成膜装置、成膜方法及び記憶媒体
【課題】ALD法により基板の表面に反応生成物を積層すると共にこの反応生成物に対してプラズマ改質を行うにあたり、基板に対するプラズマダメージを抑えること。
【解決手段】プラズマ発生部80を設けて反応生成物の改質処理を行うにあたり、天板11に開口部11aを形成し、この開口部11a内に筐体90を配置する。そして、この筐体90の内部に、回転テーブル2上のウエハWに近接するようにプラズマ発生部80を収納する。また、プラズマ発生部80とウエハWとの間にファラデーシールド95を設けて、プラズマ発生部80で発生する電界及び磁界のうち電界を遮断して磁界をウエハWに到達させるために、当該ファラデーシールド95にスリット97を形成する。
【解決手段】プラズマ発生部80を設けて反応生成物の改質処理を行うにあたり、天板11に開口部11aを形成し、この開口部11a内に筐体90を配置する。そして、この筐体90の内部に、回転テーブル2上のウエハWに近接するようにプラズマ発生部80を収納する。また、プラズマ発生部80とウエハWとの間にファラデーシールド95を設けて、プラズマ発生部80で発生する電界及び磁界のうち電界を遮断して磁界をウエハWに到達させるために、当該ファラデーシールド95にスリット97を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに反応する処理ガスを順番に供給して基板の表面に反応生成物を積層すると共にこの反応生成物に対してプラズマ改質を行う成膜装置、成膜方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板(以下「ウエハ」と言う)に対して例えばシリコン酸化膜(SiO2)などの薄膜の成膜を行う手法の一つとして、互いに反応する複数種類の処理ガス(反応ガス)をウエハの表面に順番に供給して反応生成物を積層するALD(Atomic Layer Deposition)法が挙げられる。このALD法を用いて成膜処理を行う成膜装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、真空容器内に設けられた回転テーブル上に複数枚のウエハを周方向に並べると共に、例えば回転テーブルに対向するように配置された複数のガス供給部に対して回転テーブルを相対的に回転させることにより、これらウエハに対して各処理ガスを順番に供給する装置が知られている。
【0003】
ところで、ALD法では、通常のCVD(Chemical Vapor Deposition)法と比べて、ウエハの加熱温度(成膜温度)が例えば300℃程度と低いので、例えば処理ガス中に含まれている有機物などが薄膜中に不純物として取り込まれてしまう場合がある。そこで、例えば特許文献2に記載されているように、薄膜の成膜と共にプラズマを用いた改質処理を行うことにより、このような不純物を薄膜から取り除くこと、あるいは低減させることができると考えられる。
【0004】
しかし、プラズマ処理を行う装置を既述の成膜装置とは別に設けて改質処理を行おうとすると、これら装置間でウエハの搬送を行う分だけ時間のロスが生じてスループットの低下に繋がってしまう場合がある。一方、プラズマを発生させるプラズマ源を成膜装置に組み合わせて設けて、成膜処理を行いながらあるいは成膜処理の終了後に改質処理を行う場合には、プラズマによりウエハの内部に形成されている配線構造に対して電気的にダメージを与えてしまうおそれがある。そこで、ウエハに対するプラズマダメージを抑えるためにプラズマ源をウエハから離間させると、成膜処理を行う圧力条件ではプラズマ中のイオンやラジカルなどの活性種が失活しやすいので、活性種がウエハに到達しにくくなって良好な改質処理が行われなくなってしまうおそれがある。
特許文献3〜5には、ALD法により薄膜を成膜する装置について記載されているが、既述の課題については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−239102
【特許文献2】特開2011−40574
【特許文献3】米国特許公報7,153,542号
【特許文献4】特許3144664号公報
【特許文献5】米国特許公報6,869,641号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、互いに反応する処理ガスを順番に供給して基板の表面に反応生成物を積層すると共にこの反応生成物に対してプラズマ改質を行うにあたり、基板に対するプラズマダメージを抑えることのできる成膜装置、成膜方法及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成膜装置は、
真空容器内にて第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給するサイクルを複数回行って基板に成膜処理を行う成膜装置において、
基板を水平に載置する基板載置領域がその一面側に形成され、前記真空容器内にて前記基板載置領域を公転させるための回転テーブルと、
この回転テーブルの周方向に互いに分離領域を介して離間した領域に夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを供給する第1の処理ガス供給部及び第2の処理ガス供給部と、
基板に対してプラズマ処理を行うために、前記真空容器内にプラズマ発生用ガスを供給するプラズマ発生ガス供給部と、
前記回転テーブル上にてプラズマ発生ガスを誘導結合によりプラズマ化するように、当該回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナと、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止するために、各々アンテナと直交する方向に伸びるスリットがアンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記成膜装置は、以下のように構成しても良い。前記アンテナ及び前記ファラデーシールドは、プラズマ処理を行う領域から誘電体により気密に区画されている構成。
前記回転テーブルに連通するように前記真空容器の天板に形成された開口部と、
前記アンテナが収納され、前記開口部に嵌合すると共に当該開口部の口縁部との間にシール部が形成された誘電体からなる筐体と、を備えた構成。
前記分離領域に分離ガスを供給するための分離ガス供給部を設け、
前記筐体の下面側の周縁部には、第1の処理ガス、第2の処理ガス及び分離ガスが前記筐体の下方領域へ侵入することを抑えるために、周方向に亘って下方側に伸び出すガス規制用の突起部が形成された構成。
【0009】
前記回転テーブルの周囲には、横方向に気流が形成される凹部状の気流通路が周方向に亘ってリング状に形成され、
この気流通路に各々連通するように、前記回転テーブルの回転方向において第1の処理ガスの供給される第1の処理領域の下流側と、前記プラズマ発生用ガスの供給されるプラズマ領域の下流側と、には夫々第1の排気口及び第2の排気口が形成され、
前記気流通路には、当該気流通路に露出する前記真空容器の内壁部を保護するためのリング状のカバー体が設けられている構成。
前記アンテナは、鉛直軸回りに巻回されると共に、平面的に見た時に前記回転テーブルの回転中心側から外周側に向かって広がるように扇状に配置されている構成。
【0010】
前記プラズマ発生ガス供給部は、前記回転テーブルの半径方向に伸びると共に側面に複数のガス吐出口の形成されたガスノズルであり、
前記プラズマ発生ガス供給部は、前記筐体の下方領域において前記回転テーブルの回転方向上流側に配置され、
前記ガス吐出口の各々は、前記回転テーブルの回転方向上流側からの前記下方領域への分離ガスの侵入を抑えるために、前記上流側を各々向いている構成。前記プラズマ発生用ガス供給部は、前記第2の処理ガス供給部を兼用している構成。前記回転テーブルの中心部側における前記スリットは、基板に対して行われるプラズマ処理の度合いを前記回転テーブルの半径方向において揃えるために、前記回転テーブルの外縁部側よりも開口面積が小さくなるように形成されている構成。
【0011】
本発明の成膜方法は、
真空容器内にて第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給するサイクルを複数回行って基板に成膜処理を行う成膜方法において、
真空容器内に設けられた回転テーブルの一面側の基板載置領域に基板を水平に載置すると共に、この基板載置領域を公転させる工程と、
次いで、前記回転テーブルの周方向に互いに分離領域を介して離間した領域に夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを供給する工程と、
基板に対してプラズマ処理を行うために、前記真空容器内にプラズマ発生用ガスを供給する工程と、
前記回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナによって、プラズマ発生ガスを誘導結合によりプラズマ化する工程と、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、各々アンテナと直交する方向に伸びるスリットがアンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドにより、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
前記プラズマ化する工程は、プラズマ処理を行う領域から誘電体により気密に区画された前記アンテナにより、前記真空容器内のプラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程であり、
前記阻止する工程は、プラズマ処理を行う領域から前記誘電体により気密に区画された前記ファラデーシールドにより、前記電界成分の通過を阻止する工程であっても良い。
前記プラズマ化する工程は、前記回転テーブルに連通するように前記真空容器の天板に形成された開口部内に、この開口部に嵌合すると共に当該開口部の口縁部との間にシール部が形成された誘電体からなる筐体を配置し、この筐体内に収納された前記アンテナによりプラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程であっても良い。前記電界成分の通過を阻止する工程は、基板に対して行われるプラズマ処理の度合いを前記回転テーブルの半径方向において揃えるために、前記回転テーブルの外縁部側よりも前記回転テーブルの中心部側において開口面積が小さくなるように形成された前記スリットを有する前記ファラデーシールドを用いて行われる工程であっても良い。
【0013】
本発明の記憶媒体は、
真空容器内にて複数種類の処理ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、前記成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、真空容器内において回転テーブルを回転させることにより、第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給して反応生成物を基板上に形成した後、アンテナにより基板に対して誘導結合プラズマを供給し、薄膜の形成途中あるいは薄膜の形成後に薄膜の改質を行っている。この時、ファラデーシールドをアンテナの下方側に設けて、当該アンテナにおいて発生する電磁界における電界成分が前記真空容器の内部に到達することを阻止している。そのため、基板へのプラズマによる電気的なダメージを抑えつつ、膜質の良好な薄膜を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の成膜装置の一例を示す縦断面である。
【図2】前記成膜装置の横断断面図である。
【図3】前記成膜装置の横断平面図である。
【図4】前記成膜装置の内部の一部を示す分解斜視図である。
【図5】前記成膜装置の内部の一部を示す縦断面図である。
【図6】前記成膜装置の内部の一部を示す斜視図である。
【図7】前記成膜装置の内部の一部を示す縦断面図である。
【図8】前記成膜装置の内部の一部を示す平面図である。
【図9】前記成膜装置のファラデーシールドの一部を示す斜視図である。
【図10】前記成膜装置のサイドリングを示す分解斜視図である。
【図11】前記成膜装置のラビリンス構造部の一部を示す縦断面図である。
【図12】前記成膜装置におけるガスの流れを示す模式図である。
【図13】前記成膜装置におけるプラズマの発生の様子を示す模式図である。
【図14】前記成膜装置の他の例の一部を示す斜視図である。
【図15】前記他の例における成膜装置の一部を示す平面図である。
【図16】前記成膜装置の更に別の例を示す平面図である。
【図17】前記成膜装置の更に他の例を示す平面図である。
【図18】前記成膜装置の別の例の一部を示す縦断面図である。
【図19】前記成膜装置の別の例の一部を示す縦断面図である。
【図20】前記成膜装置の別の例の一部を示す縦断面図である。
【図21】前記成膜装置の別の例の一部を示す斜視図である。
【図22】前記成膜装置の別の例の一部を示す平面図である。
【図23】既述のファラデーシールドを示す平面図である。
【図24】前記ファラデーシールドの他の例を示す平面図である。
【図25】前記ファラデーシールドの更に他の例を示す平面図である。
【図26】前記ファラデーシールドの別の例を示す平面図である。
【図27】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図28】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図29】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図30】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図31】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図32】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図33】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図34】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図35】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図36】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図37】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図38】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図39】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図40】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態の成膜装置の一例について、図1〜図11を参照して説明する。この成膜装置は、図1及び図2に示すように、平面形状が概ね円形である真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。そして、この成膜装置では、後で詳述するように、ALD法によりウエハWの表面に反応生成物を積層して薄膜を成膜すると共に、この薄膜に対してプラズマ改質を行うように構成されている。この時、プラズマ改質を行うにあたって、プラズマによって電気的なダメージがウエハWに加わらないように、あるいは前記ダメージができるだけ小さくなるように、前記成膜装置が構成されている。続いて、成膜装置の各部について詳述する。
【0017】
真空容器1は、天板11及び容器本体12を備えており、天板11が容器本体12から着脱できるように構成されている。天板11の上面側における中央部には、真空容器1内の中心部領域Cにおいて互いに異なる処理ガス同士が混ざり合うことを抑制するために、N2(窒素)ガスを分離ガスとして供給するための分離ガス供給管51が接続されている。図1中13は、容器本体12の上面の周縁部にリング状に設けられたシール部材例えばOリングである。
【0018】
回転テーブル2は、中心部にて概略円筒形状のコア部21に固定されており、このコア部21の下面に接続されると共に鉛直方向に伸びる回転軸22によって、鉛直軸回りこの例では時計回りに回転自在に構成されている。図1中23は回転軸22を鉛直軸回りに回転させる駆動部であり、20は回転軸22及び駆動部23を収納するケース体である。このケース体20は、上面側のフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられている。また、このケース体20には、回転テーブル2の下方領域にN2ガスをパージガスとして供給するためのパージガス供給管72が接続されている。真空容器1の底面部14におけるコア部21の外周側は、回転テーブル2に下方側から近接するようにリング状に形成されて突出部12aをなしている。
【0019】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように、回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板であるウエハWを載置するための円形状の凹部24が基板載置領域として設けられている。凹部24は、直径寸法が例えば300mmサイズのウエハWを当該凹部24に落とし込む(収納する)と、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが揃うように、直径寸法及び深さ寸法が設定されている。凹部24の底面には、ウエハWを下方側から突き上げて昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0020】
図2及び図3に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する位置には、各々例えば石英からなる5本のノズル31、32、34、41、42が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて放射状に配置されている。これら各ノズル31、32、34、41、42は、例えば真空容器1の外周壁から中心部領域Cに向かってウエハWに対向して水平に伸びるように各々取り付けられている。この例では、後述の搬送口15から見て時計回り(回転テーブル2の回転方向)にプラズマ発生用ガスノズル34、分離ガスノズル41、第1の処理ガスノズル31、分離ガスノズル42及び第2の処理ガスノズル32がこの順番で配列されている。プラズマ発生用ガスノズル34の上方側には、図1に示すように、当該プラズマ発生用ガスノズル34から吐出されるガスをプラズマ化するために、プラズマ発生部80が設けられている。このプラズマ発生部80については後で詳述する。
【0021】
処理ガスノズル31、32は、夫々第1の処理ガス供給部、第2の処理ガス供給部をなし、分離ガスノズル41、42は、各々分離ガス供給部をなしている。尚、図2はプラズマ発生用ガスノズル34が見えるようにプラズマ発生部80及び後述の筐体90を取り外した状態、図3はこれらプラズマ発生部80及び筐体90を取り付けた状態を表している。また、図1では、プラズマ発生部80について、模式的に一点鎖線で示している。
【0022】
各ノズル31、32、34、41、42は、流量調整バルブを介して夫々以下の各ガス供給源(図示せず)に夫々接続されている。即ち、第1の処理ガスノズル31は、Si(シリコン)を含む第1の処理ガス例えばBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン、SiH2(NH−C(CH3)3)2)ガスなどの供給源に接続されている。第2の処理ガスノズル32は、第2の処理ガス例えばO3(オゾン)ガスとO2(酸素)ガスとの混合ガスの供給源に接続されている。プラズマ発生用ガスノズル34は、例えばAr(アルゴン)ガスとO2ガスとの混合ガス(Ar:O2=100:0.5〜100:20程度の体積比)の供給源に接続されている。分離ガスノズル41、42は、分離ガスであるN2(窒素)ガスのガス供給源に各々接続されている。尚、以下においては、便宜上第2の処理ガスをO3ガスとして説明する。また、第2の処理ガスノズル32にはO3ガスを生成させるためのオゾナイザーが設けられているが、ここでは図示を省略している。
【0023】
ガスノズル31、32、41、42の下面側には、回転テーブル2の半径方向に沿って複数箇所にガス吐出孔33が例えば等間隔に形成されている。プラズマ発生用ガスノズル34の側面には、回転テーブル2の回転方向上流側(第2の処理ガスノズル32側)且つ下方側(斜め下)を向くように、当該プラズマ発生用ガスノズル34の長さ方向に沿って例えば開口径が0.3〜0.5mmのガス吐出孔33が複数箇所に例えば等間隔で形成されている。このようにプラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔33の向きを設定した理由については、後で説明する。これら各ノズル31、32、34、41、42は、当該ノズル31、32、34、41、42の下端縁と回転テーブル2の上面との離間距離が例えば1〜5mm程度となるように配置されている。
【0024】
処理ガスノズル31、32の下方領域は、夫々Si含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1及びウエハWに吸着したSi含有ガスとO3ガスとを反応させるための第2の処理領域P2となる。分離ガスノズル41、42は、各々第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離する分離領域Dを形成するためのものである。この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には、図2及び図3に示すように、概略扇形の凸状部4が設けられており、分離ガスノズル41、42は、この凸状部4に形成された溝部43内に収められている。従って、分離ガスノズル41、42における回転テーブル2の周方向両側には、各処理ガス同士の混合を阻止するために、前記凸状部4の下面である低い天井面44(第1の天井面)が配置され、この天井面44の前記周方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が配置されている。凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は、各処理ガス同士の混合を阻止するために、回転テーブル2の外端面に対向すると共に容器本体12に対して僅かに離間するように、L字型に屈曲している。
【0025】
次に、既述のプラズマ発生部80について詳述する。このプラズマ発生部80は、例えば銅(Cu)などの金属線からなるアンテナ83をコイル状に巻回して構成されており、真空容器1の内部領域から気密に区画されるように、当該真空容器1の天板11上に設けられている。この例では、アンテナ83は、銅の表面にニッケルメッキ及び金メッキをこの順番で施した材質により構成されている。具体的には、図4に示すように、既述のプラズマ発生用ガスノズル34の上方側(詳しくはこのノズル34よりも僅かに回転テーブル2の回転方向上流側の位置からこのノズル34の前記回転方向下流側の分離領域Dよりも僅かにノズル34側に寄った位置まで)における天板11には、平面的に見た時に概略扇形に開口する開口部11aが形成されている。
【0026】
この開口部11aは、回転テーブル2の回転中心から例えば60mm程度外周側に離間した位置から、回転テーブル2の外縁よりも80mm程度外側に離れた位置までに亘って形成されている。また、開口部11aは、真空容器1の中心部領域Cに設けられた後述のラビリンス構造部110に干渉しない(避ける)ように、平面で見た時に回転テーブル2の中心側における端部が当該ラビリンス構造部110の外縁に沿うように円弧状に窪んでいる。そして、この開口部11aは、図4及び図5に示すように、天板11の上端側から下端側に向かって当該開口部11aの開口径が段階的に小さくなるように、例えば3段の段部11bが周方向に亘って形成されている。これら段部11bのうち最下段の段部(口縁部)11bの上面には、図5に示すように、周方向に亘って溝11cが形成されており、この溝11c内にはシール部材例えばO−リング11dが配置されている。尚、溝11c及びO−リング11dについては、図4では図示を省略している。
【0027】
この開口部11aには、図6にも示すように、上方側の周縁部が周方向に亘ってフランジ状に水平に伸び出してフランジ部90aをなすと共に、中央部が下方側の真空容器1の内部領域に向かって窪むように形成された筐体90が配置されている。この筐体90は、例えば石英などの誘電体により構成された透磁体(磁力を透過させる材質)であり、図9に示すように、前記窪んだ部分の厚み寸法tが例えば20mmとなっている。また、この筐体90は、当該筐体90の下方にウエハWが位置した時に、中心部領域C側における筐体90の内壁面とウエハWの外縁との間の距離が70mmとなり、回転テーブル2の外周側における筐体90の内壁面とウエハWの外縁との間の距離が70mmとなるように構成されている。従って、回転テーブル2の回転方向上流側及び下流側における開口部11aの2つの辺と当該回転テーブル2の回転中心とのなす角度αは、例えば68°となっている。
【0028】
この筐体90を既述の開口部11a内に落とし込むと、フランジ部90aと段部11bのうち最下段の段部11bとが互いに係止する。そして、既述のO−リング11dによって、当該段部11b(天板11)と筐体90とが気密に接続される。また、開口部11aの外縁に沿うように枠状に形成された押圧部材91によって前記フランジ部90aを下方側に向かって周方向に亘って押圧すると共に、この押圧部材91を図示しないボルトなどにより天板11に固定することにより、真空容器1の内部雰囲気が気密に設定される。このように筐体90を天板11に気密に固定した時の当該筐体90の下面と回転テーブル2上のウエハWの表面との間の離間寸法hは、4〜60mmこの例では30mmとなっている。尚、図6は、筐体90を下方側から見た図を示している。
【0029】
筐体90の下面は、当該筐体90の下方領域へのN2ガスやO3ガスなどの侵入を阻止するために、図1及び図5〜図7に示すように、外縁部が周方向に亘って下方側(回転テーブル2側)に垂直に伸び出して、ガス規制用の突起部92をなしている。そして、この突起部92の内周面、筐体90の下面及び回転テーブル2の上面により囲まれた領域には、回転テーブル2の回転方向上流側に、既述のプラズマ発生用ガスノズル34が収納されている。
【0030】
即ち、筐体90の下方領域(プラズマ空間10)においてプラズマ発生用ガスノズル34から供給されるガスがプラズマ化されるので、当該下方領域にN2ガスが侵入すると、N2ガスのプラズマとO3ガス(O2ガス)のプラズマとが互いに反応してNOxガスが生成する。このNOxガスが発生すると、真空容器1内の部材が腐食してしまう。そこで、筐体90の下方領域にN2ガスが侵入しにくくなるように、当該筐体90の下面側に既述の突起部92を形成している。
【0031】
プラズマ発生用ガスノズル34の基端側(真空容器1の側壁側)における突起部92は、当該プラズマ発生用ガスノズル34の外形に沿うように概略円弧状に切りかかれている。突起部92の下面と回転テーブル2の上面との間の離間寸法dは、0.5〜4mmこの例では2mmとなっている。この突起部92の幅寸法及び高さ寸法は、夫々例えば10mm及び28mmとなっている。尚、図7は、回転テーブル2の回転方向に沿って真空容器1を切断した縦断面図を示している。
【0032】
また、成膜処理中には回転テーブル2が時計回りに回転するので、N2ガスがこの回転テーブル2の回転に連れられて回転テーブル2と突起部92との間の隙間から筐体90の下方側に侵入しようとする。そのため、前記隙間を介して筐体90の下方側へのN2ガスの侵入を阻止するために、前記隙間に対して筐体90の下方側からガスを吐出させている。具体的には、プラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔33について、図5及び図7に示すように、この隙間を向くように、即ち回転テーブル2の回転方向上流側且つ下方を向くように配置している。鉛直軸に対するプラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔33の向く角度θは、図7に示すように例えば45°程度となっている。
【0033】
ここで、筐体90の下方(プラズマ空間10)側から天板11と筐体90との間の領域をシールする既述のO−リング11dを見ると、図5に示すように、当該プラズマ空間10とO−リング11dとの間には突起部92が周方向に亘って形成されている。そのため、O−リング11dは、プラズマに直接曝されないように、プラズマ空間10から隔離されていると言える。従って、プラズマ空間10中のプラズマが例えばO−リング11d側に拡散しようとしても、突起部92の下方を経由して行くことになるので、O−リング11dに到達する前にプラズマが失活することになる。
【0034】
筐体90の内部(筐体90において下方側に窪んだ領域)には、当該筐体90の内部形状に概略沿うように形成された厚み寸法kが例えば1mm程度の導電性の板状体である金属板からなる、接地されたファラデーシールド95が収納されている。この例では、ファラデーシールド95は、銅(Cu)板または銅板にニッケル(Ni)膜及び金(Au)膜とを下側からメッキした板材により構成されている。即ち、このファラデーシールド95は、筐体90の底面に沿うように水平に形成された水平面95aと、この水平面95aの外周端から周方向に亘って上方側に伸びる垂直面95bと、を備えており、上方側から見た時に筐体90の内縁に沿って概略扇状となるように構成されている。このファラデーシールド95は、例えば金属板の圧延加工により、あるいは金属板における水平面95aの外側に対応する領域を上方側に折り曲げることにより形成されている。
【0035】
また、回転テーブル2の回転中心からファラデーシールド95を見た時の右側及び左側におけるファラデーシールド95の上端縁は、夫々右側及び左側に水平に伸び出して支持部96をなしている。そして、ファラデーシールド95を筐体90の内部に収納すると、ファラデーシールド95の下面と筐体90の上面とが互いに接触すると共に、前記支持部96が筐体90のフランジ部90aにより支持される。この水平面95a上には、ファラデーシールド95の上方に載置されるプラズマ発生部80との絶縁を取るために、厚み寸法が例えば2mm程度の例えば石英からなる絶縁板94が積層されている。前記水平面95aには、多数のスリット97が形成されているが、このスリット97の形状や配置レイアウトについては、プラズマ発生部80のアンテナ83の形状と併せて詳述する。尚、絶縁板94については、後述の図8及び図9などでは描画を省略している。
【0036】
プラズマ発生部80は、ファラデーシールド95の内部に収納されるように構成されており、従って図4及び図5に示すように、筐体90、ファラデーシールド95及び絶縁板94を介して真空容器1の内部(回転テーブル2上のウエハW)を臨むように配置されている。このプラズマ発生部80は、既述のようにアンテナ83を鉛直軸回りに巻回して構成されており、この例では2つのプラズマ発生部80、80が設けられている。各々のプラズマ発生部81、82は、アンテナ83が各々3重に巻回されている。これら2つのプラズマ発生部80、80のうち一方を第1のプラズマ発生部81、他方を第2のプラズマ発生部82と呼ぶと、第1のプラズマ発生部81は、図4及び図5に示すように、平面的に見た時に筐体90の内縁に沿うように概略扇状となっている。また、第1のプラズマ発生部81は、当該第1のプラズマ発生部81の下方にウエハWが位置した時に、このウエハWにおける中心部領域C側の端部と回転テーブル2の外縁側の端部との間に亘ってプラズマを照射(供給)できるように、中心部領域C側及び外周側の端部が各々筐体90の内壁面に近接するように配置されている。尚、アンテナ83内部には冷却水の通流する流路が形成されているが、ここでは省略している。
【0037】
第2のプラズマ発生部82は、回転テーブル2の半径方向外周側においてウエハWにプラズマを供給できるように、回転テーブル2上のウエハWの中心位置から200mm程度外周側に離間した位置と、回転テーブル2の外縁から90mm程度外周側に離間した位置と、の間に配置されている。即ち、回転テーブル2が回転すると、中心部側に比べて外周部側では周速度が速くなる。そのため、外周部側では内周部側よりもウエハWに供給されるプラズマの量が少なくなる場合がある。そこで、回転テーブル2の半径方向においてウエハWに供給されるプラズマの量を揃えるために、いわば第1のプラズマ発生部81によってウエハWに供給されるプラズマの量を補償するために、第2のプラズマ発生部82を設けている。
【0038】
第1のプラズマ発生部81及び第2のプラズマ発生部82における夫々のアンテナ83は、各々整合器84を介して周波数が例えば13.56MHz及び出力電力が例えば5000Wの高周波電源85に個別に接続されており、第1のプラズマ発生部81及び第2のプラズマ発生部82に対して独立して高周波電力を調整できるように構成されている。尚、図3などにおいては整合器84及び高周波電源85について簡略化している。また、図1、図3及び図4などおける86は、各々のプラズマ発生部81、82と整合器84及び高周波電源85とを電気的に接続するための接続電極である。
【0039】
ここで、既述のファラデーシールド95のスリット97について詳述する。このスリット97は、各々のプラズマ発生部81、82において発生する電界及び磁界(電磁界)のうち電界成分が下方のウエハWに向かうことを阻止すると共に、磁界をウエハWに到達させるためのものである。即ち、電界がウエハWに到達すると、当該ウエハWの内部に形成されている電気配線が電気的にダメージを受けてしまう場合がある。一方、ファラデーシールド95は、既述のように接地された金属板により構成されているので、スリット97を形成しないと、電界に加えて磁界も遮断してしまう。また、アンテナ83の下方に大きな開口部を形成すると、磁界だけでなく電界も通過してしまう。そこで、電界を遮断して磁界を通過させるために、以下のように寸法及び配置レイアウトを設定したスリット97を形成している。
【0040】
具体的には、スリット97は、図8に示すように、第1のプラズマ発生部81及び第2のプラズマ発生部82の各々のアンテナ83の巻回方向に対して直交する方向に伸びるように、周方向に亘ってアンテナ83の下方位置に各々形成されている。従って、例えば回転テーブル2の半径方向に沿ってアンテナ83が配置された領域においては、スリット97は回転テーブル2の接線方向あるいは円周方向に沿うように直線状または円弧状に形成されている。また、回転テーブル2の外縁に沿うように円弧状にアンテナ83が配置された領域においては、スリット97は回転テーブル2の回転中心から外縁に向かう方向に直線状に形成されている。そして、前記2つの領域間においてアンテナ83が屈曲する部分では、スリット97は当該屈曲する部分におけるアンテナ83の伸びる方向に対して直交するように、回転テーブル2の周方向及び半径方向に対して各々傾斜する向きに形成されている。従って、スリット97は、アンテナ83の伸びる方向に沿って多数配列されている。
【0041】
ここで、アンテナ83には、既述のように周波数が13.56MHzの高周波電源85が接続されており、この周波数に対応する波長は22mである。そのため、スリット97は、この波長の1/10000以下程度の幅寸法となるように、図9に示すように、幅寸法d1が1〜5mmこの例では2mm、スリット97、97間の離間寸法d2が1〜5mmこの例では2mmとなるように形成されている。また、このスリット97は、既述の図8に示すように、アンテナ83の伸びる方向から見た時に、長さ寸法が例えば各々60mmとなるように、当該アンテナ83の右端よりも30mm程度右側に離間した位置から、アンテナ83の左端よりも30mm程度左側に離間した位置までに亘って形成されている。これらスリット97の形成領域から外れた領域、即ちアンテナ83の巻回された領域の中央側には、回転テーブル2の回転中心側及び外周側においてファラデーシールド95に開口部98が形成されている。尚、図3ではスリット97を省略している。また、図4及び図5などではスリット97について簡略化しているが、スリット97は例えば150本程度形成されている。スリット97は、開口部98に近接する領域から当該開口部98から離れた領域に向かうにつれて、幅寸法d1が広がるように形成されているが、ここでは図示を省略している。
【0042】
続いて、真空容器1の各部の説明に戻る。回転テーブル2の外周側において当該回転テーブル2よりも僅かに下位置には、図2、図5及び図10に示すように、カバー体であるサイドリング100が配置されている。このサイドリング100は、例えば装置のクリーニング時において、各処理ガスに代えてフッ素系のクリーニングガスを通流させた時に、当該クリーニングガスから真空容器1の内壁を保護するためのものである。即ち、サイドリング100を設けないと、回転テーブル2の外周部と真空容器1の内壁との間には、横方向に気流(排気流)が形成される凹部状の気流通路が周方向に亘ってリング状に形成されていると言える。そのため、このサイドリング100は、気流通路に真空容器1の内壁面ができるだけ露出しないように、当該気流通路に設けられている。この例では、各分離領域D及び筐体90における外縁側の領域は、このサイドリング100の上方側に露出している。
【0043】
サイドリング100の上面には、互いに周方向に離間するように2箇所に排気口61、62が形成されている。言い換えると、前記気流通路の下方側に2つの排気口が形成され、これら排気口に対応する位置におけるサイドリング100に、排気口61、62が形成されている。これら2つの排気口61、62のうち一方及び他方を夫々第1の排気口61及び第2の排気口62と呼ぶと、第1の排気口61は、第1の処理ガスノズル31と、当該第1の処理ガスノズル31よりも回転テーブルの回転方向下流側における分離領域Dとの間において、当該分離領域D側に寄った位置に形成されている。第2の排気口62は、プラズマ発生用ガスノズル34と、当該プラズマ発生用ガスノズル34よりも回転テーブルの回転方向下流側における分離領域Dとの間において、当該分離領域D側に寄った位置に形成されている。第1の排気口61は、第1の処理ガス及び分離ガスを排気するためのものであり、第2の排気口62は、第2の処理ガス及び分離ガスに加えて、プラズマ発生用ガスを排気するためのものである。これら第1の排気口61及び第2の排気口62は、図1に示すように、各々バタフライバルブなどの圧力調整部65の介設された排気管63により、真空排気機構である例えば真空ポンプ64に接続されている。
【0044】
ここで、既述のように、中心部領域C側から外縁側に亘って筐体90を形成しているので、この筐体90よりも回転テーブル2の回転方向上流側に吐出された各ガスは、当該筐体90によって第2の排気口62に向かおうとするガス流がいわば規制されてしまう。そこで、筐体90の外側における既述のサイドリング100の上面に、第2の処理ガス及び分離ガスが流れるための溝状のガス流路101を形成している。具体的には、このガス流路101は、図3に示すように、筐体90における回転テーブル2の回転方向上流側の端部よりも例えば60mm程度第2の処理ガスノズル32側に寄った位置から、既述の第2の排気口62までの間に亘って、深さ寸法が例えば30mmとなるように円弧状に形成されている。従って、このガス流路101は、筐体90の外縁に沿うように、また上方側から見た時に当該筐体90の外縁部に跨がるように形成されている。このサイドリング100は、図示を省略しているが、フッ素系ガスに対する耐腐食性を持たせるために、表面が例えばアルミナなどによりコーティングされているか、あるいは石英カバーなどにより覆われている。
【0045】
天板11の下面における中央部には、図2に示すように、凸状部4における中心部領域C側の部位と連続して周方向に亘って概略リング状に形成されると共に、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成された突出部5が設けられている。この突出部5よりも回転テーブル2の回転中心側におけるコア部21の上方側には、中心部領域Cにおいて第1の処理ガスと第2の処理ガスとが互いに混ざり合うことを抑制するためのラビリンス構造部110が配置されている。即ち、既述の図1から分かるように、筐体90を中心部領域C側に寄った位置まで形成しているので、回転テーブル2の中央部を支持するコア部21は、回転テーブル2の上方側の部位が筐体90を避けるように前記回転中心側に寄った位置に形成されている。従って、中心部領域C側では、外縁部側よりも例えば処理ガス同士が混ざりやすい状態となっていると言える。そこで、ラビリンス構造部110を形成することにより、ガスの流路を稼いで処理ガス同士が混ざり合うことを防止している。
【0046】
具体的には、このラビリンス構造部110は、図11に当該ラビリンス構造部110を拡大して示すように、回転テーブル2側から天板11側に向かって垂直に伸びる第1の壁部111と、天板11側から回転テーブル2に向かって垂直に伸びる第2の壁部112と、が各々周方向に亘って形成されると共に、これら壁部111、112が回転テーブル2の半径方向において交互に配置された構造を採っている。具体的には、既述の突出部5側から中心部領域C側に向かって、第2の壁部112、第1の壁部111及び第2の壁部112がこの順番で配置されている。この例では、突出部5側の第2の壁部112は、他の壁部111、112よりも当該突出部5側に膨らんだ構造となっている。このような壁部111、112の各寸法について一例を挙げると、壁部111、112間の離間寸法jは例えば1mm、壁部111と天板11との間の離間寸法(壁部112とコア部21との間の隙間寸法)mは例えば1mmとなっている。
【0047】
従って、ラビリンス構造部110では、例えば第1の処理ガスノズル31から吐出されて中心部領域Cに向かおうとする第1の処理ガスは、壁部111、112を乗り越えていく必要があるので、中心部領域Cに向かうにつれて流速が遅くなり、拡散しにくくなる。そのため、処理ガスが中心部領域Cに到達する前に、当該中心部領域Cに供給される分離ガスにより処理領域P1側に押し戻されることになる。また、中心部領域Cに向かおうとする第2の処理ガスについても、同様にラビリンス構造部110によって中心部領域Cに到達しにくくなる。そのため、これら処理ガス同士が中心部領域Cにおいて互いに混ざり合うことが防止される。
【0048】
一方、この中心部領域Cに上方側から供給されたN2ガスは、周方向に勢いよく広がって行こうとするが、ラビリンス構造部110を設けているので、当該ラビリンス構造部110における壁部111、112を乗り越えるうちに流速が抑えられていく。この時、前記N2ガスは、例えば回転テーブル2と突起部92との間の極めて狭い領域へも侵入しようとするが、ラビリンス構造部110により流速が抑えられているので、当該狭い領域よりも広い領域(例えば処理領域P1、P2側)に流れて行く。そのため、筐体90の下方側へのN2ガスの流入が抑えられる。また、後述するように、筐体90の下方側の空間(プラズマ空間10)は、真空容器1内の他の領域よりも陽圧に設定されていることからも、当該空間へのN2ガスの流入が抑えられている。
【0049】
回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図1に示すように、加熱機構であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWを例えば300℃に加熱するようになっている。図1中71aはヒータユニット7の側方側に設けられたカバー部材、7aはこのヒータユニット7の上方側を覆う覆い部材である。また、真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側において、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が周方向に亘って複数箇所に設けられている。
【0050】
真空容器1の側壁には、図2及び図3に示すように図示しない外部の搬送アームと回転テーブル2との間においてウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15はゲートバルブGより気密に開閉自在に構成されている。また、回転テーブル2の凹部24は、この搬送口15に臨む位置にて搬送アームとの間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位には、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0051】
また、この成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部120が設けられており、この制御部120のメモリ内には後述の成膜処理及び改質処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは、後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部121から制御部120内にインストールされる。
【0052】
次に、上述実施の形態の作用について説明する。先ず、ゲートバルブGを開放して、回転テーブル2を間欠的に回転させながら、図示しない搬送アームにより搬送口15を介して回転テーブル2上に例えば5枚のウエハWを載置する。このウエハWには、ドライエッチング処理やCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いた配線埋め込み工程が既に施されており、従って当該ウエハWの内部には電気配線構造が形成されている。次いで、ゲートバルブGを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内を引き切りの状態にすると共に、回転テーブル2を例えば120rpmで時計回りに回転させながらヒータユニット7によりウエハWを例えば300℃に加熱する。
【0053】
続いて、処理ガスノズル31、32から夫々Si含有ガス及びO3ガスを吐出すると共に、プラズマ発生用ガスノズル34からArガス及びO2ガスの混合ガスを例えば5slmで吐出する。また、分離ガスノズル41、42から分離ガスを所定の流量で吐出し、分離カス供給管51及びパージガス供給管72、72からもN2ガスを所定の流量で吐出する。そして、圧力調整部65により真空容器1内を予め設定した処理圧力例えば400〜500Paこの例では500Paに調整する。また、各々のプラズマ発生部81、82に対して、例えば夫々1500W及び1000Wとなるように高周波電力を供給する。
【0054】
この時、筐体90よりも回転テーブル2の回転方向上流側から例えば当該回転テーブル2の回転に連れられて当該筐体90に向かって通流してくるO3ガス及びN2ガスは、この筐体90によってガス流が乱されようとする。しかし、筐体90の外周側におけるサイドリング100にガス流路101を形成しているので、前記O3ガス及びN2ガスは、筐体90を避けるように、当該ガス流路101を通って排気される。
【0055】
一方、前記筐体90の上流側から当該筐体90に向かって通流してくるガスのうち一部のガスは、筐体90の下方に侵入しようとする。しかし、既述の筐体90の下方側の領域では、突起部92が当該領域を覆うように形成されると共に、プラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔33が回転テーブル2の回転テーブル2の回転方向上流側の斜め下を向いている。従って、プラズマ発生用ガスノズル34から吐出したプラズマ発生用ガスは、突起部92の下方側に衝突し、前記上流側から流入しようとするO3ガスやN2ガスをこの筐体90の外側へと追い出す。そして、このプラズマ発生用ガスは、突起部92により回転テーブル2の回転方向下流側へと押し戻されて行く。この時、既述の各ガス流量に設定することによって、また突起部92を設けていることによって、筐体90の下方におけるプラズマ空間10は、真空容器1内の他の領域よりも例えば10Pa程度陽圧となっている。このことからも、筐体90の下方側へのO3ガスやN2ガスの侵入が阻止される。
【0056】
そして、Si含有ガス及びO3ガスは、中心部領域Cに侵入しようとするが、この中心部領域Cには既述のラビリンス構造部110を設けているので、このラビリンス構造部110によって既述のようにガス流が阻害され、中心部領域Cに上方側から供給される分離ガスにより元の処理領域P1、P2側に押し戻されることになる。従って、中心部領域Cにおけるこれら処理ガス同士の混合が防止される。また、同様にラビリンス構造部110によって、中心部領域Cから外周側に吐出されるN2ガスについての筐体90の下方側への侵入が抑えられる。
【0057】
更に、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間においてN2ガスを供給しているので、図12に示すように、Si含有ガスとO3ガス及びプラズマ発生用ガスとが互いに混合しないように各ガスが排気されることとなる。また、回転テーブル2の下方側にパージガスを供給しているため、回転テーブル2の下方側に拡散しようとするガスは、前記パージガスにより排気口61、62側へと押し戻される。
【0058】
この時、プラズマ発生部80では、高周波電源85から供給される高周波電力により、図13に模式的に示すように、電界及び磁界が発生する。これら電界及び磁界のうち電界は、既述のようにファラデーシールド95を設けていることから、このファラデーシールド95により反射あるいは吸収(減衰)されて、真空容器1内への到達が阻害される(遮断される)。一方、磁界は、ファラデーシールド95にスリット97を形成しているので、このスリット97を通過して、筐体90の底面を介して真空容器1内に到達する。また、プラズマ発生部81、82の側方側におけるファラデーシールド95には周方向に亘ってスリット97が形成されていないので、電界及び磁界は、当該側方側を介して下方側に回り込まない。
【0059】
従って、プラズマ発生用ガスノズル34から吐出されたプラズマ発生用ガスは、スリット97を介して通過してきた磁界によって活性化されて、例えばイオンやラジカルなどのプラズマが生成する。この時、2つのプラズマ発生部81、82を設けていることから、真空容器1内に生成するプラズマの強度は、回転テーブル2の中心部側よりも外周部側の方が大きくなる。尚、図12ではプラズマ発生部81、82について模式的に示しており、これらプラズマ発生部81、82、ファラデーシールド95、筐体90及びウエハWの間の各寸法については模式的に大きく描画している。
【0060】
一方、ウエハWの表面では、回転テーブル2の回転によって第1の処理領域P1においてSi含有ガスが吸着し、次いで第2の処理領域P2においてウエハW上に吸着したSi含有ガスが酸化され、薄膜成分であるシリコン酸化膜(SiO2)の分子層が1層あるいは複数層形成されて反応生成物が形成される。この時、シリコン酸化膜中には、例えばSi含有ガス中に含まれる残留基のため、水分(OH基)や有機物などの不純物が含まれている場合がある。
【0061】
そして、回転テーブル2の回転によって、ウエハWの表面に既述のプラズマ(活性種)が接触すると、シリコン酸化膜の改質処理が行われることになる。具体的には、例えばプラズマがウエハWの表面に衝突することにより、例えばシリコン酸化膜から前記不純物が放出されたり、シリコン酸化膜内の元素が再配列されてシリコン酸化膜の緻密化(高密度化)が図られたりすることになる。
【0062】
この時、回転テーブル2が回転することにより、中心部側よりも外周部側において周速度が速くなっているので、当該外周部側では中心部側よりも改質の程度が小さくなろうとする。しかし、回転テーブル2の中心部側よりも外周部側においてプラズマの強度が強くなっていることから、回転テーブル2の半径方向において改質の度合いが揃う。こうして回転テーブル2の回転を続けることにより、ウエハW表面へのSi含有ガスの吸着、ウエハW表面に吸着したSi含有ガスの成分の酸化及び反応生成物のプラズマ改質がこの順番で多数回に亘って行われて、反応生成物が積層されて薄膜が形成される。
【0063】
ここで、既述のようにウエハWの内部には電気配線構造が形成されているが、プラズマ発生部80とウエハWとの間にファラデーシールド95を設けて電界を遮断しているので、この電気配線構造に対する電気的ダメージが抑えられる。
【0064】
上述の実施の形態によれば、プラズマ発生部80を設けて反応生成物の改質処理を行うにあたり、このプラズマ発生部80を筐体90の内部に収納すると共に、プラズマ発生部80とウエハWとの間にファラデーシールド95を設けている。そのため、プラズマ発生部80において発生する電界については遮断することができ、一方磁界についてはファラデーシールド95に形成されたスリット97を介して真空容器1内に到達させることができる。従って、プラズマによるウエハWの内部の電気配線構造に対する電気的ダメージを抑えて改質処理を行うことができるので、良好な膜質及び電気的特性を持つ薄膜を得ることができる。
【0065】
また、ファラデーシールド95を設けていることから、後述の実施例に示すように、プラズマによる筐体90などの石英部材へのダメージ(エッチング)を抑えることができる。そのため、前記石英部材のロングライフ化を図ることができ、またコンタミの発生を抑えることができるし、更には石英(SiO2)の薄膜(SiO2)中への混入による膜厚の不均一化を抑えることができる。
【0066】
更に、筐体90を設けているので、プラズマ発生部81、82を回転テーブル2上のウエハWに近接させることができる。そのため、成膜処理を行う程度の高い圧力雰囲気(低い真空度)であっても、プラズマ中のイオンやラジカルの失活を抑えて良好な改質処理を行うことができる。そして、筐体90に突起部92を設けているので、プラズマ空間10にO−リング11dが露出しない。そのため、O−リング11dに含まれる例えばフッ素系成分のウエハWへの混入を抑えることができ、また当該O−リング11dのロングライフ化を図ることができる。
【0067】
更にまた、筐体90の下面に突起部92を形成すると共に、プラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔33が回転テーブル2の回転方向上流側を向くようにしている。そのため、プラズマ発生用ガスノズル34から吐出するガス流量が既述のように小流量であっても、筐体90の下方領域へのO3ガスやN2ガスの侵入を抑えることができる。そして、プラズマ発生用ガスノズル34の配置された領域(プラズマ空間10)の圧力が他の領域(例えば処理領域P1、P2)の圧力よりも高くなるようにしている。以上のことから、プラズマ空間10におけるNOxガスの生成を抑えることができるので、NOxガスによる真空容器1内の部材の腐食を抑えることができ、そのためウエハWのメタルコンタミを抑制できる。そして、以上のようにO3ガスやN2ガスなどの筐体90の下方側への侵入を抑えることができるので、成膜処理と共に改質処理を共通の成膜装置で行うにあたって、例えば筐体90と第2の処理ガスノズル32との間に個別に排気口やポンプを設けなくて済むので、更にはこれら筐体90とノズル32との間に分離領域Dを設けなくて済むので、装置構成を簡略化できる。
【0068】
また、筐体90を配置するにあたって、当該筐体90の外周側におけるサイドリング100にガス流路101を形成しているので、この筐体90を避けて各ガスを良好に排気することができる。
更にまた、筐体90の内部にプラズマ発生部81、82を収納しているので、これらプラズマ発生部81、82を大気雰囲気の領域(真空容器1の外側領域)に配置することができ、従ってプラズマ発生部81、82のメンテナンスが容易となる。
【0069】
ここで、筐体90の内部にプラズマ発生部81、82を収納しているので、例えば中心部領域C側では、この筐体90の側壁の厚み寸法の分、プラズマ発生部81の端部が回転テーブル2の回転中心から離間することになる。そのため、中心部領域C側におけるウエハWの端部には、後述のシミュレーションの結果から分かるように、プラズマが到達しにくくなる。一方、中心部領域C側におけるウエハWの端部にプラズマが到達するように筐体90(プラズマ発生部81)を中心部領域C側に寄った位置にまで形成しようとすると、既述のように中心部領域Cが狭くなる。この場合には、処理ガス同士が中心部領域Cにおいて混ざり合ってしまうおそれがある。しかし、本発明では、中心部領域Cにラビリンス構造部110を形成し、ガス流路を稼いでいるので、回転テーブル2の半径方向に亘って広いプラズマ空間10を確保しながら、中心部領域Cにおける処理ガス同士の混合及び当該プラズマ空間10内へのN2ガスの流入を抑えることができる。
更にまた、プラズマ発生部81、82を設けて、回転テーブル2の半径方向においてウエハWの改質の度合いを揃えていることから、面内に亘って均質な膜質の薄膜を得ることができる。
【0070】
既述の例では、反応生成物の成膜と当該反応生成物の改質処理とを交互に行ったが、反応生成物を例えば70層(およそ10nmの膜厚)程度積層した後、これら反応生成物の積層体に対して改質処理を行っても良い。具体的には、Si含有ガス及びO3ガスを供給して反応生成物の成膜処理を行っている間はプラズマ発生部81、82への高周波電力の供給を停止する。そして、積層体の形成後、これらSi含有ガス及びO3ガスの供給を停止してプラズマ発生部81、82へ高周波電力を供給する。このようないわば一括改質の場合にも、既述の例と同様の効果が得られる。
【0071】
ここで、以上説明した成膜装置の他の例について列挙する。図14及び図15は、プラズマ発生部80を一つだけ設けると共に、当該プラズマ発生部80について、平面で見た時に概略方形(概略8角形)となるようにアンテナ83を配置した例を示している。この例においても、スリット97は、開口部98に近接する領域から当該開口部98から離れた領域に向かうにつれて、幅寸法d1が広がるように形成されているが図示を省略している。
【0072】
図16は、2つのプラズマ発生部81、82を図14及び図15のように概略方形となるように配置すると共に、プラズマ発生部81については回転テーブル2の半径方向内側に配置し、プラズマ発生部82については前記半径方向外側に配置した例を示している。この例では、これらプラズマ発生部81、82は、互いに同じ面積となるようにアンテナ83が各々巻回されている。尚、図16は、天板11を上方側から見た様子を示しており、これらプラズマ発生部81、82におけるアンテナ83を模式的に描画している。以下の図17についても同様である。
【0073】
図17は、図14及び図15のように2つのプラズマ発生部81、82を概略方形となるように配置すると共に、プラズマ発生部81については既述の図8と同様に回転テーブル2の半径方向に亘ってアンテナ83を配置し、一方プラズマ発生部82については回転テーブル2の外周部側に配置している。
図18は、既述のファラデーシールド95について、筐体90の内部に埋設した例を示している。具体的には、プラズマ発生部80の下方における筐体90は、上端面が着脱自在に構成されており、この上端面を取り外した部位にファラデーシールド95を収納できるように構成されている。即ち、ファラデーシールド95は、プラズマ発生部80とウエハWとの間に設けられていれば良い。
【0074】
図19は、プラズマ発生部80及びファラデーシールド95を筐体90の内部に収納することに代えて、これらプラズマ発生部80及びファラデーシールド95を天板11の上方に配置した例を示している。この例では、プラズマ発生部80の下方における天板11は、他の部位における天板11とは別部材として例えば石英などの誘電体により構成されており、下面周縁部が既述のように周方向に亘ってO−リング11dにより前記他の部位における天板11と気密に接続されている。
【0075】
図20は、サイドリング100を配置していない例を示している。即ち、サイドリング100は、例えば装置のクリーニング時に用いられるクリーニングガスが回転テーブル2の下方領域に回り込まないようにするためのものである。従って、クリーニングを行わない場合には、サイドリング100を設けなくても良い。
【0076】
図21は、アンテナ83を鉛直軸方向に巻回することに代えて、水平軸方向に巻回した例を示している。具体的には、このアンテナ83は、回転テーブル2の回転方向に沿って円弧状に伸びる軸の回りに巻回されている。尚、図21はアンテナ83及びファラデーシールド95以外については省略している。
【0077】
また、既述の例ではSiを含むガスとO3ガスとをウエハWにこの順番で供給して反応生成物を成膜した後、プラズマ発生部80により当該反応生成物の改質を行う例について説明したが、反応生成物を成膜する時に用いられるO3ガスをプラズマ化しても良い。即ち、図22に示すように、この例では既述の処理ガスノズル32が設けられておらず、ウエハW上に吸着したSi含有ガスの成分をプラズマ空間10において酸化して反応生成物を形成し、更にこのプラズマ空間10において当該反応生成物の改質を行うように構成されている。言い換えると、プラズマ空間10に供給されるプラズマ発生用のガスは、第2の処理ガスを兼用している。従って、プラズマ発生用ガスノズル34は、処理ガスノズル32を兼用している。このようにプラズマ空間10においてウエハWの表面に吸着したSi含有ガスの成分を酸化することにより、処理ガスノズル32のオゾナイザーが不要になるので、装置のコストを低減できる。また、ウエハWの直上位置においてO3ガスを生成させることにより、例えば処理ガスノズル32の長さ寸法の分だけO3ガスの流路を短くできるので、O3ガスの失活を抑えて前記Si含有の成分を良好に酸化できる。
【0078】
以上の各例において、ファラデーシールド95を構成する材質としては、磁界をできるだけ透過するように、比透磁率のなるべく低い材質が好ましく、具体的には、銀(Ag)、アルミニウム(Al)などを用いても良い。また、ファラデーシールド95のスリット97の数量としては、少なすぎると真空容器1内に到達する磁界が小さくなり、一方多すぎるとファラデーシールド95を製造しにくくなることから、例えばアンテナ83の長さ1mに対して100〜500本程度であることが好ましい。更に、プラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔33について、回転テーブル2の回転方向上流側を向くように形成したが、このガス吐出孔33を下方側あるいは下流側を向くように配置しても良い。
【0079】
筐体90を構成する材質としては、石英に代えて、アルミナ(Al2O3)、イットリアなどの耐プラズマエッチング材を用いても良いし、例えばパイレックスガラス(コーニング社の耐熱ガラス、商標)などの表面にこれら耐プラズマエッチング材をコーティングしても良い。即ち、筐体90はプラズマに対する耐性が高く、且つ磁界を透過する材質(誘電体)により構成すれば良い。
【0080】
また、ファラデーシールド95の上方に絶縁板94を配置して、当該ファラデーシールド95とアンテナ83(プラズマ発生部80)との絶縁を取るようにしたが、この絶縁板94を配置せずに、例えばアンテナ83を石英などの絶縁材により被覆するようにしても良い。
【0081】
また、既述の例では、Si含有ガスとO3ガスとを用いてシリコン酸化膜を成膜する例について説明したが、例えば第1の処理ガス及び第2の処理ガスとして夫々Si含有ガスとアンモニア(NH3)ガスとを用いて窒化シリコン膜を成膜しても良い。この場合には、プラズマを発生させるための処理ガスとしては、アルゴンガス及び窒素ガスまたはアンモニアガスなどが用いられる。
【0082】
更に、例えば第1の処理ガス及び第2の処理ガスとして夫々TiCl2(塩化チタン)ガスとNH3(アンモニア)ガスとを用いて窒化チタン(TiN)膜を成膜しても良い。この場合には、ウエハWとしてはチタンからなる基板が用いられ、プラズマを発生させるためのプラズマ生成ガスとしては、アルゴンガス及び窒素ガスなどが用いられる。また、3種類以上の処理ガスを順番に供給して反応生成物を積層するようにしても良い。具体的には、例えばSr(THD)2(ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト)やSr(Me5Cp)2(ビスペンタメチルシクロペンタジエニエルストロンチウム)等のSr原料と、例えばTi(OiPr)2(THD)2(チタニウムビスイソプロポキサイドビステトラメチルヘプタンジオナト)やTi(OiPr)(チタニウムテトライソプロポキサイド)等のTi原料と、をウエハWに供給した後、ウエハWにO3ガスを供給して、SrとTiとを含む酸化膜であるSTO膜からなる薄膜を積層しても良い。
また、分離領域Dにガスノズル41、42からN2ガスを供給したが、この分離領域Dとしては、各処理領域P1、P2間を区画する壁部を設けて、ガスノズル41、42を配置しなくても良い。
【0083】
更に、アンテナ83としては、真空容器1の内部領域から気密に区画された領域(筐体90の内部あるいは天板11上)に配置したが、真空容器1の内部領域に配置しても良い。具体的には、例えば天板11の下面よりも僅かに下方側にアンテナ83を配置しても良い。この場合には、プラズマによりアンテナ83がエッチングされないように、当該アンテナ83は、例えば石英などの誘電体により表面がコーティングされる。また、この場合においてファラデーシールド95は、同様にプラズマによりエッチングされないように、アンテナ83とウエハWとの間において石英などの誘電体により表面がコーティングされる。更に、アンテナ83としては、コイル状に巻回した構成以外にも、基端側が例えば真空容器1の外側から当該真空容器1内に気密に挿入されると共に、他端側が中心部領域Cに向かって直線状に伸びる構成であっても良い。
【0084】
以上の例において、各処理ガス(具体的には装置のメンテナンス時にノズル31、32から供給されるクリーニングガス)から真空容器1の内壁面及び天板11を保護するために、これら内壁面及び天板11よりも処理雰囲気側には、僅かな隙間を介して図示しない保護カバーが設けられている。そして、前記隙間の圧力が処理雰囲気よりも僅かに陽圧となるように、当該隙間に図示しないガス供給部からパージガスが供給されるように構成されているが、説明を省略している。
【0085】
ここで、回転テーブル2の中心部側と外周部側とにおいてプラズマ改質の度合いを揃えるにあたり、既述の図8では、回転テーブル2の半径方向に亘ってプラズマを発生させる第1のプラズマ発生部81に加えて前記外周部側においてプラズマを発生させる第2のプラズマ発生部82を設ける例について説明したが、2つのプラズマ発生部81、82を設けることに代えて、ファラデーシールド95のスリット97の配置レイアウトを調整しても良い。
【0086】
即ち、既に詳述したように、回転テーブル2上のウエハWから見ると、回転テーブル2の中心部側では外縁部側よりもプラズマの照射される時間が長い。そのため、中心部側では外縁部側よりもプラズマ改質の度合いが大きくなろうとする。そこで、回転テーブル2の半径方向に亘ってプラズマ改質の度合いを揃えるために、ファラデーシールド95のスリット97の配置レイアウトを調整しても良い。具体的には、真空容器1内のプラズマは、プラズマ発生部80において発生した電磁界のうち、ファラデーシールド95のスリット97を通過した磁界により発生する。そこで、以下の例では、プラズマ改質の度合いの大きな中心部側では、プラズマ改質の度合いの小さい外縁部側と比べて、真空容器1内に到達する磁界が小さくなるように、スリット97の開口面積を小さくしている。
【0087】
このような例について、既述の図15のように、アンテナ83を概略細長い八角形に形成すると共に、プラズマ発生部80を一つだけ(第1のプラズマ発生部81だけ)設けた場合について説明する。始めに、図15のスリット97の配置レイアウトについて、図23を参照して改めて説明する。各々のスリット97は、アンテナ83の長手方向(回転テーブル2の半径方向)においては、概略長方形となるように形成されており、アンテナ83が屈曲する部分(回転テーブル2の中心部側及び外縁部側)では、アンテナ83の巻回領域の外側から内側に向かう程、幅寸法d1が小さくなっていわばくさび形状をなしている。そして、この図23(図15)では、各スリット97は、回転テーブル2の中心部側及び外周部側において前記幅寸法d1が揃っている。尚、図23ではアンテナ83を破線で示しており、ファラデーシールド95以外の部位については記載を省略している。以下の図24〜図26についても同様である。
【0088】
続いて、回転テーブル2の半径方向においてプラズマ改質の度合いが揃うようにスリット97の配置レイアウトを調整した例について、以下に説明する。図24は、回転テーブル2の中心部側については、外縁部側の他のスリット97よりも長さ寸法の短い補助スリット97aを形成した例を示している。即ち、この補助スリット97aは、他のスリット97よりも長さ寸法が例えば20mm程度短くなっており、既述の開口部98に近接する位置からアンテナ83の下方位置よりも僅かにファラデーシールド95の外縁側に寄った位置までに亘って形成されている。そして、回転テーブル2の中心部側では、この補助スリット97aとスリット97とが交互に配置されており、補助スリット97aは9箇所に形成されている。
【0089】
従って、回転テーブル2の中心部側におけるアンテナ83の巻回領域よりも外側では、補助スリット97aの分だけスリット97、97間の離間寸法d2が他の部位よりも広くなっている。即ち、図24では、回転テーブル2の中心部側において外縁部側よりもスリット97の開口面積を小さくするにあたり、スリット97の長さ寸法を短く調整していると言える。
【0090】
このようにスリット97の配置レイアウトを調整することにより、後述の実施例にも示すように、回転テーブル2の半径方向においてプラズマ改質の度合いが揃う。そのため、例えばウエハWの面内においてプラズマ改質の度合いを揃えたい場合には図24のファラデーシールド95を用いることができるし、一方回転テーブル2の中心部側において外縁部側よりもプラズマ改質の度合いを強めたい場合には既述の図23のファラデーシールド95を用いることができ、従ってレシピやプロセスに応じてファラデーシールド95を選択できる。
この時、回転テーブル2の中心部側においては、補助スリット97aと共にスリット97を配置したが、スリット97に代えて補助スリット97aを設けて複数の補助スリット97aを並べても良いし、補助スリット97aの数量としては、10〜50箇所としても良い。
【0091】
また、アンテナ83を概略細長い八角形とすることにより、装置のコストを抑えることができる。即ち、筐体90は、既述のように、プラズマ発生部80において発生する磁界を真空容器1内に到達させるために、高純度の石英により構成されると共に、平面で見た時にアンテナ83よりも大きな寸法となるように(アンテナ83の下方側に亘って石英部材が位置するように)形成されている。従って、平面で見た時のアンテナ83の寸法が大きければ大きい程、当該アンテナ83の下方側の筐体90についても大きくする必要があり、装置(筐体90)のコストが嵩むことになる。そこで、本発明では、平面で見た時に筐体90の寸法ができるだけ小さくなるように、アンテナ83における回転テーブル2の回転方向上流側の部位及び下流側の部位同士を互いに近接させている。
【0092】
図25は、既述の図24において補助スリット97aを設けずに、回転テーブル2の中心部側ではスリット97、97間の離間寸法d2を図24と同様に設定した例を示している。従って、図23のファラデーシールド95と比べると、図25のファラデーシールド95は、回転テーブル2の中心部側ではスリット97がいわば1本飛ばしで配置されている。このように回転テーブル2の中心部側において外縁部側よりもスリット97、97間の離間寸法d2を大きく取ることにより、いわばスリット97のピッチを広げることにより、更にプラズマの改質の度合いを回転テーブル2の半径方向において揃えることができる。
回転テーブル2の中心部側におけるスリット97のピッチとしては、4〜12mm程度であっても良いし、回転テーブル2の中心部側から外縁部側に向かってスリットが小さくなるようにしても良い。
【0093】
図26は、回転テーブル2の中心部側では、外縁部側よりもスリット97の幅寸法d1を小さくした例を示している。具体的には、幅寸法d1は、前記中心部側では例えば2〜3mmとなっており、この幅寸法d1のスリット97が例えば9本配置されている。このような例においても、既述の各例と同様の効果が得られる。
【0094】
以上説明した図24〜図26では、回転テーブル2の中心部側において外縁部側よりもスリット97の開口面積を小さくするにあたり、スリット97の長さ寸法、ピッチ及び幅寸法d1を夫々調整したが、これらを組み合わせても良い。即ち、回転テーブル2の中心部側では、例えば外縁部側よりもスリット97の長さ寸法を短くすると共に、スリット97のピッチを広げたり、あるいは幅寸法d1を狭くしたりしても良い。
【0095】
更に、回転テーブル2の中心部側においてスリット97の開口面積を小さくする例について説明したが、外縁部側においてスリット97の開口面積を大きくしても良い。具体的には、回転テーブル2の外縁部側では、中心部側よりもスリット97の長さ寸法を大きく取ったり、スリット97のピッチを狭くしたり、更にはスリット97の幅寸法d1を大きくしたりしても良い。また、回転テーブル2の中心部側と外周部側とにおいて夫々スリット97の配置レイアウトを調整しても良い。しかしながら、既述の例では回転テーブル2の外縁部側ではスリット97の長さ寸法及び幅寸法d1が夫々できるだけ大きくなるように設定されると共に前記ピッチについてもできるだけ小さくなるように設定されていることから、回転テーブル2の中心部側におけるスリット97の配置レイアウトを調整することが好ましい。
また、既述の図8のように、2つのプラズマ発生部81、82を配置した場合やアンテナ83を概略扇形状となるように形成した場合についても、図24〜図26と同様にファラデーシールド95のスリット97の配置レイアウトを調整しても良い。
【実施例】
【0096】
以下に、既述の成膜装置を用いて行った各実験例について説明する。
(実験例1)
始めに、ラビリンス構造部110を設けずに、中心部領域Cにおいて各処理ガス同士が互いに混ざり合わないように当該中心部領域Cの長さ寸法を長く取った装置について評価した。従って、天板11における開口部11a及び筐体90は、この中心部領域Cを避けるように、回転テーブル2の回転中心側の端部が既述の図1などに示した各例と比べて15mm程度外周側に寄った位置となっている。この例では、プラズマ発生部80を一つだけ設けると共に、既述の図14及び図15のように配置した。この装置を用いて、既述のように成膜処理及び改質処理を行った。尚、これら成膜処理及び改質処理の詳細な実験条件については省略する。
【0097】
その結果、図27に示すように、プラズマ改質を行うことにより、プラズマ改質を行わない場合と比べて、サイクルレートが減少していた。このことから、プラズマ改質を行うことにより、薄膜の緻密化が促進されて強固な薄膜が形成されていることが分かった。従って、ファラデーシールド95をプラズマ発生部80とウエハWとの間に設けても、当該ウエハWにプラズマの到達することが分かった。
【0098】
この時、図28に薄膜の膜厚分布を示すように、回転テーブル2の回転中心側及び外周側の部位において、各々の部位よりも僅かにウエハWの中央寄りの領域と比べて膜厚が厚くなっていた。従って、これら中心側及び外周側では、プラズマの強度が他の部位に比べて不足していることが示唆された。そのため、前記中心側については筐体90を当該中心側に近接させること(ラビリンス構造部110を設けること)が好ましいことが分かった。また、外周側についてはプラズマの量を多く設定すること(2つのプラズマ発生部81、82を設けて、中心側よりも外周側の高周波電力を大きくするか、あるいはプラズマ発生部80を扇状に配置する)が好ましいことが分かった。尚、図27において「サイクルレート」とは、回転テーブル2の1回転あたりの成膜量(膜厚)を示している。
【0099】
(実験例2)
以上の実験例1により、中心部領域C側に筐体90を近接配置することによって、当該中心部領域C側において改質の度合いが揃うことが分かった。この場合には、回転テーブル2を支持するコア部21について、回転テーブル2の下方側よりも上方側が小さくなる。また、天板11については開口部11aを形成しているので、強度的に不足するおそれもある。そのため、この実験では、天板11の重量や真空容器1内を真空引きした時の差圧荷重などの負荷に、当該天板11や凸状部4と突出部5との接続部などが耐えられるか否かについて強度解析を行った。この解析は、既述の真空容器1の内壁面及び天板11を保護するための保護カバーとこれら内壁面及び天板11との間の圧力及び処理雰囲気の圧力を夫々Pm及びPnとした時に、これらの差圧ΔP(ΔP=Pm−Pn)が1Torr及び4Torrの場合について計算を行った。
その結果、図29及び図30に示すように、いずれの場合についても凸状部4と突出部5との接続部について強度は不足していないことが分かった。また、サイドリング100についても同様に十分な強度となっていた。
そして、図31に示すように、天板11についても十分な強度となっていた。
【0100】
(実験例3)
続いて、ファラデーシールド95の有無によってウエハW(具体的にはウエハWに形成されたデバイスのゲート酸化膜)の受ける電気的ダメージがどうなるか評価した。実験には、電気的ダメージの許容量の互いに異なるダミーウエハを複数種類(6種類)用意して、このウエハに対してプラズマを照射した。
【0101】
ファラデーシールド95を設けない場合には、図32の上段に示すように、いずれのウエハ(右端のウエハは最も前記許容量の大きいウエハについての結果を示しており、当該ウエハから左側に向かって次第に前記許容量の小さいウエハについての結果を並べている)についても、電気的ダメージを受けていることが分かった。一方、図32の中段に示すように、ファラデーシールド95を設けることにより、いずれのウエハについても電気的ダメージが格段に小さくなっていた。従って、ファラデーシールド95を設けることにより、ゲート酸化膜の絶縁破壊が抑えられる。
【0102】
この時、実験に用いたアンテナ83の形状は、ある一部がスリット97の向きに対して直交する方向からずれていることが分かった。そこで、周方向に亘ってスリット97の向きに対して直交する方向となるようにアンテナ83を調整し、再度実験を行った。その結果、図32の下段に示すように、電気的ダメージは、いずれのウエハについてもほとんど見受けられなかった。
【0103】
(実験例4)
次に、薄膜を形成した後、プラズマ改質を行うか否かによって、更にはファラデーシールド95の有無によって電気的特性(酸化膜の耐電圧特性)がどのように変化するか実験を行った。即ち、ウエハWの表面の酸化膜に水銀プローブを接触させ、電気的ストレス(電流)をこの酸化膜に加えた時の電圧を測定した。従って、電圧が小さい方がリーク電流が少なく、酸化膜に含まれる不純物濃度が小さいと言える。
【0104】
その結果、図33及び図34に示すように、プラズマ改質を行うことによって、プラズマ改質を行わない例よりも電気的特性が向上しており、熱酸化膜の電気的特性とほぼ同程度となっていた。具体的には、プラズマ改質を行わない場合には、1×10−8A/cm2の電流密度を加えた時の電界が0.4MV/cmであり、プラズマ改質を行った場合に同じ電流密度を加えた時の電界が8MV/cmとなっていた。従って、プラズマ改質を行うことにより、不純物濃度及びリーク電流の小さい酸化膜が得られることが分かった。
【0105】
この時、ファラデーシールド95の有無によっては、電気的特性には変化がなかった。従って、ファラデーシールド95は、プラズマ改質に悪影響を及ぼしていないことが分かる。図33は、薄膜の成膜後に一括してプラズマ改質した例、図34は回転テーブル2の回転の度にプラズマ改質した例を示している。この実験では、ファラデーシールド95を設けない場合にはアンテナ83の巻回回数を1巻に設定すると共に、ファラデーシールド95を設けた場合にはアンテナ83の巻回回数を3巻程度としている。
【0106】
(実験例5)
この実験例では、薄膜のウエットエッチングレートを調べた。即ち、薄膜が緻密であればある程、ウエットエッチングレートが低くなり、一方薄膜中に例えば不純物などが含まれている程、ウエットエッチングレートが高くなるので、ウエットエッチングレートを介して薄膜の緻密さを測定した。この実験は、フッ酸水溶液にウエハを浸漬し、フッ酸水溶液によりエッチングされた薄膜の膜厚を計算した。
【0107】
その結果、図35に示すように、薄膜を形成した後プラズマ改質を行わなかった場合(各参考例)と比べて、薄膜の形成と共にプラズマ改質を行うことにより、薄膜が緻密化していた。そして、比較例(ファラデーシールド95なし)の結果に対して、ファラデーシールド95を設けた例(実施例31、32)の薄膜は、ほぼ同程度の膜質となっていた。そのため、この実験からも、ファラデーシールド95は、プラズマ改質に悪影響を及ぼしていないことが分かった。図35において、実施例31は回転テーブル2が回転する度にプラズマ改質を行った例、実施例32はプラズマ改質を行わずに回転テーブル2を9回回転させて反応生成物を積層した後、各処理ガスの供給を停止してプラズマ改質した例を示している。尚、この実験においても、ファラデーシールド95を設けない場合にはアンテナ83の巻回回数を1巻に設定すると共に、ファラデーシールド95を設けた場合にはアンテナ83の巻回回数を3巻程度にしている。
図36は、ウエットエッチングを行った後の薄膜の膜厚の分布を示している。薄膜の膜厚についても、ファラデーシールド95の有無によってほとんど変化していないことが分かった。
【0108】
(実験例6)
図37は、ファラデーシールド95の有無によって膜厚の均一性がどのようになるか評価した結果を示している。図37の上段に示した結果は、左側から右側に向かって順番に「改質なし」、「一括改質(ファラデーシールド95なし)」及び「一括改質(ファラデーシールド95あり)」を示している。この結果から、ほぼ薄膜成膜後の膜厚分布通りの膜厚分布となるようにプラズマ改質が行われていることが分かる。即ち、プラズマ改質によって膜厚分布がほとんど変化していない。また、図37の下段には、左側に「毎サイクル改質(ファラデーシールド95なし)」及び「毎サイクル改質(ファラデーシールド95あり)」を示している。
【0109】
(実験例7)
続いて、ファラデーシールド95の有無によって石英のスパッタ量がどのように変わるか実験を行った。この実験は、各処理ガスを供給せずに、即ち薄膜を形成せずに、ウエハを載置した回転テーブル2を回転させてプラズマ空間10を通過させた。その結果、図38に示すように、ファラデーシールド95を設けることにより、石英のスパッタ量が大幅に減少していた。
【0110】
尚、CCPタイプ(一対の電極間でプラズマを発生させるタイプ)のプラズマ発生部を用いて同様の実験を行ったところ、図39の結果が得られた。従って、既述のようにアンテナ83をコイル状に巻回したICPタイプのプラズマ発生部を用いることにより、石英のスパッタ量が約100倍オーダー程度少なくなることが分かる。
【0111】
(実験例8)
図40は、既述の図24(他のスリット97よりも長さ寸法の短い補助スリット97aを設けた例)及び図25(スリット97のピッチを広げた例)のファラデーシールド95を用いた時に、図23(スリット97の配置レイアウトの調整なし)のファラデーシールド95を用いた場合と比べてプラズマ改質の度合いがどのようになるか実験した結果を示している。この実験では、各処理ガスを供給せずに、プラズマ発生用ガス(Arガス、O2ガス及びNH3ガス)を供給すると共にこのガスをプラズマ化した。そして、ウエハWが曝されたプラズマの量を確認するために、ウエハWの表面(シリコン層)がプラズマにより酸化されて形成される酸化膜の膜厚について、回転テーブル2の半径方向において夫々複数箇所で測定した。
【0112】
その結果、スリット97の配置レイアウトを調整することにより、回転テーブル2の半径方向における膜厚の均一性が改善されていた。具体的には、回転テーブル2の中心部側においてスリット97の開口面積を小さくすると、当該中心部側における酸化膜の膜厚が減少していた。また、回転テーブル2の中心部側のスリット97の開口面積が小さい程、前記均一性が良好になっていた。即ち、膜厚の均一性は、図23<図24<図25の順番で良好になっていた。従って、反応生成物の成膜処理と共にこの反応生成物のプラズマ改質処理を行う場合においても、同様にプラズマの改質の度合いが回転テーブル2の半径方向において揃うことが分かる。
【符号の説明】
【0113】
W ウエハ
1 真空容器
2 回転テーブル
10 プラズマ空間
80、81、82 プラズマ発生部
83 アンテナ
90 筐体
92 ガス規制面
95 ファラデーシールド
97 スリット
100 サイドリング
101 ガス流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに反応する処理ガスを順番に供給して基板の表面に反応生成物を積層すると共にこの反応生成物に対してプラズマ改質を行う成膜装置、成膜方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板(以下「ウエハ」と言う)に対して例えばシリコン酸化膜(SiO2)などの薄膜の成膜を行う手法の一つとして、互いに反応する複数種類の処理ガス(反応ガス)をウエハの表面に順番に供給して反応生成物を積層するALD(Atomic Layer Deposition)法が挙げられる。このALD法を用いて成膜処理を行う成膜装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、真空容器内に設けられた回転テーブル上に複数枚のウエハを周方向に並べると共に、例えば回転テーブルに対向するように配置された複数のガス供給部に対して回転テーブルを相対的に回転させることにより、これらウエハに対して各処理ガスを順番に供給する装置が知られている。
【0003】
ところで、ALD法では、通常のCVD(Chemical Vapor Deposition)法と比べて、ウエハの加熱温度(成膜温度)が例えば300℃程度と低いので、例えば処理ガス中に含まれている有機物などが薄膜中に不純物として取り込まれてしまう場合がある。そこで、例えば特許文献2に記載されているように、薄膜の成膜と共にプラズマを用いた改質処理を行うことにより、このような不純物を薄膜から取り除くこと、あるいは低減させることができると考えられる。
【0004】
しかし、プラズマ処理を行う装置を既述の成膜装置とは別に設けて改質処理を行おうとすると、これら装置間でウエハの搬送を行う分だけ時間のロスが生じてスループットの低下に繋がってしまう場合がある。一方、プラズマを発生させるプラズマ源を成膜装置に組み合わせて設けて、成膜処理を行いながらあるいは成膜処理の終了後に改質処理を行う場合には、プラズマによりウエハの内部に形成されている配線構造に対して電気的にダメージを与えてしまうおそれがある。そこで、ウエハに対するプラズマダメージを抑えるためにプラズマ源をウエハから離間させると、成膜処理を行う圧力条件ではプラズマ中のイオンやラジカルなどの活性種が失活しやすいので、活性種がウエハに到達しにくくなって良好な改質処理が行われなくなってしまうおそれがある。
特許文献3〜5には、ALD法により薄膜を成膜する装置について記載されているが、既述の課題については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−239102
【特許文献2】特開2011−40574
【特許文献3】米国特許公報7,153,542号
【特許文献4】特許3144664号公報
【特許文献5】米国特許公報6,869,641号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、互いに反応する処理ガスを順番に供給して基板の表面に反応生成物を積層すると共にこの反応生成物に対してプラズマ改質を行うにあたり、基板に対するプラズマダメージを抑えることのできる成膜装置、成膜方法及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成膜装置は、
真空容器内にて第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給するサイクルを複数回行って基板に成膜処理を行う成膜装置において、
基板を水平に載置する基板載置領域がその一面側に形成され、前記真空容器内にて前記基板載置領域を公転させるための回転テーブルと、
この回転テーブルの周方向に互いに分離領域を介して離間した領域に夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを供給する第1の処理ガス供給部及び第2の処理ガス供給部と、
基板に対してプラズマ処理を行うために、前記真空容器内にプラズマ発生用ガスを供給するプラズマ発生ガス供給部と、
前記回転テーブル上にてプラズマ発生ガスを誘導結合によりプラズマ化するように、当該回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナと、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止するために、各々アンテナと直交する方向に伸びるスリットがアンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記成膜装置は、以下のように構成しても良い。前記アンテナ及び前記ファラデーシールドは、プラズマ処理を行う領域から誘電体により気密に区画されている構成。
前記回転テーブルに連通するように前記真空容器の天板に形成された開口部と、
前記アンテナが収納され、前記開口部に嵌合すると共に当該開口部の口縁部との間にシール部が形成された誘電体からなる筐体と、を備えた構成。
前記分離領域に分離ガスを供給するための分離ガス供給部を設け、
前記筐体の下面側の周縁部には、第1の処理ガス、第2の処理ガス及び分離ガスが前記筐体の下方領域へ侵入することを抑えるために、周方向に亘って下方側に伸び出すガス規制用の突起部が形成された構成。
【0009】
前記回転テーブルの周囲には、横方向に気流が形成される凹部状の気流通路が周方向に亘ってリング状に形成され、
この気流通路に各々連通するように、前記回転テーブルの回転方向において第1の処理ガスの供給される第1の処理領域の下流側と、前記プラズマ発生用ガスの供給されるプラズマ領域の下流側と、には夫々第1の排気口及び第2の排気口が形成され、
前記気流通路には、当該気流通路に露出する前記真空容器の内壁部を保護するためのリング状のカバー体が設けられている構成。
前記アンテナは、鉛直軸回りに巻回されると共に、平面的に見た時に前記回転テーブルの回転中心側から外周側に向かって広がるように扇状に配置されている構成。
【0010】
前記プラズマ発生ガス供給部は、前記回転テーブルの半径方向に伸びると共に側面に複数のガス吐出口の形成されたガスノズルであり、
前記プラズマ発生ガス供給部は、前記筐体の下方領域において前記回転テーブルの回転方向上流側に配置され、
前記ガス吐出口の各々は、前記回転テーブルの回転方向上流側からの前記下方領域への分離ガスの侵入を抑えるために、前記上流側を各々向いている構成。前記プラズマ発生用ガス供給部は、前記第2の処理ガス供給部を兼用している構成。前記回転テーブルの中心部側における前記スリットは、基板に対して行われるプラズマ処理の度合いを前記回転テーブルの半径方向において揃えるために、前記回転テーブルの外縁部側よりも開口面積が小さくなるように形成されている構成。
【0011】
本発明の成膜方法は、
真空容器内にて第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給するサイクルを複数回行って基板に成膜処理を行う成膜方法において、
真空容器内に設けられた回転テーブルの一面側の基板載置領域に基板を水平に載置すると共に、この基板載置領域を公転させる工程と、
次いで、前記回転テーブルの周方向に互いに分離領域を介して離間した領域に夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを供給する工程と、
基板に対してプラズマ処理を行うために、前記真空容器内にプラズマ発生用ガスを供給する工程と、
前記回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナによって、プラズマ発生ガスを誘導結合によりプラズマ化する工程と、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、各々アンテナと直交する方向に伸びるスリットがアンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドにより、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
前記プラズマ化する工程は、プラズマ処理を行う領域から誘電体により気密に区画された前記アンテナにより、前記真空容器内のプラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程であり、
前記阻止する工程は、プラズマ処理を行う領域から前記誘電体により気密に区画された前記ファラデーシールドにより、前記電界成分の通過を阻止する工程であっても良い。
前記プラズマ化する工程は、前記回転テーブルに連通するように前記真空容器の天板に形成された開口部内に、この開口部に嵌合すると共に当該開口部の口縁部との間にシール部が形成された誘電体からなる筐体を配置し、この筐体内に収納された前記アンテナによりプラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程であっても良い。前記電界成分の通過を阻止する工程は、基板に対して行われるプラズマ処理の度合いを前記回転テーブルの半径方向において揃えるために、前記回転テーブルの外縁部側よりも前記回転テーブルの中心部側において開口面積が小さくなるように形成された前記スリットを有する前記ファラデーシールドを用いて行われる工程であっても良い。
【0013】
本発明の記憶媒体は、
真空容器内にて複数種類の処理ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、前記成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、真空容器内において回転テーブルを回転させることにより、第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給して反応生成物を基板上に形成した後、アンテナにより基板に対して誘導結合プラズマを供給し、薄膜の形成途中あるいは薄膜の形成後に薄膜の改質を行っている。この時、ファラデーシールドをアンテナの下方側に設けて、当該アンテナにおいて発生する電磁界における電界成分が前記真空容器の内部に到達することを阻止している。そのため、基板へのプラズマによる電気的なダメージを抑えつつ、膜質の良好な薄膜を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の成膜装置の一例を示す縦断面である。
【図2】前記成膜装置の横断断面図である。
【図3】前記成膜装置の横断平面図である。
【図4】前記成膜装置の内部の一部を示す分解斜視図である。
【図5】前記成膜装置の内部の一部を示す縦断面図である。
【図6】前記成膜装置の内部の一部を示す斜視図である。
【図7】前記成膜装置の内部の一部を示す縦断面図である。
【図8】前記成膜装置の内部の一部を示す平面図である。
【図9】前記成膜装置のファラデーシールドの一部を示す斜視図である。
【図10】前記成膜装置のサイドリングを示す分解斜視図である。
【図11】前記成膜装置のラビリンス構造部の一部を示す縦断面図である。
【図12】前記成膜装置におけるガスの流れを示す模式図である。
【図13】前記成膜装置におけるプラズマの発生の様子を示す模式図である。
【図14】前記成膜装置の他の例の一部を示す斜視図である。
【図15】前記他の例における成膜装置の一部を示す平面図である。
【図16】前記成膜装置の更に別の例を示す平面図である。
【図17】前記成膜装置の更に他の例を示す平面図である。
【図18】前記成膜装置の別の例の一部を示す縦断面図である。
【図19】前記成膜装置の別の例の一部を示す縦断面図である。
【図20】前記成膜装置の別の例の一部を示す縦断面図である。
【図21】前記成膜装置の別の例の一部を示す斜視図である。
【図22】前記成膜装置の別の例の一部を示す平面図である。
【図23】既述のファラデーシールドを示す平面図である。
【図24】前記ファラデーシールドの他の例を示す平面図である。
【図25】前記ファラデーシールドの更に他の例を示す平面図である。
【図26】前記ファラデーシールドの別の例を示す平面図である。
【図27】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図28】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図29】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図30】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図31】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図32】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図33】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図34】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図35】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図36】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図37】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図38】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図39】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【図40】本発明の実施例において得られた結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態の成膜装置の一例について、図1〜図11を参照して説明する。この成膜装置は、図1及び図2に示すように、平面形状が概ね円形である真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。そして、この成膜装置では、後で詳述するように、ALD法によりウエハWの表面に反応生成物を積層して薄膜を成膜すると共に、この薄膜に対してプラズマ改質を行うように構成されている。この時、プラズマ改質を行うにあたって、プラズマによって電気的なダメージがウエハWに加わらないように、あるいは前記ダメージができるだけ小さくなるように、前記成膜装置が構成されている。続いて、成膜装置の各部について詳述する。
【0017】
真空容器1は、天板11及び容器本体12を備えており、天板11が容器本体12から着脱できるように構成されている。天板11の上面側における中央部には、真空容器1内の中心部領域Cにおいて互いに異なる処理ガス同士が混ざり合うことを抑制するために、N2(窒素)ガスを分離ガスとして供給するための分離ガス供給管51が接続されている。図1中13は、容器本体12の上面の周縁部にリング状に設けられたシール部材例えばOリングである。
【0018】
回転テーブル2は、中心部にて概略円筒形状のコア部21に固定されており、このコア部21の下面に接続されると共に鉛直方向に伸びる回転軸22によって、鉛直軸回りこの例では時計回りに回転自在に構成されている。図1中23は回転軸22を鉛直軸回りに回転させる駆動部であり、20は回転軸22及び駆動部23を収納するケース体である。このケース体20は、上面側のフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられている。また、このケース体20には、回転テーブル2の下方領域にN2ガスをパージガスとして供給するためのパージガス供給管72が接続されている。真空容器1の底面部14におけるコア部21の外周側は、回転テーブル2に下方側から近接するようにリング状に形成されて突出部12aをなしている。
【0019】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように、回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板であるウエハWを載置するための円形状の凹部24が基板載置領域として設けられている。凹部24は、直径寸法が例えば300mmサイズのウエハWを当該凹部24に落とし込む(収納する)と、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが揃うように、直径寸法及び深さ寸法が設定されている。凹部24の底面には、ウエハWを下方側から突き上げて昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0020】
図2及び図3に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する位置には、各々例えば石英からなる5本のノズル31、32、34、41、42が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて放射状に配置されている。これら各ノズル31、32、34、41、42は、例えば真空容器1の外周壁から中心部領域Cに向かってウエハWに対向して水平に伸びるように各々取り付けられている。この例では、後述の搬送口15から見て時計回り(回転テーブル2の回転方向)にプラズマ発生用ガスノズル34、分離ガスノズル41、第1の処理ガスノズル31、分離ガスノズル42及び第2の処理ガスノズル32がこの順番で配列されている。プラズマ発生用ガスノズル34の上方側には、図1に示すように、当該プラズマ発生用ガスノズル34から吐出されるガスをプラズマ化するために、プラズマ発生部80が設けられている。このプラズマ発生部80については後で詳述する。
【0021】
処理ガスノズル31、32は、夫々第1の処理ガス供給部、第2の処理ガス供給部をなし、分離ガスノズル41、42は、各々分離ガス供給部をなしている。尚、図2はプラズマ発生用ガスノズル34が見えるようにプラズマ発生部80及び後述の筐体90を取り外した状態、図3はこれらプラズマ発生部80及び筐体90を取り付けた状態を表している。また、図1では、プラズマ発生部80について、模式的に一点鎖線で示している。
【0022】
各ノズル31、32、34、41、42は、流量調整バルブを介して夫々以下の各ガス供給源(図示せず)に夫々接続されている。即ち、第1の処理ガスノズル31は、Si(シリコン)を含む第1の処理ガス例えばBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン、SiH2(NH−C(CH3)3)2)ガスなどの供給源に接続されている。第2の処理ガスノズル32は、第2の処理ガス例えばO3(オゾン)ガスとO2(酸素)ガスとの混合ガスの供給源に接続されている。プラズマ発生用ガスノズル34は、例えばAr(アルゴン)ガスとO2ガスとの混合ガス(Ar:O2=100:0.5〜100:20程度の体積比)の供給源に接続されている。分離ガスノズル41、42は、分離ガスであるN2(窒素)ガスのガス供給源に各々接続されている。尚、以下においては、便宜上第2の処理ガスをO3ガスとして説明する。また、第2の処理ガスノズル32にはO3ガスを生成させるためのオゾナイザーが設けられているが、ここでは図示を省略している。
【0023】
ガスノズル31、32、41、42の下面側には、回転テーブル2の半径方向に沿って複数箇所にガス吐出孔33が例えば等間隔に形成されている。プラズマ発生用ガスノズル34の側面には、回転テーブル2の回転方向上流側(第2の処理ガスノズル32側)且つ下方側(斜め下)を向くように、当該プラズマ発生用ガスノズル34の長さ方向に沿って例えば開口径が0.3〜0.5mmのガス吐出孔33が複数箇所に例えば等間隔で形成されている。このようにプラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔33の向きを設定した理由については、後で説明する。これら各ノズル31、32、34、41、42は、当該ノズル31、32、34、41、42の下端縁と回転テーブル2の上面との離間距離が例えば1〜5mm程度となるように配置されている。
【0024】
処理ガスノズル31、32の下方領域は、夫々Si含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1及びウエハWに吸着したSi含有ガスとO3ガスとを反応させるための第2の処理領域P2となる。分離ガスノズル41、42は、各々第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離する分離領域Dを形成するためのものである。この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には、図2及び図3に示すように、概略扇形の凸状部4が設けられており、分離ガスノズル41、42は、この凸状部4に形成された溝部43内に収められている。従って、分離ガスノズル41、42における回転テーブル2の周方向両側には、各処理ガス同士の混合を阻止するために、前記凸状部4の下面である低い天井面44(第1の天井面)が配置され、この天井面44の前記周方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が配置されている。凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は、各処理ガス同士の混合を阻止するために、回転テーブル2の外端面に対向すると共に容器本体12に対して僅かに離間するように、L字型に屈曲している。
【0025】
次に、既述のプラズマ発生部80について詳述する。このプラズマ発生部80は、例えば銅(Cu)などの金属線からなるアンテナ83をコイル状に巻回して構成されており、真空容器1の内部領域から気密に区画されるように、当該真空容器1の天板11上に設けられている。この例では、アンテナ83は、銅の表面にニッケルメッキ及び金メッキをこの順番で施した材質により構成されている。具体的には、図4に示すように、既述のプラズマ発生用ガスノズル34の上方側(詳しくはこのノズル34よりも僅かに回転テーブル2の回転方向上流側の位置からこのノズル34の前記回転方向下流側の分離領域Dよりも僅かにノズル34側に寄った位置まで)における天板11には、平面的に見た時に概略扇形に開口する開口部11aが形成されている。
【0026】
この開口部11aは、回転テーブル2の回転中心から例えば60mm程度外周側に離間した位置から、回転テーブル2の外縁よりも80mm程度外側に離れた位置までに亘って形成されている。また、開口部11aは、真空容器1の中心部領域Cに設けられた後述のラビリンス構造部110に干渉しない(避ける)ように、平面で見た時に回転テーブル2の中心側における端部が当該ラビリンス構造部110の外縁に沿うように円弧状に窪んでいる。そして、この開口部11aは、図4及び図5に示すように、天板11の上端側から下端側に向かって当該開口部11aの開口径が段階的に小さくなるように、例えば3段の段部11bが周方向に亘って形成されている。これら段部11bのうち最下段の段部(口縁部)11bの上面には、図5に示すように、周方向に亘って溝11cが形成されており、この溝11c内にはシール部材例えばO−リング11dが配置されている。尚、溝11c及びO−リング11dについては、図4では図示を省略している。
【0027】
この開口部11aには、図6にも示すように、上方側の周縁部が周方向に亘ってフランジ状に水平に伸び出してフランジ部90aをなすと共に、中央部が下方側の真空容器1の内部領域に向かって窪むように形成された筐体90が配置されている。この筐体90は、例えば石英などの誘電体により構成された透磁体(磁力を透過させる材質)であり、図9に示すように、前記窪んだ部分の厚み寸法tが例えば20mmとなっている。また、この筐体90は、当該筐体90の下方にウエハWが位置した時に、中心部領域C側における筐体90の内壁面とウエハWの外縁との間の距離が70mmとなり、回転テーブル2の外周側における筐体90の内壁面とウエハWの外縁との間の距離が70mmとなるように構成されている。従って、回転テーブル2の回転方向上流側及び下流側における開口部11aの2つの辺と当該回転テーブル2の回転中心とのなす角度αは、例えば68°となっている。
【0028】
この筐体90を既述の開口部11a内に落とし込むと、フランジ部90aと段部11bのうち最下段の段部11bとが互いに係止する。そして、既述のO−リング11dによって、当該段部11b(天板11)と筐体90とが気密に接続される。また、開口部11aの外縁に沿うように枠状に形成された押圧部材91によって前記フランジ部90aを下方側に向かって周方向に亘って押圧すると共に、この押圧部材91を図示しないボルトなどにより天板11に固定することにより、真空容器1の内部雰囲気が気密に設定される。このように筐体90を天板11に気密に固定した時の当該筐体90の下面と回転テーブル2上のウエハWの表面との間の離間寸法hは、4〜60mmこの例では30mmとなっている。尚、図6は、筐体90を下方側から見た図を示している。
【0029】
筐体90の下面は、当該筐体90の下方領域へのN2ガスやO3ガスなどの侵入を阻止するために、図1及び図5〜図7に示すように、外縁部が周方向に亘って下方側(回転テーブル2側)に垂直に伸び出して、ガス規制用の突起部92をなしている。そして、この突起部92の内周面、筐体90の下面及び回転テーブル2の上面により囲まれた領域には、回転テーブル2の回転方向上流側に、既述のプラズマ発生用ガスノズル34が収納されている。
【0030】
即ち、筐体90の下方領域(プラズマ空間10)においてプラズマ発生用ガスノズル34から供給されるガスがプラズマ化されるので、当該下方領域にN2ガスが侵入すると、N2ガスのプラズマとO3ガス(O2ガス)のプラズマとが互いに反応してNOxガスが生成する。このNOxガスが発生すると、真空容器1内の部材が腐食してしまう。そこで、筐体90の下方領域にN2ガスが侵入しにくくなるように、当該筐体90の下面側に既述の突起部92を形成している。
【0031】
プラズマ発生用ガスノズル34の基端側(真空容器1の側壁側)における突起部92は、当該プラズマ発生用ガスノズル34の外形に沿うように概略円弧状に切りかかれている。突起部92の下面と回転テーブル2の上面との間の離間寸法dは、0.5〜4mmこの例では2mmとなっている。この突起部92の幅寸法及び高さ寸法は、夫々例えば10mm及び28mmとなっている。尚、図7は、回転テーブル2の回転方向に沿って真空容器1を切断した縦断面図を示している。
【0032】
また、成膜処理中には回転テーブル2が時計回りに回転するので、N2ガスがこの回転テーブル2の回転に連れられて回転テーブル2と突起部92との間の隙間から筐体90の下方側に侵入しようとする。そのため、前記隙間を介して筐体90の下方側へのN2ガスの侵入を阻止するために、前記隙間に対して筐体90の下方側からガスを吐出させている。具体的には、プラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔33について、図5及び図7に示すように、この隙間を向くように、即ち回転テーブル2の回転方向上流側且つ下方を向くように配置している。鉛直軸に対するプラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔33の向く角度θは、図7に示すように例えば45°程度となっている。
【0033】
ここで、筐体90の下方(プラズマ空間10)側から天板11と筐体90との間の領域をシールする既述のO−リング11dを見ると、図5に示すように、当該プラズマ空間10とO−リング11dとの間には突起部92が周方向に亘って形成されている。そのため、O−リング11dは、プラズマに直接曝されないように、プラズマ空間10から隔離されていると言える。従って、プラズマ空間10中のプラズマが例えばO−リング11d側に拡散しようとしても、突起部92の下方を経由して行くことになるので、O−リング11dに到達する前にプラズマが失活することになる。
【0034】
筐体90の内部(筐体90において下方側に窪んだ領域)には、当該筐体90の内部形状に概略沿うように形成された厚み寸法kが例えば1mm程度の導電性の板状体である金属板からなる、接地されたファラデーシールド95が収納されている。この例では、ファラデーシールド95は、銅(Cu)板または銅板にニッケル(Ni)膜及び金(Au)膜とを下側からメッキした板材により構成されている。即ち、このファラデーシールド95は、筐体90の底面に沿うように水平に形成された水平面95aと、この水平面95aの外周端から周方向に亘って上方側に伸びる垂直面95bと、を備えており、上方側から見た時に筐体90の内縁に沿って概略扇状となるように構成されている。このファラデーシールド95は、例えば金属板の圧延加工により、あるいは金属板における水平面95aの外側に対応する領域を上方側に折り曲げることにより形成されている。
【0035】
また、回転テーブル2の回転中心からファラデーシールド95を見た時の右側及び左側におけるファラデーシールド95の上端縁は、夫々右側及び左側に水平に伸び出して支持部96をなしている。そして、ファラデーシールド95を筐体90の内部に収納すると、ファラデーシールド95の下面と筐体90の上面とが互いに接触すると共に、前記支持部96が筐体90のフランジ部90aにより支持される。この水平面95a上には、ファラデーシールド95の上方に載置されるプラズマ発生部80との絶縁を取るために、厚み寸法が例えば2mm程度の例えば石英からなる絶縁板94が積層されている。前記水平面95aには、多数のスリット97が形成されているが、このスリット97の形状や配置レイアウトについては、プラズマ発生部80のアンテナ83の形状と併せて詳述する。尚、絶縁板94については、後述の図8及び図9などでは描画を省略している。
【0036】
プラズマ発生部80は、ファラデーシールド95の内部に収納されるように構成されており、従って図4及び図5に示すように、筐体90、ファラデーシールド95及び絶縁板94を介して真空容器1の内部(回転テーブル2上のウエハW)を臨むように配置されている。このプラズマ発生部80は、既述のようにアンテナ83を鉛直軸回りに巻回して構成されており、この例では2つのプラズマ発生部80、80が設けられている。各々のプラズマ発生部81、82は、アンテナ83が各々3重に巻回されている。これら2つのプラズマ発生部80、80のうち一方を第1のプラズマ発生部81、他方を第2のプラズマ発生部82と呼ぶと、第1のプラズマ発生部81は、図4及び図5に示すように、平面的に見た時に筐体90の内縁に沿うように概略扇状となっている。また、第1のプラズマ発生部81は、当該第1のプラズマ発生部81の下方にウエハWが位置した時に、このウエハWにおける中心部領域C側の端部と回転テーブル2の外縁側の端部との間に亘ってプラズマを照射(供給)できるように、中心部領域C側及び外周側の端部が各々筐体90の内壁面に近接するように配置されている。尚、アンテナ83内部には冷却水の通流する流路が形成されているが、ここでは省略している。
【0037】
第2のプラズマ発生部82は、回転テーブル2の半径方向外周側においてウエハWにプラズマを供給できるように、回転テーブル2上のウエハWの中心位置から200mm程度外周側に離間した位置と、回転テーブル2の外縁から90mm程度外周側に離間した位置と、の間に配置されている。即ち、回転テーブル2が回転すると、中心部側に比べて外周部側では周速度が速くなる。そのため、外周部側では内周部側よりもウエハWに供給されるプラズマの量が少なくなる場合がある。そこで、回転テーブル2の半径方向においてウエハWに供給されるプラズマの量を揃えるために、いわば第1のプラズマ発生部81によってウエハWに供給されるプラズマの量を補償するために、第2のプラズマ発生部82を設けている。
【0038】
第1のプラズマ発生部81及び第2のプラズマ発生部82における夫々のアンテナ83は、各々整合器84を介して周波数が例えば13.56MHz及び出力電力が例えば5000Wの高周波電源85に個別に接続されており、第1のプラズマ発生部81及び第2のプラズマ発生部82に対して独立して高周波電力を調整できるように構成されている。尚、図3などにおいては整合器84及び高周波電源85について簡略化している。また、図1、図3及び図4などおける86は、各々のプラズマ発生部81、82と整合器84及び高周波電源85とを電気的に接続するための接続電極である。
【0039】
ここで、既述のファラデーシールド95のスリット97について詳述する。このスリット97は、各々のプラズマ発生部81、82において発生する電界及び磁界(電磁界)のうち電界成分が下方のウエハWに向かうことを阻止すると共に、磁界をウエハWに到達させるためのものである。即ち、電界がウエハWに到達すると、当該ウエハWの内部に形成されている電気配線が電気的にダメージを受けてしまう場合がある。一方、ファラデーシールド95は、既述のように接地された金属板により構成されているので、スリット97を形成しないと、電界に加えて磁界も遮断してしまう。また、アンテナ83の下方に大きな開口部を形成すると、磁界だけでなく電界も通過してしまう。そこで、電界を遮断して磁界を通過させるために、以下のように寸法及び配置レイアウトを設定したスリット97を形成している。
【0040】
具体的には、スリット97は、図8に示すように、第1のプラズマ発生部81及び第2のプラズマ発生部82の各々のアンテナ83の巻回方向に対して直交する方向に伸びるように、周方向に亘ってアンテナ83の下方位置に各々形成されている。従って、例えば回転テーブル2の半径方向に沿ってアンテナ83が配置された領域においては、スリット97は回転テーブル2の接線方向あるいは円周方向に沿うように直線状または円弧状に形成されている。また、回転テーブル2の外縁に沿うように円弧状にアンテナ83が配置された領域においては、スリット97は回転テーブル2の回転中心から外縁に向かう方向に直線状に形成されている。そして、前記2つの領域間においてアンテナ83が屈曲する部分では、スリット97は当該屈曲する部分におけるアンテナ83の伸びる方向に対して直交するように、回転テーブル2の周方向及び半径方向に対して各々傾斜する向きに形成されている。従って、スリット97は、アンテナ83の伸びる方向に沿って多数配列されている。
【0041】
ここで、アンテナ83には、既述のように周波数が13.56MHzの高周波電源85が接続されており、この周波数に対応する波長は22mである。そのため、スリット97は、この波長の1/10000以下程度の幅寸法となるように、図9に示すように、幅寸法d1が1〜5mmこの例では2mm、スリット97、97間の離間寸法d2が1〜5mmこの例では2mmとなるように形成されている。また、このスリット97は、既述の図8に示すように、アンテナ83の伸びる方向から見た時に、長さ寸法が例えば各々60mmとなるように、当該アンテナ83の右端よりも30mm程度右側に離間した位置から、アンテナ83の左端よりも30mm程度左側に離間した位置までに亘って形成されている。これらスリット97の形成領域から外れた領域、即ちアンテナ83の巻回された領域の中央側には、回転テーブル2の回転中心側及び外周側においてファラデーシールド95に開口部98が形成されている。尚、図3ではスリット97を省略している。また、図4及び図5などではスリット97について簡略化しているが、スリット97は例えば150本程度形成されている。スリット97は、開口部98に近接する領域から当該開口部98から離れた領域に向かうにつれて、幅寸法d1が広がるように形成されているが、ここでは図示を省略している。
【0042】
続いて、真空容器1の各部の説明に戻る。回転テーブル2の外周側において当該回転テーブル2よりも僅かに下位置には、図2、図5及び図10に示すように、カバー体であるサイドリング100が配置されている。このサイドリング100は、例えば装置のクリーニング時において、各処理ガスに代えてフッ素系のクリーニングガスを通流させた時に、当該クリーニングガスから真空容器1の内壁を保護するためのものである。即ち、サイドリング100を設けないと、回転テーブル2の外周部と真空容器1の内壁との間には、横方向に気流(排気流)が形成される凹部状の気流通路が周方向に亘ってリング状に形成されていると言える。そのため、このサイドリング100は、気流通路に真空容器1の内壁面ができるだけ露出しないように、当該気流通路に設けられている。この例では、各分離領域D及び筐体90における外縁側の領域は、このサイドリング100の上方側に露出している。
【0043】
サイドリング100の上面には、互いに周方向に離間するように2箇所に排気口61、62が形成されている。言い換えると、前記気流通路の下方側に2つの排気口が形成され、これら排気口に対応する位置におけるサイドリング100に、排気口61、62が形成されている。これら2つの排気口61、62のうち一方及び他方を夫々第1の排気口61及び第2の排気口62と呼ぶと、第1の排気口61は、第1の処理ガスノズル31と、当該第1の処理ガスノズル31よりも回転テーブルの回転方向下流側における分離領域Dとの間において、当該分離領域D側に寄った位置に形成されている。第2の排気口62は、プラズマ発生用ガスノズル34と、当該プラズマ発生用ガスノズル34よりも回転テーブルの回転方向下流側における分離領域Dとの間において、当該分離領域D側に寄った位置に形成されている。第1の排気口61は、第1の処理ガス及び分離ガスを排気するためのものであり、第2の排気口62は、第2の処理ガス及び分離ガスに加えて、プラズマ発生用ガスを排気するためのものである。これら第1の排気口61及び第2の排気口62は、図1に示すように、各々バタフライバルブなどの圧力調整部65の介設された排気管63により、真空排気機構である例えば真空ポンプ64に接続されている。
【0044】
ここで、既述のように、中心部領域C側から外縁側に亘って筐体90を形成しているので、この筐体90よりも回転テーブル2の回転方向上流側に吐出された各ガスは、当該筐体90によって第2の排気口62に向かおうとするガス流がいわば規制されてしまう。そこで、筐体90の外側における既述のサイドリング100の上面に、第2の処理ガス及び分離ガスが流れるための溝状のガス流路101を形成している。具体的には、このガス流路101は、図3に示すように、筐体90における回転テーブル2の回転方向上流側の端部よりも例えば60mm程度第2の処理ガスノズル32側に寄った位置から、既述の第2の排気口62までの間に亘って、深さ寸法が例えば30mmとなるように円弧状に形成されている。従って、このガス流路101は、筐体90の外縁に沿うように、また上方側から見た時に当該筐体90の外縁部に跨がるように形成されている。このサイドリング100は、図示を省略しているが、フッ素系ガスに対する耐腐食性を持たせるために、表面が例えばアルミナなどによりコーティングされているか、あるいは石英カバーなどにより覆われている。
【0045】
天板11の下面における中央部には、図2に示すように、凸状部4における中心部領域C側の部位と連続して周方向に亘って概略リング状に形成されると共に、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成された突出部5が設けられている。この突出部5よりも回転テーブル2の回転中心側におけるコア部21の上方側には、中心部領域Cにおいて第1の処理ガスと第2の処理ガスとが互いに混ざり合うことを抑制するためのラビリンス構造部110が配置されている。即ち、既述の図1から分かるように、筐体90を中心部領域C側に寄った位置まで形成しているので、回転テーブル2の中央部を支持するコア部21は、回転テーブル2の上方側の部位が筐体90を避けるように前記回転中心側に寄った位置に形成されている。従って、中心部領域C側では、外縁部側よりも例えば処理ガス同士が混ざりやすい状態となっていると言える。そこで、ラビリンス構造部110を形成することにより、ガスの流路を稼いで処理ガス同士が混ざり合うことを防止している。
【0046】
具体的には、このラビリンス構造部110は、図11に当該ラビリンス構造部110を拡大して示すように、回転テーブル2側から天板11側に向かって垂直に伸びる第1の壁部111と、天板11側から回転テーブル2に向かって垂直に伸びる第2の壁部112と、が各々周方向に亘って形成されると共に、これら壁部111、112が回転テーブル2の半径方向において交互に配置された構造を採っている。具体的には、既述の突出部5側から中心部領域C側に向かって、第2の壁部112、第1の壁部111及び第2の壁部112がこの順番で配置されている。この例では、突出部5側の第2の壁部112は、他の壁部111、112よりも当該突出部5側に膨らんだ構造となっている。このような壁部111、112の各寸法について一例を挙げると、壁部111、112間の離間寸法jは例えば1mm、壁部111と天板11との間の離間寸法(壁部112とコア部21との間の隙間寸法)mは例えば1mmとなっている。
【0047】
従って、ラビリンス構造部110では、例えば第1の処理ガスノズル31から吐出されて中心部領域Cに向かおうとする第1の処理ガスは、壁部111、112を乗り越えていく必要があるので、中心部領域Cに向かうにつれて流速が遅くなり、拡散しにくくなる。そのため、処理ガスが中心部領域Cに到達する前に、当該中心部領域Cに供給される分離ガスにより処理領域P1側に押し戻されることになる。また、中心部領域Cに向かおうとする第2の処理ガスについても、同様にラビリンス構造部110によって中心部領域Cに到達しにくくなる。そのため、これら処理ガス同士が中心部領域Cにおいて互いに混ざり合うことが防止される。
【0048】
一方、この中心部領域Cに上方側から供給されたN2ガスは、周方向に勢いよく広がって行こうとするが、ラビリンス構造部110を設けているので、当該ラビリンス構造部110における壁部111、112を乗り越えるうちに流速が抑えられていく。この時、前記N2ガスは、例えば回転テーブル2と突起部92との間の極めて狭い領域へも侵入しようとするが、ラビリンス構造部110により流速が抑えられているので、当該狭い領域よりも広い領域(例えば処理領域P1、P2側)に流れて行く。そのため、筐体90の下方側へのN2ガスの流入が抑えられる。また、後述するように、筐体90の下方側の空間(プラズマ空間10)は、真空容器1内の他の領域よりも陽圧に設定されていることからも、当該空間へのN2ガスの流入が抑えられている。
【0049】
回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図1に示すように、加熱機構であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWを例えば300℃に加熱するようになっている。図1中71aはヒータユニット7の側方側に設けられたカバー部材、7aはこのヒータユニット7の上方側を覆う覆い部材である。また、真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側において、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が周方向に亘って複数箇所に設けられている。
【0050】
真空容器1の側壁には、図2及び図3に示すように図示しない外部の搬送アームと回転テーブル2との間においてウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15はゲートバルブGより気密に開閉自在に構成されている。また、回転テーブル2の凹部24は、この搬送口15に臨む位置にて搬送アームとの間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位には、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0051】
また、この成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部120が設けられており、この制御部120のメモリ内には後述の成膜処理及び改質処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは、後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部121から制御部120内にインストールされる。
【0052】
次に、上述実施の形態の作用について説明する。先ず、ゲートバルブGを開放して、回転テーブル2を間欠的に回転させながら、図示しない搬送アームにより搬送口15を介して回転テーブル2上に例えば5枚のウエハWを載置する。このウエハWには、ドライエッチング処理やCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いた配線埋め込み工程が既に施されており、従って当該ウエハWの内部には電気配線構造が形成されている。次いで、ゲートバルブGを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内を引き切りの状態にすると共に、回転テーブル2を例えば120rpmで時計回りに回転させながらヒータユニット7によりウエハWを例えば300℃に加熱する。
【0053】
続いて、処理ガスノズル31、32から夫々Si含有ガス及びO3ガスを吐出すると共に、プラズマ発生用ガスノズル34からArガス及びO2ガスの混合ガスを例えば5slmで吐出する。また、分離ガスノズル41、42から分離ガスを所定の流量で吐出し、分離カス供給管51及びパージガス供給管72、72からもN2ガスを所定の流量で吐出する。そして、圧力調整部65により真空容器1内を予め設定した処理圧力例えば400〜500Paこの例では500Paに調整する。また、各々のプラズマ発生部81、82に対して、例えば夫々1500W及び1000Wとなるように高周波電力を供給する。
【0054】
この時、筐体90よりも回転テーブル2の回転方向上流側から例えば当該回転テーブル2の回転に連れられて当該筐体90に向かって通流してくるO3ガス及びN2ガスは、この筐体90によってガス流が乱されようとする。しかし、筐体90の外周側におけるサイドリング100にガス流路101を形成しているので、前記O3ガス及びN2ガスは、筐体90を避けるように、当該ガス流路101を通って排気される。
【0055】
一方、前記筐体90の上流側から当該筐体90に向かって通流してくるガスのうち一部のガスは、筐体90の下方に侵入しようとする。しかし、既述の筐体90の下方側の領域では、突起部92が当該領域を覆うように形成されると共に、プラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔33が回転テーブル2の回転テーブル2の回転方向上流側の斜め下を向いている。従って、プラズマ発生用ガスノズル34から吐出したプラズマ発生用ガスは、突起部92の下方側に衝突し、前記上流側から流入しようとするO3ガスやN2ガスをこの筐体90の外側へと追い出す。そして、このプラズマ発生用ガスは、突起部92により回転テーブル2の回転方向下流側へと押し戻されて行く。この時、既述の各ガス流量に設定することによって、また突起部92を設けていることによって、筐体90の下方におけるプラズマ空間10は、真空容器1内の他の領域よりも例えば10Pa程度陽圧となっている。このことからも、筐体90の下方側へのO3ガスやN2ガスの侵入が阻止される。
【0056】
そして、Si含有ガス及びO3ガスは、中心部領域Cに侵入しようとするが、この中心部領域Cには既述のラビリンス構造部110を設けているので、このラビリンス構造部110によって既述のようにガス流が阻害され、中心部領域Cに上方側から供給される分離ガスにより元の処理領域P1、P2側に押し戻されることになる。従って、中心部領域Cにおけるこれら処理ガス同士の混合が防止される。また、同様にラビリンス構造部110によって、中心部領域Cから外周側に吐出されるN2ガスについての筐体90の下方側への侵入が抑えられる。
【0057】
更に、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間においてN2ガスを供給しているので、図12に示すように、Si含有ガスとO3ガス及びプラズマ発生用ガスとが互いに混合しないように各ガスが排気されることとなる。また、回転テーブル2の下方側にパージガスを供給しているため、回転テーブル2の下方側に拡散しようとするガスは、前記パージガスにより排気口61、62側へと押し戻される。
【0058】
この時、プラズマ発生部80では、高周波電源85から供給される高周波電力により、図13に模式的に示すように、電界及び磁界が発生する。これら電界及び磁界のうち電界は、既述のようにファラデーシールド95を設けていることから、このファラデーシールド95により反射あるいは吸収(減衰)されて、真空容器1内への到達が阻害される(遮断される)。一方、磁界は、ファラデーシールド95にスリット97を形成しているので、このスリット97を通過して、筐体90の底面を介して真空容器1内に到達する。また、プラズマ発生部81、82の側方側におけるファラデーシールド95には周方向に亘ってスリット97が形成されていないので、電界及び磁界は、当該側方側を介して下方側に回り込まない。
【0059】
従って、プラズマ発生用ガスノズル34から吐出されたプラズマ発生用ガスは、スリット97を介して通過してきた磁界によって活性化されて、例えばイオンやラジカルなどのプラズマが生成する。この時、2つのプラズマ発生部81、82を設けていることから、真空容器1内に生成するプラズマの強度は、回転テーブル2の中心部側よりも外周部側の方が大きくなる。尚、図12ではプラズマ発生部81、82について模式的に示しており、これらプラズマ発生部81、82、ファラデーシールド95、筐体90及びウエハWの間の各寸法については模式的に大きく描画している。
【0060】
一方、ウエハWの表面では、回転テーブル2の回転によって第1の処理領域P1においてSi含有ガスが吸着し、次いで第2の処理領域P2においてウエハW上に吸着したSi含有ガスが酸化され、薄膜成分であるシリコン酸化膜(SiO2)の分子層が1層あるいは複数層形成されて反応生成物が形成される。この時、シリコン酸化膜中には、例えばSi含有ガス中に含まれる残留基のため、水分(OH基)や有機物などの不純物が含まれている場合がある。
【0061】
そして、回転テーブル2の回転によって、ウエハWの表面に既述のプラズマ(活性種)が接触すると、シリコン酸化膜の改質処理が行われることになる。具体的には、例えばプラズマがウエハWの表面に衝突することにより、例えばシリコン酸化膜から前記不純物が放出されたり、シリコン酸化膜内の元素が再配列されてシリコン酸化膜の緻密化(高密度化)が図られたりすることになる。
【0062】
この時、回転テーブル2が回転することにより、中心部側よりも外周部側において周速度が速くなっているので、当該外周部側では中心部側よりも改質の程度が小さくなろうとする。しかし、回転テーブル2の中心部側よりも外周部側においてプラズマの強度が強くなっていることから、回転テーブル2の半径方向において改質の度合いが揃う。こうして回転テーブル2の回転を続けることにより、ウエハW表面へのSi含有ガスの吸着、ウエハW表面に吸着したSi含有ガスの成分の酸化及び反応生成物のプラズマ改質がこの順番で多数回に亘って行われて、反応生成物が積層されて薄膜が形成される。
【0063】
ここで、既述のようにウエハWの内部には電気配線構造が形成されているが、プラズマ発生部80とウエハWとの間にファラデーシールド95を設けて電界を遮断しているので、この電気配線構造に対する電気的ダメージが抑えられる。
【0064】
上述の実施の形態によれば、プラズマ発生部80を設けて反応生成物の改質処理を行うにあたり、このプラズマ発生部80を筐体90の内部に収納すると共に、プラズマ発生部80とウエハWとの間にファラデーシールド95を設けている。そのため、プラズマ発生部80において発生する電界については遮断することができ、一方磁界についてはファラデーシールド95に形成されたスリット97を介して真空容器1内に到達させることができる。従って、プラズマによるウエハWの内部の電気配線構造に対する電気的ダメージを抑えて改質処理を行うことができるので、良好な膜質及び電気的特性を持つ薄膜を得ることができる。
【0065】
また、ファラデーシールド95を設けていることから、後述の実施例に示すように、プラズマによる筐体90などの石英部材へのダメージ(エッチング)を抑えることができる。そのため、前記石英部材のロングライフ化を図ることができ、またコンタミの発生を抑えることができるし、更には石英(SiO2)の薄膜(SiO2)中への混入による膜厚の不均一化を抑えることができる。
【0066】
更に、筐体90を設けているので、プラズマ発生部81、82を回転テーブル2上のウエハWに近接させることができる。そのため、成膜処理を行う程度の高い圧力雰囲気(低い真空度)であっても、プラズマ中のイオンやラジカルの失活を抑えて良好な改質処理を行うことができる。そして、筐体90に突起部92を設けているので、プラズマ空間10にO−リング11dが露出しない。そのため、O−リング11dに含まれる例えばフッ素系成分のウエハWへの混入を抑えることができ、また当該O−リング11dのロングライフ化を図ることができる。
【0067】
更にまた、筐体90の下面に突起部92を形成すると共に、プラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔33が回転テーブル2の回転方向上流側を向くようにしている。そのため、プラズマ発生用ガスノズル34から吐出するガス流量が既述のように小流量であっても、筐体90の下方領域へのO3ガスやN2ガスの侵入を抑えることができる。そして、プラズマ発生用ガスノズル34の配置された領域(プラズマ空間10)の圧力が他の領域(例えば処理領域P1、P2)の圧力よりも高くなるようにしている。以上のことから、プラズマ空間10におけるNOxガスの生成を抑えることができるので、NOxガスによる真空容器1内の部材の腐食を抑えることができ、そのためウエハWのメタルコンタミを抑制できる。そして、以上のようにO3ガスやN2ガスなどの筐体90の下方側への侵入を抑えることができるので、成膜処理と共に改質処理を共通の成膜装置で行うにあたって、例えば筐体90と第2の処理ガスノズル32との間に個別に排気口やポンプを設けなくて済むので、更にはこれら筐体90とノズル32との間に分離領域Dを設けなくて済むので、装置構成を簡略化できる。
【0068】
また、筐体90を配置するにあたって、当該筐体90の外周側におけるサイドリング100にガス流路101を形成しているので、この筐体90を避けて各ガスを良好に排気することができる。
更にまた、筐体90の内部にプラズマ発生部81、82を収納しているので、これらプラズマ発生部81、82を大気雰囲気の領域(真空容器1の外側領域)に配置することができ、従ってプラズマ発生部81、82のメンテナンスが容易となる。
【0069】
ここで、筐体90の内部にプラズマ発生部81、82を収納しているので、例えば中心部領域C側では、この筐体90の側壁の厚み寸法の分、プラズマ発生部81の端部が回転テーブル2の回転中心から離間することになる。そのため、中心部領域C側におけるウエハWの端部には、後述のシミュレーションの結果から分かるように、プラズマが到達しにくくなる。一方、中心部領域C側におけるウエハWの端部にプラズマが到達するように筐体90(プラズマ発生部81)を中心部領域C側に寄った位置にまで形成しようとすると、既述のように中心部領域Cが狭くなる。この場合には、処理ガス同士が中心部領域Cにおいて混ざり合ってしまうおそれがある。しかし、本発明では、中心部領域Cにラビリンス構造部110を形成し、ガス流路を稼いでいるので、回転テーブル2の半径方向に亘って広いプラズマ空間10を確保しながら、中心部領域Cにおける処理ガス同士の混合及び当該プラズマ空間10内へのN2ガスの流入を抑えることができる。
更にまた、プラズマ発生部81、82を設けて、回転テーブル2の半径方向においてウエハWの改質の度合いを揃えていることから、面内に亘って均質な膜質の薄膜を得ることができる。
【0070】
既述の例では、反応生成物の成膜と当該反応生成物の改質処理とを交互に行ったが、反応生成物を例えば70層(およそ10nmの膜厚)程度積層した後、これら反応生成物の積層体に対して改質処理を行っても良い。具体的には、Si含有ガス及びO3ガスを供給して反応生成物の成膜処理を行っている間はプラズマ発生部81、82への高周波電力の供給を停止する。そして、積層体の形成後、これらSi含有ガス及びO3ガスの供給を停止してプラズマ発生部81、82へ高周波電力を供給する。このようないわば一括改質の場合にも、既述の例と同様の効果が得られる。
【0071】
ここで、以上説明した成膜装置の他の例について列挙する。図14及び図15は、プラズマ発生部80を一つだけ設けると共に、当該プラズマ発生部80について、平面で見た時に概略方形(概略8角形)となるようにアンテナ83を配置した例を示している。この例においても、スリット97は、開口部98に近接する領域から当該開口部98から離れた領域に向かうにつれて、幅寸法d1が広がるように形成されているが図示を省略している。
【0072】
図16は、2つのプラズマ発生部81、82を図14及び図15のように概略方形となるように配置すると共に、プラズマ発生部81については回転テーブル2の半径方向内側に配置し、プラズマ発生部82については前記半径方向外側に配置した例を示している。この例では、これらプラズマ発生部81、82は、互いに同じ面積となるようにアンテナ83が各々巻回されている。尚、図16は、天板11を上方側から見た様子を示しており、これらプラズマ発生部81、82におけるアンテナ83を模式的に描画している。以下の図17についても同様である。
【0073】
図17は、図14及び図15のように2つのプラズマ発生部81、82を概略方形となるように配置すると共に、プラズマ発生部81については既述の図8と同様に回転テーブル2の半径方向に亘ってアンテナ83を配置し、一方プラズマ発生部82については回転テーブル2の外周部側に配置している。
図18は、既述のファラデーシールド95について、筐体90の内部に埋設した例を示している。具体的には、プラズマ発生部80の下方における筐体90は、上端面が着脱自在に構成されており、この上端面を取り外した部位にファラデーシールド95を収納できるように構成されている。即ち、ファラデーシールド95は、プラズマ発生部80とウエハWとの間に設けられていれば良い。
【0074】
図19は、プラズマ発生部80及びファラデーシールド95を筐体90の内部に収納することに代えて、これらプラズマ発生部80及びファラデーシールド95を天板11の上方に配置した例を示している。この例では、プラズマ発生部80の下方における天板11は、他の部位における天板11とは別部材として例えば石英などの誘電体により構成されており、下面周縁部が既述のように周方向に亘ってO−リング11dにより前記他の部位における天板11と気密に接続されている。
【0075】
図20は、サイドリング100を配置していない例を示している。即ち、サイドリング100は、例えば装置のクリーニング時に用いられるクリーニングガスが回転テーブル2の下方領域に回り込まないようにするためのものである。従って、クリーニングを行わない場合には、サイドリング100を設けなくても良い。
【0076】
図21は、アンテナ83を鉛直軸方向に巻回することに代えて、水平軸方向に巻回した例を示している。具体的には、このアンテナ83は、回転テーブル2の回転方向に沿って円弧状に伸びる軸の回りに巻回されている。尚、図21はアンテナ83及びファラデーシールド95以外については省略している。
【0077】
また、既述の例ではSiを含むガスとO3ガスとをウエハWにこの順番で供給して反応生成物を成膜した後、プラズマ発生部80により当該反応生成物の改質を行う例について説明したが、反応生成物を成膜する時に用いられるO3ガスをプラズマ化しても良い。即ち、図22に示すように、この例では既述の処理ガスノズル32が設けられておらず、ウエハW上に吸着したSi含有ガスの成分をプラズマ空間10において酸化して反応生成物を形成し、更にこのプラズマ空間10において当該反応生成物の改質を行うように構成されている。言い換えると、プラズマ空間10に供給されるプラズマ発生用のガスは、第2の処理ガスを兼用している。従って、プラズマ発生用ガスノズル34は、処理ガスノズル32を兼用している。このようにプラズマ空間10においてウエハWの表面に吸着したSi含有ガスの成分を酸化することにより、処理ガスノズル32のオゾナイザーが不要になるので、装置のコストを低減できる。また、ウエハWの直上位置においてO3ガスを生成させることにより、例えば処理ガスノズル32の長さ寸法の分だけO3ガスの流路を短くできるので、O3ガスの失活を抑えて前記Si含有の成分を良好に酸化できる。
【0078】
以上の各例において、ファラデーシールド95を構成する材質としては、磁界をできるだけ透過するように、比透磁率のなるべく低い材質が好ましく、具体的には、銀(Ag)、アルミニウム(Al)などを用いても良い。また、ファラデーシールド95のスリット97の数量としては、少なすぎると真空容器1内に到達する磁界が小さくなり、一方多すぎるとファラデーシールド95を製造しにくくなることから、例えばアンテナ83の長さ1mに対して100〜500本程度であることが好ましい。更に、プラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔33について、回転テーブル2の回転方向上流側を向くように形成したが、このガス吐出孔33を下方側あるいは下流側を向くように配置しても良い。
【0079】
筐体90を構成する材質としては、石英に代えて、アルミナ(Al2O3)、イットリアなどの耐プラズマエッチング材を用いても良いし、例えばパイレックスガラス(コーニング社の耐熱ガラス、商標)などの表面にこれら耐プラズマエッチング材をコーティングしても良い。即ち、筐体90はプラズマに対する耐性が高く、且つ磁界を透過する材質(誘電体)により構成すれば良い。
【0080】
また、ファラデーシールド95の上方に絶縁板94を配置して、当該ファラデーシールド95とアンテナ83(プラズマ発生部80)との絶縁を取るようにしたが、この絶縁板94を配置せずに、例えばアンテナ83を石英などの絶縁材により被覆するようにしても良い。
【0081】
また、既述の例では、Si含有ガスとO3ガスとを用いてシリコン酸化膜を成膜する例について説明したが、例えば第1の処理ガス及び第2の処理ガスとして夫々Si含有ガスとアンモニア(NH3)ガスとを用いて窒化シリコン膜を成膜しても良い。この場合には、プラズマを発生させるための処理ガスとしては、アルゴンガス及び窒素ガスまたはアンモニアガスなどが用いられる。
【0082】
更に、例えば第1の処理ガス及び第2の処理ガスとして夫々TiCl2(塩化チタン)ガスとNH3(アンモニア)ガスとを用いて窒化チタン(TiN)膜を成膜しても良い。この場合には、ウエハWとしてはチタンからなる基板が用いられ、プラズマを発生させるためのプラズマ生成ガスとしては、アルゴンガス及び窒素ガスなどが用いられる。また、3種類以上の処理ガスを順番に供給して反応生成物を積層するようにしても良い。具体的には、例えばSr(THD)2(ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト)やSr(Me5Cp)2(ビスペンタメチルシクロペンタジエニエルストロンチウム)等のSr原料と、例えばTi(OiPr)2(THD)2(チタニウムビスイソプロポキサイドビステトラメチルヘプタンジオナト)やTi(OiPr)(チタニウムテトライソプロポキサイド)等のTi原料と、をウエハWに供給した後、ウエハWにO3ガスを供給して、SrとTiとを含む酸化膜であるSTO膜からなる薄膜を積層しても良い。
また、分離領域Dにガスノズル41、42からN2ガスを供給したが、この分離領域Dとしては、各処理領域P1、P2間を区画する壁部を設けて、ガスノズル41、42を配置しなくても良い。
【0083】
更に、アンテナ83としては、真空容器1の内部領域から気密に区画された領域(筐体90の内部あるいは天板11上)に配置したが、真空容器1の内部領域に配置しても良い。具体的には、例えば天板11の下面よりも僅かに下方側にアンテナ83を配置しても良い。この場合には、プラズマによりアンテナ83がエッチングされないように、当該アンテナ83は、例えば石英などの誘電体により表面がコーティングされる。また、この場合においてファラデーシールド95は、同様にプラズマによりエッチングされないように、アンテナ83とウエハWとの間において石英などの誘電体により表面がコーティングされる。更に、アンテナ83としては、コイル状に巻回した構成以外にも、基端側が例えば真空容器1の外側から当該真空容器1内に気密に挿入されると共に、他端側が中心部領域Cに向かって直線状に伸びる構成であっても良い。
【0084】
以上の例において、各処理ガス(具体的には装置のメンテナンス時にノズル31、32から供給されるクリーニングガス)から真空容器1の内壁面及び天板11を保護するために、これら内壁面及び天板11よりも処理雰囲気側には、僅かな隙間を介して図示しない保護カバーが設けられている。そして、前記隙間の圧力が処理雰囲気よりも僅かに陽圧となるように、当該隙間に図示しないガス供給部からパージガスが供給されるように構成されているが、説明を省略している。
【0085】
ここで、回転テーブル2の中心部側と外周部側とにおいてプラズマ改質の度合いを揃えるにあたり、既述の図8では、回転テーブル2の半径方向に亘ってプラズマを発生させる第1のプラズマ発生部81に加えて前記外周部側においてプラズマを発生させる第2のプラズマ発生部82を設ける例について説明したが、2つのプラズマ発生部81、82を設けることに代えて、ファラデーシールド95のスリット97の配置レイアウトを調整しても良い。
【0086】
即ち、既に詳述したように、回転テーブル2上のウエハWから見ると、回転テーブル2の中心部側では外縁部側よりもプラズマの照射される時間が長い。そのため、中心部側では外縁部側よりもプラズマ改質の度合いが大きくなろうとする。そこで、回転テーブル2の半径方向に亘ってプラズマ改質の度合いを揃えるために、ファラデーシールド95のスリット97の配置レイアウトを調整しても良い。具体的には、真空容器1内のプラズマは、プラズマ発生部80において発生した電磁界のうち、ファラデーシールド95のスリット97を通過した磁界により発生する。そこで、以下の例では、プラズマ改質の度合いの大きな中心部側では、プラズマ改質の度合いの小さい外縁部側と比べて、真空容器1内に到達する磁界が小さくなるように、スリット97の開口面積を小さくしている。
【0087】
このような例について、既述の図15のように、アンテナ83を概略細長い八角形に形成すると共に、プラズマ発生部80を一つだけ(第1のプラズマ発生部81だけ)設けた場合について説明する。始めに、図15のスリット97の配置レイアウトについて、図23を参照して改めて説明する。各々のスリット97は、アンテナ83の長手方向(回転テーブル2の半径方向)においては、概略長方形となるように形成されており、アンテナ83が屈曲する部分(回転テーブル2の中心部側及び外縁部側)では、アンテナ83の巻回領域の外側から内側に向かう程、幅寸法d1が小さくなっていわばくさび形状をなしている。そして、この図23(図15)では、各スリット97は、回転テーブル2の中心部側及び外周部側において前記幅寸法d1が揃っている。尚、図23ではアンテナ83を破線で示しており、ファラデーシールド95以外の部位については記載を省略している。以下の図24〜図26についても同様である。
【0088】
続いて、回転テーブル2の半径方向においてプラズマ改質の度合いが揃うようにスリット97の配置レイアウトを調整した例について、以下に説明する。図24は、回転テーブル2の中心部側については、外縁部側の他のスリット97よりも長さ寸法の短い補助スリット97aを形成した例を示している。即ち、この補助スリット97aは、他のスリット97よりも長さ寸法が例えば20mm程度短くなっており、既述の開口部98に近接する位置からアンテナ83の下方位置よりも僅かにファラデーシールド95の外縁側に寄った位置までに亘って形成されている。そして、回転テーブル2の中心部側では、この補助スリット97aとスリット97とが交互に配置されており、補助スリット97aは9箇所に形成されている。
【0089】
従って、回転テーブル2の中心部側におけるアンテナ83の巻回領域よりも外側では、補助スリット97aの分だけスリット97、97間の離間寸法d2が他の部位よりも広くなっている。即ち、図24では、回転テーブル2の中心部側において外縁部側よりもスリット97の開口面積を小さくするにあたり、スリット97の長さ寸法を短く調整していると言える。
【0090】
このようにスリット97の配置レイアウトを調整することにより、後述の実施例にも示すように、回転テーブル2の半径方向においてプラズマ改質の度合いが揃う。そのため、例えばウエハWの面内においてプラズマ改質の度合いを揃えたい場合には図24のファラデーシールド95を用いることができるし、一方回転テーブル2の中心部側において外縁部側よりもプラズマ改質の度合いを強めたい場合には既述の図23のファラデーシールド95を用いることができ、従ってレシピやプロセスに応じてファラデーシールド95を選択できる。
この時、回転テーブル2の中心部側においては、補助スリット97aと共にスリット97を配置したが、スリット97に代えて補助スリット97aを設けて複数の補助スリット97aを並べても良いし、補助スリット97aの数量としては、10〜50箇所としても良い。
【0091】
また、アンテナ83を概略細長い八角形とすることにより、装置のコストを抑えることができる。即ち、筐体90は、既述のように、プラズマ発生部80において発生する磁界を真空容器1内に到達させるために、高純度の石英により構成されると共に、平面で見た時にアンテナ83よりも大きな寸法となるように(アンテナ83の下方側に亘って石英部材が位置するように)形成されている。従って、平面で見た時のアンテナ83の寸法が大きければ大きい程、当該アンテナ83の下方側の筐体90についても大きくする必要があり、装置(筐体90)のコストが嵩むことになる。そこで、本発明では、平面で見た時に筐体90の寸法ができるだけ小さくなるように、アンテナ83における回転テーブル2の回転方向上流側の部位及び下流側の部位同士を互いに近接させている。
【0092】
図25は、既述の図24において補助スリット97aを設けずに、回転テーブル2の中心部側ではスリット97、97間の離間寸法d2を図24と同様に設定した例を示している。従って、図23のファラデーシールド95と比べると、図25のファラデーシールド95は、回転テーブル2の中心部側ではスリット97がいわば1本飛ばしで配置されている。このように回転テーブル2の中心部側において外縁部側よりもスリット97、97間の離間寸法d2を大きく取ることにより、いわばスリット97のピッチを広げることにより、更にプラズマの改質の度合いを回転テーブル2の半径方向において揃えることができる。
回転テーブル2の中心部側におけるスリット97のピッチとしては、4〜12mm程度であっても良いし、回転テーブル2の中心部側から外縁部側に向かってスリットが小さくなるようにしても良い。
【0093】
図26は、回転テーブル2の中心部側では、外縁部側よりもスリット97の幅寸法d1を小さくした例を示している。具体的には、幅寸法d1は、前記中心部側では例えば2〜3mmとなっており、この幅寸法d1のスリット97が例えば9本配置されている。このような例においても、既述の各例と同様の効果が得られる。
【0094】
以上説明した図24〜図26では、回転テーブル2の中心部側において外縁部側よりもスリット97の開口面積を小さくするにあたり、スリット97の長さ寸法、ピッチ及び幅寸法d1を夫々調整したが、これらを組み合わせても良い。即ち、回転テーブル2の中心部側では、例えば外縁部側よりもスリット97の長さ寸法を短くすると共に、スリット97のピッチを広げたり、あるいは幅寸法d1を狭くしたりしても良い。
【0095】
更に、回転テーブル2の中心部側においてスリット97の開口面積を小さくする例について説明したが、外縁部側においてスリット97の開口面積を大きくしても良い。具体的には、回転テーブル2の外縁部側では、中心部側よりもスリット97の長さ寸法を大きく取ったり、スリット97のピッチを狭くしたり、更にはスリット97の幅寸法d1を大きくしたりしても良い。また、回転テーブル2の中心部側と外周部側とにおいて夫々スリット97の配置レイアウトを調整しても良い。しかしながら、既述の例では回転テーブル2の外縁部側ではスリット97の長さ寸法及び幅寸法d1が夫々できるだけ大きくなるように設定されると共に前記ピッチについてもできるだけ小さくなるように設定されていることから、回転テーブル2の中心部側におけるスリット97の配置レイアウトを調整することが好ましい。
また、既述の図8のように、2つのプラズマ発生部81、82を配置した場合やアンテナ83を概略扇形状となるように形成した場合についても、図24〜図26と同様にファラデーシールド95のスリット97の配置レイアウトを調整しても良い。
【実施例】
【0096】
以下に、既述の成膜装置を用いて行った各実験例について説明する。
(実験例1)
始めに、ラビリンス構造部110を設けずに、中心部領域Cにおいて各処理ガス同士が互いに混ざり合わないように当該中心部領域Cの長さ寸法を長く取った装置について評価した。従って、天板11における開口部11a及び筐体90は、この中心部領域Cを避けるように、回転テーブル2の回転中心側の端部が既述の図1などに示した各例と比べて15mm程度外周側に寄った位置となっている。この例では、プラズマ発生部80を一つだけ設けると共に、既述の図14及び図15のように配置した。この装置を用いて、既述のように成膜処理及び改質処理を行った。尚、これら成膜処理及び改質処理の詳細な実験条件については省略する。
【0097】
その結果、図27に示すように、プラズマ改質を行うことにより、プラズマ改質を行わない場合と比べて、サイクルレートが減少していた。このことから、プラズマ改質を行うことにより、薄膜の緻密化が促進されて強固な薄膜が形成されていることが分かった。従って、ファラデーシールド95をプラズマ発生部80とウエハWとの間に設けても、当該ウエハWにプラズマの到達することが分かった。
【0098】
この時、図28に薄膜の膜厚分布を示すように、回転テーブル2の回転中心側及び外周側の部位において、各々の部位よりも僅かにウエハWの中央寄りの領域と比べて膜厚が厚くなっていた。従って、これら中心側及び外周側では、プラズマの強度が他の部位に比べて不足していることが示唆された。そのため、前記中心側については筐体90を当該中心側に近接させること(ラビリンス構造部110を設けること)が好ましいことが分かった。また、外周側についてはプラズマの量を多く設定すること(2つのプラズマ発生部81、82を設けて、中心側よりも外周側の高周波電力を大きくするか、あるいはプラズマ発生部80を扇状に配置する)が好ましいことが分かった。尚、図27において「サイクルレート」とは、回転テーブル2の1回転あたりの成膜量(膜厚)を示している。
【0099】
(実験例2)
以上の実験例1により、中心部領域C側に筐体90を近接配置することによって、当該中心部領域C側において改質の度合いが揃うことが分かった。この場合には、回転テーブル2を支持するコア部21について、回転テーブル2の下方側よりも上方側が小さくなる。また、天板11については開口部11aを形成しているので、強度的に不足するおそれもある。そのため、この実験では、天板11の重量や真空容器1内を真空引きした時の差圧荷重などの負荷に、当該天板11や凸状部4と突出部5との接続部などが耐えられるか否かについて強度解析を行った。この解析は、既述の真空容器1の内壁面及び天板11を保護するための保護カバーとこれら内壁面及び天板11との間の圧力及び処理雰囲気の圧力を夫々Pm及びPnとした時に、これらの差圧ΔP(ΔP=Pm−Pn)が1Torr及び4Torrの場合について計算を行った。
その結果、図29及び図30に示すように、いずれの場合についても凸状部4と突出部5との接続部について強度は不足していないことが分かった。また、サイドリング100についても同様に十分な強度となっていた。
そして、図31に示すように、天板11についても十分な強度となっていた。
【0100】
(実験例3)
続いて、ファラデーシールド95の有無によってウエハW(具体的にはウエハWに形成されたデバイスのゲート酸化膜)の受ける電気的ダメージがどうなるか評価した。実験には、電気的ダメージの許容量の互いに異なるダミーウエハを複数種類(6種類)用意して、このウエハに対してプラズマを照射した。
【0101】
ファラデーシールド95を設けない場合には、図32の上段に示すように、いずれのウエハ(右端のウエハは最も前記許容量の大きいウエハについての結果を示しており、当該ウエハから左側に向かって次第に前記許容量の小さいウエハについての結果を並べている)についても、電気的ダメージを受けていることが分かった。一方、図32の中段に示すように、ファラデーシールド95を設けることにより、いずれのウエハについても電気的ダメージが格段に小さくなっていた。従って、ファラデーシールド95を設けることにより、ゲート酸化膜の絶縁破壊が抑えられる。
【0102】
この時、実験に用いたアンテナ83の形状は、ある一部がスリット97の向きに対して直交する方向からずれていることが分かった。そこで、周方向に亘ってスリット97の向きに対して直交する方向となるようにアンテナ83を調整し、再度実験を行った。その結果、図32の下段に示すように、電気的ダメージは、いずれのウエハについてもほとんど見受けられなかった。
【0103】
(実験例4)
次に、薄膜を形成した後、プラズマ改質を行うか否かによって、更にはファラデーシールド95の有無によって電気的特性(酸化膜の耐電圧特性)がどのように変化するか実験を行った。即ち、ウエハWの表面の酸化膜に水銀プローブを接触させ、電気的ストレス(電流)をこの酸化膜に加えた時の電圧を測定した。従って、電圧が小さい方がリーク電流が少なく、酸化膜に含まれる不純物濃度が小さいと言える。
【0104】
その結果、図33及び図34に示すように、プラズマ改質を行うことによって、プラズマ改質を行わない例よりも電気的特性が向上しており、熱酸化膜の電気的特性とほぼ同程度となっていた。具体的には、プラズマ改質を行わない場合には、1×10−8A/cm2の電流密度を加えた時の電界が0.4MV/cmであり、プラズマ改質を行った場合に同じ電流密度を加えた時の電界が8MV/cmとなっていた。従って、プラズマ改質を行うことにより、不純物濃度及びリーク電流の小さい酸化膜が得られることが分かった。
【0105】
この時、ファラデーシールド95の有無によっては、電気的特性には変化がなかった。従って、ファラデーシールド95は、プラズマ改質に悪影響を及ぼしていないことが分かる。図33は、薄膜の成膜後に一括してプラズマ改質した例、図34は回転テーブル2の回転の度にプラズマ改質した例を示している。この実験では、ファラデーシールド95を設けない場合にはアンテナ83の巻回回数を1巻に設定すると共に、ファラデーシールド95を設けた場合にはアンテナ83の巻回回数を3巻程度としている。
【0106】
(実験例5)
この実験例では、薄膜のウエットエッチングレートを調べた。即ち、薄膜が緻密であればある程、ウエットエッチングレートが低くなり、一方薄膜中に例えば不純物などが含まれている程、ウエットエッチングレートが高くなるので、ウエットエッチングレートを介して薄膜の緻密さを測定した。この実験は、フッ酸水溶液にウエハを浸漬し、フッ酸水溶液によりエッチングされた薄膜の膜厚を計算した。
【0107】
その結果、図35に示すように、薄膜を形成した後プラズマ改質を行わなかった場合(各参考例)と比べて、薄膜の形成と共にプラズマ改質を行うことにより、薄膜が緻密化していた。そして、比較例(ファラデーシールド95なし)の結果に対して、ファラデーシールド95を設けた例(実施例31、32)の薄膜は、ほぼ同程度の膜質となっていた。そのため、この実験からも、ファラデーシールド95は、プラズマ改質に悪影響を及ぼしていないことが分かった。図35において、実施例31は回転テーブル2が回転する度にプラズマ改質を行った例、実施例32はプラズマ改質を行わずに回転テーブル2を9回回転させて反応生成物を積層した後、各処理ガスの供給を停止してプラズマ改質した例を示している。尚、この実験においても、ファラデーシールド95を設けない場合にはアンテナ83の巻回回数を1巻に設定すると共に、ファラデーシールド95を設けた場合にはアンテナ83の巻回回数を3巻程度にしている。
図36は、ウエットエッチングを行った後の薄膜の膜厚の分布を示している。薄膜の膜厚についても、ファラデーシールド95の有無によってほとんど変化していないことが分かった。
【0108】
(実験例6)
図37は、ファラデーシールド95の有無によって膜厚の均一性がどのようになるか評価した結果を示している。図37の上段に示した結果は、左側から右側に向かって順番に「改質なし」、「一括改質(ファラデーシールド95なし)」及び「一括改質(ファラデーシールド95あり)」を示している。この結果から、ほぼ薄膜成膜後の膜厚分布通りの膜厚分布となるようにプラズマ改質が行われていることが分かる。即ち、プラズマ改質によって膜厚分布がほとんど変化していない。また、図37の下段には、左側に「毎サイクル改質(ファラデーシールド95なし)」及び「毎サイクル改質(ファラデーシールド95あり)」を示している。
【0109】
(実験例7)
続いて、ファラデーシールド95の有無によって石英のスパッタ量がどのように変わるか実験を行った。この実験は、各処理ガスを供給せずに、即ち薄膜を形成せずに、ウエハを載置した回転テーブル2を回転させてプラズマ空間10を通過させた。その結果、図38に示すように、ファラデーシールド95を設けることにより、石英のスパッタ量が大幅に減少していた。
【0110】
尚、CCPタイプ(一対の電極間でプラズマを発生させるタイプ)のプラズマ発生部を用いて同様の実験を行ったところ、図39の結果が得られた。従って、既述のようにアンテナ83をコイル状に巻回したICPタイプのプラズマ発生部を用いることにより、石英のスパッタ量が約100倍オーダー程度少なくなることが分かる。
【0111】
(実験例8)
図40は、既述の図24(他のスリット97よりも長さ寸法の短い補助スリット97aを設けた例)及び図25(スリット97のピッチを広げた例)のファラデーシールド95を用いた時に、図23(スリット97の配置レイアウトの調整なし)のファラデーシールド95を用いた場合と比べてプラズマ改質の度合いがどのようになるか実験した結果を示している。この実験では、各処理ガスを供給せずに、プラズマ発生用ガス(Arガス、O2ガス及びNH3ガス)を供給すると共にこのガスをプラズマ化した。そして、ウエハWが曝されたプラズマの量を確認するために、ウエハWの表面(シリコン層)がプラズマにより酸化されて形成される酸化膜の膜厚について、回転テーブル2の半径方向において夫々複数箇所で測定した。
【0112】
その結果、スリット97の配置レイアウトを調整することにより、回転テーブル2の半径方向における膜厚の均一性が改善されていた。具体的には、回転テーブル2の中心部側においてスリット97の開口面積を小さくすると、当該中心部側における酸化膜の膜厚が減少していた。また、回転テーブル2の中心部側のスリット97の開口面積が小さい程、前記均一性が良好になっていた。即ち、膜厚の均一性は、図23<図24<図25の順番で良好になっていた。従って、反応生成物の成膜処理と共にこの反応生成物のプラズマ改質処理を行う場合においても、同様にプラズマの改質の度合いが回転テーブル2の半径方向において揃うことが分かる。
【符号の説明】
【0113】
W ウエハ
1 真空容器
2 回転テーブル
10 プラズマ空間
80、81、82 プラズマ発生部
83 アンテナ
90 筐体
92 ガス規制面
95 ファラデーシールド
97 スリット
100 サイドリング
101 ガス流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内にて第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給するサイクルを複数回行って基板に成膜処理を行う成膜装置において、
基板を水平に載置する基板載置領域がその一面側に形成され、前記真空容器内にて前記基板載置領域を公転させるための回転テーブルと、
この回転テーブルの周方向に互いに分離領域を介して離間した領域に夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを供給する第1の処理ガス供給部及び第2の処理ガス供給部と、
基板に対してプラズマ処理を行うために、前記真空容器内にプラズマ発生用ガスを供給するプラズマ発生ガス供給部と、
前記回転テーブル上にてプラズマ発生ガスを誘導結合によりプラズマ化するように、当該回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナと、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止するために、各々アンテナと直交する方向に伸びるスリットがアンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドと、を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記アンテナ及び前記ファラデーシールドは、プラズマ処理を行う領域から誘電体により気密に区画されていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記回転テーブルに連通するように前記真空容器の天板に形成された開口部と、
前記アンテナが収納され、前記開口部に嵌合すると共に当該開口部の口縁部との間にシール部が形成された誘電体からなる筐体と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記分離領域に分離ガスを供給するための分離ガス供給部を設け、
前記筐体の下面側の周縁部には、第1の処理ガス、第2の処理ガス及び分離ガスが前記筐体の下方領域へ侵入することを抑えるために、周方向に亘って下方側に伸び出すガス規制用の突起部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記回転テーブルの周囲には、横方向に気流が形成される凹部状の気流通路が周方向に亘ってリング状に形成され、
この気流通路に各々連通するように、前記回転テーブルの回転方向において第1の処理ガスの供給される第1の処理領域の下流側と、前記プラズマ発生用ガスの供給されるプラズマ領域の下流側と、には夫々第1の排気口及び第2の排気口が形成され、
前記気流通路には、当該気流通路に露出する前記真空容器の内壁部を保護するためのリング状のカバー体が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記アンテナは、鉛直軸回りに巻回されると共に、平面的に見た時に前記回転テーブルの回転中心側から外周側に向かって広がるように扇状に配置されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項7】
前記プラズマ発生ガス供給部は、前記回転テーブルの半径方向に伸びると共に側面に複数のガス吐出口の形成されたガスノズルであり、
前記プラズマ発生ガス供給部は、前記筐体の下方領域において前記回転テーブルの回転方向上流側に配置され、
前記ガス吐出口の各々は、前記回転テーブルの回転方向上流側からの前記下方領域への分離ガスの侵入を抑えるために、前記上流側を各々向いていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項8】
前記プラズマ発生用ガス供給部は、前記第2の処理ガス供給部を兼用していることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項9】
前記回転テーブルの中心部側における前記スリットは、基板に対して行われるプラズマ処理の度合いを前記回転テーブルの半径方向において揃えるために、前記回転テーブルの外縁部側よりも開口面積が小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項10】
真空容器内にて第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給するサイクルを複数回行って基板に成膜処理を行う成膜方法において、
真空容器内に設けられた回転テーブルの一面側の基板載置領域に基板を水平に載置すると共に、この基板載置領域を公転させる工程と、
次いで、前記回転テーブルの周方向に互いに分離領域を介して離間した領域に夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを供給する工程と、
基板に対してプラズマ処理を行うために、前記真空容器内にプラズマ発生用ガスを供給する工程と、
前記回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナによって、プラズマ発生ガスを誘導結合によりプラズマ化する工程と、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、各々アンテナと直交する方向に伸びるスリットがアンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドにより、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止する工程と、を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項11】
前記プラズマ化する工程は、プラズマ処理を行う領域から誘電体により気密に区画された前記アンテナにより、前記真空容器内のプラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程であり、
前記阻止する工程は、プラズマ処理を行う領域から前記誘電体により気密に区画された前記ファラデーシールドにより、前記電界成分の通過を阻止する工程であることを特徴とする請求項10に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記プラズマ化する工程は、前記回転テーブルに連通するように前記真空容器の天板に形成された開口部内に、この開口部に嵌合すると共に当該開口部の口縁部との間にシール部が形成された誘電体からなる筐体を配置し、この筐体内に収納された前記アンテナによりプラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程であることを特徴とする請求項11に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記電界成分の通過を阻止する工程は、基板に対して行われるプラズマ処理の度合いを前記回転テーブルの半径方向において揃えるために、前記回転テーブルの外縁部側よりも前記回転テーブルの中心部側において開口面積が小さくなるように形成された前記スリットを有する前記ファラデーシールドを用いて行われる工程であることを特徴とする請求項10ないし12のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項14】
真空容器内にて複数種類の処理ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、請求項10ないし13のいずれか一つに記載の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
真空容器内にて第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給するサイクルを複数回行って基板に成膜処理を行う成膜装置において、
基板を水平に載置する基板載置領域がその一面側に形成され、前記真空容器内にて前記基板載置領域を公転させるための回転テーブルと、
この回転テーブルの周方向に互いに分離領域を介して離間した領域に夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを供給する第1の処理ガス供給部及び第2の処理ガス供給部と、
基板に対してプラズマ処理を行うために、前記真空容器内にプラズマ発生用ガスを供給するプラズマ発生ガス供給部と、
前記回転テーブル上にてプラズマ発生ガスを誘導結合によりプラズマ化するように、当該回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナと、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止するために、各々アンテナと直交する方向に伸びるスリットがアンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドと、を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記アンテナ及び前記ファラデーシールドは、プラズマ処理を行う領域から誘電体により気密に区画されていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記回転テーブルに連通するように前記真空容器の天板に形成された開口部と、
前記アンテナが収納され、前記開口部に嵌合すると共に当該開口部の口縁部との間にシール部が形成された誘電体からなる筐体と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記分離領域に分離ガスを供給するための分離ガス供給部を設け、
前記筐体の下面側の周縁部には、第1の処理ガス、第2の処理ガス及び分離ガスが前記筐体の下方領域へ侵入することを抑えるために、周方向に亘って下方側に伸び出すガス規制用の突起部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記回転テーブルの周囲には、横方向に気流が形成される凹部状の気流通路が周方向に亘ってリング状に形成され、
この気流通路に各々連通するように、前記回転テーブルの回転方向において第1の処理ガスの供給される第1の処理領域の下流側と、前記プラズマ発生用ガスの供給されるプラズマ領域の下流側と、には夫々第1の排気口及び第2の排気口が形成され、
前記気流通路には、当該気流通路に露出する前記真空容器の内壁部を保護するためのリング状のカバー体が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記アンテナは、鉛直軸回りに巻回されると共に、平面的に見た時に前記回転テーブルの回転中心側から外周側に向かって広がるように扇状に配置されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項7】
前記プラズマ発生ガス供給部は、前記回転テーブルの半径方向に伸びると共に側面に複数のガス吐出口の形成されたガスノズルであり、
前記プラズマ発生ガス供給部は、前記筐体の下方領域において前記回転テーブルの回転方向上流側に配置され、
前記ガス吐出口の各々は、前記回転テーブルの回転方向上流側からの前記下方領域への分離ガスの侵入を抑えるために、前記上流側を各々向いていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項8】
前記プラズマ発生用ガス供給部は、前記第2の処理ガス供給部を兼用していることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項9】
前記回転テーブルの中心部側における前記スリットは、基板に対して行われるプラズマ処理の度合いを前記回転テーブルの半径方向において揃えるために、前記回転テーブルの外縁部側よりも開口面積が小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項10】
真空容器内にて第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給するサイクルを複数回行って基板に成膜処理を行う成膜方法において、
真空容器内に設けられた回転テーブルの一面側の基板載置領域に基板を水平に載置すると共に、この基板載置領域を公転させる工程と、
次いで、前記回転テーブルの周方向に互いに分離領域を介して離間した領域に夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを供給する工程と、
基板に対してプラズマ処理を行うために、前記真空容器内にプラズマ発生用ガスを供給する工程と、
前記回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナによって、プラズマ発生ガスを誘導結合によりプラズマ化する工程と、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、各々アンテナと直交する方向に伸びるスリットがアンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドにより、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止する工程と、を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項11】
前記プラズマ化する工程は、プラズマ処理を行う領域から誘電体により気密に区画された前記アンテナにより、前記真空容器内のプラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程であり、
前記阻止する工程は、プラズマ処理を行う領域から前記誘電体により気密に区画された前記ファラデーシールドにより、前記電界成分の通過を阻止する工程であることを特徴とする請求項10に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記プラズマ化する工程は、前記回転テーブルに連通するように前記真空容器の天板に形成された開口部内に、この開口部に嵌合すると共に当該開口部の口縁部との間にシール部が形成された誘電体からなる筐体を配置し、この筐体内に収納された前記アンテナによりプラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程であることを特徴とする請求項11に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記電界成分の通過を阻止する工程は、基板に対して行われるプラズマ処理の度合いを前記回転テーブルの半径方向において揃えるために、前記回転テーブルの外縁部側よりも前記回転テーブルの中心部側において開口面積が小さくなるように形成された前記スリットを有する前記ファラデーシールドを用いて行われる工程であることを特徴とする請求項10ないし12のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項14】
真空容器内にて複数種類の処理ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、請求項10ないし13のいずれか一つに記載の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図20】
【図21】
【図22】
【図27】
【図33】
【図34】
【図35】
【図38】
【図39】
【図18】
【図19】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図36】
【図37】
【図40】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図20】
【図21】
【図22】
【図27】
【図33】
【図34】
【図35】
【図38】
【図39】
【図18】
【図19】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図36】
【図37】
【図40】
【公開番号】特開2012−253313(P2012−253313A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198396(P2011−198396)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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