説明

建設機械のポンプ駆動装置

【課題】小出力時であって、油圧アクチュエータの要求流量が大きいときにも、何ら制限を受けることなくエンジン回転数を小出力に応じた低い回転数にすることができる建設機械のポンプ駆動装置の提供。
【解決手段】エンジン11と、このエンジン11によって駆動される油圧ポンプ12と、この油圧ポンプ12の吐出流量を指令する指令流量信号を出力する流量指令手段、例えば操作レバー13とを備えた油圧ショベルのポンプ駆動装置において、エンジン11と油圧ポンプ12との間に設けられ、変速比を変更可能な変速機16と、油圧ポンプ12の目標回転数Nを、エンジン11の実回転数Neで除して変速比Iを演算し、この演算した変速比Iで変速機16を制御する変速機制御手段、例えばコントローラ17とを備えた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンにより油圧ポンプを駆動し、この油圧ポンプから吐出される圧油によって油圧アクチュエータを駆動して作業を行なう油圧ショベル等の建設機械のポンプ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベルなどの建設機械では、動力源としてエンジンが備えられており、作業中は概ね同一のエンジン回転数で運転されるようになっていた。近年、省エネ・燃費低減がクローズアップされ、効率の良いエンジン運転を達成すべく、特許文献1に示されるように負荷を検出し、検出された負荷に対して高効率となるエンジン回転数を設定してエンジンを制御するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3587957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、建設機械が油圧ショベルである場合、フロント作業機を駆動しバケットで所定の場所の土砂等を掘削し、旋回体を旋回させてそのバケットに収納された土砂等を他の場所に放土し、空となったバケットの状態で再び旋回体を上述の所定の場所まで旋回させ、素早く次の土砂等をバケットによって掘削する作業が行なわれることがある。このように空になったバケットで素早く次の土砂等を掘削しようとするときには、負荷の小さい小出力状態であり、しかも油圧アクチュエータの作動速度を速くさせるために、このアクチュエータの要求流量が大きくなる。すなわち、油圧ポンプから大きな流量を吐出させることが要求される。
【0005】
ところで、上述した特許文献1に示される従来技術は、上述したバケットによる掘削作業等の作業中における小出力時には、エンジン回転数を小さくして高効率運転を達成しようとするものであるが、実際はエンジン回転数を小さくすると油圧ポンプから吐出し得る最大流量が減少する。このため、油圧アクチュエータの要求流量に有った油圧ポンプの吐出流量を確保できなくなることがある。したがって、上述した従来技術にあっては、小出力時、要求流量が大きいときには、所望の油圧ポンプの吐出流量を確保できるエンジンの最小回転数が設定され、小出力時にエンジンの回転数がこの設定された最小回転数よりも低くならないように制限する処理がなされている。このように特許文献1に示される従来技術は、小出力時であって、油圧アクチュエータの要求流量が大きくて油圧ポンプから大きな流量を吐出する必要のある場合には、エンジン回転数を設定された最小回転数よりも低くすることができず、このため燃料消費率が高くなり、望ましいエンジンの高効率運転を実現できない問題があった。
【0006】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、小出力時であって、油圧アクチュエータの要求流量が大きいときにも、何ら制限を受けることなくエンジン回転数を小出力に応じた低い回転数にすることができる建設機械のポンプ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係る建設機械のポンプ駆動装置は、エンジンと、このエンジンによって駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプの目標流量を指令する指令流量信号を出力する流量指令手段とを備えた建設機械のポンプ駆動装置において、上記エンジンと上記油圧ポンプとの間に設けられ、変速比を変更可能な変速機と、上記油圧ポンプの目標回転数またはこの油圧ポンプの目標回転数に相応する値を、上記エンジンの回転数で除して上記変速比を演算し、この演算した変速比で上記変速機を制御する変速機制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明は、当該建設機械で例えば、油圧アクチュエータの大きな要求流量に応じて油圧ポンプから大流量を吐出する指令が流量指令手段によってなされ、大出力でエンジン回転数が高く保たれている状況下で作業が実施されているものとする。この作業の間、変速機制御手段によって、大流量を吐出し得る油圧ポンプの目標回転数またはこの油圧ポンプの目標回転数に相応する値を、大出力に相応するエンジンの高い回転数で除して変速機の変速比が演算され、この演算された変速比となるように変速機が制御される。したがって、回転数が高く保たれたエンジンの駆動力は変速機を介して油圧ポンプに伝えられ、油圧ポンプから油圧アクチュエータに大流量が供給され、所望の作業を実施することができる。
【0009】
また、上述した作業の間、負荷が軽くなって大出力から小出力に変化し、この小出力に応じてエンジンの回転数が低くなるものの、油圧アクチュエータの要求流量としては上述と同等に大きく、油圧ポンプから引き続き大流量を吐出することが求められるときには、変速機制御手段によって、引き続き大流量を吐出し得る油圧ポンプの目標回転数またはこの油圧ポンプの目標回転数に相応する値を、小出力に相応するエンジンの低い回転数で除して変速機の変速比が演算され、上述した負荷の大きい作業時の変速比に比べてこの大きくなった変速比となるように変速機が制御される。したがって、回転数が低くなったエンジンの駆動力が変速機を介して油圧ポンプに伝えられるが、変速機の変速比が大きくなったことにより、油圧ポンプから上述の大出力時と同様の大流量が油圧アクチュエータに供給され、油圧アクチュエータの作動速度を速く維持することができる。このように本発明にあっては、小出力時であって、油圧アクチュエータの要求流量が大きいときにも、何ら制限を受けることなくエンジン回転数を小出力に応じた低い回転数にすることができる。
【0010】
また、本発明に係る建設機械のポンプ駆動装置は、上記発明において、上記油圧ポンプが固定容量型油圧ポンプから成り、上記エンジンの実回転数を検出する回転数センサを備え、上記変速機制御手段が、上記油圧ポンプの目標回転数に相応する上記油圧ポンプの目標流量を決める上記流量指令手段からの指令流量信号、及び上記回転数センサで検出されたエンジンの実回転数信号を入力し、上記指令流量信号に相応する上記油圧ポンプの目標回転数を、上記実回転数信号に相応する上記エンジンの実回転数で除して上記変速比を演算する変速比演算部を有するコントローラから成り、このコントローラから上記変速機の変速比制御部に、上記変速比演算部で演算された変速比に相当する変速比指令信号を出力させることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る建設機械のポンプ駆動装置は、上記発明において、上記油圧ポンプが可変容量型油圧ポンプから成り、上記エンジンの実回転数を検出する回転数センサと、上記油圧ポンプの目標回転数を決める上記エンジンの目標回転数を設定し出力する回転数指示器とを備え、上記変速機制御手段が、上記回転数指示器から出力される設定回転数信号、及び上記回転数センサで検出されたエンジンの実回転数信号を入力し、上記油圧ポンプの目標回転数に相応する値である上記設定回転数を、上記実回転数信号に相応する上記エンジンの実回転数で除して上記変速比を演算する変速比演算部を有するコントローラから成り、このコントローラから上記変速機の変速比制御部に、上記変速比演算部で演算された変速比に相当する変速比指令信号を出力させることを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る建設機械のポンプ駆動装置は、上記発明において、上記油圧ポンプの吐出圧を検出する圧力センサを備え、上記コントローラは、上記流量指令手段からの指令流量信号と上記圧力センサから出力されるポンプ圧力信号とに基づいて、上記油圧ポンプの駆動動力を演算する駆動動力演算部と、この駆動動力演算部で演算された上記駆動動力に対し、上記エンジンの燃料消費率が最小となるエンジン回転数を演算するエンジン回転数演算部とを含み、このエンジン回転数演算部で演算されたエンジン回転数に相当するエンジン回転数指令信号を、上記エンジンの回転数を制御するエンジンコントローラに出力させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、油圧ポンプの目標流量を指令する指令流量信号を出力する流量指令手段を備えるとともに、エンジンと油圧ポンプとの間に設けられ、変速比を変更可能な変速機と、油圧ポンプの目標回転数またはこの油圧ポンプの目標回転数に相応する値を、エンジンの回転数で除して変速比を演算し、この演算した変速比で変速機を制御する変速機制御手段とを備えたことから、小出力時であって、油圧アクチュエータの要求流量が大きいときにも、変速機制御手段で演算された変速比で変速機が制御されることにより、何ら制限を受けることなくエンジン回転数を小出力に応じた低い回転数にすることができ、これにより、従来技術では困難であったこのような状況下における燃料消費率を低減でき、エンジンの高効率運転を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るポンプ駆動装置の第1実施形態が備えられる建設機械の一例として挙げた油圧ショベルの側面図である。
【図2】図1に示す油圧ショベルに備えられるポンプ駆動装置の第1実施形態の要部構成を示す図である。
【図3】図2に示す第1実施形態に備えられるコントローラの要部構成を示すブロック図である。
【図4】本発明に係るポンプ駆動装置の第2実施形態の要部構成を示す図である。
【図5】図4に示す第2実施形態に備えられるコントローラの要部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る建設機械のポンプ駆動装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明に係るポンプ駆動装置の第1実施形態が備えられる建設機械の一例として挙げた油圧ショベルの側面図である。
【0017】
この図1に示す油圧ショベルは、走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2と、この旋回体2に取り付けられる作業装置すなわちフロント作業機3とを備えている。フロント作業機3は、旋回体2に上下方向の回動可能に取り付けられるブーム4と、このブーム4に上下方向の回動可能に取り付けられるアーム5と、このアーム5に上下方向の回動可能に取り付けられるバケット6とを含んでいる。また、このフロント作業機3は、ブーム4を作動させるブームシリンダ7と、アーム5を作動させるアームシリンダ8と、バケット6を作動させるバケットシリンダ9とを含んでいる。旋回体2には、運転室10と機械室2aが備えられている。上述したブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行体1を走行させる図示しない走行モータ、旋回体2を旋回させる図示しない油圧モータ等によって、この油圧ショベルに備えられる油圧アクチュエータが構成されている。
【0018】
図2は図1に示す油圧ショベルに備えられるポンプ駆動装置の第1実施形態の要部構成を示す図、図3は図2に示す第1実施形態に備えられるコントローラの要部構成を示すブロック図である。
【0019】
上述した油圧ショベルの旋回体2の機械室2aには、動力源であるエンジン11と、このエンジン11によって駆動し、上述した油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧ポンプ、例えば固定容量型油圧ポンプ12が収容されている。また、旋回体2の運転室10には、油圧ポンプ12の目標流量を指令する指令流量信号を出力する流量指令手段、例えば操作レバー13が配置されている。
【0020】
図2に示すように、本発明に係るポンプ駆動装置の第1実施形態は、油圧ポンプ12の吐出圧を検出する圧力センサ14と、エンジン11の実回転数を検出する回転数センサ15と、エンジン11と油圧ポンプ12との間に設けられ、変速比を変更可能な変速機16とを備えている。変速機16は、一端をエンジン11の出力軸に接続され、他端を油圧ポンプ12の入力軸に接続されている。
【0021】
また、この第1実施形態は、油圧ポンプ12の目標回転数またはこの油圧ポンプ12の目標回転数に相応する値、例えば油圧ポンプ12の目標回転数Nを、エンジン11の実回転数Neで除して変速比Iを演算し、この演算した変速比Iで変速機16を制御する変速機制御手段、例えば上述した旋回体2内に配置されるコントローラ17を備えている。また、エンジン11の回転数を制御するエンジンコントローラ18を備えており、上述した変速機16は変速比を変更制御可能な変速比制御部19を備えている。上述したコントローラ17は、操作レバー13の指令流量信号と、圧力センサ14のポンプ圧力信号と、回転数センサの実回転数信号を入力し、これらの信号に基づいて後述の処理を行ない、エンジンコントローラ18にエンジン回転数指令信号を出力するとともに、変速機16の変速比制御部19に変速比指令信号を出力する。
【0022】
コントローラ17は、図3に示すように、操作レバー13から出力されるレバー操作量、すなわち指令流量信号と、目標流量Qとの関係が予め設定され、指令流量信号の値に応じた大きさの目標流量Qを出力する目標流量演算部17aと、目標流量演算部17aから出力された目標流量Qに、圧力センサ14から出力されるポンプ圧力信号(ポンプ圧P)を乗じて、油圧ポンプ12の駆動動力PSを演算する駆動動力演算部17bと、この駆動動力演算部17bから出力される駆動動力PSと、予め設定されるエンジン11の燃料消費率の良い運転特性線NSとに基づいて、高効率のエンジン11の目標回転数Niを演算し、この目標回転数Niをエンジン回転数指令信号として出力するエンジン回転数演算部17cとを含んでいる。また、このコントローラ17は、上述した目標流量演算部17aから出力される目標流量Qを、油圧ポンプ12の構造的に決定される吐出容量qで除して、油圧ポンプ11の回転数すなわち目標回転数Nを演算するポンプ回転数演算部17dと、このポンプ回転数演算部17dから出力される目標回転数Nを、上述の回転数センサ15から出力されるエンジン11の回転数すなわち実回転数Neで除して変速比Iを演算し、この変速比Iに相当する変速比指令信号を出力する変速比演算部17eとを含んでいる。
【0023】
このように構成した第1実施形態を備えた図1に示す油圧ショベルにあって、例えば、操作レバー13が大きく操作されて、油圧アクチュエータの大きな要求流量に応じて油圧ポンプ12から大流量を吐出する指令がなされ、大出力でエンジン11の回転数が高く保たれている状況下で、フロント作業機3及び旋回体2等を駆動して掘削作業等が実施されているものとする。この掘削作業等の間、変速機制御手段すなわちコントローラ17によって、大流量を吐出し得る油圧ポンプ12の目標回転数Nを、大出力に相応するエンジン11の高い実回転数Neで除して変速機16の変速比Iが演算され、この演算された変速比Iとなるように変速機16が制御される。
【0024】
すなわち、図3に示すように、コントローラ17の目標流量演算部17aで、例えば操作レバー13の大きな操作量に基づく指令流量信号に応じた大きな目標流量Qが演算され、駆動動力演算部17bで、大きな目標流量Qと圧力センサ14からの例えば高いポンプ圧力信号(ポンプ圧力P)とによって油圧ポンプ12の大きな出力すなわち駆動動力PSが演算され、エンジン回転数演算部17cで、大きな駆動動力PSに基づいて高効率運転を実現させるエンジン11の比較的高い目標回転数Niが演算され、この高い目標回転数Niに相応するエンジン回転数指令信号が図2に示すエンジンコントローラ18に出力される。したがって、回転数が高く保たれたエンジン11の駆動力は変速機16を介して油圧ポンプ12に伝えられ、油圧ポンプ12から上述した油圧アクチュエータに大流量が供給され、所望の負荷の大きい掘削作業等を実施することができる。
【0025】
また、上述のような掘削作業等の間、例えばバケット6に収納された土砂等が放土されることなどにより負荷が軽くなって大出力から小出力すなわち小さな駆動動力PSに変化し、この小出力に応じてエンジン回転数演算部17cで演算されるエンジン11の回転数が低くなるものの、空のバケット6を再び動かすなどのために油圧アクチュエータの要求流量としては上述と同等に大きく、油圧ポンプ12から引き続き大流量を吐出することが求められるときには、コントローラ17によって、引き続き大流量を吐出し得る油圧ポンプ12の目標回転数Nを、小出力に相応するエンジン11の低い目標回転数Niに相応する実回転数Neで除して変速機16の変速比Iが演算され、上述した変速比Iに比べてこの大きくなった変速比Iとなるように変速機16が制御される。
【0026】
すなわち、コントローラ17のポンプ回転数演算部17dで、目標流量演算部17aから出力される大きな目標流量Qを、設定値である油圧ポンプ12の吐出容量qで除してポンプ回転数、すなわち大きな目標回転数Nが演算され、変速比演算部17eで、大きな目標回転数Nを回転数センサ15からの低くなった目標回転数Niに相応する実回転数Neで除して変速比Iが演算され、この変速比Iに相当する変速比指令信号が変速機16の変速比制御部19に出力される。したがって、低くなった目標回転数Neのエンジン11の駆動力が変速機16を介して油圧ポンプ12に伝えられるが、変速機16の変速比Iが大きくなったことにより、油圧ポンプ12から上述の大出力時すなわち大きな駆動動力PSのときと同様に大流量が油圧アクチュエータに供給され、油圧アクチュエータの作動速度を速いままに維持することができる。
【0027】
このように第1実施形態にあっては、小出力時すなわち小さな駆動動力PSであって、油圧アクチュエータの要求流量が大きいときにも、何ら制限を受けることなくエンジン11の回転数を小出力に応じた低い目標回転数Niに相応する実回転数Neにすることができる。これにより、このような小出力時における状況下における燃料消費率を低減でき、エンジン11の高効率運転を実現させることができる。
【0028】
なお、上記第1実施形態にあっては、エンジン11の実回転数Neを検出する回転数センサ15を備え、変速比演算部17eで、油圧ポンプ12の目標回転数Nを、回転数センサ15から出力される実回転数Neで除して変速機16の変速比Iを求めるようにしたが、エンジン回転数演算部17cから出力されるエンジン11の目標回転数Niと、回転数センサ15で検出される実回転数Neとはほぼ同等となることから、回転数センサ15を設けずに、変速比演算部17eにおいて、油圧ポンプ12の目標回転数Nを、エンジン回転数演算部17cで演算されたエンジン11の目標回転数Niで除して変速機16の変速比Iを求め、この変速比Iによって変速機16を制御する構成にしてもよい。
【0029】
図4は本発明に係るポンプ駆動装置の第2実施形態の要部構成を示す図、図5は図4に示す第2実施形態に備えられるコントローラの要部構成を示すブロック図である。
【0030】
これらの図4,5に示す第2実施形態に係るポンプ駆動装置も、例えば図1に示す油圧ショベルに備えられものである。ただし、この油圧ショベルは、図4に示すように、油圧ポンプが可変容量型油圧ポンプ12Aから成っている。これに伴って、この油圧ショベルは、油圧ポンプ12Aの吐出容量を制御するレギュレータ12Bを備えている。さらに、この油圧ショベルは、油圧ポンプ12の目標回転数を決めるエンジン11の目標回転数Nfを設定し出力する回転数指示器20も備えている。油圧ショベルにおける他の構成は、第1実施形態と同等である。
【0031】
このような油圧ショベルに備えられる第2実施形態に係るポンプ駆動装置における変速機制御手段を構成するコントローラ17は、図5に示すように、操作レバー13から出力されるレバー操作量、すなわち指令流量信号と、可変容量型油圧ポンプ12Aの吐出容量qiとの関係が予め設定され、指令流量信号の値に応じた大きさの吐出容量qiを油圧ポンプ11Aのレギュレータ12Bに出力する吐出容量演算部17fと、回転数指示器20から出力される油圧ポンプ12Aの目標回転数に相応する値である設定回転数Nfに、吐出容量演算部17fから出力される吐出容量qiを乗じて油圧ポンプ12Aの目標流量Qを出力する目標流量演算部17gと、目標流量演算部17gから出力された目標流量Qに、圧力センサ14から出力されるポンプ圧信号(ポンプ圧P)を乗じて、油圧ポンプ12Aの駆動動力PSを演算する駆動動力演算部17bと、この駆動動力演算部17bから出力される駆動動力PSと、エンジン11の燃料消費率の良い運転特性線NSとに基づいて、高効率のエンジン11の目標回転数Niを演算し、この目標回転数Niをエンジン回転数指令信号として出力するエンジン回転数演算部17cとを含んでいる。また、このコントローラ17は、回転数指示器20から出力される油圧ポンプ12Aの目標回転数に相応する値である設定回転数Nfを、回転数センサ15から出力されるエンジン11の実回転数Neで除して変速比Iを演算し、この変速比Iに相当する変速比指令信号を出力する変速比演算部17eを含んでいる。
【0032】
このように構成した第2実施形態を備えた図1に示す油圧ショベルにあって、例えば、操作レバー13が大きく操作されて、油圧アクチュエータの大きな要求流量に応じて油圧ポンプ12Aから大流量を吐出する指令がなされ、大出力でエンジン11の回転数が高く保たれている状況下でフロント作業機3及び旋回体2等を駆動して、上述と同様に掘削作業等が実施されているものとする。この掘削作業等の間、変速機制御手段すなわちコントローラ17によって、大流量を吐出し得る油圧ポンプ11Aの目標回転数に相応する設定回転数Nfを、大出力に相応するエンジン11の高い実回転数Neで除して変速機16の変速比Iが演算され、この演算された変速比Iとなるように変速機16が制御される。
【0033】
すなわち、図5に示すように、コントローラ17の吐出容量演算部17fで、例えば操作レバー13の大きな操作量に基づく指令流量信号に応じた大きな吐出容量qiが演算され、この大きな吐出容量qiが上述したように、レギュレータ12Bに出力される。このレギュレータ12Bの作動により油圧ポンプ12Aの吐出容量は大きな吐出容量qiに一致するように制御される。また、目標流量演算部17gで、回転数指示器20からの例えば大きな値である設定回転数Nfに、吐出容量演算部17fからの大きな吐出容量qiが乗じられて大きな目標流量Qが求められ、駆動動力演算部17bで、大きな目標流量Qに圧力センサ14からの例えば高いポンプ圧力信号(ポンプ圧力P)が乗じられて、油圧ポンプ12の大きな出力すなわち駆動動力PSが演算され、エンジン回転数演算部17cで、大きな駆動動力PSに基づいて高効率運転を実現させるエンジン11の比較的高い目標回転数Niが演算され、この高い目標回転数Niに相応するエンジン回転数指令信号が図2に示すエンジンコントローラ18に出力される。したがって、回転数が高く保たれたエンジン11の駆動力は変速機16を介して油圧ポンプ12Aに伝えられ、油圧ポンプ12Aから上述した油圧アクチュエータに大流量が供給され、所望の負荷の大きい掘削作業等を実施することができる。
【0034】
また、上述のような掘削作業等の間、例えばバケット6に収納された土砂等が放土されることなどにより負荷が軽くなって大出力から小出力すなわち小さな駆動動力PSに変化し、この小出力に応じてエンジン回転数演算部17cで演算されるエンジン11の目標回転数Niが低くなるものの、空のバケット6を再び動かすなどのために油圧アクチュエータの要求流量としては上述と同等に大きく、油圧ポンプ12Aから引き続き大流量を吐出することが求められるときには、コントローラ17によって、引き続き大流量を吐出し得る油圧ポンプ12Aの目標回転数に相応するエンジン回転数指示器20からの設定回転数Nfを、小出力に相応するエンジン11の低い目標回転数Niに相応する実回転数Neで除して変速機16の変速比Iが演算され、上述した変速比Iに比べてこの大きくなった変速比Iとなるように変速機16が制御される。
【0035】
すなわち、コントローラ17のエンジン回転数演算部17eにおいて、回転数指示器20から出力される値の大きな設定回転数Nfを回転数センサ15からの低くなった実回転数Neで除して変速比Iが演算され、この変速比Iに相当する変速比指令信号が変速機16の変速比制御部19に出力される。したがって、低くなった実回転数Neのエンジン11の駆動力が変速機16を介して油圧ポンプ12Aに伝えられるが、変速機16の変速比Iが大きくなったことにより、油圧ポンプ12Aから上述の大出力時すなわち大きな駆動動力PSのときと同様の大流量が油圧アクチュエータに供給され、油圧アクチュエータの作動速度を速く維持することができる。
【0036】
このように第2実施形態にあっても第1実施形態と同様に、小出力時すなわち小さな駆動動力PSであって、油圧アクチュエータの要求流量が大きいときにも、何ら制限を受けることなくエンジン11の回転数を小出力に応じた低い目標回転数Niに相応する実回転数Neにすることができる。これにより、このような小出力時における状況下における燃料消費率を低減でき、エンジン11の高効率運転を実現させることができる。
【0037】
なお、上記第2実施形態にあっては、エンジン11の実回転数Neを検出する回転数センサ15を備え、変速比演算部17eで、回転数指示器20からの設定回転数Nfを、回転数センサ15から出力される実回転数Neで除して変速機16の変速比Iを求めるようにしたが、エンジン回転数演算部17cから出力されるエンジン11の目標回転数Niと、回転数センサ15で検出される実回転数Neとはほぼ同等となることから、回転数センサ15を設けずに、変速比演算部17eにおいて、回転数指示器20からの設定回転数Nfを、エンジン回転数演算部17cで演算されたエンジン11の目標回転数Niで除して変速機16の変速比Iを求め、この変速比Iによって変速機16を制御する構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 走行体
2 旋回体
3 フロント作業機
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
11 エンジン
12 固定容量型油圧ポンプ
12a 可変容量型油圧ポンプ
12b レギュレータ
13 操作レバー(流量指令手段)
14 圧力センサ
15 回転数センサ
16 変速機
17 コントローラ(変速機制御手段)
17a 目標流量演算部
17b 駆動動力演算部
17c エンジン回転数演算部
17d ポンプ回転数演算部
17e 変速比演算部
17f 吐出容量演算部
17g 目標流量演算部
18 エンジンコントローラ
19 変速比制御部
20 エンジン回転数指示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、このエンジンによって駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプの目標流量を指令する指令流量信号を出力する流量指令手段とを備えた建設機械のポンプ駆動装置において、
上記エンジンと上記油圧ポンプとの間に設けられ、変速比を変更可能な変速機と、
上記油圧ポンプの目標回転数またはこの油圧ポンプの目標回転数に相応する値を、上記エンジンの回転数で除して上記変速比を演算し、この演算した変速比で上記変速機を制御する変速機制御手段とを備えたことを特徴とする建設機械のポンプ駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械のポンプ駆動装置において、
上記油圧ポンプが固定容量型油圧ポンプから成り、
上記エンジンの実回転数を検出する回転数センサを備え、
上記変速機制御手段が、上記油圧ポンプの目標回転数に相応する上記油圧ポンプの目標流量を決める上記流量指令手段からの指令流量信号、及び上記回転数センサで検出されたエンジンの実回転数信号を入力し、上記指令流量信号に相応する上記油圧ポンプの目標回転数を、上記実回転数信号に相応する上記エンジンの実回転数で除して上記変速比を演算する変速比演算部を有するコントローラから成り、
このコントローラから上記変速機の変速比制御部に、上記変速比演算部で演算された変速比に相当する変速比指令信号を出力させることを特徴とする建設機械のポンプ駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械のポンプ駆動装置において、
上記油圧ポンプが可変容量型油圧ポンプから成り、
上記エンジンの実回転数を検出する回転数センサと、
上記油圧ポンプの目標回転数に相応する上記エンジンの目標回転数を設定し出力する回転数指示器とを備え、
上記変速機制御手段が、上記回転数指示器から出力される設定回転数信号、及び上記回転数センサで検出されたエンジンの実回転数信号を入力し、上記油圧ポンプの目標回転数に相応する値である上記設定回転数を、上記実回転数信号に相応する上記エンジンの実回転数で除して上記変速比を演算する変速比演算部を有するコントローラから成り、
このコントローラから上記変速機の変速比制御部に、上記変速比演算部で演算された変速比に相当する変速比指令信号を出力させることを特徴とする建設機械のポンプ駆動装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の建設機械のポンプ駆動装置において、
上記油圧ポンプの吐出圧を検出する圧力センサを備え、
上記コントローラは、上記流量指令手段からの指令流量信号と上記圧力センサから出力されるポンプ圧力信号とに基づいて、上記油圧ポンプの駆動動力を演算する駆動動力演算部と、この駆動動力演算部で演算された上記駆動動力に対し、上記エンジンの燃料消費率が最小となるエンジン回転数を演算するエンジン回転数演算部とを含み、
このエンジン回転数演算部で演算されたエンジン回転数に相当するエンジン回転数指令信号を、上記エンジンの回転数を制御するエンジンコントローラに出力させることを特徴とする建設機械のポンプ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−33138(P2011−33138A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180681(P2009−180681)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】