説明

圧電振動片の製造方法、圧電振動片、ウエハ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計

【課題】 圧電振動片のサイズに影響されずに、周波数調整を容易且つ正確に、しかも効率良く行うと共に、低コスト化及びメンテナンス性の向上化を図る。
【解決手段】 圧電板11と、一対の励振電極12、13と、一対のマウント電極15、16と、を有する圧電振動片を、ウエハSを利用して製造する方法であって、ウエハにフレーム部S1を形成すると共に、該フレーム部に複数の圧電板が連結部11aを介して連結されるように形成する外形形成工程と、複数の圧電板に一対の励振電極及び一対のマウント電極をそれぞれ形成すると共に、フレーム部上に、連結部を通じて一対のマウント電極に対してそれぞれ電気的に接続されるように一対の延出電極S2、S3を複数形成する電極形成工程と、一対の延出電極間に駆動電圧を印加して、圧電板の周波数を調整する周波数調整工程と、複数の圧電板を小片化する切断工程と、を備える圧電振動片の製造方法を提供すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片の製造方法、該製造方法で製造された圧電振動片、該圧電振動片を製造するために用いるウエハ、該圧電振動片を有する圧電振動子、該圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られており、例えば音叉型の圧電振動片を有するものや、厚み滑り振動する圧電振動片を有するもの等が知られている。
【0003】
音叉型の圧電振動片を例に挙げて説明すると、圧電振動片201は、図22及び図23に示すように、平行に配された一対の振動腕部210と、該一対の振動腕部210の基端側を一体的に固定する基部211と、を有する圧電板212と、一対の振動腕部210の外表面上に形成され、該一対の振動腕部210を振動させる一対の励振電極213と、該一対の励振電極213にそれぞれ電気的に接続されたマウント電極214と、を備えている。この圧電振動片201は、一対のマウント電極214を介して一対の励振電極213に所定の駆動電圧が印加されたときに、一対の振動腕部210が互いに接近又は離間する方向に振動する。なお、この際、一対の振動腕部210が所定の周波数で振動するように、振動腕部210の先端に被膜された重り金属膜215の重量が予め調整(周波数調整)されている。
【0004】
この種の圧電振動片201は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の各種の圧電材料からなるウエハを利用して一度に複数製造されるのが一般的である(例えば、特許文献1)。
具体的には、図24に示すように、圧電材料の原石を切断してウエハSにした後、該ウエハSを所定の厚みまで研磨加工する。そして、研磨加工されたウエハSを洗浄、乾燥させた後、フォトリソ技術によりエッチング加工して圧電板212の外形を形成すると共に、所定の金属膜をパターニングして各電極及び重り金属膜215を形成する。その後、それぞれの圧電板212をウエハSから切断して小片化することで、1枚のウエハSから一度に複数の圧電振動片201を作製することができる。
【0005】
ところで、上記製造の過程で、通常、小片化の前に圧電板212の周波数調整(粗調)を行っている。具体的に説明すると、まず一対のマウント電極214のそれぞれに、周波数調整機(例えば、発振回路やネットワークアナライザー等)の端子をコンタクトさせて駆動電圧を印加し、一対の振動腕部210を発振させる。そして、このときの周波数を周波数調整機にて測定しながら、周波数調整機のトリミング装置(例えば、レーザー等)によって重り金属膜215の重量を調整する。これにより、周波数調整を行うことができる。
【特許文献1】特開平7−212161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した圧電振動片の製造方法には、以下の課題が残されている。
始めに、圧電板の周波数調整を行うためには、一対のマウント電極の両方に周波数調整機の端子をコンタクトさせる必要がある。つまり、圧電板1つに対して2つ端子をコンタクトさせる必要がある。ところが、一対のマウント電極は、幅が数百μm程度の大きさの圧電板の外表面上に並列に並んだ状態で形成されている。そのため、コンタクトを正確に行うためには、2つの端子をできるだけ近接させたうえ、一対のマウント電極に対して位置合わせする必要がある。よって、端子の制御が難しく、慎重にやらざるを得ない。そのため、周波数調整に時間がかかってしまい、効率の良い作業を行えなかった。
【0007】
しかも、近年では圧電振動片のサイズが小型化されており、一対のマウント電極の間隔も狭くなっている。そのため、上述した問題が顕著になってきた。また、小型化に併せて、マウント電極自体も小さくなってしまう。このため、周波数調整の際に端子をコンタクトさせるエリアが小さくなってしまい、端子をコンタクトさせることが難しくなった。よって、この点に関しても端子の制御が難しくなり、作業効率に影響を与えていた。
【0008】
また、この周波数調整をできるだけ効率良く行うために、圧電板を1つずつ調整するのではなく、複数の圧電板に2つの端子を同時にコンタクトさせて、周波数測定を複数同時に行う方法も従来から行われている。例えば、上記したウエハに連結されている複数の圧電板を列単位に区分けし、区分けした列毎に周波数測定を行う方法である。こうすることで、作業効率を上げることができるが、その反面、周波数調整機の端子の数を、同時に振動させる圧電板の数の2倍に増やす必要があった。そのため、事前に数多くの端子を用意する必要があり、コストダウンを図り難かった。しかも、上述したように1つの圧電板に対して2つの端子を正確にコンタクトさせるだけでも端子の制御が難しい。これに対して、周波数調整を同時に行う場合には、数多くの端子を複数の圧電板のマウント電極に対して同時且つ正確にコンタクトさせる必要があるので、より困難な作業となってしまうものであった。
【0009】
加えて、上述したように圧電振動片のサイズの小型化を狙った場合には、隣接する圧電板間の間隔がより狭くなってしまう。そのため、複数の圧電板に対してそれぞれ2つの端子をコンタクトさせること自体が厳しい状況になってきている。
更に、周波数調整機の端子が増加するにつれて、端子のメンテナンスに費やす工数が必要となってしまう。そのため、周波数測定を複数の圧電板に対して同時に行うことで、周波数調整作業を効率良く行えるが、その反面、メンテナンス性の悪化を招いてしまうものであった。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、圧電振動片のサイズに影響されずに、周波数調整を容易且つ正確に、しかも効率良く行うことができると共に、低コスト化及びメンテナンス性の向上化を図ることができる圧電振動片の製造方法、該製造方法によって製造された圧電振動片及び該圧電振動片を製造するために用いるウエハを提供することである。
更に上記圧電振動片を有する圧電振動子、該圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る圧電振動片の製造方法は、圧電板と、該圧電板の外表面上に形成され、所定の駆動電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、圧電板の基端側に、圧電板の幅方向に沿って所定の間隔を空けて並列に並んだ状態で形成され、一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続された一対のマウント電極と、を有する圧電振動片を、圧電材料からなるウエハを利用して一度に複数製造する方法であって、前記ウエハをフォトリソ技術によってエッチングしてフレーム部を形成すると共に、該フレーム部に複数の前記圧電板が基端側をフレーム部に向けた状態で連結部を介して片持ち状に連結されるように形成する外形形成工程と、前記ウエハに電極膜をパターニングして、前記複数の圧電板に対して前記一対の励振電極及び前記一対のマウント電極をそれぞれ形成すると共に、前記フレーム部上に、前記連結部を通じて前記一対のマウント電極に対してそれぞれ電気的に接続されるように一対の延出電極を複数形成する電極形成工程と、前記一対の延出電極間に前記駆動電圧を印加して、前記圧電板を振動させながら圧電板の周波数を調整する周波数調整工程と、前記連結部を切断して、複数の圧電板を小片化する切断工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る圧電振動片は、連結部を介してウエハに片持ち状に連結された状態から、連結部が切断されることで製造された圧電振動片であって、基端側が前記連結部に連結されていた圧電板と、該圧電板の外表面上に形成され、所定の駆動電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、前記圧電板の基端側に、圧電板の幅方向に沿って所定の間隔を空けて並列に並んだ状態で形成され、前記一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続された一対のマウント電極と、を備え、前記一対のマウント電極は、それぞれが前記圧電板の基端側の縁端に接するように形成され、前記切断前の時点で前記連結部まで延出していたこと、を特徴とするものである。
【0013】
この発明に係る圧電振動片の製造方法及び圧電振動片においては、まず、水晶等の圧電材料からなるウエハをフォトリソ技術によりエッチングしてフレーム部を形成すると共に、該フレーム部に複数の圧電板が連結されるように形成する外形形成工程を行う。この際、複数の圧電板が基端側をフレーム部に向けた状態で連結部を介して片持ち状に連結されるようにエッチングする。次いで、ウエハに電極膜をパターニングして、複数の圧電板に対して一対の励振電極及び一対のマウント電極をそれぞれ形成すると共に、フレーム部上に一対の延出電極を複数形成する電極形成工程を行う。この際、一対の延出電極を、連結部を通じて一対のマウント電極に対してそれぞれ電気的に接続するように形成する。
【0014】
次いで、一対の延出電極間に駆動電圧を印加して、圧電板を振動させながら圧電板の周波数を調整する周波数調整工程を行う。続いて、連結部を切断して複数の圧電板をフレーム部から切り離し、各々に小片化する切断工程を行う。これにより、1枚のウエハから、圧電板の外表面上に一対の励振電極及び一対のマウント電極が形成された圧電振動片を一度に複数製造することができる。なお、切断工程によって連結部を切断するので、連結部を通じて一対の延出電極にそれぞれ接続されていた一対のマウント電極も同時に切り離される。よって、一対のマウント電極は、それぞれが圧電板の基端側の縁端に接するように形成された形になる。
【0015】
特に、周波数調整工程を行う際に、従来とは異なり、フレーム部上に形成された一対の延出電極間にそれぞれ周波数調整機の端子をコンタクトさせて駆動電圧を印加することで、圧電板を振動させることができる。従来の場合には、圧電板上の一対のマウント電極の両方に端子をコンタクトさせる必要があった。つまり、1つの圧電板に対して2つの端子をコンタクトさせる必要があった。そのため、コンタクトを正確に行うためには、2つの端子をできるだけ近接させた状態で、一対のマウント電極に対して正確に位置合わせする必要があった。
【0016】
これに対して、本発明の場合には、フレーム部上の一対の延出電極の両方に端子をコンタクトさせればよい。一対の延出電極が形成されているフレーム部は、一対のマウント電極が形成されている圧電板のようにサイズが規制されていない。よって、一対の延出電極は、電極間の間隔を一対のマウント電極よりも大きく確保することができる。このため、一対の延出電極に端子をコンタクトさせる際、従来ほど2つの端子を近接させる必要がなくなる。従って、端子の制御を容易に行うことができ、よりスピーディー且つ正確に周波数調整を行うことができる。また、効率の良い作業を行うことができる。
【0017】
また、仮に更なる小型化に併せて、端子をコンタクトさせることが難しくなるほど一対のマウント電極自体が小さくなった場合であっても、延出電極に端子をコンタクトさせればよいので、圧電振動片のサイズに影響されることがない。これにより、圧電振動片のサイズに影響されずに周波数調整を確実に行うことができる。
【0018】
また、本発明に係る圧電振動片の製造方法は、前記電極形成工程の際、前記一対の延出電極を、前記幅方向に沿って前記間隔を空けて並列に並んだ状態で形成すると共に、該幅方向に沿った全体の長さが同方向に沿った前記一対のマウント電極の全体の長さよりも長くなるように形成すること、を特徴とするものである。
【0019】
この発明に係る圧電振動片の製造方法においては、電極形成工程の際、一対の延出電極を、圧電板の幅方向に沿って一対のマウント電極間と同じ間隔を空けて並列に並んだ状態で形成すると共に、該幅方向に沿った全体の長さが同方向に沿った一対のマウント電極の全体の長さよりも長くなるように形成する。従って、周波数調整工程において一対の延出電極に端子をコンタクトさせる際に、一対のマウント電極が並列している方向と同方向に端子間の間隔を広げてコンタクトさせることができる。このため、端子間の間隔を広げるための制御を容易に行うことができる。これにより、周波数調整をよりスピーディー且つ正確に行うことができる。
【0020】
また、本発明に係る圧電振動片の製造方法は、前記電極形成工程の際、複数の一方の延出電極をそれぞれ電気的に接続して共通延出電極を形成すること、を特徴とするものである。
【0021】
この発明に係る圧電振動片の製造方法においては、電極形成工程の際に、複数の一方の延出電極をそれぞれ電気的に接続して共通延出電極を形成する。つまり、この共通延出電極は、フレーム部に連結されている複数の圧電板上にそれぞれ形成されている全ての一方のマウント電極に導通した状態で形成されることになる。従って、周波数調整工程を行う際に、フレーム部上の共通延出電極と他方の延出電極とにそれぞれ周波数調整機の端子をコンタクトさせて駆動電圧を印加することで、圧電板を振動させることができる。このため、2つの端子を近接させる必要がない。しかも、共通延出電極にコンタクトさせる端子は、振動させる圧電板の位置によらず、共通延出電極上に予め設定した所定の位置にコンタクトさせればよい。このため、端子の制御をより容易に行うことができ、よりスピーディー且つ正確に周波数調整を行うことができる。
【0022】
また、本発明に係る圧電振動片の製造方法は、前記周波数調整工程の際、前記共通延出電極と複数の他方の延出電極との間に前記駆動電圧を印加して、前記圧電板を複数同時に振動させながら圧電板の周波数を調整すること、を特徴とするものである。
【0023】
この発明に係る圧電振動片の製造方法においては、周波数調整工程の際、圧電板を1つずつ振動させるのではなく、共通延出電極と、複数の他方の延出電極とに端子をコンタクトして駆動電圧を印加し、圧電板を複数同時に振動させながら圧電板の周波数を調整する。これにより、周波数調整をより効率良く行うことができ、製造効率を高めることができる。
【0024】
ところで、従来、複数の圧電板を同時に振動させる場合には、各圧電板の一対のマウント電極にそれぞれ端子をコンタクトさせる必要があるので、端子の数が圧電板の数の2倍必要であった。
これに対して、共通延出電極を利用するので、共通延出電極と、複数の他方の延出電極とに端子をコンタクトさせれば良い。そのため、端子の数は、振動させる圧電板の数の2倍の数ではなく、振動させる圧電板の数と共通延出電極用の1つを合わせた数だけでよい。従って、従来に比べて端子の数を大幅に減らすことができ、コストダウンを図ることができる。更に、端子の数を大幅に減らすことができるうえ、1つの圧電板あたりに1つの端子をコンタクトさせれば良いので、やはり端子の制御が容易になる。従って、複数同時に周波数調整を行う場合であっても、周波数調整を容易に且つ正確に行うことができる。
【0025】
また、仮に更なる小型化を図ることによって、隣り合う圧電板の間隔が狭くなった場合であっても、1つの圧電板に対して1つの端子だけをコンタクトさせればよいので、容易にコンタクトさせることができる。よって、圧電振動片のサイズに影響されずに周波数調整を確実に行うことができる。
加えて、端子の数を大幅に減らすことができるので、端子のメンテナンスに費やす工数を削減することができる。これにより、メンテナンス性の向上化を図ることができる。
【0026】
また、本発明に係るウエハは、圧電板と、該圧電板の外表面上に形成され、所定の駆動電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、圧電板の基端側に、圧電板の幅方向に沿って所定の間隔を空けて並列に並んだ状態で形成され、一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続された一対のマウント電極と、を有する圧電振動片が、複数連結されたウエハであって、前記圧電板が、基端側を向けた状態で、連結部を介して片持ち状に連結されたフレーム部と、前記フレーム部上に、前記連結部を通じて前記一対のマウント電極に対してそれぞれ電気的に接続されるように形成された複数の一対の延出電極と、を備えることを特徴とするものである。
【0027】
この発明に係るウエハにおいては、一対の延出電極間に駆動電圧を印加して、圧電板を振動させながら圧電板の周波数を調整することができる。この際、一対の延出電極を利用することで、圧電振動片のサイズに影響されずに、周波数調整を容易且つ正確に、しかも効率よく行うことができる。
そして、上述した方法によって圧電板の周波数が調整されたウエハの連結部を切断して、複数の圧電板を小片化することで、圧電振動片を一度に複数製造することができる。この圧電振動片においては、高品質化及び低コスト化が図ることができる。
【0028】
また、本発明に係るウエハは、前記一対の延出電極が、前記幅方向に沿って前記間隔を空けて並列に並んだ状態で形成すると共に、該幅方向に沿った全体の長さが同方向に沿った前記一対のマウント電極の全体の長さよりも長くなるように形成されていること、を特徴とするものである。
【0029】
この発明に係るウエハにおいては、一対の延出電極間に駆動電圧を印加して、圧電板を振動させながら圧電板の周波数を調整することで、周波数調整をより容易に行うことができる。
【0030】
また、本発明に係るウエハは、複数の一方の延出電極をそれぞれ電気的に接続して形成された共通延出電極を備えること、を特徴とするものである。
【0031】
この発明に係るウエハにおいては、共通延出電極と他方の延出電極との間に駆動電圧を印加して、圧電板を振動させながら圧電板の周波数を調整することができる。この際、共通延出電極を利用することで、周波数調整をより容易に効率よく行うことができる。更に、複数の圧電板の周波数を同時に調整する場合には、従来と比べて低コスト化及びメンテナンスの向上化を図ることができる。
【0032】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動片を有することを特徴とするものである。
【0033】
この発明に係る圧電振動子においては、上述した圧電振動片を備えているので、所定の周波数を確保することが可能であり、圧電振動子の高品質化及び低コスト化を図ることができる。
【0034】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されているものである。
【0035】
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
【0036】
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
【0037】
この発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に高品質化及び低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る圧電振動片の製造方法によれば、圧電振動片のサイズに影響されずに、周波数調整を容易且つ正確に、しかも効率良く行うことができると共に、低コスト化及びメンテナンス性の向上化を図ることができる。
また、本発明に係る圧電振動片によれば、上述した圧電振動片の製造方法によって製造され、周波数調整が容易且つ正確に、しかも効率良く行われるので高品質化及び低コスト化を図ることができる。
また、本発明に係るウエハによれば、上述した圧電振動片を一度に効率良く製造することができ、低コスト化を図ることができる。
また、本発明に係る圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計によれば、上述した圧電振動片を備えているので、高品質化及び低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る第1実施形態を、図1から図11を参照して説明する。なお、本実施形態では、圧電振動子1として、シリンダパッケージタイプの圧電振動子を例に挙げて説明する。
本実施形態の圧電振動子1は、図1から図3に示すように、圧電振動片2と、該圧電振動片2を内部に収納するケース3と、圧電振動片2をケース3内に密閉させる気密端子であるプラグ4と、を備えている。
【0040】
圧電振動片2は、図2及び図3に示すように、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片2は、平行に配置された一対の振動腕部8、9と、該一対の振動腕部8、9の基端側を一体的に固定する基部10と、を有する圧電板11と、一対の振動腕部8、9の外表面上に形成されて一対の振動腕部8、9を振動させる第1の励振電極12と第2の励振電極13とからなる一対の励振電極14と、第1の励振電極12及び第2の励振電極13に電気的に接続されたマウント電極15、16とを有している。
【0041】
第1の励振電極12と第2の励振電極13とからなる一対の励振電極14は、一対の振動腕部8、9を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部8、9の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、第1の励振電極12が、一方の振動腕部8上と、他方の振動腕部9の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極13が、一方の振動腕部8の両側面上と他方の振動腕部9上とに主に形成されている。
【0042】
また、第1の励振電極12及び第2の励振電極13は、基部10の両主面上において、それぞれ引き出し電極19、20を介してマウント電極15、16に電気的に接続されている。このマウント電極15、16は、圧電板11の幅方向Wに沿って所定の間隔L1を空けて並列に並んだ状態で形成されている。更に、一対のマウント電極15、16は、それぞれが圧電板11の基端側の縁部に接するように形成されている。なお、一対のマウント電極15、16の幅方向Wに沿った全体の長さをL2とする。
そして圧電振動片2は、このマウント電極15、16を介して電圧が印加されるようになっている。
【0043】
また、一対の振動腕部8、9の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。なお、この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。これら粗調膜21a及び微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部8、9の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0044】
ケース3は、図1に示すように、有底円筒状に形成されており、圧電振動片2を内部に収納した状態でプラグ4の後述するステム30の外周に対して圧入されて、嵌合固定されている。なお、このケース3の圧入は、真空雰囲気下で行われており、ケース3内の圧電振動片2を囲む空間が真空に保たれた状態となっている。
【0045】
プラグ4は、ケース3を密閉させるステム30と、該ステム30を貫通するように平行配置され、ステム30を間に挟んで一端側が圧電振動片2をマウント(機械的に接合及び電気的に接続)するインナーリード31aとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリード31bとされた2本のリード端子31と、ステム30の内側に充填されてステム30とリード端子31とを固定させる絶縁性の充填材32とを有している。
ステム30は、金属材料で環状に形成されたものである。また、充填材32の材料としては、例えば、ホウ珪酸ガラスである。また、リード端子31の表面及びステム30の外周には、それぞれ同材料の図示しないメッキが施されている。
【0046】
2本のリード端子31は、ケース3内に突出している部分がインナーリード31aとなり、ケース3外に突出している部分がアウターリード31bとなっている。そして、インナーリード31aとマウント電極15、16とが、導電性のバンプEを介してマウントされている。即ち、バンプEを介してインナーリード31aとマウント電極15、16とが機械的に接合されていると同時に、電気的に接続されている。その結果、圧電振動片2は、2本のリード端子31にマウントされた状態となっている。
【0047】
なお、上述した2本のリード端子31は、一端側(アウターリード31b側)が外部に電気的に接続され、他端側(インナーリード31a側)が圧電振動片2に対してマウントされる外部接続端子として機能する。
【0048】
ここで、プラグ4を構成する主要部品の寸法及び材質の一例について述べる。
リード端子31の直径は例えば約0.12mmであり、リード端子31の母材の材質としては、コバール(FeNiCo合金)が慣用されている。また、リード端子31の外表面及びステム30の外周に被膜させるメッキの材質としては、下地膜としてはCuが用いられ、仕上膜としては、耐熱ハンダメッキ(錫と鉛の合金で、その重量比が1:9)や、銀(Ag)や錫銅合金(SnCu)や金錫合金(AuSn)等が用いられる。
また、ステム30の外周に被膜された金属膜(メッキ層)を介在させながらケース3の内周に真空中で冷間圧接させることにより、ケース3の内部を真空状態で気密封止できるようになっている。
【0049】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、2本のリード端子31のアウターリード31bに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、インナーリード31a、バンプE、マウント電極15、16及び引き出し電極19、20を介して、第1の励振電極12及び第2の励振電極13からなる一対の励振電極14に電流を流すことができ、一対の振動腕部8、9を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部8、9の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0050】
次に、上述した圧電振動子1を一度に複数製造する製造方法について、図4及び図5に示すフローチャートを参照して説明する。
具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハSとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハSとする(S10)。
【0051】
次に、研磨後のウエハSをフォトリソ技術によりエッチングして、図6に示すように、フレーム部S1を形成すると共に、該フレーム部S1に複数の圧電板11が連結されるように形成する外形形成工程を行う(S20)。この際、複数の圧電板11が基端側をフレーム部S1に向けた状態で連結部11aを介して片持ち状に連結されるようにエッチングする。以下では、研磨後のウエハSから図6に示すウエハSを形成するまでの過程を、具体的に説明する。
【0052】
始めに、ポリッシングが終了したウエハSを準備した後、図7に示すようにウエハSの両面にエッチング保護膜40をそれぞれ成膜する(S21)。このエッチング保護膜40としては、例えば、クロム(Cr)を数μm成膜する。次いで、エッチング保護膜40上に図示しないフォトレジスト膜を、フォトリソ技術によってパターニングする。この際、フレーム部S1、圧電板11及び連結部11aの周囲を囲むようにパターニングする。そして、このフォトレジスト膜をマスクとしてエッチング加工を行い、マスクされていないエッチング保護膜40を選択的に除去する。そして、エッチング加工後にフォトレジスト膜を除去する。これにより、図8及び図9に示すように、エッチング保護膜40を上述した形状にパターニングすることができる(S22)。つまり、複数の圧電板11が基端側をフレーム部S1に向けた状態で連結部11aを介して片持ち状に連結されるような形状にパターニングすることができる。またこの際、複数の圧電板11の数だけパターニングを行う。なお、図9及び図10は、図8に示す切断線A−A線に沿った断面を示す図である。
【0053】
次いで、パターニングされたエッチング保護膜40をマスクとして、ウエハSの両面をそれぞれエッチング加工する(S23)。これにより、図6及び図10に示すように、エッチング保護膜40でマスクされていない領域を選択的に除去して、フレーム部S1を形成すると共に、該フレーム部S1に複数の圧電板11が連結されるように形成することができる。この時点で、外形形成工程が終了する。
【0054】
次いで、ウエハSに電極膜をパターニングして、図11に示すように、複数の圧電板11に対して、一対の励振電極14、一対のマウント電極15、16及び引き出し電極19、20をそれぞれ形成すると共に、フレーム部S1上に、一対の延出電極S2、S3形成する電極形成工程を行う(S30)。この際、一対の延出電極S2、S3を、連結部11aを通じて一対のマウント電極15、16に対してそれぞれ電気的に接続するように形成する。加えて、一対の延出電極S2、S3を、圧電板11の幅方向Wに沿って一対のマウント電極15、16間と同じ間隔L1を空けて並列に並んだ状態で形成すると共に、該幅方向Wに沿った全体の長さL3が同方向Wに沿った一対のマウント電極15、16の全体の長さL2よりも長くなるように形成する。
【0055】
これら外形形成工程及び電極形成工程を経ることで、準備された所定の厚みのウエハSを、圧電板11と、一対の励振電極14と、一対のマウント電極15、16と、を有する圧電振動片2が、複数連結されたウエハSであって、圧電板11が基端側を向けた状態で、連結部11aを介して片持ち状に連結されたフレーム部S1と、該フレーム部S1上に、連結部11aを通じて一対のマウント電極15、16に対してそれぞれ電気的に接続されるように形成された複数の一対の延出電極S2、S3と、を備えるウエハSに加工することができる。加えて、このウエハSは、一対の延出電極S2、S3が、圧電板11の幅方向Wに沿って一対のマウント電極15、16と同じ間隔L1を空けて並列に並んだ状態で形成すると共に、該幅方向Wに沿った全体の長さL3が同方向Wに沿った一対のマウント電極15、16の全体の長さL2よりも長くなるように形成されている。
【0056】
また、上記電極形成工程と同時或いは前後のタイミングで、一対の振動腕部8、9の先端に周波数調整用の粗調膜21a及び微調膜21bからなる重り金属膜21(例えば、銀や金等)を被膜させる(S40)。
【0057】
そして、圧電板11の一対の振動腕部8、9を振動させながら圧電板11の周波数を調整する粗調工程(周波数調整工程)を行う(S50)。具体的に説明すると、まず電極膜(一対の励振電極14、一対のマウント電極15、16、引き出し電極19、20及び一対の延出電極S2、S3)及び重り金属膜21の形成されたウエハSを、図示しない周波数調整機(例えば発振回路やネットワークアナライザー等)にセットする。そして、周波数調整機の端子(例えば、プローブ等)を、後述する方法でウエハS上の電極膜にコンタクトさせ、一対の励振電極14に所定の駆動電圧を印加する。これにより、一対の振動腕部8、9が発振する。このときの周波数を周波数調整機にて測定しながら、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザー光を照射して、一対の振動腕部8、9の先端にかかる重量を軽減させることで、周波数を調整する。なお、周波数をより高精度に調整する微調に関しては後に行う。これについては、後に説明する。
【0058】
次いで、ウエハSと圧電板11とを連結していた連結部11aを切断して、複数の圧電板11をフレーム部S1から切り離し、各々に小片化する切断工程を行う(S60)。これにより、1枚のウエハSから、圧電板11の外表面上に一対の励振電極14及び一対のマウント電極15、16が形成された圧電振動片2を一度に複数製造することができる。なお、切断工程によって連結部11aを切断するので、連結部11aを通じて一対の延出電極S2、S3に接続されていた一対のマウント電極15、16も同時に切り離される。よって、一対のマウント電極15、16は、図2及び図3に示すように、それぞれが圧電板11の基端側の縁端に接するように形成された形になる。
【0059】
次に、プラグ4を作製する気密端子作製工程を行う(S70)。具体的には、まず、ステム作製工程によりステム30を作製する(S71)。即ち、鉄ニッケルコバルト合金や鉄ニッケル合金等の導電性を有する板部材をランス加工した後、複数回の深絞り加工を行って有底の筒部材を形成する。そして、筒部材の底面に開口を形成すると共に、外形抜きを行って筒部材を板部材から切り離すことで、ステム30を作製する。
次いで、ステム30内に、リード端子31及び充填材32をそれぞれセットするセット工程を行う(S72)。まず、作製したステム30を、図示しない専用の治具にセットした後、予めリング状に焼結された充填材32をステム30の内部にセットすると共に、充填材32を貫通するようにリード端子31をセットする。
【0060】
上記セット工程により、ステム30とリード端子31と充填材32とを組み合わせた後、治具を加熱炉内に入れて1000℃前後の温度雰囲気で充填材32の焼成を行う(S73)。これにより、充填材32とリード端子31との間、充填材32とステム30との間が完全に封着されて、気密に耐えられる構造となる。そして、治具から取り出すことで、プラグ4を得ることができる。この時点で、気密端子作製工程が終了する。
【0061】
次に、リード端子31の外表面及びステム30の外周に同一材料の金属膜を湿式メッキ法で被膜させるメッキ工程を行う(S80)。そのための前処理として、リード端子31の外表面及びステム30の外周を洗浄すると共に、アルカリ溶液で脱脂した後、塩酸及び硫酸の溶液にて酸洗浄を行う。この前処理が終了した後、リード端子31の外表面及びステム30の外周面に下地膜を形成する。例えば、Cuメッキ或いはNiメッキを略2μmμm〜5μmの膜厚で被膜させる。続いて、下地膜上に仕上膜を形成する。例えば錫や銀等の単一材料の他、耐熱メッキや、錫銅合金、錫ビス膜合金、錫アンチモン合金等を、略8μm〜15μmの膜厚で被膜させる。
このように、下地膜及び仕上膜からなる金属膜を被膜させることで、インナーリード31aと圧電振動片2との接続を可能にすることができる。また、圧電振動片2の接続だけでなく、ステム30の外周に被膜された金属膜が柔らかく弾性変形する特性を有しているので、ステム30とケース3との冷間圧接を可能にすることができ、気密接合を行うことができる。
【0062】
続いて、金属膜の安定化を図るため、真空雰囲気の炉中でアニーリングを行う(S90)。例えば、170℃の温度で1時間の加熱を行う。これにより、下地膜の材料と仕上膜の材料との界面に形成される金属間化合物の組成を調整して、ウイスカの発生を抑制することができる。このアニーリングが終了した時点でマウント工程を行うことができる。なお、金属膜を被膜する際に、湿式メッキ法で行った場合を例にしたが、この場合に限られず、例えば、蒸着法や化学気相法等で行っても構わない。
【0063】
なお、本実施形態では、アニーリングが終了した後、次に行うマウント工程のためにインナーリード31aの先端に、金等の導電性のバンプEを形成する(S100)。そして、圧電振動片2のマウント電極15、16をインナーリード31aに接合するマウント工程を行う(S110)。具体的には、バンプEを加熱しながら、該バンプEを間に挟んだ状態でインナーリード31aと圧電振動片2とを所定の圧力で重ね合わせる。これにより、バンプEを介してインナーリード31aとマウント電極15、16とを接続することができる。その結果、圧電振動片2をマウントすることができる。即ち、圧電振動片2は、リード端子31に機械的に支持されると共に、電気的に接続された状態となる。
なお、バンプ接続する際に、加熱・加圧を行ってマウントしたが、超音波を利用してバンプ接続を行っても構わない。
【0064】
次に、封止工程を行う前に、上述したマウントによる歪みをなくすために、所定の温度でベーキングを行う(S120)。続いて、圧電振動片2の周波数の微調を行う(S130)。この周波数調整について、具体的に説明すると、全体を真空チャンバーに入れた状態で、アウターリード31b間に電圧を印加して圧電振動片2を振動させる。そして、周波数を計測しながら、レーザにより重り金属膜21の微調膜21bを蒸発させることで、周波数の調整を行う。なお、周波数計測を行うには、アウターリード31bに図示しないプローブの先端を押し付けることで、計測を正確に行うことができる。この周波数調整を行うことで、予め決められた周波数の範囲内に圧電振動片2の周波数を調整することができる。
【0065】
なお、上記微調及び先に行った粗調の際に、レーザの照射により重り金属膜21を蒸発させることで、周波数調整を行ったが、レーザではなくアルゴンイオンを利用しても構わない。この場合には、アルゴンイオンの照射によりスパッタリングを行い、重り金属膜21を除去することで周波数調整を行う。
【0066】
最後に、マウントされた圧電振動片2を内部に収納するようにケース3をステム30に圧入し、圧電振動片2を気密封止するケース圧入工程を行う(S140)。具体的に説明すると、真空中で所定の荷重を加えながらケース3をプラグ4のステム30の外周に圧入する。すると、ステム30の外周に形成された金属膜が弾性変形するので、冷間圧接により気密封止することができる。これにより、ケース3内に圧電振動片2を密閉して真空封止することができる。
なお、この工程を行う前に、圧電振動片2、ケース3及びプラグ4を十分に加熱して、表面吸着水分等を脱離させておくことが好ましい。
【0067】
そして、ケース3の固定が終了した後、スクリーニングを行う(S150)。このスクリーニングは、周波数や共振抵抗値の安定化を図ると共に、ケース3を圧入した嵌合部に圧縮応力に起因する金属ウイスカが発生してしまうことを抑制するために行うものである。
スクリーニング終了後、内部の電気特性検査を行う(S160)。即ち、圧電振動片2の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。この結果、図1に示す圧電振動子1を製造することができる。
【0068】
特に、粗調工程を行う際に、従来とは異なり、フレーム部S1上に形成された一対の延出電極S2、S3間にそれぞれ周波数調整機の端子をコンタクトさせて駆動電圧を印加することで、圧電板11の一対の振動腕部8、9を振動させることができる。従来の場合には、圧電板11上の一対のマウント電極15、16の両方に端子をコンタクトさせる必要があった。つまり、1つの圧電板11に対して2つの端子をコンタクトさせる必要があった。そのため、コンタクトを正確に行うためには、2つの端子をできるだけ近接させた状態で、一対のマウント電極15、16に対して正確に位置合わせする必要があった。
【0069】
これに対して、本発明の場合には、フレーム部S1上の一対の延出電極S2、S3の両方に端子をコンタクトさせればよい。一対の延出電極S2、S3が形成されているフレーム部S1は、一対のマウント電極15、16が形成されている圧電板11のようにサイズが規制されていない。よって、一対の延出電極S2、S3は、電極間の間隔を一対のマウント電極15、16よりも大きく確保することができる。このため、一対の延出電極S2、S3に端子をコンタクトさせる際、従来ほど2つの端子を近接させる必要がなくなる。従って、端子の制御を容易に行うことができ、よりスピーディー且つ正確に周波数調整を行うことができる。また、効率の良い作業を行うことができる。
【0070】
加えて、電極形成工程の際、一対の延出電極S2、S3を、圧電板11の幅方向Wに沿って一対のマウント電極15、16間と同じ間隔L1を空けて並列に並んだ状態で形成すると共に、該幅方向Wに沿った全体の長さL3が同方向Wに沿った一対のマウント電極15、16の全体の長さL2よりも長くなるように形成する。従って、粗調工程において一対の延出電極S2、S3に端子をコンタクトさせる際に、一対のマウント電極15、16が並列している方向と同方向に端子間の間隔を広げてコンタクトさせることができる。このため、端子間の間隔を広げるための制御を容易に行うことができる。これにより、周波数調整をよりスピーディー且つ正確に行うことができる。
【0071】
また、仮に更なる小型化に併せて、端子をコンタクトさせることが難しくなるほど一対のマウント電極15、16自体が小さくなった場合であっても、延出電極S2、S3に端子をコンタクトさせればよいので、圧電振動片2のサイズに影響されることがない。これにより、圧電振動片2のサイズに影響されずに周波数調整を確実に行うことができる。
【0072】
また、本実施形態の圧電振動子1においては、上述した圧電振動片2を備えているので、所定の周波数を確保することが可能であり、圧電振動子1の高品質化及び低コスト化を図ることができる。
【0073】
なお、周波数調整機の端子を電極膜にコンタクトさせると、通常、電極膜のコンタクト箇所に図示しない接触跡が形成される。しかしながら、上述したように一対のマウント電極15、16には端子をコンタクトさせていないので、接触跡が形成されることはない。
【0074】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る第2実施形態を、図12を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態とは、電極形成工程において形成する電極が異なる。即ち、第1実施形態は、単に一対の延出電極S2、S3を形成しただけであったが、第2実施形態は、一対の延出電極S2、S3に加えて共通延出電極S4を形成する。
【0075】
詳細に説明すると、本実施形態では、電極形成工程の際に、図12に示すように、複数の一方の延出電極S2をそれぞれ電気的に接続して共通延出電極S4を形成する。つまり、この共通延出電極S4は、フレーム部S1に連結されている複数の圧電板11上にそれぞれ形成されている全ての一方のマウント電極15に導通した状態で形成されることになる。
この電極形成工程を経ることで、ウエハSは、複数の一方の延出電極S2をそれぞれ電気的に接続して形成された共通延出電極S4を備えるウエハSに加工することができる。
【0076】
本実施形態の製造方法によれば、第1実施形態に示した作用効果を奏する上に、粗調工程を行う際に、フレーム部S1上の共通延出電極S4と他方の延出電極S3とにそれぞれ周波数調整機の端子をコンタクトさせて駆動電圧を印加することで、圧電板11の一対の振動腕部8、9を振動させることができる。このため、2つの端子を近接させる必要がない。しかも、共通延出電極S4にコンタクトさせる端子は、振動させる圧電板11の位置によらず、共通延出電極S4上に予め設定した所定の位置にコンタクトさせればよい。このため、端子の制御をより容易に行うことができ、よりスピーディー且つ正確に周波数調整を行うことができる。
【0077】
また、本実施形態において、粗調工程の際には、圧電板11の一対の振動腕部8、9を1組ずつ振動させるのではなく、共通延出電極S4と、複数の他方の延出電極S3とに端子をコンタクトして駆動電圧を印加し、圧電板11の一対の振動腕部8、9を複数組同時に振動させながら圧電板11の周波数を調整することが好ましい。これにより、周波数調整をより効率良く行うことができ、製造効率を高めることができる。
【0078】
ところで、従来、複数組の圧電板11の一対の振動腕部8、9を同時に振動させる場合には、各圧電板11の一対のマウント電極15、16にそれぞれ端子をコンタクトさせる必要があるので、端子の数が圧電板11の数の2倍必要であった。
これに対して、共通延出電極S4を利用するので、共通延出電極S4と、複数の他方の延出電極S3とに端子をコンタクトさせれば良い。そのため、端子の数は、振動させる圧電板11の数の2倍の数ではなく、振動させる圧電板11の数と共通延出電極S4用の1つを合わせた数だけでよい。従って、従来に比べて端子の数を大幅に減らすことができ、コストダウンを図ることができる。更に、端子の数を大幅に減らすことができるうえ、1つの圧電板11あたりに1つの端子をコンタクトさせれば良いので、やはり端子の制御が容易になる。従って、複数同時に周波数調整を行う場合であっても、周波数調整を容易に且つ正確に行うことができる。
【0079】
また、仮に更なる小型化を図ることによって、隣り合う圧電板11の間隔が狭くなった場合であっても、1つの圧電板11に対して1つの端子だけをコンタクトさせればよいので、容易にコンタクトさせることができる。よって、圧電振動片2のサイズに影響されずに周波数調整を確実に行うことができる。
加えて、端子の数を大幅に減らすことができるので、端子のメンテナンスに費やす工数を削減することができる。これにより、メンテナンス性の向上化を図ることができる。
【0080】
なお、本実施形態では、一方の延出電極S2を、第1実施形態と同様の形状にしたが、これに限らない。例えば、図13に示すように、一方の延出電極S2を圧電板11の幅方向Wに狭めた形状にしても構わない。これにより、フレーム部S1上において、一対の延出電極S2、S3の幅方向Wに沿った全体の長さを狭めることができる。このため、隣接する圧電板11の間隔を狭めることができ、1枚のウエハSから製造できる圧電板11の総数を増加させることができる。
また、この際、フレーム部S1上に、一方のマウント電極15より大きいコンタクト部分S5が形成されるように共通延出電極S4を形成することが望ましい。これによれば、共通延出電極S4に端子をコンタクトさせる際、コンタクト部分S5にコンタクトさせることで、端子の制御を容易にすることができる。
【0081】
なお、上記実施形態では、音叉型の圧電振動片2を備えた圧電振動子1を例に挙げて説明したが、この圧電振動子1に限定されるものではない。
例えば、図14に示すように、厚み滑り振動片(圧電振動片)71を有する厚み滑り振動子(圧電振動子)70であっても構わない。厚み滑り振動片71は、ウエハSから一定の厚みで板状に形成された圧電板72と、励振電極73、引き出し電極74、マウント電極75とを備えている。圧電板72は、例えば、外形が矩形状に形成されており、両面の略中央部分に励振電極73が対向するように形成されている。圧電板72の端部には、引き出し電極74を介して励振電極73に電気的に接続されたマウント電極75が形成されている。なお、マウント電極75は、一方の励振電極73に接続されたものと、他方の励振電極73に接続されたものとが、圧電板72の両面にそれぞれ形成されている。この際、圧電板72の一方の面に形成されたマウント電極75は、他方の面に形成されたマウント電極75に対して、圧電板72の側面上に形成された側面電極76を介して電気的に接続されている。
【0082】
このように構成された厚み滑り振動子70であっても、上述した圧電振動片の製造方法によって厚み滑り振動片71が製造されるので、同様に厚み滑り振動子70自体の高品質化及び低コスト化を図ることができる。
【0083】
また、上記実施形態では、圧電振動子の一例として、シリンダパッケージタイプの圧電振動子1を例に挙げて説明したが、この圧電振動子1に限定されるものではない。例えば、図15及び図16に示すように、セラミックパッケージタイプの圧電振動子80でも構わない。
この圧電振動子80は、内部に凹部81aが形成されたベース81と、該ベース81の凹部81a内に収容される圧電振動片2と、圧電振動片2を収容した状態でベース81に固定されるリッド82と、を備えている。
【0084】
ベース81には、ハーメチック封止構造を持つリード83が配置され、その先端にバンプEが設けられている。そして、バンプEと圧電振動片2のマウント電極15、16とが機械的及び電気的に接続されている。また、リード83はベース81の底面に露出している。即ち、このリード83は、一端側が外部に電気的に接続されると共に、他端側がマウント電極15、16に電気的に接続される外部接続端子として機能する。
また、ベース81は、蓋となるリッド82により、真空中で電子ビーム溶接や真空シーム溶接、或いは、低融点ガラスや共晶金属による接合等の各種手段を用いて真空気密封止されている。これにより、圧電振動片2は、内部に気密封止されている。即ち、ベース81及びリッド82は、圧電振動片2を気密封止する封止部材84として機能する。
【0085】
このように構成された圧電振動子80であっても、上述した圧電振動片の製造方法によって圧電振動片2が製造されるので、同様に圧電振動子80自体の高品質化及び低コスト型化を図ることができる。
【0086】
更には、シリンダパッケージタイプの圧電振動子1を、さらにモールド樹脂部91で固めて表面実装型振動子90としても構わない。
この表面実装型振動子90は、図17及び図18に示すように、圧電振動子1と、該圧電振動子1を所定の形状で固定するモールド樹脂部91と、一端側がアウターリード31bに電気的に接続されると共に、他端側がモールド樹脂部91の底面に露出して外部に電気的に接続される外部接続端子92と、を備えている。この外部接続端子92は、銅等の金属材料で断面コ形に形成されている。このように圧電振動子1をモールド樹脂部91で固めることで、回路基板等に安定して取り付けることができるので、より使用し易く、使い易さが向上する。特に、圧電振動子1は高品質化及び低コスト化されているので、表面実装型振動子90自体に関しても高品質化及び低コスト化を図ることができる。
【0087】
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図19を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図19に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0088】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片2が振動する。この振動は、圧電振動片2が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0089】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、高品質化及び低コスト化された圧電振動子1を備えているので、発振器100自体も同様に高品質化及び低コスト化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0090】
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図20を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0091】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図20に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0092】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0093】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片2が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0094】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0095】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0096】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0097】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0098】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、高品質化及び低コスト化された圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器自体も同様に高品質化及び低コスト化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0099】
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図21を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図21に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0100】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0101】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0102】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0103】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、高品質化及び低コスト化された圧電振動子1を備えているので、電波時計自体も同様に高品質化及び低コスト化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0104】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記した発振器、携帯情報機器及び電波時計においては、圧電振動子として、音叉型の圧電振動片2を有するシリンダパッケージタイプの圧電振動子1を用いたがこれに限らない。圧電振動子として厚み滑り振動子70や、セラミックパッケージタイプの圧電振動子80や、表面実装型振動子90等を用いても構わない。
【0105】
また、フレーム部S1に形成される一対の延出電極S2、S3の形状は、上記実施形態に示したものに限られず、連結部11aを通じて一対のマウント電極15、16に対してそれぞれ電気的に接続されるように形成されていれば構わない。例えば、図22に示すように、一対の延出電極S2、S3がフレーム部S1上に、圧電板11の幅方向Wと略直交する方向に並列に並ぶように形成されていても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明に係る第1実施形態の圧電振動子のケースの中身を見た図であって、圧電振動片を平面視した状態の図である。
【図2】図1に示す圧電振動片を上面から見た図である。
【図3】図1に示す圧電振動片を下面から見た図である。
【図4】図1に示す圧電振動子を製造する際のフローチャートである。
【図5】図4に示すフローチャートの続きである。
【図6】図1に示す圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、外形形成工程終了後のウエハの状態を示す図である。
【図7】図1に示す圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、ウエハの両面にエッチング保護膜を形成した状態を示す図である。
【図8】図7に示す状態から、エッチング保護膜を圧電振動片の圧電板の外形形状にパターニングした状態を示す図である。
【図9】図8に示す断面矢視A−A図である。
【図10】図9に示す状態から、エッチング保護膜をマスクとしてウエハをエッチング加工した状態を示す図である。
【図11】図10に示す状態から、ウエハ上に電極膜及び重り金属膜を形成した状態を示す図であって、ウエハを上面の拡大図である。
【図12】本発明に係る第2実施形態の圧電振動片の製造方法を説明するための一工程図であって、図10に示す状態から、ウエハ上に電極膜及び重り金属膜を形成した状態のウエハの上面の拡大図である。
【図13】本発明に係る第2実施形態の変形例であって、一方の延出電極の形状を圧電板の幅方向に狭めて形成した状態のウエハの上面の拡大図である。
【図14】本発明に係る圧電振動片及び圧電振動子の他の例を示す図であって、厚み滑り振動する圧電振動片を有する圧電振動子の分解斜視図である。
【図15】本発明に係る圧電振動子の他の例を示す図であって、セラミックパッケージタイプの圧電振動子の上面図である。
【図16】図15に示す断面矢視B−B図である。
【図17】本発明に係る圧電振動子を有する表面実装型振動子を示す断面図である。
【図18】図17に示す圧電振動子と外部接続端子との取り付け関係を示す斜視図である。
【図19】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図20】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図21】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図22】本発明の変形例を説明するための図であって、ウエハ上に電極膜及び重り金属膜を形成した状態のウエハの上面の拡大図である。
【図23】従来の圧電振動片を上面から見た図である。
【図24】従来の圧電振動片を下面から見た図である。
【図25】図23及び図24に示す圧電振動片を製造する際の一工程を示す図である。
【符号の説明】
【0107】
1、80 圧電振動子
2 圧電振動片
11、72 圧電板
11a 連結部
12、13、73 励振電極
14 一対の励振電極
15、16 一対のマウント電極
70 厚み滑り振動子(圧電振動子)
71 厚み滑り振動片(圧電振動片)
75 マウント電極
90 表面実装型振動子(圧電振動子)
100 発振器
101 発振器の集積回路
110 携帯情報機器(電子機器)
113 電子機器の計時部
130 電波時計
131 電波時計のフィルタ部
S ウエハ
S1 フレーム部
S2 一方の延出電極
S3 他方の延出電極
S4 共通延出電極
W 圧電板の幅方向
L1 一対のマウント電極の幅方向に沿った間隔
L2 一対のマウント電極の幅方向に沿った全体の長さ
L3 一対の延出電極の幅方向に沿った全体の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電板と、該圧電板の外表面上に形成され、所定の駆動電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、圧電板の基端側に、圧電板の幅方向に沿って所定の間隔を空けて並列に並んだ状態で形成され、一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続された一対のマウント電極と、を有する圧電振動片を、圧電材料からなるウエハを利用して一度に複数製造する方法であって、
前記ウエハをフォトリソ技術によってエッチングしてフレーム部を形成すると共に、該フレーム部に複数の前記圧電板が基端側をフレーム部に向けた状態で連結部を介して片持ち状に連結されるように形成する外形形成工程と、
前記ウエハに電極膜をパターニングして、前記複数の圧電板に対して前記一対の励振電極及び前記一対のマウント電極をそれぞれ形成すると共に、前記フレーム部上に、前記連結部を通じて前記一対のマウント電極に対してそれぞれ電気的に接続されるように一対の延出電極を複数形成する電極形成工程と、
前記一対の延出電極間に前記駆動電圧を印加して、前記圧電板を振動させながら圧電板の周波数を調整する周波数調整工程と、
前記連結部を切断して、複数の圧電板を小片化する切断工程と、
を備えることを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動片の製造方法において、
前記電極形成工程の際、前記一対の延出電極を、前記幅方向に沿って前記間隔を空けて並列に並んだ状態で形成すると共に、該幅方向に沿った全体の長さが同方向に沿った前記一対のマウント電極の全体の長さよりも長くなるように形成すること、
を特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧電振動片の製造方法において、
前記電極形成工程の際、複数の一方の延出電極をそれぞれ電気的に接続して共通延出電極を形成すること、
を特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電振動片の製造方法において、
前記周波数調整工程の際、前記共通延出電極と複数の他方の延出電極との間に前記駆動電圧を印加して、前記圧電板を複数同時に振動させながら圧電板の周波数を調整すること、
を特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項5】
連結部を介してウエハに片持ち状に連結された状態から、連結部が切断されることで製造された圧電振動片であって、
基端側が前記連結部に連結されていた圧電板と、
該圧電板の外表面上に形成され、所定の駆動電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、
前記圧電板の基端側に、圧電板の幅方向に沿って所定の間隔を空けて並列に並んだ状態で形成され、前記一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続された一対のマウント電極と、を備え、
前記一対のマウント電極は、それぞれが前記圧電板の基端側の縁端に接するように形成され、前記切断前の時点で前記連結部まで延出していたこと、
を特徴とする圧電振動片。
【請求項6】
圧電板と、該圧電板の外表面上に形成され、所定の駆動電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、圧電板の基端側に、圧電板の幅方向に沿って所定の間隔を空けて並列に並んだ状態で形成され、一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続された一対のマウント電極と、を有する圧電振動片が、複数連結されたウエハであって、
前記圧電板が、基端側を向けた状態で、連結部を介して片持ち状に連結されたフレーム部と、
前記フレーム部上に、前記連結部を通じて前記一対のマウント電極に対してそれぞれ電気的に接続されるように形成された複数の一対の延出電極と、
を備えることを特徴とするウエハ。
【請求項7】
請求項6に記載のウエハにおいて、
前記一対の延出電極は、前記幅方向に沿って前記間隔を空けて並列に並んだ状態で形成すると共に、該幅方向に沿った全体の長さが同方向に沿った前記一対のマウント電極の全体の長さよりも長くなるように形成されていること、
を特徴とするウエハ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のウエハにおいて、
複数の一方の延出電極をそれぞれ電気的に接続して形成された共通延出電極を備えること、
を特徴とするウエハ。
【請求項9】
請求項5に記載の圧電振動片を有することを特徴とする圧電振動子。
【請求項10】
請求項9に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項11】
請求項9に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項12】
請求項9に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−194630(P2009−194630A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33069(P2008−33069)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】