説明

導電性ペースト、及び積層セラミック電子部品の製造方法、並びに積層セラミック電子部品

【課題】水分やめっき液に対し、より優れた耐性を有する新規な導電性ペースト、及び該導電性ペーストを使用した積層セラミック電子部品の製造方法、並びに該製造方法により製造された積層セラミック電子部品を実現する。
【解決手段】導電性ペーストが、導電性粉末とガラス成分と有機ビヒクルとを含有し、前記ガラス成分がSiO−TO−MO−XO系材料(ただし、TはTi及びZrの中から選択された少なくとも1種を示し、MはMn及びNiの中から選択された少なくとも1種を示し、XはCa、Ba、Sr及びMgの中から選択された少なくとも1種を示す。)で形成されている。この導電性ペーストを使用して積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品の内部導体2を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ペースト、及び積層セラミック電子部品の製造方法、並びに積層セラミック電子部品に関し、より詳しくは積層セラミック電子部品の内部導体を形成するための導電性ペースト、及び該導電性ペーストを使用して積層セラミック電子部品を製造する積層セラミック電子部品の製造方法、並びに該製造方法を使用して製造された積層セラミックコンデンサ、積層インダクタ、積層圧電部品、積層フィルタ、セラミック多層基板等の積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミック電子部品は、内部導体が埋設されたセラミック素体の外表面に外部導体が形成され、さらに、耐熱性やはんだ濡れ性等の向上を図るべく、セラミック素体にめっき処理を施し、これにより外部導体の表面にめっき皮膜が形成されている。
【0003】
ところで、近年における積層セラミック電子部品の小型化・ 薄層化に伴い、内部導体も薄層化の要求がなされているが、この内部導体は、薄層化すればするほど連続性が低下して内部導体中に空隙が形成されてしまう傾向にある。そして、めっき処理時にはめっき液が空隙を介して内部に浸入したり、高温多湿下に長時間晒すと水分が空隙を介して内部に浸入し、このためセラミック層と内部導体の界面を浸食してデラミネーションを起こしたり、電子部品の内部に蓄積された応力を開放しながらクラックが発生し、その結果構造欠陥が生じたり耐湿性が低下し、電子部品としての信頼性低下を招くおそれがある。
【0004】
そこで、従来より、例えば、Ni金属粒子と、該Ni金属粒子の表面にコーティングされたガラス成分と、該ガラス成分中に分散しているTiC粒子と、該ガラス成分及び該TiC粒子を備えた該Ni金属粒子を分散させている有機バインダとを含む導電性ペーストが提案されている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1では、導電性ペーストにガラス成分を添加することにより、内部導体とセラミック層との結合強度を向上させている。また、特許文献1ではガラス成分として、LiO―BaO−SiO系材料やCaO−MgO−SiO系材料が使用されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−122660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、ガラス成分としてLiO―BaO−SiO系材料やCaO−MgO−SiO系材料を導電性ペースト中に含有させているが、水分やめっき液に対し、より耐性の優れたガラス成分を導電性ペースト中に含有させることにより、クラックやデラミネーション等の構造欠陥をより完璧に防ぐことができ、また耐湿性向上を図ることができると考えられる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、水分やめっき液に対し、より優れた耐性を有する新規な導電性ペースト、及び該導電性ペーストを使用した積層セラミック電子部品の製造方法、並びに該製造方法により製造された積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究を行ったところ、SiOに加え、TiO及びZrOの少なくともいずれか1種、MnO及びNiOの少なくともいずれか1種、CaO、BaO、SrO及びMgOの少なくも1種からなる群を含有したガラス成分を導電性ペースト中に含ませることにより、水分やめっき液に対して耐性を有する導電性ペーストを得ることができ、その結果、内部導体の連続性が良好で構造欠陥も生じず、耐湿性の優れた積層セラミック電子部品を得ることができるという知見を得た。
【0010】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る導電性ペーストは、積層セラミック電子部品の内部導体を形成するための導電性ペーストであって、導電性粉末とガラス成分と有機ビヒクルとを含有し、前記ガラス成分がSiO−TO−MO−XO系材料(ただし、TはTi及びZrの中から選択された少なくとも1種を示し、MはMn及びNiの中から選択された少なくとも1種を示し、XはCa、Ba、Sr及びMgの中から選択された少なくとも1種を示す。)で形成されていることを特徴としている。
【0011】
また、積層セラミック電子部品、特に積層セラミックコンデンサの場合、良好な電気的特性を確保する観点からは、ガラス成分の含有量は、導電性粉末100重量部に対し1〜20重量部であるのが好ましい。
【0012】
すなわち、本発明の導電性ペーストは、前記ガラス成分の含有量が、導電性粉末100重量部に対し1〜20重量部であることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の導電性ペーストは、前記ガラス成分の配合比率は、TO:5〜15重量%、MO:5〜15重量%、XO:15〜25重量%、残部:SiOであることを特徴としている。
【0014】
さらに、本発明の導電性ペーストは、前記導電性粉末が、Niを主成分とすることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る積層セラミック電子部品は、上記導電性ペーストを使用してセラミックグリーンシート上に内部導体となるべき導電パターンを形成する導電パターン形成工程と、前記導電パターンの形成されたセラミックグリーンシートを複数枚積層して積層体を作製する積層体作製工程と、前記積層体に焼成処理を行ってセラミック素体を作製するセラミック素体作製工程と、前記セラミック素体の外表面に外部導体を形成する外部導体形成工程と、該外部導体の形成されたセラミック素体にめっき処理を施し、前記外部導体の表面にめっき被膜を形成するめっき処理工程とを含むことを特徴としている。
【0016】
さらに、本発明に係る積層セラミック電子部品は、上記製造方法で製造されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明の導電性ペーストによれば、Ni等の導電性粉末とガラス成分と有機ビヒクルとを含有し、前記ガラス成分がSiO−TO−MO−XO系材料(ただし、TはTi及びZrの中から選択された少なくとも1種を示し、MはMn及びNiの中から選択された少なくとも1種を示し、XはCa、Ba、Sr及びMgの中から選択された少なくとも1種を示す。)で形成されているので、内部導体中に形成され得る空隙部分がガラス成分で埋められることとなり、したがって空隙の形成が抑制されて内部導体の連続性が良好となる。しかも、このガラス成分はめっき液や水分に対し良好な耐性を有しているので、構造欠陥が生じるのを抑制することができ、耐湿性にも優れた積層セラミック電子部品を得ることが可能となる。
【0018】
また、本発明の導電性ペーストによれば、前記ガラス成分の含有量が、導電性粉末100重量部に対し1〜20重量部であるので、所望の温度特性を有する積層セラミックコンデンサの内部導体形成に適した新規な導電性ペーストを得ることができる。
【0019】
また、本発明の積層セラミック電子部品の製造方法、及び積層セラミック電子部品によれば、内部導体の連続性が良好で構造欠陥もなく耐湿性に優れ、かつ電気的特性も良好な積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
【0021】
本発明に係る導電性ペーストは、導電性粉末とガラス成分とが有機ビヒクル中に分散されてなる。
【0022】
そして、前記ガラス成分は、SiO−TO−MO−XO系材料で形成されている。
【0023】
ここで、TはTi及びZrの中から選択された少なくとも1種、MはMn及びNiの中から選択された少なくとも1種、XはCa、Ba、Sr及びMgの中から選択された少なくとも1種である。
【0024】
すなわち、SiO−TO−MO−XO系材料は、水分やめっき液に対する耐性に優れており、したがって、斯かるSiO−TO−MO−XO系材料を含有した導電性ペーストを使用して積層セラミック電子部品を製造することにより、内部導体中に形成され得る空隙部分が前記ガラス成分で埋められて内部導体の連続性を高めることができると共に、めっき処理時にめっき液が内部に浸入するのを防ぐことができ、しかも高温多湿下で長時間晒しても絶縁抵抗の低下を招くことのない耐湿性の優れた積層セラミック電子部品を得ることができる。
【0025】
また、ガラス成分の含有量としては、導電性粉末100重量部に対し1〜20重量部が好ましい。これはガラス成分の含有量が、導電性粉末100重量部に対し1重量部未満になると、ガラス成分の含有量が少なすぎるためその添加効果を発揮することができず、一方、ガラス成分の含有量が、導電性粉末100重量部に対し20重量部を超えると、例えば、積層セラミックコンデンサの場合、静電容量の温度特性の劣化を招くおそれがあり、好ましくないからである。
【0026】
また、ガラス成分の配合比率としては、TO:5〜15重量%、MO:5〜15重量%、XO:15〜25重量%、残部:SiOが好ましく、斯かる組成範囲で耐性に優れ、かつ所望の電気的特性を確保することができる積層セラミック電子部品を実現することが可能となる。
【0027】
尚、導電性粉末については、特に限定されるものではないが、コスト面を考慮するとNi、Ag、Cuが好ましく、特にNiが好適する。
【0028】
次に、本導電性ペーストの製造方法を説明する。
【0029】
まず、SiO、TO、MO、及びXOを所定量秤量し、この秤量物を温度1000〜1600℃で所定時間保持して溶融させ、次いでこの溶融物を純水中に流し込み、ボールミル等で湿式粉砕した後、乾燥し、これにより平均粒径0.5〜2.0μmのガラス粉末を作製する。
【0030】
次に、気相法や液相法等の任意の方法で製造された平均粒径が0.1〜1.0μmの導電性粉末を用意し、この導電性粉末及びガラス粉末を所定量秤量し、該秤量物を有機ビヒクル中で混合し、三本ロールミルで混練して分散させ、これにより導電性ペーストを作製する。尚、有機ビヒクルとしては、例えば、所定量のエチルセルロース樹脂等の有機バインダをテルピネオール等の有機溶剤中に分散させたものを使用することができる。
【0031】
次に、上記導電性ペーストを使用して製造されたセラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサについて詳説する。
【0032】
図1は積層セラミックコンデンサの一実施の形態を模式的に示した断面図である。
【0033】
該積層セラミックコンデンサは、セラミック素体1に内部導体2(2a〜2f)が埋設されると共に、該セラミック素体1の両端部には外部導体3a、3bが形成され、さらに該外部導体3a、3bの表面には第1のめっき皮膜4a、4b及び第2のめっき皮膜5a、5bが形成されている。
【0034】
具体的には、各内部導体2a〜2fは積層方向に並設されると共に、内部導体2a、2c、2eは外部導体3aと電気的に接続され、内部導体2b、2d、2fは外部導体3bと電気的に接続されている。そして、内部導体2a、2c、2eと内部導体2b、2d、2fとの対向面間で静電容量を取得している。
【0035】
上記積層セラミックコンデンサは以下のようにして製造される。
【0036】
まず、ジルコン酸バリウムやチタン酸バリウム等のセラミック材料を主成分とするセラミックグリーンシートを用意し、上記導電性ペーストを使用し、セラミックグリーンシート上にスクリーン印刷を施して所定形状の導電パターンを形成する。
【0037】
次いで、導電パターンが形成されたセラミックグリーンシートを所定方向に複数枚積層し、導電パターンの形成されていないセラミックグリーンシートで挟持・圧着し、所定寸法に切断してセラミック積層体を作製する。しかる後、大気中、温度約300℃で脱バインダ処理を行ない、その後、所定の還元雰囲気中又は大気中、温度1000〜1500℃で所定時間焼成処理を行い、これにより内部導体2が埋設されたセラミック素体1を作製する。
【0038】
次いで、上述した本導電性ペーストをセラミック素体1の両端面に塗布した後、乾燥し、大気中温度800〜1000℃で所定時間焼成処理を施し、外部導体3a、3bを形成する。
【0039】
次に、電解めっきを施して外部導体3a、3bの表面にNi、Cu等からなる第1のめっき皮膜4a、4bを形成し、さらに該第1のめっき皮膜4a、4bの表面にはんだやSn等からなる第2のめっき皮膜5a、5bを形成し、これにより積層セラミックコンデンサが製造される。
【0040】
このように本積層セラミックコンデンサは、上述した導電性ペーストを使用して内部導体2を形成しているので、内部導体2中に空隙が生じるのを抑制することができ、したがって内部導体2の連続性が良好であり、しかも導電性ペーストはめっき液や水分に対して良好な耐性を有しているので、内部導体へのめっき液や水の浸入を防止することができ、これによりデラミネーションやクラック等の構造欠陥が生じず、絶縁抵抗の低下を招かず良好な耐湿性を有する信頼性の優れた積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0041】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されることはない。上記実施の形態では、本導電性ペーストを積層セラミックコンデンサの製造に適用した場合について述べたが、積層インダクタや積層圧電部品、積層フィルタ、セラミック多層基板等他のセラミック電子部品についても同様に適用できるのはいうまでもない。
【0042】
また、セラミック素体1を構成するセラミック材料と同一のセラミック材料(以下、「共材」という。)を導電性ペースト中に所定量含有することにより、本発明のガラス成分の効果と相俟って構造欠陥の抑制や耐湿性向上を図ることができる。ただし、共材の含有量が過剰になると導電性粉末の含有量が減少することから電気的特性の低下を招くおそれがあり、導電性ペースト中に共材を含有させる場合は、その含有量に留意する必要がある。
【0043】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0044】
〔内部導体用導電性ペーストの作製〕
まず、SiO、TiO、ZrO、MnO、NiO、CaO、SrO、MgOの各ガラス材を用意し、ガラス成分が表1に示すような組成となるように、これらガラス材を秤量し、白金製の坩堝に入れて温度1000〜1600℃で30分間保持し、完全に溶融したことを確認した後、坩堝から取り出して純水中に投入し、ボールミルで湿式粉砕した後乾燥し、これにより平均粒径0.5〜2.0μmの試料番号1〜13のガラス粉末を作製した。
【0045】
次に、塩化ニッケルを気相水素還元法を使用して還元し、平均粒径0.2μmのNi粉末を作製し、さらに、共材として平均粒径0.2μmのジルコン酸カルシウム(CaZrO)を用意した。
【0046】
次に、ガラス成分及び共材の含有量が、Ni粉末100重量部に対し、表1に示すような重量部となるように、Ni粉末、ガラス粉末、及び共材を秤量した。次に、これら固形分(Ni粉末、ガラス粉末、及び共材):50重量%、有機ビヒクル:49重量%、分散剤としての脂肪酸:1重量%となるように配合し、ミキサーで混合した後、三本ロールミルで混練して内部導体用導電性ペーストを作製した。尚、有機ビヒクルは、エチルセルロース樹脂が5重量%となるように有機溶剤としてのテルピネオール中にエチルセルロース樹脂を溶解したものを使用した。
【0047】
表1は導電性ペーストの成分組成を示している。
【表1】

〔積層セラミックコンデンサの作製〕
焼成後の厚みが3μmとなるように成形処理されたジルコン酸カルシウムを主成分とするセラミックグリーンシートを準備し、一方の端縁がセラミックグリーンシートの何れかの端面に露出するように、該セラミックグリーンシートの表面に上記内部導体用導電性ペーストを用いて内部導体となるべき導電パターンをスクリーン印刷した。次に、導電パターンの形成されたセラミックグリーンシートを所定枚数積層し、次いで、導電パターンの形成されていないセラミックグリーンシートで挟持した後、圧着してセラミック積層体を作製し、その後大気雰囲気下、温度約300℃で脱バインダ処理を行なった後、N−H−HOの還元雰囲気下、温度1300℃で焼成処理を行ない、これによりセラミック焼結体を作製し、セラミック素体を得た。
【0048】
次に、このセラミック素体の両端部にCuを主成分とする外部電極用導電ペーストを塗布した後、大気雰囲気下、温度850℃で10分間焼成処理を施し、外部導体を形成した。
【0049】
次に、外部導体の形成されたセラミック素体に電解Niめっき処理、及び電解Snめっき処理を順次施し、外部導体の表面にNi皮膜及びSn皮膜を形成し、長さ3.2mm、幅1.6mm、厚み1.2mmからなる試料番号1〜13の積層セラミックコンデンサを得た。尚、セラミックグリーンシートの積層数は200層であった。
【0050】
〔試料番号1〜13の評価〕
試料番号1〜13の各試料について、内部導体の空隙の有無、及びクラックの有無を確認し、耐湿性を評価した。
【0051】
ここで、空隙の有無は、内部導体のセラミック素体から露出している露出面を走査型電子顕微鏡で撮影し、画像解析して内部導体中の空隙率を求め、空隙率が1%を越えるものを空隙有りと判定した。
【0052】
クラックの有無は、温度325℃に調整されたはんだ槽(Sn−Pb)に試料番号1〜13の試料各50個を2〜3秒浸漬し、クラックの発生した試料を計数して評価した。
【0053】
また、耐湿性は、試料番号1〜13の試料各72個について、圧力1.96×10Pa、温度125℃、相対湿度95%の高温多湿下、50Vの直流電圧を200時間印加し、絶縁抵抗が10Ω以下に低下したものを不良品と判定した。
【0054】
また、試料番号3〜13については、比誘電率εr、及び静電容量の温度変化率(以下、「容量変化率」という。)を測定し、誘電特性及び温度特性を評価した。
【0055】
ここで、比誘電率εrは、静電容量を周波数1MHz、温度25℃で測定し、この静電容量と試料寸法から算出した。
【0056】
また、容量変化率は、周波数1MHzにおいて、温度25℃と温度125℃における静電容量を測定し、その変化率を算出して求めた。尚、温度特性の良否は、EIAJ規格で規定するCG特性を満足するか否かで判断した。ここで、CG特性とは、−55℃〜+125℃の温度範囲で、温度25℃を基準とした容量変化率ΔC/C25が±30ppm/℃を満足する特性をいう。
【0057】
表2は試料番号1〜13の各測定結果を示している。
【表2】

試料番号2は、内部導体用導電性ペースト中にガラス成分が含有されていないため、内部導体中に空隙が認められ、クラックも50個中、5個で発生し、また絶縁抵抗も72個中、15個で10Ω以下となって耐湿性の低下が認められた。
【0058】
試料番号12は、内部導体用導電性ペースト中にガラス成分が含有されているが、ガラス成分中にはTO(TはTi及びZrのいずれか少なくとも1種)、MO(MはMn及びNiのいずれか少なくとも1種)が含有されていないため、空隙の形成やクラックの発生は無かったものの、絶縁抵抗は72個中、10個で10Ω以下となり、耐湿性が低下することが分かった。
【0059】
試料番号13は、内部導体用導電性ペースト中のガラス成分はSiOのみであるため、内部導体中にも空隙が認められ、クラックも50個中、3個で発生し、また絶縁抵抗も72個中、12個で10Ω以下となり、耐湿性の低下が認められた。
【0060】
これに対し試料番号1、3〜11は、内部導体用導電性ペースト中にSiO−TO−MO−XO系のガラス成分が含有されているので、空隙の形成やクラックの発生は無く、絶縁抵抗も10Ω以下に低下することはなく、耐湿性が低下することもなかった。
【0061】
ただし、試料番号5は、ガラス成分の含有量がNi粉末100重量部に対し25重量部と多いため、容量変化率ΔC/C25が+50ppm/℃となってCG特性を満足しなくなった。したがって、CG特性を満足させるためには、ガラス成分の含有量は20重量%以下となるように調製するのが好ましいことが確認された。
【実施例2】
【0062】
〔内部導体用導電性ペーストの作製〕
まず、SiO、TiO、ZrO、MnO、NiO、CaO、BaO、MgOの各ガラス材を用意し、ガラス成分が表3に示すような組成となるように、これらガラス材を秤量し、〔実施例1〕と同様の方法・手順で、平均粒径0.5〜2.0μmの試料番号21〜25のガラス粉末を作製した。
【0063】
次に、塩化ニッケルを気相水素還元法を使用して還元し、平均粒径0.2μmのNi粉末を作製し、さらに、共材として平均粒径0.1μmのチタン酸バリウム(BaTiO)を用意した。
【0064】
次に、ガラス成分及び共材の含有量が、Ni粉末100重量部に対し、表3に示すような重量部となるように、Ni粉末、ガラス粉末、及び共材を秤量し、その後、〔実施例1〕と同様の方法・手順で内部導体用導電性ペーストを作製した。
【0065】
表3は導電性ペーストの成分組成を示している。
【表3】

〔積層セラミックコンデンサの作製〕
焼成後の厚みが3μmとなるように成形処理されたチタン酸バリウムを主成分とするセラミックグリーンシートを準備し、〔実施例1〕と同様の方法・手順で試料番号21〜25の積層セラミックコンデンサを得た。尚、この実施例2では焼成処理を温度1270℃で行った。
【0066】
〔試料番号21〜25の評価〕
試料番号21〜25の各試料について、〔実施例1〕と同様の方法・手順で内部導体の空隙の有無及びクラックの有無を確認し、耐湿性を評価した。さらに、比誘電率εr、及び容量変化率を測定し、誘電特性を評価した。
【0067】
尚、容量変化率は、周波数1MHzにおいて、温度20℃と温度85℃における静電容量を測定して、その変化率を算出して求めた。尚、温度特性の良否は、EIAJ規格で規定するB特性を満足するか否かで判断した。ここで、B特性とは、−20℃〜+85℃の温度範囲で、温度20℃を基準とした容量変化率ΔC/C20が±10%/℃を満足する特性をいう。
【0068】
表4は試料番号21〜25の各測定結果を示している。
【表4】

試料番号24は、内部導体用導電性ペースト中にガラス成分が含有されているが、ガラス成分中にはTO(TはTi及びZrのいずれか少なくとも1種)、MO(MはMn及びNiのいずれか少なくとも1種)が含有されていないため、空隙の形成やクラックの発生は無かったものの、72個中、12個で絶縁抵抗が10Ω以下となり、耐湿性の低下することが分かった。
【0069】
試料番号25は、内部導体用導電性ペースト中のガラス成分はSiOのみからなるため、内部導体中に空隙が認められ、クラックも50個中、5個で発生し、また絶縁抵抗も72個中、15個で10Ω以下となり、耐湿性の低下が認められ、また容量変化率ΔC/C20も−15%/℃となってB特性を満足しなくなった。
【0070】
これに対し試料番号21〜23は、内部導体用導電性ペースト中にSiO−TO−MO−XO系のガラス成分が含有されているので、空隙の形成やクラックの発生は無く、絶縁抵抗も10Ω以下に低下するものはなく、耐湿性が低下することもなかった。また、容量変化率ΔC/C20も±10%/℃の範囲となり、B特性を満足することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係るセラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサの一実施の形態を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 セラミック素体
2 内部導体
3a、3b 外部導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層セラミック電子部品の内部導体を形成するための導電性ペーストであって、
導電性粉末とガラス成分と有機ビヒクルとを含有し、
前記ガラス成分がSiO−TO−MO−XO系材料(ただし、TはTi及びZrの中から選択された少なくとも1種を示し、MはMn及びNiの中から選択された少なくとも1種を示し、XはCa、Ba、Sr及びMgの中から選択された少なくとも1種を示す。)で形成されていることを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
前記ガラス成分の含有量は、前記導電性粉末100重量部に対し1〜20重量部であることを特徴とすることを特徴とすることを特徴とする請求項1記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記ガラス成分の配合比率は、TO:5〜15重量%、MO:5〜15重量%、XO:15〜25重量%、残部:SiOであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記導電性粉末は、Niを主成分とすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の導電性ペーストを使用してセラミックグリーンシート上に内部導体となるべき導電パターンを形成する導電パターン形成工程と、前記導電パターンの形成されたセラミックグリーンシートを複数枚積層して積層体を作製する積層体作製工程と、前記積層体に焼成処理を行ってセラミック素体を作製するセラミック素体作製工程と、前記セラミック素体の外表面に外部導体を形成する外部導体形成工程と、該外部導体の形成されたセラミック素体にめっき処理を施し、前記外部導体の表面にめっき被膜を形成するめっき処理工程とを含むことを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の製造方法で製造されたことを特徴とする積層セラミック電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2006−332236(P2006−332236A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152296(P2005−152296)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】