説明

新規のシクロペンタジエニル、インデニルもしくはフルオレニルで置換されたホスフィン化合物及びそれらを触媒反応において用いる使用

本発明は、一般式(1)で示され、その式中のR′及びR′′が無関係にアルキル基、シクロアルキル基及び2−フリル基から選択され、又はR′及びR′′は一緒になって結合されて、リン原子と共に、少なくとも3つの炭素原子を含む炭素−リン単環又は炭素−リン二環を形成し、前記アルキル基、シクロアルキル基及び炭素−リン単環は、非置換であるか、又はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基及びアリールオキシ基の群から選択される少なくとも1つの基によって置換されており、Cpsは、部分的に置換もしくは完全に置換されたシクロペンタジエン−1−イル基であって、縮合環系をもたらす置換を含む基であり、かつ前記シクロペンタジエン−1−イル基の1位での置換は、そのシクロペンタジエン−1−イル基が縮合環系の一部でないか又はインデニル基の一部である場合には必須であるホスフィン化合物に関する。また特許請求の範囲に記載したものは、これらのホスフィンを、触媒反応において配位子として用いる使用並びにこれらのホスフィンの製造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のホスフィン配位子、それらの製造及びそれらを触媒反応、特にアリール、ヘテロアリールもしくはビニルのハロゲン化物及び擬ハロゲン化物を出発物質として使用する有機カップリング反応において用いる使用に関する。
【0002】
有機カップリング反応は、炭素−炭素結合及び炭素−ヘテロ原子結合を形成するのに重要なツールである。カップリング反応の普及は、官能基の存在に対するその許容性のため部分的なものである。この特徴は、非常に複雑な分子の合成でのカップリング反応での使用を可能にするため、カップリング反応は、化学工業及び医薬工業において、例えば農業用化学薬品、医薬品及び色素の製造のために、ビニル化合物をカップリングさせて重合反応用のモノマーを製造するために広範に使用される。
【0003】
該カップリング反応に適した反応物は、アリール、ヘテロアリール及びビニルのハロゲン化物、トリフレート及び他の擬ハロゲン化物である。それらのカップリング反応は、遷移金属化合物、一般にパラジウムもしくはニッケル化合物によって触媒される。パラジウム触媒は、一般に、カップリング基質の適用範囲の広さと、幾らかの場合には触媒活性の点で好ましいが、一方で、ニッケル触媒は、クロロ芳香族化合物及び塩化ビニルの転化の分野において、かつ金属の価格の点で利点を有する。前記のアリール、ヘテロアリール及びビニルハロゲン化物/擬ハロゲン化物の活性化に使用されるパラジウム触媒及びニッケル触媒は、パラジウム(II)及び/又はニッケル(II)並びにパラジウム(0)及び/又はニッケル(0)の錯体であるが、パラジウム(0)/ニッケル(0)化合物が、事実上の反応触媒であることが知られている。特に、文献資料によれば、配位不飽和の14原子及び16原子のパラジウム(0)/ニッケル(0)錯体であってホスフィンなどのドナー配位子で安定化されたものが、活性種として配合されている。
【0004】
カップリング反応用の上述の出発物質のなかでも、ヨウ化物が最も反応性のものである。ヨウ化物がカップリング反応での出発物質として使用される場合に、ホスフィンもしくは類似のドナー配位子によって安定化されていないパラジウムもしくはニッケル化合物を使用することさえも可能である。しかしながら、アリール及びビニルのヨウ化物は、非常に高価な出発化合物であり、それは更に化学量論量のヨウ素塩廃棄物を産する。残留している出発物質、すなわちアリール、ヘテロアリール及びビニルの臭化物、塩化物、トリフレート及び他の擬ハロゲン化物は、触媒的製造において効果的になるためには安定化及び活性化をする配位子の使用を必要とする。
【0005】
数年前までは、前記の触媒によるカップリング反応のほとんどの出発物質としては、もっぱら、ヨウ化物、臭化物及びトリフレートが使用されていた。明らかに、有機塩化物は、それらがその低コストと大きな多様性のため最も好適な反応物であるべきであるが、反応物として使用されなかった。不幸にも、該塩化物は、一般に、ヨウ化物、臭化物及びトリフレートのカップリングに使用される反応条件下で反応性でないことが判明した。塩化物の低い反応性は、通常は、そのC−Cl結合の強度に帰するものである。従って、該塩化物が触媒の金属中心(Pd0)へと酸化的付加することは生じづらいが、これは金属触媒によるカップリング反応における極めて重要な第一工程である。昨年内だけで、塩化物のカップリングで効果的な新規のパラジウム系触媒の開発に関して幾つかの進展があった。
【0006】
カップリング反応について記載された触媒系は、しばしば、ヨウ化物及び活性化臭化物などの不経済的な出発材料でのみ、十分な触媒ターンオーバー数(TON)を有する。それにもかかわらず、不活性化された臭化物、特に塩化物の場合に、一般には、多量の触媒を、通常は1モル%より多くの触媒を添加して、工業的に有用な収率(>90%)を達成する必要がある。さらに、反応混合物の複雑さのため、簡単な触媒再循環は不可能であり、そのため触媒の再循環は、また高いコストを招き、それは通常は工業的規模での実現のための障害である。更に、特に、活性物質もしくは活性物質前駆体の製造において、多量の触媒で作業することは望ましくない。それというのも、触媒残留物が生成物中に残るからである。より最近の活性触媒系は、パラジウム環化(cyclopalladize)されたホスフィン(W.A.Herrmann,C.Brossmer,K.Oefele,C.−P.Reisinger,T.Priermeier,M.Beller,H.Fischer,Angew.Chem.1995,107,1989;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1995,34,1844)又は嵩高いアリールホスフィン(J.P.Wolfe,S.L.Buchwald,Angew.Chem.1999,111,2570;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1999,38,2413)もしくはトリ−t−ブチルホスフィン(A.F.Littke,G.C.Fu,Angew.Chem.1998,110,3586;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1998,37,3387)とパラジウム塩もしくはパラジウム錯体との混合物を基礎としている。
【0007】
しかしながら、これらの触媒でさえも、費用効果的な塩化物を、一般に、工業的な観点から十分に活性化させることができない。従って、高い収率を達成するために、比較的多量で、従って非常に不経済な量の触媒を使用する必要がある。不幸にも、最近の貴金属の価格は依然として高いので、明らかに触媒の生産性を改善することが必要である。従って、近年のあらゆる触媒開発にもかかわらず、今までに塩化物のカップリングについて、工業的に適用可能な反応は、ほんの僅かしか開示されていなかった。
【0008】
遷移金属触媒錯体の特性は、金属の特性と、該金属原子と関連する配位子の特性の両方によって影響されると認識される。例えば、配位子の構造的特徴は、反応速度、位置選択性及び立体選択性に影響を及ぼしうる。
【0009】
嵩高い置換基を有するトリアルキルホスフィンは、様々な種類のカップリング反応での触媒として、遷移金属錯体、特にパラジウム錯体のための非常に有用な配位子である。トリアルキルホスフィンパラジウム錯体の好ましい触媒特性のための主要な理由は、トリアルキルホスフィン配位子の電子の豊富さと立体的な嵩であり、それは、クロスカップリング反応においてPd配位子としてのN−複素環式カルベンでも観察される低配位かつ高活性のPd錯体の形成に有利にはたらく。ホスフィンの顕著な例は、PCy3、P(t−Bu)3及びAd2PR型の配位子(Ad=1−アダマンチル、R=CH2Ph、n−Bu)である(Beller et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2000,4153及びWO−A−02/10178号)。特に、PtBu3は、非常に有用である;その広範の種々のカップリング反応についての有用性が確立されている。
【0010】
嵩高いトリアルキルホスフィン、第一に(t−Bu)3Pを基礎とするPd触媒の大きな欠点は、配位子及び触媒の設計における柔軟性不足である。詳細な構造的及び電子的な改変("触媒微調整")は実現困難であり、それは、クロスカップリング化学ではこの種の配位子が5年ほど前だけで"集団のリーダー"であった所以である。今日、多くの他の特化したより強力な触媒であって、しばしばPdのための配位子としてホスフィン及びN−複素環式カルベンを基礎とするものが入手できる。非常に様々な配位子骨格を有するホスフィンの例は、ブッフバルト型のビフェニル系ホスフィン(S.Buchwald et al.,J.Am.Chem.Soc.1998,9722,EP−A−1097158号)及びN−フェニル−2−ピロール系ホスフィン(M.Beller et al.,Chem.Comm.2004,38)である。これらの種類の配位子は、多くのカップリング反応において良好な性能を示す。それというのも、これらの配位子は、その立体的特性及び電子的特性の微調整が可能だからである。
【0011】
本発明の一つの課題は、良好な配位子のために決定的な特性、例えばトリアルキルホスフィンで完全に満たされる電子の豊富さと有効な供与性を示すが、トリアルキルホスフィンの欠点を有さない新規のホスフィンを提供することである。すなわち、該ホスフィンは、様々な配位子骨格を有するべきである。前記の新規のホスフィンは、より大きな基質フレキシビリティーを有する、例えばコスト集中的な有機塩化物を出発物質として利用する可能性を有し、かつ工業的規模での非常に様々な反応、好ましくはカップリング反応であって、所望の生成物を高収率で、高い触媒生産性で、かつ/又は高純度で生産する反応に適した新規の触媒系において触媒として有用であるべきである。
【0012】
前記課題は、一般式(1)
【化1】

で表されるホスフィン化合物又は一般式(1a)
【化2】

によって表される相応のホスホニウム塩
[式中、
R′及びR′′は、無関係に、アルキル基、シクロアルキル基及び2−フリル基から選択され、又はR′及びR′′は一緒になって結合して、リン原子(phosphorous atom)と共に、少なくとも3個の炭素原子を有する炭素−リン(carbon−phosphorous)単環もしくは炭素−リン二環を形成し、その際、前記アルキル基、シクロアルキル基及び炭素−リン単環は、非置換であるか、もしくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基及びアリールオキシ基の群から選択される少なくとも1つの基によって置換されており、
Cpsは、部分的に置換されたもしくは完全に置換されたシクロペンタジエン−1−イル基であり、それは縮合環系をもたらす置換を含み、かつシクロペンタジエン−1−イル基の1位での置換が必須なのは、該シクロペンタジエン−1−イル基が縮合環系の一部でない場合もしくはインデニル基の一部である場合であり、かつ
-は、アニオンを表す]
(式(A)
【化3】

もしくは式(B)
【化4】

によって表されるホスフィン化合物及びそれらの相応のホスホニウム塩(Aa)及び(Ba)
[式中、Meは、メチル基を表し、かつtBuは、t−ブチル基を表す]を除く)によって解決される。
【0013】
本発明は、また、(i)一般式(1)により表され、その式中、R′、R′′及びCpsが上記のように定義されるホスフィン化合物と、(ii)元素の周期律表の第8族、第9族、第10族及び第11族から選択される遷移金属とを含む配位化合物に関する。本発明の更なる一態様は、前記の配位化合物を、有機化合物の製造のための触媒として又は触媒系の一部として用いる使用である。
【0014】
本発明の更なるもう一つの態様は、一般式(1)によって表されるホスフィン化合物又は一般式(1a)によって表される相応のホスホニウム塩であって、それらの式中、R′、R′′、Cps及びY-が上述のように定義されるものを、元素の周期律表の第8族、第9族、第10族及び第11族から選択される遷移金属化合物と組み合わせて、有機化合物の製造のための触媒として又は触媒系の一部として用いる使用である。
【0015】
本発明は、更に、前記のホスフィン化合物の製造方法において、式HCpsによる化合物を強塩基の使用により脱プロトン化する工程と、得られたアニオンを式R′R′′PXによる亜ホスフィン酸ハロゲン化物とを反応させて、ホスフィン化合物R′R′PCps[式中、Cps、R′及びR′′は上記のように定義され、かつXはClもしくはBrである]を得る工程を含む方法に関する。本発明は、また、前記のホスフィン化合物の代替的な製造方法において、式HCpsによる化合物を強塩基の使用により脱プロトン化する工程と、得られたアニオンを式R′PX2による亜ホスホン酸二ハロゲン化物とを反応させて、式CpsR′PXによる亜ホスフィン酸ハロゲン化物を得る工程と、該亜ホスフィン酸ハロゲン化物を好適な有機金属アルキル化剤でアルキル化して、R′′基を導入して、ホスフィン化合物R′R′PCps[式中、Cps、R′及びR′′は上記のように定義され、かつXはClもしくはBrである]を得る工程を含む方法に関する。
【0016】
本願の範囲内では、特定の基を表すために以下の略語を使用する:
Me=メチル;Et=エチル;iPr=イソプロピル;nPr=n−プロピル;tBu=t−ブチル;nBu=n−ブチル;Cy=シクロヘキシル;Neo−Pn=ネオペンチル;Ad=アダマンチル;Bn=ベンジル;Ph=フェニル;及びCp=シクロペンタジエン−1−イル。
【0017】
Cps基は、単環(すなわちシクロペンタジエニル基)又は多環(例えば1つのベンゼン環がシクロペンタジエニル基に縮合されている場合にはインデニル基又は2つのベンゼン環がシクロペンタジエニル基に縮合されている場合にはフルオレニル基)である。
【0018】
非置換のシクロペンタジエニル基又は非置換のインデニル基を1つの置換基として含むホスフィン化合物並びにこれらのホスフィンを配位子として含む遷移金属錯体は、文献から公知である(Kolodyazhnyi,O.I.によるZhurnal Obshchei Khimii(1980),50(8),1885−6での"Reaction of phosphorylated phosphorus(III) carbon acids with carbon tetrahalides";Kolodyazhnyi,O.I.によるZhurnal Obshchei Khimii(1981),51(11),2466−80での"Reaction of sterically hindered phosphines with carbon tetrahalides";及びFallis,Kathleen A.;Anderson,Gordon K.;Rath,Nigam P.によるOrganometallics(1992),11(2),885−8での"Synthesis of two isomers of (diphenylphosphino)indene and their platinum(II) complexes")。しかしながら、これらの遷移金属錯体を触媒反応で使用することは記載されていなかった。ただ、メタロセン型の配位化合物、例えばフェロセン型の配位化合物であって1もしくは2つのシクロペンタジエニルジアルキルもしくはジアリールホスフィン配位子が金属原子、例えばFeにその非局在化されたπ電子を介してη5結合様式で結合されているもの並びに該化合物を触媒系の一部として用いる使用が、従来技術に開示されているにすぎない(Dubbaka,Srinivas Reddy;Vogel,PierreによるOrganic Letters(2004),6(1),95−98での"Palladium−Catalyzed Suzuki−Miyaura Cross−Couplings of Sulfonyl Chlorides and Boronic Acids";Kawatsura,Motoi;Hartwig,John F.によるJournal of the American Chemical Society(1999),121(7),1473−1478での"Simple,Highly Active Palladium Catalysts for Ketone and Malonate Arylation:Dissecting the Importance of Chelation and Steric Hindrance";Hamann,Blake C.;Hartwig,John F.によるJournal of the American Chemical Society(1998),120(29),7369−7370での"Sterically Hindered Chelating Alkyi Phosphines Provide Large Rate Accelerations in Palladium−Catalyzed Amination of Aryl Iodides,Bromides,and Chlorides,and the First Amination of Aryl Tosylates")。これらのメタロセン型の化合物において、シクロペンタジエニルジアルキルもしくはジアリールホスフィン配位子は、形式的には芳香族アニオンであり、従って、これらの化合物の電子構造は、本発明による配位化合物における電子構造とは完全に異なっている。
【0019】
前記の式(A)によるホスフィン化合物であって1つの置換基としてペンタメチルシクロペンタジエニル基を含むものは、また、従来技術から公知である(Jutzi,Peter;Saleske,Hartmut;Nadler,DorisによるJournal of Organometallic Chemistry(1976),118(1),C8−C10での"The synthesis of thermally stable pentamethylcyclopentadienyl−substituted phosphorus compounds";並びにJutzi,Peter;Saleske,HartmutによるChemische Berichte(1984),117(1),222−33での"Synthesis and dynamic behavior of pentamethylcyclopentadienylphosphines")。しかしながら、遷移金属錯体におけるホスフィン配位子としてのその使用も、触媒反応におけるその使用も述べられていなかった。
【0020】
ペンタメチルシクロペンタジエニル置換されたリン原子を含む他のグループの公知化合物は、タングステン錯体において配位子として使用されるP−ペンタメチルシクロペンタジエニル置換された1H−ホスフィレンである(Streubel,Rainer;Bodea,Maren;Schiemann,Udo;Wismach,Cathleen;Jones,Peter G.;Monsees,Axelによる"Synthesis of the first pentacarbonyltungsten(0) complexes with P−pentamethyIcyclopentadienyl−substituted IH−phosphirene ligands:Crystal structure of [cyclic][{Me55PCH:CPh}W(CO)5]",Zeitschrift fur Anorganische und Allgemeine Chemie(2004),630(8−9),1215−1219)。しかしながら、これらのタングステン錯体を触媒反応において用いる使用は開示されていなかった。
【0021】
1つの置換基としてフルオレニル基を含むほんの少しのホスフィン化合物が該文献には記載されているにすぎない。L.Baiget他によるPohosphorous Sulfur 2003,178,1949における刊行物は、ただフルオレニルジアリールホスフィンを参照しているにすぎない。O.I.KolodyazhnyiによるJ.Gen.Chem.USSR 1981,51,2125は、式(B)によるフルオレニル ジ−t−ブチルホスフィン、その製造及びそのP−イリドへの変換を開示している。改めて、これらの参考資料は、遷移金属錯体におけるホスフィン配位子としてのこれらのホスフィン化合物の使用についても、それらの触媒反応における使用についても述べていない。
【0022】
事実、驚くべきことであり、本発明の功績であったのは、本発明によるホスフィン化合物が、高い効率の触媒として機能しうる遷移金属錯体での配位子として使用できることであった。
【0023】
式(1)
【化5】

及び式(1a)
【化6】

において、
R′及びR′′は、無関係に、アルキル、有利にはC1〜C18−アルキル、より有利にはC1〜C5−アルキル、最も有利にはC3〜C5−アルキル;シクロアルキル、有利にはC5〜C12−シクロアルキル、より有利にはC5〜C10−シクロアルキル、最も有利にはC6〜C8−シクロアルキル;及び2−フリルから選択されてよい。前記アルキル基は、分枝鎖状又は非分枝鎖状であってよい。好ましいアルキル基は、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル及びネオペンチルから選択される。最も好ましいのは、イソプロピルである。シクロアルキル基は、単環式もしくは多環式、例えばアダマンチル及びノルボルニルであってよい。好ましいシクロアルキル基は、シクロヘキシル及びアダマンチルである。好ましくは、R′及びR′′は、同じ基を表し、より好ましくはその両者はイソプロピルもしくはシクロヘキシルである。R′及びR′′によって表される上述の全ての基は、非置換であるか、又はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基及びアリールオキシ基の群から選択される少なくとも1つの基によって置換されていてよい。有利には、R′及びR′′によって表される基は、非置換である。
【0024】
選択的な一実施態様において、R′及びR′′は一緒になって結合されて、リン原子と共に、少なくとも3つの原子を含む炭素−リン単環又は炭素−リン二環が形成される。前記の炭素−リン単環は、一般に非置換であるが、また、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基及びアリールオキシ基の群から選択される少なくとも1つの基によって置換されていてもよい。有利には、R′及びR′′は、一緒になって結合されて、以下に示されるようなリン原子を有する[3.3.1]ホビル(phobyl)基又は[4.2.1]ホビル基が形成される。
【0025】
【化7】

【0026】
本発明によるホスフィン化合物の第一のクラスにおいては、式(1)及び(1a)中のCpsは、単環である。すなわち、部分的に置換もしくは完全に置換されたシクロペンタジエン−1−イル基である。好ましくは、前記の実施態様によるホスフィン化合物並びにその相応のホスホニウム塩は、式(2)及び(2a):
【化8】

[式中、
Rは、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基か脂環式基か複素環式基と該芳香族基か脂環式基か複素環式基の原子をシクロペンタジエニル基の炭素原子と結合する付加的なヘテロ原子とを含むヘテロ原子含有基(全ての上述の基は、非置換であるか、もしくは更なる炭素原子及び/又はヘテロ原子によって置換されている)及びオルガノシリル基からなる群から選択され、
1、R2、R3及びR4は、無関係に、水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基か脂環式基か複素環式基と該芳香族基か脂環式基か複素環式基の原子をシクロペンタジエニル基の炭素原子と結合する付加的なヘテロ原子とを含むヘテロ原子含有基(全ての上述の基は、非置換であるか、もしくは更なる炭素原子及び/又はヘテロ原子によって置換されている)、ハロゲン及びヘテロ原子含有基からなる群から選択される]によって表される。
【0027】
本発明の範囲内では、脂肪族基は、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基を含み、それらの基は分枝鎖状もしくは非分枝鎖状であってよい。複素脂肪族基は、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基であって、付加的にその骨格内にもしくは結合原子として少なくとも1つのヘテロ原子、例えば酸素もしくは硫黄を有する基を含み、それらの基は分枝鎖状もしくは非分枝鎖状であってよい。脂環式基は、シクロアルキル基、シクロアルケニル基及びシクロアルキニル基を含み、その用語"脂環式"とは、また多環式系をも含む。芳香族基は、単環系及び多環系を含む。複素環式基は、脂環式基であって該環構造内に少なくとも1つのヘテロ原子を有するものと、芳香族基であって該環構造内に少なくとも1つのヘテロ原子を有するものとを含む。"非置換"とは、水素原子によってのみ置換されていることを意味する。"更なる炭素原子によって置換"とは、少なくとも1つの更なる炭素原子がその基に結合されていることを意味する。前記の炭素原子は、ヒドロカルビル基の一部であってよい。例えば脂肪族基は、芳香族基によって置換されてアラルキル基を形成してもよく、その逆に芳香族基が脂肪族基によって置換されてアルキルアリール基を形成してもよい。前記の炭素原子は、また、ヘテロ原子を含む基の一部であってもよい。例えば−CN、カルボン酸基(塩形を含む)又はカルボン酸エステル基であってよい。"ヘテロ原子によって置換"とは、少なくとも1つのヘテロ原子がその基に結合されていることを意味する。該ヘテロ原子は、単独の原子、例えば1つのハロゲン原子であってよく、又は更なる原子に結合されて小さい基(例えば−OH)もしくはより大きい基(例えば−NO2)が形成されてよい。"ヘテロ原子含有基"は、その分子に機能性及び/又は水溶性を付与する基を含む、少なくとも1つのヘテロ原子を含む任意の基である。ヘテロ原子含有基の例は、−SO3H、−OSO2Ph、−CN、−PO32、−OP(O)Ph2、−NO2、オルガノシリル、例えば−SiMe3及びSiPhMe2である。
【0028】
式(2)及び(2a)に関しては、Rは、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基及びアルキルシリル基からなる群から選択され、前記基は、非置換であるか、又は更なる炭素原子及び/又はヘテロ原子によって置換されている。より有利には、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−オクタデシル基、ベンジル基及びフェニル基からなる群から選択され、前記基は、非置換もしくは置換されており、有利には非置換である。更により有利には、Rは、非置換のアルキル基又はベンジル基である。最も有利には、Rは、メチル基もしくはエチル基であり、その際、メチルが更により有利である。
【0029】
式(2)及び(2a)に関しては、R1、R2、R3及びR4は、有利には無関係に、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルコキシ基(前記基は非置換もしくは置換されている)、ハロゲン及びヘテロ原子含有基からなる群から選択される。より有利には、R1、R2、R3及びR4は、無関係に、水素、メチル基、メトキシ基及び−SO3Hからなる群から選択される。更により有利には、R1、R2、R3及びR4は、無関係に、水素及びメチル基から選択される。最も有利には、R1、R2、R3及びR4は、それぞれメチル基である。
【0030】
式(2)及び(2a)によるシクロペンタジエニル置換されたホスフィン化合物の特定の例は、式中の基R、R′、R′′、R1、R2、R3及びR4が以下の表:
【表1】

に定義される化合物である。
【0031】
製造を容易にするために、式(2)及び(2a)による最も好ましいシクロペンタジエニル置換されたホスフィン化合物は、式中のR、R1、R2、R3及びR4がそれぞれメチル基である化合物である。これらのペンタメチルシクロペンタジエニル置換されたホスフィン化合物の例は:
(1,2,3,4,5−ペンタメチル−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(Cp*PCy2)(14)
【化9】

(1,2,3,4,5−ペンタメチル−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(Cp*PiPr2)(15)
【化10】

並びにそれらの相応のホスホニウム塩Cp*PCy2・H+-(14a)及びCp*PiPr2・H+-(15a)
[式中、Cp*は、1,2,3,4,5−ペンタメチル−2,4−シクロペンタジエン−1−イル基を表す]である。
【0032】
本発明によるホスフィン化合物の第二のクラスにおいては、式(1)及び(1a)におけるCpsは、二環、すなわち部分的に置換もしくは完全に置換されたインデ−2−エン−1−イル基もしくはインデ−2−エン−2−イル基、有利には部分的に置換もしくは完全に置換されたインデ−2−エン−1−イル基である。より好ましくは、前記の実施態様によるホスフィン化合物並びにその相応のホスホニウム塩は、式(3)及び(3a):
【化11】

[式中、
Rは、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基か脂環式基か複素環式基と該芳香族基か脂環式基か複素環式基の原子をインデニル基の炭素原子と結合する付加的なヘテロ原子とを含むヘテロ原子含有基(全ての上述の基は、非置換であるか、もしくは更なる炭素原子あるいはヘテロ原子によって置換されている)及びオルガノシリル基からなる群から選択され、
5、R6、R7、R8、R9及びR10は、無関係に、水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基か脂環式基か複素環式基と該芳香族基か脂環式基か複素環式基の原子をインデニル基の炭素原子と結合する付加的なヘテロ原子とを含むヘテロ原子含有基(全ての上述の基は、非置換であるか、もしくは更なる炭素原子及び/又はヘテロ原子によって置換されている)、ハロゲン及びヘテロ原子含有基からなる群から選択される]によって表される。
【0033】
式(3)及び(3a)に関しては、Rは、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基及びアルキルシリル基からなる群から選択され、前記基は、非置換であるか、又は更なる炭素原子及び/又はヘテロ原子によって置換されている。より有利には、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−オクタデシル基、ベンジル基及びフェニル基からなる群から選択され、前記基は、非置換もしくは置換されており、有利には非置換である。更により有利には、Rは、非置換のアルキル基又はベンジル基である。最も有利には、Rは、メチル基もしくはエチル基であり、その際、メチルが更により有利である。
【0034】
式(3)及び(3a)に関しては、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、有利には無関係に、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルコキシ基(前記基は非置換もしくは置換されている)、ハロゲン及びヘテロ原子含有基からなる群から選択される。より有利には、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、無関係に、水素、メチル基、メトキシ基及び−SO3Hからなる群から選択される。最も有利には、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、無関係に、水素、メチル基及びメトキシ基からなる群から選択される。
【0035】
式(3)及び(3a)によるインデニル置換されたホスフィン化合物の特定の例は、式中の基R、R′、R′′、R5、R6、R7、R8、R9及びR10が以下の表:
【表2】

【0036】
【表3】

に定義される化合物である。
【0037】
好ましい一実施態様において、式(3)もしくは(3a)におけるR、R5及びR6は、それぞれメチル基であり、より好ましくは、R7、R8、R9及びR10は、無関係に、水素、メチル基及びメトキシ基からなる群から選択される。前記の実施態様においては、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ水素であるか、又はR8及びR9は、それぞれ水素であるかのいずれかであり、かつR7及びR10は、非水素基であることが好ましい。前記のインデニル置換されたホスフィン化合物の例は:
(1,2,3−トリメチルインデ−2−エン−1−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(1,2,3−Me3IndPCy2)(16)
【化12】

(1,2,3−トリメチルインデ−2−エン−1−イル)ジイソプロピルホスフィン(1,2,3−Me3IndPiPr2)(17)
【化13】

(1,2,3,4,7−ペンタメチルインデ−2−エン−1−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(1,2,3,4,7−Me5IndPCy2)(18)
【化14】

(1,2,3,4,7−ペンタメチルインデ−2−エン−1−イル)ジイソプロピルホスフィン(1,2,3,4,7−Me5IndPiPr2)(19)
【化15】

(4,7−ジメトキシ−1,2,3−トリメチルインデ−2−エン−1−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(4,7−(MeO)2−1,2,3−Me3IndPCy2)(20)
【化16】

(4,7−ジメトキシ−1,2,3−トリメチルインデ−2−エン−1−イル)ジイソプロピルホスフィン(4,7−(MeO)2−1,2,3−Me3IndPiPr2)(21)
【化17】

並びにそれらの相応のホスホニウム塩
1,2,3−Me3IndPCy2・H+-(16a)
1,2,3−Me3IndPiPr2・H+-(17a)
1,2,3,4,7−Me5IndPCy2・H+-(18a)
1,2,3,4,7−Me5IndPiPr2・H+-(19a)
4,7−(MeO)2−1,2,3−Me3IndPCy2・H+-(20a)
4,7−(MeO)2−1,2,3−Me3IndPiPr2・H+-(21a)
[式中、Indは、インデ−2−エン−1−イル基を表し、かつCy、iPr及びMeは、上記の意味を有する]である。
【0038】
本発明によるホスフィン化合物の第三のクラスにおいて、式(1)及び(1a)におけるCpsは、三環、すなわち非置換の、部分的に置換もしくは完全に置換されたフルオレン−9−イル基であって、拡大された縮合環系をもたらす置換基を含む基である。好ましくは、前記の実施態様によるホスフィン化合物並びにその相応のホスホニウム塩は、式(4)及び(4a):
【化18】

[式中、
Rは、水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基か脂環式基か複素環式基と該芳香族基か脂環式基か複素環式基の原子をフルオレニル基の炭素原子と結合する付加的なヘテロ原子とを含むヘテロ原子含有基(全ての上述の基は、非置換であるか、もしくは更なる炭素原子及び/又はヘテロ原子によって置換されている)及びオルガノシリル基からなる群から選択され、
11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、無関係に、水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基か脂環式基か複素環式基と該芳香族基か脂環式基か複素環式基の原子をフルオレニル基の炭素原子と結合する付加的なヘテロ原子とを含むヘテロ原子含有基(全ての上述の基は、非置換であるか、もしくは更なる炭素原子及び/又はヘテロ原子によって置換されている)、ハロゲン及びヘテロ原子含有基からなる群から選択される]によって表される。
【0039】
式(4)及び(4a)に関しては、Rは、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基及びアルキルシリル基からなる群から選択され、前記基は、非置換であるか、又は更なる炭素原子及び/又はヘテロ原子によって置換されている。より有利には、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−オクタデシル基、ベンジル基及びフェニル基からなる群から選択され、前記基は、非置換もしくは置換されており、有利には非置換である。更により有利には、Rは、非置換のアルキル基又はベンジル基である。最も有利には、Rは、メチル基もしくはエチル基であり、その際、エチルが更により有利である。
【0040】
式(4)及び(4a)に関しては、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、有利には無関係に、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルコキシ基(前記基は非置換もしくは置換されている)、ハロゲン及びヘテロ原子含有基からなる群から選択される。より有利には、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、無関係に、水素、メチル基、メトキシ基及び−SO3Hからなる群から選択される。更により有利には、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、無関係に、水素、メチル基及びメトキシ基からなる群から選択される。更により有利には、R14及びR15は、それぞれ水素であり、かつR11、R12、R13、R16、R17及びR18は、無関係に、水素及びメチル基から選択される。更により有利には、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ水素である。最も有利には、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ水素である。
【0041】
本発明のもう一つの実施態様において、式(4)もしくは(4a)におけるR12及び/又はR17は、ハロゲン又はヘテロ原子含有基であり、有利には両者はBrであるか又はどちらか一方は−SO3Hであり、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18の残りの基は、それぞれ水素である。
【0042】
式(4)及び(4a)によるフルオレニル置換されたホスフィン化合物の特定の例は、式中の基R、R′、R′′、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18が以下の表:
【表4】

【0043】
【表5】

【0044】
【表6】

【0045】
【表7】

【0046】
【表8】

【0047】
【表9】

【0048】
【表10】

に定義される化合物である。
【0049】
フッ素基(例えばホスフィン化合物番号31中の)は、付加的な官能基の容易な導入を可能にする。
【0050】
特に好ましいのは、以下のフルオレニル置換されたホスフィン化合物:
(9−メチルフルオレン−9−イル)ジイソプロピルホスフィン(9−MeFluPiPr2)(5)
【化19】

(9−エチルフルオレン−9−イル)ジイソプロピルホスフィン(9−EtFluPiPr2)(6)
【化20】

(9−ベンジルフルオレン−9−イル)ジイソプロピルホスフィン(9−BnFluPiPr2)(26)
【化21】

(9−オクタデシルフルオレン−9−イル)ジイソプロピルホスフィン(9−C1837FluPiPr2)(7)
【化22】

(9−メチルフルオレン−9−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(9−MeFluPCy2)(8)
【化23】

(9−エチルフルオレン−9−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(9−EtFluPCy2)(9)
【化24】

(9−ベンジルフルオレン−9−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(9−BnFluPCy2)(10)
【化25】

(9−オクタデシルフルオレン−9−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(9−C1837FluPCy2)(11)
【化26】

(1−メチル−9−エチルフルオレン−9−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(9−Et−1−MeFluPCy2)(12)
【化27】

(9−エチル−2−スルホフルオレン−9−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(2−SO3H−9−EtFluPCy2)(13)
【化28】

並びにそれらの相応のホスホニウム塩
9−MeFluPiPr2・H+-(5a)
9−EtFluPiPr2・H+-(6a)
9−BnFluPiPr2・H+-(26a)
9−C1837FluPiPr2・H+-(7a)
9−MeFluPCy2・H+-(8a)
9−EtFluPCy2・H+-(9a)
9−BnFluPCy2・H+-(10a)
9−C1837FluPCy2・H+-(11a)
9−Et−1−MeFluPCy2・H+-(12a)及び
9−Et−2−SO3HFluPCy2・H+-(13a)
[式中、Fluは、フルオレン−9−イル基を表し、かつEt、Bn、Cy、iPr及びMeは、上記の意味を有する]
である。
【0051】
上述の全ての式において、Y-は、アニオン、有利には非配位性の非塩基性のアニオン、例えばBF4-を表す。
【0052】
新規のホスフィン化合物の製造のための一般経路は、以下の通りである:
所望の置換基、一般に置換されたシクロペンタジエン、置換されたインデン又は非置換もしくは置換されたフルオレンを有する式HCpsによる化合物を、まず、強塩基、一般にn−BuLiと反応させてプロトンを引き抜き、そして共鳴安定化カルバニオンを形成させる。次いで、該アニオンを、式R′R′′PX[式中、R′及びR′′は、上記のように定義され、かつXはClもしくはBr、有利にはClである]による亜ホスフィン酸ハロゲン化物と反応させて、各Cpsで置換されたホスフィンを得て、それを、適宜、より容易な貯蔵及び取り扱いのために、それぞれのホスホニウム塩へと変換する(例えばHBF4との反応によって)。この方法は、相応の亜ホスフィン酸ハロゲン化物が容易に利用可能なので、好ましくは、式(1)もしくは(1a)中のR′及びR′′が同じ基であるホスフィン化合物の製造のために使用される。
【0053】
Cps環系での所望の置換基に依存して、幾つかの場合には、まず、シクロペンタジエニル置換、インデニル置換もしくはフルオレニル置換されたホスフィン化合物を製造し、次いで好適な反応を実施して、Cps環系で所望の置換をもたらすことが必要である。一例は、スルホン酸化されたフルオレニル置換されたホスフィンの製造であり、その際、フルオレニル置換されたホスホニウム塩が硫酸と反応されて、−SO3基がフルオレニル基に導入される。
【0054】
前記の一般方法のもう一つの変法が必要になるのは、R′基及びR′′基が異なり、相応の亜ホスフィン酸ハロゲン化物R′R′′PXが容易に入手できない場合である。式HCpsによる所望の置換基、一般に置換されたシクロペンタジエン、置換されたインデン又は非置換もしくは置換されたフルオレンを有する化合物を、まず、強塩基、一般にn−BuLiと反応させて、プロトンを引き抜き、共鳴安定化カルバニオンが形成される。次いで、該アニオンを、式R′PX2[式中、R′は上記のように定義され、かつXはClもしくはBr、有利にはClである]による亜ホスホン酸二ハロゲン化物と反応させて、中間生成物として式CpsR′PXによる亜ホスフィン酸ハロゲン化物が得られる。CpsR′PXは、容易に、好適な有機金属試薬、例えばR′′MgXもしくはR′′Li[式中、R′′は上記のものである]で簡単なアルキル化をすることによって所望のホスフィンR′R′′PCpsに変換することができる。
【0055】
新規のホスフィン化合物の全ての3つのクラスは、金属錯体において良好な配位子である。本発明では、例えば9−フルオレニル基並びに1−インデニル基が電子リッチなアルキル置換基として作用すると確信されている。更に、6つの系の近接は、低配位金属種の安定化を促進すると思われる。しかし、より簡単なシクロペンタジエン、特にペンタメチルシクロペンタジエンは容易に入手可能なので、これらの出発化合物からホスフィンを製造することは、経済的理由から非常に魅力的なものになる。
【0056】
本発明の一態様は、前記のホスフィン化合物(式(A)及び(B)によるホスフィン化合物を含む)と、元素の周期律表の第8族、第9族、第10族及び第11族から選択される遷移金属とを含む配位化合物である。前記の配位化合物は、有機合成のための効果的な触媒又は効果的な触媒系の一部である。前記の配位化合物は、事前に製造して、次いで触媒反応のために使用することができるか、又はホスフィン化合物もしくはその相応のホスホニウム塩を好適な遷移金属前駆化合物と組み合わせて添加することによってその場で形成させることもできる。このように、本発明のもう一つの態様は、ホスフィン化合物(式(A)及び(B)によるホスフィン化合物を含む)又はその相応のホスホニウム塩(式(Aa)及び(Ba)によるホスホニウム塩を含む)を、元素の周期律表の第8族、第9族、第10族及び第11族から選択される遷移金属と組み合わせて、有機化合物の製造のための触媒として又は触媒系の一部として用いる使用である。本発明によるホスフィン化合物を配位子として含む触媒活性を有する配位化合物のその場での形成は、しばしばより好適である;しかしながら、また、幾つかの場合に初期の触媒活性を高めるので、本発明によるホスフィン化合物を配位子として含む触媒活性を有する配位化合物を直接的に製造し、次いで該化合物を触媒用途に使用することも好ましいことがある。"本触媒"又は"本発明による触媒"と呼称される場合に、両者の択一的な経路が含まれる。
【0057】
遷移金属は、有利にはPd、Ni、Pt、Rh、Ir、Ru、Co、Fe、Cu及びAuから選択され、より有利には、該金属はPdもしくはNiであり、最も有利には該金属は、Pdである。
【0058】
本発明によるホスフィン化合物と一緒に使用して、その場で、該ホスフィン化合物を配位子として含む触媒活性を有する配位化合物を得ることができる白金化合物の例は、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム、アセチルアセトン酸パラジウム(II)、パラジウム(0)ジベンジリデンアセトン錯体、パラジウム(0)テトラキス(トリフェニルホスフィン)、パラジウム(0)ビス(トリ−o−トリルホスフィン)、プロピオン酸パラジウム(II)、パラジウム(II)(シクロオクタジエン−1,5)ジクロリド、パラジウム(0)−ジアリルエーテル錯体、硝酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)ビス(アセトニトリル)、塩化パラジウム(II)ビス(ベンゾニトリル)及び他のパラジウム(0)錯体及びパラジウム(II)錯体である。
【0059】
一般に、触媒用途のためには、該ホスフィン配位子は、遷移金属に対して過剰に使用される。遷移金属と配位子との比率は、好ましくは1:1〜1:1000である。遷移金属と配位子との比率1:1〜1:100が特に好ましい。使用されるべき厳密な遷移金属/配位子比は、特定の用途に依存し、また使用される触媒の量にも依存する。こうして一般に、非常に低い遷移金属濃度(<0.01モル%)の場合には、0.5〜0.01モル%の遷移金属という遷移金属濃度の場合よりも低い遷移金属/配位子比を使用することが好適である。
【0060】
当該ホスフィン化合物及びそれらの相応のホスホニウム塩は、熱的に非常に安定である。このように、本発明による触媒は、250℃より高い温度までの反応温度で使用することができる。該触媒は、有利には、20〜200℃の温度で使用される;多くの場合では、30〜180℃、有利には40〜160℃の温度で作業することが好ましいことが判明している。該配位子は、また、活性の損失なく圧力反応において使用することもでき、その際、作業圧力は、適宜、100バールまでだけであるが、好ましくは60バールまでの常圧範囲である。
【0061】
当該触媒は、有利には、C−C結合もしくはC−ヘテロ原子結合が形成されるカップリング反応で使用される。しかしながら、当業者には、他の遷移金属で触媒される反応、例えばメタセシス又は二重結合もしくはカルボニル化合物の水素添加をも、当該触媒により触媒できることは明らかである。
【0062】
Pdで触媒されるカップリング反応の概要であって、本発明による触媒、すなわち当該ホスフィン化合物を配位子として含むPd錯体によって触媒されうる反応について概説するもの(事前に製造もしくはその場で形成)は、A.F.Littke及びG.C.Fuによる"Palladiumkatalysierte Kupplungen von Arylchloriden"(Angew.Chem.2002,114,4350−4386)において開示されている。
【0063】
C−Cカップリング反応の例は以下のものである:
(a)有機ホウ素化合物の、アリール、ヘテロアリールもしくはビニルハロゲン化物/擬ハロゲン化物でのスズキ−クロスカップリング(スズキ・ミヤウラ−クロスカップリングとしても知られる):一般に、有機ホウ素化合物は、式Ra−B(OH)2のホウ酸[式中、Raは、アリール基、アルケニル基もしくはアルキル基である]又はあまり好ましくはないが、相応のホウ酸エステルである。該反応は、Pd錯体及び塩基の存在下で実施される。該スズキ−クロスカップリングは、アリール及びヘテロアリールホウ酸とアリール及びヘテロアリールハロゲン化物とをそれぞれカップリングさせて、ビアリール化合物の形成をもたらすために有用である。
【0064】
(b)有機スズ化合物と、ハロゲンもしくは擬ハロゲンを離脱基として有する炭素求電子体とのスティル−クロスカップリング:好ましくは、該炭素求電子体は、アリール、ヘテロアリールもしくはビニルハロゲン化物/擬ハロゲン化物であるが、他の求電子体、例えば酸ハロゲン化物も使用できる。一般に、該有機スズ化合物は、式RbSn(Rc3[式中、移されないRc基は、通常、ブチル基もしくはメチル基であり、Rb基は、広範に変化でき、好ましくは該基は、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基もしくはアルキル基である]を有する。該反応は、Pd錯体の存在下で実施される。スティル−クロスカップリングは、複雑な天然産物の合成における慣用のツールである。
【0065】
(c)オルガノシランの、アリール、ヘテロアリールもしくはビニルハロゲン化物/擬ハロゲン化物でのヒヤマ−クロスカップリング:一般に、オルガノシランは、式RdSiZ[式中、Zは、移されない3つの基、例えばMeCl2、Me3及び(OMe)3を表し、かつ(OMe)3及びRdは、例えばビニル基、アルキニル基もしくはアリール基である]を有する。該反応は、Pd触媒の存在下で実施される。該ヒヤマ−クロスカップリングは、有機ケイ素化合物が無毒であるため、スティル−クロスカップリングとの興味が持たれる代替である。
【0066】
有機亜鉛化合物の、アリール、ヘテロアリールもしくはビニルハロゲン化物/擬ハロゲン化物でのネギシ−クロスカップリング:一般に、該有機亜鉛化合物は、式ReZnXもしくはRe2Zn[式中、Xは、ハロゲンもしくはフェニル基であり、かつReは、例えばアリール基、ヘテロアリール基もしくはアルキル基である]を有する。該反応は、Pd触媒の存在下で実施される。該ネギシ−クロスカップリングは、有機亜鉛化合物が容易に入手できることと、官能基に対して高い許容性を有することからも、C−C結合の形成に有効な方法である。
【0067】
(e)グリニャール化合物の、アリール、ヘテロアリールもしくはビニルハロゲン化物/擬ハロゲン化物でのクマダ−クロスカップリング:式RfMgXによるグリニャール化合物中で、Rf基は、アリール基、ヘテロアリール基もしくはアルキル基であってよく、かつXはハロゲンである。該反応は、PdもしくはNi触媒の存在下で実施される。該クマダ−クロスカップリングは、それが長い間知られているので、有機合成において非常に重要になっている。しかしながら、上述のカップリング反応に対して、その適用可能性は、グリニャール化合物が多くの官能性化合物に許容性でないため制限される。
【0068】
(f)末端アルキンの、アリール、ヘテロアリールもしくはビニルハロゲン化物/擬ハロゲン化物でのソノガシラ−クロスカップリング:式H−C≡C−Rfによる末端アルキンにおいて、Rf基は、広範に変化してよく、オルガノシリル基さえも含む。該反応は、Pd触媒及びCu助触媒、一般にCuIの存在下で実施される。
【0069】
(g)エノレート及び他の安定化カルバニオンの、アリールもしくはヘテロアリールハロゲン化物/擬ハロゲン化物でのα−アリール化:アリール化されるべき化合物は、カルボニル化合物、例えばケトン及びエステル及びニトロ化合物を含む。該反応は、Pd触媒及び塩基の存在下で実施される。
【0070】
(h)アリールもしくはヘテロアリールハロゲン化物/擬ハロゲン化物のシアノ化:一般に、シアノ化剤は、無機シアン化物、例えばZn(CN)2もしくはKCNである。該反応は、Pd触媒の存在下で実施される。
【0071】
(i)アリールもしくはヘテロアリールハロゲン化物/擬ハロゲン化物のカルボニル化:アリールもしくはヘテロアリールハロゲン化物/擬ハロゲン化物を、CO及び式HNu[式中、Nuは、H("還元的カルボニル化")、−OR、−NR2もしくは類似の基である]による化合物と反応させる。該反応は、Pd触媒及び塩基の存在下で実施される。該Pdで触媒されるカルボニル化は、アルデヒド、エステル及びアミドなどのカルボニル化合物の合成のための有効な方法であり、かつその生成物が除草剤及び医薬品の製造のための価値のある中間生成物であるため化学工業に高い関心が持たれている。
【0072】
(j)アリール、ヘテロアリールもしくはビニルハロゲン化物/擬ハロゲン化物のオレフィンへのヘック−カップリング。該反応は、Pd触媒及び塩基の存在下で実施される。該オレフィン基質は多くの種々の官能性、例えばエステル基、エーテル基、カルボキシ基、シアノ基及びヒドロキシル基に許容性を有するので、該ヘック−カップリングは、C−C結合を形成するための最も重要な方法の一つである。
【0073】
C−Nカップリングの一例は、アリールもしくはヘテロアリールハロゲン化物/擬ハロゲン化物のアミンでのブッフヴァルト・ハルトヴィッヒ−カップリング(ブッフヴァルト・ハルトヴィッヒ−アミノ化)である。該アミン成分は、広範に変化してよく、該成分は、種々の第二級及び第一級のアルキル(シクロアルキルを含む)アミン及びアニリンを含む。該反応は、Pd触媒及び塩基の存在下で実施される。該ブッフヴァルト・ハルトヴィッヒ−アミノ化は、医薬品の製造、農業化学及び写真において重要な役割を担うアニリン誘導体の合成のための有効なツールである。
【0074】
C−O結合の形成をもたらす反応の一例は、アリールもしくはヘテロアリールハロゲン化物/擬ハロゲン化物とアルコールとのカップリングである。該Pdで触媒されるC−Oカップリングは、よく知られる求電子性置換の"通常"条件下でPd触媒の不在下にはカップリングしない基質のために使用することができる。好ましくは、使用されるアルコキシドは、NaOtBu又はフェノキシドである。該反応は、Pd触媒(該アルコールがアルコキシドの代わりに使用される場合には、塩基と)の存在下で実施される。得られるジアリール及びジアリールアルキルエーテルは、医薬品及び天然産物の合成において重要な役割を担う。
【0075】
用語"擬ハロゲン"もしくは"擬ハロゲン化物"は、当該技術分野で認められた標準的意味を有する。擬ハロゲン/擬ハロゲン化物の制限されない例は、−COCl、−SO2Cl、−N2X、−OP(O)(OR)2、−OSO2CF3(−OTf、トリフレート)及び−OSO2Tol(−OTs、トシレート)である。前記のカップリング反応で使用される好ましい擬ハロゲン化物は、トリフレートである。
【0076】
前記のカップリング反応は、好ましくは、相応の塩化物、臭化物もしくはトリフレートを出発材料として使用することによって実施され、より好ましくは、相応の塩化物もしくは臭化物が使用される。
【0077】
前記のカップリング反応の列記は制限するものではなく、当該触媒を類似のカップリング反応で使用できることは当業者には明白であると理解される。
【0078】
本発明による触媒によって触媒されうる反応の更なる一例は、アリール及びヘテロアリールハロゲン化物、有利には塩化物及び臭化物のデヒドロハロゲン化、特にデヒドロ塩素化である。アリール及びヘテロアリールハロゲン化物の脱ハロゲン化は、有機合成には重要なだけでなく、環境化学のためにポリ塩化ビフェニル(PCB)の脱塩素化としても重要であり、関連の塩素化アレーンは、これらの永続性の有毒物質の解毒のための機構を表す。不均一系Pd触媒による脱ハロゲン化が長年にわたり使用されているが、均一系遷移金属錯体、有利にはPd錯体中で配位子として使用される新規のホスフィン化合物は、緩慢な条件下でアリール及びヘテロアリールハロゲン化物の脱ハロゲン化をする新たな見通しを提供する。
【0079】
配位子として特定のホスフィン化合物を含む遷移金属錯体は、全ての異なる型の基質を有する全ての異なる型の反応での触媒と同じ有効性を有さないという事実がある。新規のホスフィン化合物の大きな利点は、該化合物が、"触媒の微調整"を可能にする様々な骨格を有する、すなわち意図される使用に該配位子を適合させるための細部にわたった構造的及び電子的な変更を有することである。特に、フルオレニル置換されたホスフィン化合物は、容易に変更できる:1位及び8位の置換基(R11及びR18)は、リン原子近傍の立体的嵩高さを調整可能であり、かつ2位及び7位(R12及びR17)は、種々の官能基の容易な導入を可能にする。有機化学者の通常の知識の範囲内で、選択された生成物の製造のために高効率の触媒として機能する遷移金属触媒において、どのような特定の本発明によるホスフィン化合物が好適な配位子であろうかを見出すために幾つかの決まり切った実験が実施されるべきである。一般に、当該触媒を使用する反応は、高収率で、高い触媒生産性で及び/又は高純度で所望の生成物を産生する。多くの場合に、新規の触媒は、殆ど反応性でないが、費用効果的な塩化物を使用する能力を有する。
【0080】
以下の実施例は、新規のホスフィン化合物及び/又はそれらの相応のホスホニウム塩の製造を概説している。種々のカップリング反応において合成される化合物の幾つかの例示的な使用も概説されている。
【0081】
実施例
全ての化学薬品は、販売供給元から試薬等級として購入し、特段の記載がない限り、更なる精製をせずに使用した。THFは、アルゴン雰囲気下でカリウム及びベンゾフェノンで蒸留し、ジエチルエーテルは、アルゴン雰囲気下でナトリウム/カリウム合金及びベンゾフェノンで蒸留した。ジイソプロピルアミンは、水酸化カリウム上で乾燥させ、ジオキサンは、水素化カルシウム上で乾燥させた。プロトン(1H NMR)、炭素(13C NMR)及びリン(31P NMR)核磁気共鳴スペクトルは、Bruker DRX500において、それぞれ500MHz、125.75MHz及び202.46MHzで、又はBruker DRX300において、それぞれ300MHz及び75.07MHzで記録された。化学シフトは、デルタスケール(δ)で百万当たりの部(ppm)で示され、かつ1H NMRではテトラメチルシラン(δ=0ppm)が参照され、31P NMRでは65%水性H3PO4(δ=0ppm)が参照される。NMRデータについての略語:s=一重線;d=二重線;t=三重線;q=四重線;dd=二重線の二重線;dt=三重線の二重線;四重線の二重線;tt=三重線の三重線;m=多重線。IR−スペクトルは、Perkin Elmer 1600シリーズFT−IRにおいて記録した。質量スペクトルは、Finigan MAT95型の磁場偏向型分光器において記録した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、Fluka社製のシリカゲル60F254(0.2mm)をアルミニウム板上で使用して実施した。クロマトグラフィー用のシリカゲルカラムは、E.Merck社製のシリカゲル60(0.063〜0.20メッシュASTM)で調製した。フルオレンは、Aldrich社から購入し、受け取ったまま使用した。
【0082】
基R、R1、R2などは、発明の詳細な説明の一般的部分に定義されるのと同じ意味を有さず、実施例から明らかな意味を有する。
【0083】
A. ホスフィン化合物の製造
I. シクロペンタジエニルホスホニウム塩の製造
Cp*ホスホニウム塩の合成のための一般的手順:
【化29】

【0084】
Cp*PCy2・HBF4(14a)の合成
250mlのシュレンクフラスコ中で、ペンタメチルシクロペンタジエン(HCp*)(2.9g、21.3ミリモル)を、ジエチルエーテル無水(100ml)中に溶解させ、n−BuLi(8.1ml、ヘキサン中2.5M、20.3ミリモル)で−60℃で処理した。該混合物を、周囲温度で4時間撹拌することで、濃厚な白色の懸濁液が得られた。THF無水(100ml)を添加し、その懸濁液をCy2PCl(3.93g、16.9ミリモル)で−60℃で反応停止させた。該反応混合物を周囲温度で一晩撹拌し、次いでCelite(登録商標)濾過助剤の小パッドを介してシュレンク技術を使用して濾過した。澄明で無色の濾液を注いでHBF4・Et2O(2.7ml、19.9ミリモル)で反応停止させ、酸を添加してから約3分後に、白色の固体としてホスホニウム塩の沈殿がもたらされた。その固体を、吸引濾過により分離し、Et2Oで洗浄し、揮発物を真空中で除去することで、化合物14aが白色の固体として得られた(3.7g、52%)。
【0085】

【0086】
Cp*PiPr2・HBF4(15a)の合成
250mlのシュレンクフラスコ中で、ペンタメチルシクロペンタジエン(HCp*)(2.79g、20.5ミリモル)を、ジエチルエーテル無水(175ml)中に溶解させ、n−BuLi(7.8ml、ヘキサン中2.5M、19.5ミリモル)で−60℃で処理した。該混合物を、周囲温度で4時間撹拌(磁気撹拌子)することで、濃厚な白色の懸濁液が得られた。THF無水(50ml)を添加し、引き続き−60℃でiPr2PCl(2.48g、16.25ミリモル)を添加した。該反応混合物を、周囲温度で一晩撹拌し、Celite(登録商標)の小パッドを介して濾過した。澄明で無色の濾液を、HBF4・Et2O(2.76ml、20.3ミリモル)で反応停止させ、それによりホスホニウム塩の沈殿が白色の固体としてもたらされた。その固体を、吸引濾過により分離し、Et2Oで洗浄し、揮発物を真空中で除去することで、化合物15aが白色の固体として得られた(5.2g、94%)。
【0087】

【0088】
II. インデニル誘導体及び前駆体の製造
塩化チグロイル(33)の合成
【化30】

【0089】
チグリン酸(32)(100.0g、1.00モル)及び塩化チオニル(178.4g、1.5モル)を、磁気撹拌装置と還流凝縮器を備えた500mlの丸底フラスコに入れた。該混合物を、HClガスの発生が完了するまで還流させた。次いで、還流凝縮器を蒸留ヘッドと取り替えた。過剰の塩化チオニルを100〜130℃で周囲圧力において除去し、引き続き塩化チグロイル(33)(106.32g、1.06モル、89%)が140〜145℃で無色の液体として得られた。その1H NMRスペクトルは、文献(T.E.Ready,J.C.W.Chien,M.D.RauschによるJ.Org.Chem.1999 583,11−27;B.B.Snider,Q.CheによるOrg.Lett.2004,6,17,2877−2880)と同一であった。
【0090】

【0091】
2,3−ジメチル−1−インダノン(34)の合成
【化31】

【0092】
アルゴン雰囲気下で、ベンゼン(335ml、3.47モル)及び三塩化アルミニウム(90.78g、0.68モル)を、磁気撹拌装置と、添加漏斗と、還流凝縮器とを備えた1リットルの三口丸底フラスコ中に導入した。撹拌した橙色の混合物を7℃に冷却し、塩化チグロイル(33)(40g、0.34モル)を添加漏斗を介して滴加した。添加が完了した後に、該混合物を室温に至らしめ、次いで一晩還流させた。次いで、該反応混合物を室温に至らしめ、そして氷(300g)及び濃HCl(50ml)の混合物に注いだ。有機層を分離し、重炭酸ナトリウムの飽和溶液で洗浄し(3×100ml)、次いで硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過した。過剰のベンゼンを減圧下で除去することで、化合物(34)(50.02g、92%)が黄色の液体として得られた。1H NMRスペクトルは、文献(T.E.Ready,J.C.W.Chien,M.D.RauschによるJ.Org.Chem.1999 583,11−27;J.Sarrazin,A.TallecによるTetrahedronLetters,1977,18,1579−1582;M.Hiscock,G.B.PorterによるJ.Chem.Soc.(B),1971,1631−1634)と同一であった。
【0093】

【0094】
2,3,4,7−テトラメチル−1−インダノン(35)の合成
【化32】

【0095】
アルゴン雰囲気下で、AlCl3(64g、0.48モル)及びCS2(250ml)を、磁気撹拌装置と、添加漏斗と、内部温度計と、還流凝縮器とを備えた1リットルの三口丸底フラスコ中に入れた。塩化チグロイル(33)(42g、0.35モル)及びp−キシレン(42.8ml、0.35モル)の混合物を、激しく撹拌しつつ、−10℃で1時間にわたり添加した。−10℃で2時間撹拌した後に、該混合物を、周囲温度に至らしめ、その温度で一晩撹拌した。褐色の反応混合物を、次いで3時間にわたり還流させ、周囲温度に冷却した後に、該反応混合物を、濃HCl(300ml)及び氷(500g)の混合物に慎重に注いだ。次いで、該混合物を、分離漏斗中に移し、下層のCS2層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した(3×100ml)。合した有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を回転蒸発器中で除去することで、赤褐色の液体が得られた。この残留物を35cmのVigreuxカラムを使用して精留することで、2,3,4,7−テトラメチル−1−インダノン(35)(34g、52%、95〜100℃、1.5〜1.2ミリバール)が淡黄色の液体として得られた。化合物(35)は、2,3,4,7−テトラメチル−1−インダノンの2つの異性体の混合物(35a対35bは約3:1)であることが判明した。その1H NMRスペクトルは、文献(S.Barlow,D.R.Cary,M.J.Drewitt,D.O’HareによるJ.Chem.Soc.DaltonTrans.1997 3867−3878)と同一であった。
【0096】

【0097】
4,7−ジメトキシ−2,3−ジメチル−1−インダノン(36)の合成
【化33】

【0098】
AlCl3(64g、0.48モル)及びCH2Cl2(250ml)(硫酸マグネシウムで乾燥させた)を、アルゴン雰囲気下で、磁気撹拌装置と、添加漏斗と、内部温度計と、還流凝縮器とを備えた500mlの三口丸底フラスコ中に入れた。塩化チグロイル(33)(42g、0.35モル)及び1,4−ジメトキシベンゼン(48.4g、0.35モル、CH2Cl2(75ml)中に溶解)の混合物を、激しく撹拌しつつ、−10℃で1時間にわたり添加した。−2℃ないし−5℃で2時間撹拌した後に、該混合物を、周囲温度に至らしめ、そして一晩撹拌した。暗赤色の反応混合物を、次いで2時間にわたり還流させ、周囲温度に冷却した後に、該反応混合物を、濃HCl(300ml)及び氷(500g)の混合物に慎重に注いだ。次いで、得られた黄色の混合物を、分離漏斗中に移し、下層のCH2Cl2層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した(3×100ml)。合した有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を減圧下で除去することで、暗褐色の液体が得られた。この残留物を、15cmのVigreuxカラムを使用して蒸留することで、橙黄色の軽く粘性の液体(110〜115℃、0.8ミリバール)が得られた。該液体を、カラムクロマトグラフィー[(SiO2、25×9cm)溶出剤:シクロヘキサン:エチルアセテート(1:1)]を介して精製することで、2,3−ジメチル−4,7−ジメトキシ−1−インダノン(36)(9.53g、12% Rf 0.35(シクロヘキサン:エチルアセテート(5:1)))が橙色の液体として得られた。該液体は、4,7−ジメトキシ−2,3−ジメチル−1−インダノンの2つの異性体の混合物(36a対36bは約4:1)であることが判明した。
【0099】

【0100】
1,2,3−トリメチルインデン(37)の合成
【化34】

【0101】
磁気撹拌装置と還流凝縮器とを備えた1リットルの三口丸底フラスコ中で、2,3−ジメチル−1−インダノン(34)(19.2g、0.12モル)を無水ジエチルエーテル(300ml)中にアルゴン雰囲気下で溶解させた。メチルリチウム(46.3ml、ジエトキシメタン中3Mの溶液、0.14モル)をシリンジを介して滴加し、そして該混合物を一晩還流させた。該混合物を0℃に冷却し、飽和塩化アンモニウムの溶液(100ml)を、凝縮器の頂部を通じて滴加した。該混合物を分離漏斗中に移し、有機層を水で洗浄し(3×100ml)、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして濾過した。エーテルを減圧下で除去することで、粗製1,2,3−トリメチル−1−インダノール(19.34g、92%)が黄色の液体として得られ、それは後続工程のために更なる精製をせずに使用した。トルエン(300ml)を前記の粗製1,2,3−トリメチル−1−インダノール(19.34g、0.11モル)に添加し、そして該溶液をディーンスタークトラップと磁気撹拌装置とを備えた500mlの丸底フラスコ中に移した。p−トルエンスルホン酸(50mg、0.26ミリモル)を添加し、該溶液を一晩還流させた。水の除去が完了した後に、過剰のトルエンをディーンスタークアームを通じた蒸留により除去し、その残留物を周囲温度に冷却し、ジエチルエーテル(100ml)で希釈し、重炭酸ナトリウムの飽和溶液で洗浄し(3×100ml)、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして濾過した。溶剤を真空中で除去した後に、その液体をカラムクロマトグラフィー[(SiO2、50×9cm)溶出剤:シクロヘキサン:エチルアセテート(10:1)]により精製することで、2つのフラクションが得られた:1,2,3−トリメチルインデン(37)(8.92g、51%)が淡黄色の液体として得られ(Rf 0.41);化合物(34)(7.94g、45%)(出発材料)は、暗黄色の液体として得られた。
【0102】

【0103】
1,2,3,4,7−ペンタメチルインデン(38)の合成
【化35】

【0104】
磁気撹拌装置と還流凝縮器とを備えた1リットルの三口丸底フラスコ中で、2,3,4,7−テトラメチル−1−インダノン(35)(19.52g、0.1モル)を無水ジエチルエーテル(300ml)中にアルゴン雰囲気下で溶解させた。該混合物を氷及びメチルリチウム(45ml、ジエトキシメタン中3Mの溶液、0.135モル)をシリンジを介して滴加し、次いで該混合物を3時間還流させた。その黄色の反応混合物が冷えたら、濃HCl(20ml)及びH2O(60ml)の混合物を、添加漏斗を介して添加した。得られた混合物を分離漏斗に移し、ジエチルエーテルで抽出した(3×200ml)。合した有機層を15mlの濃HClとともに一晩撹拌した。この時点で、該反応混合物を、炭酸ナトリウムの飽和水溶液でpH7に慎重に調整した。該反応混合物を、分離漏斗に移した。有機層をH2Oで洗浄し(3×100ml)、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を減圧下で除去することで、黄色の液体が得られた。この残留物をカラムクロマトグラフィー[(SiO2、25×9cm)溶出剤:シクロヘキサン]により精製することで、1,2,3,4,7−ペンタメチルインデン(38)(8.35g、44%)が黄色の液体として得られ、次いで化合物(35)(出発材料)(9.60g、49%)(溶出剤:シクロヘキサン:エチルアセテート(10:1))が黄色の液体として得られた。
【0105】

【0106】
4,7−ジメトキシ−1,2,3−トリメチルインデン(39)の合成
【化36】

【0107】
ジエチルエーテル(100ml)及びマグネシウム屑(0.96g、39ミリモル)を、磁気撹拌装置と還流凝縮器とを備えた250mlの三口丸底フラスコ中に入れた。アルゴン雰囲気下で、CH3I(2.66ml、43ミリモル)を脱ガスし乾燥したジエチルエーテル(50ml)中に溶かした溶液を、添加漏斗を介して添加した。得られた灰色の溶液を45分間撹拌した後に、乾燥軽質石油(dry light petroleum)(沸点80〜110℃)(20ml)を添加した。次いで、エーテルを減圧下で除去することで、灰色の懸濁液が得られた。得られた混合物を氷で冷却し、そして2,3−ジメチル−4,7−ジメトキシ−1−インダノン(36)(7g、32ミリモル)をペンタン(50ml)中に溶かした溶液を、40分にわたり滴加し、次いで該混合物を3時間にわたり還流した。次いで、その黄色の反応混合物を0℃に冷却し、HCl(10ml)及びH2O(40ml)の混合物を、添加漏斗を介して添加した。得られた溶液を分離漏斗に移し、ジエチルエーテルで抽出した(3×50ml)。次いで合した有機層を0.25Mの水性チオ硫酸ナトリウムで洗浄した(3×30ml)。該有機層を丸底フラスコ中に濾過し、15mlの濃HClを添加し、該混合物を周囲温度で一晩撹拌した。次いで、pH7を、炭酸ナトリウムの飽和水溶液の添加によって調整した。該混合物を、分離漏斗に移した。有機層を水で洗浄し(3×100ml)、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を減圧下で除去した。
【0108】
残留液体を、カラムクロマトグラフィー[(SiO2、35×9cm)、初期溶出剤:シクロヘキサン:エチルアセテート(100:2)]により精製することで、2つのフラクションが得られた:1,2,3−トリメチル−4,7−ジメトキシインデン(39)(4.63g、66%)が黄色の液体として(Rf 0.42);(溶出剤をシクロヘキサン:エチルアセテート(2:1)へと変更):4,7−ジメトキシ−2,3−ジメチル−1−インダノン(36)(出発材料)Rf 0.35(シクロヘキサン:エチルアセテート)(5:1)が淡黄色の液体として得られた。
【0109】

【0110】
III. インデニルホスホニウム塩の製造
1,2,3−トリメチルインデニル−ジシクロヘキシル−ホスホニウム−トリフルオロボレート(16a)の合成
【化37】

【0111】
100mlのシュレンク中で、1,2,3−トリメチルインデン(37)(2.44g、15.4ミリモル)をEt2O(50ml)中にアルゴン雰囲気下で溶解させた。該混合物を−60℃(N2/イソプロパノール)にまで冷却し、そしてn−BuLi(5.9ml、ヘキサン中2.5Mの溶液、14.7ミリモル)を添加した。該溶液を−60℃で10分間にわたり撹拌し、次いで周囲温度で3時間にわたり撹拌した。白色の沈殿物が形成された。次いで、該混合物を−60℃に冷却し、Cy2PCl(2.7ml、12ミリモル)を添加した。該混合物を室温に至らしめ、更に2時間にわたり撹拌し、そして形成されたLiClをCelite(登録商標)のパッドを介した濾過によってシュレンク条件下で除去した。得られた僅かに帯黄色の濾液をHBF4・Et2O(2ml、14.9ミリモル)で滴下処理することで、白色の沈殿物が得られ、それを濾過により分離し、そして10mlのアセトニトリル中に溶解させた。濾過後に、澄明な濾液をEt2O(900ml、激しく撹拌)中に滴加した。形成された白色の沈殿物を吸引濾過により分離した。真空中で揮発物を除去することで、化合物(16a)が白色の固体として得られた(2.82g、53%)。
【0112】

【0113】
1,2,3−テトラメチルインデニル−ジイソプロピル−ホスホニウム−トリフルオロボレート(17a)の合成
【化38】

【0114】
撹拌装置を備えた250mlのシュレンクフラスコ中で、1,2,3−トリメチルインデン(37)(5.14g、32.5ミリモル)をEt2O(100ml)中にアルゴン雰囲気下で溶解させた。該混合物を−60℃(N2/イソプロパノール)にまで冷却し、そしてn−BuLi(12.38ml、ヘキサン中2.5Mの溶液、31ミリモル)を添加した。該溶液を−60℃で10分間にわたり撹拌し、次いで周囲温度で3時間にわたり撹拌した。白色の沈殿物が形成された。次いで、該混合物を−60℃に冷却し、iPr2PCl(4.1ml、25.8ミリモル)を添加した。該混合物を室温に至らしめ、更に2時間にわたり撹拌し、そして形成されたLiClをCelite(登録商標)のパッドを介した濾過によってシュレンク条件下で除去した。得られた僅かに帯黄色の濾液をHBF4・Et2O(4.42ml、32ミリモル)で滴下処理することで、白色の沈殿物が得られ、それを濾過により分離し、そして10mlのアセトニトリル中に溶解させた。濾過後に、澄明な濾液をEt2O(900ml、激しく撹拌)中に滴加した。形成された白色の沈殿物を吸引濾過により分離した。真空中で揮発物を除去することで、化合物(17a)が白色の固体として得られた(8.53g、91%)。
【0115】

【0116】
1,2,3,4,7−ペンタメチルインデニル−ジイソプロピル−ホスホニウム−トリフルオロボレート(19a)の合成
【化39】

【0117】
100mlのシュレンクフラスコ中で、1,2,3,4,7−ペンタメチルインデン(38)(3.0g、16ミリモル)を、Et2O(50ml)中にアルゴン雰囲気下で溶解させた。該混合物を−60℃(N2/イソプロパノール)にまで冷却し、そしてn−BuLi(16.1ml、ヘキサン中2.5Mの溶液、15ミリモル)を添加した。該溶液を−60℃で10分間にわたり撹拌し、次いで周囲温度で3時間にわたり撹拌した。白色の沈殿物が形成された。該混合物を−60℃に冷却し、iPr2PCl(2.0ml、12.8ミリモル)を添加した。該混合物を室温に至らしめ、更に2時間にわたり撹拌し、そして形成されたLiClをCelite(登録商標)のパッドを介した濾過によってシュレンク条件下で除去した。得られた僅かに帯黄色の濾液をHBF4・Et2O(2.2ml、16ミリモル)で滴下処理することで、白色の沈殿物が得られ、それを濾過により分離し、そして10mlのクロロホルム中に溶解させた。濾過後に、澄明な濾液をEt2O(900ml、激しく撹拌)中に滴加した。形成された白色の沈殿物を吸引濾過により分離した。真空中で揮発物を除去することで、化合物(19a)が白色の固体として得られた(4.23g、84%)。
【0118】

【0119】
1,2,3,4,7−ペンタメチルインデニル−ジシクロヘキシル−ホスホニウム−トリフルオロボレート(18a)の合成
【化40】

【0120】
100mlのシュレンクフラスコ中で、1,2,3,4,7−ペンタメチルインデン(38)(3.0g、16ミリモル)を、Et2O(50ml)中にアルゴン雰囲気下で溶解させた。該混合物を−60℃(N2/イソプロパノール)にまで冷却し、そしてn−BuLi(6.1ml、ヘキサン中2.5Mの溶液、15ミリモル)を添加した。該溶液を−60℃で10分間にわたり撹拌し、次いで周囲温度で3時間にわたり撹拌した。白色の沈殿物が形成された。次いで、該混合物を−60℃に冷却し、Cy2PCl(2.8ml、12.7ミリモル)を添加した。該混合物を室温に至らしめ、周囲温度で更に2時間にわたり撹拌し、そして形成されたLiClをCelite(登録商標)のパッドを介した濾過によってシュレンク条件下で除去した。得られた僅かに帯黄色の濾液をHBF4・Et2O(2.2ml、16ミリモル)で滴下処理することで、白色の沈殿物が得られ、それを濾過により分離し、そして10mlのクロロホルム中に溶解させた。濾過後に、澄明な濾液をEt2O(700ml、激しく撹拌)中に滴加した。形成された白色の沈殿物を吸引濾過により分離した。真空中で揮発物を除去することで、化合物(18a)が白色の固体として得られた(4.12g、69%)。
【0121】

【0122】
4,7−ジメトキシ−1,2,3−トリメチルインデニル−ジシクロヘキシル−ホスホニウム−トリフルオロボレート(20a)の合成
【化41】

【0123】
100mlのシュレンクフラスコ中で、4,7−ジメトキシ−1,2,3−トリメチルインデン(39)(1.7g、7.79ミリモル)を、Et2O(50ml)中にアルゴン雰囲気下で溶解させた。該混合物を−60℃(N2/イソプロパノール)にまで冷却し、そしてn−BuLi(3ml、ヘキサン中2.5Mの溶液、7.43ミリモル)を添加した。白色の沈殿物が形成された。該溶液を−60℃で10分間にわたり撹拌し、次いで周囲温度で3時間にわたり撹拌した。次いで、該混合物を−60℃に冷却し、Cy2PCl(1.3ml、6.19ミリモル)を添加した。該混合物を室温に至らしめ、次いで周囲温度で更に2時間にわたり撹拌し、そして形成されたLiClをCelite(登録商標)のパッドを介した濾過によってシュレンク条件下で除去した。得られた僅かに帯黄色の濾液をHBF4・Et2O(1ml、7.79ミリモル)で滴下処理することで、白色の沈殿物が得られ、それを濾過により分離し、そして10mlのクロロホルム中に溶解させた。濾過後に、澄明な濾液をEt2O(700ml、激しく撹拌)中に滴加した。形成された白色の沈殿物を吸引濾過により分離した。真空中で揮発物を除去することで、化合物(20a)が白色の固体として得られた(1.72g、5.5%)。
【0124】

【0125】
4,7−ジメトキシ−1,2,3−トリメチルインデニル−ジイソプロピル−ホスホニウム−トリフルオロボレート(21a)の合成
【化42】

【0126】
100mlのシュレンクフラスコ中で、4,7−ジメトキシ−1,2,3−トリメチルインデン(39)(1.7g、7.79ミリモル)を、Et2O(50ml)中にアルゴン雰囲気下で溶解させた。該混合物を−60℃(N2/イソプロパノール)にまで冷却し、そしてn−BuLi(3ml、ヘキサン中2.5Mの溶液、7.43ミリモル)を添加した。該溶液を−60℃で10分間にわたり撹拌し、次いで周囲温度で3時間にわたり撹拌した。白色の沈殿物が形成された。次いで、該混合物を−60℃に冷却し、iPr2PCl(1ml、6.24ミリモル)を添加した。該混合物を室温に至らしめ、周囲温度で更に2時間にわたり撹拌し、そして形成されたLiClをCelite(登録商標)のパッドを介した濾過によってシュレンク条件下で除去した。得られた僅かに帯黄色の濾液をHBF4・Et2O(1ml、7.72ミリモル)で滴下処理することで、白色の沈殿物が得られ、それを濾過により分離し、そして10mlのクロロホルム中に溶解させた。濾過後に、澄明な濾液をEt2O(700ml、激しく撹拌)中に滴加した。形成された白色の沈殿物を吸引濾過により分離した。真空中で揮発物を除去することで、化合物(21a)が白色の固体として得られた(1.73g、66%)。
【0127】

【0128】
IV. フルオレニル誘導体の製造
(i) 9−置換されたフルオレンの製造
9−置換されたフルオレンの合成のための一般的手順:
【化43】

【0129】
フルオレン(30ミリモル)をTHF無水(60ml)中に溶かした溶液に、n−BuLi(ヘキサン中2.5M)40ミリモルを−60℃で添加した。該溶液は直ちに帯褐色に変わり、それを室温で1.5時間にわたり撹拌した。再び−60℃に冷却した後に、該反応混合物をアルキルハロゲン化物RX(45ミリモル、1.5当量)で反応停止させ、−60℃で10分間にわたり撹拌し、次いで室温で更に2時間にわたり撹拌した。該反応混合物に100mlの水を添加し、次いでそれをジエチルエーテルで抽出した(3×100ml)。合した有機相を、引き続きNa223の水溶液、ブラインで洗浄し、そしてMgSO4上で乾燥させた。揮発物を真空下で濾過及び除去した後に、粗生成物を短いシリカゲルパッド(5cm、溶出剤:シクロヘキサン)での濾過によって精製し、真空下で濃縮することで、一般にほぼ定量的な収率で純粋な9−置換されたフルオレンが得られた。
【0130】
以下の9−置換されたフルオレンを前記の一般的手順に従って製造した:
9−メチルフルオレン(40): フルオレン(15.0g、90.4ミリモル)、n−BuLi(48.1ml、120ミリモル、ヘキサン中2.5M)、RX=ヨードメタン(19.3g、136ミリモル)。化合物40は、帯黄色の蝋様の固体として単離された(16.2g、定量的)。分析データは、文献(M.A.Schmidt,H.G.Alt,W.MiliusによるJ.Organomet.Chem.1996,525,15)中のデータと同一であった。
【0131】

【0132】
9−エチルフルオレン(41): フルオレン(5.0g、30.1ミリモル)、n−BuLi(16ml、40ミリモル、ヘキサン中2.5M)、RX=ヨードエタン(7.04g、45.1ミリモル)。化合物41は黄色の油状物として単離された(5.7g、97%)。
【0133】
分析データは、文献(K.D.Bartle,P.M.G.Bavin,D.W.Jones,R.L′AmieによるTetrahedron 1970,26,911)中のデータと同一であった。
【0134】

【0135】
9−イソプロピルフルオレン(42): フルオレン(15.0g、90.4ミリモル)、n−BuLi(48.1ml、120ミリモル、ヘキサン中2.5M)、RX=2−ヨードプロパン(14.0ml、139.6ミリモル)。化合物42は、帯黄色の固体として単離された(18.7g、定量的)。分析データは、文献(M.A.Schmidt,H.G.Alt,W.MiliusによるJ.Organomet.Chem.1996,525,15)中で見られるデータと同一であった。
【0136】

【0137】
9−n−プロピルフルオレン(43): フルオレン(15.0g、90.4ミリモル)、n−BuLi(48.1ml、120ミリモル、ヘキサン中2.5M)、RX=1−ヨードプロパン(20.8g、122.3ミリモル)。化合物43は、帯黄色の固体として単離された(18.6g、定量的)。分析データは、文献(A.MathieuによるBull.Soc.Chim.Fr.1971,1526)中に見られるデータと同一であった。
【0138】

【0139】
9−n−オクタデシルフルオレン(44): フルオレン(7.0g、42.1ミリモル)、n−BuLi(17.35ml、43.4ミリモル、ヘキサン中2.5M)、RX=1−ブロモオクタデカン(14.53g、43.6ミリモル)。通常の後処理の後に、化合物44は、白色の固体として単離された(15.5g、88% Rf 0.73(シクロヘキサン))。
【0140】

【0141】
9−ベンジルフルオレン(45): フルオレン(19.0g、114ミリモル)、n−BuLi(54.9ml、137ミリモル、ヘキサン中2.5M)、RX=ベンジルクロリド(17.03ml、148ミリモル)。通常の後処理の後に、化合物45が単離され、ヘプタンから再結晶化させることで、白色の固体(25.8g、88.4%)が得られた。分析データは、文献(E.H.Licht,H.G.Alt,M.M.KarimによるJ.Organomet.Chem.2000,599,275)中のデータと同一であった。
【0142】

【0143】
(ii) 1−メチル−9−エチル−フルオレン(48)の製造
【化44】

【0144】
(a) 1−メチルフルオレン(47): 1−メチルフルオレン−9−オン(46)を、Mortier他(D.Tilly,S.S.Samanta,A.−S.Castanet,A.De,J.MortierによるEur.J.Org.Chem.2005,174)に従って製造した。1−メチルフルオレン−9−オン(46)を、Carruthers他(W.Carruthers,D.WhitmarshによるJ.Chem.Soc.Perkin Trans,I 1973,1511)の一般的手順に従って還元した。1−メチルフルオレン−9−オン(46)(6.8g、35ミリモル)を450mlのプロピオン酸中に溶解させた。赤リン(7.4g)及び100mlの濃HIを添加し、該反応混合物を24時間にわたり還流させた。定量的な変換が、TLCによって示された。該反応混合物を500mlの水で希釈し、NaOHで中和し、そしてEt2Oで抽出した(4×125ml)。合した有機層をブラインで洗浄し(2×125ml)、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、そして揮発物を真空中で除去することで、6.1g(97%)の化合物47が白色の固体として得られた。分析データは、文献(G.L.Grunewald,A.E.Carter,D.J.Sail,J.A.MonnによるJ.Med.Chem.1988,31,60及びM.J.ShapiroによるJ.Org.Chem.1978,43,3769)と一致していた。
【0145】

【0146】
(b) 1−メチル−9−エチル−フルオレン(48): 9位での置換反応は、項目IV(i)の前記の9−置換されたフルオレンの合成のための一般的手順に従って実施した。1−メチルフルオレン(47)(3.01g、16.7ミリモル)をフルオレンの代わりに使用し、n−BuLi(8.06ml、20ミリモル、ヘキサン中2.5M)、RX=1−ヨードエタン(3.39g、21.7ミリモル)を使用した。化合物48が単離され、無色の油状物が得られた(3.33g、95%)。
【0147】

【0148】
(iii) 1,3,8−トリメチル−9−エチル−フルオレン(55)の製造
【化45】

【0149】
試薬及び条件:
a) 1,3−プロパンジオール、ZrCl4;n−BuLi、MeI、H2SO4
b) Pd(OAc)2、SIMES、Cs2CO3、3,5−Me2−C63B(OH)2、ジオキサン;
c) NaClO2、H22
d) H2SO4
e) HI、赤リン、プロピオン酸;
f) n−BuLi、EtI、THF、−60℃
(a) 2−ブロモ−6−メチル−ベンゾアルデヒド(50): 1,3−ジブロモベンゼンをServatovski他(S.Lilinski.J.ServatowskiによるJ.Org.Chem.2003,68,5384)のプロトコールを使用してオルトリチウム化し、引き続きDMFで反応停止させることで、2,6−ジブロモベンゾアルデヒド(49)が得られ、それをアセタールとして保護し、n−BuLiで処理し、引き続きリチウム化された中間体をヨウ化メチルで反応停止させることで、所望の脱保護された2−ブロモ−6−メチルベンゾアルデヒド(50)がほぼ定量的な収率で得られた。
【0150】
2,6−ジブロモベンゾアルデヒド(49)(10.0g、37.9ミリモル)を、160mlの無水CH2Cl2中に溶解させた。プロパンジオール(6.4ml、88.5ml)、トリエチルオルトホルメート(6.83ml、41ミリモル)及び無水ZrCl4(1.0g)を周囲温度で添加し、そして一晩撹拌した。次いで、NaOH(10%溶液50ml)を添加し、更に1時間にわたり撹拌した。有機相を分離し、水相をEt2Oで抽出した(2×40ml)。合した有機相を水で洗浄し(3×60ml)、MgSO4上で乾燥させ、そして揮発物を真空中で除去することで、12g(98%)の2−(2,6−ジブロモフェニル)−1,3−ジオキサン(アセタール)が僅かに黄色の固体として得られた。
【0151】

【0152】
該アセタール(10.1g、31.25ミリモル)をTHF無水(200ml)中に溶解させた。−78℃で、n−BuLi(15.1ml、ヘキサン中2.5M、37.8ミリモル)を25分以内で添加し、引き続きその温度で更に90分間撹拌した。次いで、該反応混合物をヨウ化メチル(5.99g、42.2ミリモル)で処理し、そして−78℃で25分にわたり撹拌した。次いで、該反応混合物を、1.5時間以内で周囲温度に加温させた。得られた溶液をHCl(5Nの溶液290ml)で反応停止させ、そして周囲温度で1.5時間にわたり撹拌した。該アルデヒドの完全な脱保護をGC分析によって確認した。次いで、該反応混合物を引き続きジエチルエーテルで抽出し(4×100ml)、合した有機層をチオ硫酸ナトリウムの10%溶液(100ml)、水(100ml)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、そして揮発物を真空中で除去した。得られた僅かに黄色の固体を球管蒸留により精製することで、化合物50(5.97g、96%)が白色の結晶として得られた。Rf 0.56(シクロヘキサン:エチルアセテート 10:1)。
【0153】

【0154】
(b) 3,3′,5′−トリメチル−ビフェニル−カルバルデヒド(51)(スズキ−カップリングによる): 250mlのシュレンクフラスコ中で、ジオキサン無水(60ml)、Pd(OAc)2(175mg)、SIMES(N,N′−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリウムクロリド、777mg)及びCs2CO3(12.4g)を80℃で45時間にわたり、灰色の溶液が形成されるまで撹拌した。ベンゾアルデヒド50(3.1g、15.6ミリモル)及び3,5−ジメチルフェニルホウ酸を添加し、そして該混合物を80℃で2時間にわたり撹拌した(定量的変換、GC)。該反応混合物を周囲温度に冷却させ、NaOH(1Nの溶液100ml)及びジエチルエーテル(200ml)で処理し、それを分離漏斗に移した。水相をEt2Oで抽出し(2×100ml)、合した有機層を引き続きNaOH(100ml、1N)、ブライン(100ml)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、そして揮発物を真空中で除去した。得られた褐色の油状物を短いシリカゲルパッド(10×5cm、溶出剤:シクロヘキサン/エチルアセテート 20:1)を通じて濾過することによって精製して、化合物51(3.1g、89%)が黄色の油状物として得られた。Rf 0.66(シクロヘキサン:エチルアセテート(10:1))。該生成物は、如何なる更なる精製をすることなく使用された。
【0155】

【0156】
(c) 3,3′,5′−トリメチル−ビフェニル−カルボン酸(52): アルデヒド51(2.75g、11.5ミリモル)を、アセトニトリル(18ml、工業等級)中に溶解させた。NaH2PO4(0.453g、5.5mlのH2O中に溶解)及びH22(30%溶液1.93ml)を添加した。該反応混合物を0℃に冷却し(氷/水で)、そしてNaClO2(2.2g、19mlの水中に溶解)をシリンジを介して60分以内で添加した。該溶液を周囲温度に加温させ、そして更に3.5時間にわたり撹拌した。次いで、Na2SO3(100mg)を添加し、5分間撹拌した。HCl(10%溶液50ml)で処理した後に、該反応混合物をエーテルで抽出した(3×75ml)。合した有機相を、NaOHで抽出した(4×75ml、1N)。合したNaOH層をHClでpH1へと酸性化させ、再びEt2Oで抽出した。合した有機層をMgSO4上で乾燥させ、そして揮発物を真空中で除去することで、化合物52(2.95g、定量的)が無色の油状物として得られた。該生成物は、如何なる更なる精製をすることなく使用された。
【0157】

【0158】
(d) 1,3,8−トリメチルフルオレン−9−オン(53): 250mlの一つ口丸底フラスコにおいて、ビフェニル−カルボン酸52(3.0g、12.9ミリモル)を濃硫酸(40ml)で0℃(氷浴)で処理した。得られた暗褐色の溶液を0℃で15分間撹拌し、次いで周囲温度で更に1時間撹拌した。該反応混合物を氷(100g)中に注いだ。すると、その後に色が明黄色へと変化した。該懸濁液をK2CO3で中和し、そしてEt2Oで抽出した(3×100ml)。合した有機相をブラインで洗浄し(75ml)、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、そして揮発物を真空中で除去することで、化合物53(2.8g、98%)が黄色の結晶として得られた。Rf 0.52(シクロヘキサン:エチルアセテート 10:1)。該生成物は、如何なる更なる精製をすることなく使用された。
【0159】

【0160】
(e) 1,3,8−トリメチルフルオレン(54): 1,3,8−トリメチルフルオレン−9−オン(53)を、Carruthers他(W.Carruthers,D.WhitmarshによるJ.Chem.Soc.Perkin Trans,I 1973,1511)の一般的手順に従って還元した。1,3,8−トリメチルフルオレン−9−オン(53)(2.74g、12.3ミリモル)をプロピオン酸(235ml)中に溶解させた。赤リン(3.0g)及び濃HI(40ml)を添加し、該反応混合物を24時間にわたり還流させた。定量的な変換が、TLCによって示された。該反応混合物を水(250ml)で希釈し、NaOHで中和し、そしてEt2Oで抽出した(4×125ml)。合した有機層をブラインで洗浄し(2×125ml)、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、そして揮発物を真空中で除去することで、2.56g(定量的)の化合物54が白色の固体として得られた。
【0161】

【0162】
(f) 1,3,8−トリメチル−9−エチル−フルオレン(55): 9位での置換反応は、項目IV(i)の前記の9−置換されたフルオレンの合成のための一般的手順に従って実施した。1,3,8−トリメチルフルオレン(54)(1.2g、5.77ミリモル)をフルオレンの代わりに使用し、n−BuLi(3.0ml、ヘキサン中2.5M、7.5ミリモル)、RX=1−ヨードエタン(1.35g、8.65ミリモル)を使用した。化合物55が単離され、白色の固体(1.36g、定量的)が得られた。
【0163】

【0164】
(iv) 9−エチル−2,7−ジブロモフルオレン(56)の製造
【化46】

【0165】
250mlの四ツ口丸底フラスコ(アルミホイルで包んだ)において、9−エチルフルオレン(41)(5g、25.7ミリモル)を無水CHCl3(50ml)中に溶解させた。無水FeCl3(0.1g、0.63ミリモル)を添加した。アルゴン雰囲気下で、臭素(8.64g、54.1ミリモル、25mlのクロロホルム中に溶解)を、撹拌しつつ、20分にわたり0℃で滴加した。その添加が完了した後に、該反応混合物を周囲温度で3時間にわたり撹拌した。次いで、Na223の溶液(水中20%(w/w))を添加し、そして該混合物を分離漏斗に移した。水相を廃棄し、有機層を引き続きNaHCO3(飽和、3×40ml)及び水(1×40ml)で洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、揮発物を真空中で除去することで、黄色の固体が得られた。エタノールから再結晶化することで、化合物56(6.3g、70%)が白色の結晶として得られた。
【0166】

【0167】
V. フルオレニルホスホニウム塩の製造
(i) 9−置換されたフルオレニル−ホスホニウム塩の製造
9−置換されたフルオレニル−ホスホニウム塩の合成のための一般的手順:
9−置換されたフルオレン(31ミリモル)をEt2O無水(100ml)中に溶かした溶液に、n−BuLi(29ミリモル、ヘキサン中2.5Mの溶液)を−60℃で添加した。該溶液は直ちに赤色に変わり、該溶液を−60℃で10分間にわたり撹拌し、次いで周囲温度で更に2時間にわたり撹拌した。再び−60℃に冷却した後に、ジアルキル亜ホスフィン酸塩化物R2PCl(22ミリモル)を添加した。該反応混合物を−60℃で10分にわたり撹拌し、次いで一晩室温で撹拌した。LiClをCelite(登録商標)の短いパッドを介した濾過によって除去した後に、得られた澄明な濾液を、HBF4(ジエチルエーテル錯体31.5ミリモル)で反応停止させた。吸引濾過による分離の後に、粗生成物を20mlのCHCl3中に溶解させ、そしてEt2O中に滴加した(1l、激しく撹拌)。濾過と揮発物の真空中での除去により、純粋な生成物が白色の固体として得られた。
【0168】
以下の9−置換されたフルオレニル−ホスホニウム塩を前記の一般的手順に従って製造した:
9−MeFluPCy2・HBF4(8a): フルオレン誘導体=9−メチルフルオレン(40)(1.0g、5.55ミリモル)、n−BuLi(ヘキサン中2.0Mで2.7ml、5.4ミリモル)、R2PCl=Cy2PCl(0.95g、4.08ミリモル)、HBF4・Et2O(1.4ml、5.55ミリモル)。化合物8aが単離され、白色の固体(1.35g、71%)が得られた。
【0169】

【0170】
9−MeFluPiPr2・HBF4(5a): フルオレン誘導体=9−メチルフルオレン(40)(1.5g、8.31ミリモル)、nBuLi(4.05ml、ヘキサン中2.0M、8.1ミリモル)、R2PCl=iPr2PCl(0.9ml、5.67ミリモル)、HBF4・Et2O(2.4ml、9.51ミリモル)。化合物5aが単離され、白色の固体(1.37g、63%)が得られた。
【0171】

【0172】
9−EtFluPCy2・HBF4(9a): フルオレン誘導体=9−エチルフルオレン(40)(1.65g、8.55ミリモル)、n−BuLi(ヘキサン中2.5Mで3.3ml、8.25ミリモル)、R2PCl=Cy2PCl(1.26g、5.43ミリモル)、HBF4・Et2O(2.2ml、8.7ミリモル)。化合物9aが単離され、白色の固体(1.97g、76%)が得られた。
【0173】

【0174】
9−EtFluPiPr2・HBF4(6a): フルオレン誘導体=9−エチルフルオレン(41)(0.54g、2.78ミリモル)、n−BuLi(1.35ml、ヘキサン中2.0M、2.7ミリモル)、R2PCl=iPr2PCl(0.269g、1.76ミリモル)、HBF4・Et2O(0.55ml、2.7ミリモル)。化合物6aが単離され、白色の固体(0.69g、99%)が得られた。
【0175】

【0176】
9−iPrFluPCy2・HBF4(22a): フルオレン誘導体=9−i−プロピルフルオレン(42)(1.15g、5.54ミリモル)、n−BuLi(2.7ml、ヘキサン中2.0M、5.4ミリモル)、R2PCl=Cy2PCl(0.9g、4.08ミリモル)、HBF4・Et2O(1.2ml、4.76ミリモル)。化合物22aが単離され、白色の固体(1.30g、64%)が得られた。
【0177】

【0178】
9−iPrFluPiPr2・HBF4(23a): フルオレン誘導体=9−i−プロピルフルオレン(42)(1.16g、5.57ミリモル)、n−BuLi(2.7ml、ヘキサン中2.0M、5.4ミリモル)、R2PCl=iPr2PCl(0.66g、4.1ミリモル)、HBF4・Et2O(1.2ml、4.76ミリモル)。化合物23aが単離され、白色の固体(1.20g、71%)が得られた。
【0179】

【0180】
9−n−PrFluPCy2・HBF4(24a): フルオレン誘導体=9−n−プロピルフルオレン(43)(3.0g、14.4ミリモル)、n−BuLi(5.6ml、ヘキサン中2.5M、14.0ミリモル)、R2PCl=Cy2PCl(2.37g、10.2ミリモル)、HBF4・Et2O(2.0ml、14ミリモル)。化合物24aが単離され、白色の固体(4.13g、73%)が得られた。
【0181】

【0182】
9−C1837FluPCy2・HBF4(11a): フルオレン誘導体=9−オクタデシルフルオレン(44)(2.48g、5.9ミリモル)、n−BuLi(2.1ml、ヘキサン中2.5M、5.25ミリモル)、R2PCl=Cy2PCl(0.92g、3.94ミリモル)、HBF4・Et2O(1.8ml)。沈殿物の不在下で、水(80ml、水性HBF4(8N)で処理)を添加した。するとその後に白色の固体が沈殿した。該固体を吸引濾過を介して除去することで、化合物11aが白色の固体として得られた(2.6g、94%)。
【0183】

【0184】
9−C1837FluPiPr2・HBF4(7a): フルオレン誘導体=9−オクタデシルフルオレン(44)(2.38g、5.7ミリモル)、n−BuLi(2.0ml、ヘキサン中2.5M、5.0ミリモル)、R2PCl=iPr2PCl(0.575g、3.77ミリモル)、HBF4・Et2O(2.0ml、9.8ミリモル)。沈殿物の不在下で、揮発物を真空中で蒸発させることで、無色の固体が得られ、それをジエチルエーテル(50ml)中に溶解させ、そしてHBF4・Et2O(1ml)で処理した。水性HBF4(50ml、4N)を添加し、該混合物を激しく撹拌し、水相を分離し、ビーカーを一晩開放状態にした。形成した結晶を吸引濾過により分離し、そして真空中で乾燥させることで、化合物7a(1.90g、81%)が白色の結晶として得られた。
【0185】

【0186】
9−BnFluPCy2・HBF4(10a): フルオレン誘導体=9−ベンジルフルオレン(45)(6.0g、23.2ミリモル)、n−BuLi(8.6ml、ヘキサン中2.5M、21.5ミリモル)、R2PCl=Cy2PCl(3.85g、16.5ミリモル)、HBF4・Et2O(3.22ml、23.6ミリモル)。化合物10aが単離され、白色の固体(5.43g、61%)が得られた。
【0187】

【0188】
9−BnFluPiPr2・HBF4(26a): フルオレン誘導体=9−ベンジルフルオレン(45)(8.1g、31.3ミリモル)、n−BuLi(11.6ml、ヘキサン中2.5M、29ミリモル)、R2PCl=iPr2PCl(3.32g、22.3ミリモル)、HBF4・Et2O(4.35ml、31.9ミリモル)。吸引濾過による分離の後に、粗生成物をアセトニトリル(20ml)中に溶解させ、Et2O中に滴加した(1l、激しく撹拌)。濾過と揮発物の真空中での除去により、純粋な生成物26aが白色の固体として得られた(9.8g、95%)。
【0189】

【0190】
9−Et−1−MeFluPCy2・HBF4(12a): フルオレン誘導体=9−エチル−1−メチルフルオレン(48)(2.0g、9.56ミリモル)、n−BuLi(3.67ml、ヘキサン中2.5M、9.18ミリモル)、R2PCl=Cy2PCl(1.78g、7.65ミリモル)、HBF4・Et2O(1.25ml、9.18ミリモル)。化合物12aが単離され、白色の固体(3.5g、93%)が得られた。
【0191】

【0192】
9−Et−1,3,8−Me3−FluPCy2・HBF4(29a): フルオレン誘導体=1,3,8−トリメチル−9−エチル−フルオレン(55)(0.8g、3.4ミリモル)、n−BuLi(1.29ml、ヘキサン中2.5M)、R2PCl=Cy2PCl(0.633g、2.72ミリモル)、HBF4・Et2O(0.8ml、3.2ミリモル)。化合物29aが単離され、白色の固体(1.29g、92%)が得られた。
【0193】

【0194】
9−PhFluPiPr2・HBF4(30a): フルオレン誘導体=9−フェニルフルオレン(標準的な文献方法、例えばF.Ullman,R.von WurstembergerによるChem.Ber.1904,37,73−78に従って製造)(0.72g、2.97ミリモル)、n−BuLi(1.08ml、ヘキサン中2.5Mの溶液)、R2PCl=iPr2PCl(0.33ml、2.03ミリモル)、HBF4・Et2O(0.6ml、2.37ミリモル)。化合物30aが単離され、白色の固体(0.84g、93%)が得られた。
【0195】

【0196】
(ii) HFluPtBu2・HBF4(25a)の製造
THF無水(10ml)中に溶解させたフルオレン(0.505g、3.04ミリモル)を、n−BuLi(1.5ml、ヘキサン中2.0M)で−80℃で処理した。該混合物は橙色に変化し、そして周囲温度で更に4時間にわたり撹拌した。次いでtBu2PCl(0.476g、2.6ミリモル)を−80℃で添加し、10mlのヘプタン無水を添加した。該反応混合物を一晩で還流し、シュレンク条件下でCelite(登録商標)の短いパッドを介して濾過し、そして澄明な濾液をHBF4・Et2O(0.7ml、2.8ミリモル)で反応停止することで、白色の残留物が得られ、それをエチルアセテートから結晶化させることができた。吸引濾過による固体の分離の後に、粗生成物を3mlのCHCl3中に溶解させ、そしてEt2O中に滴加した(200ml、激しく撹拌)。濾過と揮発物の真空中での除去により、純粋な化合物25a(0.54g、52%)が白色の固体として得られた。
【0197】

【0198】
(iii) 9−Et−2,7−Br2FluPiPr2・HBF4(31a)の製造
100mlのシュレンクフラスコ中で、ジイソプロピルアミン(1.03ml、7.4ミリモル)をTHF無水(20ml)中に溶解させた。−60℃でn−BuLi(ヘキサン中2.0モラー溶液2.7ml、6.8ミリモル)を添加した。該溶液を−60℃で10分間撹拌し、次いで0℃で更に30分撹拌した。形成されたLDA溶液を、9−エチル−2,7−ジブロモフルオレン(56)(2.5g、7.08ミリモル)をEt2O(40ml)中に溶かした溶液に−60℃で添加した。赤色の反応混合物を−60℃で30分間撹拌し、次いで周囲温度で1.5時間にわたり撹拌した(より低い温度で、濃厚な帯赤色の沈殿物が形成される)。次いで、iPr2PCl(0.9ml、5.66ミリモル)を−60℃で添加した。該反応混合物を周囲温度で2時間にわたり撹拌し(色は赤から黄色に変化する)、そして少ないCelite(登録商標)パッドを通じて濾過した。澄明で僅かに黄色の濾液を、HBF4・Et2O(1.80ml、13.2ミリモル)で反応停止させ、それによりホスホニウム塩の沈殿が白色の固体としてもたらされた。該固体を吸引濾過により分離し、H2O中にスラリー化し(15ml、残留アンモニウム塩を除去するため)、そして再び濾過した。回収した白色の固体を、10mlのクロロホルム及び1mlのアセトニトリル中に溶解させ、そして該溶液を激しく撹拌したEt2O(400ml)に滴加することで、無色の沈殿物が得られた。濾過及び揮発物の真空中での除去により、化合物31aが白色の固体として得られた(2.82g、90%)。
【0199】

【0200】
(iv) BnFluP(nButBu)・HBF4(27a)及びEtFluP(nButBu)・HBF4(28a)の製造
BnFluP(nButBu)・HBF4(27a): 9−ベンジルフルオレン(45)(9.24g、35.7ミリモル)をTHF無水(75ml)中に溶かした溶液に、n−BuLi(13.8ml、ヘキサン中2.5M、34.7ミリモル)を−60℃で添加した。その溶液は直ちに赤色になった。周囲温度で1時間にわたり撹拌した後に、該反応混合物を、tBuPCl2の溶液(5.2g 32.7ミリモル、50mlのEt2O無水中に溶解)に−80℃で添加した。添加が完了した時点で、赤色が保持された。周囲温度で一晩撹拌した後に、n−BuLi(16.8ml、ヘキサン中2.5M、41.9ミリモル)を−60℃で添加した。該反応混合物を−60℃で10分間にわたり撹拌し、次いで周囲温度で2時間にわたり撹拌した。その懸濁液を小さいCelite(登録商標)のパッドを介して濾過し、そして澄明な帯赤色の濾液をHBF4・Et2O(4.0ml、29.3ミリモル)でクエンチして、ホスホニウム塩を沈殿させた。吸引濾過による分離後に、粗生成物をアセトニトリル(20ml)中に溶解させ、その溶液を激しく撹拌されたEt2O(1l)に滴加することで、無色の沈殿物が得られた。濾過及び揮発物の真空中での除去により、化合物27aが白色の固体として得られた(2.65g、17%)。
【0201】

【0202】
EtFluP(nButBu)・HBF4(28a): 9−エチルフルオレン(41)(5.85g、30.0ミリモル)をTHF無水(50ml)中に溶解させ、n−BuLi(11.5ml、ヘキサン中2.5M、29.0ミリモル)で−30℃で処理し、そして周囲温度で1時間にわたり撹拌した。次いで、tBuPCl2(4.36g、27.4ミリモル)をTHF無水(50ml)中に溶かしたものを、−80℃でその赤色の溶液に添加した。該反応混合物を周囲温度で14時間にわたり撹拌し、そして色が僅かに帯緑色になった。転化の完了を、31P NMRによって確認した。それは、162.91ppm(ベンゼン中)でEtFluPtBuClについての1つの一重のシグナルを示した。−30℃でn−BuLi(14.0ml、ヘキサン中2.5M、35.0ミリモル)を添加し、そして該反応混合物を周囲温度で一晩撹拌した。該懸濁液を、小さいCelite(登録商標)のパッドを介してシュレンク技術を使用して濾過した。澄明な帯赤色の濾液を、HBF4・Et2O(5.2ml、38ミリモル)で処理した。揮発物を真空中で除去することで、黄色の残留物が得られ、それをクロロホルム(6ml)で抽出し、濾過し、そして澄明な濾液を、Et2O(200ml、激しく撹拌されている)中に滴加すると、生成物が沈殿した。濾過と揮発物の真空中での除去により、化合物28a(5.3g、45%)が白色の固体として得られた。
【0203】

【0204】
(v) モノスルホン化されたフルオレニルホスフィン 9−Et−2−SO3H−FluPCy2・HBF4(13a)の製造
EtFluPCy2 HBF4(9a)(2.35g、4.92ミリモル)を1mlのCH2Cl2無水中に溶かした溶液に、2.3mlの濃硫酸を0℃で添加した。該溶液を40℃で一晩撹拌した後に、5gの氷を添加した。該反応混合物をクロロホルム(3×10ml)で抽出した。合した有機層をMgSO4上で乾燥させた。濾過後に、澄明な濾液を、真空中で最終容量5mlにまで減らした。その濃縮物をジエチルエーテル(500ml、激しく撹拌されている)に滴加することで、生成物が沈殿した。濾過と揮発物の真空中での除去により、純粋な生成物13a(1.8g、67%)が白色の固体として得られた。
【0205】

【0206】
B. クロスカップリング反応におけるホスフィン化合物の使用
幾つかの合成されたホスフィン化合物を、様々なクロスカップリング反応での触媒として作用するPd錯体中の配位子として使用した。全てのクロスカップリング反応は、アルゴン雰囲気下で脱ガスされた溶剤(凍結と融解)中で実施した。TONは、触媒ターンオーバー数を意味し、生成物のモル数と触媒のモル数との比率として定義される。
【0207】
I. ソノガシラ−カップリング反応
(i)アリール臭化物(ジイソプロピルアミン中)のソノガシラ−カップリング
無水ジイソプロピルアミン(10ml)と、アリール臭化物(10ミリモル)と、アセチレン(11ミリモル)をシュレンク管中に入れた。次いで、触媒を、所定の濃度で、Na2PdCl4/配位子(ホスホニウム塩)/CuI(4:8:3)の出来合いの混合物としてアルゴン下で添加した。特段の記載がない限り、反応混合物は、アルミニウムブロック中で50℃で撹拌した。室温に冷却した後に、該反応混合物をエーテル(15ml)で希釈し、水(10ml)で洗浄し、有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、そして真空中で濃縮した。生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカ、シクロヘキサン/エチルアセテート(100:1))によって単離した。選択的に、収率は、内部標準としてヘキサデカンもしくはジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテルを用いたガスクロマトグラフィーによるか、又は単離されたiPr2NH2+Br-の質量の測定によって測定した。
【0208】
第1表. 様々なホスフィン化合物を利用するフェニルアセチレン及び4−ブロモトルエンの反応のためのソノガシラの一次選別
【表11】

【0209】
試薬及び条件: 10ミリモルの4−ブロモトルエン、11ミリモルのフェニルアセチレン、10mlのiPr2NH、50℃、24時間。触媒: Na2PdCl4/配位子/CuI(4:8:3)、iPr2NH2Br中の触媒混合物、最大TON=15000。
【0210】
[a] 2回実行の平均。単離されたアンモニア塩の質量によって測定した。
【0211】
* 比較例: Ad2PBnは、アダマンチル置換されたホスフィンであり、それはDegussa AG社から商標名cataCXium(登録商標)として入手できる。
【0212】
第2表. EtFluPCy2・HBF4(9a)を用いた、様々なアリール臭化物とフェニルアセチレンとのソノガシラ−カップリング
【表12】

【0213】
試薬及び条件: 10ミリモルのアリール臭化物、11ミリモルのフェニルアセチレン、10mlのiPr2NH、50℃、24時間。触媒: 0.02モル%のNa2PdCl4、0.04モル%のEtFluPCy2・HBF4(9a)、0.015モル%のCuI、iPr2NH2Br中の触媒混合物。[a] 2回実行の平均、GC(内部標準としてヘキサデカン)と、単離されたアンモニウム塩の質量によって測定した。両方の分析法により同様の結果が得られた。
【0214】
第3表. アリール臭化物のソノガシラ−カップリング。
【0215】
様々なホスフィン配位子を使用したTONの測定
【表13】

【0216】
試薬及び条件: 10ミリモルのアリール臭化物、11ミリモルのアセチレン、10mlのHNiPr2、80℃、24時間。触媒: Na2PdCl4/ホスホニウム塩/CuI(4:8:3)、iPr2NH・HBr中の触媒混合物。
【0217】
[a] 5:MeFluPiPr2; 6:EtFluPiPr2
[b] 2回実行の平均
(ii)アリール塩化物(DMSO中)のソノガシラ−カップリング
無水DMSO(5ml、王冠)、アリール塩化物(1.5ミリモル)、アセチレン(2.1ミリモル)及びNa2CO3(3ミリモル)を、シュレンク管中に入れた。次いで、触媒を、所定の濃度で、Na2PdCl4/配位子(ホスホニウム塩)/CuI(4:8:3)としてアルゴン下で添加した。該反応混合物をアルミニウムブロック中で100〜120℃で12〜20時間にわたり撹拌した。室温に冷却した後に、該反応混合物をエーテル(15ml)で希釈し、水(10ml)で洗浄し、有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、そして真空中で濃縮した。生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカ、シクロヘキサン/エチルアセテート(100:1))によって単離した。選択的に、収率は、内部標準としてヘキサデカン又はジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテルを用いたガスクロマトグラフィーによって測定した。
【0218】
第4表. アリール塩化物でのソノガシラ−反応
【表14】

【0219】
試薬及び条件: 1.5ミリモルのアリール塩化物、2.1ミリモルのフェニルアセチレン、3ミリモルのNa2CO3、5mlのDMSO、触媒: 1モル%のNa2PdCl4/配位子/CuI(4:8:3)。ホスホニウム塩:MeFluiPr2・HBF4(5a)。反応条件は最適化しなかった。
【0220】
[a] 2回実行の平均。 短いシリカパッドを通じたクロマトグラフィーによって精製した。溶出剤: シクロヘキサン:エチルアセテート(10:1)。
【0221】
[b] 配位子: EtFluPCy2(9a)
[c] 配位子: BnFluPCy2(10a)
[d] 配位子: Ad2PBn(比較例)
(iii)アリール臭化物(水中)のソノガシラ−カップリング
触媒原液の調製: Na2PdCl4(0.05ミリモル)、9−Et−2−SO3HFlu−PCy2・HBF4(13a)(0.1ミリモル)及びCs2CO3(0.4ミリモル)を、アルゴン下でシュレンク管中に入れた。脱ガスされた水(5.0ml)を添加し、該混合物を、その溶液が白色に変わるまで45℃で2時間にわたり撹拌した。該原液は、1モル%(ml ミリモル アリールハロゲン化物)の濃度を有している。クロスカップリング反応: アリール臭化物(1ミリモル)、アセチレン(1.1ミリモル)及びCs2CO3(2ミリモル)を、シュレンク管中に装入し、そして水(2ml)及びイソプロパノール(2ml)並びに触媒原液を添加した。該反応混合物をアルミニウムブロック中で100℃で1.5〜4時間にわたり撹拌した。室温に冷却した後に、該反応混合物をエーテル(15ml)で希釈し、水(10ml)で洗浄し、有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、そして真空中で濃縮した。生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカ、シクロヘキサン/エチルアセテート(100:1))によって単離した。選択的に、収率は、内部標準としてヘキサデカン又はジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテルを用いたガスクロマトグラフィーによって測定した。
【0222】
【表15】

【0223】
II. スズキ−カップリング反応
(i)アリールハロゲン化物(ジオキサン中)のスズキ反応
触媒原液の調製: Na2PdCl4(0.05ミリモル)、ホスホニウム塩(0.1ミリモル)及びCs2CO3(0.2ミリモル)を、シュレンク管中に入れた。ジオキサン(5.0ml)を添加し、該混合物を、その溶液が白色に変わるまで45℃で2時間にわたり撹拌した。こうして調製された原液は、1モル%(ml*ミリモル アリールハロゲン化物)の濃度を有している。クロスカップリング反応: ジオキサン(5ml)及び触媒原液を、アリールハロゲン化物(1ミリモル)、ホウ酸(1.5ミリモル)及びCsCO3(2ミリモル)に添加した。該反応混合物を、アルミニウムブロック中で100℃で撹拌した。室温に冷却した後に、該反応混合物をエーテル(15ml)で希釈し、水(10ml)で洗浄し、有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、そして真空中で濃縮した。生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカ、シクロヘキサン/エチルアセテート(100:1))によって単離した。選択的に、収率は、内部標準としてヘキサデカン又はジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテルを用いたガスクロマトグラフィーによって測定した。
【0224】
第6表. アリール塩化物でのスズキ反応、配位子の選別
【表16】

【0225】
試薬及び条件: 1ミリモルのアリール塩化物、1.5のホウ酸、2.0ミリモルのCs2CO3、ジオキサン(5ml)、80℃、12時間。
【0226】
[a] Na2PdCl4/配位子(1:2)
[b] 2回実行の平均、内部標準としてヘキサデカンを用いたGCにより測定した。
【0227】
【表17】

【0228】
【表18】

【0229】
【表19】

【0230】
試薬及び条件: 1ミリモルのアリール塩化物、1.5のホウ酸、2.0ミリモルのCs2CO3、ジオキサン(5ml)、100℃、反応条件と触媒量は最適化しなかった。
【0231】
[a] 配位子: 9:EtFluPCy2; 26:BnFluPiPr2
[b] 触媒: Na2PdCl4/配位子(1:2)
[c] 2回実行の平均、内部標準としてヘキサデカンを用いたGCにより測定した。
【0232】
(ii)アリールハロゲン化物(水中)のスズキ反応
触媒原液の調製: 触媒原液は、水性のソノガシラ反応について記載したのと同様に9−Et−2−SO3HFlu−PCy2・HBF4(13a)を使用して調製した。クロスカップリング反応: アリールハロゲン化物(1ミリモル)、ホウ酸(1.2ミリモル)及びK2CO3(3.2ミリモル)を、まず水(4ml)に添加し、次いでその触媒原液及び2滴のLabrasol(カプリロカプロイルマクロゴール−8グリセリドブレンド、ポリエチレングリコール(PEG)の一価脂肪酸及び二価脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドからなる飽和ポリグリコール化グリセリド)を添加した。該反応混合物を、それぞれの温度(第8表を参照)で0.5〜20時間にわたって撹拌した(第8表を参照)。室温に冷却した後に、該反応混合物をエーテル(15ml)で希釈し、水(10ml)で洗浄し、有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、そして真空中で濃縮した。生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカ、シクロヘキサン/エチルアセテート(100:1))によって単離した。選択的に、収率は、内部標準としてヘキサデカン又はジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテルを用いたガスクロマトグラフィーによって測定した。
【0233】
【表20】

【0234】
【表21】

【0235】
【表22】

【0236】
【表23】

【0237】
【表24】

【0238】
【表25】

【0239】
【表26】

【0240】
一般的な反応条件: 1.0当量のアリールハロゲン化物、1.2当量のホウ酸、3.2当量のK2CO3、脱ガスされた水(4ml ミリモル-1)、触媒: Na2PdCl4/配位子(1:2)、配位子: 9−Et−2−SO3HFluPCy2(13)。反応時間及び温度は最適化しなかった。
【0241】
[a] 添加剤: Labrasol(0.05ml)。
【0242】
[b] 1当量のアリールハロゲン化物、1.2当量のホウ酸、3.2当量のCsCO3
【0243】
[c] 1当量のアリールハロゲン化物、1.2当量のホウ酸、3.2当量のKF。
【0244】
[d] 1当量のアリールハロゲン化物、1.2当量のホウ酸、3.2当量のNaOH。
【0245】
[e] 1当量のアリールハロゲン化物、1.2当量のホウ酸、3.2当量のK3PO4
【0246】
[f] 2回実行の平均、内部標準としてヘキサデカンを用いたGCにより測定した。
【0247】
III. アリールハロゲン化物のブッフヴァルト・ハルトヴィッヒ−アミノ化
5mlの無水トルエン、5ミリモルのアリールハロゲン化物、6ミリモルのアミン及び6ミリモルのNaOtBuを、シュレンク管中に入れた。次いで、触媒Na2PdCl4/EtFluPCy2(9)(ホスホニウム塩(9a)として)(1:2)を所定の濃度で添加した。該反応混合物を、アルミニウムブロック中で120℃で撹拌した。室温に冷却した後に、該反応混合物をエーテル(15ml)で希釈し、水(10ml)で洗浄し、有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、そして真空中で濃縮した。生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカ、シクロヘキサン/エチルアセテート(90:10))によって単離した。選択的に、収率は、内部標準としてヘキサデカン又はジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテルを用いたガスクロマトグラフィーによって測定した。
【0248】
【表27】

【0249】
【表28】

【0250】
【表29】

【0251】
試薬及び条件: 5mlのトルエン、5ミリモルのアリールハロゲン化物、6ミリモルのアミン、6ミリモルのNaOtBu、Pd(OAc)2/配位子(1:2)、ホスホニウム塩: EtFluPCy2・HBF4(9a)、120℃、反応条件は最適化しなかった。[a] 2回実行の平均、内部標準としてヘキサデカンを用いたGCにより測定した。
【0252】
IV. カルボニル化反応
(i)種々のホスホニウム塩を使用した種々のアリール臭化物のアルコキシカルボニル化反応
0.0025ミリモルのPd(OAc)2、0.0075ミリモルの配位子(ホスホニウム塩)及び0.385ミリモルのTMEDAを、n−ブタノールで希釈して、全容量を10mlにした。0.5ミリモルのそれぞれの基質をオートクレーブ中で直接的に導入し、次いで1mlの触媒溶液をオートクレーブに添加した。一酸化炭素でパージした後に、圧力を25バールのCOに調整し、そしてオートクレーブを115℃にまで加温しながら撹拌した。該反応を115℃で20時間にわたって保持した。冷却しそして圧力を解放した後に、原料混合物を短路のAl23を通じて濾過し、そして転化率をGCにより測定した。
【0253】
第10表. n−ブタノール中でのアリール臭化物のカルボニル化反応
【表30】

【0254】
【表31】

【0255】
【表32】

【0256】
(ii)種々のホスホニウム塩を使用した4−ブロモ安息香酸エチルの還元的カルボニル化
0.0025ミリモルのPd(OAc)2、0.0075ミリモルの配位子(ホスホニウム塩)及び0.385ミリモルのTMEDAを、トルエン中で希釈して、全容量を10mlにした。0.5ミリモルの4−ブロモ安息香酸エチルをオートクレーブ中で直接的に導入し、次いで1mlの触媒溶液をオートクレーブに添加した。合成ガス(CO/H2 1:1)でパージした後に、圧力を25バールのCO/H2に調整し、そしてオートクレーブを115℃にまで加温しながら撹拌した。該反応を115℃で20時間にわたって保持した。冷却しそして圧力を解放した後に、原料混合物を短路のAl23を通じて濾過し、そして転化率をGCにより測定した。
【0257】
第11表. 4−ブロモ安息香酸エチルの還元的カルボニル化反応
【表33】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

で表されるホスフィン化合物又は一般式(1a)
【化2】

によって表される相応のホスホニウム塩
[式中、
R′及びR′′は、無関係に、アルキル基、シクロアルキル基及び2−フリル基から選択され、又はR′及びR′′は一緒になって結合して、リン原子と共に、少なくとも3個の炭素原子を有する炭素−リン単環もしくは炭素−リン二環を形成し、その際、前記アルキル基、シクロアルキル基及び炭素−リン単環は、非置換であるか、もしくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基及びアリールオキシ基の群から選択される少なくとも1つの基によって置換されており、
Cpsは、部分的に置換されたもしくは完全に置換されたシクロペンタジエン−1−イル基であり、それは縮合環系をもたらす置換を含み、かつシクロペンタジエン−1−イル基の1位での置換が必須なのは、該シクロペンタジエン−1−イル基が縮合環系の一部でない場合もしくはインデニル基の一部である場合であり、かつ
-は、アニオンを表す]
(式(A)
【化3】

もしくは式(B)
【化4】

によって表されるホスフィン化合物及びそれらの相応のホスホニウム塩(Aa)及び(Ba)
[式中、Meは、メチル基を表し、かつtBuは、t−ブチル基を表す]を除く)。
【請求項2】
Cpsが部分的に置換もしくは完全に置換されたインデ−2−エン−1−イル基もしくはインデ−2−エン−2−イル基、有利には部分的に置換もしくは完全に置換されたインデ−2−エン−1−イル基であって、拡大された縮合環系をもたらす置換基を含む基である、請求項1に記載のホスフィン化合物又はその相応のホスホニウム塩。
【請求項3】
Cpsが非置換、部分的に置換もしくは完全に置換されたフルオレン−9−イル基であって、拡大された縮合環系をもたらす置換基を含む基である、請求項2に記載のホスフィン化合物又はその相応のホスホニウム塩。
【請求項4】
一般式(2)によって表される、請求項1に記載のホスフィン化合物。
【請求項5】
一般式(2)
【化5】

によって表されるホスフィン化合物又は一般式(2a)
【化6】

によって表される相応のホスホニウム塩
[式中、
Rは、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基か脂環式基か複素環式基と該芳香族基か脂環式基か複素環式基の原子をシクロペンタジエニル基の炭素原子と結合する追加のヘテロ原子とを含むヘテロ原子含有基(全ての上述の基は、非置換であるか、もしくは更なる炭素原子及び/又はヘテロ原子によって置換されている)及びオルガノシリル基からなる群から選択され、
1、R2、R3及びR4は、無関係に、水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基か脂環式基か複素環式基と該芳香族基か脂環式基か複素環式基の原子をシクロペンタジエニル基の炭素原子と結合する追加のヘテロ原子とを含むヘテロ原子含有基(全ての上述の基は、非置換であるか、もしくは更なる炭素原子及び/又はヘテロ原子によって置換されている)、ハロゲン及びヘテロ原子含有基からなる群から選択される;又はR1、R2、R3及びR4から選択される隣接する基は、一緒になって二価の基を形成し、それにより縮合環系を形成する]。
【請求項6】
一般式(3)
【化7】

によって表される、請求項2に記載のホスフィン化合物、又は一般式(3a):
【化8】

によって表される相応のホスホニウム塩
[式中、
Rは、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基か脂環式基か複素環式基と該芳香族基か脂環式基か複素環式基の原子をインデニル基の炭素原子と結合する追加のヘテロ原子とを含むヘテロ原子含有基(全ての上述の基は、非置換であるか、もしくは更なる炭素原子及び/又はヘテロ原子によって置換されている)及びオルガノシリル基からなる群から選択され、
5、R6、R7、R8、R9及びR10は、無関係に、水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基か脂環式基か複素環式基と該芳香族基か脂環式基か複素環式基の原子をインデニル基の炭素原子と結合する追加のヘテロ原子とを含むヘテロ原子含有基(全ての上述の基は、非置換であるか、もしくは更なる炭素原子及び/又はヘテロ原子によって置換されている)、ハロゲン及びヘテロ原子含有基からなる群から選択される;又はR5、R6、R7、R8、R9及びR10から選択される隣接する基は、一緒になって二価の基を形成し、それにより縮合環系を形成する]。
【請求項7】
一般式(4)
【化9】

によって表される、請求項3に記載のホスフィン化合物又は一般式(4a):
【化10】

によって表される相応のホスホニウム塩
[式中、
Rは、水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基か脂環式基か複素環式基と該芳香族基か脂環式基か複素環式基の原子をフルオレニル基の炭素原子と結合する付加的なヘテロ原子とを含むヘテロ原子含有基(全ての上述の基は、非置換であるか、もしくは更なる炭素原子及び/又はヘテロ原子によって置換されている)及びオルガノシリル基からなる群から選択され、
11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、無関係に、水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基か脂環式基か複素環式基と該芳香族基か脂環式基か複素環式基の原子をフルオレニル基の炭素原子と結合する付加的なヘテロ原子とを含むヘテロ原子含有基(全ての上述の基は、非置換であるか、もしくは更なる炭素原子及び/又はヘテロ原子によって置換されている)、ハロゲン及びヘテロ原子含有基からなる群から選択される;又はR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18から選択される隣接する基は、一緒になって二価の基を形成し、それにより縮合環系を形成する]。
【請求項8】
Rが、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基及びアルキルシリル基からなる群から選択され、前記基は、非置換もしくは更なる炭素原子及び/又はヘテロ原子によって置換されており、かつR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、無関係に、H、非置換もしくは置換されたアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルコキシ基、ハロゲン及び水溶性を付与するヘテロ原子含有基からなる群から選択される、請求項4から6までのいずれか1項に記載のホスフィン化合物又はその相応のホスホニウム塩。
【請求項9】
Rが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−オクタデシル基、ベンジル基及びフェニル基からなる群から選択され、前記基は、非置換もしくは置換されており、好ましくは非置換であり、かつR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、無関係に、H、メチル基、メトキシ基及び−SO3Hからなる群から選択される、請求項7に記載のホスフィン化合物又はその相応のホスホニウム塩。
【請求項10】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18が、水素である、請求項1から9までのいずれか1項に記載のホスフィン化合物又はその相応のホスホニウム塩。
【請求項11】
Rが、非分枝鎖状のアルキル基もしくはベンジル基である、請求項1から10までのいずれか1項に記載のホスフィン化合物又はその相応のホスホニウム塩。
【請求項12】
Rがメチル基もしくはエチル基である、請求項10に記載のホスフィン化合物又はその相応のホスホニウム塩。
【請求項13】
R′及びR′′が、無関係に、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、シクロヘキシル基及びアダマンチル基からなる群から選択され、又はR′及びR′′は一緒になって結合されて、リン原子と共に、[3.3.1]ホビル基もしくは[4.2.1]ホビル基を形成する、請求項1から12までのいずれか1項に記載のホスフィン化合物又はその相応のホスホニウム塩。
【請求項14】
R′及びR′′が、無関係に、イソプロピル基及びシクロヘキシル基からなる群から選択される、請求項12に記載のホスフィン化合物又はその相応のホスホニウム塩。
【請求項15】
R′及びR′′が同じ基である、請求項1から14までのいずれか1項に記載のホスフィン化合物又はその相応のホスホニウム塩。
【請求項16】
(9−メチルフルオレン−9−イル)ジイソプロピルホスフィン(9−MeFluPiPr2)(5)
【化11】

(9−エチルフルオレン−9−イル)ジイソプロピルホスフィン(9−EtFluPiPr2)(6)
【化12】

(9−ベンジルフルオレン−9−イル)ジイソプロピルホスフィン(9−BnFluPiPr2)(26)
【化13】

(9−オクタデシルフルオレン−9−イル)ジイソプロピルホスフィン(9−C1837FluPiPr2)(7)
【化14】

(9−メチルフルオレン−9−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(9−MeFluPCy2)(8)
【化15】

(9−エチルフルオレン−9−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(9−EtFluPCy2)(9)
【化16】

(9−ベンジルフルオレン−9−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(9−BnFluPCy2)(10)
【化17】

(9−オクタデシルフルオレン−9−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(9−C1837FluPCy2)(11)
【化18】

(1−メチル−9−エチルフルオレン−9−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(9−Et−1−MeFluPCy2)(12)
【化19】

(9−エチル−2−スルホフルオレン−9−イル)ジシクロヘキシルホスフィン(2−SO3H−9−EtFluPCy2)(13)
【化20】

並びにそれらの相応のホスホニウム塩
9−MeFluPiPr2・H+-(5a)
9−EtFluPiPr2・H+-(6a)
9−BnFluPiPr2・H+-(26a)
9−C1837FluPiPr2・H+-(7a)
9−MeFluPCy2・H+-(8a)
9−EtFluPCy2・H+-(9a)
9−BnFluPCy2・H+-(10a)
9−C1837FluPCy2・H+-(11a)
9−Et−1−MeFluPCy2・H+-(12a)及び
9−Et−2−SO3HFluPCy2・H+-(13a)
[式中、Fluは、フルオレン−9−イル基を表し、かつMeは、メチル基を表し、Etは、エチル基を表し、Bnは、ベンジル基を表し、iPrは、イソプロピル基を表し、かつCyは、シクロヘキシル基を表す]からなる群から選択される、請求項6に記載のホスフィン化合物又はその相応のホスホニウム塩。
【請求項17】
-がBF4-である、請求項1から16までのいずれか1項に記載のホスホニウム塩。
【請求項18】
(i)一般式(1)
【化21】

[式中、
R′及びR′′は、無関係に、アルキル基、シクロアルキル基及び2−フリル基から選択され、又はR′及びR′′は一緒になって結合して、リン原子と共に、少なくとも3個の炭素原子を有する炭素−リン単環もしくは炭素−リン二環を形成し、その際、前記アルキル基、シクロアルキル基及び炭素−リン単環は、非置換であるか、もしくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基及びアリールオキシ基の群から選択される少なくとも1つの基によって置換されており、
Cpsは、部分的に置換されたもしくは完全に置換されたシクロペンタジエン−1−イル基であり、それは縮合環系をもたらす置換を含み、かつシクロペンタジエン−1−イル基の1位での置換が必須なのは、該シクロペンタジエン−1−イル基が縮合環系の一部でない場合もしくはインデニル基の一部である場合である]で表されるホスフィン化合物と、
(ii)元素の周期律表の第8族、第9族、第10族及び第11族から選択される遷移金属と
を含む配位化合物。
【請求項19】
遷移金属が、Pd、Ni、Pt、Rh、Ir、Ru、Co、Fe、Cu及びAuから選択される、請求項17又は18に記載の配位化合物。
【請求項20】
遷移金属が、PdもしくはNi、有利にはPdである、請求項18に記載の配位化合物。
【請求項21】
ホスフィン化合物が、請求項2から15までのいずれか1項で定義したものである、請求項17から19までのいずれか1項に記載の配位化合物。
【請求項22】
請求項17から20までのいずれか1項に記載の配位化合物を、有機化合物の製造のための触媒として又は触媒系の一部として用いる使用。
【請求項23】
一般式(1)
【化22】

で表されるホスフィン化合物又は一般式(1a)
【化23】

によって表される相応のホスホニウム塩
[式中、
R′及びR′′は、無関係に、アルキル基、シクロアルキル基及び2−フリル基から選択され、又はR′及びR′′は一緒になって結合して、リン原子と共に、少なくとも3個の炭素原子を有する炭素−リン単環もしくは炭素−リン二環を形成し、その際、前記アルキル基、シクロアルキル基及び炭素−リン単環は、非置換であるか、もしくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基及びアリールオキシ基の群から選択される少なくとも1つの基によって置換されており、
Cpsは、部分的に置換されたもしくは完全に置換されたシクロペンタジエン−1−イル基であり、それは縮合環系をもたらす置換を含み、かつシクロペンタジエン−1−イル基の1位での置換が必須なのは、該シクロペンタジエン−1−イル基が縮合環系の一部でない場合もしくはインデニル基の一部である場合であり、かつ
-は、アニオンを表す]を、遷移金属化合物と組み合わせて、有機化合物の製造のための触媒として又は触媒系の一部として用いる使用であって、該遷移金属が、請求項17から19までのいずれか1項で定義したものである使用。
【請求項24】
ホスフィン化合物及びその相応のホスホニウム塩が、請求項2から16までのいずれか1項で定義したものである、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
有機化合物の製造が、C−C結合もしくはC−ヘテロ原子結合の形成を含む、請求項21から23までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
遷移金属がPdであり、かつ有機化合物の製造である、請求項24に記載の使用。
【請求項27】
C−C結合の形成を含み、その際、有機化合物が、
(k)有機ホウ素化合物と、アリール、ヘテロアリールもしくはビニルのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物とのスズキ−クロスカップリング;
(l)有機スズ化合物と、離脱基としてハロゲンもしくは擬ハロゲンを有する炭素求電子体とのスティル−クロスカップリング;
(m)オルガノシランと、アリール、ヘテロアリールもしくはビニルのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物とのヒヤマ−クロスカップリング;
(n)有機亜鉛化合物と、アリール、ヘテロアリールもしくはビニルのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物とのネギシ−クロスカップリング;
(o)グリニャール化合物と、アリール、ヘテロアリールもしくはビニルのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物とのクマダ−クロスカップリング;
(p)末端アルキンと、アリール、ヘテロアリールもしくはビニルのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物とのソノガシラ−クロスカップリング;
(q)エノレート及び他の安定化されたカルバニオンのアリールもしくはヘテロアリールのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物によるα−アリール化;
(r)アリールもしくはヘテロアリールのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物のシアノ化;
(s)アリールもしくはヘテロアリールのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物のカルボニル化;及び
(t)アリール、ヘテロアリールもしくはビニルのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物のオレフィンへのヘック−カップリング
からなる群から選択される反応によって製造される使用。
【請求項28】
遷移金属がPdであり、かつ有機化合物の製造がC−N結合の形成を含み、その際、有機化合物は、アリールもしくはヘテロアリールのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物のアミンによるブッフヴァルト・ハルトヴィッヒ−カップリング(ブッフヴァルト・ハルトヴィッヒ−アミノ化)によって製造される、請求項24に記載の使用。
【請求項29】
遷移金属がPdであり、かつ有機化合物の製造である、請求項24に記載の使用。
【請求項30】
C−O結合の形成を含み、その有機化合物が、アリールもしくはヘテロアリールのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物とアルコールとのカップリングによって製造される使用。
【請求項31】
有機化合物が、アリールハロゲン化物もしくはヘテロアリールハロゲン化物のヒドロ脱ハロゲン化によって製造される、請求項21から23までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項32】
擬ハロゲンもしくは擬ハロゲン化物が、−COCl、−SO2Cl、−N2X、−OP(O)(OR)2、トリフレート及びトシレートから選択される、請求項25から27までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項33】
擬ハロゲンもしくは擬ハロゲン化物がトリフレートである、請求項29に記載の使用。
【請求項34】
ハロゲンもしくはハロゲン化物が−Clもしくは−Brである、請求項25から28までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項35】
請求項1から15までのいずれか1項に記載のホスフィン化合物の製造方法において、式HCpsによる化合物を強塩基の使用により脱プロトン化する工程と、得られたアニオンを式R′R′′PXによる亜ホスフィン酸ハロゲン化物とを反応させて、ホスフィン化合物R′R′PCps[式中、Cps、R′及びR′′は請求項1から15までのいずれか1項で定義されたものであり、かつXはClもしくはBrである]を得る工程を含む方法。
【請求項36】
請求項1から15までのいずれか1項に記載のホスフィン化合物の製造方法において、式HCpsによる化合物を、強塩基の使用によって脱プロトン化する工程と、得られたアニオンと、式R′PX2による亜ホスホン酸ジハロゲン化物とを反応させて、式CpsR′PXによる亜ホスフィン酸ハロゲン化物を形成させる工程と、アルキル化する工程を含む方法。
【請求項37】
亜ホスフィン酸ハロゲン化物を好適な有機金属アルキル化剤でR′′基を導入してホスフィン化合物R′R′′PCps[式中、Cps、R′及びR′′は、請求項1から15のいずれかで定義されたものであり、かつXはClもしくはBrである]を形成する方法。
【請求項38】
請求項1から16までのいずれか1項に記載のホスホニウム塩の製造方法において、請求項32もしくは33に記載のホスフィン化合物を製造する工程と、該ホスフィン化合物を、H+-[式中、Y-は請求項1又は16に定義されるものである]との反応により転化させて、相応のホスホニウム塩にする工程を含む方法。

【公表番号】特表2010−501617(P2010−501617A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526036(P2009−526036)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058417
【国際公開番号】WO2008/025673
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】