説明

層形成方法、層形成装置、基材処理装置、配線形成方法、および基板の配線構造

【課題】層形成に際して高真空および大きなチャンバを必要としない層形成方法および装置を提供する。
【解決手段】層形成装置は、0.01Paから常圧までの範囲における圧力下において固体または液体の有機金属材料を加熱し気化させることで該有機金属材料を含む原料ガスを生成する材料気化部108と、基材Wを保持する基材保持部100と、基材Wの表面を、材料気化部108により気化させた有機金属材料の分解温度よりも高い温度に加熱する基材加熱部104と、原料ガスからなる雰囲気を基材Wの表面上に局所的に形成する材料供給部109とを備える。材料供給部109は、基材の表面の少なくとも一部を原料ガス雰囲気に暴露させることで基材Wの表面に金属層または金属化合物層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層形成方法および装置に係り、特に半導体デバイス、フラットパネルディスプレイ、微小電気機械システム(MEMS)、精密電子デバイスなどで使用される基材の表面に金属層または金属化合物層を形成する層形成方法および装置に関するものである。また、本発明は、基材処理装置に係り、特に基材の表面に薬液や純水などの処理液あるいはガスを接触させたり、熱処理を行ったりする湿式または乾式処理ユニットを有する基材処理装置に関するものである。さらに、本発明は、配線形成方法に係り、特にバリアメタル層が形成された基板の表面に電解めっきにより銅配線を形成する半導体微細配線形成方法に関するものである。また、本発明は、かかる配線形成方法により形成された基板の配線構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
45nmノードに対応した銅配線技術として、バリアメタルの表面に電解めっきにより直接銅を成膜するプロセスが提案されている。このようなバリアメタルの材料としては、RuやOsなどが検討されており、このようなバリアメタルの成膜方法としては、化学蒸着法(CVD)、原子層蒸着法(ALD)、物理蒸着法(PVD)などがある。特に、CVDによって金属または金属化合物の薄膜を形成する方法は、基材の段差被覆性の優位性から、スパッタリング法に代わり得るキー技術として位置づけられている(例えば後述する非特許文献1参照)。
【0003】
一般のCVD装置では、チャンバに設けられたポートを介して、外部からチャンバ内に原料ガスを導入しつつ、原料ガスを排気して、チャンバ内に原料ガスの流れを形成する。このため、成膜工程には多量の原料ガスを必要とする。また、この原料ガスの流れは、チャンバ形状、チャンバ内部の設置物、原料ガスの化学反応に伴う消耗により乱れを生じ、不均一な層形成の原因となる。
【0004】
このようなガス流れの乱れを抑制するために整流部材をチャンバ内に設置することもある。しかしながら、チャンバの容量が基材に比べて非常に大きくなってしまうという問題があった。さらに、チャンバ内の雰囲気は、チャンバ内全体のガス置換作業によって制御されるため、大きなチャンバのガス置換には大型のガス真空排気システムが必要となる。そのため、めっき装置に代表されるような湿式装置やアニール装置に代表されるような乾式装置に、CVD装置を成膜装置ユニットとして組み込むことは困難であった。
【0005】
また、上述した方法により形成される微細な銅配線構造においては、銅の拡散に対する信頼性と銅との密着性の向上が求められている。
【0006】
【非特許文献1】吉田貞史、「応用物理工学選書3 薄膜」、培風館、1990年、p.64−70
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、良好な段差被覆性を確保しつつ、基材に比べて大型のチャンバおよび大型のガス真空排気システムを必要としない層形成方法および層形成装置を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、1つの装置内で層形成処理と湿式または乾式処理の双方を行うことができる基材処理装置を提供することを第2の目的とする。
さらに、本発明は、銅の拡散に対する信頼性および銅との密着性を高めた基板の配線構造および配線形成方法を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様によれば、基材の表面を加熱し、0.01Paから常圧までの範囲における圧力下において固体または液体である有機金属材料を加熱し気化させることで該有機金属材料を含む原料ガスを生成し、前記原料ガスからなる雰囲気を基材の表面上に局所的に形成し、基材の表面の少なくとも一部を前記雰囲気に暴露させることで基材の表面に金属層または金属化合物層を形成することを特徴とする層形成方法が提供される。
【0009】
ここで、固体の有機金属材料として、ブロック状、粒状、または粉体状の有機金属材料を用いることができる。また、液体の有機金属材料には、水などの溶媒に有機金属材料が溶解された溶液(すなわち有機金属溶液)が含まれる。つまり、0.01Paから常圧までの範囲における圧力下において固体または液体である有機金属材料を含む原料であれば本発明の層形成方法および装置に用いることができる。
また、上記原料ガスとしては、気化された有機金属材料の他に、気体状の有機金属材料とNガスなどの不活性ガス(キャリアガス)との混合気体、または微粉体状の有機金属材料からなるエアロゾルなどが含まれる。
【0010】
本発明によれば、原料ガスからなる雰囲気を基材の表面上に局所的に形成するので、チャンバ全体に原料ガスを供給する必要がなく、有機金属材料の使用量を大幅に減らすことができる。また、チャンバの容積を小さくすることができるので、装置全体をコンパクトにすることができる。その結果、湿式または乾式処理装置と組み合わせることができる。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記原料ガスを基板の表面の一部に供給し、かつ前記原料ガスの供給口と該供給口に対向する基材との間隔を一定に維持しつつ、前記供給口および前記基材を相対的に移動させることで前記原料ガスからなる雰囲気を基材の表面上に局所的に形成し、前記供給口の開口面積を、基材の表面の面積以下とすることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、有機金属材料を気化させる材料気化部と前記供給口とが一体化したユニットを設け、前記ユニットと前記基材とを相対的に移動させることを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記供給口から基材の表面までの距離が、該供給口の最小間口の6倍以下であることを特徴とする。
基材に対して良好な段差被覆性を確保するには、表面反応律速が支配的な領域で層形成プロセスを行うことが不可欠である(例えば、粟屋信義、「高集積化デバイス配線材料調査報告書2」、日本電子工業振興協会、1996、p.187)。しかしながら、チャンバ内の有機金属材料のガス流れは、チャンバの形状やチャンバ内部の設置物、有機金属材料の化学反応に伴う消耗により乱れを生じる。したがって、チャンバ内には有機金属材料の濃度(分圧)分布が生じ、この濃度分布は基材上にも発生し得る。このため、基材の表面上の有機金属材料の濃度が低い部分では、供給(輸送)律速が支配的となり、層の厚さの均一性および良好な段差被覆性を確保するのが困難となる場合がある。
【0013】
図1は、開口幅aの噴射口Eから噴出される噴流Jの2次元自由噴流モデルを示す模式図である。図1に示すように、噴流Jは周囲の流体と激しく混ざり合って乱れを作り、噴流J自身の幅も広がっていく。噴射口Eの周囲は、噴射口Eから遠ざかるにつれ、外部からの乱れが噴流Jの中心線Xに向かって次第に浸透していくため、噴流Jの平均速度が全く衰えないくさび型の領域(ポテンシャルコア)Pが形成される。噴流Jの中心線Xに沿ったポテンシャルコアPの長さは、噴射口Eの開口幅aの6倍(=6a)である。なお、ポテンシャルコアPの周囲は混合領域と呼ばれる。
【0014】
上述の説明は、噴射口Eが図2(a)に示すような直径aの円形の場合だけでなく、図2(b)に示すような短辺a、長辺bの長方形の場合にも当てはまる。すなわち、噴流Jの一様速度をU、中心線X上の噴流Jの速度をum0、噴射口Eからの中心線Xに沿った距離をxとすると、種々のb/aに対するum0/Uとx/aとの関係は、図3に示すグラフのようになる(N.ラジャラトナム、野村安正訳、噴流、森北出版株式会社、p.1,268、1981)。図3からわかるように、ポテンシャルコア(um0/U=1.00である領域)の長さは、b/aの値に関係なく、6aである。
【0015】
このように、噴射口から気化した有機金属材料を噴射する際に、噴射口から基材の表面までの距離を噴射口の最小間口の6倍以下とし、基材の表面をポテンシャルコア内に配置することで、噴出速度を衰えさせることなく、一様速度のガス流れを基材Wの表面に供給することができる。したがって、基材Wの表面上の有機金属材料の濃度は、噴射口における有機金属材料の濃度から低下することなく、一定になる。この結果、供給律速の状態を引き起こすことなく、反応律速の領域を確保した状態で層を形成することができ、層の厚さが均一で良好な段差被覆性を得ることを可能とする。なお、このとき基材の表面に供給される有機金属材料は粘性流領域となる流体である。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記供給口の移動方向に対して後部に、前記供給口と隣接してヒータを配置し、該ヒータにより、層形成と同時に層のアニールを行い、層形成とアニールを2回以上繰り返すことを特徴とする。
一般に、有機金属材料より形成した金属層あるいは金属化合物層は、有機金属材料の化学反応により形成されるので、炭化水素や炭素といった分解物の生成が避けられない。このため、層の析出時に、これらの分解物が層中に取り込まれたり、付着した分解物で基材の表面が汚染されたりすることで、層質の悪化や基材に対する層の密着力の低下を招くおそれがある。また、層の密着性は、層を構成する物質の電子雲と、基材を構成する物質の電子雲との重なり易さという物質固有の性質にも左右される。
【0017】
このような層質の悪化や基材に対する層の密着力の低下を防止するため、該層をヒータによりアニールする必要がある。ヒータとしては、出力および加熱時間を制御できる赤外ランプ炉や、出力および加熱時間を制御でき、局所加熱ができるレーザーなどを使用することができる。
【0018】
このようなヒータを用いたアニール処理により、層内部に取り込まれた分解物は、層表面へ拡散し、そして層外へ放出され、層質が向上する。また、層や基材を構成する原子格子を熱振動させることで、層と基材との間に介在する分解物の有無にかかわらず、層と基材とを十分に近接させ、両者を接合し、さらには、その界面において、両者の原子の相互拡散や置換を起こさせ、高い密着強度を得ることができる。
【0019】
一方で、このアニール処理において、余分な熱エネルギーを層に与えると、表面拡散が促進され、層自らが持つ表面エネルギーによって層の凝縮が起き、その凝縮が進行すると、層の厚さの不均一化や、層の分離が生じてしまう。このため、所望の厚さの層を一度に形成するのではなく、まず、所望の層の厚さよりも更に薄い膜を形成し、引き続き、噴射口に隣接したヒータでその薄膜をアニールする。このようにアニールする膜の厚さを薄くすると、膜の表面拡散での原子移動の絶対量が制限され、膜凝縮の進行が制限される。これと同時に、膜外に分解物が排出されるのに必要な時間を短縮することができ、良質および高密着性の膜を得ることができる。さらにこの層形成方法では、層形成とアニール処理の工程を繰り返し行うことで、良質かつ密着性の良い薄膜を積層し、最終的に、所望の厚さでかつ、良質および高密着性の層を基材上に形成することを可能とする。
【0020】
なお、0.01MPaから常圧までは、基材の表面に供給される有機金属材料は粘性流領域となる流体である。この粘性流領域では、雰囲気の熱伝導度が分子流領域よりも高いので、アニール後における層の除熱が速やかに行われる。
【0021】
本発明の好ましい態様は、基材に対向して含浸部材を配置し、液体である有機金属材料を前記含浸部材に含浸させ、前記含浸部材に含浸された有機金属材料を加熱し気化させることで該有機金属材料を含む原料ガスを生成することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記含浸部材は、多孔質材、不織布、および織布のうちの少なくとも1つであることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記含浸部材の表面から基材の表面までの距離が10mm以下であることを特徴とする。
【0022】
本発明の好ましい態様は、内部に空間を有する基材を用意し、前記空間に前記原料ガスを供給することで該原料ガスからなる雰囲気を基材の表面上に局所的に形成し、前記空間から前記原料ガスおよびその分解生成物を排出することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記原料ガスの供給および排出は、同軸二重構造の流路を用いて行われることを特徴とする。
【0023】
本発明の好ましい態様は、材料供給部材上に有機金属材料の塗膜を形成し、該材料供給部材を基材に対向させて配置し、該材料供給部材上の有機金属材料の塗膜を加熱し気化させることで該有機金属材料を含む原料ガスを生成し、基材と材料供給部材の間隔が3mm以下であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記材料供給部材上の有機金属材料の塗膜を、加熱された前記基材の表面からの伝熱または輻射熱により加熱し気化させることを特徴とする。
【0024】
本発明の好ましい態様は、前記有機金属材料は、コバルト、タングステン、白金、アルミニウム、銅、モリブデン、マンガン、シリコンのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記基材は、半導体ウェハ、セラミック、樹脂、および金属のうちの少なくとも1つであることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記基材の表面は、半導体、セラミック、樹脂、Ru、RuO、Cu、Ta、TaN、Ti、TiN、Si、SiO、low−k材、Co、P、CoP、CoWP、W、WSiC、WC、Ni、およびAlのうち少なくとも1つの物質で形成されていることを特徴とする。
【0025】
本発明の他の態様によれば、配線溝が形成された基板にバリアメタル層を形成する工程と、上記層形成方法で金属層または金属化合物層を前記バリアメタル層上に形成する工程と、前記金属層または前記金属化合物層をシード層として電解めっきを行って前記配線溝を銅で充填する工程と、前記銅の一部を化学的機械的研磨により除去する工程とを有する配線形成方法が提供される。
【0026】
本発明の好ましい態様は、前記金属層または前記金属化合物層は、コバルトを主成分とする金属層であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記配線溝に充填された銅の表面に、コバルトを主成分とする金属層を無電解めっきにより選択的に形成する工程をさらに有することを特徴とする。
【0027】
本発明の他の態様によれば、配線溝に充填された銅と、バリアメタル層と、前記銅と前記バリアメタル層との間に形成されたコバルトを主成分とする金属層と、前記銅の露出表面上に形成されたコバルトを主成分とする金属層とを有し、前記銅と前記バリアメタル層との間に形成された前記金属層は、上記層形成方法で形成されたコバルト層であり、前記銅の露出表面上に形成された前記金属層は、無電解めっきにより形成された金属層であることを特徴とする基板の配線構造が提供される。
【0028】
本発明の他の態様によれば、0.01Paから常圧までの範囲における圧力下において固体または液体の有機金属材料を加熱し気化させることで該有機金属材料を含む原料ガスを生成する材料気化部と、基材を保持する基材保持部と、前記基材の表面を、前記材料気化部により気化させた有機金属材料の分解温度よりも高い温度に加熱する基材加熱部と、前記原料ガスからなる雰囲気を基材の表面上に局所的に形成する材料供給部とを備え、前記材料供給部は、基材の表面の少なくとも一部を前記雰囲気に暴露させることで基材の表面に金属層または金属化合物層を形成することを特徴とする層形成装置が提供される。
【0029】
本発明の好ましい態様は、前記材料供給部は前記原料ガスを基材の表面の一部に供給する供給口を備え、前記供給口と該供給口に対向する基材との間隔を一定に維持しつつ、前記供給口と前記基材とを相対的に移動させる移動機構を設け、前記供給口の開口面積は、基材の表面の面積以下であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記材料気化部と前記材料供給部は一体型のユニットであり、前記移動機構は前記ユニットと基材とを相対的に移動させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記供給口から基材の表面までの距離が、該供給口の最小間口の6倍以下であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記供給口の移動方向に対して後部に、前記供給口と隣接してヒータを配置したことを特徴とする。
【0030】
本発明の好ましい態様は、前記材料供給部は、基材に対向して配置される含浸部材を有し、前記含浸部材には、液体である有機金属材料が含浸されることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記含浸部材は、多孔質材、不織布、および織布のうちの少なくとも1つであることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記含浸部材の表面から基材の表面までの距離が10mm以下であることを特徴とする。
【0031】
本発明の好ましい態様は、前記材料供給部は、前記基材内に形成された空間にシール材を介して接続され、該空間に原料ガスを供給するための材料供給流路を有し、さらに、前記空間にシール材を介して接続され、前記空間から原料ガスおよびその分解生成物を排出するための材料排出流路を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記材料供給流路および前記材料排出流路は、同軸二重構造の流路であることを特徴とする。
【0032】
本発明の好ましい態様は、前記材料供給部は、有機金属材料の塗膜が形成された材料供給部材であり、前記材料供給部材は基板に対向して配置され、基材と前記材料供給部材の間隔が3mm以下であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記材料供給部材上の有機金属材料の塗膜は、加熱された基材からの伝熱あるいは輻射熱により加熱され気化されることを特徴とする。
【0033】
本発明の他の態様によれば、上記層形成装置と、上記層形成装置により金属層または金属化合物層が形成された基材に湿式処理を施す湿式処理ユニットとを備えたことを特徴とする基材処理装置が提供される。
本発明の好ましい態様は、前記湿式処理ユニットは、電解めっきユニット、無電解めっきユニット、化学的機械的研磨ユニット、電解エッチングユニット、電解研磨ユニット、化学エッチングユニット、および洗浄ユニットのうち少なくとも1つであることを特徴とする。
【0034】
本発明の他の態様によれば、上記層形成装置と、上記層形成装置により金属層または金属化合物層が形成された基材に乾式処理を施す乾式処理ユニットとを備えたことを特徴とする基材処理装置が提供される。
本発明の好ましい態様は、前記乾式処理ユニットは、アニールユニット、CVDユニット、およびガスエッチングユニットのうち少なくとも1つであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、成膜スペースの小型化、有機金属材料の節約、基材と層の良好な密着性、層の厚さの均一化、層形成処理と湿式または乾式処理との単一装置内での連続処理を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図4から図19(b)を参照して詳細に説明する。なお、図4から図19(b)において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0037】
図4は、本発明の一実施形態に係る層形成装置を示す模式図である。この層形成装置は、固体または液体である有機金属材料を加熱し気化させることで該有機金属材料を含む原料ガスを生成し、原料ガスからなる雰囲気を基材の表面上に局所的に形成し、加熱された基材の表面を雰囲気に暴露させることで基材の表面に金属層または金属化合物層を形成するものである。
【0038】
図4に示すように、この層形成装置は、基材Wを上向きにして保持する基材保持部(サセプタ)100と、有機金属材料Mを加熱し気化させて該有機金属材料Mを含む原料ガスを生成する材料気化部108と、該材料気化部108に接続され、原料ガスを基材Wに供給する材料供給部109とを備えている。
【0039】
基材保持部100は、その上面に真空チャック機構(図示せず)を有しており、これにより基材Wが基材保持部100の上面に保持されるようになっている。なお、真空チャック機構に代えて、静電力により基材Wを保持する静電チャック機構を設けてもよい。基材保持部100は上下に移動可能となっており、基材Wの搬入および搬出時には下方に移動し、層形成時には上方に移動するようになっている。また、基材保持部100の内部には、真空チャック機構により上面に吸着された基材Wを加熱する第1のヒータ(基材加熱部)104が埋設されている。このヒータ104に電流を流すことにより、基材Wは有機金属材料Mの分解温度よりも高い温度、例えば150℃に加熱される。基材Wの温度は使用する有機金属材料によって変わる。
【0040】
チャンバ130には、不活性ガス供給源131からチャンバ130の内部に窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入するガス導入管121と、この不活性ガスを排出するガス排出管122とが接続されている。ガス排出管122は、流量制御バルブ125を介して真空ポンプ126に接続されている。チャンバ130の圧力は、不活性ガスの流量および流量調整バルブ125を調整することにより、例えば、常圧に設定される。
【0041】
この層形成装置においては、有機金属材料Mとして、0.01Paから常圧までの範囲における圧力下において固体または液体の有機金属材料が選択される。例えば、有機金属材料Mとして有機コバルト(Co)、有機タングステン(W)、有機白金(Pt)、有機アルミニウム(Al)、有機銅(Cu)、有機モリブデン(Mo)、有機マンガン(Mn)などの有機金属や、有機シリコン(Si)、炭化水素、あるいはこれらの組み合わせを用いることが好ましい。一例としては、金属または半導体となる物質にアルキル、フェニル、ペンタジエニルまたはカルボニルなどが配位したものを有機金属材料Mとして用いることができる。有機金属材料Mは気化可能な温度に比べて分解温度が有意に高いことが好ましい。
【0042】
材料気化部108は有機金属材料Mを加熱するヒータ(第2のヒータ)116を有しており、このヒータ116によって有機金属材料Mを加熱することにより該有機金属材料Mを気化させ、有機金属材料Mを含む原料ガスを生成する。例えば有機金属材料Mはヒータ116により70℃に加熱される。このとき、気化した有機金属材料Mを基材Wまで運搬するために不活性ガスを材料気化部108内に導入してもよい。このようにして、材料気化部108は、気体の有機金属材料M、または不活性ガスと気体の有機金属材料Mとの混合気体、または微粉体状の有機金属材料Mであるエアロゾルなどからなる原料ガスを生成する。
【0043】
材料気化部108は伸縮自在な流通管111を通じて材料供給部109に連通している。材料供給部109は、基材保持部100に保持された基材Wの表面に対向するように配置されている。さらに、この材料供給部109は基材Wとほぼ同じ外寸を有し、基材Wの表面全体を覆う囲いのような形状を有している。材料気化部108で生成された原料ガスは流通管111を通じて基板Wの表面まで移送され、材料供給部109の中で滞留し、これにより原料ガスからなる局所的な雰囲気を基材Wの表面上に形成する。材料供給部109と基材Wの間には隙間があり、これにより、材料供給部109の内外の過剰な圧力差が解消される。
【0044】
基材Wの表面は、材料供給部109の中に形成された局所的な原料ガス雰囲気に晒され、同時に基材Wの表面がヒータ104により加熱される。これにより、有機金属材料が熱分解し、基材Wの表面に金属層または金属化合物層が堆積する。
【0045】
有機金属材料の種類によっては、熱分解反応時に金属酸化物ができるものがある。この理由から、本実施形態によって形成される層は、金属層に限らず、金属化合物層も含む。
【0046】
成膜工程の間、不活性ガスはチャンバ130内を常に流れる状態に維持される。これにより、材料供給部109を介して供給された原料ガスが順次新しい原料ガスに置き換えられるとともに、チャンバ130内の温度がほぼ一定に保たれる。さらに、不活性ガスを供給することによって、チャンバ130内からOを排除することができ、自然発火しやすい有機金属材料を用いた場合であっても、安全に成膜工程を実施することができる。
【0047】
本実施形態によれば、チャンバ130が原料ガスで満たされるのではなく、基材Wの表面上の局所的な空間にのみ原料ガス雰囲気が形成されるので、成膜スペースが小さくでき、しかも原料ガスの使用量を少なくすることができる。
【0048】
次に、本発明の他の実施形態について図5および図6を参照して説明する。図5は本発明の他の実施形態に係る層形成装置を示す模式図であり、図6は図5の矢印VIで示される方向から見た模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成および動作は図4の構成および動作と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0049】
図5および図6に示すように、材料供給部119は、基材Wの表面と平行に延びる往復移動機構127に取り付けられており、この往復移動機構127により、材料供給部119が基材Wの表面と平行に任意の速度で移動されるようになっている。材料供給部119の供給口119aは矩形状であり、その移動方向における幅は移動方向に垂直な方向における幅よりも短くなっている。この長手方向の幅は、図6に示すように、基材Wの幅よりもやや大きい。
【0050】
材料供給部119は、層形成前後には基材Wから離れて退避しており、層形成時は、基材保持部100の上面に保持された基材Wの端から端まで水平方向に掃引する。このとき、材料供給部119の供給口119aと基材Wの表面との距離は一定に維持される。上述したように、材料供給部119の供給口119aは基材Wの表面よりも小さいため、原料ガスは基材Wの表面の一部にしか供給されないが、上述したように、材料供給部119は基材Wの表面と平行に移動するので、基材Wの所望の領域に原料ガスを供給することができる。なお、材料供給部119の供給口119aと基材Wとは相対的に移動させればよく、基材Wを移動させることもできる。
【0051】
図7および図8は本発明の他の実施形態に係る層形成装置を示す模式図であり、図8は図7の矢印VIIIで示される方向から見た模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成および動作は図5の構成および動作と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0052】
本実施形態の層形成装置では、材料気化部と材料供給部を一体化した材料気化供給ユニット110が使用される。この材料気化供給ユニット110には、有機金属材料(固体または液体)Mを溜める貯留部112と、貯留部112から徐々に流路が狭くなり下面に開口するスリット状の噴射口(供給口)114とが形成されている。また、材料気化供給ユニット110の内部には、有機金属材料Mを加熱し気化させる第2のヒータ116が内蔵されている。
【0053】
材料気化供給ユニット110の内部には不活性ガス供給源133から窒素などの不活性ガス(キャリアガス)が導入されるようになっている。材料気化供給ユニット110は、その噴射口114が基材Wの表面に対向するように配置される。このような構成によれば、気体の有機金属材料が不活性ガスに運搬されて原料ガスとして噴射口114から基材Wに向けて噴射され、原料ガス雰囲気が基材Wの表面上に局所的に形成される。材料気化供給ユニット110全体の温度を均一にするために、材料気化供給ユニット110をアルミニウムなどの金属製恒温体とすることが望ましい。
【0054】
材料気化供給ユニット110は、基材Wの表面と平行に延びる往復移動機構127に取り付けられており、この往復移動機構127により、材料気化供給ユニット110が基材Wの表面と平行に任意の速度で移動されるようになっている。材料気化供給ユニット110の噴射口114の長手方向の幅は、基材Wの幅よりもやや大きく形成されている。
【0055】
材料気化供給ユニット110は、層形成前後には基材Wから離れて退避しており、層形成時は、基材保持部100の上面に保持された基材Wの端から端まで水平方向に掃引する。このとき、材料気化供給ユニット110の噴射口114と基材Wの表面との距離は一定に維持される。上述したように、材料気化供給ユニット110の噴射口114は基材Wの表面よりも小さいため、原料ガスは基材Wの表面の一部にしか供給されないが、上述したように、材料気化供給ユニット110は基材Wの表面と平行に移動するので、基材Wの所望の領域に原料ガスを供給することができる。なお、材料気化供給ユニット110の噴射口114と基材Wとは相対的に移動させればよく、基材Wを移動させることもできる。
【0056】
本実施形態においても、基材保持部100は上下移動が可能であり、基材Wと噴射口114との間隔を調整できる。そのため、噴射口114から基材Wの表面までの距離が、該噴射口114の最小間口の6倍以下となるように調整し(図1参照)、層形成することが可能である。
【0057】
図9は本発明の他の実施形態に係る層形成装置を示す模式図である。図9に示すように、この層形成装置は、図7および図8に示す層形成装置と基本的に同一の構成を有しているが、材料気化供給ユニット110に隣接して第3のヒータ129が設けられている点で、上述した層形成装置と異なっている。
【0058】
本実施形態では、材料気化供給ユニット110およびヒータ129は、基材Wの表面と平行に延びる往復移動機構127に取り付けられており、この往復移動機構127により、材料気化供給ユニット110およびヒータ129が基材Wの表面と平行に任意の速度で移動されるようになっている。ヒータ129は、材料気化供給ユニット110の進行方向に対して後方に配置されており、その長手方向の幅は材料気化供給ユニット110の長手方向の幅とほぼ同一である。
【0059】
層形成時には、材料気化供給ユニット110が図9の矢印で示す方向に移動され、基材Wの表面に有機金属材料Mを含む原料ガスを噴射する。ヒータ129は、材料気化供給ユニット110から基材Wの表面に噴射された有機金属材料Mを加熱し、アニールする。このように、ヒータ129により、層形成と同時に、層のアニールを行い、かつ層形成とアニールの工程を2回以上繰り返すことにより、所望する厚さの層が得られる。なお、本実施形態では、材料気化供給ユニット110およびヒータ129を移動させているが、材料気化供給ユニット110の噴射口114と基材Wとを相対的に移動させればよく、基材Wを移動させることもできる。
【0060】
図10は本発明の他の実施形態に係る層形成装置を示す模式図である。図10に示すように、この層形成装置は、基材Wを上向きにして保持する基材保持部400と、有機金属材料の塗膜を付着させた材料供給部材Xを下向きにして保持する材料供給部材保持部402と、材料供給部材Xに有機金属材料を塗布して塗膜を形成するスピンコータ404と、基材Wおよび材料供給部材Xを搬送するロボット(図示せず)とを備えている。基材保持部400および材料供給部材保持部402はチャンバ410の内部に収容されており、スピンコータ404はチャンバ411の内部に収容されている。チャンバ410はチャンバ411の上に載置されており、装置全体としてコンパクト化が図られている。なお、チャンバ411をチャンバ410の上に載置してもよい。
【0061】
材料供給部材保持部402は、常温において固体または液体の有機金属材料を気化させて原料ガスを生成する材料気化部としての機能を有し、有機金属材料が塗布された材料供給部材Xは、原料ガスからなる雰囲気を基材Wの表面上に局所的に形成し、基材Wの表面を該原料ガス雰囲気に暴露させて基材Wの表面に金属層または金属化合物層を形成する材料供給部としての機能を有する。
【0062】
基材保持部400は、その上面に真空チャック機構(図示せず)を有しており、この真空チャック機構により基材Wが基材保持部400の上面に保持されるようになっている。また、基材保持部400の内部には基材Wを加熱する第1のヒータ414が埋設されている。基材Wはヒータ414によって例えば150℃に加熱される。本実施形態における基材保持部400は回転可能に構成されている。
【0063】
材料供給部材保持部402は、その下面に真空チャック機構(図示せず)を有しており、この真空チャック機構により有機金属材料が塗布された材料供給部材Xが材料供給部材保持部402の下面に保持されるようになっている。また、材料供給部材保持部402の内部には材料供給部材Xを加熱する第2のヒータ418が埋設されている。材料供給部材Xはヒータ418によって例えば70℃に加熱され、これにより材料供給部材Xに塗布された有機金属材料が気化するようになっている。なお、ヒータ414により加熱された基材Wの表面からの伝熱または輻射熱により材料供給部材X上の有機金属材料の塗膜を気化させてもよい。
【0064】
スピンコータ404は、材料供給部材Xを保持して回転させる保持部420と、材料供給部材Xの上面に有機金属材料を供給するノズル422と、有機金属材料を貯留する貯留部423と、保持部420の周囲を覆うカバー424とを備えている。
【0065】
チャンバ410には、不活性ガス供給源430からチャンバ410の内部に窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入するガス導入管433と、この不活性ガスを排出するガス排出管434とが接続されている。ガス排出管434は、流量制御バルブ435を介して真空ポンプ436に接続されている。チャンバ410の圧力は、不活性ガス供給源430から導入される不活性ガスの流量および流量制御バルブ435を調整することにより、所望の圧力に維持できるようになっている。例えば、チャンバ410内の圧力は常圧に設定される。チャンバ411には、同様に不活性ガス供給源、流量制御バルブ、真空ポンプ(いずれも図示せず)が接続され、チャンバ411の内部に窒素やアルゴンなどの不活性ガスの流れが形成されている。
【0066】
この層形成装置においては、まず、基材Wを基材保持部400の上面に吸着した後、ロボットにより材料供給部材Xをスピンコータ404に搬送する。スピンコータ404では、保持部420により材料供給部材Xを回転させつつ、ノズル422から有機金属材料を供給することで、材料供給部材Xの表面全体に有機金属材料を均一に塗布する。
【0067】
有機金属材料が塗布された材料供給部材Xは、ロボットによりチャンバ411からチャンバ410に搬送される。そして、材料供給部材保持部402が下降して、その下面に材料供給部材Xが保持される。材料供給部材Xは、材料供給部材保持部402により基材Wに対向して保持される。基材Wと材料供給部材Xの間隔は3mm以下であり、好ましくは、基材Wと材料供給部材Xの間隔は、0.5〜1mmに設定される。
【0068】
材料供給部材保持部402はヒータ418によって予め加熱されている。このヒータ418によって材料供給部材Xが加熱されると、材料供給部材X上の塗膜から有機金属材料が気化し、気体状の有機金属材料(原料ガス)からなる雰囲気が基材Wの表面上、すなわち、基材Wと材料供給部材Xとの間に局所的に形成される。したがって、基材Wの表面が原料ガスに暴露され、基材Wの表面に金属層または金属化合物層が形成される。
【0069】
ヒータ418の加熱温度は、有機金属材料が気化しうる温度であって、有機金属材料の分解温度以下の温度であることが好ましい。また、有機金属材料の気化がほぼ均一に行われるようにするため、材料供給部材Xの表面がほぼ均一に加熱されることが好ましい。また、材料供給部材Xの表面温度は基材Wの表面温度よりも低いことが好ましい。すなわち、ヒータ418による有機金属材料の加熱温度は、ヒータ414による基材Wの加熱温度よりも低いことが好ましい。さらに、層形成中に、基材保持部400のヒータ414により基材Wを加熱し、層が均一に形成されるように基材Wの温度を調整することが好ましく、さらに、層形成工程中は、基材保持部400を回転させることが好ましい。
【0070】
図11は本発明の他の実施形態に係る層形成装置を示す模式図である。この層形成装置は、液体の有機金属材料を含浸部材に含浸させ、かつ、該含浸部材の表面に有機金属材料を常時保持することで、原料ガスの雰囲気を基材の表面上に局所的に形成し、基材の表面を原料ガス雰囲気に暴露することで層形成するものである。
【0071】
図11に示すように、この層形成装置は、基材Wを上向きにして保持する基材保持部(サセプタ)600と、有機金属材料Mを気化させこれを基材保持部600に保持された基材Wの表面に供給する材料気化供給ユニット610とを備えている。基材保持部600および材料気化供給ユニット610は、チャンバ630の内部に収容されており、チャンバ630により外部から隔離されている。
【0072】
材料気化供給ユニット610は、常温において液体の有機金属材料を気化させて原料ガスを生成する材料気化部としての機能と、原料ガスからなる雰囲気を基材Wの表面上に局所的に形成し、基材Wの表面を原料ガス雰囲気に暴露させて基材Wの表面に金属層または金属化合物層を形成する材料供給部としての機能とを有する。
【0073】
基材保持部600は、その上面に静電チャック機構(図示せず)を有しており、この静電チャック機構の静電力により基材Wが基材保持部600の上面に保持されるようになっている。また、基材保持部600の内部には、上面に保持された基材Wを加熱する第1のヒータ(基材加熱部)604が埋設されている。このヒータ604に電流を流すことにより、基材Wは有機金属材料Mの分解温度よりも高い温度、例えば150℃に加熱される。基材Wの温度は使用する有機金属材料によって変わる。
【0074】
チャンバ630には、不活性ガス供給源631からチャンバ630の内部に窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入するガス導入管632と、この不活性ガスを排出するガス排出管634とが接続されている。ガス排出管634は、流量制御バルブ635を介して真空ポンプ636に接続されている。チャンバ630の圧力は、不活性ガス供給源631から導入される不活性ガスの流量および流量制御バルブ635を調整することにより、所望の圧力に維持できるようになっている。例えば、チャンバ630内の圧力は常圧に設定される。
【0075】
材料気化供給ユニット610の内部には、有機金属材料Mを溜める貯留部612が形成されている。この貯留部612は、有機金属材料Mを液状化させて保持できるように恒温室となっており、貯留部612には液状化した有機金属材料Mが充填されている。この貯留部612の下方には、貯留部612内の液体の有機金属材料Mを含浸させる含浸部材613が配置されており、この含浸部材613は開口部612aにより貯留部612に連通されている。含浸部材613の下面は、外部に露出しており、基材保持部600に載置された基材Wに対向している。含浸部材613としては、多孔質材、不織布、または織布を用いることが好ましい。
【0076】
このような構成により、貯留部612内の液状化した有機金属材料Mは、毛細管現象により含浸部材613に常時含浸される。含浸部材613の下面では、加熱された基材Wの表面からの熱により有機金属材料Mが気化し、気化した有機金属材料Mからなる雰囲気(原料ガス雰囲気)が基材Wの表面上に局所的に形成される。したがって、基材Wの表面が原料ガス雰囲気に暴露され、これにより基材Wの表面上に金属層または金属化合物層が形成される。このような含浸部材613を用いることにより、有機金属材料Mを安定して基材Wの表面に供給することができる。なお、含浸部材613の表面から基材Wの表面までの距離を10mm以下に設定することが好ましく、さらには3mm以下に設定することが好ましい。これらの数値は、局所的な原料ガス雰囲気を基材Wの表面上に形成する観点から決定される。含浸部材613に含浸された有機金属材料Mを加熱するためのヒータを該含浸部材613に隣接して設けてもよい。
【0077】
図12は本実施形態の他の構成例を示す模式図である。図12に示すように、この層形成装置は、図11に示す層形成装置と基本的に同一の構成を有しているが、基材W、基材保持部600、および含浸部材613が垂直に配置されている点で、図11に示す層形成装置と異なっている。このように、材料気化供給ユニット610に含浸部材613を用いることにより、含浸部材613の設置角度を変更しても、有機金属材料Mの漏出を抑制することができるので、基材Wおよび基材保持部600の設置角度を任意の値に設定することが可能となり、設計の自由度が増す。
【0078】
図13は本発明の他の実施形態に係る層形成装置を示す模式図である。この層形成装置は、基材内の空間に、原料ガス(気体の有機金属材料、または不活性ガスと気体の有機金属材料との混合気体、または微粉体状の有機金属材料であるエアロゾル)を供給し、上記空間を形成する表面上に金属層または金属化合物層を形成するものである。
【0079】
図13に示すように、この層形成装置は、基材Wを保持する基材保持部(サセプタ)700と、有機金属材料を加熱し気化させて原料ガスを生成する材料気化部712と、原料ガスを基材W内の空間Sに供給する材料供給管(材料供給流路)714と、空間Sから原料ガスなどを排出する材料排出管(材料排出流路)718とを備えている。本実施形態では、チャンバおよび不活性ガス供給源は設けられていない。
【0080】
基材保持部700の内部には、基材Wを加熱する第1のヒータ(基材加熱部)704が埋設されている。このヒータ704に電流を流すことにより、基材Wは有機金属材料の分解温度よりも高い温度、例えば150℃に加熱される。基材Wの温度は使用する有機金属材料によって変わる。
【0081】
材料供給管714は基材W内の空間Sに接続されており、基材Wと材料供給管714との間はOリングなどのシール材716によってシールされている。材料排出管718は材料供給管714の反対側で空間Sに接続されており、基材Wと材料排出管718との間はOリングなどのシール材720によってシールされている。この材料排出管718は真空ポンプ722に連通しており、材料排出管718を通じて空間Sから原料ガスおよびその分解生成物が真空ポンプ722によって排気される。真空ポンプ722の上流側には流量調整バルブ724が配置されている。
【0082】
このような構成において、真空ポンプ722の駆動により、材料排出管718を通じて基材W内の空間Sが真空排気され、材料気化部712から原料ガスが材料供給管714を通じて基材W内の空間Sに導入される。これにより、空間S内に原料ガス雰囲気が形成され、この空間Sを形成する表面上に金属層または金属化合物層が形成される。層形成時においては、ヒータ704により基材Wを加熱し、層が均一に形成されるように基材Wの温度を調整することが好ましい。
【0083】
本実施形態における層形成装置は、複雑な形状を有する基材の表面に層を形成するのに好適である。例えば、円筒状基材の内周面といった湾曲している表面に層形成が必要な場合にも、層形成条件の最適化を行うことが容易であり、画一化することができる。すなわち、層を形成したい部分上にのみ(本実施形態では、空間Sを形成する表面上にのみ)、局所的に原料ガス雰囲気を形成することができるため、層形成条件を最適化する上で、外部の雰囲気を考慮する必要がなくなり、反応律速領域での層形成が容易になる。
【0084】
図14は本発明の他の実施形態に係る層形成装置を示す模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図13に示す層形成装置の構成および動作と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0085】
この層形成装置は、図14に示すように、基材Wの内部に形成された凹部空間Sの内面に層を形成するものである。より詳しくは、層形成装置は、材料気化部712に接続される材料供給流路としての材料供給管814と、真空ポンプ722に接続される材料排出流路としての材料排出管818とを有している。材料供給管814および材料排出管818は二重管により構成されており、外管としての材料排出管818と基材Wとの間には、Oリングなどのシール材816が設けられている。内管としての材料供給管814は、基材W内部の凹部空間Sに挿入されている。このような層形成装置によれば、多様で複雑な形状を有する基材の表面に層を形成することができる。
【0086】
なお、本実施形態では、材料供給管814を内管とし、材料排出管818を外管とする二重管の例について説明したが、これに限られるものではなく、材料供給管814を外管とし、材料排出管818を内管とする二重管を用いてもよい。
【0087】
ここで、上述した各実施形態における基材としては、例えば、半導体ウェハ、セラミック、樹脂、または金属などを用いることができ、本発明に係る層形成装置は、半導体や微小電気機械システム(MEMS:Microelectromechanical Systems)、フラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)などの製造に用いることができる。以下では、基材としての半導体基板(半導体ウェハ)の表面に金属層または金属化合物層を形成するために上述した層形成装置を利用する場合について図15から図19(b)を参照して説明する。なお、図15から図19(b)において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0088】
図15は、本発明に係る層形成装置を備えた基材処理装置1を示す平面図である。図15に示すように、この基材処理装置1は、微細な凹凸構造を有する半導体ウェハ(基板)などの基材の表面に金属層または金属化合物層を形成する層形成ユニット10と、層形成後の基材に電解めっき処理を行う4台の電解めっきユニット20と、電解めっき後の基材をエッチング、洗浄、乾燥する2台のエッチング・洗浄ユニット30とを備えている。これらのユニットは、矩形状のフレーム40内に収容されている。フレーム40の長手方向の端部には、SMIF(Standard Manufacturing Interface)ポッドやFOUP(Front Opening Unified Pod)などの多数の基材を収納可能な基材搬送容器42が着脱自在に取り付けられている。なお、フレーム40の外部には、めっき液などの薬液を管理する薬液管理部44が設置されている。
【0089】
フレーム40の内部には、基材搬送容器42の並びに沿ってレール50が敷設されており、このレール50上には第1搬送ロボット60が設けられている。また、電解めっきユニット20とエッチング・洗浄ユニット30の並びに沿ってレール52が敷設されており、このレール52上には第2搬送ロボット62が設けられている。さらに、第1搬送ロボット60と第2搬送ロボット62との間の層形成装置に隣接した位置には、第3搬送ロボット64が設けられている。
【0090】
第1搬送ロボット60は、基材搬送容器42、第3搬送ロボット64、および層形成ユニット10の間で基材を搬送し、第3搬送ロボット64は、層形成ユニット10および第2搬送ロボット62の間で基材を搬送する。また、第2搬送ロボット62は、第3搬送ロボット64、電解めっきユニット20、およびエッチング・洗浄ユニット30の間で基材を搬送する。
【0091】
基材搬送容器4により基材処理装置1に導入された基材は、第1搬送ロボット60により層形成ユニット10に搬送される。この層形成ユニット10では、上述したように、有機金属材料の気化による層の形成がなされる。その後、基材は、第3搬送ロボット64および第2搬送ロボット62により電解めっきユニット20に搬送され、ここでめっきされる。めっき後の基材は、第2搬送ロボット62によりエッチング・洗浄ユニット30に搬送され、ここで基材のエッジ(ベベル)部に付着しためっき膜のエッチングと基材の洗浄および乾燥が行われる。
【0092】
層形成ユニット10としては上述した各実施形態の層形成装置を用いることができる。この例では、層形成ユニット10として、図7に示す層形成装置と実質的に同一の構成を有するものが使用されている。以下、この層形成ユニット10について図16を参照して説明する。
【0093】
図16は、図15に示す層形成ユニット10を示す模式図である。この層形成ユニット10は、蒸気圧が大気圧以下の有機金属材料を用いて、この有機金属材料中に含まれる物質からなる層を基材の表面に形成するものである。図16に示すように、層形成ユニット10は、基材Wを上向きにして保持する基材保持部100と、有機金属材料を気化させこれを基材保持部100に保持された基材Wの表面に向けて噴射する材料気化供給ユニット110と、第1ロボット60から層形成ユニット10に導入された基材Wを支持する複数本のピン120とを備えている。基材保持部100、材料気化供給ユニット110、およびピン120は、チャンバ130の内部に収容されており、チャンバ130により外部から隔離されている。
【0094】
基材保持部100は、その上面に真空チャック機構102を有しており、この真空チャック機構102により基材Wが基材保持部100の上面に保持されるようになっている。また、基材保持部100の内部には、真空チャック機構102により上面に吸着された基材Wを加熱するヒータ104が埋設されている。基材Wはヒータ104によって有機金属材料Mの分解温度よりも高い温度、例えば150℃に加熱される。基材Wの温度は使用する有機金属材料によって変わるが、好ましくは120℃以上、300℃以下である。本実施形態における基材保持部100は、ピン120に支持された基材Wの下方の位置と、材料気化供給ユニット110の近傍の位置との間を上下に移動するように構成されている。
【0095】
図16に示すように、材料気化供給ユニット110には、有機金属材料(固体または液体)Mを溜める貯留部112と、貯留部112から徐々に流路が狭くなり下面に開口する噴射口114とが形成されている。また、材料気化供給ユニット110の内部には、有機金属材料Mを加熱するヒータ116が設けられている。材料気化供給ユニット110の内部には窒素などの不活性ガスが導入される。
【0096】
有機金属材料Mはヒータ116によって有機金属材料Mが気化可能な温度、例えば70℃に加熱され、これにより気化するようになっている。この温度は、気化した有機金属材料Mを基材表面に制御可能に供給できる温度であることが好ましく、有機金属材料の沸騰温度以下であることが望ましい。本実施形態における材料気化供給ユニット110は、基材保持部100の上面に保持された基材Wの端から端まで水平方向に移動可能に構成されている。
【0097】
また、チャンバ130の下部には、チャンバ130の内部に窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入するガス導入ポート132が設けられており、チャンバ130の上部には、この不活性ガスを排出するガス排出ポート134が設けられている。
【0098】
層形成ユニット10のチャンバ130内に導入された基材Wは、ピン120の上部に載置される。そして、下方に位置していた基材保持部100が上昇することにより、ピン120から基材保持部100に基材Wが受け渡され、真空チャック機構102により基材保持部100の上面に基材Wが吸着される。
【0099】
基材Wを保持した基材保持部100は材料気化供給ユニット110の近傍まで上昇を続ける。基材保持部100の上昇が完了した後、材料気化供給ユニット110のヒータ116によって貯留部112内の有機金属材料Mを加熱し気化させる。気化した有機金属材料Mは材料気化供給ユニット110の噴射孔114から基材Wの上面に噴射され、これにより、基材Wの上面には、金属層または金属化合物層が形成される。このとき、基材保持部100のヒータ104により基材Wを加熱し、層が均一に形成されるように基材Wの温度を調整することが好ましい。成膜工程中は、基材Wの全面にわたって層が形成されるように、材料気化供給ユニット110を水平方向に移動させる。なお、有機金属材料の蒸気を基材Wに均一に供給するために、材料気化供給ユニット110から基材Wに向かうガス流れを形成し、整流板を介してこのガス流れを基材Wに供給してもよい。
【0100】
基材Wを層形成ユニット10から搬出する際は、例えば真空到達度が0.01Pa程度の真空ポンプを用いてガス排出ポート134を介してチャンバ130内を排気し、成膜に使用した有機金属材料Mの蒸気を排出し、次にガス導入ポート132を介して乾燥窒素などの不活性ガスをチャンバ130内に導入した後、成膜後の基材Wを層形成ユニット10から搬出してもよい。あるいは、層形成ユニット10にロードロックを設置して、このロードロックを通して基材Wを搬出してもよい。
【0101】
図17は、図15に示す電解めっきユニット20を示す模式図である。図17に示すように、電解めっきユニットは、上方に開口し内部にめっき液200を保持する円筒状のめっき槽202と、基材Wを着脱自在に下向きに保持して、めっき槽202の上端開口部を塞ぐ位置に基材Wを配置するヘッド部204とを備えている。めっき槽202の内部にはめっき液200中に浸漬されて陽極電極となる平板状のアノード206が水平に配置され、基材Wの周縁部はヘッド部204に設けられた電極接点を介して陰極電極と導通されている。なお、このアノード206は、多孔質材料または網目を形成する材料で構成されている。
【0102】
めっき槽202の底部中央には、上方に向けためっき液の噴流を形成するめっき液噴射管208が接続され、めっき槽202の上部外側には、めっき液受け210が配置されている。めっき液噴射管208は、めっき液調整タンク212から延びポンプ214とフィルタ216が設けられためっき液供給管218に接続されている。また、上記めっき液調整タンク212は、めっき液受け210から延びるめっき液戻り管220に接続される。
【0103】
このようなめっき装置において、基材Wをヘッド部204で下向きに保持して、基材Wをめっき槽202の上部からめっき液200に浸漬する。そして、アノード(陽極電極)206と基材(陰極電極)Wの間に所定の電圧を印加しつつ、めっき液調整タンク212内のめっき液をポンプ214によりめっき槽202の底部から上方に噴出させて、基材Wの下面に垂直にめっき液200の噴流を当てる。このようにアノード206と基材Wの間にめっき電流を流して、基材Wの下面にめっき膜を形成するようにしている。このとき、めっき槽202をオーバーフローしためっき液200は、めっき液受け210で回収されてめっき液調整タンク212内に流入する。
【0104】
この基材処理装置は、以下のようなプロセスを行う場合に特に有効である。まず、図18(a)に示すように、SiOやlow−k材からなる基材Wの層間絶縁膜300に配線溝310を形成し、層間絶縁膜300の表面にスパッタリングなどによりTaからなるバリアメタル層320を形成する。このバリアメタル層320が形成された基材Wを上述した基材処理装置1の層形成ユニット10に導入する。層形成ユニット10では、有機Coを気化させ、Coをバリアメタル層320に付着させる。これにより、図18(b)に示すように、バリアメタル層320の表面に均一にCo層330が形成される。
【0105】
次に、基材Wを上述した基材処理装置1の電解めっきユニット20に導入し、Co層330をシード層として電解めっきを行い、図18(c)に示すように、Co層330の表面に銅膜340を成膜する。これにより、配線溝310には銅膜340が充填される。配線溝310に銅膜340が充填された基材Wは基材処理装置1からCMP装置に搬送される。このCMP装置では、図19(a)に示すように、層間絶縁膜300の表面が露出するまで余分な銅膜340が化学的機械的研磨により除去される。その後、基材WはCMP装置から無電解めっき装置に搬送される。この無電解めっき装置においては無電解CoWPめっきが行われ、図19(b)に示すように、配線溝310に充填された銅膜340の表面に選択的にCoWP層350が成膜される。
【0106】
このようにして形成された配線構造によれば、配線溝310に充填された銅膜340とバリアメタル層320との間にはCo層330が形成され、配線溝310に充填された銅膜340の表面にはCoWP層350が形成される。したがって、配線溝310に充填された銅膜340が、同種の金属であるCo層330とCoWP層(すなわちCoを主成分とする金属層)350で覆われることとなり、Co層330とCoWP層350との間の界面の信頼性や銅に対する密着性を向上させることができる。この結果、銅の拡散に対する信頼性を向上させることができる。
【0107】
ここで、層形成ユニット10において用いる有機金属材料は気化可能な温度に比べて分解温度が有意に高いことが好ましい。このような材料を用いることで、大気圧下で有機金属材料を気化させることが可能となり、層形成ユニットを電解めっきユニットのような湿式処理ユニットと組み合わせてユニット化することが可能となる。したがって、層形成ユニットと湿式処理ユニットとを1つの基材処理装置内に配置することが可能となり、装置の簡素化および省スペース化を実現することができる。また、1つの装置内に層形成ユニットと湿式処理ユニットとを配置することができるので、層形成処理と湿式処理との間の時間を短縮することができ、またその時間管理も容易となる。
【0108】
なお、ここでは基材処理装置1と別にCMP装置や無電解めっき装置を設けた例について述べたが、これらのCMP装置や無電解めっき装置を基材処理装置1に組み込んでもよい。また、基材処理装置1の層形成ユニット10において、Co/Siを基材Wの表面に蒸着させ、熱処理を加えてシリサイド化させてシード層を形成してもよい。また、基材処理装置1の層形成ユニット10により、Ruからなるバリアメタル層の表面に薄くCoを蒸着させて、電解めっきユニット20での電解銅めっきの膜成長を促進させてもよい。また、層形成ユニット10に導入する基材の表面には、半導体、セラミック、樹脂、Ru、RuO、Cu、Ta、TaN、Ti、TiN、Si、SiO、low−k材、Co、P、CoP、CoWP、W、WSiC、WC、Ni、およびAlのうち少なくとも1つからなる層が形成されていることが好ましい。
【0109】
上述した実施形態では、層形成ユニットを電解めっきユニットと組み合わせた例について説明したが、層形成ユニットと組み合わせる湿式処理ユニットは電解めっきユニットに限られない。例えば、湿式処理ユニットとして、無電解めっきユニット、化学的機械的研磨ユニット、電解エッチングユニット、電解研磨ユニット、化学エッチングユニット、または洗浄ユニットなどを用いることができる。また、層形成ユニットをアニールユニット、CVDユニット、ガスエッチングユニットなどの乾式処理ユニットと組み合わせて、層形成ユニットにより金属層または金属化合物層が形成された基材に乾式処理を施してもよい。
【0110】
また、複数の層形成ユニットを設け、各層形成ユニットにおいて異なる物質からなる金属層または金属化合物層を形成するようにしてもよい。また、1つの層形成ユニット内でユニット内のガスや有機金属材料を交換することにより複数回の層形成を行い、複数の物質からなる金属層または金属化合物層を形成するようにしてもよい。層形成ユニットにおける層形成処理後の基材の洗浄としては、ロール洗浄やペンシル洗浄などの接触洗浄、超音波液体洗浄やIPA洗浄などの非接触洗浄などが考えられる。さらに、この基材の洗浄後に基材を乾燥させてもよい。
【0111】
また、基材に形成する物質に応じて有機金属材料の加熱目標温度と、これに対応する基材の加熱目標温度との関係を予めデータベースとして記憶装置に格納しておいてもよい。この場合には、例えば、基材の温度とヒータの加熱温度を測定するセンサを設け、これらのセンサからの温度信号に基づいて上記データベースを参照して加熱目標温度を取得し、取得された加熱目標温度に応じてヒータを制御して、基材の温度と有機金属材料の温度を適切な温度範囲内にしてもよい。
【0112】
また、層形成処理を含む基材の処理工程の処理レシピは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録されており、必要に応じて読み出されるようになっている。また、この処理レシピは、処理する基材の種類や形成する物質によりデータベース化されており、これらのデータベースが上記記録媒体に記録されている。
【0113】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】噴射口から噴出された噴流の2次元自由噴流モデルを示す模式図である。
【図2】図2(a)および図2(b)は図1の噴射口の形状の例を示す図である。
【図3】長方形の噴射口から噴出される噴流の速度減衰を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態に係る層形成装置を示す模式図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る層形成装置を示す模式図である。
【図6】図5の矢印VIで示される方向から見た模式図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る層形成装置を示す模式図である。
【図8】図7の矢印VIIIで示される方向から見た模式図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る層形成装置を示す模式図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る層形成装置を示す模式図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る層形成装置を示す模式図である。
【図12】本実施形態の他の構成例を示す模式図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係る層形成装置を示す模式図である。
【図14】本発明の他の実施形態に係る層形成装置を示す模式図である。
【図15】本発明に係る層形成装置(層形成ユニット)を備えた基材処理装置を示す平面図である。
【図16】図15に示す層形成ユニットを示す模式図である。
【図17】図15に示す電解めっきユニットを示す模式図である。
【図18】図18(a)から図18(c)は図15に示す基材処理装置を用いたプロセスを示す模式図である。
【図19】図19(a)および図19(b)は図15に示す基材処理装置を用いたプロセスを示す模式図である。
【符号の説明】
【0115】
1 基材処理装置
10 層形成ユニット(層形成装置)
20 電解めっきユニット
30 エッチング・洗浄ユニット
40 フレーム
42 基材搬送容器
60,62,64 搬送ロボット
100,400,600,700 基材保持部
104,116,129,414,418,604,704 ヒータ
108,712 材料気化部
109,119 材料供給部
110,610 材料気化供給ユニット
111 流通管
112,423,612 貯留部
114 噴射口
127 往復移動機構
131,133,631 不活性ガス供給源
130,410,411,630 チャンバ
132 ガス導入ポート
134 ガス排出ポート
300 層間絶縁膜
310 配線溝
320 バリアメタル層
330 Co層
340 銅膜
350 CoWP層
402 材料供給部材保持部
404 スピンコータ
613 含浸部材
714,814 材料供給管
716,720,816 シール材
718,818 材料排出管
M 有機金属材料
S 空間
W 基材
X 材料供給部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面を加熱し、
0.01Paから常圧までの範囲における圧力下において固体または液体である有機金属材料を加熱し気化させることで該有機金属材料を含む原料ガスを生成し、
前記原料ガスからなる雰囲気を基材の表面上に局所的に形成し、
基材の表面の少なくとも一部を前記雰囲気に暴露させることで基材の表面に金属層または金属化合物層を形成することを特徴とする層形成方法。
【請求項2】
前記原料ガスを基板の表面の一部に供給し、かつ前記原料ガスの供給口と該供給口に対向する基材との間隔を一定に維持しつつ、前記供給口および前記基材を相対的に移動させることで前記原料ガスからなる雰囲気を基材の表面上に局所的に形成し、
前記供給口の開口面積を、基材の表面の面積以下とすることを特徴とする請求項1に記載の層形成方法。
【請求項3】
有機金属材料を気化させる材料気化部と前記供給口とが一体化したユニットを設け、
前記ユニットと前記基材とを相対的に移動させることを特徴とする請求項2に記載の層形成方法。
【請求項4】
前記供給口から基材の表面までの距離が、該供給口の最小間口の6倍以下であることを特徴とする請求項2に記載の層形成方法。
【請求項5】
前記供給口の移動方向に対して後部に、前記供給口と隣接してヒータを配置し、
該ヒータにより、層形成と同時に層のアニールを行い、
層形成とアニールを2回以上繰り返すことを特徴とする請求項2に記載の層形成方法。
【請求項6】
基材に対向して含浸部材を配置し、
液体である有機金属材料を前記含浸部材に含浸させ、
前記含浸部材に含浸された有機金属材料を加熱し気化させることで該有機金属材料を含む原料ガスを生成することを特徴とする請求項1に記載の層形成方法。
【請求項7】
前記含浸部材は、多孔質材、不織布、および織布のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項6に記載の層形成方法。
【請求項8】
前記含浸部材の表面から基材の表面までの距離が10mm以下であることを特徴とする請求項6に記載の層形成方法。
【請求項9】
内部に空間を有する基材を用意し、
前記空間に前記原料ガスを供給することで該原料ガスからなる雰囲気を基材の表面上に局所的に形成し、
前記空間から前記原料ガスおよびその分解生成物を排出することを特徴とする請求項1に記載の層形成方法。
【請求項10】
前記原料ガスの供給および排出は、同軸二重構造の流路を用いて行われることを特徴とする請求項9に記載の層形成方法。
【請求項11】
材料供給部材上に有機金属材料の塗膜を形成し、
該材料供給部材を基材に対向させて配置し、
該材料供給部材上の有機金属材料の塗膜を加熱し気化させることで該有機金属材料を含む原料ガスを生成し、
基材と材料供給部材の間隔が3mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の層形成方法。
【請求項12】
前記材料供給部材上の有機金属材料の塗膜を、加熱された前記基材の表面からの伝熱または輻射熱により加熱し気化させることを特徴とする請求項11に記載の層形成方法。
【請求項13】
前記有機金属材料は、コバルト、タングステン、白金、アルミニウム、銅、モリブデン、マンガン、シリコンのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の層形成方法。
【請求項14】
前記基材は、半導体ウェハ、セラミック、樹脂、および金属のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の層形成方法。
【請求項15】
前記基材の表面は、半導体、セラミック、樹脂、Ru、RuO、Cu、Ta、TaN、Ti、TiN、Si、SiO、low−k材、Co、P、CoP、CoWP、W、WSiC、WC、Ni、およびAlのうち少なくとも1つの物質で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の層形成方法。
【請求項16】
配線溝が形成された基板にバリアメタル層を形成する工程と、
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法で金属層または金属化合物層を前記バリアメタル層上に形成する工程と、
前記金属層または前記金属化合物層をシード層として電解めっきを行って前記配線溝を銅で充填する工程と、
前記銅の一部を化学的機械的研磨により除去する工程とを有する配線形成方法。
【請求項17】
前記金属層または前記金属化合物層は、コバルトを主成分とする金属層であることを特徴とする請求項16に記載の配線形成方法。
【請求項18】
前記配線溝に充填された銅の表面に、コバルトを主成分とする金属層を無電解めっきにより選択的に形成する工程をさらに有することを特徴とする請求項17に記載の配線形成方法。
【請求項19】
配線溝に充填された銅と、
バリアメタル層と、
前記銅と前記バリアメタル層との間に形成されたコバルトを主成分とする金属層と、
前記銅の露出表面上に形成されたコバルトを主成分とする金属層とを有し、
前記銅と前記バリアメタル層との間に形成された前記金属層は、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法で形成されたコバルト層であり、
前記銅の露出表面上に形成された前記金属層は、無電解めっきにより形成された金属層であることを特徴とする基板の配線構造。
【請求項20】
0.01Paから常圧までの範囲における圧力下において固体または液体の有機金属材料を加熱し気化させることで該有機金属材料を含む原料ガスを生成する材料気化部と、
基材を保持する基材保持部と、
前記基材の表面を、前記材料気化部により気化させた有機金属材料の分解温度よりも高い温度に加熱する基材加熱部と、
前記原料ガスからなる雰囲気を基材の表面上に局所的に形成する材料供給部とを備え、
前記材料供給部は、基材の表面の少なくとも一部を前記雰囲気に暴露させることで基材の表面に金属層または金属化合物層を形成することを特徴とする層形成装置。
【請求項21】
前記材料供給部は前記原料ガスを基材の表面の一部に供給する供給口を備え、
前記供給口と該供給口に対向する基材との間隔を一定に維持しつつ、前記供給口と前記基材とを相対的に移動させる移動機構を設け、
前記供給口の開口面積は、基材の表面の面積以下であることを特徴とする請求項20に記載の層形成装置。
【請求項22】
前記材料気化部と前記材料供給部は一体型のユニットであり、
前記移動機構は前記ユニットと基材とを相対的に移動させることを特徴とする請求項21に記載の層形成装置。
【請求項23】
前記供給口から基材の表面までの距離が、該供給口の最小間口の6倍以下であることを特徴とする請求項21に記載の層形成装置。
【請求項24】
前記供給口の移動方向に対して後部に、前記供給口と隣接してヒータを配置したことを特徴とする請求項21に記載の層形成装置。
【請求項25】
前記材料供給部は、基材に対向して配置される含浸部材を有し、
前記含浸部材には、液体である有機金属材料が含浸されることを特徴とする請求項21に記載の層形成装置。
【請求項26】
前記含浸部材は、多孔質材、不織布、および織布のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項25に記載の層形成装置。
【請求項27】
前記含浸部材の表面から基材の表面までの距離が10mm以下であることを特徴とする請求項25に記載の層形成装置。
【請求項28】
前記材料供給部は、
前記基材内に形成された空間にシール材を介して接続され、該空間に原料ガスを供給するための材料供給流路を有し、
さらに、前記空間にシール材を介して接続され、前記空間から原料ガスおよびその分解生成物を排出するための材料排出流路を有することを特徴とする請求項20に記載の層形成装置。
【請求項29】
前記材料供給流路および前記材料排出流路は、同軸二重構造の流路であることを特徴とする請求項28に記載の層形成装置。
【請求項30】
前記材料供給部は、有機金属材料の塗膜が形成された材料供給部材であり、
前記材料供給部材は基板に対向して配置され、基材と前記材料供給部材の間隔が3mm以下であることを特徴とする請求項20に記載の層形成装置。
【請求項31】
前記材料供給部材上の有機金属材料の塗膜は、加熱された基材からの伝熱あるいは輻射熱により加熱され気化されることを特徴とする請求項30に記載の層形成装置。
【請求項32】
前記有機金属材料は、コバルト、タングステン、白金、アルミニウム、銅、モリブデン、マンガン、シリコンのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項20に記載の層形成装置。
【請求項33】
前記基材は、半導体ウェハ、セラミック、樹脂、および金属のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項20に記載の層形成装置。
【請求項34】
前記基材の表面は、半導体、セラミック、樹脂、Ru、RuO、Cu、Ta、TaN、Ti、TiN、Si、SiO、low−k材、Co、P、CoP、CoWP、W、WSiC、WC、Ni、およびAlのうち少なくとも1つの物質で形成されていることを特徴とする請求項20に記載の層形成装置。
【請求項35】
請求項20から31のいずれか一項に記載の層形成装置と、
前記層形成装置により金属層または金属化合物層が形成された基材に湿式処理を施す湿式処理ユニットとを備えたことを特徴とする基材処理装置。
【請求項36】
前記湿式処理ユニットは、電解めっきユニット、無電解めっきユニット、化学的機械的研磨ユニット、電解エッチングユニット、電解研磨ユニット、化学エッチングユニット、および洗浄ユニットのうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項35に記載の基材処理装置。
【請求項37】
請求項20から31のいずれか一項に記載の層形成装置と、
前記層形成装置により金属層または金属化合物層が形成された基材に乾式処理を施す乾式処理ユニットとを備えたことを特徴とする基材処理装置。
【請求項38】
前記乾式処理ユニットは、アニールユニット、CVDユニット、およびガスエッチングユニットのうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項37に記載の基材処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−123853(P2007−123853A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258253(P2006−258253)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】