説明

半導体装置の製造方法

【課題】エッチング装置の経時変化や状態変化等によらずトレンチの深さのばらつきを低減することができる半導体装置の製造方法を得る。
【解決手段】まず、所望の深さよりも浅い深さを持つトレンチ16をSi基板10の主面に形成する。次に、トレンチ16の深さを測定する。トレンチ16の底面からSi基板10に酸素イオン18を注入する。この際に、測定したトレンチ16の深さと所望の深さの差に基づいて酸素イオン18の注入エネルギーを調整して、Si基板10の所望の深さに酸素イオン18が注入されるようにする。次に、熱処理を行って酸素イオン18を注入した位置にSiO膜22を形成する。次に、SiO膜22をエッチングストッパとして用いて、トレンチ16の底面からSi基板10を更にエッチングしてトレンチ24を形成する。その後、SiO膜22を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板に溝状のトレンチを形成するトレンチ型半導体装置の製造方法に関し、特にトレンチの深さのばらつきを低減することができる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トレンチの深さのばらつき(均一性)は、トレンチの形成に用いるエッチング装置のウエハ間ばらつきやバッチ間ばらつきに大きく依存する。エッチング装置の経時変化や状態変化等が発生してトレンチの深さが変化すると、製造した半導体装置の電気特性も変化するため、歩留が悪化してしまう。
【0003】
そこで、ロットやバッチ毎に先行ウエハに形成したトレンチの深さを測定し、残りのウエハのトレンチの深さが所望の深さになるようにエッチング条件にフィードバックを掛けていた。
【0004】
また、基板表面から半導体基板の所望の深さに酸素イオンを注入し、熱処理を行って酸素イオンを注入した位置に酸化膜を形成し、その酸化膜をエッチングストッパとして用いて半導体基板をエッチングしてトレンチを形成する方法も提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−245294号公報
【特許文献2】特開平01−105543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行ウエハのトレンチの深さを測定してから次のウエハのエッチングまでに装置状態が変化するとフィードバックを掛けてもトレンチの深さがばらつくため、結局はエッチング装置自体の安定性に大きく依存するという問題があった。また、先行エッチングしたウエハのトレンチの深さが所望の深さより浅い場合は追加エッチング等が可能であるが、所望の深さより深い場合はそのウエハを脱落しなければならなかった。
【0007】
また、基板表面から半導体基板の所望の深さに酸素イオンを注入するには、酸素イオンの注入エネルギーを高くする必要がある。従って、酸素イオンの密度分布が広くなるため、トレンチの深さがばらつくという問題があった。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、エッチング装置の経時変化や状態変化等によらずトレンチの深さのばらつきを低減することができる半導体装置の製造方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、所望の深さよりも浅い深さを持つ第1のトレンチを半導体基板の主面に形成する工程と、前記第1のトレンチの深さを測定する工程と、前記第1のトレンチの底面から前記半導体基板に酸素イオンを注入する工程と、熱処理を行って前記酸素イオンを注入した位置に酸化膜を形成する工程と、前記酸化膜をエッチングストッパとして用いて、前記第1のトレンチの前記底面から前記半導体基板を更にエッチングして第2のトレンチを形成する工程と、前記第2のトレンチを形成した後に前記酸化膜を除去する工程とを備え、前記酸素イオンを注入する際に、測定した前記第1のトレンチの深さと前記所望の深さの差に基づいて酸素イオンの注入エネルギーを調整して、前記半導体基板の前記所望の深さに前記酸素イオンが注入されるようにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、エッチング装置の経時変化や状態変化等によらずトレンチの深さのばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図12】比較例に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。図1〜図11は、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【0013】
まず、図1に示すように、Si基板10(半導体基板)上に、SiO膜12を形成する。SiO膜12上にフォトレジスト14を塗布して、写真製版技術の露光及び現像を行う。次に、フォトレジスト14をマスクとして用いてSiO膜12をエッチングして、SiO膜12をパターニングする。その後、図2に示すように、フォトレジスト14を除去する。
【0014】
次に、図3に示すように、SiO膜12をマスクとして用いてSi基板10をエッチングして、所望の深さよりも浅い深さを持つトレンチ16をSi基板10の主面に形成する。その後、エッチング装置からSi基板10を抜き取り、レーザー顕微鏡や走査電子顕微鏡(SEM: scanning electron microscope)などの測定機器によりトレンチ16の深さを測定する。例えば、所望の深さが1μmであり、トレンチ16の深さが0.8μmである。
【0015】
次に、図4に示すように、SiO膜12をマスクとして用いてトレンチ16の底面からSi基板10に酸素イオン18をイオン注入機により注入する。この際に、測定したトレンチ16の深さと所望の深さの差に基づいて酸素イオン18の注入エネルギーを調整して、Si基板10の所望の深さに酸素イオン18が注入されるようにする。例えば、所望の深さが1μmであり、トレンチ16の深さが0.8μmである場合、第1のトレンチの底面から0.2μmの深さに酸素イオン18が注入されるように注入エネルギーを調整する。
【0016】
次に、図5に示すように、Si基板10の主面とトレンチ16の底面及び内壁を覆うように、Si膜20(窒化膜)を形成する。
【0017】
次に、図6に示すように、熱処理を行って酸素イオン18を注入した位置に、SiO膜22(酸化膜)を選択的に形成する。その後、図7に示すように、Si膜20を熱リン酸(HPO)等により除去する。
【0018】
次に、図8に示すように、SiO膜12をマスクとして用い、かつSiO膜22をエッチングストッパとして用いて、トレンチ16の底面からSi基板10を更にエッチングしてトレンチ24を形成する。その後、図9に示すように、SiO膜12,22を除去する。
【0019】
次に、図10に示すように、トレンチ24内にゲート絶縁膜26を介してゲート電極28(電極)を形成する。なお、図11に示すように、トレンチ24内に、下部電極30、絶縁膜32、及び上部電極34を有するキャパシタ36を形成してもよい。その後、半導体装置の構造設計に応じた製造プロセスを実施する。
【0020】
続いて、本実施の形態の効果について比較例と比較して説明する。図12は、比較例に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。比較例では、トレンチ16を形成せずに、基板表面からSi基板10の所望の深さに酸素イオン18を注入する。そして、熱処理を行って酸素イオン18を注入した位置にSiO膜22を形成し、そのSiO膜22をエッチングストッパとして用いてSi基板10をエッチングしてトレンチ24を形成する。
【0021】
しかし、基板表面からSi基板10の所望の深さに酸素イオン18を注入するには、酸素イオン18の注入エネルギーを高くする必要がある。このため、酸素イオン18の密度分布が広くなり、トレンチ24の深さがばらついてしまう。
【0022】
一方、本実施の形態では、まず浅いトレンチ16を形成し、そのトレンチ16の底面からSi基板10の所望の深さに酸素イオン18を注入する。このため、酸素イオン18の注入エネルギーを低くできるので、酸素イオン18の密度分布が狭くなる。従って、Si基板10の所望の深さに正確にSiO膜22を形成することができる。
【0023】
このSiO膜22をエッチングストッパとして用いてSi基板10をエッチングしてトレンチ24を形成するため、エッチング装置の経時変化や状態変化等によらずトレンチ24の深さのばらつきを低減することができる。
【0024】
また、熱処理の前にSi膜20を形成することで、Si基板10の主面やトレンチ16の底面及び内壁に酸化膜が形成されるのを防ぐことができる。
【0025】
また、本実施の形態によりトレンチ24の深さのばらつきを低減することで、トレンチ24内にゲート電極28やキャパシタ36を形成した半導体装置の電気特性が均一化され、歩留が向上する。
【符号の説明】
【0026】
10 Si基板(半導体基板)
16 トレンチ(第1のトレンチ)
18 酸素イオン
20 Si膜(窒化膜)
22 SiO膜(酸化膜)
24 トレンチ(第2のトレンチ)
28 ゲート電極(電極)
36 キャパシタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の深さよりも浅い深さを持つ第1のトレンチを半導体基板の主面に形成する工程と、
前記第1のトレンチの深さを測定する工程と、
前記第1のトレンチの底面から前記半導体基板に酸素イオンを注入する工程と、
熱処理を行って前記酸素イオンを注入した位置に酸化膜を形成する工程と、
前記酸化膜をエッチングストッパとして用いて、前記第1のトレンチの前記底面から前記半導体基板を更にエッチングして第2のトレンチを形成する工程と、
前記第2のトレンチを形成した後に前記酸化膜を除去する工程とを備え、
前記酸素イオンを注入する際に、測定した前記第1のトレンチの深さと前記所望の深さの差に基づいて酸素イオンの注入エネルギーを調整して、前記半導体基板の前記所望の深さに前記酸素イオンが注入されるようにすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記酸素イオンを注入した後、前記熱処理を行う前に、前記半導体基板の前記主面と前記第1のトレンチの前記底面及び内壁を覆うように窒化膜を形成する工程と、
前記熱処理を行った後、前記第2のトレンチを形成する前に、前記窒化膜を除去する工程とを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記酸化膜を除去した後に、前記第2のトレンチ内に電極又はキャパシタを形成する工程を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−43903(P2012−43903A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182495(P2010−182495)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】