説明

圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計

【課題】小型化を図った上で、振動漏れの発生を抑制することができる圧電振動片並びに圧電振動片を備えた圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供する。
【解決手段】圧電振動片4における基部12の両側面43,44に側面のみに開口する凹部41,42を形成することを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片並びに圧電振動片を備えた圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られており、例えば音叉型の圧電振動片を有するものや、厚み滑り振動する圧電振動片を有するもの等が知られている。
【0003】
上述した圧電振動子の1つとしては、例えば、特許文献1に示されるような表面実装(SMD)型の圧電振動子が知られている。具体的に、この圧電振動子は、例えば互いに接合されたベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で実装された圧電振動片とを備えている。また、圧電振動片は、平行に配された一対の振動腕部と、一対の振動腕部の基端側を一体的に固定する基部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−283951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この圧電振動片は、搭載される機器の小型化に伴って、さらなる小型化が望まれている。圧電振動片の小型化を図る方法としては、いくつかの方法が考えられているが、その1つとして振動腕部の両主面に溝部を形成する方法がある。この構成によれば、一対の励振電極間における電界効率を上げることができるので、振動損失を抑えて振動特性を向上させることができる。つまり、圧電振動片の小型化を図った上で、圧電振動片のCI値(Crystal Impedance)をさらに低くすることができるとされている。
【0006】
しかしながら、圧電振動片の小型化に伴って、振動腕部の振動が基部まで伝達される、いわゆる振動漏れが発生し易くなるという問題がある。
そして、振動漏れが大きい圧電振動片を上述したキャビティ内に実装すると、振動腕部の振動が基部を介してベース基板やリッド基板に伝達される。その結果、圧電振動子のCI値の増加や周波数の低下に繋がり、製品となる圧電振動子の振動特性が低下して所望の振動特性を得ることができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、小型化を図った上で、振動漏れの発生を抑制することができる圧電振動片並びに圧電振動片を備えた圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る圧電振動片は、平行に配置された一対の振動腕部と、前記一対の振動腕部の長さ方向における基端側を一体的に固定する基部とを備えた圧電振動片において、前記振動腕部は、前記基部の幅方向に沿って配され、前記基部における幅方向の側面には、前記側面のみに開口する凹部が形成されていることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、圧電振動片における基部の側面に凹部を形成することで、振動腕部での振動が、基部の凹部よりも基端側まで伝わり難くなる。これにより、圧電振動片の振動漏れを抑制することができる。そして、このような圧電振動片をパッケージに実装した場合に、振動腕部での振動がパッケージに伝達することも抑制することができる。そのため、振動漏れにより生じるCI値の増加や周波数の低下を抑制して、優れた振動特性を得ることができる。
しかも、圧電振動片の凹部は、側面のみに開口しているので、圧電振動片における主面の外形(平面視の外形形状)は従来の圧電振動片と同形状である。すなわち、圧電振動片の主面の外形を変化させないので、圧電振動片の主面上に形成された電極パターンのレイアウトに影響を与えずに振動漏れを抑制することができる。したがって、電極パターンのレイアウト性を維持することができるので、従来と同様の電極パターンを採用することができ、製造効率及び製造コストを維持した上で振動漏れを抑制することができる。
【0010】
また、前記一対の振動腕部の主面には、前記振動腕部の長さ方向に沿って溝部が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、振動腕部の主面に溝部を形成することで、圧電振動片の小型化を図った上で、圧電振動片のCI値をさらに低くすることができる。
特に、上述したように圧電振動片を小型化することで振動漏れが発生し易くなるが、本発明の構成のように凹部を形成することで、圧電振動片を小型化した場合であっても振動漏れを抑制することができる。すなわち、圧電振動片の小型化に伴う振動特性の低下を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の圧電振動子は、上記本発明の圧電振動片を有する圧電振動子であって、前記圧電振動片が接合材料を介してパッケージに実装されていることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明の圧電振動片を備えているので、振動漏れを抑制した信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
【0012】
また、前記パッケージは、互いに接合されたベース基板とリッド基板とからなり、前記ベース基板と前記リッド基板との間に形成されたキャビティ内に、前記圧電振動片が実装されていることを特徴としている。
いわゆる表面実装型の圧電振動子は、圧電振動片が接合材料を介して基板に実装されるため、圧電振動片に振動漏れがある場合には、振動腕部の振動がパッケージに伝達され易い。
ところが、本発明の構成によれば、上記本発明の圧電振動片を備えているので、振動腕部の振動がパッケージに伝達されることを抑制することができる。すなわち、振動漏れの影響が生じやすい表面実装型の圧電振動子であっても、振動特性に優れた信頼性の高い製品を提供することができる。
【0013】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0016】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る圧電振動片及び圧電振動子によれば、振動腕部での振動がパッケージに伝達することも抑制することができるため、振動漏れにより生じるCI値の増加や周波数の低下を抑制して、優れた振動特性を得ることができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る圧電振動子の一実施形態を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1に示す圧電振動子を構成する圧電振動片の上面図である。
【図6】図5に示す圧電振動片の下面図である。
【図7】図5に示す断面矢視B−B図である。
【図8】図5に示す圧電振動片の斜視図である。
【図9】図1に示す圧電振動子を製造する際のフローチャートである。
【図10】図9に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、リッド基板の元となるリッド基板用ウエハに複数の凹部を形成した状態を示す図である。
【図11】図9に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、ベース基板の元となるベース基板用ウエハの全体図である。
【図12】図9に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、圧電振動片をキャビティ内に収容した状態でベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとが陽極接合されたウエハ体の分解斜視図である。
【図13】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図14】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図15】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図16】本発明に係るシリンダパッケージタイプの圧電振動子を示す斜視図である。
【図17】本発明の他の実施形態を示す圧電振動片の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(表面実装型圧電振動子)
図1は本発明に係る圧電振動子の外観斜視図であり、図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。また、図3は図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
図1〜4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2とリッド基板3とで2層に積層された箱状に形成されており、内部のキャビティC内に圧電振動片4が収納された表面実装型の圧電振動子である。なお、図4においては、図面を見易くするために後述する励振電極15、引き出し電極19,20、マウント電極16,17及び重り金属膜21の図示を省略している。また、図2,3においては、後述する凹部41,42の図示を省略している。
【0020】
図5は圧電振動子を構成する圧電振動片の上面図であり、図6は下面図、図7は図5のB−B線に沿う断面図である。
図5〜7に示すように、圧電振動片4は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10,11と、一対の振動腕部10,11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10,11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10,11を振動させる第1の励振電極13と第2の励振電極14とからなる励振電極15と、第1の励振電極13及び第2の励振電極14に電気的に接続されたマウント電極16,17とを有している。
また、本実施形態の圧電振動片4は、一対の振動腕部10,11の両主面上に、振動腕部10,11の長さ方向に沿ってそれぞれ形成された溝部18を備えている。この溝部18は、振動腕部10,11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0021】
第1の励振電極13と第2の励振電極14とからなる励振電極15は、一対の振動腕部10,11を互いに接近または離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部10,11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、第1の励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部18上と他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極14が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部18上とに主に形成されている。
【0022】
また、第1の励振電極13及び第2の励振電極14は、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極19,20を介してマウント電極16,17に電気的に接続されている。そして圧電振動片4は、このマウント電極16,17を介して電圧が印加されるようになっている。
なお、上述した励振電極15、マウント電極16,17及び引き出し電極19,20は、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の導電性膜の被膜により形成されたものである。
【0023】
また、一対の振動腕部10,11の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。なお、この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。これら粗調膜21a及び微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10,11の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0024】
このように構成された圧電振動片4は、図3,4に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の上面にバンプ接合されている。より具体的には、ベース基板2の上面にパターニングされた後述する引き回し電極36,37上に形成された2つのバンプB上に、一対のマウント電極16,17がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の上面から浮いた状態で支持されるとともに、マウント電極16,17と引き回し電極36,37とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0025】
上述したリッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、図1,3,4に示すように、板状に形成されている。そして、ベース基板2が接合される接合面側には、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、両基板2,3が重ね合わされたときに、圧電振動片4を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部である。そして、リッド基板3は、この凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して陽極接合されている。
【0026】
上述したベース基板2は、リッド基板3と同様にガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、図1〜4に示すように、リッド基板3に対して重ね合わせ可能な大きさで板状に形成されている。
このベース基板2には、ベース基板2を貫通する一対のスルーホール30,31が形成されている。この際、一対のスルーホール30,31は、キャビティC内に収まるように形成されている。より詳しく説明すると、本実施形態のスルーホール30,31は、マウントされた圧電振動片4の基部12側に対応した位置に一方のスルーホール30が形成され、振動腕部10,11の先端側に対応した位置に他方のスルーホール31が形成されている。また、本実施形態では、ベース基板2の下面から上面に向かって漸次径が縮径した断面テーパ状のスルーホールを例に挙げて説明するが、この場合に限られず、ベース基板2を真っ直ぐに貫通するスルーホールでも構わない。いずれにしても、ベース基板2を貫通していれば良い。
【0027】
そして、これら一対のスルーホール30,31には、これらスルーホール30,31を埋めるように形成された一対の貫通電極32,33が形成されている。これら貫通電極32,33は、図3に示すように、焼成によってスルーホール30,31に対して一体的に固定された筒体6及び芯材部7によって形成されたものであり、スルーホール30,31を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、後述する外部電極38,39と引き回し電極36,37とを導通させる役割を担っている。
【0028】
筒体6は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体6は、両端が平坦で且つベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体6の中心には、芯材部7が筒体6を貫通するように配されている。また、本実施形態ではスルーホール30,31の形状に合わせて、筒体6の外形が円錐状(断面テーパ状)となるように形成されている。そして、この筒体6は、スルーホール30,31内に埋め込まれた状態で焼成されており、これらスルーホール30,31に対して強固に固着されている。
【0029】
上述した芯材部7は、金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体6と同様に両端が平坦で、且つベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。なお、図3に示すように、貫通電極32,33が完成品として形成された場合には、上述したように芯材部7は、ベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されているが、製造過程では、芯材部7の長さは、製造過程の当初のベース基板2の厚さよりも0.02mmだけ短い長さのものを採用している。そして、この芯材部7は、筒体6の中心孔6cに位置しており、筒体6の焼成によって筒体6に対して強固に固着されている。
なお、貫通電極32,33は、導電性の芯材部7を通して電気導通性が確保されている。
【0030】
ベース基板2の上面側(リッド基板3が接合される接合面側)には、図1〜4に示すように、導電性材料(例えば、アルミニウム)により、陽極接合用の接合膜35と、一対の引き回し電極36,37とがパターニングされている。このうち接合膜35は、リッド基板3に形成された凹部3aの周囲を囲むようにベース基板2の周縁に沿って形成されている。
【0031】
また、一対の引き回し電極36,37は、一対の貫通電極32,33のうち、一方の貫通電極32と圧電振動片4の一方のマウント電極16とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極33と圧電振動片4の他方のマウント電極17とを電気的に接続するようにパターニングされている。
より詳しく説明すると、一方の引き回し電極36は、圧電振動片4の基部12の真下に位置するように一方の貫通電極32の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極37は、一方の引き回し電極36に隣接した位置から、振動腕部10,11に沿って該振動腕部10,11の先端側に引き回しされた後、他方の貫通電極33の真上に位置するように形成されている。
そして、これら一対の引き回し電極36,37上にそれぞれバンプBが形成されており、該バンプBを利用して圧電振動片4がマウントされている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極16が、一方の引き回し電極36を介して一方の貫通電極32に導通し、他方のマウント電極17が、他方の引き回し電極37を介して他方の貫通電極33に導通するようになっている。
【0032】
また、ベース基板2の下面には、図1,3,4に示すように、一対の貫通電極32,33に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極38,39が形成されている。つまり、一方の外部電極38は、一方の貫通電極32及び一方の引き回し電極36を介して圧電振動片4の第1の励振電極13に電気的に接続されている。また、他方の外部電極39は、他方の貫通電極33及び他方の引き回し電極37を介して、圧電振動片4の第2の励振電極14に電気的に接続されている。
【0033】
図8は、圧電振動片の斜視図である。なお、図8においては、図面を見易くするために励振電極15、引き出し電極19,20、マウント電極16,17及び重り金属膜21の図示を省略している。
ここで、圧電振動片4の基部12における幅方向の両側面43,44には、両側面43,44からそれぞれ対向する側面に向かって、基部12の幅方向に沿って刳り貫かれた凹部41,42が形成されている。これら凹部41,42は、側面視形状(開口部形状)が矩形状に形成され、その開口部はそれぞれの側面43,44のみに開口している。すなわち、凹部41,42は基部12の幅方向のみに開口して、厚さ方向には貫通していない。また、各凹部41,42は、基部12の長さ方向において同位置に配されており、互いの凹部41,42のエンド部(底部)は対向している。
【0034】
なお、凹部41,42の深さは、振動腕部10,11の幅Wと同等に設定されており、例えば100μm〜200μm程度に設定されている。また、凹部41,42は、振動腕部10,11の振動に影響を及ぼさず、ベース基板2との接合強度を確保できるような位置に形成することが好ましく、本実施形態では基部12の長さ方向における中間位置よりも先端側(振動腕部10,11側)に形成されている。
【0035】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極38,39に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極13及び第2の励振電極14からなる励振電極15に電流を流すことができ、一対の振動腕部10,11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10,11の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0036】
(圧電振動子の製造方法)
次に、図9に示すフローチャートを参照しながら、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とを利用して一度に複数の圧電振動子1を製造する製造方法について以下に説明する。
【0037】
初めに、圧電振動片作製工程を行って図5〜8に示す圧電振動片4を作製する(S10)。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハとする。続いて、ウエハに洗浄等の適切な処理を施した後、ウエハをフォトリソグラフィ技術によって圧電振動片4の外形形状でパターニングするとともに、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極15、引き出し電極19,20、マウント電極16,17、重り金属膜21を形成する。
【0038】
ここで、圧電振動片4の基部12の両側面43,44に凹部41,42を形成する。例えば、凹部41,42の形成領域が開口したメタルマスクを介して、ドライエッチングを片面ずつ行うことにより、開口部形状が矩形状の凹部41,42を形成することができる。これにより、上述した圧電振動片4を作製することができる。
【0039】
また、圧電振動片4を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザー光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0040】
図10は、リッド基板の元となるリッド基板用ウエハに複数の凹部を形成した状態を示す図である。
次に、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第1のウエハ作製工程を行う(S20)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、図10に示すように、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の接合面に、エッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。この時点で、第1のウエハ作製工程が終了する。
【0041】
次に、上記工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40(図11参照)を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第2のウエハ作製工程を行う(S30)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。次いで、ベース基板用ウエハ40における圧電振動子1の形成領域に、ベース基板用ウエハ40を貫通する一対のスルーホール30,31を複数形成する(S32:貫通孔形成工程)。
【0042】
図11は、圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、ベース基板の元となるベース基板用ウエハの全体図である。なお、図11に示す破線Mは、後に行う切断工程で切断する切断線を図示している。
続いて、複数の一対のスルーホール30,31内に、筒体6と芯材部7とが一体的に固定された一対の貫通電極32,33を形成する貫通電極形成工程を行う(S33)。
そして、図11に示すように、ベース基板用ウエハ40の上面に導電性材料をパターニングして、接合膜35を形成する接合膜形成工程(S34)を行うとともに、一対の貫通電極32,33にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極36,37を複数形成する引き回し電極形成工程を行う(S35)。
この工程を行うことにより、一方の貫通電極32と一方の引き回し電極36とが導通するとともに、他方の貫通電極33と他方の引き回し電極37とが導通した状態となる。この時点で第2のウエハ作製工程が終了する。
【0043】
次に、作製した複数の圧電振動片4を、それぞれ引き回し電極36,37を介してベース基板用ウエハ40の上面にバンプ接合するマウント工程を行う(S40)。まず、一対の引き回し電極36,37上にそれぞれ金等のバンプBを形成する。そして、圧電振動片4の基部12をバンプB上に載置した後、バンプBを所定温度に加熱しながら圧電振動片4をバンプBに押し付ける。これにより、圧電振動片4は、バンプBに機械的に支持されるとともに、マウント電極16,17と引き回し電極36,37とが電気的に接続された状態となる。よって、この時点で圧電振動片4の一対の励振電極15は、一対の貫通電極32,33に対してそれぞれ導通した状態となる。特に、圧電振動片4は、バンプ接合されるので、ベース基板用ウエハ40の上面から浮いた状態で支持される。
【0044】
圧電振動片4のマウントが終了した後、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片4が、ベース基板用ウエハ40に形成された凹部3aと両ウエハ40、50とで囲まれるキャビティC内に収容された状態となる。
【0045】
図12は、圧電振動片をキャビティ内に収容した状態でベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとが陽極接合されたウエハ体の分解斜視図である。
重ね合わせ工程後、重ね合わせた2枚のウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。これにより、圧電振動片4をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合した図12に示すウエハ体60を得ることができる。なお、図12においては、図面を見易くするために、ウエハ体60を分解した状態を図示しており、ベース基板用ウエハ40から接合膜35の図示を省略している。なお、図12に示す破線Mは、後に行う切断工程で切断する切断線を図示している。
そして、上述した陽極接合が終了した後、ベース基板用ウエハ40の下面に導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極32,33にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極38,39を複数形成する外部電極形成工程を行う(S70)。この工程により、外部電極38,39を利用してキャビティC内に封止された圧電振動片4を作動させることができる。
【0046】
次に、ウエハ体60の状態で、キャビティC内に封止された個々の圧電振動子1の周波数を微調整して所定の範囲内に収める微調工程を行う(S80)。そして、周波数の微調が終了した後、接合されたウエハ体60を図12に示す切断線Mに沿って切断して小片化する切断工程を行う(S90)。その結果、互いに陽極接合されたベース基板2とリッド基板3との間に形成されたキャビティC内に圧電振動片4が封止された、図1に示す表面実装型の圧電振動子1を一度に複数製造することができる。
【0047】
その後、内部の電気特性検査を行う(S100)。すなわち、圧電振動片4の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。これをもって圧電振動子1の製造が終了する。
【0048】
このように、本実施形態では、圧電振動片4における基部12の両側面43,44に側面のみに開口する凹部41,42を形成する構成とした。
この構成によれば、圧電振動片4の基部12に凹部41,42を形成することで、振動腕部10,11での振動が基部12の基端側まで伝わり難くなる。これにより、圧電振動片4の振動漏れを抑制することができる。そして、このような圧電振動片4をキャビティC内にマウントした場合に、振動腕部10,11での振動が両基板2,3を介して実装基板(不図示)まで伝達することも抑制することができる。そのため、振動漏れにより生じるCI値の増加や周波数の低下を抑制して、優れた振動特性を得ることができる。したがって、所望の振動特性を有した信頼性の高い圧電振動子1を提供することができる。
【0049】
さらに、本実施形態の圧電振動片4は、振動腕部10,11の両主面に溝部18を形成することで、圧電振動片4の小型化を図った上で、圧電振動片4のCI値をさらに低くすることができる。
特に、上述したように圧電振動片4を小型化することで振動漏れが発生し易くなるが、本実施形態のように凹部41,42を形成することで、圧電振動片4を小型化した場合であっても振動漏れを抑制することができる。すなわち、圧電振動片4の小型化に伴う振動特性の低下を抑制することができる。
【0050】
ところで、本実施形態のような表面実装型の圧電振動子1は、圧電振動片4がバンプBを介してベース基板2にマウントされているため、圧電振動片4に振動漏れがある場合には、振動腕部10,11の振動がベース基板2に伝達され易い。
ところが、本実施形態の圧電振動片4を備えているため、振動腕部10,11の振動が両基板2,3に伝達されることを抑制することができる。すなわち、振動漏れの影響が生じやすい表面実装型の圧電振動子1であっても、振動特性に優れた信頼性の高い製品を提供することができる。
【0051】
しかも、本実施形態の圧電振動片4の凹部41,42は、側面43,44のみに開口しているので、従来の圧電振動片4における主面の外形(平面視の外形形状)は従来の圧電振動片と同形状である。すなわち、圧電振動片4の主面の外形を変化させないので、圧電振動片4の主面上に形成された電極パターン(例えば、励振電極13,14、引き出し電極19,20及びマウント電極16,17)のレイアウトに影響を与えずに、振動漏れを抑制することができる。したがって、電極パターンのレイアウト性を維持することができるので、従来と同様の電極パターンを採用することができ、製造効率及び製造コストを維持した上で振動漏れを抑制することができる。
【0052】
ところで、圧電振動片4の振動漏れを抑制するために基部12の厚さ方向に貫通する切欠き部(ノッチ)を形成することも考えられる。しかしながら、この場合には圧電振動片4をベース基板2にマウントするためのバンプBが、圧電振動片4の側面まで這い上がってくる可能性がある。その結果、圧電振動片4の周波数が低下して振動特性が低下するという問題がある。
これに対して、本実施形態の凹部41,42は、厚さ方向に貫通せず、基部12の側面のみに開口しているため、バンプBの側面への這い上がりを防止することができる。したがって、振動特性の低下を抑制して信頼性の高い製品を提供することができる。
【0053】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図13を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図13に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0054】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片2が振動する。この振動は、圧電振動片2が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0055】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、小型化及び高品質化された信頼性の高い圧電振動子1を備えているので、発振器100自体も同様に小型化及び高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0056】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図14を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0057】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図14に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0058】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0059】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片2が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0060】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0061】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0062】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0063】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0064】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、小型化及び高品質化された信頼性の高い圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器自体も同様に小型化及び高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0065】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図15を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図15に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0066】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0067】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。
続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0068】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0069】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、小型化及び高品質化された信頼性の高い圧電振動子1を備えているので、電波時計自体も同様に小型化及び高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0070】
(シリンダパッケージタイプ)
なお、本発明は、上述した表面実装型の圧電振動子1に限られず、シリンダパッケージタイプの圧電振動子に本発明を適用することもできる。図16は、シリンダパッケージタイプの圧電振動子を示す斜視図である。なお、以下の説明では、上述した実施形態と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
図16に示すように、本実施形態の圧電振動子201は、シリンダパッケージタイプの圧電振動子であって、上述した圧電振動片4と、圧電振動片4がマウントされたプラグ204と、プラグ204とともに圧電振動片4を気密封止するケース203とを備えている。
【0071】
ケース203は、有底円筒状に形成されており、圧電振動片4を内部に収納した状態でプラグ204の後述するステム230の外周に対して圧入されて、嵌合固定されている。なお、このケース203の圧入は、真空雰囲気下で行われており、ケース203内の圧電振動片4を囲む空間が真空に保たれた状態となっている。
【0072】
プラグ204は、ケース203を密閉させるステム230と、このステム230を貫通するように平行配置され、ステム230を間に挟んで一端側が圧電振動片4をマウント(機械的に接合及び電気的に接続)するインナーリード231aとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリード231bとされた2本のリード端子231と、ステム230の内側に充填されてステム230とリード端子231とを固定させる絶縁性の充填材32とを有している。
ステム230は、金属材料で環状に形成されたものである。また、充填材232の材料としては、例えばホウ珪酸ガラスである。また、リード端子231の表面及びステム230の外周には、それぞれ同材料のめっき層が施されている。
【0073】
2本のリード端子231は、ケース203内に突出している部分がインナーリード231aとなり、ケース203外に突出している部分がアウターリード231bとなっている。リード端子231は、その直径が例えば約0.12mmであり、リード端子31の母材の材質としては、コバール(FeNiCo合金)が慣用されている。また、リード端子231の外表面及びステム230の外周には、めっき層が被覆されている。被膜させるめっきの材質としては、下地膜に銅(Cu)めっき等が用いられ、仕上膜に融点が例えば300度程度の高融点ハンダめっき(錫と鉛の合金で、その重量比が1:9)等が用いられる。
【0074】
そして、インナーリード231aとマウント電極16,17とは、仕上膜(高融点ハンダめっき)を溶解させて形成された接合部Eを介してマウントされている。すなわち、接合部Eを介してインナーリード231aとマウント電極16,17とが機械的に接合されていると同時に、電気的に接続されている。その結果、圧電振動片4は、2本のリード端子231にマウントされた状態となっている。
【0075】
なお、上述した2本のリード端子231は、一端側(アウターリード231b側)が外部に電気的に接続され、他端側(インナーリード231a側)が圧電振動片4に対してマウントされる外部接続端子として機能する。
また、ステム230の外周に被膜されためっき層を介在させながらケース3の内周に真空中で冷間圧接させることにより、ケース203の内部を真空状態で気密封止できるようになっている。
【0076】
ここで、本実施形態の圧電振動片4は、上述したように振動漏れを抑制した信頼性の高い圧電振動片4であるので、この圧電振動片4をシリンダパッケージタイプの圧電振動子201に採用した場合には、表面実装型の圧電振動子1(図1参照)と同様に、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子201を提供することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれら実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した実施形態では、圧電振動子の一例として、シリンダパッケージタイプや表面実装型の圧電振動子1,201を例に挙げて説明したが、この圧電振動子1に限定されるものではない。例えば、セラミックパッケージタイプの圧電振動子や、シリンダパッケージタイプの圧電振動子1を、さらにモールド樹脂部で固めて表面実装型振動子としても構わない。
【0078】
また、上述した実施形態では、開口部矩形状の凹部41,42を例にして説明したが、凹部41,42の形状は適宜設計変更が可能である。例えば、図17に示すように、凹部41,42を開口部円形状等に形成してもよい。
さらに、上述した実施形態では、基部12の両側面43.44にそれぞれ1つのみ凹部41,42を形成した場合について説明したが、これに限られず両側面43,44に複数ずつ形成してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1,201…圧電振動子 4…圧電振動片 10,11…振動腕部 18…溝部 41,42…凹部 43,44…側面 B…バンプ(接合材料) 100…発振器 101…発振器の集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…電子機器の計時部 130…電波時計 131…電波時計のフィルタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配置された一対の振動腕部と、前記一対の振動腕部の長さ方向における基端側を一体的に固定する基部とを備えた圧電振動片において、
前記振動腕部は、前記基部の幅方向に沿って配され、
前記基部における幅方向の側面には、前記側面のみに開口する凹部が形成されていることを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
前記一対の振動腕部の主面には、前記振動腕部の長さ方向に沿って溝部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の圧電振動片。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の圧電振動片を有する圧電振動子であって、
前記圧電振動片が接合材料を介してパッケージに実装されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項4】
前記パッケージは、互いに接合されたベース基板とリッド基板とからなり、前記ベース基板と前記リッド基板との間に形成されたキャビティ内に、前記圧電振動片が実装されていることを特徴とする請求項3記載の圧電振動子。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項3または請求項4に記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−183540(P2010−183540A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27858(P2009−27858)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】