説明

樹脂結合成形品を製造する方法

本発明は、プレスされ、熱的に硬化され、圧力と温度とが制御される単一処理工程で表面が熱的に処理される成形品に関する。その結果、より短い処理時間が達成され、その処理はエネルギーを節約するように実行される。その処理は、極めて正確に制御される。成形品は、ガス抜きも行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂を含有したプレス材をプレスし、熱で硬化させた樹脂結合成形品、特にブレーキライニングまたはクラッチライニングの摩擦ライニングを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、個々の部品として製造されるばかりでなく、さらに機能部品にも同時に結合することのできる全ての樹脂結合成形品の製造に適用される。本発明の主な適用分野は、ブレーキライニングまたはクラッチライニングの摩擦ライニングの製造であり、任意ではあるが、ライニングは、適宜下部層を介在させたり、または下部層無しで付属支持板に同時に取り付けられる。例えば、別の適用分野は、電気モータのカーボンブラシの製造である。
【0003】
樹脂で結合されるプレス材は、高圧でプレスされる粉体混合物であり、同時に加熱してプレスされる場合が多い。同時加熱は、樹脂を溶解すると共に温度がどの程度高いかに応じて樹脂の架橋結合を開始する働きをする。プレス作業は、成形作業とも呼ばれる。ほぼその最終形状を有する製品は、プレス加工によって非結晶プレス材から造られる。
【0004】
しかし、それは必要な強度に達していない。このような製品は、硬化することで、即ち高温度で熱を供給することで造られ、このときバインダとして使用されるフェノール樹脂の架橋結合が起きる。
【0005】
従来、複数の個別に造られた成形品は同時に熱硬化を受けるのが普通である。成形作業後に、成形品は次いで一時的に保管され、その最中にそれら成形品は大気温度まで冷える。熱損失は、プレス加工が既に熱を供給して行われているときに特に大きい。次いで、加熱を再び硬化炉内で実施する。
【0006】
繰り返される加熱作業は、エネルギーを消費し、時間を費やす。従って、本発明の目的は、成形部品の製造を加速して、これをエネルギーの観点から改善するものである。
【発明の開示】
【0007】
この目的を達成するために、本発明による方法は、プレスおよび熱硬化が、圧力と温度とを制御して1つの単一処理工程で実施されることを特徴としている。
【0008】
このため、もはや冷却が2つの処理工程間では起きない。従って、追加の加熱工程の必要が無い。エネルギーおよび時間は、それに相応して大いに節約される。さらなるエネルギーおよび時間の節約は、2つの処理工程を重複させることで実施され、即ち、硬化は既に成形作業中に始まっている。
【0009】
一時的な保管が無いので、必要なスペースやさらには取扱いコストも削減される。さらに、材料ストックの流通も削減される。
【0010】
成形作業中に、このシステムは実質的により低いプレス力を用いて作動される。これは、工具の使用寿命に有利な作用を及ぼし、基準が低めに設定されている工具鋼であっても有利である。
【0011】
最終的には、運転設備の縮小も達成される。すべからく必要なものは加熱できる成形プレスのみで、加工品は完成までずっとプレス内にとどまっている。硬化炉は省かれる。
【0012】
成形後および硬化炉内で使用する前に、成形品を受けるための把持フレームを省くこともできる。取扱いコストもこの観点から節減される。過去には、成形品はまだ十分に本来の安定性に到達していないので、硬化処理前と硬化処理中に成形品を安定させるために把持フレームが必要であった。さらに、発生したガスを逃がしていたが、それをしないと製品を破壊するようになる。本発明による方法では、成形品の取扱いが成形後に何ら必要とされないために、それに相当した対応が不必要になる。
【0013】
ある特定の多孔度を有した製品の場合、最終的な圧縮性が極めて重要になることが多い。このような製品の特性は、プレス加工および硬化処理によって設定される。本発明は、プレス力、プレス時間およびプレス温度を非常に正確に制御する可能性を与えてくれるものであり、このため圧縮性限度が非常に狭くても、それを達成する。本発明は、その場での制御が容易になり、厳密な製造許容値を維持することができる。プレス作業は、力および/または行程の関数として制御される。これにより、最大限変更された要求や作業条件にも容易に適合することができる。
【0014】
特にブレーキライニングの製造の場合、表面処理が必要であり、即ち摩擦面を炭化するためにその摩擦面を強力に加熱する必要がある。炭化状態にすることによってのみ、摩擦ライニングの完全な摩擦効果が発揮される。いわゆるスコーチ(焼き付け)によって、摩擦ライニングが既に始めからその完全な作用を発現することが保証される。
【0015】
また、一般的に、硬化された摩擦ライニングは、スコーチを行うための表面加熱が行われるまで一時的に保管される。
【0016】
本発明をさらに発展させると、他方で、熱表面処理を単一処理工程に統合する可能性が存在する。かくして、この観点から追加の取扱い工程とさらに別の加熱が省かれる。スコーチが熱硬化と同時に行われることも重要である。かくして、プレスの開始から表面処理の終わりまでの処理期間は極めて短くなる。
【0017】
電流が、好ましくは熱硬化と熱表面処理のためにプレス材に通される。かくして、熱は外部には供給されることが無く、プレス材内で発生される。プレス材は導電性であるので、電流がそれを通って流れるとき、温度上昇を起こすと言う事実が利用されている。
【0018】
さらに、一方でプレス材を通って流れると共に、他方で処理される面にほぼ平行に接近して通る電流の流れが、同時にまたは連続して発生されることが提案されている。プレス材を通る電流の流れは、硬化の働きをし、他方で他の電流の流れは、スコーチを行う。支持板を備えた摩擦ライニングの場合、スコーチは摩擦面に限られる。何ら支持板が用意されていなければ、ライニングの両面でスコーチが行われる。
【0019】
既に述べたように、同時にスコーチと硬化を行うことは、特に有利である。しかし、2つの作業も、多かれ少なかれ調子を合わせて重なって行うことができる。
【0020】
それら電流の流れは、必要に応じて異なった強さとなる。
【0021】
スコーチされる摩擦ライニングの面では、交互に反対になる極性を有するマトリックス状の電極で作業が行われることが好ましい。この場合、幾つかの電極は、プレスの対向支持体と共に作動するばかりではなく、他の電極とも作動する。
【0022】
プレス作業中と硬化反応中に、ガスがプレス材に発生される。従って、本発明をさらに発展させると、処理工程中に連続して、または間欠的にプレス材のガス抜きを行うことが提案される。この場合、プレス作業中に囲い込まれた空気も逃げる。
【0023】
プレス材のガス抜きは、プレス方向でおよび/またはそれに対して横断方向で実施される。従って、成形品の側面がラムおよびストッパのラム保持板に当る面よりも平滑さと堅牢さで劣っているため、半径方向にガス抜きを行うのは、極めて特に有利である。プレス作業中にまた当初の硬化中に、把持フレームを成している成形型のプロフィルインサートが、成形品から上方または下方に取り外され、それによって成形品の半径方向の面を露出している間、成形品は、ラムとストッパのラム保持板との間に好ましくは把持される。ラムおよびストッパのラム保持板は、プロフィルインサートを取り外した状態では互いに電気的に絶縁され、ただ成形品を介して電気的に接続されているために、この作業も、供給電流による硬化に特に適している。
【0024】
さらにエネルギーを節約するために、熱絶縁を行って処理工程を実施することが提案されている。
【0025】
1つの単一処理工程に統合された熱処理が、圧力および温度を適合し、最適化した制御によって可能になる点が特に重要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
プレス機械は、通常の方式でプレス材によって充填される。次いで、ストッパのラム保持板が機械のプロフィルインサート上に下降される。プロフィルインサートとストッパのラム保持板との間で、閉鎖力が発生され、次に成形力がストッパのラム保持板とプロフィルインサートとから成る組立体とラムとの間で発生される。成形作業は、数秒の間に実施される。次いで、閉鎖力が中断される。それと同時に、成形品が内部ガス圧を受けて許容できない変形を起こすのを回避するために、また成形品の圧縮性の特性を設定するために、成形力は、必要程度まで最小化される。この力はクランプ力と称される。
【0027】
それら力の低減と同調してプロフィルインサートが下降される。次いで、成形品は、その半径方向領域を介してガスを放出する。
【0028】
樹脂で結合されるプレス材は、特定の温度領域でクランプ力の作用を受けて不可逆的に圧縮されるので、そのクランプ力は、ただ特定される行程に渡ってのみ維持される。それは、予め設定された許容可能な圧縮をただ達成する程度まで低減されなければならない。クランプ作業で辿る行程が制限されていれば、また縮みの許容量が達成されれば、行程のさらなる変化はストッパによって防止される。
【0029】
プロフィルインサートが下降されるや否や、電圧が把持された成形品の摩擦側とストッパのラム保持板との間に印加される。この目的のために、ストッパのラム保持板は、機械本体から電気的に絶縁される。成形品を通って流れる電流は、内側から外側に向かって均一にプレス材を加熱する。
【0030】
電流によって同時に硬化とスコーチを実施するために、極性を交互に変えたマトリックス状の電極が、表面処理の行われる成形品の表面上で使用される。電流の一部は、機械の他方側に流れて硬化を行わせる。電流の一部は、隣接した電極間に流れ、確実に関連面をスコーチする。
【0031】
このシステムには、成形品の厚さを検出し、加工中の行程の変化を記録し、その場での加工制御を行う働きをする手段が設けられている。
【0032】
製品と接触する温度センサが、ラムおよびストッパのラム保持板に配置される。把持中の製品温度は、成形品の成形送り出しスロープ上でのセンサの接触によって測定される。温度検知もその場での加工制御を行う役目を担っている。
【0033】
比較的高い成形力は、油圧システムの圧力から、またはラムを介して検知される。より低いクランプ力は、正確に測定され、保持されなければならない。従って、ストッパのラム保持板には対応した力センサが設けられる。力の測定値からの情報もその場での加工制御を行う働きをする。
【0034】
加工中に発生されるガスは、含まれる外来空気ができるだけ少なくなるように成形品を取り囲んでいる抽出構造を通して導き出される。成形品は、外来空気の影響により冷やすべきではない。空調された空気が適宜供給される。
【0035】
成形時間は一秒未満である。成形温度は20℃から230℃である。硬化中のクランプ温度は800℃までである。
【0036】
成形力は5kNから250kN、またはそれ以上であり、他方でクランプ力は、0.5kNから7kN、またはそれ以上である。両方の力は、加工中に変動する。クランプの期間は5秒未満である。
【0037】
この方法は、例えば移動可能なモジュール構造を有する装置など全体的な寸法が小さな装置によって実施される。この場合、冷間プレスと高温プレスとの間に差は無い。ガスが誘発する欠陥(気泡、割れ、エッジの起こり得る緩み)が回避され、その結果、スクラップ率は非常に低くなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含有したプレス材をプレスし、熱で硬化させた樹脂結合成形品、特にブレーキライニングまたはクラッチライニングの摩擦ライニングを製造する方法において、プレスおよび熱硬化が、圧力と温度とを制御して1つの単一処理工程で実施されることを特徴とする樹脂結合成形品を製造する方法。
【請求項2】
熱表面処理が、単一処理工程に統合されていることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
電流が、熱硬化および熱表面処理のためにプレス材に流されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
電流の流れは、同時にまたは連続して発生され、一方でプレス材を通って流れ、他方で処理される面にほぼ平行に接近して流れることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
電流の流れは、異なった強さで発生されることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
プレス材は、処理工程中に連続して、または間欠的にガス抜きが行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の方法。
【請求項7】
プレス材のガス抜きは、プレス方向でおよび/またはそれに対して横断方向で実施されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
処理工程は、熱絶縁を行って実施されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含有したプレス材を、1つの単一処理工程でプレスし、熱で硬化させた樹脂結合成形品、特にブレーキライニングまたはクラッチライニングの摩擦ライニングを製造する方法において、圧力と温度とがその単一処理工程中に制御されると共に、熱表面処理がその単一処理工程に統合されることを特徴とする樹脂結合成形品を製造する方法。
【請求項2】
電流が、熱硬化および熱表面処理のためにプレス材に流されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
電流の流れは、同時にまたは連続して発生され、一方でプレス材を通って流れ、他方で処理される面にほぼ平行に接近して流れることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
電流の流れは、異なった強さで発生されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
プレス材は、処理工程中に連続して、または間欠的にガス抜きが行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の方法。
【請求項6】
プレス材のガス抜きは、プレス方向でおよび/またはそれに対して横断方向で実施されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
処理工程は、熱絶縁を行って実施されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含有したプレス材を、圧力と温度とが制御される1つの単一処理工程でプレスし、熱で硬化させた樹脂結合成形品、特にブレーキライニングまたはクラッチライニングの摩擦ライニングを製造する方法において、独立して制御される熱表面処理が、その単一の処理工程に統合されることを特徴とする樹脂結合成形品を製造する方法。
【請求項2】
電流が、熱硬化および熱表面処理のためにプレス材に流されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
電流の流れは、同時にまたは連続して発生され、一方でプレス材を通って流れ、他方で処理される面にほぼ平行に接近して流れることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
電流の流れは、異なった強さで発生されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
プレス材は、処理工程中に連続して、または間欠的にガス抜きが行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の方法。
【請求項6】
プレス材のガス抜きは、プレス方向でおよび/またはそれに対して横断方向で実施されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
処理工程は、熱絶縁を行って実施されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含有したプレス材を、圧力と温度とが制御される1つの単一処理工程でプレスし、熱で硬化させた樹脂結合成形品、特にブレーキライニングまたはクラッチライニングの摩擦ライニングを製造する方法において、独立して制御される熱表面処理が、その単一の処理工程に統合されることを特徴とする樹脂結合成形品を製造する方法。
【請求項2】
電流が、熱硬化および熱表面処理のためにプレス材に流されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
電流の流れは、同時にまたは連続して発生され、一方でプレス材を通って流れ、他方で処理される面にほぼ平行に接近して流れることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
プレス材は、処理工程中に連続して、または間欠的にガス抜きが行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の方法。
【請求項5】
処理工程は、熱絶縁を行って実施されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の方法。

【公表番号】特表2006−505420(P2006−505420A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−587597(P2003−587597)
【出願日】平成15年4月17日(2003.4.17)
【国際出願番号】PCT/EP2003/004053
【国際公開番号】WO2003/090994
【国際公開日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【出願人】(504396276)ティーエムディー フリクション ヨーロッパ ゲーエムベーハー (7)
【Fターム(参考)】