説明

半導体基板の製造方法

【課題】ビア配孔内に形成したカーボンナノチューブを埋め込む埋め込み膜が基板に均一に形成されないため基板の平坦化処理工程において層間絶縁膜が不均一に研磨されて、下層配線と上部電極がビア配線以外で電気的につながってしまう場合が発生する。
【解決手段】半導体基板における層間絶縁膜内のビアホール内にカーボンナノチューブを形成した後、基板全体をフッ化処理することにより、カーボンナノチューブが存在するビアホールにのみ埋め込み膜が形成され、その後に基板全体の平坦化処理のために基板を研磨する工程において、層間絶縁膜が局所的に研磨されることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブをビア配線に用いる半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの微細化に伴い配線も当然ながら微細化が進んでいる。現在配線材料として使用されている銅はその耐電流密度あるいは微細構造形成において限界に近いところまで来ており、配線材料に新しい材料を採用することが期待されている。カーボンナノチューブ(CNT)は高電流密度容量を有し、微細領域への成長が容易であることから次世代の配線材料として注目されている材料の一つである(例えば、(特許文献1))。
【0003】
カーボンナノチューブビア配線の製造方法は幾つかあるがここでビア内のみにCNTを成長させてCNTビア配線を製造する従来例を図4及び図5に即して説明する。
【0004】
図4は従来例に係るCNTビア配線の製造工程を示している。同図に示すように、トランジスタやキャパシタ等の半導体素子が形成された半導体基板1に下層配線層(第1の配線層)2が形成され、下層配線層2から上部電極9へと接続するビア孔11を有する層間絶縁膜3が形成された構造となっている。ビア孔11を開口する工程までは従来のLSI配線工程と基本的には差異はない。層間絶縁膜3中にビア孔11が形成された状態でメタルバリア層4、例えば窒化タンタル(TaN)層を形成する。次にカーボンナノチューブの製造において重要な役割を行う触媒層5,6、例えば窒化チタン(TiN)、コバルト(Co)を順次形成する。カーボンナノチューブの製造において触媒層は6のみでも可能である(図4−1(a))。
【0005】
次にカーボンナノチューブをビア孔のみに成長させるためビア孔以外の領域(ここではフィールド領域と呼ぶ)の触媒層を除去する(図4−1(b))。フィールド領域の触媒層を除去する手段としては斜めアルゴン(Ar)イオンミリング法等が用いられる。次にカーボンナノチューブをプラズマCVD法により製造する。この場合、図4−1(c)に示すようにフィールド領域の触媒層が削除されているためにビア孔内にしかカーボンナノチューブ7は成長しない。カーボンナノチューブ7の成長後にMWCNTを含めて基板表面を平坦化することによりマルチウォールカーボンナノチューブ(MW(Multiwalled)CNT)の内層にも電気伝導に寄与させることができる。MWCNTに直接上部電極を形成した場合は、図6(a)に示すように、一番外側のCNT層しか伝導に寄与できない(閉端状態)ため、ビア配線としての機能を十分に発揮できない。そこで、基板全体に化学機械研磨(CMP)を行い、基板全体の平坦化と同時にMWCNTの開端処理を行う。
【0006】
すなわち、CMP処理により、MWCNTの先端部もカットされ、この先端部がカットされたMWCNTに上部電極を形成することにより、図6(b)に示すように、内側のCNT層も上下電極を電気的につなぐ伝導に寄与することとなる(開端状態)。従来例においては、CMPを行う前に図4−1(d)に示すビア孔内に埋め込み膜8を形成しMWCNTを含むビア孔11を固定する。この埋め込み膜としては例えばSOG(Spin On Glass 塗布膜)などのシリコン酸化(SiO2系)膜などが用いられている。CMPを行った後(図4−2(e))に、図4−2(f)に示す様に上部電極9を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4364253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上が従来例に係るCNTビア配線の製造工程であるが、このような製造工程に従ってビア配線を製造する場合、図4−1(d)に示した埋め込み膜8が基板上に均一に塗布されず図5(a)に示すように、ビア孔11の周辺に埋め込み膜8が塗布されない領域が発生しやすい。このような状態でCMPを行うと埋め込み膜8が塗布されていない領域が、埋め込み膜8が塗布されている領域よりも速く研磨されるため、図5(b)に示すように、ビア孔11の周囲の下層配線層2にまで研磨が進むような好ましくない場合が生じ得る。図5(b)の状態で上部電極9を形成すると図5(c)に示すよう下層配線層2と上部電極9が短絡してしまい配線の機能が損なわれる。
【0009】
以上のように、SOGなどの埋め込み膜はカーボンナノチューブを含んだビア孔内には埋め込まれるが、フィールド領域には均一に塗布されず、図5(a)に示すように塗布されない領域が発生する。この現象は、カーボンナノチューブを製造する際にフィールド領域もプラズマに晒されることにより、フィールド領域の表面改質或いは表面形状の変化が起こったためと考えられる。この状態でCMP工程を行うと図5(b)に示す様に研磨が不均一となり、層間絶縁膜3が局所的に研磨され下層配線2に達する場合も生じる。この状態で上部電極を形成すると下層配線2と短絡してしまい、CNTビア配線としての機能を発揮しなくなるため、結果として半導体基板の歩留まりが低下するという課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、埋め込み膜をカーボンナノチューブが成長しているビア孔のみに形成することにより基板平坦化処理工程において、ビア孔周辺の層間絶縁膜の局所的な研磨を防ぎ、カーボンナノチューブによる良好なビア配線機能を有する半導体基板を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1−1】図1−1は、実施例1に係る工程であって、ビア孔が形成された半導体基板のビア孔内にのみカーボンナノチューブを成長させ、基板全体をフッ化処理するまでの工程を示す図である。
【図1−2】図1−2は、実施例1に係る工程であって、ビア孔内に成長したカーボンナノチューブに埋め込み膜を形成後、基板平坦化処理、上部電極形成までの工程を示す図である。
【図2−1】図2−1は、実施例2に係る工程であって、下層配線を有する基板全体に触媒層等を形成し、ビア孔形成部位を露光するまでの工程を示す図である。
【図2−2】図2−2は、実施例2に係る工程であって、ビア孔形成のためのリソグラフ工程と触媒層等を底面に有するビア孔が形成されるまでの工程を示す図である。
【図2−3】図2−3は、実施例2に係る工程であって、ビア孔内にカーボンナノチューブが形成された後、フッ化処理、埋め込み膜形成、基板平坦化処理および上部電極形成までの工程を示す図である。
【図3】図3は、実施例2に係る工程であって、基板全体のフッ化処理の工程を示す図である。
【図4−1】図4−1は、従来例に係る工程であって、ビア孔内にカーボンナノチューブを形成後、埋め込み膜を形成するまでの工程を示す図である。
【図4−2】図4−2は、従来例に係る工程であって、埋め込み膜形成後の基板の平坦化処理と上部電極形成までの工程を示す図である。
【図5】図5は、従来例に係る工程であって、埋め込み膜が均一に塗布されない場合の、その後の基板の平坦化処理及び上部電極形成までの工程を示す図である。
【図6】図6は、マルチウォールカーボンナノチューブを閉端状態と開端状態でビア配線に使用した場合の電気伝導を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態の概略を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図は発明の説明とその理解を促すため模式図である。その形状や寸法比などは実際と異なる場合がある。これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0013】
(実施例1)
以下、本発明の実施例について図1−1から図3を用いて説明する。
【0014】
図1−1及び図1−2は本発明の実施例1に係る半導体基板の各製造工程を示す図である。
【0015】
図1−1(a)は、トランジスタやキャパシタ等の半導体素子が形成された半導体基板1に下層配線層2が形成され、下層配線層2から上部電極9へと接続するビア孔11を有する層間絶縁膜3と、この層間絶縁膜3上にメタルバリア層4、触媒層5、触媒層6が形成された構造を示す。ビア孔11を開口する工程までは従来のLSI配線工程を用いている。半導体基板1に下層配線層2を形成した後に層間絶縁膜3を形成する。層間絶縁膜3には、例えば炭素を含むシリコン酸化膜(SiOC膜)を用いる。このSiOC膜は誘電率を下げる目的でポア(微小空孔)を含んだ膜であっても良い。
【0016】
層間絶縁膜3としてSiOを使用する場合にはテトラエトキシン(TEOS)ガスなどを用いてプラズマCVD法により作製しても良い。次に層間絶縁膜3であるSiOC膜上にCap層(図示せず)と呼ばれる保護膜を形成する。これは、例えばエッチング工程或いはCMP行程などの後行程でのダメージを抑制するためのものである。Cap層には、例えば、シリコン酸化膜(SiO)などを用いる。層間絶縁膜3にポアを含まないSiOC膜を用いた場合には特にCap層を形成しなくてもよい。
【0017】
次に層間絶縁膜3にビア孔11を形成する。形成方法は例えばプラズマ法を用いた反応性イオンエッチング(REACTIVE ION ETCHING)法と呼ばれるドライエッチング法、或いは薬液を用いたウエットエッチング法などによりビア孔の開口を行う。層間絶縁膜3中にビア孔11が形成された後に、下層配線2とコンタクトさせるために導電材料として、例えばタングステン(W)や銅(Cu)やアルミニウム(Al)の単体金属からなるコンタクト層(図示せず)が挿入されている。
【0018】
また導電材料であるコンタクト層の金属の拡散を防止する目的で、本実施例では、バリアメタル層4が挿入されている。本実施例では、メタルバリア層4であるTaN層をスパッタ法により形成している。バリアメタル層4に用いる材料には、他に例えば、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、あるいはこれらの窒化物を用いることができる。
【0019】
次にビア孔内にビア配線材料としてカーボンナノチューブを成長させる。CNT成長のために重要な役割を担う触媒層5及び6を順次形成する。触媒層5及び6としては、それぞれ窒化チタン(TiN)、コバルト(Co)が挙げられる。カーボンナノチューブを成長させる場合、触媒層としては触媒層6のみでも可能であるが、TiNのような助触媒を触媒層5としてCoからなる触媒層6の下に入れることにより、CNTの成長がより促進される。触媒層は触媒層6/触媒層5からなる積層構造に限ったものではなく、例えばCo/Ti、Co/Ta、Ni/TiN、Ni/Ta構造であっても良い。或いはCo層、Ni層などの単層であっても良い。製法はスパッタ法に限らず、触媒層機能を損なわない製法であれば他の製法、例えば真空蒸着法であっても良い。
【0020】
CNTをビア孔内の底面へ成長させる前には、触媒層6は膜厚が薄いため、形成した時点で島状構造になっているが、触媒層6が連続膜となっている場合は、特に触媒層6をプラズマに曝す、または触媒層6の温度を短時間上昇させることにより、触媒層6を島状構造にすることができる。これによりチューブ状のCNTがビア孔内に基板垂直方向に成長する。
【0021】
次に、図1−1(b)に示すように、カーボンナノチューブをビア孔のみに製造するためビア孔以外の領域(ここではフィールド領域と呼ぶ)の触媒層5、6を除去する。そのため手段として、本実施例ではArイオンミリング法を用いる。Arイオンを基板1に対して斜め入射させ、また適宜基板1を回転させることによってフィールド領域とビア孔11の、基板1に対して垂直な側面にイオンが照射されるよう角度を設定する。図1−1(b)は、ビア孔以外のフィールド領域から触媒層を除去した後の状態を示す図である。フィールド領域の触媒層の除去は上記方法に限らず、ビア孔の底面のみに触媒層が残る方法であればその方法の如何を問わない。
【0022】
次に、図1−1(c)に示すように、CNT7をプラズマCVD法によりビア孔11内に成長させる。ビア孔11内の底面には、予め島状の触媒層6が付与されており、各島状の触媒上にCNTが成長する。その面密度は、例えば、1012本/cm程度である。CNT7の形成にはプラズマCVD法を用いる。原料ガスにはメタンガス(CH4)、希釈ガスとしては水素ガス(H2)を用いる。原料ガス、希釈ガスは上記のガスに限られず、原料ガスにエチレンガス(C24)、アセチレンガス(C22)等の炭化水素ガスを用いても良い。希釈ガスにはヘリウムガス(He)、窒素ガス(N2)、アルゴンガス(Ar)などの不活性ガスを使用してもよい。或るいは原料ガスのみでも差支えない。基板温度は400℃〜600℃の範囲、反応圧力は5Torrとしたが、この範囲を超えてもカーボンナノチューブを成長させることは可能である。
【0023】
また、図1−1(c)に示すように、フィールド領域およびビア孔の側壁の触媒層が除かれているためにビア孔底面からしかCNT7は成長しない。しかも、ビア孔底面の触媒層6が島状になっているため、これに対応して、多数のチューブ状のCNT7がビア孔底面からその底面に垂直方向に成長する。各CNT7は基板1内の下層配線2と上部配線9とを電気的に接続し、CNT7の集合体である「CNTの束」がビア配線層としての機能を担う。図1−1(c)は、CNT7のビア孔11内の成長が終了した状態を模式的に示す図である。一例として、ビア孔11の深さを120nm程度とした場合、CNT7が基板表面から50nmほど突出するようにCNT7の成長時間を調整する。
【0024】
次に図1−1(d)に示すように、CNT7の束をビア孔内に成長させた後に、基板表面全体のフッ化処理を行う。フッ化処理とは、フッ化系ガス、例えば四フッ化炭素ガス(CF4)ガスによる基板表面のプラズマ処理である。ここで、プラズマ用のガスは上記ガスに限らず、三フッ化メタンガス(CHF3)、フロン116ガス(C26)などの炭素―フッ素化合物、或いは三フッ化窒素ガス(NF3)などの窒素―フッ素化合物でも良い。また、希釈ガス、例えばアルゴンガス(Ar)、窒素ガス(N)等を含んだ混合ガスを用いても良い。
【0025】
フッ化処理は、層間絶縁膜3上のフィールド領域に撥水性または撥油性を与える。このフッ化処理は、後の工程である「埋め込み膜を形成するためのSOG(SPIN On Glass)塗布」工程において、フィールド領域にSOGが塗布形成されることを阻止するための前処理である。図1−1(d)に示すように、ビア孔11内から突出したCNT7の先端部はプラズマに曝されるが、CNT7が密に成長しているため、CNT7のビア孔11内にある部分はプラズマの影響を受けないか、またはプラズマの影響は少ないものと考えられる。図1−1(d)は、層間絶縁膜3上のフィールド領域およびCNT7のビア孔11からの突出部がプラズマに曝されている様子を示す模式図である。
【0026】
次の工程は、図1―2(e)に示すビア孔11内に埋め込み膜8を形成しCNT7を含むビア孔11を固定する工程である。この埋め込み膜8としては、前述したように、例えば液状のSOG(SPIN On Glass)などのSiO2系膜を用いる。SOGの塗布方法は基板表面にSOGを滴下し、スピンコータを用いてスピンコーティング法により塗布を行った後に加熱により硬化させる。また、紫外線照射により硬化するSOGを基板全体に塗布した後、紫外線照射により埋め込み膜8を形成してもよい。
【0027】
従来例では、図5に示すように、SOG埋め込み膜8はフィールド領域において局所的に非塗布領域が現れる可能性があったが、本実施例ではフィールド領域にフッ化処理を施しているために、フィールド領域全体に埋め込み膜8が形成されず、CNT7が成長したビア孔11内のみにSOGによる埋め込み膜8が埋め込まれている。CNT7の突出部はプラズマ処理されるためある程度撥水性または撥油性が付与されるが、CNT7のビア孔11内にある下部は突出部に比べればプラズマの影響が殆ど無い。このため、比重の大きいSOGはCNT7のビア孔11内にあるCNT7の束のすき間へ浸透していく。
【0028】
このようにして、各CNT7相互間のすき間、すなわち空間はSOGにより埋められ、SOGが硬化することにより、CNT7はSiOからなる硬化した埋め込み膜8により固定される。図1−2(e)は、ビア孔11内のCNT7が埋め込み膜8により固定された様子を示す模式図である。
【0029】
前述のようにして埋め込み膜8を形成した後、ビア孔から突出したCNT7の上部を研磨により除くため基板の平坦化処理としてCMP(化学機械研磨:CHEMICAL MECHANICAL POLISHING)処理を行う。図1−2(f)は、CMP処理後の様子を示す模式図である。図1−2(f)に示すように、フィールド部はCMPにより均一に研磨され、また同時にビア孔11より突出していたCNT7もSiOからなる埋め込み膜8とともに研磨される。これにより基板表面全体は平坦化され、CNT7は、図6(b)に示すような開端状態となる。
【0030】
もしCNT7をas−grown状態でビア配線として使用すると、例えば図6(a)のように、本実施例のCNT7は複数層のグラフェンシートからなるMW(Multiwalled)カーボンナノチューブであり、それら複数のシートの上部終端はいずれも閉じた閉端状態となっている。このような閉端状態にあるカーボンナノチューブの終端に上部電極を形成した場合、下層配線2と上部電極9を電気的に接続するMWカーボンナノチューブの伝導層は最外周のグラフェンシートのみであるため、伝導層を多数有するMWカーボンナノチューブ本来の高い電流容量を得ることが困難となる。
【0031】
一方、図1−2(f)に示す工程のように、MWCNT7を埋め込み膜で固めた上で、研磨によりMWCNT7の上部終端をカットする。これにより、上部電極との電気的接続を、最外周のグラフェンシートのみならず、内部のグラフェンシートも担うようになり、MWカーボンナノチューブ本来の高い電流容量を得ることができるようになる。以上のように、上部をカットしたCNT7は「開端状態」となり高い電流容量を獲得すると同時に層間絶縁膜3のフィールド領域と合わせた平坦性を有することとなる。
【0032】
最後に、図1−2(g)に示す様に、CMPにより平坦化したビア配線上に上部電極9を形成する。電極材料としてはチタン(Ti)、アルミニウム(Al)の積層構造あるいはTi、Alのみ、あるいは他の電極用金属材料をスパッタ法、または真空蒸着法等の手法により形成して半導体基板を完成させる。図1−2(g)は、埋め込み膜8で固めたCNT7をビア配線として採用し、平坦化したCNT7上に上部配線9を形成した様子を示す模式図である。
【0033】
以上説明したように、実施例1によれば、半導体基板の製造工程において、フッ化プラズマ処理を行うことにより、基板フィールド領域に埋め込み膜8が塗布されないために平坦化のためのCMP処理をしても、基板フィールド領域に局所的で不均一な研磨が発生しない。また、層間絶縁膜3が局所的に研磨され下層配線2に達することもない。その結果、CNTビア配線としての機能を発揮しなくなるという事態を回避でき、結果として半導体基板の歩留まり低下も回避できる。
【0034】
(実施例2)
図2−1から図2−3は本発明の実施例2に係る半導体基板の各製造工程を示す図である。
【0035】
実施例2では、図2−2(i)に示すようにバリア金属4、触媒層5、6の形成を、層間絶縁膜3を形成する前に行う点が実施例1と異なる。即ち、本実施例においては基板1の表面に上記バリア金属4、触媒層5、6がフィールド領域に最初から存在しない。このため、実施例1に記したバリア金属4、触媒層5,6をフィールド領域から取り除くためのイオンミリング行程を省略することができる。イオンミリング行程以外は、実施例1と同様な行程を進める。以下、実施例2を詳細に説明する。
【0036】
図2−1(a)は、下層配線層2が予め形成された半導体基板1を示す図である。この下層配線層2が予め形成された半導体基板1上に、全面にメタルバリア層4、触媒層5、触媒層6をin−situで連続的に積層する(図2−1(b))。これら3層を積層した半導体基板1を取り出して、図2−1(c)に示すように、半導体基板1上に、全面にレジスト12をスピンコータ等で塗布する。レジスト12を塗布後に、図2−1(d)に示すように、下層配線層2上のビア孔形成予定位置を露光する。露光後に現像して、図2−1(e)に示すように、ビア孔形成予定位置にレジスト13を残す。
【0037】
次に、図2−2(f)に示すように、現像後の半導体基板1に対して、触媒層5、6をビア孔底面のみに残すため、例えばArイオンミリングなどのイオンエッチングを行う。これによりビア孔以外の領域、すなわちフィールド領域の触媒層が、すべて除去される(図2−2(g))。このようにフィールド領域全面から触媒層を予め無くして、かつ下層配線層2上のビア孔形成予定位置に触媒層5、6及びレジスト層13を残した半導体基板1全体に、例えばSiOC膜を、層間絶縁膜3として、有機シラン系ガスとNO(またはO2)を原料ガスとしてプラズマCVD法により形成する(図2−2(h))。SiOC膜形成後、例えばアセトン等の有機溶剤によりレジスト層13を除去すると、図2−2(i)に示すように、ビア孔11が形成された半導体基板1が得られ、しかもビア孔11の底部にはすでに触媒層5、6が形成されている。
【0038】
実施例2では、凹状のビア孔11に触媒層をスパッタ法等で形成する工程が無いため、ビア孔11の底面内での触媒層5、6の均一性がより高いことが特徴として挙げられる。凹状のビア孔11に触媒層5、6をスパッタ法等で形成した場合は、触媒層5、6の構成原子は、成長初期に優先的にビア孔底面とビア孔側壁が直交する端部に集まり、端部から島状構造を形成し始める。すなわち、予め形成された凹状のビア孔11に触媒層をスパッタ法等で形成する場合は、ビア孔11の底面の端部とビア孔底面の中央部では、触媒層の初期成長の仕方が違ってくるため、触媒層の形成条件によっては、不均一になることがある。この点に関しては、実施例2では、ビア孔形成前に触媒層が半導体基板1全体に均一に形成されるため、その後に形成したビア孔11の底面の触媒層の均一性は非常に高い。
【0039】
また、ビア孔11の側壁には触媒層5、6は全く無い。従って、実施例2においては、その後に半導体基板1に対してCNT7を成長させた場合には、ビア孔11内に均一性よくCNT7が成長することとなる。このようにビア孔11の底面により一層均一性よく形成された触媒層5、6上にCNT7を形成する。CNT7を形成後は、図2−3(j)から(m)に示す如く、実施例1と同様の工程によって、基板1全体にフッ化処理を施した後(図2−3(k))、ビア孔11内にSOGを浸透させて後、乾燥させ又は紫外線を照射することにより埋め込み膜8硬化させ、これによりCNT7を固定する(図2−3(l))。CNT7の開端処理のため基板1にCMPを施した後、ビア孔11内にCNT7が配線として埋め込まれ、上部電極9が付与された構造が得られる(図2−3(m))。
【0040】
実施例2では、フィールド領域のイオンミリング行程を省略することができるので、フィールド領域表面のイオンダメージが軽減される。これにより、フッ化処理の効果が更に向上する。その結果、基板フィールド領域に埋め込み膜8が塗布されないために平坦化のためのCMP処理をしても、局所的で不均一な研磨が層間絶縁膜3に発生しない。そのため、上部電極9が下層配線2に達することもない。その結果、CNTビア配線としての機能を発揮しなくなるという事態を回避でき、結果として半導体基板の歩留まり低下の問題も生じない。
【0041】
[実施例3]
実施例3を、図3を用いて説明する。実施例3においては、実施例1に係る図1−1(d)に示す工程または実施例2に係る図2−3(k)に示す工程以外は実施例1または実施例2のいずれの工程を用いてもよい。すなわち、実施例3においては、図3(a)に示すように、実施例1における図1−1(d)、実施例2における図2−3(k)で説明したフッ化処理工程で、フッ素系ガスによるプラズマ処理ではなく、フッ素ガスを基板1の表面に吹きつけて、またはフローさせて、基板1の表面をフッ化させるものである。
【0042】
このようなフッ素ガスフローによる基板1表面のフッ化処理により、基板1のフィールド領域に埋め込み膜8が塗布されないためにCMP行程を実施しても局所的に不均一な研磨が発生しない。また、実施例1および2において説明したように、基板1のフィールド領域に埋め込み膜8が塗布されない一方で、ビア孔内に成長したCNT7の束の間には、液状のSOGは浸透する。
【0043】
本実施例では、CNT7に対するフッ化処理の効果が、実施例1及び2にけるフッ化処理よりも幾分弱いので、ビア孔内に成長したCNT7の束の間には、液状のSOGがより浸透しやすい。従って、実施例3では、CNT7の束は特に埋め込み膜8によってより強固にかつ一様に固定される。この結果、その後にCMP処理を施した時に、CNT7の開端処理はより均一になされ、ビア配線としてカーボンナノチューブを採用した効果がより顕著に表れる。
【0044】
実施例3により、基板フィールド領域に埋め込み膜8が塗布されないために平坦化のためのCMP処理をしても、局所的で不均一な研磨が発生しない。また、層間絶縁膜3が局所的に研磨され下層配線2に達することもない。その結果、CNTビア配線としての機能を発揮しなくなるという事態を回避でき、結果として半導体基板の歩留まり低下の問題も生じない。
【0045】
実施例1−3で述べた半導体基板の製造方法は、基板上に第一の配線層を形成する工程と、前記配線層上に対応したビアホールを有する層間絶縁膜を形成する工程と、前記ビアホール内にカーボンナノチューブを形成する工程と、前記基板全体をフッ化処理する工程と、前記カーボンナノチューブが存在する前記ビアホールに埋め込み膜を形成する工程と、前記基板全体の平坦化処理のために前記基板を研磨する工程と、を有し、これによりカーボンナノチューブが存在するビアホールにのみ埋め込み膜が形成されるため、その後に基板全体の平坦化処理のために基板を研磨する工程において、層間絶縁膜が局所的に研磨されることを防止できる。従って、実施例で述べた半導体基板の製造方法によれば、カーボンナノチューブのビア配線としての機能を十全に発揮し、結果として半導体基板の歩留まりの低下を回避できる。
【0046】
以上、幾つかの実施例を述べたが、これらの実施例は、単に例として示したもので、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。実際、ここにおいて述べた新規な方法は、種々の他の形態に具体化されても良いし、さらに、本発明の趣旨又は技術的思想から逸脱することなくここにおいて述べた方法の実施例における種々の省略、置き換えおよび変更を行っても良い。付随する請求項およびそれらと均等な方法は、本発明の範囲および趣旨又は技術的思想に入るようにそのような形態若しくは変形を含むことを意図している。
【符号の説明】
【0047】
1: 基板
2: 下層配線
3: 層間絶縁膜
4: メタルバリア層
5: 触媒層1
6: 触媒層2
7: カーボンナノチューブ
8: 埋め込み膜
9: 上部電極
10:研磨孔
11:ビア孔
12、13:レジスト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第一の配線層を形成する工程と、前記配線層上に対応したビアホールを有する層間絶縁膜を形成する工程と、前記ビアホール内にカーボンナノチューブを形成する工程と、前記基板全体をフッ化処理する工程と、前記カーボンナノチューブが存在する前記ビアホールに埋め込み膜を形成する工程と、前記基板全体の平坦化処理のために前記基板を研磨する工程と、
を有することを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブを形成する行程において、カーボンナノチューブを気相成長法により成長させることを特徴とする請求項1記載の半導体基板の製造方法。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブを形成する工程において、少なくとも炭化水素ガスを含むガスから成るプラズマを用いることを特徴とする請求項2記載の半導体基板の製造方法。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブと前記第1の配線層との間に触媒金属層が存在することを特徴とする請求項1記載の半導体基板の製造方法。
【請求項5】
前記触媒金属層はコバルト、ニッケル、鉄のいずれかの金属或いは、いずれかの金属を含む合金からなることを特徴とする請求項4記載の半導体基板の製造方法。
【請求項6】
前記フッ化処理する工程において少なくともフッ素を含むガスからなるプラズマを用いることを特徴とする請求項1記載の半導体基板の製造方法。
【請求項7】
前記フッ化処理する工程において少なくともフッ素を含むガスを前記基板全体に吹き付け、またはフローさせることを特徴とする請求項1記載の半導体基板の製造方法。
【請求項8】
前記埋め込み膜を形成する工程において、加熱により硬化する材料を前記基板に塗布した後、加熱により前記埋め込み膜を形成することを特徴とする請求項1記載の半導体基板の製造方法。
【請求項9】
前記埋め込み膜を形成する工程において、紫外線照射により硬化する材料を前記基板に塗布した後、紫外線照射により前記埋め込み膜を形成することを特徴とする請求項1記載の半導体基板の製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−49268(P2012−49268A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188836(P2010−188836)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願 平成20年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】