説明

搬送装置の衝突防止制御装置と方法

【課題】同一の走行レール上で往復動する搬送装置において、他機の移動前にその目的位置、移動方向、移動距離を高速かつ高い信頼性で検知でき、これに基づき、無駄な減速、停止、待機等を発生させずにリアルタイムで自機を制御でき、かつ他機に異常が生じた場合、他機を制御でき、これにより安全装置の多重化が可能となる搬送装置の衝突防止制御装置と方法を提供する。
【解決手段】同一の直線軌道3上を往復動する自機1及び他機2の搬送装置にそれぞれ搭載される搬送装置の衝突防止制御装置。この衝突防止制御装置は、自機と他機の離隔距離Aを非接触かつリアルタイムに直接検出する距離センサ12(レーザ距離計)と、自機と他機の目的位置、移動方向、移動距離を排他的かつリアルタイムに相互通信する相互通信装置14(パラレル光伝送装置)と、自機と他機の離隔距離と自機と他機の目的位置、移動方向、移動距離から、自機と他機の衝突を防止するように自機と他機を制御する走行制御装置16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の直線軌道上を往復動する搬送装置の衝突防止制御装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スタッカークレーン、天井クレーン、天井走行台車、シャトル式トランスライナなどの搬送装置(以下、単に「搬送装置」という)は、搬送効率を高めるために、2台又は3台以上を同一の直線軌道上で往復動させる場合がある。このような場合、搬送装置同士の衝突を防止するために、衝突防止手段が不可欠となる。
【0003】
従来の衝突防止手段は、各搬送装置に距離センサ(反射型センサやレーザ距離計)を備え、衝突可能性のある別の搬送装置(以下、「他機」と呼ぶ)までの距離を測定するとともに、制御する搬送装置(以下、「自機」と呼ぶ)と他機の間に干渉領域を設けて衝突を防止していた。
すなわち、走行中の干渉領域に他機を検出したときには、減速又は停止し、走行開始前に干渉領域の他機を検出したときには、他機が干渉領域外へ移動するまで、停止又は待機して、衝突を未然に防止していた。
【0004】
近年、自動倉庫等のサイクルタイムの短縮が重要な課題となっており、そのためには搬送装置の高速化と稼働率の上昇が不可欠である。
しかし、従来の衝突防止手段の場合、同一の走行レール上で往復動する搬送装置の減速、停止、待機等の時間が必要以上に長くなり、搬送効率、すなわち搬送装置の稼働率を高められない問題点があった。
そこで、同一の走行レール上で往復動する搬送装置の搬送効率(稼働率)を高めるために、例えば、特許文献1,2の衝突防止手段が既に提案されている。
【0005】
特許文献1の「搬送台車の衝突防止装置」は、図7に示すように、各搬送台車52a,52bの距離センサ58a,58bにより、相対関係にある搬送台車との相対距離を取得し、この相対距離に基づいて各コントローラ50a,50bの相対速度算出部で相対速度を算出し、コントローラ50a,50bの判断部で相対距離と相対速度に基づいて、相対速度が遅く相対距離の変化が小さく、相対する搬送台車52a,52bが安全制動領域内の衝突可能性のない場合と、相対速度が早く相対距離の減少率が大きく衝突可能性がある場合とを判断し、その判断結果に基づいて、各コントローラ50a,50bで適切な搬送台車の速度制御を行うものである。
またこの実施例において、相対距離検出手段(距離センサ58a,58b)として、レーザ測長器を例示している。
【0006】
特許文献2の「搬送システム」は、図8に示すように、上位CPU61がクレーン1号機62,2号機63に搬送指令を割り付け、各クレーンが自機の位置、速度、目的地、状態等の情報を互いに通信し、各クレーンは目的までの走行と他のクレーンとの干渉の有無を、自機及び他機の位置、速度、目的地、状態等に基づいて判断し、干渉を避けるように自機の位置や速度を規制するものである。
またこの実施例において、通信部として、赤外線通信、走行レールを用いた通信、給電線を用いた通信を例示している。
【0007】
【特許文献1】特開2000−20127号公報、「搬送台車の衝突防止装置」
【特許文献2】特開2005−306570号公報、「搬送システム」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の衝突防止手段は、距離センサで取得した相対距離に基づいて相対速度を算出し、この相対距離と相対速度に基づいて、衝突可能性のない場合と衝突可能性がある場合とを判断し、適切な搬送台車の速度制御を行うので、衝突可能性のない場合には走行でき、その分、減速、停止、待機等の時間を低減して搬送効率(搬送装置の稼働率)を高めることができる。
しかし、この手段では、各搬送台車は、他機が実際に移動するまでその目的位置、移動方向、移動距離を予見できないため、その分、無駄な減速、停止、待機等が発生する場合があった。例えば、他機が自己の目的位置の直前で停止した後に後退する場合でも、その間、減速又は停止して無駄時間が発生することがあった。
【0009】
一方、特許文献2の衝突防止手段は、各クレーンが自機の位置、速度、目的地、状態等の情報を互いに通信するので、自機及び他機の位置、速度、目的地、状態等に基づいて自機の位置や速度を規制することができる。
しかし、この手段では、赤外線通信、走行レールを用いた通信、又は給電線を用いた通信で相互に通信するため伝送速度が遅くリアルタイムでの制御が困難である。また特に搬送台車が3台以上の場合、通信相手の特定、判別に通信支障が生じやすく、安全性が低い問題があった。さらに、自機は正常だが他機に異常が生じた場合、他機を制御できないため、安全装置の多重化が困難だった。
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、同一の走行レール上で往復動する搬送装置において、他機の移動前にその目的位置、移動方向、移動距離を高速かつ高い信頼性で検知でき、これに基づき、無駄な減速、停止、待機等を発生させずにリアルタイムで自機を制御でき、かつ他機に異常が生じた場合、他機を制御でき、これにより安全装置の多重化が可能となる搬送装置の衝突防止制御装置と方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、同一の直線軌道上を往復動する自機及び他機の搬送装置にそれぞれ搭載される搬送装置の衝突防止制御装置であって、
自機と他機の離隔距離を非接触かつリアルタイムに直接検出する距離センサと、
自機と他機の目的位置、移動方向、移動距離を排他的かつリアルタイムに相互通信する相互通信装置と、
自機と他機の離隔距離と自機と他機の目的位置、移動方向、移動距離から、自機と他機の衝突を防止するように自機と他機を制御する走行制御装置とを備える、ことを特徴とする搬送装置の衝突防止制御装置が提供される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記距離センサは、隣接する他機毎に設けられたレーザ距離計であり、
前記相互通信装置は、隣接する他機毎に設けられたパラレル光伝送装置である。
【0013】
また本発明によれば、同一の直線軌道上を往復動する自機及び他機の搬送装置をそれぞれ制御する搬送装置の衝突防止制御方法であって、
自機と他機の離隔距離を非接触かつリアルタイムに直接検出する距離検出ステップと、
自機と他機の目的位置、移動方向、移動距離を排他的かつリアルタイムに相互通信する相互通信ステップと、
自機と他機の離隔距離と自機と他機の目的位置、移動方向、移動距離から、自機と他機の衝突を防止するように自機と他機を制御する走行制御ステップとを有する、ことを特徴とする搬送装置の衝突防止制御方法が提供される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記走行制御ステップは、自機の停止中において、
自機の目的位置が他機との中間位置にあり、かつ前記離隔距離が自機の目的位置までの残距離より大きい場合、或いは他機が待機中でありかつ離隔距離が安全停止距離より大きい場合に、自機に走行開始信号を出力する走行開始ステップと、
離隔距離が自機の残距離より小さく、かつ他機が移動中又は離隔距離が自機の安全停止距離より小さい場合に、自機の目的データ異常信号を出力する異常信号ステップとを有する。
【0015】
また、前記走行制御ステップは、自機の走行中において、
前記離隔距離が、自機と他機の残距離の和より大きく、かつ相対速度が自機の残距離に対し十分小さい場合に、自機に走行継続信号を出力する走行継続ステップと、
離隔距離が、自機と他機の残距離の和より小さく、かつ他機が接近中又は停止中の場合に、自機に非常停止信号を出力する非常停止ステップと、
自機と他機の離隔距離が、自機と他機の残距離の和より小さく、かつ他機が待機中であり、かつ自機の安全停止距離より小さい場合に自機に減速信号を出力する減速ステップとを有する。
【0016】
また、前記走行制御ステップは、前記離隔距離が、自機と他機の安全停止距離の和に近く、かつ他機が接近中である場合に、自機と他機の両方に非常停止信号又は減速信号を出力するインターロックステップを有する。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明の装置及び方法によれば、隣接する他機毎に設けられた相互通信装置(例えば、パラレル光伝送装置)を備え、自機と他機が目的位置、移動方向、移動距離をリアルタイムに相互通信するので、自機と他機がそれぞれどの辺りで干渉領域に入るかをそれぞれ判断することができる。
また、自機と他機が隣接する他機毎に設けられた距離センサ(例えば、レーザ距離計)を備えるので、離隔距離をそれぞれリアルタイムに直接検出でき、離隔距離を高い精度(例えば1mm以内)で把握することができる。
【0018】
従って、相互通信装置(パラレル光伝送装置)のリアルタイム通信により移動方向や移動距離を相互にリアルタイムに知らせることにより、ある程度高速でお互いが接近することが可能となる。
また、隣接する他機毎に設けられた距離センサ(レーザ距離計)で直接他機との離隔距離を計測することにより、実際に他機がどういう動きをしているか確認がとれる。
【0019】
さらに、隣接する他機毎に設けられた相互通信装置(パラレル光伝送装置)で他機を監視することにより、万が一接近しすぎた場合でも他機に対して、非常停止指令や減速指令を出すことにより、お互いがお互いをコントロールする、インターロックを取ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の衝突防止制御装置を備えた搬送装置の模式図である。
この図において、自機1及び他機2の搬送装置が同一の直線軌道3上を往復動するようになっている。
搬送装置は、例えば、スタッカークレーン、天井クレーン、天井走行台車、シャトル式トランスライナであるが、本発明はこれらに限定されず、その他の装置であってもよい。
同一の直線軌道3は、例えば単一又は複数の直線レールである。
【0022】
また、この図において、自機1及び他機2の搬送装置をそれぞれ1台づつ示しているが、他機2の搬送装置は、自機1の搬送装置の両側に2台あってもよい。
同様に他機2の両側に自機1と他機2、又は2台の他機があってもよい。従って、3台以上の搬送装置が同一の直線軌道3上を往復動するようになっていてもよい。
【0023】
図1において、本発明の衝突防止制御装置は、自機1及び他機2の搬送装置にそれぞれ搭載された距離センサ12、相互通信装置14、及び走行制御装置16からなる。
【0024】
距離センサ12は、自機1と他機2の離隔距離Aを非接触かつリアルタイムに直接検出する。距離センサ12は、好ましくは隣接する他機毎に設けられたレーザ距離計である。レーザ距離計によるレーザ光は、直線軌道3と平行であり、例えば1mm未満の誤差で、直線軌道3と平行な離隔距離Aをリアルタイムに直接検出する。
また、必要により、自機1と他機2に相手側のレーザを反射する反射板11を設けるのがよい。
なお、この図では、自機1及び他機2の両側にそれぞれ1台づつ(合計2台)の距離センサ12を備えているが、反対側(外側)に他機がない場合には、反対側(外側)の距離センサ12を省略することができる。
【0025】
なお、距離センサ12とは別に、自機1と他機2の現在位置を検出するために、別の距離センサ(好ましくはレーザ距離計)を、自機1と他機2又は図示しない固定位置に設けるのがよい。
【0026】
相互通信装置14は、好ましくは隣接する他機毎に設けられたパラレル光伝送装置であり、パラレル光送信/光受信モジュールを備え、直線軌道3と平行に発射されるレーザ光を用いたパラレル光伝送により自機1と隣接する他機2との間でデータを排他的かつリアルタイムに相互通信する。
また、このデータは、例えば、自機1と他機2の目的位置、移動方向、移動距離であるが、その他のデータ、例えば、移動速度等を含んでもよい。
【0027】
かかるパラレル光伝送装置を用いることにより、自機1と他機2の離隔距離が長い(例えば100m以上)場合でも、高速の伝送速度でリアルタイムにデータの送受信ができる。また、搬送台車が3台以上の場合でも、隣接する他機毎に設けられたパラレル光伝送装置により、通信相手の特定、判別が容易であり、通信障害が非常に少なく、安定した送受信ができ、安全性を高めることができる。
【0028】
走行制御装置16は、例えば制御用PCであり、自機1と他機2の離隔距離Aと自機1と他機2の目的位置、移動方向、移動距離から、自機1と他機2の衝突を防止するように自機1と他機2を制御する。走行制御装置16は、自機1及び他機2の両側にそれぞれ1台づつ(合計2台)の距離センサ12及び相互通信装置14を備える場合にそれぞれ1台づつ(合計2台)を設けてもよいが、全体を1台で制御してもよい。
【0029】
図2は、本発明の別の衝突防止制御装置を備えた搬送装置の模式図である。
この図において、本発明の衝突防止制御装置は、自機1及び他機2の搬送装置にそれぞれ搭載された距離センサ兼用の相互通信装置15、及び走行制御装置16からなる。
【0030】
距離センサ兼用の相互通信装置15は、上述した距離センサ12と相互通信装置14の両方の機能を有している。すなわち距離センサ兼用の相互通信装置15は、好ましくは隣接する他機毎に設けられたパラレル光伝送装置であり、パラレル光送信/光受信モジュールを備え、自機1と他機2の離隔距離Aを非接触かつリアルタイムに直接検出すると共に、直線軌道3と平行に発射されるレーザ光を用いたパラレル光伝送により自機1と隣接する他機2との間でデータを排他的かつリアルタイムに相互通信する。
距離センサ兼用の相互通信装置15による離隔距離Aの検出は、例えば、パルス信号を同期して発信し、その時間遅れから演算することができる。
【0031】
走行制御装置16及びその他の構成は、図1の例と同様である。
【0032】
図3は、本発明による衝突防止制御方法の全体制御フロー図である。
この図に示すように、本発明による衝突防止制御方法は、同一の直線軌道上を往復動する自機及び他機の搬送装置をそれぞれ制御する搬送装置の衝突防止制御方法であり、距離検出ステップS1、相互通信ステップS2、および走行制御ステップS3からなる。
【0033】
距離検出ステップS1では、好ましくは隣接する他機毎に設けられたレーザ距離計(又は距離センサ兼用の相互通信装置15)により、自機1と他機2の離隔距離Aを非接触かつリアルタイムに直接検出する。
【0034】
相互通信ステップS2では、好ましくは隣接する他機毎に設けられたパラレル光伝送装置により、自機と他機の目的位置、移動方向、移動距離を排他的かつリアルタイムに相互通信する。
【0035】
走行制御ステップS3では、例えば制御用PCにより、自機1と他機1の離隔距離Aと自機と他機の目的位置、移動方向、移動距離から、自機と他機の衝突を防止するように自機と他機を制御する。
【0036】
上述した距離検出ステップS1、相互通信ステップS2、および走行制御ステップS3は、例えば1msec程度毎に順次繰り返して行い、自機と他機の走行を実質的にリアルタイムに制御するのがよい。
【0037】
図4は、本発明の走行制御ステップにおける第1の制御フロー図である。
この図に示すように、走行制御ステップS3は、自機1の停止中において、走行開始ステップS4と異常信号ステップS5を有する。
【0038】
走行開始ステップS4は、図1又は図2において自機1の目的位置が他機2との中間位置にあり、かつ(1)ステップS31で自機1と他機2の離隔距離Aが自機1の目的位置までの残距離B1より大きい(YES)場合、或いは、(2)ステップS32で離隔距離Aが十分安全な距離(例えば70m)よりは小さく(YES)、ステップS33で他機が待機中であり(YES)、かつ離隔距離Aが安全停止距離(例えば15m)より大きい場合(YES)に、自機1に走行開始信号を出力する。
【0039】
ここで安全停止距離は、最大速度から平均減速度で減速した際の減速距離に若干の余裕を加算して決定する。
上記(1)(2)の場合には、安全停止距離内に他機2がなく、走行開始してもいつでも余裕を持って停止できるからである。
【0040】
異常信号ステップS5は、ステップS31で離隔距離Aが自機の残距離B1より小さく(NO)、かつ(3)ステップS33で他機2が移動中(NO)又は(4)ステップS34で離隔距離Aが自機の安全停止距離より小さい(NO)場合に、ステップS35で一定時間(この例で5秒間)待機後に、自機1の目的データ異常信号を出力する。
上記(3)(4)の場合には、走行開始すれば衝突するおそれがあり、全体を統括する上位制御装置からのデータに誤りがあるからである。
【0041】
図5は、本発明の走行制御ステップにおける第2の制御フロー図である。
この図に示すように、走行制御ステップS3は、自機1の走行中において、走行継続ステップS6、非常停止ステップS7、及び減速ステップS8を有する。
【0042】
走行継続ステップS6は、離隔距離Aが、(5)ステップS41で離隔距離Aが十分安全な距離(例えば70m)よりは大きく(YES)、或いは、(6)ステップS42で1台運転(単独運転であり(YES),或いは、(7)ステップS43で離隔距離Aが自機と他機の残距離B1,B2の和より大きく(YES)、かつステップS44で現在速度に対する残離監視がYESの場合に、自機1に走行継続信号を出力する。
【0043】
図6は、本発明の走行制御ステップにおける残離監視制御の説明図である。
この図に示すように、「現在速度に対する残離監視」とは、現在速度から非常停止減速距離を演算し、現在の相対速度が残距離に対し余裕があるか否かを監視することをいう。従って、相対速度が自機の残距離に対し十分小さい場合にはYESとなる。
上記(5)(6)(7)の場合には、走行を継続しても、いつでも余裕を持って停止できるからである。
【0044】
非常停止ステップS7は、(8)ステップS43で離隔距離Aが自機と他機の残距離B1,B2の和より小さく(NO)、かつ、(9)ステップS45で他機が接近中又はステップS46で他機が停止中の場合に、自機に非常停止信号を出力する。
上記(8)(9)の場合には、走行を継続すると、衝突するおそれがあるからである。
【0045】
減速ステップS8は、(10)ステップS43で自機と他機の離隔距離Aが、自機と他機の残距離B1,B2の和より小さく(NO)、かつステップS47で他機が待機中であり、かつステップS48で離隔距離Aが、自機の安全停止距離(例えば15m)より小さい場合に自機に減速信号を出力する。
上記(10)の場合には、走行を継続すると衝突するおそれがあるが、減速すれば防止できるからである。
【0046】
本発明の方法において、走行制御ステップS3は、更に、自機1と他機2の両方に非常停止信号又は減速信号を出力するインターロックステップ(図示せず)を有する。
このインターロックステップでは、離隔距離Aが、自機と他機の安全停止距離の和に近く、かつ他機が接近中である場合に作動する。
【0047】
上述した本発明の装置及び方法によれば、隣接する他機毎に設けられた相互通信装置14(例えば、パラレル光伝送装置)を備え、自機1と他機2が目的位置、移動方向、移動距離をリアルタイムに相互通信するので、自機と他機がそれぞれどの辺りで干渉領域に入るかをそれぞれ判断することができる。
【0048】
また、自機1と他機2が隣接する他機毎に設けられた距離センサ12(例えば、レーザ距離計)を備えるので、離隔距離をそれぞれリアルタイムに直接検出でき、離隔距離Aを高い精度(例えば1mm以内)でリアルタイムに把握することができる。
【0049】
従って、相互通信装置14(パラレル光伝送装置)のリアルタイム通信により移動方向や移動距離を相互にリアルタイムに知らせることにより、ある程度高速でお互いが接近することが可能となる。
【0050】
また、隣接する他機毎に設けられた距離センサ12(レーザ距離計)で直接他機との離隔距離Aを計測することにより、実際に他機がどういう動きをしているか確認がとれる。
さらに、隣接する他機毎に設けられた相互通信装置14(パラレル光伝送装置)で他機を監視することにより、万が一接近しすぎた場合でも他機に対して、非常停止指令や減速指令を出すことにより、お互いがお互いをコントロールする、インターロックを取ることが可能となる。
【0051】
従って、本発明の装置及び方法により、相手が退避中か接近中かをパラレル光伝送装置により把握できるため、見込みで干渉領域への移動が可能となる。
また、レーザ距離計により他機までの距離を把握でき、パラレル光伝送装置によりリアルタイムで他機の移動方向及び距離を監視でき、同時にパラレル光伝送装置により、干渉エリアへ突入時の他機への停止指示が可能となる。
【0052】
従って、本発明の装置及び方法により、サイクルタイムの短縮、能力の向上が可能となり、かつレーザ距離計での衝突防止とパラレル光伝送装置で他機を停止させるインターロックとを併用でき、安全装置の2重化ができる。
【0053】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の衝突防止制御装置を備えた搬送装置の模式図である。
【図2】本発明の別の衝突防止制御装置を備えた搬送装置の模式図である。
【図3】本発明による衝突防止制御方法の全体制御フロー図である。
【図4】本発明の走行制御ステップにおける第1の制御フロー図である。
【図5】本発明の走行制御ステップにおける第2の制御フロー図である。
【図6】本発明の走行制御ステップにおける残離監視制御の説明図である。
【図7】特許文献1の「搬送台車の衝突防止装置」の模式図である。
【図8】特許文献2の「搬送システム」の模式図である。
【符号の説明】
【0055】
1 自機(搬送装置)、2 他機(搬送装置)、3 直線軌道、
11 反射板、12 距離センサ(レーザ距離計)、
14 相互通信装置(パラレル光伝送装置)、
15 距離センサ兼用の相互通信装置、
16 走行制御装置(制御用PC)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の直線軌道上を往復動する自機及び他機の搬送装置にそれぞれ搭載される搬送装置の衝突防止制御装置であって、
自機と他機の離隔距離を非接触かつリアルタイムに直接検出する距離センサと、
自機と他機の目的位置、移動方向、移動距離を排他的かつリアルタイムに相互通信する相互通信装置と、
自機と他機の離隔距離と自機と他機の目的位置、移動方向、移動距離から、自機と他機の衝突を防止するように自機と他機を制御する走行制御装置とを備える、ことを特徴とする搬送装置の衝突防止制御装置。
【請求項2】
前記距離センサは、隣接する他機毎に設けられたレーザ距離計であり、
前記相互通信装置は、隣接する他機毎に設けられたパラレル光伝送装置である、ことを特徴とする請求項1に記載の衝突防止制御装置。
【請求項3】
同一の直線軌道上を往復動する自機及び他機の搬送装置をそれぞれ制御する搬送装置の衝突防止制御方法であって、
自機と他機の離隔距離を非接触かつリアルタイムに直接検出する距離検出ステップと、
自機と他機の目的位置、移動方向、移動距離を排他的かつリアルタイムに相互通信する相互通信ステップと、
自機と他機の離隔距離と自機と他機の目的位置、移動方向、移動距離から、自機と他機の衝突を防止するように自機と他機を制御する走行制御ステップとを有する、ことを特徴とする搬送装置の衝突防止制御方法。
【請求項4】
前記走行制御ステップは、自機の停止中において、
自機の目的位置が他機との中間位置にあり、かつ前記離隔距離が自機の目的位置までの残距離より大きい場合、或いは他機が待機中でありかつ離隔距離が安全停止距離より大きい場合に、自機に走行開始信号を出力する走行開始ステップと、
離隔距離が自機の残距離より小さく、かつ他機が移動中又は離隔距離が自機の安全停止距離より小さい場合に、自機の目的データ異常信号を出力する異常信号ステップとを有する、ことを特徴とする請求項3に記載の衝突防止制御方法。
【請求項5】
前記走行制御ステップは、自機の走行中において、
前記離隔距離が、自機と他機の残距離の和より大きく、かつ相対速度が自機の残距離に対し十分小さい場合に、自機に走行継続信号を出力する走行継続ステップと、
離隔距離が、自機と他機の残距離の和より小さく、かつ他機が接近中又は停止中の場合に、自機に非常停止信号を出力する非常停止ステップと、
自機と他機の離隔距離が、自機と他機の残距離の和より小さく、かつ他機が待機中であり、かつ自機の安全停止距離より小さい場合に自機に減速信号を出力する減速ステップとを有する、ことを特徴とする請求項3に記載の衝突防止制御方法。
【請求項6】
前記走行制御ステップは、前記離隔距離が、自機と他機の安全停止距離の和に近く、かつ他機が接近中である場合に、自機と他機の両方に非常停止信号又は減速信号を出力するインターロックステップを有する、ことを特徴とする請求項3に記載の衝突防止制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−323112(P2007−323112A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149316(P2006−149316)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】