説明

半導体装置の製造方法及び半導体装置

【目的】 配線抵抗を低減させながら歩留まりを向上させたバリアメタル膜を形成することを目的とする。
【構成】 基体上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程(S102〜S108)と、前記絶縁膜に開口部を形成する開口部形成工程(S110)と、PVD法を用いて、前記絶縁膜上と開口部内とに第1のバリアメタル膜を形成する第1のバリアメタル膜形成工程(S116)と、その上に、CVD法を用いて第2のバリアメタル膜を形成する第2のバリアメタル膜形成工程(S118)と、その上に、PVD法を用いて第3のバリアメタル膜を形成する第3のバリアメタル膜形成工程S120)と、その上に、導電性材料を堆積させる堆積工程(S112,S124)と、を備え、前記絶縁膜上に形成された前記第1と第2と第3のバリアメタル膜の合計膜厚が、8nmより小さくなるように形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体装置に係り、特に、半導体集積回路における金属配線層構造に関する。
【背景技術】
【0002】
低抵抗で高いエレクトロマイグレーション(EM)耐性を有する銅(Cu)配線は、高集積化し微細化されたLSI配線用の高信頼性材料として期待されている。
【0003】
半導体集積回路の高集積化・高動作速度化に伴い、半導体素子間の配線を伝播する信号の遅延が集積回路の動作速度を律則するようになってきた。
特に、最近は、かかるLSIの高速性能化を達成するために、配線技術を従来のアルミ(Al)合金から低抵抗のCu或いはCu合金(以下、まとめてCuと称する。)に代える動きが進んでいる。Cuは、Al合金配線の形成において頻繁に用いられたドライエッチング法による微細加工が困難であるので、溝加工が施された絶縁膜上にCu膜を堆積し、溝内に埋め込まれた部分以外のCu膜を化学機械研磨(CMP)により除去して埋め込み配線を形成する、いわゆるダマシン(damascene)法が主に採用されている。Cu膜はスパッタ法などで薄いシード層を形成した後に電解めっき法により数100nm程度の厚さの積層膜を形成することが一般的である。
【0004】
また、Cuは、Si系絶縁膜中へ容易に拡散するために、Cuの周囲は拡散防止膜で覆わなければならない。そのため、上述したように、ダマシンプロセスを用いてCu配線を形成する場合には、絶縁膜中に形成した溝または孔といった開口部パターンに、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、或いはその窒化物、またはその合金といった高融点金属膜を成膜する。そして高融点金属膜を成膜した後に、Cu埋め込みを行い、Cu配線の周囲にCu拡散防止を目的とした高融点金属膜によるバリアメタル膜を配置することが一般的である。
【0005】
さらに、最近は層間絶縁膜として比誘電率の低い低誘電率(low−k)膜を用いることが検討されている。すなわち、比誘電率kが、約4.2のシリコン酸化膜(SiO膜)から比誘電率kが例えば3.5以下のlow−k膜を用いることにより、配線間の寄生容量を低減することが試みられている。このようなlow−k膜とCu配線を組み合わせた多層配線構造を有する半導体装置の製造方法は次のようなものである。
【0006】
図28は、従来のlow−k膜とCu配線を組み合わせた多層配線構造を有する半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図28では、デバイス部分等の形成方法は省略している。
図28(a)において、シリコン基板による基体200上にCVD(化学気層成長)等の方法により第1の絶縁膜221を成膜する。
図28(b)において、フォトリソグラフィ工程及びエッチング工程により、Cu金属配線或いはCuコンタクトプラグを形成するための溝構造(開口部H)を第1の絶縁膜221に形成する。
図28(c)において、第1の絶縁膜221上にバリアメタル膜240、Cuシード膜及びCu膜260をかかる順序で形成して、150℃から400℃の温度で約30分間アニール処理する。
図28(d)において、Cu膜260とバリアメタル膜240をCMPにより除去し、平坦化を行なうことにより、溝である開口部HにCu配線を形成する。
図28(e)において、前記Cu膜260表面に還元性プラズマ処理を施した後に第2の絶縁膜281を成膜する。
さらに、多層Cu配線を形成する場合は、これらの工程を繰り返して積層していくのが一般的である。ここで、第1の絶縁膜221と第2の絶縁膜281の大半がlow−k膜となる。
【0007】
ここで、かかるバリアメタル膜は、従来、物理気層成長(PVD)法により形成されてきたため、溝または孔パターン側壁部における成膜速度が著しく低下する。その結果、側壁部でも拡散防止をおこなうことができる側壁部での成膜膜厚を確保するには、基板表面において15nm程度以上の膜厚を成膜する必要があった。
【0008】
次世代デバイスにおいては層間絶縁膜として低誘電率膜、特に誘電率を下げるために、空孔を有する多孔質低誘電率(p−lowk)膜の使用が検討されている。言い換えれば、比誘電率kが2.5以下のlow−k膜材料の開発も進められており、これらは材料中に空孔が入ったポーラス材料となっているものが多い。今後さらにCu配線の微細化が進むにつれて、Cuに比べて高抵抗であるバリアメタルの薄膜化は必須となってくる。極薄膜のバリアメタルを成膜するために、検討されている手法として、CVD原子層気相成長(ALD:Atomic Layer
Deposition)法がある(例えば、非特許文献1,2参照)。この手法は原料ガスを交互に供給し、原子層レベルでの成膜を行う手法である。
【0009】
図29は、ALD法によるバリアメタルの成膜例を示すガスの供給フロー図である。
まず、タンタル(Ta)原料の供給を行う。例えば、塩化タンタル(TaCl)を用いて説明する。この時、セルフリミッティング効果により、ある一定量以上は吸着しない。次にアルゴン(Ar)によりパージを行う。つづいて、アンモニア(NH)の供給を行うことにより、バリアメタルとしての窒化タンタル(TaN)を形成する。最後にArによりパージを行う。この一連の作業を1サイクルとして、必要な膜厚分サイクルを繰り返すことで成膜を行う。
図30は、ALD法において、TaN膜が形成される様子を説明するための概念図である。
図30(a)において、TaR20(Ta化合物)を供給することにより、基体10にTaR20(Ta化合物)が吸着する。また、基体10の周辺には、吸着していないTaR20が浮遊する。
図30(b)において、Arを供給することにより、浮遊するTaR20が置換される。
図30(c)において、NHを供給することにより基体10に吸着されたTaR20を還元してTaN膜22が形成される。
【0010】
その他、バリアメタル膜に関連する技術として、化学気層成長(CVD)法によりバリアメタル膜を成膜する場合に、多孔質低誘電率(p−lowk)膜中にバリアメタル膜の成膜ガスが拡散しないように、PVD法により一端、第1のバリアメタル膜を形成した後にCVD法による第2のバリアメタル膜を形成する。そして、さらに、PVD法による第3のバリアメタル膜を形成するとする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−6541号公報
【非特許文献1】“Atomic layerdeposition of metal and nitride thin films: Current research efforts andapplications for semiconductor device processing" ,J. Vac. Sci. Technol.B21(6), 2003, p2231-2261
【非特許文献2】“Atomic layerdeposition for nanoscale Cu metallization" ,Advanced Metallization Conference 2003Conference Proceedings AMC XIX 2004 Materials Research Society p713-722
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、PVD法により、CuがSi系絶縁膜中に拡散することを防止する高融点金属を用いたバリアメタル膜を形成する場合、溝または孔パターン側壁部における成膜速度が著しく低下する。その結果、側壁部でも拡散防止をおこなうことができる側壁部での成膜膜厚を確保するには、基板表面において15nm程度以上の膜厚を成膜する必要があった。同様に、側壁部での膜厚を確保するため、側壁部成膜速度より大きい速度で成膜される、溝または孔の底部にも必要以上に厚く成膜されることになる(底部成膜速度>>側壁部成膜速度)。かかる高融点金属を用いたバリアメタル膜の抵抗値は、Cuと比較して著しく高いために、溝部と孔部の接続面となるそれぞれの底部にバリアメタル膜が厚く成膜されることは、接続抵抗の増加を招くといった問題があった。
【0012】
一方、ALD法を含むCVD法により成膜する場合、PVD法により成膜する場合と比較して底部成膜速度と側壁部成膜速度との差が小さい。よって、CVD法によるバリアメタル膜の薄膜成膜が検討されている。しかし、CVD法により成膜した高融点金属を用いたバリアメタル膜は、Cuとの濡れ性が悪い。
図31は、CVD法により高融点金属を用いたバリアメタル膜を成膜した半導体装置の断面図である。
図31では、下層配線(M1)と上層配線(M2)とを接続するヴィアの上部と、上層配線(M2)の下部との間にCVD法により成膜したバリアメタルが存在するために、ヴィアが、上層配線(M2)側から分離して密着していない様子が写し出されている。このように、CVD法により成膜した高融点金属を用いたバリアメタル膜は、Cuとの濡れ性が悪いため、密着性が悪く溝部(上層配線)と孔部(ヴィア)の接続歩留まりが得られないといった問題があった。
【0013】
ここで、前記特許文献1には、上述したようにPVD法により形成された第1と第3のバリア膜でCVD法により形成された第2のバリア膜を挟む技術が開示されている。PVD膜でCVD膜を挟むことによりCuとの濡れ性の問題を解決できるようにも思えるが、単に、PVD膜でCVD膜を挟むだけでは、バリアメタル膜を薄膜化することはできない。
図32は、PVD法により10nm形成されたバリアメタル膜を通してCuが拡散している様子を示す図である。
図32では、TaNとTaの積層膜を基板上での値として10nm形成した場合でも絶縁膜側壁ではCuが絶縁膜中に拡散している様子を示している。めっき法によりCuを堆積させるが、めっき液の分子の大きさでは、TaNとTaの積層膜を10nm形成した場合でもCuが絶縁膜中に拡散してしまうことがわかる。上述したように、PVD膜を用いて側壁部でも拡散防止をおこなうためには、基板表面において15nm程度以上の膜厚を成膜する必要がある。前記特許文献1では、CVD法による成膜ガスを絶縁膜中に拡散しないようにPVD膜を成膜するとしている。ここで、成膜ガスよりも分子が大きいめっき液が拡散する程度のバリアメタル膜の膜厚では、めっき液よりも分子が小さい成膜ガスも拡散するため、前記特許文献1では、さらに、厚い膜厚のバリアメタル膜をPVD法により形成することを前提としていることがわかる。よって、前記特許文献1の技術では、バリアメタル膜を薄膜化し、配線抵抗を低減することはできない。
【0014】
本発明は、上述した問題点を克服し、配線抵抗を低減させながら歩留まりを向上させたバリアメタル膜を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の半導体装置の製造方法は、
基体上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜に開口部を形成する開口部形成工程と、
物理気相成長(PVD)法を用いて、前記絶縁膜上と開口部内とに第1のバリアメタル膜を形成する第1のバリアメタル膜形成工程と、
前記第1のバリアメタル膜上に、化学気相成長(CVD)法を用いて第2のバリアメタル膜を形成する第2のバリアメタル膜形成工程と、
前記第2のバリアメタル膜上に、PVD法を用いて第3のバリアメタル膜を形成する第3のバリアメタル膜形成工程と、
前記第3のバリアメタル膜上に、導電性材料を堆積させる堆積工程と、
を備え、
前記絶縁膜上に形成された前記第1と第2と第3のバリアメタル膜の合計膜厚が、8nmより小さくなるように形成することを特徴とする。
【0016】
後述するように、PVD膜でCVD膜を挟んだ場合に、前記第1と第2と第3のバリアメタル膜の合計膜厚を8nm以上とすると、長い時間が経過した後では配線間の歩留まりが著しく低下してしまうことを発明者等は見出した。
そこで、前記第1と第2と第3のバリアメタル膜の合計膜厚が、8nmより小さくなるように形成することにより、長い時間が経過した後でも配線間の歩留まりを維持させることができる。
【0017】
さらに、前記第2のバリアメタル膜形成工程において、前記絶縁膜上に形成された前記第2のバリアメタル膜の膜厚が、2nmより小さくなるように形成することを特徴とする。
【0018】
後述するように、CVD膜を2nm以上とすると配線抵抗(特に、ヴィア抵抗)が高くなることを発明者等は見出した。
そこで、第2のバリアメタル膜の膜厚が、2nmより小さくなるように形成することにより、配線抵抗(特に、ヴィア抵抗)を低く抑えることができる。
【0019】
さらに、前記第2のバリアメタル膜の膜厚が、前記第1と第3のバリアメタル膜のいずれの膜厚よりも薄くなるように形成することを特徴とする。
【0020】
前記第2のバリアメタル膜の膜厚が、前記第1と第3のバリアメタル膜のいずれの膜厚よりも薄くなるように形成することにより、薄膜化を図りながら実効性のあるPVD膜を形成することができる。
【0021】
前記第2のバリアメタル膜形成工程において、前記CVD法として、原子層気相成長(ALD)法を用いると2nm未満の膜形成において特に有効である。
【0022】
また、前記第1と第2と第3のバリアメタル膜は、それぞれ、材料として、タンタル(Ta)とチタン(Ti)とタングステン(W)とTa化合物とTi化合物とW化合物とのいずれかを用いると特に有効である。
【0023】
前記半導体装置の形成方法は、さらに、前記第1のバリアメタル膜形成工程前に、前記開口部の壁面に拡散防止膜を形成する拡散防止膜形成工程を備えたことを特徴とする。
【0024】
開口部の壁面に前記拡散防止膜を形成することにより、壁面におけるCu及びCVDバリアメタル膜の拡散を防止することができる。
【0025】
さらに、前記拡散防止膜形成工程において、前記拡散防止膜の膜厚が、20nm以下になるように形成すると特に有効である。
【0026】
そして、前記拡散防止膜形成工程において、CVD法を用いて前記拡散防止膜を形成すると容易に形成しやすく特に有効である。
【0027】
さらに、前記拡散防止膜形成工程において、前記拡散防止膜の材料として、シリコン化合物を用いると特に有効である。
【0028】
前記シリコン化合物として、炭化シリコン(SiC)と炭窒化シリコン(SiCN)と炭酸化シリコン(SiOC)と窒化シリコン(SiN)との内、少なくとも1つを用いると有効である。
【0029】
さらに、前記絶縁膜は、比誘電率2.5以下の低誘電率膜を用いると微細配線化を進める上でなおよい。
【0030】
そして、前記導電性材料として、銅(Cu)を用いることで、低抵抗化させることができる。
【0031】
本発明の半導体装置は、
導電性材料を用いた第1の導電膜と、
前記第1の導電膜上に形成された前記導電性材料を用いた第2の導電膜と、
前記第2の導電膜の側面側に配置される、絶縁性材料を用いた絶縁膜と、
バリアメタル材料を用いて、前記第2の導電膜と前記絶縁膜との間と、前記第1と第2の導電膜の間とに形成された、化学気相成長(CVD)法を用いて形成されたCVD膜と物理気相成長(PVD)法を用いて前記CVD膜を挟むように形成された2つのPVD膜とを有するバリアメタル膜と、
を備え、
前記バリアメタル膜は、前記第1と第2の導電膜の間において、前記CVD膜と前記2つのPVD膜との合計膜厚が、6.2nmより小さく形成されることを特徴とする。
【0032】
前記第2の導電膜は、前記絶縁膜に設けられた開口部に前記導電性材料を堆積させる。また、後述するように、バリアメタル膜の合計膜厚が絶縁膜表面で8nm未満、CVD膜が2nm未満に形成されると配線抵抗を低く抑えながら時間が経過した後でも導電膜間の歩留まりを維持させることができることを発明者等は見出した。すなわち、2つのPVD膜の合計膜厚が絶縁膜表面で6nm以下である場合には特に有効であると言える。ここで、PVD膜は、開口部底部では、絶縁膜表面の70%程度の膜厚が形成される。よって、第2の導電膜の開口部底部にあたる前記第1と第2の導電膜の間において、前記CVD膜と前記2つのPVD膜との合計膜厚が、6.2nmより小さく形成されると時間が経過した後でも導電膜間の歩留まりを維持させることができ、特に有効となる。
【0033】
さらに、前記バリアメタル膜において、前記CVD膜は、前記2つのPVD膜のいずれよりも膜厚が薄く形成されることを特徴とする。
【0034】
前記CVD膜は、前記2つのPVD膜のいずれよりも膜厚が薄く形成されることにより、薄膜化を図りながら実効性のあるPVD膜を形成することができる。
【0035】
前記半導体装置は、さらに、前記バリアメタル膜と前記絶縁膜との間に形成された拡散防止膜を備えたことを特徴とする。
【0036】
上述したように、前記バリアメタル膜と前記絶縁膜との間に拡散防止膜を備えることにより壁面におけるCu及びCVDバリアメタル膜の拡散を防止することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、前記第1と第2と第3のバリアメタル膜の合計膜厚が、成膜時基板上において8nmより小さくなるように形成することにより、従来よりも薄膜化することができる。薄膜化することができるので、配線抵抗を低減することができる。さらに、バリアメタル膜の合計膜厚が、8nmより小さくなるように形成することにより、時間が経過した後でも配線間の歩留まりを維持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
実施の形態1.
実施の形態1では、下層配線上にヴィアを形成する場合について説明する。
図1は、実施の形態1における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
図1において、本実施の形態では、下層配線層上にヴィアを形成する場合にヴィア用の層間絶縁膜形成工程として、SiC膜を形成するSiC膜形成工程(S102)、多孔質の絶縁性材料を用いたp−lowk膜を形成するp−lowk膜形成工程(S104)、p−lowk膜表面をプラズマ処理するヘリウム(He)プラズマ処理工程(S106)、SiO膜を形成するSiO膜形成工程(S108)と、開口部を形成する開口部形成工程(S110)と、拡散防止膜形成工程としてのポアシーリング工程(S112)と、エッチバック工程(S114)と、バリアメタル膜形成工程として、PVD法による第1のバリアメタル膜形成工程(S116)、CVD法による第2のバリアメタル膜形成工程(S118)、PVD法による第3のバリアメタル膜形成工程(S120)と、ヴィア形成工程となる導電性材料を堆積させる導電性材料堆積工程として、シード膜形成工程(S122)、めっき工程(S124)と、平坦化工程(S126)という一連の工程を実施する。
【0039】
図2は、ALD法によるTaN膜の膜厚の違いによるヴィア抵抗と累積確立との関係を示す図である。
ここで、まず、発明者等は、CVD法、ここでは特にALD法を用いて成膜したTaN膜の膜厚の違いによるヴィア抵抗(Via Resistance)と累積確立(Cumulative Probability)との関係を調べた。サンプル構造として、上下の配線幅が160nmのものを用いた。比較対象として、PVD法により成膜時基板上においてTaN膜を10nm、Ta膜を15nm成膜した場合も測定した。図2に示すように、ヴィア抵抗は、ALD膜が成膜時基板上において2nm(2nm以上3nm未満の値)では、膜厚の大きいPVD膜よりもヴィア抵抗が高いのに対し、ALD膜が成膜時基板上において1nm(1nm以上2nm未満の値)では、膜厚の大きいPVD膜よりもヴィア抵抗が低い値であることがわかる。言い換えれば、ALD膜をバリアメタル膜として用いる場合には、成膜時基板上において2nmより小さい(2nm未満)膜厚で用いるとヴィア抵抗の上昇を抑えることができることを発明者等は見出した。
【0040】
さらに、発明者等は、CVD法によるバリアメタル膜をPVD法によるバリアメタル膜で挟み込むことによりヴィア抵抗の上昇を低減させることができることを見出した。ここでは、サンプル構造として、上下の配線幅が5umのものを用いた。また、この抵抗値は15000個のチェーンパターンの総抵抗を接続ヴィア数で割った値を示している。
図3は、バリアメタル膜の構成の違いによるヴィア抵抗と累積確立との関係を示す図である。
図3(a)では、CVD(ここでは、特に、ALD)法によるTaN膜とPVD法によるTa膜との積層膜において、溝に埋め込まれるCu側(upper側)にPVD法によるTa膜を形成した場合を示している。
図3(b)では、CVD(ここでは、特に、ALD)法によるTaN膜とPVD法によるTa膜との積層膜において、下層配線側(lower側)にPVD法によるTa膜を形成した場合を示している。
図3(c)では、CVD(ここでは、特に、ALD)法によるTaN膜とPVD法によるTa膜との積層膜において、ALD法によるTaNをPVD法による2つのTa膜で挟み込んだ場合(サンドウィッチ(sandwich)構造)を示している。
図3(d)では、図3(a)の構成の場合、図3(b)の構成の場合、図3(c)の構成の場合、さらに、PVD法による膜のみの場合(PVD)、ALD法による膜のみの場合(ALDonly)とで、ヴィア抵抗と累積確立との関係を比較している。
図3(d)で示すように、ALD法によるTaNをPVD法によるTa膜で挟み込んだサンドウィッチ構造の場合が、ヴィア抵抗がALD法による膜のみの場合よりも小さく、さらに、一方だけPVD膜を設けるより変化が少ないことがわかる。
【0041】
ここで、図2で説明したサンプル構造は、上下の配線幅が160nmであった。この場合には、配線側からヴィアに発生するストレスが小さいために、ALD単独の1nmでも接続歩留が得られており、界面抵抗の低減によってヴィア抵抗の低減効果が得られている。しかしながら、配線側からヴィアに発生するストレスが大きくなる上下接続配線幅が例えば5umの場合には、配線/ヴィア間の密着性がALD単独では低いために接続歩留が確保できないといった問題が発生する。よって、図3(d)では、ALD法による膜のみの場合(ALDonly)、ヴィア抵抗が急激に大きくなっていく。そこで、発明者等は、密着性低下の原因がALD−TaN/Cu材料間の濡れ性に起因すると考えたため、ウエッティングレイヤーとしてのPVD−Taで挟むことで解決することを見出した。PVD膜で挟むことで、配線側からヴィアに発生するストレスが大きい場合はもちろんのこと、上下の配線幅が小さく配線側からヴィアに発生するストレスが小さい場合でもヴィア抵抗を低減させることができる。
【0042】
また、上述したように、図3では、ヴィアチェーンパターンを形成する上下の接続配線幅が図2の場合より太くなっている。そして、図3では、この抵抗値は15000個のチェーンパターンの総抵抗を接続ヴィア数で割った値を示している。そのため、ヴィア抵抗には、若干の配線付加抵抗が含まれた値となっている。よって、図3(d)では、図2と比べ、抵抗の値が相違しているが、これは上下配線幅に起因した配線抵抗の差である。
【0043】
図4は、サンドウィッチ構造にしたバリアメタル膜のヴィア歩留まりとストレス時間との関係を示す図である。
さらに、発明者等は、サンドウィッチ構造にしたバリアメタル膜のヴィア歩留まり(Via Yield)とストレス時間(Stress Time)との関係を調べた。図4では、ALD法によるTaN膜を1nm(1nm以上2nm未満の値)の膜厚とした。溝に埋め込まれるCu側(upper側)に5nm(5nm以上6nm未満の値)のPVD−Ta膜と下層配線側(lower側)に2nm(2nm以上3nm未満の値)のPVD−Ta膜とで前記1nmのALD−TaN膜を挟んだ場合(合計膜厚が8nm以上)と、溝に埋め込まれるCu側(upper側)に2nm(2nm以上3nm未満の値)のPVD−Ta膜と下層配線側(lower側)に5nm(5nm以上6nm未満の値)のPVD−Ta膜とで前記1nmのALD−TaN膜を挟んだ場合(合計膜厚が8nm以上)とでは、ストレスをかける時間が経過するにつれてヴィア歩留まりが著しく低下していくことがわかる。これらに対し、溝に埋め込まれるCu側(upper側)に2nm(2nm以上3nm未満の値)のPVD−Ta膜と下層配線側(lower側)に2nm(2nm以上3nm未満の値)のPVD−Ta膜とで前記1nmのALD−TaN膜を挟んだ場合(合計膜厚が5nm(5nm以上8nm未満の値となる))では、ストレスをかける時間が経過してもヴィア歩留まりが安定していることがわかる。言い換えれば、溝に埋め込まれるCu側(upper側)のPVD−Ta膜と下層配線側(lower側)のPVD−Ta膜と中間のALD−TaN膜との合計膜厚が、成膜時基板上において8nmより小さい場合には、ヴィア歩留まりの低下を抑制することができることを発明者等は見出した。
【0044】
よって、PVD法とCVD法とを併用して形成される高融点金属膜の積層構造は、CVD法を用いて形成される成膜時基板上において2nmより小さい薄膜高融点金属膜を、PVD法を用いて形成される薄膜高融点金属で挟み込んだ3層積層構造とし、成膜時基板上において合計膜厚を8nmより小さくすることで、CVD法による高融点金属を用いたバリアメタル膜とCuとの濡れ性を改善し、溝部(下層配線)と孔部(ヴィア)との接続歩留まりを確保することができる。
【0045】
図5は、図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
図5では、図1のSiC膜形成工程(S102)からSiO膜形成工程(S108)までを示している。それ以降の工程は後述する。
【0046】
図5(a)において、SiC膜形成工程として、下層配線層が形成された基体200上に、CVD法によって、SiCを用いた膜厚50nmの下地炭化シリコン(SiC)膜を堆積し、SiC膜275を形成する。ここでは、CVD法によって成膜しているが、その他の方法を用いても構わない。SiC膜275は、エッチングストッパとしての機能も有する。SiC膜を生成するのは難しいためSiC膜の代わりに炭酸化シリコン(SiOC)膜を用いても構わない。或いは、炭窒化シリコン(SiCN)膜、窒化シリコン(SiN)膜を用いることができる。基体200として、例えば、直径300ミリのシリコンウェハ等の基板を用いる。下層配線層は、デバイス層210上に、下地SiC膜212とp−lowk膜220とキャップSiO膜222とが形成された下層配線用層間絶縁膜に、バリアメタル膜240とシード膜250とCu膜260とが形成されている。デバイス層210には、コンタクトプラグ、或いは、その他の層が形成されていても構わない。
【0047】
図5(b)において、ポーラスlow−k(p−lowk)膜形成工程として、基体200の上に形成された前記SiC絶縁膜形成工程により形成されたSiC膜275の上に多孔質の絶縁性材料を用いたp−lowk膜280を250nmの厚さで形成する。p−lowk膜280を形成することで、比誘電率kが3.5よりも低い層間絶縁膜を得ることができる。p−lowk膜280の材料としては、例えば、多孔質のメチルシルセスキオキサン(methyl silsequioxane:MSQ)を用いることができる。また、その形成方法としては、例えば、溶液をスピンコートし熱処理して薄膜を形成するSOD(spin on dielectic coating号と氏名又は名称、代理人の氏名、)法を用いることができる。例えば、スピナーの回転数は900min−1(900rpm)で成膜する。このウェハをホットプレート上で窒素雰囲気中250℃の温度でベークを行い、最終的にホットプレート上で窒素雰囲気中450℃の温度で10分間のキュアを行なう。MSQの材料や形成条件などを適宜調節することにより、所定の物性値を有する多孔質の絶縁膜が得られる。例えば、密度が0.7g/cmで比誘電率kが1.8となる。low−k膜のSiとOとCの組成比は、Siが25から35%の範囲、Oが45から57%の範囲、Cが13から24%の範囲にある物性値を有するp−lowk膜280が得られる。
【0048】
そして、Heプラズマ処理工程として、このp−lowk膜280表面をヘリウム(He)プラズマ照射によって表面改質する。Heプラズマ照射によって表面が改質されることで、p−lowk膜280とp−lowk膜280上に形成する後述するキャップ膜としてのCVD−SiO膜284との接着性を改善することができる。ガス流量は、例えば、1.7Pa・m/s(1000sccm)、ガス圧力は1000Pa、高周波パワーは500W、低周波パワーは400W、温度は400℃とする。キャップCVD膜をp−lowk膜上に成膜する際は、p−lowk膜表面にプラズマ処理を施すことがキャップCVD膜との接着性を改善する上で有効である。プラズマガスの種類としてはアンモニア(NH)、亜酸化窒素(NO)、水素(H)、He、酸素(O)、シラン(SiH)、アルゴン(Ar)、窒素(N)などがあり、これらの中でもHeプラズマはp−lowk膜へのダメージが少ないために特に有効である。また、プラズマガスはこれらのガスを混合したものでも良い。例えば、Heガスは他のガスと混合して用いると効果的である。
【0049】
図5(c)において、SiO膜形成工程として、前記Heプラズマ処理を行った後、キャップ膜として、CVD法によってp−lowk膜280上にSiOを膜厚50nm堆積することで、SiO膜284を形成する。SiO膜284を形成することで、直接リソグラフィを行うことができないp−lowk膜280を保護し、p−lowk膜280にパターンを形成することができる。かかるキャップCVD膜は、SiO膜、SiC膜、SiOC膜、SiCN膜などがあるが、ダメージ低減の観点からはSiO膜が優れ、低誘電率化の観点からはSiOC膜が、耐圧向上の観点からはSiC膜やSiCN膜が優れている。さらに、SiO膜とSiC膜の積層膜、もしくはSiO膜とSiCO膜の積層膜、もしくはSiO膜とSiCN膜の積層膜を用いることができる。さらにキャップCVD膜の一部、もしくは全てが後述する平坦化工程において化学機械研磨(ケミカル・メカニカル・ポリッシング:chemical mechanical polishing:CMP)により除去されても良い。キャップ膜を除去することで誘電率をさらに低減することができる。キャップ膜の厚さとしては10nmから150nmが良く、10nmから50nmが実効的な比誘電率を低減する上で効果的である。
【0050】
以上の説明において、層間絶縁膜は、比誘電率が3.5以下のlow−k膜でなくても構わないが、low−k膜、特に、比誘電率kが2.5以下、空孔率が30%以上の多孔質のp−lowk膜を含む場合に特に有効である。
【0051】
図6は、図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
図6では、図1の開口部形成工程(S110)からエッチバック工程(S114)までを示している。それ以降の工程は後述する。
【0052】
図6(a)において、開口部形成工程として、リソグラフィ工程とドライエッチング工程でダマシン配線を作製するための配線溝構造である開口部150をSiO膜284とp−lowk膜280内に形成する。図示していないレジスト塗布工程、露光工程等のリソグラフィ工程を経てSiO膜284の上にレジスト膜が形成された基体200に対し、露出したSiO膜284とその下層に位置するp−lowk膜280を、下地SiC膜275をエッチングストッパとして異方性エッチング法により除去して開口部150を形成すればよい。異方性エッチング法を用いることで、基体200の表面に対し、略垂直に開口部150を形成することができる。例えば、一例として、反応性イオンエッチング法により開口部150を形成すればよい。
【0053】
図6(b)において、拡散防止膜形成工程の一例であるポアシーリング工程として、前記開口部形成工程により形成された開口部150及びSiO膜284表面に、CVD法によって、SiCを用いた開口部壁面での膜厚が5nmとなるまでSiC膜を堆積し、SiC膜230を形成する。ここでは、形成のし易さの観点から高密度プラズマを用いたCVD法によって成膜しているが、その他の方法を用いても構わない。後述するバリアメタル膜、特に、PVD法による第1のバリアメタル膜の膜厚を薄くするため、CVD法(ALD法)による第2のバリアメタル膜形成の際の成膜ガスのp−lowk膜280への拡散を防止することが困難となる。また、PVD法及びCVD法によるバリアメタル膜の積層膜合計膜厚を8nm未満とするため、バリアメタル膜だけではその後堆積させるCuのp−lowk膜280への拡散を防止することが困難となる。そこで、p−lowk膜280壁面にサイドウォールとなるSiC膜230を形成することで、バリアメタル膜と共に、CVD成膜ガスのp−lowk膜280への拡散、及びCuのp−lowk膜280への拡散を防止することができる。
【0054】
図7は、CVD装置の概念図である。
図7において、装置350では、チャンバ300の内部にて、基体200上、さらに言えば、基板上に前工程までの処理が施された基体10を下部電極310を兼ねた所定の温度に制御された基板ホルダの上に設置する。そして、チャンバ300の内部に上部電極320内部から成膜ガスを供給する。真空ポンプ330により所定の成膜圧力になるように真空引きされたチャンバ300の内部の上記上部電極320と下部電極310との間に高周波電源を用いてプラズマを生成させる。そして、基体10をガスのプラズマの雰囲気に晒し、化学気相成長させることで開口部150内面及び基体10の上面にSiCを成膜し、SiC膜230を形成する。前記SiC膜230の膜厚を5nmで形成することで、その後に形成される配線やビアの断面積を大きくすることができる。配線やビアの断面積を大きくすることができるので、配線抵抗やビア抵抗の増加を防ぐことができる。よって、配線抵抗やビア抵抗が増加して、半導体装置の動作速度を低下させてしまうことを防ぐことができる。さらに、配線抵抗やビア抵抗の増加を防ぐことにより半導体装置の動作に高い電源電圧が必要となることを防ぎ、消費電力の増加を防止することができる。薄く形成することで層間絶縁膜としての誘電率の上昇を防ぐことができる。
【0055】
特に、比誘電率kが2.5以下の場合、ヴィア部に露出したp−lowk膜の側壁が、CVD膜で被覆されていることが望ましい。その理由は、比誘電率が2.5以下の場合はポーラス膜であることが多く、ポアシーリングをCu配線の側壁で行うことが有効だからである。特に、ALD法を含むCVD法によってバリアメタル膜を成膜する場合は有効である。CVD膜の膜厚は、ここでは、壁面で5nmとしているが、基体上で20nm以下になるように形成することが望ましい。厚すぎると壁面での膜厚が厚くなり配線幅が狭くなる。その結果、配線抵抗に影響するため、配線や接続配線となるビアの断面積を大きくして配線抵抗やビア抵抗(接続抵抗)を下げることが望ましい。ポアシーリング用のCVD膜の種類としては、シリコン化合物、特に窒化膜或いは炭化膜であるSiC膜、SiCN膜、SiCO膜、SiN膜が望ましい。特に、低誘電率の観点からSiC膜が最適である。
【0056】
図6(c)において、エッチバック工程として、開口部150の底面に形成されて残っていたSiC膜230とSiO膜284上のSiC膜230とをエッチバックにより除去する。そして、SiC膜230をエッチバックにより除去する際、同時に、開口部150の底面に形成されて残っていたSiC膜275をエッチバックにより除去する。開口部150の底面に形成されて残っていたSiC膜275を除去することで、開口部150の底面には、SiC膜275及びSiC膜230が堆積しないため、その後形成される導電性材料と下層の導電性材料との導電性を低下させることを防ぐことができる。
【0057】
図8は、図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
図8では、図1の第1のバリアメタル膜形成工程(S116)から第3のバリアメタル膜形成工程(S120)までを示している。それ以降の工程は後述する。
図8(a)において、第1のバリアメタル膜形成工程として、側壁にSiC膜230が形成された開口部150及びSiO膜248表面にバリアメタル材料を用いたバリアメタル膜241を形成する。物理気相成長法(physical vapor deposition:PVD)法の1つであるスパッタ法を用いるスパッタリング装置内で窒化タンタル(TaN)を基体上において平均膜厚が2.5nmになるように堆積し、バリアメタル膜241を形成する。
【0058】
図9は、スパッタリング装置の概念図である。
チャンバ700内を真空ポンプ730により真空引きして、高真空を形成し、高真空中で陰極に接続されたターゲット720にアルゴンイオンを衝突させ、ターゲット720を構成する分子(ここでは、TaN)をスパッタリング現象によりたたき出し、対向する位置において陽極に接続された、基体200上、さらに言えば、基板上に前工程までの処理が施された基体10に堆積させる。Taターゲットを用いて窒素(N)ガスを含む雰囲気中でスパッタリングしてもよい。
【0059】
PVD膜であるバリアメタル膜241を下層配線となるCu膜260上に形成することにより濡れ性を改善し、下層配線とヴィアとの密着性を向上させることができる。
ここで、第1のバリアメタル膜として、バリアメタル膜241の基体上に堆積させる膜厚(トップ膜厚)は、3nm以下が望ましい。特に、2.5nm程度(例えば、2〜3nm)にするとなお良い。ここで、上述したように、次工程で形成されるALD膜を挟むPVD膜の合計は6nm以下が望ましい。一方で、PVD法を用いて制御可能な薄膜化を図るには限界がある。よって、基体上に堆積させる膜厚を片側3nm以下とすることで、PVD法を用いた制御可能な薄膜を形成することができる。基体上に3nm以下のバリアメタル膜241を堆積させることで、下層配線となるCu膜260上(すなわち、開口部150の底部)の膜厚(ボトム膜厚)は、トップ膜厚の60〜70%となり、すなわち、開口部150の底部には1.8〜2.1nmの膜厚のバリアメタル膜241が形成される。よって、バリアメタル膜241の開口部150の底部に堆積させる膜厚(ボトム膜厚)は、2.1nm以下が望ましい。
【0060】
図8(b)において、第2のバリアメタル膜形成工程として、第1のバリアメタル膜241上にバリアメタル材料を用いたバリアメタル膜242を形成する。ここでは、原子層気相成長(atomic layer deposition:ALD法、あるいは、atomic layer chemical vapor deposition:ALCVD法)を含むCVD法を用いて装置内でTaNを基体上において平均膜厚が2nmより小さくなるように堆積し、バリアメタル膜242を形成する。特に、1nm(1nm以上2nm未満の値)にするとなお良い。
【0061】
図10は、TaN膜形成工程における各ガスの供給フローを示す図である。
ここでは、バリアメタル膜242として、TaN膜を成膜する。まず、第2のバリアメタル膜成膜のためのメタル原料として、ペンタジエチルタンタル(Ta[N(C)を用い、メタル原料と反応する反応種の一例である、前記メタル原料の還元ガスとして、アンモニア(NH)を用い、パージガスとして、水素(H)を用いる。パージガスとして、Hを用いることで、次の反応性を高めることができる。さらに、Hは純度を高めることができるので、クリーニングに適している。
Ta[N(C供給工程として、Ta[N(Cを1s供給する。その後、H供給工程として、Hを1s供給してパージする。そして、NH供給工程として、NHを1s供給する。そしてH供給工程として、Hを1s供給してパージする。かかる工程を1サイクルとして、成膜温度300℃にて、10サイクルの供給を行なう。
【0062】
図11は、ALD装置の概要構成を示す図である。
図11において、チャンバ600の内部にて、基体200上、さらに言えば、基板上に前工程までの処理が施された基体10を所定の温度に制御された基板ホルダ(ウェハステージ)610の上に設置する。そして、チャンバ600の内部に上部からガスを供給する。また、真空ポンプ630によりチャンバ600の内部が所定の圧力になるように真空引きされる。容器650に入った固体のTa[N((Cを50〜70℃に加熱して暖める。暖められ溶融したTa[N(C内にキャリアガスとしてHガスを供給することで、Hと共にガス化したTa[N(Cを一種のバブリング法によりチャンバ600に供給することができる。
【0063】
ここで、ガス量は、Ta[N(Cについて、0.5Pa・m/s(300sccm)〜1.68Pa・m/s(1000sccm)が望ましい。NHについて、1.68Pa・m/s(1000sccm)〜3.36Pa・m/s(2000sccm)が望ましい。パージガスであるHについて、1.68Pa・m/s(1000sccm)〜3.36Pa・m/s(2000sccm)が望ましい。成膜圧力は、665Pa(5Torr)以下が望ましい。成膜温度は、250〜300℃が望ましい。
【0064】
また、TaN膜形成にあたり、メタル原料として、塩化タンタル(TaCl)や、ペンタジエメルタンタル(Ta[N(CH)等を用いてもよい。
【0065】
また、メタル原料の還元ガスとして、ヒドラジン(HNNH)或いは、1−1ジメチルヒドラジンや1−2ジメチルヒドラジン等のヒドラジン化合物を用いても構わない。ヒドラジン或いはヒドラジン化合物を用いることによりNHより還元作用を強くすることができる。
【0066】
さらに、パージガスとして、アルゴン(Ar)や窒素(N)やヘリウム(He)を用いても構わない。Arを用いることで、安価でかつ扱い易くすることができる。
【0067】
図12は、複数のチャンバを備えた装置の概要を説明するための概念図である。
図12において、装置500は、複数のチャンバ510,520,530を有している。カセット室550にウェハをセットし、搬送室540において、搬送ロボットが、各チャンバにウェハを搬送或いは搬出する。前記第1のバリアメタル膜成膜と前記第2のバリアメタル膜成膜と後述する第3のバリアメタル膜成膜とを真空搬送可能な同一装置内において行なうことでプロセスを安定化させることができる。或いはいずれか2つの成膜を真空搬送可能な同一装置内において行なうことでプロセスを安定化させることができる。また、外気にウェハを晒すことなく処理するため、パーティクルの付着を防止することができる。例えば、第1のバリアメタル膜成膜をチャンバ510にて行ない、第1のバリアメタル膜成膜をチャンバ520にて行なう。
【0068】
図13は、ALD装置の他の概要構成例を示す図である。
図11における装置では、チャンバ600上部から基体10の大きさに関わらず、また、ガスの進行方向に関わらずガスを供給しているが、図13に示すように、基体10と平行する平板となるシャワーヘッド620から基体10全面に向けて均一にガスを供給するように構成するとなお良い。その他の構成は、図11と同様であるので省略する。
【0069】
図8(c)において、第3のバリアメタル膜形成工程として、第2のバリアメタル膜242上にバリアメタル材料を用いたバリアメタル膜243を形成する。物理気相成長法(physical vapor deposition:PVD)法の1つであるスパッタ法を用いるスパッタリング装置内で窒化タンタル(TaN)を基体上において平均膜厚が2.5nmになるように堆積し、バリアメタル膜243を形成する。装置構成は、図8(a)における第1のバリアメタル膜形成工程と同様で構わないため省略する。
【0070】
PVD膜であるバリアメタル膜243をALD膜であるバリアメタル膜242上に形成することにより、バリアメタル膜243上に形成される後述するCuヴィアとの濡れ性を改善し、下層配線とヴィアとの密着性を向上させることができる。
ここで、第3のバリアメタル膜として、バリアメタル膜243の基体上に堆積させる膜厚(トップ膜厚)は、3nm以下が望ましい。特に、2.5nm程度(例えば、2〜3nm)にするとなお良い。上述したように、ALD膜を挟むPVD膜の合計は6nm以下が望ましい。一方で、PVD法を用いて制御可能な薄膜化を図るには限界がある。よって、基体上に堆積させる膜厚を片側3nm以下とすることで、PVD法を用いた制御可能な薄膜を形成することができる。基体上に3nm以下のバリアメタル膜243を堆積させることで、開口部150の底部の膜厚(ボトム膜厚)は、トップ膜厚の60〜70%となり、すなわち、開口部150の底部には1.8〜2.1nmの膜厚のバリアメタル膜243が形成される。よって、バリアメタル膜243の開口部150の底部に堆積させる膜厚(ボトム膜厚)は、2.1nm以下が望ましい。
【0071】
以上のように、第1と第2と第3のバリアメタル膜のトップ膜厚の合計は、8nmより小さいことが望ましい。さらに、ALD膜では、形成位置における膜厚変化が小さいことから、第2のバリアメタル膜のボトム膜厚も2nmより小さいことが望ましく、第1と第2と第3のバリアメタル膜のボトム膜厚の合計は、6.2nmより小さいことが望ましい。
【0072】
また、前記第2のバリアメタル膜242の膜厚が、前記第1と第3のバリアメタル膜のいずれの膜厚よりも薄くなるように形成することより、薄膜化を図りながらPVD法を用いた制御可能な実効性のあるPVD膜を形成することができる。
【0073】
以上の説明において、バリアメタル材料として、TaNを用いているが、これに限るものではなく、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)とその窒化膜、またはその合金あっても構わない。例えば、TaNの他、炭化窒化タンタル(TaCN)、窒化タングステン(WN)、炭化窒化タングステン(WCN)、窒化チタン(TiN)等の高融点金属の窒化膜或いは窒化炭素膜、或いは、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)単体であっても構わない。或いは、タンタルシリサイド(TaSi)、チタンシリサイド(TiSi)、或いは、WSiN等であっても構わない。或いはジルコニウム(Zr)系のバリアメタル膜であっても構わない。或いは、これらの複数の材料による積層膜であっても構わない。例えば、Ti系のバリアメタル膜のメタル原料として、テトラジエチルチタン(Ti[N(C)やテトラジメチルチタン(Ti[N(CH)や塩化チタン(TiCl)を用いても構わない。W系のバリアメタル膜のメタル原料として、WFを用いても構わない。
【0074】
図14は、図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
図14では、図1の第1のシード膜形成工程(S122)からめっき工程(S124)までを示している。それ以降の工程は後述する。
図14(a)において、シード膜形成工程として、スパッタ等の物理気相成長(PVD)法により、次の工程である電解めっき工程のカソード極となるCu薄膜をシード膜252としてバリアメタル膜243が形成された開口部150内壁及び基体表面に堆積(形成)させる。ここでは、シード膜252を膜厚75nm堆積させた。
【0075】
ここで、第1のバリアメタル膜形成工程からシード膜形成工程までは、連続、不連続処理(大気暴露)のいずれであっても構わない。
【0076】
図14(b)において、めっき工程として、シード膜252をカソード極として、電解めっき等の電気化学成長によりCu膜262を開口部150及び基体表面に堆積させる。ここでは、膜厚300nmのCu膜262を堆積させ、堆積させた後にアニール処理を400℃の温度で30分間行った。
【0077】
図15は、図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
図15では、図1の平坦化工程(S1262)を示している。
平坦化工程として、CMP法によってSiO膜284の表面に堆積された導電部としてのヴィア層となるCu膜262、シード膜252、バリアメタル膜241、バリアメタル膜242及びバリアメタル膜243を研磨除去することにより、図15に示したような埋め込み構造を形成する。CMP装置は、例えば、オービタル方式で、ノベラスシステムズ社のMomentum300を用いればよい。例えば、CMP荷重は1.03×10Pa(1.5psi)、オービタル回転数は600min−1(600rpm)、ヘッド回転数は24min−1(24rpm)、スラリー供給速度は0.3L/min(300cc/分)、研磨パッドは発泡ポリウレタン製の単層パッド(ロデール社のIC1000)、CMPスラリーはCu用に砥粒フリースラリー(日立化成工業製のHS−C430−TU)、バリアメタル用にコロイダルシリカ砥粒スラリー(日立化成工業製のHS−T605−8)を用いればよい。上述の条件でCMPを行い、溝外部のCu膜とバリアメタル膜を除去してダマシンCu配線を形成する。
【0078】
図16乃至図18は、本実施の形態において形成されるSiC膜230の効果を説明するための模式図である。すなわち、図16は、比較例としてSiC膜230が設けられていない場合の多孔質絶縁膜(MSQ)とバリアメタル膜と配線層となるシード層及びCuとの接合界面を表す断面図である。同図に例示した如く、層間絶縁膜となる多孔質絶縁膜には、その誘電率を効果的に下げるために、空孔Vが形成されている。
【0079】
しかし、このように多孔質の層間絶縁膜とバリアメタル層とが直接的に接触していると、図17に表したように、バリアメタルが空孔を介して層間絶縁膜の中に拡散する。その結果として、バリアメタル層の膜厚が薄くなり、さらに連続的な薄膜状態を維持できなくなる場合もある。すると、配線層(Cu)のメタルも層間絶縁膜に拡散し、さらには半導体基板に拡散することよりトランジスタなどの信頼性が低下する。また、バリアメタルやCuなどの金属が入り込むことによって、層間絶縁膜の絶縁耐圧等の絶縁耐性も低下し、隣接する配線間での電流リーク等が生じ、配線による信号伝搬の信頼性が低下する。
【0080】
これに対して、本実施の形態によれば、図18に示すように、層間絶縁膜の表面にSiC膜230を設けることにより、まずはバリアメタルの層間絶縁膜への拡散を防止することができる。バリアメタルの層間絶縁膜への拡散を防止することができることにより、バリアメタル層の膜厚が薄くならず、ひいては配線材料の層間絶縁膜への拡散を防止することができる。
【0081】
図19は、TaNとCuの密着性を説明するための図である。
図19(b)では、ALD法により成膜されたTaN上にCuを成膜した様子を示している。図19(b)では、ALD法により成膜されたTaNとCuとの濡れ性が悪くCuが密着していない様子がわかる。これに対し、図19(a)では、PVD法により成膜されたTaN上にCuを成膜した様子を示している。ここでは、撮影する際のピントを合わせるために、あえて異物(パーティクル)が付着した箇所を撮影しているが、その他の表面は平らになっていることがわかる。よって、バリアメタル膜として、ALD膜をPVD膜で挟むことにより、下層配線側のCuとヴィア側のCuとのその間のバリアメタル膜との密着性を向上させることができる。
【0082】
図20は、本実施の形態におけるヴィア抵抗と累積確立との関係を示す図である。
図20からバリアメタル膜の構成の違いによる孔パターン(ヴィア)と上下溝パターン(上層配線或いは下層配線)との間での接続抵抗と接続歩留を比較することができる。従来のPVD法を用いた高融点金属膜を成膜した場合、ヴィアの底部(トレンチ底部)の成膜膜厚が厚いため、接続抵抗値が高い(大きい)。一方、CVD法を用いた場合には、トレンチ底部の高融点金属膜の膜厚を薄膜化することができるため、接続抵抗値は低い(小さい)が、Cuとの濡れ性が劣るため、接続歩留が劣化する。本実施の形態(図20における「development」)におけるPVD/CVD法を用いた3層の積層高融点金属膜構造を用いた場合、接続抵抗の低減と接続歩留の確保が可能となる。
【0083】
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1に引き続き、ヴィア上に上層配線を形成する場合について説明する。
図21は、実施の形態2における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
図21において、本実施の形態では、ヴィア上に上層配線を形成する場合に上層配線用の層間絶縁膜形成工程として、SiC膜を形成するSiC膜形成工程(S502)、多孔質の絶縁性材料を用いたp−lowk膜を形成するp−lowk膜形成工程(S504)、p−lowk膜表面をプラズマ処理するヘリウム(He)プラズマ処理工程(S506)、SiO膜を形成するSiO膜形成工程(S508)と、開口部を形成する開口部形成工程(S510)と、拡散防止膜形成工程としてのポアシーリング工程(S512)と、エッチバック工程(S514)と、バリアメタル膜形成工程として、PVD法による第1のバリアメタル膜形成工程(S516)、CVD法による第2のバリアメタル膜形成工程(S518)、PVD法による第3のバリアメタル膜形成工程(S520)と、上層配線形成工程となる導電性材料を堆積させる導電性材料堆積工程として、シード膜形成工程(S522)、めっき工程(S524)と、平坦化工程(S526)という一連の工程を実施する。
【0084】
図22は、図21のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
図22では、図21のSiC膜形成工程(S502)からp−lowk膜形成工程(S504)までを示している。それ以降の工程は後述する。
【0085】
図22(a)において、SiC膜形成工程として、ヴィア層が形成された基体上に、CVD法によって、SiCを用いた膜厚50nmの下地炭化シリコン(SiC)膜を堆積し、SiC膜286を形成する。その他は、図5(a)において説明した内容と同様で構わないため省略する。
【0086】
図22(b)において、ポーラスlow−k(p−lowk)膜形成工程として、基体200の上に形成された前記SiC絶縁膜形成工程により形成されたSiC膜286の上に多孔質の絶縁性材料を用いたp−lowk膜285を250nmの厚さで形成する。p−lowk膜285を形成することで、比誘電率kが3.5よりも低い層間絶縁膜を得ることができる。その他は、図5(b)において説明した内容と同様で構わないため省略する。
【0087】
そして、図5(b)において説明した内容と同様、Heプラズマ処理工程として、このp−lowk膜285表面をヘリウム(He)プラズマ照射によって表面改質する。Heプラズマ照射によって表面が改質されることで、p−lowk膜285とp−lowk膜285上に形成する後述するキャップ膜としてのCVD−SiO膜290との接着性を改善することができる。
【0088】
図23は、図21のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
図23では、図21のSiO膜形成工程(S508)から開口部形成工程(S510)までを示している。それ以降の工程は後述する。
【0089】
図23(a)において、SiO膜形成工程として、前記Heプラズマ処理を行った後、キャップ膜として、CVD法によってp−lowk膜285上にSiOを膜厚50nm堆積することで、SiO膜290を形成する。SiO膜290を形成することで、直接リソグラフィを行うことができないp−lowk膜285を保護し、p−lowk膜285にパターンを形成することができる。その他は、図5(c)において説明した内容と同様で構わないため省略する。
【0090】
以上の説明において、層間絶縁膜は、比誘電率が3.5以下のlow−k膜でなくても構わないが、low−k膜、特に、比誘電率kが2.5以下、空孔率が30%以上の多孔質のp−lowk膜を含む場合に特に有効である点は上述した通りである。
【0091】
図23(b)において、開口部形成工程として、リソグラフィ工程とドライエッチング工程でダマシン配線を作製するための配線溝構造である開口部154をSiO膜290とp−lowk膜285内に形成する。図示していないレジスト塗布工程、露光工程等のリソグラフィ工程を経てSiO膜290の上にレジスト膜が形成された基体に対し、露出したSiO膜290とその下層に位置するp−lowk膜285を、下地SiC膜286をエッチングストッパとして異方性エッチング法により除去して開口部154を形成すればよい。その他は、図6(a)において説明した内容と同様で構わないため省略する。
【0092】
図24は、図21のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
図24では、図21のポアシーリング工程(S512)からエッチバック工程(S514)までを示している。それ以降の工程は後述する。
【0093】
図24(a)において、拡散防止膜形成工程の一例であるポアシーリング工程として、前記開口部形成工程により形成された開口部150及びSiO膜290表面に、CVD法によって、SiCを用いた開口部壁面での膜厚が5nmとなるまでSiC膜を堆積し、SiC膜232を形成する。その他は、図6(b)において説明した内容と同様で構わないため省略する。
【0094】
図24(b)において、エッチバック工程として、開口部150の底面に形成されて残っていたSiC膜232とSiO膜290上のSiC膜232とをエッチバックにより除去する。そして、SiC膜232をエッチバックにより除去する際、同時に、開口部154の底面に形成されて残っていたSiC膜286をエッチバックにより除去する。開口部154の底面に形成されて残っていたSiC膜286を除去することで、開口部154の底面には、SiC膜286及びSiC膜232が堆積しないため、その後形成される導電性材料とヴィア層の導電性材料との導電性を低下させることを防ぐことができる。
【0095】
図25は、図21のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
図25では、図21の第1のバリアメタル膜形成工程(S516)から第2のバリアメタル膜形成工程(S518)までを示している。それ以降の工程は後述する。
【0096】
図25(a)において、第1のバリアメタル膜形成工程として、側壁にSiC膜232が形成された開口部154及びSiO膜290表面にバリアメタル材料を用いたバリアメタル膜246を形成する。PVD法を用いてTaNを基体上において平均膜厚が3nm以下になるように堆積し、バリアメタル膜246を形成する。特に、2.5nm程度(例えば、2〜3nm)にするとなお良い。基体上に3nm以下のバリアメタル膜246を堆積させることで、ヴィアとなるCu膜262上(すなわち、開口部154の底部)の膜厚(ボトム膜厚)は、トップ膜厚の60〜70%となり、すなわち、開口部154の底部には1.8〜2.1nmの膜厚のバリアメタル膜246が形成される。よって、バリアメタル膜246の開口部154の底部に堆積させる膜厚(ボトム膜厚)は、2.1nm以下が望ましい。その他は、図8(a)において説明した内容と同様で構わないため省略する。
【0097】
図25(b)において、第2のバリアメタル膜形成工程として、第1のバリアメタル膜246上にバリアメタル材料を用いたバリアメタル膜247を形成する。ALD法、あるいは、ALCVD法を含むCVD法を用いて装置内でTaNを基体上において平均膜厚が2nmより小さくなるように堆積し、バリアメタル膜247を形成する。特に、1nm(1nm以上2nm未満の値)にするとなお良い。その他は、図8(b)において説明した内容と同様で構わないため省略する。
【0098】
図26は、図21のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
図26では、図21の第3のバリアメタル膜形成工程(S520)からシード膜形成工程(S522)までを示している。それ以降の工程は後述する。
【0099】
図26(a)において、第3のバリアメタル膜形成工程として、第2のバリアメタル膜247上にバリアメタル材料を用いたバリアメタル膜248を形成する。PVD法を用いて装置内でTaNを基体上において平均膜厚が3nm以下になるように堆積し、バリアメタル膜248を形成する。特に、2.5nm程度(例えば、2〜3nm)にするとなお良い。基体上に3nm以下のバリアメタル膜248を堆積させることで、開口部154の底部の膜厚(ボトム膜厚)は、トップ膜厚の60〜70%となり、すなわち、開口部154の底部には1.8〜2.1nmの膜厚のバリアメタル膜248が形成される。よって、バリアメタル膜248の開口部154の底部に堆積させる膜厚(ボトム膜厚)は、2.1nm以下が望ましい。その他は、図8(c)において説明した内容と同様で構わないため省略する。
【0100】
以上のように、第1と第2と第3のバリアメタル膜のトップ膜厚の合計は、8nmより小さいことが望ましい。さらに、ALD膜では、形成位置における膜厚変化が小さいことから、第2のバリアメタル膜のボトム膜厚も2nmより小さいことが望ましく、第1と第2と第3のバリアメタル膜のボトム膜厚の合計は、6.2nmより小さいことが望ましい。
【0101】
また、前記第2のバリアメタル膜247の膜厚が、前記第1と第3のバリアメタル膜のいずれの膜厚よりも薄くなるように形成することより、薄膜化を図りながらPVD法を用いた制御可能な実効性のあるPVD膜を形成することができる。
【0102】
以上の説明において、バリアメタル材料として、TaNを用いているが、これに限るものではない点は、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0103】
図26(b)において、シード膜形成工程として、スパッタ等の物理気相成長(PVD)法により、次の工程である電解めっき工程のカソード極となるCu薄膜をシード膜254としてバリアメタル膜248が形成された開口部154内壁及び基体表面に堆積(形成)させる。その他は、図14(a)において説明した内容と同様で構わないため省略する。
【0104】
ここで、第1のバリアメタル膜形成工程からシード膜形成工程までは、連続、不連続処理(大気暴露)のいずれであっても構わない点も上述した通りである。
【0105】
図27は、図21のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
図27では、図21のめっき工程(S524)から平坦化工程(S526)までを示している。
【0106】
図27(a)において、めっき工程として、シード膜254をカソード極として、電解めっき等の電気化学成長によりCu膜264を開口部154及び基体表面に堆積させ、堆積させた後にアニール処理を行なう。その他は、図14(b)において説明した内容と同様で構わないため省略する。
【0107】
図27(b)において、平坦化工程として、CMP法によってSiO膜290の表面に堆積された導電部としてのヴィア層となるCu膜264、シード膜254、バリアメタル膜246、バリアメタル膜247及びバリアメタル膜248を研磨除去することにより、図27(b)に示したような埋め込み構造を形成する。その他は、図15において説明した内容と同様で構わないため省略する。
【0108】
以上にように、ヴィア上に上層配線を形成する場合にも、バリアメタル膜形成において、CVD膜をPVD膜で挟み込むサンドウィッチ構造とし、膜厚を規定することで、従来よりも薄膜化することができ、かつ、長い時間が経過した後でも低抵抗のまま配線間の歩留まりを維持させることができる。
【0109】
実施の形態3.
実施の形態1では、下層配線(溝パターン)上にヴィア(孔パターン)を形成し、実施の形態2では、ヴィア(孔パターン)上に上層配線(溝パターン)を形成するといった、共にシングルダマシン法を用いているが、ヴィア(孔パターン)と上層配線(溝パターン)とを一括して成膜するデュアルダマシン法を用いても有効である。
【0110】
以上の説明において、上記各実施の形態における配線層の材料として、Cu以外に、Cu−Sn合金、Cu−Ti合金、Cu−Al合金等の、半導体産業で用いられるCuを主成分とする材料を用いて同様の効果が得られる。
【0111】
また、本発明は、特に、今後、微細化が進んだ場合に特に有効となる。例えば、65〜45ノードの世代に特に有効である。例えば、配線ピッチが200nm以下の世代に特に有効である。例えば、ヴィア径が100nm以下の世代に特に有効である。例えば、低誘電率膜の比誘電率kが2.5以下の世代に特に有効である。例えば、低誘電率膜のポーラス径が2nm以上の世代に特に有効である。例えば、低誘電率膜の空孔率が30%以上の世代に特に有効である。例えば、最小配線幅100nmに対し、第2配線(上層配線)とその下層に位置するヴィアとを合わせたアスペクト比が1.5以上の世代に特に有効である。
【0112】
以上、具体例を参照しつつ各実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0113】
例えば、層間絶縁膜の膜厚や、開口部のサイズ、形状、数などについても、半導体集積回路や各種の半導体素子において必要とされるものを適宜選択して用いることができる。
【0114】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての半導体装置の製造方法は、本発明の範囲に包含される。
【0115】
また、説明の簡便化のために、半導体産業で通常用いられる手法、例えば、フォトリソグラフィプロセス、処理前後のクリーニング等は省略しているが、それらの手法が含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】実施の形態1における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
【図2】ALD法によるTaN膜の膜厚の違いによるヴィア抵抗と累積確立との関係を示す図である。
【図3】バリアメタル膜の構成の違いによるヴィア抵抗と累積確立との関係を示す図である。
【図4】サンドウィッチ構造にしたバリアメタル膜のヴィア歩留まりとストレス時間との関係を示す図である。
【図5】図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
【図6】図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
【図7】CVD装置の概念図である。
【図8】図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
【図9】スパッタリング装置の概念図である。
【図10】TaN膜形成工程における各ガスの供給フローを示す図である。
【図11】ALD装置の概要構成を示す図である。
【図12】複数のチャンバを備えた装置の概要を説明するための概念図である。
【図13】ALD装置の他の概要構成例を示す図である。
【図14】図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
【図15】図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
【図16】本実施の形態において形成されるSiC膜230の効果を説明するための模式図である。
【図17】本実施の形態において形成されるSiC膜230の効果を説明するための模式図である。
【図18】本実施の形態において形成されるSiC膜230の効果を説明するための模式図である。
【図19】TaNとCuの密着性を説明するための図である。
【図20】本実施の形態におけるヴィア抵抗と累積確立との関係を示す図である。
【図21】実施の形態2における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
【図22】図21のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
【図23】図21のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
【図24】図21のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
【図25】図21のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
【図26】図21のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
【図27】図21のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
【図28】従来のlow−k膜とCu配線を組み合わせた多層配線構造を有する半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図29】ALD法によるバリアメタルの成膜例を示すガスの供給フロー図である。
【図30】ALD法において、TaN膜が形成される様子を説明するための概念図である。
【図31】CVD法により高融点金属を用いたバリアメタル膜を成膜した半導体装置の断面図である。
【図32】PVD法により10nm形成されたバリアメタル膜を通してCuが拡散している様子を示す図である。
【符号の説明】
【0117】
10,200 基体
20 TaR
22 TaN
150,154 開口部
210 デバイス層
212,230,232,275,286 SiC膜
220,280,285 p−lowk膜
221,281 絶縁膜
222,284,290 SiO
240,241,242,243,246,247,248 バリアメタル膜
250,252,254 シード膜
260,262,264 Cu膜
300,510,520,530,600,700 チャンバ
310 下部電極
320 上部電極
330,630,730 真空ポンプ
350,500 装置
540 搬送室
550 カセット室
610 基板ホルダ
620 シャワーヘッド
650 容器
720 ターゲット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜に開口部を形成する開口部形成工程と、
物理気相成長(PVD)法を用いて、前記絶縁膜上と開口部内とに第1のバリアメタル膜を形成する第1のバリアメタル膜形成工程と、
前記第1のバリアメタル膜上に、化学気相成長(CVD)法を用いて第2のバリアメタル膜を形成する第2のバリアメタル膜形成工程と、
前記第2のバリアメタル膜上に、PVD法を用いて第3のバリアメタル膜を形成する第3のバリアメタル膜形成工程と、
前記第3のバリアメタル膜上に、導電性材料を堆積させる堆積工程と、
を備え、
前記絶縁膜上に形成された前記第1と第2と第3のバリアメタル膜の合計膜厚が、8nmより小さくなるように形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2のバリアメタル膜形成工程において、前記絶縁膜上に形成された前記第2のバリアメタル膜の膜厚が、2nmより小さくなるように形成することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2のバリアメタル膜の膜厚が、前記第1と第3のバリアメタル膜のいずれの膜厚よりも薄くなるように形成することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1と第2と第3のバリアメタル膜は、それぞれ、材料として、タンタル(Ta)とチタン(Ti)とタングステン(W)とTa化合物とTi化合物とW化合物とのいずれかを用いたことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体装置の形成方法は、さらに、前記第1のバリアメタル膜形成工程前に、前記開口部の壁面に拡散防止膜を形成する拡散防止膜形成工程を備えたことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記拡散防止膜形成工程において、前記拡散防止膜の膜厚が、20nm以下になるように形成することを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記拡散防止膜形成工程において、前記拡散防止膜の材料として、シリコン化合物を用いたことを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記シリコン化合物として、炭化シリコン(SiC)と炭窒化シリコン(SiCN)と炭酸化シリコン(SiOC)と窒化シリコン(SiN)との内、少なくとも1つを用いたことを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁膜は、比誘電率2.5以下の低誘電率膜を用いることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
導電性材料を用いた第1の導電膜と、
前記第1の導電膜上に形成された前記導電性材料を用いた第2の導電膜と、
前記第2の導電膜の側面側に配置される、絶縁性材料を用いた絶縁膜と、
バリアメタル材料を用いて、前記第2の導電膜と前記絶縁膜との間と、前記第1と第2の導電膜の間とに形成された、化学気相成長(CVD)法を用いて形成されたCVD膜と物理気相成長(PVD)法を用いて前記CVD膜を挟むように形成された2つのPVD膜とを有するバリアメタル膜と、
を備え、
前記バリアメタル膜は、前記第1と第2の導電膜の間において、前記CVD膜と前記2つのPVD膜との合計膜厚が、6.2nmより小さく形成されることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図3】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2006−54326(P2006−54326A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235015(P2004−235015)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】