説明

回路基板の製造方法

【課題】絶縁膜に形成されるヴィアホールの直径を縮小化することが可能で、高密度化に寄与することのできる回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の回路基板の製造方法は、基板10上に第1導電体を形成する第1導電体形成工程と、第1導電体を被覆する様にゲート絶縁膜21を成膜する第1絶縁膜成膜工程と、第1導電体上のゲート絶縁膜21に貫通孔32を開口して、当該貫通孔32を介して第1導電体の表面および基板の表面を部分的に露出させる貫通孔形成工程と、貫通孔32内に露出する第1導電体の表面を撥液化させる撥液化工程と、貫通孔32内に露出する第1導電体以外の領域に第2絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造方法に関するものである。取り分け、印刷法を用いて機能性有機材料を塗布することにより、アクティブマトリックス基板を製造する方法に関する。
【0002】
従来、シリコン半導体を利用したアクティブマトリックス基板を製造するには、薄膜の成膜工程とフォトリソグラフィー工程、及びエッチング工程を基本サイクルとし、この基本サイクルを複数回繰り返していた。まず、薄膜が基板全体に成膜された後に、必要となる薄膜パターンに応じたフォトレジストパターンを作り、そのパターンに基づいて薄膜の大半をエッチング工程で除去し、その後に残ったフォトレジストパターンも除去して基本サイクルとしていた。即ち、この製造方法では、薄膜材料の多くとフォトレジスト材料の総てを最終的に捨てねばならず、いわば、壮大な無駄に立脚していると言えた。加えて、成膜工程やエッチング工程には真空プロセスが必要とされ、これらの工程は処理時間が長く、生産性が悪い上に、大規模な製造装置が必要とされていた。
【0003】
そこで、上述の基本サイクルを出来る限り使用せず、生産性に優れ、大規模な製造装置の使用も極力避けた製造方法として、アクティブマトリックス基板を印刷法にて製造する方法が検討されている。印刷法には様々な方式が有るが、アクティブマトリックス基板を製造するにはインクジェット法式が適していると考えられている。これは、インクジェット法式が各種の印刷方法の中で、唯一、基板に非接触でパターンを形成し、欠陥の発生確率が最も低いからである。インクジェット法式以外の各種印刷法式は、印刷版を基板に接触させる為、ごみの巻き込みや、物理的な欠損をなくすことが困難であるからである。
【0004】
さて、通常、アクティブマトリックス基板には複数の配線層が設けられ、これらの配線層は絶縁膜にて分離されている。配線層間で電気的な導通が必要な箇所には、ヴィアホールを開口して両配線間を接続している。印刷法にてアクティブマトリックス基板を製造する際にも、この配線層間の導通が必要となる。例えば特許文献1では、フォトリソグラフィー工程とドライエッチング工程とを用いて、ヴィアホールを形成している。また、特許文献2では、絶縁膜にレーザー光を照射してヴィアホールを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−277371号公報
【特許文献2】特開2007−266237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に代表される従来の製造方法では、フォトリソグラフィー工程が、アクティブマトリックス基板に利用されている機能性有機材料に重大な影響を及ぼし、特性に優れたアクティブマトリックス基板を安定的に製造するのが困難であるという課題があった。これはフォトリソグラフィー工程中の露光時に強い短波長光が機能性有機材料に照射され、機能性有機材料が光劣化する虞が有るからである。また、フォトリソグラフィー工程中の現像時に現像液が機能性有機材料に染み渡り、機能性有機材料が化学的に変化する虞が有るからでもある。
【0007】
また、特許文献2に代表される従来の製造方法では、レーザー装置を利用している為に製造原価が高騰するという課題の他に、生産性が悪く、歩留まりも低いという課題もあった。通常、ヴィアホール開口にはレーザーを同一地点に複数回照射する必要がある。而もアクティブマトリックス基板にヴィアホールは数万個から数百万個存在するので、これらをレーザー装置で数個ずつ乃至は数百個ずつアライメントを取りつつ開口して行くと、その処理に極めて長い時間が費やされてしまう。また、レーザー出力が僅かに変動するだけで、電気的な導通が取れなくなる。例えば僅かにレーザー出力が弱ければ、ヴィアホールは開口できず(ヴィアホール底部に絶縁膜が残り)、反対に僅かでも強過ぎれば、導通を取るべき電極までをもアブレーションさせてしまうからである。更に、レーザーアブレーションを利用している関係から、ゴミの発生が避けられず、アクティブマトリックス基板を汚す結果、歩留まりを低下させていた。
【0008】
換言すれば、従来は印刷法に適したヴィアホール形成方法がなく、その為に優れた特性を有する回路基板を、印刷法にて、高歩留まりで安定的に製造することが困難であるという課題があった。
【0009】
また、フォトリソグラフィー工程やエッチング工程は時間がかかる上、製造装置に大規模な投資が必要となる。そこで、生産性に優れた印刷法を用いる製造方法の確立が望まれている。しかしながら、印刷法では、印刷版を基板に接触して行うため、ごみの巻き込みや物理的な破損を完全になくすことは難しい。特に、ナノメートルオーダーで膜厚を制御する必要のある薄膜トランジスターの構成要素の印刷は困難であった。そのため、印刷法の中で、唯一、非接触でパターン形成を行えるインクジェット方式に注目が集まっている。しかしながら、インクジェット法は、解像度の低さの点で問題がある。そのため、ソースドレイン電極やドライバの接続配線等を、インクジェット法を用いて作製するには限界があった。ソースドレイン電極や画素電極を電気的に接続するためにゲート絶縁膜や層間絶縁膜を貫通するヴィアホールを形成する必要があるが、インクジェット法のみを用いて作製することは難しく、結局は、フォトリソグラフィー工程およびドライエッチング工程や、レーザー光を照射することによって作製していた。
【0010】
例えば、ゲート電極を形成した後、層間絶縁層としてフォトレジストを塗布し、露光・現像を行った後、ドライエッチングを行うことによってゲート絶縁膜にヴィアホールを形成している。あるいは、ゲート電極を形成した後、パリレンマクを層間絶縁層として気相成長させ、エキシマレーザーを用いて、層間絶縁層およびゲート絶縁膜を貫通するヴィアホールを形成している。このため、ヴィアホールを印刷技術で効果的に作製する方法が望まれている。
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、積層された複数の層間絶縁膜を貫通するヴィアホールを印刷技術で効率的に作製することのできる回路基板の製造方法を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の回路基板の製造方法は、基板上に第1導電体を形成する第1導電体形成工程と、前記第1導電体を被覆する様に第1絶縁膜を成膜する第1絶縁膜成膜工程と、前記第1導電体上の前記第1絶縁膜に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記貫通孔に対応する前記第1導電体上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、前記金属膜の表面を撥液化させる撥液化工程と、前記貫通孔以外の領域に前駆体樹脂を印刷し、印刷後に前記前駆体樹脂を硬化して第2絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
これによれば、ヴィアホールなどのパターンを印刷法(インクジェット法)にて効率的に形成することができ、ヴィアホール以外の第1絶縁膜の品質を高いままに保つことができる。しかも、回路基板に作製された電子素子に悪影響を及ぼさない。その為に、優れた回路特性を示す回路基板を、印刷法にて、高歩留まりで安定的に製造する事ができる。
【0014】
また、前記金属膜形成工程において、前記貫通孔内に、分散媒中に複数の金属粒子を含む導電性インクを滴下して前記金属膜を形成する製造方法としてもよい。
これによれば、インクジェット法を用いて金属膜を容易に形成することができる。
【0015】
また、前記金属粒子の粒径が10〜40nmである製造方法としてもよい。
これによれば、低温で融着して低抵抗の金属膜が得られる。
【0016】
また、前記金属膜形成工程において、前記貫通孔に対応する前記第1導電体の表面上に、前記第1絶縁膜の一部からなる厚さ20μm以下の絶縁薄膜を介して前記金属膜を形成する製造方法としてもよい。
これによれば、電圧を印加することによって容易に絶縁破壊を起こして、金属膜と第1導電体との間で導通が得られることになる。これにより歩留まり向上に繋がる。
【0017】
また、前記金属粒子が、金、銀、銅、ニッケル、白金およびパラジウムのいずれかからなる構成としてもよい。
これによれば、これらの金属粒子は、特に、導電性に優れるため、得られた金属膜全体としての導電性の向上を図ることができる。
【0018】
また、前記第2絶縁膜形成工程において、前記貫通孔以外の領域に前駆体樹脂を印刷し、印刷後に前記前駆体樹脂を硬化して前記第2絶縁膜を形成する製造方法としてもよい。
これによれば、印刷法にて回路基板にヴィアホールを容易に開口でき、しかも、回路基板に作製された電子素子に悪影響を及ぼさない。そのために、優れた回路特性を示す回路基板を、印刷法にて、高歩留まりで安定的に製造することができる。
【0019】
また、前記第1絶縁膜はエーテル系溶剤または、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、フッ素系溶剤のいずれかに可溶である製造方法としてもよい。
これによれば、エーテル系溶剤、又はケトン系溶剤、又はエステル系溶剤、又はフッ素系溶剤、に可溶な絶縁材料、若しくはエーテル系樹脂、又はケトン系樹脂、又はエステル系樹脂、又はフッ素系樹脂、からなる絶縁材料を第1絶縁膜成膜工程に使用できるので、印刷法にて第1絶縁膜を形成できる。又、第1絶縁膜に対する選択肢が広いので、回路基板の機能を最大にする事ができる。さらに、第1絶縁膜をトランジスターのゲート絶縁膜として利用する場合には、第1絶縁膜材料が有機半導体膜を溶かさないので、半導体膜とゲート絶縁膜との界面が平滑で、且つ中間遷移層が存在しない綺麗な物となる。その結果、優れた特性を示す薄膜トランジスターを回路基板に作製する事ができる。
【0020】
また、前記第1絶縁膜はアルコール系溶剤に対して難溶性を示す製造方法としてもよい。
これによれば、第1絶縁膜成膜工程後に行われる撥液化工程や第2導電体形成工程、及び第2絶縁膜形成工程に、アルコール系材料乃至はアルコール系溶剤に対して可溶な材料を使用できる。即ち、これらの材料を用いて、印刷法にて撥液化工程や第2導電体形成工程、及び第2絶縁膜形成工程を進めることができる。更に、これらの工程中に第1絶縁膜が損傷を受ける事もないので、第1絶縁膜は、回路基板にて求められる機能を劣化させることなく維持できる。
【0021】
また、前記第1絶縁膜は前記前駆体樹脂に対して難溶性を示す製造方法としてもよい。
これによれば、第2絶縁膜形成工程中に第1絶縁膜が前駆体樹脂によって損傷を被ることはなく、第1絶縁膜は、回路基板にて求められる機能を劣化させることなく維持できる。
【0022】
また、前記貫通孔形成工程は、前記第1絶縁膜を溶解する溶剤を前記第1絶縁膜に滴下する溶剤滴下工程を含む製造方法としてもよい。
これによれば、溶剤はインクジェット法で滴下する事が出来るので、この構成によれば、印刷法にて微細な貫通孔を容易に形成できる。
【0023】
また、前記撥液化工程は、チオール化合物又はジスルフィド化合物を含む溶液に、前記第1導電体の表面を触れさせる製造方法としてもよい。
これによれば、チオール化合物又はジスルフィド化合物の硫黄原子が金属原子と素早く結合するので、数秒から数分程度の短時間の接触で容易に第1導電体の表面のみを選択的に撥液化させる事ができる。
【0024】
また、前記チオール化合物がフッ素化アルキル鎖を含む製造方法としてもよい。
これによれば、フッ素化アルキル鎖は表面張力を下げるので、この構成によれば、チオール化合物が結合した表面の撥液性を極めて高くする事ができる。
【0025】
また、前記ジスルフィド化合物がフッ素化アルキル鎖を含む製造方法としてもよい。
これによれば、フッ素化アルキル鎖は表面張力を下げるので、この構成によれば、ジスルフィド化合物が結合した表面の撥液性を極めて高くする事ができる。
【0026】
また、前記前駆体樹脂は水酸基を有するモノマーを含む製造方法としてもよい。
これによれば、第2絶縁膜は第1絶縁膜上に形成されるが、第1絶縁膜はアルコール系材料に対して安定であるので、この構成によれば、前駆体樹脂が第1絶縁膜に損傷を及ぼす事(第1絶縁膜を溶融する事)を避けられる。
【0027】
また、前記前駆体樹脂はアルコール系溶剤に可溶である製造方法としてもよい。
これによれば、前駆体樹脂をアルコール系溶剤で希釈できるので、その溶液の濃度を比較的自由に調整でき、各種印刷法を第2絶縁膜形成工程に適応できる。又、第1絶縁膜はアルコール系材料に対して安定であるので、第2絶縁膜形成工程が第1絶縁膜に損傷を及ぼす事(第1絶縁膜を溶融する事)を避けられる。
【0028】
また、前記前駆体樹脂は光硬化性樹脂である製造方法としてもよい。
これによれば、前駆体樹脂を印刷した後に、光照射する事で、速やか且つ容易に第二絶縁膜を形成する事ができる。
【0029】
また、前記前駆体樹脂は熱硬化性樹脂である製造方法としてもよい。
これによれば、前駆体樹脂を印刷した後に、簡単な熱処理で、容易に第2絶縁膜を形成する事ができる。
【0030】
また、前記回路基板は、ゲート絶縁膜を備えるトランジスターを有し、前記第1絶縁膜が前記ゲート絶縁膜として機能している製造方法としてもよい。
これによれば、高機能回路を有する回路基板を実現する事ができる。又、第1導電体形成工程以外は、総て印刷法にて回路基板を製造するので、生産性が非常に高く、高機能回路を有する回路基板を一日で製造できると見積られている。而も工程の自動化が容易で、印刷法の主体がインクジェット法である為に廃棄物も少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態1に係わる回路基板の製造方法を模式的に示した断面図。
【図2】実施形態1に係わる回路基板の製造方法を模式的に示した断面図。
【図3】実施形態1に係わる回路基板の製造方法を模式的に示した断面図。
【図4】(a)は、図2(f)に対応する平面図、(b)は、図2(g)に対応する平面図。
【図5】実施形態1に係わる回路基板の製造方法を模式的に示した平面図、(c)は、図3(i)に対応する平面図、(d)は、図3(j)に対応する平面図。
【図6】実施形態1に係わる回路基板の製造方法の内で貫通孔形成工程の原理を説明する図。
【図7】導電性インクの濡れ拡がり方を示す図。
【図8】実施形態1に係わる回路基板の製造方法の内で撥液化工程終了時の状態を詳細に説明した図。
【図9】ボトムゲート構造のアクティブマトリクス基板を模式的に示す断面図。
【図10】変形例2に係わる回路基板の製造方法の平面図。
【図11】実施形態1で詳述した回路基板の製造方法を用いて製造したアクティブマトリックス基板を模式的に示す平面図。
【図12】上述のアクティブマトリックス基板を用いた電気光学装置を模式的に示す断面図。
【図13】上述の電気光学装置を用いた電子機器を模式的に示す斜視図で、(a)は正面斜視図、(b)は背面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。なお、以下の図面に於いては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0033】
(実施形態1)
図1及び図2、図3は、実施形態1に係わる回路基板の製造方法を模式的に示した断面図である。また、図4及び図5は実施形態1に係わる回路基板の製造方法を模式的に示した平面図である。なお、図1から図3は、図4及び図5のA−A‘とB−B‘の断面に相当し、便宜上、図1(a)にのみA−A‘とB−B‘の位置を記載してある。以下、図1から図5を用いて、回路基板の製造方法を説明する。
【0034】
「概要」
まず図3(j)を用いて概要を説明する。
本発明は、2種類の導電層とこれらを分離する2種類の絶縁層を備える回路基板1の製造方法に関する。回路基板1は主として印刷法を用いて製造され、この製造方法に適する様に、2種類の絶縁層にヴィアホール31を開口して、2種類の導電層を互いに電気的に接続する技術に関する。図3(j)では、2種類の導電層は、ソースドレイン電極(第1導電体)11と画素電極(第3導電体)13である。また、2種類の絶縁層とは、ゲート絶縁膜(第1絶縁膜)21と層間絶縁膜(第2絶縁膜)22である。ゲート絶縁膜21はソースドレイン電極11などの第1導電体を被覆しており、その上に層間絶縁膜22が設けられ、更にその上に画素電極13が形成される。ソースドレイン電極11上にはヴィアホール31が開口されており、このヴィアホール31を介して、ソースドレイン電極11と画素電極13とが接続されている。
なお、第2導電体にてゲート電極12などが形成され、ゲート電極12と画素電極13とは層間絶縁膜22にて絶縁される。すなわち、第1導電体と第2導電体とを絶縁するのが第1絶縁膜で、第2導電体と第3導電体とを絶縁するのが第2絶縁膜である。
【0035】
このような回路基板1を製造するのに以下の工程が実施される。
まず、第1導電体形成工程として基板上にソースドレイン電極11などを形成する。
次いで、第1絶縁膜成膜工程として、第1導電体を被覆するようにゲート絶縁膜21を成膜する。
次に、貫通孔形成工程として、ソースドレイン電極11上のゲート絶縁膜21に貫通孔32を開口して、ソースドレイン電極11の表面を露出させる。その後、貫通孔32内に導電性インク43を吐出して、ソースドレイン電極11の表面に金属膜40を形成する金属膜形成工程を行う。そして、金属膜40の表面を撥液化させる撥液化工程を行う。
次に、第2絶縁膜形成工程として、貫通孔32以外の領域に層間絶縁膜22の前駆体樹脂を印刷し、印刷後にこの前駆体樹脂を硬化して第2絶縁膜を形成する。前駆体樹脂は粘度が低く、印刷時に基板表面に塗れ広がるが、金属膜40が開口(露出)している部分は、撥液化処理が施されているので、塗れず、その部位は前駆体樹脂が塗布されない。こうしてヴィアホール31が容易に、且つ確実に形成される。ヴィアホール31が形成された後に画素電極13が形成され、2種類の導電層は電気的に接続される。
【0036】
以下、回路基板1の製造方法を工程ごとに詳述する。
なお、本実施形態では好適例として、上ゲート型で、半導体膜に有機物を利用した薄膜トランジスター(有機TFT)を有するアクティブマトリックス基板を回路基板1に適応した場合について説明する。
【0037】
[第1導電体形成工程と第1絶縁膜成膜工程]
図1(a)は、本実施形態の回路基板の製造工程中で、第1絶縁膜成膜工程までを表している。基板10はポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムである。基板10としては、ガラス基板や、アルミニウム若しくはステンレス等の金属基板、シリコンやGaAs等の半導体基板、プラスチック基板等、いかなる基板を用いることもできるが、有機TFTは低温且つ簡易な方法で形成できることから、これらの内でも価格が安く、軽量で、しかも柔軟性に富むプラスチック基板を用いることが好ましい。
なお、基板10としてガラス基板を用いる場合には、その表面に有機樹脂層を形成しても良い。
【0038】
PENフィルム以外で適応可能なプラスチック基板としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルベンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオ共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、プリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、変形ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうち一種、または二種以上を積層した積層体を用いることができる。
【0039】
基板10上には金(Au)からなる第1導電体が設けられており、これらにて外部への接続する電極パッド(第1導電体)111と、ソースドレイン電極(第1導電体)11、及び不図示のデータ線やその他の配線が形成されている。第1導電体材料としては、チオール化合物又はジスルフィド化合物の硫黄原子と結合が可能な材料を使用し、金以外には、Cr、Al、Ta、Mo、Nb、Cu、Ag、Pt、Pd、Ni、やそれらの金属を用いた合金等が使用される。これらの他にも、第1導電体材料として、インジウム錫酸化物(ITO)や酸化錫、酸化亜鉛などの酸化物導電体を利用しても良い。これらの金属膜や酸化物導電体は真空蒸着法やスパッター法で均一な薄膜を堆積した後に、フォトリソグラフィー工程と湿式乃至は乾式のエッチング工程を経て、所定の形状にパターニングされる。或いは、エッチング加工が困難な材料では、所定の形状に穴が開けられたマスクを通じて金属膜を堆積(マスク堆積)しても良い。この他にも銀(Ag)ナノコロイドの分散液をマイクロコンタクトプリンティングや凸板反転印刷法によって印刷しても良い。これが第1導電体形成工程に当たる。ここでは金をPENフィルム全面に真空蒸着した後にフォトリソグラフィー工程と湿式エッチング工程とを経て、第1導電体を形成した。なお、金の湿式エッチングにはヨウ素とヨウ化アルカリ(ヨウ化アンモニウム)の混合液を用いた。
【0040】
第1導電体形成工程後に、有機半導体膜41を印刷する半導体膜形成工程を行う。インクジェット法で、ソースドレイン電極11間を結ぶ様に(チャネル形成領域を埋める様に)半導体材料を印刷する。ここでの有機半導体膜41は、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コージチオフェン)(F8T2)で、P型半導体特性を示す高分子型有機半導体である。この他に使用可能なP型の高分子型有機半導体材料としては、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ[5,5’−ビス(3−ドデシル−2チニル)−2,2’−ビチオフェン](PQT−12)、PBTTT等が挙げられる。印刷が可能な可溶性低分子有機半導体材料を用いる場合には、BTBTやチオフェンオリゴマなどが挙げられる。有機半導体はπ結合を有するので、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼンなど)に最も良く溶け、次いで環式の飽和炭化水素(シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリンなど)から成る溶剤に溶解されて、印刷される。溶解時の半導体材料の濃度は0.3%から2.5%の範囲にあることが望ましく、理想的な範囲は0.5%から1.5%である。次工程で第1絶縁膜が塗布される為に、有機半導体は溶剤選択性が高いことが望ましい。
【0041】
具体的には、上述の様に半導体膜を印刷する為に芳香族炭化水素や環式の飽和炭化水素に良く溶け、且つ、次工程以降で安定である為に水やアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、フッ素系溶剤には不溶であることが望まれる。この溶剤選択性の観点から、可溶性低分子有機半導体材料よりも高分子型有機半導体材料の方が好ましい。ここで用いたF8T2はデカリンに良く溶け、ケトン系溶剤やエステル系材料に対して安定である。半導体膜は、インクジェット法にて、デカリン中に濃度2%に溶かしたF8T2を印刷して形成した。半導体膜の厚みは10nmから200nmの範囲にあることが好ましく、理想的な範囲は30nmから60nmである。ここでの厚みは50nmであった。
【0042】
半導体膜形成工程後に第1絶縁膜成膜工程を行う。有機半導体膜41を覆って第1絶縁膜であるゲート絶縁膜21を設ける。ここでは厚みが500nmのポリメタクリル酸メチル(PMMA)をスピンコートにて成膜した。ゲート絶縁膜21は、この様に、絶縁性高分子を基板全体に渡って一様に塗布する。この時に有機半導体膜41を溶解させてはならないので、有機半導体材料が難溶性を示す溶剤(アルコール系溶剤または、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、フッ素系溶剤)に可溶な絶縁性高分子を使用する。更に、この後に行われる撥液化工程や第2導電体形成工程(ゲート電極形成工程)、第2絶縁膜形成工程(層間絶縁膜形成工程で、前駆体樹脂の塗布と硬化)など、これ以降に行われる各種工程に対してゲート絶縁膜21は安定で有らねばならない。これらの工程ではアルコール系材料やグリコール、グリセリンが使用されるので、絶縁性高分子はこれらに対して安定である必要がある。即ち、第1絶縁膜はアルコール系溶剤や材料に対しては難溶性を示し(溶け難く)、エーテル系溶剤或いはケトン系溶剤、エステル系溶剤、フッ素系溶剤のいずれかには可溶性を示す(溶ける)材料である。具体的には、PMMAを始めとするアクリル系高分子、Cytop(旭硝子の商品名)に代表される全フッ素系高分子、或いは、特開2010−74088号公報に示されるようなフッ素系芳香族高分子、更にはポリビニルフェノール(PVP)やノボラック樹脂などのフェノール系高分子を使うことができる。アクリル系高分子はエステル基を有するので、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤に良く溶け、エタノールやプロピレングリコールなどのアルコール系材料には殆ど溶けない。全フッ素系高分子はフッ素系溶剤に溶かすことができるが、アルコール系材料など多くの溶剤に対して不溶性を示す(溶けない)。また、フッ素系芳香族高分子はカルボニル基やエステル基を有するので、フッ素系溶剤の他にケトン系溶剤やエステル系溶剤に良く溶けるが、エタノールなどのアルコール系溶剤には僅かしか溶けず難溶性を示す。
【0043】
フェノール系高分子はアルコールに溶けるため、そのままでは第1絶縁膜に使えないが、不溶化することによって適用可能となる。即ち、まず、架橋剤をフェノール系高分子に混合して塗布する。次いで貫通孔形成工程を済ました後に、加熱などで化学反応を促進して架橋させる。こうして第1絶縁膜は不溶化され、以降の工程に対して安定となる。
【0044】
オレフィン系高分子は、水酸基やカルボニル基などの極性官能基を有する材料と共重合させたり、或いはこれらを側鎖として付加したりすることによって、エーテル系溶剤やケトン系溶剤、エステル系溶剤に可溶とすることができる。従って、こうした処理を行ったオレフィン系高分子も第1絶縁膜として使用可能である。この場合、シクロオレフィン系高分子が好適である。
【0045】
後述する様に、前駆体樹脂は水酸基を付与されたモノマーでこれを合成して第2絶縁膜とするが、第1絶縁膜はアルコール系材料に対して安定なので、前駆体樹脂に対しても難溶性を示すことになる。第1絶縁膜の厚みは、100nmから1000nmの範囲にあることが望ましく、200nmから800nmの範囲内にあることがより好適である。
【0046】
[貫通孔形成工程]
図1(b)および図1(c)は、本実施形態の回路基板の製造工程中で、貫通孔形成工程を表している。貫通孔形成工程は、図1(b)に示すように、第1絶縁膜を溶解する溶剤を第1絶縁膜に滴下する溶剤滴下工程から始まる。具体的には、第1絶縁膜上にインクジェット51でγ−ブチロラクトンを、貫通孔を開口すべき場所に滴下する。図1(b)では、ソースドレイン電極11の電極部113上に、体積が5pL〜10pL程度のγ−ブチロラクトンの液滴52を数回、滴下した。
ここでは、5〜10pL程度の高分子溶液の液滴52を同一地点に4滴連続して吐出し、数秒間乾燥させるサイクルを3回ほど繰り返した。このようにして、例えば、厚さ900nmの第1絶縁膜(ゲート絶縁膜21)に貫通孔32を形成した。あるいは、5〜10pL程度の高分子溶液の液滴52を同一地点に1滴だけ吐出し、数秒間乾燥させるサイクルを複数回繰り返すことによって貫通孔32を形成してもよい。これにより、さらに小さな径の貫通孔32を形成することができる。
【0047】
貫通孔32の大きさは、外径D1が100μm未満、内径D2が60μm未満であり、ソースドレイン電極11の表面の一部を露出させる。
【0048】
貫通孔形成工程に用いる溶剤は、第1絶縁膜を溶解しうる溶剤(エーテル系溶剤或いはケトン系溶剤、エステル系溶剤、フッ素系溶剤のいずれか)を用い、これらの内からインクジェット51で吐出するのに好適な、粘度が1mPa・sから5mPa・sの範囲にある溶剤を使用することが望ましい。粘度が1mPa・s以上であれば、容易にインクジェット51で溶剤を滴下でき、5mPa・s以下で有れば、溶液に微小流が生じて、貫通孔32を開口できる。更に、微細な貫通孔を形成するには、溶剤の表面張力は35mN/m以上、理想的には40mN/m以上あることが好ましい。また、深い貫通孔を形成するには、溶剤の沸点が180℃よりも高いことが好ましい。ここで、滴下したγ−ブチロラクトンは環状エステルで、粘度は1.7mPa・s、表面張力は44mN/m、沸点は207℃であった。貫通孔形成工程時の温度や風速などにて定まる溶剤の蒸発速度にも依存するが、これらの条件を満たし、通常の作業環境(温度20℃から30℃、相対湿度30%から80%、空気のダウンフロー風量0.01m/sから0.1m/s)で、20pL程度の液滴52を1回、滴下すると200nmから400nm程度の深さの穴を形成でき、40pL程度の液滴52を1回、滴下すると400nmから600nm程度の深さの穴を形成できる。従って、第1絶縁膜の厚さが400nm程度未満で、40pL程度の液滴52を用いれば、1回の溶剤滴下でソースドレイン電極11に到達する貫通孔を形成できる。第1絶縁膜がより厚い場合や、溶解性が不十分な場合には、液滴52を同じ位置に複数回、滴下して貫通孔を形成する。
【0049】
ここで、貫通孔32の形成原理に関して詳述する。
[貫通孔形成原理]
図6は、実施形態1に係わる回路基板の製造方法の内で貫通孔形成工程の原理を説明する図である。ここでは貫通孔形成原理を説明する。
ゲート絶縁膜(第1絶縁膜)21に貫通孔32を開口するには、ゲート絶縁膜21にインクジェット法で溶剤の液滴52を滴下する。この際に、図6(a)に示すように、ゲート絶縁膜21上に滴下された溶剤は、濡れ性に依存して一定の径まで濡れ広がる。溶剤はその下のゲート絶縁膜21を溶解しつつ、蒸発していく。溶剤が、蒸発する際には図6(b)の矢印が示す様な、液滴52の外縁部に向かった微小流が発生する。これは液滴52のコンタクトライン(外縁部)がピニングされ(固定され)、簡単には移動できないことに由来する。その結果、コンタクトライン付近の溶剤の蒸発分が中央からの液の移動で補われ、中心から外縁部に向かった微小流が発生する。溶剤に溶けた高分子(ゲート絶縁膜21の構成要素)も、この微小流に乗って、コンタクトライン付近へと集められる。こうして図6(c)に示す様なクレータ状の貫通孔32が形成される。
【0050】
以上の原理から、この方法で貫通孔32を開口させるには、(1)第1絶縁膜が滴下される溶剤に容易に溶けること、(2)溶剤と第1絶縁膜の接触角が15°程度以上有り、余り濡れ広がらないこと、(3)溶剤の乾燥速度が遅く、第1絶縁膜が溶剤に溶け、それが微小流に乗って移動するだけの時間があること(即ち、溶剤の沸点が高いこと)、(4)溶剤の粘度が或る程度低く、液の移動が可能であること、の4点が重要であると理解できる。
【0051】
実験によると、溶解性に優れる酢酸ブチルやPGMEAは粘度が低過ぎて、単純なインクジェット法では溶液の吐出が困難であった(駆動波形を最適化する必要がある)。表面張力が概ね40mN/m程度で有ると、PMMAに対する接触角は15°弱となり、20pLの液滴52で直径が100μm程度の外縁周(図6(c)で盛り上がった頂点部)と直径が20μmから30μmの開口部(図6(c)で電極が露出した底面部)を形成して貫通孔32を形成できた。ジクロヘキサノールアセテートは、優れた溶解性を示すが、沸点が173℃と低い為に、一回の滴下で10nm程度しか掘れない。従って、沸点は180℃程度以上が望まれる。
【0052】
上述したように、溶剤滴下工程後には、図1(c)に示すように、溶剤が滴下された位置に貫通孔32が形成される。すなわち、第1導電体の表面で第3導電体と接続すべき位置に貫通孔32が開口される。但し、数万個から数百万個にも及ぶ多くの貫通孔32の内には、完全な貫通孔32が形成されない場合もあり得る。一見、貫通孔32が底まで達している様に見えても、非常に薄い絶縁体の薄膜が第1導電体の表面に残る場合があり得る。これを取り除く為に、溶剤滴下工程後に、第1絶縁膜を均一にエッチングするエッチング工程が行われる。ここでは、酸素プラズマ中に基板全体を晒して、第1絶縁膜の表面と第1導電体の表面に残留している虞のある高分子層を削り取った。具体的には、40W/cmの酸素プラズマ中に2分間基板を晒した。これにより、薄皮状に残った高分子層を完全に除去することができる。
【0053】
エッチング工程としては、上述の酸素プラズマ処理の他に、オゾン照射処理であっても良い。更には溶解性を制御した溶剤によってリンスしても良い。この際に、半導体膜には不溶性を示し、第1絶縁膜に対しては可溶性を示す溶剤(可溶性溶媒、例えばエーテル系溶剤或いはケトン系溶剤、エステル系溶剤)と、半導体膜にも第1絶縁膜にも不溶性を示す溶剤(不溶性溶媒、例えばアルコール系溶剤)と、を適当な割合で混合した混合溶媒にて短時間リンスする。混合溶媒の例としては、不溶性溶媒と可溶性溶媒との体積比を1対1から10対1程度の割合とする。例えば、エタノールを2に対してアセトンを1として混合し、溶解性を制御した溶剤を得ることができる。この混合溶媒に、基板を1分から5分程度浸漬すると、薄皮状の絶縁性高分子層は綺麗に除去される。混合溶媒に浸す他にも、混合溶媒をシャワー状、或いはスピンコート状に基板表面に供給しても良い。
【0054】
なお、前述の如く第1絶縁膜に反応性の材料(架橋剤を伴うフェノール系高分子など)を用いた際には、エッチング工程の終了後に反応を促進する熱処理などを施す。
【0055】
[金属膜形成工程]
図1(d)は、本実施形態の回路基板の製造工程の中で、金属膜形成工程を表している。
図1(d)に示すように、第1絶縁膜に形成した貫通孔32内に導電性インク43を滴下して、貫通孔32内に露出するソースドレイン電極11の表面上に、所定の膜厚の金属膜40を形成する。導電性インクとしては、銀の微粒子が、水系あるいは有機系の分散媒中に分散保持されてなる、銀コロイドインクが用いられる。ここでは、粒子径が10〜40nmのナノ粒子を用いることが望ましい。
【0056】
貫通孔32内に滴下された導電性インクは、図7(a)〜(c)に示すように、露出する電極表面上に濡れ広がる。
導電性インクの濡れ拡がり方は、貫通孔が完全に貫通しているか否か、導電性インクの滴下量等に応じて異なる。
【0057】
図7(a)に示すように、例えば、疎水性高分子の第1絶縁膜に対してCFなどのフッ化炭素中でプラズマ処理を行った場合、有機絶縁体の表面がフッ素化されるため第1絶縁膜は導電性インクをはじき、第1絶縁膜を完全に貫通した貫通孔32内に露出しているソースドレイン電極11の露出部分を選択的に濡らすことになる。貫通孔32と第1絶縁膜との間で導電性インク43に対する濡れ性に差がある場合、濡れ性の低い領域に取り囲まれることによって、貫通孔32内に導電性インク43が閉じ込められた状態となる。
【0058】
図7(b),(c)に示すように、貫通孔32と第1絶縁膜との間で導電性インク43に対する濡れ性に差がない場合、貫通孔32の形状そのもの、つまり、貫通孔32の周縁を構成している第1絶縁膜の盛り上がり部分によって、貫通孔32内に導電性インク43が閉じ込められた状態となる。ここで、貫通孔32と第1絶縁膜との間で導電性インク43に対する濡れ性に差がない場合とは、貫通孔32が第1絶縁膜を完全に貫通していない状態(つまり、貫通孔32の底部に絶縁薄膜が残っている状態)、あるいは、上述したように酸素プラズマ処理を施して貫通孔32を完全に貫通させたことによって第1絶縁膜およびソースドレイン電極11ともに濡れ性が高くなっている状態が挙げられる。
【0059】
本実施形態では、インクジェット51によって導電性インク43を貫通孔32内に塗布した後、80〜150℃で加熱・焼成を行い、銀の金属膜40を得ている。なお、インクジェット法に代えて、スクリーン印刷法やディスペンサ法を用いることもできる。
【0060】
貫通孔32の少なくとも一部が第1絶縁膜を貫通していれば、ソースドレイン電極11と金属膜40との間で導通が得られる。しかし、貫通孔32内に薄い絶縁体の薄膜が残っていて、貫通孔32内で露出させるべき第1導電体の表面が絶縁薄膜によって覆われている場合、原理的には導通は得られない。しかし、この絶縁薄膜の厚さは20nmと非常に薄いため、完成後に電圧を印加することで絶縁薄膜は容易に絶縁破壊を起こして導通状態が得られる。
【0061】
[撥液化工程]
図2(e)は、本実施形態の回路基板の製造工程中で、撥液化工程を表している。
また、図8は、実施形態1に係わる回路基板の製造方法の内で撥液化工程終了時の状態を詳細に説明した図である。図2(e)に示すように、撥液化工程は、チオール化合物又はジスルフィド化合物を含む溶液61に、第1導電体の表面を触れさせる。最も簡便な手法としては、チオール化合物又はジスルフィド化合物を含む溶液61に、貫通孔が形成された基板を数秒間から数分間程度の短時間浸すことである。チオール化合物又はジスルフィド化合物の硫黄原子は、第1導電体をなす金属原子と速やかに結合するので、こうした短時間の接触処理で、容易に第1導電体(貫通孔32内に露出するソースドレイン電極11)の表面は撥液化される。チオール化合物又はジスルフィド化合物がフッ素化アルキル鎖を含んでいると(フッ素化アルキルチオール又はフッ素化アルキルジスルフィド、以降両者を合わせてフッ化アルキルチオール62と略称する)、撥液性が増して更に好ましい。ここでは、HS−(CH−(CF−CFの化学式で表されるフッ化アルキルチオール62を用いた。具体的には、パーフルオロアルキルチオールを用いた。
【0062】
図8(b)に示すように、チオール化合物やジスルフィド化合物の硫黄は金などの金属と強固に結合し、フッ化アルキルチオール62で覆われた表面にはフッ素化アルキル鎖が覆い尽くし、表面エネルギーを下げる。その結果、金属表面の水に対する接触角は100°から140°程度に大きくなる。この様に、撥液化処理とは、第1導電体の表面エネルギーを下げて、水に対する接触角を90°以上にする処理である。
【0063】
フッ化アルキルチオール62は、アルコール溶媒(エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなど)に0.005%から1%の濃度で溶解される。濃度は、0.05%から0.5%がより好適な範囲となる。濃度が0.2%前後の溶液に基板を浸漬すると、図8(a)に示すように、貫通孔32内に露出するソースドレイン電極11の表面が、ほぼ瞬間的に(1秒以下の極短時間内に)フッ化アルキルチオール62で覆われる。但し、工程を安定的に行う立場から、浸漬時間は1分以上とするのが好ましい。また、生産性を高める立場と、浸漬による基板ダメージを最小にする立場とから、浸漬時間は3分以下とすることが望ましい。ここでは、上述のアルキルチオールをエタノールに0.2%の濃度に溶解させた。
【0064】
フッ化アルキルチオール62は、フッ素系溶媒にも溶解するので、これをフッ化アルキルチオール62の希釈溶媒としても良い。但し、この場合、第1絶縁膜はアルコール系溶剤やアルコール系材料とフッ素系溶剤との両者に対して難溶性を示し、エーテル系溶剤或いはケトン系溶剤、エステル系溶剤、のいずれかには可溶性を示す高分子材料でなければならない。具体的には、アクリル系高分子か、フッ素系芳香族高分子、フェノール系高分子、或いはオレフィン系高分子などである。
【0065】
チオール化合物又はジスルフィド化合物は、必ずしも硫黄原子から伸びる主鎖がフッ素で置換されている必要性はない。水に対する接触角が90°以上となる主鎖であれば、フッ化物でなくとも撥液化工程に使用可能である。硫黄原子から伸びる主鎖がフッ素化されていると、水に対する接触角を容易に110°以上にすることができ、優れた撥液性を示すことができる。フッ化アルキルチオール62には、
HS−(CH)k−O−(CH)l−(CF)m−CF
HS−(CH)k+l−(CF)m−CF
の化学式で表される材料を用いることができる。硬く体積の大きいフッ素化アルキルに対して、柔軟で体積の小さいアルキル鎖を導入して、緻密なSAM膜を形成するには、k+1の値は4以上16以下の範囲にあることが好ましく、lの値は0以上3以下の範囲にあることが好ましい。優れた撥液性を示させるにはmの値は1以上が必要となり、アルコール系溶剤などへ溶解させる為にはmの値は11以下が望ましい。mの値が12以上になるとアルコール系溶剤への溶解性が低下し、撥液化工程に使用するのが困難となる。なお、フッ素化アルキルに代わり、これらの一部あるいは全部を、フッ素化された脂環式炭化水素で置換しても良い。
【0066】
なお、ここでは基板を、フッ化アルキルチオール62を含む溶液に浸したが、露出した複数の第1導電体の内で、そのいくつかを撥液化し、残りは撥液化させたくない場合には、撥液化させたい貫通孔32にのみインクジェット法で、チオール化合物又はジスルフィド化合物を含む溶液61を滴下しても良い。
【0067】
また、前述の如く、第1導電体材料として、インジウム錫酸化物(ITO)や酸化錫、酸化亜鉛などの酸化物導電体を利用した場合には、チオール化合物又はジスルフィド化合物に代わり、酸化物に吸着するリン酸やホスホン酸、脂肪酸、有機シランなどの化合物を用いて撥液化する。具体的にはフッ化アルキル基を有するリン酸エステル、または、フッ化アルキル基を有するリン酸エステル塩、フッ化アルキル基を有するアルコールとリン酸とのエーテル、フッ化アルキル基を有するホスホン酸、フッ化アルキル基を有するホスホン酸エステル、フッ化アルキル基を有するホスホン酸エステル塩、カルボキシ基とフッ化アルキル基とを有する化合物(フッ化アルキル基を有する脂肪酸)、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤などの化合物を用いる。
【0068】
また、フッ素で置換されていないアルキルチオールでも撥水化は可能であるが、フッ素化されたアルキル鎖に比較して撥水性は劣る。フッ素化された炭素が、1分子あたり2つ以上12以下であることが望ましい。炭素数が12を超えるとアルコールなどへの溶解性が低下する。フッ素化アルキル基とチオール基、またはジスルフィド基との間には、通常のアルキル鎖を有することが望ましい。硬質で体積の大きいフッ素化アルキル基に対して、軟質で体積の小さいアルキル鎖が含まれることで、緻密なSAM膜が形成されやすいと考えられている。ここで、アルキル鎖の長さは4以上16以下が望ましい。
【0069】
[親水性電極形成工程]
図2(f)は、本実施形態の回路基板の製造工程中における親水性電極形成工程を表している。また、図4(a)は、図2(f)に対応する平面図である。親水性電極形成工程は、図2(f)に示すように、第1導電体の内で、第2導電体と接続されるべき場所にある第1絶縁膜を除去して親水性の(撥液性でない)電極表面を持つ貫通孔を形成する工程である。
【0070】
回路基板1には、第1導電体と第2導電体との接続が必要となる場合がある。例えば、外部の制御回路に走査線を接続する電極パッド111では、第1導電体の電極パッドと第2導電体の走査線とを接続したい場合がある。また、例えばインバーターの直列回路や有機ELディスプレイの画素回路を構成する場合、1つのトランジスターの出力(ドレイン電極、第1導電体)が別のトランジスターの入力(ゲート電極、第2導電体)に接続されることがある。このように、回路基板1によっては、第1導電体と第2導電体との接続が必要となる場合が見られる。こうした際に、この親水性電極形成工程を行う。これは第1導電体と第2導電体の電気的接続安定性を高める為と、次の第2導電体形成工程を印刷法で行いたい為とによる。第1導電体表面が撥液性である場合には接続不良が発生し易いので、歩留まり良く電気的接続を得るには第1導電体表面は親水性であることが望まれる。また、第2導電体の印刷法では水やアルコール系溶剤を用いた導電体用インクを用いるので、第1導電体表面が撥液性であると、導電体用インクがはじけてしまい、貫通孔部に第1導電体を描画できない。これらの理由から、第1導電体と第2導電体との接続が必要となる場所の第1導電体表面は親水性であることが望まれる。
【0071】
親水性電極形成工程は、図2(f)に示すように、インクジェット51を利用して、第1絶縁膜を溶解する溶剤の液滴52を、親水性電極を形成したい第1電極上(例えば電極パッド111上)の第1絶縁膜に滴下して、親水性の電極開口部を形成する工程である。ここでは貫通孔形成工程と同じ溶剤(γ−ブチロラクトン)を用いて、同じ手法(インクジェット51での所定量の溶剤を所定回数滴下)で、親水性の電極開口部を設けた。こうして、図2(f)や図4(a)に示すように、電極パッド111上など、親水性の電極開口部が必要となる部位に貫通孔32が設けられる。
【0072】
なお、前述の如く、撥液化工程にインクジェット法を用いて、複数の第1導電体開口部の内を選択的に撥液化し得る場合には、この親水性電極形成工程は不要となる。その場合、貫通孔形成工程時に総ての貫通孔32を開口させ、撥液化工程時に撥液性の電極表面と親水性の電極表面とをインクジェット法を用いて作り分ける。具体的には、何も処理しない電極表面は親水性なので、撥液性の電極表面が欲しい貫通孔32にのみフッ化アルキルチオール62を滴下する。
【0073】
[第2導電体形成工程]
図2(g)は、本実施形態の回路基板1の製造工程中における第2導電体形成工程を表している。また、図4(b)は、図2(g)に対応する平面図である。第2導電体形成工程は、撥液化工程後に、第1絶縁膜上に第2導電体を形成する工程である。
【0074】
図2(g)に示すように、第2導電体は、導電体用インク53をインクジェット51で滴下して、その後に焼成することで、ゲート電極(第2導電体)12や不図示の走査線と云った第2導電体のパターンを形成する。導電体用インク53としては、低温で焼成可能な銀ナノ粒子を分散させたインクを用いることが望ましい。ここでは銀ナノ粒子を水とプロパンジオールとの混合溶媒に分散させた導電体用インク53(以下、銀インクと略称する)を用いた。線幅が40μm程度の細い線をインクジェット51で印刷するには、導電体用インク53の表面張力が40mN/m以上で60mN/m以下の範囲に入る様にすることが望まれる。こうすると有機物絶縁体上に滴下されたインクの濡れ広がりを小さく制御でき、細い配線が描画される。
【0075】
また、インクジェット51で印刷する為には、導電体用インク53の粘度が1mPs・s以上20mPs・s以下の範囲内に調整されていることが必要となる。更に、導電体用インク53の焼成中に半導体材料などの有機物の機能劣化を防ぐために、導電体用インク53は80℃から150℃の温度範囲内の処理条件で焼成できることが望ましい。ここで用いた銀インクは大気中、100℃で30分の熱処理を施すことで、焼成後に比抵抗が50μΩcm以下の十分に低い導体となった。
【0076】
導電体用インク53の分散媒としては、表面張力が72mN/mと大きい水、或いはグリコール、或いはこれらの混合溶媒を含む物が、表面張力が大きく、好ましい。水だけでは粘度が低過ぎたり、或いは表面張力が高過ぎたりして、連続した線を描くのが困難な場合には、水にアルコール系溶剤やジオール系溶剤、或いはグリセリン系溶剤を添加する。
【0077】
銀インクの他には、上述の分散媒にカーボン(カーボンブラックやグラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェンなど)を分散させたインクを用いることもできる。なお、本実施形態では、第2導電体の表面を撥液化させたくなかったので、第2導電体形成工程に先立って、撥液化工程を行った。カーボンを分散させたインクを用いる場合、カーボンインク表面は、撥液化工程を施しても、撥液化されない。従って、この場合には第2導電体形成工程後に撥液化工程を行っても良い。
【0078】
図4(b)に示すように、銀インクを、親水性の電極開口部を有する電極パッド111から走査線やゲート電極12へと印刷する。これにより、第1導電体からなる電極パッド111と走査線及びゲート電極12とを接続できる。外部の制御回路に接続する配線と電極バッドは、フォトリソグラフィー工程を利用した第1導電体のパターンで形成されている為、ライン・アンド・スペスが50μm以下と云った高密度な配線が可能で、回路基板1を利用した電子機器の小型化に役立つ。
【0079】
[第2絶縁膜形成工程]
図3(h),(i)は、本実施形態の回路基板の製造工程中で、第2絶縁膜形成工程を表している。また、図5(c)は、図3(i)に対応する平面図である。第2絶縁膜形成工程は、回路基板に第2導電体があれば、第2導電体形成工程後に行われる。
【0080】
第2絶縁膜は層間絶縁膜であり、主として第2導電体と第3導電体とを電気的に分離している。第2絶縁膜を形成するには、図3(h)に示すように、まず、層間絶縁膜の前駆体樹脂を、貫通孔32を避ける様に印刷し、次いで図3(i)に示すように、前駆体樹脂の反応を促進させて第2絶縁膜とする。前駆体樹脂は水酸基を有するモノマーを含んでおり、アルコール系溶剤に可溶である。また、前駆体樹脂は光硬化性樹脂であることが好ましい。ここではアルコール系溶剤に可溶である、ヒドロキシ型アクリルモノマー(アクリル酸乃至はメタクリル酸と多価アルコールとのエステル)を含む紫外線硬化性樹脂(以降、UVインク54と略す)を前駆体樹脂とした。
【0081】
図3(h)に示すように、まずUVインク54を貫通孔32以外の領域(すなわち、第1絶縁膜と第2導電体とが存在している領域)にインクジェット51で滴下する。UVインク54等の前駆体樹脂は、インクジェット51に適する用に調製され、モノマーが主成分とされる。高分子成分は前駆体樹脂に含まないか、含んでも僅かである。モノマーは極性を高めるべく、−OH基を含んでいることが望ましい。こうしたモノマーとしては、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルアクリレートや、テトラエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどが使用され得る。こうしたアクリル系モノマーは−OH基を含む為に極性が高く、溶解度パラメーター(SP値)は9.5以上である。その為に、ゲート絶縁膜21の高分子を溶解することがなく、ゲート絶縁膜21との密着性も高い。
【0082】
この様に前駆体樹脂はSP値が9.5以上となるモノマーとし、これを有機溶媒と同等の表面張力(20mN/m〜35mN/m)で、粘度も同等で10mPa・sから30mPa・sの範囲に調整して、インクジェット51で容易に吐出できる様にする。表面張力が比較的低く、低粘度である為に、有機絶縁体上や金属材料上では、UVインク54は着弾後にその径の5倍以上の径に均一に広がる。一方で、貫通孔32内に形成された金属膜40の撥液化された表面では、濡れ角が45°以上ある為に、前駆体樹脂の濡れ広がりは抑制される。つまり、撥液化された金属膜40の表面がUVインク54で覆われないまま、前駆体樹脂は第1絶縁膜と第2導電体との上を広がっていくことになる。つまり、撥液化された金属膜40の境界近傍で前駆体樹脂の濡れ広がりが停止して、貫通孔32の孔径(外径)よりも小さな径を有するヴィアホール31が形成される。このようにして第2絶縁膜が形成されることになる。
【0083】
第2絶縁膜の厚みは、UVインク54の滴下量を調整することにより、制御される。本実施形態の様に、フィルム上に形成されたTFTの層間絶縁膜22を第2絶縁膜に利用する場合には、TFTを機械的に保護する点に於いても、第1導電体乃至は第2導電体と第3導電体との寄生容量を最小にする点に於いても、層間絶縁膜22の厚みは1μm以上とすることが望ましい。層間絶縁膜22が20μmを超える厚さでは、UVインク54が硬化する際の体積変化の影響で、基板に反りが出てしまう為、この厚さ以下であることが望ましい。また、滴下するインクの量が多すぎると、金属膜40の表面での濡れ角を越えてしまい、撥液化された金属膜40の表面をUVインク54が覆わない状態を維持することができなくなる。前駆体樹脂の有機絶縁体上での濡れ角は、45°以上で、70°あるいは90°以下である。液状膜の厚みが20μmを超えると、液の自重と表面張力とから理論的に定まる接触角が先の濡れ角を超えてしまう。こうなると、撥液化された金属膜40の表面も前駆体樹脂に覆われてしまうので、理論的に定まる接触角が先の濡れ角を超えない滴下量に抑える必要がある。
【0084】
次に、図3(i)に示すように、UVインク54に紫外線55を照射して、UVインク54を硬化させ、ヴィアホール31を形成する。硬化を完全に行なう為に、紫外線照射に加えて、加熱処理を行っても良い。UVインク54を印刷後に紫外線55を照射しているので、金属膜40上以外は平坦な第2絶縁膜が得られる。なお、ここでは、UVインク54を印刷した後、一括して紫外線55を照射したが、UVインク54を印刷すると同時に紫外線55を照射しても良い。この場合は濡れ広がりが化学反応で抑制され、金属膜40の表面にUVインク54を塗布せぬ制御性が増す。インクジェットのヘッドに隣接してLEDを光源とする紫外線照射装置を設けることによって、小型の装置を実現することができる。
【0085】
なお、UVインク54はアクリル系モノマーに限られず、エポキシ系モノマー等を用いても良い。更に、前駆体樹脂はUVインク54に限られることはなく、熱硬化性樹脂であっても良い。これらの場合も前駆体樹脂がゲート絶縁膜を溶解してはならないので、エポキシ系モノマーや熱硬化性樹脂の中に水酸基を導入して極性を上げておく。
【0086】
インクジェット法で1μm以上の厚みを有する第2絶縁膜を形成するには、上述の硬化性モノマーを利用する方法の他に、表面処理された微粒子と高分子材料との分散系を利用する方法であっても良い。例えば、シリカの微粒子を、有機溶剤に分散する様に、レシチンなどの界面活性剤にて表面処理をし、これをバインダー用の高分子樹脂と混ぜて分散液とする。この分散液は低粘度の前駆体樹脂となり、インクジェット法で印刷ができる。而も、これが乾燥した後には、第2絶縁膜の厚さは1μm以上と比較的大きくし得る。
【0087】
[第3導電体形成工程]
図3(j)は、本実施形態の回路基板の製造工程中で、第3導電体形成工程を表している。また、図5(d)は、図3(j)に対応する平面図である。第2絶縁膜が形成された後に、ヴィアホール31を含む領域に第3導電体を形成する。ここでは、第3導電体は画素電極13である。
【0088】
画素電極13はカーボンインクを使用して、スクリーン印刷で形成される。スクリーン印刷は印刷速度が速く生産性に優れる。その一方で、スクリーンが被印刷体に接触して印刷を行うので、この印刷法を有機TFTの製造に用いると、薄膜層を傷つける虞がある。ところが本実施形態では、硬化された厚い第2絶縁膜が最表面を覆っているので、スクリーン印刷の様な接触して印刷を行なう方式でも、有機TFTの欠陥に繋がず、優れた生産性と容易な印刷工程と云った長所を享受できる。しかも第2絶縁膜の反応が終了しているので、カーボンインクの溶媒も特に制限されない。
【0089】
カーボンインクは、カーボン(カーボンブラックやグラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェンなど)が有機溶剤に分散されている。有機溶剤としてはケトン系溶剤やエステル系溶剤、エーテル系溶剤等が使用される。カーボンインクの粘度は、スクリーン印刷に適する様に、2000mPa・sから20000mPa・sの範囲へと調整される。こうすると、撥液化された第1電極表面に印刷されても、カーボンインクは弾かれず、電気的にも接続される様になる。また、画素電極13の大半は層間絶縁膜22の上に形成されているので、画素電極13が剥がれることもない。但し、電気的接続の信頼性や歩留まり等を考えると、画素電極13の印刷に先立ち、酸素プラズマ等のプラズマ処理やオゾン照射処理などを施して、フッ化アルキルチオール62を第1電極表面から除去しておくことが望ましい。以上の工程を経て有機TFTを有する回路基板1が製造される。
【0090】
上述した通り、本実施形態に係わる回路基板の製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
ヴィアホールなどのパターンを印刷法(インクジェット法)にて効率的に形成することができ、ヴィアホール以外の第1絶縁膜の品質を高いままに保つことができる。しかも、回路基板に作製された電子素子に悪影響を及ぼさない。そのために、優れた回路特性を示す回路基板を、印刷法にて、高歩留まりで安定的に製造することができる。
【0091】
また、インクジェット51によって形成した貫通孔32内に金属コロイドよりなる導電性インク43を滴下することによって、金属膜40を形成している。第1絶縁膜に形成される多数の貫通孔32の中には完全な貫通孔となっていない場合もあるが、この絶縁薄膜は非常に薄いため、その上に金属膜40を形成することによって、完成後に電圧を印加すれば絶縁薄膜は容易に絶縁破壊を起こしてソースドレイン電極11と金属膜40との間の導通が得られることになる。よって、貫通孔32の形成不良が生じたとしても、絶縁薄膜を除去するための処理を省くことができるので、歩留まりの向上および製造時間の短縮が図れる。
【0092】
また、金属粒子の粒径が10〜40nmであることから、低温で癒着して低抵抗の金属膜40が得られる。さらに、金属粒子として銀粒子を用いているが、これに限られたものではなく、金、銅、ニッケル、白金およびパラジウムのいずれからなる金属粒子を用いてもよい。これら金属粒子は、特に、導電性に優れているため、得られた金属膜40の全体としての導電性の向上を図ることができる。
【0093】
第1導電体上の第1絶縁膜に印刷法にて貫通孔32を開口して第1導電体の表面を露出させ、第1導電体の表面を撥液化させてから、貫通孔32以外の領域に前駆体樹脂を印刷して第2絶縁膜を形成するので、印刷法にて回路基板1にヴィアホール31を容易に開口できる。しかも、回路基板1に作製された電子素子に悪影響を及ぼさない為に、優れた回路特性を示す回路基板1を、印刷法にて、高歩留まりで安定的に製造することができる。
【0094】
また、撥液化工程後に、第1絶縁膜上に第2導電体を形成するので、第1導電体で貫通孔32が開口している部位のみが選択的に撥液化され、第2導電体は撥液化されない。こうして、次の第2絶縁膜形成工程では、第2導電体上に均一に前駆体樹脂を印刷でき、第2導電体を第2絶縁膜にて電気的に絶縁することができる。
【0095】
また、第2絶縁膜形成工程後に、貫通孔32を含む領域に第3導電体を形成するので、第1導電体と第3導電体との間で、電気的に導通を取ることができ、印刷法にて、複雑で高機能な回路を有する回路基板1を製造することができる。
【0096】
また、第1導電体形成工程後に、有機半導体膜41を印刷し、その後に第1絶縁膜成膜工程を行うので、回路基板1に有機物薄膜トランジスターを形成できる。更に、第1導電体形成工程の工程自由度が高く、高性能な薄膜トランジスターを製造することができる。また、有機半導体膜41やゲート絶縁膜21の形成に先立って、フォトリソグラフィー工程とエッチング工程を利用できるので、チャンネル形成領域長を数ミクロン、乃至はそれ以下へと、極めて短くすることができ、スケーリングメリットを生かした薄膜トランジスター回路を回路基板1に設けることが可能となる。
【0097】
また、有機半導体膜41はエーテル系溶剤に対しても、ケトン系溶剤に対しても、エステル系溶剤に対しても、フッ素系溶剤に対しても難溶性を示すので、有機半導体を含むインクを準備できる。即ち、有機半導体をインクジェット51などの印刷法で、回路基板1に求められる形状に印刷できる。
【0098】
また、第1絶縁膜はエーテル系溶剤または、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、フッ素系溶剤のいずれかに可溶であるので、印刷法にて第1絶縁膜を形成できる。また、第1絶縁膜に対する選択肢が広いので、回路基板1の機能を最大にすることができる。更に、第1絶縁膜をトランジスターのゲート絶縁膜21として利用する場合には、第1絶縁膜材料が有機半導体膜41を溶かさないので、優れた特性を示す薄膜トランジスターを回路基板1に作製することができる。
【0099】
また、第1絶縁膜はアルコール系溶剤に対して難溶性を示すので、撥液化工程や第2導電体形成工程、及び第2絶縁膜形成工程に、アルコール系材料乃至はアルコール系溶剤に対して可溶な材料を使用でき、更に、これらの工程中に第1絶縁膜が損傷を受けることもないので、第1絶縁膜は、回路基板1にて求められる機能を劣化させることなく維持できる。
【0100】
また、第1絶縁膜は前駆体樹脂に対して難溶性を示すので、第2絶縁膜形成工程中に第1絶縁膜が前駆体樹脂によって損傷を被ることはなく、第1絶縁膜は、回路基板1にて求められる機能を劣化させることなく維持できる。
【0101】
また、貫通孔形成工程は、第1絶縁膜を溶解する溶剤を第1絶縁膜に滴下するので、印刷法にて微細な貫通孔32を容易に形成できる。
【0102】
また、貫通孔形成工程は、第1絶縁膜を均一にエッチングするエッチング工程を含み、エッチング工程は溶剤滴下工程後に行われるので、希に僅かに残った薄膜を除去でき、確実に貫通孔32を形成できる。
【0103】
また、撥液化工程は、チオール化合物又はジスルフィド化合物を含む溶液61に、第1導電体の表面を触れさせるので、数秒から数分程度の短時間の接触で容易に第1導電体の表面のみを選択的に撥液化させることができる。
【0104】
また、チオール化合物がフッ素化アルキル鎖を含むので、チオール化合物が結合した表面の撥液性を極めて高くすることができる。
【0105】
また、ジスルフィド化合物がフッ素化アルキル鎖を含むので、ジスルフィド化合物が結合した表面の撥液性を極めて高くすることができる。
【0106】
また、前駆体樹脂は水酸基を有するモノマーを含み、第1絶縁膜はアルコール系材料に対して安定であるので、前駆体樹脂が第1絶縁膜に損傷を及ぼすことを避けられる。
【0107】
また、前駆体樹脂はアルコール系溶剤に可溶であるので、その溶液の濃度を比較的自由に調整でき、各種印刷法を第2絶縁膜形成工程に適応できる。更に、第1絶縁膜はアルコール系材料に対して安定であるので、第2絶縁膜形成工程が第1絶縁膜に損傷を及ぼすことを避けられる。
【0108】
また、前駆体樹脂は光硬化性樹脂であるので、光照射することで、速やか且つ容易に第2絶縁膜を形成することができる。
【0109】
また、前駆体樹脂は熱硬化性樹脂であるので、簡単な熱処理で、容易に第2絶縁膜を形成することができる。
【0110】
また、回路基板1は、ゲート絶縁膜21を備えるトランジスターを有し、第1絶縁膜がゲート絶縁膜21として機能しているので、高機能回路を有する回路基板1を実現することができる。
【0111】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0112】
なお、先の実施形態では、トップゲート構造について説明したが、当該構造に限定されるものではなく、ボトムゲート構造であっても良い。図9は、ボトムゲート構造のアクティブマトリクス基板を模式的に示す断面図である。同図に示すように、有機半導体膜41およびソースドレイン電極11を覆うようにして、ゲート絶縁膜21上に層間絶縁膜23を所定の厚さで形成してもよい。ゲート絶縁膜21にも使用できる品質の高分子膜で有機半導体膜41を保護することにより、トラップ数やリーク電流を制御することができる。
【0113】
図10は、変形例2に係わる回路基板の製造方法の平面図である。以下、本変形例に係わる回路基板1とその製造方法について説明する。本変形例(図10)は実施形態1(図4(b))と比べて、回路基板1に容量用電極が設けられている点が異なる。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様であり、重複する説明は省略する。
【0114】
本変形例では、画素回路に保持容量が形成されている。保持容量は第1容量電極と第2容量電極121とこれらの電極に挟持される誘電体膜とから構成される。第1容量電極は不図示の画素電極に接続し、第2容量電極121は接地電位や共通電極電位などの基準電位に接続される。回路基板1では、第1導電体にてソースドレイン電極11が形成され、その一方は信号線73に連なり、他方は不図示の画素電極に接続されるが、第1容量電極はこの他方のソースドレイン電極11と兼用される。誘電体膜はゲート絶縁膜と同じ第1絶縁膜である。第2容量電極121は、図10に示すように、ゲート電極12と同じ第2導電体にて形成される。第2容量電極121を基準電位に接続するには、容量共通線112と複数の容量電極とが接続される。容量共通線112は第1導電体にて形成され、容量共通線112に設けられた貫通孔32を介して第2容量電極121と接続される。従ってこの貫通孔32の電極表面は親水性となっている。こうした構成の回路基板1は、実施形態1で詳述した製造方法にて製造される。
【0115】
電気泳動ディスプレイで画素回路が保持容量を持つと、フレーム期間を通じて電気泳動材料に電圧を印加するので、高コントラストの画像を容易に表示させる事ができる。
【0116】
「電気光学装置」
図11は、実施形態1で詳述した回路基板の製造方法を用いて製造したアクティブマトリックス基板を模式的に示す平面図である。
【0117】
アクティブマトリックス基板81には画素回路が行列状に並んで、画素領域71をなしている。各画素回路には有機TFT72と画素電極13が設けられており、有機TFT72のスイッチング動作にて、画素電極13への信号線73からの表示情報が制御される。具体的には有機TFT72のゲート電極12が走査線74に接続し、ソースドレイン電極11の一方が信号線73に接続し、ソースドレイン電極11の他方が画素電極13に接続している。複数の走査線74は走査線用の電極パッド111に連なり、シリコンチップよりなる外部の制御回路に接続される。同様に複数の信号線73も信号線用の電極パッド111に集められ、シリコンチップよりなる外部の制御回路に接続される。
【0118】
図3(j)に示すように、ソースドレイン電極11と信号線73、電極パッド111が第1導電体にて形成され、ゲート絶縁膜21が第1絶縁膜となり、ゲート電極12と走査線74が第2導電体にて形成され、層間絶縁膜22が第2絶縁膜となり、画素電極13が第3導電体にて形成されている。こうした構成のアクティブマトリックス基板81を製造するのに実施形態1で詳述した回路基板1の製造方法が適応された。
【0119】
図12は、上述のアクティブマトリックス基板を用いた電気光学装置を模式的に示す断面図である。
【0120】
電気光学装置80はアクティブマトリックス基板81とフロント基板82とを有し、両基板間に電気光学材料が挟持されている。電気光学材料は電気泳動材料83で、それ故に電気光学装置80は電気泳動ディスプレイとなっている。フロント基板82の表面には共通電極86が形成されている。電気光学材料は両基板の表面に均一にほぼ全面に渡って配置されている。また、共通電極86もフロント基板82の表面のほぼ全面に形成されている。電極パッド111にはフレキシブルプリントサーキット(FPC84)が接続されている。外部の制御回路からの表示信号はFPC84と各画素の有機TFT72とを介して、其々の画素電極13に供給される。アクティブマトリックス基板81とフロント基板82との外側には保護シート85が貼られ、電気光学装置80の機械的耐久性と化学的安定性とを高めている。
【0121】
この様な電気光学装置80は、上述のアクティブマトリックス基板81を備えているので、表示品位が高い。更に、アクティブマトリックス基板81は前述の回路基板1の製造方法にて製造されているので、生産性が非常に高く、資源もエネルギーも高効率で活用している。
【0122】
「電子機器」
図13は、上述の電気光学装置を用いた電子機器を模式的に示す斜視図で、(a)は正面斜視図、(b)は背面斜視図である。ここでは、電子機器は電子書籍90である。
【0123】
図13(a)に示すように、電子書籍90は電気光学装置80と筐体91とを有している。電気光学装置80は平板状の長方形である。筐体91は、電気光学装置80の外縁部に配置されて、電気光学装置80を保持している。即ち、筐体91は表示装置に対する保持部となっている。保持部は、使用時に使用者の手で握られる。
【0124】
電気光学装置80は縦長の長方形をなしており、筐体91は薄い平板状である。図13(a)に示すように、表示面となる正面には筐体上部92(筐体91の上側部品)が設けられ、図13(b)に示すように、表示面と反対の背面には筐体下部93(筐体91の下側部品)が設けられている。筐体上部92も筐体下部93も薄い平板状で両者が重ね合わされて、筐体91となる。図13(a)と図13(b)とを比較すると判るように、正面側の筐体91の幅(幅WF)の方が背面側の筐体91の幅(幅WB)よりも狭くなっている。
【0125】
筐体下部93内には電気光学装置80を制御する各種回路(制御回路)や電源などが収納されており、その結果、筐体91は電子書籍90の重量の内で、半分以上といった主要な割合を占めている。こうしたことなどから、電子書籍90の重心は、筐体下部93内に位置する。
【0126】
電気光学装置80の表示部には各種の情報が表示される。筐体91の中央には操作スイッチ94が設けられており、スイッチ操作を通じて表示部に表示される情報が更新される。
【0127】
電気光学装置80は軽くて、柔軟性を有する。この為に、外部衝撃に対して比較的強く、電気光学装置80全体を筐体91で覆って保護する必要はない。こうして筐体91は電気光学装置80の外縁部に設けられることができる。筐体91が表示装置全体を覆わず、更に金属製の補強部材等を配置する必要がないので、電子書籍90全体が薄くて軽く作成されている。
【符号の説明】
【0128】
1…回路基板、10…基板、11…ソースドレイン電極(第1導電体)、21…ゲート絶縁膜(第1絶縁膜)、22…層間絶縁膜(第2絶縁膜)、32…貫通孔、40…金属膜、43…導電性インク、61…溶液、111…電極パッド(第1導電体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1導電体を形成する第1導電体形成工程と、
前記第1導電体を被覆する様に第1絶縁膜を成膜する第1絶縁膜成膜工程と、
前記第1導電体上の前記第1絶縁膜に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔に対応する前記第1導電体上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記金属膜の表面を撥液化させる撥液化工程と、
前記貫通孔以外の領域に前駆体樹脂を印刷し、印刷後に前記前駆体樹脂を硬化して第2
絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成工程と、
を含むことを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記金属膜形成工程において、
前記貫通孔内に、分散媒中に複数の金属粒子を含む導電性インクを滴下して前記金属膜を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記金属粒子の粒径が10〜40nmである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記金属膜形成工程において、
前記貫通孔内に露出する前記第1導電体の表面上に前記金属膜を形成する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記金属膜形成工程において、
前記貫通孔に対応する前記第1導電体の表面上に、前記第1絶縁膜の一部からなる厚さ20μm以下の絶縁薄膜を介して前記金属膜を形成する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記金属粒子が、金、銀、銅、ニッケル、白金およびパラジウムのいずれかからなる
ことを特徴とする請求項2から5に記載の回路基板。
【請求項7】
前記第2絶縁膜形成工程において、
前記貫通孔以外の領域に前駆体樹脂を印刷し、印刷後に前記前駆体樹脂を硬化して前記第2絶縁膜を形成する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記第1絶縁膜はエーテル系溶剤または、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、フッ素系溶剤のいずれかに可溶であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記第1絶縁膜はアルコール系溶剤に対して難溶性を示すことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項10】
前記第1絶縁膜は前記前駆体樹脂に対して難溶性を示すことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項11】
前記貫通孔形成工程は、前記第1絶縁膜を溶解する溶剤を前記第1絶縁膜に滴下する溶剤滴下工程を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項12】
前記撥液化工程は、チオール化合物又はジスルフィド化合物を含む溶液に、前記第1導電体の表面を触れさせることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項13】
前記チオール化合物がフッ素化アルキル鎖を含むことを特徴とする請求項12に記載の回路基板の製造方法。
【請求項14】
前記ジスルフィド化合物がフッ素化アルキル鎖を含むことを特徴とする請求項12に記載の回路基板の製造方法。
【請求項15】
前記前駆体樹脂は水酸基を有するモノマーを含むことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項16】
前記前駆体樹脂はアルコール系溶剤に可溶であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項17】
前記前駆体樹脂は光硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項18】
前記前駆体樹脂は熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項19】
前記回路基板は、ゲート絶縁膜を備えるトランジスターを有し、
前記第1絶縁膜が前記ゲート絶縁膜として機能していることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−204658(P2012−204658A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68539(P2011−68539)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】