説明

基板表面のパターン検査装置およびパターン検査方法

【課題】光の解像限界以下のパターンを含む基板を高速に検査することが可能な基板表面のパターン検査装置を提供する。
【解決手段】基板表面のパターン検査装置において、微細な繰り返しパターンを有する近接場光ヘッド101と、近接場光ヘッド101と被検査基板900とを相対的に走査させるθ駆動部311と、近接場光ヘッド101と被検査基板900との間隙を一定に保つ間隙保持機構と、近接場光ヘッド101に光を照射する光源110と、近接場光ヘッド101上の微細な繰り返しパターンと被検査基板900の表面の微細パターンとの相互作用によって生じた散乱光強度を検出する検出系201と、検出系201の出力に基づいて、被検査基板900上の微細パターンを検査する信号処理部321とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,基板表面に形成された、光の波長以下のサイズのパターンを含む微細なパターンの検査装置に関し、特に、光の解像限界以下の微細なパターンの検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板表面の微細形状の検査技術として、レーザを照射して散乱光を検出する方式が知られているが、この方式ではある程度大きさのある異物やパターン欠けなどの異常しか検出できなかった。
【0003】
また、高分解能の光学顕微鏡を高速で走査させる方式も知られているが、この方式では、光の波長で定まる解像度(0.61λ/NA、λ:光の波長、NA:対物レンズの開口数(<1))以下の欠陥は検出するのが難しく、可視光の波長の半分である200nmを切るような微細な欠陥にたいしては、高価な深紫外光学系を用いるなどして対応されてきたが、100nmを切る様なパターンに対しては対応が非常に難しくなっている。
【0004】
特に、パターンの位置ずれのような欠陥はパターンの欠落や余分なパターンや異物の付着などの欠陥に比べて、画像の明暗として現れにくく、検出が非常に困難であるものであった。
【0005】
そこで、従来では、解像度の高い電子線で基板を走査して検査を行う方法もあるが、この方法は、走査速度が桁違いに遅く、現実的な時間で基板全面の検査を行うことが困難であるという課題と、電子線を用いるために特に水晶基板のような導電性の無い基板では基板がチャージしてしまい正常な電子顕微鏡像を得ることができないという課題があった。
【0006】
また、特開2008−82999号公報(特許文献1)では、プラズモン増強ヘッドを用いて光による解像度を下回る微小な近接場光を発生させた状態で、ヘッドを基板に接近させて走査したときに、基板上のパターンから散乱された光を検出し、これによって、光の解像度に縛られずに微細な分解能で検査を行うという方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−82999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法では、微細な凹凸欠陥を散乱光によって検査するのが目的で、微細パターンのずれのような欠陥を検査することは難しいという課題があった。
【0009】
また、近接場光を発生する素子を複数並べて高速化するというアイディアも開示されているが、高速化のためには多数の素子による散乱光を独立に検出する必要があり、装置が複雑になり現実的では無いと言う課題があった。
【0010】
このような、従来技術では光の解像限界以下の微細なパターンの検査を実用的な速度で行う方法が無かった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、光の解像限界以下のパターンを含む基板を高速に検査することが可能な基板表面のパターン検査装置およびパターン検査方法を提供することである。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0014】
すなわち、代表的なものの概要は、微細な繰り返しパターンを有するヘッドまたはヘッドに対向する検査対象基板の基板面に光を照射する照射機構と、ヘッド上の微細な繰り返しパターンと検査対象基板の表面の微細パターンとの相互作用によって生じた散乱光強度を検出する検出器と、検出器の出力に基づいて、検査対象基板上の微細パターンを検査する第1の信号処理部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0016】
すなわち、代表的なものによって得られる効果は、光の解像限界以下のパターンを含む基板を高速に検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係る基板表面のパターン検査装置の構成を示す構成図である。
【図2】(a)〜(c)は本発明の実施の形態1に係る基板表面のパターン検査装置の近接場光ヘッドと被検査基板の間の間隙を保つ方法を説明するための説明図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明の実施の形態1に係る基板表面のパターン検査装置の被検査基板上のパターンと近接場光ヘッドの関係および光による解像度以下の微小な欠陥を検出する方法を説明するための説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る基板表面のパターン検査装置の近接場光ヘッドの配置を説明するための説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る基板表面のパターン検査装置の被検査基板を検査する手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態1に係る基板表面のパターン検査装置の検査結果の一例を示す図である。
【図7】(a)、(b)は本発明の実施の形態2に係る基板表面のパターン検査装置の近接場光ヘッドの構成を示す構成図である。
【図8】(a)、(b)は本発明の実施の形態2に係る基板表面のパターン検査装置の近接場光ヘッドの金属膜の構成を示す構成図である。
【図9】(a)、(b)は本発明の実施の形態3に係る基板表面のパターン検査装置のパターンの欠けおよびパターン幅異常を検出する検査方法を説明するための説明図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係る基板表面のパターン検査装置のディスクリートトラックメディア基板のサーボパターン部を含めて検査を行う検査方法を説明するための説明図である。
【図11】(a)、(b)は本発明の実施の形態3に係る基板表面のパターン検査装置のディスクリートトラックメディア基板のサーボパターン部を含めて検査を行う検査方法を説明するための説明図である。
【図12】本発明の実施の形態3に係る基板表面のパターン検査装置のディスクリートトラックメディア基板のサーボパターン部を含めて検査を行う検査方法を説明するための説明図である。
【図13】(a)〜(c)は本発明の実施の形態3に係る基板表面のパターン検査装置のビットパターンドメディア基板のサーボパターン部を含めて検査を行う検査方法を説明するための説明図である。
【図14】本発明の実施の形態4に係る基板表面のパターン検査装置の検出系の配置例を説明するための説明図である。
【図15】本発明の実施の形態4に係る基板表面のパターン検査装置の検出系の配置例を説明するための説明図である。
【図16】本発明の実施の形態4に係る基板表面のパターン検査装置の検出系の配置例を説明するための説明図である。
【図17】本発明の実施の形態5に係る基板表面のパターン検査装置のRステージを用いた構成を示す構成図である。
【図18】本発明の実施の形態5に係る基板表面のパターン検査装置のXYステージを用いた構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
(実施の形態1)
図1により、本発明の実施の形態1に係る基板表面のパターン検査装置の構成について説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る基板表面のパターン検査装置の構成を示す構成図である。
【0020】
図1において、基板表面のパターン検査装置は、微細な繰り返しパターンを有する近接場光ヘッド101、光源110、近接場光ヘッド移動部190、検出系201、アレイ検出器202、検出系移動部210、散乱光検査光源(レーザ)301、散乱光検出器302、散乱光検査ヘッド移動部303、スピンドル310、θ駆動部311、アンプ320、信号処理部321、アンプ330、信号処理部331、全体制御装置340、ユーザインターフェース341、試料搬送機構350から構成されている。
【0021】
近接場光ヘッド101は、照射機構である光源110からの光線によって照明される。近接場光ヘッド101と照明光の波長以下の間隙をもって対向する検査対象基板である被検査基板900によって散乱した光を、検出系201によってアレイ検出器202に略結像させる。
【0022】
間隙保持機構により近接場光ヘッド101と被検査基板900が間隙を保ちながら、駆動機構により間隙と水平方向に相対的に移動させることで、被検査基板900上のパターンの検査を実現する。
【0023】
駆動機構による相対移動のひとつの実現方法としては、被検査基板900を被検査基板900を搭載するスピンドル310の回転によって回転させ、近接場光ヘッド101を近接場光ヘッド移動部190によって、スピンドル310の略半径方向に移動させ、検出系201を検出系移動部210によって近接場光ヘッド101の移動と同期させて移動させればよい。
【0024】
このとき、検出系移動部210と近接場光ヘッド移動部190は同一のアクチュエータによって一体的に駆動させられてもよい。スピンドル310はθ駆動部311を介して全体制御装置340によって駆動される。また、近接場光ヘッド移動部190と検出系移動部210も全体制御装置340によって制御される。これによって、近接場光ヘッド101と被検査基板900の相対移動を実現する。
【0025】
アレイ検出器202によって検出された、散乱光の強度信号はアンプ320で増強された後、信号処理部321で処理されて欠陥情報を得るが、これはこの後詳しく述べる。
【0026】
このほかに、被検査基板900にレーザ301のような高輝度光源からの光を照射して、これによる散乱光を散乱光検出器302で検出することで、被検査基板900上の異物、傷などの欠陥を検出する光学系を有する。
【0027】
この光学系は散乱光検査ヘッド移動部303によって、全体制御装置340によって移動させながら、被検査基板900上を走査し、このとき得られた散乱光検出器302からの信号をアンプ330で増幅し、これを信号処理部331で処理することによって、被検査基板900上の比較的大きな異物、傷などの欠陥の検出を実現する。
【0028】
これにより、近接場光ヘッド101による狭ギャップの検査では、被検査基板900上の傷や異物が近接場光ヘッド101に衝突して、被検査基板900あるいは近接場光ヘッド101に損傷を与える恐れがあるが、このような傷や欠陥をあらかじめ検出して、上記損傷を防止することができる。
【0029】
また、全体制御装置340は、試料搬送機構350を制御して、被検査基板900を試料カセット(図示せず)から取り出して搬送し、スピンドル310に自動的に搭載し、検査終了後は被検査基板900をスピンドル310から取り外して試料カセット(図示せず)に格納する機能を実現する。また、ユーザインターフェース341を介して、全体制御装置340は検査の条件を入力したり、検査結果を表示する機能を実現する。
【0030】
ここで、図2により、本発明の実施の形態1に係る基板表面のパターン検査装置の近接場光ヘッドと被検査基板の間の間隙を保つ方法について説明する。図2は本発明の実施の形態1に係る基板表面のパターン検査装置の近接場光ヘッドと被検査基板の間の間隙を保つ方法を説明するための説明図である。
【0031】
図2(a)はハードディスクのヘッドの浮上に通常用いられている動圧浮上方式を応用したものである。近接場光ヘッド移動部190の可動部から弾性支持体116が出ており、この先端に近接場光ヘッド101が取り付けられている。近接場光ヘッド移動部のみでは被検査基板900の半径方向の位置精度が足りない場合は、弾性支持体116と近接場光ヘッド101の間にトラッキング用アクチュエータ150が挿入される。
【0032】
これは、圧電素子などで構成されて被検査基板900の半径方向へ近接場光ヘッドを微小駆動できるものである。被検査基板900が回転すると近接場光ヘッド101の下面に形成された浮上面114と被検査基板900の間に空気の層910ができて上方向の力が働き、これが弾性支持体116の押し付け力とつりあったところで安定に光の波長以下の微小な間隙を保って浮上する。
【0033】
さらに、近接場光ヘッド移動部190の可動部から別の梁115が出ており、この先にコイル113が取り付けられている。弾性支持体115の先端部には磁性体板112が取り付けられており、コイル113への電流の印加により、近接場光ヘッド101が引き上げられる。これを用いて、散乱光検出器302によって大きい異物・傷などの欠陥を検出した位置では一時的に近接場光ヘッド101を持ち上げて、近接場光ヘッド101および被検査基板900の保護を行う。
【0034】
また、検査の前後で被検査基板900を試料搬送機構350によってロード・アンロードする場合の近接場光ヘッド101の退避にも、このコイル113が用いられる。
【0035】
図2(b)では、別の例として、被検査基板900の移動を用いた動圧浮上ではなく、浮上面114に浮上用エアー911を吹き込んで静圧浮上を実現している。
【0036】
このようにすることで、被検査基板900を回転させる速度が遅い場合、あるいは、後述する図18に示す被検査基板900をXYステージ313で前後左右に駆動するときのように被検査基板900と近接場光ヘッド101の相対速度が変動する場合にも安定した間隙を保つことが可能となる。図示していないが、この場合にもアクチュエータ150を弾性支持体116と近接場光ヘッド101の間に挿入してもよいことはいうまでも無い。
【0037】
図2(c)では、さらに別の例として、間隙を能動的にコントロールする方法を示す。近接場光ヘッド移動部190の可動部に近接場光ヘッド上下機構191が固定されている。ここから梁115が出ており、梁115の先端にトラッキング用アクチュエータ150と間隙制御用アクチュエータ151を介して近接場光ヘッド101が取り付けられている。
【0038】
トラッキング用アクチュエータ150は、圧電素子などで構成されて被検査基板900の半径方向への近接場光ヘッドを微小駆動できるものである。間隙制御用アクチュエータ151は近接場光ヘッド191を上下に駆動させる。間隙をコントロールするために、間隙測定器180が近接場光ヘッド101に埋め込まれている。
【0039】
間隙測定器180によって測定された近接場光ヘッド101と被検査基板900の間の間隙を間隙制御用アクチュエータ151にフィードバックして間隙を一定に保つ。近接場光ヘッド上下機構191は散乱光検出器302によって大きい異物・傷などの欠陥を検出した位置では一時的に近接場光ヘッド101を持ち上げて、近接場光ヘッド101および被検査基板900の保護を行う。
【0040】
また、検査の前後で被検査基板900を試料搬送機構350によってロード・アンロードする場合の退避にも、このコイル113が用いられる。あるいは、異物・傷などの欠陥を検出した位置で一時的に近接場光ヘッド101を持ち上げる場合は、より応答の速い間隙制御用アクチュエータ151を用いてもよい。
【0041】
次に、図3により、本発明の実施の形態1に係る基板表面のパターン検査装置の被検査基板上のパターンと近接場光ヘッドの関係および光による解像度以下の微小な欠陥を検出する方法について説明する。図3は本発明の実施の形態1に係る基板表面のパターン検査装置の被検査基板上のパターンと近接場光ヘッドの関係および光による解像度以下の微小な欠陥を検出する方法を説明するための説明図である。
【0042】
図3(a)は、基板上パターン901と近接場光ヘッド101の断面図である。近接場光ヘッド101は照明光111の波長を透過する材質で構成されており、近接場光ヘッド101上には微細な周期近接場光発生パターン102が構成されている。
【0043】
これに照明光111を低角度で照射すると、照明光は近接場光ヘッド101の表面で全反射し、被検査基板900側には伝播光としての光は透過しないが、周期近接場光発生パターン102の周りに周期的な近接場光120が発生する。
【0044】
近接場光ヘッド101の上下面が並行な場合は、どのような角度で照明光111を入れても全反射の条件を満たさないが、図3(a)に示したように近接場光ヘッド101の背面の照明光111の入射部分を傾けることによって、近接場光ヘッド101の下面で照明光111が全反射する条件を作り出すことができる。
【0045】
近接場光120はこのままでは伝播しないが、被検査基板900上の基板上パターン901が接近すると、このパターンによって近接場光120が散乱を起し、散乱光が伝播する。周期近接場光発生パターン102を、基板上パターン901と同一周期となるように構成すると、図3(a)に示すように両者の位相が一致したときに散乱光が大きくなる。
【0046】
一般に近接場光は微弱だが、このような複数のパターンからの散乱光を同時に検出することによって、検出光量を大きくできるという効果がある。
【0047】
また、点状の近接場によって検査を行う方法では、近接場光の大きさ、すなわち、検出解像度に反比例して、被検査基板900全体の検査を行うのに必要な走査距離、すなわち、検査時間は増大してしまうという課題があったが、本実施の形態のように、広い面積に亘る周期状近接場パターンを用いることにより、検出解像度を保ちつつ、被検査基板900全体の検査を行うのに必要な走査距離、すなわち、検査時間を短縮することができる。
【0048】
図3(b)は、この近接場光ヘッドを上方から見た図である。検査対象の被検査基板900上の基板上パターン901は、周期状にパターンが並んだものを想定している。例えば、次世代のハードディスクの記憶媒体として開発が進んでいる、ディスクリートトラックメディアは円周状に磁性体パターンが並んでおり、情報の記録はこの各パターン(トラックと呼ばれる)上を記録・読取ヘッドが走ることで実現される。
【0049】
このような、周期近接場光発生パターン102を複数もち、それぞれの位相を90度ずつずらして4種類の領域を近接場光ヘッド101上に設けておく。散乱光を検出系201の光学系でアレイ検出器202に略結像して、それぞれの領域からの散乱光の強度情報S1、S2、S3、S4を独立して検出する。
【0050】
アレイ検出器202は微弱な光を検出できる光検出器をアレイ状に並べたものが望ましい。例えば、アバランシェフォトダイオードアレイ、ホトマル(光電子増倍管)アレイ、マイクロチャネルプレートとホトダイオードアレイの組み合わせなどが望ましい。
【0051】
このような構成しておくと、トラックの位置ずれと幅の大小が、S1、S2、S3、S4から計算できる。
【0052】
近接場光ヘッド101と基板上パターン901の間の位相と散乱強度の関係が正弦波状になる場合は、S1−S3とS2−S4の比から(トラックピッチ/2π)arctan(S1−S3)/(S2−S4)によってトラックずれを検出することができる。
【0053】
また、トラックのデューティー比はS1+S2+S3+S4から推定できる。位相と散乱強度との関係は実際には、正確な正弦波とは外れるが、あらかじめ、位相ずれを生じさせたときの、位相とS1、S2、S3、S4、あるいは、(S1−S3)/(S2−S4)との関係を実験あるいは光学シミュレーションで求めておけば、この関係を用いてS1、S2、S3、S4より位相を求めることができる。
【0054】
また、トラックのデューティー比と、S1、S2、S3、S4、あるいは、S1+S2+S3+S4との関係を同様に、実験あるいは光学シミュレーションで求めておけば、この関係を用いてS1、S2、S3、S4よりトラックのデューティー比を求めることができる。これらの計算を信号処理部321で行う。
【0055】
なお、本実施の形態では、4領域に位置ずれ量を分けて散乱光を検出しているが、ピッチの定まった正弦波信号は振幅と位相とオフセットの3パラメータで表されるので、3種類の位置ずれ量の信号を少なくとも検出すればいい。また、特に信号形状が正弦波からずれているいるときの精度を上げるために、例えば、60度ずつ位相のずれた6種類の信号を検出してもよいし、45度ずつ位相のずれた8種類の信号を検出してもよい。
【0056】
また、S1、S2、S3、S4の領域は前後しているので、信号に時間的なずれがある、ずれ時間は各領域の間隔を走査速度で割ったものである。このため、上記の計算を行う前に信号処理部321でずれ時間の補正を行い、時間を合わせてから計算を行う。
【0057】
被検査基板900をスピンドル310で回転駆動する場合の走査速度は回転角速度と半径をかけたものとなるので、上記ずれ時間は走査を行う半径上の位置によって異なることとなる。
【0058】
なお、図3(c)に示すように、周期近接場光発生パターン102のピッチは、基板上パターン901と等しいピッチでなくても、基板上パターン901のピッチの整数倍としてもよい。図3(c)は、周期近接場光発生パターン102のピッチが基板上パターン901のピッチの3倍である場合の例である。この場合でも、周期近接場光発生パターン102の個々のパターンのサイズ(幅)が基板上パターン901のサイズと同様の大きさであれば、基板上パターン901のピッチを基準にした位相に対して、信号S1、S2、S3、S4は正弦波状の応答を示すので、図3(a)に示した場合と同様の処理により、同様の結果を得ることができる。
【0059】
また、近接場光ヘッドの配置は図4に示すようにすることもできる。図4は本発明の実施の形態1に係る基板表面のパターン検査装置の近接場光ヘッドの配置を説明するための説明図である。
【0060】
図4に示すように、基板上パターン901に対して周期近接場光発生パターン102を傾けて対向するように配置する。すると、周期近接場光発生パターン102上の、図4における上下方向の位置に応じて、基板上パターン901に対する周期近接場光発生パターン102の位相が変化する。
【0061】
周期近接場光発生パターン102の像を、検出系201でアレイ検出器202の3つ以上の複数の領域、例えば、4領域に結像し、散乱強度を領域に毎に検出する。このとき、各領域の平均的な位相ずれを90°ずつずれるように周期近接場光発生パターン102の傾け量を設定すれば、これによって、図3(b)と同様の結果を得ることができる。
【0062】
なお、図4では近接場光ヘッド101に対して、周期近接場光発生パターン102を傾けているが、近接場光ヘッド101と周期近接場光発生パターン102は平行に形成し、近接場光ヘッド101を検査対象の被検査基板900に対して保持するときに傾けるように構成してもよいことはいうまでも無い。
【0063】
次に、図5および図6により、本発明の実施の形態1に係る基板表面のパターン検査装置の被検査基板を検査する手順および検査結果について説明する。図5は本発明の実施の形態1に係る基板表面のパターン検査装置の被検査基板を検査する手順を示すフローチャート、図6は本発明の実施の形態1に係る基板表面のパターン検査装置の検査結果の一例を示す図である。
【0064】
まず、全体制御装置340は試料搬送機構350を制御してカセットから試料をロードする(S100)。次に、散乱光検出器302による異物の検出を行い(S101)、S101での散乱光検出器302による異物の検出結果により、大異物があるか否かを判断する(S102)。
【0065】
S102で大異物があると判断された場合には、近接場光ヘッド101による検査をスキップし被検査基板900をアンロードする(S104)。
【0066】
S102で大異物が無いと判断された場合には、近接場光ヘッド101による検査を行い(S103)、被検査基板900をアンロードし(S104)、検査結果を表示する(S105)。
【0067】
この検査結果の表示は例えば、図6に示すように被検査基板900上の位置ずれ量や線幅の分布が濃淡で示されている。また、欠陥検出箇所を、マップ上の点で示すことや、さらに、位置ずれ分布と欠陥分布を同時に同じマップ上に示すことも可能である。
【0068】
なお、S102で大異物があった場合に、近接場光ヘッド101による検査をスキップするのではなく、大異物があった場所あるいは大異物があった場所を含む円周のみ検査をスキップしてもよい。
【0069】
また、散乱光検出器302による検査と近接場光ヘッド101による検査を順番に行うのではなく、検査速度を上げるために、両者を並行しつつ、散乱光検出器による検査を若干先行させて行ってもよい。
【0070】
この場合、図1に示したように、散乱光検査ヘッド移動部303を近接場光ヘッド移動部190および検出系移動部210と別にもっていて、散乱光による検査部位を近接場光による検査部位に対して独立して制御することにより、この動作を行うことができる。
【0071】
あるいは、後述する図17に示すように、散乱光検査ヘッド移動部303をRステージ312と別にもっていて、散乱光による検査部位を近接場光による検査部位に対して独立して制御することにより、この動作を行うことができる。
【0072】
またあるいは、後述する図18に示すように、散乱光検査ヘッド移動部303をXYステージ313と別にもっていて、散乱光による検査部位を近接場光による検査部位に対して独立して制御することにより、この動作を行うことができる。
【0073】
逆にいえば、散乱光検出器302による検査と近接場光ヘッド101による検査を順番に行う場合には、後述する図17あるいは図18に示すような散乱光検査ヘッド移動部303は必ずしも必要が無い。
【0074】
以上のように、本実施の形態では、近接場光パターンを発生させる近接場光ヘッド101を被検査基板900に近接して高速に走査し、近接場光ヘッド101によって発生した近接場光パターンと被検査基板900上のパターンとの相互作用によって散乱した光を検出することで、光の解像度限界以下の被検査基板900上のパターンを検出することが可能である。
【0075】
さらに、近接場光パターンのピッチを被検査基板900の被検査パターンのピッチと等しいかまたは整数倍として、このパターンを複数設けて相互に位相をずらし、これらの強度を比較することで微細パターンの位置ずれを検査でき、全体の強度の増減によりパターンの欠落やサイズ異常などの欠陥を検査することが可能である。
【0076】
また、複数のパターンからの散乱光を合わせて検出することにより、高速検出に伴うS/Nの低下の課題にも対応が可能である。
【0077】
さらに、レーザ301から集光したレーザ光を被検査基板900に照射してその散乱光を検出することにより、比較的大きい異物を検出するとともに、狭ギャップを保つ必要がある近接場光ヘッド101と被検査基板900の間に異物が入って近接場光ヘッド101あるいは被検査基板900にダメージを与えないように、検査を中止するかまたは、異物検出箇所を飛び越して検査を行うことが可能である。
【0078】
(実施の形態2)
実施の形態2は実施の形態1において、近接場光ヘッド101をプラズモン現象を用いたヘッドとしたものである。
【0079】
本実施の形態の基板表面のパターン検査装置としての構成や、その動作は実施の形態1と同様である。
【0080】
図7および図8により、本発明の実施の形態2に係る基板表面のパターン検査装置の近接場光ヘッドの構成について説明する。図7は本発明の実施の形態2に係る基板表面のパターン検査装置の近接場光ヘッドの構成を示す構成図、図8は本発明の実施の形態2に係る基板表面のパターン検査装置の近接場光ヘッドの金属膜の構成を示す構成図である。
【0081】
図7(a)に示すように、近接場光ヘッド101表面の金属膜121上に金属粒子122が整列して配置されている。
【0082】
金属粒子122は検査対象の被検査基板900の基板上パターン901の1倍あるいは整数倍のピッチで整列されている。これに照明光111を照射すると、金属粒子122に局在して、金属粒子中の自由電子の集団的な振動状態であるプラズモンが励起される。
【0083】
プラズモンを励起した状態の金属粒子122に基板上パターン901が近接すると、基板上パターン901で散乱光が発生するので、実施の形態1の図3に示す例と同様に近接場光ヘッド101が周期的近接場光発生ヘッドとして機能する。
【0084】
プラズモンによる共鳴励起を用いているので、より強度の強い検出光が得られるという利点がある。
【0085】
図7(b)はプラズモンを用いたさらに別の近接場光ヘッド101の構成例である。図7(b)に示すように、金属膜121中にナノギャップを構成し、ここに照明光111を照射することでプラズモンを発生する。
【0086】
これを金属膜に垂直な方向から見ると図8に示すようになっている。図8に示すように、金属膜中に白抜きで示すようなパターンのギャップを設ける。ギャップは尖った金属膜部分が対向するように形成されており、これに対して図8に示すような向きの偏光をもった光を照射すると、金属膜対向ギャップ部分に、強度の高いプラズモンが生成される。
【0087】
この金属膜ナノギャップの左右方向ピッチを基板上パターン901のピッチの1倍又は整数倍にすることで、実施の形態1と同様な散乱光を発生させることができる。
【0088】
また、縦方向には基板上パターン901のピッチの1/4周期ずつ位置をずらしたものを配置し、それぞれの領域からの散乱光をアレイ検出器の各エレメントS1〜S4で検出する。
【0089】
図8(a)は偏光が図の上下方向、図8(b)は偏光が図の左右方向の場合である。なお、本実施の形態で基本的なのは、プラズモン増強パターンの配置であり、1つ1つのプラズモン増強パターンの形状は同様のプラズモン増強効果をもつ形状であればこの派生型の形状であってもよいことはいうまでも無い。
【0090】
(実施の形態3)
実施の形態3は、実施の形態1において、位置ずれ以外の欠陥を検出するようにしたものである。
【0091】
本実施の形態の基板表面のパターン検査装置としての構成や、その動作は実施の形態1と同様である。
【0092】
図9〜図13により、本発明の実施の形態3に係る基板表面のパターン検査装置の検査方法について説明する。図9〜図13は本発明の実施の形態3に係る基板表面のパターン検査装置の検査方法を説明するための説明図であり、図9はパターンの欠けおよびパターン幅異常を検出する方法、図10〜図12はディスクリートトラックメディア基板のサーボパターン部を含めて検査を行う方法、図13はビットパターンドメディア基板のサーボパターン部を含めて検査を行う方法を示している。
【0093】
まず、パターンの欠けおよびパターン幅異常の検出では、図9(a)に示すように基板上パターン901に欠けのある場合は、欠けの部分では散乱光が弱くなるので、この分だけ全体の散乱光量が減少する。
【0094】
また、図9(b)に示すように基板上パターン901の幅が広い(デューティー比が高い)場合は近接場光120と基板上パターン901の結合効率が変わるために、全体の散乱光量が変化する。この現象を用いて、パターンの欠けや幅の変化を検出することが可能となる。
【0095】
なお、図7に示したようなプラズモン増強効果を用いた場合にも同様に検出可能である。
【0096】
ここで、図9(a)と図9(b)の区別をしたい場合には、信号の時間変化を用いればよい。すなわち、欠けは通常突発的に生じるので、信号の変化も突発的に信号が減少して、欠けの部分を通り過ぎると信号が元に戻ることになる。
【0097】
一方、幅の変化は通常ゆっくりと起こるか、あるいは露光フィールドの継ぎ目に同期して起こるので、このような信号の変化であれば、幅の変化であると推定できる。このような判断を信号処理部321で行って、欠陥種類を推定して出力するようにすればよい。
【0098】
また、ディスクリートトラックメディア基板のサーボパターン部902を含めて検査を行う場合は、図10に示すように、ディスクリートトラックメディア基板に限らず、ハードディスク基板では、同心円状のトラックが切られており、各トラックは放射状のサーボパターンによってセクターに分けられている。
【0099】
このサーボパターン部には、例えば、図10に示すように、バーストパターンと呼ばれる図10中で横方向(回転方向に対して垂直方向)のパターンがあり、磁気信号読取の基準クロックの位相調整のために用いられる。
【0100】
このようなパターンが円周方向のところどころに存在する。このバーストパターンに対して、近接場光ヘッド101に図10の中で横方向の近接場光発生パターン領域を形成し、この領域からの散乱光をアレイ検出器202上の別のエリアS0で検出する。
【0101】
すると、通常の光学的な解像度以下のパターンとしてバーストパターンが切られていても、近接場効果によってバーストパターンに応じた信号を光学的に読み取ることが可能であり、これによって、サーボパターンに欠けなどの欠陥がある場合や、位相がずれている場合を検出することができる。
【0102】
また、図11(a)に示すように、通常の円周方向に平行なパターンが切られた記録領域(A)と異なる、サーボパターン上にはバーストパターン部(B)のほかにも様々なパターンが形成されている。
【0103】
例えば、細かいドットが並んだトラッキングパターン部(D)、トラック番号およびセクター番号を示す2進数の符号が記されたアドレス部(C)などがある。
【0104】
これに対して、図11(a)のS0に対応するパターンのような横方向のパターンや、S1〜S4に対応する縦方向のパターンのかかり方(重なっている部分の面積)に応じて、検出信号S0〜S4が変化する。
【0105】
なお、図10と違って図11(a)では、領域S0に対応する近接場光発生パターン102’は、周期パターンではなく、一本の長い線状のパターンである、周期パターンとなっていなくても、パターンの長さが取れれば、必要な検出光量変化が確保できるので、このような一本の長い線状のパターンとしてもよいが、図10の領域S0と同様に、周期的パターンにしてもよい。
【0106】
一本のパターンとすることの利点は、サーボターンのような複雑でかつ円周方向のパターンのピッチも場合によって異なる場合には、得られる信号S0が予測しやすいことである。
【0107】
この信号変化はサーボパターンの配置がわかっていれば予測できる。例えば、図11(a)の基板上パターン901に対する信号S0は図11(b)のようになるはずである。
【0108】
信号変化パターンが予測値と異なっていれば、欠陥として出力する。すなわち、実際の信号と予測信号との差の絶対値が閾値を超えていれば欠陥として出力する。あるいは、別の方法として、あらかじめ正常な被検査基板900から得た信号を記憶しておいて、これと検査対象の被検査基板900を走査して得た信号が閾値以上異なっている場合に、欠陥として出力する。
【0109】
さらに別の方法として、円周上にサーボパターンは繰り返し出現するので、直前のサーボパターンからの信号との比較によって欠陥を検出してもよい。ただし、セクター番号に対するサーボパターンは、セクター毎に異なるのでこの部分は検査を行わないか又は、上記説明した予測信号あるいは正常基板から得た信号との比較を行う。
【0110】
あるいは、前の周の対応する円周上の位置とセクター番号が同じなので、この部分だけ、前の周のセクター番号部の信号との比較を行う。
【0111】
以上のような処理により、サーボパターン部も含めたパターンの異常検出を行うことが可能である。
【0112】
また、検査速度は遅くする代わりに、より細かく基板上パターン901の検査を行いたい場合は、図12に示すように、周期近接場光発生パターン102として繰り返しパターンではなく、単一のライン状パターンを用いればよい。
【0113】
次に、検査対象の基板上パターン901がディスクリートパターンメディアではなく、各ビットをパターンの1ドットに対応させたビットパターンドメディアであった場合、図10〜12に示す周期近接場光発生パターン102でも各トラックの半径方向の位置ずれを検出することは可能であるが、さらに記録ビットの円周方向の位置ずれを検出するためには、図13(a)に示したような周期近接場光発生パターン102を用いればよい。
【0114】
このような構成することで、各ビットに対応して信号S1〜S4は強弱を繰り返すことになる。この強弱の位相を検出することで記録ビットの円周方向の位置ずれを検出することができる。
【0115】
また、この各ビットに対応する信号の強弱を取り除くためには、この周波数に対応したノッチフィルタを入れてやればよい。一番簡単なノッチフィルタとしては、この周波数に対応した、一周期の時間に相当する移動平均フィルタをかければよい。
【0116】
このフィルタ後の信号を用いれば、図10〜12に示した例と同様にトラックの半径方向の位置ずれ検出を行うことができる。
【0117】
なお、ビットパターンドメディアの円周方向のドットピッチは、半径方向の位置に応じて変わるので、S1〜S4に対応する各領域内の円周方向のドットは少なめの方がよい。
【0118】
例えば、図13(b)に示す例では、3列である。この場合は、ドットピッチが例えば10%変わった場合には、真ん中の列に対して、両端の列の位相は360°×10%=36°程度ずれるが許容範囲である。これ以上ピッチが変わる場合は、ピッチの大きさに応じて何段階かに分けて、周期近接場光発生パターン102をそれぞれのピッチに対して切り替えて使えばよい。
【0119】
あるいは、周期近接場光発生パターン102の各領域S1〜S4のそれぞれの構成ドットパターンを図13(c)に示すように一列のみとすれば、円周方向のドットピッチが大きく変わっても一種類の周期近接場光発生パターン102でよいこととなる。
【0120】
(実施の形態4)
実施の形態4は、実施の形態1において、被検査基板900に対して近接場光ヘッド101と同じ側に検出系201を置いて、基板上パターン901からの散乱光を検出するようにしたものである。
【0121】
本実施の形態の基板表面のパターン検査装置としての検出系201以外の構成や、その動作は実施の形態1と同様である。
【0122】
図14〜図16により、本発明の実施の形態4に係る基板表面のパターン検査装置の検出系の配置例について説明する。図14〜図16は本発明の実施の形態4に係る基板表面のパターン検査装置の検出系の配置例を説明するための説明図である。
【0123】
図1に示す実施の形態1では近接場光ヘッド101と反対側に検出系201を配置して、基板上パターン901からの散乱光を被検査基板900を通して透過させて検出していた。
【0124】
検査対象の被検査基板900がクオーツでできている場合は、光源110にはこれを透過する170nmから3.7μmの帯域の光を用いて検出を行えばよい。例えば、記録媒体検査に関して検査したい対象としては、原版となるマスター基板と、これを転写したスタンパー基板、さらにこれを転写した記録媒体の3種類があるが、特に、スタンパー基板とマスター基板にはクオーツを用いることが多いため、上記構成が有効である。
【0125】
マスター基板としてはシリコンが用いられることもあるが、この場合はシリコンを透過する1.2μmから8μmの帯域の光を用いれば、図1に示す構成で同様に検査が可能である。近接場光を用いているため、照明波長による検査できるパターンのサイズの制限が無いため、このような長波長を用いても問題が無いという効果がある。
【0126】
これに対して、基板を透過しない光で検査を行いたいときは、図14〜図16に示す構成が有効である。
【0127】
図14では、近接場光120と被検査基板900上の基板上パターン901の相互作用によって近接場光ヘッド101側に散乱した光を、上方の検出系201で検出する。照明光111は図1に示す例と同様に斜方から照射している。
【0128】
図15では検出系201中に組み込んだミラー119に光源110からの照明光111を反射させて、検出系201と同軸で照明光111を近接場光ヘッド101に照射する。図14に示す例と同じく、近接場光120と被検査基板900上の基板上パターン901の相互作用によって近接場光ヘッド101側に散乱した光を、上方の検出系201で検出する。
【0129】
図16では照明光111を近接場光ヘッド101に対して斜め右上から照射して、その正反射光を斜め左上に置いた検出系201によって検出する。近接場光120と被検査基板900上の基板上パターン901の相互作用によって照明光の吸収状態が変わるため、これによっても、同様の検査を実現することが可能となる。
【0130】
特にプラズモンは共鳴によって特定の波長帯域で強い吸光を示すことが知られているが、この波長帯で近接場光ヘッドの照明を行えば、感度よく周期近接場光パターン102と基板上パターン901の接近状態の検出を行うことが可能となる。
【0131】
(実施の形態5)
実施の形態5は、実施の形態1において、近接場光ヘッド101と被検査基板900の相対移動を別の構成で行うようにしたものである。
【0132】
本実施の形態の基板表面のパターン検査装置としての近接場光ヘッド101と被検査基板900の相対移動の構成以外の構成や、その動作は実施の形態1と同様である。
【0133】
図17および図18により、本発明の実施の形態5に係る基板表面のパターン検査装置の構成について説明する。図17および図18は本発明の実施の形態5に係る基板表面のパターン検査装置の構成を示す構成図であり、図17はRステージを用いた構成、図18はXYステージを用いた構成である。
【0134】
図17に示す例では、スピンドル310をRステージ312に搭載することで、R−θステージを実現している。
【0135】
また、図18に示す例では、被検査基板900をXYステージ313に搭載して、これによって相対移動を実現している。
【0136】
また、XYステージ313のX軸、Y軸の一方あるいは、両方を、被検査基板900側ではなく、近接場光ヘッド101と検出系202を駆動するように構成しても、目的の相対的な移動を実現できるのはいうまでも無い。
【0137】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでも無い。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は,基板表面に形成された、光の波長以下のサイズのパターンを含む微細なパターンの検査装置に関し、パターンドメディアディスク・集積半導体・フォトニッククリスタルといった、光の波長以下の微細パターンを含むパターンの検査を高速に行い、製造条件にフィードバックする装置やシステムなどに適用可能である。
【符号の説明】
【0139】
101…近接場光ヘッド、102…周期近接場光発生パターン、110…光源,111…照明光、112…磁性体板、113…コイル、114…浮上面、115…梁、116…弾性支持体、119…ミラー、120…近接場光、121…金属膜、122…金属粒子、123…金属ギャップ、150…トラッキング用アクチュエータ、151…間隙制御用アクチュエータ、180…間隙測定器、190…近接場光ヘッド移動部、191…近接場光ヘッド上下機構、201…検出系、202…アレイ検出器、210…検出系移動部、301…散乱光検査光源(レーザ)、302…散乱光検出器、303…散乱光検査ヘッド移動部、310…スピンドル、311…θ駆動部、312…Rステージ、313…XYステージ、320…アンプ、321…信号処理部、330…アンプ、331…信号処理部、340…全体制御装置、341…ユーザインターフェース、350…試料搬送機構、900…被検査基板、901…基板上パターン、902…サーボパターン部、911…浮上用エアー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象基板上の微細パターンを検査する基板表面のパターン検査装置であって、
微細な繰り返しパターンを有するヘッドと、
前記ヘッドと前記検査対象基板とを相対的に走査させる駆動機構と、
前記ヘッドと前記検査対象基板との間隙を一定に保つ間隙保持機構と、
前記ヘッドに光を照射する照射機構と、
前記ヘッド上の前記微細な繰り返しパターンと前記検査対象基板の表面の微細パターンとの相互作用によって生じた散乱光強度を検出する検出系と、
前記検出系の出力に基づいて、前記検査対象基板上の微細パターンを検査する第1の信号処理部とを備えたことを特徴とする基板表面のパターン検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の基板表面のパターン検査装置において、
前記ヘッドは、少なくとも2つの位相の異なるパターン領域を有し、
前記検出系は、前記位相の異なるパターン領域のそれぞれに対応した散乱光を個別に検出することを特徴とする基板表面のパターン検査装置。
【請求項3】
請求項1記載の基板表面のパターン検査装置において、
前記ヘッド上のパターンは、前記検査対象基板上の検査対象パターンと僅かに角度が異なるように形成され、前記ヘッド上のパターンの少なくとも2つの領域において、前記検査対象基板上の検査対象パターンとの位相が異なり、
前記検出系は、前記位相の異なるパターン領域のそれぞれに対応した散乱光を個別に検出することを特徴とする基板表面のパターン検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の基板表面のパターン検査装置において、
前記照射機構は、全反射の条件を満たすように前記光を照射することを特徴とする基板表面のパターン検査装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の基板表面のパターン検査装置において、
前記ヘッド上のパターンが前記検査対象基板上の検査したいパターンと略等しいピッチのパターンであることを特徴とする基板表面のパターン検査装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の基板表面のパターン検査装置において、
前記ヘッド上のパターンが前記検査対象基板上の検査したいパターンの略整数倍のピッチを有するパターンであることを特徴とする基板表面のパターン検査装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の基板表面のパターン検査装置において、
前記ヘッド上のパターンが縞状のパターンであることを特徴とする基板表面のパターン検査装置。
【請求項8】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の基板表面のパターン検査装置において、
前記ヘッド上のパターンが光近接場増強素子を1次元あるいは2次元に配置したパターンであることを特徴とする基板表面のパターン検査装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の基板表面のパターン検査装置において、
レーザを前記検査対象基板に照射し、前記検査対象基板の表面からの散乱光を検出する光学系と、
前記光学系の出力に基づいて、前記検査対象基板上の異物を検出する第2の信号処理部とを備えたことを特徴とする基板表面のパターン検査装置。
【請求項10】
請求項9項記載の基板表面のパターン検査装置において、
前記第2の信号処理部による異物の検出結果に基づいて、前記検査対象基板上の異物検出箇所の前記駆動機構による走査の停止、または前記間隙保持機構による異物の回避を行うことを特徴とする基板表面のパターン検査装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の基板表面のパターン検査装置において、
前記照射機構で照射される光は、シリコン基板を透過する1.2μmから8μmの帯域の光であることを特徴とする基板表面のパターン検査装置。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の基板表面のパターン検査装置において、
前記照射機構で照射される光は、クオーツ基板を透過する170nmから3.7μmの帯域の光であることを特徴とする基板表面のパターン検査装置。
【請求項13】
検査対象基板上の微細パターンを検査する基板表面のパターン検査装置のパターン検査方法であって、
前記パターン検査装置全体を制御する全体制御装置により、微細な繰り返しパターンを有するヘッドと前記検査対象基板とを相対的に走査させ、前記ヘッドと前記検査対象基板との間隙を一定に保ち、前記ヘッドに光を照射し、前記ヘッド上の前記微細な繰り返しパターンと前記検査対象基板の表面の微細パターンとの相互作用によって生じた散乱光強度を検出し、その検出結果に基づいて、前記検査対象基板上の微細パターンを検査することを特徴とするパターン検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−197347(P2010−197347A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45707(P2009−45707)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】