説明

半導体基板の電解めっき方法および電解めっき装置

【課題】貫通孔を有するシリコンウエハの貫通孔にオーバーハング形状や内部ボイドがなくめっきを充填する方法を提供すること。
【解決手段】シリコンウエハ内の貫通孔開口部と同位置に開口部を有するプレートを一定の距離をおいてシリコンウエハの貫通孔開口部にプレート開口部を合わせて、めっき電極側に向けて配置してめっきを行う。プレート開口径は貫通孔開口径より少し小さくする。プレート開口径と貫通孔開口径Rの差を2xとしたとき、x/Rを0.1〜0.3、シリコンウエハとプレートの距離を0.05mm〜1.0mmとしたときに、前記課題を実現できる。プレートは、多孔質セラミックのような絶縁体でかつ多孔質材料が望ましく、シリコンウエハ表面のめっき成長も抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔を有する半導体装置において貫通孔内の配線形成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスは微細化、高集積化の技術が目覚ましく、次世代の技術として半導体デバイスの三次元積層技術の開発が行われている。特に三次元積層の要となる貫通配線形成技術の研究が盛んである。貫通配線形成は貫通孔を形成するプロセスと、貫通孔に配線を形成するプロセス各々の技術からなる。
【0003】
貫通孔を形成する方法として、たとえば半導体デバイスが形成された半導体基板の第1の面(以下、表面と呼ぶ)とは、反対側の第2の面(以下、裏面と呼ぶ)から表面のI/O(入出力)パッドに向けて貫通孔を形成する場合において、貫通孔の形成はたとえばドライエッチング装置を用いて行われる。
【0004】
貫通孔内に配線を形成する技術として、一般的には電解めっきによる方法が知られている。その手法として、めっきの促進・抑制をコントロールするような添加剤を調合する、電流値を多段階に変化させる、めっき液の攪拌速度を上げ貫通孔内への液循環を促進する、電流をパルス(リバース)にするなどがあり、これら単独でめっきを行なうか、或いは、これらを複数組み合わせてめっきを行うのが通常である。
【0005】
添加剤の成分及び電流の流し方を組み合わせた例として特許文献1(特開2003-328185)、さらに発展させた方法として、特許文献2(特開2006-111896)や特許文献3(特開2006-351968)などがある。また、めっき液の攪拌を無くし装置サイズを小さくするために特許文献4(特開2007-231315)のようなものが提案されている。これらの特許文献において提案されているものは以下のような特長と問題点がある。
【0006】
例えば特許文献1のようにめっき液に添加剤を加えて貫通孔内部にめっきさせる手法は一般的に行われているが、添加剤濃度のバラツキに対して貫通孔内の充填具合が大きく変動するため、頻繁な添加剤成分の調整が必要となり作業の手間がかかる欠点がある。さらにめっき電解を正電解、逆電解と反転させることを特長としているが、高価な電源購入が必要であるという欠点がある。特許文献2のように高電流密度用電源と低電流密度電源を必要とする装置形態の場合、電源が2種類必要となる点が欠点である。さらに、これらの技術では表面のめっき厚については特に制御していないので、貫通孔内を完全充填させた後に表面のめっき膜を研磨やエッチング等で除去する必要があるため、資源のムダ、作業工数の増加が欠点となる。さらにめっき厚が厚くなると被めっき物にかかる応力が大きくなるため、めっき膜の剥がれ、被めっき物の反りや破損等の発生する確率が高くなるという欠点がある。
【特許文献1】特開2003-328185
【特許文献2】特開2006-111896
【特許文献3】特開2006-351968
【特許文献4】特開2007-231315
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来から用いられ或いは提案されている上記特許文献によるめっき方法はそれぞれ特長を持つが欠点もある。さらに、これらのめっき方法のいずれかを用いてまたはこれらを複数組み合わせて貫通孔内にめっきを行なっても、貫通孔の深い部分や底部にはめっきが充分成長せず、貫通孔の開口部付近のめっき成長が速いため、図9(a) に示すような貫通孔92開口部の角部93が異常に成長しためっき形状、すなわちオーバーハング形状94となり、さらにめっき膜95を成長させると図9(b)に示すような貫通孔の開口部付近がめっきで塞がり貫通孔内部に大きなボイド(空洞)96が形成される。このようなオーバーハング形状や内部ボイドの形成は、開口部が狭いほど、貫通孔が深いほど、それらのアスペクト比(貫通孔の深さ/開口部径)が大きいほど顕著に発生する。
【0008】
このようにオーバーハング形状またはボイドが形成された状態では、貫通孔底部97の電極と接続するめっき配線は非常に薄いので、充分なコンタクト(接触)抵抗が得られず、製品の大幅な歩留まり低下を引き起こす。また、めっき配線が貫通孔底部や貫通孔側面部で非常に薄いためわずかな電流密度で切断する可能性があるので、製品の信頼性に問題が発生する。さらに、貫通孔の開口部付近がめっきで塞がり貫通孔内部に大きなボイド(空洞)が形成された場合には、ボイド部にめっき液などが残留し製品の信頼性に悪影響を及ぼす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決し、オーバーハング形状や内部ボイドのないめっき形成方法を提供するものである。
【0010】
本発明は、半導体基板に開けた貫通孔と同位置に開口部を有するプレートを半導体基板と電極との間に設置することを特長とする。プレートの開口部と半導体基板の貫通孔の開口部は正確に位置合わせされてめっき液中に浸漬され配置される。プレートの開口径は半導体デバイスの貫通孔の開口径より小さくなっている。また、プレートは半導体基板と接触はしないが近接している。プレートの材質は絶縁体が好適であり、めっき液が浸透する程度に多孔質である。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、プレートを貫通孔の存在する側の半導体基板表面または裏面(平坦面)近傍に設置することで、貫通孔開口部の角部への電流集中を抑制することが可能となり孔底のめっき成長が促進される。この結果オーバーハング形状や貫通孔内部ボイドの発生がなくなる。さらに、半導体基板表面または裏面の貫通孔部以外の領域(主として平坦部となっている)はプレートにより遮蔽されているため、めっき成長が抑制されるので、めっき後に過剰めっき分を研磨する必要が無くなる。しかもプレートは多孔質の材料を用いているため、めっき液はプレートの孔質部を通り半導体基板表面(または裏面)に到達する。電流も同様のルートを通りめっき表面に到達するのでめっき成長は進むが、プレートの開口部と比較してその量は小さい。これによりめっき表面のめっき成長が大幅に抑制され、貫通孔内部がめっきにて充填された際にウエハ表面(または裏面)のめっき厚は配線形成に適当な厚さとなる。
【0012】
以上のように本発明を用いることにより、貫通孔内部がめっき金属で完全充填されるので、I/Oパッド電極とのコンタクト抵抗も良好になり製品歩留まりが向上し、高電流が流れても貫通孔内部の配線断線という問題がなくなる。さらにボイドがないので貫通孔内部にめっき液が残留することもなく製品の信頼性が大幅に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は貫通孔を形成した半導体基板を示す。半導体基板としては、シリコン(Si)、ゲルマニウムなどの単元素半導体材料、ガリウム砒素、インジウムリンなどの二元系化合物半導体材料、多元素の化合物からなる多元系化合物半導体材料が挙げられる。また、本発明は半導体基板ではないガラス基板やセラミック基板などの絶縁体基板、或いは導電体基板に形成した貫通孔にも適用できる。これからの説明においては、説明の便宜のためにこの基板はシリコン基板である「シリコンウエハ」として記載する。貫通孔は通常ドライエッチングを用いて形成されるが、ウエットエッチング、レーザーエッチング、イオンミリング、ドリル法などによって形成しても良い。貫通孔は、シリコンウエハ1の裏面からあけてシリコンウエハ1の表面のI/Oパッド2(実際は、その裏側)まで達する。(図1においては、シリコンウエハ1の裏面が上、シリコンウエハ1の表面が下になっている。)貫通孔5の底部においてシリコンウエハ1の表面のI/Oパッド2が露出している。I/Oパッドは電極であり、アルミニウム(Al)等で形成されている。貫通孔5の側壁(側面)およびシリコンウエハ1の裏面は絶縁膜6で被われている。(但し、一部窓開けされている部分も存在する場合がある。)絶縁膜6は化学気相成長(CVD)法やスパッター法などを用いて形成されたシリコン酸化膜(SiO膜)、シリコン窒化膜(SiN膜)やシリコン酸窒化膜(SiON膜)などであり、その形成後、貫通孔5底部のI/Oパッド2上に積層した絶縁膜は選択的に除去される。その後で、電解めっき用の金属膜、いわゆるシード層8を形成する。このシード層8は通常は銅(Cu)であるが、他の金属膜でも良く、やはりCVD法やスパッター法、或いは蒸着法で形成される。或いは無電解めっきで形成しても良い。絶縁膜6との密着性や拡散のバリア性を持たせるために、バリア膜7(いわゆるバリアメタル)としてチタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、タングステン(W)、クロム(Cr)などの金属膜をシード層8と絶縁膜6との間に形成してもよい。
【0014】
尚、I/Oパッドの下には通常絶縁膜3が存在するが、貫通孔形成時にI/Oパッド直下の絶縁膜3は除去される。また、I/Oパッドの表面やシリコンウエハの表面は保護膜4で保護されているが、I/Oパッド表面の一部は電気特性測定や外部電極と接続するために図1に示すように開口しているのが一般的であるが、半導体デバイスは多種多様化しており、I/Oパッド表面が開口していない基板もある。
【0015】
またシリコンウエハ1の表面には接合層を介してガラス基板などの支持(サポート)基板が接着している場合がある。このような支持基板がシリコンウエハ1に接着している場合には、シリコウエハ1の厚みをシリコウエハ単独の場合よりも薄くできるので貫通孔5の深さを小さくでき、貫通孔5のエッチングや貫通孔5の内部に絶縁膜6やバリアメタル7やシード層8を形成するときに被覆性が良好になり、種々の面で有利である。もちろん、後で述べる貫通孔内部へめっきすることもより容易になる。
【0016】
次に、本発明を用いて図1に示した貫通孔を形成したシリコンウエハにめっきする方法について説明する。
【0017】
図2は、シリコンウエハ1に形成した貫通孔5と同位置に開口のある本発明のプレート10を示す。プレート10は文字通り板状の物体であり、プレートの材質は特に規定しないが、少なくともめっき液と接触する部分でめっき液に耐性があり、さらには被めっき物と同位置の開口部以外の箇所からも液体が染み出す多孔質のようなものであることが望ましい。また、電気的に導通しないものが望ましい。さらに、シリコンウエハ1に形成した貫通孔5に正確にプレートの開口部11を合わせる必要があるため、プレート材料の寸法が精度良く正確に形成される材料でなければならない。これらの条件を満足するプレートとして、たとえば、多孔質セラミックス・プレートや多孔質ポリマー・プレートが挙げられる。図2は断面を示しているためプレートが分割しているように示されているが、実際にはシリコンウエハ1の貫通孔5の部分だけ開口しているプレート、すなわち板状のものに開口部11を形成させたものであるため、プレートは一体物としての取扱いが出来る。プレートへの開口はレーザー、ドリル、サンドブラスト、エッチングなどにより形成するが、精度よく形成できれば特に限定するものではない。また、プレートへの開口は、特にシリコンウエハ1の貫通孔5の位置に正確に形成すること、めっき液に浸漬したときに膨潤せず、めっき中は常時シリコンウエハ1の貫通孔5にプレート10の開口部11が合わさっていることが重要である。
【0018】
このような図2の状態、つまりシリコンウエハ1裏面の貫通孔5の開口部とプレートの開口部11との位置を一致させ、かつプレートとシリコンとの間に空間をもたせた状態で硫酸銅めっき液に浸漬させ、シリコンウエハ1の裏面及び貫通孔内に電解めっきを施す。すなわち、シリコンウエハ1を一方の電極(カソード)にして、プレート10をめっき電極(アノード)とシリコンウエハ1の間に配置し、電極間に電流を流すことにより電解めっきを行う。
【0019】
尚、これから説明する図3〜6においては説明を分かりやすくするために図を簡略化し、図1および2に示したようなI/Oパッド2、絶縁膜3、保護膜4、絶縁膜6、バリア膜7、シード層8などは省略し、シリコンウエハ1内に貫通孔5だけが形成されて示されているが、実際に電解めっき前の貫通孔が形成されたシリコンウエハの構造は図1および図2と同様である。(図3〜6に示すようにシリコン1が貫通孔5内およびシリコンウエハ1の裏面で露出している場合は、シリコンウエハ自体も導電体であるから、図1および図2に示したようなシード層8で被われた状態と同じ状態となるので、図3〜6に示す貫通孔5内およびシリコンウエハ1の裏面にもシード層8で被われたシリコンウエハ1と同様に電解めっきが可能である。)
【0020】
図3は、貫通孔5を有するシリコンウエハ1に電解めっきを行ったときのめっきの成長具合を模式的に見たものである。貫通孔5は1個しか示していないが、他の貫通孔も同様である。電極間に電界をかけると電流が流れめっきが始まり、プレートの開口部11からめっき液が貫通孔5の内部へ供給されるとともに、貫通孔5の底部とプレートの上部にある電極との間で電界が均一にかかる。一方、シリコンウエハ1の裏面12はプレート10で被われているので、めっき液が充分供給されない。また、シリコンウエハ1の裏面12においてはプレート10により電界も緩和される。このプレートの遮蔽効果により、貫通孔底部13のめっき成長速度はシリコンウエハ1の裏面12のめっき成長速度よりかなり大きくなる。また貫通孔5の側面(貫通孔側面)14の電界は貫通孔底部13より弱いため、貫通孔側面14のめっき成長速度は、貫通孔底部13のめっき成長速度とシリコンウエハ1の裏面12のめっき成長速度との中間となる。この結果、図3(a)に示すように、貫通孔底部13からめっき膜15がボトムアップしていき、さらにめっきが進行していくと、図3(b)に示すように、貫通孔底部13がどんどん埋まっていき、また、貫通孔側面14からも貫通孔5の孔径も狭まってくる。さらにめっきを進行させると、図3(c)に示すように貫通孔5が完全に埋まってしまう。しかも貫通孔5を埋めためっき膜15にはボイド等の欠陥が残らないようにすることもできる。
【0021】
一方、シリコンウエハ1の裏面12のめっき膜成長は緩慢なので、その成長速度は小さい。ただし、プレートは多孔質なので、プレートの外側から新鮮なめっき液がプレートの間隙を抜けて徐々に浸みだしてくるので、ある程度は成長する。
【0022】
図3(c)に模式的に示すように、貫通孔5が完全に埋まった状態でめっきをストップさせることにより、シリコンウエハ1の裏面がほぼ平坦な状態を得ることも可能となる。また必要な用途に合わせて、たとえば図3(a)や(b)の状態でめっきをストップさせて電極として利用することも可能である。
【0023】
上述したように、本発明のプレ−トを用いると貫通孔内部へのめっきが促進されるが、この理由は以下のように考えられる。
【0024】
まず、通常、電解めっきにおいてはめっき物の形状によって電流分布が均等にはならないため、場所により電流密度に差が生じる。たとえば、電流はめっき物の凸部に集中し、凹部には流れにくい。そのため、貫通孔部の電流分布は図4のようになり(電流の流れを模式的に矢印で示す。矢印の密度が電流密度と考えて良い)、貫通孔開口部の角部(凸部)に電流が集中しめっき成長が促進されるが、貫通孔内部は電流密度が疎になり、特に貫通孔底部ではかなり疎になり、めっき成長速度が遅くなる。この結果、開口部が異常成長しオーバーハング状になり、最終的には貫通孔の上部すなわち開口部で塞がってしまい図9(b)で示すような貫通孔内にボイド(空洞)が残った形状になってしまう。
【0025】
これに対して、本発明のプレートをめっき表面に設置することで、図5に示すように貫通孔の開口部の角部(凸部)はプレート10で(ある程度)覆われているため電流分布は疎になり、開口部の角部への電流集中を抑制することが可能となる。この結果開口角部のめっき成長は緩慢となる。一方、貫通孔内部においては、プレートが開口しているので、電界が貫通孔底部と直接にかかるので電流密度が密になり、特に貫通孔底部においてめっき速度が大きくなり、めっき成長が促進される。貫通孔側面部14では電流が曲がるので、余り電流密度は大きくならないが、プレート10で被われているシリコウエハ裏面12よりは電流密度が大きくめっき成長も速い。この結果、貫通孔においては、貫通孔底部13からめっきが急速に進みめっき膜がボトムアップしていき、貫通孔側面14からのめっき成長と組み合わさって貫通孔内部にボイド(空洞)のないめっきで充填された状態を得ることができる。図5から分かるように、プレートの開口径を貫通孔の開口径より幾分小さくすることが重要である。すなわち、プレート開口部を貫通孔に合わせたときに、上から見て貫通孔の角部がプレートで少し隠れるくらいにすると、電界が貫通孔角部に直接かからなくなる。(あるいは、電流が直接(直線的に)入らず、貫通孔角部に回りこむようになると、電流集中がかなり抑制される。)この結果貫通孔角部におけるめっきの異常成長をかなり防止できオーバーハング形状のめっきになることはなくなる。
【0026】
さらに、めっき表面(すなわち、シリコンウエハ1の裏面)はプレートにより遮蔽されているので、プレートが絶縁体である場合には電界が遮断され、かつめっき液の供給量も非常に少なくなるため、めっき成長がかなり抑制される。しかし、貫通配線のめっきプロセスにおいては、シリコウエハ裏面にもめっきをある程度成長させ、配線として利用できるようにすることが必要である。このために、本発明のプレートは多孔質の材料を用いている。すなわち、めっき液は図5の点線で示すようにプレート10の孔質部を通り表面(シリコンウエハ裏面12)に到達する。いわゆるめっき液はプレート10を滲みだしてシリコンウエハ裏面12に供給される。また、電流も同様のルートを通りめっき表面(シリコンウエハ裏面12)に到達する。この結果、めっき液供給量は少ないが新鮮なめっき液が常に供給され、電流密度も小さいので、緩慢ではあるがめっきが成長する。従って、プレートの開口部と比較してめっきの量は小さく、これによりめっき表面のめっき成長は大幅に抑制され、貫通孔内部がめっきにて充填された際にウエハ表面(シリコンウエハ裏面12)のめっき厚は配線形成に適当な厚さとなる。
【0027】
プレートのない従来のめっき方法では、シリコンウエハ裏面のめっき厚みが大きく、研磨したり、エッチングを行なったりして(配線層としての)めっき厚みを調整していたが、本発明のめっき方法を用いることにより、このめっき厚み調整プロセスをなくすこともできる。
【実施例】
【0028】
本発明のプレートの開口径とめっき成長の様子について調査を行った結果を次に示す。用いたサンプルは、これまでの説明において示した構造を有する8インチシリコンウエハを用いた。サンプルの作成方法はこれまで説明した通りであるが、概略説明すると、次の通りである。ガラス基板にシリコンウエハの表面を接着した後で、(当初のシリコンウエハの厚みは725umであったが)研磨によりシリコンウエハ裏面を薄くし、約200um(ミクロンメートル)とした。シリコンウエハの裏面から貫通孔を形成し、シリコンウエハの表面に存在するI/Oパッドまで貫通させた。その後シリコン酸化膜をCVD法により成長し、貫通孔内部のシリコン基板およびシリコンウエハ裏面を被覆した。その後貫通孔底部のシリコン酸化膜を選択的に除去し、貫通孔底部のI/Oパッドを露出させた。次にバリアメタルとしてチタン膜、シード層として銅膜を積層し、本発明のサンプルを得た。実験に用いたサンプルの貫通孔は開口径100um、貫通孔深さが200umで貫通孔底径が80umである。アスペクト比=貫通孔深さ/開口径=2.0である。種々の開口径を有するプレートを作成してめっきを成長させた後、貫通孔部の断面SEM観察を行い図6〜8に示すような評価を行なった。
【0029】
図6は、貫通孔に成長しためっき膜の形状を模式的に示したものである。前述したように説明の便宜のために積層膜を省略している。また、貫通孔底径と貫通孔開口径は実際は幾分異なり実際の貫通孔側面63は貫通孔底面62に対して傾斜しているが、図6においては垂直であるとして図示している。貫通孔65の開口径をR、貫通孔65の開口部端とプレート67の開口端との距離をxとする。プレートの開口径68は(R−2x)となるので、(x/R)が大きくなるにしたがって貫通孔65の開口径に対して、プレートの開口径68が小さくなることを表している。また、めっき後の銅厚みについて、シリコンウエハ裏面64の銅厚みをa(um)、貫通孔角部(凸部)の銅厚みをr(um)、貫通孔底面62上の銅厚みをc(um)と定義する。rは貫通孔開口部のめっき成長具合をみるための指標で、貫通孔開口端からの距離が一番遠い箇所までの距離を表すこととする。また、デバイス表面とプレートとの間隔をy(mm)とする。尚、シリコンウエハとプレートの位置合わせは通常のアライナーを用いて行い、シリコンウエハとプレートの固定は周辺で固定する固定治具を用いて行った。このときの位置合わせ精度は+−2umであった。固定治具は非導電性材料で被覆されたステンレス製材料である。
【0030】
図7に、貫通孔開口径に対するプレートの開口径(x/R)と、めっき成長の関係(2r/c)を示す。横軸(x/R)は大きくなるにつれてプレートの開口径が小さくなることを表し、0.5でプレート開口がなくなることを表す。縦軸(2r/c)は孔底のめっき成長と開口部のめっき成長速度の比率を表している。横軸(x/R)が負ということは、xが負、すなわちプレートの開口径68が貫通孔開口径Rより大きいということを示す。プレートの開口径68が貫通孔開口径Rより大きいときは、前述したように貫通孔角部に電流集中しめっき成長が非常に速くなることが分かる。プレートの開口径68が貫通孔開口径Rと等しいとき(x/R=0のとき)でも(2r/c)は4程度あり、貫通孔底部(底面)のめっきの成長速度が速くなったとしても、途中で貫通孔は塞がることが分かる。しかし、プレートの開口径68が貫通孔開口径Rより少し小さくなる(すなわち、xが少しプラスになる)と急激に(2r/c)が小さくなり、(x/R)が0.1で0.5以下となる。今回サンプルに用いた貫通孔のアスペクト比は2.0であるから、めっきの成長がボトムアップし、貫通孔をめっき膜で充填するためには(2r/c)が0.5以下になる必要がある。従って、図7からボトムアップ条件は(x/R)が0.1以上であることがわかる。つまり、ボトムアップ条件は、0.1≦(x/R)<0.5である。SEM観察の結果からは、(x/R)が0.3を越えると貫通孔底部62周辺部に逆に微小ボイドが発生することが分かったので、本サンプルおよび実験の範囲内では、良好なボトムアップ条件は、0.1≦(x/R)≦0.3である。ただし、この場合のボイドは微小であったので電気的にあるいは信頼性の面では0.3以上でも問題ない。また、図7では、半導体基板とプレートとの間隔(距離)yは1.0mmであった。
【0031】
また、図8にシリコンウエハ裏面64とプレート67間の距離y(mm)とデバイス表面のめっき厚a(um)との関係を示す。この実験に用いたプレート67の開口径は80umである。(すなわち、x=10umとなり、貫通孔の開口径Rは100umであるから、x/R=0.1である。)図8のグラフ内で○は貫通孔内のめっきが正常だったもの、△は微小なボイドが残ったもの、×はプレートとウエハがくっついたものや貫通孔内に大きなボイドが残ったものなど明らかなめっき不良を表している。図8から、yが1.0mmを越えるとめっき厚みが急速に増加する傾向があるが、これはプレート67の開口部68から回りこんでくる電流量が増加するためと考えられる。yが1.25mm以上では貫通孔内に欠陥が発生してくる。また、プレートを完全に半導体基板に接触させると半導体基板に傷等がついたりしたり、接触部にメッキが付きプレートを半導体基板から離すときにそのメッキが剥離したりするという問題が発生する。そのため半導体基板の凹凸なども考慮してプレートと半導体基板の間隔は最低0.05mm必要である。以上から、貫通孔内及び表面にめっきが正常に形成出来る範囲は、0.05mm≦y≦1.25mm、好適には0.05mm≦y≦1.0mmであることがわかる。(シリコン1裏面のめっき厚みの増加は、めっき膜をある程度研磨する必要がある場合がある。)
【0032】
以上説明したように、本発明はシリコンウエハに形成した貫通孔のパターンに合わせた開口部を有するプレートをある間隔y(mm)を持たせてシリコンウエハに固定し、電解めっきを行うことを特長としている。この結果、貫通孔内部にボイド等の欠陥のない内部をめっき膜で充填した貫通配線を形成することができる。
【0033】
従来は、めっき液に添加剤を加えて行っていて添加剤成分の調整が大変という問題があったが、このような貫通配線形成用の添加剤は必要がなくなるので、作業手間がかかるという問題は完全に解消する。ただし、光沢剤や応力低減剤など、貫通配線を形成するためではない効果を得るための添加剤のみの調整は必要であるが、これらは作業手間には余り影響を与えない。
【0034】
本発明ではめっきの電源は汎用的なDC電源1台で十分であり、高価なパルスめっき用電源や電源を複数台使用する必要がないため、設備を低コストで準備できる。
本発明においては、プレートの開口径を貫通孔の開口径より小さくすることで、貫通孔開口部の角部の電流密度が小さくなり、相対的に貫通孔内部の側壁や底部のめっきが促進される。プレートの開口径と貫通孔の開口径との比(x/R)を、0.1≦(x/R)<0.5、好適には0.1≦(x/R)≦0.3にすることでめっきの成長がボトムアップする条件となり、開口部でめっきがふさがる事が無くなるため貫通孔内にボイドが残留しない。尚、この条件は貫通孔のアスペクト比(貫通孔深さ/貫通孔開口径)が変動すると多少変化する。たとえば、アスペクト比が小さくなれば、x/Rが0.1より小さくても良い。
【0035】
実例として、アスペクト比が1(貫通孔深さが100um、貫通孔開口径が100umの場合)のときは、x/R=0.05でも良好なボトムアップ条件を得ることができる(y=0.05〜1.0mmのとき)。一方、アスペクト比が4の場合には、x/R=0.1でも良好なボトムアップ条件を得ることができる(y=0.05〜1.0mmのとき)。これは、アスペクト比が大きくなっても、x/R=0.1で貫通孔角部での電流集中がかなり抑えられオーバーハング条件が解消するためと考えられる。従って、上記の範囲規定はかなり普遍性があると言える。
【0036】
さらに、ウエハとプレート間の距離を0.05mm以上1.0mm以下にすることで、ウエハ表面のめっき成長が抑制され、表面のめっき厚みを薄くでき、以降の配線形成に適切な厚さを有して形成出来る。また、ウエハ表面のめっき厚が薄いため、ウエハ基板への応力が低減される。ウエハ表面のめっき厚が薄いため、不必要な厚さ分のめっき膜を研磨やエッチング等によって除去する必要が無くなり、工程の削減及び資源の節約が出来る。
尚、プレートは絶縁体であることが望ましい。プレートが金属等の電気良導体である場合でも本発明を用いることは可能であるが、プレート自体にめっき成長してしまうため余り望ましくはない。また、本発明のプレートは多孔質体であることが望ましいが、これは上述したように、プレートの孔質部を通って浸みだして新鮮なめっき液をシリコンウエハ裏面に供給するとともに電流の通り道となり、シリコンウエハ裏面に薄くめっきを形成できるという理由による。従って、めっきを余り成長させたくない場合には、必ずしも多孔質体でなくとも良い。たとえば、多孔質でないセラミックス、ガラス、高分子材料、非導電体金属酸化物などである。
【0037】
本発明は、貫通孔を有する半導体基板に適用できるものとして説明してきた。すなわち、10um〜200umの開口径を有する貫通孔に適用すると最も本発明を効果的に適用できる。この間であれば、本明細書で規定した上述の範囲を適用できる。貫通孔の開口径が10um以下になるとプレートの精度やアライメント(合わせ)がかなり困難となる。また、200um以上の開口径でも本発明を用いることは可能であるが、現実的にはそのような開口径が広いものは余り要求されないし、そのような広い貫通孔をめっき膜で完全充填する必要がない。(もちろん、完全充填するのであれば、本発明を適用できる。)
【0038】
さらに、上記で説明した貫通孔は半導体基板の裏面からあけて半導体基板の表面にあるI/Oパッドまであけた孔であるとして説明してきたが、半導体基板の両面に孔を形成したいわば完全な貫通孔に対しても本発明を適用できることは言うまでもない。
【0039】
また、貫通孔ではない通常のコンタクト孔やビアにも適用できることも言うまでもない。ただし上述したように、プレートに開口し、その開口部をシリコンウエハのコンタクト孔等に合わせる必要がある。従って、プレートの開口を形成でき、合わせこみさえできればどのような小さな貫通孔、コンタクト孔やビア等に本発明を適用できる。たとえば、1um以下の貫通孔、コンタクト孔、ビアにも適用できる。さらに、トレンチ等の半導体基板に形成する分離溝内に形成するめっきにおいても本発明を適用できることも言うまでもない。
【0040】
尚、これまで図面、各実施形態、各実例などにおいて説明したことで、互いの所で説明していない内容について、お互いに矛盾なく適用できることは互いに適用できることも言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、半導体産業で用いられる貫通孔を有するウエハレベルパッケージに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、貫通孔を形成した半導体基板(シリコンウエハ)を示す図である。
【図2】図2は、貫通孔を有するシリコンウエハとその貫通孔と同位置に開口部のある本発明のプレートを示す図である。
【図3】図3は、貫通孔を有するシリコンウエハに電解めっきを行ったときのめっきの成長具合を模式的に示した図である。
【図4】図4は、めっき中における貫通孔内部の電流分布を模式的に示した図である。
【図5】図5は、本発明のプレートを用いたときのめっき中における貫通孔内部の電流分布を模式的に示した図である。
【図6】図6は、貫通孔に成長しためっき膜の形状を模式的に示した図である。
【図7】図7は、貫通孔開口径に対するプレートの開口径(x/R)と、めっき成長の関係(2r/c)を示す図である。
【図8】図8は、シリコンウエハ裏面とプレート間の距離y(mm)とデバイス表面のめっき厚a(um)との関係を示す図である。
【図9】図9は、貫通孔に成長した従来のめっき形状を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1・・・シリコンウエハ、2・・・I/Oパッド電極、3・・・絶縁膜、4・・・保護膜、
5・・・貫通孔、6・・・絶縁膜、7・・・バリアメタル、8・・・シード層、
10・・・プレート、11・・・(プレート)開口部、12・・・シリコンウエハ裏面、
13・・・貫通孔底部(底面)、14・・・貫通孔側壁(側面)、15・・・めっき(膜)、
61・・・シリコンウエハ、62・・・貫通孔底部(底面)、63・・・貫通孔側壁(側面)、
64・・・シリコンウエハ裏面、65・・・貫通孔、66・・・めっき(膜)、
67・・・プレート、68・・・(プレート)開口部、91・・・シリコンウエハ、
92・・・貫通孔、93・・・貫通孔角部、94・・・オーバーハング形状、
95・・めっき(膜)、96・・・ボイド(空洞)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に形成された貫通孔内にウエハレベルで電解めっきによりめっき配線を形成するプロセスにおいて、めっき液中においてめっき電極と半導体基板との間に半導体基板の貫通孔開口部と同一箇所に開口部を有する板状のプレートを配置し、前記プレートの開口部は前記半導体基板の貫通孔開口部に対して一定の距離を有して位置合わせされ配置された状態で、電解めっきを行うことを特長とする電解めっき方法。
【請求項2】
貫通孔の開口径が10um〜200umであることを特長とする、請求項1に記載の電解めっき方法。
【請求項3】
プレート開口部の開口径は半導体基板の貫通孔開口部の開口径より小さいことを特長とする、請求項1または2に記載の電解めっき方法。
【請求項4】
プレート開口部の開口径と貫通孔開口部の開口径との関係が、0.1≦(貫通孔開口径−プレート開口径)÷貫通孔開口径÷2)≦0.3の範囲であることを特長とする、請求項3に記載の電解めっき方法。
【請求項5】
半導体基板とプレートとの距離を0.05mm以上1.0mm以下の範囲に設置することを特長とする、請求項1〜4のいずれかの項に記載の電解めっき方法。
【請求項6】
板状のプレートの材質が多孔質セラミックスであることを特長とする、請求項1〜4のいずれかの項に記載の電解めっき方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの項に記載の電解めっき方法を用いて電解めっきを行うことが可能な電解めっき装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−218302(P2009−218302A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58871(P2008−58871)
【出願日】平成20年3月9日(2008.3.9)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】