度をモニタするための半導体等からなる光検出器(PD:Photo Detector)が搭載され、入力部と出力部とが光ファイバに結合されたモジュールに実装する必要がある。図16は、従来の半導体光増幅器モジュールの模式的な構成図である(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
図16に示すように、従来の半導体光増幅器モジュール600は、筐体601に挿入され支持された入力光ファイバ602、出力光ファイバ603と、筐体601に収容され、入力光ファイバ602と出力光ファイバ603との間に順次配置された、ビームスプリッタ604、レンズ605、チップ状の半導体光増幅器606、レンズ607、光アイソレータ608、およびビームスプリッタ609と、ビームスプリッタ604に対して所定の位置に配置されたチップ状の半導体光検出器610、ビームスプリッタ609に対して所定の位置に配置されたチップ状の半導体光検出器611とを備えている。また、レンズ605、半導体光増幅器606、レンズ607は基台612に支持されている。また、半導体光検出器610、611は、それぞれ基台613、614に支持されている。
【0005】
この半導体光増幅器モジュール600の動作を説明する。はじめに、ビームスプリッタ604は、入力光ファイバ602を伝搬してきた信号光SL601の大部分を透過するとともに、その一部を回折することによって、分岐し、分岐光SL602を半導体光検出器610に入力させる。半導体光検出器610は分岐光SL602を受光し、入力光である信号光SL601の強度をモニタする。
【0006】
つぎに、レンズ607は、ビームスプリッタ604を透過した信号光SL601を半導体光増幅器606に集光する。半導体光増幅器606は信号光SL601を光増幅し、増幅信号光SL603として出力する。さらに、レンズ607は、増幅信号光SL603を集光して出力光ファイバ603に光学的に結合させる。また、光アイソレータ608は、増幅信号光SL603を透過させるとともに、半導体光増幅器606への戻り光を除去する。
【0007】
また、ビームスプリッタ609は、増幅信号光SL603の大部分を透過するとともに、その一部を回折することによって、分岐し、分岐光SL604を半導体光検出器611に入力させる。半導体光検出器611は分岐光SL604を受光し、出力光である増幅信号光SL603の強度をモニタする。そして、出力光ファイバ603は結合された増幅信号光SL603を外部に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−291653号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】T. Hashimoto et al., “Multichip Optical Hybrid Integration Technique with Planar Lightwave Circuit Platform”, J. Lightwave Technol., vol. 16, No. 7, pp. 1249-1258, July 1998.
【非特許文献2】K. Morito et al., “A Broad-Band MQW Semiconductor Optical Amplifier With High Saturation Output Power and Low Noise Figure”, IEEE Photonics Technol. Lett., vol. 17, No. 5, pp.974-976, May 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、従来の半導体光増幅器モジュールは、半導体光増幅器や半導体光検出器などの複数の独立した半導体チップから構成されており、これらの間にはレンズが配置され、光経路の調芯が行なわれる。そのため、構成部品の点数が多くなるので、モジュールが大きくなるという問題があった。また、調芯が必要な光経路についても、(1)入力光ファイバ602→ビームスプリッタ604→レンズ605→半導体光増幅器606、(2)入力ファイバ602→ビームスプリッタ604→半導体光検出器610、(3)半導体光増幅器606→レンズ607→光アイソレータ608→ビームスプリッタ609→出力光ファイバ603、(4)半導体光増幅器606→レンズ606→光アイソレータ608→ビームスプリッタ609→半導体光検出器611と複数あるため、調芯回数も複数回となり、調芯および組み立てに時間を要するため、製造性が低いという問題があった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型でありかつ製造性が高い半導体光増幅器モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る半導体光増幅器モジュールは、半導体光増幅器と、前記半導体光増幅器への入力光または該半導体光増幅器からの出力光の一部をモニタするための第1半導体光検出器とを同一基板上に集積した半導体装置部と、前記半導体装置部に接続し、前記半導体光増幅器に対して前記入力光の入力または前記出力光の出力を行なう第1受動導波路と、前記第1受動導波路から分岐し前記入力光または前記出力光の一部を前記第1半導体光検出器に入力させる第2受動導波路とを同一基板上に形成した受動導波路部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る半導体光増幅器モジュールは、上記の発明において、前記受動導波路部はガラスからなる平面光回路から構成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る半導体光増幅器モジュールは、上記の発明において、前記受動導波路部はSi細線から構成されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る半導体光増幅器モジュールは、上記の発明において、前記受動導波路部はポリマー導波路から構成されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る半導体光増幅器モジュールは、上記の発明において、前記第2受動導波路の一部は折り返すように曲げられていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る半導体光増幅器モジュールは、上記の発明において、前記第2受動導波路の一部の曲げ半径は1cm以下であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る半導体光増幅器モジュールは、上記の発明において、前記半導体光増幅器は曲げ導波路部を有しており、前記半導体装置部は前記曲げ導波路部からの漏れ光をモニタするための第2半導体光検出器を備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る半導体光増幅器モジュールは、上記の発明において、前記半導体装置部または前記受動導波路部は前記半導体光増幅器の出力側に設けられた受動曲げ導波路部を備え、前記半導体装置部は前記受動曲げ導波路部からの漏れ光をモニタするための第2半導体光検出器を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る半導体光増幅器モジュールは、上記の発明において、前記半導体装置部と前記受動導波路部とは、前記半導体光増幅器からの出力光をモニタしながらアクティブアライメント方式によって位置調整し、接続したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、小型でありかつ製造性が高い半導体光増幅器モジュールを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、実施の形態1に係る半導体光増幅器モジュールの模式的な構成図である。
【図2】図2は、図1に示す半導体光増幅器モジュールのA−A線要部断面図である。
【図3】図3は、図1に示す半導体光増幅器モジュールのB−B線要部断面図である。
【図4】図4は、図1に示す半導体光増幅器モジュールの入力側受動導波路部の受動導波路の模式的な構成図である。
【図5】図5は、図1に示す半導体光増幅器モジュールの出力側受動導波路部の受動導波路の模式的な構成図である。
【図6】図6は、図1に示す半導体光増幅器モジュールの半導体装置部の模式的な構成図である。
【図7】図7は、図6に示す半導体装置部のC−C線要部断面図である。
【図8】図8は、実施の形態2に係る半導体光増幅器モジュールの模式的な構成図である。
【図9】図9は、実施の形態3に係る半導体光増幅器モジュールの模式的な構成図である。
【図10】図10は、実施の形態4に係る半導体光増幅器モジュールの模式的な構成図である。
【図11】図11は、図10に示す半導体光増幅器モジュールのD−D線要部断面図である。
【図12】図12は、図1に示す半導体光増幅器モジュールの半導体装置部の製造方法の一例の説明図である。
【図13】図13は、図1に示す半導体光増幅器モジュールの半導体装置部の製造方法の一例の説明図である。
【図14】図14は、図1に示す半導体光増幅器モジュールの半導体装置部の製造方法の一例の説明図である。
【図15】図15は、Si細線からなる受動導波路部の模式的な断面図である。
【図16】図16は、従来の半導体光増幅器モジュールの模式的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本発明に係る半導体光増幅器モジュールの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する構成要素には適宜同一の符号を付している。また、以下では、実施の形態として、波長1.55μmの信号光を光増幅する半導体光増幅器モジュールについて説明する。
【0024】
(実施の形態1)
はじめに、本発明の実施の形態1に係る半導体光増幅器モジュールについて説明する。図1は、本実施の形態1に係る半導体光増幅器モジュールの模式的な構成図である。図1に示すように、この半導体光増幅器モジュール100は、筐体101に挿入され支持された入力光ファイバ102および出力光ファイバ103と、筐体101に収容された、入力光ファイバ102を載置した入力側受動導波路部110と、出力光ファイバ103を載置した出力側受動導波路部120と、入力側受動導波路部110と出力側受動導波路部120との間に介挿され接続された半導体装置部130とを備えている。
【0025】
入力側受動導波路部110は、低損失な石英系ガラス材料からなる光導波路回路であるPLCから構成されている。そして、入力側受動導波路部110は、入力光ファイバ102を載置するV溝111と、入力光ファイバ102と光学的に接続した第1受動導波路112と、第1受動導波路112から分岐した第2受動導波路113とを備えている。
【0026】
出力側受動導波路部120は、PLCから構成されており、出力光ファイバ103を載置するV溝121と、出力光ファイバ103と光学的に接続した第1受動導波路122と、受動導波路122から分岐した第2受動導波路123とを備えている。
【0027】
半導体装置部130は、入力側受動導波路部110の第1受動導波路112と出力側受動導波路部120の第1受動導波路122とにそれぞれ光学的に接続した、受動素子であるスポットサイズ変換器(SSC:Spot Size Converter)132、133と、スポットサイズ変換器132、133に光学的に接続した、能動素子である半導体光増幅器131と、第2受動導波路113に光学的に接続した能動素子である第1半導体光検出器134と、第2受動導波路123に光学的に接続した能動素子である第1半導体光検出器135とを備えている。スポットサイズ変換器132を介した、半導体光増幅器131と第1受動導波路122との間の接続損失は、たとえば2dB程度である。半導体光増幅器131と第2受動導波路123との間の接続損失も同様である。
【0028】
つぎに、入力側受動導波路部110、出力側受動導波路部120について具体的に説明する。図2は、図1に示す半導体光増幅器モジュール100のA−A線要部断面図である。図2に示すように、入力側受動導波路部110は、A−A線断面においては、Geを添加したコア層である第1受動導波路112が、シリコン(Si)等からなる基板110a上の下部クラッド層110b上に形成され、さらに上部クラッド層110cにより埋め込まれた埋め込みメサ型の導波路構造を有している。第1受動導波路112の断面のサイズは7μm×7μmである。また、下部クラッド層110bと上部クラッド層110cとの屈折率は同一である。また、下部クラッド層110bおよび上部クラッド層110cに対する受動導波路112の比屈折率差は0.45%である。このように断面サイズと比屈折率差が設定されていることにより、第1受動導波路112は波長1.55μmの光を単一横モードかつ偏波無依存で導波することができる。なお、上記断面のサイズと比屈折率差は例示であり、特に限定はされない。
【0029】
また、第2受動導波路113も、第1受動導波路112と同様の断面構造を有している。これらの第1受動導波路112、第2受動導波路113は、同一の基板110a上に形成したものである。
【0030】
また、出力側受動導波路部120の第1受動導波路122、第2受動導波路123も、第1受動導波路112と同様の断面構造を有している。これらの第1受動導波路122、第2受動導波路123も、出力側受動導波路部120の同一の基板上に形成したものである。
【0031】
つぎに、図3は、図1に示す半導体光増幅器モジュール100のB−B線要部断面図である。図3に示すように、入力光ファイバ102は、コア部102aとクラッド部102bとを有し、波長1.55μmの光を単一横モードで伝搬するものである。たとえば波長1.3μm近傍に零分散波長を有する標準のシングルモード光ファイバであるが、特に限定はされない。そして、入力光ファイバ102は、入力側受動導波路部110のV溝111に載置され、紫外線硬化樹脂等で固定、支持されている。V溝111は、開放された端部と反対側に、溝と略垂直な端面を有し、当該端面と入力光ファイバ102の端面とを当接させるとコア部102aと第1受動導波路112とが接続するような形状、位置に形成されている。また、出力側受動導波路部120に形成されたV溝121も、波長1.55μmの光を単一横モードで伝搬する出力光ファイバ103のコア部が第1受動導波路122と接続するような形状、位置に形成されている。
【0032】
つぎに、図4は、図1に示す半導体光増幅器モジュール100の入力側受動導波路部110の第1受動導波路112、第2受動導波路113の模式的な構成図である。図4に示すように、第1受動導波路112は略直線状に形成されており、第2受動導波路113は第1受動導波路112から分岐している。なお、図4の分岐導波路は、T字型、Y字型、多モード干渉型、方向性結合型のいずれかでもよい。第2受動導波路113の曲げ半径は、たとえば1cm以下であって、導波する信号光の曲げ損失が問題にならない程度(0.1dB程度)の大きさであることが好ましい。
【0033】
つぎに、図5は、図1に示す半導体光増幅器モジュール100の出力側受動導波路部120の第1受動導波路122、第2受動導波路123の模式的な構成図である。図5に示すように、第1受動導波路122は略直線状に形成されており、第2受動導波路123は第1受動導波路122から分岐し、かつその一部が折り返すように曲げられており、全体的にU字状になっているため、紙面横方向に小型化されている。なお、図5の分岐導波路は、T字型、Y字型、多モード干渉型、方向性結合型のいずれかでもよい。第2受動導波路123の曲げ半径も、たとえば1cm以下であって、導波する信号光の曲げ損失が問題にならない程度(0.1dB程度)の大きさであることが好ましい。
【0034】
つぎに、半導体装置部130について具体的に説明する。図6は、図1に示す半導体光増幅器モジュール100の半導体装置部130の模式的な構成図である。半導体光増幅器131、スポットサイズ変換器132、133、第1半導体光検出器134、135は、いずれも埋め込みメサ型の導波路構造を有している。また、図6に示すように、能動素子である半導体光増幅器131、第1半導体光検出器134、135上には、それぞれ電極パッド136、137、138が形成されている。また、半導体光増幅器131は光が伝搬する方向に長さL1を有し、メサ幅(コア幅)W1を有している。また、スポットサイズ変換器132、133は、いずれも長さL2を有しており、半導体光増幅器131に接続される側ではメサ幅W1を有し、第1受動導波路112または第1受動導波路122に接続される側に向かってメサ幅W2まで幅が拡大している。また、第1半導体光検出器134、135は、いずれも長さL3、メサ幅W3を有している。また、半導体光増幅器131の中心軸と第1半導体光検出器134、135とは、長さL4だけ離間している。
【0035】
長さL1は2300μmであり、長さL2は500μmであり、長さL3は1000μmであり、長さL4は1000μmであり、メサ幅W1は2μmであり、メサ幅W2は10μmであり、メサ幅W3は20〜30μmである。これらの長さとメサ幅の値は例示であり、特に限定はされない。
【0036】
なお、本実施の形態1では、スポットサイズ変換器132は、半導体光増幅器131側においてメサ幅W1が狭く、第1受動導波路112においてメサ幅W2が広くなっている形状を有する。しかしながら、スポットサイズ変換器の形状はこれに限られず、半導体光増幅器131側においてメサ幅が広く、第1受動導波路112においてメサ幅が狭くなっている形状のスポットサイズ変換器を用いてもよい。スポットサイズ変換器133についても同様である。
【0037】
つぎに、図7は、図6に示す半導体装置部130のC−C線要部断面図である。図6に示すように、半導体光増幅器131は、裏面にn側電極130bを形成したn型のInPからなる基板130a上に、バッファ層としての役割も果たしているn型のInPからなる下部クラッド層130cと、コア層としての活性層130dと、p型のInPからなる上部クラッド層130e、130fとが積層した構造を有している。基板130aの一部から上部クラッド層130fまではメサ構造となっており、その両側はp型のInPからなる下部電流阻止半導体層130gaとn型のInPからなる上部電流阻止半導体層130gbとからなる埋め込み半導体層130gによって埋め込まれている。また、上部クラッド層130fと埋め込み半導体層130gとの上にはp型のInPからなる上部クラッド層130h、p型のInGaAsPからなるコンタクト層130iが積層している。また、コンタクト層130i上には、活性層130d全体を覆うようにp側電極130jが形成され、またはSiN膜からなる誘電体保護膜130kで保護されている。さらに、誘電体保護膜130kに形成された開口部においてp側電極130jに接触するように、電極パッド136が形成されている。
【0038】
活性層130dは、バンドギャップ波長が1.48μmのInGaAsP材料からなり、多重量子井戸(MQW:Multi Quantum Well)構造の上下に3段階の分離閉じ込めヘテロ構造(SCH:Separate Confinement Heterostructure)を形成したMQW−SCH構造を有する。なお、MQWは例えば、6層の6nmの井戸層と、5層の10nmの障壁層とが順次積層された構造を有する。
【0039】
なお、第1半導体光検出器134、135は、半導体光増幅器131と同様の断面構造を有している。また、スポットサイズ変換器132、133の断面構造は、図7に示す断面構造において、活性層130dをバンドギャップ波長が1.15μmのInGaAsP材料からなるコア層に置き換え、かつp側電極130j、電極パッド136を削除した構造を有している。また、スポットサイズ変換器132、133においては、下部クラッド層130cのうちコア層に隣接する部分および上部クラッド層130e、130fがノンドープのInPからなる。
【0040】
また、半導体装置部130が備えるこれらの半導体光増幅器131、スポットサイズ変換器132、133、第1半導体光検出器134、135は、同一の基板130a上に集積されたものである。
【0041】
(動作)
つぎに、図1を参照して、半導体光増幅器モジュール100の動作について説明する。はじめに、電極および電極パッドを介して、半導体光増幅器131に順方向バイアス電圧にて駆動電流を注入し、第1半導体光検出器134、135に逆方向バイアス電圧を印加した状態で、入力光ファイバ102から第1受動導波路112に、増幅させるべき信号光SL101を入力させる。
【0042】
つぎに、第1受動導波路112は、入力された信号光SL101の大部分を導波し、スポットサイズ変換器132に出力する。これとともに、第2受動導波路113は、信号光SL101の一部が分岐した分岐光SL102を導波し、第1半導体光検出器134に入力させる。第1半導体光検出器134は、分岐光SL102を受光し、その強度をモニタすることによって、入力光である信号光SL101の強度をモニタする。
【0043】
つぎに、スポットサイズ変換器132は、入力された信号光SL101のスポットサイズを縮小するように変換し、半導体光増幅器131に入力させる。半導体光増幅器131は、入力された信号光SL101を光増幅し、増幅信号光SL103としてスポットサイズ変換器133に出力する。スポットサイズ変換器133は、入力された増幅信号光SL103のスポットサイズを拡大するように変換し、第1受動導波路122に出力する。
【0044】
つぎに、第1受動導波路122は、入力された増幅信号光SL103の大部分を導波し、出力光ファイバ103に出力する。そして、出力光ファイバ103は入力された増幅信号光SL103を外部に出力する。これとともに、第2受動導波路123は、増幅信号光SL103の一部が分岐した分岐光SL104を導波し、第1半導体光検出器135に入力させる。第1半導体光検出器135は、分岐光SL104を受光し、その強度をモニタすることによって、出力光である増幅信号光SL103の強度をモニタする。
【0045】
このように、この半導体光増幅器モジュール100においては、入力光ファイバ102と半導体光増幅器131とを、および、入力光ファイバ102と第1半導体光検出器134とを、入力側受動導波路部110の同一基板上に形成した第1受動導波路112、第2受動導波路113によって光学的に接続し、信号光SL101および分岐光SL102の入力を行なっている。また、出力光ファイバ103と半導体光増幅器131とを、および、出力光ファイバ103と第1半導体光検出器135とを、出力側受動導波路部120の同一基板上に形成した第1受動導波路122、第2受動導波路123によって光学的に接続し、増幅信号光SL103の出力および分岐光SL104の入力を行なっている。これによって、この半導体光増幅器モジュール100は、従来の半導体光増幅器モジュールのようにビームスプリッタとレンズとを用いて空間的にこれらの各要素を接続する場合に比べて、使用する部品点数が減少するので、小型化する。さらに、光経路の調芯についても、入力側受動導波路部110と半導体装置部130との位置、および出力側受動導波路部120と半導体装置部130との位置を調整するだけでよいので、調芯の回数、煩雑さ、調芯に要する時間が大幅に減少し、製造性がきわめて高いものとなる。
【0046】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2に係る半導体光増幅器モジュールについて説明する。図8は、本実施の形態2に係る半導体光増幅器モジュールの模式的な構成図である。図8に示すように、この半導体光増幅器モジュール200は、入力光ファイバ102を載置する入力側受動導波路部210と、出力光ファイバ103を載置する出力側受動導波路部220と、上方から見た場合に長方形の一部を切り欠いて逆T字型とした形状を有する半導体装置部230とを備えている。入力側受動導波路部210と出力側受動導波路部220とは、半導体装置部230の切り欠き部に嵌合するように接合され、接続されている。なお、入力光ファイバ102、出力光ファイバ103は、入力側受動導波路部210、出力側受動導波路部220、半導体装置部230を収容する不図示の筐体に挿入、支持されている。
【0047】
入力側受動導波路部210は、実施の形態1の入力側受動導波路部110と同様に、同一基板上に形成されたPLCから構成されており、入力光ファイバ102を載置するV溝211と、入力光ファイバ102と光学的に接続した第1受動導波路212と、第1受動導波路212から分岐した第2受動導波路213とを備えている。ただし、第2受動導波路213は、実施の形態1の第2受動導波路113とは異なり、分岐した後に半導体装置部230の逆T字型の底部に向かって延伸している。
【0048】
出力側受動導波路部220も、実施の形態1の出力側受動導波路部120と同様に、同一基板上に形成されたPLCから構成されており、出力光ファイバ103を載置するV溝221と、出力光ファイバ103と光学的に接続した第1受動導波路222と、第1受動導波路222から分岐した第2受動導波路223とを備えている。ただし、第2受動導波路223は、実施の形態1の第2受動導波路123とは異なり、第2受動導波路213と同様に分岐した後に半導体装置部230の逆T字型の底部に向かって延伸している。
【0049】
半導体装置部230は、実施の形態1の半導体装置部130と同様に、同一基板上に集積された、入力側受動導波路部210の第1受動導波路212と出力側受動導波路部220の第1受動導波路222とにそれぞれ光学的に接続したスポットサイズ変換器232、233と、スポットサイズ変換器232、233に光学的に接続した半導体光増幅器231と、逆T字型の底部に配置され、第2受動導波路213に光学的に接続した第1半導体光検出器234と、逆T字型の底部に配置され、第2受動導波路223に光学的に接続した第1半導体光検出器235とを備えている。
【0050】
なお、第1受動導波路212、222、第2受動導波路213、223、および半導体光増幅器231、スポットサイズ変換器232、233、第1半導体光検出器234、235の材質、断面構造、およびその幅や長さは、実施の形態1の対応する構成要素と同様である。
【0051】
この半導体光増幅器モジュール200は、実施の形態1に係る半導体光増幅器モジュール100と同様に、従来の半導体光増幅器モジュールよりも使用する部品点数が減少し、小型化する。さらに、光経路の調芯については、入力側受動導波路部210と出力側受動導波路部220とを、半導体装置部230の切り欠き部に嵌合させた後に、微調整を行うだけでよいので、調芯の回数、煩雑さ、調芯に要する時間がさらに大幅に減少し、製造性がさらに高いものとなる。
【0052】
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3に係る半導体光増幅器モジュールについて説明する。図9は、本実施の形態3に係る半導体光増幅器モジュールの模式的な構成図である。図9に示すように、この半導体光増幅器モジュール300は、入力光ファイバ102を載置する入力側受動導波路部310と、出力光ファイバ103を載置する出力側受動導波路部320と、入力側受動導波路部310と出力側受動導波路部320との間に介挿され接続された半導体装置部330とを備えている。なお、入力光ファイバ102、出力光ファイバ103は、入力側受動導波路部310、出力側受動導波路部320、半導体装置部330を収容する不図示の筐体に挿入、支持されている。
【0053】
入力側受動導波路部310は、実施の形態1の入力側受動導波路部110と同様に、同一基板上に形成されたPLCから構成されており、入力光ファイバ102を載置するV溝311と、入力光ファイバ102と光学的に接続した第1受動導波路312と、第1受動導波路312から分岐した第2受動導波路313とを備えている。
【0054】
一方、出力側受動導波路部320は、実施の形態1の出力側受動導波路部120と同様に、同一基板上に形成されたPLCから構成されており、出力光ファイバ103を載置するV溝321と、出力光ファイバ103と光学的に接続した受動導波路322とを備えている。ただし、受動導波路322から分岐する受動導波路は形成されていない。
【0055】
半導体装置部330は、実施の形態1の半導体装置部130と同様に、同一基板上に集積された、入力側受動導波路部310の第1受動導波路312と出力側受動導波路部320の受動導波路322とにそれぞれ光学的に接続したスポットサイズ変換器332、333と、スポットサイズ変換器332、333に光学的に接続した半導体光増幅器331と、第2受動導波路313に光学的に接続した第1半導体光検出器334と、第2半導体光検出器335とを備えている。
【0056】
なお、第1受動導波路312、第2受動導波路313、受動導波路322、および半導体光増幅器331、スポットサイズ変換器332、333、第1半導体光検出器334、第2半導体光検出器335の材質、断面構造、およびその幅や長さは、実施の形態1の対応する構成要素と同様とできる。
【0057】
ここで、半導体光増幅器331は、その一部に曲げ導波路部331aを有している。そして、第2半導体光検出器335は、曲げ導波路部331aから漏洩する漏れ光SL301を受光してモニタするように、曲げ導波路部331aの近傍に配置されている。この半導体光増幅器モジュール300においては、この漏れ光SL301によって、半導体光増幅器331が出力する増幅信号光の強度をモニタするため、出力側受動導波路部320において受動導波路322から分岐する受動導波路が不要となるので、出力側受動導波路部320の導波路構造を簡易なものとできる。
【0058】
また、この半導体光増幅器モジュール300も、実施の形態1に係る半導体光増幅器モジュール100と同様に、従来の半導体光増幅器モジュールよりも使用する部品点数が減少して小型化するとともに、調芯の回数、煩雑さ、調芯に要する時間が大幅に減少し、製造性が高いものとなる。
【0059】
なお、半導体光増幅器331の曲げ導波路部331aの曲げの角度は、半導体光増幅器331の直線部分に対して6〜8度程度、好ましくは7度であれば、曲げ損失が十分に小さく、かつ漏れ光の強度が光強度のモニタに十分な程度となり好ましい。なお、曲げの角度は、半導体光増幅器331の活性層(コア層)と埋め込み半導体層との屈折率差に応じて適宜変更してもよい。
【0060】
(実施の形態4)
つぎに、本発明の実施の形態4に係る半導体光増幅器モジュールについて説明する。図10は、本実施の形態4に係る半導体光増幅器モジュールの模式的な構成図である。図10に示すように、この半導体光増幅器モジュール400は、入力光ファイバ102および出力光ファイバ103を載置した入出力受動導波路部440と、入出力受動導波路部440に接続された半導体装置部430とを備えている。なお、入力光ファイバ102、出力光ファイバ103は、入出力受動導波路部440、半導体装置部430を収容する不図示の筐体に挿入、支持されている。
【0061】
入出力受動導波路部440は、実施の形態1の入力側受動導波路部110と同様に、同一基板上に形成されたPLCから構成されており、入力光ファイバ102を載置するV溝441と、出力光ファイバ103を載置するV溝442と、入力光ファイバ102と光学的に接続した第1受動導波路443と、第1受動導波路443から分岐した第2受動導波路444と、出力光ファイバ103と光学的に接続した受動導波路445とを備えている。
【0062】
半導体装置部430は、実施の形態1の半導体装置部130と同様に、同一基板上に集積された、入出力受動導波路部440の第1受動導波路443と受動導波路445とにそれぞれ光学的に接続したスポットサイズ変換器432、433と、スポットサイズ変換器432に光学的に接続した半導体光増幅器431と、半導体光増幅器431の出力側に設けられ、半導体光増幅器431とスポットサイズ変換器433とに光学的に接続した半導体受動導波路436と、受動導波路443に光学的に接続した第1半導体光検出器434と、第2半導体光検出器435とを備えている。
【0063】
なお、第1受動導波路443、第2受動導波路444、受動導波路445、および半導体光増幅器431、スポットサイズ変換器432、433、第1半導体光検出器434、第2半導体光検出器435の材質、断面構造、およびその幅や長さは、実施の形態1の対応する構成要素と同様とできる。
【0064】
また、半導体受動導波路436は、受動曲げ導波路部436aを有しており、半導体光増幅器431と合わせて全体的にU字型の形状を有している。また、半導体受動導波路436は、ハイメサ型の導波路構造を有している。
【0065】
図11は、図10に示す半導体光増幅器モジュール400のD−D線要部断面図である。図11に示すように、半導体受動導波路436は、裏面にn側電極430bを形成したn型のInPからなる基板430a上に、バッファ層としての役割も果たしているn型のInPからなる下部クラッド層430cと、バンドギャップ波長が1.15μmのInGaAsP材料からなるコア層430dと、ノンドープの上部クラッド層430e、430fと、p型のInPからなる上部クラッド層430hとが積層した断面構造を有しており、かつ下部クラッド層430cから上部クラッド層430hまでが曲げに強いハイメサ構造となっている。なお、下部クラッド層430cの厚さはたとえば0.5μmであり、コア層430dの幅(メサ幅)はたとえば2.0μm、厚さはたとえば0.3μmであり、上部クラッド層430e〜130hの総厚さはたとえば2.5μmである。また、受動曲げ導波路部436aの曲げ半径は、たとえば1.0cm以下であって導波する信号光の曲げ損失が問題にならない程度の大きさであることが好ましい。
【0066】
このように、この半導体光増幅器モジュール400においては、半導体光増幅器431の出力側に、受動曲げ導波路部436aを有する半導体受動導波路436を設けている。そして、半導体光検出器435は、受動曲げ導波路部436aから漏洩する漏れ光SL401を受光してモニタするように、受動曲げ導波路部436aの近傍に配置されている。この半導体光増幅器モジュール400においては、この漏れ光SL401によって、半導体光増幅器431が出力する増幅信号光の強度をモニタするため、入出力受動導波路部440において受動導波路445から分岐する受動導波路が不要となるので、入出力受動導波路部440の導波路構造を簡易なものとできる。
【0067】
また、この半導体光増幅器モジュール400は、入力光ファイバ102および出力光ファイバ103と光学的に接続する第1受動導波路443、第2受動導波路444、受動導波路445を一つの入出力受動導波路部440に集積させるとともに、半導体装置部430において半導体受動導波路436によって光経路を折り返すように曲げている。その結果、半導体光増幅器モジュール400は、従来の半導体光増幅器モジュールよりも使用する部品点数が減少する効果と合わせて、きわめて小型のものとなる。
【0068】
また、この半導体光増幅器モジュール400は、光経路の調芯についても、入出力受動導波路部440と半導体装置部430との位置を調整するだけでよいので、調芯の回数、煩雑さ、調芯に要する時間がさらに大幅に減少し、製造性がさらに高いものとなる。
【0069】
なお、この実施の形態4に係る半導体光増幅器モジュール400では、半導体装置部430に受動曲げ導波路部436aを有する半導体受動導波路436を設けている。しかしながら、受動曲げ導波路部を有する受動導波路は、半導体光増幅器の出力側に設けられていれば、その位置は半導体装置部に限定されず、たとえば出力側の受動導波路部に設けてもよい。
【0070】
(製造方法)
つぎに、本発明に係る半導体光増幅器モジュールの製造方法を、図1に示した実施の形態1に係る半導体光増幅器モジュール100を製造する場合を例にして説明する。はじめに、入力側受動導波路部110の製造方法の一例について図2を用いて説明する。はじめに、光ファイバ製造技術の応用である火炎直接堆積(FHD:Flame Hydrolysis Deposition)法により、PLC作製用の基板110a(例えばシリコン基板)上に、下部クラッド層110bおよびコア層(受動導波路112、113)となるガラス粒子を堆積し、その後加熱してガラス微粒子を溶融透明化する。その後、半導体集積回路製造技術であるフォトリソグラフィと反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)で、受動導波路112、113に対応する光導波路パターンを形成し、再びFHD法により上部クラッド層110cを形成する。その後、V溝111を形成し、入力側受動導波路部110を製造する。なお、出力側受動導波路部120も同様に製造できる。また、入力側受動導波路部110と出力側受動導波路部120とを同一の基板上に形成し、入力側受動導波路部110と出力側受動導波路部120との間に半導体装置部130を嵌合するスペースを設けてもよい。また、図10に記載の入出力受動導波路部440を製造する場合も、上記と同様の方法によって各受動導波路を同一基板上に形成することができる。
【0071】
つぎに、半導体装置部130の製造方法について説明する。図12〜図14は、図1に示す半導体光増幅器モジュール100の半導体装置部130の製造方法の一例の説明図である。
【0072】
まず、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)結晶成長装置を用い、成長温度600度において以下のような結晶成長を行なう。すなわち、図12(a)に示すように、n型のInPからなる基板130a上に、n型のInPからなる下部クラッド層130c、活性層130d、p型のInPからなる上部クラッド層130e、130fを順次結晶成長する。
【0073】
図12(b)、(c)を用いてつぎの工程について説明する。図12(b)は、半導体装置部130において、半導体光増幅器131、スポットサイズ変換器132、133のそれぞれを形成すべき領域R1、R2、R3を横断する断面を示している。また、図12(c)は、半導体装置部130において、第1半導体光検出器134、135を形成すべき領域R4、R5、および第1半導体光検出器134、135の間の領域R6を横断する断面を示している。
【0074】
まず、SiNからなるマスクM1、M2、M3で能動素子である半導体光増幅器131、および第1半導体光検出器134、135を形成すべき領域R1、R4、R5のみを覆い、それ以外の領域R2、R3、R6を含む受動領域において、ICP(Inductive Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)−RIE装置により、上部クラッド層130e、130fと、活性層130dと、下部クラッド層130cの0.3μmの深さまでをエッチング除去する。そして、エッチング除去した領域に、バットジョイント成長により、ノンドープのInPからなる下部クラッド層130cの部分と、バンドギャップ波長が1.15μmのInGaAsP材料からなるコア層130mと、ノンドープのInPからなる上部クラッド層130e、130fとを形成する。エッチング後にはマスクM1、M2、M3をBHF(バッファードフッ酸)により除去する。
【0075】
つづいて、図13は、図7に対応する断面を示している。まず、図13(a)は、図12の工程を行った後の状態を示している。つぎに、図13(b)、(c)に示すように、各領域R1〜R5において上部クラッド層130f上の全面にSiN膜からなるマスクM4を形成し、このマスクM4を、図6に示す半導体光増幅器131、スポットサイズ変換器132、133、第1半導体光検出器134、135のメサ構造を形成するための形状にエッチングする。そして、図13(d)に示すように、マスクM4を形成した以外の領域の上部クラッド層130e、130f、活性層130d(またはコア層130m)、下部クラッド層130cを、塩素系またはメタン水素系のガスを用いたドライエッチングによって除去する。つづいて、図13(e)に示すように、ウェットエッチングを用いて、さらに上部クラッド層130fから基板130aの一部に到る深さまでをエッチングし、図7に示す導波路構造のメサ構造を形成する。この工程において各領域R1〜R5におけるメサ形状が形成される。
【0076】
つぎに、図13(f)に示すように、下部電流阻止半導体層130gaと上部電流阻止半導体層130gbとを順次形成して埋め込み半導体層130gを形成し、各領域R1〜R5におけるメサ構造をはじめとした全領域を埋め込む。その後、BHFにより、マスクM4を除去する。つぎに、図13(g)に示すように、全領域において上部クラッド層130h、コンタクト層130iを形成し、さらに必要に応じて保護層であるキャップ層Capを形成する。キャップ層Capはその後、図13(h)に示すように除去される。
【0077】
つぎに、半導体光増幅器131の構造を形成する工程を説明する。なお、半導体光検出器134、135も同様の工程で形成することができる。まず、図14(a)に示すように、図13(h)で形成した構造上にフォトリソグラフィにより、p側電極130jに対応する部分をパターニングしたレジストr1を形成し、その上にAuZn膜E1を蒸着する。つぎに、図14(b)に示すように、レジストr1を除去し、リフトオフしてp側電極130jを形成する。その後、図14(c)に示すように、SiN膜からなる誘電体保護膜130kを成膜する。なお、誘電体保護膜130kの成膜は全領域に対して行なう。つぎに、図14(d)に示すように、誘電体保護膜130k上に、フォトリソグラフィにより、電極パッド136をp側電極130jに接触させるための部分をパターニングしたレジストr2を形成する。
【0078】
つぎに、図14(e)に示すように、CFガスを用いたRIEにより、レジストR2をパターニングした部分の誘電体保護膜130kをエッチングし、その後レジストr2を除去する。さらに、図14(f)に示すように、誘電体保護膜130k上に、フォトリソグラフィにより、電極パッド136に対応する部分をパターニングしたレジストr3を形成し、その上にTi/Pt膜E2を蒸着する。その後、図14(g)に示すように、レジストr3を除去し、リフトオフして電極パッド136を形成する。
【0079】
最後に、基板130aの裏面全面を研磨し、研磨した裏面にAuGeNi/Au膜を蒸着してn側電極130bを形成した後、オーミックコンタクトをとるために430℃で焼結(シンタ)する。その後、半導体装置部130の形状にへき開し、端面の反射を抑えるために、スポットサイズ変換器132、133および半導体光検出器134、135が形成されている両端面にAR(Anti-Reflection)コートを施して半導体装置部130が完成する。
【0080】
つづいて、半導体装置部130の両端に、別途作製しておいた入力側受動導波路部110と出力側受動導波路部120とを隣接させて、アクティブアライメント方式またパッシブアライメント方式によって調芯を行う。その後に半導体装置部130と入力側受動導波路部110と出力側受動導波路部120とを接合紫外線硬化型樹脂等で接合固定し、ハイブリッド集積する。さらに、接合した半導体装置部130、入力側受動導波路部110および出力側受動導波路部120を筐体101に収容し、必要な電気的配線を行なうとともに、V溝111、121にそれぞれ入力光ファイバ102、出力光ファイバ103を載置、固定し、筐体101を封止して半導体光増幅器モジュール100が完成する。
【0081】
なお、入力側受動導波路部110と出力側受動導波路部120とを同一の基板上に形成した場合は、入力側受動導波路部110と出力側受動導波路部120との間に半導体装置部130を嵌合し、アクティブアライメント方式またパッシブアライメント方式によって調芯を行い、その後に半導体装置部130を紫外線硬化型樹脂等で接合固定する。
【0082】
以上の調芯工程においては、入力側受動導波路部110と半導体装置部130との位置、および出力側受動導波路部120と半導体装置部130との位置を調整するだけでよいので、調芯の回数、煩雑さ、調芯に要する時間が大幅に減少し、製造性がきわめて高いものとなる。
【0083】
なお、パッシブアライメント方式による調芯は、たとえば非特許文献1に記載されているものである。パッシブアライメント方式を用いる場合は、入力側受動導波路部110、出力側受動導波路部120、半導体装置部130にアライメントマークを形成しておき、このアライメントマークを用いて調芯を行なうため、より簡易な調芯が実現できる。
【0084】
また、アクティブアライメント方式による調芯は、実際に入力光ファイバ102からテスト光を入力させ、半導体光増幅器131を動作させてテスト光を増幅し、半導体光増幅器131から出力される、増幅されたテスト光の光強度を、出力光ファイバ103の出力端側でモニタしながら位置調整をし、調芯を行なうものである。アクティブアライメント方式を用いる場合は、短時間で容易な調芯を実現しつつ、より接続損失が低い精密な調芯が可能である。
【0085】
なお、実施の形態4に係る半導体光増幅器モジュール400における半導体受動導波路436のようなハイメサ型の導波路を形成する場合は、上記の製造方法において、電極構造の形成前または形成後に、SiNからなるマスクを用い、ICP−RIE装置によるドライエッチングによって、ハイメサ構造を形成すればよい。
【0086】
また、上記実施の形態に係る半導体光増幅器モジュールにおいて、受動導波路部における分岐導波路の形状または構造は、上記したものに限られず、様々な形状または構造のものを採用できる。また、分岐導波路はマッハツェンダ型導波路や、多モード干渉型(Multi Mode Interference:MMI)導波路により実現してもよい。
【0087】
また、上記実施の形態に係る半導体光増幅器モジュールにおいて、受動導波路部の材質、構造は特に限定されず、たとえばSi細線から構成されるものでもよい。図15は、Si細線からなる受動導波路部の模式的な断面図である。この受動導波路部510は、Siからなる基板510a上に、リッジ型の導波路であるSi細線512が形成されたものである。Si細線512の断面のサイズはたとえば0.5μm×0.5μmまたはそれ以下である。また、Si細線512は、その周囲を囲みクラッドとして機能する空気との屈折率差が大きいため、曲げ半径を数〜10μmとしても曲げ損失は問題にならない程度に小さい。したがって、Si細線512は、曲げ損失の影響なく小さい面積に集積することができるので、半導体光増幅器モジュールのさらなる小型化に適するものとなる。
【0088】
また、上記実施の形態に係る半導体光増幅器モジュールにおいて、受動導波路部は、UVエポキシ樹脂、フッ素化ポリイミド等の光学ポリマーからなるポリマー導波路から構成されるものでもよい。このポリマー導波路の構造は、たとえば図2に示す埋め込みメサ型や、図15に示すリッジ型等、特に限定されない。
【0089】
また、上記実施の形態に係る半導体光増幅器モジュールは、波長1.55μm用にその化合物半導体や電極等の材料、サイズ等が設定されている。しかしながら、各材料やサイズ等は、使用する信号光の波長等に応じて適宜設定でき、特に限定はされない。
【0090】
また、上記各実施形態の各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
100〜400 半導体光増幅器モジュール
101 筐体
102 入力光ファイバ
102a コア部
102b クラッド部
103 出力光ファイバ
110〜310 入力側受動導波路部
110a 基板
110b、130c、430c 下部クラッド層
110c、130e、130f、130h、430e、430f、430h 上部クラッド層
111〜311、121〜321、441、442 V溝
112〜312、122、222、443 第1受動導波路
113〜313、123、223、444 第2受動導波路
322、445 受動導波路
120〜320 出力側受動導波路部
130〜430 半導体装置部
130a、430a、510a 基板
130b、430b n側電極
130d 活性層
130g 埋め込み半導体層
130ga 下部電流阻止半導体層
130gb 上部電流阻止半導体層
130i コンタクト層
130j p側電極
130k 誘電体保護膜
130m コア層
131、231、331、431 半導体光増幅器
132〜432、133、433 スポットサイズ変換器
134〜434、135、235 第1半導体光検出器
335、435 第2半導体光検出器
136〜138 電極パッド
331a 曲げ導波路部
430d コア層
436 半導体受動導波路
436a 受動曲げ導波路部
440 入出力受動導波路部
510 受動導波路部
512 Si細線
Cap キャップ層
E1 AuZn膜
E2 Ti/Pt膜
L1〜L4 長さ
M1〜M4 マスク
r1〜r3 レジスト
R1〜R6 各領域
SL101 信号光
SL102、SL104 分岐光
SL103 増幅信号光
SL301、SL401 漏れ光
W1〜W3 メサ幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体光増幅器と、前記半導体光増幅器への入力光または該半導体光増幅器からの出力光の一部をモニタするための第1半導体光検出器とを同一基板上に集積した半導体装置部と、
前記半導体装置部に接続し、前記半導体光増幅器に対して前記入力光の入力または前記出力光の出力を行なう第1受動導波路と、前記第1受動導波路から分岐し前記入力光または前記出力光の一部を前記第1半導体光検出器に入力させる第2受動導波路とを同一基板上に形成した受動導波路部と、
を備えることを特徴とする半導体光増幅器モジュール。
【請求項2】
前記受動導波路部はガラスからなる平面光回路から構成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体光増幅器モジュール。
【請求項3】
前記受動導波路部はSi細線から構成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体光増幅器モジュール。
【請求項4】
前記受動導波路部はポリマー導波路から構成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体光増幅器モジュール。
【請求項5】
前記第2受動導波路の一部は折り返すように曲げられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体光増幅器モジュール。
【請求項6】
前記第2受動導波路の一部の曲げ半径は1cm以下であることを特徴とする請求項5に記載の半導体光増幅器モジュール。
【請求項7】
前記半導体光増幅器は曲げ導波路部を有しており、前記半導体装置部は前記曲げ導波路部からの漏れ光をモニタするための第2半導体光検出器を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の半導体光増幅器モジュール。
【請求項8】
前記半導体装置部または前記受動導波路部は前記半導体光増幅器の出力側に設けられた受動曲げ導波路部を備え、前記半導体装置部は前記受動曲げ導波路部からの漏れ光をモニタするための第2半導体光検出器を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の半導体光増幅器モジュール。
【請求項9】
前記半導体装置部と前記受動導波路部とは、前記半導体光増幅器からの出力光をモニタしながらアクティブアライメント方式によって位置調整し、接続したものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の半導体光増幅器モジュール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−165712(P2011−165712A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23370(P2010−23370)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】