説明

基板処理装置

【課題】処理ガスを大量に活性化させ、かつ失活させずに供給することができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板Wを支持する基板支持体3と、触媒板5と、触媒板5に接触させて活性化させる第1処理ガスを供給する第1処理ガス供給部70aと、触媒板5を誘導加熱する誘導加熱コイル6とを備え、基板支持体3は、触媒板5の一面側に配され、誘導加熱コイル6は、触媒板5の他面側に配され、触媒板5は、処理室1を、誘導加熱コイル6側の第1空間及び基板支持体3側の第2空間に隔てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱した触媒体により処理ガスを活性化させて基板を処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CVD(Chemical Vapor Deposition)法は、半導体、液晶、有機EL等の製造工程における成膜処理、その他、各種基板処理に用いられている。特に、触媒CVD法は、成膜速度に優れ、処理ガスの利用効率が高い成膜方法として注目されている。例えば、特許文献1および2には、真空容器内に原料ガスを導入するシャワーヘッドと、該シャワーヘッドと対向して配され、通電による抵抗加熱により加熱される触媒体とを備えた成膜装置が開示されている。特許文献3にはガス加熱室内に触媒体を配し、外部から該触媒体を加熱するヒータを備えた成膜装置が開示されている。更に、特許文献4には、触媒体を真空容器の外側から囲繞し、該触媒板を加熱する高周波誘導加熱装置を備えた成膜装置が開示されている。また、特許文献5には、通電による抵抗加熱により加熱されるワイヤ状の触媒体を内蔵した触媒ノズルを有する成膜装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−269671号公報
【特許文献2】特開2000−243712号公報
【特許文献3】特開2003−41365号公報
【特許文献4】特開2001−262348号公報
【特許文献5】特開2003−264153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜5に係る成膜装置においては、処理ガス分子が加熱触媒体に接触するとは限らないため、処理ガスを大量に活性化させることができないという問題があった。さらに、加熱触媒体に処理ガスが接触して活性化しても、加熱触媒体以外の部材、例えば処理容器内壁に接触して失活してしまい、処理効率が低下してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、処理ガスを大量に活性化させ、かつ失活させずに供給することができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る基板処理装置は、処理室と、該処理室の内部で基板を支持する基板支持体と、触媒板と、該触媒板に接触させて活性化させる第1処理ガスを供給する第1処理ガス供給部と、前記触媒板を誘導加熱する誘導加熱コイルとを備え、前記基板支持体は、前記触媒板の一面側に対向して配され、前記誘導加熱コイルは、前記触媒板の他面側に対向して配され、前記触媒板は、前記処理室を、前記誘導加熱コイル側の第1空間及び前記基板支持体側の第2空間に隔てることを特徴とする。
【0007】
本発明にあっては、処理室が触媒板により第1空間と第2空間とに隔てられている。従って、処理ガスを大量に活性化させることができ、処理される基板が支持される第2空間に、処理ガスを失活させずに供給することが可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、処理ガスを大量に活性化させ、かつ失活させずに供給することができ、基板処理の効率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態1に係る基板処理装置の一構成例を模式的に示した側断面図である。
【図2】触媒板支持部によって支持された触媒板を模式的に示した側断面図である。
【図3】触媒板支持部によって支持された触媒板を模式的に示した平面図である。
【図4】触媒板支持枠と、触媒板との接合部分を模式的に示した拡大側断面図である。
【図5】第2処理ガス導入部の一構成例を模式的に示した背面図である。
【図6】第1の変形例に係る触媒を模式的に示した側断面図である。
【図7】第2の変形例に係る触媒を模式的に示した側断面図である。
【図8】第3の変形例に係る触媒を模式的に示した側断面図である。
【図9】実施の形態2に係る基板処理装置の一構成例を模式的に示した側断面図である。
【図10】実施の形態2に係る触媒板支持部によって支持された触媒板を模式的に示した側断面図である。
【図11】実施の形態2に係る触媒板支持部によって支持された触媒板を模式的に示した平面図である。
【図12】第2処理ガス導入部の一構成例を模式的に示した背面図である。
【図13】実施の形態3に係る基板処理装置の一構成例を模式的に示した側断面図である。
【図14】実施の形態4に係る基板処理装置の一構成例を模式的に示した側断面図である。
【図15】実施の形態5に係る基板処理装置の一構成例を模式的に示した側断面図である。
【図16】温度検出部の一構成例を模式的に示した平面図である。
【図17】温度検出部の一構成例を模式的に示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1に係る基板処理装置の一構成例を模式的に示した側断面図である。本発明の実施の形態1に係る基板処理装置は、例えば、珪素膜を形成する触媒CVD装置であり、気密に構成された中空略円柱状の処理室1と、処理室1内のガスを排気する排気装置2と、触媒CVD処理が施されるべき基板Wを支持する基板支持体3と、触媒CVD処理を施すための処理ガスを活性化させ、処理室1を上下の第1空間及び第2空間に隔てる触媒板5と、処理室1の内部に配されており、触媒板5を誘導加熱する誘導加熱コイル6と、上方の第1空間に第1処理ガスを導入する第1処理ガス導入部70aと、下方の第2空間に第2処理ガスを供給する第2処理ガス導入部70bとを備える。
【0011】
処理室1は、例えば、ステンレス製であり、平板状の底部10と、底部10に周設された側壁11と、触媒板支持部4を介して、側壁11の上部に設けられた天板部12とを有する。
処理室1の底部10には、排気管10aが設けられており、排気管10aには真空ポンプを含む排気装置2が接続されている。排気装置2を作動させることにより処理室1内のガスが、排気管10aを介して排気される。従って、処理室1内を所定の真空度、例えば1mTorrまで減圧することが可能である。
また、底部10の略中央には、触媒CVD処理が施されるべき基板Wを支持する基板支持体3が設けられている。基板Wは、例えば、矩形状のガラス基板である。基板支持体3は、例えば円盤状又は角板状であり、基板Wを冷却するための冷媒が通流する冷媒流路30と、基板Wを加熱するための加熱ヒータ31とを内部に有する。加熱ヒータ31は、該加熱ヒータ31へ給電を行うDC電源31aに接続されている。基板支持体3の加熱及び冷却は、後述の制御部80によって制御され、一定温度、例えば200℃に保持される。なお、200℃は一例であり、温度範囲180℃〜350℃内の所定温度に設定すれば良い。また、基板Wを固定するために、基板支持体3に静電チャックなどの固定手段を設けても良い。
処理室1の側壁11には、基板処理装置に隣接する搬送室(不図示)との間で基板Wの搬入出を行うための搬入出口11aと、搬入出口11aを開閉するゲートバルブ11bとが設けられている。
【0012】
図2は、触媒板支持部4によって支持された触媒板5を模式的に示した側断面図、図3は、触媒板支持部4によって支持された触媒板5を模式的に示した平面図である。
触媒板支持部4は、触媒CVD処理を施すための処理ガスを活性化させる触媒板5を支持する部材である。触媒板支持部4により支持された触媒板5は、処理室1を上方の第1空間と、下方の第2空間とに隔てる。より詳細には、触媒板支持部4は、側壁11の上端部に嵌合するフランジ部を有し、外周が処理室1の内周よりも小さい矩形筒部材40を有する。矩形筒部材40の下端部には、内周側に環状掛止部40aが設けられている。また、矩形筒部材40の適宜箇所には冷媒流路40bが形成されている。矩形筒部材40の内側には、外周が矩形筒部材40の内周と略同一である略矩形状の触媒板支持枠41が矩形筒部材40に内嵌しており、環状掛止部40aによって、掛止されている。触媒板支持枠41の内縁部は、略矩形の触媒板5が上方から嵌り合うように段状に形成されており、触媒板支持枠41に触媒板5が支持されている。このように触媒板支持部4によって支持された触媒板5は、基板Wの上方で基板支持体3に対向配置している。言い換えると、基板支持体3は、触媒板5の一面側(下面側)に配されている。
【0013】
触媒板5は、処理室1の上方に供給された処理ガスを処理室1の上方から下方へ通流させる複数の通流孔5aを有する。通流孔5aは等間隔で形成されており、基板支持体3に支持された基板Wに対して均一に第1処理ガスが供給される。触媒板5は、少なくともその上面および通流孔5aを構成する壁面が、触媒作用を有する材質、例えばタングステン(W)で形成されている。このような触媒板5は、触媒作用を有する材質からなる板状体に、貫通孔を形成することにより容易に作成することができる。なお、タングステンは、触媒板5を構成する材質の一例であり、処理内容、使用する処理ガスに応じて、タンタル(Ta)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)等を利用することができる。また、母材にこれらをコーティングしたものであっても良い。母材としては、使用温度領域において相変態をおこさず、耐熱性があり、コーティングする材料と反応せず、かつ容易に誘導加熱することが可能な金属であるものが望ましく、例えばタングステンやニッケルクロム等を利用することができる。更に、反応面積を増大させるべく、触媒板5の表面に凹凸を設けても良い。更にまた、触媒板5は略板状であれば良く、多孔質の触媒板5を利用しても良い。更に、後述の変形例で説明するように、通流孔5aは、直線状に限定されず、その他任意の形状を採用しても良い。
【0014】
図4は、触媒板支持枠41と、触媒板5との接合部分を模式的に示した拡大側断面図である。触媒板5は、周縁部の下面に凹凸溝5bを有し、触媒板支持枠41の段状部分に形成された凹凸溝41aと嵌合している。このようにすることにより、処理室1の下方(第2空間)から上方(第1空間)へ処理ガスが逆流することを効果的に防止することができる。
【0015】
触媒板5は高温に加熱されるため、触媒板支持枠41は耐熱性の高い素材で作成されることが望ましい。また、処理ガスとして水素を用いる場合は、水素還元雰囲気中で劣化しにくい素材であることが望ましい。触媒板支持枠41は、例えば、耐熱性が高く、水素還元雰囲気中で劣化しにくいシリコンカーバイド(SiC)製である。触媒板5を、環状掛止部40aで直接支持せずに、触媒板支持枠41を介して支持することにより、触媒板5からの熱伝導より触媒板支持部4が加熱されることを軽減できる。
【0016】
また、矩形筒部材40の側壁には、第1空間へ第1処理ガスを供給するアルミナ製の第1処理ガス導入部70aが設けられている。第1処理ガス導入部70aには、第1処理ガスを送出する第1ガス供給源72aが配管を介して接続されている。第1処理ガスは、触媒板5によって活性化されるべき処理ガスであり、例えば、水素(H2 )ガスである。
更に、処理室1の側壁11には、第2空間へ第2処理ガスを導入する第2処理ガス導入部70bが設けられている。第2処理ガス導入部70bには、第2処理ガスを送出する第2ガス供給源72bが配管を介して接続されている。第2処理ガスは、例えば、モノシラン(SiH4 )ガスである。
各処理ガス供給源に接続する配管夫々には、マスフローコントローラ(MFC)71a,71b及びその前後に開閉バルブ73a,73bが設けられており、供給される処理ガスの流量等の制御ができるように構成されている。流量制御は、後述の制御部80によって行われる。第1処理ガスである水素ガスの流量は、例えば、10slm、モノシランガスの流量は、100sccm〜1slmである。
【0017】
図5は、第2処理ガス導入部70bの一構成例を模式的に示した背面図である。第2処理ガス導入部70bは、例えば、1本の配管で構成されており、基板Wの外周に倣うよう、略矩形枠状に曲成されている。配管の表面には、基板Wに対して処理ガスを噴出する複数の噴出孔74bが配管の長手方向に沿って形成されている。第2処理ガスであるモノシランは、タングステンの触媒板をシリサイド化して触媒としての機能を劣化させるおそれがあるため、図2に示すように、噴出孔74bは、基板W側に設けられている。
【0018】
誘導加熱コイル6は、内部を冷却水が通流する銅パイプ60を巻回してなり、触媒板5の上面側(他面側)と対向するように配されている。処理室1の天板部12は略中央部に孔部を有し、該孔部にコイル支持体13が内嵌固定されている。コイル支持体13には、銅パイプ60が挿通する2つの貫通孔13aが形成されており、誘導加熱コイル6の銅パイプ60が該貫通孔13aに挿通し、セラミック絶縁体を介して固定フランジにて固定されている。コイル支持体13の貫通孔13aを挿通した銅パイプ60は、誘導加熱用電源61に接続され、単一閉回路を構成している。誘導加熱用電源61は、誘導加熱コイル6に交流を印加することによって、交番磁界を発生させ、触媒板5を誘導加熱する。誘導加熱コイル6の出力は、触媒板5を500〜2300℃の温度、例えば、1750℃に加熱することができるように設定されている。なお、天板部12は、触媒板5からの放射熱により高温になる天板部12を冷却するための冷媒流路12aを内部に有する。
【0019】
また、基板処理装置は、基板処理装置の各構成部を制御する制御部80を備える。制御部80には、工程管理者が基板処理装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボード、基板処理装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるインタフェース81が接続されている。また、制御部80には、基板処理装置で実行される各種処理を制御部80の制御にて実現するための制御プログラム、処理条件データ等が記録されたプロセス制御プログラムが格納された記憶部82が接続されている。制御部80は、インタフェース81からの指示に応じた任意のプロセス制御プログラムを記憶部82から呼び出して実行し、制御部80の制御下で、基板処理装置での所望の処理が行われる。
【0020】
このように構成された基板処理装置によれば、第1空間に供給された第1処理ガスは、触媒板5の通流孔5aを通じて下方の第2空間へ通流する。第1処理ガスは、触媒板5の上面に接触または通流孔5aを通流する過程で活性化され、第2空間に供給される。一方、触媒板5を劣化させるおそれがある第2処理ガスは、基板Wが配置される第2空間へ直接供給されるため、第1空間側の触媒板5の上面に接触しない。第2処理ガスは、活性化した第1処理ガスと第2空間内で合流し、該第1処理ガスによって、膜中欠陥が少ない成膜が可能となるSiH3 に解離する。解離したSiH3 は、基板Wに到達し、珪素膜が形成される。
【0021】
本実施の形態に係る基板処理装置にあっては、活性化させる第1処理ガスが供給される第1空間と、基板Wが配置される第2空間とが、触媒板5により隔てられている。触媒板5は板状であるため、第1空間に供給された第1処理ガスが効率良く触媒板5に接触し、大量の活性化された第1処理ガスを発生することができる。第1空間と第2空間とは、触媒板5により隔てられているため、第1空間で大量に活性化された第1処理ガスを、失活することなく第2空間に供給することができる。このため、成膜に望ましい状態に乖離した第2処理ガス、例えばSiH3 を大量に生じさせることが可能となり、高品質の膜を高速に成膜することができる。
【0022】
また、触媒板5は、板状であることから、ワイヤ状の触媒体を利用する場合に発生する断線、ワイヤのだれといった問題は無く、均一に基板Wを処理することができる。更に、触媒板5は、触媒作用を有する材質からなる板状体に、貫通孔を形成することにより容易に作成することができ、低コストで基板処理装置を構成することができる。
【0023】
また、第2処理ガス導入部70bの噴出孔74bは基板W側に形成されているため、触媒板5に第2処理ガスを接触させずに供給することができる。これにより、触媒板5が第2処理ガスにより劣化することを防ぐことができる。更に、第2処理ガス導入部70bは、触媒板5により第1処理ガスを活性化させる第1空間ではなく、処理室1の下方の第2空間に配されている。このため、第2処理ガスが触媒板5に接触したとしても、第1処理ガスの活性化に影響を及ぼさない触媒板5の下面(第2空間側)であり、第1処理ガスを活性化させる触媒板5の上面(第1空間側)には接触しない。これにより、第1処理ガスの活性化に影響を及ぼす触媒板5の上面が、第2処理ガスにより劣化することをより効果的に防ぐことができる。また、第2処理ガスが触媒板5に接触して過剰に乖離し、成膜に望ましくない状態、例えばSiH2 に乖離することを防ぐことができる。
【0024】
更に、本実施の形態に係る基板処理装置にあっては、触媒板5の加熱を、通電加熱ではなく誘導加熱で行う。触媒体を通電加熱する場合、触媒体に通電する通電ケーブルは、触媒体よりも電気抵抗値を低くする必要がある。本実施の形態に係る基板処理装置の触媒体(触媒板5)は、第1空間と第2空間とを隔てるものであるため、ワイヤ状の触媒体よりも幅および断面積が大きくなる。このため、触媒板5はワイヤ状の触媒体に比べて電気抵抗値が低くなる。よって、触媒板5を通電加熱するには、触媒板5に通電させるためのケーブル径を太くしたり、触媒板5と通電ケーブルとを強固に接続したりする必要があり、ワイヤ状の触媒体を通電加熱するように容易に通電加熱することは困難である。誘導加熱による加熱を行うことで、第1空間と第2空間とを隔てるほどの幅および断面積を有する触媒板5であっても、容易に加熱することが可能である。
【0025】
また、誘導加熱コイル6は、触媒板5の上面と対向するように配されているため、触媒板5が均一に加熱される。また、触媒板5の加熱に寄与しない無駄な交番磁界を低減し、誘導加熱コイル6にて生成された交番磁界を効率良く利用し、触媒板5を加熱することが可能である。従って、該触媒板5が均一に加熱されるため、基板Wを均一に処理することができ、基板処理コストを低減することができる。
【0026】
更に、誘導加熱コイル6は処理室1の内部の第1空間に配されている。誘導加熱コイル6を処理室1の外側に配した場合、誘導加熱コイル6から放射される熱及び磁場を遮蔽する手段を設ける必要があり、基板処理装置が大型化するという問題があるところ、本実施の形態によれば、誘導加熱コイル6は、処理室1の内部に配されているため、基板処理装置を小型化することができる。また、誘電加熱コイル6と触媒板5との距離を近づけることができるため、誘導加熱コイル6にて生成された交番磁界を効率良く利用し、触媒板5を加熱することが可能である。
【0027】
(変形例)
図6は、第1の変形例に係る触媒を模式的に示した側断面図、図7は、第2の変形例に係る触媒を模式的に示した側断面図、図8は、第3の変形例に係る触媒を模式的に示した側断面図である。実施の形態では、直線状の通流孔5aを有する触媒板5を説明したが、これに限定されるものでは無い。
例えば、図6に示すように、触媒板151の内部で通流孔151aが屈曲するように構成しても良い。
また、図7に示すように、内径が下方、即ち基板支持体3側に向かって小さくなるようにテーパーを有する通流孔152aを触媒板152に備えても良い。
更に、図8に示すように、触媒板153にラビリンス構造を設けても良い。触媒板153は、上側、即ち誘導加熱コイル6側に形成された板部153bと、下側、即ち基板支持体3側に形成された板部153cとを離隔配置してなる内部空間153aを有する。板部153b,153cには、それぞれ通気孔153d,153eが互いに重なり合わないように形成されている。
第1〜第3の変形例のように、非直線状の通流孔151a,152a,153d,153eを備えることによって、第1処理ガスと、触媒板151,152,153との接触面積及び接触時間を増大させることができ、また、処理室1の下方から上方へ第1及び第2処理ガスが逆流することを効果的に防止することができる。
【0028】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る基板処理装置は、触媒板205が複数の触媒板片250からなる点、及び触媒板支持部204の構造が実施の形態1と異なるため、以下では主に上記相異点について説明する。
【0029】
図9は、実施の形態2に係る基板処理装置の一構成例を模式的に示した側断面図、図10は、実施の形態2に係る触媒板支持部204によって支持された触媒板205を模式的に示した側断面図、図11は、実施の形態2に係る触媒板支持部204によって支持された触媒板205を模式的に示した平面図である。実施の形態2に係る触媒板205は、複数の触媒板片250を並置して構成されている。例えば、図11に示すように、略矩形の複数の触媒板片250を縦横2枚配することによって、触媒板205が構成される。触媒板205は、処理室1の上方に供給された処理ガスを処理室1の上方から下方へ通流させる複数の通流孔250aを有する。触媒板支持部204は、実施の形態1と同様の矩形筒部材40、及び触媒板支持枠241を備える。実施の形態2に係る触媒板支持枠241は、複数の触媒板片250夫々を支持すべく格子状に形成されている。例えば、図11に示すように、4枚の触媒板片250を支持する場合、触媒板支持枠241は、略矩形の外枠と該外枠の内側に形成された略十字状の板部241aとで構成される。
【0030】
図12は、第2処理ガス導入部270bの一構成例を模式的に示した背面図である。第2処理ガス導入部270bは、例えば、枝分かれした1本の配管で構成されており、複数の触媒板片250夫々の外周辺に倣うように、格子状に曲成されている。配管の表面には、基板Wに対して処理ガスを噴出する複数の噴出孔274bが配管の長手方向に沿って形成されている。
【0031】
実施の形態2に係る基板処理装置にあっては、実施の形態1と同様の効果を奏する。また、触媒板205が複数の触媒板片250で構成されているため、触媒体の一部が劣化した場合、又は基板処理の均一性が低下した場合、一部の触媒板片250を交換するのみで、基板処理を均一化させることができる。また、基板Wの大型化に伴って触媒板が大型化した場合であっても、各触媒板片250を適宜組み合わせることによって容易に対応することができる。大型の触媒板に比べて、複数の触媒板片250の方が安価であり、低コストで基板処理装置を構成することができる。
【0032】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る基板処理装置は、縦型の触媒CVD装置であり、誘導加熱コイル6に関して、一対の基板支持体3、触媒板5及び第2処理ガス導入部470b等を対称的に備える点が実施の形態1とは異なるため、以下では主に上記相異点について説明する。
【0033】
図13は、実施の形態3に係る基板処理装置の一構成例を模式的に示した側断面図である。実施の形態3に係る基板処理装置は、中空略直方体の処理室401を備える。処理室401は、例えば、ステンレス製であり、平板状の底部410と、底部410に周設された側壁411と、天板部412とを有する。処理室401の側壁411には、排気管411aが設けられており、排気管411aには真空ポンプを含む排気装置2が接続されている。また、各側壁411の略中央には、例えば、触媒CVD処理が施されるべき基板Wを支持する基板支持体3が設けられている。基板支持体3の構成は実施の形態1と同様である。
【0034】
触媒板支持部404は、2つの触媒板5を各基板支持体3に対向配置させて支持する部材である。触媒板支持部404により支持された2つの触媒板5は、処理室401を横方向略中央部の第1空間と、処理室401の横方向両側の第2空間とに隔てる。より詳細には、触媒板支持部404は、処理室401の底部410及び天板部412に設けられており、略矩形の2枚の触媒板5を対向させて保持する、T字状部材440を備える。T字状部材の先端部には、互いに略並行で、横方向に離隔した線状の掛止部440aが設けられており、略矩形状の触媒板支持枠441が掛止部440aによって、対向するように掛止されている。なお、T字状部材440の適宜箇所には冷媒流路440bが形成されている。触媒板支持枠441の内縁部は、処理室401を第1空間及び第2空間に隔てる触媒板5が横方向から挟み込むように形成されており、触媒板支持枠441に触媒板5が支持されている。
【0035】
誘導加熱コイル6は、2枚の触媒板5の間に配されている。誘導加熱コイル6及び誘導加熱用電源61の構成は実施の形態1と同様である。
【0036】
下方の触媒板支持部404には、第1空間へ第1処理ガスを供給する第1処理ガス導入部470aが設けられている。第1処理ガス導入部470aには、第1処理ガスを送出する第1ガス供給源72aが配管を介して接続されている。
更に、処理室401の横方向両側に形成された第2空間夫々に第2処理ガスを導入する第2処理ガス導入部470bが設けられている。第2処理ガス導入部470bには、第2処理ガスを送出する第2ガス供給源72bが配管を介して接続されている。
【0037】
実施の形態3に係る基板処理装置にあっては、誘導加熱コイル6の両側に触媒板5及び基板支持体3が設けられている。このため、1つの誘電加熱コイル6から発生する交番磁界により対向する2枚の触媒板5を加熱することができる。また、一方の触媒板5の輻射熱により、他方の触媒板5を加熱することができる。これらのことから、効率的に各触媒板5を加熱し、処理室401の両側に配された基板Wに対してCVD処理を行うことができる。
【0038】
(実施の形態4)
実施の形態4に係る基板処理装置は、誘導加熱コイル506を処理室501の外部に設けている点が実施の形態1とは異なるため、以下では主に上記相異点について説明する。
【0039】
図14は、実施の形態4に係る基板処理装置の一構成例を模式的に示した側断面図である。実施の形態5に係る誘導加熱コイル506は、処理室501を構成している誘電体の天板部512の外側に配され、誘導加熱コイル506の銅パイプ560は誘導加熱用電源61に接続されている。
【0040】
実施の形態4に係る基板処理装置にあっては、誘導加熱コイル506を処理室501の外側に配しているため、誘導加熱コイル506から処理室501内部へ冷却水が漏れ出すことを確実に防止することができる。
【0041】
(実施の形態5)
触媒板は1000〜2000℃の温度に加熱されるため、再結晶化が進行しやすい。再結晶化率をコントロールすることは困難であり、実施の形態2のように、複数の触媒板片250を用いる場合、個々の触媒体片250の特性にばらつきが生じることがある。これにより、一部の触媒体片250の熱膨張による反り量と、他の触媒体片250の反り量とに違いが生じることがある。この場合、各触媒体片250と誘導加熱コイルとの距離にばらつきが生じ、触媒板205を均一に加熱して基板Wを均一に処理することができなくなるおそれがある。また、反り量の大きい触媒体片250は、反った部分が誘導加熱コイルに近づくことにより過剰に加熱され、他の触媒体片250よりも更に反りが進むことになる。この場合、各触媒体片250と誘導加熱コイルとの距離のばらつきは更に顕著となり、触媒板205を均一に加熱して基板Wを均一に処理することがより困難となる。
【0042】
実施の形態5に係る基板処理装置は、複数の触媒板片250を夫々加熱する複数の誘導加熱コイル706を備え、各触媒板片250の温度を検出して温度制御を行う点が実施の形態2とは異なるため、以下では主に上記相異点について説明する。
【0043】
図15は、実施の形態5に係る基板処理装置の一構成例を模式的に示した側断面図である。実施の形態5に係る基板処理装置は、実施の形態2と同様の構成であり、更に、複数の触媒板片250夫々の温度を検出する温度検出部709を備える。
図16は、温度検出部709の一構成例を模式的に示した平面図、図17は、温度検出部709の一構成例を模式的に示した側面図である。温度検出部709は、各触媒板片250の上方に配された複数の第1反射鏡791を備える。各第1反射鏡791は、例えば水平に配された触媒板片250に対して、45度の角度で傾斜しており、各触媒板片250から放射された放射光を水平方向へ反射するような姿勢で固定されている。また、各第1反射鏡791は、第1反射鏡791から反射された放射光が互に干渉しないよう、図16及び図17に示すように奥行き方向へ適宜長ずらして配置されている。
また、温度検出部709は、各第1反射鏡791から反射された放射光を、処理室701の天板部12側へ反射する第2反射鏡792を備える。天板部712には、第2反射鏡792から反射された放射光を透過する窓部712bが形成されており、第2反射鏡792で反射された放射光は、天板部712の窓部712bを介して外部へ反射される。従って、各触媒板片250から放射された放射光は、窓部712bの異なる位置を透過して外部へ出射する。天板部712の上方には、第2反射鏡792で反射された放射光にて、温度を検出する放射温度計793が搬送機構794にて支持されている。搬送機構794は、放射温度計793を窓部712bに沿って奥行き方向へ往復移動させることができる。放射温度計793は、窓部712bに沿って移動し、窓部712bの異なる位置から出射する赤外線の強度を検出することによって、各触媒板片250の温度を検出することができる。放射温度計793は、検出した各触媒板片250の温度を制御部80へ出力する。
【0044】
更に、基板処理装置は、複数の触媒板片250を夫々加熱する複数の誘導加熱コイル706を備える。制御部80は、放射温度計793にて検出された各温度に基づいて、各誘導加熱コイル706への給電量を増減させることによって、各触媒板片250の温度を均一に制御することができる。
【0045】
実施の形態5に係る基板処理装置にあっては、複数の触媒板片250を用いた場合、各触媒板片250で温度のばらつきが生ずるおそれがあるが、各触媒板片250の温度を検出して交番磁界の強度分布を制御することによって、触媒板205を均一に加熱して基板Wを均一に処理することができる。
【0046】
また、反り量が著しく大きい触媒板片250は交換する必要があるが、各触媒板片250の温度を測定することにより、交換すべき触媒板片250を見出すことができる。したがって、実施の形態7では、複数の誘導加熱コイル706を用いて、各触媒板片250の温度を制御する例を説明したが、実施の形態2のように、一つの誘導加熱コイルで複数の触媒板片250を加熱する場合においても、各触媒板片250の温度を検出することは有用である。
【0047】
なお、実施の形態5では、放射温度計793を搬送する例を説明したが、第1反射鏡791を搬送するように構成しても良い。また、第1反射鏡791及び放射温度計793の双方を搬送するように構成しても良い。更に、第1反射鏡791を回動させて光軸をずらすように構成しても良い。
【0048】
なお、実施の形態では、主に珪素膜を形成する触媒CVDを例示したが、結晶Si太陽電池の裏面再結合防止用のパッシベーション膜、その他の膜を形成する場合に本実施の形態に係る基板処理装置を適用してもよい。また、成膜処理に限定されず、レジスト剥離装置、シリコン基板上の自然酸化膜を除去する装置として本実施の形態に係る基板処理装置を適用しても良い。
【0049】
また、実施の形態では、触媒体により活性化させる第1処理ガスと、触媒体と反応して触媒体としての機能を劣化させるおそれがある第2処理ガスとを用いた成膜処理を例示したが、第2処理ガスを用いずに第1処理ガスのみを用いた処理に、本実施の形態に係る基板処理装置を適用しても良い。例えば、第1処理ガスとして酸素を用いたレジスト剥離装置、第1処理ガスとして水素を用いたシリコン基板W上の自然酸化膜を除去する装置として本実施の形態に係る基板処理装置を適用しても良い。
【0050】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
1 処理室
2 排気装置
3 基板支持体
4 触媒板支持部
5 触媒板
6 誘導加熱コイル
250 触媒板片
5a 通流孔
70a 第1処理ガス導入部
70b 第2処理ガス導入部
72a 第1ガス供給源
72b 第2ガス供給源
60 銅パイプ
61 誘導加熱用電源
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と、該処理室の内部で基板を支持する基板支持体と、触媒板と、該触媒板に接触させて活性化させる第1処理ガスを供給する第1処理ガス供給部と、前記触媒板を誘導加熱する誘導加熱コイルとを備え、
前記基板支持体は、前記触媒板の一面側に対向して配され、
前記誘導加熱コイルは、前記触媒板の他面側に対向して配され、
前記触媒板は、前記処理室を、前記誘導加熱コイル側の第1空間及び前記基板支持体側の第2空間に隔てる
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第1処理ガス供給部は、
前記第1空間に配され、
前記触媒板は、
前記第1空間に供給された前記第1処理ガスを前記第2空間へ通流させる通流孔を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第2空間に配された、第2処理ガスを供給する第2処理ガス供給部を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第2処理ガス供給部は、前記基板支持体と対向する第2処理ガス噴出孔を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記触媒板は、
並置された複数の触媒板片で構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記複数の触媒板片の各々の温度を検出する温度検出部を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記誘導加熱コイルは複数であり、
前記温度検出部により検出された温度に基づき、前記複数の誘導加熱コイルによる誘導加熱を制御する制御部を備える
ことを特徴とする請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記誘導加熱コイルは、
前記第1空間に配されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記誘導加熱コイルは、
前記処理室の外部に配されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記基板支持体及び前記触媒板は夫々複数であり、
各前記基板支持体及び前記触媒板は、
前記誘導加熱コイルに関して両側に配されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記触媒板は、タングステンからなり、前記第1処理ガスは水素ガスであり、前記第2処理ガスはモノシランである
ことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一つに記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−169553(P2012−169553A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31214(P2011−31214)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】