説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】 MOS型トランジスタ素子のゲート電極上面に応力印加用絶縁膜を備える半導体装置において、製造工程を複雑化させることなく電流特性の向上若しくは電流特性の悪化防止を図ることのできる半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 同一チップ内にPチャネル型MOSトランジスタ118とNチャネル型MOSトランジスタ119の2種類のMOS型トランジスタ素子が形成された半導体装置であって、半導体基板101上の所定領域に形成されるMOS型トランジスタ素子のゲート電極106の上面に、引っ張り応力または圧縮応力の何れかの応力を有する応力印加用絶縁膜112を有し、応力印加用絶縁膜112によって電流特性が低下するMOS型トランジスタ素子の側壁絶縁膜109の膜厚が、応力印加用絶縁膜112によって電流特性が向上するMOS型トランジスタ素子の側壁絶縁膜109の膜厚より厚くなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、ゲート電極の側壁に側壁絶縁膜(以下、適宜サイドウォールと称する)を、ゲート電極上に所定の属性の応力を有する応力印加用絶縁膜を備える半導体装置、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の微細化に伴い、CMOS(相補型MOSトランジスタ素子)のオン電流に対する要求が一段と厳しくなっており、従来の半導体装置の構造では、その要求に応えることが困難となってきている。そこで、高移動度材料の使用、Si基板の面方位性制御、及び、歪み印加技術等に代表されるオン電流向上技術が提案されている。特に、歪み印加技術としては、ゲート電極の両サイドのソース・ドレインからの応力をチャネル部に印加する埋め込みSiGeソース・ドレイン技術や、高い引っ張り応力または圧縮応力を有する応力印加用絶縁膜(以下、適宜コンタクトエッチングストッパー膜と称する)をゲート電極上に形成しチャネル部に応力を印加する技術等が提案されている。
【0003】
ここで、図9は、高い引っ張り応力または圧縮応力を有する応力印加用絶縁膜をゲート電極上に形成しチャネル部に応力を印加する技術における半導体装置の構成を示す断面図である。この半導体装置は、シリコン基板501上のPMOS領域(N型ウェル)503内にPチャネル型MOSトランジスタ518が、NMOS領域(P型ウェル)504内にNチャネル型MOSトランジスタ519が形成されており、Pチャネル型MOSトランジスタ518及びNチャネル型MOSトランジスタ519は素子分離領域502を介して配置されている。MOS型トランジスタ素子は、シリコン基板501上にゲート酸化膜505を介して形成されるゲート電極506、ゲート電極506の下部に形成されるチャネル部の両側に形成されるソース・ドレイン領域507、及び、ゲート電極506の側壁に酸化シリコン膜508を介して形成されるサイドウォール509を備えて構成される。この半導体装置は、更に、2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように形成されたコンタクトエッチングストッパー膜513、MOS型トランジスタ素子の上部に形成される層間絶縁膜514、ゲート電極506またはソース・ドレイン領域507とメタル配線516を接続するコンタクトホール515、及び、パッシベーション膜517を備えて構成されている。
【0004】
この半導体装置において、応力印加用絶縁膜として引っ張り応力を有する窒化シリコン膜をゲート電極上に形成した場合には、引っ張り応力がゲート電極を介してチャネル部に印加されるため、Nチャネル型MOSトランジスタのオン電流が向上する。これは、ゲート電極上に形成される窒化シリコン膜の引っ張り応力がNチャネル型MOSトランジスタのチャネル部のSi格子間距離を広げ、電子の移動度を向上させるためである。しかし、Pチャネル型MOSトランジスタのオン電流は低下する。これは、ゲート電極上に形成される絶縁膜の引っ張り応力がPチャネル型MOSトランジスタのチャネル部のSi格子間距離を広げ、正孔の移動度を低下させるためである。
【0005】
これに対し、応力印加用絶縁膜として圧縮応力を有する窒化シリコン膜をゲート電極上に形成した場合には、圧縮応力がゲート電極を介してチャネル部に印加されるため、Pチャネル型MOSトランジスタのオン電流が向上する。これは、ゲート電極上に形成される窒化シリコン膜の圧縮応力がPチャネル型MOSトランジスタのチャネル部のSi格子間距離を縮め、正孔の移動度を向上させるためである。しかし、Nチャネル型MOSトランジスタのオン電流は低下する。これは、ゲート電極上に形成される絶縁膜の圧縮応力がNチャネル型MOSトランジスタのチャネル部のSi格子間距離を縮め、電子の移動度を低下させるためである。
【0006】
そこで、Nチャネル型MOSトランジスタ及びPチャネル型MOSトランジスタ両方のオン電流を向上させるための技術として、Nチャネル型MOSトランジスタのゲート電極の上面には引っ張り応力を有する絶縁膜を形成し、Pチャネル型MOSトランジスタのゲート電極の上面には圧縮応力を有する絶縁膜を形成する技術がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
【非特許文献1】S.Pidin他、“A novel strain enhanced CMOS architecture using selectively deposited high tensile and high compressive silicon nitride films”、IEDM、213〜216頁、2004年12月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献1に記載の技術では、2種類のMOS型トランジスタ素子の夫々に、電流特性を向上させる応力を有する応力印加用絶縁膜を形成するため、半導体装置の製造に係る工程数が多く複雑となる。更に、Nチャネル型MOSトランジスタを形成するNMOS領域と、Pチャネル型MOSトランジスタを形成するPMOS領域の境界部分での加工精度が必要となり量産に適していない。
【0009】
これに対し、一種類の応力印加用絶縁膜のみを形成する場合には、製造工程の多数化及び複雑化を防止できるが、2種類のMOS型トランジスタ素子の何れのチャネル部にも同じ応力が印加されることとなるため、上述したように、Nチャネル型MOSトランジスタ及びPチャネル型MOSトランジスタの何れか一方のMOS型トランジスタ素子のオン電流しか向上させることが出来ず、且つ、他方のMOS型トランジスタ素子のオン電流は低下することとなる。
【0010】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、MOS型トランジスタ素子のゲート電極上面に応力印加用絶縁膜を備える半導体装置において、製造工程を複雑化させることなく電流特性の向上若しくは電流特性の悪化防止を図ることのできる半導体装置を提供する点にある。また、該半導体装置の具体的な製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る半導体装置は、同一チップ内にPチャネル型MOSトランジスタとNチャネル型MOSトランジスタの2種類のMOS型トランジスタ素子が形成された半導体装置であって、半導体基板上の所定領域に形成される前記MOS型トランジスタ素子のゲート電極の上面に、引っ張り応力または圧縮応力の何れかの応力を有する応力印加用絶縁膜を有し、前記応力印加用絶縁膜によって電流特性が低下する前記MOS型トランジスタ素子のゲート電極の側壁に形成される側壁絶縁膜の膜厚が、前記応力印加用絶縁膜によって電流特性が向上する前記MOS型トランジスタ素子のゲート電極の側壁に形成される側壁絶縁膜の膜厚より厚くなるように設定されていることを第1の特徴とする。
【0012】
上記特徴の本発明に係る半導体装置は、前記応力印加用絶縁膜の応力が0.1GPa〜3.0GPaであることを第2の特徴とする。
【0013】
上記何れかの特徴の本発明に係る半導体装置は、前記応力印加用絶縁膜の膜厚が30nm〜100nmであることを第3の特徴とする。
【0014】
上記第1〜第3の何れかの特徴の本発明に係る半導体装置は、前記応力は引っ張り応力であり、前記Pチャネル型MOSトランジスタの側壁絶縁膜の膜厚が、前記Nチャネル型MOSトランジスタの側壁絶縁膜の膜厚より厚くなるように設定されていることを第4の特徴とする。
【0015】
上記第1〜第3の何れかの特徴の本発明に係る半導体装置は、前記応力は圧縮応力であり、前記Nチャネル型MOSトランジスタの側壁絶縁膜の膜厚が、前記Pチャネル型MOSトランジスタの側壁絶縁膜の膜厚より厚くなるように設定されていることを第5の特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係る半導体装置の製造方法は、上記第4の特徴の半導体装置を製造するための方法であって、前記所定領域内の前記2種類のMOS型トランジスタ素子のゲート電極の側壁に第1側壁絶縁膜を形成した後、前記所定領域内に位置する前記Nチャネル型MOSトランジスタを形成するNMOS領域が開口されたレジストパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、前記レジストをマスクとして、前記NMOS領域内の前記第1側壁絶縁膜をケミカルエッチングにより除去する第1側壁絶縁膜除去工程と、前記レジストを除去するレジスト除去工程と、前記所定領域内の全面に窒化シリコン膜を形成する窒化シリコン膜形成工程と、前記窒化シリコン膜を異方性エッチングし、前記所定領域内の前記Nチャネル型MOSトランジスタのゲート電極の側壁及び前記所定領域内の前記Pチャネル型MOSトランジスタの前記第1側壁絶縁膜の側壁に第2側壁絶縁膜を形成する第2側壁絶縁膜形成工程と、前記所定領域内の前記2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように、引っ張り応力を有する前記応力印加用絶縁膜を形成する応力印加用絶縁膜形成工程と、を順に実行することを第1の特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するための本発明に係る半導体装置の製造方法は、上記第4の特徴の半導体装置を製造するための方法であって、前記所定領域内の前記2種類のMOS型トランジスタ素子のゲート電極の側壁に側壁絶縁膜を形成した後、前記所定領域内に位置する前記Nチャネル型MOSトランジスタを形成するNMOS領域が開口されたレジストパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、前記レジストをマスクとして、前記NMOS領域の前記Nチャネル型MOSトランジスタの前記側壁絶縁膜の膜厚を薄くするように、前記側壁絶縁膜をケミカルエッチングする側壁絶縁膜成形工程と、前記レジストを除去するレジスト除去工程と、前記所定領域内の前記2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように、引っ張り応力を有する前記応力印加用絶縁膜を形成する応力印加用絶縁膜形成工程と、を順に実行することを第2の特徴とする。
【0018】
上記第1または第2の特徴の本発明に係る半導体装置の製造方法は、前記応力印加用絶縁膜形成工程において、前記応力印加用絶縁膜として窒化シリコン膜をプラズマCVDまたは熱CVDを用いて形成することを第3の特徴とする。
【0019】
上記目的を達成するための本発明に係る半導体装置の製造方法は、上記第5の特徴の半導体装置を製造するための方法であって、前記所定領域内の前記2種類のMOS型トランジスタ素子のゲート電極の側壁に第1側壁絶縁膜を形成した後、前記所定領域内に位置する前記Pチャネル型MOSトランジスタを形成するPMOS領域が開口されたレジストパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、前記レジストをマスクとして、前記PMOS領域内の前記第1側壁絶縁膜をケミカルエッチングにより除去する第1側壁絶縁膜除去工程と、前記レジストを除去するレジスト除去工程と、前記所定領域内の全面に窒化シリコン膜を形成する窒化シリコン膜形成工程と、前記窒化シリコン膜を異方性エッチングし、前記所定領域内の前記Pチャネル型MOSトランジスタのゲート電極の側壁及び前記所定領域内の前記Nチャネル型MOSトランジスタの前記第1側壁絶縁膜の側壁に第2側壁絶縁膜を形成する第2側壁絶縁膜形成工程と、前記所定領域内の前記2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように、圧縮応力を有する前記応力印加用絶縁膜を形成する応力印加用絶縁膜形成工程と、を順に実行することを第4の特徴とする。
【0020】
上記目的を達成するための本発明に係る半導体装置の製造方法は、上記第5の特徴の半導体装置を製造するための方法であって、前記所定領域内の前記2種類のMOS型トランジスタ素子のゲート電極の側壁に側壁絶縁膜を形成した後、前記所定領域内に位置する前記Pチャネル型MOSトランジスタを形成するPMOS領域が開口されたレジストパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、前記レジストをマスクとして、前記PMOS領域の前記Pチャネル型MOSトランジスタの前記側壁絶縁膜の膜厚を薄くするように、前記側壁絶縁膜をケミカルエッチングする側壁絶縁膜成形工程と、前記レジストを除去するレジスト除去工程と、前記所定領域内の前記2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように、圧縮応力を有する前記応力印加用絶縁膜を形成する応力印加用絶縁膜形成工程と、を順に実行することを第5の特徴とする。
【0021】
上記第4または第5の特徴の本発明に係る半導体装置の製造方法は、前記応力印加用絶縁膜形成工程において、前記応力印加用絶縁膜として窒化シリコン膜をプラズマCVDを用いて形成することを第6の特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、2種類のMOS型トランジスタ素子を覆う応力印加用絶縁膜の持つ応力が、引っ張り応力であるか圧縮応力であるかに応じて、電流特性が低下するMOS型トランジスタ素子の側壁絶縁膜(サイドウォール)の膜厚が、電流特性が向上するMOS型トランジスタ素子の側壁絶縁膜の膜厚より厚くなるように各種類のMOS型トランジスタ素子のサイドウォールの膜厚を調整する。即ち、従来技術に係る半導体装置では各種類のMOS型トランジスタ素子のサイドウォールの膜厚が同じ(図5においてi=j)であるのに対し、本発明に係る半導体装置では、電流特性が低下するMOS型トランジスタ素子の側壁絶縁膜の膜厚を厚くすることで、応力のチャネル部への伝達を減衰させ、電力特性の低下を抑制することができる。若しくは、本発明に係る半導体装置では、電流特性が向上するMOS型トランジスタ素子の側壁絶縁膜の膜厚を薄くすることで、応力をチャネル部へ良好に伝達させて、電力特性の向上を図ることができる。
【0023】
具体的には、応力印加用絶縁膜(コンタクトエッチングストッパー膜)が引っ張り応力を有する場合には、Nチャネル型MOSトランジスタのサイドウォールよりPチャネル型MOSトランジスタのサイドウォールの膜厚が厚くなるように調整する。これによって、Pチャネル型MOSトランジスタのチャネル部に印加される応力を小さくすることができ、引っ張り応力によるPチャネル型MOSトランジスタの電流特性(オン電流)の低下を抑制できる。若しくは、Pチャネル型MOSトランジスタのチャネル部に印加される応力を抑えた状態でNチャネル型MOSトランジスタのチャネル部に印加される応力を有効に作用させることができ、Nチャネル型MOSトランジスタのオン電流を向上させることができる。
【0024】
また、応力印加用絶縁膜が圧縮応力を有する場合には、Pチャネル型MOSトランジスタのサイドウォールよりNチャネル型MOSトランジスタのサイドウォールの膜厚が厚くなるように調整する。これによって、Nチャネル型MOSトランジスタのチャネル部に印加される応力を小さくすることができ、圧縮応力によるNチャネル型MOSトランジスタのオン電流の低下を抑制できる。若しくは、Nチャネル型MOSトランジスタのチャネル部に印加される応力を抑えた状態でPチャネル型MOSトランジスタのチャネル部に印加される応力を有効に作用させることができ、Pチャネル型MOSトランジスタのオン電流を向上させることができる。
【0025】
応力印加用絶縁膜の応力は、0.1GPaより小さい場合にはチャネル部に印加される応力が小さくMOS型トランジスタ素子の電流特性の向上に寄与せず、3.0GPaより大きい場合には、応力印加用絶縁膜自体に欠陥が生じてチャネル部に応力が印加出来ない等の問題が発生する。従って、本発明の如く、応力印加用絶縁膜の応力が0.1GPa〜3.0GPaとなるように半導体装置を構成することにより、MOS型トランジスタ素子の電流特性をより確実に向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る半導体装置及びその製造方法(以下、適宜「本発明装置」、「本発明方法」と略称する)の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、製造工程中で詳述しない部分については公知の手段を用いる。以下の実施例に示す材料、薬品、割合、操作条件等は、本発明から逸脱しない限り適宜変更が可能であり、本発明の範囲は、以下の実施例に制限されるものではない。
【0027】
本発明装置は、同一チップ内にPチャネル型MOSトランジスタとNチャネル型MOSトランジスタの2種類のMOS型トランジスタ素子が形成された半導体装置であって、半導体基板上の所定領域に形成されるMOS型トランジスタ素子のゲート電極の上面に、引っ張り応力または圧縮応力の何れかの応力を有する応力印加用絶縁膜を有し、応力印加用絶縁膜によって電流特性が低下するMOS型トランジスタ素子のゲート電極の側壁に形成される側壁絶縁膜の膜厚が、応力印加用絶縁膜によって電流特性が向上するMOS型トランジスタ素子のゲート電極の側壁に形成される側壁絶縁膜の膜厚より厚くなるように構成されている。
【0028】
〈第1実施形態〉
本発明装置の第1実施形態について図1及び図2を基に説明する。
【0029】
先ず、本実施形態の本発明装置の構成について図1を基に説明する。ここで、図1は、本実施形態における本発明装置の断面構造を模式的に示している。図1に示すように、本発明装置は、シリコン基板101上のPMOS領域(N型ウェル)103内にPチャネル型MOSトランジスタ118が、NMOS領域(P型ウェル)104内にNチャネル型MOSトランジスタ119が形成されており、Pチャネル型MOSトランジスタ118及びNチャネル型MOSトランジスタ119は素子分離領域102を介して配置されている。MOS型トランジスタ素子は、シリコン基板101上にゲート酸化膜105を介して形成されるゲート電極106、ゲート電極106の下部に形成されるチャネル部の両側に形成されるソース・ドレイン領域107、及び、ゲート電極106の側壁に酸化シリコン膜108を介して形成される側壁絶縁膜(サイドウォール109及びサイドウォール111a)を備えて構成される。本発明装置は、更に、2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように形成されたコンタクトエッチングストッパー膜112(応力印加用絶縁膜に相当)、MOS型トランジスタ素子の上部に形成される層間絶縁膜114、ゲート電極106またはソース・ドレイン領域107とメタル配線116を接続するコンタクトホール115、及び、パッシベーション膜117を備えて構成される。
【0030】
本実施形態では、コンタクトエッチングストッパー膜112が引っ張り応力を有する窒化シリコン膜である場合を想定して説明する。更に、本実施形態の本発明装置は、Nチャネル型MOSトランジスタ119の側壁絶縁膜(サイドウォール111a)の膜厚aより、Pチャネル型MOSトランジスタ118の側壁絶縁膜(サイドウォール109及びサイドウォール111a)の膜厚bの方が厚く(a<b)なるように設定されている。
【0031】
次に、本実施形態の本発明方法について図2を基に説明する。ここで、図2は、本実施形態における本発明方法の各工程における本発明装置の断面構造を模式的に示している。
【0032】
先ず、本発明方法実行前に、図2(A)に示すように、周知のCMOSトランジスタの製造方法により、シリコン基板101上の所定領域内の2種類のMOS型トランジスタ素子のゲート電極106の側壁にサイドウォール109(第1側壁絶縁膜に相当)を形成する工程までを実行する。ここでのサイドウォール109の形成は、例えば、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)により、SiHClガスとNHガスを用い、温度条件を700〜800℃に設定して、膜厚が50nmとなるように窒化シリコン膜を堆積させる。更に、堆積させた窒化シリコン膜を、マグネトロンRIE(Reactive Ion Etching) 装置により、Cガス、Arガス及びOガスを用いて異方性エッチングし、サイドウォール109を形成する。尚、CガスのXは1〜2の整数、Yは0〜3の整数、Zは1〜8の整数である。
【0033】
続いて、図2(B)に示すように、NMOS領域104が開口されたレジストパターンを有するレジスト110を形成し(レジスト形成工程に相当)、レジスト110をマスクとして、NMOS領域104内のサイドウォール109をケミカルエッチングにより除去する(第1側壁絶縁膜除去工程に相当)。より具体的には、レジスト110の形成後、CガスとNガスを用いてケミカルドライエッチングを行い、NMOS領域104内のサイドウォール109のみを除去する。
【0034】
引き続き、図2(C)に示すように、アッシング装置によりレジストを除去し(レジスト除去工程に相当)、所定領域内の全面に窒化シリコン膜を形成する(窒化シリコン膜形成工程)。具体的には、レジスト除去後、例えば、LPCVDにより、SiHClガスとNHガスを用い、温度条件を700〜800℃に設定して、膜厚が50nmとなるように窒化シリコン膜111を堆積させる。
【0035】
引き続き、図2(D)に示すように、窒化シリコン膜111を異方性エッチングし、所定領域内のNチャネル型MOSトランジスタ119のゲート電極106の側壁及び所定領域内のPチャネル型MOSトランジスタのサイドウォール109の側壁にサイドウォール111a(第2側壁絶縁膜に相当)を形成する(第2側壁絶縁膜形成工程に相当)。より具体的には、窒化シリコン膜111を、マグネトロンRIE装置により、CガスとArガスとOガスを用いて異方性エッチングし、サイドウォール111aを形成する。尚、Wは1〜6の整数である。この結果、Pチャネル型MOSトランジスタ118の側壁絶縁膜の膜厚は、サイドウォール109及びサイドウォール111aを合わせた厚さとなり、Nチャネル型MOSトランジスタ119の側壁絶縁膜の膜厚は、サイドウォール111aの厚さとなる。従って、Nチャネル型MOSトランジスタ119の側壁絶縁膜の膜厚より、Pチャネル型MOSトランジスタ118の側壁絶縁膜の膜厚の方が厚くなる。
【0036】
引き続き、図2(E)に示すように、所定領域内の2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように、引っ張り応力を有するコンタクトエッチングストッパー膜112を形成する(応力印加用絶縁膜形成工程に相当)。具体的には、後の工程で形成されるシリコン酸化膜系の層間絶縁膜114の圧縮応力を緩和する為、例えば、LPCVD(熱CVDに相当)により、HCD(Hexa‐chloro‐disilane)ガスとNHガスを用い、温度条件を400〜500℃に設定して、膜厚が50nmとなるように窒化シリコン膜を堆積させ、コンタクトエッチングストッパー膜112を形成する。この場合、コンタクトエッチングストッパー膜112は、0.1GPa〜1.5GPaの引っ張り応力を有する。尚、コンタクトエッチングストッパー膜112の膜厚は、プロセスやトランジスタサイズ等に応じて、30nm〜100nmの範囲で適切に設定する。
【0037】
本発明方法の実行後、周知のCMOSトランジスタの製造方法により、層間絶縁膜114、コンタクトホール115、メタル配線116、及び、パッシベーション膜117の形成を行う。このように、引っ張り応力を有する応力印加用絶縁膜112により電流特性が低下するPチャネル型MOSトランジスタ118の側壁絶縁膜の膜厚を厚くすることで、Nチャネル型MOSトランジスタ119の電流特性を応力印加用絶縁膜112により向上させつつ、Pチャネル型MOSトランジスタ118において、応力の伝達をおさえ、電流特性の低下を抑制することができる。
【0038】
〈第2実施形態〉
本発明装置の第2実施形態について図3及び図4を基に説明する。本実施形態では、上記第1実施形態とは、各MOS型トランジスタ素子のサイドウォールの形成方法が異なる場合について説明する。
【0039】
先ず、本実施形態の本発明装置の構成について説明する。ここで、図3は、本実施形態における本発明装置の断面構造を模式的に示している。図3に示すように、本発明装置は、シリコン基板201上のPMOS領域(N型ウェル)203内にPチャネル型MOSトランジスタ218が、NMOS領域(P型ウェル)204内にNチャネル型MOSトランジスタ219が形成されており、Pチャネル型MOSトランジスタ218及びNチャネル型MOSトランジスタ219は素子分離領域202を介して配置されている。MOS型トランジスタ素子は、シリコン基板201上にゲート酸化膜205を介して形成されるゲート電極206、ゲート電極206の下部に形成されるチャネル部の両側に形成されるソース・ドレイン領域207、及び、ゲート電極206の側壁に酸化シリコン膜208を介して形成される側壁絶縁膜(サイドウォール209またはサイドウォール209’)を備えて構成される。本発明装置は、更に、2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように形成されたコンタクトエッチングストッパー膜212(応力印加用絶縁膜に相当)、MOS型トランジスタ素子の上部に形成される層間絶縁膜214、ゲート電極206またはソース・ドレイン領域207とメタル配線216を接続するコンタクトホール215、及び、パッシベーション膜217を備えて構成される。
【0040】
本実施形態の本発明装置は、コンタクトエッチングストッパー膜212が引っ張り応力を有する窒化シリコン膜であり、Nチャネル型MOSトランジスタ219の側壁絶縁膜(サイドウォール209’)の膜厚cより、Pチャネル型MOSトランジスタ218の側壁絶縁膜(サイドウォール209)の膜厚dの方が厚く(c<d)なるように設定されている。
【0041】
次に、本実施形態の本発明方法について図4を基に説明する。ここで、図4は、本実施形態における本発明方法の各工程における本発明装置の断面構造を模式的に示している。
【0042】
先ず、本発明方法実行前に、図4(A)に示すように、周知のCMOSトランジスタの製造方法により、所定領域内の2種類のMOS型トランジスタ素子のゲート電極206の側壁にサイドウォール209を形成する工程までを実行する。尚、サイドウォール209の形成方法は、上記第1実施形態におけるサイドウォール109の形成方法と同じである。
【0043】
続いて、図4(B)に示すように、NMOS領域204が開口されたレジストパターンを有するレジスト210を形成し(レジスト形成工程に相当)、レジスト210をマスクとして、NMOS領域204内のサイドウォール209の膜厚を薄くするように、サイドウォール209をケミカルエッチングする(側壁絶縁膜成形工程に相当)。より具体的には、レジスト210の形成後、CガスとNガスを用いてケミカルドライエッチングを行い、NMOS領域204内のサイドウォール209を25nmエッチングし、サイドウォール209’を形成する。この結果、Pチャネル型MOSトランジスタ218の側壁絶縁膜の膜厚はサイドウォール209の厚さとなり、Nチャネル型MOSトランジスタ219の側壁絶縁膜の膜厚はサイドウォール209’の厚さとなる。サイドウォール209の膜厚はサイドウォール209’の膜厚より厚いことから、Nチャネル型MOSトランジスタ219の側壁絶縁膜の膜厚より、Pチャネル型MOSトランジスタ218の側壁絶縁膜の膜厚の方が厚くなる。
【0044】
引き続き、図4(C)に示すように、レジスト210を除去し(レジスト除去工程に相当)、所定領域内の2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように、引っ張り応力を有するコンタクトエッチングストッパー膜212を形成する(応力印加用絶縁膜形成工程に相当)。具体的には、後の工程で形成されるシリコン酸化膜系の層間絶縁膜214の圧縮応力を緩和する為、例えば、LPCVDにより、HCDガスとNHガスを用いて、温度条件を400〜500℃に設定して、膜厚が50nmとなるように窒化シリコン膜を堆積させ、コンタクトエッチングストッパー膜212を形成する。この場合、コンタクトエッチングストッパー膜212は、0.1GPa〜1.5GPaの引っ張り応力を有する。尚、コンタクトエッチングストッパー膜212の膜厚は、プロセスやトランジスタサイズ等に応じて、30nm〜100nmの範囲で適切に設定する。
【0045】
本発明方法の実行後、周知のCMOSトランジスタの製造方法により、層間絶縁膜214、コンタクト215、メタル配線216、及び、パッシベーション膜217の形成を行う。このように、Nチャネル型MOSトランジスタ219の側壁絶縁膜を薄くすることで、応力の伝達を良好にし、NチャネルMOSトランジスタ219の電流特性の向上を図ることができる。
【0046】
〈第3実施形態〉
本発明装置の第3実施形態について図5及び図6を基に説明する。尚、上記第1及び第2実施形態では応力印加用絶縁膜の応力が引っ張り応力である場合について説明したが、本実施形態では、応力印加用絶縁膜の応力が圧縮応力である場合について説明する。
【0047】
先ず、本実施形態の本発明装置の構成について図5を基に説明する。ここで、図5は、本実施形態における本発明装置の断面構造を模式的に示している。図5に示すように、本発明装置は、シリコン基板301上のPMOS領域(N型ウェル)303内にPチャネル型MOSトランジスタ318が、NMOS領域(P型ウェル)304内にNチャネル型MOSトランジスタ319が形成されており、Pチャネル型MOSトランジスタ318及びNチャネル型MOSトランジスタ319は素子分離領域302を介して配置されている。MOS型トランジスタ素子は、シリコン基板301上にゲート酸化膜305を介して形成されるゲート電極306、ゲート電極306の下部に形成されるチャネル部の両側に形成されるソース・ドレイン領域307、及び、ゲート電極306の側壁に酸化シリコン膜308を介して形成される側壁絶縁膜(サイドウォール309及びサイドウォール311a)を備えて構成される。本発明装置は、更に、2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように形成されたコンタクトエッチングストッパー膜313(応力印加用絶縁膜に相当)、MOS型トランジスタ素子の上部に形成される層間絶縁膜314、ゲート電極306またはソース・ドレイン領域307とメタル配線316を接続するコンタクトホール315、及び、パッシベーション膜317を備えて構成される。
【0048】
本実施形態の本発明装置は、コンタクトエッチングストッパー膜313が圧縮応力を有する窒化シリコン膜であり、Pチャネル型MOSトランジスタ318の側壁絶縁膜(サイドウォール311a)の膜厚fより、Nチャネル型MOSトランジスタ319の側壁絶縁膜(サイドウォール309及びサイドウォール311a)の膜厚eの方が厚く(f<e)なるように設定されている。
【0049】
次に、本実施形態の本発明方法について図6を基に説明する。ここで、図6は、本実施形態における本発明方法の各工程における本発明装置の断面構造を模式的に示している。
【0050】
先ず、本発明方法実行前に、図6(A)に示すように、周知のCMOSトランジスタの製造方法により、シリコン基板301上の所定領域内の2種類のMOS型トランジスタ素子のゲート電極306の側壁にサイドウォール309(第1側壁絶縁膜に相当)を形成する工程までを実行する。尚、サイドウォール309の形成方法は、上記第1及び第2実施形態におけるサイドウォール109及びサイドウォール209の形成方法と同じである。
【0051】
続いて、図6(B)に示すように、PMOS領域303が開口されたレジストパターンを有するレジスト310を形成し(レジスト形成工程に相当)、レジスト310をマスクとして、PMOS領域303内のサイドウォール309をケミカルエッチングにより除去する(第1側壁絶縁膜除去工程に相当)。より具体的には、レジスト310の形成後、CガスとNガスを用いてケミカルドライエッチングを行い、PMOS領域303内のサイドウォール309のみを除去する。
【0052】
引き続き、図6(C)に示すように、アッシング装置によりレジストを除去し(レジスト除去工程に相当)、所定領域内の全面に窒化シリコン膜を形成する(窒化シリコン膜形成工程に相当)。具体的には、レジスト除去後、例えば、LPCVDにより、SiHClガスとNHガスを用い、温度条件を700〜800℃に設定して、膜厚が50nmとなるように窒化シリコン膜311を堆積させる。
【0053】
引き続き、図6(D)に示すように、窒化シリコン膜311を異方性エッチングし、所定領域内のPチャネル型MOSトランジスタ318のゲート電極306の側壁及び所定領域内のNチャネル型MOSトランジスタ319のサイドウォール309の側壁にサイドウォール311aを形成する(第2側壁絶縁膜形成工程に相当)。より具体的には、窒化シリコン膜311を、マグネトロンRIE装置により、CガスとArガスとOガスを用いて異方性エッチングし、サイドウォール311aを形成する。この結果、Pチャネル型MOSトランジスタ318の側壁絶縁膜の膜厚は、サイドウォール311aの厚さとなり、Nチャネル型MOSトランジスタ319の側壁絶縁膜の膜厚は、サイドウォール309及びサイドウォール311aを合わせた厚さとなる。従って、Pチャネル型MOSトランジスタ318の側壁絶縁膜の膜厚より、Nチャネル型MOSトランジスタ319の側壁絶縁膜の膜厚の方が厚くなる。
【0054】
引き続き、図6(E)に示すように、所定領域内の2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように、圧縮応力を有するコンタクトエッチングストッパー膜313を形成する(応力印加用絶縁膜形成工程に相当)。具体的には、コンタクトエッチングストッパー膜313は、後の工程で形成されるシリコン酸化膜系の層間絶縁膜314の圧縮応力を緩和する為、例えば、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)により、SiHガスとNHガスを用い、温度条件を400〜500℃に設定して、膜厚が50nmとなるように窒化シリコン膜を堆積させて形成する。この場合、コンタクトエッチングストッパー膜313は0.1GPa〜3.0GPaの圧縮応力を有する。尚、コンタクトエッチングストッパー膜313の膜厚は、プロセスやトランジスタサイズ等に応じて、30nm〜100nmの範囲で適切に設定する。
【0055】
尚、上記第1及び第2実施形態で使用するLPCVDでは、引っ張り応力を有する絶縁膜のみ形成可能であるが、本実施形態で使用するPECVDでは、条件によって、引っ張り応力を有する絶縁膜と圧縮応力を有する絶縁膜を形成可能である。これは、原理的には、LPCVD(熱LPCVD)では、形成される絶縁膜中に含まれる物質としてSi・Si‐H・N‐Hがあるが、熱反応で各物質の結合がなされているために、この各々の含有量の変更範囲が狭くなる。更に、気相反応のためSiが支配的に形成されることから、引っ張り応力を有する絶縁膜のみ形成可能となる。これに対し、PECVDでは、形成される絶縁膜中に含まれる物質としてSi・Si‐H・N‐Hがあるが、この各々の含有量はプラズマで結合しているので可変範囲が広い。更に、Siに限定されず任意のSi(X、Yは整数)を形成可能であることから、条件によって、引っ張り応力を有する絶縁膜及び圧縮応力を有する絶縁膜の両方が形成可能となるものである。
【0056】
本発明方法の実行後、周知のCMOSトランジスタの製造方法により、層間絶縁膜314、コンタクト315、メタル配線316、及び、パッシベーション膜317の形成を行う。このように、圧縮応力を有する応力印加用絶縁膜313により電流特性が低下するNチャネル型MOSトランジスタ319の側壁絶縁膜の膜厚を厚くすることで、Pチャネル型MOSトランジスタ318の電流特性を応力印加用絶縁膜313により向上させつつ、Nチャネル型MOSトランジスタ319において、応力の伝達をおさえ、電流特性の低下を抑制することができる。
【0057】
〈第4実施形態〉
本発明装置の第4実施形態について図7及び図8を基に説明する。本実施形態では、上記第3実施形態とは、各MOS型トランジスタ素子のサイドウォールの形成方法が異なる場合について説明する。
【0058】
先ず、本実施形態の本発明装置の構成について説明する。ここで、図7は、本実施形態における本発明装置の断面構造を模式的に示している。図7に示すように、本発明装置は、シリコン基板401上のPMOS領域(N型ウェル)403内にPチャネル型MOSトランジスタ418が、NMOS領域(P型ウェル)404内にNチャネル型MOSトランジスタ419が形成されており、Pチャネル型MOSトランジスタ418及びNチャネル型MOSトランジスタ419は素子分離領域402を介して配置されている。MOS型トランジスタ素子は、シリコン基板401上にゲート酸化膜405を介して形成されるゲート電極406、ゲート電極406の下部に形成されるチャネル部の両側に形成されるソース・ドレイン領域407、及び、ゲート電極406の側壁に酸化シリコン膜408を介して形成される側壁絶縁膜(サイドウォール409またはサイドウォール409’)を備えて構成される。本発明装置は、更に、2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように形成されたコンタクトエッチングストッパー膜413(応力印加用絶縁膜に相当)、MOS型トランジスタ素子の上部に形成される層間絶縁膜414、ゲート電極406またはソース・ドレイン領域407とメタル配線416を接続するコンタクトホール415、及び、パッシベーション膜417を備えて構成される。
【0059】
本実施形態の本発明装置は、コンタクトエッチングストッパー膜413が圧縮応力を有する窒化シリコン膜であり、Pチャネル型MOSトランジスタ418の側壁絶縁膜(サイドウォール409’)の膜厚hより、Nチャネル型MOSトランジスタ419の側壁絶縁膜(サイドウォール409)の膜厚gの方が厚く(h<g)なるように設定されている。
【0060】
次に、本実施形態の本発明方法について図8を基に説明する。ここで、図8は、本実施形態における本発明方法の各工程における本発明装置の断面構造を模式的に示している。
【0061】
先ず、本発明方法実行前に、図8(A)に示すように、周知のCMOSトランジスタの製造方法により、所定領域内の2種類のMOS型トランジスタ素子のゲート電極406の側壁にサイドウォール409を形成する工程までを実行する。尚、サイドウォール409の形成方法は、上記第1〜第3実施形態におけるサイドウォール109、209、309の形成方法と同じである。
【0062】
続いて、図8(B)に示すように、PMOS領域403が開口されたレジストパターンを有するレジスト410を形成し(レジスト形成工程に相当)、レジスト410をマスクとして、PMOS領域403内のサイドウォール409の膜厚を薄くするように、サイドウォール409をケミカルエッチングする(側壁絶縁膜成形工程に相当)。より具体的には、レジスト410の形成後、CガスとNガスを用いてケミカルドライエッチングを行い、NMOS領域404内のサイドウォール409を25nmエッチングし、サイドウォール409’を形成する。この結果、Pチャネル型MOSトランジスタ418の側壁絶縁膜の膜厚はサイドウォール409’の厚さとなり、Nチャネル型MOSトランジスタ419の側壁絶縁膜の膜厚はサイドウォール409の厚さとなる。サイドウォール409の膜厚はサイドウォール409’の膜厚より厚いことから、Pチャネル型MOSトランジスタ418の側壁絶縁膜の膜厚より、Nチャネル型MOSトランジスタ419の側壁絶縁膜の膜厚の方が厚くなる。
【0063】
引き続き、図8(C)に示すように、レジスト410を除去し(レジスト除去工程に相当)、所定領域内の2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように、圧縮応力を有するコンタクトエッチングストッパー膜413を形成する(応力印加用絶縁膜形成工程に相当)。具体的には、後の工程で形成されるシリコン酸化膜系の層間絶縁膜414の圧縮応力を緩和する為、例えば、PECVDにより、SiHガスとNHガスを用いて、温度条件を400〜500℃に設定して、膜厚が50nmとなるように窒化シリコン膜を堆積させ、コンタクトエッチングストッパー膜413を形成する。この場合、コンタクトエッチングストッパー膜413は、0.1GPa〜3.0GPaの圧縮応力を有する。尚、コンタクトエッチングストッパー膜413の膜厚は、プロセスやトランジスタサイズ等に応じて、30nm〜100nmの範囲で適切に設定する。
【0064】
本発明の実行後、周知のCMOSトランジスタの製造方法により、層間絶縁膜414、コンタクト415、メタル配線形成416、及び、パッシベーション膜417の形成を行う。このように、Pチャネル型MOSトランジスタ418の側壁絶縁膜を薄くすることで、応力の伝達を良好にし、PチャネルMOSトランジスタ418の電流特性の向上を図ることができる。
【0065】
〈別実施形態〉
〈1〉上記第1及び第2実施形態では、引っ張り応力を有する応力印加用絶縁膜としてのコンタクトエッチングストッパー膜112及び212をLPCVDで形成したがこれに限るものではない。
【0066】
例えば、PECVDにより、SiHガスとNHガスを用い、温度条件を400〜500℃に設定して、膜厚が50nmとなるように窒化シリコン膜を堆積させて形成してもよい。この場合、コンタクトエッチングストッパー膜112及び212は0.1GPa〜1.5GPaの引っ張り応力を有する。
【0067】
また、例えば、PECVDにより、SiHガスとNHガスを用い、温度条件を400〜500℃に設定して窒化シリコン膜を堆積させた後に、UV照射を行い、温度条件を300〜400℃に設定して改質処理を行ってもよい。この場合、コンタクトエッチングストッパー膜112及び212は0.1GPa〜3.0GPaの引っ張り応力を有する。
【0068】
〈2〉上記各実施形態では、第1及び第3実施形態において電流特性の低下を防止または低減するために電流特性が低下するMOS型トランジスタ素子の側壁絶縁膜を厚くする場合について、第2及び第4実施形態において電流特性をより向上させるために電流特性が向上するMOS型トランジスタ素子の側壁絶縁膜を薄くする場合について説明したが、第1及び第2実施形態を組み合わせる、若しくは、第3及び第4実施形態を組み合わせて実行しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る半導体装置の第1実施形態における概略構成を示す断面図
【図2】本発明に係る半導体装置の製造方法における第1実施形態の各工程における半導体装置の断面を示す工程図
【図3】本発明に係る半導体装置の第2実施形態における概略構成を示す断面図
【図4】本発明に係る半導体装置の製造方法における第2実施形態の各工程における半導体装置の断面を示す工程図
【図5】本発明に係る半導体装置の第3実施形態における概略構成を示す断面図
【図6】本発明に係る半導体装置の製造方法における第3実施形態の各工程における半導体装置の断面を示す工程図
【図7】本発明に係る半導体装置の第4実施形態における概略構成を示す断面図
【図8】本発明に係る半導体装置の製造方法における第4実施形態の各工程における半導体装置の断面を示す工程図
【図9】従来技術に係る半導体装置の概略構成を示す断面図
【符号の説明】
【0070】
101、201、301、401、501 シリコン基板
102、202、302、402、502 素子分離領域
103、203、303、403、503 PMOS領域
104、204、304、404、504 NMOS領域
105、205、305、405、505 ゲート酸化膜
106、206、306、406、506 ゲート電極
107、207、307、407、507 ソース・ドレイン領域
108、208、308、408、508 酸化シリコン膜
109、209、309、409、509 サイドウォール
110、210、310、410、510 レジスト
111、311 窒化シリコン膜
111a、311a サイドウォール
112、212 引っ張り応力印加用絶縁膜
313、413 圧縮応力印加用絶縁膜
512 応力印加用絶縁膜
114、214、314、414、514 層間絶縁膜
115、215、315、415、515 コンタクトホール
116、216、316、416、516 メタル配線
117、217、317、417、517 パッシベーション膜
118、218、318、418、518 Pチャネル型MOSトランジスタ
119、219、319、419、519 Nチャネル型MOSトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一チップ内にPチャネル型MOSトランジスタとNチャネル型MOSトランジスタの2種類のMOS型トランジスタ素子が形成された半導体装置であって、
半導体基板上の所定領域に形成される前記MOS型トランジスタ素子のゲート電極の上面に、引っ張り応力または圧縮応力の何れかの応力を有する応力印加用絶縁膜を有し、
前記応力印加用絶縁膜によって電流特性が低下する前記MOS型トランジスタ素子のゲート電極の側壁に形成される側壁絶縁膜の膜厚が、前記応力印加用絶縁膜によって電流特性が向上する前記MOS型トランジスタ素子のゲート電極の側壁に形成される側壁絶縁膜の膜厚より厚くなるように設定されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記応力印加用絶縁膜の応力が0.1GPa〜3.0GPaであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記応力印加用絶縁膜の膜厚が30nm〜100nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記応力は引っ張り応力であり、前記Pチャネル型MOSトランジスタの側壁絶縁膜の膜厚が、前記Nチャネル型MOSトランジスタの側壁絶縁膜の膜厚より厚くなるように設定されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記応力は圧縮応力であり、前記Nチャネル型MOSトランジスタの側壁絶縁膜の膜厚が、前記Pチャネル型MOSトランジスタの側壁絶縁膜の膜厚より厚くなるように設定されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
請求項4に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記所定領域内の前記2種類のMOS型トランジスタ素子のゲート電極の側壁に第1側壁絶縁膜を形成した後、前記所定領域内に位置する前記Nチャネル型MOSトランジスタを形成するNMOS領域が開口されたレジストパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、
前記レジストをマスクとして、前記NMOS領域内の前記第1側壁絶縁膜をケミカルエッチングにより除去する第1側壁絶縁膜除去工程と、
前記レジストを除去するレジスト除去工程と、
前記所定領域内の全面に窒化シリコン膜を形成する窒化シリコン膜形成工程と、
前記窒化シリコン膜を異方性エッチングし、前記所定領域内の前記Nチャネル型MOSトランジスタのゲート電極の側壁及び前記所定領域内の前記Pチャネル型MOSトランジスタの前記第1側壁絶縁膜の側壁に第2側壁絶縁膜を形成する第2側壁絶縁膜形成工程と、
前記所定領域内の前記2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように、引っ張り応力を有する前記応力印加用絶縁膜を形成する応力印加用絶縁膜形成工程と、を順に実行することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項4に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記所定領域内の前記2種類のMOS型トランジスタ素子のゲート電極の側壁に側壁絶縁膜を形成した後、前記所定領域内に位置する前記Nチャネル型MOSトランジスタを形成するNMOS領域が開口されたレジストパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、
前記レジストをマスクとして、前記NMOS領域の前記Nチャネル型MOSトランジスタの前記側壁絶縁膜の膜厚を薄くするように、前記側壁絶縁膜をケミカルエッチングする側壁絶縁膜成形工程と、
前記レジストを除去するレジスト除去工程と、
前記所定領域内の前記2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように、引っ張り応力を有する前記応力印加用絶縁膜を形成する応力印加用絶縁膜形成工程と、を順に実行することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記応力印加用絶縁膜形成工程において、前記応力印加用絶縁膜として窒化シリコン膜をプラズマCVDまたは熱CVDを用いて形成することを特徴とする請求項6または7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項5に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記所定領域内の前記2種類のMOS型トランジスタ素子のゲート電極の側壁に第1側壁絶縁膜を形成した後、前記所定領域内に位置する前記Pチャネル型MOSトランジスタを形成するPMOS領域が開口されたレジストパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、
前記レジストをマスクとして、前記PMOS領域内の前記第1側壁絶縁膜をケミカルエッチングにより除去する第1側壁絶縁膜除去工程と、
前記レジストを除去するレジスト除去工程と、
前記所定領域内の全面に窒化シリコン膜を形成する窒化シリコン膜形成工程と、
前記窒化シリコン膜を異方性エッチングし、前記所定領域内の前記Pチャネル型MOSトランジスタのゲート電極の側壁及び前記所定領域内の前記Nチャネル型MOSトランジスタの前記第1側壁絶縁膜の側壁に第2側壁絶縁膜を形成する第2側壁絶縁膜形成工程と、
前記所定領域内の前記2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように、圧縮応力を有する前記応力印加用絶縁膜を形成する応力印加用絶縁膜形成工程と、を順に実行することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項5に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記所定領域内の前記2種類のMOS型トランジスタ素子のゲート電極の側壁に側壁絶縁膜を形成した後、前記所定領域内に位置する前記Pチャネル型MOSトランジスタを形成するPMOS領域が開口されたレジストパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、
前記レジストをマスクとして、前記PMOS領域の前記Pチャネル型MOSトランジスタの前記側壁絶縁膜の膜厚を薄くするように、前記側壁絶縁膜をケミカルエッチングする側壁絶縁膜成形工程と、
前記レジストを除去するレジスト除去工程と、
前記所定領域内の前記2種類のMOS型トランジスタ素子を覆うように、圧縮応力を有する前記応力印加用絶縁膜を形成する応力印加用絶縁膜形成工程と、を順に実行することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記応力印加用絶縁膜形成工程において、前記応力印加用絶縁膜として窒化シリコン膜をプラズマCVDを用いて形成することを特徴とする請求項9または10に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−130963(P2008−130963A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316870(P2006−316870)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】