説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】半導体装置を構成する配線の信頼性向上を図る。
【解決手段】テトラメチルシランガスの流量を通常条件よりも下げて形成したSiCN膜SCN1(4MS↓)と、このSiCN膜SCN1(4MS↓)上に形成され、通常のテトラメチルシランガスの流量で形成したSiCN膜SCN2と、このSiCN膜SCN2上に形成されたSiCO膜SCOからバリア絶縁膜を構成する。これにより、耐透水性の向上と低誘電率化をバランス良く実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に関し、特に、銅配線を有する半導体装置、および、いわゆるダマシン法を使用して配線を形成する半導体装置の製造技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006−73569号公報(特許文献1)には、トリメチルシランガスとヘリウムガスとの流量比を調整することにより、Si−CHの組成比が高いSiCN膜上に、Si−CHの組成比が低いSiCN膜を形成する技術が記載されている。これにより、レジストポイゾニングを抑制できるとしている。
【0003】
国際公開第2010/125682号公報(特許文献2)には、銅配線上にSiCN膜を形成し、このSiCN膜上にSiCO膜を形成する技術が記載されている。このとき、SiCN膜は、銅配線からの銅の拡散を防止する機能を有する銅拡散防止膜であり、SiCO膜は、SiCN膜で発生するアミンの拡散を防止してレジストポイゾニングを抑制する膜であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−73569号公報
【特許文献2】国際公開第2010/125682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体チップを構成する半導体基板上には、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)が形成され、このMISFET上に多層配線が形成されている。近年では、半導体チップの高集積化を実現するため、多層配線の微細化が進められている。このため、配線の微細化による高抵抗化と、配線間の距離が縮まることによる寄生容量の増加が問題として顕在化してきている。つまり、多層配線には電気信号が流れるが、配線の高抵抗化と配線間の寄生容量の増加により、電気信号の遅延が発生するのである。例えば、タイミングが重要な回路では、配線を流れる電気信号の遅延が誤動作を引き起こし、正常な回路として機能しなくなるおそれがある。このことから、配線を流れる電気信号の遅延を防止するため、配線の高抵抗化の抑制と、配線間の寄生容量の低減が必要とされることがわかる。
【0006】
そこで、近年では、多層配線を構成する材料をアルミニウム膜から銅膜に代えることが行なわれている。すなわち、アルミニウム膜に比べて銅膜は抵抗率が低いので、配線を微細化しても、配線の高抵抗化を抑制できるからである。さらに、配線間の寄生容量を低減する観点から、配線間に存在する層間絶縁膜の一部を誘電率の低い低誘電率膜で構成することが行なわれている。以上のように、多層配線を有する半導体装置では高性能化を図るために、配線の材料として銅膜を使用し、かつ、層間絶縁膜の一部に低誘電率膜を使用している。
【0007】
このように配線として銅配線を使用する場合、通常、銅配線上に銅の拡散を防止するための銅拡散防止膜が形成される。この銅拡散防止膜は、例えば、SiCN膜から形成される。
【0008】
ここで、近年の半導体装置の小型化に伴い、配線の微細化も進んできている。ところが、配線の微細化に伴って、銅配線のエレクトロマイグレーション耐性が劣化する問題点が発生した。この原因を本発明者が検討したところ、銅拡散防止膜であるSiCN膜の薄膜化が原因であることが判明した。すなわち、銅配線の微細化に伴って、銅拡散防止膜であるSiCN膜の薄膜化も進んでいるが、このSiCN膜の薄膜化が進むと、SiCN膜の耐透水性が低下するのである。SiCN膜の耐透水性が低下すると、SiCN膜を通って銅配線へ水分が到達するため、この水分によって銅配線が酸化される。すると、SiCN膜と銅配線との密着性が低下するのである。SiCN膜と銅配線との密着性が高い場合には、SiCN膜によって銅配線を構成する銅が固定され、銅の移動によるエレクトロマイグレーションが抑制される。しかし、銅が酸化されて、SiCN膜と銅配線との密着性が低下すると、SiCN膜による銅の固定がされにくくなるため、銅が容易に移動しやすくなり、エレクトロマイグレーション耐性が低下するのである。
【0009】
さらに、例えば、SiCN膜の薄膜化によって、SiCN膜の耐透水性が低下すると、SiCN膜を通って銅配線へ水分が到達するため、この水分によって銅配線を構成する銅がイオン化する。そして、イオン化した銅は、層間絶縁膜中へ移動し、この結果、層間絶縁膜の線間TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)が低下する問題点もある。
【0010】
本発明の目的は、半導体装置を構成する配線の信頼性向上を図ることにある。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0013】
代表的な実施の形態における半導体装置は、(a)半導体基板と、(b)前記半導体基板上に形成された層間絶縁膜と、(c)前記層間絶縁膜に埋め込むように形成された配線と、(d)前記配線を形成した前記層間絶縁膜上に形成された第1SiCN膜と、を備える。そして、(e)前記第1SiCN膜上に形成された第2SiCN膜と、(f)前記第2SiCN膜上に形成された第1絶縁膜と、(g)前記第1絶縁膜上に所定の層間絶縁膜と、前記所定の層間絶縁膜内に形成された所定の配線とにより形成された所定の配線層と、を備える。ここで、前記第1絶縁膜は、SiCO膜、あるいは、酸化シリコン膜から形成されており、前記層間絶縁膜及び前記所定の層間絶縁膜は低誘電率膜である。さらに、前記第1SiCN膜に含まれるメチル基の含有量と、前記第2SiCN膜に含まれるメチル基の含有量が異なることを特徴とするものである。
【0014】
また、代表的な実施の形態における半導体装置は、(a)半導体基板と、(b)前記半導体基板上に形成された層間絶縁膜と、(c)前記層間絶縁膜に埋め込むように形成された配線と、(d)前記配線を形成した前記層間絶縁膜上に形成されたSiCN膜と、を備える。そして、(e)前記SiCN膜上に形成された第1絶縁膜と、(f)前記第1絶縁膜上に所定の層間絶縁膜と、前記所定の層間絶縁膜内に形成された所定の配線とにより形成された所定の配線層と、を備える。ここで、前記第1絶縁膜は、SiCO膜、あるいは、酸化シリコン膜から形成されており、前記層間絶縁膜及び前記所定の層間絶縁膜は低誘電率膜である。さらに、前記SiCN膜の膜厚方向におけるメチル基の含有量が異なることを特徴とする。
【0015】
また、代表的な実施の形態における半導体装置の製造方法は、(a)半導体基板上に第1層間絶縁膜を形成する工程と、(b)前記(a)工程後、前記第1層間絶縁膜に第1配線溝を形成する工程と、を備える。そして、(c)前記(b)工程後、前記第1配線溝に第1配線を形成する工程と、(d)前記(c)工程後、前記第1配線を形成した前記第1層間絶縁膜上に、メチル基を含む第1原料ガスを使用したCVD法により第1SiCN膜を形成する工程と、を備える。さらに、(e)前記(d)工程後、前記第1SiCN膜上に、メチル基を含む前記第1原料ガスを使用したCVD法により第2SiCN膜を形成する工程と、(f)前記(e)工程後、前記第2SiCN膜上に、SiCO膜あるいは酸化シリコン膜からなる第1絶縁膜を形成する工程と、を備える。その後、(g)前記(f)工程後、前記第1絶縁膜上に第2層間絶縁膜と、前記第2層間絶縁膜内に形成された第2配線とを含む配線層を形成する工程と、を備える。ここで、前記第1層間絶縁膜及び前記第2層間絶縁膜は低誘電率膜であり、前記(d)工程で使用される前記第1原料ガスの流量と、前記(e)工程で使用される前記第1原料ガスの流量が異なることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0017】
半導体装置を構成する配線の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明者が検討した配線構造の一部を示す断面図である。
【図2】SiCN膜とSiCO膜の膜厚と、銅配線でのエレクトロマイグレーション特性の関係について示すグラフである。
【図3】通常の条件でのテトラメチルシランガス(4MS)を使用して形成されたSiCN膜と、通常よりもテトラメチルシランガス(4MS)の流量を下げた条件で形成されたSiCN膜において、それぞれのエレクトロマイグレーション特性について膜厚を変えて測定した結果を示すグラフである。
【図4】通常の条件でのテトラメチルシランガス(4MS)を使用して形成されたSiCN膜と、通常よりもテトラメチルシランガス(4MS)の流量を下げた条件で形成されたSiCN膜において、それぞれの線間TDDB特性について膜厚を変えて測定した結果を示すグラフである。
【図5】SiCN膜の耐透水性を確認する実験を示す模式図である。
【図6】テトラメチルシランガスの流量の相対値を示す表である。
【図7】SiCN膜の膜厚が20nmの場合に酸化シリコン膜の残留ストレス(残留応力)がどのように変化するかについて結果を示すグラフである。
【図8】SiCN膜の膜厚が10nmの場合に酸化シリコン膜の残留ストレス(残留応力)がどのように変化するかについて結果を示すグラフである。
【図9】SiCN膜の膜厚が5nmの場合に酸化シリコン膜の残留ストレス(残留応力)がどのように変化するかについて結果を示すグラフである。
【図10】実施の形態1における半導体装値の構成を示す断面図である。
【図11】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図12】図11に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図13】図12に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図14】図13に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図15】図14に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図16】図15に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図17】図16に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図18】図17に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図19】図18に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図20】図19に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図21】図20に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図22】図21に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図23】図22に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図24】図23に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図25】図24に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図26】図25に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図27】図26に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図28】図27に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図29】実施の形態2における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図30】実施の形態3における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図31】実施の形態4における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図32】実施の形態4における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図33】図32に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図34】実施の形態5における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図35】実施の形態6における半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0020】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0021】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0022】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0023】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0024】
(実施の形態1)
<課題の検討>
例えば、配線として銅配線を使用する場合、通常、銅配線上に銅の拡散を防止するための銅拡散防止膜が形成される。この銅拡散防止膜は、例えば、SiCN膜から形成される。そして、このSiCN膜上には、例えば、後述するレジストポイゾニングを抑制するためのSiCO膜が形成される。具体的に、図1は、本発明者が検討した配線構造の一部を示す断面図である。図1に示すように、半導体基板上に形成された層間絶縁膜IL1に埋め込まれるように銅配線からなる第1層配線L1が形成されている。この第1層配線L1の上部には、銅拡散防止膜としてSiCN膜SCNが形成されており、このSiCN膜SCN上にSiCO膜SCOが形成されている。
【0025】
ここで、近年の半導体装置の小型化に伴い、配線の微細化も進んできているが、配線の微細化に伴って、銅配線(例えば、図1の第1層配線L1)のエレクトロマイグレーション耐性が劣化する問題点が顕在化してきている。
【0026】
具体的に、図2は、SiCN膜とSiCO膜の膜厚と、銅配線でのエレクトロマイグレーション特性の関係について示すグラフである。図2において、□印は、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が20nmの場合を示しており、○印は、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が10nmの場合を示している。また、△印は、SiCO膜の膜厚が10nmで、SiCN膜の膜厚が10nmの場合を示している。
【0027】
図2において、横軸はFailure Time(任意単位)を示しており、このFailure Timeは、一定方向に一定の電流を銅配線に流したときの銅配線の抵抗の変化がしきい値を超えるまでの時間を示している。つまり、一定方向に一定の電流を銅配線に流し続けるとエレクトロマイグレーションが生じ、このエレクトロマイグレーションによって抵抗が急激に上昇する現象が生じる。このため、この抵抗が急激に上昇する状態を検知して、銅配線にエレクトロマイグレーションによる劣化が生じていると判断するものである。すなわち、図2に示すFailure Timeは、定性的にエレクトロマイグレーションが生じるまでの時間を示しており、このFailure Timeが長いほど、銅配線のエレクトロマイグレーション特性が良好であることを示している。言い換えれば、Failure Timeが短いほど、銅配線のエレクトロマイグレーション特性が劣化しやすいことを示している。
【0028】
一方、図2の縦軸はCumulative Probability(累積確率)を示している。つまり、図2の縦軸は、検査対象が正規分布に従うものとして累積確率が示されている。この縦軸のうち重要な点は、確率の高い正規分布の中心(50%)でのFailure Timeである。
【0029】
図2に示すように、縦軸の累積確率が50%の位置でのFailure Timeを見てみると、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が20nmの場合(□印)が最もFailure Timeが長く、エレクトロマイグレーション特性が良好であることがわかる。これに対し、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が10nmの場合(○印)や、SiCO膜の膜厚が10nmで、SiCN膜の膜厚が10nmの場合(△印)の場合は、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が20nmの場合(□印)よりもFailure Timeが短くなっており、かつ、同等であることがわかる。したがって、Failure Timeは、SiCO膜の膜厚よりもSiCN膜の膜厚に大きく依存しており、SiCN膜の膜厚を20nmから10nmのように薄膜化すると、急激に短くなることがわかる。つまり、エレクトロマイグレーション特性が銅拡散防止膜であるSiCN膜の膜厚に大きく依存していることがわかる。
【0030】
<課題の検討から生まれた知見>
そこで、本発明者は、SiCN膜の膜厚が薄くなると、なぜ、エレクトロマイグレーション特性が劣化するのかについて検討を行った。ここで、本発明者は、SiCN膜の薄膜化が進むと、SiCN膜の耐透水性が低下することが銅配線のエレクトロマイグレーション特性を劣化させる原因であると考えたのである。つまり、SiCN膜が薄膜化すると、SiCN膜の耐透水性が低下するが、SiCN膜の耐透水性が低下すると、SiCN膜を通って銅配線へ水分が到達するため、この水分によって銅配線が酸化される。すると、SiCN膜と銅配線との密着性が低下するのである。SiCN膜と銅配線との密着性が高い場合には、SiCN膜によって銅配線を構成する銅が固定され、銅の移動によるエレクトロマイグレーションが抑制される。ところが、銅が酸化されて、SiCN膜と銅配線との密着性が低下すると、SiCN膜による銅の固定がされにくくなるため、銅が容易に移動しやすくなり、エレクトロマイグレーション特性が劣化すると考えたのである。したがって、SiCN膜の膜厚が薄くなっても、SiCN膜の耐透水性を維持あるいは向上させることができれば、銅配線のエレクトロマイグレーション特性の劣化を抑制できることになる。
【0031】
そこで、本発明者が上述した課題を解決する手段を検討したところ、本発明者は、以下に示す知見を獲得した。例えば、SiCN膜は、テトラメチルシランガス(4MS)とアンモニアガス(NH)を原料ガスとするCVD法(Chemical Vapor Deposition)で形成されるが、このとき、本発明者の検討によると、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた状態でSiCN膜を成膜すると、SiCN膜の耐透水性が向上するという知見を見出したのである。この理由として考えられるのは、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げて、SiCN膜を成膜すると、SiCN膜中に含有されるメチル基(CH)が減少し、この結果、SiCN膜の緻密化が図れるからと推測される。つまり、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げると、成膜されるSiCN膜に含有されるメチル基(CH)が減少する。そして、SiCN膜中に含有されるメチル基(CH)が減少すると、SiCN膜の緻密化が図れる結果、SiCN膜の耐透水性が向上すると考えられるのである。したがって、銅拡散防止膜として、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を下げた状態で成膜されたSiCN膜を使用することにより、SiCN膜の耐透水性を向上できる結果、SiCN膜を薄膜化しても銅配線のエレクトロマイグレーション特性を向上させることができると考えたのである。
【0032】
具体的に、図3は、通常の条件でのテトラメチルシランガス(4MS)を使用して形成されたSiCN膜と、通常よりもテトラメチルシランガス(4MS)の流量を下げた条件で形成されたSiCN膜において、それぞれのエレクトロマイグレーション特性について膜厚を変えて測定した結果を示すグラフである。
【0033】
図3において、□印は、通常のテトラメチルシランガス(4MS)の流量でSiCN膜を形成する場合を示しており、かつ、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が20nmの場合を示している。○印は、通常のテトラメチルシランガス(4MS)の流量でSiCN膜を形成する場合を示しており、かつ、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が10nmの場合を示している。また、△印は、通常のテトラメチルシランガス(4MS)の流量でSiCN膜を形成する場合を示しており、かつ、SiCO膜の膜厚が10nmで、SiCN膜の膜厚が10nmの場合を示している。
【0034】
同様に、■印は、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件でSiCN膜を形成する場合を示しており、かつ、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が20nmの場合を示している。●印は、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件でSiCN膜を形成する場合を示しており、かつ、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が10nmの場合を示している。また、▲印は、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件でSiCN膜を形成する場合を示しており、かつ、SiCO膜の膜厚が10nmで、SiCN膜の膜厚が10nmの場合を示している。
【0035】
図3の横軸はFailure Time(任意単位)を示しており、図3の縦軸はCumulative Probability(累積確率)を示している。図3に示すように、縦軸の累積確率が50%の位置でのFailure Timeを見てみる。まず、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が20nmの場合において、通常のテトラメチルシランガス(4MS)の流量でSiCN膜を形成する場合(□印)と、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件でSiCN膜を形成する場合(■印)とを比較すると、■印の場合の方が□印の場合よりもFailure Timeが長くなっていることがわかる。同様に、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が10nmの場合において、通常のテトラメチルシランガス(4MS)の流量でSiCN膜を形成する場合(○印)と、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件でSiCN膜を形成する場合(●印)とを比較すると、●印の場合の方が○印の場合よりもFailure Timeが長くなっていることがわかる。さらに、SiCO膜の膜厚が10nmで、SiCN膜の膜厚が10nmの場合において、通常のテトラメチルシランガス(4MS)の流量でSiCN膜を形成する場合(△印)と、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件でSiCN膜を形成する場合(▲印)とを比較すると、▲印の場合の方が△印の場合よりもFailure Timeが長くなっていることがわかる。つまり、SiCO膜の膜厚とSiCN膜の膜厚が同等である場合を比較すると、通常のテトラメチルシランガス(4MS)の流量でSiCN膜を形成する場合よりも、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件でSiCN膜を形成する場合の方がエレクトロマイグレーション特性を向上することができることがわかる。
【0036】
このことから、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件でSiCN膜を形成することにより、SiCN膜中に含有されるメチル基(CH)が減少してSiCN膜の緻密化が図れる結果、SiCN膜の耐透水性が向上して、銅配線のエレクトロマイグレーション特性を向上できるという知見は、妥当であることが図3に示される結果からも裏付けられる。
【0037】
さらに、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件で形成されたSiCN膜は、線間TDDBも向上できる利点も得られる。例えば、SiCN膜の耐透水性が低下すると、SiCN膜を通って銅配線へ水分が到達するため、この水分によって銅配線を構成する銅がイオン化してしまう。そして、イオン化した銅は、層間絶縁膜中へ移動し、この結果、層間絶縁膜の線間TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)が低下する。したがって、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件で形成されたSiCN膜を使用すると、SiCN膜の耐透水性が向上するため、SiCN膜を通過して銅配線へ水分が到達することを抑制できる。このため、水分による銅のイオン化が抑制される結果、銅イオンが層間絶縁膜へ拡散することによる線間TDDBの劣化も抑制できるのである。
【0038】
本発明者が課題を検討して辿り着いた知見は、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件でSiCN膜を形成すると、SiCN膜の耐透水性を向上できるというものである。この知見は、SiCN膜を通って銅配線に達する水分によって銅が酸化され、SiCN膜と銅配線との密着性を低下させる結果、銅配線のエレクトロマイグレーション特性が劣化することを抑制する観点から見出されたものであるが、同時に、SiCN膜の耐透水性が向上すると、SiCN膜を通って銅配線に達する水分によって銅がイオン化されることも抑制でき、この結果、銅イオンの層間絶縁膜への拡散による線間TDDB特性の劣化も抑制できるのである。つまり、SiCN膜の耐透水性の向上は、銅配線のエレクトロマイグレーション特性の向上の観点だけでなく、線間TDDB特性の向上の観点からも有益であることがわかる。
【0039】
具体的に、図4は、通常の条件でのテトラメチルシランガス(4MS)を使用して形成されたSiCN膜と、通常よりもテトラメチルシランガス(4MS)の流量を下げた条件で形成されたSiCN膜において、それぞれの線間TDDB特性について膜厚を変えて測定した結果を示すグラフである。
【0040】
図4において、□印は、通常のテトラメチルシランガス(4MS)の流量でSiCN膜を形成する場合を示しており、かつ、SiCO膜の膜厚が10nmで、SiCN膜の膜厚が10nmの場合を示している。△印は、通常のテトラメチルシランガス(4MS)の流量でSiCN膜を形成する場合を示しており、かつ、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が10nmの場合を示している。また、◇印は、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件でSiCN膜を形成する場合を示しており、かつ、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が10nmの場合を示している。
【0041】
同様に、○印は、通常のテトラメチルシランガス(4MS)の流量でSiCN膜を形成する場合を示しており、かつ、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が20nmの場合を示している。
【0042】
図4の横軸はLifetime(任意単位)を示しており、図4の縦軸はCumulative Failure(累積故障)を示している。図4の横軸に示されるLifetimeは、複数の銅配線間に存在する層間絶縁膜に流れるリーク電流があるしきい値電流を超えるまでの時間を示しており、層間絶縁膜の線間TDDB特性を示す指標となる。つまり、Lifetimeが長ければ長いほど層間絶縁膜に流れるリーク電流が少ない状態が継続することになることから、層間絶縁膜の線間TDDB特性が良好になることを意味している。言い換えれば、Lifetimeが短くなるほど、層間絶縁膜の線間TDDB特性が劣化することを意味する。一方、図4の縦軸に示されるCumulative Failure(累積故障)は、検査対象がワイブル分布に従うものとして累積確率が示されている。この縦軸のうち重要な点は、確率の高い確率分布の中心(63.2%)でのLifetimeである。
【0043】
図4に示すように、縦軸の累積確率が63.2%の位置でのLifetimeを見てみる。まず、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が20nmの場合において、通常のテトラメチルシランガス(4MS)の流量でSiCN膜を形成する場合(○印)のLifetimeが最も長くなっていることがわかる。これは、SiCN膜とSiCO膜の膜厚が20nmと厚くなっており、耐透水性が優れているからと考えられる。
【0044】
続いて、SiCO膜の膜厚が10nmで、SiCN膜の膜厚が10nmの場合において、通常のテトラメチルシランガス(4MS)の流量でSiCN膜を形成する場合(□印)のLifetimeが最も短くなっていることがわかる。これは、SiCN膜とSiCO膜の膜厚がともに10nmとなっており、SiCN膜の耐透水性が劣化しているからと考えることができる。
【0045】
次に、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が10nmの場合において、通常のテトラメチルシランガス(4MS)の流量でSiCN膜を形成する場合(△印)のLifetimeは、○印の場合と□印の場合の間となっていることがわかる。これは、△印の場合の膜厚(20nm/10nm)が、○印の場合の膜厚(20nm/20nm)と、□印の場合の膜厚(10nm/10nm)との中間の膜厚となっているからと考えられる。
【0046】
一方、SiCO膜の膜厚が20nmで、SiCN膜の膜厚が10nmの場合において、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件でSiCN膜を形成する場合(◇印)のLifetimeは、○印の場合と同等程度に長くなっていることがわかる。このことは、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件で形成されたSiCN膜の場合、通常のテトラメチルシランガス(4MS)の流量で形成されたSiCN膜の場合よりも半分の膜厚で同等の線間TDDBを確保できることを意味している。
【0047】
このことから、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件でSiCN膜を形成することにより、SiCN膜中に含有されるメチル基(CH)が減少してSiCN膜の緻密化が図れる結果、SiCN膜の耐透水性が向上して、層間絶縁膜の線間TDDB特性を向上できるという知見は、妥当であることが図4に示される結果からも裏付けられる。
【0048】
以上のように、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件で形成されたSiCN膜は、耐透水性に優れた性質を有することが明らかになったが、このテトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた条件で形成されたSiCN膜における耐透水性の優位性は、膜厚によってどのように変わるか、あるいは、どのような膜厚であっても優位性を保持できるかについて検討した。
【0049】
図5は、SiCN膜の耐透水性を確認する実験を示す模式図である。図5に示すように、Siウェハ上に、約700nmの膜厚の酸化シリコン膜(SiO膜)を形成し、この酸化シリコン膜上にSiCN膜を形成する。このような構造において、時間が経過すると、SiCNを通過して水分が酸化シリコン膜に到達する。すると、この水分の影響で酸化シリコン膜に内在する残留応力が変化する。したがって、この酸化シリコン膜の残留応力の変化を見ることにより、SiCN膜の耐透水性を評価することができる。すなわち、SiCN膜の耐透水性が高い場合、酸化シリコン膜へ到達する水分が減少するため、酸化シリコン膜の残留応力の変化は小さくなる。一方、SiCN膜の耐透水性が低い場合、酸化シリコン膜へ到達する水分が増加するため、酸化シリコン膜の残留応力の変化は大きくなる。このようにSiCN膜の耐透水性は、酸化シリコン膜の残留応力の経時変化を測定することにより把握することができる。
【0050】
以下では、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を変えて形成したSiCN膜について、図5に示した方法を使用して耐透水性を評価した結果を説明する。図6には、通常の形成条件で使用するテトラメチルシランガス(4MS)の流量を1とした場合、流量を下げたテトラメチルシランガス(4MS↓)の流量が0.82、さらに流量を下げたテトラメチルシランガス(4MS↓↓)の流量が0.64であることが示されている。このとき、図6には、通常の流量のテトラメチルシランガス(4MS)で形成したSiCN膜に含まれるSi−CH結合とSi−C結合の比が0.33であり、流量を下げたテトラメチルシランガス(4MS↓)で形成したSiCN膜に含まれるSi−CH結合とSi−C結合の比が0.28であることが示されている。また、図6には、さらに流量を下げたテトラメチルシランガス(4MS↓↓)で形成したSiCN膜に含まれるSi−CH結合とSi−C結合の比が0.25であることが示されている。
【0051】
以下では、通常の流量のテトラメチルシランガス(4MS)で形成されたSiCN膜と、流量を下げたテトラメチルシランガス(4MS↓)で形成されたSiCN膜と、さらに流量を下げたテトラメチルシランガス(4MS↓↓)で形成されたSiCN膜とについて、膜厚を変えながら耐透水性について評価した。
【0052】
図7は、SiCN膜の膜厚が20nmの場合に酸化シリコン膜の残留ストレス(残留応力)がどのように変化するかについて結果を示すグラフである。図7において、横軸は時間(経過時間)を示しており、縦軸は酸化シリコン膜に残留する残留ストレスを示している。酸化シリコン膜は、水分吸収により残留ストレスが変化する。そのため、酸化シリコン膜の残留ストレス変化からSiCN膜の透水性が定量的に評価できる。図7に示すように、さらに流量を下げたテトラメチルシランガス(4MS↓↓)で形成されたSiCN膜は、時間が経過しても酸化シリコン膜に残存する残留ストレスがほとんど変わらないことがわかる。また、流量を下げたテトラメチルシランガス(4MS↓)で形成されたSiCN膜においても、酸化シリコン膜に残存する残留ストレスは、通常の流量のものに比べて変化は小さく、更に流量を下げたものよりかは変化が大きい。一方、通常の流量のテトラメチルシランガス(4MS)で形成されたSiCN膜の場合、時間が経過するにつれて、大幅に酸化シリコン膜に残存する残留ストレスが変化していることがわかる。したがって、SiCN膜の膜厚が20nmの場合、SiCN膜を形成する際に使用するテトラメチルシランガスの流量を下げることにより、形成されるSiCN膜の耐透水性が向上することがわかる。つまり、膜厚が20nmの場合、テトラメチルシランガスの流量を下げてSiCN膜を形成すると、耐透水性が向上する効果が顕著に現れることがわかる。
【0053】
続いて、図8は、SiCN膜の膜厚が10nmの場合に酸化シリコン膜の残留ストレス(残留応力)がどのように変化するかについて結果を示すグラフである。図8において、横軸は時間(経過時間)を示しており、縦軸は酸化シリコン膜に残留する残留ストレスを示している。図8に示すように、さらに流量を下げたテトラメチルシランガス(4MS↓↓)で形成されたSiCN膜は、時間が経過しても酸化シリコン膜に残存する残留ストレスの変化量が小さいことがわかる。また、流量を下げたテトラメチルシランガス(4MS↓)で形成されたSiCN膜においても、さらに流量を下げた場合には及ばないものの、酸化シリコン膜に残存する残留ストレスの変化量は中程度であることがわかる。一方、通常の流量のテトラメチルシランガス(4MS)で形成されたSiCN膜の場合、時間が経過するにつれて、大幅に酸化シリコン膜に残存する残留ストレスが変化していることがわかる。したがって、SiCN膜の膜厚が10nmの場合は、SiCN膜の膜厚が20nmの場合の耐透水性には及ばないものの、SiCN膜を形成する際に使用するテトラメチルシランガスの流量を下げることにより、形成されるSiCN膜の耐透水性を向上できることがわかる。つまり、膜厚が10nmの場合でも、テトラメチルシランガスの流量を下げてSiCN膜を形成すると、耐透水性が向上する効果が現れることがわかる。
【0054】
次に、図9は、SiCN膜の膜厚が5nmの場合に酸化シリコン膜の残留ストレス(残留応力)がどのように変化するかについて結果を示すグラフである。図9において、横軸は時間(経過時間)を示しており、縦軸は酸化シリコン膜に残留する残留ストレスを示している。図9に示すように、さらに流量を下げたテトラメチルシランガス(4MS↓↓)で形成されたSiCN膜、流量を下げたテトラメチルシランガス(4MS↓)で形成されたSiCN膜、および、通常の流量のテトラメチルシランガス(4MS)で形成されたSiCN膜のいずれの場合も、酸化シリコン膜に残存する残留ストレスが時間の経過とともに大幅に変化していることがわかる。つまり、図9からわかるように、SiCN膜の膜厚を5nm程度にすると、もはや、テトラメチルシランガスの流量を下げてSiCN膜を形成しても、耐透水性が向上する効果が顕在化しないことがわかる。
【0055】
以上の結果をまとめると、膜厚が10nm以上ある場合は、テトラメチルシランガスの流量を下げてSiCN膜を形成することにより、SiCN膜の耐透水性が向上するという顕著な効果を得ることができるが、膜厚が5nm程度になると、テトラメチルシランガスの流量を下げてSiCN膜を形成しても、SiCN膜の耐透水性が向上する効果は見られなくなってしまうことがわかる。したがって、耐透水性を向上させる観点から、テトラメチルシランガスの流量を下げてSiCN膜を形成する場合であっても、少なくともSiCN膜の膜厚は10nm以上必要であることがわかる。
【0056】
<本発明者が新たに見出した課題>
上述したように、本発明者は、テトラメチルシランガスの流量を下げてSiCN膜を形成することにより、SiCN膜の耐透水性を向上できるという知見と、テトラメチルシランガスの流量を下げてSiCN膜を形成する場合であっても、膜厚を10nm以上にしなければ、耐透水性の効果を得ることができない知見を獲得した。そこで、通常のテトラメチルシランガスの流量で形成されるSiCN膜に代えて、テトラメチルシランガスの流量を下げて形成したSiCN膜を使用することが考えられる。この場合、SiCN膜の耐透水性を向上できることから、銅配線のエレクトロマイグレーション特性、および、層間絶縁膜の線間TDDB特性を向上できる効果が得られることが期待される。ただし、上述したように、耐透水性を向上させるためには、SiCN膜の膜厚が10nm以上必要であるので、最低でもSiCN膜の膜厚を10nmとすることが考えられる。実際には、耐透水性のマージンも確保することも考慮して、20nm程度の膜厚が必要となると考えられる。
【0057】
通常のテトラメチルシランガスの流量で形成される膜厚20nmのSiCN膜に代えて、テトラメチルシランガスの流量を下げて形成した膜厚が20nmのSiCN膜を使用する場合、SiCN膜の耐透水性が大幅に向上することが予想されることから、銅配線のエレクトロマイグレーション特性や層間絶縁膜の線間TDDB特性の向上といった性質の信頼性を向上できるものと期待される。
【0058】
ところが、本発明者は、通常のテトラメチルシランガスの流量で形成される膜厚20nmのSiCN膜に代えて、テトラメチルシランガスの流量を下げて形成した膜厚が20nmのSiCN膜を使用する構成を取ると新たな課題(副作用)が生じることを見出した。すなわち、テトラメチルシランガスの流量を下げて形成したSiCN膜は、耐透水性が向上するが、耐透水性が向上するメカニズムは、テトラメチルシランガスの流量を下げて形成される結果、SiCN膜に含まれるメチル基(CH)が減少し、このメチル基(CH)の減少に伴う膜の緻密化によって耐透水性が向上するというものである。ここで重要な点は、膜の緻密化によって耐透水性が向上するということである。すなわち、SiCN膜の耐透水性の向上は、膜の緻密化によって実現されているものということができる。ところが、SiCN膜の緻密化は耐透水性の観点から望ましいといえるが、誘電率を低下させる観点からは妥当とはいえない問題点がある。つまり、テトラメチルシランガス(4MS)の流量を通常よりも下げた状態で成膜されたSiCN膜は、SiCN膜の耐透水性を向上することができる反面、SiCN膜の誘電率が上昇してしまう問題点を含んでいることを本発明者が新たに見出したのである。
【0059】
例えば、配線間の寄生容量を低減する観点から、配線間に存在する層間絶縁膜の一部を誘電率の低い低誘電率膜で構成することが行なわれていることから、層間絶縁膜の一部を構成するSiCN膜もできるだけ低誘電率であることが望まれる。したがって、銅拡散防止膜であるSiCN膜においては、耐透水性を有するとともに、低誘電率であることが望まれることになる。つまり、通常のテトラメチルシランガスの流量で形成されるSiCN膜に代えて、テトラメチルシランガスの流量を下げて形成したSiCN膜を使用する構成は、耐透水性の観点に着目した思想であり、低誘電率化を図る点には着目したものではないのである。実際には、SiCN膜の耐透水性を向上させることが最重要であるが、できれば、誘電率の上昇を抑制しながら、耐透水性を向上させることが半導体装置の性能向上と信頼性の向上を両立させる上で重要となってくる。つまり、SiCN膜から構成される銅拡散防止膜には、耐透水性を向上させることができるとともに、誘電率の上昇を回避できる構造が望まれるのである。
【0060】
そこで、本実施の形態1では、耐透水性を有するとともに、低誘電率である銅拡散防止膜を実現するための工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態における技術的思想について説明する。
【0061】
<実施の形態1における半導体装置の構成>
図10は、本実施の形態1におけるデバイス構造を示す断面図である。図10において、シリコン単結晶からなる半導体基板1S上に複数のMISFETQが形成されている。複数のMISFETQは、素子分離領域で分離された活性領域に形成されており、例えば、以下に示す構成をしている。具体的には、素子分離領域で分離された活性領域にはウェルが形成されており、このウェル上にMISFETQが形成されている。MISFETQは、半導体基板1Sの主面上に、例えば、酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜を有し、このゲート絶縁膜上にポリシリコン膜と、このポリシリコン膜上に設けられたシリサイド膜(ニッケルシリサイド膜など)の積層膜からなるゲート電極を有している。ゲート電極の両側の側壁には、例えば、酸化シリコン膜からなるサイドウォールが形成されており、このサイドウォール下の半導体基板内に浅い不純物拡散領域がゲート電極に整合して形成されている。そして、浅い不純物拡散領域の外側に深い不純物拡散領域がサイドウォールに整合して形成されている。一対の浅い不純物拡散領域と一対の深い不純物拡散領域によって、それぞれMISFETQのソース領域とドレイン領域が形成されている。以上のようにして半導体基板1S上にMISFETQが形成されている。
【0062】
続いて、図10に示すように、MISFETQを形成した半導体基板1S上にはコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。このコンタクト層間絶縁膜CILは、例えば、オゾンとTEOS(tetra ethyl ortho silicate)とを原料に使用した熱CVD法により形成されるオゾンTEOS膜と、このオゾンTEOS膜上に設けられたTEOSを原料に使用したプラズマCVD法により形成されるプラズマTEOS膜との積層膜から形成されている。
【0063】
コンタクト層間絶縁膜CILをTEOS膜から形成する理由は、TEOS膜が下地段差に対する被覆性のよい膜であるからである。コンタクト層間絶縁膜CILを形成する下地は、半導体基板1SにMISFETQが形成された凹凸のある状態である。つまり、半導体基板1SにMISFETQが形成されているので、半導体基板1Sの表面にはゲート電極が形成されて凹凸のある下地となっている。したがって、凹凸のある段差に対して被覆性のよい膜でないと、微細な凹凸を埋め込むことができず、ボイドなどの発生原因となる。そこで、コンタクト層間絶縁膜CILには、TEOS膜が使用される。なぜなら、TEOSを原料とするTEOS膜では、原料であるTEOSが酸化シリコン膜となる前に中間体を作り、成膜表面で移動しやすくなるため、下地段差に対する被覆性が向上するからである。
【0064】
そして、図10に示すように、このコンタクト層間絶縁膜CILを貫通してMISFETQのソース領域やドレイン領域に達するプラグPLG1が形成されている。このプラグPLG1は、例えば、チタン/窒化チタン膜(以下、チタン/窒化チタン膜はチタンとこのチタン上に設けられた窒化チタンで形成される膜を示す)よりなるバリア導体膜と、このバリア導体膜上に形成されたタングステン膜をコンタクトホールCNTに埋め込むことにより形成されている。チタン/窒化チタン膜は、タングステン膜を構成するタングステンがシリコン中へ拡散することを防止するために設けられている膜で、このタングステン膜が構成される際のWF(フッ化タングステン)を還元処理するCVD法において、コンタクト層間絶縁膜CILや半導体基板1Sにフッ素アタックがなされてダメージを与えることを防ぐためのものである。なお、コンタクト層間絶縁膜CILは、酸化シリコン膜(SiO膜)、SiOF膜のいずれかの膜から形成されていてもよい。
【0065】
次に、コンタクト層間絶縁膜CIL上に層間絶縁膜IL1が形成されており、この層間絶縁膜IL1に埋め込まれるように第1層配線L1が形成されている。具体的に、層間絶縁膜IL1は、例えば、空孔を有するSiOC膜、空孔を有するHSQ(ハイドロジェンシルセスキオキサン、塗布工程により形成され、Si−H結合を持つ酸化シリコン膜、又は、水素含有シルセスキオキサン)膜、あるいは、空孔を有するMSQ(メチルシルセスキオキサン、塗布工程により形成され、Si−C結合を持つ酸化シリコン膜、又は、炭素含有シルセスキオキサン)膜から構成されている。このような材料から層間絶縁膜IL1を形成することにより、層間絶縁膜IL1の誘電率を低くすることができる。この結果、配線間の寄生容量を低減することができ、半導体装置の高性能化を図ることができる。
【0066】
続いて、第1層配線L1は、プラグPLG1を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上に形成された層間絶縁膜IL1に埋め込まれるように形成されている。つまり、層間絶縁膜IL1を貫通して底部でプラグPLG1が露出する配線溝WD1に銅を主体とする膜(以下、銅膜と記載する)を埋め込むことにより、第1層配線L1が形成されている。さらに詳細に説明すると、第1層配線L1は、配線溝の内壁に形成された窒化タンタル/タンタル膜(以下、窒化タンタル/タンタル膜は、窒化タンタルとこの窒化タンタル上に形成されたタンタルで構成された膜を示す)やチタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜と、このバリア導体膜上に形成され、配線溝WD1を埋め込むように形成された銅膜から構成されている。
【0067】
このように層間絶縁膜IL1に形成された配線溝WD1に直接銅膜を形成せずにバリア導体膜を形成しているのは、銅膜を構成する銅が熱処理などによって半導体基板1Sを構成するシリコンへ拡散することを防止するためである。すなわち、銅原子のシリコンへの拡散定数は比較的大きいので容易にシリコン中へ拡散する。この場合、半導体基板1SにはMISFETQなどの半導体素子が形成されており、これらの形成領域に銅原子が拡散すると耐圧不良などに代表される半導体素子の特性劣化を引き起こす。このことから、第1層配線L1を構成する銅膜から銅原子が拡散しないようにバリア導体膜が設けられているのである。つまり、バリア導体膜は、銅原子の拡散を防止する機能を有する膜であることがわかる。
【0068】
次に、第1層配線L1を形成した層間絶縁膜IL1上には、第2層配線L2が形成されている。具体的には、第1層配線L1を形成した層間絶縁膜IL1上に、SiCN膜SCN(4MS↓)、SiCN膜SCN2およびSiCO膜SCOからなるバリア絶縁膜(ライナー膜)が形成され、このバリア絶縁膜上に層間絶縁膜IL2が形成されている。この層間絶縁膜IL2は、例えば、空孔を有するSiOC膜、空孔を有するHSQ膜、あるいは、空孔を有するMSQ膜から形成されている。空孔のサイズ(径)は、例えば、1nm程度である。このバリア絶縁膜および層間絶縁膜IL2には、配線溝WD2およびビアホールVHが形成されており、配線溝WD2に埋め込まれるように第2層配線L2が形成されるとともに、ビアホールVHに埋め込まれるようにプラグPLG2が形成されている。この第2層配線L2およびプラグPLG2も、例えば、窒化タンタル/タンタル膜やチタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜と、このバリア導体膜上に形成された銅膜から構成されている。
【0069】
ここで、第1層配線L1および第2層配線L2に銅配線を使用していることから、銅原子の拡散を防止する必要がある。このため、例えば、第1層配線L1および第2層配線L2では、配線溝WD1、配線溝WD2あるいはビアホールVHにバリア導体膜を介して銅膜を形成することにより、銅配線を構成している。つまり、第1層配線L1や第2層配線L2では、配線溝WD1や配線溝WD2に直接銅膜を埋め込むのではなく、配線溝WD1や配線溝WD2の側面および底面にバリア導体膜を形成し、このバリア導体膜上に銅膜を形成しているのである。これにより、銅膜を構成する銅原子は、バリア導体膜によって拡散が防止される。このとき、バリア導体膜は、配線溝WD1や配線溝WD2の側面と底面にだけ形成されている。したがって、例えば、配線溝WD1の上部から銅原子が拡散するおそれがある。配線溝WD1の上部にバリア導体膜を形成しないのは、配線溝WD1の上部にバリア導体膜を形成する場合、複数の配線溝WD1上にバリア導体膜が形成されることになる。このことは、複数の配線溝WD1に形成された銅配線が複数の配線溝WD1の上部に形成されたバリア導体膜で導通することにより、互いに異なる銅配線がショートしてしまうことを意味する。したがって、銅配線の上部にバリア導体膜を形成することはできない。
【0070】
しかし、配線溝WD1の上部から銅原子が拡散することを防止する必要がある。そこで、銅配線の上部には絶縁膜で、かつ、銅原子の拡散を防止する機能を持つバリア絶縁膜が形成される。このバリア絶縁膜は、例えば、SiCN膜とSiCO膜の積層膜から形成される。これにより、銅配線から銅原子が拡散することを防止できる。つまり、銅配線が形成されている配線溝WD1の側面と底部からの銅原子の拡散は、バリア導体膜によって防止され、配線溝WD1の上部からの銅原子の拡散は、バリア絶縁膜によって防止される。
【0071】
なお、図10では、第2層配線L2までしか図示していないが、実際の半導体装置では、第2層配線L2上に多層配線が形成される。ただし、第2層配線L2上に形成される多層配線の構造は、第2層配線L2の構成とほぼ同様であるため、その説明は省略する。
【0072】
<本実施の形態1の特徴>
本実施の形態1における半導体装置は上記のように構成されており、さらに、本実施の形態1における特徴構成について詳述する。図10において、本実施の形態1における特徴構成は、バリア絶縁膜(ライナー膜)の構成にある。通常の半導体装置において、バリア絶縁膜は、SiCN膜と、このSiCN膜上に形成されたSiCO膜から構成される。一方、本実施の形態1では、バリア絶縁膜を、テトラメチルシランガスの流量を通常条件よりも下げて形成したSiCN膜SCN1(4MS↓)と、このSiCN膜SCN1(4MS↓)上に形成され、通常のテトラメチルシランガスの流量で形成したSiCN膜SCN2と、このSiCN膜SCN2上に形成されたSiCO膜SCOから構成している点に特徴がある。すなわち、通常は、単一のSiCN膜から形成される膜を、異なるテトラメチルシランガスの流量で形成した2層のSiCN膜で形成している点に本実施の形態1の特徴がある。具体的に、本実施の形態1では、テトラメチルシランガスの流量を通常条件よりも下げて形成したSiCN膜SCN1(4MS↓)と、このSiCN膜SCN1(4MS↓)上に形成され、通常のテトラメチルシランガスの流量で形成したSiCN膜SCN2というプロセス条件の異なる膜を使用している。このテトラメチルシランガスの流量を変えて形成されたSiCN膜SCN1(4MS↓)とSiCN膜SCN2とのプロセス条件の相違点は、SiCN膜に含まれるメチル基(CH)の相違として顕在化する。つまり、テトラメチルシランガスの流量を通常条件よりも下げて形成したSiCN膜SCN1(4MS↓)では、メチル基(CH)が含まれる原料ガスが少なくなることから、形成されるSiCN膜SCN1(4MS↓)に含まれるメチル基(CH)が少なくなる。これに対し、通常のテトラメチルシランガスの流量で形成したSiCN膜SCN2には、SiCN膜SCN1(4MS↓)よりも含まれるメチル基(CH)が多くなる。この結果、本実施の形態1では、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)上に、メチル基(CH)の含有量が多いSiCN膜SCN2が形成されることになる。
【0073】
ここで、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)は、膜の緻密化が図れるため、耐透水性に優れている。したがって、このメチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)をバリア絶縁膜として使用することにより、バリア絶縁膜を通過して銅配線(第1層配線L1)に到達する水分を少なくすることができる。このため、水分による銅配線の酸化を防止することができる結果、銅配線とバリア絶縁膜の密着性低下を抑制して、銅配線のエレクトロマイグレーション特性の劣化を防止することができる。
【0074】
一方、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)は、膜の緻密化が図れるため、耐透水性に優れている反面、膜の緻密化による誘電率の上昇が問題となる(比誘電率5.0〜5.5)。そこで、本実施の形態1では、SiCN膜SCN1(4MS↓)上に、このSiCN膜SCN1(4MS↓)よりもメチル基(CH)の含有量の多いSiCN膜SCN2を設けている。このSiCN膜SCN2は、膜中に含まれるメチル基(CH)の含有量が多い。このため、膜がSiCN膜SCN1(4MS↓)よりも緻密化されていないことから、誘電率の上昇を抑制することができる(比誘電率4.0〜4.9)。
【0075】
このように、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)およびメチル基(CH)の含有量の多いSiCN膜SCN2には、それぞれ長所と短所があり、両方を組み合わせることにより、耐透水性の向上と低誘電率化を両立させることができるのである。つまり、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)は、耐透水性に優れているという長所がある反面、誘電率が上昇する短所がある。一方、メチル基(CH)の含有量の多いSiCN膜SCN2は、低誘電率化を図ることができる反面、耐透水性が劣化する短所がある。
【0076】
したがって、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)だけを使用する場合は、耐透水性に優れているという長所を発揮できる一方、誘電率の上昇という問題が生じる。これに対し、メチル基(CH)の含有量の多いSiCN膜SCN2だけを使用する場合は、低誘電率化を図ることができるが、耐透水性が劣化してしまう。そこで、本実施の形態1のように、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)と、メチル基(CH)の含有量の多いSiCN膜SCN2との積層構造を採用することにより、低誘電率化を図りながら耐透水性を向上させることができる。
【0077】
例えば、本実施の形態1による積層構成と、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)だけを使用する構成とを比較すると、本実施の形態1による積層構成のほうが低誘電率化に有利な構造となる。一方、本実施の形態1による積層構成と、メチル基(CH)の含有量の多いSiCN膜SCN2だけを使用する構成とを比較すると、本実施の形態1における積層構成のほうが耐透水性を向上させることができるのである。このように本実施の形態1の特徴は、それぞれ長所と短所が正反対の膜を組み合わせることで、短所の顕在化を抑制して、両方の長所を顕在化できることにある。具体的に本実施の形態1によれば、耐透水性の向上と低誘電率化をバランス良く実現することができる。
【0078】
ここで、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)の耐透水性の向上には膜厚が10nm以上必要であることから、例えば、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)の膜厚を10nmとし、メチル基(CH)の含有量の多いSiCN膜SCN2の膜厚も10nmとすることができる。このようにメチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)の膜厚と、メチル基(CH)の含有量の多いSiCN膜SCN2の膜厚を等しくすることにより、耐透水性と低誘電率化をバランス良く向上させることができる。ただし、耐透水性の向上を重要視する観点からは、例えば、SiCN膜SCN1(4MS↓)の膜厚をSiCN膜SCN2の膜厚よりも厚くする構成も取ることができる。
【0079】
本実施の形態1におけるさらなる特徴は、SiCN膜SCN1(4MS↓)を直接、銅配線(第1層配線L1)と接触させている点にある。これにより、SiCN膜SCN1(4MS↓)の耐透水性の向上によるエレクトロマイグレーション特性の向上が図れる他に、別のメカニズムに基づくエレクトロマイグレーション特性の向上も図れるのである。つまり、耐透水性の向上をしたSiCN膜SCN1(4MS↓)は、膜の緻密化が図られている。膜の緻密化が図られているということは、SiCN膜SCN1(4MS↓)の弾性率も向上する(硬くなる)ことを意味する。したがって、弾性率の向上したSiCN膜SCN1(4MS↓)を直接銅配線に接触させることにより、銅配線に原子の移動によるエレクトロマイグレーションが生じようとしても、弾性率の向上したSiCN膜SCN1(4MS↓)によって、銅配線を構成する原子の移動が抑制されるのである。このように、SiCN膜SCN1(4MS↓)を直接、銅配線(第1層配線L1)と接触させる構成を採用することにより、耐透水性の向上および弾性率の向上という相乗効果により、さらなる銅配線のエレクトロマイグレーション特性の向上を図ることができるのである。
【0080】
<本実施の形態1における半導体装置の製造方法>
本実施の形態1における半導体装置は上記のように構成されており、以下に、その製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0081】
まず、通常の半導体製造技術を使用することにより、図11に示すように、半導体基板1S上に複数のMISFETQを形成する。続いて、図12に示すように、複数のMISFETQを形成した半導体基板1S上にコンタクト層間絶縁膜CILを形成する。このコンタクト層間絶縁膜CILは、複数のMISFETQを覆うように形成される。具体的に、コンタクト層間絶縁膜CILは、例えば、オゾンとTEOSとを原料に使用した熱CVD法により形成されるオゾンTEOS膜と、このオゾンTEOS膜上に配置され、TEOSを原料に使用したプラズマCVD法により形成されるプラズマTEOS膜との積層膜から形成されている。なお、オゾンTEOS膜の下層に、例えば、窒化シリコン膜よりなるエッチングストッパ膜を形成してもよい。
【0082】
次に、図13に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、コンタクト層間絶縁膜CILにコンタクトホールCNTを形成する。このコンタクトホールCNTは、コンタクト層間絶縁膜CILを貫通して、半導体基板1Sに形成されているMISFETQのソース領域あるいはドレイン領域に達するように加工される。
【0083】
続いて、図14に示すように、コンタクト層間絶縁膜CILに形成したコンタクトホールCNTに金属膜を埋め込むことによりプラグPLG1を形成する。具体的には、コンタクトホールCNTを形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上に、例えば、スパッタリングを使用してバリア導体膜となるチタン/窒化チタン膜を形成する。そして、チタン/窒化チタン膜上にタングステン膜を形成する。これにより、コンタクトホールCNTの内壁(側壁および底面)にチタン/窒化チタン膜が形成され、このチタン/窒化チタン膜上でコンタクトホールCNTを埋め込むようにタングステン膜が形成される。その後、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成されている不要なチタン/窒化チタン膜およびタングステン膜を、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法で除去する。これにより、コンタクトホールCNT内にだけ、チタン/窒化チタン膜とタングステン膜を埋め込んだプラグPLG1を形成することができる。
【0084】
次に、図15に示すように、プラグPLG1を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上に層間絶縁膜IL1を形成する。この層間絶縁膜IL1は、例えば、空孔を有するSiOC膜から形成され、例えば、プラズマCVD法を使用することにより形成される。空孔を有するSiOC膜は、例えば、ポロジェンを含むSiOC膜を形成した後、キュアを行うことにより形成することができる。キュアによって、ポロジェンが昇華しSiOC膜に空孔が形成される。
【0085】
そして、図16に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜IL1に配線溝WD1を形成する。この配線溝WD1は、空孔を有するSiOC膜からなる層間絶縁膜IL1を貫通して底面がコンタクト層間絶縁膜CILに達するように形成される。これにより、配線溝WD1の底部でプラグPLG1の表面が露出することになる。
【0086】
その後、図17に示すように、配線溝WD1を形成した層間絶縁膜IL1上にバリア導体膜(銅拡散防止膜)BCF1を形成する。具体的に、バリア導体膜BCF1は、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、マンガン(Mn)およびこれらの窒化物や窒化珪化物、または、これらの積層膜から構成され、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成される。
【0087】
続いて、配線溝WD1の内部および層間絶縁膜IL1上に形成されたバリア導体膜BCF1上に、例えば、薄い銅膜からなるシード膜をスパッタリング法により形成する。そして、このシード膜を電極とした電解めっき法により銅膜CF1を形成する。この銅膜CF1は、配線溝WD1を埋め込むように形成される。この銅膜CF1は、例えば、銅を主体とする膜から形成される。具体的には、銅(Cu)または銅合金(銅(Cu)とアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、In(インジウム)、ランタノイド系金属、アクチノイド系金属などの合金)から形成される。なお、銅合金となる場合、シード膜が上で説明した合金となっているから、銅膜CF1が銅合金となる。以降に登場する銅合金も同様である。
【0088】
次に、図18に示すように、層間絶縁膜IL1上に形成された不要なバリア導体膜BCF1および銅膜CF1をCMP法で除去する。これにより、配線溝WD1にバリア導体膜BCF1と銅膜CF1を埋め込んだ第1層配線L1を形成することができる。
【0089】
その後、第1層配線L1を形成した層間絶縁膜IL1の表面に対してアンモニアプラズマ処理を実施して、第1層配線L1の表面および層間絶縁膜IL1の表面を清浄化する。
【0090】
続いて、図19に示すように、第1層配線L1を形成した層間絶縁膜IL1上にSiCN膜SCN1(4MS↓)を形成する。このSiCN膜SCN1(4MS↓)は、例えば、通常の条件よりも流量を下げたテトラメチルシランガスと、アンモニアガスを原料ガスとするCVD法により形成することができる。なお、本実施の形態1では、第1層配線L1を形成した層間絶縁膜IL1の表面に対してアンモニアプラズマ処理による清浄化処理を実施した後に、SiCN膜SCN1(4MS↓)を形成しているので、層間絶縁膜IL1とSiCN膜SCN1(4MS↓)の密着性が向上する。
【0091】
その後、図20に示すように、SiCN膜SCN1(4MS↓)上にSiCN膜SCN2を形成する。このSiCN膜SCN2は、例えば、通常の流量のテトラメチルシランガスと、アンモニアガスを原料ガスとするCVD法により形成することができる。
【0092】
このようにして、まず、流量を下げたテトラメチルシランガスを使用したCVD法により、メチル基(CH)が少なく、緻密化されたSiCN膜SCN1(4MS↓)を形成し、このSiCN膜SCN1(4MS↓)上に、流量を通常条件に戻したテトラメチルシランガスを使用したCVD法により、メチル基(CH)が多いSiCN膜SCN2を形成することができる。つまり、本実施の形態1では、テトラメチルシランガスの流量を制御するだけで、メチル基(CH)の含有量が少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)と、メチル基(CH)の含有量の多いSiCN膜SCN2を形成することができる。このとき、SiCN膜SCN1(4MS↓)の膜厚は10nm程度であり、SiCN膜SCN2の膜厚も10nm程度である。以上のようにして、緻密化されて耐透水性が向上したSiCN膜SCN1(4MS↓)と、SiCN膜SCN1(4MS↓)に比べて誘電率の低いSiCN膜SCN2を形成することができる。
【0093】
その後、図21に示すように、SiCN膜SCN2上にSiCO膜SCOを形成する。このSiCO膜SCOは、例えば、CVD法により形成することができ、例えば、その膜厚は、20nm程度である。これにより、SiCN膜SCN1(4MS↓)と、SiCN膜SCN2と、SiCO膜SCOとからなるバリア絶縁膜を形成することができる。
【0094】
そして、図22に示すように、バリア絶縁膜上に層間絶縁膜IL2を形成し、この層間絶縁膜IL2上にダメージ保護膜DP1を形成する。さらに、ダメージ保護膜DP1上にダメージ保護膜DP2を形成する。具体的に、層間絶縁膜IL2は、例えば、酸化シリコン膜よりも誘電率の低い空孔を有するSiOC膜や、空孔を有するHSQ膜、あるいは、空孔を有するMSQ膜から形成されている。この空孔を有するSiOC膜は、例えば、プラズマCVD法を使用することにより形成することができる。ダメージ保護膜DP1は、例えば、SiOC膜から形成され、例えば、プラズマCVD法により形成することができる。さらに、ダメージ保護膜DP2は、例えば、TEOS膜、あるいは、酸化シリコン膜から構成される。
【0095】
続いて、図23に示すように、ダメージ保護膜DP2上に化学増幅型レジストから構成されるフォトレジスト膜FR1を形成する。そして、このフォトレジスト膜FR1に対して、露光・現像処理を施すことにより、フォトレジスト膜FR1をパターニングする。パターニングは、ビアホールを形成する領域を開口するように行なわれる。その後、パターニングしたフォトレジスト膜FR1をマスクにして、ダメージ保護膜DP2、ダメージ保護膜DP1および層間絶縁膜IL2をエッチングする。これにより、ダメージ保護膜DP2、ダメージ保護膜DP1および層間絶縁膜IL2を貫通して、SiCO膜SCOを露出するビアホールVHを形成することができる。このようにSiCO膜SCOは、エッチングの際にエッチングストッパとして機能することがわかる。
【0096】
次に、図24に示すように、パターニングしたフォトレジスト膜FR1を除去した後、ダメージ保護膜DP2上に化学増幅型レジストから構成されるフォトレジスト膜FR2を形成し、このフォトレジスト膜FR2に対して露光・現像処理を施すことにより、フォトレジスト膜FR2をパターニングする。フォトレジスト膜FR2のパターニングは、配線溝を形成する領域を開口するように行なわれる。このとき、SiCO膜SCOを形成していることにより、フォトレジスト膜FR2に対するレジストポイゾニングを防止することができる。このレジストポイゾニングとは、以下に説明する現象である。すなわち、上述したアンモニアプラズマ処理に含まれる窒素や、SiCN膜SCN1(4MS↓)やSiCN膜SCN2に含まれる窒素が化学反応してアミンが生成され、このアミンが層間絶縁膜IL2に拡散する。この拡散したアミンが層間絶縁膜IL2に形成されたビアホールVHに達する。このとき、フォトレジスト膜FR2を露光して配線溝を形成するパターンにパターニングする際、ビアホールVH近傍に形成されるフォトレジスト膜FR2が化学増幅型レジストであり、この化学増幅型レジストは露光される際に酸が発生して露光反応が進むものであるために、ビアホールVHから拡散する塩基であるアミンと反応し、酸が中和する。この結果、ビアホールVH近傍のフォトレジスト膜FR2が失活して露光不良となる現象である。このレジストポイゾニングが発生すると、フォトレジスト膜FR2のパターニングが不良となってしまう。そこで、本実施の形態1では、アンモニアプラズマ処理に含まれる窒素や、SiCN膜SCN1(4MS↓)やSiCN膜SCN2に含まれる窒素が化学反応することにより発生したアミンが層間絶縁膜IL2中に拡散することを防止するため、SiCN膜SCN1(4MS↓)とSiCN膜SCN2との積層膜上にSiCO膜SCOを設けている。つまり、バリア絶縁膜は、SiCN膜SCN1(4MS↓)とSiCN膜SCN2とSiCO膜の積層膜から形成されている。このSiCN膜SCN1(4MS↓)とSiCN膜SCN2は、銅配線からの銅の拡散を防止する機能を有する銅拡散防止膜として機能する膜であり、SiCO膜SCOは、SiCN膜SCN1(4MS↓)やSiCN膜SCN2で発生するアミンの拡散を防止してレジストポイゾニングを抑制するための膜である。なお、材料としてSiCO膜SCOの代わりに酸化シリコン膜、または、TEOS膜であっても同様の効果がある。以上のことから、SiCO膜SCOは、ビアホールVHを形成する際のエッチングストッパとしての機能と、レジストポイゾニングを抑制する機能とを有していることがわかる。
【0097】
その後、図25に示すように、パターニングしたフォトレジスト膜FR2をマスクとした異方性エッチングにより、ダメージ保護膜DP2をエッチングする。このときのエッチングでは、ダメージ保護膜DP2の下層にあるダメージ保護膜DP1がエッチングストッパとなる。そして、図26に示すように、パターニングしたフォトレジスト膜FR2をプラズマアッシング処理により除去する。このプラズマアッシング処理の際、層間絶縁膜IL2には配線溝に対応したパターニングが行われていないため、配線溝にプラズマアッシング処理によるダメージが加わらない。
【0098】
続いて、図27に示すように、ビアホールVHの底部に露出するバリア絶縁膜(SiCN膜SCN1(4MS↓)とSiCN膜SCN2とSiCO膜SCO)を除去する(以下、ライナーエッチングとする)。これにより、ビアホールVHの底部に第1層配線L1の表面が露出することになる。このときのライナーエッチングにより、パターニングされたダメージ保護膜DP2の表面およびダメージ保護膜DP2から露出しているダメージ保護膜DP1やダメージ保護膜DP1の下層にある層間絶縁膜IL2の一部もエッチングされて配線溝WD2が形成される。尚、このライナーエッチングによりダメージ保護膜DP2はその厚さが1/3程度の厚さに減少する。このようなライナーエッチングにより、プラズマアッシング処理によるダメージ回避と配線溝WD2の高さの面内均一性を向上させることができる。
【0099】
次に、図28に示すように、配線溝WD2およびビアホールVH、ダメージ保護膜DP2上にバリア導体膜(銅拡散防止膜)BCF2を形成する。具体的に、バリア導体膜BCF2は、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、マンガン(Mn)およびこれらの窒化物や窒化珪化物、または、これらの積層膜から構成され、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成される。
【0100】
続いて、配線溝WD2の内部およびダメージ保護膜DP2上に形成されたバリア導体膜BCF2上に、例えば、薄い銅膜からなるシード膜をスパッタリング法により形成する。そして、このシード膜を電極とした電解めっき法により銅膜CF2を形成する。この銅膜CF2は、配線溝WD2を埋め込むように形成される。この銅膜CF2は、例えば、銅を主体とする膜から形成される。具体的には、銅(Cu)または銅合金(銅(Cu)とアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、In(インジウム)、ランタノイド系金属、アクチノイド系金属などの合金)から形成される。
【0101】
続いて、ダメージ保護膜DP2上に形成されている不要なバリア導体膜BCF2および銅膜CF2をCMP法で除去する。このとき、ダメージ保護膜DP2およびダメージ保護膜DP1も除去され、配線溝WD2にバリア導体膜BCF2と銅膜CF2を埋め込んだ第2層配線L2と、ビアホールVHにバリア導体膜BCF2と銅膜CF2を埋め込んだプラグPLG2を形成することができる(図10参照)。さらに、第2層配線L2の上部に多層配線を形成するが、ここでの説明は省略する。以上のようにして、本実施の形態1における半導体装置を製造することができる。
【0102】
本実施の形態1では、バリア絶縁膜をSiCN膜SCN1(4MS↓)とSiCN膜SCN2とSiCO膜SCOの積層膜から形成している。ここで、SiCO膜SCOは、上述したように、ビアホールを形成する際のエッチングストッパとしての機能と、レジストポイゾニングを抑制する機能を有しているが、このSiCO膜SCOの代わりに酸化シリコン膜を使用してもよい。ただし、酸化シリコン膜は耐透水性を有していないのに対し、SiCO膜SCOは耐透水性を有しているため、SiCO膜SCOを使用する場合のほうが、耐透水性を向上することができる。つまり、SiCN膜SCN1(4MS↓)によって、下層の第1層配線L1への水分の侵入は効果的に防止されるが、SiCO膜SCOも使用することにより、バリア絶縁膜のさらなる耐透水性を向上することができ、この結果、銅配線に生じるエレクトロマイグレーション特性の劣化を効果的に抑制できる。
【0103】
また、本実施の形態1では、SiCN膜SCN1(4MS↓)とSiCN膜SCN2とを合わせた膜厚と、SiCO膜SCOの膜厚とを同等としているが、ビアホールを形成する際のエッチングストッパとしての機能や、レジストポイゾニングを抑制する機能を充分に発揮させる観点からは、SiCO膜SCOの膜厚をSiCN膜SCN1(4MS↓)とSiCN膜SCN2とを合わせた膜厚よりも厚くしてもよい。
【0104】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、テトラメチルシランガスを使用したCVD法によって、SiCN膜SCN1(4MS↓)とSiCN膜SCN2とを形成する例について説明した。本実施の形態2では、テトラメチルシランガスの代わりにトリメチルシランガスを使用したCVD法によってSiCN膜を形成する場合に本発明を適用する例について説明する。
【0105】
図29は、本実施の形態2における半導体装置の構成を示す断面図である。図29に示す本実施の形態2における半導体装置の構成は、図10に示す前記実施の形態1における半導体装置の構成とほぼ同様の構成をしているため、異なる点について説明する。
【0106】
本実施の形態2では、図29に示すSiCN膜SCN1(3MS↓)とSiCN膜SCN2を、トリメチルシランガスとアンモニアガスとを原料ガスに使用したCVD法で形成している点が前記実施の形態1と異なる点である。すなわち、前記実施の形態1では、SiCN膜SCN1(4MS↓)とSiCN膜SCN2を、テトラメチルシランガスとアンモニアガスとを原料ガスに使用したCVD法で形成していたのに対し、本実施の形態2では、テトラメチルシランガスの代わりにトリメチルシランガスを用いたCVD法で、SiCN膜SCN1(3MS↓)とSiCN膜SCN2を形成している。
【0107】
このような本実施の形態2でも、トリメチルシランガスの流量を通常条件よりも少なくした条件でSiCN膜SCN1(3MS↓)を形成しているため、SiCN膜SCN1(3MS↓)に含まれるメチル基(CH)の含有量は少なくなる。この結果、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(3MS↓)は、膜の緻密化が図れるため、耐透水性に優れている。したがって、このメチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(3MS↓)をバリア絶縁膜として使用することにより、バリア絶縁膜を通過して銅配線(第1層配線L1)に到達する水分を少なくすることができる。このため、水分による銅配線の酸化を防止することができる結果、銅配線とバリア絶縁膜の密着性低下を抑制して、銅配線のエレクトロマイグレーション特性の劣化を防止することができる。
【0108】
一方、SiCN膜SCN2は、トリメチルシランガスの流量を通常条件に設定することにより形成されている。したがって、SiCN膜SCN2は、膜中に含まれるメチル基(CH)の含有量がSiCN膜SCN1(3MS↓)よりも多い。このため、膜がSiCN膜SCN1(3MS↓)よりも緻密化されていないことから、誘電率の上昇を抑制することができる。このように、本実施の形態2でも前記実施の形態1と同様に、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(3MS↓)およびメチル基(CH)の含有量の多いSiCN膜SCN2の両方を組み合わせることにより、耐透水性の向上と低誘電率化を両立させることができる。
【0109】
(実施の形態3)
前記実施の形態1では、メチル基(CH)の含有量が異なるSiCN膜SCN(4MS↓)とSiCN膜SCN2とを形成する例について説明した。本実施の形態3では、単一のSiCN膜の膜厚方向におけるメチル基の含有量が異なる例について説明する。
【0110】
図30は、本実施の形態3における半導体装置の構成を示す断面図である。図30に示す本実施の形態3における半導体装置の構成は、図10に示す前記実施の形態1における半導体装置の構成とほぼ同様の構成をしているため、異なる点について説明する。
【0111】
図30に示す本実施の形態3における半導体装置において、バリア絶縁膜は、SiCN膜SCN3と、このSiCN膜SCN3上に形成されたSiCO膜SCOから構成されている。このとき、SiCN膜SCN3中に含まれるメチル基(CH)の含有量は均一ではなく、膜厚方向におけるメチル基(CH)の含有量が異なっている。具体的に、本実施の形態3では、SiCN膜SCN3内の上部から下部に進むにつれて、SiCN膜SCN3中に含まれるメチル基(CH)の含有量が連続的に少なくなっている。したがって、本実施の形態3におけるSiCN膜SCN3において、SiCN膜SCN3内の下部領域は、メチル基(CH)の含有量が少なくなることから、膜の緻密化が図れるため、耐透水性に優れている。一方、SiCN膜SCN3内の上部領域は、メチル基(CH)の含有量が多くなることから、誘電率の上昇を抑制することができる。このように、本実施の形態3では、膜厚方向にメチル基(CH)の含有量が異なるSiCN膜SCN3を構成することにより、耐透水性の向上と低誘電率化を両立させることができる。
【0112】
なお、本実施の形態3におけるSiCN膜SCN3の形成方法は、例えば、テトラメチルシランガスとアンモニアガスとを原料ガスとしたCVD法において、成膜初期のテトラメチルシランガスの流量を少なくし、その後、成膜後期に進むにつれて、テトラメチルシランガスの流量を多くすることによって、SiCN膜SCN3内の下部から上部に進むにつれて、SiCN膜SCN3中に含まれるメチル基(CH)の含有量が連続的に多くなるように形成することができる。また、テトラメチルシランガスの代わりにトリメチルシランガスを使用してもよい。
【0113】
(実施の形態4)
前記実施の形態1では、メチル基(CH)の含有量が少ないSiCN膜SCN(4MS↓)上に、メチル基(CH)の含有量が多いSiCN膜SCN2を形成する例について説明した。これに対し、本実施の形態4では、メチル基(CH)の含有量が多いSiCN膜SCN2上に、メチル基(CH)の含有量が少ないSiCN膜SCN(4MS↓)を形成する例について説明する。
【0114】
図31は、本実施の形態4における半導体装置の構成を示す断面図である。図31に示す本実施の形態4における半導体装置の構成は、図10に示す前記実施の形態1における半導体装置の構成とほぼ同様の構成をしているため、異なる点について説明する。
【0115】
図31に示す本実施の形態4における半導体装置においては、図10に示す前記実施の形態1とは逆に、メチル基(CH)の含有量が多いSiCN膜SCN2上に、メチル基(CH)の含有量が少ないSiCN膜SCN(4MS↓)が形成されている。このように構成する場合であっても、前記実施の形態1と同様に、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)およびメチル基(CH)の含有量の多いSiCN膜SCN2の両方を組み合わせることにより、耐透水性の向上と低誘電率化を両立させることができる。
【0116】
特に、本実施の形態4の場合、以下に示す効果も得られる。すなわち、本実施の形態4では、第1層配線L1に、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)が直接接触していないことから、第1層配線L1のストレスマイグレーション特性を向上させることができる。なぜなら、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)は緻密化されることから、弾性率も向上する(硬くなる)。このことは、第1層配線L1のエレクトロマイグレーション特性を向上させる方向に作用する一方、SiCN膜SCN1(4MS↓)が第1層配線L1と直接接触すると、SiCN膜SCN1(4MS↓)と第1層配線L1との間の応力差によってストレスマイグレーション特性が劣化するのである。したがって、本実施の形態4のように、第1層配線L1に、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)が直接接触しないように構成する場合は、ストレスマイグレーション特性の劣化を緩和することができる。すなわち、本実施の形態4によれば、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)を使用することで耐透水性が向上し、これによって、エレクトロマイグレーション特性を向上させることができるとともに、第1層配線L1に、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)が直接接触していないことから、ストレスマイグレーション特性の劣化も抑制することができる。
【0117】
なお、本実施の形態4における半導体装置の製造方法は、前記実施の形態1における半導体装置の製造方法とほぼ同様である。つまり、図11〜図18までの工程を経た後、図32に示すように、テトラメチルシランガスの流量を通常条件に設定したCVD法によって、メチル基(CH)の含有量の多いSiCN膜SCN2を形成する。その後、図33に示すように、テトラメチルシランガスの流量を通常条件よりも少なくした条件でのCVD法により、メチル基(CH)の含有量がSiCN膜SCN2よりも少ないSiCN膜SCN1(4MS↓)を形成する。その後は、図21〜図28に示す工程を経ることにより、本実施の形態4における半導体装置を製造することができる。
【0118】
(実施の形態5)
前記実施の形態4では、テトラメチルシランガスを使用したCVD法によって、SiCN膜SCN1(4MS↓)とSiCN膜SCN2とを形成する例について説明した。本実施の形態5では、テトラメチルシランガスの代わりにトリメチルシランガスを使用したCVD法によってSiCN膜を形成する場合に本発明を適用する例について説明する。
【0119】
図34は、本実施の形態5における半導体装置の構成を示す断面図である。図34に示す本実施の形態5における半導体装置の構成は、図31に示す前記実施の形態4における半導体装置の構成とほぼ同様の構成をしているため、異なる点について説明する。
【0120】
本実施の形態5では、図34に示すSiCN膜SCN1(3MS↓)とSiCN膜SCN2を、トリメチルシランガスとアンモニアガスとを原料ガスに使用したCVD法で形成している点が前記実施の形態4と異なる点である。
【0121】
このような本実施の形態5でも、SiCN膜SCN2は、トリメチルシランガスの流量を通常条件に設定することにより形成されている。したがって、SiCN膜SCN2は、膜中に含まれるメチル基(CH)の含有量がSiCN膜SCN1(3MS↓)よりも多い。このため、膜がSiCN膜SCN1(3MS↓)よりも緻密化されていないことから、誘電率の上昇を抑制することができる。
【0122】
一方、SiCN膜SCN1(3MS↓)は、トリメチルシランガスの流量を通常条件よりも少なくした条件でSiCN膜SCN1(3MS↓)を形成しているため、SiCN膜SCN1(3MS↓)に含まれるメチル基(CH)の含有量は少なくなる。この結果、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(3MS↓)は、膜の緻密化が図れるため、耐透水性に優れている。したがって、このメチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(3MS↓)をバリア絶縁膜として使用することにより、バリア絶縁膜を通過して銅配線(第1層配線L1)に到達する水分を少なくすることができる。このため、水分による銅配線の酸化を防止することができる結果、銅配線とバリア絶縁膜の密着性低下を抑制して、銅配線のエレクトロマイグレーション特性の劣化を防止することができる。
【0123】
このように、本実施の形態5でも前記実施の形態4と同様に、メチル基(CH)の含有量の少ないSiCN膜SCN1(3MS↓)およびメチル基(CH)の含有量の多いSiCN膜SCN2の両方を組み合わせることにより、耐透水性の向上と低誘電率化を両立させることができる。
【0124】
(実施の形態6)
前記実施の形態4では、メチル基(CH)の含有量が異なるSiCN膜SCN2とSiCN膜SCN(4MS↓)とを形成する例について説明した。本実施の形態6では、単一のSiCN膜の膜厚方向におけるメチル基の含有量が異なる例について説明する。
【0125】
図35は、本実施の形態6における半導体装置の構成を示す断面図である。図35に示す本実施の形態6における半導体装置の構成は、図31に示す前記実施の形態4における半導体装置の構成とほぼ同様の構成をしているため、異なる点について説明する。
【0126】
図35に示す本実施の形態6における半導体装置において、バリア絶縁膜は、SiCN膜SCN3と、このSiCN膜SCN3上に形成されたSiCO膜SCOから構成されている。このとき、SiCN膜SCN3中に含まれるメチル基(CH)の含有量は均一ではなく、膜厚方向におけるメチル基(CH)の含有量が異なっている。具体的に、本実施の形態6では、SiCN膜SCN3内の上部から下部に進むにつれて、SiCN膜SCN3中に含まれるメチル基(CH)の含有量が連続的に多くなっている。したがって、本実施の形態6におけるSiCN膜SCN3において、SiCN膜SCN3内の上部領域は、メチル基(CH)の含有量が少なくなることから、膜の緻密化が図れるため、耐透水性に優れている。一方、SiCN膜SCN3内の下部領域は、メチル基(CH)の含有量が多くなることから、誘電率の上昇を抑制することができる。このように、本実施の形態6では、膜厚方向にメチル基(CH)の含有量が異なるSiCN膜SCN3を構成することにより、耐透水性の向上と低誘電率化を両立させることができる。
【0127】
なお、本実施の形態6におけるSiCN膜SCN3の形成方法は、例えば、テトラメチルシランガスとアンモニアガスとを原料ガスとしたCVD法において、成膜初期のテトラメチルシランガスの流量を多くし、その後、成膜後期に進むにつれて、テトラメチルシランガスの流量を少なくすることによって、SiCN膜SCN3内の下部から上部に進むにつれて、SiCN膜SCN3中に含まれるメチル基(CH)の含有量が連続的に少なくなるように形成することができる。また、テトラメチルシランガスの代わりにトリメチルシランガスを使用してもよい。
【0128】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0130】
1S 半導体基板
BCF1 バリア導体膜
BCF2 バリア導体膜
CF1 銅膜
CF2 銅膜
CIL コンタクト層間絶縁膜
CMP CMP保護膜
CNT コンタクトホール
DP1 ダメージ保護膜
DP2 ダメージ保護膜
FR1 フォトレジスト膜
FR2 フォトレジスト膜
IL1 層間絶縁膜
IL2 層間絶縁膜
L1 第1層配線
L2 第2層配線
PLG1 プラグ
PLG2 プラグ
Q MISFET
SCN SiCN膜
SCN1(3MS↓) SiCN膜
SCN1(4MS↓) SiCN膜
SCN2 SiCN膜
SCN3 SiCN膜
SCO SiCO膜
VH ビアホール
WD1 配線溝
WD2 配線溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)半導体基板と、
(b)前記半導体基板上に形成された層間絶縁膜と、
(c)前記層間絶縁膜に埋め込むように形成された配線と、
(d)前記配線を形成した前記層間絶縁膜上に形成された第1SiCN膜と、
(e)前記第1SiCN膜上に形成された第2SiCN膜と、
(f)前記第2SiCN膜上に形成された第1絶縁膜と、
(g)前記第1絶縁膜上に所定の層間絶縁膜と、前記所定の層間絶縁膜内に形成された所定の配線とにより形成された所定の配線層と、を備え、
前記第1絶縁膜は、SiCO膜、あるいは、酸化シリコン膜から形成されており、
前記層間絶縁膜及び前記所定の層間絶縁膜は低誘電率膜であり、
前記第1SiCN膜に含まれるメチル基の含有量と、前記第2SiCN膜に含まれるメチル基の含有量が異なることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記第1SiCN膜に含まれるメチル基の含有量は、前記第2SiCN膜に含まれるメチル基の含有量よりも少ないことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記第1SiCN膜に含まれるメチル基の含有量は、前記第2SiCN膜に含まれるメチル基の含有量よりも多いことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記第1絶縁膜の膜厚は、前記第1SiCN膜の膜厚と、前記第2SiCN膜の膜厚とを合わせた膜厚よりも大きいことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記層間絶縁膜は、酸化シリコン膜よりも誘電率の低い前記低誘電率膜から形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置であって、
前記低誘電率膜は、空孔を有するSiOC膜から形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記配線は、銅を主成分とする銅配線から形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
(a)半導体基板と、
(b)前記半導体基板上に形成された層間絶縁膜と、
(c)前記層間絶縁膜に埋め込むように形成された配線と、
(d)前記配線を形成した前記層間絶縁膜上に形成されたSiCN膜と、
(e)前記SiCN膜上に形成された第1絶縁膜と、
(f)前記第1絶縁膜上に所定の層間絶縁膜と、前記所定の層間絶縁膜内に形成された所定の配線とにより形成された所定の配線層と、を備え、
前記第1絶縁膜は、SiCO膜、あるいは、酸化シリコン膜から形成されており、
前記層間絶縁膜及び前記所定の層間絶縁膜は低誘電率膜であり、
前記SiCN膜の膜厚方向におけるメチル基の含有量が異なることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項8記載の半導体装置であって、
前記SiCN膜の膜厚方向において、前記SiCN膜内の上部から下部に進むにつれて、前記SiCN膜中に含まれるメチル基の含有量が少なくなることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項8記載の半導体装置であって、
前記SiCN膜の膜厚方向において、前記SiCN膜内の上部から下部に進むにつれて、前記SiCN膜中に含まれるメチル基の含有量が多くなることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
(a)半導体基板上に第1層間絶縁膜を形成する工程と、
(b)前記(a)工程後、前記第1層間絶縁膜に第1配線溝を形成する工程と、
(c)前記(b)工程後、前記第1配線溝に第1配線を形成する工程と、
(d)前記(c)工程後、前記第1配線を形成した前記第1層間絶縁膜上に、メチル基を含む第1原料ガスを使用したCVD法により第1SiCN膜を形成する工程と、
(e)前記(d)工程後、前記第1SiCN膜上に、メチル基を含む前記第1原料ガスを使用したCVD法により第2SiCN膜を形成する工程と、
(f)前記(e)工程後、前記第2SiCN膜上に、SiCO膜あるいは酸化シリコン膜からなる第1絶縁膜を形成する工程と、
(g)前記(f)工程後、前記第1絶縁膜上に第2層間絶縁膜と、前記第2層間絶縁膜内に形成された第2配線とを含む配線層を形成する工程と、を備え、
前記第1層間絶縁膜及び前記第2層間絶縁膜は低誘電率膜であり、
前記(d)工程で使用される前記第1原料ガスの流量と、前記(e)工程で使用される前記第1原料ガスの流量が異なることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(d)工程で使用される前記第1原料ガスの流量は、前記(e)工程で使用される前記第1原料ガスの流量よりも少ないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項11記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(d)工程で使用される前記第1原料ガスの流量は、前記(e)工程で使用される前記第1原料ガスの流量よりも多いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1原料ガスは、テトラメチルシランガスを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項11記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1原料ガスは、トリメチルシランガスを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項11記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(c)工程は、
(c1)前記第1配線溝内を含む前記第1層間絶縁膜上に第1導体膜を形成する工程と、
(c2)前記第1層間絶縁膜上に形成されている前記第1導体膜をCMP法により除去して、前記第1配線溝の内部に前記第1導体膜を残存させることにより、前記第1配線溝に埋め込まれた前記第1配線を形成する工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項11記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(g)工程は、
(g1)前記(f)工程後、前記第1絶縁膜上に前記第2層間絶縁膜を形成する工程と、
(g2)前記(g1)工程後、前記第1絶縁膜をエッチングストッパとして前記第2層間絶縁膜をエッチングすることにより、前記第2層間絶縁膜にビアホールを形成する工程と、
(g3)前記(g2)工程後、前記第2層間絶縁膜に第2配線溝を形成するとともに、前記ビアホールの底部に形成されている前記第1絶縁膜、前記第1SiCN膜および前記第2SiCN膜をエッチングすることにより、前記ビアホールの底部に前記第1配線を露出する工程と、
(g4)前記(g3)工程後、前記第2配線溝内および前記ビアホール内を含む前記第2層間絶縁膜上に第2導体膜を形成する工程と、
(g5)前記(g4)工程後、前記第2層間絶縁膜上に形成されている前記第2導体膜をCMP法により除去して、前記第2配線溝の内部と前記ビアホールの内部に前記第2導体膜を残存させることにより、前記第2配線溝に埋め込まれた前記第2配線と、前記ビアホールに埋め込まれたプラグを形成する工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項11記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(g)工程は、
(g1)前記(f)工程後、前記第1絶縁膜上に前記第2層間絶縁膜を形成する工程と、
(g2)前記(g1)工程後、前記第2層間絶縁膜上に第1ダメージ保護膜を形成する工程と、
(g3)前記(g2)工程後、前記第1ダメージ保護膜上に第2ダメージ保護膜を形成する工程と、
(g4)前記(g3)工程後、前記第2ダメージ保護膜上に第1化学増幅型レジスト膜を形成する工程と、
(g5)前記(g4)工程後、前記第1化学増幅型レジスト膜をパターニングする工程と、
(g6)前記(g5)工程後、パターニングした前記第1化学増幅型レジスト膜をマスクにして、前記第2ダメージ保護膜、前記第1ダメージ保護膜、および、前記第2層間絶縁膜をエッチングすることにより、底部に前記第1絶縁膜を露出するビアホールを形成する工程と、
(g7)前記(g6)工程後、前記第1化学増幅型レジスト膜を除去し、前記第2ダメージ保護膜上に第2化学増幅型レジスト膜を形成する工程と、
(g8)前記(g7)工程後、前記第2化学増幅型レジスト膜をパターニングする工程と、
(g9)前記(g8)工程後、パターニングした前記第2化学増幅型レジスト膜をマスクにして、前記第2ダメージ保護膜をパターニングする工程と、
(g10)前記(g9)工程後、パターニングした前記第2ダメージ保護膜をマスクにしたエッチングにより、前記第1ダメージ保護膜および前記第2層間絶縁膜に第2配線溝を形成するとともに、前記ビアホールの底部から前記第1絶縁膜、前記第2SiCN膜、および、前記第1SiCN膜を除去して、前記第1配線を露出する工程と、
(g11)前記(g10)工程後、前記第2配線溝内、前記ビアホール内、及び、前記第2ダメージ保護膜上に第2導体膜を形成する工程と、
(g12)前記(g11)工程後、前記第2ダメージ保護膜上に形成されている前記第2導体膜をCMP法により除去して、前記第2配線溝の内部と前記ビアホールの内部に前記第2導体膜を残存させることにより、前記第2配線溝に埋め込まれた前記第2配線と、前記ビアホールに埋め込まれたプラグを形成する工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項18記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(g9)工程と前記(g10)工程の間に、前記第2化学増幅型レジスト膜を除去する工程を更に備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2012−190995(P2012−190995A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53007(P2011−53007)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】