説明

成膜方法

【課題】 Cu拡散防止膜との密着力が良好であり、微細バターンに成膜が可能なCu膜の成膜方法を提供する。
【解決手段】 被処理基板上に形成されたCu拡散防止膜上に、Cu膜を形成する成膜方法であって、前記Cu拡散防止膜上に、当該Cu拡散防止膜と前記Cu膜との密着膜を形成する第1の工程と、前記被処理基板上に、超臨界状態の媒体にプリカーサが溶解した処理媒体を供給し、前記密着膜上に前記Cu膜を形成する第2の工程と、を有することを特徴とする成膜方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属膜の成膜方法に係り、特にはCu膜の成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高性能化に伴い、半導体デバイスの高集積化が進んで微細化の要求が著しくなっており、配線ルールは0.1μm以下の領域へと開発が進んでいる。また、配線材料は配線遅延の影響の少ない、抵抗値の低いCuが用いられている。
【0003】
そのため、Cu成膜技術と微細配線技術の組み合わせが、近年の微細化した多層配線技術の重要なキーテクノロジーとなっている。
【0004】
前記したCuの成膜方法に関しては、スパッタ法、CVD法、メッキ法などが一般に知られているが、いずれも微細配線を考えた場合にはカバレージに限界があり、0.1μm以下の高アスペクト比の微細パターンに効率よくCuを成膜することは非常に困難である。
【0005】
そこで、微細パターンにCuを効率よく成膜する方法として超臨界状態の媒体を用いたCuの成膜方法が提案されている。
【0006】
超臨界状態にある物質を成膜のため前駆体化合物(プリカーサ)を溶解するための媒体に用いると、液体に近い密度・溶解度を持つことから、気体の媒体に比べてプリカーサの溶解度を高く維持できる一方、気体に近い拡散係数を利用することで、プリカーサを液体の媒体よりも効率よく被処理体に輸送することが可能となる。そのため、超臨界状態の媒体にプリカーサを溶解した処理媒体を用いた成膜では、成膜速度が高く、かつ微細パターンへのカバレッジが良好な成膜を行うことが可能となる。
【0007】
例えば、超臨界状態のCO2を用いてCu成膜のためのプリカーサを溶解して処理媒体を形成し、Cuの成膜を行う方法が提案されている(例えば非特許文献1参照)。
【0008】
この場合、CO2の超臨界状態の媒体においては、Cuを含む前駆体化合物であるCu成膜プリカーサの溶解度が高い一方で粘性が低く、拡散性が高いため、いわゆるアスペクト比が高い微細なパターンに、良好なカバレッジでCu成膜が可能となる。
【0009】
一方、半導体装置などの配線に、Cu配線を用いる場合には、Cu配線の周囲に形成された絶縁層中にCuが拡散してしまう懸念があるため、Cu配線と絶縁層の間にCu拡散防止膜(またはバリア膜、下地膜などと呼ばれる場合も有る)を形成することが一般的となっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−229084号公報
【非特許文献1】「Deposition of Conformal Copper and Nickel Films from Supercritical Carbon Dioxide」 SCIENCE vol294 2001 10月5日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、超臨界状態の媒体を用いて形成されたCu膜は、従来用いられてきたCu拡散防止膜、例えばTa膜やTaN膜などとの密着性が悪く、Cu膜とCu拡散防止膜の間で剥離が生じる場合があり、例えば半導体装置の信頼性の低下などの問題が生じていた。例えば、従来用いられてきたメッキ法、CVD法およびスパッタ法や、これらを組み合わせた方法により形成されたCu膜に比べて、超臨界状態の媒体を用いて形成されたCu膜は、Cu拡散防止膜との密着性が悪く、Cu拡散防止膜上にCu膜を形成する場合に問題となる場合があった。
【0011】
そこで、本発明は上記の問題を解決した、新規で有用な成膜方法を提供することを目的としている。
【0012】
本発明の具体的な課題は、Cu拡散防止膜との密着力が良好であり、微細バターンに成膜が可能なCu膜の成膜方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するために、請求項1に記載したように、
被処理基板上に形成されたCu拡散防止膜上に、Cu膜を形成する成膜方法であって、
前記Cu拡散防止膜上に、当該Cu拡散防止膜と前記Cu膜との密着膜を形成する第1の工程と、
前記被処理基板上に、超臨界状態の媒体にプリカーサが溶解した処理媒体を供給し、前記密着膜上に前記Cu膜を形成する第2の工程と、を有することを特徴とする成膜方法により、また、
請求項2に記載したように、
前記第2の工程は、
前記被処理基板を保持する保持台を内部に有する処理容器の内部で、前記被処理基板を加熱する加熱工程と、
前記処理容器内に前記処理媒体を供給する供給工程と、
前記処理媒体により、前記密着膜上に前記Cu膜を形成する成膜工程と、を有することを特徴とする請求項1記載の成膜方法により、また、
請求項3に記載したように、
前記Cu拡散防止膜は、Taを含むことを特徴とする請求項1または2記載の成膜方法により、また、
請求項4に記載したように、
前記超臨界状態の媒体は、超臨界状態のCOからなることを特徴とする請求項1乃至3のうち、いずれか1項記載の成膜方法により、また、
請求項5に記載したように、
前記プリカーサは、Cu(hfac)、Cu(acac)2、Cu(dpm)2、Cu(dibm)2、Cu(ibpm)2、Cu(hfac)TMVS、および、Cu(hfac)CODよりなる群より選択され、前記処理媒体にはHが加えられることを特徴とする請求項1乃至4のうち、いずれか1項記載の成膜方法により、また、
請求項6に記載したように、
前記密着膜は、白金族元素、鉄族元素、およびCuから選択された金属を含むことを特徴とする、請求1乃至5のうち、いずれか1項記載の成膜方法により、また、
請求項7に記載したように、
前記密着膜は、CVD法、またはPVD法により、形成されることを特徴とする請求項6記載の成膜方法により、また、
請求項8に記載したように、
前記密着膜は、前記Cu拡散防止膜を構成する元素と、Cuとを含むことを特徴とする請求項1乃至5のうち、いずれか1項記載の成膜方法により、また、
請求項9に記載したように、
前記元素は、金属元素であることを特徴とする請求項8記載の成膜方法により、また、
請求項10に記載したように、
前記元素は、Taであることを特徴とする請求項9記載の成膜方法により、また、
請求項11に記載したように、
前記密着膜は、前記被処理基板上に、超臨界状態の媒体に別のプリカーサが溶解した別の処理媒体を供給することにより、形成されることを特徴とする請求項8乃至10のうち、いずれか1項記載の成膜方法により、また、
請求項12に記載したように、
前記別のプリカーサは、Cu(hfac)、Cu(acac)2、Cu(dpm)2、Cu(dibm)2、Cu(ibpm)2、Cu(hfac)TMVS、および、Cu(hfac)CODよりなる群より選択されることを特徴とする請求項11記載の成膜方法により、また、
請求項13に記載したように、
前記別のプリカーサは、前記別のプリカーサは、TaCl、TaF、TaBr、TaI、Ta(NC(CH)(N(C、Ta(NC(CH3)225)(N(CH3)2)3、(CTaH、および(CTaClよりなる群より選択されることを特徴とする請求項11記載の成膜方法により、また、
請求項14に記載したように、
請求項1乃至13のうち、いずれか1項記載の成膜方法をコンピュータに実行させるプログラムを記録した記憶媒体により、解決する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、Cu拡散防止膜との密着力が良好であり、微細パターンに成膜が可能なCu膜の成膜方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態に関して図面に基づき、説明する。
【実施例1】
【0016】
本実施例による成膜方法では、例えば半導体装置の配線に用いる、Cu膜を形成する場合に、被処理基板上に形成されたCu拡散防止膜上に、密着力を良好としてCu膜を形成することを可能とする。
【0017】
本実施例により形成されるCu膜は、超臨界状態である媒体にプリカーサを溶解させた処理媒体を用いて、当該処理媒体を被処理基板上に供給することで、被処理基板上にCu膜を形成している。超臨界状態の媒体においては、プリカーサの溶解度が高い一方で粘性が低く、拡散性が高いため、いわゆるアスペクト比が高い微細なパターンに、良好なカバレッジでCu成膜が可能となり、例えば0.1μm以下のアスペクト比の高い微細パターンに、カバレッジを良好として、Cu膜を成膜し、ビア配線やトレンチ配線などの微細配線パターンを形成することが可能となっている。
【0018】
しかし、超臨界状態である媒体にプリカーサを溶解させた処理媒体を用いてCu膜を形成した場合には、特にCu拡散防止膜との密着性に劣る問題があった。
【0019】
そのため、本実施例では、Cu拡散防止膜上に密着膜を形成し、当該密着膜上にCu膜を形成するようにしている。
【0020】
図1は、本発明の実施例1による成膜方法を示すフローチャートである。
【0021】
図1を参照するに、まず、処理が開始されると、ステップ1(図中S1と表記、以下同様)において被処理基板上に形成された、Cu拡散防止膜上に、密着膜を形成する。当該密着膜は、Cu拡散防止膜と密着性が良好であって、さらに後の工程で形成される、超臨界状態の媒体を用いて形成されるCu膜との密着性が良好である特徴を有している。
【0022】
次に、ステップ2で、前記ステップ1で形成された密着膜上にCu膜を形成する。本ステップでは、後述するように、超臨界状態の媒体にプリカーサを溶解した処理媒体を被処理基板上に供給することにより、Cu膜を形成している。本ステップでCu膜を形成後、必要に応じて、例えばCMP(化学機械研磨)工程や、さらにCMP工程後にさらに上層の配線構造を形成するなどの工程を実施して、例えば多層配線構造を有する半導体装置を形成する。
【0023】
そして、上述の方法により成膜したCu膜表面に粘着テープを貼り付け、強く引き剥がすことによって密着性を調べる、引きはがし試験(JIS5600−5−6)を実施した。なお、Cu拡散防止膜は、PVD法により形成した。
【0024】
前記密着膜を構成する材料としては、様々な材料を用いることが可能であるが、例えば、前記密着膜は、白金族元素(Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt),鉄族元素(Fe,Co,Ni),およびCuのいずれかの金属を含むと、Cu拡散防止膜とCu膜の密着力が向上して好適である。これらの膜はPVD法やCVD法により形成することが可能である。密着膜としてCuを形成する場合、超臨界状態の媒体を用いた成膜ではなく、例えばPVD法、例えばスパッタ法や、CVD法、またはメッキ法による成膜により形成されることが好ましく、また特にPVD法である、スパッタ法により形成されると密着力がさらに良好となり、好ましい。
【0025】
例えば、密着膜に、白金族元素(Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt),鉄族元素(Fe,Co,Ni),およびCuのいずれかの金属を用いた場合、Cu拡散防止膜が上記の金属で保護されるために、Cu拡散防止膜の酸化を防止することが可能となる。例えば、Cu拡散防止膜にTaを含む膜を用いた場合、Cu拡散防止膜が露出した状態で大気中に放置されるとTaは容易に酸化され、Cu拡散防止膜上には、Taの酸化物が形成されてしまう。Taの酸化物は、Cu膜との密着性が悪く、Cu膜を形成した場合に剥離の原因となってしまう懸念がある。そこで、本実施例では、Cu拡散防止膜上に密着膜を形成し、Cu拡散防止膜の酸化を防止し、Cu膜との密着力が悪い、例えばTaの酸化膜が形成されることを防止している。
【0026】
また、白金族元素(Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt),鉄族元素(Fe,Co,Ni),およびCuはTaと比べると酸化されにくく、また特にCuの場合には表面が酸化されても、密着膜上にCu膜を形成する工程において、Cu膜の成膜の最初の段階で、成膜に用いる還元剤、例えばHにより、表面に形成された酸化膜が還元されてしまうため、密着力を低下させる要因となる酸化膜の影響を排除することができる。
【0027】
また、特に、Ru,Ir,Rh,Pd,Osの酸化物は、Taの酸化物に比べて比抵抗が小さいため、これらのRu、Ir,Rh,Pd,Osで形成された密着膜を用いた場合には、表面が酸化された場合にも比抵抗が小さく、Cu配線の拡散防止膜として好適である。
【0028】
また、Cu拡散防止膜とCu膜の密着性を良好とする密着膜は、他にも様々な材料を用いることが可能である。
【0029】
例えば、前記密着膜は、Cu拡散防止膜を構成する元素と、Cuとを含むようにすると、当該密着膜がCu拡散防止膜とCu膜との双方と密着力が良好となる。すなわち、密着膜を、Cu拡散防止膜とCu膜との中間的な性質を有するように形成することが密着力を良好とするために好ましい。この場合、例えば、前記密着膜は、前記Cu拡散防止膜を構成する金属元素、例えばTaを含むようにすると、Cu拡散防止膜と密着膜との密着力が良好となり、好適である。このように、当該密着膜は、白金族、鉄族、Cuから選択された金属元素を含む合金を用いることもできる。
【0030】
また、さらに密着膜の厚さ方向、すなわちCu拡散防止膜の側からCu膜の側に向かって当該密着膜を構成する成分が変化するようにすると密着力がさらに良好となる。
【0031】
例えば、Cu拡散防止膜の側からCu膜の側に向かって、密着膜に含まれるCu元素の割合が増加するようにすることが好ましく、また、Cu拡散防止膜の側からCu膜の側に向かってCu拡散防止膜を構成する金属元素、たとえばTaの割合が減少するようにするとさらに密着力が良好となり、好ましい。
【0032】
上記のCu拡散防止膜を構成する元素と、Cuとを含む密着膜は、様々な方法で形成することが可能であり、例えばPVD法であるスパッタ法などでも形成することが可能であるが、例えば、以下に説明する、いわゆるALD(Atomic Layer Deposition)法や、Cu膜を形成する場合と同様にして超臨界状態の媒体を用いて形成してもよい。
【0033】
ALD法とは、例えば被処理基板上に第1の処理ガスを供給して被処理基板上に吸着させた後、余剰の当該第1の処理ガスを除去し、さらに被処理基板上に第2の処理ガスを供給し、被処理基板上に吸着された前記第1の処理ガスと反応させた後、余剰の当該第2の処理ガスを除去する、という工程を繰り返し、被処理基板上に原子層または分子層レベルの、不純物の少ない高品質な、また被処理基板面内の均一性が良好である成膜を行う方法である。
【0034】
このようなALD法を用いて、例えばTaとCuを含む密着膜を形成することが可能である。
【0035】
また、上記のCu拡散防止膜を構成する元素と、Cuとを含む密着膜は、後の工程でCu膜を形成する方法と同様な方法で、プリカーサを超臨界状態の媒体に溶解した処理媒体を被処理基板上に供給することで形成することも可能である。この場合、密着膜の形成と、Cu膜の形成を、同一の処理容器で連続的に実施することが可能であり、効率のよい成膜を行う事ができる。また、上記の連続的な成膜を行った場合には、被処理基板が大気中に曝されることがないため、酸化膜の形成などの要因を排除することが可能となり、密着膜とCu膜の密着力をさらに良好とすることができる。
【0036】
この場合、例えば、密着膜にCuを含有させるためのプリカーサとしては、Cu(hfac)(この場合、hfacはhexafluoroacetylacetonatoを示す)、密着膜にTaを含有させるためのプリカーサとしては、TaCl、を用いることが可能であるが、これに限定されるものではなく、様々なプリカーサを用いることが可能である。
【0037】
例えば、密着膜にTaを含有させるためのプリカーサとしては、TaClの他にもTaを含むハロゲン化合物、例えば、TaF、TaBr、TaI、などを用いることが可能である。
【0038】
また、ハロゲン化合物の他にも有機化合物、例えば、TBTDET(TBTDETは、Ta(NC(CH)(N(Cを示す)、TAIMATA(登録商標、TAIMATAは、Ta(NC(CH3)225)(N(CH3)2)3を示す)、(CTaH、(CTaCl、などを用いることが可能である。
【0039】
次に、密着膜上に形成される、超臨界状態の媒体を用いて形成するCu膜を、成膜する成膜装置に関して、図2に基づき、以下に説明する。
【0040】
図2は、図1のステップ2に示したCu膜を形成するための成膜装置の構成の一例を模式的に示した図である。
【0041】
図2を参照するに、本図に示す成膜装置10は、その内部に処理空間11Aが画成され、また内部に被処理基板Wを保持する保持台12が設けられた、処理容器11を有している。前記保持台12は、図示を省略する、例えばヒータなどの加熱手段が設けられて、載置台に載置された被処理基板を加熱することが可能になっている。
【0042】
また、処理容器11内の、前記保持台12に対向する側には、超臨界状態の媒体や、超臨界状態の媒体にプリカーサが溶解した処理媒体などを前記処理空間11A内に供給する、複数の供給穴が形成された、いわゆるシャワーヘッド構造を有する供給部13が形成されている。前記供給部13には、バルブ14Aが付された供給ライン14が接続されており、前記処理空間11Aには、当該供給ライン14から、前記供給部13を介して、超臨界状態の媒体や、超臨界状態の媒体にプリカーサが溶解した処理媒体が供給される構造になっている。
【0043】
前記供給ライン14には、当該供給ライン14に超臨界状態の媒体を供給する、バルブ15Aが付されたライン15が、また、当該供給ライン14にプリカーサを供給する、バルブ16Aが付されたライン16が、さらに、還元剤など成膜処理に必要なガスを供給する、バルブ18Aが付されたライン18が接続されている。また、前記供給ライン14には、必要に応じて前記処理空間11Aや、前記供給ライン14を真空排気する、図示を省略する真空ポンプが接続された、バルブ17Aが付されたライン17が接続されている。
【0044】
前記ライン15には、加圧ポンプ15B、および冷却器15C、およびバルブ15D,15Eを介して、超臨界状態の媒体が形成されるもとの媒体である、例えばCOのボンベ15Fが接続されている。前記ボンベ15Fから供給されるCOは、前記冷却器15Cで冷却され、さらに加圧ポンプ15Bで加圧されて所定の条件の圧力、温度とされ、超臨界状態の媒体とされて前記処理空間11Aに供給される。例えば、CO2の場合、臨界点(超臨界状態となる点)は、温度31.0℃、圧力7.38MPaであり、当該臨界点以上の温度、圧力でCO2は超臨界状態となる。
【0045】
また、前記ライン16からは、超臨界状態のCOに溶解されたプリカーサ、例えばCu(hfac)が供給され、前記ライン18からは、還元剤である、例えばHガスがそれぞれ前記処理空間11Aに供給される。この場合、還元剤であるHは、超臨界状態のCOと共に供給されるようにしてもよい。
【0046】
さらに、前記処理容器11には、前記処理空間11Aに供給された処理媒体や超臨界状態の媒体などを排出する、バルブ19A,19C、およびトラップ19Dが付された排出ライン19が接続されており、例えば処理媒体中に溶解したプリカーサなどをトラップ19Dで捕獲しながら、処理媒体などを処理空間の外に排出する構造になっている。当該排出ライン19には、圧力制御バルブ19Bがさらに付されており、前記排出ライン19の圧力を所望の値に制御しながら、前記処理空間11Aに供給された処理媒体や超臨界状態の媒体などを排出することが可能になっている。また、前記処理空間11Aには、防爆ライン20と防爆弁20Aが設けられており、前記処理空間11Aが、処理容器11の耐えうる圧力以上となることを防止している。
【0047】
上記の成膜装置10を用いて、被処理基板上に、例えばCu膜を形成する場合には、例えば、以下のように装置が制御されて成膜を行う事ができる。
【0048】
まず、成膜処理を開始すると、図示を省略したゲートバルブより被処理基板を前記処理空間11Aに搬入し、前記保持台12上に被処理基板であるウェハWを載置する。次に、前記処理空間11Aを、前記ライン17を用いて真空排気した後、前記保持台12に設けられたヒータにより被処理基板を加熱し、被処理基板を300℃とする。
【0049】
次に、前記ライン15より前記処理空間11AにCO2を導入して当該処理空間11A内の圧力を上昇させる。この場合、予め超臨界状態としたCO2を導入してもよく、また、例えば液体のCO2を処理容器11に連続的に供給することで、供給されたCO2の圧力を上げることにより、またはCO2の温度を上げることにより、CO2が処理空間11Aで超臨界状態の媒体となるようにしてもよい。また、処理空間11Aの圧力の上昇と共に、または上昇の前に、前記処理空間11Aに、前記ライン18からHを導入しておき、当該Hが処理媒体と混合されるようにして、処理媒体に加えて用いられる。また、前記処理空間11Aの圧力は、例えば15MPaとする。
【0050】
次に、前記ライン16から、前記処理空間11Aの、保持台上の被処理基板上に、プリカーサである、例えばCu(hfac)2が溶解した超臨界状態の媒体、すなわち処理媒体を供給する。この場合、例えば、300℃に加熱された被処理基板上でプリカーサが熱分解することにより、被処理基板上にCu膜が成膜される。
【0051】
また、この圧力下にある、超臨界状態のCO2は、成膜に用いるプリカーサの溶解度が高く、かつプリカーサが溶解した処理媒体は拡散性が高い特徴があるため、成膜速度が高く、かつ微細バターンへのカバレッジが良好な成膜を行うことが可能となる。
【0052】
例えば、絶縁膜で形成された、線幅0.1μm以下の微細なパターンにボイドなどの空間を形成することなく、良好な埋め込み性と、高い成膜速度でCu膜を形成することが可能である。
【0053】
ここで、所定の時間の成膜を行った後、次に、前記処理媒体の供給を停止し、前記バルブ19A,19Cを開放して、前記処理空間11Aの処理媒体を、前記排出ライン19より排出する。この場合、排出される媒体の圧力が高くなりすぎないように、前記圧力調整バルブ19Bによって、所定の圧力となるよう制御する。この場合、必要に応じて前記ライン15より前記処理空間11AにCOを供給して前記処理空間11Aをパージする。
【0054】
次に、パージが終了した後、前記処理空間11Aの圧力を大気圧に戻して、成膜が完了する。
【0055】
また、本実施例では、Cu膜を成膜する場合において、プリカーサにCu(hfac)2を用いる場合を例にとったが、プリカーサはこれに限定されるものではない。例えば2価の銅イオンにベータ・ジケトナート(β−diketonato)配位子が2つ配位した金属錯体や1価の銅イオンにベータ・ジケトナート配位子1つが配位した金属錯体に、電子供与性の結合を持つ有機シラン、もしくは炭水化物を含むグループのうち少なくとも1つを含む分子が付加した金属錯体付加物(アダクト)を用いることができる。
【0056】
また、2価の銅イオン、1価の銅イオンのうち、少なくとも一方を含む有機金属錯体、もしくは有機金属錯体付加物や、前記有機金属錯体、前記有機金属錯体付加物のうち、少なくとも一方を含む有機混合物などを用いることができる。
【0057】
例えば、Cuを成膜する場合のプリカーサとしては、Cu(acac)2、Cu(dpm)2、Cu(dibm)2、Cu(ibpm)2、Cu(hfac)TMVS、および、Cu(hfac)COD、のいずれかを用いることが可能であり、Cu(hfac)2を用いた場合と同様の結果を得ることが可能である。
【0058】
なお、この場合、dpmは、dipivaloylmethanato、dibmは、diisobutyrylmethanato、ibpmは、isobutyrylpivaloylmethanato、acacは、acetylacetonato、TMVSは、trimethylvinylsilane、CODは、1,5-cyclooctadieneを示している。
【0059】
また、ウェハに成膜する膜は、Cu膜に限定されるものではなく、タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、窒化タングステンなどの金属膜、金属化合物膜を形成することが可能である。これらの金属膜や金属化合物膜は、例えば微細パターンにCu配線を形成する場合の、Cu拡散防止膜として用いることが可能であり、微細パターンに効率よくCu拡散防止膜を形成することが可能であり、実施例中に記載したCu膜を形成する場合と同様の効果を奏する。
【0060】
また、超臨界状態として用いる媒体は、CO2に限らず、例えばNH3などを用いることも可能であり、NH3を用いた場合には、金属窒化膜を形成することが可能となる。
【0061】
また、上記の成膜装置10は、例えばハードディスクよりなる記憶媒体HDと、図示を省略するコンピュータ(CPU)とを有する、制御装置Sを有している。前記制御装置Sは、前記記憶媒体HDに記憶されたプログラムによって、前記CPUが前記成膜装置10を動作させる。例えば、前記制御装置10は、前記プログラムに基づいて、例えばバルブの動作などにより、処理容器内に超臨界状態の媒体を供給したり、処理容器内の排気などを行い、成膜処理にかかわる動作を成膜装置に実行させる。また、このように記録媒体に記録された成膜のためのプログラムをレシピと呼ぶ場合がある。本文中に記載された成膜装置の成膜のための動作は、上記制御装置Sが、前記記憶媒体HDに記憶されたプログラム(レシピ)に基づいて行われるものである。
【実施例2】
【0062】
次に、実施例1に示した方法を用いて、半導体装置を形成する例を図3〜図4に示す。
【0063】
図3(A)〜(C)、図4(D)〜(E)は、実施例1に示した成膜方法を用いて半導体装置を形成する一例を、手順を追って示したものである。
【0064】
まず、図3(A)を参照するに、シリコンからなる半導体基板(被処理基板)上に形成されたMOSトランジスタなどの素子(図示せず)を覆うように絶縁膜、例えばシリコン酸化膜101が形成されている。当該素子に電気的に接続されている、例えばW(タングステン)からなる配線層(図示せず)と、これに接続された、例えばCuからなる配線層102が形成されている。
【0065】
また、前記シリコン酸化膜101上には、配線層102を覆うように、第1の絶縁層103が形成されている。前記絶縁層103には、溝部104aおよびホール部104bが形成されている。前記溝部104aおよびホール部104bには、Cuにより形成された、トレンチ配線とビア配線からなる配線部104が形成され、これが前述の配線層102と電気的に接続された構成となっている。
【0066】
また、前記第1の絶縁層103と前記配線部104の間には、当該第1の絶縁層103の側にはCu拡散防止膜104Aが、また前記配線部104の側には密着膜104Bが形成されている。前記Cu拡散防止膜104Aは、前記配線部104から前記第1の絶縁層103へCuが拡散するのを防止する機能を有する。さらに、前記配線部104および前記第1の絶縁層103の上を覆うように第2の絶縁層106が形成されている。本実施例では、前記第2の絶縁層106に、本発明による成膜方法を適用して、密着膜およびCu膜を形成する方法を示す。なお、前記配線部104と前記密着膜104Bに関しても、実施例1に記載の方法で形成することが可能である。
【0067】
図3(B)に示す工程では、前記第2の絶縁層106に、溝部107aおよびホール部107bを、例えばドライエッチング法などによって形成する。
【0068】
次に図3(C)に示す工程において、前記溝部107aおよび前記ホール部107bの内壁面を含む前記第2の絶縁層106上、および前記配線部104の露出面に、Cu拡散防止膜107Aの成膜を行う。前記Cu拡散防止膜107Aは、例えばこの場合Ta膜とTaN膜の積層膜からなり、スパッタ法などの方法により、形成することが可能であるが、実施例1の説明に記載したように、前記成膜装置10を用いて、超臨界状態の媒体にプリカーサを溶解した処理媒体を供給する方法を用いて形成することも可能である。この場合、微細なパターンに良好なカバレッジでCu拡散防止膜を形成することが可能となる。この場合、例えば、プリカーサは、TaF5、TaCl5,TaBr5,TaI5、(C552TaH3,(C552TaCl3、PDMAT(Pentakis(dimethylamino)Tantalum,、[(CH32N] 5Ta))およびPDEAT(Pentakis(diethylamino)Tantalum,、[(C252N] 5Ta))、TBTDET(Ta(NC(CH(N(C)、TAIMATA(登録商標、Ta(NC(CH3)225)(N(CH3)2)3))、のいずれかを用いればよい。また、超臨界状態の媒体は、CO2またはNH3を用いることで、例えば、Ta/TaNからなるCu拡散防止膜107Aを形成する。また、このようなCu拡散防止膜は、いわゆるALD法によって形成することも可能である。
【0069】
次に、図4(D)に示す工程において、実施例1に記載した方法で、前記溝部107aおよび前記ホール部107bの内壁面を含む、前記Cu拡散防止膜107A上に、例えばスパッタ法により、Ru膜よりなる密着膜107Bを形成する。また、密着膜は、Ruを除いた白金族、鉄族、およびCuのいずれかの元素を含む膜でもよい。また、実施例1に記載したように、Cu拡散防止膜を構成する金属元素、例えばTaと、Cuとを含む膜でもよく、例えば上記の膜はALD法により、形成してもよい。
【0070】
また、これらの密着膜は、超臨界状態の媒体にプリカーサを溶解させた処理媒体を用いて、すなわち実施例1に記載したCu膜を形成する方法と同様にして形成してもよい。この場合、後に示す、Cu膜を形成する工程と同一の処理容器による処理が可能となるため、成膜を速やかに実施して被処理基板の処理効率が良好となり、さらに形成される密着膜が大気に曝される懸念がないため、膜表面の酸化などの影響を抑制することができる。
【0071】
次に図4(E)に示す工程において、実施例1に示した方法で、前記溝部107aおよび前記ホール部107bを含む、前記密着膜107Aの上に、Cuよりなる配線部107を形成する。この場合、超臨界状態のCO2を用いているため、Cu成膜プリカーサが溶解した超臨界状態のCO2(処理媒体)が良好な拡散性を有するため、微細な前記ホール部107bおよび溝部107a部の底部や側壁部にも良好なカバレージで前記配線部107を形成することができる。また、従来は、Cu拡散防止膜とCu膜の密着性、特に超臨界状態の媒体を用いて形成されたCu膜の密着性が悪いという問題があったが、本実施例では当該問題を解決し、Cuよりなる配線部の剥離の可能性が低く、信頼性の高い多層配線構造を形成することが可能となり、信頼性の高い半導体装置を形成することが可能となる。
【0072】
また、本工程の後に、さらに前記第2の絶縁層の上部に第2+n(nは自然数)の絶縁層を形成し、それぞれの絶縁層に本発明による成膜方法を適用してCuよりなる配線部などを形成することが可能である。
【0073】
また、本実施例では、Cu拡散防止膜にはTa/TaNからなる積層膜を用いているが、これに限定されるものではなく、様々なCu拡散防止膜を用いることが可能であり、例えばWN膜、W膜、TiとTiNの積層膜、などを用いることが可能である。
【0074】
また、前記第1の絶縁層103または前記第2の絶縁層106には、様々な材料を用いることが可能であり、例えば、シリコン酸化膜(SiO膜)、フッ素添加シリコン酸化膜(SiOF膜)、SiCO(H)膜、などを用いることが可能である。
【0075】
以上、本発明を好ましい実施例について説明したが、本発明は上記の特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、Cu拡散防止膜との密着力が良好であり、微細パターンに成膜が可能なCu膜の成膜方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1による成膜方法を示すフローチャートである。
【図2】実施例1による成膜方法に用いる成膜装置の一例を模式的に示した図である。
【図3】(A)〜(C)は、実施例1による成膜方法を用いて、半導体装置の製造を行う手順を示した図(その1)である。
【図4】(D)〜(E)は、実施例1による成膜方法を用いて、半導体装置の製造を行う手順を示した図(その2)である。
【符号の説明】
【0078】
10 成膜装置
11 処理容器
11A 処理空間
12 保持台
13 供給部
14 供給ライン
15,16,17,18,20 ライン
19 排出ライン
14A,15A,15D,15E,16A,17A,18A,19A,19C バルブ
15B 加圧ポンプ
15C 冷却器
19B 圧力調整バルブ
19D トラップ
20A 防爆弁
101 シリコン酸化膜
102 配線層
103,106 絶縁層
104,107 配線部
104a,107a 溝部
104b,107b ホール部
104A,107A Cu拡散防止膜
104B,107B 密着膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板上に形成されたCu拡散防止膜上に、Cu膜を形成する成膜方法であって、
前記Cu拡散防止膜上に、当該Cu拡散防止膜と前記Cu膜との密着膜を形成する第1の工程と、
前記被処理基板上に、超臨界状態の媒体にプリカーサが溶解した処理媒体を供給し、前記密着膜上に前記Cu膜を形成する第2の工程と、を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記第2の工程は、
前記被処理基板を保持する保持台を内部に有する処理容器の内部で、前記被処理基板を加熱する加熱工程と、
前記処理容器内に前記処理媒体を供給する供給工程と、
前記処理媒体により、前記密着膜上に前記Cu膜を形成する成膜工程と、を有することを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項3】
前記Cu拡散防止膜は、Taを含むことを特徴とする請求項1または2記載の成膜方法。
【請求項4】
前記超臨界状態の媒体は、超臨界状態のCOからなることを特徴とする請求項1乃至3のうち、いずれか1項記載の成膜方法。
【請求項5】
前記プリカーサは、Cu(hfac)、Cu(acac)2、Cu(dpm)2、Cu(dibm)2、Cu(ibpm)2、Cu(hfac)TMVS、および、Cu(hfac)CODよりなる群より選択され、前記処理媒体にはHが加えられることを特徴とする請求項1乃至4のうち、いずれか1項記載の成膜方法。
【請求項6】
前記密着膜は、白金族元素、鉄族元素、およびCuから選択された金属を含むことを特徴とする、請求1乃至5のうち、いずれか1項記載の成膜方法。
【請求項7】
前記密着膜は、CVD法、またはPVD法により、形成されることを特徴とする請求項6記載の成膜方法。
【請求項8】
前記密着膜は、前記Cu拡散防止膜を構成する元素と、Cuとを含むことを特徴とする請求項1乃至5のうち、いずれか1項記載の成膜方法。
【請求項9】
前記元素は、金属元素であることを特徴とする請求項8記載の成膜方法。
【請求項10】
前記元素は、Taであることを特徴とする請求項9記載の成膜方法。
【請求項11】
前記密着膜は、前記被処理基板上に、超臨界状態の媒体に別のプリカーサが溶解した別の処理媒体を供給することにより、形成されることを特徴とする請求項8乃至10のうち、いずれか1項記載の成膜方法。
【請求項12】
前記別のプリカーサは、Cu(hfac)、Cu(acac)2、Cu(dpm)2、Cu(dibm)2、Cu(ibpm)2、Cu(hfac)TMVS、および、Cu(hfac)CODよりなる群より選択されることを特徴とする請求項11記載の成膜方法。
【請求項13】
前記別のプリカーサは、TaCl、TaF、TaBr、TaI、Ta(NC(CH)(N(C、Ta(NC(CH3)225)(N(CH3)2)3、(CTaH、および(CTaClよりなる群より選択されることを特徴とする請求項11記載の成膜方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のうち、いずれか1項記載の成膜方法をコンピュータに実行させるプログラムを記録した記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−148089(P2006−148089A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307295(P2005−307295)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(503037963)
【Fターム(参考)】