説明

塗布、現像装置及び基板の裏面洗浄方法。

【課題】半導体ウエハに対してレジスト膜を形成し、露光後のウエハに対して現像を行う、塗布、現像装置において、例えばレジスト膜形成前のウエハに対して疎水化流体により疎水化処理を行うことによりウエハの裏面の周縁部が疎水化状態になる。このウエハの裏面を洗浄液とブラシとを用いて洗浄するとブラシが削れてウエハの裏面が汚染され、露光に不具合が生じる。そこでウエハの裏面を良好に行える手法を提供する。
【解決手段】露光前のウエハWを水平保持し、鉛直軸周りに回転させるスピンチャック10と、回転するウエハWの裏面51を、自転しながら洗浄する洗浄ブラシ30と、洗浄時にウエハWの裏面51に洗浄液Sを供給する洗浄液ノズル15と、を用い、少なくともウエハWの周縁部52を洗浄するときに、ウエハWの回転数80rpm以下となるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形の基板の表面にレジスト膜を塗布し、このレジスト膜を露光、現像する塗布、現像装置において、基板の裏面を洗浄する技術、及び疎水化処理されている基板の裏面周縁部を洗浄ブラシにより洗浄する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下ウエハという)に対してレジストパターンを形成する工程は、塗布、現像装置に露光装置を接続して行われるが、パターンの微細化に伴ない、基板の裏面のパーティクルが露光に影響を及ぼすようになってきている。即ち、基板の裏面にパーティクルが付着していると、載置台に基板を吸着したときにそのパーティクルにより基板が湾曲し、露光時に焦点が合わなくなってくる。このため基板に対してレジスト膜を形成し、露光後の基板に対して現像処理を行う塗布、現像装置においては、基板の裏面を清浄に保つ要請が強くなってきている。
【0003】
そこで本出願人は特許文献1に示すウエハの裏面を洗浄する洗浄装置を提案している。この洗浄装置は、スピンチャックに吸着保持されたウエハの裏面に洗浄液を供給し、ウエハを回転させると共に、洗浄ブラシを回転(自転)させてウエハWの裏面を洗浄するものであり、パーティクルを含む洗浄液SがウエハWの表面に回り込まないようにウエハを例えば500rpm〜1000rpmもの高速で回転させ、ウエハWの周縁部から洗浄液を飛散させるようにしている。
【0004】
一方、一層狭いパターンに対応するためにウエハの表面に液層を形成して露光を行う液浸露光法が検討されている。そして液浸露光時にウエハの表面の疎水性(撥水性)を大きくする手法の一つとして、ウエハの表面のレジスト膜上に保護膜などと呼ばれている撥水性膜を形成することが知られている。この保護膜は、レジスト膜の周縁部が溶剤により除去されてウエハの表面が露出している部位にも形成されることから、保護膜の剥がれを防止するために例えばレジスト液の塗布の前にウエハの表面を疎水化処理することが好ましいとされている。この疎水化処理はHMDS(ヘキサメチルジシラザン)ガスが用いられるため、このガスがウエハの裏面周縁部に回り込んで当該部位も疎水化処理される。
【0005】
しかしながら図17に示すように疎水化処理されたウエハWの裏面周縁部を洗浄ブラシ30で洗浄すると、洗浄液Sが疎水化部分の撥水力により弾かれ分裂してしまう。この現象は特にウエハWを高速で回転させる場合に顕著となり、既述のようにウエハを回転速度500rpm〜1000rpmで回転させた状態で洗浄を行おうとすると、ウエハWの裏面とブラシ30との間に洗浄液Sの液膜が形成されず、ブラシ30がウエハWの裏面に直接接触することになる。このためブラシ30が摩擦により削れて削れ滓が発生してパーティクルとなり、ウエハWの裏面が汚染されるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
[特許文献1] 特開2008−177541号公報(段落番号0043、0044)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板にレジスト膜を形成し、露光後の基板に対して現像処理を行う塗布、現像装置において、基板の裏面周縁部の疎水性が高い場合においても基板の裏面を良好に洗浄することで露光時における不具合を抑えることのできる技術を提供することにある。また他の発明の目的は、疎水化処理されている基板の裏面周縁部を洗浄ブラシにより洗浄するにあたって、洗浄ブラシの削れを抑え、パーティクルの付着が低減される方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の塗布、現像装置は、円形の基板の表面にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するためのレジスト処理部と、前記基板の表面における周縁部のレジスト膜を除去する周縁膜除去部と、レジスト液を塗布する前または前記除去部にてレジスト膜を除去した後の基板に対して疏水化用の流体を供給して、少なくとも前記基板の表面における周縁部に対して疎水化処理を行う疎水化処理部と、疏水化処理及びレジスト膜の形成がされた後の基板の裏面を洗浄する裏面洗浄部と、裏面の洗浄が行われ、更にパターン形成のための露光がされた後の基板に対して現像処理を行う現像処理部と、を備え、
前記裏面洗浄部は、基板を水平に保持して鉛直軸周りに回転させる基板保持部と、前記基板保持部により回転する基板の裏面を、自転しながら洗浄するための洗浄ブラシと、この洗浄ブラシによる洗浄時に前記基板の裏面に洗浄液を供給する洗浄液供給部と、前記基板の裏面側の少なくとも周縁部を洗浄するときには、当該基板の回転数が80rpm以下となるように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。基板の回転数の下限は特に制限がないが、スループットの観点から10rpm〜80rpmであることが好ましい。
【0009】
本発明の具体的な構成としては、前記疎水化処理部により疎水化処理されかつ前記周縁除去部によりレジスト膜の周縁部の除去がされた基板の表面に、液浸露光時にレジスト膜を保護するために撥水性の保護膜を成膜する保護膜形成部を備えた構成、
前記洗浄ブラシは、前記洗浄液供給部からの洗浄液の供給位置よりも基板の回転方向下流側に配置されていること構成、
を挙げることができる。
【0010】
本発明の塗布、現像方法は、円形の基板の表面にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成する工程と、前記基板の表面における周縁部のレジスト膜を除去する工程と、レジスト液を塗布する前または基板の表面における周縁部のレジスト膜を除去した後の基板に対して疏水化用の流体を供給して、少なくとも前記基板の表面における周縁部に対して疎水化処理を行う工程と、疏水化処理及びレジスト膜の形成がされた後の基板の裏面を洗浄する裏面洗浄工程と、裏面の洗浄が行われ、更にパターン形成のための露光がされた後の基板に対して現像処理を行う工程と、を備え、
前記裏面洗浄工程は、基板を水平に保持して鉛直軸周りに回転させると共に基板の裏面に洗浄液を供給しながら、自転する洗浄ブラシにより基板の裏面を洗浄する工程であり、前記基板の裏面側の少なくとも周縁部を洗浄するときには、当該基板の回転数が80rpm以下となるように設定されていることを特徴とする。
【0011】
基板の裏面洗浄方法は、その裏面が疎水化処理された基板を水平に保持して鉛直軸周りに回転させると共に基板の裏面に洗浄液を供給しながら、自転する洗浄ブラシにより基板の裏面を洗浄し、前記基板における疎水化処理された部位を洗浄するときには、当該基板の回転数が80rpm以下となるように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板の裏面にパーティクルが付着することで露光の不具合が生じることを避けるために、露光前に基板の裏面を洗浄液により洗浄するにあたって、基板に疎水化処理がされていて基板の裏面周縁部も疎水化処理されている場合に、基板の回転数を80rpm以下の低速で回転させながら洗浄ブラシにより洗浄している。このため洗浄ブラシと基板との間に液膜が保持され、洗浄ブラシの削れが抑えられるので、パーティクルの付着が低減される。また他の発明では、基板の裏面洗浄のタイミングは問わないが、基板の回転数を80rpm以下の低速で回転させながら洗浄ブラシにより洗浄していることから、疎水化されている基板の裏面を良好に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】塗布、現像装置の全体を示す平面図である。
【図2】塗布、現像装置の全体を示す斜視図である。
【図3】塗布、現像装置の全体を示す断面図である。
【図4】疎水化処理ユニットの縦断側面図である。
【図5】塗布ユニットの断面図である。
【図6】裏面洗浄装置の断面図である。
【図7】裏面洗浄装置の平面図である。
【図8】裏面洗浄装置で洗浄されるウエハについて説明するための説明図である。
【図9】裏面洗浄装置でウエハを洗浄する工程について説明するための第1の説明図である。
【図10】裏面洗浄装置でウエハを洗浄する工程について説明するための第2の説明図である。
【図11】裏面洗浄装置でウエハを洗浄する工程について説明するための第3の説明図である。
【図12】裏面洗浄装置でウエハを洗浄する工程について説明するための第4の説明図である。
【図13】本実施形態の裏面洗浄装置の効果について説明するためのグラフである。
【図14】ウエハを80rpmで回転させて洗浄したときのウエハの裏面を示す写真である。
【図15】ウエハを500rpmで回転させて洗浄したときのウエハの裏面を示す写真である。
【図16】従来の裏面洗浄装置について説明するための第1の平面図である。
【図17】従来の裏面洗浄装置について説明するための断面図である。
【図18】従来の裏面洗浄装置について説明するための第2の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の塗布、現像装置の実施形態は、キャリアブロックB1、処理ブロックB2及びインターフェイスブロックB3を備えており、処理ブロックB2とインターフェイスブロックB3との間には、後述の裏面洗浄装置(裏面洗浄装置)を有する洗浄ブロックB5が備えられている。そして洗浄ブロックB5はインターフェイスブロックB3を介して露光装置B4に接続されている。キャリアブロックB1は、載置部90上に載置された密閉型のキャリア(FOUP)C1から受け渡しアームA1がウエハWを取り出して、隣接する処理ブロックB2に受け渡すと共に、受け渡しアームA1によって処理ブロックB2にて処理された処理済みのウエハWを受け取りキャリアC1に戻すように構成されている。
【0015】
処理ブロックB2は、図2、図3に示すように、この例では現像処理を行うためのブロック(以下、DEV層という)と、レジスト膜の下層側に形成される反射防止膜の形成処理を行うためのブロック(以下、BCT層という)と、レジスト液の塗布処理を行うためのブロック(以下、COT層という)と、レジスト膜の上層側に形成される保護膜の形成処理を行うためのブロック(以下、TCT層という)と、を備えており、各領域を下から順に積層して階層化することによって構成されている。
【0016】
BCT層は、ウエハWの表面に対して疎水化処理を行うための疎水化処理部である疎水化処理ユニット60(図4参照)と、反射防止膜を形成するための反射防止膜用の溶液をスピンコーティングにより塗布する液処理ユニットと、液処理ユニットにて行われる処理の前処理及び後処理を行うための加熱、冷却系の処理ユニット群と、各ユニット間でウエハWの受け渡しを行う搬送アームA2とを備えている。COT層は、レジスト膜を形成するためのレジスト液をスピンコーティングにより塗布するレジスト処理部である塗布ユニット80(図5参照)と、この塗布ユニット80にて行われる処理の前処理及び後処理を行うための加熱、冷却系の処理ユニット群と、各ユニット間でウエハWの受け渡しを行う搬送アームA3とを備えている。
【0017】
TCT層は、レジスト膜の上に液浸露光時に当該レジスト膜を保護する保護膜を形成するための処理液をスピンコーティングにより塗布する液処理ユニットと、この液処理ユニットにて行われる処理の前処理及び後処理を行うための加熱、冷却系の処理ユニット群と、各ユニット間でウエハWの受け渡しを行う搬送アームA4とを備えている。またDEV層は、例えば一つのDEV層内に二段積層された現像処理部である現像ユニットと、この現像ユニットにウエハWを搬送する搬送アームA5とを備えている。そして処理ブロックB2には、図1及び図2に示すように棚ユニットU1と、棚ユニットU1の各部同士の間でウエハWを搬送する昇降自在な受け渡しアームA6とが配設されている。なお図1においてM1は、各々加熱部冷却部等を積層した処理ユニット群である。
【0018】
処理ブロックB2の奥側には、洗浄ブロックB5及びインターフェイスブロックB3を介して露光装置B4が接続されている。処理ブロックB2と洗浄ブロックB5とは、棚ユニットU2を介して接続されており、洗浄ブロックB5とインターフェイスブロックB3とは、二つの棚ユニットU3、U4に設けられた、ウエハWの受け渡しユニットを介して接続されている。
【0019】
これら棚ユニットU3、U4は、ウエハWの表面を洗浄する洗浄装置と、ウエハWの裏面を洗浄する裏面洗浄装置1とが複数積層されている。また洗浄ブロックB5には、棚ユニットU3、U4の他に、昇降自在かつ鉛直軸回りに回転自在でかつ進退自在に構成された移載アームA8が設けられている。この移載アームA8は、処理ブロックB2から露光を行う前のウエハWを、棚ユニットU3、U4の受け渡し部を介して受け取り、洗浄装置や裏面洗浄装置1に搬送すると共に、洗浄後のウエハWを棚ユニットU3、U4の受け渡し部へと搬送し、またインターフェイスブロックB3から搬送された露光済みのウエハWを受け取り、棚ユニットU3、U4内の受け渡し部へと搬送する。そして移載アームA8は、棚ユニットU3、U4の受け渡し部を介して移載アームA7と、後述のシャトルアームEとDEV層の搬送アームA5との間でウエハWの受け渡しを行う役割を持っている。
【0020】
インターフェイスブロックB3には、昇降自在かつ鉛直軸回りに回転自在でかつ進退自在に構成された移載アームA7が設けられており、移載アームA7は、洗浄ブロックB5から洗浄済みのウエハWを受け取り、露光装置B4に搬送すると共に、露光装置B4から露光済みのウエハWを受け取り、洗浄ブロックB5へと受け渡すためのものである。またBCT層とDEV層との間には、棚ユニットU1に設けられた受け渡しユニットCPL11から棚ユニットU2に設けられた受け渡しユニットCPL12にウエハWを直接搬送するための専用の搬送手段であるシャトルアームEが設けられている。
【0021】
ここで疎水化処理ユニット60及び塗布ユニット80は周知のものを使用できるが、その構造について簡単に述べておく。疎水化処理ユニット60は、図4に示すように処理室61の上面に設けられた供給口62から、HMDS液を気化させたガスを処理室61内に供給する。そして処理室61の加熱板63に載置されているウエハWの上面にHMDSガスを供給してウエハWの表面を疎水化する。なおこのときウエハWの裏面周縁部にもガスが回り込み、疎水化処理されることになる。処理室61は、上蓋64とベース体65により構成されており、図示しない開閉駆動部によって上蓋64が上昇し、加熱板63と搬送アームA2との間でウエハWの受け渡しが行われるようになっている。なお図4に示す66は、処理室61内を排気する排気ポンプ、67はHMDSガスの供給源である。
【0022】
塗布ユニット80では、図5に示すように、スピンチャック81で吸着支持したウエハWを回転させながら、レジスト液供給ノズル82からレジスト液を供給してウエハWの表面(反射防止膜41の表面)にレジスト膜42が形成される。次いで、周縁除去部であるエッジリムーバー83をウエハWの周縁部の上方へと移動させ、溶剤をウエハWの周縁部に供給して、周縁部の反射防止膜41及びレジスト膜43が除去される。なお図5に示す84はスピンチャック81を回転させるモータ、85はウエハWから振り切られる溶液の飛散を防止するカップ体、86は、カップ体85内の気体を排気する排気口、87は、カップ体85内の廃液を排出するドレインポート、88はレジスト液供給源、89は溶剤供給源である。
【0023】
このような塗布、現像装置は露光装置に接続されてレジストパターン形成システムが構成される。このシステムにおけるウエハWの流れは次の通りとなる。図3に示すように、まずキャリアブロックB1のキャリアC1に積載されているウエハWを、受け渡しアームA1により棚ユニットU1の処理ブロックB2のBCT層に対応する受け渡しユニットCPL2に搬送する。次いでウエハWは受け渡しユニットCPL2から、搬送アームA2によりBCT層内の既述の疎水化処理ユニット60に搬送されて疎水化処理が行われ、次いでBCT層内の図示しない液処理ユニットで反射防止膜が形成されて受け渡しユニットCPL3に搬送される。その後ウエハWは棚ユニットU1のバッファユニットBF2→受け渡しアームA6→受け渡しユニットCPL3→搬送アームA3→COT層へと搬送され、既述の塗布ユニット80にてレジスト膜が形成される。
【0024】
次いでBCT層内の図5に示す塗布ユニット80と同構成の液処理ユニットで、反射防止膜用の溶液が塗布されて反射防止膜41(図5、11参照)が形成されて、ウエハWは受け渡しユニットCPL3に搬送される。その後受け渡しユニットCPL3→COT層内の搬送アームA3へと搬送され、塗布ユニット80にてレジスト膜が形成される。レジスト膜形成後のウエハWは、受け渡しユニットBF3→受け渡しアームA6(図1参照)→受け渡しユニットCPL4を介してTCT層に受け渡され、レジスト膜42の上に保護膜43(図11参照)が形成された後、受け渡しユニットTRS4に受け渡される。なおレジスト膜の種類によっては、反射防止膜を形成しない場合がある。
【0025】
レジスト膜が形成されたウエハWは、受け渡しアームA6により受け渡しユニットBF3、TRS4を介して受け渡しユニットCPL11に受け渡され、シャトルアームEにより棚ユニットU2の受け渡しユニットCPL12を介して洗浄ブロックB5へと搬送される。なお図3中のCPLが付されている受け渡しユニットは、複数枚のウエハWを載置可能なバッファユニットを兼ねている。
【0026】
次にウエハWは移載アームA8により棚ユニットU3、U4へと搬送され、洗浄装置や既述の裏面洗浄装置によって洗浄される。そして洗浄後のウエハWは、インターフェイスブロックB3を介して露光装置B4に搬送されて露光処理が行われる。その後ウエハWは処理ブロックB2に戻されてDEV層にて現像処理が行われ、搬送アームA5により棚ユニットU1における受け渡しアームA1のアクセス範囲の受け渡し台に搬送される。そして受け渡しアームA1を介してキャリアC1へと戻される。
【0027】
次に本実施形態の洗浄ブロックB5の棚ユニットU3、U4に積層されている裏面洗浄装置1について説明する。裏面洗浄装置1は、図6、図7に示すように、略矩形状で上面が開口しているベースカップ20内に、移載アームA8(図1参照)から受け取ったウエハWを略水平に吸着保持する、基板保持部であるスピンチャック10と、ウエハWの裏面51を洗浄するためのブラシユニット3とを設けた構造となっている。
【0028】
スピンチャック10は、回転軸12を介してスピンチャックモータ11によって回転する。スピンチャック10及び回転軸12側方には、昇降ピン13が設けられており、昇降ピン13の下部に昇降ピン13を昇降させる昇降部14が設けられている。昇降ピン13は、昇降してウエハWの裏面と当接し、移載アームA8との協働作用により移載アームA8とスピンチャック10との間でウエハWの受け渡しを行う。
【0029】
スピンチャック10及び昇降ピン13の周囲には、ウエハWの裏面51に供給された洗浄液Sが内方側(スピンチャック10側)へ進入することを防止するためのガード21が設けられている。ガード21は、ベースカップ20の底部から上方に向けて立ち上がるように伸びる円筒形をしており、このガード21の内部にスピンチャックモータ11と昇降部14とが設置されている。
【0030】
ベースカップ20の上方には、上カップ22が設けられており、ウエハWは上カップ22の上開口部23から上カップ22内に搬入されてスピンチャック10に吸着保持される。またスピンチャック10に吸着保持されたウエハWは、その周囲を上カップ22によって覆われることになり、洗浄時に洗浄液Sが裏面洗浄装置1の外部に飛散することを防止されている。そして本実施形態では、側方からみたときにベースカップ20の上部と上カップ22の下部とがオーバラップするように構成されており、このベースカップ20と上カップ22とによってカップ体が構成される。
【0031】
上カップ22内におけるウエハWの載置領域の下方側には、洗浄液供給部である洗浄液ノズル15と、ブラシユニット3の洗浄ブラシ30とが配置される。洗浄ブラシ30の材質は例えばPVA(ポリビニルアルコール)が用いられる。洗浄液ノズル15は、洗浄液供給源16に配管17を介して接続されている。なお洗浄ノズル15の位置は、図7に示すように洗浄ブラシ30の近傍に設けられているが、図6では、説明の便宜上洗浄液ノズル15を洗浄ブラシ30の反対側に記載している。ブラシユニット3は、ウエハWの裏面51を洗浄する洗浄ブラシ30の下部に、洗浄ブラシ30を回転させるブラシモータ31と、洗浄ブラシ30とブラシモータ31とを連結する回転軸32とを備えており、洗浄ブラシ30はブラシモータ31の駆動力により回転する。またブラシモータ31は、ブラシアーム33の一端部に積載されている。
【0032】
ブラシアーム33は、ベースカップ20の外側からベースカップ20内に向けて水平に伸び、ベースカップ20と上カップ22との間の領域で鉛直下方に伸び、その後上カップ22の下端と干渉しないように上カップ22内に向けて略水平に伸びる形状をしている。そしてカップ体22内にあるブラシアーム33の一端部にブラシモータ31が積載され、ベースカップ20の外側にあるブラシアーム33の他端部には、当該ブラシアーム33を旋回させる旋回モータ34が設けられている。そして旋回モータ34の駆動力によりブラシアーム33は旋回し、図7に示すように、洗浄ブラシ30の位置をウエハWのエッジ部分52とウエハWの中央部側との間で移動させる。
【0033】
そして本実施形態の裏面洗浄装置1では、スピンチャックモータ11、昇降部14、洗浄液供給源16、ブラシモータ31及び旋回モータ34に、これらを制御する制御部18が接続されており、制御部18でこれらの部材を駆動制御することにより、この裏面洗浄装置1ではウエハWの裏面51の洗浄を行う。なお図6に示す24はベースカップ20内に溜まった洗浄液Sの廃液を排出するためのドレインポート、25はベースカップ20内の気体を排気する排気口、26は排気口に洗浄液Sの廃液が流入するのを防止するためのカバーである。
【0034】
次に、裏面洗浄装置1でウエハWの裏面51を洗浄する流れについて説明する。まずこの裏面洗浄装置1で洗浄が行われるウエハWについて図8を参照して説明する。本実施形態のウエハWは、図8(a)に示すように、疎水化処理ユニット60にて表面50が疎水化され、その上に反射防止膜41が形成されて、その上に塗布ユニット80でレジスト膜42が形成される。次いで、図8(b)に示すように、塗布ユニット80のエッジリムーバー83によって、ウエハWの表面50の周縁部に溶剤を供給して、周縁部の反射防止膜42とレジスト膜43とを除去し、表面50を露出させる。その後レジスト膜42の上からウエハWの表面50の全面に亘って保護膜43を形成し、このウエハWを裏面洗浄装置1で洗浄する。なおウエハWは、既述のように水化処理を行うときにHMDSガスがウエハWの裏面51の周縁部52に回り込み、この周縁部52においても疎水化処理が行われる。疎水化処理が行われる周縁部の幅(疎水化部分の内端からウエハWの外縁までの距離)は例えば15mm程度である。また疎水化処理が行われた部位の水の接触角は30°以上である。
【0035】
このようなウエハWの裏面51を洗浄する場合、まず図9に示すように、洗浄ブロックB5の移載アームA8によって液浸露光前のウエハWがスピンチャック10の上方へと搬送され、昇降ピン13の上昇によって移載アームA8からウエハWが離間し、移載アームA8が後退する。この実施の形態に示す洗浄装置は、その後詳しくは、ウエハWの中心部が円筒状のガード21から外れた状態で図示しない水平、昇降自在な吸着パッドによりウエハWが保持され、先ずウエハWの当該中心部が洗浄ブラシ30により洗浄される。その後、当該吸着パッドからウエハWがスピンチャック10に受け渡されて図10に示すように保持されることになる。そして図10に示すように洗浄液ノズル15から例えば純水である洗浄液SをウエハWの裏面51に供給すると共に、スピンチャック10によりウエハWを80rpm以下、例えば50rpmの速度で回転させ、洗浄ブラシ30を例えば100rpmで回転させながらウエハWの裏面51の洗浄を開始する。図11は、ウエハWを裏面から見た図であり、洗浄ブラシ30は、洗浄液ノズル15による洗浄液Sの供給位置に対してウエハWの回転方向の下流側に位置している。従ってウエハWの裏面側に供給(吐出)された洗浄液Sは、ウエハWの裏面をウエハWの回転方向に流れながら遠心力により外側に広がり、洗浄ブラシ30が位置する領域に流れ込む。洗浄ブラシ30は、アーム33により横に移動しながらガード21の外側領域におけるウエハWの裏面を満遍なく洗浄する。
【0036】
後述の実験結果から分かるように、疎水化処理されているウエハWの裏面周縁部においても洗浄後のパーティクルの付着が少ないことから、洗浄の様子は次のように推定される。即ち、疎水化処理されている部位に洗浄液Sが到達すると、大きな表面張力が作用し、液流が早い場合には水滴状になりやすい。これに対してウエハWの回転数が極端に遅い場合には液流が遅いことから水滴状になりにくく、そのために図12に示すように洗浄ブラシ30とウエハWの裏面との間に安定した液膜が介在することができ、このため洗浄ブラシ30とウエハWの削れが抑えられ、パーティクルの発生が低減されると考えられる。このような作用が得られるためには、後述の実験例からも分かるようにウエハWの回転数は200rpm程度よりも低いこと、好ましくは100rpmよりも低いことが条件であるが、ウエハWの表面側への洗浄液の回りこみを避けるという条件を加重すると、80rpm以下であることが必要である。またウエハWが回転していればウエハWの裏面の周縁部全体を洗浄することができ、またパーティクルの発生を低減させることができるので、ウエハWの回転数の下限については0rpmよりも大きいこと、つまりウエハWが回転してさえいればよい。しかしながら塗布、現像装置の全体のスループットを当該ウエハの裏面洗浄工程により落とすことは避けなければならず、この点からすればウエハWの回転数は10rpmよりも大きいことが好ましい。つまり本発明は、ウエハWの回転数の上限が重要であり、下限については裏面洗浄の機能が発揮される範囲であれば許容される。
【0037】
そして洗浄が終了したウエハWは、ウエハWを裏面洗浄装置1に搬入した工程と逆の手順で移載アームA8に受け渡し、移載アームA8によって裏面洗浄装置1のから搬出される。これによりウエハWの裏面51の洗浄が終了し、以後は、他の未洗浄のウエハWに対して上記工程を繰り返す。
なおこの例では、洗浄液ノズル15はウエハWの中央寄りに設けられているが、例えばウエハWの中心部付近から周縁部に亘ってウエハ半径に沿って伸びる横長のノズルであってもよい。
洗浄ブラシ30の回転数は100rpmとしたが、あまり高い回転数であると洗浄液が水滴状になりやすくなり、逆にあまり低い回転数であると洗浄能力が小さくなることから、50rpm〜300rpmであることが好ましい。またウエハWの回転数は、疎水化処理されているウエハWの裏面周縁部を洗浄するときだけ80rpm以下例えば50rpmに設定し、それ以外の部位についてはこれよりも高い回転数に設定しても良いし、疎水化処理されている部位及び疎水化処理されていない部位のいずれについても上述のように低速に設定するようにしてもよい。
【0038】
上述の実施形態によれば、ウエハWの裏面を洗浄液により洗浄するにあたって、ウエハWに疎水化処理がされていてウエハWの裏面周縁部も疎水化処理されている場合に、ウエハWの回転数を80rpm以下の低速で回転させながら洗浄ブラシ30により洗浄している。このため洗浄ブラシ30とウエハWとの間に液膜が保持され、洗浄ブラシ30の削れが抑えられ、またウエハWの表面側への洗浄液の回り込みも抑えられ、ウエハWの裏面のパーティクルの付着が低減され、またウエハWの表面周縁部の汚染も抑えられる。従ってウエハWを疎水化処理して既述の保護膜の剥がれを防止し、しかもウエハWの裏面周縁部が疎水化されていても良好に洗浄できて、パーティクルの付着が低減できる。このため露光時にパーティクルの存在によりウエハWが(ミクロレベルではあるが)撓むことが抑えられ、良好な露光を行うことができる。
【実施例】
【0039】
本発明の効果を確認するために行った実験について、以下図13ないし図14を参照して説明する。本実験は、本実施形態の裏面洗浄装置1を用い、裏面51の周縁部52が疎水化処理されたウエハWを洗浄したときの裏面51に付着しているパーティクルの量を調べた。この実験では、洗浄ブラシ30を100rpmで回転させた状態で、ウエハWの回転数を50rpmから1000rpmまで変更し、各回転数で洗浄したときのウエハWの裏面51に付着しているパーティクルの量を調べている。なおパーティクルの量は、洗浄後のウエハWの裏面51をパーティクルカウンタでカウントした個数である。
【0040】
上記実験結果について説明する。図13は、縦軸にパーティクルの量(個)、横軸にウエハWの回転数(rpm)をとったグラフであり、図14はウエハWを50rpmで回転させて洗浄したときの裏面51の様子を示し、図15はウエハWを500rpmで回転させて洗浄したときの裏面51の様子を示している。図13及び図14に示すように、ウエハWを50rpmで回転させて裏面51を洗浄した場合、裏面51に付着していたパーティクルの量は344個であり、全体的にパーティクルが除去されていることが判る。
【0041】
これに対し、ウエハWを500rpmで回転させて裏面51を洗浄した場合、図12に示すように、裏面51に付着していたパーティクルの量は、3688個と50rpmで洗浄したときに10倍以上となった。そして図15に示すようにウエハWの裏面51では、周縁部にパーティクルが大量に付着しているのが判る。このことから、500rpmでウエハWを回転させて洗浄を行った場合、図17及び図18に示すように周縁部52で洗浄液Sの液膜が形成されず、洗浄ブラシ30とウエハWとが直接接触して洗浄ブラシ30が削れ、削れ滓がパーティクルとなって付着していることが判る。
【0042】
さらに図13に示すようにウエハWを1000rpmで回転させて裏面51を洗浄した場合には、パーティクルの量が22091個と50rpmで洗浄したときの約70倍になっており、このことからも回転速度が速くなるほど洗浄ブラシ30の削れ量が増え、その分パーティクルの量が増えるものと考えられる。従って周縁部52が疎水化処理されている場合には、ウエハWの回転数を低速にして洗浄を行った方が有利であることが判る。
【0043】
なお図13に示すように、ウエハWを100rpm〜400rpmで回転させて裏面51を洗浄した場合には、パーティクルの量が449個〜1218個と少ない。しかしながら100rpm〜400rpmでウエハWを回転させた場合、裏面51に供給された洗浄液SがウエハWの表面50へと回り込み、ウエハWの表面50にパーティクルが付着する現象が発生するため、ウエハWの洗浄には適さない。
【符号の説明】
【0044】
1 裏面洗浄装置
3 ブラシユニット
10 スピンチャック
15 洗浄液ノズル
16 洗浄液供給源
18 制御部
20 ベースカップ
21 ガード
22 上カップ
30 ブラシ
32 回転軸
33 ブラシアーム
41 反射防止膜
42 レジスト膜
43 保護膜
60 気化ユニット
61 処理室
62 供給口
63 加熱板
67 HMDSガス供給源
80 塗布装置
81 スピンチャック
82 レジスト液供給ノズル
83 エッジリムーバー
85 カップ体
88 レジスト液供給源
89 除去液供給源
90 載置部
W ウエハ
A1、A6 受け渡しアーム
A2、A3、A4、A5 搬送アーム
A7、A8 移載アーム
B1 キャリア載置ブロック
B2 処理ブロック
B3 インターフェイスブロック
B4 露光装置
B5 洗浄ブロック
C1 キャリア
E シャトルアーム
S 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の基板の表面にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するためのレジスト処理部と、
前記基板の表面における周縁部のレジスト膜を除去する周縁膜除去部と、
レジスト液を塗布する前または前記除去部にてレジスト膜を除去した後の基板に対して疏水化用の流体を供給して、少なくとも前記基板の表面における周縁部に対して疎水化処理を行う疎水化処理部と、
疏水化処理及びレジスト膜の形成がされた後の基板の裏面を洗浄する裏面洗浄部と、
裏面の洗浄が行われ、更にパターン形成のための露光がされた後の基板に対して現像処理を行う現像処理部と、を備え、
前記裏面洗浄部は、基板を水平に保持して鉛直軸周りに回転させる基板保持部と、
前記基板保持部により回転する基板の裏面を、自転しながら洗浄するための洗浄ブラシと、
この洗浄ブラシによる洗浄時に前記基板の裏面に洗浄液を供給する洗浄液供給部と、
前記基板の裏面側の少なくとも周縁部を洗浄するときには、当該基板の回転数が80rpm以下となるように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする塗布、現像装置。
【請求項2】
前記疎水化処理部により疎水化処理されかつ前記周縁除去部によりレジスト膜の周縁部の除去がされた基板の表面に、液浸露光時にレジスト膜を保護するために撥水性の保護膜を成膜する保護膜形成部を備えたことを特徴とする請求項1記載の塗布、現像装置。
【請求項3】
前記洗浄ブラシは、前記洗浄液供給部からの洗浄液の供給位置よりも基板の回転方向下流側に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の塗布、現像装置。
【請求項4】
円形の基板の表面にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成する工程と、
前記基板の表面における周縁部のレジスト膜を除去する工程と、
レジスト液を塗布する前または基板の表面における周縁部のレジスト膜を除去した後の基板に対して疏水化用の流体を供給して、少なくとも前記基板の表面における周縁部に対して疎水化処理を行う工程と、
疏水化処理及びレジスト膜の形成がされた後の基板の裏面を洗浄する裏面洗浄工程と、
裏面の洗浄が行われ、更にパターン形成のための露光がされた後の基板に対して現像処理を行う工程と、を備え、
前記裏面洗浄工程は、基板を水平に保持して鉛直軸周りに回転させると共に基板の裏面に洗浄液を供給しながら、自転する洗浄ブラシにより基板の裏面を洗浄する工程であり、前記基板の裏面側の少なくとも周縁部を洗浄するときには、当該基板の回転数が80rpm以下となるように設定されていることを特徴とする塗布、現像方法。
【請求項5】
疎水化処理されかつレジスト膜の周縁部の除去がされた基板の表面に、液浸露光時にレジスト膜を保護するために撥水性の保護膜を成膜する工程を含むことを特徴とする請求項4記載の塗布、現像方法。
【請求項6】
前記洗浄ブラシによる洗浄位置は、洗浄液の供給位置よりも基板の回転方向下流側であることを特徴とする請求項4または5記載の塗布、現像方法。
【請求項7】
その裏面が疎水化処理された基板を水平に保持して鉛直軸周りに回転させると共に基板の裏面に洗浄液を供給しながら、自転する洗浄ブラシにより基板の裏面を洗浄し、前記基板における疎水化処理された部位を洗浄するときには、当該基板の回転数が80rpm以下となるように設定されていることを特徴とする基板の裏面洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−287686(P2010−287686A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139555(P2009−139555)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】