説明

半導体装置及び製造方法

【課題】少ない層間接続プロセス工程数で、コンタクト部分の面積を小さくすることのできる半導体装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】多層導体配線10は、スルーホール15は、導体13の一部は、ひさし部13Cとしてスルーホール15の内側に露出する。そして、スルーホール15のスルーホール用孔の内側に埋め込まれた埋め込み金属16とひさし部13Cとで、側面コンタクト構造を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び製造方法に関し、特に少ない層間接続プロセス工程数で、電気的に接続されるコンタクト部分の面積を小さくすることのできる側面コンタクト構造を有する半導体装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IC(Integrated Circuit)中のトランジスタの微細化が進展している。抵抗素子や、キャパシタ素子、インダクタ素子等のパッシブ素子や配線の高密度化されることによって、IC全体を高集積化することがますます肝要になってきている。これらを受け、パッシブ素子を多段積層することにより高密度化を図ったスタック型パッシブ素子の集積技術や、配線を多層構造として高密度化を図った多層配線技術が広く用いられている。これらの技術は、平面内にデバイスを微細化するという考えではなく、3次元的に垂直方向の空間も積極的に利用することによって、IC全体のフットプリントを小さく抑えるという考えから成っている。
【0003】
例えば、特許文献1の集積回路においてコンタクトピアを製造する技術においては、各導体層の任意の層間を電気的に接続する際、導体層の面全体で接触するように製造していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−45274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、3次元でスタック型パッシブ素子や多層配線を形成すれば、その分プロセス工程が煩雑となり、結果として全体の製造コストを増やす原因となる。中でも、面コンタクトによる多層構造によって、導体層間を相互に接続する方法では、層間接続プロセス工程を層数分の回数だけ行う必要があり、これによるプロセス工程の増大が顕著な問題となっていた。
【0006】
同時に、面コンタクトの構造は、層間を接続するスルーホールよりも大きな面積を必要とするため、スタック型パッシブ素子の大きさや配線の幅を大幅に大きくさせ、十分な高密度化が発揮できない状態を生んでいた。さらに、面コンタクトの構造によって接続部を形成するため、基板との間の寄生容量が増加し、特に高周波トランジスタと配線を結ぶ部分において顕著なトランジスタ性能の低下が生じていた。
【0007】
このように、面コンタクトの構造を形成することによって、層間接続プロセス工程が増加したり、電気的に接続されるコンタクト部分の面積が大きくなったりするという問題があった。そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、少ない層間接続プロセス工程数で、コンタクト部分の面積を小さくすることのできる半導体装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体装置は、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
【0009】
本発明に係る第1の半導体装置は、半導体基板上に設けられた層間絶縁膜内に形成された導体とスルーホールとを接続した半導体装置において、前記スルーホールのスルーホール用孔の内側に前記導体の一部が露出したひさし部が形成され、当該スルーホールの内側に埋め込まれた埋め込み金属と前記ひさし部とが、電気的に接続された側面コンタクト構造を有することを特徴とする。
【0010】
上記の半導体装置によれば、上記のような側面コンタクト構造を形成することによって、電気的に接続されるコンタクト部分の面積の縮小化を図ることが可能となる。また、各導体をスルーホールで一括に接続することによって、プロセス工程を簡便にすることが可能となる。
【0011】
本発明に係る第2の半導体装置は、前記導体は、前記スルーホールが形成される予定の部分の中心位置に空孔が形成され、前記スルーホールは、前記空孔の径よりも大きい径であって、前記導体に形成された空孔を貫通するように形成され、前記側面コンタクト構造は、前記スルーホールの径を前記空孔の径よりも拡大することにより前記ひさし部が形成され、前記埋め込み金属と前記ひさし部とが電気的に接続されることを特徴とする。
【0012】
上記の半導体装置によれば、面全体で電気的接触を形成していた従来の場合とほぼ同じ接触抵抗をもって確実に任意の導体層を接続することが可能となる。
【0013】
本発明に係る第3の半導体装置は、前記空孔は、前記スルーホールの径より大きい径の大空孔と、当該スルーホールの径以下の径の小空孔とであって、前記導体は、半導体基板上に、層間絶縁膜を介して垂直方向に複数層堆積され、前記スルーホールは、前記大空孔又は前記小空孔の中心位置を貫通するように形成され、前記側面コンタクト構造は、接続される2つの任意の前記導体の前記小空孔同士が、前記埋め込み電極を介して電気的に接続されることを特徴とする。
【0014】
上記の半導体装置によれば、スタックされたスパイラルインダクタの層間や、多層導体配線の層間を接続することが可能となる。特に、縦方向にスパイラルインダクタをスタックすることでフットプリントを縮小化した高インダクタンスな素子を、各層間の接続を一括で行うことによって、スパイラルインダクタや多層導体配線等を低コストで製造することが可能となる。
【0015】
本発明に係る第4の半導体装置は、前記小空孔の径が、上層に向かうに従って大きくなることを特徴とする。
【0016】
上記の半導体装置によれば、ドライエッチングによって形成されたスルーホールの形状がテーパ形状となっても、全層において十分にひさし部を形成することができ、結果としてより良好な側面コンタクトを形成することが可能となる。
【0017】
本発明に係る第5の半導体装置は、前記半導体基板上の少なくとも前記スルーホールを形成される予定の部分に、金属薄膜のエッチングストッパが形成されることを特徴とする。
【0018】
上記の半導体装置によれば、保護膜が過剰にドライエッチングされることが無いため、スルーホールの径を十分に大きく取ることができ、結果としてより良好な側面コンタクトを形成することが可能となる。
【0019】
本発明に係る第1の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に設けられた層間絶縁膜内に形成された導体とスルーホールとを接続した半導体装置の製造方法において、前記層間絶縁膜内に前記導体を形成する第1の工程と、前記第1の工程を行った後に、前記スルーホールのスルーホール用孔をドライエッチングによって形成する第2の工程と、前記第2の工程を行った後に、プラズマ雰囲気に暴露し、前記スルーホール用孔の内側に前記導体の一部をひさし部として露出させる第3の工程と、前記第3の工程を行った後に、前記スルーホール用孔の内側に埋め込み金属を埋め込むことで、当該埋め込み金属と前記ひさし部とを電気的に接続する第4の工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【0020】
上記の半導体装置の製造方法によれば、第1の工程から第4の工程までを上述したように行うことで、電気的に接続されるコンタクト部分の面積を縮小化し、各導体をスルーホールで一括に接続しながらプロセス工程を簡便にして、第1の半導体装置を製造することが可能となる。
【0021】
本発明に係る第2の半導体装置の製造方法は、前記第1の工程において、前記スルーホールが形成される予定の部分の中心位置に空孔が形成されるように前記導体を形成し、前記第2の工程において、前記空孔を貫通するように前記スルーホールをドライエッチングによって形成し、前記第3の工程において、前記スルーホールの径を前記空孔の径以上に拡大することによって前記ひさし部を露出させることを特徴とする。
【0022】
上記の半導体装置の製造方法によれば、第2の工程から第4の工程までを上述したように行うことで、面全体で電気的接触を形成していた従来の場合とほぼ同じ接触抵抗をもって確実に任意の導体層を接続しながら、第2の半導体装置を製造することが可能となる。
【0023】
本発明に係る第3の半導体装置の製造方法は、前記第2の工程と前記第3の工程とを、1つの工程として行うことを特徴とする。
【0024】
上記の半導体装置の製造方法によれば、スルーホールを形成したり、スルーホールの径を拡大したりする際、エッチング条件を最適化して一括で行うことにより、プロセスの簡便化を図ることができる。
【0025】
本発明に係る第4の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に堆積された各層の厚さから見積もられたドライエッチングを施す時間から、その4倍の時間までの間でドライエッチングを施すことよって、前記スルーホールを形成することを特徴とする。
【0026】
上記の半導体装置の製造方法によれば、スルーホールがテーパ形状に広がることによる短絡や、過剰なエッチングに伴うエッチングストッパや保護膜、半導体基板への損傷がほとんど起こらず、良好な側面コンタクト構造を形成することが可能となる。
【0027】
本発明に係る第5の半導体装置の製造方法は、前記埋め込み金属をめっき技術によって埋め込むことを特徴とする。
【0028】
上記の半導体装置の製造方法によれば、ひさし部の直下において発生しやすいボイドにも十分に埋め込み金属を埋め込むことが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明における半導体装置及び製造方法によれば、電気的に接続する部分の面積の縮小化による素子の高密度化及び寄生容量の低減、プロセスの簡便化による低コスト化を実現することができる。また、ICチップの性能や量産性を飛躍的に高めることができる。
【0030】
また、縦方向にスパイラルインダクタをスタックすることでフットプリントを縮小化した高インダクタンスな素子を、各層間の接続を一括で行うことによって低コストで製造することができる。
【0031】
また、保護膜が過剰にドライエッチングされることが無く、スルーホールの形状がテーパ形状となっても全層において十分にひさし部を形成された、良好な側面コンタクトを形成することができる。
【0032】
また、スルーホールを形成したり、スルーホールの径を拡大したりする際、エッチング条件を最適化して一括で行うことにより、よりプロセスの簡便化を図ることができる。
【0033】
また、スルーホールがテーパ形状に広がることによる短絡や、過剰なエッチングに伴うエッチングストッパや保護膜、半導体基板への損傷がほとんど起こりにくく、ひさし部の直下にも十分に埋め込み金属を埋め込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態に係る多層導体配線10の構造を示す断面図である。
【図2】第1実施形態に係る多層導体配線10の内部の導体13の接続方法を示す断面図及び斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る多層導体配線10の製造方法を示す断面図である。
【図4】第1実施形態に係る多層導体配線30の内部の導体13の接続方法を示す断面図及び斜視図である。
【図5】第2実施形態に係る多層導体配線30の製造方法を示す断面図である。
【図6】第3実施形態に係る多層導体配線50の製造方法を示す断面図である。
【図7】第4実施形態に係る多層導体配線70の製造方法を示す断面図である。
【図8】第1変形例に係るスパイラルインダクタ素子80の製造方法を示す断面図である。
【図9】第2変形例に係るアクティブ素子90の製造方法を示す断面図である。
【図10】第3変形例に係るキャパシタ素子110の製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において参照する各図では、他の図と同等の構成要素は同一の符号によって示す。
【0036】
(第1実施形態)
(多層導体配線10の全体の構造)
まず、図1及び図2を参照して、本発明の半導体装置及び製造方法を適用して形成される素子の一例として、第1実施形態に係る多層導体配線10の構造を説明する。
【0037】
図1に示す多層導体配線10は、半導体基板11の上に形成された保護膜12の上に、多層の導体配線として4層の導体13を層間絶縁膜14を介して重ね、層間を接続したスタック構造によって形成される。
【0038】
半導体基板11は、各種の素子を配置したり、素子同士を接続するために配線したりするためのものである。
【0039】
保護膜12は、半導体基板11の上に形成された素子や配線を保護するために形成されるものである。
【0040】
導体13は、接続部13A、配線部13B及びひさし部13Cに分かれており、電気を導通させるものである。接続部13Aは、別の導体13と接続するために形成される部分である。ひさし部13Cは、スルーホール15のスルーホール用孔の内側に露出して、スルーホール15のスルーホール用孔の内側に形成される金属と接続される部分である。なお、接続部13A、配線部13B及びひさし部13Cは、同一の材料で同時に形成しても良いし、異なる材料で別々に形成しても良い。
【0041】
層間絶縁膜14は、導体13の各層を覆い、導体13を電気的に絶縁するために形成される絶縁膜である。層間絶縁膜14には、例えばSiN,SiO,SiON,Al等の誘電体である材料や、ポリイシド、ベンゾシクロブテン等の有機層間絶縁膜が用いられる。層間絶縁膜14は、それぞれの厚さが異なって形成しても良く、例えば、平坦性の確保が困難となる上層に向かうほど厚く形成しても良い。これにより、各接続部間の間隔は上層に向かうほど大きくなり、各接続部間における短絡を抑えることができるようなスタック構造を形成することができる。なお、導体13及び層間絶縁膜14は、堆積することができれば、上述した材料以外の材料も用いることができる。
【0042】
スルーホール15は、スルーホール用孔が形成された後、スルーホール用孔の内側に埋め込み金属16が形成され、1本のスルーホール当たり2つの導体13同士だけを接続するものである。
【0043】
埋め込み金属16は、スルーホール15の内側に形成され、電気を導通させるものである。
【0044】
(多層導体配線10の側面コンタクト構造)
続いて、図2を用いて、導体13の接続部13A同士の接続方法について説明する。
【0045】
図2(a)及び図2(b)に示す多層導体配線10は、半導体基板11の上に形成された保護膜12の上に、層間絶縁膜14を介して堆積された4層の導体13が存在する。任意の導体13同士をスルーホール15を介して垂直方向に接続すべき箇所には、接続部13Aが形成されている。
【0046】
接続部13Aの一辺の一般的な大きさは、1〜20μm程度である。但し、導体13とスルーホール15とが、接触抵抗の低い状態で電気的に接続されれば、接続部13Aは如何なる大きさであっても構わない。
【0047】
また、接続したい導体13に形成された接続部13Aを、スルーホール15がオーバーラップするように形成されている。導体13とスルーホール15とのオーバーラップ量は、例えばスルーホール15の面積の10%以上、50%以下である。但し、導体13との接触抵抗を十分に低くすることができれば、オーバーラップ量は如何なる量でも構わない。
【0048】
スルーホール15の内側に露出するひさし部13Cと、スルーホール15のスルーホール用孔の内側に形成された埋め込み金属16とによる側面コンタクトが形成されることにより、導体13と埋め込み金属16とが電気的に接続される。この時、導体13との接触抵抗を十分に低くすることができれば、スルーホール15の内側を金属で完全に埋め込む構造と、スルーホール15の内壁だけを金属で覆う構造のうち、どちらを適用しても構わない。
【0049】
(多層導体配線10の側面コンタクト構造の形成プロセス)
次に、図3を参照して、第1実施形態に係る多層導体配線10の側面コンタクト構造の形成プロセスについて説明する。
【0050】
まず、図3(a)に示すように、半導体基板11の上に形成された保護膜12の上に、第1層目の導体13を、金属蒸着法、スパッタリング法又はめっき法で形成する。次に、第1層目の導体13上に層間絶縁膜14を化学気相堆積法、スパッタリング法又はスピンコート法により堆積する。層間絶縁膜14には無機材料としてはSiNやSiO、SiON、有機材料としてはポリイミドやベンゾシクロブテン等を用いる。
【0051】
続いて、図3(b)に示すように、層間絶縁膜14上に第2層目の導体13を形成し、任意の層間絶縁膜14を堆積し、所望の多層の配線構造を得られるまで繰り返す。この時、任意の導体13同士をスルーホール15を介して垂直方向に接続すべき箇所には、接続部13Aが形成されている。
【0052】
続いて、図3(c)に示すように、層間絶縁膜14を貫通するスルーホール15を、フッ素系ガスや臭素系ガス、ヨウ素系ガス等を用いたドライエッチング技術によって形成する。スルーホール15に横方向のエッチングが入らないようにエッチング圧力は低め、エッチングパワーは高めにそれぞれ設定し、エッチング時間は導体13や層間絶縁膜14の各層の厚さから見積もられるエッチング時間の80〜150%程度に設定する。スルーホール15は、接続したい導体13の接続部13Aをオーバーラップするように形成される。また、そのオーバーラップ量は、例えばスルーホール15の面積の10〜50%である。
【0053】
続いて、図3(d)に示すように、スルーホールスルーホール15の径を拡大させるためのドライエッチングを行う。層間絶縁膜14を貫通するスルーホール15を形成したときのエッチング条件に比べてエッチング圧力は高め、エッチングパワーは低めにそれぞれ設定し、エッチング時間は各層の厚さから見積もられるエッチング時間の10〜100%とする。また、エッチング時間は、スルーホール15が深いほど長めに設定する。このことによって、スルーホール15が全領域にわたって元の径よりも十分に均等に拡大するため、スルーホール15の内側に導体13のひさし部13Cを十分に露出させることができる。また、材料を選べばウェットエッチングによって上記と同様にスルーホール15の径を拡大させることも可能である。
【0054】
続いて、図3(e)に示すように、スルーホール15の内部には、各層を接続する埋め込み金属16が、真空蒸着法、スパッタリング法又はめっき法によって埋め込まれる。スルーホール15の深さが1μm程度以下の比較的浅い構造の場合には、真空蒸着法やスパッタリング法によって埋め込み金属16を埋め込むことができる。そして、ひさし部13Cと埋め込み金属16とで側面コンタクト構造が形成されることにより、導体13同士が電気的に接続される。
【0055】
上述したように、接続部13Aとの接触抵抗を十分に低くすることができれば、スルーホール15の内部を埋め込み金属16で完全に埋め込む構造と、スルーホール15の内壁だけを埋め込み金属16で覆う構造のうち、どちらを適用しても構わない。
【0056】
このような側面コンタクト構造を形成することによって、電気的に接続されるコンタクト部分の面積の縮小化を図ることが可能となる。また、各導体13をスルーホール15で一括に接続することによって、プロセス工程を簡便にすることができる。
【0057】
(第2実施形態)
(多層導体配線30の側面コンタクト構造)
まず、図4を参照して、第2実施形態に係る多層導体配線30の側面コンタクト構造を説明する。
【0058】
図4(a)及び図4(b)に示す多層導体配線30の全体の構造は、図1〜図3に示した多層導体配線10と同じである。但し、図4(a)及び図4(b)に示す多層導体配線30は、その側面コンタクト構造が上述した多層導体配線10の側面コンタクト構造と異なる。
【0059】
多層導体配線30は、半導体基板11の上に形成された保護膜12の上に、層間絶縁膜14を介して堆積された多層の導体13が存在し、任意の導体13同士をスルーホール15を介して垂直方向に接続すべき箇所に小空孔31が形成される。また、スルーホール15と接続する必要の無い導体13の層には大空孔32が形成される。スルーホール15が形成される予定の中心位置に、小空孔31及び大空孔32が形成される。
【0060】
小空孔31は、導体13の接続部13Aに形成され、2つの導体13同士を接続するために、スルーホール15を貫通させるために形成された空孔である。大空孔32は、導体13の接続部13Aに形成され、スルーホール15と接続されないように形成された空孔である。
【0061】
一般的な小空孔31の大きさは、1〜10μm程度であり、大空孔32の大きさは2〜20μmである。小空孔31は大空孔32に比べて、例えば1/2以下の径を有するように設計する。但し、小空孔31とスルーホール15とが接触抵抗の低い状態で電気的に接続され、かつスルーホール15と大空孔32が接触しない程度に空孔を形成することができれば、小空孔31及び大空孔32の大きさは如何なる大きさであっても構わない。
【0062】
接続したい任意の導体13に形成された小空孔31をスルーホール15が貫通している。スルーホール15は、小空孔31の径よりも大きな径を有している。スルーホール15の形状は小空孔31と相似であり、径は小空孔31よりも10%以上大きく、大空孔32よりも小さくなるように設計される。そして、スルーホール15の内部には埋め込み金属16が埋め込まれており、スルーホール15の径が小空孔31の径よりも大きいことによりひさし部13Cがスルーホール15の内側に露出する。このひさし部13Cと埋め込み金属16とにより側面コンタクトが形成されることによって、導体13同士が電気的に接続される。
【0063】
また、多層導体配線30においても、接続部13Aとの接触抵抗を十分に低くすることができれば、スルーホール15の内側を金属で完全に埋め込む構造と、スルーホール15の内壁だけを金属で覆う構造のうち、どちらを適用しても構わない。
【0064】
(側面コンタクト構造の形成プロセス)
次に、図5を参照して、第2実施形態に係る多層導体配線30の側面コンタクト構造の形成プロセスについて説明する。
【0065】
図5(a)〜図5(e)に示すように、4層の導体13を堆積していくスタック構造を形成するプロセスは、図3(a)〜図3(e)に示した形成プロセスに準ずる。但し、図5(a)及び図5(b)に示すように、導体13のスルーホール15が形成される予定の中心位置に小空孔31及び大空孔32が形成されている点が構造上異なる。
【0066】
続いて、図5(c)に示すように、層間絶縁膜14を貫通するスルーホール15を、フッ素系ガスや臭素系ガス、ヨウ素系ガス等を用いたドライエッチング技術によって形成する。ドライエッチングの条件等は、第1実施形態に係る多層導体配線10の製造方法に準ずる。
【0067】
続いて、図5(d)に示すように、スルーホール15の径を拡大するためのドライエッチングを行う。層間絶縁膜14を貫通するスルーホール15を形成したときのエッチング条件に比べてエッチング圧力は高め、エッチングパワーは低めにそれぞれ設定し、エッチング時間は堆積した各層の厚さから見積もられるエッチング時間の10〜100%とする。但し、ひさし部13Cによる側面コンタクトの面積は、第1実施形態に係る多層導体配線10のひさし部13Cによる側面コンタクトの面積よりも大きくなるため、エッチング時間は少なくても良い。また、エッチング時間は、スルーホール15が深いほど長めに設定する。このことによって、スルーホール15の径が、全領域にわたって元の径よりも十分に均等に拡大するため、スルーホール15の内側にひさし部13Cを十分に露出させることができる。
【0068】
続いて、図5(e)に示すように、スルーホール15を形成した後に、スルーホール15の内側に埋め込み金属16を形成する。埋め込み金属16を形成する方法は、第1実施形態に係る多層導体配線10の製造方法に準ずる。
【0069】
このようなひさし部13Cの面積を大きくした側面コンタクト構造により、面全体で電気的に接触するコンタクト部分を形成していた従来の場合と、ほぼ同じ接触抵抗をもって確実に任意の導体13の層同士を接続することができる。
【0070】
(第3実施形態)
(多層導体配線50の側面コンタクト構造)
次に、図6を参照して、第3実施形態に係る多層導体配線50の側面コンタクト構造の形成プロセスについて説明する。
【0071】
図6に示す多層導体配線50は、図4及び図5に示した多層導体配線30と同様のプロセスで製造されるものである。しかしながら、スルーホール15を形成する予定の直下の保護膜12の上に、エッチングストッパ51が形成されている点が異なる。このエッチングストッパ51は、金属薄膜によって形成され、保護膜12が過剰にドライエッチングされるのを防止するためのものである。
【0072】
このような構造によれば、保護膜12が過剰にドライエッチングされることが無いため、スルーホール15の径を十分に大きく取ることができ、結果としてより良好な側面コンタクトを形成することができる。
【0073】
さらに、導体13を接続するための小空孔31の径が、上層の導体配線に向かうに従って広くなるような構造としても良い。この構造によれば、ドライエッチングによって形成されたスルーホール15の形状がテーパ形状となっても、全層において十分にひさし部13Cを形成することができ、結果としてより良好な側面コンタクト構造を形成することができる。
【0074】
(第4実施形態)
(多層導体配線70の側面コンタクト構造)
次に、図7を参照して、第4実施形態に係る多層導体配線70の側面コンタクト構造の形成プロセスについて説明する。
【0075】
図7に示す多層導体配線70は、図4及び図5に示した多層導体配線30と同様のプロセスで製造されるものである。しかしながら、図3(c)及び図3(d)において、2度にわたるドライエッチングを一括して同時に行う点が異なる。すなわち、スルーホール15を形成したり、スルーホール15の径を拡大したりする際のエッチング条件を最適化して一括で行うことにより、プロセスの簡便化を図ることができる。
【0076】
また、スルーホール15がテーパ形状に広がることによる短絡や、過剰なエッチングに伴うエッチングストッパ51や保護膜12、半導体基板11へ大きな損傷を与えず、ほぼ同じ接触抵抗をもって確実に任意の導体13の層同士を接続することができれば、ドライエッチングを行う際の条件は自由に設定しても良い。さらに、エッチングを行う際の条件は、例えば図5(c)及び図5(d)におけるエッチングの条件の中間値とする。特に、エッチングを行う時間については、堆積した各層の厚さから見積もられる時間の100〜400%程度とすれば、スルーホール15がテーパ形状に広がることによる短絡や、過剰なエッチングに伴うエッチングストッパ51や保護膜12、半導体基板11への損傷がほとんど起こらず、良好な側面コンタクト構造を有する素子を形成することができる。
【0077】
また、上述した実施形態において、埋め込み金属16を埋め込むためにめっき技術を用いている。この方法によれば、ひさし部13Cの直下において発生しやすいボイドにも、十分に埋め込み金属16を埋め込むことが可能となり、接触抵抗のより低い良好な側面コンタクト構造を有する素子を形成することができる。
【0078】
(変形例)
また、以上の実施形態で、導体13同士を層間接続する例について説明したが、導体13の形状はこれに限定されない。
【0079】
例えば、図8に示すように、渦巻状のスパイラルインダクタを縦方向にスタックし、各層間を一括して接続し、フットプリントを縮小化したスパイラルインダクタ素子80であっても良い。電流は、図8中に示す矢印Aの方向で1層目の導体13に入る。さらに、電流は、1層目の導体13の配線部13B、接続部13Aの順に通る。そして、電流は、スルーホール15Aを経由して、2層目の導体13に入る。次に、電流は、2層目の導体13の一方の接続部13A、配線部13B、他方の接続部13Aの順に通る。そして、電流は、スルーホール15Bを経由して、3層目の導体13に入る。同様にして、電流は、3層目の導体13から4層目の導体13を通り、矢印Bに示すように4層目の導体13から出力される。
【0080】
また、図9(a)に示すような半導体基板11上の層間絶縁膜14の内部にバイポーラトランジスタ等のアクティブ素子90の側面コンタクト構造を形成することも可能である。図9(a)では、スルーホール15の内側に埋め込まれた埋め込み金属16と、ひさし部13Cとで側面コンタクト構造を形成している。この構造によれば、図9(b)に示す面コンタクト構造を有する従来のアクティブ素子91に比べて、デバイスの面積を縮小化することができる。同時に、アクティブ素子90と半導体基板11との間の寄生抵抗を低減することができるため、素子の高周波領域における高性能化を図ることができる。
【0081】
この他にも、図10に示すキャパシタ素子110のように、スルーホール15の内側に埋め込まれた埋め込み金属16と、ひさし部13Cとで側面コンタクト構造を有していながら、大きな面積を有するキャパシタ111の層を貫通させることもできる。この構造によれば、配線レイアウトの自由度を確保しながら、容易に大面積のキャパシタを配置することができるようになる。
【0082】
(まとめ)
多層導体配線10は、導体13の一部は、ひさし部13Cとしてスルーホール15の内側に露出する。そして、スルーホール15のスルーホール用孔の内側に埋め込まれた埋め込み金属16とひさし部13Cとで、側面コンタクト構造を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、特に様々な電子機器の内部に搭載されるICチップに小型かつ高抵抗な多層導体配線として集積することができる。また、その多層導体配線素子が集積されたICチップを製造する際に用いることができる。
【符号の説明】
【0084】
10,30,50,70 多層導体配線
11 半導体基板
12 保護膜
13 導体
13A 接続部
13B 配線部
13C ひさし部
14 層間絶縁膜
15 スルーホール
16 埋め込み金属
31 小空孔
32 大空孔
51 エッチングストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に設けられた層間絶縁膜内に形成された導体とスルーホールとを接続した半導体装置において、
前記スルーホールのスルーホール用孔の内側に前記導体の一部が露出したひさし部が形成され、
当該スルーホールの内側に埋め込まれた埋め込み金属と前記ひさし部とが、電気的に接続された側面コンタクト構造を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記導体は、前記スルーホールが形成される予定の部分の中心位置に空孔が形成され、
前記スルーホールは、前記空孔の径よりも大きい径であって、前記導体に形成された空孔を貫通するように形成され、
前記側面コンタクト構造は、前記スルーホールの径を前記空孔の径よりも拡大することにより前記ひさし部が形成され、前記埋め込み金属と前記ひさし部とが電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記空孔は、前記スルーホールの径より大きい径の大空孔と、当該スルーホールの径以下の径の小空孔とであって、
前記導体は、半導体基板上に、層間絶縁膜を介して垂直方向に複数層堆積され、
前記スルーホールは、前記大空孔又は前記小空孔の中心位置を貫通するように形成され、
前記側面コンタクト構造は、接続される2つの任意の前記導体の前記小空孔同士が、前記埋め込み電極を介して電気的に接続されることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記小空孔の径が、上層に向かうに従って大きくなることを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板上の少なくとも前記スルーホールを形成される予定の部分に、金属薄膜のエッチングストッパが形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体基板上に設けられた層間絶縁膜内に形成された導体とスルーホールとを接続した半導体装置の製造方法において、
前記層間絶縁膜内に前記導体を形成する第1の工程と、
前記第1の工程を行った後に、前記スルーホールのスルーホール用孔をドライエッチングによって形成する第2の工程と、
前記第2の工程を行った後に、プラズマ雰囲気に暴露し、前記スルーホール用孔の内側に前記導体の一部をひさし部として露出させる第3の工程と、
前記第3の工程を行った後に、前記スルーホール用孔の内側に埋め込み金属を埋め込むことで、当該埋め込み金属と前記ひさし部とを電気的に接続する第4の工程と、
を少なくとも有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の工程において、前記スルーホールが形成される予定の部分の中心位置に空孔が形成されるように前記導体を形成し、
前記第2の工程において、前記空孔を貫通するように前記スルーホールをドライエッチングによって形成し、
前記第3の工程において、前記スルーホールの径を前記空孔の径以上に拡大することによって前記ひさし部を露出させることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2の工程と前記第3の工程とを、1つの工程として行うことを特徴とする請求項6又は7に記載の半導体装置の形成方法。
【請求項9】
半導体基板上に堆積された各層の厚さから見積もられたドライエッチングを施す時間から、その4倍の時間までの間でドライエッチングを施すことよって、前記スルーホールを形成することを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記埋め込み金属をめっき技術によって埋め込むことを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−253898(P2011−253898A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126044(P2010−126044)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】