説明

半導体装置の製造方法

【課題】最近の多層メタルスパッタリング成膜プロセスにおいては、従来のマルチチャンバ型の装置に代わって、単一チャンバ&マルチ成膜サイト型の装置が広く使用されるようになっている。しかし、本願発明者が検討したところによると、このような単一チャンバ&マルチ成膜サイト型スパッタリング成膜装置は、磁性メタル膜と非磁性メタル膜を積層形成する場合は、被処理ウエハを別の成膜サイトに移送して成膜する必要があり、スループットを大きく低下させていることが明らかとなった。
【解決手段】本願発明は、単一チャンバ&マルチ成膜サイト型多層スパッタリング成膜装置を用いた半導体装置の製造方法において、少なくとも一つの成膜サイトにおいて、磁性および非磁性ターゲットの両方を切り替えて用い、磁性および非磁性膜の両方の膜を成膜するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置(または半導体集積回路装置)の製造方法におけるスパッタリング成膜技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2001/44534号パンフレット(特許文献1)には、単一のウエハを同一のチャンバ内で移動させることにより、磁性及び非磁性ターゲットを切り替えて複数の膜をスパッタリング成膜するマグネトロン方式のスパッタリング成膜技術が開示されている。
【0003】
日本特開2009−135459号公報(特許文献2)には、単一のウエハを同一のチャンバ内で固定して置き、斜め方向に設置された磁性及び非磁性ターゲットを切り替えることにより、複数の膜をスパッタリング成膜するマグネトロン方式のスパッタリング成膜技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2001/44534号パンフレット
【特許文献2】特開2009−135459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近の多層メタルスパッタリング成膜プロセスにおいては、従来のマルチチャンバ型の装置に代わって、単一チャンバ&マルチ成膜サイト型の装置(ただし、ロードロック室は別室となっている)が広く使用されるようになっている。しかし、本願発明者が検討したところによると、このような単一チャンバ&マルチ成膜サイト型スパッタリング成膜装置は、磁性メタル膜(ここで、「磁性」はフェリ磁性を含む強磁性)と非磁性メタル膜(強磁性でないもの)を積層形成する場合は、被処理ウエハを別の成膜サイトに移送して成膜する必要があり、スループットを大きく低下させていることが明らかとなった。
【0006】
本願発明は、これらの課題を解決するためになされたものである。
【0007】
本発明の目的は、生産性の高い半導体装置の製造プロセスを提供することにある。
【0008】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0010】
すなわち、本願の一つの発明は、単一チャンバ&マルチ成膜サイト型多層スパッタリング成膜装置を用いた半導体装置の製造方法において、少なくとも一つの成膜サイトにおいて、磁性および非磁性ターゲットの両方を切り替えて用い、磁性および非磁性膜の両方の膜を成膜するものである。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0012】
すなわち、単一チャンバ&マルチ成膜サイト型多層スパッタリング成膜装置を用いた半導体装置の製造方法において、少なくとも一つの成膜サイトにおいて、磁性および非磁性ターゲットの両方を切り替えて用い、磁性および非磁性膜の両方の膜を成膜するので、多層成膜プロセスの効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法に使用するウエハ裏面多層メタル成膜装置の上面図である。
【図2】本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法に使用するウエハ裏面多層メタル成膜装置の上面図(図1においてターゲット切替機構を透明化して、その下の部分を見やすくしたもの)である。
【図3】図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置におけるウエハの移動の仕方を説明するための内部搬送ロボット、各ウエハステージ、ステージ上のウエハ、およびウエハサセプタの斜視図である。
【図4】図3のウエハサセプタの上面図である。
【図5】図4のX−X’断面に対応するウエハサセプタの断面図(内部搬送ロボットに保持されているとき)である。
【図6】図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置の冷却ウエハステージ63b、63cの正断面構造図である。
【図7】図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置のランプ加熱ウエハステージ63aの正断面構造図である。
【図8】図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置のロードロック室61の正断面構造図(脱ガス処理中)である。
【図9】図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置を見やすいように横長に展開したときの模式断面図である。
【図10】図9のウエハ裏面多層メタル成膜装置におけるマルチターゲット成膜処理領域62b部分周辺の拡大断面図である。
【図11】図9および図10に示すマグネトロン用マグネット群の下面拡大図である。
【図12】図9および図10に示すターゲット切替機構59の拡大断面図である。
【図13】本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセスのプロセスブロックフロー図である。
【図14】本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法により製造されたパワーMOSFETの一例を示すデバイス上面図である。
【図15】本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(ソースコンタクト溝形成用レジストパターン形成工程)である。
【図16】本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(ソースコンタクト溝形成工程)である。
【図17】本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(ソースコンタクト溝形成用レジストパターン除去工程)である。
【図18】本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(ソースコンタクト溝延長工程)である。
【図19】本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス上面図(p+ボディコンタクト領域導入工程)である。
【図20】本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部(図19のX−X’断面に対応する)のデバイス断面フロー図(p+ボディコンタクト領域導入工程)である。
【図21】本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(バリアメタル膜成膜工程)である。
【図22】本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(アルミニウム系メタル膜成膜工程)である。
【図23】本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(バックグラインディング工程)である。
【図24】本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(裏面多層メタル膜成膜工程)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施の形態の概要〕
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。
【0015】
1.以下のウエハ処理装置を使用する半導体装置の製造方法であって、前記ウエハ処理装置は以下を有する:
(x1)外部と空間的に独立可能とされたロードロック室;
(x2)外部および前記ロードロック室と空間的に独立可能とされ、空間的に一体のスパッタリング成膜処理室;
(x3)前記スパッタリング成膜処理室内に設けられた第1および第2のスパッタリング成膜処理領域;
(x4)前記第1のスパッタリング成膜処理領域におけるターゲット切替機構;
(x5)前記ターゲット切替機構に保持された磁性ターゲットおよび非磁性ターゲット、
ここで、前記半導体装置の製造方法は以下の工程を含む:
(a)ウエハを前記ロードロック室に導入して、真空処理を施す工程;
(b)前記工程(a)の後、前記第1のスパッタリング成膜処理領域において、前記ウエハに対して、前記磁性ターゲットを用いた第1のスパッタリング成膜処理および前記非磁性ターゲットを用いた第2のスパッタリング成膜処理を実行する工程;
(c)前記工程(a)の後、前記第2のスパッタリング成膜処理領域において、前記ウエハに対して、第3のスパッタリング成膜処理を実行する工程;
(d)前記ロードロック室が空き次第、他のウエハに対して、前記工程(a)、(b)および(c)を含む処理を繰り返し連続的に実行する工程。
【0016】
2.前記1項の半導体装置の製造方法において、前記第1のスパッタリング成膜処理領域および前記第2のスパッタリング成膜処理領域の真空排気系は共通である。
【0017】
3.前記1または2項の半導体装置の製造方法において、前記第1のスパッタリング成膜処理領域には、一組のマグネトロン用マグネット群が設置されている。
【0018】
4.前記1から3項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記工程(a)の真空処理は、脱ガス処理である。
【0019】
5.前記1から4項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記第1のスパッタリング成膜処理領域におけるターゲットの切り替えは、前記磁性ターゲットおよび前記非磁性ターゲットを移動させることによって実行する。
【0020】
6.前記1から5項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記第1のスパッタリング成膜処理、前記第2のスパッタリング成膜処理および前記第3のスパッタリング成膜処理は、前記ウエハおよび前記他のウエハの裏面に対して実行される。
【0021】
7.前記1から6項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記ウエハおよび前記他のウエハの厚さは、300マイクロメートル未満である。
【0022】
8.前記1から7項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記ウエハ処理装置は更に以下を有する:
(x6)前記ロードロック室の底部を形成できるように設けられた第1のウエハステージ;
(x7)前記第1のスパッタリング成膜処理領域に設けられた第2のウエハステージ;
(x8)前記第2のスパッタリング成膜処理領域に設けられた第3のウエハステージ。
【0023】
9.前記1から8項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記ウエハ処理装置は更に以下を有する:
(x9)前記第1のスパッタリング成膜処理領域に設けられた一組の第1の膜付着防止用シールド;
(x10)前記第2のスパッタリング成膜処理領域に設けられた一組の第2の膜付着防止用シールド。
【0024】
10.前記8または9項の半導体装置の製造方法において、前記第1のウエハステージ、前記第2のウエハステージ、および前記第3のウエハステージは、平面的に言って、ほぼ同一円周上にある。
【0025】
11.前記1から10項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記ウエハ処理装置内における前記ウエハおよび前記他のウエハに対する処理は、前記ウエハおよび前記他のウエハの各ウエハとそれぞれリング状のウエハサセプタが近接した状態で実行される。
【0026】
12.前記1から11項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記第1のスパッタリング成膜処理はチタン膜のスパッタリング成膜処理であり、前記第2のスパッタリング成膜処理は第1のニッケル膜のスパッタリング成膜処理であり、前記第3のスパッタリング成膜処理は金膜のスパッタリング成膜処理である。
【0027】
13.前記1から12項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記磁性ターゲットの径は、前記非磁性ターゲットの径よりも小さい。
【0028】
14.前記1から13項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記ウエハ処理装置は更に以下を有する:
(x11)前記磁性ターゲットの背面に設けられた第1のバッキングプレート;
(x12)前記非磁性ターゲットの背面に設けられた第2のバッキングプレート;
(x13)前記非磁性ターゲットと前記第2のバッキングプレートの間に設けられたスペーサプレート。
【0029】
15.前記1から14項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記真空排気系は以下を含む:
(y1)ドライポンプ;
(y2)クライオポンプ。
【0030】
16.前記15項の半導体装置の製造方法において、前記ロードロック室の真空排気系は以下を含む:
(y3)前記ドライポンプ;
(y4)分子ポンプ。
【0031】
17.前記9から12項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記ウエハ処理装置は更に以下を有する:
(x14)前記スパッタリング成膜処理室内に設けられた第3のスパッタリング成膜処理領域;
(x15)前記第3のスパッタリング成膜処理領域に設けられた第4のウエハステージ;
(x16)前記第3のスパッタリング成膜処理領域に設けられた一組の第3の膜付着防止用シールド。
【0032】
18.前記17項の半導体装置の製造方法において、前記第3のスパッタリング成膜処理領域は、第2のニッケル膜のスパッタリング成膜処理のためのものである。
【0033】
19.前記17または18項の半導体装置の製造方法において、前記第1のウエハステージ、前記第2のウエハステージ、前記第3のウエハステージ、および前記第4のウエハステージは、平面的に言って、ほぼ同一円周上にある。
【0034】
20.前記1から19項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記工程(b)は、前記工程(c)よりも先に実行される。
【0035】
21.前記1から20項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記半導体装置はパワーMOSFET、IGBTまたはLDMOSFETを有する。
【0036】
22.前記1から20項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記半導体装置はパワーMOSFETを有する。
【0037】
23.前記1から20項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記半導体装置はIGBTを有する。
【0038】
24.前記1から20項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記半導体装置はLDMOSFETを有する。
【0039】
25.前記1から24項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記第2のスパッタリング成膜処理は、前記第1のスパッタリング成膜処理よりも先に実行される。
【0040】
〔本願における記載形式、基本的用語、用法の説明〕
1.本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクションに分けて記載する場合もあるが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しを省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0041】
更に、本願において、「半導体装置」というときは、主に、各種トランジスタ(能動素子)などの単体デバイスや、これらを中心に、抵抗、コンデンサ等を半導体チップ等(たとえば単結晶シリコン基板)上に集積したものをいう。なお、単体といっても、実際は、微小な素子を複数集積したものもある。ここで、各種トランジスタの代表的なものとしては、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)に代表されるMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)や、IGBT(Insulated gate Bipolar Transistor)を例示することができる。また、「MOS」といっても、絶縁膜を酸化物に限定しているわけではない。
【0042】
2.同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかに、そうでない場合を除き、A以外の要素を主要な構成要素のひとつとするものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。同様に、「酸化シリコン膜」、「酸化シリコン系絶縁膜」等と言っても、比較的純粋な非ドープ酸化シリコン(Undoped Silicon Dioxide)だけでなく、FSG(Fluorosilicate Glass)、TEOSベース酸化シリコン(TEOS-based silicon oxide)、SiOC(Silicon Oxicarbide)またはカーボンドープ酸化シリコン(Carbon-doped Silicon oxide)またはOSG(Organosilicate glass)、PSG(Phosphorus Silicate Glass)、BPSG(Borophosphosilicate Glass)等の熱酸化膜、CVD酸化膜、SOG(Spin ON Glass)、ナノクラスタリングシリカ(Nano-Clustering Silica:NSC)等の塗布系酸化シリコン、これらと同様な部材に空孔を導入したシリカ系Low-k絶縁膜(ポーラス系絶縁膜)、およびこれらを主要な構成要素とする他のシリコン系絶縁膜との複合膜等を含むことは言うまでもない。
【0043】
また、酸化シリコン系絶縁膜と並んで、半導体分野で常用されているシリコン系絶縁膜としては、窒化シリコン系絶縁膜がある。この系統の属する材料としては、SiN,SiCN,SiNH,SiCNH等がある。ここで、「窒化シリコン」というときは、特にそうでない旨明示したときを除き、SiNおよびSiNHの両方を含む。同様に、「SiCN」というときは、特にそうでない旨明示したときを除き、SiCNおよびSiCNHの両方を含む。
【0044】
なお、SiCは、SiNと類似の性質を有するが、SiONは、むしろ、酸化シリコン系絶縁膜に分類すべき場合が多い。
【0045】
3.同様に、図形、位置、属性等に関して、好適な例示をするが、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、厳密にそれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0046】
4.さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0047】
5.「ウエハ」というときは、通常は半導体装置(半導体集積回路装置、電子装置も同じ)をその上に形成する単結晶シリコンウエハを指すが、エピタキシャルウエハ、SOI基板、LCDガラス基板等の絶縁基板と半導体層等の複合ウエハ等も含むことは言うまでもない。
【0048】
6.本願において、ウエハに対する処理を「連続的に実行する」とは、たとえば、バッチを25枚として、バッチ単位で処理するとすれば、第1番目のウエハがロードロック室からスパッタリング成膜室へ移動すると同時又はその後続いて、第2番目のウエハがロードロック室に導入され、第2番目のウエハがロードロック室からスパッタリング成膜室へ移動すると同時又はその後続いて、第3番目のウエハがロードロック室に導入される言う具合に、できるだけロードロック室やスパッタリング成膜室の各成膜領域の利用率を高めるように連続的又は断続的に処理することを言う。なお、種々の都合で適宜、処理の間隙や待機時間等を設けてもよい。
【0049】
7.本願において、処理チャンバ、ロードロック室等に関して、「空間的に独立」とは、真空室としたときに独立していることであり、幾何学的には、当該チャンバ(空間領域1)とそれ以外の領域(空間領域2)間にマクロな断面積を有する空間通路(「マクロ空間通路」という)がないことを言う。また、「空間的に一体」とは、真空室としたときに、実質的に連結した一つの真空室を成し、全体の気圧が定常状態ではほぼ均一であることをいい、幾何学的には、当該空間領域内の任意の2点がその内部のみを通過するマクロ空間通路により連結可能なことを言う。ただし、これらの場合において、マクロ空間通路の途中には、真空ポンプ等の両端に顕著な圧力差を生ずる要素がないことを条件とする。
【0050】
8.本願において、「パワー系半導体装置」とは、たとえば、パワーMOSFET,IGBT,LDMOSFET(Laterally Diffused MOSFET)等、および、これらのうち少なくとも一つを有する集積回路を指す。「パワーMOS系半導体装置」、「IGBT系半導体装置」、「LDMOS系半導体装置」等についても同様である。
【0051】
9.本願において、「ウエハとウエハサセプタが近接した状態」とは、ウエハがウエハサセプタに接触して保持されている状態及びウエハがウエハサセプタに接触していないが、ウエハがウエハサセプタ内にある状態を言う。
【0052】
〔実施の形態の詳細〕
実施の形態について更に詳述する。各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0053】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するために、ハッチングを付すことがある。
【0054】
なお、パワーMOSFET等へのスパッタリング成膜について開示した先行特許出願としては、たとえば日本特願第2009−92973号(日本出願日2009年4月7日)がある。
【0055】
1.本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法により製造したパワーMOSFETの一例の説明(主に図14)
図14は、本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法により製造されたパワーMOSFETの一例を示すデバイス上面図である。図14に示すように、正方形又は長方形の板状のシリコン系半導体基板(個々のチップに分割する前はウエハである)上に素子を形成したパワーMOSFET素子チップ8(トレンチゲートパワーMOS型半導体装置)は中央部にあるソースパッド領域11(アルミニウム系パッド)が主要な面積を占めている。その下には、それらの幅(またはピッチ)よりも十分長く延びる帯状ゲート電極(柱状トレンチゲート電極に対応)と帯状ソースコンタクト領域が交互に多数形成された帯状繰り返しデバイスパターン領域R(リニアセル領域)がある。より正確には、リニアセル領域Rは、ソースパッド領域11の下方のほぼ全体に広がっており、破線で囲った部分はその一部である。このリニアセル領域Rの周辺には、ゲート電極を周辺から外部に引き出すゲートパッド領域13がある。更にその周りには、アルミニウムガードリング19が設けられている。そして、チップ8の最外周部はウエハをダイシング等により分割する際の領域、すなわち、スクライブ領域14である。
【0056】
2.本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法における関連するデバイス断面プロセスフローの概要説明(主に図15から図22)
このセクションでは、0.15マイクロメートルプロセスのリニアトレンチゲート型パワーMOSFETの例について、図15から図22に基づいて、セクション2における図14の帯状繰り返しデバイスパターン領域切り出し部分(リニアセル領域)Rに対応するデバイス断面等について、プロセスフローを説明する。
【0057】
図15は、本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(ソースコンタクト溝形成用レジストパターン形成工程)である。ここでは、200ファイのn+型シリコン単結晶ウエハ(シリコン系ウエハ)にn型エピタキシャル層(たとえばエピタキシャル層の厚さは、4マイクロメートル程度)を形成したn型エピタキシャルウエハ1を原材料ウエハとして使用する例を説明するが、ウエハの径は300ファイでも450ファイでも、その他(たとえば、n型シリコン単結晶ウエハにバックグラインディング後に裏面にn+型を形成してもよい)でもよい。また、ウエハの導電型はp型等でもよい。更に、ウエハの形式はエピタキシャルウエハに限らず、他の半導体基板や絶縁性基板等であってもよい。また、必要があれば、シリコン系以外の半導体ウエハ又は基板であってもよい。
【0058】
図15に示すように、半導体ウエハ1は、主にn+シリコン基板部1sとエピタキシャル層1eからなり、エピタキシャル層1e内には、もともとのn型エピタキシャル層であるn型ドリフト領域2があり、その上部には、p型チャネル領域(p型ベース領域)3、n+ソース領域4等が形成されている。エピタキシャル層1eから上部が突出するように、複数のトレンチゲート電極(ポリシリコン電極)6が周期的に設けられており、各トレンチゲート電極6の中下部周辺には、ゲート絶縁膜7が設けられている。半導体ウエハ1のデバイス面側1aには、層間絶縁膜21が形成されており、各トレンチゲート電極6を完全にカバーしている。この層間絶縁膜21としては、下層から、たとえば60nm程度の厚さを有する窒化シリコン膜(窒化シリコン系絶縁膜)、300nm程度の厚さを有するPSG膜(酸化シリコン系絶縁膜)、95nm程度の厚さを有するSOG膜(酸化シリコン系絶縁膜)等からなる多層絶縁膜を例示することができる。
【0059】
層間絶縁膜21上には、加工のためのレジスト膜9が形成されている。このレジスト膜9をエッチングマスクとして、ドライエッチングを実行すると、図16に示すように、凹部(ソースコンタクト溝)22が形成される。次に、不要になったレジスト膜9を除去すると図17に示すように状態となる。
【0060】
次に、パターニングされた層間絶縁膜21をエッチングマスクとして、更にドライエッチングを実行すると、図18に示すように、凹部(ソースコンタクト溝)22がp型チャネル領域3の上端まで延長される。
【0061】
この時点の図18に対応する(図20にも対応している)デバイス上面(ウエハ上面)を図19に示す。図19において、セル繰り返し単位領域Gを図20にも対応して示す。
【0062】
図18に続き、図20に示すように、ソースコンタクト溝22(たとえば溝底幅300nm程度、深さ850nm程度、アスペクト比2以上、5以下程度であり、平均的には、2.8程度である)を通して、イオン注入により、p型チャネル領域3の表面領域に、p+ボディコンタクト領域5を導入する。
【0063】
次に、図21に示すように、半導体ウエハ1のデバイス面側1aのほぼ全面に、バリアメタル膜23を形成する。なお、バリアメタル膜23は、たとえば、下層バリアメタル膜、上層バリアメタル膜等で構成され、下層バリアメタル膜(一部はシリサイド化メタル)としては、チタンのほか、TiW,Ta,W,WSi等が使用可能である。また、上層バリアメタル膜としては、窒化チタンのほか、TiW,TaN等が使用可能である。
【0064】
続いて、シリサイデーションアニールを実施する。シリサイデーションアニールを実施すると、シリコン部材と接しているチタン膜部分が、その全厚にわたりチタンシリサイド化するが、図示が煩雑になるので、これらの変化は表示しない。
【0065】
次に、図22に示すように、バリアメタル膜23上のほぼ全面に、ソース電極となるアルミニウム系メタル膜24を成膜する。なお、ソース電極材料としては、ここで説明するシリコン添加アルミニウム系メタル(AlSi)のほか、AlCu,純Al、銅系メタル部材等が使用可能である。
【0066】
その後、アルミニウム系メタル膜24をパターニングし、その上に、ファイナルパッシベーション絶縁膜(たとえば2マイクロメータ程度の厚さを有する塗布系ポリイミド樹脂膜等の有機系絶縁膜)を形成して、必要な開口を形成する。
【0067】
次に、図23に示すように、バックグラインディング処理を施し、元のウエハ厚さ(たとえば750マイクロメートル程度)をたとえば120から280マイクロメートル程度(すなわち、300マイクロメートル未満)まで薄くする。
【0068】
次に、図24に示すように、ウエハ1の裏面1bに多層メタル膜15(裏面メタル電極膜)をスパッタリング成膜により、成膜する。裏面メタル電極膜15は、ウエハ1に近い側から、たとえば、裏面チタン膜15a(金およびニッケルの拡散防止層)、裏面ニッケル膜15b(チップボンディング材との接着層)、裏面金膜15c(ニッケルの酸化防止層)等からなる。その後、個々のチップに分割すると、図14に示すようなデバイスとなる。
【0069】
このウエハ裏面多層メタル成膜プロセスは、次セクションにおいて、詳しく説明する。
【0070】
3.本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法に使用するメタル成膜装置等の説明(主に図1から図12により説明、更に図24を参照)
このセクションでは、前セクションの図24で説明したウエハ裏面多層メタル成膜プロセスに使用するウエハ処理装置(多層スパッタリング成膜装置)について更に説明する。なお、200φウエハ用の市販の好適な装置としては、株式会社アルバック(ULVAC,Inc.)の多層スパッタリング成膜装置SRH−420等を例示することができる。
【0071】
図1は本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法に使用するウエハ裏面多層メタル成膜装置の上面図である。図2は本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法に使用するウエハ裏面多層メタル成膜装置の上面図(図1においてターゲット切替機構を透明化して、その下の部分を見やすくしたもの)である。図3は図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置におけるウエハの移動の仕方を説明するための内部搬送ロボット、各ウエハステージ、ステージ上のウエハ、およびウエハサセプタの斜視図である。図4は図3のウエハサセプタの上面図である。図5は図4のX−X’断面に対応するウエハサセプタの断面図(内部搬送ロボットに保持されているとき)である。図6は図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置の冷却ウエハステージ63b、63cの正断面構造図である。図7は図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置のランプ加熱ウエハステージ63aの正断面構造図である。図8は図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置のロードロック室61の正断面構造図(脱ガス処理中)である。図9は図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置を見やすいように横長に展開したときの模式断面図である。図10は図9のウエハ裏面多層メタル成膜装置におけるマルチターゲット成膜処理領域62b部分周辺の拡大断面図である。図11は図9および図10に示すマグネトロン用マグネット群の下面拡大図である。図12は図9および図10に示すターゲット切替機構59の拡大断面図である。図13は本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセスのプロセスブロックフロー図である。これらに基づいて、本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法に使用するメタル成膜装置およびそれを用いたウエハ裏面多層メタル層成膜プロセス等を説明する。
【0072】
まず、図1から図12により、ウエハ裏面多層メタル成膜プロセスに使用する単一チャンバ型多層スパッタリング成膜装置51の構造等を説明する。図1または図2に示すように、単一チャンバ型多層スパッタリング成膜装置51は、ロードポート部52と成膜処理部53から構成されている。このロードポート部52には、被処理ウエハ1を収容したウエハ搬送容器またはウエハカセット54が置けるようになっており、被処理ウエハ1は、外部ロボット56の先端部56a(上面は弾性体パッドとなっている)によって、そのデバイス面1aを保持されて、リフトステージ50上に置かれ、その後、リフトステージ50が降下して、ウエハ1をウエハサセプタ65(金属または耐熱絶縁体)にセットする。ここで、必要であれば、ウエハ1の方位(ノッチまたはオリエンテーションフラットの方向)を合わせる。
【0073】
成膜処理部53内には、ロードロック室61とスパッタリング成膜処理室57が設けられており、ロードロック室61は、その外部と空間的に独立可能となっている。スパッタリング成膜処理室57内には、単一ターゲット成膜処理領域62a、62cおよびマルチターゲット成膜処理領域62bが設けられており、これらに対応して、ランプ加熱ウエハステージ63aおよび冷却ウエハステージ63b、63cが設けられている。また、スパッタリング成膜処理室57内には、ロードロック室61に対応して、真空フランジ付きウエハステージ63dが設けられており、この真空フランジ付きウエハステージ63dおよびウエハステージ63a、63b、63c間でウエハ1をウエハサセプタ65とともに移送する内部搬送ロボット58が設けられている。
【0074】
更に、成膜処理部53には、マルチターゲット成膜処理領域62bのターゲットを切り替えるターゲット切替機構59(上部電極又はカソード)が設けられており、そこには、たとえば、チタンターゲット64t(非磁性ターゲット)、ニッケルターゲット64n(磁性ターゲット)等がセットされている。通常、このターゲット切替機構59、すなわち、ターゲット保持回転テーブルには、3枚のターゲットがセット可能となっており、ここでは、一つの空きポジション64xがある。
【0075】
次に、図3により、内部搬送ロボット58、ウエハサセプタ65、ウエハステージ63a、63b、63c等を更に説明する。図3に示すように、内部搬送ロボット58は、上下移動および両方向に回転可能となっており、4つのウエハサセプタ65(ウエハ1がセットされた)を同時に搬送可能となっている。このとき、ウエハ1は、その裏面1bを上にして、ウエハサセプタ65内に収容されている。各ステージ支持台55上のウエハステージ63a、63b、63cは、必要に応じて種々の構造をしており、たとえば、ロードロック室61(脱ガス室)用のウエハステージ63dには、Oリング60をセットできるフランジ部があり、ウエハ1の高さを上げるための金属ステージ99等が設けられている。
【0076】
次に、図4および図5(図4のX−X’断面)により、ウエハサセプタ65の詳細構造等を説明する。図4に示すように、ウエハサセプタ65は円環状の金属(たとえば、ステンレススチール)または絶縁体(たとえば、石英)で構成され、周辺に位置ずれ防止ノッチ65nが設けられており、搬送時および成膜処理時の位置ずれを防止している。ここでは、多層成膜プロセスが、全体として摂氏250度以上の処理を伴う場合には、たとえば石英ウエハ製のサセプタ65を用い、摂氏250度以上の処理を伴わない場合には、たとえばステンレススチール製(たとえばオーステナイト系非磁性ステンレススティール製)のサセプタ65を用いている。
【0077】
図5に内部搬送ロボット58によって保持された状態のウエハ1を保持したウエハサセプタ65の断面を示す。図5に示すように、ウエハ1はその裏面1bを上にむけた状態でウエハサセプタ65の内部平坦部により、その周辺部を保持されており、ウエハサセプタ65はその周辺部を内部搬送ロボット58の先端部によって保持されている。
【0078】
次に、非加熱ステージ63b、63cの断面構造を図6により説明する。図6に示すように、たとえば銅製の水冷ホルダ部66(冷却用ベース金属板)上の同じくたとえば銅製の金属スペーサ67を介して、内部に電極を有するセラミック製の静電チャック(Electrostatic chuck)68が設けられており、その上に、ウエハ1のデバイス面1aを傷つけないように、たとえばポリイミドフィルム等のウエハ表面保護層70が設けられている。ウエハサセプタ65はサセプタ位置決め用絶縁リング69aを介して冷却用ベース金属板66上に保持されており、その状態では、ウエハ1はウエハサセプタ65から離れて、ウエハ表面保護層70によって支えられている。
【0079】
次に、ランプ加熱ウエハステージ63aの断面構造を図7により説明する。図7に示すように、ステージ支持台55上に反射板73があり、この周辺には金属製のウエハホルダベース71があり、このウエハホルダベース71の開口部の上に石英窓98が設けられている。この石英窓98と反射板73の間には、ランプヒータ72が設けられている。ウエハホルダベース71上にはサセプタ位置決め用絶縁リング69bを介してウエハサセプタ65が置かれており、その中にウエハ1がその裏面1bを上に向けて保持されている。
【0080】
次に、ロードロック室61の断面構造(外部と遮断されている状態)を図8(図3参照)により説明する。図8に示すように、ロードロック室61は、それ以外の部分とOリング60を有するウエハゲート77と同様にOリング60を有する真空フランジ付きウエハステージ63dによって、遮断されている。ロードロック室61の上方には、ガス供給ライン76(ガス供給ノズル)が設けられており、その直下には反射板73、ランプヒータ72、石英窓98等から構成されたウエハ裏面加熱機構80も設けられている。真空フランジ付きウエハステージ63d上には、金属ステージ99を介して、ウエハサセプタ65が置かれている。このとき、ウエハ1はウエハサセプタ65に保持されており、ウエハ1と金属ステージ99は離れている。
【0081】
次に、図9により、ウエハ処理装置51(多層スパッタリング成膜装置)の真空系、ロードロック室(脱ガス室)61、各スパッタリング成膜処理室57、成膜処理領域62a、62b、62c等を更に説明する。図9に示すように、各ウエハステージ63a、63b、63c、63dの主要部はスパッタリング成膜処理室57内にあり、昇降可能となっており、ロードロック室61はウエハステージ63dの上昇によって、成膜処理室57と空間的に独立になるようにされている。一方、成膜処理領域62a、62b、62cもそれぞれ各ウエハステージ63a、63b、63cが上昇することによって、ウエハ1に対する処理が実施可能な状態になるが、各成膜処理領域62a、62b、62cと成膜処理室57のその他の部分は、空間的に独立ではなく、基本的にほぼ同一の気圧となっている。
【0082】
次に真空系について説明する。図9(なお、図9及び図10においては、図示の都合上、ウエハサセプタ65を省略している)に示すように、ロードロック室61はターボ分子ポンプ81、ドライ粗引きポンプ78等で構成された真空系(ロードロック真空系)で真空引きされる。このロードロック真空系が動作中は、ロードロック排気バルブ87および分子ポンプバルブ82が開状態である。このとき、通常、成膜処理室57の真空系(成膜処理室真空系)も動作状態である。成膜処理室真空系は主にクライオポンプ79で構成されており、このポンプの動作中は、メイン排気バルブ86が開状態であり、粗引きバルブ84、クライオポンプ排気バルブ85、ドライポンプバルブ83等は閉状態である。なお、クライオポンプ79による排気開始時の粗引きにおいては、メイン排気バルブ86およびクライオポンプ排気バルブ85を閉状態として、粗引きバルブ84、ドライポンプバルブ83等を開状態として、排気管88(真空排気系)を介してドライ粗引きポンプ78により粗引きを実行する。ここで、通常の状態では、分子ポンプバルブ82とドライポンプバルブ83は同時に開状態としない。
【0083】
次に、各成膜処理領域62a、62b、62cの構造を説明する。図9に示すように、成膜処理領域62a、62cは、成膜処理室57の内壁91が外部に向けて一部突出して円筒状の下方が開放された部屋状の区画(部屋状区画または円筒状区画)をその主要部としている。この円筒状区画内には、膜付着防止シールド75(使用時は接地電位にされる)が設けられており、円筒状区画の上部内側には、たとえば他のニッケルターゲット64s(磁性ターゲット)、金ターゲット64a(非磁性ターゲット)、またはそれを取り付ける上部電極(カソード電極)が、それぞれ設けられている。更に、円筒状区画の上部外側には、マグネトロン用マグネット群(マグネット搭載回転板)74がそれぞれ設けられている。
【0084】
これと同様に、図9に示すように、成膜処理領域62bは、成膜処理室57の内壁91が外部に向けて一部突出して円筒状の下方が開放された部屋状の区画(部屋状区画または円筒状区画)をその主要部としている。この円筒状区画内には、同様に膜付着防止シールド75(使用時は接地電位にされる)が設けられている。ここで、成膜処理領域62bは、複数のターゲットを切り替えて使用するため、円筒状区画に空間的に連結して、ターゲット切替機構59(上部電極又はカソード)を収容するための拡張区画90が設けられている。ここには、先と同様に、マグネトロン用マグネット群(マグネット搭載回転板)74や、カソードを構成するチタンターゲット64t(非磁性ターゲット)、ニッケルターゲット(磁性ターゲット)64nが設置されているが、構造が複雑であるので、拡大した図10により説明する。
【0085】
図10に示すように、この部分の成膜処理室57の壁面(たとえばアルミニウム系金属製)は、内壁91と外壁89の2重構造となっており、その間にターゲット切替機構59が収容され、水平に回転可能となっている。ターゲット切替機構59は、複数のターゲットをその下面に保持して回転可能なターゲット保持板、その回転機構等から構成されている。外壁89の外側には、マグネット-ターゲット間隔壁92を介して、マグネトロン用マグネット群74(マグネット搭載回転板)が設けられており、ウエハ処理時には回転機構により回転するようになっている。マルチターゲット成膜処理領域62bの円筒状区画の上方側面側には、ガス供給用のノズル76(ガス供給ライン)が設けられている。
【0086】
なお、他の成膜処理領域62a、62cの構造も図10の単一ターゲット成膜処理領域周辺部Lとほぼ同様の構造をしている。ただし、他の成膜処理領域62a、62cの場合は、ターゲットは移動せず、固定されている。その他の部分、すなわち、膜付着防止シールド75、ガス供給用のノズル76、マグネトロン用マグネット群74、マグネット-ターゲット間隔壁92(たとえばオーステナイト系非磁性ステンレススティール製)等はほぼ同様の構造をしている。
【0087】
次に、図10その他のマグネトロン用マグネット群74(図9の各マグネトロン用マグネット群74について同じ)の詳細構造を図11(マグネット搭載回転板の下面拡大図)により説明する。図11に示すように、金属板74(たとえばオーステナイト系非磁性ステンレススティール製)上に円形の永久磁石94n,94nが、たとえば回転中心93を共有する2つの同心円上に”C”の字状に配列されている。このとき、永久磁石94n,94nは、同心円の円周に沿って、表面が交互にN極、S極となることによって封じ込め磁場を形成するように配列されている。
【0088】
次に、図10のターゲット切替機構59の主要部であるターゲット搭載回転板の詳細断面構造を図12により説明する。図12に示すように、ターゲット搭載回転板59(たとえば銅製)には、たとえば3個の円形開口が設けられており、必要に応じて、そこにターゲットを取り付ける。ここでは、磁性ターゲットとしてニッケルターゲット64n(たとえば直径290ミリメートル程度、厚さ5ミリメートル程度)を、非磁性ターゲットとしてチタンターゲット64t(たとえば直径304ミリメートル程度、厚さ12ミリメートル程度)を取り付けている。各ターゲットはバッキングメタルプレート95(第1及び第2のバッキングプレートであり、たとえば銅製、直径360ミリメートル程度、厚さ5ミリメートル程度)を介して、取り付けられている。マグネットターゲット間距離D(マグネトロン用マグネット群の下端からターゲットの下面までの距離)は、ニッケルターゲット64n(磁性ターゲット)については、たとえば22ミリメートル程度、チタンターゲット64t(非磁性ターゲット)については、たとえば29ミリメートル程度を例示することができる。
【0089】
なお、磁性ターゲット64nにおいては、周辺で磁場が弱くなる場合があるので、その場合はターゲットの径をバッキングプレートの径よりも小さめにするとそのような問題を回避することができる。また、そのように径を小さくしたターゲットの周辺には、不所望な膜が付着する場合があるので、その場合は膜付着防止のため付着防止リング97(たとえばオーステナイト系非磁性ステンレススティール製)を設けるとそのような問題を回避することができる。もちろん、これらの対策は必須ではない。
【0090】
また、磁性ターゲット64n側の下面において、磁場を十分に確保しようとすると、非磁性ターゲット64t側の下面において、磁場が強くなりすぎる場合があるので、その場合はバッキングプレート95と非磁性ターゲット64tの間にスペーサ板96(スペーサプレートであり、たとえば銅製、直径304ミリメートル程度、厚さ0.5ミリメートル程度)を介在させるとそのような問題を回避することができる。もちろん、これらの対策は必須ではない。
【0091】
4.本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセス(パワーMOS系デバイスの例)等の説明(主に図13により、図1から図12、図23および図24を参照)
このセクションでは、セクション3で説明した多層スパッタリング成膜装置51を使用したウエハ裏面多層メタル層成膜プロセスについて、パワーMOS系デバイス(裏面電極構造は図24に示す)を例にとり説明する。
【0092】
図13は本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセスのプロセスブロックフロー図である。これに基づいて、本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセス等を説明する。
【0093】
図13および図1に示すように、図23の状態の被処理ウエハ1がウエハ搬送容器54(たとえば、ウエハ1の裏面1bを上に向けて収容されている)に収容された状態で、多層スパッタリング成膜装置51のロードポート部52に受け入れられると、処理対象ウエハ1は外部ロボット56によって、ウエハ搬送容器54から取り出されて、その裏面を上に向けた状態でリフトステージ50上に置かれる。その後、リフトステージ50が降下して、ウエハ1をウエハサセプタ65内に収容する(サセプタへの搭載工程101)。
【0094】
次に、図8に示すように、ウエハ1を載せたウエハサセプタ65は、ウエハゲート77を介して、外部ロボット56によって、ロードロック室61内に導入され、ウエハ1の裏面1bを上にむけた状態で、ウエハステージ63d上に置かれる(ロードロック室への導入工程102)。このとき、ロードロック室61内に先行して処理された別のウエハがあるときは、その別のウエハの取出しを先に行う。以上のサセプタおよびロードロック室へのセット並びにサセプタおよびロードロック室からの取り出しに要する時間は、たとえば、1分40秒程度である。
【0095】
次に、ウエハゲート77が閉じて、ロードロック室61の真空引きが開始されることにより、脱ガス処理103が実行される。具体的には、先ず、真空引きにより、真空度を、たとえば5x10−3パスカル程度以上に上昇させる(所要時間30秒程度)。続いて、ランプ72が点灯して、ウエハ1の温度を摂氏200度程度まで上昇させる。この状態(ランプ加熱および真空引きは継続)で脱ガス処理(ウエハ上の水分を除去する処理)をたとえば50秒程度実行する。脱ガス処理103が終了すると、ランプ72が消灯する。以上より、ロードロック室61に関する処理時間は、ウエハ当たり、たとえば3分程度(「ロードロック関連単位処理時間」という)である。
【0096】
次に、図8において、ウエハステージ63dが降下して(このとき他のステージ63a、63b、63cも同時に降下する)、図3に示す要領で、内部搬送ロボット58によって、ウエハ1を載せたウエハサセプタ65は、ウエハステージ63a(この場合は待機ステージ)に移送される。このとき、各ウエハステージ63a、63b、63cに他のウエハを載せたウエハサセプタ65がある場合は、それらも同時に次のステージに移送される。なお、スパッタリング成膜処理室57は、たとえば、0.5パスカル程度(範囲としては、たとえば0.2から0.8パスカル程度)の真空度(たとえばアルゴンガス雰囲気)に保持されている。このウエハステージ63aは、待機ステージとして使用されるときは、常温(室温)とされている。ウエハサセプタ65に載せられた状態でウエハ1は、他のステージの63b、63c、63dにおける処理が完了するまで、待機する(図13の待機工程104)。この待機時間は、概ね、ロードロック関連単位処理時間で律速または決定されている。待機工程104が終了すると、先と同様に、他の処理中のウエハの移送と同時に、ウエハサセプタ65に載せられた状態でウエハ1は、内部搬送ロボット58によって、冷却ウエハステージ63b上へ移送される。
【0097】
次に、図9に示す冷却ウエハステージ63bが上昇して、マルチターゲット成膜処理領域62bでのスパッタリング成膜によるチタン膜の成膜が実行される(図13のチタン成膜工程105)。成膜条件としては、たとえば、膜厚100nm程度,処理時間15秒程度、DCパワー8キロワット程度、アルゴン流量15sccm程度、ガス圧0.3パスカル程度を例示することができる。ここで、ウエハステージ等の設定は、静電チャックオフ、室温で水冷状態である。チタン成膜工程105が終了すると、DCパワーは一度オフされる。
【0098】
続いて、ウエハステージ等の設定を室温で水冷状態のまま、静電チャックをオン状態(印加電圧はたとえば2キロボルト程度)にするとともに、ターゲットをニッケルターゲット64nに切り替えて、スパッタリング成膜によるチタン膜の成膜を実行する(図13のニッケル成膜工程106)。成膜条件としては、たとえば、膜厚200nm程度,処理時間35秒程度、DCパワー4キロワット程度、アルゴン流量10sccm程度、ガス圧0.4パスカル程度を例示することができる。ニッケル成膜工程106が終了すると、DCパワー、静電チャックの印加電圧はオフされ、その状態で他のウエハの処理が完了するのを待つ(「予備待機工程」という)。この予備待機工程の間、アルゴンガス等のプロセスガスを停止すると、スパッタリング成膜処理室57の全体としての真空度が上昇することがある。このような場合は、必須ではないが、成膜プロセス中と同程度のアルゴンガス等のプロセスガス(たとえば、この場合は、アルゴン流量15sccm程度)を流し続けると、そのような問題を回避することができる。なお、この点は、先の単一ターゲット成膜処理領域62a(待機領域)における待機工程104でも同じで、たとえばアルゴン流量10sccm程度を流し続けると、同様にそのような問題を回避することができる。マルチターゲット成膜処理領域62bにおける予備待機工程が終了すると、先と同様に、他の処理中のウエハの移送と同時に、ウエハサセプタ65に載せられた状態でウエハ1は、内部搬送ロボット58によって、冷却ウエハステージ63c上へ移送される。
【0099】
次に、図9に示すように、冷却ウエハステージ63cが上昇して、単一ターゲット成膜処理領域62cにおけるスパッタリング成膜による金成膜工程107(図13)が実行される。成膜条件としては、たとえば、膜厚100nm程度,処理時間15秒程度、DCパワー2キロワット程度、アルゴン流量15sccm程度、ガス圧0.6パスカル程度を例示することができる。金成膜工程107が終了すると、DCパワーはオフされ、その状態で他のウエハの処理が完了するのを待つ(「予備待機工程」という)。この予備待機工程の間、アルゴンガス等のプロセスガスを停止すると、スパッタリング成膜処理室57の全体としての真空度が上昇することがある。このような場合は、必須ではないが、先と同様に、成膜プロセス中と同程度のアルゴンガス等のプロセスガス(たとえば、この場合は、アルゴン流量15sccm程度)を流し続けると、そのような問題を回避することができる。単一ターゲット成膜処理領域62cにおける予備待機工程が終了すると、先と同様に、他の処理中のウエハの移送と同時に、ウエハサセプタ65に載せられた状態でウエハ1は、内部搬送ロボット58によって、ロードロック室61で使用するウエハステージ63d上へ移送される。
【0100】
次に、図8に示すように、ウエハステージ63dが上昇して、ロードロック室61が外部から空間的に独立した状態になると、ガス供給ライン76からエアが供給されて、外気と同一気圧になる。そこで、ウエハゲート77が開き、図1に示す外部ロボット56がウエハ1を載せたウエハサセプタ65をロードポート部52上へ排出する(図13のロードロック室からの排出工程108)。そこで、リフトステージ50が上昇して、ウエハ1を持ち上げた状態で、外部ロボット56がウエハ1をウエハ搬送容器54へ移送する(図13のサセプタからの取り出し工程109)。これで、多層メッキ単位サイクル100(図13)を一巡して、サセプタへ搭載工程101の開始前に戻ったことになる。
【0101】
通常の量産工程では、このようなサイクルを順次繰り返して、多数のウエハの処理をできるだけ各ステージ63a、63b、63c、63dの空き時間が短くなるように、連続的に実行する。
【0102】
5.本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセス(IGBT系デバイスの例)等の説明(主に図13により、図1から図12、図23および図24を参照)
セクション4では、本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセスをパワーMOS系デバイスの製造に適用した場合について説明したが、このセクションでは、それをIGBT系デバイスの製造に適用した場合について説明する。図13に示すように、ほとんどの工程は共通するので、異なる部分のみを説明する。
【0103】
図13に示すように、プロセス的には待機工程104の代わりに、Ni成膜領域62aでのNi成膜工程111を実行する点のみが異なる。また、裏面電極の構造について言えば、図24において、シリコン基板1s側に別のニッケル膜(第2にニッケル膜)が付加される点のみが異なる。もちろん、をパワーMOS系デバイスとIGBT系デバイスでは、シリコン基板内およびシリコン基板のデバイス面1a上の構造は異なっているが、これらの相違は、裏面電極の構造およびその製法に関しては本質的ではない。また、同一のカテゴリ(たとえばパワーMOS系デバイス)に属するデバイスでも、その品種により、裏面電極構造は多種多様であり、量産では、この各種の仕様の製品が前後して流れるのが普通である。
【0104】
図7および図9により、Ni成膜領域62aでのNi成膜工程111を説明する。図7および図9に示すように、ウエハサセプタ65上に載せられたウエハ1がランプ加熱ウエハステージ63a上に置かれると、ウエハステージ63aが上昇して、Ni成膜工程111(図13)が実行される。成膜条件としては、たとえば、膜厚50nm程度,処理時間10秒程度、DCパワー4キロワット程度、アルゴン流量10sccm程度、ガス圧0.4パスカル程度を例示することができる。このとき、ウエハ温度は、ランプ加熱がオフ状態であるため、室温か、それよりもあまり高くない温度にある。Ni成膜工程111が終了すると、DCパワーはオフされ、その状態で他のウエハの処理が完了するのを待つ(「予備待機工程」という)。この予備待機工程の間、アルゴンガス等のプロセスガスを停止すると、スパッタリング成膜処理室57の全体としての真空度が上昇することがある。このような場合は、必須ではないが、成膜プロセス中と同程度のアルゴンガス等のプロセスガス(たとえば、この場合は、アルゴン流量10sccm程度)を流し続けると、そのような問題を回避することができる。予備待機工程が終了すると、先と同様に、他の処理中のウエハの移送と同時に、ウエハサセプタ65に載せられた状態でウエハ1は、内部搬送ロボット58によって、冷却ウエハステージ63b上へ移送される。
【0105】
6.本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセス(LD−MOSFET系デバイスの例)等の説明(主に図13により、図1から図12、図23および図24を参照)
セクション5では、本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセスをIGBT系デバイスの製造に適用した場合について説明したが、このセクションでは、それをLD−MOS系デバイスの製造に適用した場合について説明する。図13に示すように、ほとんどの工程は共通するので、異なる部分のみを説明する。ただし、Ni成膜工程111において加熱処理が加わる点も異なっている。なお、このプロセスでは、セクション4および5と異なり、ウエハサセプタ65は、石英製を用いる。
【0106】
図13に示すように、Ni成膜領域62aでのNi成膜工程111に加えて、アロイ処理112を実行することにより、Ni成膜工程111において成膜したニッケル層(第2にニッケル膜)をニッケルシリサイド層に変換する点のみが異なる。また、裏面電極の構造について言えば、図24において、シリコン基板1s側にニッケルシリサイド膜が付加される点のみが異なる。もちろん、IGBT系デバイスとLD−MOS系デバイスでは、シリコン基板内およびシリコン基板のデバイス面1a上の構造は異なっているが、これらの相違は、先と同様に、裏面電極の構造およびその製法に関しては本質的ではない。また、同一のカテゴリ(たとえばパワーMOS系デバイス)に属するデバイスでも、その品種により、裏面電極構造は多種多様であり、量産では、この各種の仕様の製品が前後して流れるのが普通である。
【0107】
図7および図9により、Ni成膜領域62aでのNi成膜工程111を説明する。図7および図9に示すように、ウエハサセプタ65上に載せられたウエハ1がランプ加熱ウエハステージ63a上に置かれると、ウエハステージ63aが上昇して、ランプヒータ72が点灯して、予備過熱工程(ウエハ温度は、たとえば摂氏350度程度、予備加熱時間60秒程度)が実行される。続いて、そのままの状態でNi成膜工程111(図13)が実行される。成膜条件としては、たとえば、膜厚50nm程度,処理時間10秒程度、DCパワー4キロワット程度、アルゴン流量10sccm程度、ガス圧0.4パスカル程度、ウエハ温度摂氏350度程度を例示することができる。続いて、DCパワーがオフされる外はそのままの状態で、アロイ処理112(図13)が実行される。アロイ処理条件としては、たとえば、処理時間60秒程度、アルゴン流量10sccm程度、ガス圧0.4パスカル程度、ウエハ温度摂氏350度程度を例示することができる。アロイ処理112が終了すると、ランプヒータ72が消灯され、その状態で他のウエハの処理が完了するのを待つ(「予備待機工程」という)。この予備待機工程の間、アルゴンガス等のプロセスガスを停止すると、スパッタリング成膜処理室57の全体としての真空度が上昇することがある。このような場合は、必須ではないが、成膜プロセス中と同程度のアルゴンガス等のプロセスガス(たとえば、この場合は、アルゴン流量10sccm程度)を流し続けると、そのような問題を回避することができる。予備待機工程が終了すると、先と同様に、他の処理中のウエハの移送と同時に、ウエハサセプタ65に載せられた状態でウエハ1は、内部搬送ロボット58によって、冷却ウエハステージ63b上へ移送される。
【0108】
7.本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセス(各種のデバイス)等の量産工程における各種態様についての補足説明(主に図13により、図1から図12、図23および図24を参照)
セクション4から6に説明したように、パワー系デバイスの裏面電極構造は、製品カテゴリ間または製品カテゴリ内において多種多様であるので、量産工程では、必然的に各種の裏面構造のデバイスが混在して流れることになる。ことのとき、主にセクション4で説明したように、同一の成膜処理室内に区画された複数の処理区画(成膜処理領域)の少なくとも一つおいて、磁性ターゲットと非磁性ターゲットを切り替えて、2層以上の成膜をすることにより、量産プロセス全体としてのスループットを大幅に向上させることが可能となる。
【0109】
また、仮に単一の仕様の製品のみを製造する場合であっても、多層成膜装置の成膜処理領域を最小の数に押さえることが可能である。
【0110】
更に、図9に説明したように、同一の真空室(スパッタリング成膜処理室57)内に複数の成膜サイト(成膜処理領域62a、62b、62c)があるため、真空排気系が共通にできるというメリットがある。また、同様にロードロック室61とスパッタリング成膜処理室57に関して、真空排気系の粗引きポンプを共有できるというメリットもある(なお、別々にしてもよい)。
【0111】
前記実施の形態では、成膜処理領域が3個で、その内の1個をマルチターゲット成膜処理領域としたものを例示したが、量産工程を流れる裏面仕様のうち、最大の裏面メタル層の数に合わせて、適宜、マルチターゲット成膜処理領域を増やすことによって(この例では最大層数は4であり、成膜処理領域が3個であるので、マルチターゲット成膜処理領域の数を1個とした)、複数の成膜処理領域を可能な限りフルに活用できるので、スループットを向上させる効果が非常に大きい。すなわち、順送りで処理(パイプライン処理)できる膜数を超える製品があると、その製品の処理においては、順送りを一度逆回転しなければならず、その間、順送り処理のメリットが得られないこととなる。このような順送り処理では、基本的に移送期間以外は全てのステージがウエハに占有されているので、処理効率が圧倒的に高くなる利点がある。
【0112】
たとえば、セクション4の例で、処理対象が最大層数3の品種のみであれば、成膜処理領域を2個のみ(成膜処理領域62b、62c)とすることもできる。これは、他の例でも同じであるが、処理はもっとも長い処理サイト(ロードロック室又は成膜処理領域)に関する処理時間(「最大単位処理時間」という)が、全体を律速しており、通常であれば、ロードロック室関連の処理時間が全体でもっとも長くなる(場合によっては、成膜処理領域62aその他の成膜処理領域に関連した処理時間が最大となることもある)。従って、最大単位処理時間に係る成膜処理領域以外の成膜処理領域でターゲットを切り替えて複数の(前記の装置構成では位置サイトにおいて最大3層まで形成可能)膜を形成しても、それに要する時間は、通常、最大単位処理時間以下となるので、スループットに影響しない。
【0113】
また、図2に示すように、ウエハステージ63a、63b、63c、63dが、内部搬送ロボット58の回転中心を中心とする円周上にあるので、搬送が迅速に行える利点がある。これに関連して、ターゲットの切り替えにおいては、図9および図10で説明したように、平面的にウエハステージ63bを移動させず(もちろん移動させてもよい)、ターゲット(ターゲット切替機構59)側を回転移動(平行移動でもよい)させるので、ウエハステージ間の搬送のために元の位置に戻す等の操作を必要としないメリットがある。
【0114】
また、ターゲット(ターゲット切替機構59)側を移動させることとしたので、マグネトロン用マグネット群74、シールド75等が当該成膜処理領域について一組で済むというメリットがある。
【0115】
8.サマリ
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本願の発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0116】
例えば、前記実施の形態では、パワーMOSFETを例にとり具体的に説明したが、本願の発明はそれに限定されるものではなく、IGBT,LDMOSFET等のその他の単体や、それらを含む集積回路素子その他に広く適用できることは言うまでもない。
【0117】
また、前記実施の形態では、Nチャネル型パワーMOSFET等のNチャネル型デバイスについて具体的に説明したが、本願の発明はそれに限定されるものではなく、Pチャネル型パワーMOSFET等のPチャネル型デバイスにも適用できることは言うまでもない。その場合には、前記実施の形態において、PとNを総入れ替えするPN反転操作を実行すればよい。
【0118】
更に、前記実施の形態では、ウエハ等の基板の裏面の多層金属膜の形成に適用した例を具体的に説明したが、本願の発明はそれに限定されるものではなく、ウエハ等の基板の裏面の絶縁膜と金属膜から構成された多層膜、ウエハ等の基板のデバイス面(第1主面)の多層金属膜および絶縁膜と金属膜から構成された多層膜の形成にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0119】
1 半導体ウエハ(エピタキシャルウエハ)
1a ウエハのデバイス面(第1の主面)
1b ウエハの裏面
1e エピタキシャル層(n型エピタキシャル層)
1s n+シリコン基板部
2 n型ドリフト領域
3 p型チャネル領域(p型ベース領域)
4 n+ソース領域
5 p+ボディコンタクト領域
6 トレンチゲート電極(ポリシリコン電極)
7 ゲート絶縁膜
8 チップ又はチップ領域
9 レジスト膜
11 ソースパッド
13 ゲートパッド
14 スクライブ領域(ダイシング領域)
15 裏面メタル電極膜
15a 裏面チタン膜
15b 裏面ニッケル膜(第1のニッケル膜)
15c 裏面金膜
19 ガードリング
21 層間絶縁膜
22 凹部(ソースコンタクト溝)
23 バリアメタル膜
24 アルミニウム系メタル膜(ソース電極)
50 リフトステージ
51 ウエハ処理装置(多層スパッタリング成膜装置)
52 ロードポート部
53 成膜処理部
54 ウエハカセット(ウエハ搬送容器)
55 ステージ支持台
56 外部ロボット
56a 外部ロボット先端部
57 スパッタリング成膜処理室
58 内部搬送ロボット
59 ターゲット切替機構(上部電極又はカソード)
60 Oリング
61 ロードロック室(脱ガス室)
62a 単一ターゲット成膜処理領域(待機領域または第3のスパッタリング成膜処理領域)
62b マルチターゲット成膜処理領域(第1のスパッタリング成膜処理領域)
62c 単一ターゲット成膜処理領域(第2のスパッタリング成膜処理領域)
63a ランプ加熱ウエハステージ(第4のウエハステージ)
63b 冷却ウエハステージ(第2のウエハステージ)
63c 冷却ウエハステージ(第3のウエハステージ)
63d 真空フランジ付きウエハステージ(第1のウエハステージ)
64a 金ターゲット(非磁性ターゲット)
64n ニッケルターゲット(磁性ターゲット)
64s 他のニッケルターゲット(磁性ターゲット)
64t チタンターゲット(非磁性ターゲット)
64x ターゲット切替機構の空きポジション
65 ウエハサセプタ
65n 位置ずれ防止ノッチ
66 水冷ホルダ部(冷却用ベース金属板)
67 金属スペーサ
68 ESCセラミック板(内部に電極あり)
69a,69b サセプタ位置決め用絶縁リング
70 ウエハ表面保護層(ポリイミドフィルム)
71 ウエハホルダベース
72 ランプヒータ
73 反射板
74 マグネトロン用マグネット群(マグネット搭載回転板)
75 膜付着防止シールド(第1、第2及び第3の膜付着防止シールド)
76 ガス供給ライン(ガス供給ノズル)
77 ウエハゲート
78 ドライ粗引きポンプ
79 クライオポンプ
80 ウエハ裏面加熱機構
81 ターボ分子ポンプ
82 分子ポンプバルブ
83 ドライポンプバルブ
84 粗引きバルブ
85 クライオポンプ排気バルブ
86 メイン排気バルブ
87 ロードロック排気バルブ
88 排気管(真空排気系)
89 成膜処理室の外壁
90 ターゲット切替機構収納用拡張区画
91 成膜処理室の内壁
92 マグネット-ターゲット間隔壁
93 マグネットの回転中心
94n 磁石のN極
94s 磁石のS極
95 バッキングメタルプレート
96 スペーサ板
97 付着防止リング
98 石英窓
99 金属ステージ
100 多層メッキ単位サイクル
101 サセプタへ搭載工程
102 ロードロック室への導入工程
103 脱ガス処理工程(真空処理)
104 待機工程
105 Ti/Ni成膜領域でのTi成膜工程(第1のスパッタリング成膜処理)
106 Ti/Ni成膜領域でのNi成膜工程(第2のスパッタリング成膜処理)
107 金成膜工程
108 ロードロック室からの排出工程
109 サセプタからの取り出し工程
111 Ni成膜領域でのNi成膜工程
112 アロイ処理工程
D マグネットターゲット間距離
L 単一ターゲット成膜処理領域周辺部
G セル繰り返し単位領域
R 帯状繰り返しデバイスパターン領域切り出し部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のウエハ処理装置を使用する半導体装置の製造方法であって、前記ウエハ処理装置は以下を有する:
(x1)外部と空間的に独立可能とされたロードロック室;
(x2)外部および前記ロードロック室と空間的に独立可能とされ、空間的に一体のスパッタリング成膜処理室;
(x3)前記スパッタリング成膜処理室内に設けられた第1および第2のスパッタリング成膜処理領域;
(x4)前記第1のスパッタリング成膜処理領域におけるターゲット切替機構;
(x5)前記ターゲット切替機構に保持された磁性ターゲットおよび非磁性ターゲット、
ここで、前記半導体装置の製造方法は以下の工程を含む:
(a)ウエハを前記ロードロック室に導入して、真空処理を施す工程;
(b)前記工程(a)の後、前記第1のスパッタリング成膜処理領域において、前記ウエハに対して、前記磁性ターゲットを用いた第1のスパッタリング成膜処理および前記非磁性ターゲットを用いた第2のスパッタリング成膜処理を実行する工程;
(c)前記工程(a)の後、前記第2のスパッタリング成膜処理領域において、前記ウエハに対して、第3のスパッタリング成膜処理を実行する工程;
(d)前記ロードロック室が空き次第、他のウエハに対して、前記工程(a)、(b)および(c)を含む処理を繰り返し連続的に実行する工程。
【請求項2】
前記1項の半導体装置の製造方法において、前記第1のスパッタリング成膜処理領域および前記第2のスパッタリング成膜処理領域の真空排気系は共通である。
【請求項3】
前記2項の半導体装置の製造方法において、前記第1のスパッタリング成膜処理領域には、一組のマグネトロン用マグネット群が設置されている。
【請求項4】
前記3項の半導体装置の製造方法において、前記工程(a)の真空処理は、脱ガス処理である。
【請求項5】
前記4項の半導体装置の製造方法において、前記第1のスパッタリング成膜処理領域におけるターゲットの切り替えは、前記磁性ターゲットおよび前記非磁性ターゲットを移動させることによって実行する。
【請求項6】
前記5項の半導体装置の製造方法において、前記第1のスパッタリング成膜処理、前記第2のスパッタリング成膜処理および前記第3のスパッタリング成膜処理は、前記ウエハおよび前記他のウエハの裏面に対して実行される。
【請求項7】
前記6項の半導体装置の製造方法において、前記ウエハおよび前記他のウエハの厚さは、300マイクロメートル未満である。
【請求項8】
前記7項の半導体装置の製造方法において、前記ウエハ処理装置は更に以下を有する:
(x6)前記ロードロック室の底部を形成できるように設けられた第1のウエハステージ;
(x7)前記第1のスパッタリング成膜処理領域に設けられた第2のウエハステージ;
(x8)前記第2のスパッタリング成膜処理領域に設けられた第3のウエハステージ。
【請求項9】
前記8項の半導体装置の製造方法において、前記ウエハ処理装置は更に以下を有する:
(x9)前記第1のスパッタリング成膜処理領域に設けられた一組の第1の膜付着防止用シールド;
(x10)前記第2のスパッタリング成膜処理領域に設けられた一組の第2の膜付着防止用シールド。
【請求項10】
前記9項の半導体装置の製造方法において、前記第1のウエハステージ、前記第2のウエハステージ、および前記第3のウエハステージは、平面的に言って、ほぼ同一円周上にある。
【請求項11】
前記10項の半導体装置の製造方法において、前記ウエハ処理装置内における前記ウエハおよび前記他のウエハに対する処理は、前記ウエハおよび前記他のウエハの各ウエハとそれぞれリング状のウエハサセプタが近接した状態で実行される。
【請求項12】
前記11項の半導体装置の製造方法において、前記第1のスパッタリング成膜処理はチタン膜のスパッタリング成膜処理であり、前記第2のスパッタリング成膜処理は第1のニッケル膜のスパッタリング成膜処理であり、前記第3のスパッタリング成膜処理は金膜のスパッタリング成膜処理である。
【請求項13】
前記12項の半導体装置の製造方法において、前記磁性ターゲットの径は、前記非磁性ターゲットの径よりも小さい。
【請求項14】
前記13項の半導体装置の製造方法において、前記ウエハ処理装置は更に以下を有する:
(x11)前記磁性ターゲットの背面に設けられた第1のバッキングプレート;
(x12)前記非磁性ターゲットの背面に設けられた第2のバッキングプレート;
(x13)前記非磁性ターゲットと前記第2のバッキングプレートの間に設けられたスペーサプレート。
【請求項15】
前記2項の半導体装置の製造方法において、前記真空排気系は以下を含む:
(y1)ドライポンプ;
(y2)クライオポンプ。
【請求項16】
前記15項の半導体装置の製造方法において、前記ロードロック室の真空排気系は以下を含む:
(y3)前記ドライポンプ;
(y4)分子ポンプ。
【請求項17】
前記12項の半導体装置の製造方法において、前記ウエハ処理装置は更に以下を有する:
(x14)前記スパッタリング成膜処理室内に設けられた第3のスパッタリング成膜処理領域;
(x15)前記第3のスパッタリング成膜処理領域に設けられた第4のウエハステージ;
(x16)前記第3のスパッタリング成膜処理領域に設けられた一組の第3の膜付着防止用シールド、
ここで、前記第3のスパッタリング成膜処理領域は、第2のニッケル膜のスパッタリング成膜処理のためのものである。
【請求項18】
前記9項の半導体装置の製造方法において、前記半導体装置はパワーMOSFET、IGBTまたはLDMOSFETを有する。
【請求項19】
前記18項の半導体装置の製造方法において、前記第1のウエハステージ、前記第2のウエハステージ、前記第3のウエハステージ、および前記第4のウエハステージは、平面的に言って、ほぼ同一円周上にある。
【請求項20】
前記1項の半導体装置の製造方法において、前記工程(b)は、前記工程(c)よりも先に実行される。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−138976(P2011−138976A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299072(P2009−299072)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】