説明

基板処理装置

【課題】各電極体への電力供給を安定化させ、プラズマ密度の均一性を基板間で向上できる基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板を処理する処理室201と、処理室201内で複数枚の基板200を水平姿勢で多段に積層した状態で保持する基板保持具217と、各基板200の表面から所定の距離にそれぞれ配置される電極体301a,bが多段に積層してなり、各電極体301a,bにそれぞれ電力が供給されることで隣接する基板200間にプラズマを発生させる電極体群と、各電極体301a,bにそれぞれ接続される導電性部材302a,bが基板200の積層方向に沿って多段に連結してなる電力供給機構と、処理室の壁面を貫通するように電力供給機構に接続され、電力供給機構を介して各電極体にそれぞれ電力を供給する電力導入部410a,bと、を備え、隣接する導電性部材302a,bは、基板の積層方向に沿って直線上に並ばないように連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを利用して基板の表面に例えばエッチング、成膜、表面改質等の処理を施す基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板面内におけるプラズマ処理の均一性を向上させるため、基板を処理する処理室と、処理室内で複数枚の基板を水平姿勢で多段に積層した状態で保持する基板保持具と、各基板の表面から所定の距離にそれぞれ配置される電極体が多段に積層してなる電極体群と、各電極体にそれぞれ接続される導電性部材が基板の積層方向に沿って多段に連結してなる電力供給機構と、を備えた基板処理装置が用いられるようになってきた。
【0003】
上記の電極体群を構成する各電極体は、第1電極体群または第2電極体群のいずれかに属しており、第1電極体群に属する各電極体と第2電極体群に属する各電極体とは交互に積層されていた。また、上記の電力供給機構は、第1電極体群に属する各電極体にそれぞれ接続される導電性部材が基板の積層方向に沿って直線上に多段に連結してなる第1電力供給機構と、第2電極体群に属する各電極体にそれぞれ接続される導電性部材が基板の積層方向に沿って直線上に多段に連結してなる第2電力供給機構と、から構成されていた。
【0004】
そして、第1電力供給機構と第2電力供給機構とに位相が例えば180°異なる交流電力(高周波電力)を供給することにより、基板を上下に挟む電極体間に交流電場を生成し、隣接する基板間にプラズマを発生させ、基板間に供給された反応ガスをかかるプラズマにより活性化させて基板を低温下で処理していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の基板処理装置においては、各電極体に供給される電力量が電極体内又は電極体間にて局所的に不安定となってしまう場合があった。その結果、プラズマ密度が基板面内又は基板毎に不均一となってしまい、基板面内又は基板間における基板処理の均一性が低下してしまう場合があった。
【0006】
そこで本発明は、各電極体への電力供給を安定化させ、プラズマ密度の均一性を基板面内又は基板間で向上させることが可能な基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、基板を処理する処理室と、前記処理室内で複数枚の基板を積層した状態で保持する基板保持具と、前記各基板の表面から所定の距離にそれぞれ配置される電極体が複数段に積層してなり、前記各電極体にそれぞれ電力が供給されることで前記基板間にプラズマを発生させる電極体群と、前記各電極体にそれぞれ接続される導電性部材が前記基板の積層方向に沿って複数段に連結してなる電力供給機構と、前記電力供給機構に接続され、前記電力供給機構を介して前記各電極体にそれぞれ電力を供給する電力導入部と、を備え、隣接する前記導電性部材は、前記基板の積層方向に沿って直線上に並ばないように連結されている基板処理装置が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、前記電極体群を構成する各電極体は第1電極体群または第2電極体群のいずれかに属し、前記第1電極体群に属する各電極体と前記第2電極体群に属する各電極体とは交互に積層されている第1の態様に記載の基板処理装置が提供される。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、前記電力供給機構は、前記第1電極体群に属する各電極体にそれぞれ接続される第1導電性部材が前記基板の積層方向に沿って多段に連結してなる第1電力供給機構と、前記第2電極体群に属する各電極体にそれぞれ接続される第2導電性部材が前記基板の積層方向に沿って多段に連結してなる第2電力供給機構と、を備え、前記電力導入部は、前記処理室の壁面を貫通するように前記第1電力供給機構に接続され、前記第1電力供給機構を介して前記第1電極体群に属する各電極体にそれぞれ電力を供給する第1電力導入部と、前記処理室の壁面を貫通するように前記第2電力供給機構に接続され、前記第2電力供給機構を介して前記第2電極体群に属する各電極体にそれぞれ電力を供給する第2電力導入部と、を備える第2の態様に記載の基板処理装置が提供される。
【0010】
本発明の第4の態様によれば、隣接する前記導電性部材は、前記基板の積層方向に沿って直線上に並ばないように、水平姿勢で配置された導電性平板を介してそれぞれ連結されており、前記各電極体は、前記導電性部材から前記電極体への電力供給効率が高まるように、前記導電性平板の主面全域に亘り密着している第1の態様に記載の基板処理装置が提供される。
【0011】
本発明の第5の態様によれば、前記電力導入部は、前記処理室の側壁を水平方向に貫通して水平方向に移動自在に設けられた送電部材と、前記電力供給機構に接続されると共に前記基板保持具と共に回転するリング状の受電部材と、を備える第1の態様に記載の基板処理装置が提供される。
【0012】
本発明の第6の態様によれば、前記処理室内に反応ガスを供給する反応ガス供給系と、前記基板保持具を回転させる回転機構と、前記電力導入部、前記反応ガス供給系、及び前記回転機構の各動作をそれぞれ制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記処理室内にプラズマを発生させる際に、前記反応ガス供給系による反応ガスの供給と前記回転機構による前記基板保持具の回転とをそれぞれ停止させると共に、前記送電部材を前記処理室内側へ移動させて前記受電部材に接続させ、前記処理室内に反応ガスを供給する際に、前記送電部材を前記処理室外側へ移動させて前記受電部材から切り離すと共に、前記反応ガス供給系による反応ガスの供給と前記回転機構による前記基板保持具の回転とをそれぞれ開始させる第5の態様に記載の基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る基板処理装置によれば、各電極体への電力供給を安定化させ、プラズマ密度の均一性を基板面内又は基板間で向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る基板処理装置が備える処理炉の縦断面図である。図2は本実施形態に係る基板処理装置の部分拡大図であり、(a)は電力導入部周辺の部分拡大図を、(b)はノズル導入部周辺の部分拡大図を、(c)は電力導入部やノズル導入部が設けられていない領域の部分拡大図をそれぞれ示している。図3は本実施形態に係る基板処理装置が備える電力供給機構の概略図であり、(a)は上面図を、(b)は側面図をそれぞれ示している。図4は本実施の形態に係る基板処理装置が備える処理炉の部分拡大図である。図5は本実施形態に係る基板処理装置が備える電力導入部の部分拡大図である。図6は本実施形態に係る基板処理装置の斜透視図である。図7は本実施形態に係る基板処理装置の側面透視図である。図8は、本実施形態に係る基板処理装置により実施される基板処理の一例を示すシーケンス図である。
【0016】
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施形態に係る基板処理装置100の構成について、図6、図7を参照しながら説明する。なお、本実施形態に係る基板処理装置100は、プラズマを利用して基板の表面を処理する縦型のバッチ式基板処理装置として構成されている。
【0017】
図6、図7に示すように、本実施形態に係る基板処理装置100は、耐圧容器として構成された筐体111を備えている。筐体111の正面壁111aの正面前方部(図7の左側)には、メンテナンス可能なように設けられた開口部としての正面メンテナンス口103が開設されている。正面メンテナンス口103には、正面メンテナンス口103を開閉する一対の正面メンテナンス扉104が設けられている。基板としてのウエハ200を筐体111内外へ搬送するには、ウエハ200を収納するポッド(基板収納容器)110がウエハキャリアとして使用される。
【0018】
筐体111の正面壁111aには、ポッド搬送口(基板収納容器搬送口)112が、筐体111内外を連通するように開設されている。ポッド搬送口112は、フロントシャッタ(基板収納容器搬送口開閉機構)113によって開閉されるように構成されている。ポッド搬送口112の正面前方側には、ロードポート(基板収納容器受渡し台)114が設置されている。ロードポート114上には、ポッド110が載置され位置合わせされるように構成されている。ポッド110は、工程内搬送装置(図示せず)によってロードポート114上に搬送されるように構成されている。
【0019】
筐体111内の前後方向の略中央部における上部には、回転式ポッド棚(基板収納容器載置棚)105が設置されている。回転式ポッド棚105上には複数個のポッド110が保管されるように構成されている。回転式ポッド棚105は、垂直に立設されて水平面内で間欠回転される支柱116と、支柱116に上中下段の各位置において放射状に支持された複数枚の棚板(基板収納容器載置台)117と、を備えている。複数枚の棚板117は、ポッド110を複数個それぞれ載置した状態で保持するように構成されている。
【0020】
筐体111内におけるロードポート114と回転式ポッド棚105との間には、ポッド搬送装置(基板収納容器搬送装置)118が設置されている。ポッド搬送装置118は、ポッド110を保持したまま昇降可能なポッドエレベータ(基板収納容器昇降機構)118aと、搬送機構としてのポッド搬送機構(基板収納容器搬送機構)118bと、で構成されている。ポッド搬送装置118は、ポッドエレベータ118aとポッド搬送機構118bとの連続動作により、ロードポート114、回転式ポッド棚105、ポッドオープナ(基板収納容器蓋体開閉機構)121との間で、ポッド110を相互に搬送するように構成されている。
【0021】
筐体111内の下部には、サブ筐体119が、筐体111内の前後方向の略中央部から後端に亘り設けられている。サブ筐体119の正面壁119aには、ウエハ200をサブ筐体119内外に搬送する一対のウエハ搬送口(基板搬送口)120が、垂直方向に上下2段に並べられて設けられている。上下段のウエハ搬送口120には、ポッドオープナ121がそれぞれ設置されている。
【0022】
各ポッドオープナ121は、ポッド110を載置する一対の載置台122と、ポッド110のキャップ(蓋体)を着脱するキャップ着脱機構(蓋体着脱機構)123と、を備えている。ポッドオープナ121は、載置台122上に載置されたポッド110のキャップをキャップ着脱機構123によって着脱することにより、ポッド110のウエハ出し入れ口を開閉するように構成されている。
【0023】
サブ筐体119内には、ポッド搬送装置118や回転式ポッド棚105等が設置された空間から流体的に隔絶された移載室124が構成されている。移載室124の前側領域にはウエハ移載機構(基板移載機構)125が設置されている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bと、で構成されている。図6に示すように、ウエハ移載装置エレベータ125bは、サブ筐体119の移載室124前方領域右端部と筐体111右側端部との間に設置されている。ウエハ移載装置125aは、ウエハ200の載置部としてのツイーザ(基板保持体)125cを備えている。これらウエハ移載装置エレベータ125b及びウエハ移載装置125aの連続動作により、ウエハ200を基板保持具としてのボート217に対して装填(ウエハチャージ)及び脱装(ウエハディスチャージ)することが可能なように構成されている。なお、ボート217の構成については後述する。
【0024】
移載室124の後側領域には、ボート217を収容して待機させる待機部126が構成されている。待機部126の上方には、基板処理系としての処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部は、炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。
【0025】
図6に示すように、サブ筐体119の待機部126右端部と筐体111右側端部との間には、ボート217を昇降させるためのボートエレベータ(基板保持具昇降機構)115が設置されている。ボートエレベータ115の昇降台には、連結具としてのアーム128が連結されている。アーム128には、後述するシールキャップ219が水平に据え付けられている。シールキャップ219は、ボート217を垂直に支持し、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0026】
図6に示すように、移載室124のウエハ移載装置エレベータ125b側及びボートエレベータ115側と反対側である左側端部には、清浄化した雰囲気もしくは不活性ガスであるクリーンエア133を供給する供給ファン及び防塵フィルタで構成されたクリーンユニット134が設置されている。ウエハ移載装置125aとクリーンユニット134との間には、ウエハの円周方向の位置を整合させる基板整合装置としてのノッチ合わせ装置(図示せず)が設置されている。
【0027】
クリーンユニット134から吹き出されたクリーンエア133は、図示しないノッチ合わせ装置、ウエハ移載装置125a、待機部126にあるボート217の周囲を流通した後、図示しないダクトにより吸い込まれて筐体111の外部に排気されるか、もしくはクリーンユニット134の吸い込み側である一次側(供給側)にまで循環されてクリーンユニット134によって移載室124内に再び吹き出されるように構成されている。
【0028】
(2)基板処理装置の動作
次に、本実施形態に係る基板処理装置100の動作について、図6,図7を参照しながら説明する。
【0029】
図6,図7に示すように、ポッド110がロードポート114に供給されると、ポッド搬送口112がフロントシャッタ113によって開放される。そして、ロードポート114の上のポッド110が、ポッド搬送装置118によってポッド搬送口112から筐体111内部へと搬入される。
【0030】
筐体111内部へと搬入されたポッド110は、ポッド搬送装置118によって回転式ポッド棚105の棚板117上へ自動的に搬送されて一時的に保管された後、棚板117上から一方のポッドオープナ121の載置台122上に移載される。なお、筐体111内
部へと搬入されたポッド110は、ポッド搬送装置118によって直接ポッドオープナ121の載置台122上に移載されてもよい。この際、ポッドオープナ121のウエハ搬送口120はキャップ着脱機構123によって閉じられており、移載室124内にはクリーンエア133が流通され、充満されている。例えば、移載室124内にクリーンエア133として窒素ガスが充満することにより、移載室124内の酸素濃度が例えば20ppm以下となり、大気雰囲気である筐体111内の酸素濃度よりも遥かに低くなるように設定されている。
【0031】
載置台122上に載置されたポッド110は、その開口側端面がサブ筐体119の正面壁119aにおけるウエハ搬送口120の開口縁辺部に押し付けられるとともに、そのキャップがキャップ着脱機構123によって取り外され、ウエハ出し入れ口が開放される。その後、ウエハ200は、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cによってウエハ出し入れ口を通じてポッド110内からピックアップされ、ノッチ合わせ装置にて方位が整合された後、移載室124の後方にある待機部126内へ搬入され、ボート217内に装填(ウエハチャージ)される。ボート217内にウエハ200を装填したウエハ移載装置125aは、ポッド110に戻り、次のウエハ200をボート217内に装填する。
【0032】
この一方(上段または下段)のポッドオープナ121におけるウエハ移載機構125によるウエハのボート217への装填作業中に、他方(下段または上段)のポッドオープナ121の載置台122上には、別のポッド110が回転式ポッド棚105上からポッド搬送装置118によって搬送されて移載され、ポッドオープナ121によるポッド110の開放作業が同時進行される。
【0033】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217内に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が、炉口シャッタ147によって開放される。続いて、ウエハ200群を保持したボート217は、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより処理炉202内へ搬入(ローディング)されていく。
【0034】
ローディング後は、処理炉202内にてウエハ200に任意の処理が実施される。処理後は、ノッチ合わせ装置135でのウエハの整合工程を除き、上述の手順とほぼ逆の手順で、処理後のウエハ200を格納したボート217が処理室201内より搬出され、処理後のウエハ200を格納したポッド110が筐体111外へと搬出される。
【0035】
(3)処理炉の構成
続いて、本実施形態に係る処理炉202の構成について、図1〜図5を用いて説明する。
【0036】
(反応管)
図1及び図4に示すように、処理炉202は、反応管としてのプロセスチューブ203を備えている。プロセスチューブ203は、例えば石英(SiO)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。プロセスチューブ203の下方には、インレットアダプタとしてのマニホールド209が設けられている。マニホールド209は、例えばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。なお、マニホールド209の上端開口部は、プロセスチューブ固定リング203aによりプロセスチューブ203の下端開口に固定されている。プロセスチューブ203下端とマニホールド209上端との間には、シール部材としてのOリング203bが設けられている。主に、プロセスチューブ203及びマニホールド209により反応管が構成される。反応管内には、基板としてのウエハ200を処理する処理室201が形成されている。なお、マニホールド209の下端開口は処理室201の
炉口を形成している。
【0037】
(シールキャップ)
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口(炉口)を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219は、シール部材としてのOリング219aを介してマニホールド209の下端開口に垂直方向下側から当接されるようになっている。
【0038】
シールキャップ219の中心部付近であって処理室201側の反対側(下方側)には、回転軸255を備えた回転機構267が設けられている。回転軸255は、シールキャップ219を垂直方向に貫通し、キャップ受け220及び断熱板ホルダ218を介して、後述する基板保持具としてのボート217を下方から支持するように構成されている。キャップ受け220は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる円盤として構成されている。断熱板ホルダ218は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる円板形状の断熱板218aを水平姿勢で多段に保持し、ボート217からの熱をマニホールド209側へ伝えにくくするように構成されている。断熱板ホルダ218も、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料から構成される。
【0039】
上述のボートエレベータ115を作動させることにより、ボート217を処理室201内外に搬送することが可能であると共に、回転機構267を作動させることにより処理室201内にてボート217を回転させることが可能なように構成されている。回転機構267及びボートエレベータ115には、制御部280が電気的に接続されている。制御部280は、回転機構267及びボートエレベータ115が所望のタイミングにて所望の動作をするように制御するように構成されている。
【0040】
(ボート及び電極体群)
本実施形態に係るボート217は、複数枚(例えば50枚〜125枚)の電極体とウエハ200とを、交互に、かつ、それぞれ水平姿勢で多段に積層された状態で保持するように構成されている。
【0041】
ボート217は、上下で一対の端板217c及び端板217dと、これらの間に垂直に架設された複数本(例えば3本)の支柱217aと、を備えている。端板217c、端板217d、及び支柱217aは、それぞれ例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料から構成されている。各支柱217aには、複数の保持溝217bが、支柱217aの長手方向に沿って等間隔に配列するようにそれぞれ形成されている。各支柱217aは、保持溝217bが互いに対向するようにそれぞれ配置されている。なお、複数本の支柱217aは、ボート217へウエハ200を装填したり脱装したりする際に、ツイーザ125cと干渉しない位置にそれぞれ配置される。
【0042】
各電極体は、ウエハ200よりも大きな外径を有し、例えば高純度シリコン(Si)或いはボロン(B)がドープされたシリコンからなる厚さ2mm程度の円板としてそれぞれ構成されており、それぞれ第1電極体群または第2電極体群のいずれかに属している。以下、第1電極体群に属する電極体を第1電極体301aと呼び、第2電極体群に属する電極体を第2電極体301bと呼び、第1電極体301a及び第2電極体301bを総称して単に電極体と呼ぶことにする。なお、図3(a)に示すように、第1電極体301aには、第1電極体301aの外周から径方向に向けて部分的に突出した突出部350aが設けられている。また、第2電極体301bにも、第2電極体301bの外周から径方向に向けて部分的に突出した突出部350bが設けられている。突出部350a及び突出部350bには、後述する第1導電性部材302a及び第1導電性部材302bがそれぞれ取
り付けられる。
【0043】
図1や図4に示すように、ボート217の支柱217aに設けられた各保持溝217b内に、第1電極体301aと第2電極体301bとが水平姿勢で交互に挿入される(すなわち、第1電極体301a、第2電極体301b、第1電極体301a、第2電極体301b・・・のように交互に挿入される)ことにより、水平姿勢で載置された複数枚の電極体が多段に積層してなる電極体群が構成される。なお、第1電極体301aが多段に積層されることにより第1電極体群が構成され、第2電極体301bが多段に積層されることにより第2電極体群が構成される。
【0044】
第1電極体301a及び第2電極体301bはそれぞれ異なる方向から挿入される。図1では、第1電極体301aがそれぞれ図中左側から挿入され、第2電極体301bがそれぞれ図中右側から挿入される例を示している。また、第1電極体群においては、各第1電極体301aに設けられた突出部350aの位置が所定の方向(例えば図中左側)に揃った状態となり、第2電極体群においては、各第2電極体301bに設けられた突出部350bの位置が所定の方向(例えば図中右側)に揃った状態となるように構成されている。なお、第1電極体301a及び第2電極体301bの各方位調整を容易にするため、第1電極体301a及び第2電極体301bの外周には、ボート217の支柱217aに適合するような切り欠け部(図示しない)や突起部等を設けて、第1電極体301a及び第2電極体301bを支柱217aにはめ込むようにしてもよい。
【0045】
各ウエハ200は、交互に積層された第1電極体301aと第2電極体301bとの間に水平姿勢でそれぞれ挿入されるように構成されている。具体的には、ボート217に保持される各ウエハ200は、各ウエハ200よりも下方側に保持されている電極体(第1電極体301aあるいは第2電極体301b)上に水平姿勢でそれぞれ載置されるように構成されている。なお、各ウエハ200は、各ウエハ200の下方側に保持されている電極体の表面に形成された座繰り加工穴200hの内部にそれぞれ載置される。なお、図示しないが、各電極体には、電極体上に載置されたウエハ200の移載(上下動作)を用意にする為の切り溝(図示せず)が設けられている。切り溝の下方からウエハ持ち上げ治具(図示しない)を挿入することにより、電極体上に載置されたウエハ200を持ち上げることが可能なように構成されている。
【0046】
以上にように構成された結果、ボート217には、複数枚の電極体とウエハ200とが、交互に、かつ、それぞれ水平姿勢で多段に積層された状態で保持されることとなる。また、各電極体が、ボート217に保持される各ウエハ200の表面から所定の距離にそれぞれ配置されることとなる。
【0047】
(電力供給機構)
図1や図4に示すように、各第1電極体301aの突出部350aには、例えば円柱や角柱のコマ(スペーサー、カラー)として構成された第1導電性部材302aがそれぞれ接続される。そして、第1導電性部材302aがウエハ200の積層方向に沿って多段に連結することにより、第1電力供給機構が構成される。なお、第1導電性部材302aは、例えば炭素(C)や炭化珪素(SiC)等の導電性材料から構成されている。
【0048】
具体的には、上下に隣接する第1導電性部材302aが、水平姿勢で配置された第1電極体301aの突出部350aを、上下方向の両側から挟み込むように多段に連結することにより、第1電力供給機構300aが構成されている。なお、上下に隣接する第1導電性部材302aは、第1電極体301aの突出部350aを挟み込む際に、第1電極体301aの突出部350aと共に、水平姿勢で配置された第1導電性平板500aを重ね合わせて挟み込むように構成されている。第1導電性平板500aは、例えば厚さ3mm程
度の短冊状の板片として構成されている。第1導電性平板500aも、例えば炭素(C)や炭化珪素(SiC)等の導電性材料から構成されている。なお、第1導電性平板500aの材料としてシリコン(Si)を用いることも可能であるが、部材の放電特性を考慮すると炭素を用いることが好ましい。但し、ウエハ200への炭素汚染を敬遠する場合には炭化珪素を用いることが好ましい。
【0049】
なお、上下に隣接する第1導電性部材302aは、ウエハ200の積層方向に沿って直線上に並ばないように連結されている。かかる様子を図3に示す。図3(a)は第1電力供給機構300aの概略図であり、(a)は上面図を、(b)は側面図をそれぞれ示している。
【0050】
図3(a)によれば、第1電極体301aの突出部350aには、周方向に沿って所定の間隔で一対の貫通孔355aが設けられている。また、第1導電性平板500aにも、所定の間隔で一対の螺子穴555aが設けられている。第1電極体301aの突出部350aと第1導電性平板500aとが重なり合ったときに、一方の貫通孔355aと一方の螺子孔555aとが上下方向に一致し、他方の貫通孔355aと他方の螺子穴555aとが上下方向に一致するように構成されている。
【0051】
図3(b)によれば、第1導電性部材302aには、上端に螺子穴(雌螺子)が形成されていると共に下端に雄螺子が形成されている。そして、導電体よりなる螺子305aが、第1電極体301aの突出部350aに設けられた一方の貫通孔355aを上方から貫通し、第1導電性平板500aの一方の螺子孔555aに締結されると共に、下側の第1導電性部材302aに設けられた螺子穴に締結されることにより、下側の第1導電性部材302a、第1電極体301a、及び第1導電性平板500aが連結されるように構成されている。また、第1導電性部材302aの下端に設けられた雄螺子が、第1電極体301aの突出部350aに設けられた他方の貫通孔355aを上方から貫通して、第1導電性平板500aの他方の螺子穴555aに締結されることにより、上側の第1導電性部材302a、第1電極体301a、及び第1導電性平板500aが連結されるように構成されている。なお、螺子305aは、例えば高純度炭素(C)により構成されている。
【0052】
このように構成された結果、上下に隣接する第1導電性部材302aは、ウエハ200の積層方向に沿って直線上に並ばないように連結されることとなる。すなわち、第1電力供給機構300aを構成する各第1導電性部材302aが、第1電極体301aの突出部350a及び第1導電性平板500aを介して多段に接続されることにより、第1電力供給機構300aはクランク状(ジグザグ状)に構成されることとなる。そして、第1導電性平板500aと第1電極体301aとが、第1導電性平板500aの主面全域に亘り密着することとなる。その結果、第1導電性部材302aから第1電極体301aへの電力供給が安定し、かつ電力供給効率が高まることとなる。なお、短冊状の第1導電性平板500aの面積は、広すぎると第1電極体301aへの電力供給効率が低下する場合もあるため、第1電極体301aに供給する電力量等に合わせて適宜調整することが好ましい。
【0053】
同様に、各第2電極体301bの突出部350bにも、第1導電性部材302aと同様に構成された第2導電性部材302bがそれぞれ接続されている。そして、上下に隣接する第2導電性部材302bが、ウエハ200の積層方向に沿って第2電極体301bの突出部350bと、第1導電性平板500aと同様に構成された第2導電性平板500bとを上下方向の両側から挟み込むように多段に連結することにより、第2電力供給機構300bが構成されている。このように構成された結果、上下に隣接する第2導電性部材302bは、ウエハ200の積層方向に沿って直線上に並ばないように連結されることとなる。すなわち、第2電力供給機構300bを構成する各第2導電性部材302bは、第2電極体301bの突出部350b及び第2導電性平板500bを介して多段に接続されるこ
とにより、第2電力供給機構300bはクランク状(ジグザグ状)に構成されることとなり、ウエハ200や電極体の周方向にずらして配置されている。そして、第2電極体301bの突出部350bと第2導電性平板500bとが、第2導電性平板500bの主面全域に亘り密着することとなる。その結果、第2導電性部材302bから第2電極体301bへの電力供給が安定し、かつ電力供給効率が高まることとなる。なお、短冊状の第2導電性平板500bの面積は、広すぎると第2電極体301bへの電力供給効率が低下する場合もあるため、第2電極体301bに供給する電力量に合わせて適宜調整することが好ましい。
【0054】
(電力導入部)
続いて、処理室201内に電力を供給する給電切換機構部について説明する。給電切換機構部は後述する電力導入部を備えている。
【0055】
図1に示すように、処理室201の側壁(マニホールド209の側壁)には電力導入部が設けられている。電力導入部は、処理室201の側壁を水平方向に貫通すると共に水平方向に移動自在に設けられた第1送電部材(カソード)410aと、第1電力供給機構300aに接続されると共にボート217と共に回転するリング状の第1受電部材(アノード)420aと、処理室の側壁を水平方向に貫通すると共に水平方向に移動自在に設けられた第2送電部材(カソード)410bと、第2電力供給機構300bに接続されると共にボート217と共に回転するリング状の第2受電部材(アノード)420bと、を備えている。
【0056】
図5に示すとおり、第1送電部材410aは、例えばハステロイ(登録商標)等のニッケル基の導電性・耐食合金からなる導電性材料のピンとして構成されている。図5に示すように、第1送電部材410aは、処理室201の側壁(マニホールド209の側壁)に設けられた貫通孔209aの中心を水平姿勢で貫通するように保持されている。第1送電部材410aの先端部は球状に加工されており、処理室201内側(第1受電部材420a側)を向いている。第1送電部材410aの後端部は処理室201外に突出しており、処理室201外側を向いている。第1送電部材410aの胴部(軸部)の外周は、絶縁性材料からなる絶縁カバー412aにより覆われている。絶縁カバー412aの外径は、マニホールド209の側壁に設けられた貫通孔209aの内径よりも小さく構成されており、絶縁カバー412aはマニホールド209の側壁に接触しないように構成されている。絶縁カバー412aの尾部には、絶縁性材料からなる絶縁プレート415aを介して、アーム状の移動プレート417aの一端部(下部側)が設けられている。移動プレート417aの他端部(上部側)には、エアシリンダ413aの作動軸が接続されている。作動弁418aを介してエアシリンダ413a内にガスを供給することにより、エアシリンダ413aの作動軸を水平方向に移動させ、第1送電部材410aを水平方向に移動させ得るように構成されている。なお、エアシリンダ413aは、シリンダ固定部材414aによりマニホールド209の側壁外側に固定されている。また、第1送電部材410aの外周を覆う絶縁カバー412aの胴部外周にはベローズ419aが設けられている。ベローズ419aの両端部はマニホールド209と絶縁プレート415aとにOリングを介してそれぞれ接続されており、第1送電部材410aがマニホールド209の側壁を貫通するように移動しても、処理室201内の気密が保持されるように構成されている。
【0057】
第1受電部材420aは、例えばハステロイ(登録商標)等のニッケル基の導電性・耐熱・耐食合金からなるリング状の部材として構成されている。第1受電部材420aは、キャップ受け220の外周を囲うように取り付けられている。なお、第1受電部材420aとキャップ受け220との間には、円盤状のキャップ受け220の外周を囲うように設けられた高純度アルミナ性の絶縁性部材からなる絶縁リング430cが設けられている。第1受電部材420aの高さ位置と第1送電部材410aの高さ位置とが一致するように
構成されている。また、図4に示すように、第1受電部材420aは、導電性材料からなる連結板321a及び連結棒322aを介して、第1電力供給機構300aの下端部(最下端の第1導電性部材302a或いは最下端の第1導電性平板500a)に接続されている。このように構成された結果、第1受電部材420aはボート217と共に回転するように構成されている。また、第1送電部材410aは、処理室201内側へ移動することにより第1受電部材420aと接続すると共に、処理室201外側へ移動することにより第1受電部材420aから切り離されるように構成されている。
【0058】
なお、第2送電部材410b及び第2受電部材420bの周辺の機構についても、第1送電部材410a及び第1受電部材420aと同様に構成されている。つまり、第2送電部材410bがマニホールド209の側壁を貫通するように移動しても、処理室201内の気密が保持されるように構成されている。また、第2受電部材420bはボート217と共に回転するように構成されている。また、第2送電部材410bは、処理室201内側へ移動することにより第2受電部材420bと接続すると共に、処理室201外側へ移動することにより第2受電部材420bから切り離されるように構成されている。なお、第2送電部材410b及び第2受電部材420bは、第1送電部材410a及び第1受電部材420aと接触することがないように、第1送電部材410a及び第1受電部材420aと異なる高さ位置に設けられている。本実施形態では、第2送電部材410b及び第2受電部材420bが、第1送電部材410a及び第1受電部材420aよりも高い位置に設けられている。
【0059】
(交流電源)
図1に示すように、第1送電部材410a及び第2送電部材410bの各後端部には、発振器(高周波発振器)450及び整合器451を備えた交流電源(高周波電源)の出力端子(二次側)がそれぞれ接続されている。なお、第1送電部材410aと第2送電部材410bとをマニホールド209の周方向に沿って互いに180°程度ずらした位置に設けることで、交流電源からの電力供給効率を高めることが可能となる。但し、処理室201内へのガス供給や基板処理装置のメンテナンスの利便性を考慮し、第1送電部材410aと第2送電部材410bとをマニホールド209の周方向に沿って互いに90°程度ずらした位置に設けてもよい。
【0060】
ボート217の回転を停止した状態で、第1送電部材410aを処理室201内側へ移動させて第1受電部材420aと接続させ、第2送電部材410bを処理室201内側へ移動させて第2受電部材420bと接続させ、第1電力供給機構300a及び第2電力供給機構300bを介して各第1電極体301a及び各第2電極体に位相が180°異なる交流電力をそれぞれ並列に供給し、ウエハ200を上下に挟む電極体間に交流電場を生成することにより、隣接するウエハ200間にプラズマを発生させることが可能となる。
【0061】
また、プラズマによるウエハ表面の処理が終了した後、第1送電部材410aを処理室201外側へ移動させて第1受電部材420aと切り離し、第2送電部材410bを処理室201外側へ移動させて第2受電部材420bと切り離し、ボート217の回転を開始させ、後述する反応ガス供給系により処理室201内に反応ガスを供給すると共に後述する排気系により処理室201内を排気することにより、ウエハ200間に供給された反応ガスをウエハ200の表面に吸着させる。
【0062】
図8に、本実施形態に係る基板処理装置により実施される基板処理の一例として、ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いたSiN膜の形成に関するシーケンス図を示す。図8に示すシーケンス図では、第1の反応ガスとしてDCS(ジクロロシラン/SiHCl)ガスを、第2の反応ガスとしてNH(アンモニア)ガスを用い、DCSとNHとを交互に流すサイクルを複数回繰り返すことにより、ウエ
ハ200上に所望の厚さのSiN膜(窒化膜)を形成している。例えば、1サイクルで成膜される膜厚が1Åであるとき、DCSガスとNHガスとを交互に流すサイクルを1000回繰り返すことにより(図中のnが1000に達したとき)、1000ÅのSiN膜を形成することが出来る。かかる処理の詳細については後述する。
【0063】
(放電抑制カバー)
図1や図5等に示すように、第1送電部材410a、第1受電部材420a、第2送電部材410b、及び第2受電部材420bの周辺には、これらの部材からの放電の発生を抑制するように、第1送電部材410a、第1受電部材420a、第2送電部材410b、及び第2受電部材420bの各周囲をそれぞれ囲う絶縁性部材が設けられている。
【0064】
具体的には、第1受電部材420aあるいは第2受電部材420bのうち上方側に設けられた受電部材(本実施形態では第2受電部材420b)と第1電力供給機構300a(第1導電性部材302a、連結板321a、連結棒322a)との間の放電、及び第2受電部材420bと第2電力供給機構300b(第2導電性部材302b、連結板321b、連結棒322b)との間の放電の発生をそれぞれ抑制するように、第2受電部材420bと第1電力供給機構300aとの間、及び第2受電部材420bと第2電力供給機構300bとの間をそれぞれ遮断する絶縁性部材としての絶縁カバー380aを備える。絶縁カバー380aは、例えば高純度アルミナや石英等の絶縁性材料から構成される。なお、絶縁カバー380aは例えば第2受電部材420bの上面に固定される。
【0065】
また、第1送電部材410aと第2受電部材420bとの間の放電、及び第2送電部材410bと第1受電部材420aとの間の放電の発生をそれぞれ抑制するように、第1送電部材410aと第2受電部材420bとの間及び第2送電部材410bと第1受電部材420aとの間をそれぞれ遮断する絶縁性部材としての絶縁カバー380bを備える。絶縁カバー380bは、例えば高純度アルミナや石英等の絶縁性材料から構成され、マニホールド209の内壁に沿って設けられる。なお、絶縁カバー380bの取り付けは、図2(b)に示すようなマニホールド209内壁に設けられたノズル固定用ツバ(ノズルサポート)209bや図2(c)に示すような絶縁カバー取り付け枠209c等を用いて行う。また、絶縁カバー380bには、第1送電部材410aや第2送電部材410bの水平動作を妨げないように、これらの送電部材と対応する位置に少なくとも2箇所の貫通孔が設けられている。
【0066】
また、第1受電部材420aあるいは前記第2受電部材420bのうち下方側に設けられた受電部材(本実施形態では第1受電部材420a)と処理室201下方を封止するシールキャップ219との間の放電、及び第1送電部材410aあるいは第2送電部材410bのうち下方側に設けられた送電部材(本実施形態では第1送電部材410a)とシールキャップ219との間の放電をそれぞれ抑制するように、第1受電部材420aとシールキャップ219との間及び第1送電部材410aとシールキャップ219との間をそれぞれ遮断する絶縁性部材としての絶縁カバー380cを備える。絶縁カバー380cは、例えば高純度アルミナや石英等の絶縁性材料から構成される。なお、絶縁カバー380cは例えばシールキャップ219の上面に固定される。
【0067】
なお、上述の絶縁リング430cは、第1受電部材420aと第2受電部材420bとの間の放電の発生を抑制するように、第1受電部材420aと第2受電部材420bとの間を遮断する絶縁性部材として機能する。
【0068】
(反応ガス供給系)
マニホールド209の側壁には、ガス導入部としてのノズル230が接続されている。ノズル230の下流側(処理室201内側)は、ウエハ200の積層方向に沿って処理室
201の内壁に配設されている。ノズル230には、長手方向に沿って複数個のガス噴出口が開設されている。各ガス噴出口は、隣接するウエハ200間に対応する高さ位置にそれぞれ設けられ、隣接するウエハ200間に反応ガスをそれぞれ噴出するように構成されている。ノズル230の上流側(処理室201外側)端には、図示しない反応ガス供給管が接続されている。反応ガス供給管の上流側(ノズル230との接続側と反対側)には、反応ガス供給源(図示せず)、MFC(マスフローコントローラ)(図示せず)、開閉バルブ(図示せず)が上流から順に設けられている。MFC及び開閉バルブには、制御部280が電気的に接続されている。制御部280は、処理室201内に供給するガスの流量が所望のタイミングにて所望の流量となるように、MFCの開度を制御するように構成されている。主に、ノズル230、反応ガス供給管、反応ガス供給源、MFC、開閉バルブにより反応ガス供給系が構成される。
【0069】
(排気系)
マニホールド209の側壁であってノズル230が設けられた側とは反対側には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が接続されている。排気管231の下流側(マニホールド209との接続側と反対側)には、圧力検出器としての圧力センサ(図示せず)、圧力調整装置として構成されたAPC(Auto Pressure Contoroller)バルブ(図示せず)、真空ポンプ(図示せず)が上流から順に設けられている。APCバルブや圧力センサには、制御部280が電気的に接続されている。制御部280は、圧力センサにより検出された圧力値に基づいて、処理室201内の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力となるように、APCバルブの開度を制御するように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ、圧力センサ、真空ポンプにより排気系が供給される。
【0070】
(ヒータ)
プロセスチューブ203の外側には、プロセスチューブ203の側壁面を囲うように、加熱機構としてのヒータ207が設けられている。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としての図示しないヒータベースに支持されることにより垂直姿勢で据え付けられている。また、プロセスチューブ203内には、温度センサ(図示せず)が設けられている。ヒータ207や温度センサには、制御部280が電気的に接続されている。制御部280は、温度センサにより検出された温度情報に基づいて、処理室201内の温度が所望のタイミングにて所望の温度分布となるように、ヒータ207への通電具合を調整するように構成されている。
【0071】
(制御部)
上述したように、電力導入部、反応ガス供給系、回転機構267、ボートエレベータ115、MFC、開閉バルブ、APCバルブ、圧力センサ、ヒータ207、温度センサには制御部280が接続されている。制御部280は、処理室201内にプラズマを発生させる際に、反応ガス供給系による反応ガスの供給と回転機構267によるボート217の回転とをそれぞれ停止させると共に、第1送電部材410a及び第2送電部材410bを処理室201内側へ移動させて第1受電部材420a及び第2受電部材420bにそれぞれ接続させるように構成されている。また、制御部280は、処理室201内に反応ガスを供給する際に、第1送電部材410a及び第2送電部材410bを処理室201外側へ移動させて第1受電部材420a及び第2受電部材420bからそれぞれ切り離すと共に、処理室201内を排気しつつ反応ガス供給系による反応ガスの供給と回転機構267によるボート217の回転とをそれぞれ開始させるように構成されている。
【0072】
(4)処理炉の動作
続いて、半導体デバイスの製造工程の一工程として、上記構成に係る処理炉202を用いてウエハ200を処理する基板処理方法について図8を参照しながら説明する。なお、
以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は制御部280により制御される。
【0073】
(基板搬入工程)
まず、複数枚のウエハ200をボート217に水平姿勢で装填(ウエハチャージ)する。そして、図1に示すように、複数枚のウエハ200を保持したボート217を、ボートエレベータ115によって上昇させて処理室201内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ219はOリングを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。なお、回転機構267によるボート217の回転は停止しておく。
【0074】
(減圧・昇温工程)
続いて、処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように、排気管231を介して処理室201内を排気する。この際、圧力センサが測定した圧力値に基づき、APCバルブの弁の開度をフィードバック制御する。また、温度センサ263が検出した温度値に基づき、処理室201内が所望の温度となるように、ヒータ207への通電量をフィードバック制御する。
【0075】
(第1の反応ガス供給工程)
続いて、図8に示すように、反応ガス供給系から処理室201内に第1の反応ガスとしてのDCSガスを供給すると共に、排気系による処理室201内の排気を継続することにより、ウエハ200間にDCSガスを供給し、DCSのガス分子をウエハ200の表面に吸着させる。この際、回転機構267によりボート217を回転させ、ウエハ200の表面全域にDCSのガス分子を均一に吸着させるようにする。所定の時間が経過したら、反応ガス供給系からのDCSガスの供給を停止すると共に、ボート217の回転を停止する。なお、反応ガス供給工程においては、交流電源からの第1送電部材410a及び第2送電部材410bへの送電を行わないようにする。
【0076】
(Nパージ工程)
続いて、反応ガス供給系から処理室201内に不活性ガス(パージガス)としてのNガスを供給すると共に、排気系による処理室201内の排気を継続することにより、処理室201内の雰囲気をNガスに置換する。所定時間経過したら、反応ガス供給系からのNガスの供給を停止する。
【0077】
(第2の反応ガス供給工程)
続いて、反応ガス供給系によるDCSガスの供給と回転機構267によるボート217の回転とをそれぞれ停止させた状態で、反応ガス供給系から処理室201内に第2の反応ガスとしてNHガスを供給する共に、排気系による処理室201内の排気を継続することにより、ウエハ200間にNHガスを供給し、処理室201内の圧力を一定に保持する。そして、第1送電部材410aを処理室201内側へ移動させて第1受電部材420aと接続させ、第2送電部材410bを処理室201内側へ移動させて第2受電部材420bと接続させる。さらに、交流電源から第1送電部材410a及び第2送電部材410bへの送電を開始し、第1電力供給機構300a及び第2電力供給機構300bを介して各第1電極体301a及び各第2電極体301bに互いに位相が180°異なる交流電力をそれぞれ供給し、ウエハ200を上下に挟む電極体間に交流電場を生成し、隣接するウエハ200間にNHガスのプラズマを発生させる。その結果、ウエハ200表面と、ウエハ200表面に吸着しているDCSのガス分子と、NHとが反応し、ウエハ200上に1〜数原子層のSiNの薄膜が形成される。所定時間経過したら、処理室201内へのNHガスの供給及び交流電源からの第1送電部材410a及び第2送電部材410bへの送電をそれぞれ停止し、第1送電部材410a及び第2送電部材410bを処理室201外側へそれぞれ移動させる。
【0078】
(Nパージ工程)
続いて、反応ガス供給系から処理室201内に不活性ガス(パージガス)としてのNガスを供給すると共に、排気系による処理室201内の排気を継続することにより、処理室201内の雰囲気をNガスに置換する。所定時間経過したら、反応ガス供給系からのNガスの供給を停止する。
【0079】
(繰り返し工程)
そして、第1の反応ガス供給工程→Nパージ工程→第2の反応ガス供給工程→Nパージ工程を1サイクルとしてこのサイクルを繰り返すことにより、ウエハ200上に所望の厚さのSiN膜(窒化膜)を形成する。例えば、1サイクルで成膜される膜厚が1Åであるとき、DCSガスとNHガスとを交互に流すサイクルを1000回繰り返すことにより(図中のnが1000に達したとき)、1000ÅのSiN膜を形成することが出来る。
【0080】
(大気圧復帰・基板搬出工程)
ウエハ200上に所望の厚さのSiN(窒化膜)を形成した後、反応ガス供給系から処理室201内にNガスを供給しつつ、APCバルブの開度を調整して処理室201内を大気圧に復帰させる。そして、処理後のウエハ200を保持したボート217を、ボートエレベータ115によって降下させ、処理室201外へと搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済のウエハ200を図示しないウエハ保持機構と搬送ロボットとの共働によりボート217より脱装(ウエハディスチャージ)してポッド110内へ格納し、基板処理工程を終了する。処理済のウエハ200を格納したポッド110は次の工程へ搬送される。
【0081】
(5)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0082】
(a)本実施形態によれば、上下に隣接する第1導電性部材302aは、ウエハ200の積層方向に沿って直線上に並ばないように連結されており、第1電極体301aの突出部350aと第1導電性平板500aとが、第1導電性平板500aの主面全域に亘り密着するように構成されている。また、上下に隣接する第2導電性部材302bは、ウエハ200の積層方向に沿って直線上に並ばないように連結されており、第2電極体301bの突出部350bと第2導電性平板500bとが、第2導電性平板500bの主面全域に亘り密着するように構成されている。その結果、第1導電性部材302aから第1電極体301aへの電力供給が安定し、電力供給効率が高まる。また、第2導電性部材302bから第2電極体301bへの電力供給が安定し、電力供給効率が高まる。そして、隣接するウエハ(基板)200内又はウエハ200間に発生させるプラズマ密度がそれぞれ増大すると共に、ウエハ200内又はウエハ200間に亘りプラズマ密度が均一化され、ウエハ200内又はウエハ200間に亘る基板処理の均一性が向上する。
【0083】
(b)本実施形態によれば、第1受電部材420a及び第2受電部材420bがそれぞれリング状に構成されている。そのため、ボート217の回転をどのようなタイミングで停止させたとしても、第1送電部材410aを処理室201内側へ移動させることのみで第1受電部材420aと接続させることが可能であり、第2送電部材410bを処理室201内側へ移動させることのみで第2受電部材420bと接続させることが可能となる。すなわち、上述の基板処理工程を実施した後に基板処理工程を再び行う際に、ボート217の停止位置を改めて調整することなく、第1電極体301aや第2電極体301bへ電力供給を再開させることが可能となる。
【0084】
(c)本実施形態によれば、上下に隣接する第1導電性部材302aは、ウエハ200の積層方向に沿って直線上に並ばないように連結されており、また、上下に隣接する第2導電性部材302bは、ウエハ200の積層方向に沿って直線上に並ばないように連結されている。その結果、電力供給機構の分割が容易となり、基板処理装置100のメンテナンス性が向上する。すなわち、多段に連結された複数の導電性部材や電極体のうち、例えば中段に位置する導電性部材や電極体を部分的に交換すること等が容易となり、基板処理装置100のメンテナンス性が向上する。
【0085】
(d)本実施形態によれば、第1送電部材410a、第1受電部材420a、第2送電部材410b、及び第2受電部材420bの各周囲をそれぞれ囲う絶縁性部材(絶縁リング430c、絶縁カバー380a、絶縁カバー380b、絶縁カバー380c)が設けられている。そのため、上述のプラズマ発生工程において、例えば第1受電部材420aと第2受電部材420bとの間の局所放電等、第1送電部材410a、第1受電部材420a、第2送電部材410b、及び第2受電部材420bからの放電の発生を抑制できる。また、第1送電部材410a、第1受電部材420a、第2送電部材410b、第2受電部材420b間や、これら部材と周辺の導電性部材との間の静電容量結合が弱まり、第1送電部材410a、第1受電部材420a、第2送電部材410b、第2受電部材420bに効率よく高周波電力を供給することができるようになる。また、第1送電部材410a、第1受電部材420a、第2送電部材410b、第2受電部材420bに起因する金属汚染の発生も抑制でき、基板処理の品質を向上できる。
【0086】
(e)本実施形態によれば、上述の通り処理室201内に絶縁カバー380a、絶縁カバー380b、絶縁カバー380cが設けられたことで、例えばマニホールド209とシールキャップ219との間に設けられたOリング等のシール部材に処理ガスが晒され難くなり、シール部材の劣化が抑制され、基板処理装置のメンテナンス頻度を低減させることが可能となる。
【0087】
(f)本実施形態によれば、プラズマ発生工程においてはボート217の回転を停止させている。プラズマ発生工程において、第1送電部材410aと第1受電部材420aとが相対的に移動せず、第2送電部材410bと第2受電部材420bとが相対的に移動しないことから、第1送電部材410aと第1受電部材420aとの間あるいは第2送電部材410bと第2受電部材420bとの間に接触不良やスパーク等が生じにくくなり、第1受電部材420aや第2受電部材420bへの電力供給を安定させ、放電に伴う基板処理装置の劣化消耗や基板処理への悪影響を回避することができる。
【0088】
(g)本実施形態によれば、反応ガス供給工程においてはボート217を回転させている。その結果、ウエハ200の面内全域に亘り第1の反応ガス(あるいはプラズマにより活性化された反応ガス)を均一に供給することが可能となり、ウエハ200面内における第1のガスの吸着の均一性を向上させることができる。
【0089】
(h)本実施形態によれば、反応ガス供給工程においては交流電源からの第1送電部材410a及び第2送電部材410bへの送電を行わない。その結果、処理室201内に反応ガスが供給されても、第1送電部材410a、第2送電部材410bからの放電が生じ得ず、放電に伴う基板処理装置の劣化消耗や基板処理への悪影響を回避することができる。
【0090】
(i)本実施形態によれば、各電極体(第1電極体301a及び第2電極体301b)は、ウエハ200よりも大きな外径を有している。そのため、ウエハ200表面に加わる電界をウエハ200面内に亘り均一化させることが可能となり、ウエハ200面内におけるプラズマ密度をより均一化することが可能となる。
【0091】
(j)本実施形態によれば、第1電極体301a、第2電極体301b、第1導電性部材302a、第2導電性部材302b、第1導電性平板500a、第2導電性平板500b、螺子305a等は、例えば、シリコン或いはボロン(B)をドープしたシリコン、炭素(C)、炭化珪素(SiC)等の非金属材料から構成される。その結果、処理室201内やウエハ200表面における金属汚染の発生を抑制できる。
【0092】
(k)本実施形態によれば、第1電力供給機構300aは、複数個の第1導電性部材302aに分割されている。同様に、第2電力供給機構300bは、複数個の第2導電性部材302bに分割されている。その結果、各第1導電性部材302a及び各第2電極体301bの所要長さはそれぞれ短くてすみ、各第1導電性部材302a及び各第2電極体301bの材料に例えば高純度炭素(C)や高純度炭化珪素(SiC)等の採用した場合であっても、その製造は容易であり、製造コストを低く抑制することができる。また、第1導電性部材302a及び各第2導電性部材302bがそれぞれ短く構成されることから、熱膨張によるこれらの部材の破損等を抑制できる。また、電力供給機構を複数個の導電性部材に分割することにより、電力供給の道筋が増え、下流部の導電性部材や各電極体へ効率よく電力を供給することができる。さらに、分割された各導電性部材を、基板の積層方向に沿って並ばないように連結することにより、取り外し容易となり、メンテナンスや交換が容易となる。又、電力供給機構が複数個の導電性部材に分割されていることにより、固定のために必要不可欠であるねじの取り付けが容易となる。
【0093】
(l)本実施形態によれば、各ウエハ200は、各ウエハ200の下方側に位置する電極体の表面に形成された座繰り加工穴200hの内部にそれぞれ載置される。その結果、ウエハ200の水平方向のズレを抑制できる。また、各ウエハ200が電極体の中に埋め込まれるように載置されるため、ウエハ200外周のエッジ部分に電界が集中してしまうことを抑制でき、ウエハ200面内におけるプラズマ密度をより均一化することが可能となる。
【0094】
(m)本実施形態によれば、第1送電部材410aや第2送電部材410bを処理室201の側壁(マニホールド209の側壁)を貫通するようにそれぞれ設けている。すなわち、第1送電部材410aや第2送電部材410bを、ボート217と共に移動可能なように構成する必要がない。その結果、第1送電部材410a及び第2送電部材410bがシールキャップ219を垂直方向に貫通するように構成する場合と比較して、基板処理装置の構造を簡略化でき、基板処理装置の製造コストやメンテナンス頻度を低減できる。
【0095】
(n)本実施形態によれば、ウエハ200を上下に挟む電極体間に交流電場を生成することにより、隣接するウエハ200間に直接にプラズマを発生させている。このように、隣接するウエハ200間にプラズマを直接発生させることにより、ウエハ200面内におけるプラズマ密度の均一性を向上させ、ウエハ200面内における基板処理の均一性を向上させることができる。なお、処理室201の外側(例えばプロセスチューブ203とヒータ207との間)にストライプ状のプラズマ発生電極を配置し、かかる電極に高周波電力を印加することにより処理室201内にプラズマを発生させる基板処理装置では、ウエハ200の中心部のプラズマ密度が外周部のプラズマ密度より著しく低下してしまい、ウエハ200面内における基板処理の均一性が低下してしまう場合があった。本実施形態によれば、プラズマを発生させる電極体とウエハ200との距離がウエハ200面内に亘り均一であるため、ウエハ200面内におけるプラズマ密度の均一性を向上させることが可能となる。
【0096】
(o)本実施形態によれば、ウエハ200間に供給した反応ガスをプラズマにより活性化させて(イオン、電子、ラジカル等に変化させて)ウエハ200を処理している。これにより、ウエハ200の表面温度を低く保ったままウエハ200を処理することが可能とな
り、熱によるウエハ200上に形成された半導体装置の製造劣化を抑制することが可能となる。
【0097】
<本発明の他の実施形態>
上述の実施形態においては、第1送電部材410aや第2送電部材410bは導電性材料からなるピンとして構成されていたが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、第1送電部材410aや第2送電部材410bの先端は、第1受電部材420aや第2受電部材420bの表面を転がるように構成された導電性の球体として構成されていてもよい。また、球体のみならず、1受電部材420aや第2受電部材420bの表面を転がるように構成された導電性の回転体として構成されていてもよい。また、第1送電部材410aや第2送電部材410bは、第1受電部材420aや第2受電部材420bの表面をブラッシングする導電性のブラシとして構成されていてもよい。このように構成した場合、プラズマ発生工程においても回転機構267によりボート217を回転させることが可能となり、ウエハ200面内におけるプラズマ処理をさらに均一化させることが可能となる。
【0098】
上述の実施形態においては、第1導電性部材302aや第2導電性部材302bの上端には螺子穴が形成され、下端には雄螺子が形成されていたが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、第1導電性部材302aや第2導電性部材302bには、上下端共に螺子穴が形成されていてもよい。かかる場合には、第1導電性部材302aや第2導電性部材302bの連結には上下方向共に導電性の螺子を用いることとなる。
【0099】
上述の実施形態においては、第1導電性平板500a及び第2導電性平板500bを第1電極体301a及び第2電極体301bの下面側にそれぞれ配置することとしていたが、本発明は係る形態に限定されない。すなわち、第1導電性平板500a及び第2導電性平板500bを第1電極体301a及び第2電極体301bの下面側にそれぞれ配置することとしてもよい。但し、各電極体に対して螺子を上から挿入し、導電性平板により下方から螺子を受ける方が電力供給体の組み立てが容易である。
【0100】
上述の実施形態においては、第1電極体301aや第2電極体301bの厚さをそれぞれ2mm程度とし、第1導電性平板500aや第2導電性平板500bの厚さをそれぞれ3mm程度としていたが、本発明は係る形態に限定されない。但し、電極体や導電性平板を厚くし過ぎるとこれらの部材がウエハ200に接触してしまう場合があり、また、薄くし過ぎるとこれらの部材が破損してしまう恐れがあるため、適宜調整することが好ましい。上述の実施形態においては、好ましくは第1導電性部材302aと第1導電性平板500aとが一体に構成されていてもよく、第2導電性部材302bと第2導電性平板500bとが一体に構成されていても良い。
【0101】
上述の実施形態においては、各ウエハ200は、ボート217に保持された各電極体上にそれぞれ載置されていたが、本発明は係る実施形態に限定されない。すなわち、各ウエハ200が、ボート217の支柱217aに設けられた保持溝内に直接保持されることとしてもよい。
【0102】
上述の実施形態において、反応ガス供給系は、反応ガスのガス種毎にそれぞれ設けることとしても良い。例えば、第1の反応ガスを供給する反応ガス供給系と、第2の反応ガスを供給する反応ガス供給系とが別々に供給されていても良い。また、処理室201内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系を、反応ガス供給系と独立して設けることとしても良い。
【0103】
<本発明の好ましい態様>
以下に本発明の好ましい態様について付記する。
【0104】
本発明の第1の態様によれば、基板を処理する処理室と、前記処理室内で複数枚の基板を積層した状態で保持する基板保持具と、前記各基板の表面から所定の距離にそれぞれ配置される電極体が複数段に積層してなり、前記各電極体にそれぞれ電力が供給されることで前記基板間にプラズマを発生させる電極体群と、前記各電極体にそれぞれ接続される導電性部材が前記基板の積層方向に沿って複数段に連結してなる電力供給機構と、前記電力供給機構に接続され、前記電力供給機構を介して前記各電極体にそれぞれ電力を供給する電力導入部と、を備え、隣接する前記導電性部材は、前記基板の積層方向に沿って直線上に並ばないように連結されている基板処理装置が提供される。
【0105】
本発明の第2の態様によれば、前記電極体群を構成する各電極体は第1電極体群または第2電極体群のいずれかに属し、前記第1電極体群に属する各電極体と前記第2電極体群に属する各電極体とは交互に積層されている第1の態様に記載の基板処理装置が提供される。
【0106】
好ましくは、前記電力供給機構は、前記第1電極体群に属する各電極体にそれぞれ接続される第1導電性部材が前記基板の積層方向に沿って多段に連結してなる第1電力供給機構と、前記第2電極体群に属する各電極体にそれぞれ接続される第2導電性部材が前記基板の積層方向に沿って多段に連結してなる第2電力供給機構と、を備え、隣接する前記第1導電性部材は、前記基板の積層方向に沿って直線上に並ばないように連結されており、隣接する前記第2導電性部材は、前記基板の積層方向に沿って直線上に並ばないように連結されている。
【0107】
本発明の第3の態様によれば、前記電力供給機構は、前記第1電極体群に属する各電極体にそれぞれ接続される第1導電性部材が前記基板の積層方向に沿って多段に連結してなる第1電力供給機構と、前記第2電極体群に属する各電極体にそれぞれ接続される第2導電性部材が前記基板の積層方向に沿って多段に連結してなる第2電力供給機構と、を備え、前記電力導入部は、前記処理室の壁面を貫通するように前記第1電力供給機構に接続され、前記第1電力供給機構を介して前記第1電極体群に属する各電極体にそれぞれ電力を供給する第1電力導入部と、前記処理室の壁面を貫通するように前記第2電力供給機構に接続され、前記第2電力供給機構を介して前記第2電極体群に属する各電極体にそれぞれ電力を供給する第2電力導入部と、を備える第2の態様に記載の基板処理装置が提供される。
【0108】
好ましくは、前記第1電力導入部により供給される交流電力の位相と、前記第2電力導入部により供給される交流電力の位相と、が180°異なる。
【0109】
本発明の第4の態様によれば、隣接する前記導電性部材は、前記基板の積層方向に沿って直線上に並ばないように、水平姿勢で配置された導電性平板を介してそれぞれ連結されており、
前記各電極体は、前記導電性部材から前記電極体への電力供給効率が高まるように、前記導電性平板の主面全域に亘り密着している第1の態様に記載の基板処理装置が提供される。
【0110】
好ましくは、隣接する前記導電性部材のうち、電力供給方向上流側の前記導電性部材における送電側端(上端)と、電力供給方向下流側の前記導電性部材における受電側(下端)とが、同一の前記導電性平板上にある。
【0111】
好ましくは、隣接する前記導電性部材のうち、電力供給方向上流側の前記導電性部材に
おける送電側端(上端)が前記導電性平板の下面側に接続され、電力供給方向下流側の前記導電性部材における受電側(下端)が前記導電性平板の上面側に接続される。
【0112】
好ましくは、隣接する前記導電性部材は、水平姿勢で配置された前記導電性平板と前記電極体とを介して接続される。
【0113】
好ましくは、前記導電性部材と前記導電性平板及び前記電極体とは、導電体からなる螺子によって固定される。
【0114】
好ましくは、前記導電性部材及び前記導電性平板は、耐熱性及び導電性を有する高純度材料からなり、例えば炭素(C)や炭化珪素(SiC)からなる。
【0115】
本発明の第5の態様によれば、
前記電力導入部は、
前記処理室の側壁を水平方向に貫通して水平方向に移動自在に設けられた送電部材と、前記電力供給機構に接続されると共に前記基板保持具と共に回転するリング状の受電部材と、を備える第1の態様に記載の基板処理装置が提供される。
【0116】
本発明の第6の態様によれば、前記処理室内に反応ガスを供給する反応ガス供給系と、前記基板保持具を回転させる回転機構と、前記電力導入部、前記反応ガス供給系、及び前記回転機構の各動作をそれぞれ制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記処理室内にプラズマを発生させる際に、前記反応ガス供給系による反応ガスの供給と前記回転機構による前記基板保持具の回転とをそれぞれ停止させると共に、前記送電部材を前記処理室内側へ移動させて前記受電部材に接続させ、前記処理室内に反応ガスを供給する際に、前記送電部材を前記処理室外側へ移動させて前記受電部材から切り離すと共に、前記反応ガス供給系による反応ガスの供給と前記回転機構による前記基板保持具の回転とをそれぞれ開始させる第5の態様に記載の基板処理装置が提供される。
【0117】
好ましくは、前記電力導入部は、前記処理室の側壁を水平方向に貫通すると共に水平方向に移動自在に設けられた第1送電部材と、前記第1電力供給機構に接続されると共に前記基板保持具と共に回転するリング状の第1受電部材と、前記処理室の側壁を水平方向に貫通すると共に水平方向に移動自在に設けられた第2送電部材と、前記第2電力供給機構に接続されると共に前記基板保持具と共に回転するリング状の第2受電部材と、を備え、前記第1送電部材は、前記処理室内側へ移動することにより前記第1受電部材と接続し、前記処理室外側へ移動することにより前記第1受電部材から切り離され、前記第2送電部材は、前記処理室内側へ移動することにより前記第2受電部材と接続し、前記処理室外側へ移動することにより前記第2受電部材から切り離される。
【0118】
好ましくは、前記第1送電部材、前記第1受電部材、前記第2送電部材、及び前記第2受電部材からの放電の発生を抑制するように、前記第1送電部材、前記第1受電部材、前記第2送電部材、及び前記第2受電部材の各周囲をそれぞれ囲う絶縁性部材を備える。
【0119】
好ましくは、前記第1受電部材と前記第2受電部材との間の放電の発生を抑制するように、前記第1受電部材と前記第2受電部材との間を遮断する絶縁性部材を備える。
【0120】
好ましくは、前記第1受電部材あるいは前記第2受電部材のうち上方側に設けられた受電部材と前記第1電力供給機構との間の放電、及び前記上方側に設けられた受電部材と前記第2電力供給機構との間の放電の発生をそれぞれ抑制するように、前記上方側に設けられた受電部材と前記第1電力供給機構との間及び前記上方側に設けられた受電部材と前記第2電力供給機構との間をそれぞれ遮断する絶縁性部材を備える。
【0121】
好ましくは、前記第1送電部材と前記第2受電部材との間の放電、及び前記第2送電部材と前記第1受電部材との間の放電の発生をそれぞれ抑制するように、前記第1送電部材と前記第2受電部材との間及び前記第2送電部材と前記第1受電部材との間をそれぞれ遮断する絶縁性部材を備える。
【0122】
好ましくは、前記第1受電部材あるいは前記第2受電部材のうち下方側に設けられた受電部材と前記処理室下方を封止する炉口蓋体との間の放電、及び前記第1送電部材あるいは前記第2送電部材のうち下方側に設けられた送電部材と前記炉口蓋体との間の放電をそれぞれ抑制するように、前記下方側に設けられた受電部材と前記炉口蓋体との間及び前記下方側に設けられ送電部材と前記炉口蓋体との間をそれぞれ遮断する絶縁性部材を備える。
【0123】
本発明の他の態様によれば、複数枚の基板を水平姿勢で多段に積層した状態で保持する基板保持具を処理室内に搬入する工程と、前記基板保持具の回転を停止すると共に、前記各基板の表面から所定の距離にそれぞれ配置される電極体にそれぞれ電力を供給することで隣接する前記基板間にプラズマを発生させる工程と、前記電極体への電力の供給を停止すると共に、前記基板保持具を回転させながら前記処理室内に反応ガスを供給して基板を処理する工程と、前記処理後の基板を保持する前記基板保持具を前記処理室内から搬出する工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本実施形態に係る基板処理装置が備える処理炉の縦断面図である。
【図2】本実施形態に係る基板処理装置の部分拡大図であり、(a)は電力導入部周辺の部分拡大図を、(b)はノズル導入部周辺の部分拡大図を、(c)は電力導入部やノズル導入部が設けられていない領域の部分拡大図をそれぞれ示している。
【図3】本実施形態に係る基板処理装置が備える電力供給機構の概略図であり、(a)は上面図を、(b)は側面図をそれぞれ示している。
【図4】本実施の形態に係る基板処理装置が備える処理炉の部分拡大図である。
【図5】本実施形態に係る基板処理装置が備える給電切換機構部の部分拡大図である。
【図6】本実施形態に係る基板処理装置の斜透視図である。
【図7】本実施形態に係る基板処理装置の側面透視図である。
【図8】本実施形態に係る基板処理装置により実施される基板処理の一例を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0125】
100 基板処理装置
200 ウエハ(基板)
201 処理室
217 ボート(基板保持具)
219 シールキャップ(炉口蓋体)
267 回転機構
280 制御部
301a 第1電極体
301b 第2電極体
302a 第1導電性部材
302b 第2導電性部材
305a 螺子
410a 第1送電部材
410b 第2送電部材
420a 第1受電部材
420b 第2受電部材
450a 発振器
450b 整合器
500a 第1導電性平板
500b 第2導電性平板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内で複数枚の基板を積層した状態で保持する基板保持具と、
前記各基板の表面から所定の距離にそれぞれ配置される電極体が複数段に積層してなり、前記各電極体にそれぞれ電力が供給されることで前記基板間にプラズマを発生させる電極体群と、
前記各電極体にそれぞれ接続される導電性部材が前記基板の積層方向に沿って複数段に連結してなる電力供給機構と、
前記電力供給機構に接続され、前記電力供給機構を介して前記各電極体にそれぞれ電力を供給する電力導入部と、を備え、
隣接する前記導電性部材は、前記基板の積層方向に沿って直線上に並ばないように連結されている
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記電極体群を構成する各電極体は第1電極体群または第2電極体群のいずれかに属し、前記第1電極体群に属する各電極体と前記第2電極体群に属する各電極体とは交互に積層されている
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記電力供給機構は、
前記第1電極体群に属する各電極体にそれぞれ接続される第1導電性部材が前記基板の積層方向に沿って多段に連結してなる第1電力供給機構と、
前記第2電極体群に属する各電極体にそれぞれ接続される第2導電性部材が前記基板の積層方向に沿って多段に連結してなる第2電力供給機構と、を備え、
前記電力導入部は、
前記処理室の壁面を貫通するように前記第1電力供給機構に接続され、前記第1電力供給機構を介して前記第1電極体群に属する各電極体にそれぞれ電力を供給する第1電力導入部と、
前記処理室の壁面を貫通するように前記第2電力供給機構に接続され、前記第2電力供給機構を介して前記第2電極体群に属する各電極体にそれぞれ電力を供給する第2電力導入部と、を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
隣接する前記導電性部材は、前記基板の積層方向に沿って直線上に並ばないように、水平姿勢で配置された導電性平板を介してそれぞれ連結されており、
前記各電極体は、前記導電性部材から前記電極体への電力供給効率が高まるように、前記導電性平板の主面全域に亘り密着している
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記電力導入部は、
前記処理室の側壁を水平方向に貫通して水平方向に移動自在に設けられた送電部材と、前記電力供給機構に接続されると共に前記基板保持具と共に回転するリング状の受電部材と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理室内に反応ガスを供給する反応ガス供給系と、
前記基板保持具を回転させる回転機構と、
前記電力導入部、前記反応ガス供給系、及び前記回転機構の各動作をそれぞれ制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記処理室内にプラズマを発生させる際に、前記反応ガス供給系による反応ガスの供給と前記回転機構による前記基板保持具の回転とをそれぞれ停止させると共に、前記送電部材を前記処理室内側へ移動させて前記受電部材に接続させ、
前記処理室内に反応ガスを供給する際に、前記送電部材を前記処理室外側へ移動させて前記受電部材から切り離すと共に、前記反応ガス供給系による反応ガスの供給と前記回転機構による前記基板保持具の回転とをそれぞれ開始させる
ことを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−45225(P2010−45225A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208728(P2008−208728)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】