説明

圧電振動片の製造方法、圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器、電波時計、ウエハ及びウエハ用治具

【課題】 ウエハの外形精度に関係なく、高品質な圧電振動片を効率良く製造すること。
【解決手段】 ウエハSを利用して圧電振動片を一度に複数製造する方法であって、ウエハをフォトリソ技術によってエッチングして、貫通孔40を2つ以上形成すると共に、これら貫通孔の中心を基準点Gとして複数の圧電板10の外形形状を貫通孔と同時に形成する工程と、平板部上から貫通孔と同じ数だけ突出するように形成された挿入ピンを有するウエハ用治具を用意した後、貫通孔内に挿入ピンを挿入させた状態でウエハを平板部上に載置する工程と、複数の圧電板の外表面上に電極を形成する工程と、複数の圧電板をウエハから切り離して小片化する工程と、を備え、電極形成工程及び切断工程の際、貫通孔の中心を基準点としてウエハに対する位置合わせ行う圧電振動片の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶やタンタル酸リチウム等の圧電材料からなる圧電振動片を製造する製造方法、該製造方法で製造された圧電振動片、該圧電振動片を有する圧電振動子、該圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
また、圧電振動片を製造する際に用いられるウエハ及び該ウエハを保持するウエハ用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られており、例えば音叉型の圧電振動片を有するものや、厚み滑り振動する圧電振動片を有するもの等が知られている。
ところで、この圧電振動片は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の各種の圧電材料からなるウエハ(半導体ウエハ)から形成されている。具体的には、ウエハを所定の厚みまで研磨加工した後、フォトリソグラフィ技術によりエッチング加工して圧電振動片の外形を複数形成すると共に、外形形成したこれら複数の圧電振動片に対してそれぞれ所定の金属膜をパターニングして電極を形成する。これにより、1枚のウエハから一度に複数の圧電振動片を作製することができる。
【0003】
ところで、圧電振動片を作製する際、上述したように最初に外形を形成した後に、金属膜のパターニング等を行っているのが一般的である(特許文献1参照)。この際、高品質な圧電振動片を作製するためには、外形形成した複数の圧電振動片の外表面に対してそれぞれ正確に金属膜等をパターニングする必要がある。そのため、ウエハをマスク等に対して正確に位置決めすることが求められている。この点、従来では、ウエハの加工を行うにあたって、ウエハの外形を基準としているのが現状である。
【特許文献1】特開2006−148758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、まだ以下の課題が残されている。
始めに、ウエハを加工して圧電振動片を作製するためには、各種のパターンが形成されたマスクを工程に応じて使い分けると共に、その都度マスクをウエハに対して正確に位置決めする必要がある。例えば、圧電振動片を振動させるための電極をパターニングする場合や、圧電振動片の周波数調整を行うための重り金属膜28をパターニングする場合や、最後にウエハから各圧電振動片を切断する場合等である。
【0005】
ところが、従来ではウエハに対してマスクを位置決めする際、上述したようにウエハの外形を基準にセットしている。そのため、ウエハの外形精度によって、圧電振動片の品質が左右されてしまうものであった。
つまり、圧電振動片の外形をウエハに複数形成した後、各電極や重り金属膜28等を正確にパターニングする必要があるが、ウエハの外形形状は全て均一なものではなくウエハによって若干の差がどうしても生じてしまう。そのため、圧電振動片の外形形成が終了したウエハにマスクを位置合わせする際に、マスクのパターンが各圧電振動片に対して一致せず、若干のずれが生じてしまうことが多々あった。
【0006】
よって、このずれを考慮してマスクの位置合わせを行う必要があるので、位置合わせに手間取ってしまい効率の良い作業を行うことができなかった。また、ずれを考慮したとしても、やはり高精度な位置合わせが難しく、高品質な圧電振動片を作製することが困難であった。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その主目的は、ウエハの外形精度に関係なく、高品質な圧電振動片を効率良く製造することができる圧電振動片の製造方法、該製造方法で製造された圧電振動片を提供することである。
また、別の目的としては、上記圧電振動片を有する圧電振動子、該圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計を提供することである。
更には、上記圧電振動片を製造するために用いられるウエハ及び該ウエハを保持するためのウエハ用治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る圧電振動片の製造方法は、圧電材料からなる圧電板と、該圧電板の外表面上に形成され、所定の電圧が印加されたときに圧電板を振動させる電極と、を有する圧電振動片を、ウエハを利用して一度に複数製造する方法であって、前記ウエハをフォトリソ技術によってエッチングして、ウエハを貫通する貫通孔を2つ以上形成すると共に、これら貫通孔の中心を基準点としてウエハに複数の前記圧電板の外形形状を貫通孔と同時に形成する外形形成工程と、平板部と、該平板部上から前記貫通孔と同じ数だけ突出するように形成された挿入ピンとを有するウエハ用治具を用意した後、貫通孔内に挿入ピンを挿入させた状態で前記ウエハを平板部上に載置するウエハセット工程と、複数の前記圧電板の外表面上に電極膜をパターニングして、前記電極を形成する電極形成工程と、複数の前記圧電板を前記ウエハから切り離して小片化する切断工程と、を備え、前記電極形成工程及び前記切断工程の際、前記貫通孔の中心を基準点として、前記ウエハに対する位置合わせ行うことを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る圧電振動片の製造方法においては、まず、水晶等の圧電材料からなるウエハをフォトリソ技術によりエッチングして、ウエハを貫通する貫通孔を少なくとも2つ以上形成すると共に、これら貫通孔の形成と同時に複数の圧電板の外形形状を形成する外形形成工程を行う。この際、貫通孔の中心を基準点として、圧電板の外形形状を形成する。これにより、外形が形成された全ての圧電板の位置を、基準点によって正確に特定することができる。
【0010】
続いて、貫通孔内に挿入ピンを挿入させながら、ウエハをウエハ用治具の平板部上に載置する。これにより、ウエハは、がたつくことなくウエハ用治具によって安定に保持される。しかも、貫通孔内に挿入ピンが挿入された状態となるので、挿入ピンの中心を基準点に置き換えることができ、基準点を把握し易くなる。
続いて、複数の圧電板の外表面上に電極膜をパターニングして電極を形成する電極形成工程を行う。そして、電極を形成した後、複数の圧電板をウエハから切り離して小片化する切断工程を行う。これにより、1枚のウエハから、圧電板の外表面上に該圧電板を振動させる電極が形成された圧電振動片を一度に複数製造することができる。
【0011】
特に、電極形成工程及び切断工程の際に、予めパターンが形成されたマスクを利用して露光や現像を適宜行う必要があるが、貫通孔の中心を基準点としてマスクの位置合わせを行うことができる。そのため、ウエハの外形を基準としていた従来の場合とは異なり、ウエハの外形精度に影響されることなく、マスクを複数の圧電板に対して高精度に位置合わせすることができる。しかも、貫通孔が2つ以上形成されているので、基準点を2つ以上確保することができ、ウエハの向きに影響されることなく位置合わせを行える。よって、ウエハの外形精度に起因して位置ずれが生じる恐れがない。従って、高品質な圧電振動片を製造することができる。
しかも、ウエハ用治具によってウエハは安定に保持されていると共に、挿入ピンによって基準点を確実に把握できるので、位置合わせ作業を容易に行うことができる。従って、製造効率を従来に比べて遥かに高めることができ、圧電振動片の低コスト化に繋げることができる。
【0012】
また、本発明に係る圧電振動片の製造方法は、上記本発明の圧電振動片の製造方法において、前記外形形成工程の際、前記ウエハを平面視したときに、角部がR状になるように前記貫通孔を形成することを特徴とするものである。
【0013】
この発明に係る圧電振動片の製造方法においては、ウエハを平面視したときに、直線と直線とが交わる角部がR状(滑らかな曲線)となるように貫通孔を形成する。これにより、製造途中で貫通孔を介してウエハに外力が作用したとしても、外力が角部に集中することを防止することができる。よって、角部を起点にしてウエハに割れが入り難い。従って、ウエハに欠けやクラックが生じてしまうことを防止することができる。その結果、歩留まりを良くして製造効率をさらに高めることができる。
【0014】
また、本発明に係る圧電振動片の製造方法は、上記本発明の圧電振動片の製造方法において、前記外形形成工程の際、前記ウエハを平面視したときに、円形状となるように前記貫通孔を形成することを特徴とするものである。
【0015】
この発明に係る圧電振動片の製造方法においては、ウエハを平面視したときに、円形状となるように貫通孔を形成する。これにより、製造途中で貫通孔に外力が作用したとしても、外力が一点に集中することを防止することができる。よって、ウエハに割れが入り難い。従って、ウエハに欠けやクラックが生じてしまうことを防止することができる。その結果、歩留まりを良くして製造効率をさらに高めることができる。
【0016】
また、本発明に係る圧電振動片は、上記本発明の圧電振動片の製造方法により製造されたことを特徴とするものである。
【0017】
この発明に係る圧電振動片においては、上述した製造方法により製造されているので、高品質化及び低コスト化を図ることができる。
【0018】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動片を有することを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係る圧電振動子においては、上述した圧電振動片を有しているので、圧電振動子自体の高品質化及び低コスト化を図ることができる。
【0020】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
【0021】
この発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を有しているので、同様に高品質化及び低コスト化を図ることができる。
【0022】
また、本発明に係るウエハは、圧電材料からなる圧電板と、該圧電板の外表面上に形成され、所定の電圧が印加されたときに圧電板を振動させる電極と、を有する圧電振動片を製造する際に用いられるウエハであって、フォトリソ技術によってエッチングされ、前記ウエハを貫通する2つ以上の貫通孔と、これら貫通孔の中心を基準点として前記エッチングにより貫通孔と同時に外形形状が形成された複数の前記圧電板と、を備え、前記貫通孔の中心が、前記圧電振動片が製造されるまでの間の基準点として利用されることを特徴とするものである。
【0023】
本発明に係るウエハを利用して圧電振動片を製造する場合には、外形形状が形成されている複数の圧電板の外表面上に電極膜をパターニングして電極を形成した後、これら複数の圧電板をウエハから切り離して小片化する。これにより、1枚のウエハから、圧電板の外表面上に該圧電板を振動させる電極が形成された圧電振動片を一度に複数製造することができる。
【0024】
ところで、このウエハは、該ウエハを貫通する2つ以上の貫通孔と、これら貫通孔と同時に外形形状が形成された複数の圧電板とを備えている。しかも、複数の圧電板は、貫通孔の中心を基準点として形成されている。これにより、外形が形成された圧電板は、全て基準点によって位置が正確に特定された状態となっている
【0025】
また、上述した電極の形成時や圧電板の切断時に予めパターンが形成されたマスクを利用して露光や現像を適宜行う必要があるが、貫通孔の中心を基準点としてこのマスクの位置合わせを行うことができる。そのため、ウエハの外形を基準としていた従来の場合とは異なり、ウエハの外形精度に影響されることなく、マスクを複数の圧電板に対して高精度に位置合わせすることができる。しかも、貫通孔が2つ以上形成されているので、基準点を2つ以上確保することができ、ウエハの向きに影響されることなく位置合わせを行える。よって、ウエハの外形精度に起因して位置ずれが生じる恐れがない。従って、高品質な圧電振動片を製造することができる。
また、貫通孔を利用して位置合わせ作業を容易に行うことができるので、製造効率を従来に比べて遥かに高めることができ、圧電振動片の低コスト化に繋げることができる。
【0026】
また、本発明に係るウエハは、上記本発明のウエハにおいて、前記貫通孔が、前記ウエハを平面視したときに角部がR状になるように形成されていることを特徴とするものである。
【0027】
この発明に係るウエハにおいては、該ウエハを平面視したときに、直線と直線とが交わる角部がR状(滑らかな曲線)となるように貫通孔が形成されている。これにより、製造途中で貫通孔を介してウエハに外力が作用したとしても、外力が角部に集中することを防止することができる。よって、角部を起点にしてウエハに割れが入り難い。従って、ウエハに欠けやクラックが生じてしまうことを防止することができる。その結果、歩留まりを良くして製造効率をさらに高めることができる。
【0028】
また、本発明に係るウエハは、上記本発明のウエハにおいて、前記貫通孔が、前記ウエハを平面視したときに円形状となるように形成されていることを特徴とするものである。
【0029】
この発明に係る圧電振動片の製造方法においては、ウエハを平面視したときに、円形状となるように貫通孔が形成されている。これにより、製造途中で貫通孔を介してウエハに外力が作用したとしても、外力が一点に集中することを防止することができる。よって、ウエハに割れが入り難い。従って、ウエハに欠けやクラックが生じてしまうことを防止することができる。その結果、歩留まりを良くして製造効率をさらに高めることができる。
【0030】
また、本発明に係るウエハ用治具は、上記本発明のウエハを保持するウエハ用治具であって、前記ウエハを上面に載置する平板部と、前記貫通孔内に挿入可能なサイズとされ、前記平板部上から前記貫通孔と同じ数だけ突出するように形成された挿入ピンと、を備えていることを特徴とするものである。
【0031】
この発明に係るウエハ用治具においては、平板部上から貫通孔と同じ数だけ突出するように形成された挿入ピンを有しているので、貫通孔内に挿入ピンを挿入させながら、ウエハを平板部上に載置することができる。これにより、がたつきを抑えながらウエハを安定に保持することができる。しかも、貫通孔内に挿入ピンが挿入された状態となるので、挿入ピンの中心を基準点に置き換えることができ、基準点を把握し易くすることができる。従って、位置合わせ作業をより容易に行うことができ、製造効率をさらに高めることができる。
【0032】
また、本発明に係るウエハ用治具は、上記本発明のウエハ用治具において、前記挿入ピンが、先端が先細りするように形成されていることを特徴とするものである。
【0033】
この発明に係るウエハ用治具においては、挿入ピンの先端が先細りしているので、挿入ピンを貫通孔内に挿入させる際に、ひっかかり等が生じ難い。よって、ウエハに傷等が付き難い。加えて、より円滑な作業を行うことができ、製造効率のさらなる向上化に繋げることができる。
【0034】
また、本発明に係るウエハ用治具は、上記本発明のウエハ用治具において、前記挿入ピンが、円柱状に形成されていることを特徴とするものである。
【0035】
この発明に係るウエハ用治具においては、挿入ピンが円柱状に形成されているので、外周面が滑らかな曲面となっている。そのため、挿入ピンを貫通孔内に挿入させる際に、貫通孔の内面が挿入ピンの外周面に接触したとしても、ウエハに傷等が付き難い。この点においても、ウエハに欠けやクラックが生じてしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る圧電振動片の製造方法によれば、ウエハの外形精度に関係なく、高品質な圧電振動片を効率良く製造することができる。
また、本発明に係る圧電振動片によれば、上記製造方法により製造されているので、高品質化を図ることができると共に低コスト化を図ることができる。
また、本発明に係る圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計によれば、上記圧電振動片を有しているので、同様に高品質化及び低コスト化を図ることができる。
【0037】
更に、本発明に係るウエハを利用することで、高品質な圧電振動片を効率良く製造することができる。また、本発明に係るウエハ用治具によれば、圧電振動片を製造する際に、がたつきを抑えながらウエハを安定に保持することができると共に、基準点を把握し易くすることができるので、圧電振動片の製造効率をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明に係る一実施形態を、図1から図9を参照して説明する。なお、本実施形態では、圧電振動子1として、シリンダパッケージタイプの圧電振動子を例に挙げて説明する。
本実施形態の圧電振動子1は、図1に示すように、圧電振動片2と、該圧電振動片2を内部に収納するケース3と、圧電振動片2をケース3内に密閉させる気密端子であるプラグ4と、を備えている。
【0039】
圧電振動片2は、図2及び図3に示すように、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。なお、この圧電振動片2は、後述するウエハSから作製されたものである。
この圧電振動片2は、平行に配置された一対の振動腕部11、12と、該一対の振動腕部11、12の基端側を一体的に固定する基部13とからなる圧電板10と、該圧電板10の外表面上に形成され、所定の電圧が印加されたときに圧電板10を振動させる電極20と、で構成されている。
【0040】
この電極20は、一対の振動腕部11、12の外表面上に形成されて一対の振動腕部11、12を振動させる第1の励振電極21と第2の励振電極22とからなる励振電極23と、引き出し電極24、25を介して第1の励振電極21及び第2の励振電極22にそれぞれ電気的に接続されたマウント電極26、27とで構成されている。
【0041】
一対の励振電極24、25は、一対の振動腕部11、12を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部11、12の外表面にそれぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、第1の励振電極21が、一方の振動腕部11の上下面上と、他方の振動腕部12の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極22が、一方の振動腕部11の両側面上と他方の振動腕部12の上下面上とに主に形成されている。
【0042】
なお、上述した励振電極23、マウント電極26、27及び引き出し電極24、25は、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の導電性膜(電極膜)の被膜により形成されたものである。
【0043】
また、一対の振動腕部11、12の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜28が被膜されている。なお、この重り金属膜28は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜28aと、微小に調整する際に使用される微調膜28bとに分かれている。これら粗調膜28a及び微調膜28bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部11、12の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0044】
ケース3は、図1に示すように、有底円筒状に形成されており、圧電振動片2を内部に収納した状態でプラグ4の後述するステム30の外周に対して圧入されて、嵌合固定されている。なお、このケース3の圧入は、真空雰囲気下で行われており、ケース3内の圧電振動片2を囲む空間が真空に保たれた状態となっている。
【0045】
プラグ4は、ケース3を密閉させるステム30と、該ステム30を貫通するように平行配置され、ステム30を間に挟んで一端側が圧電振動片2をマウント(機械的に接合及び電気的に接続)するインナーリード31aとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリード31bとされた2本のリード端子31と、ステム30の内側に充填されてステム30とリード端子31とを固定させる絶縁性の充填材32とを有している。
ステム30は、金属材料で環状に形成されたものである。また、充填材32の材料としては、例えば、ホウ珪酸ガラスである。また、リード端子31の表面及びステム30の外周には、それぞれ同材料の図示しないメッキが施されている。
【0046】
2本のリード端子31は、ケース3内に突出している部分がインナーリード31aとなり、ケース3外に突出している部分がアウターリード31bとなっている。そして、インナーリード31aとマウント電極26、27とが、導電性のバンプEを介してマウントされている。即ち、バンプEを介してインナーリード31aとマウント電極26、27とが機械的に接合されていると同時に、電気的に接続されている。その結果、圧電振動片2は、2本のリード端子31にマウントされた状態となっている。
【0047】
ここで、プラグ4を構成する主要部品の寸法及び材質の一例について述べる。
リード端子31の直径は例えば約0.12mmであり、リード端子31の母材の材質としては、コバール(FeNiCo合金)が慣用されている。また、リード端子31の外表面及びステム30の外周に被膜させるメッキの材質としては、下地金属膜としてはCuが用いられ、仕上金属膜としては、耐熱ハンダメッキ(錫と鉛の合金で、その重量比が1:9)や、銀(Ag)や錫銅合金(SnCu)や金錫合金(AuSn)等が用いられる。
また、ステム30の外周に被膜された金属膜(メッキ層)を介在させながらケース3の内周に真空中で冷間圧接させることにより、ケース3の内部を真空状態で気密封止できるようになっている。
【0048】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、2本のリード端子31のアウターリード31bに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、インナーリード31a、バンプE、マウント電極26、27及び引き出し電極24、25を介して、第1の励振電極21及び第2の励振電極22からなる励振電極23に電流を流すことができ、一対の振動腕部11、12を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部11、12の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0049】
次に、上述した圧電振動片2並びに圧電振動子1の製造方法について、図4及び図5に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
始めに、圧電材料からなるウエハSを利用して、圧電振動片2を一度に複数製造する工程を行う。この工程を行うにあたって、まず所定のポリッシングが終了し、所定の厚みに高精度に仕上げられた図6に示すウエハSを準備する(S10)。なお、本実施形態では、円板状のウエハSを使用する場合を例に挙げて説明する。次いで、このウエハSをフォトリソ技術によってエッチングして、ウエハSを貫通する貫通孔40を2つ以上形成すると共に、これら貫通孔40の中心を基準点GとしてウエハSに複数の圧電板10の外形形状を貫通孔40と同時に形成する外形形成工程を行う(S20)。
【0050】
これにより、図7に示すように、貫通孔40と、これら貫通孔40の中心を基準点Gとして外形形状が形成された複数の圧電板10とを有するウエハSを得ることができる。なお、本実施形態では、貫通孔40を4つ形成している場合を例に挙げて説明する。また、複数の圧電板10は、後に行う切断工程までの間、連結部41を介してウエハSに連結された状態となっている。
特に、圧電板10の外形形成と同時に貫通孔40を形成するので、全ての圧電板10の位置を基準点Gによって正確に特定することができる。
【0051】
次いで、ウエハSをウエハ用治具45の平板部46上に載置するウエハセット工程を行う(S30)。ここで、ウエハ用治具45について、簡単に説明する。
このウエハ用治具45は、図8に示すように、ウエハSを上面に載置する平板部46と、貫通孔40内に挿入可能な大きさとされ、平板部46上から該平板部46の上面に対して略直交する方向に突出した4つ(貫通孔40と同じ数)の挿入ピン47と、を備えている。よって、貫通孔40内に挿入ピン47を挿入させることで、ウエハSを平板部46上に載置することができるようになっている。
【0052】
上記挿入ピン47は、円柱状に形成されており、先端が先細りするようにテーパ状になっている。また、挿入ピン47は、ウエハSの厚みよりも長くなるように形成されている。また、平板部46には、ウエハSが載置されたときに該ウエハSの周囲を囲むように、スペーサ48を取り付けることができるようになっている。このスペーサ48は、ウエハSと略同じ厚みとされたものであり、該スペーサ48とウエハSとの間には段差が生じないようになっている。
【0053】
そして、このように構成されたウエハ用治具45を利用して上記ウエハセット工程を行う。つまり、4つの貫通孔40内に4つの挿入ピン47をそれぞれ挿入させながら、図9に示すように、ウエハSを平板部46上に載置する。これにより、ウエハSは、がたつくことなくウエハ用治具45によって安定に保持される。しかも、貫通孔40内に挿入ピン47が挿入された状態となるので、挿入ピン47の中心を基準点Gに置き換えることができ、基準点Gを把握し易くなる。
【0054】
次いで、複数の圧電板10の外表面上に図示しない電極膜を成膜すると共にパターニングを行って、励振電極23、引き出し電極24、25、マウント電極26、27からなる電極20を形成する電極形成工程を行う(S40)。この際、図9に示すように、予め所定のパターンが形成されたマスクMをウエハSに重ね、該マスクMを利用して露光や現像やエッチングを適宜行うことで、上記パターニングを行うことができる。
このとき、貫通孔40の中心を基準点Gとして、マスクMの位置合わせを行う。そのため、ウエハSの外形を基準としていた従来の場合とは異なり、ウエハSの外形精度に影響されることなく、マスクMを複数の圧電板10に対して高精度に位置合わせすることができる。しかも、貫通孔40が4つ形成されているので、基準点Gを4つ確保することができ、ウエハSの向きに影響されることなく位置合わせを行える。よって、ウエハSの外形精度に起因して位置ずれが生じる恐れがない。
従って、複数の圧電板10に対して高精度に電極20をパターニングすることができる。なお、ウエハSとスペーサ48との間には段差がないので、マスクMを安定してウエハS上に重ねることが可能である。
【0055】
また、電極20を形成した後、マスクMを取り替えて露光や現像やエッチングを適宜行って、重り金属膜28を形成する(S50)。この場合も同様に、マスクMとウエハSとの位置合わせを高精度に行えるので、複数の圧電板10に対して重り金属膜28を正確にパターニングすることができる。
【0056】
次いで、ウエハSと圧電板10とを連結していた連結部41を切断して、複数の圧電板10をウエハSから切り離して小片化する切断工程を行う(S60)。この場合も同様に、マスクMを取り替えて露光や現像やエッチングを適宜行って切断を実施する。このときもやはりマスクMとウエハSとの位置合わせを高精度に行えるので、連結部41を正確に切断することができる。
この切断工程を行うことで、1枚のウエハSから、圧電板10の外表面上に電極20、重り金属膜28が形成された圧電振動片2を一度に複数製造することができる。この時点で、圧電振動片2の製造工程が終了する。
【0057】
特に、圧電振動片2を製造するにあたって、上述したようにマスクMの位置合わせを従来とは異なり、ウエハSの外形精度に影響されずに高精度に行うことができる。従って、高品質な圧電振動片2を製造することができる。しかも、ウエハ用治具45によってウエハSは安定に保持されていると共に、挿入ピン47によって基準点Gを確実に把握できるので、位置合わせ作業を容易に行うことができる。従って、製造効率を従来に比べて遥かに高めることができ、圧電振動片2の低コスト化に繋げることができる。
【0058】
また、ウエハSに貫通孔40を形成する際に、該ウエハSを平面視したときに円形状となるように形成している。そのため、貫通孔40を形成する際、或いは、形成した後に貫通孔40に外力が作用したとしても、外力が一点に集中することを防止することができ、力を分散化させることができる。よって、ウエハSに割れが入り難い。従って、ウエハSに欠けやクラック等が生じてしまうことを防止することができる。その結果、歩留まりを良くして製造効率をさらに高めることができる。
しかも、本実施形態の挿入ピン47は円柱状に形成されているので、外周面が滑らかな曲面となっている。そのため、挿入ピン47を貫通孔40内に挿入させる際に、貫通孔40の内面が挿入ピン47の外周面に接触したとしても、ウエハSに傷等が付き難い。この点においても、ウエハSに欠けやクラック等が生じてしまうことを防止することができる。
【0059】
加えて、本実施形態の挿入ピン47は、先端がテーパ状に形成されており、先細りした形となっている。よって、挿入ピン47を貫通孔40内に挿入させる際に、ひっかかり等が生じ難い。この点においても、ウエハSに傷等を付け難くすることができる。更に、ウエハセット工程をより円滑に行うことができるので、製造効率のさらなる向上化に繋げることができる。
【0060】
次に、圧電振動子1の製造工程を行う。なお、圧電振動片2をリード端子31にマウントする前に、共振周波数の粗調を行っておく(S70)。これは、重り金属膜28の粗調膜28aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては後に行う。これについては、後に説明する。
【0061】
圧電振動子1を製造するにあたって、まずプラグ4を作製する気密端子作製工程を行う(S80)。具体的には、まず、ステム作製工程によりステム30を作製する(S81)。即ち、鉄ニッケルコバルト合金や鉄ニッケル合金等の導電性を有する板部材をランス加工した後、複数回の深絞り加工を行って有底の筒部材を形成する。そして、筒部材の底面に開口を形成すると共に、外形抜きを行って筒部材を板部材から切り離すことで、ステム30を作製する。
次いで、ステム30内に、リード端子31及び充填材32をそれぞれセットするセット工程を行う(S82)。まず、作製したステム30を、図示しない専用の治具にセットした後、予めリング状に焼結された充填材32をステム30の内部にセットすると共に、充填材32を貫通するようにリード端子31をセットする。
【0062】
上記セット工程により、ステム30とリード端子31と充填材32とを組み合わせた後、治具を加熱炉内に入れて1000℃前後の温度雰囲気で充填材32の焼成を行う(S83)。これにより、充填材32とリード端子31との間、充填材32とステム30との間が完全に封着されて、気密に耐えられる構造となる。そして、治具から取り出すことで、プラグ4を得ることができる。この時点で、気密端子作製工程が終了する。
【0063】
次に、リード端子31の外表面及びステム30の外周に同一材料の金属膜を湿式メッキ法で被膜させるメッキ工程を行う(S90)。そのための前処理として、リード端子31の外表面及びステム30の外周を洗浄すると共に、アルカリ溶液で脱脂した後、塩酸及び硫酸の溶液にて酸洗浄を行う。この前処理が終了した後、リード端子31の外表面及びステム30の外周面に下地金属膜を形成する。例えば、Cuメッキ或いはNiメッキを略2μm〜5μmの膜厚で被膜させる。続いて、下地金属膜上に仕上金属膜を形成する。例えば錫や銀等の単一材料の他、耐熱メッキや、錫銅合金、錫ビス膜合金、錫アンチモン合金等を、略8μm〜15μmの膜厚で被膜させる。
このように、下地金属膜及び仕上金属膜からなる金属膜を被膜させることで、インナーリード31aと圧電振動片2との接続を可能にすることができる。また、圧電振動片2の接続だけでなく、ステム30の外周に被膜された金属膜が柔らかく弾性変形する特性を有しているので、ステム30とケース3との冷間圧接を可能にすることができ、気密接合を行うことができる。
【0064】
続いて、金属膜の安定化を図るため、真空雰囲気の炉中でアニーリングを行う(S100)。例えば、170℃の温度で1時間の加熱を行う。これにより、下地金属膜の材料と仕上金属膜の材料との界面に形成される金属間化合物の組成を調整して、ウイスカの発生を抑制することができる。このアニーリングが終了した時点でマウント工程を行うことができる。なお、金属膜を被膜する際に、湿式メッキ法で行った場合を例にしたが、この場合に限られず、例えば、蒸着法や化学気相法等で行っても構わない。
【0065】
なお、本実施形態では、アニーリングが終了した後、次に行うマウント工程のためにインナーリード31aの先端に、金等の導電性のバンプEを形成する(S110)。そして、圧電振動片2のマウント電極26、27をインナーリード31aに接合するマウント工程を行う(S120)。具体的には、バンプEを加熱しながら、該バンプEを間に挟んだ状態でインナーリード31aと圧電振動片2とを所定の圧力で重ね合わせる。これにより、バンプEを介してインナーリード31aとマウント電極26、27とを接続することができる。その結果、圧電振動片2をマウントすることができる。即ち、圧電振動片2は、リード端子31に機械的に支持されると共に、電気的に接続された状態となる。
なお、バンプ接続する際に、加熱・加圧を行ってマウントしたが、超音波を利用してバンプ接続を行っても構わない。
【0066】
次に、封止工程を行う前に、上述したマウントによる歪みをなくすために、所定の温度でベーキングを行う(S130)。続いて、圧電振動片2の周波数調整(微調)を行う(S140)。この周波数調整について、具体的に説明すると、全体を真空チャンバーに入れた状態で、アウターリード31b間に電圧を印加して圧電振動片2を振動させる。そして、周波数を計測しながら、レーザにより重り金属膜28の微調膜28bを蒸発させることで、周波数の調整を行う。なお、周波数計測を行うには、アウターリード31bに図示しないプローブの先端を押し付けることで、計測を正確に行うことができる。この周波数調整を行うことで、予め決められた周波数の範囲内に圧電振動片2の周波数を調整することができる。
【0067】
なお、上記微調及び先に行った粗調の際に、レーザの照射により重り金属膜28を蒸発させることで、周波数調整を行ったが、レーザではなくアルゴンイオンを利用しても構わない。この場合には、アルゴンイオンの照射によりスパッタリングを行い、重り金属膜28を除去することで周波数調整を行う。
【0068】
最後に、マウントされた圧電振動片2を内部に収納するようにケース3をステム30に圧入し、圧電振動片2を気密封止する封止工程を行う(S150)。具体的に説明すると、真空中で所定の荷重を加えながらケース3をプラグ4のステム30の外周に圧入する。すると、ステム30の外周に形成された金属膜が弾性変形するので、冷間圧接により気密封止することができる。これにより、ケース3内に圧電振動片2を密閉して真空封止することができる。
なお、この工程を行う前に、圧電振動片2、ケース3及びプラグ4を十分に加熱して、表面吸着水分等を脱離させておくことが好ましい。
【0069】
そして、ケース3の固定が終了した後、スクリーニングを行う(S160)。このスクリーニングは、周波数や共振抵抗値の安定化を図ると共に、ケース3を圧入した嵌合部に圧縮応力に起因する金属ウイスカが発生してしまうことを抑制するために行うものである。スクリーニング終了後、内部の電気特性検査を行う(S170)。即ち、圧電振動片2の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。この結果、図1に示す圧電振動子1を製造することができる。
【0070】
特に、本実施形態の圧電振動子1は、高品質で低コスト化された圧電振動片2を有しているので、に従来のものよりも高品質化及び低コスト化を図ることができる。
更に、本実施形態の圧電振動子1は、圧電振動片2をケース3内に密閉したシリンダパッケージタイプであるので、塵埃等の影響を受けることなく圧電振動片2を振動させることができる。よって、圧電振動片2を高精度に振動させることができ、高性能化を図ることができる。
【0071】
なお、上記実施形態では、音叉型の圧電振動片2を備えた圧電振動子1を例に挙げて説明したが、この圧電振動子1に限定されるものではない。
例えば、図10に示すように、厚み滑り振動片(圧電振動片)61を有する厚み滑り振動子(圧電振動子)60であっても構わない。厚み滑り振動片61は、ウエハSから一定の厚みで板状に形成された圧電板62と、励振電極63、引き出し電極64及びマウント電極65とからなる電極66と、を備えている。
圧電板62は、例えば、外形が矩形状に形成されており、両面の略中央部分に励振電極63が対向するように形成されている。圧電板62の端部には、引き出し電極64を介して励振電極63に電気的に接続されたマウント電極65が形成されている。なお、マウント電極65は、一方の励振電極63に接続されたものと、他方の励振電極63に接続されたものとが、圧電板62の両面にそれぞれ形成されている。この際、圧電板62の一方の面に形成されたマウント電極65は、他方の面に形成されたマウント電極65に対して、圧電板62の側面上に形成された側面電極67を介して電気的に接続されている。
【0072】
このように構成された厚み滑り振動子60であっても、厚み滑り振動片61を従来よりも高品質及び低コストで製造できるので、厚み滑り振動子60自体の高品質化及び低コスト化を図ることができる。
【0073】
また、シリンダパッケージタイプの圧電振動子1を、さらにモールド樹脂部71で固めて表面実装型振動子70としても構わない。
この表面実装型振動子70は、図11及び図12に示すように、圧電振動子1と、該圧電振動子1を所定の形状で固定するモールド樹脂部71と、一端側がアウターリード31bに電気的に接続されると共に、他端側がモールド樹脂部71の底面に露出して外部に電気的に接続される外部接続端子72と、を備えている。
この外部接続端子72は、銅等の金属材料で断面コ形に形成されている。このように圧電振動子1をモールド樹脂部71で固めることで、回路基板等に安定して取り付けることができるので、より使用し易く、使い易さが向上する。
【0074】
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図13を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図13に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0075】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片2が振動する。この振動は、圧電振動片2が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0076】
本実施形態の発振器100によれば、高品質化及び低コスト化された圧電振動子1を備えているので、発振器100自体も同様に作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができると共に、低コスト化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0077】
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図14を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0078】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図14に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0079】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0080】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片2が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0081】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0082】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0083】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0084】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0085】
本実施形態の携帯情報機器110によれば、高品質化及び低コスト化された圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器自体も同様に作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができると共に、低コスト化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0086】
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図15を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図15に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0087】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0088】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0089】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0090】
本実施形態の電波時計130によれば、高品質化及び低コスト化された圧電振動子1を備えているので、電波時計自体も同様に作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができると共に、低コスト化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0091】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0092】
例えば、上記実施形態では、ウエハSに4つの貫通孔40を形成した場合を例に挙げたが、4つに限定されるものではなく、2つ以上であれば構わない。
また、ウエハSを平面視したときに、貫通孔40を円形状に形成したが、この場合に限られず、四角形等の多角形状でも構わない。但し、直線と直線とが交わる角部がR状(滑らかな曲線)となるように貫通孔を形成することが好ましい。このようにすることで、角部を起点としてウエハSに割れが入り難い。従って、ウエハSに欠けやクラック等が生じてしまうことを防止することができる。なお、上記実施形態のように円形状に形成することがより好ましい。
【0093】
また、挿入ピン47の先端をテーパ状に形成することで先細り形状にしたが、図16に示すように、C面取りを行うことで先細り形状にしても構わない。また、上記実施形態では、挿入ピン47を円柱状としたが、この場合に限られず、図17及び図18に示すように、四角形や六角形等の多角形状に形成しても構わない。但し、外周面が滑らかな円柱状にすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係る圧電振動子の一実施形態を示す図であって上面側から見た全体図である。
【図2】図1に示す圧電振動子を構成する圧電振動片を上面から見た図である。
【図3】図1に示す圧電振動子を構成する圧電振動片を下面から見た図である。
【図4】図1に示す圧電振動子を製造する際の流れを示すフローチャートである。
【図5】図4に示すフローチャートの続きである。
【図6】図1に示す圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、ウエハの上面図である。
【図7】図1に示す圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、図6に示すウエハをエッチング加工して、4つの貫通孔を形成すると共に複数の圧電板の外形形状を形成した状態を示す図である。
【図8】図1に示す圧電振動子を製造する際に用いるウエハ用治具の断面図である。
【図9】図1に示す圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、図7に示すウエハを図8に示すウエハ用治具にセットした状態を示す図である。
【図10】本発明に係る圧電振動子の他の例を示す図であって、厚み滑り振動する圧電振動子の斜視図である。
【図11】本発明に係る圧電振動子を有する表面実装型振動子を示す断面図である。
【図12】図11に示す圧電振動子と外部接続端子との取り付け関係を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図14】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図15】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図16】本発明に係るウエハ用治具の挿入ピンの変形例を示す図であって、(a)は上面図、(b)は(a)の断面矢視A−A図である。
【図17】本発明に係るウエハ用治具の挿入ピンの変形例を示す図であって、(a)は上面図、(b)は(a)の断面矢視B−B図である。
【図18】本発明に係るウエハ用治具の挿入ピンの変形例を示す図であって、(a)は上面図、(b)は(a)の断面矢視C−C図である。
【符号の説明】
【0095】
G…基準点
S…ウエハ
1…圧電振動子
2…圧電振動片
10、62…圧電板
20、66…電極
40…ウエハの貫通孔
45…ウエハ用治具
47…ウエハ用治具の挿入ピン
46…ウエハ用治具の平板部
60…厚み滑り振動子(圧電振動子)
62…厚み滑り振動片(圧電振動片)
101…発振器の集積回路
100…発振器
113…電子機器の計時部
110…電子機器
130…電波時計
131…電波時計のフィルタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料からなる圧電板と、該圧電板の外表面上に形成され、所定の電圧が印加されたときに圧電板を振動させる電極と、を有する圧電振動片を、ウエハを利用して一度に複数製造する方法であって、
前記ウエハをフォトリソ技術によってエッチングして、ウエハを貫通する貫通孔を2つ以上形成すると共に、これら貫通孔の中心を基準点としてウエハに複数の前記圧電板の外形形状を貫通孔と同時に形成する外形形成工程と、
平板部と、該平板部上から前記貫通孔と同じ数だけ突出するように形成された挿入ピンとを有するウエハ用治具を用意した後、貫通孔内に挿入ピンを挿入させた状態で前記ウエハを平板部上に載置するウエハセット工程と、
複数の前記圧電板の外表面上に電極膜をパターニングして、前記電極を形成する電極形成工程と、
複数の前記圧電板を前記ウエハから切り離して小片化する切断工程と、を備え、
前記電極形成工程及び前記切断工程の際、前記貫通孔の中心を基準点として、前記ウエハに対する位置合わせ行うことを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載する圧電振動片の製造方法において、
前記外形形成工程の際、前記ウエハを平面視したときに、角部がR状になるように前記貫通孔を形成することを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載する圧電振動片の製造方法において、
前記外形形成工程の際、前記ウエハを平面視したときに、円形状となるように前記貫通孔を形成することを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電振動片の製造方法により製造されたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電振動片を有することを特徴とする圧電振動子。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項7】
請求項5に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項5に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項9】
圧電材料からなる圧電板と、該圧電板の外表面上に形成され、所定の電圧が印加されたときに圧電板を振動させる電極と、を有する圧電振動片を製造する際に用いられるウエハであって、
フォトリソ技術によってエッチングされ、前記ウエハを貫通する2つ以上の貫通孔と、
これら貫通孔の中心を基準点として前記エッチングにより貫通孔と同時に外形形状が形成された複数の前記圧電板と、を備え、
前記貫通孔の中心は、前記圧電振動片が製造されるまでの間の基準点として利用されることを特徴とするウエハ。
【請求項10】
請求項9に記載するウエハにおいて、
前記貫通孔は、前記ウエハを平面視したときに角部がR状になるように形成されていることを特徴とするウエハ。
【請求項11】
請求項9に記載するウエハにおいて、
前記貫通孔は、前記ウエハを平面視したときに円形状となるように形成されていることを特徴とするウエハ。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1項に記載されたウエハを保持するウエハ用治具であって、
前記ウエハを上面に載置する平板部と、
前記貫通孔内に挿入可能なサイズとされ、前記平板部上から前記貫通孔と同じ数だけ突出するように形成された挿入ピンと、を備えていることを特徴とするウエハ用治具。
【請求項13】
請求項12に記載されたウエハ用治具において、
前記挿入ピンは、先端が先細りするように形成されていることを特徴とするウエハ用治具。
【請求項14】
請求項12又は13に記載されたウエハ用治具において、
前記挿入ピンは、円柱状に形成されていることを特徴とするウエハ用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−194745(P2009−194745A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35049(P2008−35049)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】