説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】エレクトロマイグレーションの抑制が図られた半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体素子の形成された半導体基板と、半導体基板の上方に、水分を含み、凹部が形成された層間絶縁膜と、凹部の内面上に形成され、非晶質及び多結晶の一方の結晶性を有する第1のバリアメタル層と、第1のバリアメタル層上に形成され、非晶質及び多結晶の他方の結晶性を有する第2のバリアメタル層と、第2のバリアメタル層上に形成された銅配線と、銅配線を覆って前記層間絶縁膜上に形成された銅拡散防止絶縁膜と、銅配線と銅拡散防止絶縁膜との界面に形成された金属酸化物層とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、銅配線を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の銅多層配線において、エレクトロマイグレーションによる不良が問題となっている。エレクトロマイグレーションの一要因は、銅配線を覆う絶縁膜と銅配線との密着不足である。
【0003】
配線の微細化に伴い、信号遅延を抑制するため、層間絶縁膜に誘電率の低い低誘電率材料(いわゆるLow−k材料)が適用されている。空孔を有するポーラス構造とすることにより、絶縁膜の低誘電率化が図られるが、配線材料が絶縁膜に拡散しやすくなる。特に銅は、Si−Oを含む絶縁膜に拡散しやすい。
【0004】
このような拡散を防ぐため、銅配線の下地としてバリアメタル層が形成される(バリアメタル層について、例えば、特開2008−47675号公報、特開2007−251164号公報等参照)。バリアメタル層として、一般には、Ta、Ti、TaN、TiN等が用いられているが、これらは銅よりも抵抗が高い。銅の比抵抗が1.7×10−6Ω・cmであるのに対し、例えばTa、Tiの比抵抗はそれぞれ15×10−6Ω・cm、80×10−6Ω・cmである。
【0005】
配線の微細化が進み、配線に占めるバリアメタル層の割合が高くなると、配線全体の抵抗が上昇する。なお、ITRS2006が示すテクノロジーロードマップによれば、hp32nm世代(配線ピッチ64nm)の配線の比抵抗は4.83×10−6Ω・cmとされている。
【0006】
【特許文献1】特開2008−47675号公報
【特許文献2】特開2007−251164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、エレクトロマイグレーションの抑制が図られた半導体装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、半導体素子の形成された半導体基板と、前記半導体基板の上方に、水分を含み、凹部が形成された層間絶縁膜と、前記凹部の内面上に形成され、非晶質及び多結晶の一方の結晶性を有する第1のバリアメタル層と、前記第1のバリアメタル層上に形成され、非晶質及び多結晶の他方の結晶性を有する第2のバリアメタル層と、前記第2のバリアメタル層上に形成された銅配線と、前記銅配線を覆って前記層間絶縁膜上に形成された銅拡散防止絶縁膜と、前記銅配線と前記銅拡散防止絶縁膜との界面に形成された金属酸化物層とを有する半導体装置が提供される。
【0009】
本発明の他の観点によれば、半導体基板に半導体素子を形成する工程と、前記半導体基板の上方に、水分を含む層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜に凹部を形成する工程と、前記凹部の内面上に、非晶質及び多結晶の一方の結晶性を有する第1のバリアメタル層を形成する工程と、前記第1のバリアメタル層上に、非晶質及び多結晶の他方の結晶性を有する第2のバリアメタル層を形成する工程と、前記第2のバリアメタル層上に、酸化物を形成する金属を含有する銅により、シード層を形成する工程と、前記シード層上に、銅層を形成する工程と、前記銅層を覆って前記層間絶縁膜上に、加熱状態で銅拡散防止絶縁膜を形成する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
銅配線と銅拡散防止絶縁膜との界面上に形成された金属酸化物層により、銅配線と銅拡散防止絶縁膜との密着性向上が図られ、エレクトロマイグレーション抑制が図られる。
【0011】
銅拡散防止絶縁膜の成膜時の熱により、層間絶縁膜から第1及び第2のバリアメタル層を通ってシード層に達した水分が、シード層の銅中に含有された金属と反応して金属酸化物を生成し、さらに、生成した金属酸化物が移動して銅配線と銅拡散防止絶縁膜との界面に到達することで、このような金属酸化物層を形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施例による半導体装置及びその製造方法について説明する。
【0013】
図1は、実施例の半導体装置を示す概略断面図である。シリコン基板である半導体基板1に、シャロートレンチアイソレーション(STI)による素子分離絶縁膜2が形成されている。素子分離絶縁膜2で囲まれた活性領域内に、MOSトランジスタ3が形成されている。MOSトランジスタ3は、ソース領域3S、ドレイン領域3D、及びゲート電極3Gを含んで形成される。MOSトランジスタ3は、公知の方法により形成することができる。
【0014】
MOSトランジスタ3を覆って、半導体基板1上に、例えば、リン珪酸ガラス(PSG)により厚さ1.5μmの層間絶縁膜5を化学気相堆積(CVD)で形成する。層間絶縁膜5に、ビアホール4S、4Dが形成され、ビアホール4S、4Dに、それぞれ導電性プラグ6S、6Dが充填されている。MOSトランジスタ3のソース領域3S、ドレイン領域3Dが、それぞれ導電性プラグ6S、6Dに電気的に接続される。
【0015】
導電性プラグ6S、6Dは、例えば、TiNによるバリアメタル層とW層の積層構造で形成され、TiN層とW層を基板全面に堆積した後、不要なW層、TiN層を化学機械研磨(CMP)で除去して形成される。
【0016】
層間絶縁膜5上に、エッチングストッパ膜11が形成されている。エッチングストッパ膜11は、例えば、シリコンオキシカーバイドにより形成され厚さ30nmである。エッチングストッパ膜のシリコンオキシカーバイドの比誘電率は3.6である。
【0017】
エッチングストッパ膜11の上に、比誘電率2.6以下の低誘電率材料でポーラス構造を有する層間絶縁膜12が形成されている。ポーラス構造の空孔内に水分が存在する。層間絶縁膜12は、例えばCVDで形成されるSiOC膜である。このような絶縁材料として、例えば、AMAT社のBlack Diamond、ノベラスシステム社のCoral、ASM社のAurolaULK(いずれも各社商品名)等が挙げられる。
【0018】
比誘電率2.6以下でポーラス構造のSiOC膜材料として、シルセスキオキサン、Si、C、O、およびHの原子を含むCドープ酸化物、または熱硬化性のポリアレーン・エーテルを用いることができる。
【0019】
なお、本実施例でエッチングストッパ膜、層間絶縁膜ともSi、O、Cを含む膜を用いているが、層間絶縁膜はポーラス構造を取り、両者で密度が違うことにより、エッチング選択比の差が生じている。
【0020】
エッチングストッパ膜11及び層間絶縁膜12に、配線溝13が形成されている。配線溝13の内面にバリアメタル層14が形成され、バリアメタル層14の上に、銅が充填されて銅配線15が形成されている。下層の導電性プラグが、銅配線15に電気的に接続される。銅配線15を覆って層間絶縁膜12上に、エッチングストッパ膜21が形成されている。
【0021】
ここで、銅配線15の製造工程について詳しく説明する。
【0022】
図2A〜図2Gは、銅配線15の製造工程を示す概略断面図である。ただし、銅配線15が上下層の配線に接続されていない部分の断面を示す。
【0023】
図2Aに示すように、エッチングストッパ膜11上に層間絶縁膜12が形成される。
【0024】
次に、図2Bに示すように、層間絶縁膜12に配線溝13を形成する。
【0025】
次に、図2Cに示すように、配線溝13の内面を覆って層間絶縁膜12上に、非晶質のRuにより第1のバリアメタル層14aが形成される。次に、第1のバリアメタル層14aの上に、多結晶のRuにより第2のバリアメタル層14bが形成される。実施例のバリアメタル層14は、第1及び第2のバリアメタル層14a、14bの積層で形成される。
【0026】
Ruを用いることにより、比抵抗の抑えられたバリアメタル層が得られる。例えば、従来用いられているバリアメタル層材料Ta、Tiの比抵抗が15×10−6Ω・cm、80×10−6Ω・cmであるのに対し、非晶質Ru、多結晶Ruの比抵抗は9×10−6Ω・cm、7×10−6Ω・cm程度であり低い。非晶質Ruは、多結晶Ruよりもやや比抵抗が高い。
【0027】
非晶質の第1のバリアメタル層14aは、バリアメタル層14a中の欠陥が水分を程よく透過させる程度の厚さであることが望ましい。厚さは、例えば配線溝13の底のラフネスと同程度以下であり、0.5nm〜5nm程度(例えば3nm)が望ましい。
【0028】
第1のバリアメタル層14aは、例えば、スパッタリング、CVD、原子層堆積(ALD)等で成膜可能である。スパッタリングの成膜条件として、例えば、Ruターゲットを用い、プロセスガスをArとNとの混合ガスとし、ガス流量をAr/N=10/70sccm程度とし、スパッタリング雰囲気の圧力を3000mTorrとし、DCパワーを800Wとすることができる。非晶質Ruを得るために、成膜時のN流量を10sccm〜80sccm程度とすることが望ましい。
【0029】
多結晶の第2のバリアメタル層14bは、多数の粒界を有し、粒界が、水分子を通す程度の孔となる。第2のバリアメタル層14bの厚さは、3nm〜15nm程度が望ましい。第2のバリアメタル層14bも、例えば、スパッタリング、CVD、ALD等で成膜可能である。スパッタリングの成膜条件として、非晶質とした第1のバリアメタル層14aの成膜条件においてNを抜くことにより、多結晶膜を得ることができる。
【0030】
次に、図2Dに示すように、第2のバリアメタル層14bの上に、例えばTiを2%含有した銅によりシード層15aが形成される。シード層15aは、例えば厚さが30nmであり、シード層15aの所望の組成のターゲットを用いてスパッタリングで形成することができる。
【0031】
次に、図2Eに示すように、シード層15aの上に、めっき等により銅層15bを形成する。
【0032】
次に、図2Fに示すように、層間絶縁膜12上の不要な銅層15b、シード層15a、第2のバリアメタル層14b、及び第1のバリアメタル層14aがCMPで除去される。シード層15aと銅層15bが、銅配線15を形成する。
【0033】
次に、図2Gに示すように、銅配線15を覆って層間絶縁膜12上に、エッチングストッパ膜21が形成される。エッチングストッパ膜21は、例えば、シリコンオキシカーバイドにより形成され厚さ30nmである。エッチングストッパ膜21は、銅配線15から上方の層間絶縁膜に銅が拡散するのを抑制する銅拡散防止絶縁膜として機能する。
【0034】
エッチングストッパ膜21は、例えば、原料ガスとしてテトラメチルシラン及び炭酸ガスを用いたCVDにより形成することができる。成膜条件は、例えば、温度400℃、テトラメチルシランの流量500sccm、炭酸ガスの流量150sccm、圧力約600Pa(4.5Torr)、13.56MHzのRF電力600W、400kHzのRF電力10Wである。なお、実施例に用いた試料基板は直径が300mmであり、RF電力を投入するための平行平板電極の面積は、基板面積とほぼ等しい。
【0035】
実施例のバリアメタル層14は、第1及び第2のバリアメタル層14a、14bの積層構造を有し、バリアメタル層14a、14bは、ともに、層間絶縁膜12中の水を通す孔を有する。
【0036】
バリアメタル層14を、多結晶膜である第2のバリアメタル層14bのみとすると、粒界の孔が、層間絶縁膜12側から銅配線15側に水を通すとともに、銅配線15側から層間絶縁膜12側に銅を通しやすい。非晶質膜である第1のバリアメタル層14aを適当な厚さに形成することにより、欠陥の孔が層間絶縁膜12側から銅配線15側には水を通しやすいが、銅配線15側から層間絶縁膜12側には銅を通しにくくできる。なお、バリアメタル層14を非晶質膜のみとすると、バリアメタル層として適当な厚さまで厚くしたとき、水分を十分に通すことが難しくなる。
【0037】
エッチングストッパ膜21の成膜時に、加熱された温度雰囲気下で、層間絶縁膜12中の水がバリアメタル層14a、14bを通り銅シード層15a中に含有させたTiと反応して、TiOが生成する。さらに、生成したTiOは自己拡散して、銅配線15とエッチングストッパ膜21との界面にも分布し、金属酸化物層16を形成すると考えられる。金属酸化物層16が介在することにより、銅配線15とエッチングストッパ膜21との密着性が高まると考えられる。なお、TiOの拡散は、銅配線15とそれに接する部材との界面で主に生じているものと推測される(TiOの、界面に沿った拡散を、自己拡散と呼んでいる)。なお、銅配線15の底部にも、TiOが分布すると考えられる。
【0038】
なお、銅配線15と第2のバリアメタル層14aとの界面に留まったTiOは、TiO生成後は粒界の孔を塞ぐように機能して、層間絶縁膜12から銅配線15への水の移動、及び銅配線15から層間絶縁膜12への銅の移動を抑制し、バリア性を高めると考えられる。
【0039】
このように、水分を含んだ層間絶縁膜中の銅配線において、バリアメタル層を非晶質膜と多結晶膜の積層で形成し、銅シード層を、金属酸化物を作る金属を含有させて形成することにより、配線を覆うエッチングストッパ膜(銅拡散防止絶縁膜)の成膜時に、層間絶縁膜中の水と銅シード層中に含有させた金属が反応して金属酸化物が生成され、生成した金属酸化物が拡散して銅配線とエッチングストッパ膜との界面にも分布する。銅配線とエッチングストッパ膜との間に金属酸化物層が介在することにより、銅配線とエッチングストッパ膜との密着性が高められ、エレクトロマイグレーション耐性が向上する。
【0040】
図1に戻って説明を続ける。エッチングストッパ膜21の上に、下から順に、層間絶縁膜22、ミドルストッパ膜23、及び層間絶縁膜24が形成されている。層間絶縁膜22、24はそれぞれ、層間絶縁膜12と同様に、ポーラス構造を含む低誘電率絶縁膜であり、厚さは例えば150nmである。ミドルストッパ膜23は、例えば、シリコンオキシカーバイド膜であり厚さ30nmである。
【0041】
層間絶縁膜24に配線溝26が形成され、ミドルストッパ膜23、層間絶縁膜22、及びエッチングストッパ膜21にビアホール25が形成されている。ビアホール25及び配線溝26の内面に、バリアメタル層27が形成され、バリアメタル層27の上に、銅が充填されて配線28が形成されている。エッチングストッパ膜21から層間絶縁膜24までの絶縁膜と、バリアメタル層27、及び銅配線28が、1層分の配線層を構成する。なお、配線溝26の底にミドルストッパ膜23を残す構造を例示しているが、ミドルストッパ膜23を残さない構造として、さらに低誘電率化を図ることもできる。
【0042】
ビアホール25及び配線溝26内のバリアメタル層27及び銅配線28は、上述した配線溝13内のバリアメタル層14及び銅配線15と同様に形成することができる。すなわち、非晶質Ruによる第1のバリアメタル層と多結晶Ruによる第2のバリアメタル層との積層でバリアメタル層27を形成し、Tiを含有させた銅シード層の上に、めっき等で銅層を形成することにより銅配線28を形成する。銅配線15の形成がシングルダマシン工程であるのに対し、銅配線28の形成はデュアルダマシン工程となる。
【0043】
銅配線28を覆って層間絶縁膜24上に、エッチングストッパ膜31が形成されている。エッチングストッパ膜31は、例えばエッチングストッパ膜21と同様にシリコンオキシカーバイド膜である。下層の銅配線15の場合と同様に、エッチングストッパ膜31の成膜時に生成し、エッチングストッパ膜31と銅配線28との界面に拡散した酸化チタンにより、エッチングストッパ膜31と銅配線28との密着性向上が図られる。
【0044】
同様にして、上方にさらに配線層が形成される。最上層の配線層の上に、シリコンオキシカーバイドによりエッチングストッパ膜51が形成され、その上にCVDで形成されたSiOCにより層間絶縁膜52が形成されている。エッチングストッパ膜51及び層間絶縁膜52にビアホール53が形成され、ビアホール53内にWを用いた導電性プラグ54が充填されている。下層の配線49が、導電性プラグ54に電気的に接続される。
【0045】
アルミニウムで形成されたパッド55が、層間絶縁膜52の上に形成され、導電性プラグ54に接続されている。層間絶縁膜52及びパッド55を覆って、シリコンナイトライドにより保護膜56が形成されている。保護膜56は、パッド55上面に開口を有し、開口内にパッド55が露出している。以上のようにして、実施例の半導体装置が作製される。
【0046】
実施例と同様な方法で形成した銅配線の試料を作製し、エレクトロマイグレーション試験を行った。
【0047】
図3は、エレクトロマイグレーション試験に用いた試料の配線パターンを示す概略断面図である。配線パターンは、第1層の配線部61と第2層の配線部62とが、端部をビア部63で接続されて交互に並んだチェーン形状である。第1層の配線部61、第2層の配線部62の各々は、幅70nm、長さ200nm、厚さ100nmであり、各ビア部は、直径70nm、高さ100nmである。配線パターンの両端が、それぞれパッドに接続されている。
【0048】
このような配線パターンを有する試料を100チップ用意し、温度150℃、電流0.2mAで200時間のエレクトロマイグレーション試験を行った。なお、比較例の試料も用意し、同様な試験を行った。比較例の試料では、バリアメタル層は単層の多結晶Ru層とし、シード層は他の金属を含有させず銅のみとした。
【0049】
実施例の試料は、100チップ中オープン不良となったものが0個であったのに対し、比較例の試料は、100チップ中オープン不良となったものが25個であった。このように、実施例の配線形成方法によりエレクトロマイグレーションが抑制されることがわかった。
【0050】
なお、上記実施例では、銅シード層に含有させる金属がTiの場合を説明したが、Mnを含有させる場合についても、エレクトロマイグレーション試験で同様な効果を確認している。
【0051】
銅配線を覆うエッチングストッパ膜の成膜に伴う適当な加熱状態下で、層間絶縁膜からバリアメタル層を越えて水分が移動し、銅シード層に含有された金属が酸化され、生成した金属酸化物が拡散すると考えられる。このときの適当な温度は、上記の400℃に限られず、250℃〜450℃の範囲が好適である。これは、銅シード層に含有させる金属がTi、Mnの場合ともに同様である。
【0052】
なお、銅配線を覆うエッチングストッパ膜(銅拡散防止絶縁膜)として、上記実施例ではシリコンオキシカーバイドを用いたが、エッチングストッパ膜はシリコンオキシカーバイド(SiOC)膜に限られない。その他、銅のバリア性に優れる膜として、SiC膜、SiCN膜、SiN膜、SiOCN膜等を使うこともできる。
【0053】
なお、銅シード層への含有に適した金属は、Ti、Mnに限られないと考えられる。例えば、特に、TiまたはMnと周期律表で同族または隣接する族の遷移金属は、Ti、Mnと似た挙動を示すと考えられ、銅シード層に含有させる金属として好適であろう。具体的には、Zr、Hf、Sc、Y、V、Nb、Re、Mo、W、Taが挙げられる。さらに、他の金属として、Li、Be、B、Mg、Al、Si、Cr、Ni、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Rb、Sr、Ag、In、Sn、Sb、Te、Ba、Au、Ir、Pt、Pb等も利用できると思われる。
【0054】
なお、銅シード層膜厚は2nm〜50nm程度が望ましく、銅に含有させる金属の含有率は0.5%〜5%程度が望ましい。
【0055】
なお、上記実施例では、層間絶縁膜側の第1のバリアメタル層を非晶質、銅配線側の第2のバリアメタル層を多結晶としたが、層間絶縁膜側を多結晶、銅配線側を非晶質としても、適当な水分の透過性及び銅のバリア性が得られるであろう。ただし、銅配線側が多結晶である方が、Cuとの濡れ性が良好なグレイン部が配線凹部内に露出するため、銅配線とバリアメタル層との密着性が良好となり、エレクトロマイグレーション耐性が向上する。
【0056】
第1及び第2のバリアメタル層として、上記実施例ではRuを用いたが、その他の金属を用いることもでき、(例えばTaに比べて)低抵抗な金属として、例えばCo(比抵抗6.2×10−6Ω・cm)が挙げられる。
【0057】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0058】
以上説明した実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
半導体素子の形成された半導体基板と、
前記半導体基板の上方に、水分を含み、凹部が形成された層間絶縁膜と、
前記凹部の内面上に形成され、非晶質及び多結晶の一方の結晶性を有する第1のバリアメタル層と、
前記第1のバリアメタル層上に形成され、非晶質及び多結晶の他方の結晶性を有する第2のバリアメタル層と、
前記第2のバリアメタル層上に形成された銅配線と、
前記銅配線を覆って前記層間絶縁膜上に形成された銅拡散防止絶縁膜と、
前記銅配線と前記銅拡散防止絶縁膜との界面に形成された金属酸化物層と
を有する半導体装置。
(付記2)
前記第1のバリアメタル層が非晶質、前記第2のバリアメタル層が多結晶の結晶性を有する付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記第1のバリアメタル層の厚さが0.5nm〜5nmの範囲にある付記2に記載の半導体装置。
(付記4)
前記第2のバリアメタル層の厚さが3nm〜15nmの範囲にある付記2または3に記載の半導体装置。
(付記5)
前記金属酸化物層は、Ti、Mn、Zr、Hf、Sc、Y、V、Nb、Re、Mo、W、及びTaのうち少なくとも1つの酸化物を含む付記1〜4のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記6)
前記第1及び第2のバリアメタル層は、RuまたはCoを含む付記1〜5のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記7)
前記層間絶縁膜は、ポーラス構造を含む付記1〜6のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記8)
半導体基板に半導体素子を形成する工程と、
前記半導体基板の上方に、水分を含む層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜に凹部を形成する工程と、
前記凹部の内面上に、非晶質及び多結晶の一方の結晶性を有する第1のバリアメタル層を形成する工程と、
前記第1のバリアメタル層上に、非晶質及び多結晶の他方の結晶性を有する第2のバリアメタル層を形成する工程と、
前記第2のバリアメタル層上に、酸化物を形成する金属を含有する銅により、シード層を形成する工程と、
前記シード層上に、銅層を形成する工程と、
前記銅層を覆って前記層間絶縁膜上に、加熱状態で銅拡散防止絶縁膜を形成する工程と
を有する半導体装置の製造方法。
(付記9)
前記第1のバリアメタル層を形成する工程は、非晶質の結晶性を有する第1のバリアメタル層を形成し、前記第2のバリアメタル層を形成する工程は、多結晶の結晶性を有する第2のバリアメタル層を形成する付記8に記載の半導体装置の製造方法。
(付記10)
前記シード層を形成する工程において、該シード層中に含有させる前記金属の含有率が0.5%〜5%の範囲にある付記8または9に記載の半導体装置の製造方法。
(付記11)
前記銅拡散防止絶縁膜を形成する工程において、該銅拡散防止絶縁膜の成膜温度が250〜450℃の範囲にある付記8〜10のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、本発明の実施例による半導体装置を示す概略断面図である。
【図2−1】図2A〜図2Dは、実施例の半導体装置の銅配線の形成工程を示す断面図である。
【図2−2】図2E〜図2Gは、図2A〜図2Dに引き続き、実施例の半導体装置の銅配線の形成工程を示す断面図である。
【図3】図3は、エレクトロマイグレーション試験に用いた試料の配線パターンを示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0060】
5、12 層間絶縁膜
11、21 エッチングストッパ膜
13 配線溝
14a 第1のバリアメタル層
14b 第2のバリアメタル層
14 バリアメタル層
15a 銅シード層
15b 銅層
15 銅配線
16 金属酸化物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子の形成された半導体基板と、
前記半導体基板の上方に、水分を含み、凹部が形成された層間絶縁膜と、
前記凹部の内面上に形成され、非晶質及び多結晶の一方の結晶性を有する第1のバリアメタル層と、
前記第1のバリアメタル層上に形成され、非晶質及び多結晶の他方の結晶性を有する第2のバリアメタル層と、
前記第2のバリアメタル層上に形成された銅配線と、
前記銅配線を覆って前記層間絶縁膜上に形成された銅拡散防止絶縁膜と、
前記銅配線と前記銅拡散防止絶縁膜との界面に形成された金属酸化物層と
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記第1のバリアメタル層が非晶質、前記第2のバリアメタル層が多結晶の結晶性を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体基板に半導体素子を形成する工程と、
前記半導体基板の上方に、水分を含む層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜に凹部を形成する工程と、
前記凹部の内面上に、非晶質及び多結晶の一方の結晶性を有する第1のバリアメタル層を形成する工程と、
前記第1のバリアメタル層上に、非晶質及び多結晶の他方の結晶性を有する第2のバリアメタル層を形成する工程と、
前記第2のバリアメタル層上に、酸化物を形成する金属を含有する銅により、シード層を形成する工程と、
前記シード層上に、銅層を形成する工程と、
前記銅層を覆って前記層間絶縁膜上に、加熱状態で銅拡散防止絶縁膜を形成する工程と
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記シード層を形成する工程において、該シード層中に含有させる前記金属の含有率が0.5%〜5%の範囲にある請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記銅拡散防止絶縁膜を形成する工程において、該銅拡散防止絶縁膜の成膜温度が250〜450℃の範囲にある請求項3または4に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−129693(P2010−129693A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301384(P2008−301384)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】