変位測定装置、ステージ装置、露光装置、スケール製造方法、及びデバイス製造方法
【課題】 物体の変位量を高精度に測定可能な変位測定装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の一側面としての変位測定装置は、格子パターン6が形成されたスケール7と、スケール7に光を照射する光源と、スケール7の格子パターン6で回折された光を受光する受光素子と、を備える。格子パターン6の形状は、その格子パターン6の格子方向Yに一定の周期で変化している。受光素子は、格子パターン6上の、格子方向Yにその周期の自然数倍の長さを有する領域100で回折された光を受光する。
【解決手段】 本発明の一側面としての変位測定装置は、格子パターン6が形成されたスケール7と、スケール7に光を照射する光源と、スケール7の格子パターン6で回折された光を受光する受光素子と、を備える。格子パターン6の形状は、その格子パターン6の格子方向Yに一定の周期で変化している。受光素子は、格子パターン6上の、格子方向Yにその周期の自然数倍の長さを有する領域100で回折された光を受光する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位測定装置、ステージ装置、露光装置、スケール製造方法、及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、物体(変位物体)の位置情報、移動量、回転量等の変位量を測定する目的で、ロータリーエンコーダおよびリニアエンコーダ等の変位測定装置が使用されている。その中で、高精度に変位量を測定する方式として、光の回折干渉現象を応用した格子干渉型のエンコーダが知られている。格子干渉型エンコーダは、回折格子が形成されたスケールに対してコヒーレントな光を入射させ、異なる次数の回折光を干渉させて、得られた干渉光の位相変化に基づいてスケールの変位量を求める装置である。
【0003】
図8は、特許文献1に記載された格子干渉方式の変位測定装置の概略図であり、変位測定装置を露光、検査及び測定を行う露光装置300に適用した場合を表す。露光装置300は、露光ユニット27から出射された放射ビーム26を、ギャップ25を介して基板テーブル11上の基板36に導き、基板36の露光、検査及び測定を行う。変位測定装置は、エンコーダ本体(ヘッド)とスケールを有し、基板36を支持する基板テーブル11の基準フレーム13に対する変位を測定する。基準フレーム13には4つのスケール31、32、33、34が取り付けられ、基板テーブル11上の対応する部分11a〜11dに取り付けられたエンコーダ本体21、22、23、24により、基板テーブル11の基準フレーム13に対する変位が測定される。この場合、例えば、基準回折格子を用いて放射ビームを+1次回折光および−1次回折光に分割した後、±1次回折光をスケールに入射させて、回折した光を重ね合わせて干渉させる。+1次回折光と−1次回折光との間の位相差の変化から、基準回折格子に対するスケールの変位を測定することができる。尚、4つのスケール31〜34に形成された格子パターンの向きを、少なくとも異なる2方向になるように配置することで、エンコーダ21〜24により異なる2方向への変位を測定できるので、基板テーブル11のXY平面上の変位を測定することが可能となる。
【0004】
ここで、スケールの変位量をΔX、スケールの格子ピッチをPとすると、移動前後でのm次回折光の1回反射における位相変化量Δφは、
Δφ=2πmΔX/P ・・・(式1)
で表される。従って、1次回折光(m=1)の場合には、スケールを1ピッチ移動させると、位相が2πだけ変化する。このため、+1次回折光と−1次回折光を重ね合わせる場合には、格子1ピッチの移動に対して相対的に4πの位相ずれが生じる。この結果、格子1ピッチのスケール移動につき、2周期の位相変化が発生する。
【0005】
格子干渉型エンコーダにおいては、位相変化をいかに細かく測定できるかが、高精度な測定を行う上で重要となる。上記のように位相変化量Δφは(式1)のように表されるから、格子ピッチを小さくすることで、格子1ピッチのスケールの移動に伴う位相変化量Δφが大きくなる。この結果、位相変化を細かく測定することが可能となるため、高精度な変位測定を実現することができる。従って、高い精度で測定を行うためには、いかに細かい格子ピッチの微細スケールを用いるかが重要なポイントとなる。
【0006】
微細スケールの製造方法としては、レーザビームを用いてスケールに格子パターンを描画するレーザ描画方式が一般的に知られている(特許文献2)。特許文献2に記載のレーザ描画装置では、ガルバノスキャナとfθレンズを介して加工面にレーザビームを集光し、スケールサイズに応じてガルバノスキャナを動作させることにより、レーザビームを走査して、パターンを描画する。そして、その原理上、fθレンズで集光された加工面におけるビーム径が最小パターンの幅、すなわち加工されるパターンの解像度に相当するため、高い加工精度を実現することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−318119
【特許文献2】特登録03435601
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、レーザ描画方式でのスケールの製造においては、描画装置の光学系(主にfθレンズ特性)に起因したパターンずれが発生し、スケールの格子線に曲がりが生じる。すなわち、レーザビームが走査方向に対して非直線性成分をもつ。大判スケールの製造においては、走査長さの分だけステップして次の操作を繰り返しながら描画を行うため、格子方向に周期的な製造誤差を有する格子パターンが形成される。
【0009】
ここで、格子方向に周期的な曲がりを有するパターンが形成された大判スケールを用いて変位測定を行う場合について考える。上述のように、変位測定においてはスケールを格子パターンの周期方向へ移動させて変位量を測定する。しかし、駆動ステージの特性または取り付け誤差の影響により、スケールの周期方向と駆動ステージの移動方向にずれが生じる場合がある。このとき、スケールの移動に伴って受光素子で受光される領域が格子方向にも変化するため、格子パターンの格子方向への周期的な製造誤差に起因して干渉信号の位相が変化し、計測誤差が発生する。また、特許文献1に記載のエンコーダのように、基板テーブルのXY平面上の変位を測定する場合、1つの方向における基板テーブルの変位を測定すると同時に、もう一方の方向における変位測定を行い、基板テーブルの移動方向を制御する。このとき、格子パターンの周期的な製造誤差に起因して計測誤差が発生すると、基板テーブルの移動方向に関して誤った情報が取得され、それに基づいて駆動ステージが動作するため、正確に基板テーブルの変位測定を行うことが困難になる。
【0010】
本発明は、高精度に物体の変位量を測定可能な変位測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
その目的を達成するために、本発明の一側面としての変位測定装置は、格子パターンが形成されたスケールと、前記スケールに光を照射する光源と、前記スケールの前記格子パターンで回折された光を受光する受光素子と、を備え、前記格子パターンの形状は、該格子パターンの格子方向に一定の周期で変化しており、前記受光素子は、前記格子パターン上の、前記格子方向に前記周期の自然数倍の長さを有する領域で回折された光を受光することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面としての変位測定装置によれば、高精度に測定可能な変位測定装置を提供することができる。なお、本発明のその他の目的および側面については、以下で説明する実施の形態で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1としての変位測定装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1におけるスケールとスケール上の受光領域の関係を示す図である。
【図3】本発明の実施形態1におけるスケール上の格子パターンと受光領域の関係を示す図である。
【図4】本発明の実施形態2としての変位測定装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態3としてのスケール製造方法のシーケンスを示す図である。
【図6】本発明の実施形態4としての露光装置の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態4としての露光装置の計測と露光のシーケンスを示す図である。
【図8】従来の変位測定装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。また、以下の実施形態では、回折された2つの光の次数が±1次の場合についてのみ説明するが、回折光の次数は必ずしも±1次に限定されるものではなく、異なる次数の回折光の場合であれば本発明を適用できる。
【0015】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の一側面としての変位測定装置200の構成を示す概略図である。変位測定装置200は、格子パターンの形成されたスケール7のX方向の変位量を測定する装置であり、以下のように構成される。すなわち、レーザ光源1と、コリメータレンズ2と、基準回折格子3と、λ/4板4と、ミラー5と、格子パターン6が形成されたスケール7と、ビームスプリッタ(BS)8と、偏光板9と、受光素子10による構成となる。なお、ミラー5は、図1に示した5a、5b、5cを意味するものである。また、λ/4板4、偏光板9、受光素子10についても、それぞれ4aと4b、9aと9b、10aと10bを意味するものとする。
【0016】
以下、各構成要素の機能ならびに好ましい実施形態について説明する。レーザ光源1は、スケール7に光を照射する。具体的には、レーザ光源1より射出されたコヒーレントな光を、コリメータレンズ2を介して平行光束とした後、基準回折格子3に垂直に入射させて、+1次回折光R+と−1次回折光R−に分岐させる。0次回折光やその他の次数の回折光は、不要光なので遮断するようにしても良い。また、変位測定装置200のレーザ光源1としては、コヒーレントな光を射出するHe−Neレーザや固体レーザ、半導体レーザを用いることが望ましい。さらに、光源からの光を光ファイバーを用いて導光する構成とすることもできる。ここで、+1次回折光R+と−1次回折光R−の回折角θ1は、回折次数をm、レーザ光源1の波長をλ、基準回折格子3の格子ピッチをdとすると、以下の式で表される。
d・sinθ1=mλ ・・・(式2)
次に、λ/4板4a、4bを介した後、+1次回折光R+と−1次回折光R−をミラー5a、5bでそれぞれ反射させて、格子パターンが形成されたスケールに入射角θ2で入射させる。スケール7には、Y方向に沿って1次元の格子パターン6が形成され、+1次回折光R+と−1次回折光R−がX方向に回折される。スケール7においては、それぞれ格子方向はY方向、周期方向はX方向に相当する。このため、図1の変位測定装置200では、X方向が計測方向、Y方向が非計測方向となる。
【0017】
ここで、λ/4板4a,4bの光軸は、+1次回折光R+と−1次回折光R−の偏光方向に対してそれぞれ+45度および−45度の角度となるように配置される。すなわち、λ/4板4a,4bを介した後に、+1次回折光R+と−1次回折光R−がそれぞれ右回り円偏光と左回り円偏光となるように、λ/4板4a,4bが配置される。また、+1次回折光R+と−1次回折光R−をスケール面と垂直方向に回折させるため、スケールへの入射角θ2は、スケールの格子ピッチをPとした場合、以下の式で表される。
P・sinθ2=mλ ・・・(式3)
つまり、±1次回折光を(式3)を満たす入射角θ2でスケールに入射させることにより、+1次回折光R+と−1次回折光R−をスケール面に垂直な方向に回折させて、重ね合わせて干渉させる。その後、ミラー5cで反射された干渉光束は、ビームスプリッタ8で2光束に分割されて、偏光板9a、9bを介して受光素子10a、10bでそれぞれ受光される。受光素子10a、10bには、例えば、フォトダイオードまたはCCDなどの光電変換素子が用いられ、光電変換されて信号強度の情報を得る。
【0018】
ここで、偏光板9aと9bは、互いに45度ずれた偏光成分を取り出すように配置される。これにより、受光素子10a、10bでは互いに90度の位相差をもつ2相の正弦波信号が検出され、2相の信号強度に基づいて、スケールの変位量を、方向を含めて識別することができる。2相の正弦波信号は、初期位相をφ0、スケールとセンサヘッドの相対変位量をΔXとした場合、それぞれ以下の式で表される。
I1=A・cos(4π・ΔX/P+φ0) ・・・(式4−1)
I2=A・cos(4π・ΔX/P+φ0+π/2)
=−A・sin(4π・ΔX/P+φ0) ・・・(式4−2)
ここで、I1/I2より、
I1/I2=−tan(4π・ΔX/P+φ0) ・・・(式4−3)
であるから、
ΔX={arctan(−I1/I2)−φ0}・P/4π ・・・(式4−4)
と表せる。なお、(式4−1)と(式4−2)においては、2相信号の振幅をAで等しいものとしたが、強度が異なる場合には、事前に振幅を揃えるように倍率をかける必要がある。さらに、ビームスプリッタと偏光板の別の構成として、偏光ビームスプリッタ(PBS)を使用する構成としても良い。
【0019】
図1の変位測定装置において、±1次回折光を使用した場合、受光素子10aまたは10b上における干渉の明暗周期は、スケールに形成された格子パターンの1ピッチ分の変位が正弦波信号の2周期に相当する。従って、受光素子10aまたは10bで受光される干渉光の明暗の数に基づいてスケールの変位量を求めることができる。
【0020】
本実施形態においては、スケール上の格子パターンが格子方向に周期的な製造誤差をもつ場合に、格子パターン上の格子方向に製造誤差の周期の自然数倍の長さを有する領域で回折した光を受光素子で受光する。以下では、スケール上の格子パターンの製造誤差と受光領域との関係について説明する。
【0021】
図2は、レーザ描画方式で製造した格子パターン6が形成されたスケール7と、受光素子10で受光される受光領域100の関係を示す図である。スケール7には、描画装置の光学系に起因した、格子方向に1周期の長さがL1の周期的な製造誤差を有するパターンが、格子間隔Pで形成されている。また、受光素子10により、スケール7上で格子方向にL2の長さを有する領域で回折した光が受光される。本実施形態においては、受光領域100の格子方向の長さL2と、格子パターン6の製造誤差の周期L1が、以下の関係を満たすように変位測定装置200が構成される。
L2=L1×N (N:自然数) ・・・(式5)
続いて、格子パターンの格子方向への周期的な製造誤差が計測結果に与える影響について説明する。図3は、図2における格子方向に周期的な曲がりをもつ格子パターン6と受光領域100との関係を簡略化した図であり、(A)〜(C)は受光領域100の位置が格子方向へとシフトする様子を表す。ここで、受光領域100の格子方向の長さL2と、格子パターン6の製造誤差の周期L1が(式5)に示す関係を満たす場合を考える。このとき、受光領域100の位置が格子方向に変化しても、受光領域100内には格子方向に製造誤差の自然数倍の長さの格子パターン6が存在する。すなわち、受光領域100では、格子パターン6の周期方向へのパターン変化の平均値は一定である。従って、受光素子10で受光される干渉信号の位相が受光領域100の位置によって変化しないため、格子パターン6の格子方向への周期的な製造誤差による影響を受けない。一方で、受光領域100の格子方向の長さL2と、格子パターン6の製造誤差の周期L1が(式5)に示す関係を満足しない場合には、受光領域100におけるパターン変化の平均値は、受光領域100の格子方向の位置に応じて変化する。このため、受光素子10で受光される干渉信号の位相が変化して、計測誤差が発生する。
【0022】
以上より、受光領域100の格子方向の長さL2と、格子パターン6の製造誤差の周期L1が(式5)に示す関係を満たすように変位測定装置200を構成することで、格子パターンの格子方向への周期的な製造誤差に起因した計測誤差を低減することができる。
【0023】
次に、受光領域100の格子方向の長さL2と、格子パターン6の製造誤差の周期L1が(式5)に示す関係を満たすように変位測定装置200を構成する具体的な方法について説明する。本実施形態においては、格子パターン6の製造誤差の周期L1を予め求める必要がある。製造誤差の周期の求める方法として、以下に示す3つ方法が挙げられる。第1の方法として、スケールに形成された格子パターンを走査電子顕微鏡(SEM)で計測する方法が考えられる。スケールの表面形状を計測することで、格子パターンの製造誤差の周期L1を求めることができる。第2の方法としては、受光領域が狭いテスト用のエンコーダヘッドを用いてスケール上の格子パターンの製造誤差の周期を計測する方法がある。さらに、第3の方法として、周期的な製造誤差の発生要因である描画装置のレーザビームの走査長さをL1とする方法が考えられる。
【0024】
続いて、受光領域100の格子方向の長さL2が、予め求めた格子パターン6の製造誤差の周期L1の自然数倍となるように、受光領域の大きさを設定する。受光領域の大きさの設定に際しては、受光面の大きさが(式5)に示す関係を満たすような受光素子を使用することが望ましい。また、受光面の不要部分を遮光膜で覆う構成としても良い。さらに、受光面上の選択した領域で受光した光を検出可能な受光素子(例えば、複数のラインセンサまたはエリアセンサ)を配置して、受光領域の大きさを設定しても良い。
【0025】
本実施形態によれば、スケールが格子方向に周期的な製造誤差をもつ場合に、受光素子がスケールの格子方向に製造誤差周期の自然数倍の長さを有する領域で回折した光を受光する。これにより、格子パターンの格子方向への周期的な製造誤差に起因した干渉信号の位相の変化による計測誤差を低減することができる。また、これに伴ってスケールの相対的な変位量を高い精度で測定することができる。このため、本実施例は、スケールの相対的な変位量を高精度に測定可能な変位測定装置を提供することができる。
【0026】
なお、周期的な製造誤差に起因した干渉信号の位相の変化による計測誤差を低減する方法として、検出器における受光領域を大きくすることによる平均化効果を用いる方法も考えられる。検出器における受光領域を大きくしてデータ点数を増やすことで、平均化により計測誤差を低減させることが可能となる。しかし、受光領域を拡大するためには、大きなサイズの受光素子を使用する必要があるため、装置の大型化または高価格化を引き起こすという問題点がある。又、一般的に大きなサイズの受光素子ほど応答速度が遅く、スループットを上げることが難しいという問題が生じる。しかし、本実施形態の変位測定装置を用いれば、それらの問題を解決することもできる。
【0027】
なお、本実施形態では、非計測方向への周期的な製造誤差について述べたが、計測方向に周期的な計測誤差が存在する場合には、計測方向に対しても誤差周期の自然数倍の長さの領域で回折した光を受光することで計測誤差を低減することができる。
【0028】
〔実施形態2〕
続いて、本発明の第2の実施形態として、別の構成例である変位測定装置に適用した実施形態について説明を行う。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0029】
図4は、本実施形態の変位測定装置200の構成を示す概略図である。変位測定装置200は、格子パターンの形成されたスケール7のX方向の変位量を測定する装置であり、以下のように構成される。すなわち、レーザ光源1と、コリメータレンズ2と、基準回折格子3と、λ/4板4と、ミラー5と、格子パターン6が形成されたスケール7と、レンズ12と、光束サイズ調整手段50と、BS8と、偏光板9a、9bと、受光素子10a、10bによる構成となる。なお、ミラー5は5a、5b、5cを、レンズ12はレンズ12a、12b、12cを意味するものである。また、λ/4板4、偏光板9、受光素子10についても、それぞれ4aと4b、9aと9b、10aと10bを意味するものとする。以下の本実施形態では、光束サイズ調整手段50として、例えば、視野絞りを用いる場合について述べる。
【0030】
以下、各構成要素の機能ならびに好ましい実施形態について説明を行う。図4において、レーザ光源1より射出されたコヒーレントな光を、コリメータレンズ2を介して平行光束とした後、基準回折格子3に垂直に入射させて、回折角θ1の+1次回折光R+と−1次回折光R−に分岐させる。そして、λ/4板4a、4bを介した後、+1次回折光R+と−1次回折光R−をミラー5a、5bでそれぞれ反射させて、格子パターンが形成されたスケール7に入射角θ2で入射させる。スケール7には、Y方向に沿って1次元の格子パターン6が形成され、+1次回折光R+と−1次回折光R−がX方向に回折される。スケール7においては、格子方向はY方向、周期方向(ピッチ方向)はX方向に相当し、描画装置の光学系に起因した格子方向に長さL1の周期的な曲がりを有するパターンが、格子間隔Pで形成されている(図2)。ここで、変位測定装置200のレーザ光源1、回折角θ1、λ/4板5の配置、入射角θ2については、実施形態1に記載の内容がそのまま適用できるので、ここでは説明を省略する。
【0031】
ミラー5cで反射された干渉光束は、レンズ12aで集光され、透過スリット板50とレンズ12bと12cから構成される結像光学系13を介した後、ビームスプリッタ8で2光束に分割されて、偏光板9a、9bを介して受光素子10a、10bで受光される。
【0032】
本実施形態においては、スケール7と受光素子10との間の光路中であって、スケール7の格子パターン面と光学的に共役な位置に視野絞り50を配置して、受光素子10a、10bで受光される干渉光の測定範囲を規定する。このとき、スケール7上の格子パターン6は、視野絞り50上に結像する。すなわち、視野絞り50が受光素子10で受光される領域の大きさを規定することができる。以下では、受光領域を規定する視野絞り50について説明する。なお、受光素子10a,10bは、視野絞り50を介した光を全て受光できる面積を持つものとする。
【0033】
本実施形態においては、始めに、例えば走査電子顕微鏡を用いて、スケール7上の格子パターン6の格子方向への製造誤差の周期L1を求める。その後、受光領域の格子方向の長さL2が、予め求めた製造誤差の周期L1の自然数倍となるように視野絞り50の大きさを設定する。ここで、スケール7上の照明領域が、受光素子10の受光面上で半分の大きさで受光される場合、すなわち、レンズ12による結像倍率が1/2倍の縮小光学系の場合について考える。視野絞り50において、スケール7の格子方向に相当するY方向の長さをL3とすると、L3は以下の(式6)を満たすように設定される。
L3=L1/2×N (N:自然数) ・・・(式6)
(式6)の関係が成り立つ場合には、スケール7上の格子方向に製造誤差の周期の自然数倍の長さを有する領域で回折した光が、受光素子10で受光される。このため、格子パターンの格子方向への周期的な製造誤差に起因した干渉信号の位相変化による計測誤差を低減することができる。なお、視野絞り50におけるY方向の長さL3と製造誤差の周期L1の関係は、光学倍率によって変化する。このため、視野絞り50のY方向の長さL3は、変位測定装置200の光学倍率をnとすると、以下の式を満たすように設定される。
L3=L1×n×N (N:自然数) ・・・(式7)
本実施形態においては、受光領域の格子方向の長さL2が、格子パターン6の製造誤差の周期L1の自然数倍となるように、視野絞り50を配置する。これにより、格子パターンの格子方向への周期的な製造誤差に起因した干渉信号の位相変化による計測誤差を低減することができる。また、これに伴ってスケールの相対的な変位量を高い精度で測定することができる。このため、本実施例は、スケールの相対的な変位量を高精度に測定可能な変位測定装置を提供することができる。
【0034】
尚、ここまで、光束サイズ調整手段50として視野絞りを使用した場合について説明したが、光束サイズ調整手段50の形態はこれに限定されるものではなく、例えば、透過スリット板または可変絞りを用いても良い。また、図4では光束サイズ調整手段50を受光側に配置した場合について示したが、光束サイズ調整手段50の位置はこれに限定されるものではなく、例えば、コリメータレンズ2と基準回折格子3の間に配置しても良い。
【0035】
〔実施形態3〕
続いて、本発明の第3の実施形態としてスケール製造方法について説明する。これまで第1及び第2の実施形態では変位測定装置について述べたが、本実施形態ではスケール基板に格子パターンを作製する方法について述べる。なお、本実施形態において、スケール基板とは、描画装置を用いて格子パターンを描画する前のスケールを意味するものとする。
【0036】
前述のように、微細スケールの製造に際しては、レーザビームを、ガルバノスキャナとfθレンズを介して加工面に集光し、スケールサイズに応じてガルバノスキャナでレーザビームを走査して、パターンを描画する。大判スケールの場合には、格子方向に段階的にスケール基板上の描画位置を移動させるため、描画装置の光学系(主にfθレンズ特性)に起因した格子パターンのずれが、格子方向に周期的な製造誤差として発生する。ここで、描画装置の格子方向への段階的な移動距離をL0(不図示)とすると、L0は格子方向の製造誤差の1周期の長さL1に等しい。描画装置の格子方向への移動距離L0は、描画装置の設定条件により可変であるから、格子パターンの格子方向への製造誤差の周期L1も描画装置の設定条件に応じて変化する。
【0037】
図2に、レーザ描画方式で製造した格子パターン6が形成されたスケール7と、変位測定装置200の受光素子10で受光される受光領域100の関係を示す。スケール7には、描画装置の光学系に起因した、格子方向に1周期の長さがL1の周期的な製造誤差を有するパターンが、格子間隔Pで形成されている。また、受光素子10により、スケール7上で格子方向にL2の長さの受光領域100で回折した光が受光される。本実施形態においては、受光領域100の格子方向の長さL2と、格子パターン6の製造誤差の周期L1が、(式5)の関係を満たす。
L2=L1×N (N:自然数) ・・・(式5)
ここで、格子パターンの格子方向への周期的な製造誤差が計測結果に与える影響については、実施形態1に記載した通りである。従って、スケール7の格子方向に製造誤差の周期の自然数倍の長さを有する領域で回折した光を受光素子で受光することにより、周期的な製造誤差に起因した計測誤差を低減することができる。
【0038】
以下では、本実施形態におけるスケールの製造方法について説明する。図5は、本実施形態のスケール製造方法におけるシーケンスを示すフローチャートである。
【0039】
まずステップS01で、スケール7上で回折した光が受光素子で受光される領域の大きさを求める。この受光領域の大きさを求める方法としては、設計値に基づいて求める方法と実測値に基づいて求める方法の2つがある。まず始めに、設計値に基づいて受光領域を求める第1の方法について説明する。ここで、実施形態1に記載の変位測定装置200の場合には、受光素子10の受光面の大きさとレンズ12の光学倍率から、受光素子10で受光される領域の大きさを計算することができる。また、実施形態2に記載の変位測定装置200の場合には、光束サイズ調整手段50の透過領域の大きさとレンズ12の光学倍率から、受光素子10で受光される領域の大きさを計算することができる。
【0040】
続いて、実測値に基づいて受光領域を求める第2の方法としては、スケール7上の表面近傍に可変絞りを配置して、スケール7上で回折した光の光束サイズを調整する方法が挙げられる。ここで、可変絞りの透過領域が受光素子10で受光される領域よりも小さい場合には、可変絞りの透過領域を大きくするに従って受光素子で受光される干渉光の光強度が大きくなる。そして、可変絞りの透過領域が受光素子10で受光される領域よりも大きい場合には、受光素子10で受光される領域は変わらないため、干渉光の光強度が一定になるという特徴がある。従って、可変絞りの透過領域を大きくした際に受光される干渉光の強度変化から、スケール7上で回折した光が受光素子10で受光される領域の大きさを求めることができる。
【0041】
次に、ステップS02で、求めた受光領域100の格子方向の長さL2から、(式5)の関係を満たすような格子パターン6の製造誤差の周期L1を計算する。そして、ステップS03において、描画装置のレーザビームの走査方向が格子方向になるように、かつ、走査距離がL1になるように、描画装置の条件を決定する。その条件になるように描画装置を設定することで、描画装置は、レーザビームをスケール基板に対して走査距離L1だけ走査して、スケール基板に格子パターンを描画する。さらに、描画装置は、スケール基板上の描画開始位置を走査方向に走査距離L1だけ移動し、レーザビームをスケール基板に対して走査距離L1だけ再度走査して、格子パターンの格子方向への長さを延ばす工程を繰り返す。ここで、レーザビームの格子方向への走査距離は、スケール7の格子方向の製造誤差の周期に等しいため、スケール7には製造誤差の周期が長さL1の格子パターン6が形成される。
【0042】
本実施形態においては、変位測定装置200のスケール7上で回折した光が受光素子で受光される領域の大きさを予め求めた後、受光領域100のスケール7上での格子方向の長さL2に基づいて、描画装置によりスケール7に格子パターン6を形成する。これにより、格子パターンの格子方向への周期的な製造誤差に起因した干渉信号の位相変化による計測誤差を低減することができる。また、これに伴ってスケールの相対的な変位量を高い精度で測定することができる。このため、本実施例は、スケールの相対的な変位量を高精度に測定可能な変位測定装置を提供することができる。
【0043】
〔実施形態4〕
図6(A)、(B)は、本実施形態の変位測定装置200を具備した半導体露光装置のブロック図を示す図である。図6(A)に示すように、照明装置800と、レチクル14を載置するレチクルステージRSと、結像光学系15と、ウエハ3を載置するウエハステージWSと、ウエハステージWS上に搭載された変位測定装置200が配置される。変位測定装置200は、第1、第2、及び第3の実施形態を適用することができる。なお、ウエハステージWSは、微動ステージと粗動ステージで構成され、変位測定装置200は、微動ステージ上に搭載される。
【0044】
ステージ制御部1000は、基板ステージとしてのウエハステージWS、演算処理部81、変位測定装置200と電気的に接続され、変位測定装置200の測定結果に基づいてウエハステージWSの位置制御を行う。また、中央制御部1100は、ステージ制御部1000、照明装置800、レチクルステージRSと電気的に接続され、露光装置の動作を制御する。なお、ステージ制御部1000と中央制御部1100はともに、CPUおよびメモリを有し、得られた測定結果について補正演算を行うことができる。
【0045】
照明装置800は、回路パターンが形成されたレチクル14を照明し、光源部800と、照明光学系801とを有する。原版としてのレチクル14は、回路パターンが形成され、レチクルステージRSに支持及び駆動されている。レチクルステージRSは、図示しないレチクルチャックを介してレチクル14を保持し、図示しない移動機構に接続されている。移動機構は、リニアモーターなどで構成され、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び各軸の回転方向にレチクルステージRSを駆動することでレチクル14を移動させることができる。基板としてのウエハ3上には、フォトレジストが塗布されている。
【0046】
続いて、ウエハ3を保持するウエハステージWSの位置測定について説明する。ウエハステージWSは、レチクルステージRSと同様に、リニアモーターを利用して、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び各軸の回転方向にウエハ3を移動させる。本実施形態においては、ウエハステージWS上に変位測定装置200が搭載される。変位測定装置200は、測定基準となるスケール7に対するウエハステージWSの相対位置関係を測定することで、ウエハステージWSの位置測定を行う。
【0047】
図6(B)に、測定基準であるスケール7とウエハステージWSとの位置関係を示す。スケール7には一次元の格子パターンが形成されており、4つのスケールが投影光学系15を取り囲むように配置される。図6(B)のように、4つのスケールの格子方向がX軸またはY軸に対して45度傾いた方向となるように配置され、WSに搭載された4つの変位測定装置200で各方向における変位を測定する。例えば、スケール7aに対して変位測定装置200aを用いて測定することで、X軸に対して+45度傾いた方向における変位測定が可能である。また、スケール7bに対して変位測定装置200bを用いて測定することで、Y軸に対して+45度傾いた方向における変位測定が可能となる。同様にして、スケール7cに対して変位測定装置200cを、スケール7dに対して変位測定装置200dを用いることで、Y軸に対して+45度傾いた方向及び、X軸に対して+45度傾いた方向の変位をそれぞれ測定することができる。従って、適当な3つのスケールにおける変位測定を行うことで、X軸とY軸およびZ軸まわりの回転Rz軸の変位を求めることができる。また、ウエハステージWSは少なくとも1つの基準マーク60を備えており、ウエハ3とレチクル14との位置合わせを行う。位置合わせに際しては、アライメントスコープ(不図示)で基準マーク60の位置を検出し、検出結果に基づいてウエハステージWSを変位測定装置200の計測値を元に制御しながら駆動させて、ウエハ3を所望の位置に移動させる。
【0048】
次に、本実施形態の露光装置を用いた露光方法について詳細に説明する。図7は本実施形態の露光装置を使用する場合の露光方法の全体のシーケンスを示すフローチャートである。まず、ステップS1でウエハ3を装置に搬入し、ステップS101で、このウエハに対してウエハアライメントを行う。ウエハアライメントは、アライメントスコープ(不図示)により、ウエハ上のマークの位置を検出して、露光装置に対して、ウエハのXY平面の位置合わせを行うものである。位置合わせに際して、ウエハステージWSを変位測定装置200の計測結果を元に制御しながら駆動させて、ウエハ3を所望の位置に移動させる。
【0049】
その後ステップS102で、面位置計測装置(不図示)により、ウエハ3上の所定箇所の表面位置を計測し、Z方向および傾き(チルト)方向へのステージ駆動により、ほぼ露光スリット単位でウエハ表面の高さ方向の位置に合わせこむ動作を行う。ステップS103では、露光およびウエハステージWSのY方向への走査が行われる。
こうして、第1露光ショットが露光終了するとステップS105で未露光ショットの有無を判断し、未露光ショットが有り場合には、ステップS102に戻る。そして第1露光ショットの場合と同様に次の露光ショットの面位置計測結果に基づいて、Z方向および傾き(チルト)方向へのステージ駆動によりほぼ露光スリット単位でウエハ3表面の高さ方向の形状に合わせこむ動作を行いながら露光が行われる。ステップS104で、露光すべきショット(即ち、未露光ショット)がないかどうかを判断し、未露光ショットがなくなるまで、上述の動作を繰り返す。全ての露光ショットの露光が終了したら、ステップS105でウエハ3を回収し、終了する。
【0050】
ウエハステージWSは、シングルステージに限らず、露光時に使用する露光ステーションとウエハアライメントおよび面位置計測のための計測ステーションの2つを持つ、所謂、ツインステージの構成としても良い。ツインステージでは、2つのステージが露光ステーション、計測ステーションの間を交互に入れ替わる。この場合、変位測定装置200は2つのウエハステージWSにそれぞれ配置される。また、その測定基準となるスケール7は、露光ステーションと計測ステーションの両方に配置され、変位測定装置200によりウエハステージWSの位置を制御することになる。なお、ここまでは変位測定装置200をウエハステージに搭載する場合について説明したが、変位測定装置200の適用はウエハステージに限定されず、レチクルステージに搭載しても良い。レチクルステージに搭載した場合についても、高精度にステージの変位を測定し、所望の位置に正確にレチクルステージを移動させることができる。
【0051】
半導体デバイスの微細化に伴い、半導体露光装置のレチクルとウエハの位置合わせにおいては、ナノメートルオーダーの精度が求められている。このため、正確にステージの変位を測定できる格子干渉型エンコーダを用いた変位測定は重要な技術と言える。その中で、微細スケールを用いた高精度な格子干渉型エンコーダを実現するためには、スケールの製造誤差の影響を低減させる本実施形態の効果は大きいと言える。ステージの変位を高精度に測定できるようになれば、ウエハとレチクルの位置合わせ精度が向上することになり、半導体素子の性能向上や、製造歩留まりの向上にも繋がるという効果がある。
【0052】
なお、本実施形態においては、変位測定装置を半導体露光装置のステージ位置計測装置として適用した場合について説明したが、本発明の変位測定装置の適用範囲は露光装置(液晶露光装置、EUV露光装置、EB露光装置など)に限定されない。例えば、ナノインプリント装置または顕微鏡などの精密機械におけるステージ装置に広く適用することができる。
【0053】
〔実施形態5〕
つぎに、本発明の一実施形態のデバイス(半導体デバイス、液晶表示デバイス等)の製造方法について説明する。ここでは、半導体デバイスの製造方法を例に説明する。
【0054】
半導体デバイスは、ウエハに集積回路を作る前工程と、前工程で作られたウエハ上の集積回路チップを製品として完成させる後工程を経ることにより製造される。前工程は、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたウエハを露光する工程と、ウエハを現像する工程を含む。後工程は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)と、パッケージング工程(封入)を含む。なお、液晶表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラス基板に感光剤を塗布する工程と、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたガラス基板を露光する工程と、ガラス基板を現像する工程を含む。本実施形態のデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
6 格子パターン
7(7a〜7d) スケール
1 光源
10(10a、10b) 受光素子
200(200a〜200d)、300 変位測定装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位測定装置、ステージ装置、露光装置、スケール製造方法、及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、物体(変位物体)の位置情報、移動量、回転量等の変位量を測定する目的で、ロータリーエンコーダおよびリニアエンコーダ等の変位測定装置が使用されている。その中で、高精度に変位量を測定する方式として、光の回折干渉現象を応用した格子干渉型のエンコーダが知られている。格子干渉型エンコーダは、回折格子が形成されたスケールに対してコヒーレントな光を入射させ、異なる次数の回折光を干渉させて、得られた干渉光の位相変化に基づいてスケールの変位量を求める装置である。
【0003】
図8は、特許文献1に記載された格子干渉方式の変位測定装置の概略図であり、変位測定装置を露光、検査及び測定を行う露光装置300に適用した場合を表す。露光装置300は、露光ユニット27から出射された放射ビーム26を、ギャップ25を介して基板テーブル11上の基板36に導き、基板36の露光、検査及び測定を行う。変位測定装置は、エンコーダ本体(ヘッド)とスケールを有し、基板36を支持する基板テーブル11の基準フレーム13に対する変位を測定する。基準フレーム13には4つのスケール31、32、33、34が取り付けられ、基板テーブル11上の対応する部分11a〜11dに取り付けられたエンコーダ本体21、22、23、24により、基板テーブル11の基準フレーム13に対する変位が測定される。この場合、例えば、基準回折格子を用いて放射ビームを+1次回折光および−1次回折光に分割した後、±1次回折光をスケールに入射させて、回折した光を重ね合わせて干渉させる。+1次回折光と−1次回折光との間の位相差の変化から、基準回折格子に対するスケールの変位を測定することができる。尚、4つのスケール31〜34に形成された格子パターンの向きを、少なくとも異なる2方向になるように配置することで、エンコーダ21〜24により異なる2方向への変位を測定できるので、基板テーブル11のXY平面上の変位を測定することが可能となる。
【0004】
ここで、スケールの変位量をΔX、スケールの格子ピッチをPとすると、移動前後でのm次回折光の1回反射における位相変化量Δφは、
Δφ=2πmΔX/P ・・・(式1)
で表される。従って、1次回折光(m=1)の場合には、スケールを1ピッチ移動させると、位相が2πだけ変化する。このため、+1次回折光と−1次回折光を重ね合わせる場合には、格子1ピッチの移動に対して相対的に4πの位相ずれが生じる。この結果、格子1ピッチのスケール移動につき、2周期の位相変化が発生する。
【0005】
格子干渉型エンコーダにおいては、位相変化をいかに細かく測定できるかが、高精度な測定を行う上で重要となる。上記のように位相変化量Δφは(式1)のように表されるから、格子ピッチを小さくすることで、格子1ピッチのスケールの移動に伴う位相変化量Δφが大きくなる。この結果、位相変化を細かく測定することが可能となるため、高精度な変位測定を実現することができる。従って、高い精度で測定を行うためには、いかに細かい格子ピッチの微細スケールを用いるかが重要なポイントとなる。
【0006】
微細スケールの製造方法としては、レーザビームを用いてスケールに格子パターンを描画するレーザ描画方式が一般的に知られている(特許文献2)。特許文献2に記載のレーザ描画装置では、ガルバノスキャナとfθレンズを介して加工面にレーザビームを集光し、スケールサイズに応じてガルバノスキャナを動作させることにより、レーザビームを走査して、パターンを描画する。そして、その原理上、fθレンズで集光された加工面におけるビーム径が最小パターンの幅、すなわち加工されるパターンの解像度に相当するため、高い加工精度を実現することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−318119
【特許文献2】特登録03435601
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、レーザ描画方式でのスケールの製造においては、描画装置の光学系(主にfθレンズ特性)に起因したパターンずれが発生し、スケールの格子線に曲がりが生じる。すなわち、レーザビームが走査方向に対して非直線性成分をもつ。大判スケールの製造においては、走査長さの分だけステップして次の操作を繰り返しながら描画を行うため、格子方向に周期的な製造誤差を有する格子パターンが形成される。
【0009】
ここで、格子方向に周期的な曲がりを有するパターンが形成された大判スケールを用いて変位測定を行う場合について考える。上述のように、変位測定においてはスケールを格子パターンの周期方向へ移動させて変位量を測定する。しかし、駆動ステージの特性または取り付け誤差の影響により、スケールの周期方向と駆動ステージの移動方向にずれが生じる場合がある。このとき、スケールの移動に伴って受光素子で受光される領域が格子方向にも変化するため、格子パターンの格子方向への周期的な製造誤差に起因して干渉信号の位相が変化し、計測誤差が発生する。また、特許文献1に記載のエンコーダのように、基板テーブルのXY平面上の変位を測定する場合、1つの方向における基板テーブルの変位を測定すると同時に、もう一方の方向における変位測定を行い、基板テーブルの移動方向を制御する。このとき、格子パターンの周期的な製造誤差に起因して計測誤差が発生すると、基板テーブルの移動方向に関して誤った情報が取得され、それに基づいて駆動ステージが動作するため、正確に基板テーブルの変位測定を行うことが困難になる。
【0010】
本発明は、高精度に物体の変位量を測定可能な変位測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
その目的を達成するために、本発明の一側面としての変位測定装置は、格子パターンが形成されたスケールと、前記スケールに光を照射する光源と、前記スケールの前記格子パターンで回折された光を受光する受光素子と、を備え、前記格子パターンの形状は、該格子パターンの格子方向に一定の周期で変化しており、前記受光素子は、前記格子パターン上の、前記格子方向に前記周期の自然数倍の長さを有する領域で回折された光を受光することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面としての変位測定装置によれば、高精度に測定可能な変位測定装置を提供することができる。なお、本発明のその他の目的および側面については、以下で説明する実施の形態で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1としての変位測定装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1におけるスケールとスケール上の受光領域の関係を示す図である。
【図3】本発明の実施形態1におけるスケール上の格子パターンと受光領域の関係を示す図である。
【図4】本発明の実施形態2としての変位測定装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態3としてのスケール製造方法のシーケンスを示す図である。
【図6】本発明の実施形態4としての露光装置の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態4としての露光装置の計測と露光のシーケンスを示す図である。
【図8】従来の変位測定装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。また、以下の実施形態では、回折された2つの光の次数が±1次の場合についてのみ説明するが、回折光の次数は必ずしも±1次に限定されるものではなく、異なる次数の回折光の場合であれば本発明を適用できる。
【0015】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の一側面としての変位測定装置200の構成を示す概略図である。変位測定装置200は、格子パターンの形成されたスケール7のX方向の変位量を測定する装置であり、以下のように構成される。すなわち、レーザ光源1と、コリメータレンズ2と、基準回折格子3と、λ/4板4と、ミラー5と、格子パターン6が形成されたスケール7と、ビームスプリッタ(BS)8と、偏光板9と、受光素子10による構成となる。なお、ミラー5は、図1に示した5a、5b、5cを意味するものである。また、λ/4板4、偏光板9、受光素子10についても、それぞれ4aと4b、9aと9b、10aと10bを意味するものとする。
【0016】
以下、各構成要素の機能ならびに好ましい実施形態について説明する。レーザ光源1は、スケール7に光を照射する。具体的には、レーザ光源1より射出されたコヒーレントな光を、コリメータレンズ2を介して平行光束とした後、基準回折格子3に垂直に入射させて、+1次回折光R+と−1次回折光R−に分岐させる。0次回折光やその他の次数の回折光は、不要光なので遮断するようにしても良い。また、変位測定装置200のレーザ光源1としては、コヒーレントな光を射出するHe−Neレーザや固体レーザ、半導体レーザを用いることが望ましい。さらに、光源からの光を光ファイバーを用いて導光する構成とすることもできる。ここで、+1次回折光R+と−1次回折光R−の回折角θ1は、回折次数をm、レーザ光源1の波長をλ、基準回折格子3の格子ピッチをdとすると、以下の式で表される。
d・sinθ1=mλ ・・・(式2)
次に、λ/4板4a、4bを介した後、+1次回折光R+と−1次回折光R−をミラー5a、5bでそれぞれ反射させて、格子パターンが形成されたスケールに入射角θ2で入射させる。スケール7には、Y方向に沿って1次元の格子パターン6が形成され、+1次回折光R+と−1次回折光R−がX方向に回折される。スケール7においては、それぞれ格子方向はY方向、周期方向はX方向に相当する。このため、図1の変位測定装置200では、X方向が計測方向、Y方向が非計測方向となる。
【0017】
ここで、λ/4板4a,4bの光軸は、+1次回折光R+と−1次回折光R−の偏光方向に対してそれぞれ+45度および−45度の角度となるように配置される。すなわち、λ/4板4a,4bを介した後に、+1次回折光R+と−1次回折光R−がそれぞれ右回り円偏光と左回り円偏光となるように、λ/4板4a,4bが配置される。また、+1次回折光R+と−1次回折光R−をスケール面と垂直方向に回折させるため、スケールへの入射角θ2は、スケールの格子ピッチをPとした場合、以下の式で表される。
P・sinθ2=mλ ・・・(式3)
つまり、±1次回折光を(式3)を満たす入射角θ2でスケールに入射させることにより、+1次回折光R+と−1次回折光R−をスケール面に垂直な方向に回折させて、重ね合わせて干渉させる。その後、ミラー5cで反射された干渉光束は、ビームスプリッタ8で2光束に分割されて、偏光板9a、9bを介して受光素子10a、10bでそれぞれ受光される。受光素子10a、10bには、例えば、フォトダイオードまたはCCDなどの光電変換素子が用いられ、光電変換されて信号強度の情報を得る。
【0018】
ここで、偏光板9aと9bは、互いに45度ずれた偏光成分を取り出すように配置される。これにより、受光素子10a、10bでは互いに90度の位相差をもつ2相の正弦波信号が検出され、2相の信号強度に基づいて、スケールの変位量を、方向を含めて識別することができる。2相の正弦波信号は、初期位相をφ0、スケールとセンサヘッドの相対変位量をΔXとした場合、それぞれ以下の式で表される。
I1=A・cos(4π・ΔX/P+φ0) ・・・(式4−1)
I2=A・cos(4π・ΔX/P+φ0+π/2)
=−A・sin(4π・ΔX/P+φ0) ・・・(式4−2)
ここで、I1/I2より、
I1/I2=−tan(4π・ΔX/P+φ0) ・・・(式4−3)
であるから、
ΔX={arctan(−I1/I2)−φ0}・P/4π ・・・(式4−4)
と表せる。なお、(式4−1)と(式4−2)においては、2相信号の振幅をAで等しいものとしたが、強度が異なる場合には、事前に振幅を揃えるように倍率をかける必要がある。さらに、ビームスプリッタと偏光板の別の構成として、偏光ビームスプリッタ(PBS)を使用する構成としても良い。
【0019】
図1の変位測定装置において、±1次回折光を使用した場合、受光素子10aまたは10b上における干渉の明暗周期は、スケールに形成された格子パターンの1ピッチ分の変位が正弦波信号の2周期に相当する。従って、受光素子10aまたは10bで受光される干渉光の明暗の数に基づいてスケールの変位量を求めることができる。
【0020】
本実施形態においては、スケール上の格子パターンが格子方向に周期的な製造誤差をもつ場合に、格子パターン上の格子方向に製造誤差の周期の自然数倍の長さを有する領域で回折した光を受光素子で受光する。以下では、スケール上の格子パターンの製造誤差と受光領域との関係について説明する。
【0021】
図2は、レーザ描画方式で製造した格子パターン6が形成されたスケール7と、受光素子10で受光される受光領域100の関係を示す図である。スケール7には、描画装置の光学系に起因した、格子方向に1周期の長さがL1の周期的な製造誤差を有するパターンが、格子間隔Pで形成されている。また、受光素子10により、スケール7上で格子方向にL2の長さを有する領域で回折した光が受光される。本実施形態においては、受光領域100の格子方向の長さL2と、格子パターン6の製造誤差の周期L1が、以下の関係を満たすように変位測定装置200が構成される。
L2=L1×N (N:自然数) ・・・(式5)
続いて、格子パターンの格子方向への周期的な製造誤差が計測結果に与える影響について説明する。図3は、図2における格子方向に周期的な曲がりをもつ格子パターン6と受光領域100との関係を簡略化した図であり、(A)〜(C)は受光領域100の位置が格子方向へとシフトする様子を表す。ここで、受光領域100の格子方向の長さL2と、格子パターン6の製造誤差の周期L1が(式5)に示す関係を満たす場合を考える。このとき、受光領域100の位置が格子方向に変化しても、受光領域100内には格子方向に製造誤差の自然数倍の長さの格子パターン6が存在する。すなわち、受光領域100では、格子パターン6の周期方向へのパターン変化の平均値は一定である。従って、受光素子10で受光される干渉信号の位相が受光領域100の位置によって変化しないため、格子パターン6の格子方向への周期的な製造誤差による影響を受けない。一方で、受光領域100の格子方向の長さL2と、格子パターン6の製造誤差の周期L1が(式5)に示す関係を満足しない場合には、受光領域100におけるパターン変化の平均値は、受光領域100の格子方向の位置に応じて変化する。このため、受光素子10で受光される干渉信号の位相が変化して、計測誤差が発生する。
【0022】
以上より、受光領域100の格子方向の長さL2と、格子パターン6の製造誤差の周期L1が(式5)に示す関係を満たすように変位測定装置200を構成することで、格子パターンの格子方向への周期的な製造誤差に起因した計測誤差を低減することができる。
【0023】
次に、受光領域100の格子方向の長さL2と、格子パターン6の製造誤差の周期L1が(式5)に示す関係を満たすように変位測定装置200を構成する具体的な方法について説明する。本実施形態においては、格子パターン6の製造誤差の周期L1を予め求める必要がある。製造誤差の周期の求める方法として、以下に示す3つ方法が挙げられる。第1の方法として、スケールに形成された格子パターンを走査電子顕微鏡(SEM)で計測する方法が考えられる。スケールの表面形状を計測することで、格子パターンの製造誤差の周期L1を求めることができる。第2の方法としては、受光領域が狭いテスト用のエンコーダヘッドを用いてスケール上の格子パターンの製造誤差の周期を計測する方法がある。さらに、第3の方法として、周期的な製造誤差の発生要因である描画装置のレーザビームの走査長さをL1とする方法が考えられる。
【0024】
続いて、受光領域100の格子方向の長さL2が、予め求めた格子パターン6の製造誤差の周期L1の自然数倍となるように、受光領域の大きさを設定する。受光領域の大きさの設定に際しては、受光面の大きさが(式5)に示す関係を満たすような受光素子を使用することが望ましい。また、受光面の不要部分を遮光膜で覆う構成としても良い。さらに、受光面上の選択した領域で受光した光を検出可能な受光素子(例えば、複数のラインセンサまたはエリアセンサ)を配置して、受光領域の大きさを設定しても良い。
【0025】
本実施形態によれば、スケールが格子方向に周期的な製造誤差をもつ場合に、受光素子がスケールの格子方向に製造誤差周期の自然数倍の長さを有する領域で回折した光を受光する。これにより、格子パターンの格子方向への周期的な製造誤差に起因した干渉信号の位相の変化による計測誤差を低減することができる。また、これに伴ってスケールの相対的な変位量を高い精度で測定することができる。このため、本実施例は、スケールの相対的な変位量を高精度に測定可能な変位測定装置を提供することができる。
【0026】
なお、周期的な製造誤差に起因した干渉信号の位相の変化による計測誤差を低減する方法として、検出器における受光領域を大きくすることによる平均化効果を用いる方法も考えられる。検出器における受光領域を大きくしてデータ点数を増やすことで、平均化により計測誤差を低減させることが可能となる。しかし、受光領域を拡大するためには、大きなサイズの受光素子を使用する必要があるため、装置の大型化または高価格化を引き起こすという問題点がある。又、一般的に大きなサイズの受光素子ほど応答速度が遅く、スループットを上げることが難しいという問題が生じる。しかし、本実施形態の変位測定装置を用いれば、それらの問題を解決することもできる。
【0027】
なお、本実施形態では、非計測方向への周期的な製造誤差について述べたが、計測方向に周期的な計測誤差が存在する場合には、計測方向に対しても誤差周期の自然数倍の長さの領域で回折した光を受光することで計測誤差を低減することができる。
【0028】
〔実施形態2〕
続いて、本発明の第2の実施形態として、別の構成例である変位測定装置に適用した実施形態について説明を行う。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0029】
図4は、本実施形態の変位測定装置200の構成を示す概略図である。変位測定装置200は、格子パターンの形成されたスケール7のX方向の変位量を測定する装置であり、以下のように構成される。すなわち、レーザ光源1と、コリメータレンズ2と、基準回折格子3と、λ/4板4と、ミラー5と、格子パターン6が形成されたスケール7と、レンズ12と、光束サイズ調整手段50と、BS8と、偏光板9a、9bと、受光素子10a、10bによる構成となる。なお、ミラー5は5a、5b、5cを、レンズ12はレンズ12a、12b、12cを意味するものである。また、λ/4板4、偏光板9、受光素子10についても、それぞれ4aと4b、9aと9b、10aと10bを意味するものとする。以下の本実施形態では、光束サイズ調整手段50として、例えば、視野絞りを用いる場合について述べる。
【0030】
以下、各構成要素の機能ならびに好ましい実施形態について説明を行う。図4において、レーザ光源1より射出されたコヒーレントな光を、コリメータレンズ2を介して平行光束とした後、基準回折格子3に垂直に入射させて、回折角θ1の+1次回折光R+と−1次回折光R−に分岐させる。そして、λ/4板4a、4bを介した後、+1次回折光R+と−1次回折光R−をミラー5a、5bでそれぞれ反射させて、格子パターンが形成されたスケール7に入射角θ2で入射させる。スケール7には、Y方向に沿って1次元の格子パターン6が形成され、+1次回折光R+と−1次回折光R−がX方向に回折される。スケール7においては、格子方向はY方向、周期方向(ピッチ方向)はX方向に相当し、描画装置の光学系に起因した格子方向に長さL1の周期的な曲がりを有するパターンが、格子間隔Pで形成されている(図2)。ここで、変位測定装置200のレーザ光源1、回折角θ1、λ/4板5の配置、入射角θ2については、実施形態1に記載の内容がそのまま適用できるので、ここでは説明を省略する。
【0031】
ミラー5cで反射された干渉光束は、レンズ12aで集光され、透過スリット板50とレンズ12bと12cから構成される結像光学系13を介した後、ビームスプリッタ8で2光束に分割されて、偏光板9a、9bを介して受光素子10a、10bで受光される。
【0032】
本実施形態においては、スケール7と受光素子10との間の光路中であって、スケール7の格子パターン面と光学的に共役な位置に視野絞り50を配置して、受光素子10a、10bで受光される干渉光の測定範囲を規定する。このとき、スケール7上の格子パターン6は、視野絞り50上に結像する。すなわち、視野絞り50が受光素子10で受光される領域の大きさを規定することができる。以下では、受光領域を規定する視野絞り50について説明する。なお、受光素子10a,10bは、視野絞り50を介した光を全て受光できる面積を持つものとする。
【0033】
本実施形態においては、始めに、例えば走査電子顕微鏡を用いて、スケール7上の格子パターン6の格子方向への製造誤差の周期L1を求める。その後、受光領域の格子方向の長さL2が、予め求めた製造誤差の周期L1の自然数倍となるように視野絞り50の大きさを設定する。ここで、スケール7上の照明領域が、受光素子10の受光面上で半分の大きさで受光される場合、すなわち、レンズ12による結像倍率が1/2倍の縮小光学系の場合について考える。視野絞り50において、スケール7の格子方向に相当するY方向の長さをL3とすると、L3は以下の(式6)を満たすように設定される。
L3=L1/2×N (N:自然数) ・・・(式6)
(式6)の関係が成り立つ場合には、スケール7上の格子方向に製造誤差の周期の自然数倍の長さを有する領域で回折した光が、受光素子10で受光される。このため、格子パターンの格子方向への周期的な製造誤差に起因した干渉信号の位相変化による計測誤差を低減することができる。なお、視野絞り50におけるY方向の長さL3と製造誤差の周期L1の関係は、光学倍率によって変化する。このため、視野絞り50のY方向の長さL3は、変位測定装置200の光学倍率をnとすると、以下の式を満たすように設定される。
L3=L1×n×N (N:自然数) ・・・(式7)
本実施形態においては、受光領域の格子方向の長さL2が、格子パターン6の製造誤差の周期L1の自然数倍となるように、視野絞り50を配置する。これにより、格子パターンの格子方向への周期的な製造誤差に起因した干渉信号の位相変化による計測誤差を低減することができる。また、これに伴ってスケールの相対的な変位量を高い精度で測定することができる。このため、本実施例は、スケールの相対的な変位量を高精度に測定可能な変位測定装置を提供することができる。
【0034】
尚、ここまで、光束サイズ調整手段50として視野絞りを使用した場合について説明したが、光束サイズ調整手段50の形態はこれに限定されるものではなく、例えば、透過スリット板または可変絞りを用いても良い。また、図4では光束サイズ調整手段50を受光側に配置した場合について示したが、光束サイズ調整手段50の位置はこれに限定されるものではなく、例えば、コリメータレンズ2と基準回折格子3の間に配置しても良い。
【0035】
〔実施形態3〕
続いて、本発明の第3の実施形態としてスケール製造方法について説明する。これまで第1及び第2の実施形態では変位測定装置について述べたが、本実施形態ではスケール基板に格子パターンを作製する方法について述べる。なお、本実施形態において、スケール基板とは、描画装置を用いて格子パターンを描画する前のスケールを意味するものとする。
【0036】
前述のように、微細スケールの製造に際しては、レーザビームを、ガルバノスキャナとfθレンズを介して加工面に集光し、スケールサイズに応じてガルバノスキャナでレーザビームを走査して、パターンを描画する。大判スケールの場合には、格子方向に段階的にスケール基板上の描画位置を移動させるため、描画装置の光学系(主にfθレンズ特性)に起因した格子パターンのずれが、格子方向に周期的な製造誤差として発生する。ここで、描画装置の格子方向への段階的な移動距離をL0(不図示)とすると、L0は格子方向の製造誤差の1周期の長さL1に等しい。描画装置の格子方向への移動距離L0は、描画装置の設定条件により可変であるから、格子パターンの格子方向への製造誤差の周期L1も描画装置の設定条件に応じて変化する。
【0037】
図2に、レーザ描画方式で製造した格子パターン6が形成されたスケール7と、変位測定装置200の受光素子10で受光される受光領域100の関係を示す。スケール7には、描画装置の光学系に起因した、格子方向に1周期の長さがL1の周期的な製造誤差を有するパターンが、格子間隔Pで形成されている。また、受光素子10により、スケール7上で格子方向にL2の長さの受光領域100で回折した光が受光される。本実施形態においては、受光領域100の格子方向の長さL2と、格子パターン6の製造誤差の周期L1が、(式5)の関係を満たす。
L2=L1×N (N:自然数) ・・・(式5)
ここで、格子パターンの格子方向への周期的な製造誤差が計測結果に与える影響については、実施形態1に記載した通りである。従って、スケール7の格子方向に製造誤差の周期の自然数倍の長さを有する領域で回折した光を受光素子で受光することにより、周期的な製造誤差に起因した計測誤差を低減することができる。
【0038】
以下では、本実施形態におけるスケールの製造方法について説明する。図5は、本実施形態のスケール製造方法におけるシーケンスを示すフローチャートである。
【0039】
まずステップS01で、スケール7上で回折した光が受光素子で受光される領域の大きさを求める。この受光領域の大きさを求める方法としては、設計値に基づいて求める方法と実測値に基づいて求める方法の2つがある。まず始めに、設計値に基づいて受光領域を求める第1の方法について説明する。ここで、実施形態1に記載の変位測定装置200の場合には、受光素子10の受光面の大きさとレンズ12の光学倍率から、受光素子10で受光される領域の大きさを計算することができる。また、実施形態2に記載の変位測定装置200の場合には、光束サイズ調整手段50の透過領域の大きさとレンズ12の光学倍率から、受光素子10で受光される領域の大きさを計算することができる。
【0040】
続いて、実測値に基づいて受光領域を求める第2の方法としては、スケール7上の表面近傍に可変絞りを配置して、スケール7上で回折した光の光束サイズを調整する方法が挙げられる。ここで、可変絞りの透過領域が受光素子10で受光される領域よりも小さい場合には、可変絞りの透過領域を大きくするに従って受光素子で受光される干渉光の光強度が大きくなる。そして、可変絞りの透過領域が受光素子10で受光される領域よりも大きい場合には、受光素子10で受光される領域は変わらないため、干渉光の光強度が一定になるという特徴がある。従って、可変絞りの透過領域を大きくした際に受光される干渉光の強度変化から、スケール7上で回折した光が受光素子10で受光される領域の大きさを求めることができる。
【0041】
次に、ステップS02で、求めた受光領域100の格子方向の長さL2から、(式5)の関係を満たすような格子パターン6の製造誤差の周期L1を計算する。そして、ステップS03において、描画装置のレーザビームの走査方向が格子方向になるように、かつ、走査距離がL1になるように、描画装置の条件を決定する。その条件になるように描画装置を設定することで、描画装置は、レーザビームをスケール基板に対して走査距離L1だけ走査して、スケール基板に格子パターンを描画する。さらに、描画装置は、スケール基板上の描画開始位置を走査方向に走査距離L1だけ移動し、レーザビームをスケール基板に対して走査距離L1だけ再度走査して、格子パターンの格子方向への長さを延ばす工程を繰り返す。ここで、レーザビームの格子方向への走査距離は、スケール7の格子方向の製造誤差の周期に等しいため、スケール7には製造誤差の周期が長さL1の格子パターン6が形成される。
【0042】
本実施形態においては、変位測定装置200のスケール7上で回折した光が受光素子で受光される領域の大きさを予め求めた後、受光領域100のスケール7上での格子方向の長さL2に基づいて、描画装置によりスケール7に格子パターン6を形成する。これにより、格子パターンの格子方向への周期的な製造誤差に起因した干渉信号の位相変化による計測誤差を低減することができる。また、これに伴ってスケールの相対的な変位量を高い精度で測定することができる。このため、本実施例は、スケールの相対的な変位量を高精度に測定可能な変位測定装置を提供することができる。
【0043】
〔実施形態4〕
図6(A)、(B)は、本実施形態の変位測定装置200を具備した半導体露光装置のブロック図を示す図である。図6(A)に示すように、照明装置800と、レチクル14を載置するレチクルステージRSと、結像光学系15と、ウエハ3を載置するウエハステージWSと、ウエハステージWS上に搭載された変位測定装置200が配置される。変位測定装置200は、第1、第2、及び第3の実施形態を適用することができる。なお、ウエハステージWSは、微動ステージと粗動ステージで構成され、変位測定装置200は、微動ステージ上に搭載される。
【0044】
ステージ制御部1000は、基板ステージとしてのウエハステージWS、演算処理部81、変位測定装置200と電気的に接続され、変位測定装置200の測定結果に基づいてウエハステージWSの位置制御を行う。また、中央制御部1100は、ステージ制御部1000、照明装置800、レチクルステージRSと電気的に接続され、露光装置の動作を制御する。なお、ステージ制御部1000と中央制御部1100はともに、CPUおよびメモリを有し、得られた測定結果について補正演算を行うことができる。
【0045】
照明装置800は、回路パターンが形成されたレチクル14を照明し、光源部800と、照明光学系801とを有する。原版としてのレチクル14は、回路パターンが形成され、レチクルステージRSに支持及び駆動されている。レチクルステージRSは、図示しないレチクルチャックを介してレチクル14を保持し、図示しない移動機構に接続されている。移動機構は、リニアモーターなどで構成され、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び各軸の回転方向にレチクルステージRSを駆動することでレチクル14を移動させることができる。基板としてのウエハ3上には、フォトレジストが塗布されている。
【0046】
続いて、ウエハ3を保持するウエハステージWSの位置測定について説明する。ウエハステージWSは、レチクルステージRSと同様に、リニアモーターを利用して、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び各軸の回転方向にウエハ3を移動させる。本実施形態においては、ウエハステージWS上に変位測定装置200が搭載される。変位測定装置200は、測定基準となるスケール7に対するウエハステージWSの相対位置関係を測定することで、ウエハステージWSの位置測定を行う。
【0047】
図6(B)に、測定基準であるスケール7とウエハステージWSとの位置関係を示す。スケール7には一次元の格子パターンが形成されており、4つのスケールが投影光学系15を取り囲むように配置される。図6(B)のように、4つのスケールの格子方向がX軸またはY軸に対して45度傾いた方向となるように配置され、WSに搭載された4つの変位測定装置200で各方向における変位を測定する。例えば、スケール7aに対して変位測定装置200aを用いて測定することで、X軸に対して+45度傾いた方向における変位測定が可能である。また、スケール7bに対して変位測定装置200bを用いて測定することで、Y軸に対して+45度傾いた方向における変位測定が可能となる。同様にして、スケール7cに対して変位測定装置200cを、スケール7dに対して変位測定装置200dを用いることで、Y軸に対して+45度傾いた方向及び、X軸に対して+45度傾いた方向の変位をそれぞれ測定することができる。従って、適当な3つのスケールにおける変位測定を行うことで、X軸とY軸およびZ軸まわりの回転Rz軸の変位を求めることができる。また、ウエハステージWSは少なくとも1つの基準マーク60を備えており、ウエハ3とレチクル14との位置合わせを行う。位置合わせに際しては、アライメントスコープ(不図示)で基準マーク60の位置を検出し、検出結果に基づいてウエハステージWSを変位測定装置200の計測値を元に制御しながら駆動させて、ウエハ3を所望の位置に移動させる。
【0048】
次に、本実施形態の露光装置を用いた露光方法について詳細に説明する。図7は本実施形態の露光装置を使用する場合の露光方法の全体のシーケンスを示すフローチャートである。まず、ステップS1でウエハ3を装置に搬入し、ステップS101で、このウエハに対してウエハアライメントを行う。ウエハアライメントは、アライメントスコープ(不図示)により、ウエハ上のマークの位置を検出して、露光装置に対して、ウエハのXY平面の位置合わせを行うものである。位置合わせに際して、ウエハステージWSを変位測定装置200の計測結果を元に制御しながら駆動させて、ウエハ3を所望の位置に移動させる。
【0049】
その後ステップS102で、面位置計測装置(不図示)により、ウエハ3上の所定箇所の表面位置を計測し、Z方向および傾き(チルト)方向へのステージ駆動により、ほぼ露光スリット単位でウエハ表面の高さ方向の位置に合わせこむ動作を行う。ステップS103では、露光およびウエハステージWSのY方向への走査が行われる。
こうして、第1露光ショットが露光終了するとステップS105で未露光ショットの有無を判断し、未露光ショットが有り場合には、ステップS102に戻る。そして第1露光ショットの場合と同様に次の露光ショットの面位置計測結果に基づいて、Z方向および傾き(チルト)方向へのステージ駆動によりほぼ露光スリット単位でウエハ3表面の高さ方向の形状に合わせこむ動作を行いながら露光が行われる。ステップS104で、露光すべきショット(即ち、未露光ショット)がないかどうかを判断し、未露光ショットがなくなるまで、上述の動作を繰り返す。全ての露光ショットの露光が終了したら、ステップS105でウエハ3を回収し、終了する。
【0050】
ウエハステージWSは、シングルステージに限らず、露光時に使用する露光ステーションとウエハアライメントおよび面位置計測のための計測ステーションの2つを持つ、所謂、ツインステージの構成としても良い。ツインステージでは、2つのステージが露光ステーション、計測ステーションの間を交互に入れ替わる。この場合、変位測定装置200は2つのウエハステージWSにそれぞれ配置される。また、その測定基準となるスケール7は、露光ステーションと計測ステーションの両方に配置され、変位測定装置200によりウエハステージWSの位置を制御することになる。なお、ここまでは変位測定装置200をウエハステージに搭載する場合について説明したが、変位測定装置200の適用はウエハステージに限定されず、レチクルステージに搭載しても良い。レチクルステージに搭載した場合についても、高精度にステージの変位を測定し、所望の位置に正確にレチクルステージを移動させることができる。
【0051】
半導体デバイスの微細化に伴い、半導体露光装置のレチクルとウエハの位置合わせにおいては、ナノメートルオーダーの精度が求められている。このため、正確にステージの変位を測定できる格子干渉型エンコーダを用いた変位測定は重要な技術と言える。その中で、微細スケールを用いた高精度な格子干渉型エンコーダを実現するためには、スケールの製造誤差の影響を低減させる本実施形態の効果は大きいと言える。ステージの変位を高精度に測定できるようになれば、ウエハとレチクルの位置合わせ精度が向上することになり、半導体素子の性能向上や、製造歩留まりの向上にも繋がるという効果がある。
【0052】
なお、本実施形態においては、変位測定装置を半導体露光装置のステージ位置計測装置として適用した場合について説明したが、本発明の変位測定装置の適用範囲は露光装置(液晶露光装置、EUV露光装置、EB露光装置など)に限定されない。例えば、ナノインプリント装置または顕微鏡などの精密機械におけるステージ装置に広く適用することができる。
【0053】
〔実施形態5〕
つぎに、本発明の一実施形態のデバイス(半導体デバイス、液晶表示デバイス等)の製造方法について説明する。ここでは、半導体デバイスの製造方法を例に説明する。
【0054】
半導体デバイスは、ウエハに集積回路を作る前工程と、前工程で作られたウエハ上の集積回路チップを製品として完成させる後工程を経ることにより製造される。前工程は、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたウエハを露光する工程と、ウエハを現像する工程を含む。後工程は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)と、パッケージング工程(封入)を含む。なお、液晶表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラス基板に感光剤を塗布する工程と、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたガラス基板を露光する工程と、ガラス基板を現像する工程を含む。本実施形態のデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
6 格子パターン
7(7a〜7d) スケール
1 光源
10(10a、10b) 受光素子
200(200a〜200d)、300 変位測定装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子パターンが形成されたスケールと、
前記スケールに光を照射する光源と、
前記スケールの前記格子パターンで回折された光を受光する受光素子と、を備え、
前記格子パターンの形状は、該格子パターンの格子方向に一定の周期で変化しており、
前記受光素子は、前記格子パターン上の、前記格子方向に前記周期の自然数倍の長さを有する領域で回折された光を受光する
ことを特徴とする変位測定装置。
【請求項2】
前記光源からの光を前記スケールへ導き、前記スケールの前記格子パターンで回折された光を前記受光素子へ導く光学系を備え、
前記光学系は、前記受光素子が前記格子パターン上の前記領域で回折された光を受光するように、該受光素子が受光する光束のサイズを調整する光束サイズ調整手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の変位測定装置。
【請求項3】
前記光束サイズ調整手段は、前記スケールと前記受光素子との間の光路中に配置されており、
前記スケールからの光のうち前記格子パターン上の前記領域で回折された光を透過する
ことを特徴とする請求項2に記載の変位測定装置。
【請求項4】
前記光束サイズ調整手段は、前記光源と前記スケールとの間の光路中に配置されており、前記光源からの光のうち前記格子パターン上の前記領域を照射する光のみを透過する
ことを特徴とする請求項2に記載の変位測定装置。
【請求項5】
前記光束サイズ調整手段は、前記受光素子の受光面と共役な位置に配置されている絞りを含む
ことを特徴とする請求項3に記載の変位測定装置。
【請求項6】
前記光束サイズ調整手段は、前記スケールの格子パターン面と共役な位置に配置されている絞りを含む
ことを特徴とする請求項4に記載の変位測定装置。
【請求項7】
スケールと、前記スケールに光を照射する光源と、前記スケールからの光を受光する受光素子と、を備える変位測定装置の前記スケールを製造する方法であって、
レーザ光源からのレーザビームをスケール基板に対して走査距離だけ走査して、前記スケール基板に格子パターンを描画する工程と、
前記スケール基板上の描画位置を走査方向に移動し、前記レーザビームを前記スケール基板に対して前記走査距離だけ再度走査して、前記格子パターンの格子方向への長さを延ばす工程と、を有し、
前記走査距離は、前記格子パターン上の前記格子方向に該走査距離の自然数倍の長さを有する領域で回折された光を前記受光素子が受光するように、該受光素子の受光領域の長さに基づいて決定される
ことを特徴とするスケール製造方法。
【請求項8】
基板を保持し、移動するステージと、
前記ステージの変位を測定する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の変位測定装置と、を備える
ことを特徴とするステージ装置。
【請求項9】
原版のパターンの像を基板上に投影する投影光学系と、
請求項8に記載のステージ装置と、を備える
ことを特徴とする露光装置。
【請求項10】
請求項9記載の露光装置で基板を露光し、
該露光された基板を現像する
ことを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項1】
格子パターンが形成されたスケールと、
前記スケールに光を照射する光源と、
前記スケールの前記格子パターンで回折された光を受光する受光素子と、を備え、
前記格子パターンの形状は、該格子パターンの格子方向に一定の周期で変化しており、
前記受光素子は、前記格子パターン上の、前記格子方向に前記周期の自然数倍の長さを有する領域で回折された光を受光する
ことを特徴とする変位測定装置。
【請求項2】
前記光源からの光を前記スケールへ導き、前記スケールの前記格子パターンで回折された光を前記受光素子へ導く光学系を備え、
前記光学系は、前記受光素子が前記格子パターン上の前記領域で回折された光を受光するように、該受光素子が受光する光束のサイズを調整する光束サイズ調整手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の変位測定装置。
【請求項3】
前記光束サイズ調整手段は、前記スケールと前記受光素子との間の光路中に配置されており、
前記スケールからの光のうち前記格子パターン上の前記領域で回折された光を透過する
ことを特徴とする請求項2に記載の変位測定装置。
【請求項4】
前記光束サイズ調整手段は、前記光源と前記スケールとの間の光路中に配置されており、前記光源からの光のうち前記格子パターン上の前記領域を照射する光のみを透過する
ことを特徴とする請求項2に記載の変位測定装置。
【請求項5】
前記光束サイズ調整手段は、前記受光素子の受光面と共役な位置に配置されている絞りを含む
ことを特徴とする請求項3に記載の変位測定装置。
【請求項6】
前記光束サイズ調整手段は、前記スケールの格子パターン面と共役な位置に配置されている絞りを含む
ことを特徴とする請求項4に記載の変位測定装置。
【請求項7】
スケールと、前記スケールに光を照射する光源と、前記スケールからの光を受光する受光素子と、を備える変位測定装置の前記スケールを製造する方法であって、
レーザ光源からのレーザビームをスケール基板に対して走査距離だけ走査して、前記スケール基板に格子パターンを描画する工程と、
前記スケール基板上の描画位置を走査方向に移動し、前記レーザビームを前記スケール基板に対して前記走査距離だけ再度走査して、前記格子パターンの格子方向への長さを延ばす工程と、を有し、
前記走査距離は、前記格子パターン上の前記格子方向に該走査距離の自然数倍の長さを有する領域で回折された光を前記受光素子が受光するように、該受光素子の受光領域の長さに基づいて決定される
ことを特徴とするスケール製造方法。
【請求項8】
基板を保持し、移動するステージと、
前記ステージの変位を測定する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の変位測定装置と、を備える
ことを特徴とするステージ装置。
【請求項9】
原版のパターンの像を基板上に投影する投影光学系と、
請求項8に記載のステージ装置と、を備える
ことを特徴とする露光装置。
【請求項10】
請求項9記載の露光装置で基板を露光し、
該露光された基板を現像する
ことを特徴とするデバイス製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−127981(P2011−127981A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285771(P2009−285771)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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