説明

半導体発光装置とその製造方法、照明装置および表示装置

【課題】本発明は、発光効率を高く維持しながら、基板に対して優れた接合性を有する半導体発光装置とその製造方法、およびこれを備える照明装置、さらには表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】このために、本発明に係る半導体発光装置は、発光層を有するものであって、その発光層の出射側に、表面に凹凸構造が設けられた光透過部が形成されているとともに、当該凹凸構造の上にさらに透光性を有した被膜が形成された構成を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置とその製造方法、照明装置および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(以下、「LED」という。)を用いた照明装置は、発光効率および寿命などの面から従来の白熱電球、ハロゲン電球などに比べて優れた特性を有することから、新しい光源として期待されている。より照明装置の高光束化を図ろうとするとき、高密度にLEDを実装することが考えられるが、この場合には、駆動時における放熱の問題やコスト面で現状ではあまり現実的ではない。そこで、照明装置の高光束化を図るためには、LEDの発光効率をできる限り高めるという方策が現実的である。このために、種々の取り組みがなされているが、その際には、内部量子効率と外部量子効率という2つのパラメータが重要である。
【0003】
2つのパラメータの内、内部量子効率は、供給された電力に対してLEDにおける発光層でどれだけ光に変換できるかを示すパラメータであり、LEDを構成する半導体の結晶性や層の構成に影響を受ける。
一方、外部量子効率は、供給された電力に対して発光層からの光の内のどれだけの光がLED外方に取り出せるかを示すパラメータであり、内部量子効率と発光層で発生した光がLED外方に取り出される割合(光取り出し効率)との積で表される。そして、外部量子効率を左右する光取り出し効率は、LEDベアチップの形状、LEDベアチップを覆う材料およびその形状などに影響を受ける。そこで、光取り出し効率の向上を図る一方法として、ベアチップを樹脂などで覆うことにより、光取り出し側におけるベアチップとそれに接する外界との界面における屈折率の差をできるだけ小さくするということが行われる。
【0004】
また、LEDを用いた照明装置では、ベアチップの光取り出し側の面に凹凸を設けることによって、取り出し側の面で光の入射角が一義的に決まらないようにし、光取り出し効率の向上が図られることもある(特許文献1、非特許文献1)。
ところで、ベアチップを実装基板に実装する方法として、図20に示すようなフリップチップ実装法が用いられることがある。図20に示すように、フリップチップ実装法を用いた場合には、真空コレット1300でベアチップ1100における光取り出し側の面を吸着し、これを実装基板1200における配線層1210に対して超音波で接合する。このようにベアチップ1100を実装することにより、ベアチップ1100の発光層と実装基板1200との距離を短いものとすることができ、発光層で生じた熱を効率よく基板に逃がすことができる。つまり、フリップチップ実装法は、ベアチップの高密度実装を必要とする照明装置において、放熱性を確保するという点から有効な技術であるといえる。
【特許文献1】特許第2836687号公報
【非特許文献1】Compound Semiconductor,Vol.8,No.1,pp.39-42,2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フリップチップ実装法を用いて上記光取り出し側の面に凹凸形成されたベアチップを実装する場合には、凹凸によって実装に係る位置精度や接合強度の低下、および凹凸構造の破壊などを生じてしまうことがある。即ち、図20の拡大部分に示すように、ベアチップ1100を実装する場合には、凹凸1111の存在によって真空コレット1300でベアチップ1100を確実に真空吸着することができず、また真空コレット1300からベアチップ1100に対して接合に十分な超音波を伝搬し難くなる。また、このような問題は、ベアチップを有する表示装置などにおいても同様に生じる。
【0006】
本発明は、上記問題を解決しようとなされたものであって、発光効率を高く維持しながら、基板に対して優れた接合性を有する半導体発光装置とその製造方法、照明装置および表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、発光層を備える半導体発光装置において、発光層の出射側には、表面に凹凸構造が設けられた光透過部が形成されているとともに、当該凹凸構造の上に(凹凸構造の表面を覆う状態に)更に透光性を有した被膜が形成されていることを特徴とする。
また、本発明に係る半導体発光装置の製造方法は、間に発光層を介した状態で複数の層が積層された積層体に対し、発光層の出射側に表面に凹凸構造を有した光透過部を形成するステップと、凹凸構造の上に、これを覆う状態で透光性を有した被膜を形成するステップとを有することを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明に係る照明装置は、上記本発明に係る半導体発光装置を、実装基板上に実装された状態で備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明に係る半導体発光装置では、出射側に光透過部の凹凸構造が設けられているので、発光層から出射された光が凹凸構造で散乱あるいは効率よく透過され、高い光取り出し効率が維持されている。よって、高い発光効率が維持される。そして、本発明に係る半導体発光装置では、この凹凸構造が被膜によって被覆されているので、これを実装基板に実装する際に、出射側の表面から超音波を印加するときにも凹凸構造の破壊が抑制される。これからも、本発明に係る半導体発光装置では、高い発光効率が得られる。
【0010】
また、本発明に係る半導体発光装置では、上記被膜が形成されていることにより、実装基板に対して実装する際にも、凹凸構造で超音波を大きくロスしないので、実装基板との優れた接合性が確保される。
従って、本発明に係る半導体発光装置は、発光効率を高く維持しながら、(実装)基板に対する優れた接合性が確保されるという優位性を有する。
【0011】
なお、上記実装の形態については、所謂、フリップチップ実装も含む。
また、上記密に被覆するとは、表面における凹凸構造に対して、その凹部の底も含めて表面との間に隙間が生じないように被膜が形成されている状態をいう。
また、半導体発光装置においては、通常、基板上に複数の層が積層された構成を有するが、上記凹凸構造とは、これら積層された層の内の一の層に形成された構造だけをさすものではない。例えば、光が基板側から出射される形態の半導体発光装置では、基板の表面に凹凸構造が設けられることがある。
【0012】
ここで、上記凹凸構造は、不規則な凹凸の場合には上述のように光の散乱機能を果たすものであり、周期構造をとる場合にはフォトニッククリスタル(PC)構造あるいはフォトニックバンドギャップ(PBG)構造と呼ばれるものをも含んでいる。ここで、PC構造およびPBG構造は、一般に、面方向に凹凸がミクロンオーダーからλ/4オーダー(λ;媒質中の波長)の間隔で現れる周期構造で特定の波長を選択的に反射・透過する機能を有している。従って、本発明に係る半導体発光装置が光透過部の凹凸構造としてPC構造あるいはPBG構造を有する場合には、光の透過がしやすくなるという機能を有することになる。
【0013】
上記半導体発光装置においては、被膜が光透過部の凹凸構造に沿ったかたち(凹凸状態)で形成されていてもよいが、その外表面が略平坦となるように形成されていることが望ましい。すなわち、半導体発光装置を実装基板などに実装する際には、上述のように、真空コレットなどで装置の光出射側の表面を吸着するが、このとき吸着対象面となる表面が略平坦であれば、より確実な吸着力が確保できる。よって、この半導体発光装置では、実装基板に対して、より高い位置精度をもって実装することができる。
【0014】
上記半導体発光装置における被膜では、ポリイミドまたはエポキシまたはシリコーンまたはガラスなどの材料を構成上の主な要素とすることができる。ここで、被膜を構成するのに用いることができる材料の内、ガラスについては、例えば、ゾルゲル法によるガラスや低融点ガラスなどを採用することができる。具体的なガラス材料としては、例えば、次のようなものなどを採用することが可能である。
(1)金属アルコキシド(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなど)を出発原料とするガラス材料
(2)セラミック前駆体ポリマー(ペルヒドロポリシラサンなど)からなるガラス材料
(3)酸化燐、酸化ボロンなどからなるガラス材料
また、被膜中に発光層からの光によって励起する発光物質を含有させておくことが望ましい。特に、被膜中の発光物質が、発光層からの光を白色光に変換できる物質(蛍光物質など)とすれば、本発明に係る半導体発光装置を照明装置などに用いるのに望ましい。
【0015】
上記半導体発光装置において、発光層から出射される光の波長をλとするとき、光透過部における凹凸構造をλ/4以上の周期をもって形成しておくことが、光取り出し効率を高く維持するという点で望ましい。
半導体発光装置における発光層は、一般に、複数の構成層(クラッド層、コンタクト層、バッファ層など)に挟まれた状態で、透光性基板の上に設けられているが、透光性基板の表面に凹凸構造を設け、これをもって光透過部の凹凸構造とすることもできる。即ち、光透過部の凹凸構造を透光性基板の表面に形成しておくことができる。ここで、透光性基板には、発光層および上記複数の構成層と略同一の屈折率を有するものを採用することが望ましい。これは、光取り出し効率を高く維持するのに有効であるからである。具体的な透光性基板の構成材料としては、GaN、SiC、AlNなどから選択されたものを採用することができる。
【0016】
なお、本発明が特徴とする上記構成については、発光ダイオード装置の他に、垂直面発光レーザ装置、共振面発光ダイオード装置、表面実装型デバイス、所謂SMD(Surface Mount Devece)などに適用することもできる。
上記本発明に係る半導体発光装置の製造方法では、表面に凹凸構造を有した光透過部を形成することから、高い光取り出し効率が確保された半導体発光装置を得ることができる。また、この製造方法では、上記光透過部の形成後に、凹凸構造を覆うように、透光性を有した被膜を形成するので、得られた半導体発光装置を実装により実装基板に対して実装する場合にも、光透過部における凹凸構造の保護を図りながら確実な接合をなし得る。即ち、上記製造方法では、凹凸構造の上を被膜で保護することによって、実装時に真空コレットなどを用いて吸着する際の確実性が増し、また、超音波印加に際して、凹凸での超音波エネルギのロスを低減することができる。
【0017】
従って、上記本発明に係る半導体発光装置の製造方法では、発光効率が高く維持され、基板に対して優れた接合性を有する半導体発光装置を製造することができる。
なお、上記表面の凹凸構造については、上述と同様に、その形成形態によって果たす機能を変えることができる。即ち、不規則な凹凸の場合には上述のように光の散乱機能を果たすものであり、周期構造をとる場合にはフォトニッククリスタル(PC)構造あるいはフォトニックバンドギャップ(PBG)構造と呼ばれるものである。
【0018】
上記本発明に係る半導体発光装置の製造方法においては、被膜の材料に、発光層からの光によって励起される発光物質を含有させておくことが望ましい。特に、装置からの出射光が所望の(波長を有した)白色となるように、形成後の被膜を所要の厚みまで研磨することが望ましい。
上記本発明に係る照明装置では、凹凸構造を表面に有する光透過部と、この上を被覆する被膜とを有する半導体発光装置を有するので、高い発光効率が維持され、且つ、半導体発光装置と実装基板との間における確実な接合を確保することができる。
【0019】
従って、本発明に係る照明装置は、高い発光効率と品質安定性を兼ね備える。
上述のように、本発明に係る半導体発光装置は、表面に凹凸構造を有した光透過部が出射側に形成されていることから高い光取り出し効率が確保され、高い発光効率が得られる。また、その凹凸構造を覆うように被膜が形成されているので、この装置を実装基板に対して実装する際にも、凹凸構造が破壊されることがなく、高い接合性が確保できる。
【0020】
また、本発明に係る半導体発光装置の製造方法では、発光層の出射側に表面に凹凸構造を有する光透過部を形成し、その後に、この凹凸構造を覆うように被膜を形成することによって、上記優位性を有した半導体発光装置を容易に製造することができる。
さらに、本発明に係る照明装置では、上記半導体発光装置が実装基板上に実装されているので、高い発光効率と品質安定性を有する。
【0021】
なお、被膜の構成材料としては、例えば、ポリイミド、エポキシ、シリコーンなどの樹脂材料や、ゾルゲル法によるガラスや低融点ガラスなどを用いることができる。具体的なガラス材料としては、例えば、以下のようなものを採用することができる。
(1)金属アルコキシド(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなど)を出発原料とするガラス材料
(2)セラミック前駆体ポリマー(ペルヒドロポリシラサンなど)からなるガラス材料
(3)酸化燐、酸化ボロンなどからなるガラス材料
なお、何れのガラス材料を用いる場合においても、凹凸構造上に材料を塗布(ポッティングやスピンコーティングなど)し、乾燥した後に、数百(℃)の温度で焼成することで、凹凸構造上に平坦な表面を有するガラス層(被膜)を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、LEDベアチップ(以下、単に「LEDチップ」という。)1を半導体発光装置の一例として用いる。
(LEDチップ1の構成)
LEDチップ1について、図1および図2を用いて説明する。図1にLEDチップ1の外観斜視図、図2(a)にその一部断面図、図2(b)にLEDチップ1の回路構成図を示す。
【0023】
図1に示すように、LEDチップ1は、ノンドープGaN基板10を共通のベースとして、複数の発光素子部20が形成されている。チップ基板10上における発光素子部20は、本実施の形態ではxy方向に7×5のマトリクス状に配され、計35の領域が存在する。ここで、各発光素子部20のサイズは、例えば、x方向に285(μm)、y方向に400(μm)であり、LEDチップ1全体のサイズは、例えば、2(mm)×2(mm)である。
【0024】
LEDチップ1における各発光素子部20は、それぞれ一組のダイオード構造を有しており、各間が分離溝30で分離されているとともに、ブリッジ配線40で電気的に接合されて35のダイオード構造が直列接続されている。
図1に示すように、LEDチップ1における対角のコーナには、外部からの電力供給用の接続端子として、一方にカソード電極50、他方にアノード電極60が配されている。これら電極50、60は、ブリッジ配線40により直列接続された35の発光素子部20の両端に位置する発光素子部20の各々におけるn側電極およびp側電極である。
【0025】
また、図1の拡大部分に示すように、ノンドープGaN基板10における下面は、複数の凹部11が形成されており、その上を被膜70で被覆されている。被膜70とノンドープGaN基板10との間には、凹部11の底部分も含めて隙間を有さない。即ち、ノンドープGaN10における凹凸形成面は、被膜70によって密に被覆されている。
なお、LEDチップ1では、図1におけるz方向下向き(−z方向)が光の出射方向であり、チップ基板10における凹部11は、出射光を散乱あるいは透過しやすくすることで、擬似的に界面(出射面)の屈折率差を低くするのと同じ効果を得るために形成されているものである。これについては、上記特許文献1および非特許文献1に詳しいので、ここでの説明は省略する。
【0026】
次に、図2(a)に示すように、LEDチップ1を断面方向にみると、ノンドープGaN基板10の上に、GaNバッファ層21(厚さ30nm)、n−GaNクラッド層22(Siドープ量3×1018cm−3、厚さ2μm)、(InGaN(厚さ2nm)/GaN(8nm))×6発光層23、p−GaNクラッド層24(Mgドープ量3×1019cm−3、厚さ200nm)、p−GaNコンタクト層25(Mgドープ量3×1019cm−3、厚さ50nm)が順に積層され、さらにその上にRh/Pt/Auからなるp側電極26が形成されている。
【0027】
なお、(InGaN/GaN)×6発光層23とは、InGaN/GaN6周期の多重量子井戸発光層を意味し、LEDチップ1の発光駆動時において、波長460(nm)の青色光を出射する。
また、ノンドープGaN基板10は、(InGaN/GaN)×6発光層23とほぼ同等の2.5前後の屈折率を有する。これは、従来のLEDチップにおけるサファイヤ(屈折率;1.7)を用いる場合に比べて、光取り出し効率の向上を果たすのに有効である。
【0028】
分離溝30の形成領域においては、ノンドープGaN基板10にまで掘り下げられており、表面が絶縁膜としてのSi膜28で被覆されている。発光素子部20における分離溝30との境界部分には、棚状になったn−GaNクラッド層22の上にTi/Auからなるn側電極27が形成されている。そして、n型電極27と隣り合う発光素子部20におけるp型電極26との間は、Ti/Pt/Auからなるブリッジ配線40によって接続されている。
【0029】
一方、ノンドープGaN基板10の下面には、微少な四角断面の凹部11(例えば、1μm周期で形成された凹部)が表面全体にわたって形成されている。このようにノンドープGaN基板10における凹部11が形成された表面は、(InGaN/GaN)×6発光層23からの出射光を散乱あるいは透過しやすくする機能を果たす。そして、上述のように、ノンドープGaN基板10の表面上には、凹部11を埋めるように被膜70が形成されている。この被膜70は、透光性を有するポリイミド樹脂を主成分として形成されており、中に(Sr、Ba)SiO:Eu2+などの黄色蛍光体とSiOなどの超微粒子が分散した状態で含有されている。被膜70は、薄い部分(凹部11のない部分)での厚みが80(μm)となるように、且つ、表面が略平坦となるように形成されている。
【0030】
なお、上記凹部11については、その形成形態によっては、フォトニッククリスタル(PC構造)あるいはフォトニックバンドギャップ(PBG)構造と呼ばれるものとなり、光散乱機能とは異なる機能を果たすことにもなる。即ち、これらの構成をとることで、光を透過し易くする機能を果たし得る。
本実施の形態で被膜70の厚みを80(μm)に設定したのは、(InGaN/GaN)×6発光層23から発する青色の励起光(ピーク波長範囲:400nm以上500nm以下の波長範囲に主発光ピーク)と、これの一部を被膜70が受けることにより励起発光する黄色光(ピーク波長範囲:550nm以上600nm以下の波長範囲に主発光ピーク)とが混色されることによって、LEDチップ1として白色光を得ることができるようにするためである。
【0031】
なお、ノンドープGaN基板10における凹部11については、上述のように、本実施の形態では四角の凹部としたが、光取り出し効率の向上が図れる範囲であれば、形状およびサイズに限定を受けるものではない。例えば、丸状、ハニカム状、直線状などの凹部あるいは溝などを採用することもできる。ただし、凹部11の形成に当たっては、(InGaN/GaN)×6発光層23からの光の波長をλとするとき、λ/4以上の周期で凹部11を形成しておくことが、光取り出し効率という観点から望ましい。
【0032】
図2(b)に示すように、LEDチップ1は、各発光素子部20間がブリッジ配線40で接続されることによって、35の発光素子部20が直列接続されている。カソード電極50とアノード電極60とを介して、LEDチップ1に50(mA)の電流を流したとき、その動作電圧は、120(V)となる。なお、LEDチップ1への電力供給に際しては、実装基板などへの接続等によりLEDチップ1で生じる熱の排出路を確保しておくことが望ましい。
【0033】
なお、本実施の形態に係るLEDチップ1では、複数の発光素子部20を有する構成を採用したが、1チップに1の発光素子部を有する構成とすることも勿論可能である。
(LEDチップ1の製造方法)
次に、LEDチップ1の製造方法について、図3〜図4を用いて説明する。
図3(a)に示すように、有機金属気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;MOCVD法)を用いて、φ5(cm)、厚さ300(μm)のノンドープGaN基板10上にGaNバッファ層21、n−GaNクラッド層22、(InGaN/GaN)×6発光層23、p−GaNクラッド層24、p−GaNコンタクト層25の各層を順に積層する。
【0034】
次に、図3(b)に示すように、分離溝30を形成しようとする領域およびn型電極27を形成しようとする領域に相当する部分に、エッチングにより溝31を形成する。溝31は、n−GaNクラッド層22に到達する深さを有する。なお、図示はしていないが、溝31の形成にあたっては、その他の領域にマスクを配してエッチングを実施し、溝31の形成完了後にマスクを除去している。
【0035】
図3(c)に示すように、溝31の底面の一部領域をエッチングによってさらに掘り進む。そして、形成される溝32は、n−GaNバッファ層21を貫き、ノンドープGaN基板10にまで達する深さを有する。この溝32が分離溝30の元となる部分である。なお、溝32の形成には、エッチングに限らず、レーザ加工を用いることも可能である。
図3(d)に示すように、溝32の壁面を含めた表面を覆うように、Si膜28を形成する。Si膜28は、絶縁と表面保護という2つの目的から形成されるもので、スパッタ法などを用いて形成される。ここで、溝32においても、その側面および底面がSi膜28で覆われるにいたり、溝33が形成される。そして、この分離溝32については、基板10への切り込み深さが極めて浅く、表面的な形成であるので、基板10を折損することがない。
【0036】
次に、図4(e)に示すように、p型電極26を形成しようとする部分のSi膜28をエッチングにより除去した後、蒸着法を用いてRh/Pt/Auの膜を蒸着し、p型電極26を形成する。
図4(f)に示すように、分離溝30に隣り合う棚部分であるn型電極27を形成しようとする領域のSi膜28をエッチングで除去した後、蒸着法を用いてTi/Auの膜を蒸着し、n型電極27を形成する。同様に、隣り合う発光素子部20のp型電極26とn型電極27とを接続するように、Ti/Pt/Auからなるブリッジ配線40を形成する。
【0037】
ここから以降の工程が本実施の形態の最も特徴的な部分である。
図4(g)に示すように、ノンドープGaN基板10に対し、例えば、その厚みが150(μm)になるまで、ラップ・ポリッシュで裏面(図面での下面)を研磨する。その後に、図4(g)の拡大部分に示すように、エッチングによりノンドープGaN基板10の裏面に複数の凹部11を形成する。凹部11は、上述のように、1(μm)周期で形成され、各々の開口形状が四角形である。
【0038】
図4(h)に示すように、凹部11を形成したノンドープGaN基板10の裏面に対し、(Sr、Ba)SiO:Eu2+などの黄色蛍光体およびSiOなどの微粒子が分散状態で含有されたポリイミド酸溶液を塗布する。この際、凹部11の内方にも溶液が確実に充填され、気泡などを間に抱かないようにする。そして、これを350(℃)で加熱硬化させることで、膜形成が行われる。
【0039】
形成された膜については、(InGaN/GaN)×6発光層23から出射される光と、膜中の蛍光物質によって励起発光される光との混合により、最終的にLEDチップ1から白色光が出射されるように、膜の研磨を実施する。研磨には、ラップ・ポリッシュを用い、例えば、厚みが80(μm)となるまで実施する。これにより、被膜70の形成が完了する。
【0040】
なお、被膜70の主な構成要素としては、上記のポリイミド以外にも、エポキシ樹脂あるいは硬質シリコーン樹脂などを用いることもできる。その場合、150(℃)程度の加熱を実施することで硬化する。また、被膜70の厚みについては、(InGaN/GaN)×6発光層23から出射される青色光との関係、および被膜70の中における黄色蛍光体の含有率などによっても変わってくる。これを利用して、研磨の段階では、確実に所定の色温度が得られる厚みまで実施する。
【0041】
最後に、図示していないが、ダイシングにより個々のLEDチップ1を切り出して完成する。
なお、本実施の形態では、基板としてノンドープGaN基板10を用いたが、これの代わりに、より安価な、n−GaN基板上にAlGaN層などの高抵抗層を形成した基板を用いてもよい。その際には、分離溝については高抵抗層が残るように形成することが必要となる。
【0042】
(LEDモジュール100の構成)
上記LEDチップ1を有したLEDモジュール100について、図5を用いて説明する。
図5(a)に示すように、LEDモジュール100は、直径φ5(cm)の円盤形をしたコンポジット基板110と、この上に設けられた3つの発光部120とから構成されている。この内、コンポジット基板110には、後述する照明装置200への取り付けのための切り欠き部110a、および照明装置200からの電力の供給を受けるための端子130、140が設けられている。また、図示は省略しているが、コンポジット基板110の略中央には、照明装置200への取り付け時の操作性を向上させるのにガイド孔が開設されている。
【0043】
コンポジット基板110上における3つの発光部120の各々には、LEDチップ1が各1個実装されている。これについて、図5(b)の部分断面図を用いて説明する。
図5(b)に示すように、LEDチップ1は、コンポジット基板110における凹部111の底面に実装されている。LEDチップ1は、コンポジット基板10に対してフリップチップ実装されており、放熱性に優れている。そして、LEDチップ1が実装された凹部111の周囲には、これを取り囲むようにアルミ製の反射ミラー150が形成されている。反射ミラー150で囲まれた凹部111の内方には、樹脂層160が充填され、これによってLEDチップ1が封止されている。樹脂層160の構成材料としては、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0044】
また、反射ミラー150およびLEDチップ1を覆う樹脂層160は、その全体がレンズ層170により被覆されている。レンズ層170には、モールドによる一体成形が可能な樹脂材料や、あるいはガラス材料を用いることができる。LEDモジュール100の内部構造について、図5(a)のA−A断面である図5(b)を用いて説明する。
図5(b)の拡大部分に示すように、LEDチップ1は、そのp型電極26およびn型電極27がコンポジット基板110における配線層114に接続されている。配線層114の表面は、Auメッキが施されているとともに、各電極26、27と配線層114との間には、Au層180が介挿されているが、これは、LEDチップ1をコンポジット基板110にフリップチップ実装する際に配線層114の上に配したAuバンプである。
【0045】
図5(b)の拡大部分に示すように、コンポジット基板110は、厚さ1(mm)のアルミ層112と、その上に順に積層されたアルミナコンポジット絶縁層113、銅の配線層114から構成されている。また、図5では、図示していないが、配線層114の上にアルミナコンポジット絶縁層115が積層されている(図6参照。)。
アルミナコンポジット絶縁層113、115の層厚さは、100(μm)であり、配線層114の層厚さは、25(μm)である。
【0046】
LEDチップ1におけるp型電極26およびp型電極27は、上記配線層114にフリップチップ実装されている。この内、上記図1におけるカソード電極50とアノード電極60とが接続される配線層114の所定のパッドは、それぞれ端子130、140に電気的に繋がっている。これより、LEDモジュール100の駆動時においては、配線層114を介してLEDチップ1に電力が供給される。
【0047】
本発明の実施の形態に係るLEDモジュール100には、3つの発光部120を備えるが、全てが上述のような構造を有する。
なお、隣り合う発光素子部20におけるp型電極26とn型電極27との間は、上述のようにブリッジ配線40により接続されているが、コンポジット基板110への実装によっても接続されるようになっている。これは、LEDチップ1内における接続の確実性を向上させる目的と、発光駆動時にLEDチップ1で生じた熱を確実にコンポジット基板110の側に逃がすためである。
【0048】
(コンポジット基板110へのLEDチップ1の実装)
次に、コンポジット基板110に対してLEDチップ1を実装する方法について、図6および図7を用いて説明する。
図6に示すように、コンポジット基板110には、LEDチップ1を実装しようとする領域において、最上層のアルミナコンポジット絶縁層115が除去されている。実装される側のコンポジット基板110は、図7(a)に示すように、3つのLEDチップ1a、1b、1cが実装され得る領域を有し、配線層114により各々の正負極が端子130および端子140に接続されるようになっている。
【0049】
図7(b)に示すように、各LEDチップ1a、1b、1cが実装される領域における配線層114は、LEDチップ1の35の発光素子部20に対応するカソードパッド1151、アノードパッド1152、アイランドパッド1153にパターニングされている。この内、カソードパッド1151、アノードパッド1152が上述のように端子130、140に接続されている。また、それぞれのパッド1151〜1153上には、Auバンプ180が打たれている。
【0050】
なお、アイランドパッド1153は、上述のように、隣り合う発光素子部20におけるp型電極26とn型電極27との接続性を高める役割と、高い効率をもってLEDチップ1で生じた熱をコンポジット基板110に逃がすという役割を担う。コンポジット基板110に伝達された熱は、配線層114およびアルミナコンポジット絶縁層113を介して、アルミ層112から放熱される。即ち、アイランドパッド1153は、それぞれが独立して形成されているものであるが、上記の2つの重要な役割を担うものである。
【0051】
図6に戻って、コンポジット基板110にLEDチップ1をフリップチップ実装する場合には、真空コレット500でLEDチップ1における被膜70が形成された面を吸着し、LEDチップ1をコンポジット基板1の配線層114上におけるAuバンプ180に電極26、27が接触するまで下降させる。次に、電極26、27がAuバンプ180に押しつけられた状態を維持しながら、真空コレット500から超音波を印加する。この超音波の印加を受けて、Auバンプ180が軟かい状態となり、超音波の印加を停止することで実装が完了する。
【0052】
ここで、図6の拡大部分に示すように、LEDチップ1における真空コレット500が吸着する面には、被膜70が形成されている。上記のように吸着面である被膜70表面は、略平坦であるので、真空コレット500による確実な吸着が可能であり、また、この面を介しての真空コレット500からの超音波印加に際しても、そのエネルギロスが少ない。
【0053】
さらに、被膜70は、超音波印加時におけるノンドープGaN基板10の凹部11を破壊から保護するという機能も果たす。
(LEDモジュール100を備える照明装置200)
次に、LEDモジュール100を備える照明装置200について、図8および図9を用いて説明する。図8は、照明装置200の外観斜視図および下面図を示し、図9は、LEDモジュール100の取り付けに係る展開図を示す。
【0054】
図8(a)に示すように、ラッパ状の器具210と、その内方に取り付けられるLEDモジュール100とから構成されている。器具210には、商用電源から供給された交流電力(例えば、100V、50/60Hz)をLEDモジュール100を発光駆動するのに必要とされる直流電力に変換する電力変換回路(不図示)を備えている。
図8(b)に示すように、照明装置200におけるLEDモジュール100は、器具210の内方の取り付け面にコンポジット基板110のアルミ層112が密着する状態に配されている。
【0055】
次に、図9に示すように、器具210におけるLEDモジュール100の取り付け面には、LEDモジュール100のコンポジット基板110の形状に合わせた円形の凹部211が形成されている。凹部211は、その底面が略平坦になっており、内側壁の開口部よりの部分には雌ネジ(不図示)が設けられている。また、この雌ネジと底面との間における内側壁からはガイド212およびフレキシブル端子213、214が突設されている。これらのガイド212、フレキシブル端子213、214の配置は、LEDモジュール100における切り欠き部110aおよび端子130、140の位置に対応している。また、器具210の凹部211の底面中央には、ガイドピン215が立設されている。
【0056】
なお、フレキシブル端子213、214については、器具210における凹部211の底面には接合されておらず、また、折り曲げ自由な構成を有する。そして、凹部211に対してLEDモジュール100を挿入する際には、前もって両フレキシブル端子213、214を、LEDモジュール100をはめ込む前に凹部211の内側壁に沿うように折り曲げておく。
【0057】
このような構造の器具210に対してLEDモジュール100を装着するには、まずガイド212をLEDモジュール100のガイド孔に挿入し、且つガイドピン215に切り欠き部110aを沿わせて、LEDモジュール100を器具210の底面に向けてはめ込んでゆく。そして、器具210の凹部211の底面にLEDモジュール100が載置されたところで、先に凹部211の内側壁に沿うように折り曲げたフレキシブル端子213、214を、LEDモジュール100の端子130、140の各々と接続されるようにクランク状に折り返す。その後、LEDモジュール100の外周縁にO−リング220を載置し、これを挟み込むようにリング状ネジ230を凹部211の内周壁に設けられた雌ネジに螺合させる。リング状ネジ230が完全に螺合しきった時点で、器具210へのLEDモジュール100の装着が完了する。
【0058】
なお、本実施の形態に係る照明装置200では、放熱効果を高めるために、LEDモジュール100の裏面と器具210における凹部211の底面との間にシリコングリスを塗布している。また、器具210の笠部分における内壁面には、LEDモジュール100からの光を高い効率で外部に取り出すために、高反射加工が施されている。
上記のように構成された照明装置200では、商用電源から供給された交流電力が器具内の電力変換回路で直流電力に変換された後、端子130、140を通してLEDモジュール100に電流150(mA)が供給される。供給されたLEDモジュール100では、3つの発光部120がそれぞれ白色光を発する。そして、このときLEDチップ1で生じる熱は、コンポジット基板110におけるアルミ層112を介して器具210に逃がされる。よって、この照明器具200では、発光駆動を長時間持続した場合にも、LEDチップ1の劣化が抑制され、またその発光効率も高く維持される。
【0059】
また、器具210の笠部分に施された高反射加工によって、照明装置200からは、LEDモジュール100から出射された白色光の内の90(%)以上の光が取り出される。
本実施の形態に係る照明装置200が出射する白色光のスペクトル分布を、図10に示す。図10に示すように、本実施の形態に係る照明装置200は、色温度5400(K)、平均演色70のスペクトルの白色光を出射し、発光スペクトルは、波長460(nm)近傍および560(nm)近傍で相対強度のピークを示す。この内、波長460(nm)近傍では、鋭いピークを示す。また、全光束1000(lm)、中心光度2000(cd)であった。
【0060】
なお、本実施の形態に係る照明装置200では、(InGaN/GaN)×6発光層23から出射される青色光と被膜70で励起発光する黄色光とを合成して白色光を得ているために、平均演色評価数が70程度であるが、例えば、赤色光を出射するCaーAlーSiーO−N系オキシナイトライド蛍光ガラスなどを被膜70に含有させれば、平均演色評価数を改善することも可能である。
【0061】
(LEDチップ1およびこれを備えるLEDモジュール100、照明装置200の優位性)
上記のように本実施の形態に係るLEDチップ1は、光の出射側であるノンドープGaN基板10の表面に凹部11が形成され、さらにこれを覆うように被膜70が形成されている。よって、上記図6のように、コンポジット基板110に対してLEDチップ1をフリップチップ実装する際に、ノンドープGaN基板10の凹部11が確実に保護される。また、フリップチップ実装時において、真空コレット500でLEDチップ1を確実に吸着することができ、実装時の位置ずれを生じにくい。さらに、被膜70によって真空コレット500からの超音波の印加に際しても、印加した超音波エネルギが真空コレット500とLEDチップ1との間で弱められることがなく、確実な実装が実現される。
【0062】
このようなLEDチップ1を備えるLEDモジュール100、さらには照明装置200では、LEDチップ1におけるノンドープGaN基板10の凹部11が確実に保護されていることから高い光取り出し効率が得られ、且つ実装に際しての確実な接合性が得られることから、高い発光効率を有する。
なお、本実施の形態に係るLEDチップ1は、出射側に電極などの光を遮るものがないので、照射面に障害物の影が現れるようなことがないという優位性も備える。
(実施の形態2)
実施の形態2においても、半導体発光装置としてのLEDチップ3を一例に説明を進めてゆく。
【0063】
(LEDチップ3の構成)
本実施の形態に係るLEDチップ3は、上記図1で示したLEDチップ1と類似した外観形状を有する。即ち、各々が285(μm)×400(μm)の発光素子部320が7×5のマトリクス状に配され、LEDチップ3全体のサイズが2(mm)×2(mm)である。以下では、LEDチップ3の構成について、LEDチップ1との相違点を主におき、図11を用いて説明する。図11では、(a)にLEDチップ3の一部断面を示し、(b)に後述する被膜370を除去した状態でのLEDチップ3の上面図を示す。
【0064】
図11(a)に示すように、LEDチップ3は、ノンドープ4H−SiC基板310の上に、AlGaNバッファ層321(厚さ30nm)、n−Al0.1Ga0.9Nクラッド層322(Siドープ量3×1018cm−3、厚さ1.5μm)、In0.03Ga0.97N(3nm)/Al0.05Ga0.95N(5nm)×5発光層323、p−Al0.1Ga0.9Nクラッド層324(Mgドープ量3×1019cm−3、厚さ200nm)、p−GaNコンタクト層325(Mgドープ量3×1019cm−3、厚さ500nm)が順に積層され構成されている。この内、In0.03Ga0.97N/Al0.05Ga0.95N×5発光層323は、In0.03Ga0.97N/Al0.05Ga0.95N5周期の多重量子井戸発光層を意味し、LEDチップ3の発光駆動時において、波長380(nm)の近紫外光を出射する。
【0065】
また、ノンドープ4HーSiC基板310は、In0.03Ga0.97N/Al0.05Ga0.95N×5発光層323と略同等の2.3前後の屈折率を有する。
分離溝330、n型電極327、Si膜328およびブリッジ配線340などの構成については、上記LEDチップ1と同様であるので、説明を省略する。
図11(a)に示すように、LEDチップ3におけるノンドープ4HーSiC基板310の下面には、凹部が形成されておらず、Ni/Al/Pt/Au層380が形成されている。また、p−GaNコンタクト層325の上には、Ni/Auからなるp型電極326が形成されているが、これらp−GaNコンタクト層325の層表面からp型電極326を貫く複数の凹部326aが形成されている。これについて、図11(b)を用いて説明する。
【0066】
図11(b)に示すように、凹部326aは、1(μm)周期を有して形成された円形状を有するものであり、上述の通り、In0.03Ga0.97N/Al0.05Ga0.95N×5発光層323からの出射光を散乱あるいは透過し易くする機能を果たす。この凹部326aは、In0.03Ga0.97N/Al0.05Ga0.95N×5発光層323から出射された近紫外光の出射領域であるp型電極326の形成領域全体にわたる。
【0067】
図11(a)に戻って、LEDチップ3における上面(電極326、327形成側表面)は、透光性を有する被膜370で全体が覆われている。ただし、図示はしていないが、上記図1のカソード電極50およびアノード電極60に相当する部分には、被膜370の形成はない。
被膜370は、透光性を有する硬質シリコーン樹脂を主成分とし、凹部326aを完全に埋め込み、且つ表面が略平坦となるように形成されており、膜厚さ50(μm)を有している。また、被膜370の中には、In0.03Ga0.97N/Al0.05Ga0.95N×5発光層323から出射される近紫外光で励起発光する蛍光体や、SiOの微粒子などが分散された状態で含有されている。この蛍光体の選択については、上記近紫外光により励起され、結果的にLEDチップ3から白色光が出射されるようなものとすればよく、例えば、以下のような組み合わせを採用することができる。
(例1)近紫外光で励起され青色光を放つ青色蛍光体+近紫外光で励起され緑色光を放つ緑色蛍光体+近紫外光で励起され赤色光を放つ赤色蛍光体
(例2)(上記例1の組み合わせ)+近紫外光で励起され黄色光を放つ黄色蛍光体
(例3)近紫外光で励起され青色光を放つ青色蛍光体+近紫外光で励起され黄色光を放つ黄色蛍光体
(例4)(上記例3の組み合わせ)+近紫外光で励起され赤色光を放つ赤色蛍光体
(例5)近紫外光で励起され青色光を放つ青色蛍光体+青色蛍光体が放つ青色光で励起され緑色光を放つ緑色蛍光体+青色蛍光体が放つ青色光で励起され赤色光を放つ赤色蛍光体
(例6)近紫外光で励起され青色光を放つ青色蛍光体+青色蛍光体が放つ青色光で励起され緑色光を放つ緑色蛍光体+緑色蛍光体が放つ緑色光で励起され赤色光を放つ赤色蛍光体
なお、上記については、あくまでも例示であり、最終的にLEDチップ3から白色光が得られる組み合わせであれば、これに限定を受けるものではない。
【0068】
また、上記例示においては、青色光は、400(nm)以上500(nm)以下の範囲の波長領域に主発光ピークを有する光、緑色光は、500(nm)以上550(nm)以下の範囲の波長領域に主発光ピークを有する光、赤色光は、600(nm)以上680(nm)以下の範囲の波長領域に主発光ピークを有する光、黄色光は、550(nm)以上600(nm)以下の範囲の波長領域に主発光ピークを有する光を示すものである。
【0069】
具体的には、以下のような蛍光体を用いることができる。
青色蛍光体;(Ba、Sr)MgAl1017:Eu2+
(Ba、Sr、Ca)10Mg(POCl:Eu2+
緑色蛍光体;BaMgAl1017:Eu2+、Mn2+
(Ba、Sr)SiO:Eu2+
(Al、Ga)12:Ce3+
黄色蛍光体;(Y、Gd)Al12:Ce3+
(Sr、Ba)SiO:Eu2+
赤色蛍光体;LaS:Eu3+
CaS:Eu2+
また、被膜370に含有される物質の内、SiOは、中心粒径が数10(nm)〜数100(nm)の超微粒子である。含有する微粒子については、上記で示したSiO以外に、Al、ZnO、Y、TiO、ZrO、HfO、SnO、Ta、Nb、BaSO、ZnS、Vなどや、あるいはこれらを混合したものを用いることもできる。
【0070】
このような構成を有するLEDチップ3では、上記図2(b)と同様に、35の発光素子部320が直列接続された回路構成を有し、In0.03Ga0.97N/Al0.05Ga0.95N×5発光層323からの近紫外光が被膜370で白色光に変換され、図11(a)における上面側より出射される。LEDチップ3の動作電圧は、放熱を確保した状態で50(mA)の電流を供給したとき、120(V)である。
【0071】
(LEDチップ3の製造方法)
次に、LEDチップ3の製造方法について、図12を用いて説明する。なお、LEDチップ3の製造にあっては、使用材料の違いはあるものの、上記図4(f)の段階まで、LEDチップ1の製造方法と重複するので、以下では、それ以降の部分について説明する。
図12(a)には、p型電極326、n型電極327の形成までが完了した状態を示す。
【0072】
次に、図12(b)に示すように、ノンドープ4HーSiC基板310の下面側を、厚さが150(μm)となるまで研磨し、その免状に蒸着方を用いて、Ni/Al/Pt/Au層380を形成する。
図12(c)に示すように、p型電極326の形成領域に対して、エッチングによって、上記図11(b)に示すパターンで凹部326aを形成する。このとき、凹部326aの底面は、p−GaNコンタクト層325の層表面である。凹部326aは、上述のように、周期が1(μm)で、開口形状が円形である。
【0073】
そして、チップの上面の全体に蛍光体を含有するシリコーン樹脂を塗布し、これを150(℃)の温度で加熱硬化させることで被膜370が形成される。なお、シリコーン樹脂の塗布にあたっては、凹部326aの内方に気泡などが残らないようにする。なお、カソード電極およびアノード電極に相当する箇所については、シリコーン樹脂が塗布されないようにマスクしておく。
【0074】
最後に、ラップ・ポリッシュを用いて、厚みが50(μm)となるまで研磨した後、ダイシングにより、個々のLEDチップ3を切り出して製造が完了する。
(LEDモジュールの構成)
LEDチップ3を備えるLEDモジュールの構成について、図13を用いて説明する。図13では、(a)に当該LEDモジュールの一部断面図、(b)にLEDチップ3と配線層414との接続状態図を示す。
【0075】
図13(a)に示すように、LEDモジュールは、凹部411(開口径:φ3mm)が設けられたセラミックス基板410と、この凹部411の底面に接合されたLEDチップ3とを主な要素として構成され、セラミック基板410の上であって、凹部411を取り囲むようにアルミ製の反射ミラー450(厚さ:0.5mm、上部開口径:4mm)が取り付けられている。そして、反射ミラー450で取り囲まれた凹部411の内部には、LEDチップ3の固定を確実にするための樹脂層460が充填されている。樹脂層460の上面は、反射ミラー450の上面と略面一となっており、これらの上面を覆うようにレンズ層470が形成されている。
【0076】
図13(a)に示すように、セラミックス基板410は、積層構造を有した直径φ5(cm)の基板であり、下から順に、厚さ0.5(mm)のAlN層412、厚さ25(μm)の銅あるいはタングステンからなる配線層414、さらにその上にセラミックス層415が積層された形態を有する。そして、凹部411においては、一番上層のセラミックス層415が除去されており、配線層414は、カソード電極側とアノード電極側とに二分するようにパターニングされている。そして、凹部411により露出された配線層414の部分(パッド部)では、その表面にAuメッキが施されている。また、図示はしていないが、セラミックス基板410の下面は、放熱特性を向上させるためにAuメッキが施されている。
【0077】
なお、セラミックス基板410には、AlN層412の代わりとして、Al、BN、MgO、ZnO、SiC、ダイヤモンドなどを材料とする層が形成されたものを用いることもできる。
LEDチップ3は、セラミックス基板410の凹部411の底面に載置されているが、Ni/Al/Pt/Au層380とセラミックス基板410の配線層414との間にはAu層480が介挿されている。これは、上述の通り、チップ実装の際にあらかじめ配線層414に設けたAuバンプである。図13(b)に示すように、LEDチップ3は、凹部411の内側壁の対向する二方から延出された2つの舌状のパッド(カソードパッド414a、アノードパッド414b)の内、大きな面積を有するカソードパッド414aの上に接続されている。そして、LEDチップ3におけるカソード電極350、アノード電極360は、それぞれカソードパッド414a、アノードパッド414bとボンディングワイヤ481、482で接続されている。
【0078】
なお、本実施の形態においては、ワイヤーボンディングによってLEDチップ3とセラミックス基板410上の各パッド414a、414bとを接続しているが、ワイヤーボンディングで電気的に接続する代わりに、LEDチップ3に貫通孔を設け、そこに金属を埋め込み、LEDチップ3の裏面に電極を設けて、バンプやハンダなどでパッドと接続してもよい。
【0079】
反射ミラー450、樹脂層460、レンズ層470などについては、上記LEDチップ1と同一の構成をとるので、説明を省略する。
また、図では示していないが、本実施の形態に係るLEDモジュールは、LEDチップ3の構成および接続形態を除き、上記図5と同一の構成を有する。そして、これを備える照明器具については、上記図8と同一の構成を有してもよいし、その他の構成とすることもできる。
【0080】
本実施の形態に係るLEDチップ3を備える照明装置では、LEDモジュールに150(mA)の直流電力が供給されることによって、色温度4600(K)、平均演色評価数90の白色光を出射する。この照明装置における全光束は1000(lm)であり、中心光度は2000(cd)である。本実施の形態に係る照明装置の出射する白色光の発光スペクトルを図14に示す。
【0081】
図14に示すように、620(nm)あたりの波長領域において、相対強度の鋭いピークを有する。また、450(nm)〜620(nm)にかけての波長領域では、比較的高い相対強度を有する。
(LEDチップ3およびこれを備えるLEDモジュール、照明装置の優位性)
本実施の形態に係るLEDチップ3は、In0.03Ga0.97N/Al0.05Ga0.95N×5発光層323から出射された近紫外光の出射側となるp型電極326側に凹部326aが設けられており、これを覆うように被膜370が形成されている。このLEDチップ3をセラミックス基板410にチップ実装する際には、被膜370の表面を真空コレットで吸着し、これをセラミックス基板410に押しつけた後に、超音波を印加するのであるが、被膜370の形成により真空コレットによる吸着が確実に行え、また超音波印加の際にそのエネルギがp型電極326の凹部326aでロスすることがなく、確実な接合を実施できる。また、凹部326aでの超音波のロスが少なく、また、凹部326aの表面が被膜370によって保護されていることから、チップ実装時における超音波の印加により凹部326aが破壊されることもない。これらの事柄については、上記実施の形態1と同様である。
【0082】
以上のような優位性をLEDチップ3は有しているので、これを備えるLEDモジュールおよび照明装置では、上記実施の形態1と同様に、高い光取り出し効率が得られ、且つ、実装に際して確実な接合性が得られることから優れた放熱性を有する。よって、LEDモジュールおよび照明器具では、高い発光効率と長寿命という優位性を有する。
また、一般に、本実施の形態のLEDチップ3のように片面にp型電極326、n型電極327を配するような場合には、n型電極327部分の発光層を除去する必要があるために、その分だけ発光面積が狭くなることが避けられない。しかし、本実施の形態のLEDチップ3では、LEDチップ3内でブリッジ配線380を用いて個々の発光素子部間を接続しているので、ボンディングワイヤやバンプを用いて個々の発光素子部間を接続する場合に比べて、n型電極327の面積を十分狭くすることができる(例えば、100μm角程度に対して、10μm角程度まで可能。)。よって、LEDチップ3では、n型電極327の面積を狭くした分、発光層が下層に形成されているp型電極326の面積を広くとることができ、発光面積を広くすることができる。
【0083】
例えば、LEDチップにおける個々の発光素子部の面積が285(μm)×400(μm)であり、接合代が周囲25(μm)の範囲とした場合には、その実効面積は、82250(μm)となる。そして、n型電極の面積が10×10(μm)の本実施の形態に係るLEDチップ3の発光素子部1個あたりの発光面積は、82250−10×10=82150(μm)となる。同様に計算すると、上記100×100(μm)の面積のn型電極を有する従来のLEDチップにおける発光素子部1個あたりの発光面積は、72250(μm)となる。これらを比較すると、本実施の形態に係るLEDチップ3では、従来のものに比べて、その発光面積を1.13倍とすることができる。
【0084】
また、発光面積を広くすると、チップに同じ電流を流した場合に電流密度を減らすことができるので、発熱を抑制することができるし、同じ電流密度になるまで電流を増加させれば、光量を増加させることができる。
以上のことから、本実施の形態に係るLEDチップ3のように、チップ上において、ブリッジ配線を用いて発光素子間を接続する場合には、発光素子1個からなるLEDチップをワイヤボンディングやバンプで接続する場合に比べて、トータルとしてのチップ面積を同一とした場合にも発光面積を増やすことができるという優位性を有する。
【0085】
なお、本実施の形態に係るLEDチップ3においては、基板としてノンドープ4H−SiC基板310を用いたが、これの代わりに、n−SiC基板上にAlGaN層などの高抵抗層を形成した基板を用いることもできる。その場合には、高抵抗層が残るように分離溝を形成する必要がある。
また、LEDチップ3の内部において、カソード電極をn−SiC基板に接続しておくようにすれば、カソードパッドとの間におけるボンディングワイヤを省略することができる。
【0086】
このようにノンドープ4H−SiC基板の代わりにn−SIC基板を用いた場合には、n−SiC基板が金属並みの高い熱伝導性を有していることから、発光層を上にして実装した場合にも、発生した熱を実装基板に放熱させることができる。
また、熱伝導性では劣るものの、サファイア、AlN、Siなどを基板に用いることも可能である。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係るLED表示装置6の構成について、図15を用いて説明する。
【0087】
図15(a)に示すように、本実施の形態に係るLED表示装置6は、コンポジット基板61の主表面上の一部領域に、反射ミラー62、レンズ63が順に積層され、この領域に16行16列の合計256個の発光部66が形成された構成を有している。また、コンポジット基板61の主表面上における他の領域には、当該LED表示装置6とこれを駆動するための駆動回路との接続のための接続端子64、65が形成されている。これら接続端子64、65の各々は、コンポジット基板61の内層に形成された配線層615、616によって、各発光部66を構成するLEDチップ67に接続されている(図15(b)参照)。
【0088】
図15(b)に示すように、LED表示装置6における各発光部66は、コンポジット基板61の主表面上に配された導電ランド617にLEDチップ67がバンプ68をもって接合された構成、所謂、LEDチップ67がコンポジット基板61にフリップチップ実装された構成を有している。そして、LEDチップ67を取り囲むように反射ミラー62が配置され、これら全体を覆うようにレンズ63が形成されている。
【0089】
コンポジット基板61は、1層の金属層611とこれに積層された3層の絶縁層612〜614とからなり、絶縁層612、613間に配線層616、絶縁層613、614間に配線層615がそれぞれ形成された構成を有している。なお、導電ランド617と各配線層615、616との間は、ビアホールで接続されている。
図15(b)に示すように、LEDチップ67は、図2に示すLEDチップ1における各発光素子部20と同一の構造を有している。そして、図15(b)の拡大部分に示すように、ノンドープGaN基板671の光取り出し面側(図では、上面側)には、微少な四角断面の凹部6711(例えば、1μm周期で形成された凹部)が表面全体にわたって形成されている。
【0090】
ノンドープGaN基板671の表面上には、凹部6711を埋めるように被膜672が形成されている。この被膜672は、上記実施の形態1と同様に、透光性を有するポリイミド樹脂を主成分として形成されており、中に(Sr、Ba)SiO:Eu2+などの黄色蛍光体とSiOなどの超微粒子が分散した状態で含有されており、薄い部分(凹部6711のない部分)での厚みが80(μm)となるように、且つ、表面が略平坦となるように形成されている。これらの被膜672の構成などについては、上記実施の形態1と同様である。
【0091】
本実施の形態3に係るLED表示装置6では、上記実施の形態1と同様に、コンポジット基板61に対してLEDチップ67をフリップチップ実装する際の凹部6711の確実な保護、また、LEDチップ67を実装する際の位置ずれを生じ難くすることができる。さらに、被膜672によって真空コレットからの超音波の印加に際しても、印加した超音波エネルギが真空コレットとLEDチップ67との間で弱められることがなく、確実な実装が実現される。
【0092】
このような構成を有するLED表示装置6では、LEDチップ67におけるノンドープGaN基板671の凹部6711が確実に保護されていることから高い光取り出し効率が得られ、且つ実装に際しての確実な接合性が得られることから、高い発光効率を有する。
なお、本実施の形態に係るLED表示装置6は、一例を示すものであって、本発明がこれに限定されるものでない。例えば、コンポジット基板61の代わりに、TFT基板などを用いることもできる。
(実施の形態4)
以下では、実施の形態4について、図16を用いてその構成を説明する。本実施の形態では、垂直面発光レーザ(VCSEL;Vertical Cavity Surface Emitting Laser)装置を一例として用い説明する。
【0093】
図16(a)に示すように、本実施の形態に係る垂直面発光レーザ装置(以下では、「VCSEL装置」と記載する。)7は、SiC基板71の一方の主面(図16(a)での下面)に、カソード電極72が配され、他方の主面上(図16(a)での上面)の一部領域に蛍光体層74が形成され、同じ主面上の残りの領域にはアノード電極75が配されている。この内、SiC基板71における蛍光体層74で覆われた部分には、合計36箇所の垂直面発光レーザ(以下では、VCSEL)セル部73が形成されている。そして、一部切り欠き部分に示すように、各VCSELセル部73のアノード電極部738(図16(b)参照)とSiC基板71の主面上に配されたアノード電極75とは、Alブリッジ配線76によって接続されている。
【0094】
図16(b)に示すように、VCSEL装置7のC−C断面では、6つのVCSELセル部73が形成されている。同図の拡大部分に示すように、VCSELセル領域73は、SiC器板71をベースとして蛍光体層74が形成されたのとは反対側の主面に配されたカソード電極72と、蛍光体層74が形成された側の主面上に次のような層が積層され構成されている。SiC基板71上には、半導体DBR層731、nクラッド層732、多重量子井戸構造の活性層(以下では、「MQW層」と記載する。)733、pクラッド層734が順に積層され、これらの積層構造部分を取り囲むように、SiNパッシべーション膜735およびアノード電極部736が形成されている。そして、pクラッド層734の表面上であってアノード電極部736で取り囲まれた領域には、ITO層737、誘電体DBR層738が順に積層されている。
【0095】
このようにVCSEL装置7における各VCSELセル部73は、SiC基板71、カソード電極72および上記複数の構成要素731〜738により構成される。また、上述のように、本実施の形態に係るVCSEL装置7では、VCSELセル部73が形成された部分全体が蛍光体層74で覆われた構成を有するところに特徴を有する。即ち、上記実施の形態1〜3と同様に、VCSELセル部73の全体を蛍光体層74で被覆することによって、当該VCSEL装置7を実装しようとする際に、各VCSELセル部73のアノード電極部736などがダメージを受けることがなく、また、実装の確実性も高いものである。また、その他にも、上記実施の形態1、2と同様の効果を得ることができる。
【0096】
次に、本実施の形態に係るVCSEL装置7の製造方法について、図17および図18を用いて説明する。なお、図17および図18では、便宜上、1つのVCSELセル部73について図示している。
図17(a)に示すように、SiC基板71の一方の主表面上に、半導体DBR層731、nクラッド層732、MQW層733、pクラッド層734を順に積層する。
【0097】
図17(b)に示すように、pクラッド層734の表面上における一部領域、具体的にはVCSELセル部73を形成しようとする領域にマスク(不図示)を形成し、nクラッド層732をストッパ層とするエッチングを行う。これにより、nクラッド層732の表面の一部領域において、凸状にMQW層733およびpクラッド層734が残る。
図17(c)に示すように、半導体DBR層731とnクラッド層732とを上記エッチングに残ったMQW層732およびpクラッド層734よりもやや断面サイズが大きくなるようにエッチングする。この後に、図17(d)に示すように、SiC基板71の表面上からnクラッド層734の表面上における一部にまで続く状態で、Alブリッジ配線76を形成する。
【0098】
図18(e)に示すように、Alブリッジ配線76およびnクラッド層732の残る表面、さらにはpクラッド層734の表面の一部領域までを覆うように、SiNパッシベーション膜735を形成する。
次に、図18(f)に示すように、SiNパッシベーション膜735の表面上の一部領域およびpクラッド層734の一部領域に対してアノード電極部736の形成を行う。
【0099】
図18(g)に示すように、pクラッド層734の表面上におけるアノード電極部736で取り囲まれた領域にITO層737および誘電体DBR層738を順に積層する。そして、図18(h)に示すように、SiC基板71のもう一方の主表面全体にカソード電極72を形成する。
なお、図示を省略するが、図18(h)に示す工程の後に、上記各構成要素731〜738が形成されたSiC基板71の表面上における所要部分に蛍光体層74の形成を行う。最後に、図16に示す単位にSiC基板71を切り分けることで、VCSEL装置7におけるVCSELセル部73の形成が完了する。
【0100】
ここで、上述のように、VCSEL装置7の製造においては、VCSELセル部73の形成領域全体を覆うように、蛍光体層74の形成を行う。蛍光体層74の形成においては、その表面が略平坦となるようにする。このため、VCSEL装置7については、上述のように、基板等に別途実装するのであるが、その際にも蛍光体層74の表面を用いてチップ実装等を実施することができるので、上記優位性を有する。
【0101】
なお、本実施の形態では、VCSEL装置を一例としたが、略同一構成を有する共鳴共振型面発光ダイオード(RC−LED)装置などに適用しても同様の効果を奏することができる。
(その他の事項)
上記実施の形態1〜4は、本発明の構成および作用における特徴を説明するために、その一例として用いたものであり、本発明は、これらに何ら限定を受けるものではない。例えば、本実施の形態1、2では、発光層からの出射光とこれによって励起する蛍光体の励起光との合成によって、各々の発光部120から白色光を出射する構成としたが、単色のLEDモジュール、あるいは単色のLED光を合成して白色光を得るようにしてもよい。また、出射するのは、必ずしも白色光だけに限定されるものではなく、単色光でもよい。
【0102】
また、LEDチップ1、3における各被膜70、370には、蛍光体などを含有することとしたが、蛍光体などについては必ずしも含有されていなくてもよい。基本として、これら被膜は、LEDチップ1、3をフリップチップ実装あるいはチップ実装する際に、真空コレットでの吸着性の向上および超音波のエネルギロスの低減を目的として形成されているものであり、蛍光体の含有については必須要件ではない。
【0103】
また、上記実施の形態1では、被膜70を構成する材料として、ポリイミド、エポキシ、シリコーンなどの有機樹脂をあげたが、この代わりとしてゾルゲル法によるガラスや低融点ガラスなどを用いることもできる。具体的なガラス材料としては、例えば、以下のようなものを採用することができる。
(1)金属アルコキシド(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなど)を出発原料とするガラス材料
(2)セラミック前駆体ポリマー(ペルヒドロポリシラサンなど)からなるガラス材料
(3)酸化燐、酸化ボロンなどからなるガラス材料
なお、何れのガラス材料を用いる場合においても、凹凸構造上に材料を塗布(ポッティングやスピンコーティングなど)し、乾燥した後に、数百(℃)の温度で焼成することで、凹凸構造上に平坦な表面を有するガラス層(被膜)を形成することができる。
【0104】
また、上記実施の形態に係る各半導体発光装置については、実装時に必ずしも超音波の印加を伴うものでなくても、真空コレットなどでの吸着時における優位性を奏することができる。
また、上記実施の形態3、4で一例として用いた表示装置6やVCSEL装置7の各構成についても、本発明が有する特徴を奏しうる範囲内で適宜変更が可能である。
【0105】
さらに、本発明は、図19に示すような、所謂、SMD(Surface Mount Devece)に適用することも可能である。図19に示すように、本発明を適用したSMD8は、実装基板81の表面上に形成された一対の外部電極82a、82bに対して、LEDチップ83が間にバンプ84を介してフリップチップ実装され構成されている。そして、実装基板81上の外部電極82a、82bの一部領域およびLEDチップ83は、樹脂パッケージ85により覆われている。
【0106】
図19の拡大部分に示すように、SMD8におけるLEDチップ83は、上記実施の形態2などに示すLEDチップ67と同様に、チップ基板831の表面上に凹部8311が存在し、この凹部8311を埋めるように被膜8322が形成されている。このような構成を有するSMD8においても、LEDチップ83を実装基板81に実装する際のダメージなどを低減することが可能となり、上記実施の形態1〜4と同様の効果を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、高出力で、且つ、高光束を得ることができる半導体発光装置、照明装置および表示装置などを実現するのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の実施の形態1に係るLEDチップ1の外観斜視図である。
【図2】(a)は、LEDチップ1の一部断面図であり、(b)は、LEDチップ1における回路配線図である。
【図3】LEDチップ1の製造過程を示す工程図である。
【図4】LEDチップ1の製造過程を示す工程図である。
【図5】(a)は、LEDモジュール100の外観斜視図であり、(b)は、その一部断面図である。
【図6】LEDチップ1を実装基板110に対してフリップチップ実装する際の工程を示す概略図である。
【図7】(a)は、実装基板110の正面図であり、(b)は、LEDチップ実装部1aにおけるパッドの配置図である。
【図8】(a)は、本発明の実施の形態1に係る照明装置200の外観斜視図であり、(b)は、その下面図である。
【図9】照明装置200におけるソケット210に対するLEDモジュール100の取り付け方法を示す工程図である。
【図10】照明装置200における発光スペクトルを示す特性図である。
【図11】(a)は、本発明の実施の形態2に係るLEDチップ3の一部断面図であり、(b)は、その凹部326aの配置図である。
【図12】LEDチップ3の製造過程を示す工程図である。
【図13】(a)は、LEDチップ3が実装されてなる実装基板410の一部断面図であり、(b)は、LEDチップ3の実装箇所を示す上面図である。
【図14】LEDチップ3を備える照明装置における発光スペクトルを示す特性図である。
【図15】(a)は、本発明の実施の形態3に係るLED表示装置6の斜視図であり、(b)は、そのB部を示す断面図である。
【図16】(a)は、本発明の実施の形態4に係る垂直面発光レーザ装置7の斜視図(一部切り欠き)であり、(b)は、その一部断面図である。
【図17】垂直面発光レーザ装置7の製造方法を示す工程図である。
【図18】垂直面発光レーザ装置7の製造方法を示す工程図である。
【図19】変形例としてのSMDを示す断面図である。
【図20】従来構造のLEDチップ1100を実装基板1210に実装する際の工程を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層を備える半導体発光装置であって、
前記発光層の出射側には、表面に凹凸構造が設けられた光透過部が形成されているとともに、当該凹凸構造の上に更に透光性を有した被膜が形成されている
ことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
前記被膜は、その外表面が略平坦となる状態に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記被膜は、ポリイミドまたはエポキシまたはシリコーンを主な要素として構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記被膜は、ガラスを主な要素として構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記被膜には、前記発光層からの光によって励起する発光物質が含有されている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記被膜では、前記発光層から出射された光を白色光に変換する
ことを特徴とする請求項5に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記表面からは、前記発光層からの光と、前記発光物質の励起により得られる光との合成による白色光が出射される
ことを特徴とする請求項5に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記発光層からの光の波長をλとするとき、前記凹凸構造は、λ/4以上の周期をもって形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記発光層は、複数の構成層に挟まれた状態で、透光性基板の上に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項10】
前記凹凸構造は、前記透光性基板の出射側主面に形成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の半導体発光装置。
【請求項11】
前記透光性基板は、前記発光層と略同一の屈折率を有する材料から構成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の半導体発光装置。
【請求項12】
前記透光性基板を構成する材料は、GaN、SiC、AlNの中から選択されるものである
ことを特徴とする請求項11に記載の半導体発光装置。
【請求項13】
前記出射側と反対側の表面には、光を反射する反射層が形成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の半導体発光装置。
【請求項14】
当該半導体発光装置は、発光ダイオード装置である
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項15】
当該半導体発光装置は、垂直面発光レーザ装置である
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項16】
当該半導体発光装置は、共振面発光ダイオード装置である
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項17】
当該半導体発光装置は、表面実装型デバイスである
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項18】
実装基板と当該実装基板の表面上におけるパッドに実装されてなる半導体発光素子とを有する照明装置であって、
前記半導体発光素子は、発光層を備え、
前記発光層の出射側に、表面に凹凸構造が設けられた光透過部が形成されているとともに、当該凹凸構造の上に更に透光性を有した被膜が形成されてなる構成を有する
ことを特徴とする照明装置。
【請求項19】
前記被膜は、その外表面が略平坦となる状態に形成されている
ことを特徴とする請求項18に記載の照明装置。
【請求項20】
前記被膜には、前記発光層からの光によって励起する発光物質が含有されている
ことを特徴とする請求項18に記載の照明装置。
【請求項21】
実装基板と当該実装基板の表面上におけるパッドに実装されてなる複数の半導体発光素子とを有する表示装置であって、
前記半導体発光素子の各々は、発光層を備え、
前記発光層の出射側に、表面に凹凸構造が設けられた光透過部が形成されているとともに、当該凹凸構造の上に更に透光性を有した被膜が形成されてなる構成を有する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項22】
前記被膜は、その外表面が略平坦となる状態に形成されている
ことを特徴とする請求項21に記載の表示装置。
【請求項23】
前記被膜には、前記発光層からの光によって励起する発光物質が含有されている
ことを特徴とする請求項21に記載の表示装置。
【請求項24】
発光層を介した状態で複数の層が積層された積層体に対し、前記発光層の出射側に表面に凹凸構造を有した光透過部を形成するステップと、
前記凹凸構造の上に、これを覆う状態で透光性を有した被膜を形成するステップと
を有することを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
【請求項25】
前記被膜の材料には、前記発光層からの光によって励起される発光物質が含有されている
ことを特徴とする請求項24に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項26】
前記被覆するステップの後に、出射光が所望の白色となるのに相当する厚みまで、前記被膜を研磨するステップを有する
ことを特徴とする請求項25に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項27】
前記被膜の材料には、ポリイミドまたはエポキシまたはシリコーンを含む
ことを特徴とする請求項24に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項28】
前記被膜の材料には、ガラスを含む
ことを特徴とする請求項24に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項29】
前記凹凸構造は、透光性基板における出射側表面に形成される
ことを特徴とする請求項24に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項30】
前記透光性基板は、GaN、SiC、AlNの中から選択される材料から構成される
ことを特徴とする請求項29に記載の半導体発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2007−529105(P2007−529105A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519224(P2006−519224)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010244
【国際公開番号】WO2005/008791
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】