回転測定装置、シート搬送装置、原稿読取装置、及び画像形成装置
【課題】回転体の軸線直交方向への変位量を測定するための専用のセンサーを設けることなく、回転体の回転量と軸線直交方向への変位量とを測定する。
【解決手段】回転体の回転軸部材と同期して自らも回転する被検部材と、これの特性を検知するセンサーとの組合せとして、被検部材が1回転する毎に、センサーが1周期分の正弦波を出力し、且つ被検部材が回転体とともに軸線直交方向に移動するのに伴って、センサーが正弦波の振幅を変化させるもの、を用いた。かかる組合せの一例としては、図1に示す被検部材510と距離センサー(511、512)との組合せを挙げることができる。このような組合せのセンサーから出力される正弦波に基づいて回転体の回転量を算出しつつ、正弦波の振幅の変化量に基づいて回転体の軸線直交方向の変位量を算出するようにした。
【解決手段】回転体の回転軸部材と同期して自らも回転する被検部材と、これの特性を検知するセンサーとの組合せとして、被検部材が1回転する毎に、センサーが1周期分の正弦波を出力し、且つ被検部材が回転体とともに軸線直交方向に移動するのに伴って、センサーが正弦波の振幅を変化させるもの、を用いた。かかる組合せの一例としては、図1に示す被検部材510と距離センサー(511、512)との組合せを挙げることができる。このような組合せのセンサーから出力される正弦波に基づいて回転体の回転量を算出しつつ、正弦波の振幅の変化量に基づいて回転体の軸線直交方向の変位量を算出するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転軸部材と同期してその回転軸線を中心にして回転する被検部材をセンサーによって検知して回転体の回転量を測定する回転測定装置、並びにこれを用いるシート搬送装置、画像読取装置、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ローラやモータ回転子などの回転体の回転量を測定する回転測定装置が様々な分野で用いられている。例えば、特許文献1に記載の画像形成装置では、回転体たる分離ローラの回転量を測定する回転測定装置が用いられている。この画像形成装置の回転測定装置は、給紙カセットから送り出された記録シートを1枚ずつに分離する分離ローラの回転軸部材に固定されて分離ローラとともに回転するスリット円盤を有している。被検部材としてのスリット円盤には、回転方向に所定のピッチで並ぶ複数のスリットが設けられている。そして、このスリット円盤の近傍には、透過型フォトセンサーが配設されており、発光素子から発した光をスリット円盤に向けて照射している。照射光はスリット円盤の表面に当たるが、スリット円盤の回転に伴って発光素子との対向位置にスリット円盤のスリットが移動した際には、照射光がそのスリットを通過して、透過型フォトセンサーの受光素子に受光される。透過型フォトセンサーは、このようにして、スリット円盤の特性であるスリットを検知する。この透過型フォトセンサーによるスリット検知回数に基づいて、分離ローラの回転量が測定される。特許文献1の画像形成装置は、その測定結果に基づいて、分離ローラ表面上での記録シートのスリップを検知している。そして、スリップを検知した場合に、記録シートに対する分離ローラの押圧力を高めてスリップを発生し難くすることで、記録シートの重送の発生を抑えている。
【0003】
特許文献1に記載のようなスリット円盤と透過型フォトセンサーとの組合せによって回転体の回転量を測定する技術の他、被検部材たる磁石と、この磁石の特性である磁力を検知するホールセンサーとの組合せによって回転体の回転量を測定する技術も知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機器のより一層の多様化が望まれる近年においては、回転体の回転量に加えて、回転体の回転軸線方向に直交する方向である軸線直交方向の変位量を検知することが求められる可能性がある。例えば特許文献1に記載の画像形成装置では、記録シートの厚みを検知するなどの目的で、分離ローラの軸線直交方向の変位量を検知することが求められる可能性がある。このような場合に、分離ローラの周囲において、ローラ回転量を測定するためのセンサーに加えて、ローラ変位量を測定するためのセンサーを設けてしまうと、装置の大型化を招いてしまう。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次のような回転測定装置や、これを用いるシート搬送装置、画像読取装置、及び画像形成装置を提供することである。即ち、回転体の軸線直交方向への変位量を測定するための専用のセンサーを設けることなく、回転体の回転量と軸線直交方向への変位量とを測定することができる回転測定装置等である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、回転体の回転軸部材と同期して該回転体の回転軸線を中心にして回転するように配設され、且つ自らの所定の特性をセンサーに対して検知させる被検部材と、該被検部材に対して回転軸線方向で対向する位置で前記被検部材の前記特性を検知するセンサーと、該センサーによる検知結果に基づいて、前記回転体の回転量を算出する算出手段とを有する回転測定装置において、前記センサーと前記被検部材との組合せとして、前記被検部材が1回転する毎に、前記センサーが1周期分の正弦波を出力し、且つ前記被検部材が前記回転体とともに前記回転軸線方向と直交する方向である軸線直交方向に移動するのに伴って、前記センサーが前記正弦波の振幅を変化させるもの、を用い、前記正弦波に基づいて前記回転量を算出しつつ、前記振幅の変化量に基づいて前記回転体の前記軸線直交方向の変位量を算出するように、前記算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の回転測定装置において、前記被検部材として、前記被検部材に対してその回転方向の所定位置で延在するように付した直径仮想線の一端側の被検部材箇所を前記センサーに最も近づけるとともに、前記直径仮想線の他端側の被検部材箇所を前記センサーから最も遠ざける傾斜を前記センサーとの対向面に具備させたものを用いるとともに、前記センサーとして、前記被検部材における前記回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されて前記箇所と自らとの距離を検知する距離センサーを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1の回転測定装置において、前記被検部材として、前記回転軸線を中心にして回転するように配設された磁石を用いるとともに、前記センサーとして、前記磁石における前記回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されてその箇所の前記特性たる磁力を検知するホール素子を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1の回転測定装置において、前記被検部材として、前記被検部材に対してその回転方向の所定位置で延在するように付した直径仮想線の一端側の被検部材箇所を最も高濃度にするとともに、前記直径仮想線の他端側の被検部材箇所を最も低濃度にする濃度勾配を前記センサーとの対向面に具備させたものを用いるとともに、前記センサーとして、前記被検部材における前記回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されて前記箇所の濃度を検知する濃度センサーを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかの回転測定装置において、1つの前記センサーからの出力に基づいて、前記回転体の前記軸線直交方向の変位量を算出するように、前記算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至4の何れかの回転測定装置において、前記センサーとして、前記被検部材における互いに異なる箇所を被検対象にするように配設した複数のものを用いるとともに、それぞれのセンサーから出力される前記正弦波の振幅に基づいて、前記回転体の前記軸線直交方向の変位量を算出するように、前記算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の回転測定装置において、複数の前記センサーを、前記回転体の前記軸線直交方向に沿った変位方向に並べて配設したことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至4の何れかの回転測定装置において、前記センサーとして、前記被検部材における互いに異なる箇所を被検対象にするように配設した複数のものを用いるとともに、前記正弦波の振幅に代えて、それぞれのセンサーから出力される前記正弦波の位相ずれ量に基づいて、前記回転体の前記軸線直交方向の変位量を算出するように、前記算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8の回転測定装置において、前記位相ずれ量に基づいて、前記回転量の算出結果を補正する処理を実施するように、前記算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項8又は9の回転測定装置において、複数の前記センサーを、前記回転体の前記軸線直交方向に沿った変位方向と直交する方向に並べて配設したことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、互いに当接しながら回転する2つの搬送ローラからなるローラ対によって形成される搬送ニップに挟み込んだシート状部材を、前記搬送ローラの回転に伴って搬送するシート搬送手段と、2つの前記搬送ローラのうち、回転軸線と直交する方向である軸線直交方向に変位可能に配設されて他方の搬送ローラに向けて押圧される搬送ローラである移動搬送ローラの回転量を測定する回転測定装置とを備えるシート搬送装置において、前記回転測定装置として、請求項1乃至10の何れかの回転測定装置を用いて、前記回転量に加えて、前記移動搬送ローラの前記軸線直交方向への変位量を測定するようにしたことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項11のシート搬送装置において、前記シート状部材を複数枚重ねた状態で収容するシート収容手段と、該シート収容手段内のシート状部材を前記搬送ニップに向けて送り出す送出手段とを設け、自らの回転駆動に伴って前記搬送ニップ内でシート状部材に対して搬送方向への移動力を付与するように、2つの前記搬送ローラのうち、前記移動搬送ローラではない方の搬送ローラである固定搬送ローラを構成し、且つ、前記送出手段から送り出されたシート状部材が前記搬送ニップに複数枚重なった状態で送り込まれた場合に、前記搬送ニップで自らの表面を前記固定搬送ローラとは逆方向に移動させるように回転駆動して、下側のシート状部材を前記送出手段に向けて逆戻りさせることでシート状部材を1枚ずつに分離する一方で、前記搬送ニップ内にシート状部材が1枚だけ挟み込まれた状態では、トルクリミッターの作動によって前記固定搬送ローラに追従して従動回転する分離ローラとして機能するように前記移動搬送ローラを構成したことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項12のシート搬送装置において、前記回転量と、前記搬送ニップにシート状部材が存在していない状態における前記回転体の変位方向の位置とに基づいて、前記移動搬送ローラの寿命を判定する寿命判定手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項13のシート搬送装置において、前記寿命判定手段による判定結果に基づいて、前記移動搬送ローラの前記固定搬送ローラへの押圧力を調整する押圧力調整手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、シート状部材である原稿シートを搬送するシート搬送装置と、該シート搬送装置によって搬送されている最中の原稿シート、あるいは前記シート搬送装置によって所定の読取位置まで搬送された原稿シート、の画像を読み取る画像読取手段とを備える原稿読取装置において、前記シート搬送装置として、請求項11乃至14の何れかのシート搬送装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、シート状部材である記録シートを搬送するシート搬送装置と、該シート搬送装置によって搬送される記録シートに画像を形成する画像形成手段とを備える画像形成装置において、前記シート搬送装置として、請求項11乃至14の何れかのシート搬送装置を用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明者らは、次のようなセンサーと被検部材との組合せを搭載した回転測定装置の試験機を用意した。即ち、被検部材が1回転する毎に、センサーが1周期分の正弦波を出力し、且つ被検部材が回転体とともに軸線直交方向に移動するのに伴って、センサーが前記正弦波の振幅を変化させるものである。このような組合せの例としては、後に実施形態で詳述する、磁石(被検部材)とホールセンサーとの組合せ、傾斜面を設けた被検部材と距離センサーとの組合せ、濃度勾配を設けた被検部材と濃度センサーとの組合せ、などが挙げられる。かかる組合せを搭載した回転測定装置によって回転量測定試験を行ったところ、センサーから出力される正弦波に基づいてローラの回転量を精度良く検出するとともに、正弦波の振幅の変化量に基づいてローラの軸線直交方向への変位量を精度良く検出し得ることが解った。
よって、本発明においては、センサーと被検部材との組合せとして、被検部材が1回転する毎に、センサーが1周期分の正弦波を出力し、且つ被検部材が回転体とともに軸線直交方向に移動するのに伴って、センサーが前記正弦波の振幅を変化させるものを用いることで、回転体の軸線直交方向への変位量を測定するための専用のセンサーを設けることなく、回転体の回転量と軸線直交方向への変位量とを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】回転量や軸線直交方向への変位量の測定対象となる回転体たるローラと、その周囲とを示す概略構成図。
【図2】観測点上に位置する仮想円を説明する模式図。
【図3】同仮想円の直径線分を通る位置における被検部材の断面図。
【図4】距離センサーによる検知結果の経時変化を示すグラフ。
【図5】実施形態に係る回転測定装置の演算手段によって実施される回転角度の算出の処理フローを示すフローチャート。
【図6】中心点Oを中心とする2次元座標上の象限を示す模式図。
【図7】変位後の仮想円と観測点との関係を説明するための模式図。
【図8】観測半径とローラの変位量との関係を示すグラフ。
【図9】各観測点対における観測半径差とローラの変位量との関係を示すグラフ。
【図10】同演算手段によって実施される変位量算出処理の処理フローを示すフローチャート。
【図11】第1変形例に係る回転測定装置の演算手段によって実施される変位量算出処理の処理フローを示すフローチャート。
【図12】ローラ変位後の観測点対と中心点とのなす角度を説明するための模式図。
【図13】2つの距離センサーからの出力の位相差ズレとローラの変位量との関係を示すグラフ。
【図14】第3変形例に係る回転測定装置による被検対象となるローラと、その周囲とを示す斜視図。
【図15】同回転測定装置における仮想円と観測点との関係を説明するための模式図。
【図16】同回転測定装置における2つのホールセンサーからの出力波形を示すグラフ。
【図17】同出力波形の波高とローラの変位量との関係を示すグラフ。
【図18】それら出力波形を波高差と同変位量との関係を示すグラフ。
【図19】同回転測定装置の被検部材たる磁石と、2つのホールセンサーとを示す正面図。
【図20】仮想回転角速度変動波形を示すグラフ。
【図21】仮想回転角速度変動量と位相差ズレ角との関係を示すグラフ。
【図22】位相差ズレと回転角との関係を示すグラフ。
【図23】第4変形例に係る回転測定装置における被検部材と、センサーたる第1濃度センサー及び第2濃度センサーとを示す正面図。
【図24】濃度センサーの他の例を同被検部材とともに示す正面図。
【図25】実施形態に係る複写機を示す概略構成図。
【図26】同複写機における画像形成部の一部を拡大して示す部分構成図。
【図27】同画像形成部における4つのプロセスユニットからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図。
【図28】同複写機のスキャナ及びADFを示す斜視図。
【図29】同ADFの要部構成をスキャナの上部とともに示す拡大構成図。
【図30】白紙供給装置における送出ローラの周囲構成をローラ軸線方向の一端側から示す分解斜視図。
【図31】同送出ローラの周囲構成を示す拡大構成図。
【図32】給紙分離ローラ対の周囲構成を示す拡大斜視図。
【図33】劣化していない給紙ローラと分離ローラとの当接による給紙分離ローラに1枚の記録シートが送り込まれたときにおける各ローラの回転状態を説明するための模式図。
【図34】劣化していない給紙ローラと分離ローラとの当接による給紙分離ローラに複数枚の記録シートが重なった状態で送り込まれたときにおける各ローラの回転状態を説明するための模式図。
【図35】劣化した給紙ローラと、劣化していない分離ローラとの当接による給紙分離ローラに1枚の記録シートが送り込まれたときにおける各ローラの回転状態を説明するための模式図。
【図36】劣化していない給紙ローラと、劣化した分離ローラとの当接による給紙分離ローラに複数枚の記録シートが重なった状態で送り込まれたときにおける各ローラの回転状態を説明するための模式図。
【図37】給紙分離ニップの周囲で発生する各種の力を説明するための模式図。
【図38】押圧力PBと分離力TAとの関係を示すグラフ。
【図39】給紙分離ローラ対の周囲構成を示す拡大模式図。
【図40】分離ローラを周囲構成とともに示す縦断面図。
【図41】ホールセンサーと分離ローラに固定された磁石とを示す拡大模式図。
【図42】ホールセンサー素子の出力特性を示すグラフ。
【図43】図33に示した状態におけるホール素子からの出力変化を示すグラフ。
【図44】図43のフラグを1枚通紙時における分離ローラの累積回転角度(累積回転量)に変換したグラフ。
【図45】同複写機に搭載された回転測定装置の演算手段によって実施される累積回転角算出処理を示すフローチャート。
【図46】給紙ローラ及び分離ローラに劣化がない状態で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なった状態で送られたときにおける、分離ローラの累積回転角度の変化を示すグラフ。
【図47】分離ローラの表面に軽度の劣化がある状態で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なって送られたときにおける、分離ローラの累積回転角度の変化を示すグラフ。
【図48】分離ローラの表面に中程度の劣化がある状態で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なって送られたときにおける、分離ローラの累積回転角度の変化を示すグラフ。
【図49】分離ローラの表面に重度の劣化がある状態(寿命到達)で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なって送られたときにおける、分離ローラの累積回転角度の変化を示すグラフ。
【図50】図44、図46〜49の結果をまとめたグラフ。
【図51】実施形態に係る劣化判定装置の構成を示すブロック図。
【図52】複写機と、判定手段としてのパーソナルコンピュータとを分離した例を示すブロック図。
【図53】変形例に係る複写機の給紙分離ニップの周囲構成を示す拡大構成図。
【図54】従来の複写機における給紙分離ニップの周囲構成を示す拡大構成図。
【図55】第3変形例に係る回転測定装置によって実施される回転角補正処理の処理フローを示すフローチャートである。
【図56】2つのセンサの出力差△Vを説明するためのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した回転測定装置の一実施形態について説明する。
図1は、回転量や軸線直交方向への変位量の測定対象となる回転体たるローラと、その周囲とを示す概略構成図である。同図において、回転体たるローラ500は、ローラ部500aと、これの回転軸線方向の両端面からそれぞれ突出する回転軸部材500bとを有している。回転軸部材500bは、軸受け501によって回転自在に受けられている。また、この軸受け501は、図示しない保持手段により、軸線直交方向である図中矢印A方向にスライド移動可能に保持されている。この状態で、軸受け501が図示しないバネによって図中B方向(鉛直上方)に付勢されることで、ローラ500のローラ部500aがローラ500の上方に存在する図示しない第2ローラに当接してニップを形成している。
【0010】
ローラ500の回転軸部材500bの一端には、被検部材510が固定されている。この被検部材510は、回転軸部材500bの回転軸線を中心にして、ローラ500と同期して回転する。そして、その側面は、傾斜面510aとなっている。この傾斜面510aは、図1及び図2に示すように、被検部材510に対してその回転方向の所定位置で延在するように付した直径仮想線P〜P’の一端である点Pを、後述する第1距離センサー511や第2距離センサー512に最も近づけるとともに、直径仮想線P〜P’の他端である点P’を第1距離センサー511や第2距離センサー512から最も遠ざける傾斜をそれらセンサーとの対向面に具備している。
【0011】
図1に示したように、被検部材510の側方には、第1距離センサー511及び第2距離センサー512が配設されている。これらセンサーは、例えば赤外線照射などの周知の技術により、自らと被検対象たる傾斜面510aとの距離を検知して、検知結果に応じた電圧を出力するものである。そして、図2に示すように、ローラ500の回転軸線(点Oの位置)を中心にして、互いに90[°]の点対称の位置にある傾斜面箇所(第1観測点Q1、第2観測点Q2)を被検対象にする位置関係をもって配設されている。図中の第1観測点Q1は、第1距離センサー511による傾斜面510aの検知対象位置である。また、第2観測点Q2は、第2距離センサー512による傾斜面510aの検知対象位置である。なお、距離の検知方式としては、光学式,超音波式,渦電流式,静電容量式などがあり、検出感度、用途、検出環境などに応じて選択することが可能である。
【0012】
第1距離センサー511と第1観測点Q1との距離や、第2距離センサー512と第2観測点Q2との距離は、被検部材510の回転角度位置に応じて異なってくる。但し、傾斜面510a上の回転中心である中心点Oと、それらセンサーとの距離は、被検部材510の回転角度位置にかかわらず一定である。回転軸線方向におけるそれらセンサーと中心点Oとの距離は、距離Lで表される。
【0013】
図示の構成では、回転する被検部材510に対して第1距離センサー511や第2距離センサー512は不動であるが、理解を容易にするために、これとは逆に、センサーが中心点Oを中心にして回転(公転)する一方で、被検部材510が不動である場合における、回転軸線に直交する直交面上での座標系を考えてみる。すると、図2に示すように、回転軸線に直交する直交面上で、中心点Oを中心にしつつ、第1観測点Q1及び第2観測点Q2を通る仮想円C1が得られる。その半径はrで表される。また、中心点Oと、第1観測点Q1、第2観測点Q2との回転軸線方向における距離はk(図1参照)で表されており、これは傾斜面510aの傾きに相当する。被検部材510の回転角速度をω、時刻をtでそれぞれ表すと、仮想円C1の直径線分に対する第1観測点Q1の成分はrcosωtで表される。
【0014】
図3は、仮想円C1の直径線分を通る位置における被検部材510の断面図である。傾斜面510aの回転軸線と垂直な面に対する傾斜角をφで示すと、「tanφ=k/r」という関係になる。よって、第1観測点Q1において、時刻tにおける距離Lに対する距離変化は「−rcosωt・tanφ=−kcosωt」となる。同様に、第2観測点Q2においは、「−ksinωt」となる。よって、第1距離センサー511による検知結果は、「L−kcosωt」という式に従って経時変化する。また、第2距離センサー512による検知結果は、「L−ksinωt」という式に従って経時変化する。
【0015】
図4は、距離センサーによる検知結果の経時変化を示すグラフである。このグラフは、上記距離L=5mm、k=2mm、回転数n=120rpmという条件の回転量測定試験によって得られたデータに基づいて作成されたものである。第1距離センサー511からの出力、第2距離センサー512からの出力ともに、正弦波の繰り返しパルスが得られている。これは、被検部材510が1回転する毎に、センサーと観測点との距離が1周期分の正弦波を描く特性で変化することを示している。正弦波のピーク・ツウ・ピークはkの2倍であり、ω・Δt=90°である。ここで、「tanωt=sinωt/cosωt」という法則から、2つの出力からそれぞれ距離Lを差し引いた後の両者の比に基づいて、tanωt(正接)を求めることができる。この正接は、中心点Oを中心にした直交面上の座標系における−90°〜+90°の範囲において、180°周期で単調増加を繰り返す。その他の角度範囲についても正弦と余弦の大小関係をみることで、0°〜360°の範囲において、正接について単一の値を算出することができる(厳密には、90°と270°で正接は不連続となるので、正接の逆数を適当な範囲で採用する必要がある。)。これは、ローラ500(被検部材510)が静止しているか回転しているかにかかわらず、その回転角度位置を求めることができることを意味している。
【0016】
そこで、被検部材510、2つの距離センサー、演算手段513などから構成される実施形態に係る回転測定装置の演算手段513は、2つの距離センサーからの出力に基づいて、ローラ500の回転角度位置を求めるようになっている。この回転角度位置は、正弦波のプラス側のピークを出力させる、被検部材510の上記点Pについて、中心点Oを中心にしたどの回転角度位置にあるのかを示すものである。
【0017】
回転角度を求める際には、図5に処理フローを示すように、まず、オフセット調整を行う(ステップ1:以下、ステップをSと記す)。このオフセット調整は、センサーの製品毎の感度バラツキを調整するために行うものである。具体的には、出力から上記L(波形のピーク・ツウ・ピークの半分)を差し引く。
【0018】
次いで、象限判定を行う(S2)。具体的には、90°、270°の回転角度位置では、正接が不連続となるので、正接の逆数を求める必要がある。そこで、次の表1に示す判定条件に基づいて、点Pについて、図6に示す象限0(−45°〜+45°弱)の中にあるのか、象限1(+45°〜+135°弱)の中にあるのか、象限2(+135°〜+225°弱)の中にあるのか、象限3(+225°〜−45°弱)にあるのかを判定する。
【表1】
【0019】
次に、除算実行を行う(S3)。これは、象限判定における判定結果に応じて、算出結果を±1以内の範囲にすべく、表1に示すように、2つの距離センサーの出力比に基づいて正接あるいは正接の逆数を計算する。その後、逆正接算出(S4)において、回転角度位置を求めて象限を決定した後、不連続調整(S5)において、1回転以上である場合に総回転角度を求める。そして、角速度算出(S6)において、回転角度位置の時系列変化データを微分して角速度に変換する。S5で求めた総回転角度に基づいて、ローラ500の回転量を把握することができる。
【0020】
次に、ローラ500の軸線直交方向の変位量を求める方法について説明する。
ローラ500と図示しない第2ローラとの当接によるニップにシート部材(記録シートや原稿シート)が挟み込まれると、その厚みに応じてローラ500が鉛直下方に移動する。このように、ローラ500が鉛直下方に移動する際の変位を正の変位として変位量を計算する。ここで、ローラ500が鉛直下方に変位量uだけ変位した結果、図7に示すように、仮想円C1の中心点がOからO’に移動したとする。理解を容易にするために、互いに45°ずつずれた箇所を被検対象とする5つの距離センサーを配設したと仮定する。変位前では、中心点Oを中心とする仮想円C1上に存在する各点A、B、C、D、Eが、第1、第2、第3、第4、第5の距離センサーによる観測点となる。ローラ500が変位量uだけ下方に変位すると、それに伴って仮想線C1が下方に移動して、中心点が図中のO’の位置にくる。但し、観測点A、B、C、D、Eの位置は変わらない。距離センサーは変位しないからである。このように、仮想線C1が下方に移動するにもかかわらず、観測点の位置が変わらないと、観測点A、B、C、D、Eの間で変位後の中心点O’までの距離に差がでてくる。それぞれの距離(=観測半径)をr’A、r’B、r’C、r’Dで表すと、それらは次の数1、数2、数3、数4の式によって求められる。なお、絶対位置を観測しているので、偏心の影響は受けない。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【0021】
図8は、各観測点における観測半径r’と、ローラの軸線直交方向の変位量uとの関係を示すグラフである。このグラフは、変位前の中心点Oから各観測点までの半径rを11mmに設定した実験条件で試験した結果に基づいて作成したものである。図示のように、観測点の位置によって、グラフの傾きの大きさや向きが異なることがわかる。観測点Aでは正の傾きであるのに、観測点C、Dでは負の傾きになっている。また、観測点Bでは傾きが殆ど無くなっている。
【0022】
上述したように、実際の回転測定装置では、距離センサーを2だけ用い、それらを90°の点対称の位置に配設している。このような関係になる2つの距離センサー(511、512)による観測点の組合せは、先に示した図7では、観測点Aと観測点C、観測点Bと観測点D、及び観測点Cと観測点Eの3通りである。以下、それら3通りの組合せにおけるそれぞれの観測点を「観測点対」という。
【0023】
図9は、観測点対における観測半径差△’と、ローラの変位量uとの関係を示すグラフである。図示のように、観測点対の位置に応じて、観測半径差△’と変位量uとの関係を示すグラフの傾きに差があることがわかる。これは、観測点対の位置に応じて変位量uの検知精度に差がでることを示している。観測点Cと観測点Eとからなる観測点対では、図示のようにグラフの傾きがないので、観測半径差△’から変位量uを求めることはできない。これに対し、観測点Aと観測点Cとからなる観測点対や、観測点Bと観測点Dとからなる観測点対では、図示のようなグラフの傾きが得られるので、観測半径差△’から変位量uを求めることができる。中でも、前者の観測点対では後者に比べてグラフの傾きが大きいので、より精度よく変位量uを求めることができる。なお、ローラ変位後の観測半径r’は、「tanφ=k/r=k’/r’」という法則から、「k’=kr’/r」という関係が成り立つので、その変化は距離センサーから出力される正弦波の振幅変化として現れることになる。よって、実際には、振幅変化量に基づいて、変位量uを求めることができる。
【0024】
そこで、実施形態に係る回転測定装置では、第1距離センサー511と、第2距離センサー512とを、観測点Aと観測点Cとからなる観測点対を実現する位置関係で配設している。この位置関係は、図7からわかるように、観測点Aの直下に観測点Cを位置させる位置関係であり、より詳しくは、ローラ500の変位方向に沿って両センサーを配設する位置関係である。
【0025】
図10は、演算手段513によって実施される変位量算出処理の処理フローを示すフローチャートである。変位量△uを算出するにあたり、演算手段513は、まず上述したオフセット調整を行った後(S1)、振幅調整を行う(S2)。この振幅調整は、ローラ500の軸線直交方向への変位に伴って変化する振幅について、逆正接算出に影響を与えないように調整を加えるための処理である。この振幅調整を終えると、次に、上述した象限判定を行う(S3)。正接が不連続となる±90°で正接の代わりにその逆数を求めるための処理である。その後、上述した除算実行によって2つの距離センサーの出力比に基づいて正接を求めた後(S4)、逆正接算出によって回転角を求める(S5)。そして、上述した不連続調整の後(S6)、総回転角θ算出によって回転角の総和を求める(S7)。
【0026】
総回転角θを算出すると、次に、算出結果について「θ≧180°」という条件を具備するか否かを判定する(S8)。これは、正弦波のピーク値を取得し得るタイミングであるか否かを判定するためである。望ましくは「θ≧360°」であれば、ピーク・ツウ・ピークを求めることができるが、「θ≧180°」であっても片側のピーク値を得ることができる。オフセット値がデータ取得の度に変動することは無いので、「θ≧180°」であれば、振幅値を取得することができる。そこで、「θ≧180°」でない場合には、変位量uを算出する処理を実行せずに、その代わりに、ニップ内でのシート部材のスリップ発生回数を計数する(S12)。一方、「θ≧180°」である場合には、K’を算出した後、「k/r=k’/r’」の関係を用いて観測点対の観測半径差△r’を求める(S9、S10)。そして、算出結果と、図9に示したA−Cのグラフとに基づいて、変位量Δuを算出する(S11)。この変位量△uは、ニップ内に挟み込まれたシート部材の厚みを表している。
【0027】
かかる構成の本回転測定装置においては、変位量△uを測定するための専用のセンサーを設けることなく、回転角を測定するための第1距離センサー511及び第2距離センサー512により、回転量たる回転角と、変位量△uとを測定することができる。
【0028】
次に、実施形態に係る回転測定装置の各変形例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係る回転測定装置の構成は、実施形態と同様である。
[第1変形例]
第1変形例に係る回転測定装置においては、距離センサーを1つしか設けていない。実施形態に係る回転測定装置のように、2つの距離センサーを90°の点対称の位置に配設した構成では、ローラ500が停止状態にあっても、その回転角度位置を2つの距離センサーからの出力差に基づいて把握することが可能である。しかしながら、ローラ500が停止状態のときに、回転角や変位量△uを求める必要は必ずしもない。そして、ローラ500が回転している状態のときには、1つの距離センサーからの出力であっても、ローラの回転角度位置、回転角速度、及び変位量△uを求めることが可能である。
【0029】
このことについて詳述する。先に示した図4において、2つの出力波形のうち、第2距離センサー512からの出力波形だけに注目してみる。この出力波形は、正弦波であるため、正接とは異なり単調増加とはならない。よって、その出力波形から回転角度位置を直接求めることはできない。しかし、その出力波形を微分した微分波形は余弦波となるので、振幅調整された両者の比をとることにより正接が得られる。これにより、回転角度位置を求めることができるようになる。
【0030】
そこで、第1変形例に係る回転測定装置の演算手段513は、上述したオフセット調整の後に、センサー出力を微分する微分算出という工程を実施する。また、1つの出力波形から上述の観測半径差△r’を求めることができないので、その代わりに、変位後の観測半径r’Aを求める。その後、図8に示したようなグラフ特性に基づいて、変位量Δuを算出する。参考までに、この処理フローを、図11に示す。
【0031】
[第2変形例]
第2変形例に係る回転測定装置においては、距離センサーからの出力波形の振幅変化量の代わりに、2つの距離センサーからの出力波形の位相ズレ量に基づいて、変位量△uを求めるようになっている。これは、図12に示すように、仮想円C1の中心点がOからO’に移動すると、2つの出力波形の位相差が90°からずれることを利用するものである。より詳しくは、図12における角度αは、角度AO’C以下となる。また、角度βは、角度BO’Dよりも小さくなる。また、角度γは、角度CO’Eよりも小さくなる。すると、角度α、β、γは、それぞれ次の式5、6、7で表される。
【数5】
【数6】
【数7】
【0032】
角度α、β、γから90°を差し引いた値を位相差ズレψで表すと、位相差ズレψと、変位量uとには、図13に示すグラフの関係が成立する。A−Cはほとんど傾きが無いが、C−Eは大きな傾きを示す。このことから、2つの距離センサーを観測点C、観測点Eの位置に配設し、両者の位相差ズレψを算出することで、変位量uを精度良く求めることができることができる。位相差は先に示した図4のグラフの時間軸上でΔtに対応するので、位相差ズレψの発生はΔtの変化という形で観測される。
【0033】
図9のグラフと、図13のグラフとを比較してみると、振幅変化に対して感度が大きいA−Cと、位相差ズレψに感度が大きいC−Eと、両者の中間に位置するB−Dとに分かれ、振幅に基づく場合にはA−C、位相差ズレに基づく場合にはC−Eが有利であることがわかる。そこで、第2変形例に係る回転測定装置において、C−Eの関係になるように、2つの距離センサーを配設している。
【0034】
[第3変形例]
図14は、第3変形例に係る回転測定装置による被検対象となるローラ500と、その周囲とを示す斜視図である。第3変形例に係る回転測定装置では、被検部材として、図示のような磁石514を用いている。この磁石514は、ローラ500のローラ部側面に固定され、ローラ500と一体となってその回転軸線を中心に回転する。回転軸を中心にして、0〜180°の領域はS極になっているのに対し、181°〜360°の領域はN極になっている。ローラ500の側方には、ホール素子からなる第1ホールセンサー515と、第2ホールセンサー516とが配設されている。これらは、ローラ500の回転軸線を中心にして、互いに90°の点対称になる位置に配設されている。
【0035】
理解を容易にするために、実施形態と同様に、5つのホールセンサーを配設した例を考えてみると、その例は図15に示すようになる。それぞれのホールセンサーによる観測点A、B、C、D、Eが得られる。この状態から、ローラ500が鉛直下方に変位量uだけ変位して、回転中心がOからO’に移動すると、例えば、観測点Bと、観測点Dとでは、図16に示すような出力波形の振幅差が生ずる。なお、図16のグラフは、変位量u=−1.0mm、ギャップδ=4mm、回転数n=120rpm、表面磁束密度B=300mT、磁石外径Φ24mm、磁石内径φ20mmという条件の下で行われた実験の結果に基づいて作成されたものである。
【0036】
図17は、各観測点と、出力波形のピーク・ツウ・ピーク(Vp−p:図4の2k’に相当)と、変位量uとの関係を示すグラフである。先に示した図8のグラフとほぼ同様の特性が得られている。
【0037】
図18は、出力波形のピーク・ツウ・ピークと、各観測点対における変位量uとの関係を示すグラフである。先に示した図9のグラフとほぼ同様の特性が得られている。
【0038】
ローラの変位が観測波形に与える影響について述べる。ここでは、センサーとしてホールセンサーを用いる第3変形例に係る回転測定装置を例にして説明するが、実施形態なども同様である。図19は、同回転測定装置の被検部材たる磁石514と、2つのホールセンサーとを示す正面図である。第1ホールセンサー515と第2ホールセンサー516とは、図示しないローラの回転軸線を中心にした同じ仮想円上で、所定の角度(配設位相ズレ角)の点対称の位置関係になるように配設されている。その配設位相ズレ角は、図示のように、「90°−ψ」となっているとする。図示しないローラが変位していなければ、それらホールセンサーはローラ回転軸線を中心にした同じ仮想円上に位置するので、それらホールセンサーからの出力波形の振幅は互いに同じになる。ローラの回転角速度は一定であり、それらの出力波形には「90°−ψ」の位相差が現れるが、90°の位相差でなければ、90°の位相差との差分はローラの回転角速度に変化があったためであると仮にみなして、回転角速度変動を仮想してみる。すると、図20に示すように、センサー出力波形の半分の周期で、正弦波状の仮想回転角速度変動波形が得られる。その振幅(波高)は、図21に示すように、ズレ角ψにほぼ比例する。回転角度の累積値に注目すると、図22に示すように、最もズレが大きい回転角90°でほぼ位相差ψと同量の誤差が発生している。そして1/2回転毎に誤差は0となる。(誤差が累積しないことを示している。)
【0039】
これらのことから、ローラの変位によって中心点がOからO’に移動すると、ローラが一定の回転角速度で回転しているにもかかわらず、ローラ回転周期の倍の周波数の回転角速度変動が誤検出されてしまうことがわかる。
【0040】
そこで、第3変形例に係る回転測定装置の演算手段513は、位相差ズレに基づいて、回転角度位置の検知結果(ひいては回転角速度)を補正する補正処理を実施するようになっている。先に示した図13に基づいて位相差ズレ量を特定した後、その結果に基づいて、回転角度位置の算出結果に補正を加える。のである。
【0041】
具体的には、位相差ズレψをもって配設された2つのホールセンサーから出力は、それぞれ次の数8、数9の式で表される。
【数8】
【数9】
【0042】
また、加法定理により、次の数10の式が成立する。
【数10】
【0043】
この式に基づいて、次の数11の式が得られる。
【数11】
【0044】
よって、次の数12の関係が成立する。
【数12】
【0045】
回転角度位置をセンサー出力の比である「Y/X」と、位相差ズレとを用いて表すことができているのである。なお、この他に、バンドパスフィルタによって1/2周期の変動を取り除く方法もある。
【0046】
図55は、第3変形例に係る回転測定装置によって実施される回転角補正処理の処理フローを示すフローチャートである。回転角補正処理では、まず、図10の処理フローと同様のオフセット調整(S1)と振幅調整(S2)とを行う。次いで、位相差ずれを算出するための位相差ずれ算出処理を行う(S3)。この位相差ずれ算出処理では、図4のグラフに示した位相差ずれ時間△tを求める処理、あるいは、第1距離センサー511と第2距離センサー512との出力ずれを求める処理、の何れかが行われる。
【0047】
S3のステップで位相差ずれ時間△tを求める処理が行われる場合、その処理は次の通りである。即ち、この場合、回転速度を一定であるとみなす。そして、2つの距離センサーからの出力波形のうち、一方の波形の周期に基づいて角速度ωを求める。そして、「ψ=ω×Δt−90°」という関係から、位相差ずれ時間△tを求める。
【0048】
S3のステップで2つの距離センサーの出力ずれを求める処理が行われる場合、その処理は次の通りである。即ち、まず、図56に示す2つの距離センサー(511、512)からの出力波形のうち、何れか一方を基準にして他方がどれたけずれているのかを求める。例えば、一方が最大値1を示すとき、他方は理想的には0であるはずであるが、位相差ズレがあると出力差△Vが発生する。基準とする方の出力波形が正弦波であれば、他方は余弦波なので、「ΔV=cos(90°−ψ)」という関係式に基づいて、出力差△Vを算出する。
【0049】
S3のステップで位相差ずれ時間△tあるいは出力差△Vを算出したら、それらに基づいて位相差ずれ量ψを求める。そして、「tanωt=(Y/X+sinψ)/cosψ」という関係式に基づいて、ωtを求める(S4)。
【0050】
[第4変形例]
図23は、第4変形例に係る回転測定装置における被検部材517と、センサーたる第1濃度センサー517、及び第2濃度センサー518とを示す正面図である。第4変形例に係る回転測定装置は、被検部材として、図示のような濃度勾配のあるものを用いている。この濃度勾配は、被検部材815に対してその回転方向の所定位置で延在するように付した直径仮想線Laの一端側の被検部材箇所を最も高濃度にするとともに、直径仮想線Laの他端側の被検部材箇所を最も低濃度にする勾配である。このような濃度勾配が、被検部材815におけるセンサーとの対向面に付されている。
【0051】
反射型フォトセンサーからなる第1濃度センサー518と第2濃度センサー519とは、被検部材517における回転軸線を中心にした90°位相ずれした箇所を被検対象にするように配設されており、その箇所の濃度の逆数に応じた電圧を出力する。このような被検部材517と濃度センサーとの組合せでは、それぞれの濃度センサーから、ローラ1回転あたりに1周期分の正弦波状の出力がなされる。なお、反射濃度は直線的な変化である必要はない。何らかの変換を施すことによって直線的な変化が得られれば、同様に扱うことができる。なお、2つの濃度センサーの位置関係は、上述した観測点Aと観測点Cとが得られる関係とする。
【0052】
反射型フォトセンサーからなる第1濃度センサー518、第2濃度センサー519の代わりに、図24に示すように、透過型フォトセンサーからなる第1濃度センサー520、第2濃度センサー521を用いてもよい。この場合、被検部材517の基材として、透明なものを用いる。そして、センサーの発光素子と受光素子との間に被検部材517を配設して、濃度勾配面に対する光透過量を検知させるようにする。センサーから出力される電圧は、濃度に応じた値となる。
【0053】
次に、第3変形例に係る回転測定装置を搭載した画像形成装置の実施形態について説明する。
まず、本実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図25は、実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、画像形成装置としての画像形成部1と、白紙供給装置40と、画像読取ユニット50とを備えている。画像読取装置としての画像読取ユニット50は、画像形成部1の上に固定されたスキャナ150と、これに支持されるシート搬送装置としての原稿自動搬送装置(以下、ADFという)51とを有している。
【0054】
白紙供給装置40は、ペーパーバンク41内に多段に配設された2つの給紙カセット42、給紙カセットから記録シートを送り出す送出ローラ43、送り出された記録シートを搬送しながら1枚ずつに分離する給紙分離ローラ対45等を有している。また、画像形成部1の搬送路としての給紙路37に、シート状部材としての記録シートを搬送する複数の搬送ローラ47等も有している。そして、給紙カセット内の記録シートを画像形成部1内の給紙路37内に給紙する。
【0055】
画像形成手段としての画像形成部1は、光書込装置2や、黒,イエロー,マゼンタ,シアン(K,Y,M,C)のトナー像を形成する4つのプロセスユニット3K,Y,M,C、転写ユニット24、紙搬送ユニット28、レジストローラ対33、定着装置34、スイッチバック装置36、給紙路37等を備えている。そして、光書込装置2内に配設された図示しないレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、ドラム状の4つの感光体4K,Y,M,Cに向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4K,Y,M,Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。
【0056】
図26は、画像形成部1の内部構成の一部を拡大して示す部分構成図である。また、図27は、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図である。なお、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、図27においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。
【0057】
プロセスユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ、感光体とその周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、画像形成部1本体に対して着脱可能になっている。黒用のプロセスユニット3Kを例にすると、これは、感光体4の周りに、帯電装置23、現像装置6、ドラムクリーニング装置15、除電ランプ22等を有している。本複写機では、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cを、後述する中間転写ベルト25に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設した、いわゆるタンデム型の構成になっている。
【0058】
感光体4としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
【0059】
現像装置6は、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ12に供給する攪拌部7と、現像スリーブ12に担持された二成分現像剤中のトナーを感光体4に転移させるための現像部11とを有している。
【0060】
攪拌部7は、現像部11よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本の搬送スクリュウ8、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、現像ケース9の底面に設けられたトナー濃度センサー10などを有している。
【0061】
現像部11は、現像ケース9の開口を通して感光体4に対向する現像スリーブ12、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ13、現像スリーブ12に先端を接近させるドクタブレード14などを有している。現像スリーブ12は、非磁性の回転可能な筒状になっている。マグネットローラ12は、ドクタブレード14との対向位置からスリーブの回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部7から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ13表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
【0062】
磁気ブラシは、現像スリーブ12の回転に伴ってドクタブレード14との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体4に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ12に印加される現像バイアスと、感光体4の静電潜像との電位差によってトナーを静電潜像上に転移させて現像に寄与する。更に、現像スリーブ12の回転に伴って再び現像部11内に戻り、マグネットローラ13の磁極間に形成される反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部7内に戻される。攪拌部7内には、トナー濃度センサー10による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。なお、現像装置6として、二成分現像剤を用いるものの代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤を用いるものを採用してもよい。
【0063】
ドラムクリーニング装置15としては、弾性体からなるクリーニングブレード16を感光体4に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体4に接触させる接触導電性のファーブラシ17を、図中矢印方向に回転自在に有する方式のものを採用している。このファーブラシ17は、図示しない固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体4表面に塗布する役割も兼ねている。ファーブラシ17にバイアスを印加する金属製の電界ローラ18を図中矢示方向に回転自在に設け、これにスクレーパ19の先端を押し当てている。ファーブラシ17に付着したトナーは、ファーブラシ17に対してカウンタ方向に接触して回転しながらバイアスが印加される電界ローラ18に転位する。そして、スクレーパ19によって電界ローラ18から掻き取られた後、回収スクリュウ20上に落下する。回収スクリュウ20は、回収トナーをドラムクリーニング装置15における図紙面と直交する方向の端部に向けて搬送して、外部のリサイクル搬送装置21に受け渡す。リサイクル搬送装置21は、受け渡されたトナーを現像装置15に送ってリサイクルする。
【0064】
除電ランプ22は、光照射によって感光体4を除電する。除電された感光体4の表面は、帯電装置23によって一様に帯電せしめられた後、光書込装置2による光書込処理がなされる。なお、帯電装置23としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4に当接させながら回転させるものを用いている。感光体4に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
【0065】
先に示した図26において、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cの感光体4K,Y,M,Cには、これまで説明してきたプロセスによってK,Y,M,Cトナー像が形成される。
【0066】
4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cの下方には、転写ユニット24が配設されている。ベルト駆動装置としての転写ユニット24は、複数のローラによって張架した中間転写ベルト25を、感光体4K,Y,M,Cに当接させながら図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体4K,Y,M,Cと、無端状のベルト部材である中間転写ベルト25とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップが形成されている。K,Y,M,C用の1次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写ローラ26K,Y,M,Cによって中間転写ベルト25を感光体4K,Y,M,Cに向けて押圧している。これら1次転写ローラ26K,Y,M,Cには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の1次転写ニップには、感光体4K,Y,M,C上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってK,Y,M,C用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各1次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0067】
転写ユニット24の図中下方には、駆動ローラ30と2次転写ローラ31との間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット28が設けられている。そして、自らの2次転写ローラ31と、転写ユニット24の下部張架ローラ27との間に、中間転写ベルト25及び紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ31には図示しない電源によって2次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット24の下部張架ローラ27は接地されている。これにより、2次転写ニップに2次転写電界が形成されている。
【0068】
この2次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対33が配設されている。また、レジストローラ対33のレジストニップの入口付近には、図示しないレジストローラセンサーが配設されている。図示しない白紙供給装置からレジストローラ対33に向けて搬送されてくる記録シートPは、その先端がレジストローラセンサーに検知された所定時間後記録シートPの搬送が一時停止し、レジストローラ対33のレジストニップに先端を突き当てる。この結果、記録シートPの姿勢が修正され、画像形成との同期をとる準備が整う。このようにして、記録シートPは、姿勢が修正されるが、その修正が上手く行われない場合もある。すると、レジストローラ対33の下流側で記録シートPのスキューが発生する。
【0069】
記録シートPの先願がレジストニップに突き当たると、レジストローラ対33は、記録シートPを中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングでローラ回転駆動を再開して、記録シートPを2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の影響によって記録シートに一括2次転写され、記録シートの白色と相まってフルカラー画像となる。2次転写ニップを通過した記録シートは、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置34へと搬送される。なお、レジストニップの出口付近には、光学式変位センサー38が配設されているが、その役割については後述する。
【0070】
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、2次転写ニップで記録シートに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置によって掻き取り除去される。
【0071】
定着装置34に搬送された記録シートは、定着装置34内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着装置34から排紙ローラ対35に送られた後、機外へと排出される。
【0072】
先に示した図25において、紙搬送ユニット22および定着装置34の下には、スイッチバック装置36が配設されている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた記録シートが、切換爪で記録シートの進路を記録シート反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び2次転写転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
【0073】
画像形成部1の上に固定されたスキャナ150やこれの上に固定されたADF51は、固定読取部や移動読取部152を有している。移動読取部152は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第2コンタクトガラスの直下に配設されており、光源や、反射ミラーなどからなる光学系を図中左右方向に移動させることができる。そして、光学系を図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第2コンタクトガラス上に載置された図示しない原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させて、スキャナ本体に固定された画像読取センサー153で受光する。
【0074】
一方、固定読取部は、スキャナ150の内部に配設された第1面固定読取部151と、ADF51内に配設された図示しない第2面固定読取部とを有している。光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサーなどを有する第1面固定読取部151は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第1コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、後述するADF51によって搬送される原稿MSが第1コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサーで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSの第1面を走査する。また、第2面固定読取部は、第1面固定読取部151を通過した後の原稿MSの第2面を走査する。
【0075】
スキャナ150の上に配設されたADF51は、本体カバー52に、読取前の原稿MSを載置するための原稿載置台53、シート状部材としての原稿MSを搬送するための搬送ユニット54、読取後の原稿MSをスタックするための原稿スタック台55などを保持している。図4に示すように、スキャナ150に固定された蝶番159によって上下方向に揺動可能に支持されている。そして、その揺動によって開閉扉のような動きをとり、開かれた状態でスキャナ150の上面の第1コンタクトガラス154や第2コンタクトガラス155を露出させる。原稿束の片隅を綴じた本などの片綴じ原稿の場合には、原稿を1枚ずつ分離することができないため、ADFによる搬送を行うことができない。そこで、片綴じ原稿の場合には、ADF51を図28に示すように開いた後、読み取らせたいページが見開かれた片綴じ原稿を下向きにして第2コンタクトガラス154上に載せた後、ADFを閉じる。そして、スキャナ150の図25に示した移動読取部152によってそのページの画像を読み取らせる。
【0076】
一方、互いに独立した複数の原稿MSを単に積み重ねた原稿束の場合には、その原稿MSをADF51によって1枚ずつ自動搬送しながら、スキャナ150内の第1面固定読取部151やADF51内の第2面固定読取部に順次読み取らせていくことができる。この場合、原稿束を原稿載置台53上にセットした後、図示しないコピースタートボタンを押す。すると、ADF51が、原稿載置台53上に載置された原稿束の原稿MSを上から順に搬送ユニット54内に送り、それを反転させながら原稿スタック台55に向けて搬送する。この搬送の過程で、原稿MSを反転させた直後にスキャナ150の第1面固定読取部151の真上に通す。このとき、原稿MSの第1面の画像がスキャナ150の第1面固定読取部151によって読み取られる。
【0077】
図29は、ADF51の要部構成をスキャナ150の上部とともに示す拡大構成図である。ADF51は、原稿セット部A、分離給送部B、レジスト部C、ターン部D、第1読取搬送部E、第2読取搬送部F、排紙部G、スタック部H等を備えている。
【0078】
原稿セット部Aは、原稿MSの束がセットされる原稿載置台53等を有している。また、分離給送部Bは、セットされた原稿MSの束から原稿MSを一枚ずつ分離して給送するものである。また、レジスト部Cは、給送された原稿MSに一時的に突き当たって原稿MSを整合した後に送り出すものである。また、ターン部Dは、C字状に湾曲する湾曲搬送部を有しており、この湾曲搬送部内で原稿MSを折り返しながらその上下を反転させるものである。また、第1読取搬送部Eは、第1コンタクトガラス155の上で原稿MSを搬送しながら、第1コンタクトガラス155の下方で図示しないスキャナの内部に配設されている第1固定読取部151に原稿MSの第1面を読み取らせるものである。また、第2読取搬送部Fは、第2固定読取部95の下で原稿MSを搬送しながら、原稿MSの第2面を第2固定読取部95に読み取らせるものである。また、排紙部Gは、両面の画像が読み取られた原稿MSをスタック部Hに向けて排出するものである。また、スタック部Hは、スタック台55の上に原稿MSをスタックするものである。
【0079】
原稿MSは、原稿MSの束の厚みに応じて図中矢印a、b方向に揺動可能な可動原稿テーブル54の上に原稿先端部が載せられるとともに、原稿後端側が原稿載置台53の上に載せられた状態でセットされる。このとき、原稿載置台53上において、その幅方向(図紙面に直交する方向)の両端に対してそれぞれ図示しないサイドガイドが突き当てられることで、幅方向における位置が調整される。このようにしてセットされる原稿MSは、可動原稿テーブル54の上方で揺動可能に配設されたレバー部材62を押し上げる。すると、それに伴って原稿セットセンサー63が原稿MSのセットを検知して、検知信号を図示しないコントローラに送信する。そして、この検知信号は、コントローラからI/Fを介してスキャナの読取制御部に送られる。
【0080】
原稿載置台53には、原稿MSの搬送方向の長さを検知する反射型フォトセンサー又はアクチュエーター・タイプのセンサーからなる第1長さセンサー57、第2長さセンサー58が保持されている。これら長さセンサーにより、原稿MSの搬送方向の長さが検知される。
【0081】
可動原稿テーブル54の上に載置された原稿MSの束の上方には、カム機構によって上下方向(図中矢印c,d方向)に移動可能に支持されるピックアップローラ80が配設されている。このカム機構は、ピックアップモータ56によって駆動することで、ピックアップローラ80を上下移動させることが可能である。ピックアップローラ80が上昇移動すると、それに伴って可動原稿テーブル54が図中矢印a方向に揺動して、ピックアップローラ80が原稿MSの束における一番上の原稿MSに当接する。更に可動原稿テーブル54が上昇すると、やがてテーブル上昇検知センサー59によって可動原稿テーブル54の上限までの上昇が検知される。これにより、ピックアップモータ56が停止するとともに、可動原稿テーブル54の上昇が停止する。
【0082】
複写機の本体に設けられたテンキーやディスプレイ等からなる本体操作部に対しては、操作者によって両面読取モードか、あるいは片面読取モードかを示す読取モード設定のためのキー操作や、コピースタートキーの押下操作などが行われる。コピースタートキーが押下されると、図示しない本体制御部からADF51のコントローラに原稿給紙信号が送信される。すると、ピックアップローラ80が給紙モータ76の正転によって回転駆動して、可動原稿テーブル54上の原稿MSを可動原稿テーブル54上から送り出す。
【0083】
両面読取モードか、片面読取モードかの設定に際しては、可動原稿テーブル54上に載置された全ての原稿MSについて一括して両面、片面の設定を行うことが可能である。また、1枚目及び10枚目の原稿MSについては両面読取モードに設定する一方で、その他の原稿MSについては片面読取モードに設定するなどといった具合に、個々の原稿MSについてそれぞれ個別に読取モードを設定することも可能である。
【0084】
ピックアップローラ80によって送り出された原稿MSは、分離搬送部Bに進入して、給紙ベルト84との当接位置に送り込まれる。この給紙ベルト84は、駆動ローラ82と駆動ローラ82とによって張架されており、給紙モータ76の正転に伴う駆動ローラ82の回転によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。この給紙ベルト84の下部張架面には、給紙モータ76の正転によって図中時計回りに回転駆動されるリバースローラ85が当接している。当接部においては、給紙ベルト84の表面が給紙方向に移動する。これに対し、リバースローラ85は、給紙ベルト84に所定の圧力で当接しており、給紙ベルト84に直接当接している際、あるいは当接部に原稿MSが1枚だけ挟み込まれている際には、ベルト又は原稿MSに連れ回る。但し、当接部に複数枚の原稿MSが挟み込まれた際には、連れ回り力がトルクリミッターのトルクよりも低くなることから、連れ回り方向とは逆の図中時計回りに回転駆動する。これにより、最上位よりも下の原稿MSには、リバースローラ85によって給紙とは反対方向の移動力が付与されて、数枚の原稿から最上位の原稿MSだけが分離される。
【0085】
給紙ベルト84やリバースローラ85の働きによって1枚に分離された原稿MSは、レジスト部Cに進入する。そして、突き当てセンサー72の直下を通過する際にその先端が検知される。このとき、ピックアップモータ56の駆動力を受けているピックアップローラ80がまだ回転駆動しているが、可動原稿テーブル54の下降によって原稿MSから離間するため、原稿MSは給紙ベルト84の無端移動力のみによって搬送される。そして、突き当てセンサー72によって原稿MSの先端が検知されたタイミングから所定時間だけ給紙ベルト84の無端移動が継続して、原稿MSの先端がプルアウト駆動ローラ86とこれに当接しながら回転駆動するプルウト駆動ローラ87との当接部に突き当たる。
【0086】
プルアウト従動ローラ87は、原稿MSを原稿搬送方向下流側の中間ローラ対66まで搬送する役割を担っており、給紙モータ76の逆転によって回転駆動される。給紙モータ76が逆転すると、プルアウト従動ローラ87と、互いに当接している中間ローラ対66における一方のローラとが回転を開始するとともに、給紙ベルト84の無端移動が停止する。また、このとき、ピックアップローラ80の回転も停止される。
【0087】
プルアウト従動ローラ87から送り出された原稿MSは、原稿幅センサー73の直下を通過する。原稿幅センサー73は、反射型フォトセンサー等からなる紙検知部を複数有しており、これら紙検知部は原稿幅方向(図紙面に直交する方向)に並んでいる。どの紙検知部が原稿MSを検知するのかに基づいて、原稿MSの幅方向のサイズが検知される。また、原稿MSの搬送方向の長さは、原稿MSの先端が突き当てセンサー72によって検知されてから、原稿MSの後端が突き当てセンサー72によって検知されなくなるまでのタイミングに基づいて検知される。
【0088】
原稿幅センサー73によって幅方向のサイズが検知された原稿MSの先端は、ターン部Dに進入して、中間ローラ対66のローラ間の当接部に挟み込まれる。この中間ローラ対66による原稿MSの搬送速度は、後述する第1読取搬送部Eでの原稿MSの搬送速度よりも高速に設定されている。これにより、原稿MSを第1読取搬送部Eに送り込むまでの時間の短縮化が図られている。
【0089】
ターン部D内を搬送される原稿MSの先端は、原稿先端が読取入口センサー67との対向位置を通過する。これによって原稿MSの先端が読取入口センサー67によって検知されると、その先端が搬送方向下流側の読取入口ローラ対(89と90との対)の位置まで搬送される間での間に、中間ローラ対66による原稿搬送速度が減速される。また、読取モータ77の回転駆動の開始に伴って、読取入口ローラ対(89,90)における一方のローラ、読取出口ローラ対92における一方のローラ、第2読取出口ローラ対93における一方のローラがそれぞれ回転駆動を開始する。
【0090】
ターン部D内においては、原稿MSが中間ローラ対66と読取入口ローラ対(89、90)との間の湾曲搬送路で搬送される間に上下面が逆転されるとともに、搬送方向が折り返される。そして、読取入口ローラ対(89、90)のローラ間のニップを通過した原稿MSの先端は、レジストセンサー65の直下を通過する。このとき原稿MSの先端がレジストセンサー65によって検知されると、所定の搬送距離をかけながら原稿搬送速度が減速されていき、第1読取搬送部Eの手前で原稿MSの搬送が一時停止される。また、図示しない読取制御部に対してレジスト停止信号が送信される。
【0091】
レジスト停止信号を受けた読取制御部が読取開始信号を送信すると、ADF51のコントローラの制御により、原稿MSの先端が第1読取搬送部E内に到達するまで、読取モータ77の回転が再開されて所定の搬送速度まで原稿MSの搬送速度が増速される。そして、読取モータ77のパルスカウントに基づいて算出された原稿MSの先端が第1固定読取部151による読取位置に到達するタイミングで、コントローラから読取制御部に対して原稿MSの第1面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第1固定読取部151による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第1面が第1固定読取部151によって読み取られる。
【0092】
第1読取搬送部Eを通過した原稿MSは、後述の読取出口ローラ対92を経由した後、その先端が排紙センサー61によって検知される。片面読取モードが設定されている場合には、後述する第2固定読取部95による原稿MSの第2面の読取が不要である。そこで、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知されると、排紙モータ78の正転駆動が開始されて、排紙ローラ対94における図中下側の排紙ローラが図中時計回り方向に回転駆動される。また、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知されてからの排紙モータパルスカウントに基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対94のニップを抜け出るタイミングが演算される。そして、この演算結果に基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対94のニップから抜け出る直前のタイミングで、排紙モータ78の駆動速度が減速せしめられて、原稿MSがスタック台55から飛び出さないような速度で排紙される。
【0093】
一方、両面読取モードが設定されている場合には、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知された後、第2固定読取部95に到達するまでのタイミングが読取モータ77のパルスカウントに基づいて演算される。そして、そのタイミングでコントローラから読取制御部に対して原稿MSの第2面における副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第2固定読取部95による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第2面が第2固定読取部95によって読み取られる。
【0094】
読取手段としての第2固定読取部95は、密着型イメージセンサー(CIS)からなり、原稿MSに付着している糊状の異物が読取面に付着することによる読取縦スジを防止する目的で、読取面にコーティング処理が施されている。第2固定読取部95との対向位置には、原稿MSを非読取面側から支持する原稿支持手段としての第2読取ローラ96が配設されている。この第2読取ローラ96は、第2固定読取部95による読取位置での原稿MSの浮きを防止するとともに、第2固定読取部95におけるシェーディングデータを取得するための基準白部として機能する役割を担っている。
【0095】
先に示した図25において、送出ローラ43によって給紙カセット42内から送り出された記録シートは、給紙分離ローラ対45によるニップ内に挟まれる。
【0096】
図30は、白紙供給装置40における送出ローラ43の周囲構成をローラ軸線方向の一端側から示す分解斜視図である。また、図31は、送出ローラ43の周囲構成を示す拡大構成図である。また、図32は、給紙分離ローラ対45の周囲構成を示す拡大斜視図である。給紙分離ローラ対45が劣化していない場合における記録シートの挙動は次の通りである。即ち、図示しない給紙カセット内から記録シートが送り出される際には、まず、ピックアップソレノイド104が駆動して送出ローラ43を給紙カセット内の記録シートに押し当てる。また、加圧ソレノイド106が駆動して、分離ローラ45bを給紙ローラ45aに押し当てる。そして、この状態で給紙モータ103が逆転駆動する。すると、送出ローラ43が図中反時計回り方向に回転駆動して、記録シートを給紙ローラ45aと分離ローラ45bとの当接によるニップに向けて送り出す。このとき、給紙ローラ45aは、ニップ内に挟み込んだ記録シートを図示しない給紙路に向けて送り込むように、図中反時計回り方向に向けて回転駆動する。この状態で、分離ローラ45bが、給紙ローラ45aに直接当接していたり、図33のように1枚の記録シートPを介して給紙ローラ45aに当接したりしていると、分離ローラ45bに対し、給紙ローラ45aや記録シートに追従する方向のトルクが大きく作用する。そして、給紙モータ103の駆動力を分離ローラ45bに繋ぐための図示しないトルクリミッターが空転する。これにより、分離ローラ45bは、給紙ローラ45aや記録シートに追従して図中時計回り方向に回転する(正回転方向)。
【0097】
かかる構成では、非通紙時には、給紙ローラ45aと分離ローラ45bとを非接触で離間させておくことで、それらローラの着脱操作など、メンテナンス性を向上させることができる。また、通紙時にのみ両ローラを当接させることで、両ローラに対する負荷を軽減して長寿命化を図ることもできる。また、給紙分離ニップよりも前又は後でジャムが発生した際に、両ローラが離間しているので、ジャム紙除去操作性を向上させることもできる。
【0098】
図34に示すように、ニップ内に2枚以上の記録シートPが重なった状態で挟み込まれると、図示しないトルクリミッターが空転しなくなって、給紙モータ103の逆転駆動力が分離ローラ45aに繋がれる。すると、図示のように分離ローラ45bが図中反時計回り方向(逆回転方向)に回転して、最上位(図中最も上側)の記録シートPを除く下位側の記録シートが、分離ローラ45bによって給紙カセットに向けて戻される。
【0099】
一方、給紙ローラ45aの表面が劣化して摩擦抵抗を低下させたとする。すると、図35に示すように、1枚の記録シートPがニップに挟み込まれた際に、給紙ローラ45aと記録シートPとの間でスリップが発生する。このため、記録シートPに追従する分離ローラ45bの連れ回り方向(図中時計回り方向)の回転量が減少する。
【0100】
また、分離ローラ45bの表面が劣化して摩擦抵抗を低下させたとする。すると、図36に示すように、記録シートPから分離ローラ45bに対して連れ回り方向のトルクが良好に伝わらなくなって、分離ローラ45bがときどき逆回転する。よって、この場合にも、分離ローラ45bの連れ回り方向の回転量が減少する。
【0101】
図37は、給紙分離ニップの周囲で発生する各種の力を説明するための模式図である。同図において、FBは、ニップに進入した最上位の記録シートPに対して給紙ローラ45aから付与される給紙方向の力であるシート搬送力を示している。また、PBは、分離ローラ46bを給紙ローラ46aに向けて押圧する押圧力を示している。また、TAは、ニップに進入した最下位の記録シートPに対して分離ローラ46bから付与される給紙方向とは逆方向の力である分離力を示している。また、μpは、記録シート間の表面摩擦係数であるシート間摩擦係数を示している。なお、給紙ローラ46aの表面摩擦係数である給紙ローラ摩擦係数は、μrで表すものとする。
【0102】
最上位の記録シートにおける給紙条件と、最下位の記録シートにおける分離条件とに基づいて、シート自重を無視して分離適正条件を考えると、それは次式のように表すことができる。
【数13】
【0103】
そして、この式をグラフに変換すると、図38のグラフが得られる。ここでは給紙ローラ46aに着目しており、給紙〜シート間摩擦係数μrが給紙ローラ46aの表面の劣化に伴って変化している。給紙ローラ摩擦係数μrが低下するほど、給紙〜シート間摩擦係数μrの変動領域との間の直線の傾きが小さくなるので、不送りが発生し易くなる。シート間摩擦係数μpの変動は、設計で見込む誤差因子の大きさを表している。シート間摩擦係数μpや給紙〜シート間摩擦係数μrはコントロールできない因子であるので、設計時にはある範囲の変動を見込んだ上で、重送や不送りが発生しない適正領域を確保できるように、設定条件Xを決める必要がある。
【0104】
次に、本複写機における特徴的な構成について説明する。
図39は、給紙分離ローラ対45の周囲構成を示す拡大模式図である。送出ローラ43の近傍には、送出ローラ43と給紙分離ローラ対45との間で、給紙ローラ45a側である最上位側にある記録シートの給紙方向の移動速度を検知する速度センサー120が配設されている。送出ローラ43から送り出された複数枚の記録シートのうち、最上位側の記録シートの給紙方向における移動速度は、この速度センサー120によって検知され、その検知結果は図示しない制御部に送られる。
【0105】
速度センサー120は、パーソナルコンピュータの入力機器である光学式マウスなどに広く使用されている光学式変位センサーからなるものであり、マトリクス状に配設された複数の撮像素子でそれぞれ被検対象の表面を撮像する。そして、それぞれの撮像素子で撮像を周期的に繰り返して、被検対象である記録シートの2次元平面上における特徴的な像(例えば特徴的な凸や凹)の動きを捉えることで、記録シートの2次元平面における変位や変位速度を把握することができる。撮像素子のマトリクスを給紙方向に対して45[°]傾けて姿勢で速度センサー120を配設すると、給紙方向と、給紙方向に直交する方向(ローラ軸線方向)とでそれぞれ変位量の分解能を高めて、より高精度の検知を可能にすることができる。記録シートのスキューを高精度に検出することが可能になる。
【0106】
分離ローラ45bのローラ部の端面には、被検部材としてのドーナツ状の磁石514が固定されている。この磁石514かかる磁石514に対しては、第1ホールセンサー515及び第2ホールセンサー516が、ローラ軸線方向において対向するように配設されている。分離ローラ45bの回転軸線を中心にして、第1ホールセンサー515と第2ホールセンサー516とは、互いに90[°]ずれた位置に固定されている。このため、それぞれの素子は、回転に伴う磁束密度の変化を、90[°]の位相差をもって検知する。磁石514、第1ホールセンサー515、第2ホールセンサー516は、それぞれ第3変形例に係る回転測定装置の一部である。
【0107】
図40は、分離ローラ45bを周囲構成とともに示す縦断面図である。分離ローラ45bの回転軸線を中心にして互いに90[°]ずれた位置に配設される第1ホールセンサー515、第2ホールセンサー516は、プリンタ本体に支持されたブラケット134に固定されている。そして、分離ローラ45bの端面に固定された磁石514に対して、ギャップδを介して対向している。分離ローラ45bの回転軸部材45cは、図中A方向に引き抜かれることで、複写機本体から取り外される。2つのホール素子を分離ローラ45Bに対して矢印A方向とは反対側で隣接させることで、矢印A方向の側を空きスペースにして、分離ローラ45bの抜き取り作業を容易にしている。また、2つのホールセンサー(515、516)の出力のギャップ依存性を均等にすることが可能であるので、組み付け誤差によってギャップδのばらつきがあったとしても、分離ローラ45bの回転角変位の検出値にその影響を及ぼさない。よって、回転角変位を高精度に検出することができる。また、分離ローラ45bに磁石514という比較的重量のあるものを固定することで、押圧方向とは反対方向の反力に対して抵抗を高めることができる。更には、図41に示すように、磁石514とホールセンサーとが非接触であるので、分離ローラ45bに対して負荷をかけることなく、その回転角変位を検出することができる。
【0108】
なお、図40に示したように、トルクリミッター127は、分離ローラ45bの内部において、回転軸部材45cと分離ローラ45b内周面との間に介在している。分離ローラ45bの外部において、回転軸部材45cは、互いに軸線方向に所定の距離をおいて並ぶ2つの軸受け131,132によって回転自在に支持されており、矢印A方向とは反対側の端部には、回転駆動力を受け入れるための駆動受入ギヤ133が固定されている。
【0109】
図42は、ホールセンサー(515、516)の出力特性を示すグラフである。このグラフは、アンプを内蔵したリニアホールICである旭化成エレクトロニクス製EQ−711Lの出力特性を示している。図41に示したように、ホールセンサーに対して所定のギャップδを介して対向させた磁石を移動させると、対向位置での磁束密度に対応した出力が得られる。そして、このときの出力特性は、図42に示すように、ギャップδに応じて変化する。但し、2つのホールセンサーでそれぞれギャップδを等しくすれば、製品毎のギャップδのバラツキによる検出精度の悪化を回避することが可能である。
【0110】
図43は、先に図33に示した状態におけるホールセンサーからの出力変化を示すグラフである。ch1の出力は第1ホールセンサー(515)からの出力を示している。また、ch2の出力は、第2ホールセンサー(516)からの出力を示している。分離ローラ45bに固定された磁石(514)が定常回転しているときの出力について、一方を正弦とすれば他方は余弦の関係になる。
【0111】
なお、図43において、およそ0秒〜1秒の期間や、およそ2.1秒〜3秒の期間で、グラフが横這いになっているのは、それぞれの期間で分離ローラ45bを駆動していないからである。およそ1秒の時点で、分離ローラ45bを給紙ローラ45aに当接させた後、1.1秒の時点で分離ローラ45bに対して駆動をかけている。また、およそ1.8秒の時点で分離ローラ45bを給紙ローラ45aから離間させた後、およそ2.1秒の時点で分離ローラ45bに対する駆動を停止している。
【0112】
図44は、図43のフラグを1枚通紙時における分離ローラ45bの累積回転角度(累積回転量)に変換したグラフを示している。分離ローラ45Bに対して付与した駆動信号に基づいて特定した回転時間に対して、累積回転角がどのような値になっているかを表すものである。給紙ローラ45a、分離ローラ45bの何れにも表面の劣化がなく、且つ、給紙分離ニップに対して記録シートが1枚だけ単独で送られた場合には、図示のように、分離ローラ45bの累積回転角度がプラス側(連れ回り方向の側)に単調増加する波形が得られる。
【0113】
図45は、本複写機に搭載された回転測定装置の演算手段によって実施される累積回転角算出処理を示すフローチャートである。この累積回転角算出処理では、まず、第1ホールセンサーからの出力と、第2ホールセンサーからの出力とに、約2.5Vのオフセットが発生しており、このままでは除算によって逆正接を算出できないので、それを取り除くオフセット調整を行う(S1)。以降、S2からS12までの構成は先の図11に示したフロート同様であるので、説明を省略する。
【0114】
変位量uと基準値との差であるΔuを時系列で測定していくと、重送発生時にはΔuが重送された用紙の枚数分だけ倍増した値となるので、これによって重送の発生の有無を判定する(S13)。そして、数13の分離条件式に従い、加圧力PBを所定量増加する処理を行う(S14)。再び重送検知を行えば、本来の分離ローラの回転数の範囲内で重送を回避することができる。
【0115】
図46は、給紙ローラ及び分離ローラに劣化がない状態で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なった状態で送られたときにおける、分離ローラ45bの累積回転角度の変化を示すグラフである。図示のように、給紙ローラ及び分離ローラに劣化がない状態で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なった状態で送られた場合にも、分離ローラ45bの累積回転角度がプラス側にほぼ単調増加する。
【0116】
図47は、分離ローラの表面に軽度の劣化がある(給紙ローラは劣化なし)状態で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なって送られたときにおける、分離ローラ45bの累積回転角度の変化を示すグラフである。図示のように、この場合、図46に比べて、分離ローラ45bの累積回転角度が減少する。
【0117】
図48は、分離ローラの表面に中程度の劣化がある(給紙ローラは劣化なし)状態で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なって送られたときにおける、分離ローラ45bの累積回転角度の変化を示すグラフである。図示のように、この場合、分離ローラ45bの累積回転角度が図47のときよりも更に減少する。
【0118】
図49は、分離ローラの表面に重度の劣化がある(給紙ローラは劣化なし)状態で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なって送られたときにおける、分離ローラ45bの累積回転角度の変化を示すグラフである。図示のように、この場合、分離ローラ45bの累積回転角度がプラス側からマイナス側に転じる。
【0119】
図50は、図44、図46〜49の結果をまとめたグラフである。図示のように、分離ローラ45bの累積回転角度は、分離ローラ45bの表面の劣化に伴って減少していき、表面が寿命まで劣化すると、プラス側からマイナス側に転じる。劣化があっても1枚通紙のときには減少せず、且つ複数枚通紙のときでも枚数によって減少量が異なるが、過去の給紙動作10回分など、ある程度の期間の累積回転角度を平均すれば、分離ローラ45bの表面について、どの程度劣化しているのかを予測することが可能である。また、図46〜図49を用いて、分離ローラ45bの表面が劣化した場合における分離ローラ45bの給紙動作1回あたりにおける累積回転角度の挙動について説明したが、給紙ローラ45aの表面が劣化する場合にも、同様にして、劣化進行に伴って分離ローラ45bの累積回転角度が減少していく。
【0120】
給紙動作1回あたりにおける分離ローラ45bの累積回転角度の減少が分離ローラ45bの劣化に起因している場合、給紙ローラ45aは、最上位の記録シートPを給紙方向に正常に搬送する。このため、最上位の記録シートPの移動速度は、速度センサー120によって一般的な値として検知される。これに対し、給紙ローラ45aの表面が劣化している場合には、給紙ローラ45aと最上位の記録シートとの間でスリップが発生する。そして、最上位の記録シートが良好に給送されなくなるため、速度センサー120は、最上位の記録シートPの移動速度として、比較的低い値を検知するようになる。よって、寿命になる寸前の図48の状態を検知した場合、速度センサー120による検知結果について、一般的な値であるのか、比較的低い値であるのかを見分ければよい。そうすることで、給紙ローラ45a及び分離ローラ45bのうち、何れが寿命寸前まで劣化したのかを特定することができる。
【0121】
図51は、実施形態に係る劣化判定装置の構成を示すブロック図である。劣化判定装置は、上述した速度センサー120、第3変形例に係る回転測定装置、制御部200などから構成されている。制御部200は、演算手段としてのCPU(Central Processing Unit )、記憶手段としてのRAM,ROMなどを備えている。そして、ホールセンサ(515、516)からの出力や、シート速度検知手段としての速度センサー120からの出力を、経時的に記憶手段(RAM)に記憶していく。そして、記憶データに基づいて、図45に示したフローを実施して、1回の給紙動作時における分離ローラ45bの累積回転角度(表面移動量)を算出する。更に、算出結果に基づいて、給紙分離ローラ対45について所定の度合いまで進行したと判定した場合には、速度センサー120からの出力記憶履歴に基づいて、最上位の記録シートの移動速度を求めて、何れのローラの劣化によるものなのかを特定することができる。より詳しくは、最上位の記録シートの移動速度が所定の閾値を超えていない場合には、給紙ローラ45aについてもうすぐ寿命に到達するとみなして、給紙ローラ45aの交換をユーザーに促す。これに対し、所定の閾値を超えている場合には、分離ローラ45bについてもうすぐ寿命に到達するとみなして、分離ローラ45bの交換をユーザーに促す。
【0122】
なお、両方のローラが劣化している場合、まず、給紙ローラ45aの交換が促される。ユーザーがそれに基づいて給紙ローラ45aを交換しても、すぐにローラの劣化が検知され、そのときには分離ローラ45bの劣化が特定されるので、すぐに分離ローラ45bの交換が促される。
【0123】
また、速度センサー120やホールセンサー(515、516)については、被検対象となる複写機に搭載する必要があるが、CPU等からなる判定手段については、必ずしも複写機に搭載する必要はない。図52に示すように、判定手段としてのパーソナルコンピュータと、速度センサーやホールセンサーを搭載した複写機とを、通信回線で接続し、通信回線経由でローラ交換作業をユーザーに促してもよい。また、記録シートを搬送するシート搬送装置としての白紙供給装置40に本発明を適用した例について説明したが、シート搬送装置としてのADF51に本発明を適用することも可能である。この場合、搬送部材たる給紙ベルト84と分離部材たるリバースローラ85との当接によるニップの近傍で、シート状部材たる原稿MSの移動速度を上位側(給紙ベルト側)から検知するように、速度センサーを配設する。そして、給紙動作1回あたりにおけるリバースローラ85の累積回転角度と、速度センサーによる検知結果とに基づいて、給紙ベルト84やリバースローラ85の劣化度合いを判定すればよい。また、分離ローラの回転角度位置については、分離ローラの変位量に応じて補正するようになっている。
【0124】
次に、実施形態に係る複写機の変形例について説明する。なお、以下に説明しない限り、実施例に係る複写機の構成は、実施形態と同様である。
変形例に係る複写機は、給紙分離ニップの近傍で搬送される記録シートの移動速度を厚み方向の上位側から検知する速度センサーの代わりに、記録シートをそれぞれ給紙分離ニップの近傍で検知する2つのシート検知センサーを有している。
【0125】
図53は、第1変形例に係る複写機の給紙分離ニップの周囲構成を示す拡大構成図である。同図において、反射型フォトセンサーからなる第2シート検知センサー122は、送出ローラ43に送り出された後、給紙分離ニップに進入する前の記録シートPの先端部を、シート厚み方向の上位側から検知する。また、反射型フォトセンサーからなる第1シート検知センサー121は、給紙分離ニップを通過した直後の記録シートPの先端部を、シート厚み方向の上位側から検知する。第2シート検知センサー122によるシート先端部の検知信号や、第1シート検知センサー121によるシート先端部の検知信号は、制御部に送られる。制御部は、それぞれのセンサーによるシート先端部検知タイミングの時間差に基づいて、最上位側の記録シートPの移動速度を求める。かかる構成では、第1シート検知センサー121と、第2シート検知センサー122と、制御部との組合せが、シート速度検知手段として機能している。
【0126】
実施形態に係る複写機のように、光学式イメージセンサーからなる速度センサー120によって記録シートPの移動速度を検知するものにおいては、記録紙Pとして光沢紙など、表面平滑性に優れたものが用いられると、シート表面の移動状態を捉え難くなる。このため、記録シートPの移動速度を検知できない場合がでてくるおそれがある。一方、第1変形例に係る複写機のように、2つのシート検知センサーによるシート先端部検知タイミングの時間差に基づいて記録シートの移動速度を検出するものにおいては、表面平滑性に優れた記録シートPであっても、その移動速度を確実に検知することができる。
【0127】
なお、図54は、従来の複写機における給紙分離ニップの周囲構成を示すものであるが、図示のように、第1シート検知センサー121については、給紙分離ニップからのシート不送りを検知させる目的で、従来から設けていた。よって、第1変形例に係る複写機においては、2つのシート検知センサーを新設する必要はなく、第2シート検知センサー122だけを新設すれば足りる。一般に、複数の撮像素子を具備する光学式イメージセンサーよりも、反射型フォトセンサーの方が安価であるので、実施形態に比べて低コスト化を図ることができる。なお、シート検知センサーとして、反射型フォトセンサーからなるものに代えて、透過型フォトセンサーからなるものを用いてもよい。この場合であっても、実施形態に比べて低コスト化を図ることが可能である。
【0128】
画像形成部の分離ローラについて説明したが、スキャナ150においても、第3変形例に係る回転測定装置が搭載されており、重送の発生や、リバースローラ85の劣化などが検知されている。
【0129】
以上、実施形態に係る回転測定装置においては、被検部材510として、被検部材510に対してその回転方向の所定位置で延在するように付した直径仮想線の一端側の被検部材箇所を距離センサーに最も近づけるとともに、直径仮想線の他端側の被検部材箇所を距離センサーから最も遠ざける傾斜を距離センサーとの対向面に具備させたものを用いている。また、センサーとして、被検部材510における回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されてその箇所と自らとの距離を検知する第1距離センサー511及び第2距離センサー512を用いている。かかる構成では、既に説明したように、被検対象となる回転体たるローラを1回転させる毎に、距離センサー(511、512)から1周期分の正弦波を出力させ、且つ、ローラを回転軸線方向と直交する方向である軸線直交方向に移動させるのに伴って、その正弦波の振幅を変化させることができる。
【0130】
また、第3変形例に係る回転測定装置においては、被検部材として、ローラの回転軸線を中心にして回転するように配設された磁石514を用いるとともに、センサーとして、磁石514における前記回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されてその箇所の磁力を検知するホールセンサー(ホール素子)を用いている。かかる構成においても、既に説明したように、被検対象となる回転体たるローラを1回転させる毎に、ホールセンサー(515、516)から1周期分の正弦波を出力させ、且つ、ローラを回転軸線方向と直交する方向である軸線直交方向に移動させるのに伴って、その正弦波の振幅を変化させることができる。
【0131】
また、第4変形例に係る回転測定装置においては、被検部材517として、被検部材517に対してその回転方向の所定位置で延在するように付した直径仮想線の一端側の被検部材箇所を最も高濃度にするとともに、直径仮想線の他端側の被検部材箇所を最も低濃度にする濃度勾配を濃度センサー(518、519)との対向面に具備させたものを用いている。そして、センサーとして、被検部材517における回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されてその箇所の濃度を検知する濃度センサー(518、519)を用いている。かかる構成においても、既に説明したように、被検対象となる回転体たるローラを1回転させる毎に、濃度センサー(518、519)から1周期分の正弦波を出力させ、且つ、ローラを回転軸線方向と直交する方向である軸線直交方向に移動させるのに伴って、その正弦波の振幅を変化させることができる。
【0132】
また、第1変形例に係る回転測定装置においては、1つの距離センサーからの出力に基づいて、ローラの軸線直交方向の変位量を算出するように、算出手段たる演算手段513を構成している。かかる構成では、簡単な構成によって回転角度位置と変位量とを測定することができる。
【0133】
また、実施形態に係る回転測定装置においては、センサーとして、被検部材510における互いに異なる箇所を被検対象にするように配設した第1距離センサー511、第2距離センサー512を用いている。そして、それぞれの距離センサーから出力される正弦波の振幅に基づいて、ローラの軸線直交方向の変位量を算出するように、演算手段513を構成している。かかる構成では、ローラを停止させた状態であっても、そのローラの回転角度位置を把握することができる。
【0134】
また、実施形態に係る回転測定装置においては、第1距離センサー511と第2距離センサー512とを、ローラ500の軸線直交方向に沿った変位方向に並べて配設している。かかる構成では、既に説明したように、両センサーを他の方向に沿って並べて配設する場合に比べて、変位量を高精度に検出することができる。
【0135】
また、第2変形例に係る回転測定装置においては、センサーとして、被検部材510における互いに異なる箇所を被検対象にするように配設した第1距離センサー511、第2距離センサー512を用いている。そして、それらセンサー出力の正弦波の振幅に代えて、それぞれのセンサーから出力される正弦波の位相ずれ量に基づいて、ローラ500の軸線直交方向の変位量を算出するように、演算手段513を構成している。かかる構成では、位相ずれ量に基づいて、変位量を容易に検出することができる。
【0136】
また、第2実施例に係る回転測定装置においては、前記位相ずれ量に基づいて、ローラ500の回転量の算出結果を補正する処理を実施するように、演算手段513を構成しているので、既に説明したように、ローラ変位時に回転速度変動を誤検知することによる回転量の検知精度の低下を抑えることができる。
【0137】
また、第2実施例に係る回転測定装置においては、第1距離センサー511と第2距離センサー512とを、ローラ500の軸線直交方向に沿った変位方向と直交する方向に並べて配設している。かかる構成では、既に説明したように、両センサーを他の方向に沿って並べて配設する場合に比べて、変位量を高精度に検出することができる。
【符号の説明】
【0138】
42:給紙カセット(シート収容手段)
45a:給紙ローラ(固定搬送ローラ)
45b:分離ローラ(回転体、移動搬送ローラ)
80:ピックアップローラ(送出手段)
85:リバースローラ(回転体、移動搬送ローラ)
500:ローラ(回転体)
510:被検部材
511:第1距離センサー
512:第2距離センサー
513:演算手段(算出手段)
514:磁石(被検部材)
515:第1ホールセンサー(ホール素子)
516:第2ホールセンサー(ホール素子)
517:被検部材
518:第1濃度センサー
519:第2濃度センサー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0139】
【特許文献1】特許第3048685号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転軸部材と同期してその回転軸線を中心にして回転する被検部材をセンサーによって検知して回転体の回転量を測定する回転測定装置、並びにこれを用いるシート搬送装置、画像読取装置、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ローラやモータ回転子などの回転体の回転量を測定する回転測定装置が様々な分野で用いられている。例えば、特許文献1に記載の画像形成装置では、回転体たる分離ローラの回転量を測定する回転測定装置が用いられている。この画像形成装置の回転測定装置は、給紙カセットから送り出された記録シートを1枚ずつに分離する分離ローラの回転軸部材に固定されて分離ローラとともに回転するスリット円盤を有している。被検部材としてのスリット円盤には、回転方向に所定のピッチで並ぶ複数のスリットが設けられている。そして、このスリット円盤の近傍には、透過型フォトセンサーが配設されており、発光素子から発した光をスリット円盤に向けて照射している。照射光はスリット円盤の表面に当たるが、スリット円盤の回転に伴って発光素子との対向位置にスリット円盤のスリットが移動した際には、照射光がそのスリットを通過して、透過型フォトセンサーの受光素子に受光される。透過型フォトセンサーは、このようにして、スリット円盤の特性であるスリットを検知する。この透過型フォトセンサーによるスリット検知回数に基づいて、分離ローラの回転量が測定される。特許文献1の画像形成装置は、その測定結果に基づいて、分離ローラ表面上での記録シートのスリップを検知している。そして、スリップを検知した場合に、記録シートに対する分離ローラの押圧力を高めてスリップを発生し難くすることで、記録シートの重送の発生を抑えている。
【0003】
特許文献1に記載のようなスリット円盤と透過型フォトセンサーとの組合せによって回転体の回転量を測定する技術の他、被検部材たる磁石と、この磁石の特性である磁力を検知するホールセンサーとの組合せによって回転体の回転量を測定する技術も知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機器のより一層の多様化が望まれる近年においては、回転体の回転量に加えて、回転体の回転軸線方向に直交する方向である軸線直交方向の変位量を検知することが求められる可能性がある。例えば特許文献1に記載の画像形成装置では、記録シートの厚みを検知するなどの目的で、分離ローラの軸線直交方向の変位量を検知することが求められる可能性がある。このような場合に、分離ローラの周囲において、ローラ回転量を測定するためのセンサーに加えて、ローラ変位量を測定するためのセンサーを設けてしまうと、装置の大型化を招いてしまう。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次のような回転測定装置や、これを用いるシート搬送装置、画像読取装置、及び画像形成装置を提供することである。即ち、回転体の軸線直交方向への変位量を測定するための専用のセンサーを設けることなく、回転体の回転量と軸線直交方向への変位量とを測定することができる回転測定装置等である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、回転体の回転軸部材と同期して該回転体の回転軸線を中心にして回転するように配設され、且つ自らの所定の特性をセンサーに対して検知させる被検部材と、該被検部材に対して回転軸線方向で対向する位置で前記被検部材の前記特性を検知するセンサーと、該センサーによる検知結果に基づいて、前記回転体の回転量を算出する算出手段とを有する回転測定装置において、前記センサーと前記被検部材との組合せとして、前記被検部材が1回転する毎に、前記センサーが1周期分の正弦波を出力し、且つ前記被検部材が前記回転体とともに前記回転軸線方向と直交する方向である軸線直交方向に移動するのに伴って、前記センサーが前記正弦波の振幅を変化させるもの、を用い、前記正弦波に基づいて前記回転量を算出しつつ、前記振幅の変化量に基づいて前記回転体の前記軸線直交方向の変位量を算出するように、前記算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の回転測定装置において、前記被検部材として、前記被検部材に対してその回転方向の所定位置で延在するように付した直径仮想線の一端側の被検部材箇所を前記センサーに最も近づけるとともに、前記直径仮想線の他端側の被検部材箇所を前記センサーから最も遠ざける傾斜を前記センサーとの対向面に具備させたものを用いるとともに、前記センサーとして、前記被検部材における前記回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されて前記箇所と自らとの距離を検知する距離センサーを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1の回転測定装置において、前記被検部材として、前記回転軸線を中心にして回転するように配設された磁石を用いるとともに、前記センサーとして、前記磁石における前記回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されてその箇所の前記特性たる磁力を検知するホール素子を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1の回転測定装置において、前記被検部材として、前記被検部材に対してその回転方向の所定位置で延在するように付した直径仮想線の一端側の被検部材箇所を最も高濃度にするとともに、前記直径仮想線の他端側の被検部材箇所を最も低濃度にする濃度勾配を前記センサーとの対向面に具備させたものを用いるとともに、前記センサーとして、前記被検部材における前記回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されて前記箇所の濃度を検知する濃度センサーを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかの回転測定装置において、1つの前記センサーからの出力に基づいて、前記回転体の前記軸線直交方向の変位量を算出するように、前記算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至4の何れかの回転測定装置において、前記センサーとして、前記被検部材における互いに異なる箇所を被検対象にするように配設した複数のものを用いるとともに、それぞれのセンサーから出力される前記正弦波の振幅に基づいて、前記回転体の前記軸線直交方向の変位量を算出するように、前記算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の回転測定装置において、複数の前記センサーを、前記回転体の前記軸線直交方向に沿った変位方向に並べて配設したことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至4の何れかの回転測定装置において、前記センサーとして、前記被検部材における互いに異なる箇所を被検対象にするように配設した複数のものを用いるとともに、前記正弦波の振幅に代えて、それぞれのセンサーから出力される前記正弦波の位相ずれ量に基づいて、前記回転体の前記軸線直交方向の変位量を算出するように、前記算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8の回転測定装置において、前記位相ずれ量に基づいて、前記回転量の算出結果を補正する処理を実施するように、前記算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項8又は9の回転測定装置において、複数の前記センサーを、前記回転体の前記軸線直交方向に沿った変位方向と直交する方向に並べて配設したことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、互いに当接しながら回転する2つの搬送ローラからなるローラ対によって形成される搬送ニップに挟み込んだシート状部材を、前記搬送ローラの回転に伴って搬送するシート搬送手段と、2つの前記搬送ローラのうち、回転軸線と直交する方向である軸線直交方向に変位可能に配設されて他方の搬送ローラに向けて押圧される搬送ローラである移動搬送ローラの回転量を測定する回転測定装置とを備えるシート搬送装置において、前記回転測定装置として、請求項1乃至10の何れかの回転測定装置を用いて、前記回転量に加えて、前記移動搬送ローラの前記軸線直交方向への変位量を測定するようにしたことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項11のシート搬送装置において、前記シート状部材を複数枚重ねた状態で収容するシート収容手段と、該シート収容手段内のシート状部材を前記搬送ニップに向けて送り出す送出手段とを設け、自らの回転駆動に伴って前記搬送ニップ内でシート状部材に対して搬送方向への移動力を付与するように、2つの前記搬送ローラのうち、前記移動搬送ローラではない方の搬送ローラである固定搬送ローラを構成し、且つ、前記送出手段から送り出されたシート状部材が前記搬送ニップに複数枚重なった状態で送り込まれた場合に、前記搬送ニップで自らの表面を前記固定搬送ローラとは逆方向に移動させるように回転駆動して、下側のシート状部材を前記送出手段に向けて逆戻りさせることでシート状部材を1枚ずつに分離する一方で、前記搬送ニップ内にシート状部材が1枚だけ挟み込まれた状態では、トルクリミッターの作動によって前記固定搬送ローラに追従して従動回転する分離ローラとして機能するように前記移動搬送ローラを構成したことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項12のシート搬送装置において、前記回転量と、前記搬送ニップにシート状部材が存在していない状態における前記回転体の変位方向の位置とに基づいて、前記移動搬送ローラの寿命を判定する寿命判定手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項13のシート搬送装置において、前記寿命判定手段による判定結果に基づいて、前記移動搬送ローラの前記固定搬送ローラへの押圧力を調整する押圧力調整手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、シート状部材である原稿シートを搬送するシート搬送装置と、該シート搬送装置によって搬送されている最中の原稿シート、あるいは前記シート搬送装置によって所定の読取位置まで搬送された原稿シート、の画像を読み取る画像読取手段とを備える原稿読取装置において、前記シート搬送装置として、請求項11乃至14の何れかのシート搬送装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、シート状部材である記録シートを搬送するシート搬送装置と、該シート搬送装置によって搬送される記録シートに画像を形成する画像形成手段とを備える画像形成装置において、前記シート搬送装置として、請求項11乃至14の何れかのシート搬送装置を用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明者らは、次のようなセンサーと被検部材との組合せを搭載した回転測定装置の試験機を用意した。即ち、被検部材が1回転する毎に、センサーが1周期分の正弦波を出力し、且つ被検部材が回転体とともに軸線直交方向に移動するのに伴って、センサーが前記正弦波の振幅を変化させるものである。このような組合せの例としては、後に実施形態で詳述する、磁石(被検部材)とホールセンサーとの組合せ、傾斜面を設けた被検部材と距離センサーとの組合せ、濃度勾配を設けた被検部材と濃度センサーとの組合せ、などが挙げられる。かかる組合せを搭載した回転測定装置によって回転量測定試験を行ったところ、センサーから出力される正弦波に基づいてローラの回転量を精度良く検出するとともに、正弦波の振幅の変化量に基づいてローラの軸線直交方向への変位量を精度良く検出し得ることが解った。
よって、本発明においては、センサーと被検部材との組合せとして、被検部材が1回転する毎に、センサーが1周期分の正弦波を出力し、且つ被検部材が回転体とともに軸線直交方向に移動するのに伴って、センサーが前記正弦波の振幅を変化させるものを用いることで、回転体の軸線直交方向への変位量を測定するための専用のセンサーを設けることなく、回転体の回転量と軸線直交方向への変位量とを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】回転量や軸線直交方向への変位量の測定対象となる回転体たるローラと、その周囲とを示す概略構成図。
【図2】観測点上に位置する仮想円を説明する模式図。
【図3】同仮想円の直径線分を通る位置における被検部材の断面図。
【図4】距離センサーによる検知結果の経時変化を示すグラフ。
【図5】実施形態に係る回転測定装置の演算手段によって実施される回転角度の算出の処理フローを示すフローチャート。
【図6】中心点Oを中心とする2次元座標上の象限を示す模式図。
【図7】変位後の仮想円と観測点との関係を説明するための模式図。
【図8】観測半径とローラの変位量との関係を示すグラフ。
【図9】各観測点対における観測半径差とローラの変位量との関係を示すグラフ。
【図10】同演算手段によって実施される変位量算出処理の処理フローを示すフローチャート。
【図11】第1変形例に係る回転測定装置の演算手段によって実施される変位量算出処理の処理フローを示すフローチャート。
【図12】ローラ変位後の観測点対と中心点とのなす角度を説明するための模式図。
【図13】2つの距離センサーからの出力の位相差ズレとローラの変位量との関係を示すグラフ。
【図14】第3変形例に係る回転測定装置による被検対象となるローラと、その周囲とを示す斜視図。
【図15】同回転測定装置における仮想円と観測点との関係を説明するための模式図。
【図16】同回転測定装置における2つのホールセンサーからの出力波形を示すグラフ。
【図17】同出力波形の波高とローラの変位量との関係を示すグラフ。
【図18】それら出力波形を波高差と同変位量との関係を示すグラフ。
【図19】同回転測定装置の被検部材たる磁石と、2つのホールセンサーとを示す正面図。
【図20】仮想回転角速度変動波形を示すグラフ。
【図21】仮想回転角速度変動量と位相差ズレ角との関係を示すグラフ。
【図22】位相差ズレと回転角との関係を示すグラフ。
【図23】第4変形例に係る回転測定装置における被検部材と、センサーたる第1濃度センサー及び第2濃度センサーとを示す正面図。
【図24】濃度センサーの他の例を同被検部材とともに示す正面図。
【図25】実施形態に係る複写機を示す概略構成図。
【図26】同複写機における画像形成部の一部を拡大して示す部分構成図。
【図27】同画像形成部における4つのプロセスユニットからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図。
【図28】同複写機のスキャナ及びADFを示す斜視図。
【図29】同ADFの要部構成をスキャナの上部とともに示す拡大構成図。
【図30】白紙供給装置における送出ローラの周囲構成をローラ軸線方向の一端側から示す分解斜視図。
【図31】同送出ローラの周囲構成を示す拡大構成図。
【図32】給紙分離ローラ対の周囲構成を示す拡大斜視図。
【図33】劣化していない給紙ローラと分離ローラとの当接による給紙分離ローラに1枚の記録シートが送り込まれたときにおける各ローラの回転状態を説明するための模式図。
【図34】劣化していない給紙ローラと分離ローラとの当接による給紙分離ローラに複数枚の記録シートが重なった状態で送り込まれたときにおける各ローラの回転状態を説明するための模式図。
【図35】劣化した給紙ローラと、劣化していない分離ローラとの当接による給紙分離ローラに1枚の記録シートが送り込まれたときにおける各ローラの回転状態を説明するための模式図。
【図36】劣化していない給紙ローラと、劣化した分離ローラとの当接による給紙分離ローラに複数枚の記録シートが重なった状態で送り込まれたときにおける各ローラの回転状態を説明するための模式図。
【図37】給紙分離ニップの周囲で発生する各種の力を説明するための模式図。
【図38】押圧力PBと分離力TAとの関係を示すグラフ。
【図39】給紙分離ローラ対の周囲構成を示す拡大模式図。
【図40】分離ローラを周囲構成とともに示す縦断面図。
【図41】ホールセンサーと分離ローラに固定された磁石とを示す拡大模式図。
【図42】ホールセンサー素子の出力特性を示すグラフ。
【図43】図33に示した状態におけるホール素子からの出力変化を示すグラフ。
【図44】図43のフラグを1枚通紙時における分離ローラの累積回転角度(累積回転量)に変換したグラフ。
【図45】同複写機に搭載された回転測定装置の演算手段によって実施される累積回転角算出処理を示すフローチャート。
【図46】給紙ローラ及び分離ローラに劣化がない状態で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なった状態で送られたときにおける、分離ローラの累積回転角度の変化を示すグラフ。
【図47】分離ローラの表面に軽度の劣化がある状態で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なって送られたときにおける、分離ローラの累積回転角度の変化を示すグラフ。
【図48】分離ローラの表面に中程度の劣化がある状態で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なって送られたときにおける、分離ローラの累積回転角度の変化を示すグラフ。
【図49】分離ローラの表面に重度の劣化がある状態(寿命到達)で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なって送られたときにおける、分離ローラの累積回転角度の変化を示すグラフ。
【図50】図44、図46〜49の結果をまとめたグラフ。
【図51】実施形態に係る劣化判定装置の構成を示すブロック図。
【図52】複写機と、判定手段としてのパーソナルコンピュータとを分離した例を示すブロック図。
【図53】変形例に係る複写機の給紙分離ニップの周囲構成を示す拡大構成図。
【図54】従来の複写機における給紙分離ニップの周囲構成を示す拡大構成図。
【図55】第3変形例に係る回転測定装置によって実施される回転角補正処理の処理フローを示すフローチャートである。
【図56】2つのセンサの出力差△Vを説明するためのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した回転測定装置の一実施形態について説明する。
図1は、回転量や軸線直交方向への変位量の測定対象となる回転体たるローラと、その周囲とを示す概略構成図である。同図において、回転体たるローラ500は、ローラ部500aと、これの回転軸線方向の両端面からそれぞれ突出する回転軸部材500bとを有している。回転軸部材500bは、軸受け501によって回転自在に受けられている。また、この軸受け501は、図示しない保持手段により、軸線直交方向である図中矢印A方向にスライド移動可能に保持されている。この状態で、軸受け501が図示しないバネによって図中B方向(鉛直上方)に付勢されることで、ローラ500のローラ部500aがローラ500の上方に存在する図示しない第2ローラに当接してニップを形成している。
【0010】
ローラ500の回転軸部材500bの一端には、被検部材510が固定されている。この被検部材510は、回転軸部材500bの回転軸線を中心にして、ローラ500と同期して回転する。そして、その側面は、傾斜面510aとなっている。この傾斜面510aは、図1及び図2に示すように、被検部材510に対してその回転方向の所定位置で延在するように付した直径仮想線P〜P’の一端である点Pを、後述する第1距離センサー511や第2距離センサー512に最も近づけるとともに、直径仮想線P〜P’の他端である点P’を第1距離センサー511や第2距離センサー512から最も遠ざける傾斜をそれらセンサーとの対向面に具備している。
【0011】
図1に示したように、被検部材510の側方には、第1距離センサー511及び第2距離センサー512が配設されている。これらセンサーは、例えば赤外線照射などの周知の技術により、自らと被検対象たる傾斜面510aとの距離を検知して、検知結果に応じた電圧を出力するものである。そして、図2に示すように、ローラ500の回転軸線(点Oの位置)を中心にして、互いに90[°]の点対称の位置にある傾斜面箇所(第1観測点Q1、第2観測点Q2)を被検対象にする位置関係をもって配設されている。図中の第1観測点Q1は、第1距離センサー511による傾斜面510aの検知対象位置である。また、第2観測点Q2は、第2距離センサー512による傾斜面510aの検知対象位置である。なお、距離の検知方式としては、光学式,超音波式,渦電流式,静電容量式などがあり、検出感度、用途、検出環境などに応じて選択することが可能である。
【0012】
第1距離センサー511と第1観測点Q1との距離や、第2距離センサー512と第2観測点Q2との距離は、被検部材510の回転角度位置に応じて異なってくる。但し、傾斜面510a上の回転中心である中心点Oと、それらセンサーとの距離は、被検部材510の回転角度位置にかかわらず一定である。回転軸線方向におけるそれらセンサーと中心点Oとの距離は、距離Lで表される。
【0013】
図示の構成では、回転する被検部材510に対して第1距離センサー511や第2距離センサー512は不動であるが、理解を容易にするために、これとは逆に、センサーが中心点Oを中心にして回転(公転)する一方で、被検部材510が不動である場合における、回転軸線に直交する直交面上での座標系を考えてみる。すると、図2に示すように、回転軸線に直交する直交面上で、中心点Oを中心にしつつ、第1観測点Q1及び第2観測点Q2を通る仮想円C1が得られる。その半径はrで表される。また、中心点Oと、第1観測点Q1、第2観測点Q2との回転軸線方向における距離はk(図1参照)で表されており、これは傾斜面510aの傾きに相当する。被検部材510の回転角速度をω、時刻をtでそれぞれ表すと、仮想円C1の直径線分に対する第1観測点Q1の成分はrcosωtで表される。
【0014】
図3は、仮想円C1の直径線分を通る位置における被検部材510の断面図である。傾斜面510aの回転軸線と垂直な面に対する傾斜角をφで示すと、「tanφ=k/r」という関係になる。よって、第1観測点Q1において、時刻tにおける距離Lに対する距離変化は「−rcosωt・tanφ=−kcosωt」となる。同様に、第2観測点Q2においは、「−ksinωt」となる。よって、第1距離センサー511による検知結果は、「L−kcosωt」という式に従って経時変化する。また、第2距離センサー512による検知結果は、「L−ksinωt」という式に従って経時変化する。
【0015】
図4は、距離センサーによる検知結果の経時変化を示すグラフである。このグラフは、上記距離L=5mm、k=2mm、回転数n=120rpmという条件の回転量測定試験によって得られたデータに基づいて作成されたものである。第1距離センサー511からの出力、第2距離センサー512からの出力ともに、正弦波の繰り返しパルスが得られている。これは、被検部材510が1回転する毎に、センサーと観測点との距離が1周期分の正弦波を描く特性で変化することを示している。正弦波のピーク・ツウ・ピークはkの2倍であり、ω・Δt=90°である。ここで、「tanωt=sinωt/cosωt」という法則から、2つの出力からそれぞれ距離Lを差し引いた後の両者の比に基づいて、tanωt(正接)を求めることができる。この正接は、中心点Oを中心にした直交面上の座標系における−90°〜+90°の範囲において、180°周期で単調増加を繰り返す。その他の角度範囲についても正弦と余弦の大小関係をみることで、0°〜360°の範囲において、正接について単一の値を算出することができる(厳密には、90°と270°で正接は不連続となるので、正接の逆数を適当な範囲で採用する必要がある。)。これは、ローラ500(被検部材510)が静止しているか回転しているかにかかわらず、その回転角度位置を求めることができることを意味している。
【0016】
そこで、被検部材510、2つの距離センサー、演算手段513などから構成される実施形態に係る回転測定装置の演算手段513は、2つの距離センサーからの出力に基づいて、ローラ500の回転角度位置を求めるようになっている。この回転角度位置は、正弦波のプラス側のピークを出力させる、被検部材510の上記点Pについて、中心点Oを中心にしたどの回転角度位置にあるのかを示すものである。
【0017】
回転角度を求める際には、図5に処理フローを示すように、まず、オフセット調整を行う(ステップ1:以下、ステップをSと記す)。このオフセット調整は、センサーの製品毎の感度バラツキを調整するために行うものである。具体的には、出力から上記L(波形のピーク・ツウ・ピークの半分)を差し引く。
【0018】
次いで、象限判定を行う(S2)。具体的には、90°、270°の回転角度位置では、正接が不連続となるので、正接の逆数を求める必要がある。そこで、次の表1に示す判定条件に基づいて、点Pについて、図6に示す象限0(−45°〜+45°弱)の中にあるのか、象限1(+45°〜+135°弱)の中にあるのか、象限2(+135°〜+225°弱)の中にあるのか、象限3(+225°〜−45°弱)にあるのかを判定する。
【表1】
【0019】
次に、除算実行を行う(S3)。これは、象限判定における判定結果に応じて、算出結果を±1以内の範囲にすべく、表1に示すように、2つの距離センサーの出力比に基づいて正接あるいは正接の逆数を計算する。その後、逆正接算出(S4)において、回転角度位置を求めて象限を決定した後、不連続調整(S5)において、1回転以上である場合に総回転角度を求める。そして、角速度算出(S6)において、回転角度位置の時系列変化データを微分して角速度に変換する。S5で求めた総回転角度に基づいて、ローラ500の回転量を把握することができる。
【0020】
次に、ローラ500の軸線直交方向の変位量を求める方法について説明する。
ローラ500と図示しない第2ローラとの当接によるニップにシート部材(記録シートや原稿シート)が挟み込まれると、その厚みに応じてローラ500が鉛直下方に移動する。このように、ローラ500が鉛直下方に移動する際の変位を正の変位として変位量を計算する。ここで、ローラ500が鉛直下方に変位量uだけ変位した結果、図7に示すように、仮想円C1の中心点がOからO’に移動したとする。理解を容易にするために、互いに45°ずつずれた箇所を被検対象とする5つの距離センサーを配設したと仮定する。変位前では、中心点Oを中心とする仮想円C1上に存在する各点A、B、C、D、Eが、第1、第2、第3、第4、第5の距離センサーによる観測点となる。ローラ500が変位量uだけ下方に変位すると、それに伴って仮想線C1が下方に移動して、中心点が図中のO’の位置にくる。但し、観測点A、B、C、D、Eの位置は変わらない。距離センサーは変位しないからである。このように、仮想線C1が下方に移動するにもかかわらず、観測点の位置が変わらないと、観測点A、B、C、D、Eの間で変位後の中心点O’までの距離に差がでてくる。それぞれの距離(=観測半径)をr’A、r’B、r’C、r’Dで表すと、それらは次の数1、数2、数3、数4の式によって求められる。なお、絶対位置を観測しているので、偏心の影響は受けない。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【0021】
図8は、各観測点における観測半径r’と、ローラの軸線直交方向の変位量uとの関係を示すグラフである。このグラフは、変位前の中心点Oから各観測点までの半径rを11mmに設定した実験条件で試験した結果に基づいて作成したものである。図示のように、観測点の位置によって、グラフの傾きの大きさや向きが異なることがわかる。観測点Aでは正の傾きであるのに、観測点C、Dでは負の傾きになっている。また、観測点Bでは傾きが殆ど無くなっている。
【0022】
上述したように、実際の回転測定装置では、距離センサーを2だけ用い、それらを90°の点対称の位置に配設している。このような関係になる2つの距離センサー(511、512)による観測点の組合せは、先に示した図7では、観測点Aと観測点C、観測点Bと観測点D、及び観測点Cと観測点Eの3通りである。以下、それら3通りの組合せにおけるそれぞれの観測点を「観測点対」という。
【0023】
図9は、観測点対における観測半径差△’と、ローラの変位量uとの関係を示すグラフである。図示のように、観測点対の位置に応じて、観測半径差△’と変位量uとの関係を示すグラフの傾きに差があることがわかる。これは、観測点対の位置に応じて変位量uの検知精度に差がでることを示している。観測点Cと観測点Eとからなる観測点対では、図示のようにグラフの傾きがないので、観測半径差△’から変位量uを求めることはできない。これに対し、観測点Aと観測点Cとからなる観測点対や、観測点Bと観測点Dとからなる観測点対では、図示のようなグラフの傾きが得られるので、観測半径差△’から変位量uを求めることができる。中でも、前者の観測点対では後者に比べてグラフの傾きが大きいので、より精度よく変位量uを求めることができる。なお、ローラ変位後の観測半径r’は、「tanφ=k/r=k’/r’」という法則から、「k’=kr’/r」という関係が成り立つので、その変化は距離センサーから出力される正弦波の振幅変化として現れることになる。よって、実際には、振幅変化量に基づいて、変位量uを求めることができる。
【0024】
そこで、実施形態に係る回転測定装置では、第1距離センサー511と、第2距離センサー512とを、観測点Aと観測点Cとからなる観測点対を実現する位置関係で配設している。この位置関係は、図7からわかるように、観測点Aの直下に観測点Cを位置させる位置関係であり、より詳しくは、ローラ500の変位方向に沿って両センサーを配設する位置関係である。
【0025】
図10は、演算手段513によって実施される変位量算出処理の処理フローを示すフローチャートである。変位量△uを算出するにあたり、演算手段513は、まず上述したオフセット調整を行った後(S1)、振幅調整を行う(S2)。この振幅調整は、ローラ500の軸線直交方向への変位に伴って変化する振幅について、逆正接算出に影響を与えないように調整を加えるための処理である。この振幅調整を終えると、次に、上述した象限判定を行う(S3)。正接が不連続となる±90°で正接の代わりにその逆数を求めるための処理である。その後、上述した除算実行によって2つの距離センサーの出力比に基づいて正接を求めた後(S4)、逆正接算出によって回転角を求める(S5)。そして、上述した不連続調整の後(S6)、総回転角θ算出によって回転角の総和を求める(S7)。
【0026】
総回転角θを算出すると、次に、算出結果について「θ≧180°」という条件を具備するか否かを判定する(S8)。これは、正弦波のピーク値を取得し得るタイミングであるか否かを判定するためである。望ましくは「θ≧360°」であれば、ピーク・ツウ・ピークを求めることができるが、「θ≧180°」であっても片側のピーク値を得ることができる。オフセット値がデータ取得の度に変動することは無いので、「θ≧180°」であれば、振幅値を取得することができる。そこで、「θ≧180°」でない場合には、変位量uを算出する処理を実行せずに、その代わりに、ニップ内でのシート部材のスリップ発生回数を計数する(S12)。一方、「θ≧180°」である場合には、K’を算出した後、「k/r=k’/r’」の関係を用いて観測点対の観測半径差△r’を求める(S9、S10)。そして、算出結果と、図9に示したA−Cのグラフとに基づいて、変位量Δuを算出する(S11)。この変位量△uは、ニップ内に挟み込まれたシート部材の厚みを表している。
【0027】
かかる構成の本回転測定装置においては、変位量△uを測定するための専用のセンサーを設けることなく、回転角を測定するための第1距離センサー511及び第2距離センサー512により、回転量たる回転角と、変位量△uとを測定することができる。
【0028】
次に、実施形態に係る回転測定装置の各変形例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係る回転測定装置の構成は、実施形態と同様である。
[第1変形例]
第1変形例に係る回転測定装置においては、距離センサーを1つしか設けていない。実施形態に係る回転測定装置のように、2つの距離センサーを90°の点対称の位置に配設した構成では、ローラ500が停止状態にあっても、その回転角度位置を2つの距離センサーからの出力差に基づいて把握することが可能である。しかしながら、ローラ500が停止状態のときに、回転角や変位量△uを求める必要は必ずしもない。そして、ローラ500が回転している状態のときには、1つの距離センサーからの出力であっても、ローラの回転角度位置、回転角速度、及び変位量△uを求めることが可能である。
【0029】
このことについて詳述する。先に示した図4において、2つの出力波形のうち、第2距離センサー512からの出力波形だけに注目してみる。この出力波形は、正弦波であるため、正接とは異なり単調増加とはならない。よって、その出力波形から回転角度位置を直接求めることはできない。しかし、その出力波形を微分した微分波形は余弦波となるので、振幅調整された両者の比をとることにより正接が得られる。これにより、回転角度位置を求めることができるようになる。
【0030】
そこで、第1変形例に係る回転測定装置の演算手段513は、上述したオフセット調整の後に、センサー出力を微分する微分算出という工程を実施する。また、1つの出力波形から上述の観測半径差△r’を求めることができないので、その代わりに、変位後の観測半径r’Aを求める。その後、図8に示したようなグラフ特性に基づいて、変位量Δuを算出する。参考までに、この処理フローを、図11に示す。
【0031】
[第2変形例]
第2変形例に係る回転測定装置においては、距離センサーからの出力波形の振幅変化量の代わりに、2つの距離センサーからの出力波形の位相ズレ量に基づいて、変位量△uを求めるようになっている。これは、図12に示すように、仮想円C1の中心点がOからO’に移動すると、2つの出力波形の位相差が90°からずれることを利用するものである。より詳しくは、図12における角度αは、角度AO’C以下となる。また、角度βは、角度BO’Dよりも小さくなる。また、角度γは、角度CO’Eよりも小さくなる。すると、角度α、β、γは、それぞれ次の式5、6、7で表される。
【数5】
【数6】
【数7】
【0032】
角度α、β、γから90°を差し引いた値を位相差ズレψで表すと、位相差ズレψと、変位量uとには、図13に示すグラフの関係が成立する。A−Cはほとんど傾きが無いが、C−Eは大きな傾きを示す。このことから、2つの距離センサーを観測点C、観測点Eの位置に配設し、両者の位相差ズレψを算出することで、変位量uを精度良く求めることができることができる。位相差は先に示した図4のグラフの時間軸上でΔtに対応するので、位相差ズレψの発生はΔtの変化という形で観測される。
【0033】
図9のグラフと、図13のグラフとを比較してみると、振幅変化に対して感度が大きいA−Cと、位相差ズレψに感度が大きいC−Eと、両者の中間に位置するB−Dとに分かれ、振幅に基づく場合にはA−C、位相差ズレに基づく場合にはC−Eが有利であることがわかる。そこで、第2変形例に係る回転測定装置において、C−Eの関係になるように、2つの距離センサーを配設している。
【0034】
[第3変形例]
図14は、第3変形例に係る回転測定装置による被検対象となるローラ500と、その周囲とを示す斜視図である。第3変形例に係る回転測定装置では、被検部材として、図示のような磁石514を用いている。この磁石514は、ローラ500のローラ部側面に固定され、ローラ500と一体となってその回転軸線を中心に回転する。回転軸を中心にして、0〜180°の領域はS極になっているのに対し、181°〜360°の領域はN極になっている。ローラ500の側方には、ホール素子からなる第1ホールセンサー515と、第2ホールセンサー516とが配設されている。これらは、ローラ500の回転軸線を中心にして、互いに90°の点対称になる位置に配設されている。
【0035】
理解を容易にするために、実施形態と同様に、5つのホールセンサーを配設した例を考えてみると、その例は図15に示すようになる。それぞれのホールセンサーによる観測点A、B、C、D、Eが得られる。この状態から、ローラ500が鉛直下方に変位量uだけ変位して、回転中心がOからO’に移動すると、例えば、観測点Bと、観測点Dとでは、図16に示すような出力波形の振幅差が生ずる。なお、図16のグラフは、変位量u=−1.0mm、ギャップδ=4mm、回転数n=120rpm、表面磁束密度B=300mT、磁石外径Φ24mm、磁石内径φ20mmという条件の下で行われた実験の結果に基づいて作成されたものである。
【0036】
図17は、各観測点と、出力波形のピーク・ツウ・ピーク(Vp−p:図4の2k’に相当)と、変位量uとの関係を示すグラフである。先に示した図8のグラフとほぼ同様の特性が得られている。
【0037】
図18は、出力波形のピーク・ツウ・ピークと、各観測点対における変位量uとの関係を示すグラフである。先に示した図9のグラフとほぼ同様の特性が得られている。
【0038】
ローラの変位が観測波形に与える影響について述べる。ここでは、センサーとしてホールセンサーを用いる第3変形例に係る回転測定装置を例にして説明するが、実施形態なども同様である。図19は、同回転測定装置の被検部材たる磁石514と、2つのホールセンサーとを示す正面図である。第1ホールセンサー515と第2ホールセンサー516とは、図示しないローラの回転軸線を中心にした同じ仮想円上で、所定の角度(配設位相ズレ角)の点対称の位置関係になるように配設されている。その配設位相ズレ角は、図示のように、「90°−ψ」となっているとする。図示しないローラが変位していなければ、それらホールセンサーはローラ回転軸線を中心にした同じ仮想円上に位置するので、それらホールセンサーからの出力波形の振幅は互いに同じになる。ローラの回転角速度は一定であり、それらの出力波形には「90°−ψ」の位相差が現れるが、90°の位相差でなければ、90°の位相差との差分はローラの回転角速度に変化があったためであると仮にみなして、回転角速度変動を仮想してみる。すると、図20に示すように、センサー出力波形の半分の周期で、正弦波状の仮想回転角速度変動波形が得られる。その振幅(波高)は、図21に示すように、ズレ角ψにほぼ比例する。回転角度の累積値に注目すると、図22に示すように、最もズレが大きい回転角90°でほぼ位相差ψと同量の誤差が発生している。そして1/2回転毎に誤差は0となる。(誤差が累積しないことを示している。)
【0039】
これらのことから、ローラの変位によって中心点がOからO’に移動すると、ローラが一定の回転角速度で回転しているにもかかわらず、ローラ回転周期の倍の周波数の回転角速度変動が誤検出されてしまうことがわかる。
【0040】
そこで、第3変形例に係る回転測定装置の演算手段513は、位相差ズレに基づいて、回転角度位置の検知結果(ひいては回転角速度)を補正する補正処理を実施するようになっている。先に示した図13に基づいて位相差ズレ量を特定した後、その結果に基づいて、回転角度位置の算出結果に補正を加える。のである。
【0041】
具体的には、位相差ズレψをもって配設された2つのホールセンサーから出力は、それぞれ次の数8、数9の式で表される。
【数8】
【数9】
【0042】
また、加法定理により、次の数10の式が成立する。
【数10】
【0043】
この式に基づいて、次の数11の式が得られる。
【数11】
【0044】
よって、次の数12の関係が成立する。
【数12】
【0045】
回転角度位置をセンサー出力の比である「Y/X」と、位相差ズレとを用いて表すことができているのである。なお、この他に、バンドパスフィルタによって1/2周期の変動を取り除く方法もある。
【0046】
図55は、第3変形例に係る回転測定装置によって実施される回転角補正処理の処理フローを示すフローチャートである。回転角補正処理では、まず、図10の処理フローと同様のオフセット調整(S1)と振幅調整(S2)とを行う。次いで、位相差ずれを算出するための位相差ずれ算出処理を行う(S3)。この位相差ずれ算出処理では、図4のグラフに示した位相差ずれ時間△tを求める処理、あるいは、第1距離センサー511と第2距離センサー512との出力ずれを求める処理、の何れかが行われる。
【0047】
S3のステップで位相差ずれ時間△tを求める処理が行われる場合、その処理は次の通りである。即ち、この場合、回転速度を一定であるとみなす。そして、2つの距離センサーからの出力波形のうち、一方の波形の周期に基づいて角速度ωを求める。そして、「ψ=ω×Δt−90°」という関係から、位相差ずれ時間△tを求める。
【0048】
S3のステップで2つの距離センサーの出力ずれを求める処理が行われる場合、その処理は次の通りである。即ち、まず、図56に示す2つの距離センサー(511、512)からの出力波形のうち、何れか一方を基準にして他方がどれたけずれているのかを求める。例えば、一方が最大値1を示すとき、他方は理想的には0であるはずであるが、位相差ズレがあると出力差△Vが発生する。基準とする方の出力波形が正弦波であれば、他方は余弦波なので、「ΔV=cos(90°−ψ)」という関係式に基づいて、出力差△Vを算出する。
【0049】
S3のステップで位相差ずれ時間△tあるいは出力差△Vを算出したら、それらに基づいて位相差ずれ量ψを求める。そして、「tanωt=(Y/X+sinψ)/cosψ」という関係式に基づいて、ωtを求める(S4)。
【0050】
[第4変形例]
図23は、第4変形例に係る回転測定装置における被検部材517と、センサーたる第1濃度センサー517、及び第2濃度センサー518とを示す正面図である。第4変形例に係る回転測定装置は、被検部材として、図示のような濃度勾配のあるものを用いている。この濃度勾配は、被検部材815に対してその回転方向の所定位置で延在するように付した直径仮想線Laの一端側の被検部材箇所を最も高濃度にするとともに、直径仮想線Laの他端側の被検部材箇所を最も低濃度にする勾配である。このような濃度勾配が、被検部材815におけるセンサーとの対向面に付されている。
【0051】
反射型フォトセンサーからなる第1濃度センサー518と第2濃度センサー519とは、被検部材517における回転軸線を中心にした90°位相ずれした箇所を被検対象にするように配設されており、その箇所の濃度の逆数に応じた電圧を出力する。このような被検部材517と濃度センサーとの組合せでは、それぞれの濃度センサーから、ローラ1回転あたりに1周期分の正弦波状の出力がなされる。なお、反射濃度は直線的な変化である必要はない。何らかの変換を施すことによって直線的な変化が得られれば、同様に扱うことができる。なお、2つの濃度センサーの位置関係は、上述した観測点Aと観測点Cとが得られる関係とする。
【0052】
反射型フォトセンサーからなる第1濃度センサー518、第2濃度センサー519の代わりに、図24に示すように、透過型フォトセンサーからなる第1濃度センサー520、第2濃度センサー521を用いてもよい。この場合、被検部材517の基材として、透明なものを用いる。そして、センサーの発光素子と受光素子との間に被検部材517を配設して、濃度勾配面に対する光透過量を検知させるようにする。センサーから出力される電圧は、濃度に応じた値となる。
【0053】
次に、第3変形例に係る回転測定装置を搭載した画像形成装置の実施形態について説明する。
まず、本実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図25は、実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、画像形成装置としての画像形成部1と、白紙供給装置40と、画像読取ユニット50とを備えている。画像読取装置としての画像読取ユニット50は、画像形成部1の上に固定されたスキャナ150と、これに支持されるシート搬送装置としての原稿自動搬送装置(以下、ADFという)51とを有している。
【0054】
白紙供給装置40は、ペーパーバンク41内に多段に配設された2つの給紙カセット42、給紙カセットから記録シートを送り出す送出ローラ43、送り出された記録シートを搬送しながら1枚ずつに分離する給紙分離ローラ対45等を有している。また、画像形成部1の搬送路としての給紙路37に、シート状部材としての記録シートを搬送する複数の搬送ローラ47等も有している。そして、給紙カセット内の記録シートを画像形成部1内の給紙路37内に給紙する。
【0055】
画像形成手段としての画像形成部1は、光書込装置2や、黒,イエロー,マゼンタ,シアン(K,Y,M,C)のトナー像を形成する4つのプロセスユニット3K,Y,M,C、転写ユニット24、紙搬送ユニット28、レジストローラ対33、定着装置34、スイッチバック装置36、給紙路37等を備えている。そして、光書込装置2内に配設された図示しないレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、ドラム状の4つの感光体4K,Y,M,Cに向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4K,Y,M,Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。
【0056】
図26は、画像形成部1の内部構成の一部を拡大して示す部分構成図である。また、図27は、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図である。なお、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、図27においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。
【0057】
プロセスユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ、感光体とその周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、画像形成部1本体に対して着脱可能になっている。黒用のプロセスユニット3Kを例にすると、これは、感光体4の周りに、帯電装置23、現像装置6、ドラムクリーニング装置15、除電ランプ22等を有している。本複写機では、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cを、後述する中間転写ベルト25に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設した、いわゆるタンデム型の構成になっている。
【0058】
感光体4としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
【0059】
現像装置6は、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ12に供給する攪拌部7と、現像スリーブ12に担持された二成分現像剤中のトナーを感光体4に転移させるための現像部11とを有している。
【0060】
攪拌部7は、現像部11よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本の搬送スクリュウ8、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、現像ケース9の底面に設けられたトナー濃度センサー10などを有している。
【0061】
現像部11は、現像ケース9の開口を通して感光体4に対向する現像スリーブ12、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ13、現像スリーブ12に先端を接近させるドクタブレード14などを有している。現像スリーブ12は、非磁性の回転可能な筒状になっている。マグネットローラ12は、ドクタブレード14との対向位置からスリーブの回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部7から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ13表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
【0062】
磁気ブラシは、現像スリーブ12の回転に伴ってドクタブレード14との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体4に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ12に印加される現像バイアスと、感光体4の静電潜像との電位差によってトナーを静電潜像上に転移させて現像に寄与する。更に、現像スリーブ12の回転に伴って再び現像部11内に戻り、マグネットローラ13の磁極間に形成される反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部7内に戻される。攪拌部7内には、トナー濃度センサー10による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。なお、現像装置6として、二成分現像剤を用いるものの代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤を用いるものを採用してもよい。
【0063】
ドラムクリーニング装置15としては、弾性体からなるクリーニングブレード16を感光体4に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体4に接触させる接触導電性のファーブラシ17を、図中矢印方向に回転自在に有する方式のものを採用している。このファーブラシ17は、図示しない固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体4表面に塗布する役割も兼ねている。ファーブラシ17にバイアスを印加する金属製の電界ローラ18を図中矢示方向に回転自在に設け、これにスクレーパ19の先端を押し当てている。ファーブラシ17に付着したトナーは、ファーブラシ17に対してカウンタ方向に接触して回転しながらバイアスが印加される電界ローラ18に転位する。そして、スクレーパ19によって電界ローラ18から掻き取られた後、回収スクリュウ20上に落下する。回収スクリュウ20は、回収トナーをドラムクリーニング装置15における図紙面と直交する方向の端部に向けて搬送して、外部のリサイクル搬送装置21に受け渡す。リサイクル搬送装置21は、受け渡されたトナーを現像装置15に送ってリサイクルする。
【0064】
除電ランプ22は、光照射によって感光体4を除電する。除電された感光体4の表面は、帯電装置23によって一様に帯電せしめられた後、光書込装置2による光書込処理がなされる。なお、帯電装置23としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4に当接させながら回転させるものを用いている。感光体4に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
【0065】
先に示した図26において、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cの感光体4K,Y,M,Cには、これまで説明してきたプロセスによってK,Y,M,Cトナー像が形成される。
【0066】
4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cの下方には、転写ユニット24が配設されている。ベルト駆動装置としての転写ユニット24は、複数のローラによって張架した中間転写ベルト25を、感光体4K,Y,M,Cに当接させながら図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体4K,Y,M,Cと、無端状のベルト部材である中間転写ベルト25とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップが形成されている。K,Y,M,C用の1次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写ローラ26K,Y,M,Cによって中間転写ベルト25を感光体4K,Y,M,Cに向けて押圧している。これら1次転写ローラ26K,Y,M,Cには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の1次転写ニップには、感光体4K,Y,M,C上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってK,Y,M,C用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各1次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0067】
転写ユニット24の図中下方には、駆動ローラ30と2次転写ローラ31との間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット28が設けられている。そして、自らの2次転写ローラ31と、転写ユニット24の下部張架ローラ27との間に、中間転写ベルト25及び紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ31には図示しない電源によって2次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット24の下部張架ローラ27は接地されている。これにより、2次転写ニップに2次転写電界が形成されている。
【0068】
この2次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対33が配設されている。また、レジストローラ対33のレジストニップの入口付近には、図示しないレジストローラセンサーが配設されている。図示しない白紙供給装置からレジストローラ対33に向けて搬送されてくる記録シートPは、その先端がレジストローラセンサーに検知された所定時間後記録シートPの搬送が一時停止し、レジストローラ対33のレジストニップに先端を突き当てる。この結果、記録シートPの姿勢が修正され、画像形成との同期をとる準備が整う。このようにして、記録シートPは、姿勢が修正されるが、その修正が上手く行われない場合もある。すると、レジストローラ対33の下流側で記録シートPのスキューが発生する。
【0069】
記録シートPの先願がレジストニップに突き当たると、レジストローラ対33は、記録シートPを中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングでローラ回転駆動を再開して、記録シートPを2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の影響によって記録シートに一括2次転写され、記録シートの白色と相まってフルカラー画像となる。2次転写ニップを通過した記録シートは、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置34へと搬送される。なお、レジストニップの出口付近には、光学式変位センサー38が配設されているが、その役割については後述する。
【0070】
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、2次転写ニップで記録シートに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置によって掻き取り除去される。
【0071】
定着装置34に搬送された記録シートは、定着装置34内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着装置34から排紙ローラ対35に送られた後、機外へと排出される。
【0072】
先に示した図25において、紙搬送ユニット22および定着装置34の下には、スイッチバック装置36が配設されている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた記録シートが、切換爪で記録シートの進路を記録シート反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び2次転写転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
【0073】
画像形成部1の上に固定されたスキャナ150やこれの上に固定されたADF51は、固定読取部や移動読取部152を有している。移動読取部152は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第2コンタクトガラスの直下に配設されており、光源や、反射ミラーなどからなる光学系を図中左右方向に移動させることができる。そして、光学系を図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第2コンタクトガラス上に載置された図示しない原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させて、スキャナ本体に固定された画像読取センサー153で受光する。
【0074】
一方、固定読取部は、スキャナ150の内部に配設された第1面固定読取部151と、ADF51内に配設された図示しない第2面固定読取部とを有している。光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサーなどを有する第1面固定読取部151は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第1コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、後述するADF51によって搬送される原稿MSが第1コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサーで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSの第1面を走査する。また、第2面固定読取部は、第1面固定読取部151を通過した後の原稿MSの第2面を走査する。
【0075】
スキャナ150の上に配設されたADF51は、本体カバー52に、読取前の原稿MSを載置するための原稿載置台53、シート状部材としての原稿MSを搬送するための搬送ユニット54、読取後の原稿MSをスタックするための原稿スタック台55などを保持している。図4に示すように、スキャナ150に固定された蝶番159によって上下方向に揺動可能に支持されている。そして、その揺動によって開閉扉のような動きをとり、開かれた状態でスキャナ150の上面の第1コンタクトガラス154や第2コンタクトガラス155を露出させる。原稿束の片隅を綴じた本などの片綴じ原稿の場合には、原稿を1枚ずつ分離することができないため、ADFによる搬送を行うことができない。そこで、片綴じ原稿の場合には、ADF51を図28に示すように開いた後、読み取らせたいページが見開かれた片綴じ原稿を下向きにして第2コンタクトガラス154上に載せた後、ADFを閉じる。そして、スキャナ150の図25に示した移動読取部152によってそのページの画像を読み取らせる。
【0076】
一方、互いに独立した複数の原稿MSを単に積み重ねた原稿束の場合には、その原稿MSをADF51によって1枚ずつ自動搬送しながら、スキャナ150内の第1面固定読取部151やADF51内の第2面固定読取部に順次読み取らせていくことができる。この場合、原稿束を原稿載置台53上にセットした後、図示しないコピースタートボタンを押す。すると、ADF51が、原稿載置台53上に載置された原稿束の原稿MSを上から順に搬送ユニット54内に送り、それを反転させながら原稿スタック台55に向けて搬送する。この搬送の過程で、原稿MSを反転させた直後にスキャナ150の第1面固定読取部151の真上に通す。このとき、原稿MSの第1面の画像がスキャナ150の第1面固定読取部151によって読み取られる。
【0077】
図29は、ADF51の要部構成をスキャナ150の上部とともに示す拡大構成図である。ADF51は、原稿セット部A、分離給送部B、レジスト部C、ターン部D、第1読取搬送部E、第2読取搬送部F、排紙部G、スタック部H等を備えている。
【0078】
原稿セット部Aは、原稿MSの束がセットされる原稿載置台53等を有している。また、分離給送部Bは、セットされた原稿MSの束から原稿MSを一枚ずつ分離して給送するものである。また、レジスト部Cは、給送された原稿MSに一時的に突き当たって原稿MSを整合した後に送り出すものである。また、ターン部Dは、C字状に湾曲する湾曲搬送部を有しており、この湾曲搬送部内で原稿MSを折り返しながらその上下を反転させるものである。また、第1読取搬送部Eは、第1コンタクトガラス155の上で原稿MSを搬送しながら、第1コンタクトガラス155の下方で図示しないスキャナの内部に配設されている第1固定読取部151に原稿MSの第1面を読み取らせるものである。また、第2読取搬送部Fは、第2固定読取部95の下で原稿MSを搬送しながら、原稿MSの第2面を第2固定読取部95に読み取らせるものである。また、排紙部Gは、両面の画像が読み取られた原稿MSをスタック部Hに向けて排出するものである。また、スタック部Hは、スタック台55の上に原稿MSをスタックするものである。
【0079】
原稿MSは、原稿MSの束の厚みに応じて図中矢印a、b方向に揺動可能な可動原稿テーブル54の上に原稿先端部が載せられるとともに、原稿後端側が原稿載置台53の上に載せられた状態でセットされる。このとき、原稿載置台53上において、その幅方向(図紙面に直交する方向)の両端に対してそれぞれ図示しないサイドガイドが突き当てられることで、幅方向における位置が調整される。このようにしてセットされる原稿MSは、可動原稿テーブル54の上方で揺動可能に配設されたレバー部材62を押し上げる。すると、それに伴って原稿セットセンサー63が原稿MSのセットを検知して、検知信号を図示しないコントローラに送信する。そして、この検知信号は、コントローラからI/Fを介してスキャナの読取制御部に送られる。
【0080】
原稿載置台53には、原稿MSの搬送方向の長さを検知する反射型フォトセンサー又はアクチュエーター・タイプのセンサーからなる第1長さセンサー57、第2長さセンサー58が保持されている。これら長さセンサーにより、原稿MSの搬送方向の長さが検知される。
【0081】
可動原稿テーブル54の上に載置された原稿MSの束の上方には、カム機構によって上下方向(図中矢印c,d方向)に移動可能に支持されるピックアップローラ80が配設されている。このカム機構は、ピックアップモータ56によって駆動することで、ピックアップローラ80を上下移動させることが可能である。ピックアップローラ80が上昇移動すると、それに伴って可動原稿テーブル54が図中矢印a方向に揺動して、ピックアップローラ80が原稿MSの束における一番上の原稿MSに当接する。更に可動原稿テーブル54が上昇すると、やがてテーブル上昇検知センサー59によって可動原稿テーブル54の上限までの上昇が検知される。これにより、ピックアップモータ56が停止するとともに、可動原稿テーブル54の上昇が停止する。
【0082】
複写機の本体に設けられたテンキーやディスプレイ等からなる本体操作部に対しては、操作者によって両面読取モードか、あるいは片面読取モードかを示す読取モード設定のためのキー操作や、コピースタートキーの押下操作などが行われる。コピースタートキーが押下されると、図示しない本体制御部からADF51のコントローラに原稿給紙信号が送信される。すると、ピックアップローラ80が給紙モータ76の正転によって回転駆動して、可動原稿テーブル54上の原稿MSを可動原稿テーブル54上から送り出す。
【0083】
両面読取モードか、片面読取モードかの設定に際しては、可動原稿テーブル54上に載置された全ての原稿MSについて一括して両面、片面の設定を行うことが可能である。また、1枚目及び10枚目の原稿MSについては両面読取モードに設定する一方で、その他の原稿MSについては片面読取モードに設定するなどといった具合に、個々の原稿MSについてそれぞれ個別に読取モードを設定することも可能である。
【0084】
ピックアップローラ80によって送り出された原稿MSは、分離搬送部Bに進入して、給紙ベルト84との当接位置に送り込まれる。この給紙ベルト84は、駆動ローラ82と駆動ローラ82とによって張架されており、給紙モータ76の正転に伴う駆動ローラ82の回転によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。この給紙ベルト84の下部張架面には、給紙モータ76の正転によって図中時計回りに回転駆動されるリバースローラ85が当接している。当接部においては、給紙ベルト84の表面が給紙方向に移動する。これに対し、リバースローラ85は、給紙ベルト84に所定の圧力で当接しており、給紙ベルト84に直接当接している際、あるいは当接部に原稿MSが1枚だけ挟み込まれている際には、ベルト又は原稿MSに連れ回る。但し、当接部に複数枚の原稿MSが挟み込まれた際には、連れ回り力がトルクリミッターのトルクよりも低くなることから、連れ回り方向とは逆の図中時計回りに回転駆動する。これにより、最上位よりも下の原稿MSには、リバースローラ85によって給紙とは反対方向の移動力が付与されて、数枚の原稿から最上位の原稿MSだけが分離される。
【0085】
給紙ベルト84やリバースローラ85の働きによって1枚に分離された原稿MSは、レジスト部Cに進入する。そして、突き当てセンサー72の直下を通過する際にその先端が検知される。このとき、ピックアップモータ56の駆動力を受けているピックアップローラ80がまだ回転駆動しているが、可動原稿テーブル54の下降によって原稿MSから離間するため、原稿MSは給紙ベルト84の無端移動力のみによって搬送される。そして、突き当てセンサー72によって原稿MSの先端が検知されたタイミングから所定時間だけ給紙ベルト84の無端移動が継続して、原稿MSの先端がプルアウト駆動ローラ86とこれに当接しながら回転駆動するプルウト駆動ローラ87との当接部に突き当たる。
【0086】
プルアウト従動ローラ87は、原稿MSを原稿搬送方向下流側の中間ローラ対66まで搬送する役割を担っており、給紙モータ76の逆転によって回転駆動される。給紙モータ76が逆転すると、プルアウト従動ローラ87と、互いに当接している中間ローラ対66における一方のローラとが回転を開始するとともに、給紙ベルト84の無端移動が停止する。また、このとき、ピックアップローラ80の回転も停止される。
【0087】
プルアウト従動ローラ87から送り出された原稿MSは、原稿幅センサー73の直下を通過する。原稿幅センサー73は、反射型フォトセンサー等からなる紙検知部を複数有しており、これら紙検知部は原稿幅方向(図紙面に直交する方向)に並んでいる。どの紙検知部が原稿MSを検知するのかに基づいて、原稿MSの幅方向のサイズが検知される。また、原稿MSの搬送方向の長さは、原稿MSの先端が突き当てセンサー72によって検知されてから、原稿MSの後端が突き当てセンサー72によって検知されなくなるまでのタイミングに基づいて検知される。
【0088】
原稿幅センサー73によって幅方向のサイズが検知された原稿MSの先端は、ターン部Dに進入して、中間ローラ対66のローラ間の当接部に挟み込まれる。この中間ローラ対66による原稿MSの搬送速度は、後述する第1読取搬送部Eでの原稿MSの搬送速度よりも高速に設定されている。これにより、原稿MSを第1読取搬送部Eに送り込むまでの時間の短縮化が図られている。
【0089】
ターン部D内を搬送される原稿MSの先端は、原稿先端が読取入口センサー67との対向位置を通過する。これによって原稿MSの先端が読取入口センサー67によって検知されると、その先端が搬送方向下流側の読取入口ローラ対(89と90との対)の位置まで搬送される間での間に、中間ローラ対66による原稿搬送速度が減速される。また、読取モータ77の回転駆動の開始に伴って、読取入口ローラ対(89,90)における一方のローラ、読取出口ローラ対92における一方のローラ、第2読取出口ローラ対93における一方のローラがそれぞれ回転駆動を開始する。
【0090】
ターン部D内においては、原稿MSが中間ローラ対66と読取入口ローラ対(89、90)との間の湾曲搬送路で搬送される間に上下面が逆転されるとともに、搬送方向が折り返される。そして、読取入口ローラ対(89、90)のローラ間のニップを通過した原稿MSの先端は、レジストセンサー65の直下を通過する。このとき原稿MSの先端がレジストセンサー65によって検知されると、所定の搬送距離をかけながら原稿搬送速度が減速されていき、第1読取搬送部Eの手前で原稿MSの搬送が一時停止される。また、図示しない読取制御部に対してレジスト停止信号が送信される。
【0091】
レジスト停止信号を受けた読取制御部が読取開始信号を送信すると、ADF51のコントローラの制御により、原稿MSの先端が第1読取搬送部E内に到達するまで、読取モータ77の回転が再開されて所定の搬送速度まで原稿MSの搬送速度が増速される。そして、読取モータ77のパルスカウントに基づいて算出された原稿MSの先端が第1固定読取部151による読取位置に到達するタイミングで、コントローラから読取制御部に対して原稿MSの第1面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第1固定読取部151による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第1面が第1固定読取部151によって読み取られる。
【0092】
第1読取搬送部Eを通過した原稿MSは、後述の読取出口ローラ対92を経由した後、その先端が排紙センサー61によって検知される。片面読取モードが設定されている場合には、後述する第2固定読取部95による原稿MSの第2面の読取が不要である。そこで、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知されると、排紙モータ78の正転駆動が開始されて、排紙ローラ対94における図中下側の排紙ローラが図中時計回り方向に回転駆動される。また、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知されてからの排紙モータパルスカウントに基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対94のニップを抜け出るタイミングが演算される。そして、この演算結果に基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対94のニップから抜け出る直前のタイミングで、排紙モータ78の駆動速度が減速せしめられて、原稿MSがスタック台55から飛び出さないような速度で排紙される。
【0093】
一方、両面読取モードが設定されている場合には、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知された後、第2固定読取部95に到達するまでのタイミングが読取モータ77のパルスカウントに基づいて演算される。そして、そのタイミングでコントローラから読取制御部に対して原稿MSの第2面における副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第2固定読取部95による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第2面が第2固定読取部95によって読み取られる。
【0094】
読取手段としての第2固定読取部95は、密着型イメージセンサー(CIS)からなり、原稿MSに付着している糊状の異物が読取面に付着することによる読取縦スジを防止する目的で、読取面にコーティング処理が施されている。第2固定読取部95との対向位置には、原稿MSを非読取面側から支持する原稿支持手段としての第2読取ローラ96が配設されている。この第2読取ローラ96は、第2固定読取部95による読取位置での原稿MSの浮きを防止するとともに、第2固定読取部95におけるシェーディングデータを取得するための基準白部として機能する役割を担っている。
【0095】
先に示した図25において、送出ローラ43によって給紙カセット42内から送り出された記録シートは、給紙分離ローラ対45によるニップ内に挟まれる。
【0096】
図30は、白紙供給装置40における送出ローラ43の周囲構成をローラ軸線方向の一端側から示す分解斜視図である。また、図31は、送出ローラ43の周囲構成を示す拡大構成図である。また、図32は、給紙分離ローラ対45の周囲構成を示す拡大斜視図である。給紙分離ローラ対45が劣化していない場合における記録シートの挙動は次の通りである。即ち、図示しない給紙カセット内から記録シートが送り出される際には、まず、ピックアップソレノイド104が駆動して送出ローラ43を給紙カセット内の記録シートに押し当てる。また、加圧ソレノイド106が駆動して、分離ローラ45bを給紙ローラ45aに押し当てる。そして、この状態で給紙モータ103が逆転駆動する。すると、送出ローラ43が図中反時計回り方向に回転駆動して、記録シートを給紙ローラ45aと分離ローラ45bとの当接によるニップに向けて送り出す。このとき、給紙ローラ45aは、ニップ内に挟み込んだ記録シートを図示しない給紙路に向けて送り込むように、図中反時計回り方向に向けて回転駆動する。この状態で、分離ローラ45bが、給紙ローラ45aに直接当接していたり、図33のように1枚の記録シートPを介して給紙ローラ45aに当接したりしていると、分離ローラ45bに対し、給紙ローラ45aや記録シートに追従する方向のトルクが大きく作用する。そして、給紙モータ103の駆動力を分離ローラ45bに繋ぐための図示しないトルクリミッターが空転する。これにより、分離ローラ45bは、給紙ローラ45aや記録シートに追従して図中時計回り方向に回転する(正回転方向)。
【0097】
かかる構成では、非通紙時には、給紙ローラ45aと分離ローラ45bとを非接触で離間させておくことで、それらローラの着脱操作など、メンテナンス性を向上させることができる。また、通紙時にのみ両ローラを当接させることで、両ローラに対する負荷を軽減して長寿命化を図ることもできる。また、給紙分離ニップよりも前又は後でジャムが発生した際に、両ローラが離間しているので、ジャム紙除去操作性を向上させることもできる。
【0098】
図34に示すように、ニップ内に2枚以上の記録シートPが重なった状態で挟み込まれると、図示しないトルクリミッターが空転しなくなって、給紙モータ103の逆転駆動力が分離ローラ45aに繋がれる。すると、図示のように分離ローラ45bが図中反時計回り方向(逆回転方向)に回転して、最上位(図中最も上側)の記録シートPを除く下位側の記録シートが、分離ローラ45bによって給紙カセットに向けて戻される。
【0099】
一方、給紙ローラ45aの表面が劣化して摩擦抵抗を低下させたとする。すると、図35に示すように、1枚の記録シートPがニップに挟み込まれた際に、給紙ローラ45aと記録シートPとの間でスリップが発生する。このため、記録シートPに追従する分離ローラ45bの連れ回り方向(図中時計回り方向)の回転量が減少する。
【0100】
また、分離ローラ45bの表面が劣化して摩擦抵抗を低下させたとする。すると、図36に示すように、記録シートPから分離ローラ45bに対して連れ回り方向のトルクが良好に伝わらなくなって、分離ローラ45bがときどき逆回転する。よって、この場合にも、分離ローラ45bの連れ回り方向の回転量が減少する。
【0101】
図37は、給紙分離ニップの周囲で発生する各種の力を説明するための模式図である。同図において、FBは、ニップに進入した最上位の記録シートPに対して給紙ローラ45aから付与される給紙方向の力であるシート搬送力を示している。また、PBは、分離ローラ46bを給紙ローラ46aに向けて押圧する押圧力を示している。また、TAは、ニップに進入した最下位の記録シートPに対して分離ローラ46bから付与される給紙方向とは逆方向の力である分離力を示している。また、μpは、記録シート間の表面摩擦係数であるシート間摩擦係数を示している。なお、給紙ローラ46aの表面摩擦係数である給紙ローラ摩擦係数は、μrで表すものとする。
【0102】
最上位の記録シートにおける給紙条件と、最下位の記録シートにおける分離条件とに基づいて、シート自重を無視して分離適正条件を考えると、それは次式のように表すことができる。
【数13】
【0103】
そして、この式をグラフに変換すると、図38のグラフが得られる。ここでは給紙ローラ46aに着目しており、給紙〜シート間摩擦係数μrが給紙ローラ46aの表面の劣化に伴って変化している。給紙ローラ摩擦係数μrが低下するほど、給紙〜シート間摩擦係数μrの変動領域との間の直線の傾きが小さくなるので、不送りが発生し易くなる。シート間摩擦係数μpの変動は、設計で見込む誤差因子の大きさを表している。シート間摩擦係数μpや給紙〜シート間摩擦係数μrはコントロールできない因子であるので、設計時にはある範囲の変動を見込んだ上で、重送や不送りが発生しない適正領域を確保できるように、設定条件Xを決める必要がある。
【0104】
次に、本複写機における特徴的な構成について説明する。
図39は、給紙分離ローラ対45の周囲構成を示す拡大模式図である。送出ローラ43の近傍には、送出ローラ43と給紙分離ローラ対45との間で、給紙ローラ45a側である最上位側にある記録シートの給紙方向の移動速度を検知する速度センサー120が配設されている。送出ローラ43から送り出された複数枚の記録シートのうち、最上位側の記録シートの給紙方向における移動速度は、この速度センサー120によって検知され、その検知結果は図示しない制御部に送られる。
【0105】
速度センサー120は、パーソナルコンピュータの入力機器である光学式マウスなどに広く使用されている光学式変位センサーからなるものであり、マトリクス状に配設された複数の撮像素子でそれぞれ被検対象の表面を撮像する。そして、それぞれの撮像素子で撮像を周期的に繰り返して、被検対象である記録シートの2次元平面上における特徴的な像(例えば特徴的な凸や凹)の動きを捉えることで、記録シートの2次元平面における変位や変位速度を把握することができる。撮像素子のマトリクスを給紙方向に対して45[°]傾けて姿勢で速度センサー120を配設すると、給紙方向と、給紙方向に直交する方向(ローラ軸線方向)とでそれぞれ変位量の分解能を高めて、より高精度の検知を可能にすることができる。記録シートのスキューを高精度に検出することが可能になる。
【0106】
分離ローラ45bのローラ部の端面には、被検部材としてのドーナツ状の磁石514が固定されている。この磁石514かかる磁石514に対しては、第1ホールセンサー515及び第2ホールセンサー516が、ローラ軸線方向において対向するように配設されている。分離ローラ45bの回転軸線を中心にして、第1ホールセンサー515と第2ホールセンサー516とは、互いに90[°]ずれた位置に固定されている。このため、それぞれの素子は、回転に伴う磁束密度の変化を、90[°]の位相差をもって検知する。磁石514、第1ホールセンサー515、第2ホールセンサー516は、それぞれ第3変形例に係る回転測定装置の一部である。
【0107】
図40は、分離ローラ45bを周囲構成とともに示す縦断面図である。分離ローラ45bの回転軸線を中心にして互いに90[°]ずれた位置に配設される第1ホールセンサー515、第2ホールセンサー516は、プリンタ本体に支持されたブラケット134に固定されている。そして、分離ローラ45bの端面に固定された磁石514に対して、ギャップδを介して対向している。分離ローラ45bの回転軸部材45cは、図中A方向に引き抜かれることで、複写機本体から取り外される。2つのホール素子を分離ローラ45Bに対して矢印A方向とは反対側で隣接させることで、矢印A方向の側を空きスペースにして、分離ローラ45bの抜き取り作業を容易にしている。また、2つのホールセンサー(515、516)の出力のギャップ依存性を均等にすることが可能であるので、組み付け誤差によってギャップδのばらつきがあったとしても、分離ローラ45bの回転角変位の検出値にその影響を及ぼさない。よって、回転角変位を高精度に検出することができる。また、分離ローラ45bに磁石514という比較的重量のあるものを固定することで、押圧方向とは反対方向の反力に対して抵抗を高めることができる。更には、図41に示すように、磁石514とホールセンサーとが非接触であるので、分離ローラ45bに対して負荷をかけることなく、その回転角変位を検出することができる。
【0108】
なお、図40に示したように、トルクリミッター127は、分離ローラ45bの内部において、回転軸部材45cと分離ローラ45b内周面との間に介在している。分離ローラ45bの外部において、回転軸部材45cは、互いに軸線方向に所定の距離をおいて並ぶ2つの軸受け131,132によって回転自在に支持されており、矢印A方向とは反対側の端部には、回転駆動力を受け入れるための駆動受入ギヤ133が固定されている。
【0109】
図42は、ホールセンサー(515、516)の出力特性を示すグラフである。このグラフは、アンプを内蔵したリニアホールICである旭化成エレクトロニクス製EQ−711Lの出力特性を示している。図41に示したように、ホールセンサーに対して所定のギャップδを介して対向させた磁石を移動させると、対向位置での磁束密度に対応した出力が得られる。そして、このときの出力特性は、図42に示すように、ギャップδに応じて変化する。但し、2つのホールセンサーでそれぞれギャップδを等しくすれば、製品毎のギャップδのバラツキによる検出精度の悪化を回避することが可能である。
【0110】
図43は、先に図33に示した状態におけるホールセンサーからの出力変化を示すグラフである。ch1の出力は第1ホールセンサー(515)からの出力を示している。また、ch2の出力は、第2ホールセンサー(516)からの出力を示している。分離ローラ45bに固定された磁石(514)が定常回転しているときの出力について、一方を正弦とすれば他方は余弦の関係になる。
【0111】
なお、図43において、およそ0秒〜1秒の期間や、およそ2.1秒〜3秒の期間で、グラフが横這いになっているのは、それぞれの期間で分離ローラ45bを駆動していないからである。およそ1秒の時点で、分離ローラ45bを給紙ローラ45aに当接させた後、1.1秒の時点で分離ローラ45bに対して駆動をかけている。また、およそ1.8秒の時点で分離ローラ45bを給紙ローラ45aから離間させた後、およそ2.1秒の時点で分離ローラ45bに対する駆動を停止している。
【0112】
図44は、図43のフラグを1枚通紙時における分離ローラ45bの累積回転角度(累積回転量)に変換したグラフを示している。分離ローラ45Bに対して付与した駆動信号に基づいて特定した回転時間に対して、累積回転角がどのような値になっているかを表すものである。給紙ローラ45a、分離ローラ45bの何れにも表面の劣化がなく、且つ、給紙分離ニップに対して記録シートが1枚だけ単独で送られた場合には、図示のように、分離ローラ45bの累積回転角度がプラス側(連れ回り方向の側)に単調増加する波形が得られる。
【0113】
図45は、本複写機に搭載された回転測定装置の演算手段によって実施される累積回転角算出処理を示すフローチャートである。この累積回転角算出処理では、まず、第1ホールセンサーからの出力と、第2ホールセンサーからの出力とに、約2.5Vのオフセットが発生しており、このままでは除算によって逆正接を算出できないので、それを取り除くオフセット調整を行う(S1)。以降、S2からS12までの構成は先の図11に示したフロート同様であるので、説明を省略する。
【0114】
変位量uと基準値との差であるΔuを時系列で測定していくと、重送発生時にはΔuが重送された用紙の枚数分だけ倍増した値となるので、これによって重送の発生の有無を判定する(S13)。そして、数13の分離条件式に従い、加圧力PBを所定量増加する処理を行う(S14)。再び重送検知を行えば、本来の分離ローラの回転数の範囲内で重送を回避することができる。
【0115】
図46は、給紙ローラ及び分離ローラに劣化がない状態で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なった状態で送られたときにおける、分離ローラ45bの累積回転角度の変化を示すグラフである。図示のように、給紙ローラ及び分離ローラに劣化がない状態で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なった状態で送られた場合にも、分離ローラ45bの累積回転角度がプラス側にほぼ単調増加する。
【0116】
図47は、分離ローラの表面に軽度の劣化がある(給紙ローラは劣化なし)状態で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なって送られたときにおける、分離ローラ45bの累積回転角度の変化を示すグラフである。図示のように、この場合、図46に比べて、分離ローラ45bの累積回転角度が減少する。
【0117】
図48は、分離ローラの表面に中程度の劣化がある(給紙ローラは劣化なし)状態で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なって送られたときにおける、分離ローラ45bの累積回転角度の変化を示すグラフである。図示のように、この場合、分離ローラ45bの累積回転角度が図47のときよりも更に減少する。
【0118】
図49は、分離ローラの表面に重度の劣化がある(給紙ローラは劣化なし)状態で、給紙分離ニップに対して複数枚の記録シートが重なって送られたときにおける、分離ローラ45bの累積回転角度の変化を示すグラフである。図示のように、この場合、分離ローラ45bの累積回転角度がプラス側からマイナス側に転じる。
【0119】
図50は、図44、図46〜49の結果をまとめたグラフである。図示のように、分離ローラ45bの累積回転角度は、分離ローラ45bの表面の劣化に伴って減少していき、表面が寿命まで劣化すると、プラス側からマイナス側に転じる。劣化があっても1枚通紙のときには減少せず、且つ複数枚通紙のときでも枚数によって減少量が異なるが、過去の給紙動作10回分など、ある程度の期間の累積回転角度を平均すれば、分離ローラ45bの表面について、どの程度劣化しているのかを予測することが可能である。また、図46〜図49を用いて、分離ローラ45bの表面が劣化した場合における分離ローラ45bの給紙動作1回あたりにおける累積回転角度の挙動について説明したが、給紙ローラ45aの表面が劣化する場合にも、同様にして、劣化進行に伴って分離ローラ45bの累積回転角度が減少していく。
【0120】
給紙動作1回あたりにおける分離ローラ45bの累積回転角度の減少が分離ローラ45bの劣化に起因している場合、給紙ローラ45aは、最上位の記録シートPを給紙方向に正常に搬送する。このため、最上位の記録シートPの移動速度は、速度センサー120によって一般的な値として検知される。これに対し、給紙ローラ45aの表面が劣化している場合には、給紙ローラ45aと最上位の記録シートとの間でスリップが発生する。そして、最上位の記録シートが良好に給送されなくなるため、速度センサー120は、最上位の記録シートPの移動速度として、比較的低い値を検知するようになる。よって、寿命になる寸前の図48の状態を検知した場合、速度センサー120による検知結果について、一般的な値であるのか、比較的低い値であるのかを見分ければよい。そうすることで、給紙ローラ45a及び分離ローラ45bのうち、何れが寿命寸前まで劣化したのかを特定することができる。
【0121】
図51は、実施形態に係る劣化判定装置の構成を示すブロック図である。劣化判定装置は、上述した速度センサー120、第3変形例に係る回転測定装置、制御部200などから構成されている。制御部200は、演算手段としてのCPU(Central Processing Unit )、記憶手段としてのRAM,ROMなどを備えている。そして、ホールセンサ(515、516)からの出力や、シート速度検知手段としての速度センサー120からの出力を、経時的に記憶手段(RAM)に記憶していく。そして、記憶データに基づいて、図45に示したフローを実施して、1回の給紙動作時における分離ローラ45bの累積回転角度(表面移動量)を算出する。更に、算出結果に基づいて、給紙分離ローラ対45について所定の度合いまで進行したと判定した場合には、速度センサー120からの出力記憶履歴に基づいて、最上位の記録シートの移動速度を求めて、何れのローラの劣化によるものなのかを特定することができる。より詳しくは、最上位の記録シートの移動速度が所定の閾値を超えていない場合には、給紙ローラ45aについてもうすぐ寿命に到達するとみなして、給紙ローラ45aの交換をユーザーに促す。これに対し、所定の閾値を超えている場合には、分離ローラ45bについてもうすぐ寿命に到達するとみなして、分離ローラ45bの交換をユーザーに促す。
【0122】
なお、両方のローラが劣化している場合、まず、給紙ローラ45aの交換が促される。ユーザーがそれに基づいて給紙ローラ45aを交換しても、すぐにローラの劣化が検知され、そのときには分離ローラ45bの劣化が特定されるので、すぐに分離ローラ45bの交換が促される。
【0123】
また、速度センサー120やホールセンサー(515、516)については、被検対象となる複写機に搭載する必要があるが、CPU等からなる判定手段については、必ずしも複写機に搭載する必要はない。図52に示すように、判定手段としてのパーソナルコンピュータと、速度センサーやホールセンサーを搭載した複写機とを、通信回線で接続し、通信回線経由でローラ交換作業をユーザーに促してもよい。また、記録シートを搬送するシート搬送装置としての白紙供給装置40に本発明を適用した例について説明したが、シート搬送装置としてのADF51に本発明を適用することも可能である。この場合、搬送部材たる給紙ベルト84と分離部材たるリバースローラ85との当接によるニップの近傍で、シート状部材たる原稿MSの移動速度を上位側(給紙ベルト側)から検知するように、速度センサーを配設する。そして、給紙動作1回あたりにおけるリバースローラ85の累積回転角度と、速度センサーによる検知結果とに基づいて、給紙ベルト84やリバースローラ85の劣化度合いを判定すればよい。また、分離ローラの回転角度位置については、分離ローラの変位量に応じて補正するようになっている。
【0124】
次に、実施形態に係る複写機の変形例について説明する。なお、以下に説明しない限り、実施例に係る複写機の構成は、実施形態と同様である。
変形例に係る複写機は、給紙分離ニップの近傍で搬送される記録シートの移動速度を厚み方向の上位側から検知する速度センサーの代わりに、記録シートをそれぞれ給紙分離ニップの近傍で検知する2つのシート検知センサーを有している。
【0125】
図53は、第1変形例に係る複写機の給紙分離ニップの周囲構成を示す拡大構成図である。同図において、反射型フォトセンサーからなる第2シート検知センサー122は、送出ローラ43に送り出された後、給紙分離ニップに進入する前の記録シートPの先端部を、シート厚み方向の上位側から検知する。また、反射型フォトセンサーからなる第1シート検知センサー121は、給紙分離ニップを通過した直後の記録シートPの先端部を、シート厚み方向の上位側から検知する。第2シート検知センサー122によるシート先端部の検知信号や、第1シート検知センサー121によるシート先端部の検知信号は、制御部に送られる。制御部は、それぞれのセンサーによるシート先端部検知タイミングの時間差に基づいて、最上位側の記録シートPの移動速度を求める。かかる構成では、第1シート検知センサー121と、第2シート検知センサー122と、制御部との組合せが、シート速度検知手段として機能している。
【0126】
実施形態に係る複写機のように、光学式イメージセンサーからなる速度センサー120によって記録シートPの移動速度を検知するものにおいては、記録紙Pとして光沢紙など、表面平滑性に優れたものが用いられると、シート表面の移動状態を捉え難くなる。このため、記録シートPの移動速度を検知できない場合がでてくるおそれがある。一方、第1変形例に係る複写機のように、2つのシート検知センサーによるシート先端部検知タイミングの時間差に基づいて記録シートの移動速度を検出するものにおいては、表面平滑性に優れた記録シートPであっても、その移動速度を確実に検知することができる。
【0127】
なお、図54は、従来の複写機における給紙分離ニップの周囲構成を示すものであるが、図示のように、第1シート検知センサー121については、給紙分離ニップからのシート不送りを検知させる目的で、従来から設けていた。よって、第1変形例に係る複写機においては、2つのシート検知センサーを新設する必要はなく、第2シート検知センサー122だけを新設すれば足りる。一般に、複数の撮像素子を具備する光学式イメージセンサーよりも、反射型フォトセンサーの方が安価であるので、実施形態に比べて低コスト化を図ることができる。なお、シート検知センサーとして、反射型フォトセンサーからなるものに代えて、透過型フォトセンサーからなるものを用いてもよい。この場合であっても、実施形態に比べて低コスト化を図ることが可能である。
【0128】
画像形成部の分離ローラについて説明したが、スキャナ150においても、第3変形例に係る回転測定装置が搭載されており、重送の発生や、リバースローラ85の劣化などが検知されている。
【0129】
以上、実施形態に係る回転測定装置においては、被検部材510として、被検部材510に対してその回転方向の所定位置で延在するように付した直径仮想線の一端側の被検部材箇所を距離センサーに最も近づけるとともに、直径仮想線の他端側の被検部材箇所を距離センサーから最も遠ざける傾斜を距離センサーとの対向面に具備させたものを用いている。また、センサーとして、被検部材510における回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されてその箇所と自らとの距離を検知する第1距離センサー511及び第2距離センサー512を用いている。かかる構成では、既に説明したように、被検対象となる回転体たるローラを1回転させる毎に、距離センサー(511、512)から1周期分の正弦波を出力させ、且つ、ローラを回転軸線方向と直交する方向である軸線直交方向に移動させるのに伴って、その正弦波の振幅を変化させることができる。
【0130】
また、第3変形例に係る回転測定装置においては、被検部材として、ローラの回転軸線を中心にして回転するように配設された磁石514を用いるとともに、センサーとして、磁石514における前記回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されてその箇所の磁力を検知するホールセンサー(ホール素子)を用いている。かかる構成においても、既に説明したように、被検対象となる回転体たるローラを1回転させる毎に、ホールセンサー(515、516)から1周期分の正弦波を出力させ、且つ、ローラを回転軸線方向と直交する方向である軸線直交方向に移動させるのに伴って、その正弦波の振幅を変化させることができる。
【0131】
また、第4変形例に係る回転測定装置においては、被検部材517として、被検部材517に対してその回転方向の所定位置で延在するように付した直径仮想線の一端側の被検部材箇所を最も高濃度にするとともに、直径仮想線の他端側の被検部材箇所を最も低濃度にする濃度勾配を濃度センサー(518、519)との対向面に具備させたものを用いている。そして、センサーとして、被検部材517における回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されてその箇所の濃度を検知する濃度センサー(518、519)を用いている。かかる構成においても、既に説明したように、被検対象となる回転体たるローラを1回転させる毎に、濃度センサー(518、519)から1周期分の正弦波を出力させ、且つ、ローラを回転軸線方向と直交する方向である軸線直交方向に移動させるのに伴って、その正弦波の振幅を変化させることができる。
【0132】
また、第1変形例に係る回転測定装置においては、1つの距離センサーからの出力に基づいて、ローラの軸線直交方向の変位量を算出するように、算出手段たる演算手段513を構成している。かかる構成では、簡単な構成によって回転角度位置と変位量とを測定することができる。
【0133】
また、実施形態に係る回転測定装置においては、センサーとして、被検部材510における互いに異なる箇所を被検対象にするように配設した第1距離センサー511、第2距離センサー512を用いている。そして、それぞれの距離センサーから出力される正弦波の振幅に基づいて、ローラの軸線直交方向の変位量を算出するように、演算手段513を構成している。かかる構成では、ローラを停止させた状態であっても、そのローラの回転角度位置を把握することができる。
【0134】
また、実施形態に係る回転測定装置においては、第1距離センサー511と第2距離センサー512とを、ローラ500の軸線直交方向に沿った変位方向に並べて配設している。かかる構成では、既に説明したように、両センサーを他の方向に沿って並べて配設する場合に比べて、変位量を高精度に検出することができる。
【0135】
また、第2変形例に係る回転測定装置においては、センサーとして、被検部材510における互いに異なる箇所を被検対象にするように配設した第1距離センサー511、第2距離センサー512を用いている。そして、それらセンサー出力の正弦波の振幅に代えて、それぞれのセンサーから出力される正弦波の位相ずれ量に基づいて、ローラ500の軸線直交方向の変位量を算出するように、演算手段513を構成している。かかる構成では、位相ずれ量に基づいて、変位量を容易に検出することができる。
【0136】
また、第2実施例に係る回転測定装置においては、前記位相ずれ量に基づいて、ローラ500の回転量の算出結果を補正する処理を実施するように、演算手段513を構成しているので、既に説明したように、ローラ変位時に回転速度変動を誤検知することによる回転量の検知精度の低下を抑えることができる。
【0137】
また、第2実施例に係る回転測定装置においては、第1距離センサー511と第2距離センサー512とを、ローラ500の軸線直交方向に沿った変位方向と直交する方向に並べて配設している。かかる構成では、既に説明したように、両センサーを他の方向に沿って並べて配設する場合に比べて、変位量を高精度に検出することができる。
【符号の説明】
【0138】
42:給紙カセット(シート収容手段)
45a:給紙ローラ(固定搬送ローラ)
45b:分離ローラ(回転体、移動搬送ローラ)
80:ピックアップローラ(送出手段)
85:リバースローラ(回転体、移動搬送ローラ)
500:ローラ(回転体)
510:被検部材
511:第1距離センサー
512:第2距離センサー
513:演算手段(算出手段)
514:磁石(被検部材)
515:第1ホールセンサー(ホール素子)
516:第2ホールセンサー(ホール素子)
517:被検部材
518:第1濃度センサー
519:第2濃度センサー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0139】
【特許文献1】特許第3048685号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転軸部材と同期して該回転体の回転軸線を中心にして回転するように配設され、且つ自らの所定の特性をセンサーに対して検知させる被検部材と、該被検部材に対して回転軸線方向で対向する位置で前記被検部材の前記特性を検知するセンサーと、該センサーによる検知結果に基づいて、前記回転体の回転量を算出する算出手段とを有する回転測定装置において、
前記センサーと前記被検部材との組合せとして、前記被検部材が1回転する毎に、前記センサーが1周期分の正弦波を出力し、且つ前記被検部材が前記回転体とともに前記回転軸線方向と直交する方向である軸線直交方向に移動するのに伴って、前記センサーが前記正弦波の振幅を変化させるもの、を用い、
前記正弦波に基づいて前記回転量を算出しつつ、前記振幅の変化量に基づいて前記回転体の前記軸線直交方向の変位量を算出するように、前記算出手段を構成したことを特徴とする回転測定装置。
【請求項2】
請求項1の回転測定装置において、
前記被検部材として、前記被検部材に対してその回転方向の所定位置で延在するように付した直径仮想線の一端側の被検部材箇所を前記センサーに最も近づけるとともに、前記直径仮想線の他端側の被検部材箇所を前記センサーから最も遠ざける傾斜を前記センサーとの対向面に具備させたものを用いるとともに、
前記センサーとして、前記被検部材における前記回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されて前記箇所と自らとの距離を検知する距離センサーを用いたことを特徴とする回転測定装置。
【請求項3】
請求項1の回転測定装置において、
前記被検部材として、前記回転軸線を中心にして回転するように配設された磁石を用いるとともに、
前記センサーとして、前記磁石における前記回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されてその箇所の前記特性たる磁力を検知するホール素子を用いたことを特徴とする回転測定装置。
【請求項4】
請求項1の回転測定装置において、
前記被検部材として、前記被検部材に対してその回転方向の所定位置で延在するように付した直径仮想線の一端側の被検部材箇所を最も高濃度にするとともに、前記直径仮想線の他端側の被検部材箇所を最も低濃度にする濃度勾配を前記センサーとの対向面に具備させたものを用いるとともに、
前記センサーとして、前記被検部材における前記回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されて前記箇所の濃度を検知する濃度センサーを用いたことを特徴とする回転測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかの回転測定装置において、
1つの前記センサーからの出力に基づいて、前記回転体の前記軸線直交方向の変位量を算出するように、前記算出手段を構成したことを特徴とする回転測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れかの回転測定装置において、
前記センサーとして、前記被検部材における互いに異なる箇所を被検対象にするように配設した複数のものを用いるとともに、
それぞれのセンサーから出力される前記正弦波の振幅に基づいて、前記回転体の前記軸線直交方向の変位量を算出するように、前記算出手段を構成したことを特徴とする回転測定装置。
【請求項7】
請求項6の回転測定装置において、
複数の前記センサーを、前記回転体の前記軸線直交方向に沿った変位方向に並べて配設したことを特徴とする回転測定装置。
【請求項8】
請求項1乃至4の何れかの回転測定装置において、
前記センサーとして、前記被検部材における互いに異なる箇所を被検対象にするように配設した複数のものを用いるとともに、
前記正弦波の振幅に代えて、それぞれのセンサーから出力される前記正弦波の位相ずれ量に基づいて、前記回転体の前記軸線直交方向の変位量を算出するように、前記算出手段を構成したことを特徴とする回転測定装置。
【請求項9】
請求項8の回転測定装置において、
前記位相ずれ量に基づいて、前記回転量の算出結果を補正する処理を実施するように、前記算出手段を構成したことを特徴とする回転測定装置。
【請求項10】
請求項8又は9の回転測定装置において、
複数の前記センサーを、前記回転体の前記軸線直交方向に沿った変位方向と直交する方向に並べて配設したことを特徴とする回転測定装置。
【請求項11】
互いに当接しながら回転する2つの搬送ローラからなるローラ対によって形成される搬送ニップに挟み込んだシート状部材を、前記搬送ローラの回転に伴って搬送するシート搬送手段と、2つの前記搬送ローラのうち、回転軸線と直交する方向である軸線直交方向に変位可能に配設されて他方の搬送ローラに向けて押圧される搬送ローラである移動搬送ローラの回転量を測定する回転測定装置とを備えるシート搬送装置において、
前記回転測定装置として、請求項1乃至10の何れかの回転測定装置を用いて、前記回転量に加えて、前記移動搬送ローラの前記軸線直交方向への変位量を測定するようにしたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項12】
請求項11のシート搬送装置において、
前記シート状部材を複数枚重ねた状態で収容するシート収容手段と、該シート収容手段内のシート状部材を前記搬送ニップに向けて送り出す送出手段とを設け、
自らの回転駆動に伴って前記搬送ニップ内でシート状部材に対して搬送方向への移動力を付与するように、2つの前記搬送ローラのうち、前記移動搬送ローラではない方の搬送ローラである固定搬送ローラを構成し、
且つ、
前記送出手段から送り出されたシート状部材が前記搬送ニップに複数枚重なった状態で送り込まれた場合に、前記搬送ニップで自らの表面を前記固定搬送ローラとは逆方向に移動させるように回転駆動して、下側のシート状部材を前記送出手段に向けて逆戻りさせることでシート状部材を1枚ずつに分離する一方で、前記搬送ニップ内にシート状部材が1枚だけ挟み込まれた状態では、トルクリミッターの作動によって前記固定搬送ローラに追従して従動回転する分離ローラとして機能するように前記移動搬送ローラを構成したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項13】
請求項12のシート搬送装置において、
前記回転量と、前記搬送ニップにシート状部材が存在していない状態における前記回転体の変位方向の位置とに基づいて、前記移動搬送ローラの寿命を判定する寿命判定手段を設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項14】
請求項13のシート搬送装置において、
前記寿命判定手段による判定結果に基づいて、前記移動搬送ローラの前記固定搬送ローラへの押圧力を調整する押圧力調整手段を設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項15】
シート状部材である原稿シートを搬送するシート搬送装置と、該シート搬送装置によって搬送されている最中の原稿シート、あるいは前記シート搬送装置によって所定の読取位置まで搬送された原稿シート、の画像を読み取る画像読取手段とを備える原稿読取装置において、
前記シート搬送装置として、請求項11乃至14の何れかのシート搬送装置を用いたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項16】
シート状部材である記録シートを搬送するシート搬送装置と、該シート搬送装置によって搬送される記録シートに画像を形成する画像形成手段とを備える画像形成装置において、
前記シート搬送装置として、請求項11乃至14の何れかのシート搬送装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
回転体の回転軸部材と同期して該回転体の回転軸線を中心にして回転するように配設され、且つ自らの所定の特性をセンサーに対して検知させる被検部材と、該被検部材に対して回転軸線方向で対向する位置で前記被検部材の前記特性を検知するセンサーと、該センサーによる検知結果に基づいて、前記回転体の回転量を算出する算出手段とを有する回転測定装置において、
前記センサーと前記被検部材との組合せとして、前記被検部材が1回転する毎に、前記センサーが1周期分の正弦波を出力し、且つ前記被検部材が前記回転体とともに前記回転軸線方向と直交する方向である軸線直交方向に移動するのに伴って、前記センサーが前記正弦波の振幅を変化させるもの、を用い、
前記正弦波に基づいて前記回転量を算出しつつ、前記振幅の変化量に基づいて前記回転体の前記軸線直交方向の変位量を算出するように、前記算出手段を構成したことを特徴とする回転測定装置。
【請求項2】
請求項1の回転測定装置において、
前記被検部材として、前記被検部材に対してその回転方向の所定位置で延在するように付した直径仮想線の一端側の被検部材箇所を前記センサーに最も近づけるとともに、前記直径仮想線の他端側の被検部材箇所を前記センサーから最も遠ざける傾斜を前記センサーとの対向面に具備させたものを用いるとともに、
前記センサーとして、前記被検部材における前記回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されて前記箇所と自らとの距離を検知する距離センサーを用いたことを特徴とする回転測定装置。
【請求項3】
請求項1の回転測定装置において、
前記被検部材として、前記回転軸線を中心にして回転するように配設された磁石を用いるとともに、
前記センサーとして、前記磁石における前記回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されてその箇所の前記特性たる磁力を検知するホール素子を用いたことを特徴とする回転測定装置。
【請求項4】
請求項1の回転測定装置において、
前記被検部材として、前記被検部材に対してその回転方向の所定位置で延在するように付した直径仮想線の一端側の被検部材箇所を最も高濃度にするとともに、前記直径仮想線の他端側の被検部材箇所を最も低濃度にする濃度勾配を前記センサーとの対向面に具備させたものを用いるとともに、
前記センサーとして、前記被検部材における前記回転軸線を中心にした所定の回転角度位置にある箇所を被検対象にするように配設されて前記箇所の濃度を検知する濃度センサーを用いたことを特徴とする回転測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかの回転測定装置において、
1つの前記センサーからの出力に基づいて、前記回転体の前記軸線直交方向の変位量を算出するように、前記算出手段を構成したことを特徴とする回転測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れかの回転測定装置において、
前記センサーとして、前記被検部材における互いに異なる箇所を被検対象にするように配設した複数のものを用いるとともに、
それぞれのセンサーから出力される前記正弦波の振幅に基づいて、前記回転体の前記軸線直交方向の変位量を算出するように、前記算出手段を構成したことを特徴とする回転測定装置。
【請求項7】
請求項6の回転測定装置において、
複数の前記センサーを、前記回転体の前記軸線直交方向に沿った変位方向に並べて配設したことを特徴とする回転測定装置。
【請求項8】
請求項1乃至4の何れかの回転測定装置において、
前記センサーとして、前記被検部材における互いに異なる箇所を被検対象にするように配設した複数のものを用いるとともに、
前記正弦波の振幅に代えて、それぞれのセンサーから出力される前記正弦波の位相ずれ量に基づいて、前記回転体の前記軸線直交方向の変位量を算出するように、前記算出手段を構成したことを特徴とする回転測定装置。
【請求項9】
請求項8の回転測定装置において、
前記位相ずれ量に基づいて、前記回転量の算出結果を補正する処理を実施するように、前記算出手段を構成したことを特徴とする回転測定装置。
【請求項10】
請求項8又は9の回転測定装置において、
複数の前記センサーを、前記回転体の前記軸線直交方向に沿った変位方向と直交する方向に並べて配設したことを特徴とする回転測定装置。
【請求項11】
互いに当接しながら回転する2つの搬送ローラからなるローラ対によって形成される搬送ニップに挟み込んだシート状部材を、前記搬送ローラの回転に伴って搬送するシート搬送手段と、2つの前記搬送ローラのうち、回転軸線と直交する方向である軸線直交方向に変位可能に配設されて他方の搬送ローラに向けて押圧される搬送ローラである移動搬送ローラの回転量を測定する回転測定装置とを備えるシート搬送装置において、
前記回転測定装置として、請求項1乃至10の何れかの回転測定装置を用いて、前記回転量に加えて、前記移動搬送ローラの前記軸線直交方向への変位量を測定するようにしたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項12】
請求項11のシート搬送装置において、
前記シート状部材を複数枚重ねた状態で収容するシート収容手段と、該シート収容手段内のシート状部材を前記搬送ニップに向けて送り出す送出手段とを設け、
自らの回転駆動に伴って前記搬送ニップ内でシート状部材に対して搬送方向への移動力を付与するように、2つの前記搬送ローラのうち、前記移動搬送ローラではない方の搬送ローラである固定搬送ローラを構成し、
且つ、
前記送出手段から送り出されたシート状部材が前記搬送ニップに複数枚重なった状態で送り込まれた場合に、前記搬送ニップで自らの表面を前記固定搬送ローラとは逆方向に移動させるように回転駆動して、下側のシート状部材を前記送出手段に向けて逆戻りさせることでシート状部材を1枚ずつに分離する一方で、前記搬送ニップ内にシート状部材が1枚だけ挟み込まれた状態では、トルクリミッターの作動によって前記固定搬送ローラに追従して従動回転する分離ローラとして機能するように前記移動搬送ローラを構成したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項13】
請求項12のシート搬送装置において、
前記回転量と、前記搬送ニップにシート状部材が存在していない状態における前記回転体の変位方向の位置とに基づいて、前記移動搬送ローラの寿命を判定する寿命判定手段を設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項14】
請求項13のシート搬送装置において、
前記寿命判定手段による判定結果に基づいて、前記移動搬送ローラの前記固定搬送ローラへの押圧力を調整する押圧力調整手段を設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項15】
シート状部材である原稿シートを搬送するシート搬送装置と、該シート搬送装置によって搬送されている最中の原稿シート、あるいは前記シート搬送装置によって所定の読取位置まで搬送された原稿シート、の画像を読み取る画像読取手段とを備える原稿読取装置において、
前記シート搬送装置として、請求項11乃至14の何れかのシート搬送装置を用いたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項16】
シート状部材である記録シートを搬送するシート搬送装置と、該シート搬送装置によって搬送される記録シートに画像を形成する画像形成手段とを備える画像形成装置において、
前記シート搬送装置として、請求項11乃至14の何れかのシート搬送装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−95207(P2011−95207A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251874(P2009−251874)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]