説明

半導体装置の製造方法

【課題】樹脂基板に転写方式でTFTを形成する方法において、プロセス温度を下げる必要がなく、現行のラインを使用できるとともに、コストを抑えることができる方法を提供する。
【解決手段】本発明は、支持基板の上層に樹脂フィルム(a)を形成する工程と、樹脂フィルム(a)の上層に半導体素子を形成する工程と、半導体素子を形成した樹脂フィルム(a)から支持基板を剥離する工程とを含む半導体装置の製造方法であって、樹脂フィルム(a)は、膜厚が1μm以上30μm以下であり、波長400nm以上800nm以下の可視光の透過率が80%以上であり、3%重量減少温度が300℃以上であり、融点が280℃以上である、前記半導体装置の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置に代表される画像表示装置を含む半導体装置の製造方法に関する。さらに詳しくは、フレキシブルな樹脂基板上に薄膜トランジスタ(TFT)に代表されるアクティブ素子等を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子に代表されるフラットパネルディスプレイの軽量化を図るために、基板を薄くすることが従来より検討されており、現在の液晶表示装置は0.5mm〜1.1mm程度の厚さのガラス基板を用いて製造されている。しかし、これよりも薄いガラス基板を用いる場合、製造工程中に割れやすい、使用時に割れやすい等の問題点がある。この解決方法の一つとして、ガラス基板の代わりに樹脂基板を用いた液晶表示素子の開発が進められている。
【0003】
しかし、ガラス基板の耐熱性が600℃前後であるのに対して、樹脂基板は、通常、200℃前後であり、耐熱性が低いという欠点を有する。薄膜トランジスタを形成する温度は、アモルファスシリコン(a-Si)TFTでは300℃前後であり、低温ポリシリコン(LTPS)TFTでは500℃前後であり、樹脂基板の耐熱性をはるかに超える温度となっている。このために、1つの方法として、TFTの形成温度を下げる方法が検討されている。
【0004】
また、樹脂基板は、ガラス基板と異なり柔らかくフレキシブルなために、現行のガラス基板に対して作られたラインをそのまま使用できないという欠点を有する。その対策としては、ラインをガラス基板対応のラインからロールtoロール方式に変更する方法が考えられている。現行のラインをそのまま使う方式として、ガラス基板に形成したTFTを樹脂基板に転写する方式が検討されている。ガラス基板にTFTを形成して転写する方式としては、ガラス基板をエッチングして薄くする方式や、ガラス基板にあらかじめ剥離層を形成しておき、TFT形成後に剥離を行う方法がある。いずれもTFTを形成したガラス部分を薄膜化して、それをプラスチック基板に載せかえる方式である。また別の転写方式としては、ガラス基板上に樹脂基板を貼り付ける等して、その上にTFTを形成した後、ガラス基板を剥離する方法がある。
【0005】
ガラス基板上に一旦TFTを形成してその後ガラスを薄くするという方式は、現行ラインの使用が可能で、プロセス温度も現行のままでよいという利点を有するが、ガラス基板を薄くする工程にエッチング工程を採用すると、ガラス基板がほとんど無駄になり、結果としてコストが増加するという欠点を有する。またガラス基板上に樹脂基板を貼り付ける等してその上にTFTを形成、剥離する方法では、樹脂基板の耐熱性に問題があるために、プロセス温度を下げる必要があり、特性の優れたデバイスが出来ないという欠点があった。
【0006】
【特許文献1】特許第272730号公報
【特許文献2】特開2000-243943号公報
【特許文献3】特開2000-284243号公報
【特許文献4】特開2000-284303号公報
【特許文献5】特開2001-125082号公報
【特許文献6】特開2001-290138号公報
【特許文献7】特開2002-33464号公報
【特許文献8】特開2002-31818号公報
【特許文献9】特開2002-258252号公報
【特許文献10】特開2006-237542号公報
【特許文献11】特開2002-100790号公報
【特許文献12】特開2001-290138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、樹脂基板に転写方式でTFTを形成する方法において、プロセス温度を下げる必要がなく、現行のラインを使用できるとともに、コストを抑えることができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、支持基板の上層に耐熱性を有し透明な樹脂フィルムを形成し、該樹脂フィルムの上層に半導体素子を形成し、その後、支持基板を剥離するという工程を経ることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)支持基板の上層に樹脂フィルム(a)を形成する工程と、樹脂フィルム(a)の上層に半導体素子を形成する工程と、半導体素子を形成した樹脂フィルム(a)から支持基板を剥離する工程とを含む半導体装置の製造方法であって、樹脂フィルム(a)は、膜厚が1μm以上30μm以下であり、波長400nm以上800nm以下の可視光の透過率が80%以上であり、3%重量減少温度が300℃以上であり、融点が280℃以上である、前記半導体装置の製造方法。
(2)樹脂フィルム(a)がポリベンゾオキサゾールを含む、(1)に記載の半導体装置の製造方法。
(3)樹脂フィルム(a)が脂環式構造を有するポリアミドイミドを含む、(1)に記載の半導体装置の製造方法。
(4)樹脂フィルム(a)が脂環式構造を有するポリイミドを含む、(1)に記載の半導体装置の製造方法。
(5)樹脂フィルム(a)がポリアミドを含む、(1)に記載の半導体装置の製造方法。
(6)ポリアミドが脂環式構造を有するものである、(5)に記載の半導体装置の製造方法。
(7)樹脂フィルム(a)がポリ(p−キシリレン)を含む、(1)に記載の半導体装置の製造方法。
(8)支持基板と樹脂フィルム(a)との間に樹脂層(b)を形成する工程をさらに含む、(1)に記載の半導体装置の製造方法。
(9)樹脂層(b)の熱膨張係数が樹脂フィルム(a)の熱膨張係数よりも小さいものである、(8)に記載の半導体装置の製造方法。
(10)樹脂層(b)がポリイミドを含む、(9)に記載の半導体装置の製造方法。
【0010】
(11)樹脂フィルム(a)と半導体素子との間に無機膜を形成する工程をさらに含む、(1)に記載の半導体装置の製造方法。
(12)無機膜が、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン及び酸化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種を含む、(11)に記載の半導体装置の製造方法。
(13)支持基板の上層に樹脂フィルム(a)を形成する工程が加熱処理を含み、加熱処理温度が250℃以上であり、かつ半導体素子を形成するプロセス温度以上である、(1)に記載の半導体装置の製造方法。
(14)加熱処理が、窒素下又は真空下での加熱処理である、(13)に記載の半導体装置の製造方法。
(15)支持基板がガラス基板又は石英基板である、(1)に記載の半導体装置の製造方法。
【0011】
(16)半導体素子を形成した樹脂フィルム(a)から支持基板を剥離する工程が紫外線照射を含み、紫外線の波長が300nm以上400nm以下である、(1)に記載の半導体装置の製造方法。
(17)半導体素子を形成した樹脂フィルム(a)から支持基板を剥離する工程の前に、半導体素子の表面に保護層を形成する工程をさらに含む、(1)に記載の半導体装置の製造方法。
(18)半導体素子を形成した樹脂フィルム(a)を、樹脂基板(c)に貼り付ける工程をさらに含む、(1)に記載の半導体装置の製造方法。
(19)第1の基板と、第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に狭持された液晶とを有する表示用半導体装置であって、
第1の基板は、樹脂基板(c)と、樹脂基板(c)上に設けられた接着層と、接着層上に設けられた樹脂フィルム(a)を有し、
表示用半導体装置は、さらに、樹脂フィルム(a)上に形成されたアクティブ素子と、アクティブ素子よりも上層に形成された第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜よりも上層に設けられた第1の電極と、第1の電極よりも上層に設けられた第2の絶縁膜と、第2の絶縁膜よりも上層に設けられた第2の電極とを有し、
第1の絶縁膜は、第1のコンタクトホールを有し、
第2の絶縁膜は、第1の電極と第2の電極との間と、第1のコンタクトホール内とに形成されており、
第1のコンタクトホール内の第2の絶縁膜には、第2のコンタクトホールが形成されており、
第2の電極は画素電極であり、
第2の電極は、第2のコンタクトホールを介してアクティブ素子に電気的に接続されており、
第1の電極と、第2の電極と、第2の絶縁膜とによって、保持容量が形成されており、
樹脂フィルム(a)は、膜厚が1μm以上30μm以下であり、波長400nm以上800nm以下の可視光の透過率が80%以上であり、3%重量減少温度が300℃以上である、
前記表示用半導体装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、樹脂基板に転写方式でTFTを形成する方法において、プロセス温度を下げる必要がなく、現行のラインを使用できるとともに、コストを抑えることができる方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
樹脂フィルム(a)
本発明において支持基板の上層に形成する樹脂フィルム(a)は、耐熱性を有し透明な樹脂フィルムである。より具体的には、樹脂フィルム(a)は、膜厚が1μm以上30μm以下であり、波長400nm以上800nm以下の可視光の透過率が80%以上であり、3%重量減少温度が300℃以上であり、融点が280℃以上である。
【0014】
樹脂フィルム(a)の膜厚は、1μm以上30μm以下であり、好ましくは3μm以上25μm以下であり、より好ましくは4.5μm以上15μm以下である。上記のような膜厚を有する樹脂フィルム(a)は、樹脂の吸収による透過率の低下が防止されるため透明性に優れ、かつフィルムとしての力学的な強度をも有する。
【0015】
また、樹脂フィルム(a)は、可視光の領域、特に波長400nm以上800nm以下の光の透過率が80%以上であり、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上である。このように可視光の透過率が高い樹脂フィルムは、最終的に半導体装置に取り込まれたときに光を効率的に透過することから、優れた半導体装置が得られる。
【0016】
樹脂フィルム(a)は、3%重量減少温度が300℃以上、好ましくは1%重量減少温度が300℃以上である。本発明において重量減少温度とは、熱重量法で測定されるものであり、ある試料を一定速度で加熱しながらその重量変化を連続的に測定した場合に、特定比率の重量の減少が観察されたときの温度をさす。従って3%重量減少温度は、試料の重量が加熱前と比較して3%減少したときの温度をさす。本発明において重量減少温度は、通常、窒素下で測定したものをさす。より具体的には、本発明における3%重量減少温度は、エスアイアイ・ナノテクノロジー製TG/DTA-6200型により、窒素気流下にて、測定温度30℃〜600℃で、昇温速度10℃/分で測定したものをさす。
【0017】
本発明において、樹脂フィルム(a)の上層には半導体素子が形成される。半導体素子、特にアモルファスシリコンTFTを形成するプロセス温度は300℃前後であるが、重量減少温度が上記のように高い樹脂フィルム(a)は、300℃前後のプロセス温度に対しても耐性を有するためプロセス温度を下げる必要がなく、従来使用されているラインをそのまま使用することができる。
【0018】
さらに本発明における樹脂フィルム(a)は、融点が280℃以上であり、好ましくは融点が300℃以上であり、さらに好ましくは融点を実質的に有しない。上記のように融点の高い樹脂フィルム(a)とすることにより、半導体素子の形成プロセスで、300℃前後のプロセス温度に曝されたときに、樹脂フィルムが溶けて変形を起こすことを防止できる。
【0019】
また、本発明における樹脂フィルム(a)のガラス転移温度は、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であるものがより好ましい。高分子材料のフィルムは一般にガラス転移温度を越えると、その熱膨張係数が急激に大きくなる。高分子材料の種類によっては、ガラス転移温度を越えると変形が起きるものもある。従って、半導体素子を形成するプロセスの温度がガラス転移温度を超えない方が好ましい。
【0020】
上記のような樹脂フィルム(a)としては、例えば、ポリベンゾオキサゾール、脂環式構造を有するポリアミドイミド、脂環式構造を有するポリイミド、ポリアミド及びポリ(p−キシリレン)から選択される樹脂を含むものが挙げられる。
【0021】
ポリベンゾオキサゾールは、分子中に以下の式:
【0022】
【化1】

で表されるベンゾオキサゾール部分を有する重合体をさす。平均重合度が5〜10000のものを用いるのが好ましい。
【0023】
ポリベンゾオキサゾールとしては、式(I):
【0024】
【化2】

(式中、X1は、同一でも異なっていてもよく、4価の芳香族基を表し、Y1は、同一でも異なっていてもよく、2価の芳香族基又は脂環式基を表し、nは5〜10000、好ましくは30〜1000の整数を表す)で表されるポリベンゾオキサゾールが好ましい。X1及びY1は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0025】
本明細書において、芳香族基はベンゼン環を有するものであればよく、縮合環中にベンゼン環を有するものでもよい。脂環式基は、芳香族性をもたない炭素環を有するものであればよく、芳香族性をもたない縮合環を有するものでもよい。
【0026】
式(I)におけるX1としては、5〜25個の炭素原子、好ましくは6〜20個の炭素原子を含む芳香族の単環式基又は多環式基が挙げられる。式(I)におけるX1は、好ましくは以下の式:
【0027】
【化3】

(式中、Z1は、直接結合、又は有機基、例えば、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキレン基、-SO2-、-S-、-O-、-CO-、-NHCO-又は-C(CB3)2-であり、ここでBは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素から選択されるハロゲンである)で表される芳香族基である。
【0028】
式(I)のX1は、より好ましくは下記:
【0029】
【化4】

より選ばれるものである。
【0030】
式(I)のY1の芳香族基としては、5〜25個の炭素原子、好ましくは6〜20個の炭素原子を含む芳香族の単環式基又は多環式基が挙げられる。式(I)のY1の脂環式基としては、5〜25個の炭素原子、好ましくは6〜20個の炭素原子を含む単環式又は多環式の脂環式基が挙げられる。式(I)のY1は、より好ましくは下記:
【0031】
【化5】

(式中A1は、-CH2-及び-C(CH3)2-などのC1-6アルキレン、-O-、-S-、-SO2-、-CO-、-NHCO-又は-C(CF3)2-である)より選ばれるものである。
【0032】
上記式(I)のX1及びY1において、芳香環及び脂肪族環は、さらに置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、メルカプト、シアノ、イソシアナート、カルボキシル、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシなどが挙げられる。置換基が複数存在する場合、各置換基は同一でも異なっていてもよい。置換基の数は、好ましくは1〜3個である。
【0033】
上記式(I)のポリベンゾオキサゾールは、X1及びY1の部分として、それぞれ1種類を含む単独重合体であってもよいし、2種類以上を含む共重合体であってもよい。Y1が脂環式基であるものは、短波長の領域での透明性に優れる。
【0034】
これらのポリベンゾオキサゾールは、対応する下記の前駆体:
【0035】
【化6】

(式中、X1、Y1及びnは、上記式(I)について定義したとおりである)を加熱により脱水環化することにより得られる。
【0036】
なお式(II)の前駆体もまた、X1及びY1の部分として、それぞれ1種類を含む単独重合体であってもよいし、2種類以上を含む共重合体であってもよい。上記ポリベンゾオキサゾール前駆体は、耐熱性、機械特性、耐薬品性を向上させるための、架橋剤を合わせて用いることができる。
【0037】
脂環式構造を有するポリアミドイミドは、分子中にアミド結合とイミド結合を有し、かつ脂環式構造を有する重合体をさす。平均重合度が5〜10000のものを用いるのが好ましい。
【0038】
脂環式構造を含むポリアミドイミドの例としては、式(III):
【0039】
【化7】

(式中、X2は、同一でも異なっていてもよく、2価の脂環式基を表し、Y2は、同一でも異なっていてもよく、2価の芳香族基又は脂環式基を表し、nは5〜10000、好ましくは30〜1000の整数を表す)で表されるポリアミドイミドが挙げられる。X2及びY2は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0040】
式(III)のX2及びY2の脂環式基としては、5〜25個の炭素原子、好ましくは6〜20個の炭素原子を含む単環式又は多環式の脂環式基が挙げられる。より好ましくは下記:
【0041】
【化8】

(式中A2は、-CH2-及び-C(CH3)2-などのC1-6アルキレン、-O-、-S-、-SO2-、-CO-、-NHCO-又は-C(CF3)2-である)。
より選ばれるものである。
【0042】
式(III)のY2の芳香族基としては、5〜25個の炭素原子、好ましくは6〜20個の炭素原子を含む芳香族の単環式基又は多環式基が挙げられる。式(III)のY2の芳香族基としては、下記:
【0043】
【化9】

で表される芳香族基が挙げられる。ここで、Z2は、下記:
【0044】
【化10】

(式中、A3は、-CH2-及び-C(CH3)2-などのC1-6アルキレン、-O-、-S-、-SO2-、-CO-、-NHCO-又は-C(CF3)2-である)より選ばれるものである。また、式(III)のY2の芳香族基としては、下記:
【0045】
【化11】

(式中、R1及びR6は、それぞれ独立して、直接結合又は2価の有機基、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族基、例えば、炭素数1〜20のアルキル基を表し、R2〜R5は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜18の芳香族基を表し、ここで、R2〜R5のいずれかは炭素数6〜18の芳香族基であり、mは1〜50の整数を表す)で表される芳香族基も挙げられる。
【0046】
上記式(III)のX2及びY2において、芳香環及び脂肪族環は、さらに置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、メルカプト、シアノ、イソシアナート、カルボキシル、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシなどが挙げられる。置換基が複数存在する場合、各置換基は同一でも異なっていてもよい。置換基の数は、好ましくは1〜3個である。
【0047】
式(III)のポリアミドイミドは、X2及びY2の部分として、それぞれ1種類を含む単独重合体であってもよいし、2種類以上を含む共重合体であってもよい。
【0048】
脂環式構造を含むポリアミドイミドの別の例としては、式(IV):
【0049】
【化12】

(式中、X3は、同一でも異なっていてもよく、2価の芳香族基又は脂環式基を表し、Y3は、同一でも異なっていてもよく、2価の芳香族基又は脂環式基を表し、nは5〜10000、好ましくは30〜1000の整数を表す)で表されるポリアミドイミドが挙げられる。X3及びY3は、互いに同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
式(IV)のX3及びY3の脂環式基としては、式(III)のX2及びY2の脂環式基について記載したのと同様のものが挙げられ、式(IV)のX3及びY3の芳香族基としては、式(III)のX2及びY2の芳香族基について記載したのと同様のものが挙げられる。
【0051】
上記式(IV)のX3及びY3において、芳香環及び脂肪族環は、さらに置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、メルカプト、シアノ、イソシアナート、カルボキシル、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシなどが挙げられる。置換基が複数存在する場合、各置換基は同一でも異なっていてもよい。置換基の数は、好ましくは1〜3個である。
【0052】
式(IV)のポリアミドイミドは、X3及びY3の部分として、それぞれ1種類を含む単独重合体であってもよいし、2種類以上を含む共重合体であってもよい。
【0053】
上記ポリアミドイミドは、酸クロライド法又はイソシアネート法等の公知の方法で合成できる。また上記ポリアミドイミドは、耐熱性、機械特性、耐薬品性を向上させるための、架橋剤を合わせて用いることができる。
【0054】
脂環式構造を有するポリイミドは、分子中にイミド結合を有し、かつ脂環式構造を有する重合体をさす。平均重合度が5〜10000のものを用いるのが好ましい。
【0055】
脂環式構造を有するポリイミドの例としては、式(V):
【0056】
【化13】

(式中、X4は、同一でも異なっていてもよく、4価の脂環式基を表し、Y4は、同一でも異なっていてもよく、2価の芳香族基又は脂環式基を表し、nは、5〜10000、好ましくは30〜1000の整数を表す)で表されるポリイミドが挙げられる。X4及びY4は、互いに同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0057】
式(V)のX4の脂環式基としては、5〜25個の炭素原子、好ましくは6〜20個の炭素原子を含む単環式又は多環式の脂環式基が挙げられる。より好ましくは下記:
【0058】
【化14】

(式中A4は、-CH2-及び-C(CH3)2-などのC1-6アルキレン、-O-、-S-、-SO2-、-CO-、-NHCO-又は-C(CF3)2-である)より選ばれるものである。
【0059】
式(V)のY4の脂環式基としては、5〜25個の炭素原子、好ましくは6〜20個の炭素原子を含む単環式又は多環式の脂環式基が挙げられる。より好ましくは下記:
【0060】
【化15】

(式中A5は、-CH2-及び-C(CH3)2-などのC1-6アルキレン、-O-、-S-、-SO2-、-CO-、-NHCO-又は-C(CF3)2-である)より選ばれるものである。
【0061】
式(V)のY4の芳香族基としては、5〜25個の炭素原子、好ましくは6〜20個の炭素原子を含む芳香族の単環式基又は多環式基が挙げられる。式(V)のY4の芳香族基としては、下記:
【0062】
【化16】

(式中、Z3は、式(III)の定義においてZ2について記載したのと同様であり、A6は、-CH2-及び-C(CH3)2-などのC1-6アルキレン、-O-、-S-、-SO2-、-CO-、-NHCO-又は-C(CF3)2-である)で表される芳香族基が挙げられる。
【0063】
また、式(V)のY4の芳香族基としては、下記:
【0064】
【化17】

(式中、R1及びR6は、それぞれ独立して、直接結合又は2価の有機基、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族基、例えば、炭素数1〜20のアルキル基を表し、R2〜R5は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜18の芳香族基を表し、ここで、R2〜R5のいずれかは炭素数6〜18の芳香族基であり、mは1〜50の整数を表す)で表される芳香族基も挙げられる。
【0065】
上記式(V)のX4及びY4において、芳香環及び脂肪族環は、さらに置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、メルカプト、シアノ、イソシアナート、カルボキシル、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシなどが挙げられる。置換基が複数存在する場合、各置換基は同一でも異なっていてもよい。置換基の数は、好ましくは1〜3個である。
【0066】
式(V)のポリイミドは、X4及びY4の部分として、それぞれ1種類を含む単独重合体であってもよいし、2種類以上を含む共重合体であってもよい。
【0067】
上記ポリイミドは、前駆体であるポリアミック酸の状態で膜を形成し、加熱硬化してポリイミドとすることが好ましい。またポリアミック酸は、耐熱性、機械特性、耐薬品性を向上させるための架橋剤を合わせて用いることができる。ポリイミドとして環化した状態で溶剤に可溶で、塗布が出来る場合には、それを用いてもよい。この場合も耐熱性、機械特性、耐薬品性を向上させるための架橋剤を合わせて用いることができる。
【0068】
ポリアミドは、分子中にアミド結合を有する重合体をさす。平均重合度が5〜10000のものを用いるのが好ましい。ポリアミドの例としては、式(VI):
【0069】
【化18】

(式中、X5は、同一でも異なっていてもよく、2価の芳香族基又は脂環式基を表し、Y5は、同一でも異なっていてもよく、2価の芳香族基又は脂環式基を表し、nは、5〜10000、好ましくは30〜1000の整数を表す)で表されるポリアミドが挙げられる。X5及びY5は、互いに同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0070】
式(VI)のX5及びY5の脂環式基としては、5〜25個の炭素原子、好ましくは6〜20個の炭素原子を含む単環式又は多環式の脂環式基が挙げられる。より好ましくは下記:
【0071】
【化19】

(式中A7は、-CH2-及び-C(CH3)2-などのC1-6アルキレン、-O-、-S-、-SO2-、-CO-、-NHCO-又は-C(CF3)2-である)より選ばれるものである。
【0072】
式(VI)のX5及びY5の芳香族基としては、5〜25個の炭素原子、好ましくは6〜20個の炭素原子を含む芳香族の単環式基又は多環式基が挙げられる。式(VI)のX5及びY5の芳香族基として、下記:
【0073】
【化20】

(式中、Z4は、式(III)の定義においてZ2について記載したのと同様であり、A8は、-CH2-及び-C(CH3)2-などのC1-6アルキレン、-O-、-S-、-SO2-、-CO-、-NHCO-又は-C(CF3)2-である)で表される芳香族基が挙げられる。
【0074】
また、式(VI)のX5及びY5の芳香族基として、下記:
【0075】
【化21】

(式中、R1及びR6は、それぞれ独立して、直接結合又は2価の有機基、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族基、例えば、炭素数1〜20のアルキル基を表し、R2〜R5は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜18の芳香族基を表し、ここで、R2〜R5のいずれかは炭素数6〜18の芳香族基であり、mは1〜50の整数を表す)で表される芳香族基も挙げられる。
【0076】
ポリアミドとしては、脂環式構造を有するものが好ましい。従って、X5及びY5のいずれかが脂環式基であることが好ましい。
【0077】
上記式(VI)のX5及びY5において、芳香環及び脂肪族環は、さらに置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、メルカプト、シアノ、イソシアナート、カルボキシル、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシなどが挙げられる。置換基が複数存在する場合、各置換基は同一でも異なっていてもよい。置換基の数は、好ましくは1〜3個である。
【0078】
式(VI)のポリアミドは、X5及びY5の部分として、それぞれ1種類を含む単独重合体であってもよいし、2種類以上を含む共重合体であってもよい。
【0079】
また上記ポリイミドは、耐熱性、機械特性、耐薬品性を向上させるための、架橋剤を合わせて用いることができる。
【0080】
ポリ(p−キシリレン)は、分子中にp−キシリレン構造を有する重合体をさす。平均重合度が100以上、好ましくは100〜10000のものを用いるのが好ましい。ポリ(p−キシリレン)の例としては、式(VII):
【0081】
【化22】

(式中、nは、100〜10000の整数を表す)で表されるポリ(p−キシリレン)が挙げられる。
【0082】
上記式(VII)において、芳香環は、さらに置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、メルカプト、シアノ、イソシアナート、カルボキシル、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシなどが挙げられる。置換基が複数存在する場合、各置換基は同一でも異なっていてもよい。置換基の数は、好ましくは1〜3個である。
ポリ(p−キシリレン)は、真空装置を用いて化学蒸着をすることが好ましい。
【0083】
樹脂フィルム(a)としては、上記のようなポリベンゾオキサゾール、脂環式構造を有するポリアミドイミド、脂環式構造を有するポリイミド、ポリアミド及びポリ(p−キシリレン)から選択される樹脂材料を含むものが好ましいが、これらの材料を単独で含んでいてもよいし、組み合わせて含んでいてもよい。これらの樹脂材料を含む樹脂フィルムは、フィルム自身がある程度の強度を有することから、支持基板上に形成した後に、フィルム単体として剥離することができる。従って、その上に半導体素子を形成して、保護層をつけた状態で剥がした場合でも、破壊が起きにくく有利である。
【0084】
支持基板
樹脂フィルム(a)を形成する支持基板としては、特に制限されないが、ガラス基板、石英基板、シリコン基板(例えば、Siウエハ)、金属基板等が挙げられる。後述するように裏面からの光照射等を行えるといった意味で、透明なガラス基板及び石英基板等が好ましい。また本発明では、半導体素子を形成した後、最終的には、支持基板を樹脂フィルムから剥離する。従って、支持基板は影響を受けず、再生が可能であり、半導体装置製造のコストの低減につながる。
【0085】
樹脂フィルム(a)の形成
樹脂フィルム(a)は、先に示した樹脂の溶液又は樹脂の前駆体の溶液を、支持基板上に、スピンコートやスリットコートをすることにより形成することができる。通常、スピンコートやスリットコートをした後に、溶媒を揮発させるためのプリベークを行う。その後に、窒素ガスのような不活性ガスの雰囲気下又は真空下で、250℃以上で硬化ベークを行う。不活性ガスの雰囲気下又は真空下で硬化ベークを行うことにより、酸化による樹脂フィルム(a)の着色を防止できる。なおこの硬化ベークの温度は、樹脂フィルム(a)に含まれる樹脂材料が分解しない温度で、かつその後の半導体素子の形成プロセスの温度より高い温度が好ましい。具体的には、300℃以上400℃以下で硬化ベークをすることが好ましい。
【0086】
樹脂層(b)
本発明の半導体装置の製造方法においては、支持基板と樹脂フィルム(a)との間に樹脂層(b)を形成してもよい。樹脂層(b)は、熱膨張係数が支持基板と樹脂フィルム(a)との間の値にあるものが好ましい。支持基板としてガラス基板やシリコン基板を用いる場合、これらの熱膨張係数は数ppm/Kの値である。これに対して、樹脂フィルム(a)の熱膨張係数は、通常、数十〜100ppm/Kとそれより一桁以上大きい。従って、支持基板と樹脂フィルム(a)の熱膨張係数の差が大きいために内部に応力が発生したり、樹脂フィルム(a)の硬化の際にフィルムに亀裂が入ったりする可能性がある。熱膨張係数の値が支持基板と樹脂フィルム(a)との間にあるような樹脂層(b)を用いることにより、上記問題を軽減することができる。
【0087】
樹脂層(b)は、単層でも複数層でもよい。例えば、熱膨張係数が序列をなすような樹脂層を重ねて、3層以上とすることも可能である。
【0088】
樹脂層(b)は、耐熱性のあるものが望ましく、具体的には、熱膨張係数が10〜40ppm/Kであり、膜厚が1μm以上30μm以下であり、1%重量減少温度が300℃以上であるものが好ましい。樹脂層 (b)の透過率に関しては、波長400nm以上800nm以下の可視光の透過率が80%以上であるような透明なものを用いてもよいが、透過率がそれより低く黄色〜褐色に着色しているものを用いてもよい。
【0089】
樹脂層(b)として、可視光の透過率が高く透明であるものを用いる場合には、後述するように支持基板と樹脂層(b)との界面で剥離を行って、最終的に樹脂層(b)が半導体素子を有するデバイスに残るようにしてもよい。これに対して、透過率が低く黄色〜褐色に着色しているものを用いる場合には、樹脂層(b)と樹脂フィルム(a)との界面で剥離を行って、樹脂層(b)が半導体素子を有するデバイスに残らないようにすることが好ましい。
【0090】
樹脂層(b)としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、例えば、樹脂フィルム(a)について記載したのと同様の樹脂等が挙げられる。
【0091】
無機膜
本発明の半導体装置の製造方法においては、樹脂フィルム(a)と半導体素子との間に無機膜を形成してもよい。無機膜としては、酸化シリコン(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(SiN)及び酸化アルミニウム(AlO)から選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましい。これらを単独で含んでいてもよいし、組み合わせて含んでいてもよい。無機膜は、樹脂フィルム(a)から不純物、例えば、水や酸素が樹脂フィルム(a)上に形成される半導体素子に侵入するのを防ぐバリア層として機能する。
【0092】
無機膜の厚さは、通常、10nm以上2000nm以下であり、好ましくは、50nm以上500nm以下である。無機膜は、単層でもよいし、必要に応じては2層以上を重ねて用いてもよい。無機膜を形成する方法としては、スパッタ、反応性プラズマ蒸着、CVD、プラズマCVDなどが挙げられる。無機膜は、有機物である樹脂フィルム(a)上に形成することから、形成温度は低温である方が樹脂フィルム(a)のダメージが小さいので好ましい。具体的には、無機膜は、100℃以下で形成できるものが好ましい。
【0093】
半導体素子の形成
本発明では、支持基板の上層に樹脂フィルム(a)を形成し、その上層に半導体素子を形成する。樹脂フィルム(a)の上層に形成する半導体素子は、特に制限されないが、本発明は、半導体素子としてTFTを形成する場合に特に好適である。従って、本発明は、表示用半導体装置の製造に特に好適である。
【0094】
半導体素子は、従来技術において通常のガラス基板上に形成する場合と同様に形成することができる。そして、好ましくは形成した半導体素子上に保護層等を張り、表面を保護した上で、後述の剥離工程を行う。本発明の一実施形態では、その後、樹脂基板(c)に、例えば、透明な接着剤を介して、半導体素子が形成された樹脂フィルム(a)の接着を行い、保護層を除去することにより、半導体素子の転写が完了する。
【0095】
保護層は、支持基板を除去するときの応力で、形成した半導体素子が破壊されることを防ぐ役割をする。保護層としては、仮接着が出来て、後で剥がせるものが好ましい。そのようなものとしては、150℃前後に加熱することにより発泡する性質を有するものが好ましい。具体的には、日東電工の「リバアルファ」やトーヨーアドテックの「エレグリップ」のような半導体のバックグラインド時に用いられる保護フィルムを用いることができる。これらは、150℃前後に加熱することにより発泡し剥離する性質を有するので、必要なときに簡単に剥離を行うことができる。
【0096】
本発明では、半導体素子、例えば薄膜トランジスタ(TFT)の状態で、支持基板の剥離を行うこともできるが、さらに工程を進めて、液晶を封入してセル化したあとで、剥離工程を行ってもよい。その場合は、樹脂フィルム(a)の上層に形成した半導体素子の上に配向膜を形成し、ラビング等の配向処理を行った後に、別途樹脂基板で作成したカラーフィルタを用いて、液晶の封入工程を行う。その後、カラーフィルタを支持基板として、剥離を行うことができる。
【0097】
本発明では、さらに別の方式として、支持基板の上層に樹脂フィルム(a)を形成し、その上層に半導体素子を形成する際に、特許3482856号に見られるように、半導体素子、例えばTFTの構造の天地を反転した形で形成してもよい。この場合、構造が反転していることから、樹脂フィルム(a)の上層に形成した半導体素子に透明接着剤を介して、樹脂基板(c)を貼り付ける。その後、支持基板の剥離を行って、樹脂基板(c)側を下にして、そのまま半導体素子、例えばTFTとして使用する。この場合、保護層は不要であることから工程を簡略化できる。ここで樹脂基板(c)側を下にしたときのTFTの最上部には、樹脂フィルム(a)があることから、それを配向膜として、そのままラビング等の配向処理をして使用することが可能である。なお、そこにさらに配向膜を形成してもよい。
【0098】
すなわち、半導体素子を形成した樹脂フィルム(a)を、樹脂基板(c)に貼り付ける場合、半導体素子側に貼り付けてもよいし、支持基板を剥離した後の樹脂フィルム(a)側に貼り付けてもよい。
【0099】
樹脂基板(c)は、特に耐熱性は必要としないので、膜厚50μm以上で膜厚500μm以下程度の透明な基板であればよい。波長400nm以上800nm以下の透過率が90%以上のものが好ましい。カラーフィルタと樹脂基板(c)に貼り付けたTFTとで熱膨張係数や応力の差を生じないように、カラーフィルタに用いるフィルムは、樹脂基板(c)と同じ材料で形成することが好ましい。従って、樹脂基板(c)としては、カラーフィルタの形成プロセスに適応した200℃程度の耐熱性を有するものが好ましい。
【0100】
樹脂基板(c)の具体例としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンが挙げられ、新日鐵化学のHT基板等が好ましい。これらの基板であれば、200℃のプロセスで使用が可能である。シクロオレフィンコポリマーである三井化学のアペル、JSRのアートン、日本ゼオンのゼオノア等は、透明性が高いが、耐熱性が低いため、カラーフィルタの作成温度を100〜150℃に下げる必要がある。
【0101】
剥離工程
本発明において半導体素子を形成した樹脂フィルム(a)から支持基板を剥離する工程は、紫外線照射を含むことが好ましい。ここで支持基板として、ガラス基板及び石英基板のような透明基板を用いる場合は、これらに対する透過率が90%以上である波長の光を、半導体素子を形成した面ではなく、支持基板の面から照射することが好ましい。紫外線としては、波長200nm以上450nm以下のものが好ましい。具体的には、水銀ランプ、キセノン水銀ランプの輝線であるg線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、313nm、254nmの光が好ましい。さらには波長308nmのXeClエキシマレーザ光や、波長248nmのKrFエキシマレーザ光といったレーザ光、YAGレーザー(波長1064nm)の第3高調波(波長355nm)や第4高調波(波長266nm)を使うこともできる。用いる光の波長は、より好ましくは波長300nm以上400nm以下である。この範囲の波長の光は、支持基板としてのガラス基板を効率的に透過するが、樹脂フィルム(a)を透過しにくい場合が多い。また、樹脂フィルム(a)に対する透過率が50%以下となる波長の光であることがより好ましい。樹脂フィルム(a)に対する透過率が10%以下となる波長の光はさらに好ましい。樹脂フィルム(a)に対する透過率が低い光は、支持基板の裏面から照射したときに、支持基板と樹脂フィルム(a)の界面で吸収されて効率的に働き、剥離が起きやすくなる。
【0102】
なお紫外線を照射した後に、界面に力をかけて剥離を補助する、あるいは水に浸漬して界面に水を浸入させて剥離を補助する工程を加えることもできる。
【0103】
半導体素子を形成した樹脂フィルム(a)からの支持基板の剥離は、紫外線を照射する以外に、濃度1%以上10%以下のフッ酸水溶液に浸漬することによっても実施できる。
【0104】
支持基板と樹脂フィルム(a)との間に、樹脂層(b)を形成する場合で、特に樹脂フィルム(a)及び樹脂層(b)の両方が、ポリベンゾオキサゾール系材料、ポリイミド系材料、ポリアミド系材料、ポリアミドイミド系材料の場合は、水に浸漬して剥離することもできる。
【0105】
本発明の方法では、ガラス基板などの支持基板に耐熱性の高い樹脂フィルムを形成して、その上にTFTに代表される半導体素子を形成する。従って、現行のガラス基板用に作られた製造装置をそのまま使って、半導体素子を形成することができる。しかも、支持基板であるガラスは、TFTなどの半導体素子を形成した樹脂フィルム(a)から剥離することにより、繰り返し利用できる。その結果、ガラスのコストを削減できる。
【0106】
耐熱性の低い樹脂基板をガラス基板上に貼り付ける等して、その上に半導体素子を形成し剥離する従来の方法では、樹脂基板の耐熱性に問題があるために、プロセス温度を下げる必要があった。そのため例えばゲート絶縁膜の信頼性が不十分で、特性の優れたデバイスができないという欠点があった。耐熱性に優れる樹脂として、通常のポリイミド系材料を用いた場合は、ポリイミド系材料の透過率が、波長400nm〜500nmのところで低いために黄色から褐色に着色していて、特に透過型ディスプレイのTFTには使えないという欠点があった。また、無色透明なポリイミド系材料の場合でも、厚さ100μm以上で用いた場合は、波長400nmの部分の透過率が低くなり、透過型ディスプレイのTFTには不向きであるという欠点があった。本発明で無色透明な樹脂フィルムを1μm以上30μm以下という薄い膜厚で形成することにより、耐熱性の問題と透明性の問題を解決したものである。その結果、本発明では従来のプロセス温度である300℃前後の温度でプロセスを実施でき、信頼性に優れたデバイスが形成可能である。
【0107】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例】
【0108】
実施例1 耐熱透明樹脂フィルム(a)の製造
厚さ0.6mmの石英の支持基板上にポリベンゾオキサゾール前駆体(VIII)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)/γ-ブチロラクトン(BLO)(9/1)溶液をスピンコートした。その後、120℃で3分間プリベークを行い、厚さ5.5μmの塗布膜を得た。
【0109】
【化23】

【0110】
次にイナートガスオーブンを用いて、窒素下、200℃で30分ベークした後、350℃で1時間硬化ベークを行い、本発明の樹脂フィルム(a)として、ポリベンゾオキサゾール膜(B-1)を得た。硬化後の膜厚は4.8μmであった。硬化後の膜は、無色透明であった。
【0111】
【化24】

【0112】
上記で得られた硬化膜の波長300nm〜800nmの領域の透過スペクトルを図17に示した。本硬化膜は、可視領域である400nm〜800nmでは、90%程度以上の透過率を示すことがわかった。また本硬化膜の波長350nm以下の透過率は0%であり、その波長の光を透過しないことがわかった。
【0113】
別途、シリコン基板上に同様の操作で作成したポリベンゾオキサゾール膜(B-1)を用いて、ESCO電子科学(株)製EMD-WA1000S/Wにより昇温脱ガス分析を行った。その結果、硬化温度である350℃までは脱ガスが見られず、耐熱性が高いことがわかった。またこの膜を剥離して、物性を測定したところ、ガラス転移温度が280℃であり、熱膨張係数が50ppm/Kであることがわかった。また熱重量分析による3%重量減少温度は、450℃であった。同様にして、次の(B-2)から(B-13)までの樹脂フィルム(a)を形成した。ただし、(B-12)に関しては、真空装置により、ジクロロジパラキシリレンを原料として、化学蒸着により成膜した。
【0114】
【化25】

【0115】
それぞれの樹脂フィルムについて、硬化条件、膜圧、透過率、3%重量減少温度、ガラス転移温度(Tg)及び熱膨張係数(CTE)をまとめた結果を以下の表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
表1における3%重量減少温度は、エスアイアイ・ナノテクノロジー製TG/DTA-6200型により、窒素気流下にて、測定温度30℃〜600℃で、昇温速度10℃/分で測定した。また、表1におけるガラス転移温度(Tg)及び熱膨張係数CTEは、エスアイアイ・ナノテクノロジー製TMA-120型を用いて、測定温度30℃〜300℃で、昇温速度5℃/分で、10gの荷重による引張りモードで測定を行った。ここでは、CTEが大きく変化する温度を、便宜的にガラス転移温度とした。
【0118】
表1中には示さなかったが、いずれの材料も少なくとも300℃までは溶融を示さず、融点が300℃以上であることがわかった。
【0119】
実施例2 半導体装置の製造
図1は、本発明の透過型の液晶表示パネルの1サブピクセルの構成を示す平面図である。図2は、図1に示すA-A’切断線に沿った断面構造を示す断面図である。以下、図2を用いて、本実施例の液晶表示パネルの構造について説明する。
【0120】
本実施例の液晶表示パネルは、面状の対向電極を使用するIPS方式の液晶表示パネルであり、図2に示すように、液晶層LCを介して互いに対向配置される透明基板(100B)と、透明基板(100A)とを有する。本実施例では、透明基板(100B)の主表面側が観察側となっている。
【0121】
透明基板(100B)は、プラスチック基板10Bを有し、そのプラスチック基板の上下の面には、バリア膜16Bが形成されている。透明プラスチック基板10Bの液晶層LC側には、透明プラスチック基板10Bから液晶層LCに向かって順に、バリア膜16B、遮光膜(BM)及びカラーフィルタ層(CF)、オーバーコート層13B、配向膜15Bが形成される。さらに、透明基板(100B)の外側にはバリア膜16Bと偏光板11Bが形成される。
【0122】
また、透明基板(100A)は、プラスチック基板10Aを有し、ガラス基板10Aの液晶層LC側には、ガラス基板10Aから液晶層LCに向かって順に、接着層18、実施例1に示した耐熱透明樹脂フィルム17、バリア層16A、絶縁膜12、層間絶縁膜13A、対向電極として機能する透明電極(ITO2)、透明絶縁膜20、画素電極(ITO1)、配向膜15Aが形成される。さらに、透明基板(100A)の外側には偏光板11Aが形成される。
【0123】
また、絶縁膜12は、下地膜12A、ゲート絶縁膜12B、層間絶縁膜12C、層間絶縁膜12Dで構成される。なおバリア層16Aと下地膜12Aは、別のものとしてもよいし、1つの膜で兼用してもよい。
【0124】
図1に戻って、Dは映像線(ドレイン線、ソース線ともいう)、Gは走査線(ゲート線ともいう)、SH1〜SH4はスルーホール(コンタクトホールともいう)、2はゲート電極、3は半導体層、4はソース電極(映像線Dをソース線と呼ぶ場合はドレイン電極ともいう)である。
【0125】
図3は、図1の等価回路を示す図であり、図1の容量素子(CLC)は液晶容量、容量素子(Cst)は、透明絶縁膜20を挟んで形成される画素電極(ITO1)と、対向電極として機能する透明電極(ITO2)とで形成される保持容量(蓄積容量ともいう)である。
【0126】
実際の液晶表示パネルでは、図3に示す等価回路が、例えば、携帯電話機に使用されるカラー表示の液晶表示パネルであれば、サブピクセル数が240×320×3のマトリクス状に配置されることになる。なお、本実施例の液晶表示装置の駆動方法は、IPS方式の液晶表示装置と同じであるので、駆動方法の説明は省略する。
【0127】
以下、図1に示す薄膜トランジスタの部分の構成について説明する。
図4は、図1に示すB-B’切断線に沿った、透明基板(100A)側の断面構造を示す断面図である。なお、図4では、偏向板11Aの図示は省略している。図4に示すように、支持基板としてのガラス基板10A上に耐熱透明樹脂フィルム(樹脂フィルム(a))17を実施例1に示したように形成し、その上にバリア層(無機膜)16Aを形成した。さらにその上にSiNとSiO2の積層膜等からなる下地膜12Aを形成し、その後、半導体層3を形成した。なお、半導体層3は、アモルファスシリコン膜、あるいはポリシリコン膜で構成される。
【0128】
この半導体層3上には、例えばSiO2からなるゲート絶縁膜12Bが形成され、このゲート絶縁膜12B上にゲート電極2が形成される。ゲート電極2上には、例えば、SiO2、SiN等からなる層間絶縁膜12Cが形成され、この層間絶縁膜12C上に、映像線(D)と、ソース電極4が形成される。そして、半導体層3は、スルーホール(SH1)を介して映像線(D)に接続され、さらに、スルーホール(SH2)を介してソース電極4に接続される。
【0129】
また、映像線(D)、及びソース電極4上には、SiO2、SiN等からなる層間絶縁膜12Dが形成され、この層間絶縁膜12D上には、例えばアクリル樹脂などからなる層間絶縁膜13Aが形成される。ここで、ソース電極4上で、層間絶縁膜12D、及び層間絶縁膜13Aには、スルーホール(SH3)が形成される。このスルーホール(SH3)内には、透明絶縁膜20が形成される。さらに透明絶縁膜20には、スルーホール(SH4)が形成され、このスルーホール(SH4)内に形成された透明導電膜(例えば、ITO;Indium-Tin-Oxide)により、画素電極(ITO1)が、ソース電極4に電気的に接続される。
【0130】
このようにして、画素電極(ITO1)は、画素に形成されたアクティブ素子と電気的に接続されている。そして、画素電極(ITO1)には、走査線(G)で駆動されるアクティブ素子を介して、映像線(D)から映像信号が書き込まれる。
【0131】
以下、図4に示した薄膜トランジスタの形成方法に関し、図5を用いて説明する。初めに図5(b)に示すようにガラス基板19上に、実施例1に示した(B-1)から(B-12)のいずれかの耐熱透明樹脂の塗膜を形成した。硬化条件、膜厚は表1に示したものを用い、耐熱透明樹脂フィルム17を形成した。その上にバリア膜16Aとして、イオンプレーティング方式の反応性プラズマデポ装置を使って、SiON膜を80℃で100nmの膜厚で形成した。
【0132】
次にその上に図5(d)に示すように、通常の方法により下地膜12Aと、半導体層3と、ゲート絶縁膜12Bと、ゲート電極2と、層間絶縁膜12Cと、映像線(D)と、ソース電極4と、層間絶縁膜12Dと層間絶縁膜13Aとを形成し、その上に透明電極ITO2を形成する。次にソース電極4上、層間絶縁膜12D及び層間絶縁膜13Aに、スルーホール(SH3)を形成する。そして、透明絶縁膜20を形成した後、スルーホール(SH4)を形成した後、画素電極ITO1を形成する(図5(d))。
【0133】
次にその上に保護層21を仮接着し、ガラスを剥離したときにTFT部分が応力で破壊されないようにする(図5(e))。保護層として日東電工の「リバアルファ」やトーヨーアドテックの「エレグリップ」のような半導体のバックグラインド時に用いられる保護フィルムを用いることができる。
【0134】
その後、波長308nmのXe-Clエキシマレーザ光を、支持基板であるガラス基板面から照射する。本発明で用いる耐熱透明樹脂フィルムは、透過率が例えば図17に示したものなので、波長308nmの光を効率的に吸収し、ガラス基板/耐熱透明樹脂フィルムの界面での密着性が低下するため、ガラス基板を剥離させることができる(図5(f))。ここでは、200mJ/cm2の照射量を与えることにより密着性が低下した。
【0135】
次にガラス基板がついていた側に、樹脂基板(c)として、別のプラスチック基板10Aを透明接着剤18により接着する(図5(g))。次に仮接着していた保護層21を剥離させる。先の「リバアルファ」やトーヨーアドテックの「エレグリップ」は、120℃〜180℃前後での加熱により発泡が起き、容易に剥離ができる。その結果、天地が保持された形でプラスチック基板10Aに転写されたTFTが完成する(図5(h))。
【0136】
なお、本実施例において、画素電極(ITO1)は、図1に示すような、一部が開放した形状のスリットを有する櫛歯形状に代えて、図7に示すような、閉じた形状のスリット30を内部に有する矩形形状であってもよい。図1、図7の何れの場合も、画素電極は線状部分を有する構造となっている。
【0137】
図8は、本発明の液晶表示パネルの変形例である半透過のIPS方式の1サブピクセルの構成を示す平面図である。図8は先の図1の構造に加えて、反射電極1を加えたものである。ここで反射電極1は、例えば下層のモリブデン(Mo)(1a)と、上層のアルミニウム(Al)(1b)の2層構造とされる。半透過型の液晶表示パネルでは、反射電極1が形成される領域が、反射型の液晶表示パネルを構成し、それ以外の部分が透過型の液晶表示パネルを構成する。
【0138】
図9は、図8に示すB-B’切断線に相当する部分の断面構造を示す断面図である。なお、図9では、偏向板11Aの図示は省略している。この場合は、先の図5に示した断面図に加えて、反射電極1が形成されている。これは、例えば下層のモリブデン(Mo)(1a)と、上層のアルミニウム(Al)(1b)の2層構造とされる。
【0139】
図10は、本発明の変形例の透明基板(100A)側の変形例の断面構造を示す断面図である。この図10は、図8に示すB-B’切断線に相当する部分の断面構造を示す断面図である。
【0140】
図10に示す構造では、反射電極1に入射される光を、拡散・反射させるために、反射電極1に凹凸を形成したものである。このような構造でも、反射電極1の凹凸を吸収し、絶縁膜20の表面を平坦化することができる。
【0141】
なお、図10に示す構造では、対向電極の図示は省略しているが、通常のIPS方式の液晶表示パネルの場合には、透明基板(100A)側に、また、縦電界方式(例えばTN方式やVA方式など)の液晶表示パネルの場合には、透明基板(100B)側に形成される。また、IPS方式の場合には、反射電極1が対向電極を兼ねてもよい。
【0142】
このように、本発明は、面状の対向電極を使用するIPS方式の液晶表示パネルに限定されるものではなく、通常のIPS方式の液晶表示パネル、あるいは、縦電界方式の液晶表示パネルにも適用可能である。この場合に、透明電極(ITO2)又は反射電極1は、画素電極(ITO1)との間で、保持容量(Cst)を形成するための電極として使用される。尚、縦電界方式の液晶表示パネルの場合は、画素電極(ITO1)はスリットを有しない形状であってもよいし、マルチドメイン化するためにスリットを形成してもよい。
【0143】
図11は、本発明の液晶表示パネルの変形例の1サブピクセルの構成を示す平面図である。図12は、図11に示すA-A’切断線に沿った断面構造を示す断面図である。図11、図12に示す構造は、本発明を、通常のIPS方式の液晶表示パネルに適用した場合の構造を図示したものである。図11、図12において、ITO3は、対向電極を示す。図11において、透明電極(ITO2)の下層側(基板10A側)は、層間絶縁膜13A以外の構造の図示は省略している。図11においても、透明電極(ITO2)は、対向電極の役割と、保持容量形成の役割を果たす。
【0144】
図13は、本発明の液晶表示パネルの変形例の断面構造を示す断面図である。この図13は、図1に示すA-A’切断線に相当する部分の断面構造を示す断面図である。図13に示す構造は、本発明を、縦電界方式の液晶表示パネルに適用した場合の構造を図示したものである。縦電界方式の液晶表示パネルでは、対向電極(コモン電極ともいう)(ITO3)は、透明基板(100B)側に形成される。また、透明電極(ITO2)は、保持容量形成の役割を果たす。尚、図10の実施例と組み合わせて、反射電極1を形成してもよい。
【0145】
透過型及び半透過型だけでなく、反射型の液晶表示装置も、上記実施例と同様に製造できる。反射型の場合は、透明電極(ITO2)の代わりに、反射電極1を形成すればよい。また、透過型又は半透過型の場合に、液晶表示パネルの背面に図示しないバックライトを配置してもよく、反射型の場合に、液晶表示パネルの前面(観察者側)に、図示しないフロントライトを配置してもよい。
【0146】
実施例3
実施例2の図5で示した薄膜トランジスタの形成方法に関して、その変形例を図6に示す。図6は、図4又は図2で示した薄膜トランジスタ及びそれを用いた液晶デバイスの形成方法である。
【0147】
実施例2に示した方法と同様に、支持基板としてのガラス基板19上に、樹脂フィルム(a)として実施例1の耐熱透明樹脂フィルム17を形成した。その上にバリア膜(無機膜)16を同様に形成し、通常の方法により、図5(d)と同じ様にTFT部分を形成した(図6(d))。次に配向膜15Aを形成し、ラビング処理を行った。
【0148】
厚さ100μmのプラスチック基板10Bに、100nmのSiONのバリア膜を両面に形成して、それを基板として、通常の方法により、ブラックマトリクス(BM)層とRGBのカラーフィルタ(CF)層を形成した。本カラーフィルタ部30は、オーバーコート層13Bと配向膜15Bを備える。
【0149】
本カラーフィルタ部30及びTFT部を用いて、ビーズスペーサーを使って、通常の方法で液晶封入して、CF側がプラスチック基板、TFT側がガラス基板の液晶パネルを得た(図6(f))。次に実施例2に示したように波長308nmのXe-Cl光をガラス基板側から照射して、ガラス基板を剥離した(図6(g))。ガラス基板がついていた側に、樹脂基板(c)としてプラスチック基板10Aを透明接着剤18により接着して(図6(h))、偏光板11A、Bを上下に貼り付けて液晶デバイスを完成させた。本実施例では、TFT側を図4に示したIPS方式の透過型としたが、実施例2に示した半透過型や反射型、さらには縦電界方式の液晶デバイスとすることもできる。
【0150】
実施例4
本発明の別の実施例として、透過型のIPS方式の液晶表示パネルの1サブピクセルの構成を示す平面図を図14に、図14のx-x’でのTFTの断面図を図15に示した。本実施例の特徴は、あらかじめ支持基板上に耐熱透明樹脂フィルムを形成した上に、TFT構造を上下反転した構造で形成しておき、それを反転させることにある。図16にはその形成方法を断面図の形で示した。以下、図16を用いて、形成方法を説明する。
【0151】
支持基板としてのガラス基板19上に実施例1に示した耐熱透明樹脂フィルム17を1μmの厚さで形成した(図16(b))。そのうえにITOよりなる画素電極ITO1を形成し、その上にSiO2等よりなる第1の絶縁膜12を形成する。次に第1の絶縁膜上に半導体層3、ゲート絶縁膜12、ゲート電極2、コモン電極ITO2、層間絶縁膜13Aを形成する。その後、コンタクトホールC1、C2、C3を形成し、ドレイン電極D、ソース電極4を順次形成し、TFTを形成する(図16(c))。TFTアクティブマトリクス素子自体の製造は通常の半導体プロセスに準じた方法で行った。次に完成したTFTアクティブマトリクス基板上に接着層18を介して、樹脂基板(c)としてプラスチック基板10Aを接着する(図16(d))。
【0152】
次に実施例2に示したように波長308nmのXe-Cl光をガラス基板側から照射して、ガラス基板を剥離する(図16(e))。本実施例のTFTは、初めから上下を反転した構造で作成してある。従って、ガラス基板を剥離した後はそのままで液晶デバイスに用いられる構造となっている。
【0153】
次にガラスを剥離させた面に液晶分子を配向させるための配向膜15Aを塗布し、焼成後ラビング処理を行う(図16(f))。なお本実施例では、ITO電極ITO1の上に耐熱透明樹脂ッフィルム17があることから、それをそのままラビングして配向膜として用いることもできる。本実施例の方式も液晶表示装置に限定されず、アクティブ素子と保持容量とを有する表示装置に対しても適用可能である。具体的には有機EL(OLED)ディスプレイや、電子泳動ディスプレイへ適用することも可能である。
【0154】
実施例5
実施例1の(B-3)に示した材料を用いて、窒素下、320℃で60分硬化を行い、支持基板としての石英基板に厚さ5.5μmの耐熱透明樹脂フィルムを形成した。そこに、実施例2で図4に示した薄膜トランジスタを図5の作成法に従い作成した。本実施例では、支持基板に石英を用いたので、ガラスでは透過しにくいより短波長の紫外光が透過する。それを利用して、保護層21を接着したあとに、波長248mのKrFエキシマレーザ光(50mJ/cm2/パルス、1パルスは20ナノ秒)を石英基板面から照射した。本発明で用いる耐熱透明樹脂フィルムは、波長248nmの光を効率的に吸収し、その結果、石英基板/耐熱透明樹脂フィルムの界面での密着性が低下して、2パルスつまり100mJ/cm2の照射量で基板を剥離させることができた。このあとは実施例2と同様の方法で半導体装置を形成した。
【0155】
実施例6
支持基板としてのガラス基板上に、樹脂層(b)として、日立化成デュポンマイクロシステムズ社製のポリイミドPIX-L110SXを塗布し、窒素下、200℃で30分、その後400℃で60分硬化させて、厚さ3.1μmの硬化膜を得た。本材料は、熱膨張係数(CTE)が10ppm/Kと小さい低熱膨張タイプのポリイミドであったが、得られた硬化膜は見た目に褐色であった。
【0156】
上記の樹脂層(b)の上に、実施例1の(B-2)の材料を塗布し、窒素下、310℃で60分硬化させて、厚さ7.5μmの耐熱透明樹脂フィルムを形成した。そこに、実施例2の図10で示した薄膜トランジスタを図5の作成法に従い作成した。実施例2と同様に保護層21を接着したあとに、50℃の温水に浸漬して、保護層を利用して剥離を試みた。その結果、樹脂層(b)と耐熱透明樹脂フィルム(B-2)の界面で剥離が起きた。その後は、実施例2の方法でデバイスを形成した。
【0157】
比較例1
ガラス基板上に、樹脂フィルム(a)として、日立化成デュポンマイクロシステムズ社製のポリイミドPIX-3400を塗布し、窒素下、200℃で30分、その後、350℃で60分硬化させて、厚さ4.0μmの硬化膜を得た。このポリイミドは、一部の構造をキナゾリン環変性した芳香族系のポリイミドである。本材料は、耐熱性が高く、3%重量減少温度は495℃と高く、ガラス転移温度も290℃と高温であった。昇温脱ガス分析を行った結果も、硬化温度である350℃までは脱ガスが見られず、耐熱性が高いことがわかった。しかしながら、本材料は見た目に黄色であり、透過率を測定したところ、波長500nm〜800nmの領域では、85%以上の透過率を示すものの、より短波長では、透過率が低下して、波長400nmでは、0%の透過率であるとがわかった。従って、透過型のデバイスを形成するには、不適当であることがわかった。
【0158】
比較例1−2
樹脂フィルム(a)として、ピロメリット酸二無水物と4,4'-ジアミノジフェニルエーテルから得られたポリアミック酸溶液を窒素下、200℃で30分、その後、350℃で60分硬化させて、厚さ8.0μmの硬化膜を得た。本材料は、耐熱性が高く、3%重量減少温度は501℃と高く、ガラス転移温度も372℃と高温であった。昇温脱ガス分析を行った結果も360℃までは脱ガスが見られず、耐熱性が高いことがわかった。しかしながら、本材料は見た目に黄色であり、透過率を測定したところ、波長500nm〜800nmの領域では85%以上の透過率を示すものの、より短波長では透過率が低下して、波長400nmでは0%の透過率であることがわかった。従って、透過型のデバイスを形成するには、不適当であることがわかった。
【0159】
比較例2
ガラス基板上に、樹脂フィルム(a)として、アデカ製ナノハイブリッドシリコーンFX-T350を塗布し、窒素下、300℃で30分硬化させて、厚さ4.0μmの硬化膜を得た。本材料は,ポリシロキサン主骨格として架橋させた材料である。本材料は透明性が高く400nmでの透過率が95%であった。また耐熱性も高く、3%重量減少温度は、450℃であった。昇温脱ガス分析を行った結果も、硬化温度である300℃までは脱ガスが見られず、耐熱性が高いことがわかった。しかしながら、膜が脆く、デバイスを形成したあとに剥離ができず、不適当であることがわかった。
【0160】
比較例3
実施例1に示した(B-3)の材料を用い、ガラス基板上に塗布膜を形成し、窒素下、300℃で60分硬化させて、厚さ100μmの硬化膜を形成した。本硬化膜の透過率を測定したところ、400nmでは22%、450nmでは29%であった。膜厚が100μmと厚いために、可視光の透過率の低下が起き、不適当であることがわかった。
【0161】
比較例4
実施例1に示した(B-1)の材料を用い、ガラス基板上に塗布膜を形成し、窒素下、300℃で60分硬化させて、厚さ0.5μmの硬化膜を形成した。本硬化膜の透過率を測定したところ、400nmでは93%、450nmでは94%と高透過率であった。しかし、膜厚が0.5μmと薄いために、フィルムとしての強度が弱く、剥離工程を行う際に、破壊が起き易く、歩留まりが低下して不適当であることがわかった。
【0162】
比較例5
150℃〜250℃に加熱したガラス基板に、下記の表2に示す樹脂材料のフィルムを圧着した。
【0163】
【表2】

【0164】
表2のいずれのフィルムも、透明性、熱重量減少温度は問題なかった。しかしながら、加熱時の溶融が250℃以下で起こり、ガラス基板上で変形して、その上では半導体素子が形成できないことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明の実施例の透過型の液晶表示パネルの1サブピクセルの構成を示す平面図である。
【図2】図1に示すA-A’切断線に沿った断面構造を示す断面図である。
【図3】図1の等価回路を示す図である。
【図4】図1に示すB-B’切断線に沿った、透明基板(100A)側の断面構造を示す断面図である。
【図5】図4に示すTFTの形成方法の一例を示す図である。
【図6】図4及び図2に示すTFT及び液晶表示装置の形成方法の一例を示す図である。
【図7】画素電極の変形例を示す図である。
【図8】本発明の実施例の半透過型の液晶表示パネルの1サブピクセルの構成を示す平面図である。
【図9】図8に示すA-A’切断線に沿った断面構造を示す断面図である。
【図10】本発明の実施例の液晶表示パネルの変形例の透明基板(100A)側の断面構造を示す断面図である。
【図11】本発明の実施例の液晶表示パネルの変形例の1サブピクセルの構成を示す平面図である。
【図12】図11に示すA-A’切断線に沿った断面構造を示す断面図である。
【図13】本発明の実施例の液晶表示パネルの変形例の断面構造を示す断面図である。
【図14】本発明の実施例の液晶表示パネルの変形例の1サブピクセルの構成を示す平面図である。
【図15】図14に示すX−X’切断線に沿った断面構造を示す断面図である。
【図16】図15に示すTFTの形成方法の一例を示す図である。
【図17】本発明の耐熱透明樹脂フィルム(B-1)の紫外可視領域の透過スペクトルである。
【符号の説明】
【0166】
1 反射電極
1a モリブデン(Mo)
1b アルミニウム(Al)
2 ゲート電極
3 半導体層
4 ソース電極
10A、10B プラスチック基板
11A、11B 偏光板
12 絶縁膜
12A 下地膜
12B ゲート絶縁膜
12C、12D 層間絶縁膜
13A 層間絶縁膜
13B オーバーコート層
15A、15B 配向膜
16A、16B バリア膜
17 耐熱透明樹脂フィルム
18 接着層
20 透明絶縁膜
21 仮保護層
21a 基材
21b 粘着層
30 カラーフィルタ部
LC 液晶層
BM 遮光膜
CF カラーフィルタ層
ITO1 画素電極
ITO2 透明電極
ITO3 対向電極
D 映像線(ドレイン線、ソース線)
G 走査線(ゲート線)
SH1〜SH4 スルーホール
C1〜C3 コンタクトホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板の上層に樹脂フィルム(a)を形成する工程と、樹脂フィルム(a)の上層に半導体素子を形成する工程と、半導体素子を形成した樹脂フィルム(a)から支持基板を剥離する工程とを含む半導体装置の製造方法であって、樹脂フィルム(a)は、膜厚が1μm以上30μm以下であり、波長400nm以上800nm以下の可視光の透過率が80%以上であり、3%重量減少温度が300℃以上であり、融点が280℃以上である、前記半導体装置の製造方法。
【請求項2】
樹脂フィルム(a)がポリベンゾオキサゾールを含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
樹脂フィルム(a)が脂環式構造を有するポリアミドイミドを含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
樹脂フィルム(a)が脂環式構造を有するポリイミドを含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
樹脂フィルム(a)がポリアミドを含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
ポリアミドが脂環式構造を有するものである、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
樹脂フィルム(a)がポリ(p−キシリレン)を含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
支持基板と樹脂フィルム(a)との間に樹脂層(b)を形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
樹脂層(b)の熱膨張係数が樹脂フィルム(a)の熱膨張係数よりも小さいものである、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
樹脂層(b)がポリイミドを含む、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
樹脂フィルム(a)と半導体素子との間に無機膜を形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
無機膜が、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン及び酸化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
支持基板の上層に樹脂フィルム(a)を形成する工程が加熱処理を含み、加熱処理温度が250℃以上であり、かつ半導体素子を形成するプロセス温度以上である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
加熱処理が、窒素下又は真空下での加熱処理である、請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
支持基板がガラス基板又は石英基板である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
半導体素子を形成した樹脂フィルム(a)から支持基板を剥離する工程が紫外線照射を含み、紫外線の波長が300nm以上400nm以下である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
半導体素子を形成した樹脂フィルム(a)から支持基板を剥離する工程の前に、半導体素子の表面に保護層を形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
半導体素子を形成した樹脂フィルム(a)を、樹脂基板(c)に貼り付ける工程をさらに含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
第1の基板と、第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に狭持された液晶とを有する表示用半導体装置であって、
第1の基板は、樹脂基板(c)と、樹脂基板(c)上に設けられた接着層と、接着層上に設けられた樹脂フィルム(a)を有し、
表示用半導体装置は、さらに、樹脂フィルム(a)上に形成されたアクティブ素子と、アクティブ素子よりも上層に形成された第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜よりも上層に設けられた第1の電極と、第1の電極よりも上層に設けられた第2の絶縁膜と、第2の絶縁膜よりも上層に設けられた第2の電極とを有し、
第1の絶縁膜は、第1のコンタクトホールを有し、
第2の絶縁膜は、第1の電極と第2の電極との間と、第1のコンタクトホール内とに形成されており、
第1のコンタクトホール内の第2の絶縁膜には、第2のコンタクトホールが形成されており、
第2の電極は画素電極であり、
第2の電極は、第2のコンタクトホールを介してアクティブ素子に電気的に接続されており、
第1の電極と、第2の電極と、第2の絶縁膜とによって、保持容量が形成されており、
樹脂フィルム(a)は、膜厚が1μm以上30μm以下であり、波長400nm以上800nm以下の可視光の透過率が80%以上であり、3%重量減少温度が300℃以上である、
前記表示用半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−21322(P2009−21322A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181829(P2007−181829)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】