説明

欠陥検査装置および欠陥検査方法

【課題】被検査物の表面の欠陥を精度よく検査することが可能な欠陥検査装置および欠陥検査方法を提供する。
【解決手段】照射部1は、ワークWの表面に対してA色の照射光L1,LA1とB色の照射光LB1と、C色の照射光LC1とを照射する。撮像装置3はワークWからの反射光を分光して、A色画像、B色画像、およびC色画像を同時に生成する。A色画像はB色画像(あるいはC色画像)に比べて、ワークWの欠陥に対応する部分と、その周囲との明るさ(あるいは色)の差が小さい。また、1度の撮影でA色画像、B色画像、およびC色画像が同時に生成されるので2つの画像の間に位置ずれが生じるのを防ぐことができる。よって2つの画像を比較すればワークWの欠陥のみを2つの画像の相違点として抽出することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被検査物体の表面の欠陥を検査する装置および方法に関し、特に、精度よく欠陥を検査することが可能な欠陥検査装置および欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業製品には筐体の表面を金属で形成したり光沢を持たせたりすることによって高級感、美感を持たせたものが多い。製品の表面の凹凸や傷、汚れ等の欠陥は商品価値を損なうため、検査によりこれらの欠陥を有する不良品を取り除いている。
【0003】
たとえば携帯電話や家電製品などでは、本体の表面に透明樹脂によるコーティング層が形成されたものが筐体に使用されることがある。このような筐体では、本体部は一般に樹脂等により形成されて所定の色彩で着色されている。この本体部の表面に上述のコーティング層が形成されることによって表面に光沢や色彩の変化などが生じ、これにより商品価値が高められる。
【0004】
上記のようなコーティング層を有する成形体を製造する工場では、コーティング層の表面に凹凸が生じたり、本体部とは異なる色彩が付着したりするといった欠陥が生じていないかどうかが検査される。従来からこの種の欠陥検出は現場の作業員が目視で検査することにより行なわれている。しかしながら上述したような筐体を用いた製品の多様化や大量生産に伴い、作業員の負担が大きくなるとともに検査に要する時間も多大になりつつある。そこでこれらの問題を解決するために欠陥検査を自動化することが試みられている。
【0005】
たとえば特開平11−23243号公報(特許文献1)は、曲面状の被検査物体の表面に所定パターンの検査光を照射することによって表面欠陥を検査可能な表面欠陥検査装置を開示する。また、特開2004−108833号公報(特許文献2)は、多面体からなる物品の複数の面を単一の撮像装置により同時に撮影することが可能な外観検査装置を開示する。この外観検査装置は被検査物体の上面を照明するための第1の照明装置と、その被検査物体の側面を照射するための第2の照明装置とを備える。
【特許文献1】特開平11−23243号公報
【特許文献2】特開2004−108833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な欠陥検査方法では、まず被検査物体を撮像したときの画像(検査画像)と、予め記憶する良品の画像(良品画像)とが比較される。次にこれら2つの画像の間に相違する部分が存在するか否かを判定する。相違する部分が検出された場合にはその部分が欠陥であると判定される。
【0007】
被検査物体に欠陥が存在する場合、その欠陥部分のみが2つの画像の相違点として現われれば欠陥検査装置は正しく欠陥を検出できる。このためには良品の表面と被検査物体の表面とで同じ領域を撮像する必要がある。
【0008】
しかしながら、良品と被検査物体とで厳密に同一の領域を撮像することは困難である。たとえば被検査物体を撮像するため被検査物体を固定した際に、被検査物体の位置が本来の位置とずれることがある。この場合、良品画像のパターンに対して検査画像のパターンがずれるため検査画像と良品画像とは異なることになる。よって被検査物体に欠陥が存在しなくても、欠陥が存在すると判定される可能性がある。
【0009】
パターンのずれがわずかであれば、そのずれを画像処理によって補正した上で欠陥検査を行なうことが考えられる。ただし、この場合には補正処理により検査時間が長くなる可能性がある。また、パターンのずれが大きい場合には上述のように良品が不良品と判定される可能性や被検査物体の欠陥を検出できない可能性がある。
【0010】
本発明の目的は、被検査物体の表面の欠陥を精度よく検査することが可能な欠陥検査装置および欠陥検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は要約すれば、欠陥検査装置であって、照射部と、撮像部と、検査処理部とを備える。照射部は、被検査物体の表面に対して互いに異なる方向から、第1および第2の照射光を照射する。撮像部は、被検査物体の表面を撮像して、第1および第2の照射光が被検査物体の表面に照射された状態の被検査物体の表面の画像を第1の画像として生成するとともに、第2の照射光が被検査物体の表面に照射された状態の被検査物体の表面の画像を第2の画像として生成する。検査処理部は、第1および第2の画像を比較して、被検査物体の表面における欠陥の有無を検査する。
【0012】
好ましくは、照射部は、第1および第2の照射光を同時に照射する。第1の照射光は、第1の色成分を含む。第2の照射光は、第1および第2の色成分を含む。撮像部は、被検査物体の表面で第1および第2の照射光がそれぞれ反射することで生じた第1および第2の反射光を分光して、第1の色成分を有する第1の画像と、第2の色成分を有する第2の画像とを生成する。
【0013】
より好ましくは、撮像部は、第2の照射光の反射方向から第1および第2の反射光を受ける。検査処理部は、被検査物体の表面における凹状または凸状の欠陥の有無を検査する。
【0014】
より好ましくは、撮像部は、第1の照射光の反射方向から第1および第2の反射光を受ける。検査処理部は、被検査物体の表面において周囲の色と異なる色を有する欠陥の有無を検査する。
【0015】
より好ましくは、第1の照射光は、第3の色成分をさらに含む。撮像部は、第1の照射光の反射方向から第1および第2の反射光を受けて、第3の色成分を有する第3の画像をさらに生成する。検査処理部は、第1および第3の画像を比較して、被検査物体の表面における凹状または凸状の欠陥の有無を検査する。検査処理部は、第1および第2の画像を比較して被検査物体の表面において周囲と色が異なる欠陥の有無を検査する。
【0016】
さらに好ましくは、照射部は、第1の照射光を発する第1の光源と、第2の照射光を発する第2の光源とを含む。第1および第2の光源の各々は、第1の色成分の光と、第2の色成分の光と、第3の色成分の光とを切換えて発光可能な複数の発光素子を有する。
【0017】
好ましくは、照射部は、第1および第2の照射光の照射と、第2の照射光の照射とを異なるタイミングで実行する。撮像部は、第1および第2の照射光の照射時に第1の画像を生成し、第2の照射光の照射時に第2の画像を生成する。
【0018】
本発明の他の局面に従うと、欠陥検査方法であって、被検査物体の表面に対して互いに異なる方向から、第1および第2の照射光を照射するステップと、撮像装置を用いて被検査物体の表面を撮像して、第1および第2の照射光が被検査物体の表面に照射された状態の被検査物体の表面の画像を第1の画像として生成するとともに、第2の照射光が被検査物体の表面に照射された状態の被検査物体の表面の画像を第2の画像として生成するステップと、第1および第2の画像を比較して、被検査物体の表面における欠陥の有無を検査するステップとを備える。
【0019】
好ましくは、第1および第2の照射光は同時に照射される。第1の照射光は、第1の色成分を含む。第2の照射光は、第1および第2の色成分を含む。撮像装置は、被検査物体の表面において第1および第2の照射光がそれぞれ反射することで生じた第1および第2の反射光を分光して、第1の色成分を有する第1の画像と、第2の色成分を有する第2の画像とを生成する。
【0020】
より好ましくは、撮像装置は、第2の照射光の反射方向から第1および第2の反射光を受ける。検査するステップにおいて、被検査物体の表面における凹状または凸状の欠陥の有無が判定される。
【0021】
より好ましくは、撮像装置は、第1の照射光の反射方向から第1および第2の反射光を受ける。検査するステップにおいて、被検査物体の表面において周囲の色と異なる色を有する欠陥の有無が判定される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、被検査物体の表面の欠陥を精度よく検査することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0024】
[欠陥検査装置の構成]
まず図1〜図4を用いて、本実施の形態に係る欠陥検査装置の構成について説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態に係る欠陥検査装置の基本的構成を示す図である。
図1を参照して、本実施の形態に係る欠陥検査装置100は、ワークW(被検査物体)の表面における欠陥を検査する。ワークWは、その表面で光の正反射が生じる物体であれば特に限定されず、たとえば表面が透明樹脂によりコーティングされたプラスチック成型品や金属等でもよい。またワークWの表面(被検査面)は平面でも曲面でもよい。
【0026】
ここで「正反射光」とは、光源から照明された角度と逆方向の同じ角度にはね返る光を意味する。これに対し、「拡散光」とはいろいろな方向に拡散して反射する光を意味するものとする。
【0027】
欠陥検査装置100が検出可能な欠陥は「凹凸欠陥」および「異色欠陥」である。ここで「凹凸欠陥」とは被検査物体の表面に凹状あるいは凸状に生じる欠陥を意味し、「異色欠陥」とは被検査物体の周囲の色(地の色)と異なる色を有する欠陥を意味するものとする。具体例を挙げて説明すると、凹凸欠陥には欠け、傷、バリ、異物等が含まれ、異色欠陥には汚れ、異色点等が含まれる。
【0028】
欠陥検査装置100は、照射部1と、撮像装置3と、制御装置4とを備える。
照射部1は、光源1A,1Bを含む。光源1AはワークWに対して照射光L1,LB1を照射する。光源1Bは、第1の照射光と異なる方向からワークWに対して照射光LA1,LC1を照射する。
【0029】
照射光L1の色と照射光LA1の色とは同じである。一方、照射光LB1の色は照射光L1(および照射光LA1)の色と異なる。また、照射光LC1の色は照射光L1(照射光LA1)の色および照射光LB1の色のいずれとも異なる。
【0030】
以後の説明では照射光L1,LA1の色を「A色」と称し、照射光LB1の色を「B色」と称し、照射光LC1の色を「C色」と称する。たとえばA色、B色、C色は、それぞれ、赤色、緑色、青色であるが、この組み合わせに限定されるものではなくワークWの表面の色に応じて適切に設定される。
【0031】
照射光L1,LA1のうち照射光L1のみがワークWの表面を照明し、かつ、照射光L1の正反射方向からワークWの表面を見た場合、ワークWの表面に凹凸欠陥が存在するとその部分が暗く見える。これに対し、照射光L1,LA1を同時に照射すると凹凸欠陥とその周囲(正常部)との明暗差は小さくなる(あるいは明暗差が生じなくなる)。
【0032】
なお、照射光L1のみがワークWの表面に照射された状態では照射光L1の正反射方向からワークWの表面を見ると異色欠陥と正常部との色の差は小さくなる(あるいは色の差が生じなくなる)。
【0033】
ワークWの表面で照射光L1,LA1,LB1,LC1が反射すると反射光L2,LA2,LB2,LC2がそれぞれ生じる。撮像装置3は照射光L1の正反射方向からワークWの表面を撮像する。撮像装置3は反射光L2,LA2,LB2,LC2を受けてワークWを撮像する。そして撮像装置3はワークWの画像(検査画像)を生成する。
【0034】
撮像装置3は、具体的にはカラーカメラであり、カメラおよびレンズを含んで構成される。一般的なカラーカメラではたとえばプリズム(あるいはカラーフィルタ)を備えることにより赤、緑、青の各色彩光をそれぞれ対応する撮像素子に分解して受光することが可能である。これにより撮像装置3はA色成分の画像(A色画像)と、B色成分の画像(B色画像)と、C色成分の画像(C色画像)とを生成する。
【0035】
つまり撮像装置3は、互いに異なる2方向からワークWの表面に光を照射した状態でのワークWの表面の画像(第1の画像)を生成する。さらに撮像装置3は、上記2方向のうちのいずれか1方向のみからワークWの表面に光を照射した状態でのワークWの表面の画像(第2の画像)を生成する。
【0036】
たとえば凹凸欠陥を検出する場合には、光源1A,1Bから同時にA色の光(照射光L1,LA1)を照射したときの画像と光源1AからB色の光(照射光LB1)を照射したときの画像とを生成する。この場合、光源1Bから出る照射光LA1が「第1の照射光」に対応し、光源1Aから出る照射光L1,LB1が本発明における「第2の照射光」に対応する。撮像装置3は、第2の照射光の反射方向から反射光L2,LA2,LB2を受ける。
【0037】
一方、異色欠陥を検出する場合には、光源1A,1Bから同時にA色の光(照射光L1,LA1)を照射したときの画像と光源1BからC色の光(照射光LC1)を照射したときの画像とを生成する。この場合、光源1Aから出る照射光L1が「第1の照射光」に対応し、光源1Bから出る照射光LA1,LC1が本発明における「第2の照射光」に対応する。撮像装置3は、第1の照射光の反射方向から反射光L2,LA2,LC2を受ける。
【0038】
制御装置4は、撮像制御部11と、検査処理部12とを含む。撮像制御部11は光源1A,1Bを制御する。また撮像制御部11は撮像装置3に対してワークWを撮像するよう指示を送る。
【0039】
検査処理部12はA色画像とB色画像とを比較して、ワークWの表面における凹凸欠陥の有無を判定する。さらに検査処理部12はA色画像とC色画像とを比較して、ワークWの表面における異色欠陥の有無を判定する。
【0040】
A色画像とB色画像とを比較した場合(あるいはA色画像とC色画像とを比較した場合)、ワークWの表面に欠陥が存在しても、その欠陥による明暗差、あるいは色の差はA色画像のほうがB色画像(あるいはC色画像)よりも小さくなる。
【0041】
つまりA色画像は従来の欠陥検査方法において用いられる良品画像に相当する。本実施の形態によれば検査処理の際に生成された良品画像と検査画像とを比較するので良品画像と検査画像との間にパターンずれが生じない。よって本実施の形態によればワークWの表面に存在する欠陥のみを2つの画像の相違点として抽出することが可能になるので、高精度に欠陥を検査できる。
【0042】
なお、検査処理部12が撮像装置3から取得した検査画像からA色成分、B色成分、およびC色成分をそれぞれ抽出してA色画像、B色画像およびC色画像を生成してもよい。
【0043】
図2は、図1の制御装置4のブロック図である。
図2を参照して、制御装置4は、光源制御部21と、カメラ制御部22と、CPU(Central Processing Unit)23と、メモリ24と、入力部25と、出力部26と、検査画像メモリ27と、パラメータ保存用メモリ28とを備える。これらのブロックは、CPUバスを介して各種のデータを交換する。なお光源制御部21とカメラ制御部22とは撮像制御部11を構成し、残りのブロックは検査処理部12を構成する。
【0044】
光源制御部21は、CPU23からの指示に応じて光源1A,1Bの各々の点灯および消灯を行なうだけでなく、光の色および強度を制御する。なお光源制御部21は光源1A,1Bを独立して制御できる。つまり光源制御部21は光源1Aと光源1Bとを同時に、あるいは順次点灯させることができる。
【0045】
カメラ制御部22は、CPU23からの指示に応じて撮像装置3にトリガ信号を送る。これにより撮像装置3は撮像を行なう。
【0046】
CPU23は制御装置4の全体の動作を制御する。メモリ24はCPU23上で実行されるプログラムを格納する。入力部25はたとえばキーボードやマウス等の入力装置31から検査に必要な条件やパラメータ等が入力されると、それらの情報をCPU23に対して送信する。出力部26は検査結果をディスプレイ等の表示装置32に出力するためのインターフェース回路により構成される。
【0047】
検査画像メモリ27は、画像バスを介して撮像装置3から被検査面の画像データを受けて、その画像データを格納する。パラメータ保存用メモリ28は検査に必要な各種パラメータを格納する。各種パラメータは、たとえば後述する差分演算画像を2値化するための2値化しきい値、欠陥の有無を判別するための判定用しきい値、光源1A,1Bから発せられる光の色や光量を設定するための設定値等である。なお、これらのパラメータの値は検査に先立って特定される。
【0048】
本実施の形態では、光源制御部21は光源1A,1Bを同時に点灯させる。これにより図1に示す照射光L1,LA1,LB1,LC1が同時に発せられる。よって撮像装置3により生成されたワークWの表面の画像から、凹凸欠陥の検査に必要な画像(A色画像とB色画像)と、異色欠陥の検査に必要な画像(A色画像とC色画像)とを生成できる。これにより、照射光L1,LA1,LB1,LC1を別々に照射する場合に比較して検査に要する時間を短縮できる。
【0049】
図3は、図1の光源1A,1Bの構成を示す斜視図である。
図3を参照して、カメラ・レンズ部の下に光源1Aが設けられる。光源1Aの下には光源1Bが重ねられている。
【0050】
図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。
図4を参照して、光源1A,1Bは複数のLED(発光ダイオード)41を含む。複数のLED41はフルカラータイプであり、光色(波長)を自由に制御可能である。つまり複数のLED41はA色光、B色光、C色光を切換えて発することができる。また、複数のLEDから発せられる光の強度も自由に制御可能である。複数のLED41の各々の光色および光量は図1に示す撮像制御部(より特定的には図2に示す光源制御部21)により行なわれる。
【0051】
このように光源1A,1Bを構成することによって、ワークWの色に応じてA色、B色、C色の組み合わせを自由に変えることができる。よって、本実施の形態の欠陥検査装置の汎用性を高めることが可能になる。
【0052】
光源1Aは、さらに、ハーフミラー42と、透明板43とを含む。光源1Aに含まれるLED41から出た光(紙面左右方向の光)はハーフミラー42に到達すると90度進行方向を変え、透明板43を透過してワークWの表面に達する。ワークWの表面に達した光が正反射すると、その正反射光は透明板43およびハーフミラー42を透過して撮像装置3に入射する。
【0053】
図4に示す中心軸Jは撮像装置3のレンズの中心軸を通る。光源1Aはこの中心軸Jを通るように光を発する。またワークWからの正反射光もこの中心軸Jを通る。光源1Aのような照明装置は一般的に「同軸落射照明」と称される。
【0054】
光源1Bは、複数のLED41(フルカラータイプのLED)を含む回路基板45と、拡散板46とを含む。複数のLED41から出た光は拡散板46を通り、中心軸に対して斜め方向からワークWの表面を照射する。光源1BのようにワークWに対して斜め方向から光を照射する照明装置を以後「側射照明」と称する。
【0055】
[検討例]
図5は、欠陥検査方法についての検討例を説明する図である。
【0056】
図5を参照して、欠陥検査は次の(1)〜(5)の順で行なわれる。
(1)良品W1において規定された撮像領域A1を撮像する。
【0057】
(2)良品画像(画像IMG1)を生成する。
(3)検査時に被検査物体W2を撮像する。撮像領域A2は(1)の撮像領域A1と同じ領域である。なお撮像領域A2内(被検査物体W2の表面)には欠陥Dが存在する。
【0058】
(4)検査画像(画像IMG2)を生成する。画像IMG2の領域a1には欠陥Dのパターンが含まれる。
【0059】
(5)画像IMG1と画像IMG2とを比較する。
ここで手順(5)についてより詳細に説明する。画像IMG1は良品W1の表面(領域a1)と、それ以外の部分(領域a2)とを含んでいる。領域a2については比較処理を行なう前にマスク処理によって検査対象外領域とされる。
【0060】
次に画像IMG1と画像IMG2とで領域a1同士を比較する。双方の画像に相違点が存在すれば、その相違点が欠陥であると判定される。領域a2は検査対象外領域であるので、領域a2同士については相違点の有無は判定されない。
【0061】
画像IMG3は画像IMG1と画像IMG2との差分を示す画像である。画像IMG3には欠陥Dのパターンのみが存在する。この画像IMG3に基づいて被検査物体W2に欠陥が存在すると判定される。
【0062】
図6は、被検査物体の撮像時に撮像領域がずれた場合を示す図である。
図6を参照して、撮像領域A2は位置ずれがない場合の被検査物体W2の撮像領域であり、本来の撮像領域である。なお図6の撮像領域A2は図5の撮像領域A2と同じである。撮像領域の位置ずれが生じた場合、被検査物体W2における実際の撮像領域は撮像領域A2から撮像領域A3(一点鎖線の枠)に移動する。なお撮像領域の位置ずれはすべての方向に対して起こり得る。
【0063】
図6に示すような撮像領域の位置ずれは、たとえば被検査物体を撮影場所に固定する際に固定位置がずれたり、欠陥検査装置(あるいはその周辺)で振動が生じたりすることで起こる。
【0064】
画像IMG2,画像IMG2Aは撮像装置により撮像領域A2,A3をそれぞれ撮像したときの検査画像である。画像IMG2,画像IMG2Aともに領域a1内に欠陥Dのパターンが含まれているが、領域a1の大きさは画像IMG2と画像IMG2Aとで大幅に異なる。
【0065】
図7は、良品画像と位置ずれ発生時の検査画像とを用いた欠陥検査を説明する図である。
【0066】
図7を参照して、欠陥検査の方法は図5に示す欠陥検査方法と同様である。すなわち(1)良品画像(画像IMG1)を予め生成し、(2)被検査物体を撮像して検査画像(画像IMG2A)を生成する。ただし、被検査物体の撮像時に位置ずれが生じたため、画像IMG1と画像IMG2Aとでは領域a1(検査対象領域)の面積および輪郭が異なる。よって画像IMG1と画像IMG2Aとを重ね合わせて比較した場合には、画像IMG1の検査対象外領域(領域a2)に欠陥Dのパターンが位置する。この結果、欠陥Dは画像IMG1との相違点として判定されない。
【0067】
たとえば製造ラインでの製品検査の際にこのような現象が生じた場合、欠陥Dを検出できないため不良品を良品と誤判定することが考えられる。そこで上述の問題を解決することが必要になる。
【0068】
図8は、図7で示した問題点を解決する方法を説明する図である。
図8を参照して、欠陥検査を行なうために(1)良品画像(画像IMG1)を予め生成し、(2)被検査物体を撮像して検査画像を生成する。ただし検査画像(画像IMG2A)は撮像領域の位置ずれが生じた画像である。なおこれらの処理は図7に示す(1)(2)のステップの処理と同様である。
【0069】
次に、(3)ソフトウェア処理によって画像IMG2Aの位置を補正する。図8に示す例では、いわば画像IMG2Aを画像IMG1の左下に移動させて画像IMG2Aと画像IMG1とを重ねる。この場合には画像IMG1の検査対象領域(領域a1)内に欠陥Dのパターンが入るため、画像IMG1と画像IMG2Aとで比較を行なえば欠陥Dを検出できる。
【0070】
しかしながら、このように画像IMG2Aを位置補正するため、検査処理に要する時間が増えてしまうという課題が新たに発生する。
【0071】
また、ソフトウェア処理によって画像の位置補正を行なうと、2つの画像の重なり合う領域が狭くなるので、検査対象領域が狭くなる。具体的に説明すると画像IMG1の中に画像IMG2Aと重ならない領域(領域a3)が発生する。領域a3は被検査物体の撮像時に撮像されていない領域である。また、画像IMG2Aの中に画像IMG1の領域a1と重ならない領域(領域a4)が発生する。領域a4は撮像されたにも拘らず検査が行なわれない領域である。このように検査対象領域が狭くなると、欠陥検出精度が低下するという問題が発生する。
【0072】
通常では被検査物体の全面を抜けなく検査するために、被検査物体の表面を複数の検査領域に分割することが行なわれる。しかし、図8に示すように検査対象領域が狭くなると、検査領域の分割数を増やさなければならない。その上、各検査領域を検査するたびに画像の位置補正を行なう必要があるので、被検査物体の全面を検査するに要する時間は大幅に増える。
【0073】
また、図8に示す画像補正は平面を撮像した場合に適用可能であるが、立体物を撮像した場合には適用が困難になる。この理由を以下に説明する。
【0074】
図9は、立体物表面を連続的に検査する例を説明する図である。
図9を参照して、撮像位置(言い換えるとレンズの光軸と交わる平面上の位置)を点P1から点P6の順に移動させながら立体物表面が連続的に撮像される。領域A,B,Cは撮像位置がそれぞれ点P1,P4,P6であるときの撮像領域を示す。
【0075】
図10は、図9に示す立体物の撮像時に位置ずれが発生した状態を示す図である。
図10を参照して、立体物の撮像開始時あるいは開始前に位置ずれが生じたため、撮像開始位置は本来の位置である点P1から点P1Aにずれる。
【0076】
図10と図9とを参照して、本来の撮像位置は点P2,P3,P4,P5,P6である。しかし撮像開始位置が点P1から点P1Aにずれたため、実際の撮像位置は点P2A,P3A,P4A,P5A,P6Aとなる。
【0077】
立体物の複数面を連続して検査する際には、撮影開始位置のずれの影響が平面を検査する時よりも顕著に生じ、図10に示す領域A,B,Cの画像に対してそれぞれソフトウェアによる補正を施しても図9に示す領域A,B,Cの画像に一致させることができない。
【0078】
以上の説明を総括すると、検討例の場合には良品画像と被検査物体の画像とを比較して欠陥の有無を判定している。よって被検査物体の撮像領域が良品の撮像領域とずれると、検査結果に誤りが生じる可能性が高くなる。また検査結果の誤りを防ぐために画像補正処理を追加すると、検査時間が長くなる可能性がある。
【0079】
[欠陥検査の基本原理]
人が凹凸欠陥を検出する場合には、被検査物体の表面において照明が反射して光っている部分を見る。欠け、傷、バリ、異物等の欠陥が存在すると、その欠陥部分が暗く見える。これにより凹凸欠陥を検出できる。
【0080】
一方、人が物の色を見るときは、通常、正反射光がない角度から見る。よって人が異色欠陥を検出する場合、被検査物体を少し斜めから見る。これにより、周囲と色が異なる汚れや異色点を検出できる。
【0081】
ここで「照明が反射して光っている部分を見る」とは、言い換えると「正反射光により凹凸の有無を見る」状態である。よって同軸落射照明を用いて被検査物体を撮像すれば人が光っている部分を見るのと同じ効果が得られる。
【0082】
同様に、「被検査物体を少し斜めから見る」状態とは、言い換えると「拡散光により色の成分を見ている」状態である。よって側射照明を用いて被検査物体を撮像すれば人が被検査物体表面を斜めから見るのと同じ効果が得られる。
【0083】
図11は、凹凸欠陥の検出原理を説明する図である。
図11を参照して、光源1AのLED41から発せられた照射光L1はハーフミラー42によって撮像装置3のレンズの光軸(中心軸J)と光軸が同じ光(同軸落射光)となる。同軸落射光は透明板43を透過してワークWに達する。なお光源1Bは点灯していない。
【0084】
ワークWの表面が正常であれば、ワークWの表面で照射光L1が正反射することにより生じた反射光L2は中心軸Jを通り撮像装置3に入射する。一方、ワークWの表面に存在する凹凸欠陥D1に照射光L1が入射すると、凹凸欠陥D1において照射光L1が拡散反射する。これにより反射光(拡散光)L3が生じる。
【0085】
反射光L3は撮像装置3に入射しないので、撮像装置3がワークWの表面からの反射光を受けたときには凹凸欠陥D1から撮像装置3に入射する反射光の光量が少なくなる。このため検査画像では凹凸欠陥が暗部として出現する。検査画像に存在する暗部と同じ暗部が良品画像に存在しない場合、この暗部が凹凸欠陥と判定される。
【0086】
図12は、異色欠陥の検出原理を説明する図である。
図12を参照して、光源1Bから照射光LA1(側射光)をワークWに向けて照射する。照射光LA1の色成分はワークWの表面の色に含まれる。なお光源1Aは点灯していない。
【0087】
ワークWの表面の正常部で照射光LA1が正反射すると反射光LA2が生じる。反射光LA2は透明板およびハーフミラー42を透過して撮像装置3に入射する。撮像装置3は反射光LA2を受けてワークWの表面を撮像する。これにより撮像装置3では照射光LA1の色を有する検査画像が生成される。
【0088】
異色欠陥D2が存在する箇所は正常部と色成分が異なるため、側斜光の反射特性が異なる。よって検査画像内に明暗差が生じる。検査画像における明暗差が良品画像に存在しない場合にはこの明暗差が生じた部分を異色欠陥とみなす。なお異色欠陥の色に応じて、検査画像内の欠陥に対応する部分は周囲よりも明るくなったり暗くなったりする。
【0089】
ここで光源1Aのみを用いて撮像した画像には凹凸欠陥のみが出現し、異色欠陥は出現しない。光源1Bのみを用いて撮像した画像には、異色欠陥のみが出現し、凹凸欠陥は出現しない。光源1A,1Bの両方を用いて撮像した画像には凹凸欠陥および異色欠陥のいずれも出現しない。本実施の形態の検査方法では、この現象を利用する。
【0090】
[本実施の形態の欠陥検査装置による検査方法]
図13は、同色の同軸落射光と側斜光とを同時に照射した場合の撮像を示したものである。
【0091】
図13を参照して、照射光L1,LA1は同時に照射される。
凹凸欠陥D1では照射光LA1が拡散反射する。これにより反射光(拡散光)LA2が生じる。反射光LA2は照射光LA1の正反射方向(反射光L2の進行方向)に進み、撮像装置に入射する。よって撮像装置がワークWの表面を撮像すると凹凸欠陥D1による周囲との明暗差は小さくなるか、あるいは見えなくなる。
【0092】
一方、異色欠陥D2では照射光L1が正反射する。照射光L1が正反射することにより生じた反射光L2は撮像装置に入射する。よって凹凸欠陥と同様に撮像装置がワークWの表面を撮像すると、異色欠陥D2による周囲との色の差は小さくなるか、あるいは見えなくなる。
【0093】
つまり、照射光L1,LA1を同時に照射することで凹凸欠陥あるいは異色欠陥を見えにくく(あるいは見えなく)することができる。このときの画像は良品画像に相当する画像となる。
【0094】
図14は、同軸落射光の色と側射光の色との組み合わせの例を示した図である。
図14を参照して、本実施の形態ではA色およびB色の同軸落射光(照射光L1,LB1)と、A色およびC色の側斜光(照射光LA1,LC1)が同時に照射される。B色の光は同軸落射照明のみから発せられ、C色の光は側射照明のみから発せられる。これにより上述の検出原理に基づいて凹凸欠陥と異色欠陥とを同時に検出することが可能になる。なお、A色、B色、C色はワークWの表面の色に応じて適切に定められる。
【0095】
図15は、同軸落射光と側斜光を同時に照射した場合を示す図である。
図15を参照して、同軸落射光(照射光L1,LB1)と、側射光(照射光LA1,LC1)とをワークWの表面に同時に照射した状態でワークWの表面が1回撮像される。
【0096】
ワークWの表面には凹凸欠陥D1および異色欠陥D2が存在する。凹凸欠陥D1では照射光L1,LB1が反射して、反射光L3,LB3がそれぞれ生じるとともに照射光LA1が反射して反射光LA2が生じる。
【0097】
ワークWの表面において欠陥のない部分では照射光L1,LB1がそれぞれ正反射して反射光L2,LB2が生じる。反射光LA2と反射光L2,LB2とは図示しない撮像装置に入射する。
【0098】
さらに異色欠陥D2では照射光L1,LB1がそれぞれ正反射して反射光L2,LB2が生じる。異色欠陥D2からの反射光L2,LB2は撮像装置に入射する。一方、異色欠陥D2に照射光LA1,LC1が入射すると、照射光LA1,LC1は拡散反射する。異色欠陥D2において生じた拡散光(図示せず)は撮像装置には入射しない。
【0099】
図15および図1を参照しながら説明すると、撮像装置3は入射した光を分光する。これによりA色画像、B色画像、およびC色画像をそれぞれ生成する。A色画像は凹凸欠陥D1および異色欠陥D2の両方が消えた画像となる。
【0100】
凹凸欠陥D1ではB色の光(照射光LB1)が拡散反射する。ワークWの正常部(および異色欠陥D2)から撮像装置に入射するB色光の光量と比べると凹凸欠陥D1から撮像装置に入射するB色光の光量は少ない。よってB色画像には凹凸欠陥が暗い部分として出現する。
【0101】
照射光LC1はワークWの表面で拡散反射する。ワークWの正常部(および凹凸欠陥D1)と異色欠陥D2とではC色の光の拡散反射特性が異なるためC色画像においては異色欠陥が暗い部分として出現する。
【0102】
図16は、本実施の形態による凹凸欠陥の検出方法について示す図である。
図16を参照して、凹凸欠陥の検出の際には、A色画像、B色画像、およびC色画像の中から(1)A色画像(画像IMG4)と、(2)B色画像(画像IMG5)とが選択され、(3)A色画像とB色画像とが比較される。
【0103】
画像IMG6は画像IMG4と画像IMG5との比較結果を示す画像である。画像IMG6には画像IMG4,IMG5の相違点が出現する。この相違点は凹凸欠陥を反映する。
【0104】
図17は、A色画像とC色画像を用いた異色欠陥の検出方法について示す図である。
図17を参照して、異色欠陥の検出の際には、A色画像、B色画像、およびC色画像の中から(1)A色画像(画像IMG4)と、(2)C色画像(画像IMG7)とが選択され、(3)A色画像とC色画像とが比較される。
【0105】
画像IMG8は画像IMG4と画像IMG7との比較結果を示す画像である。画像IMG8には画像IMG4,IMG7の相違点が出現する。この相違点は異色欠陥を反映する。
【0106】
このように本実施の形態の欠陥検査装置および欠陥検査方法によれば良品画像は不要となり、被検査品の画像(2色の画像)により欠陥検査が可能になる。よって図7に示したような、比較対象となる2つの画像の間でパターンがずれるという問題を防ぐことができる。よって本実施の形態によれば判定誤りを防ぐことができるので検査精度が向上する。
【0107】
また、本実施の形態によれば良品画像が不要なため、図8に示すような検査画像の位置補正処理を行なわなくてもよいので、検査に要する時間を短縮できる。
【0108】
また、本実施の形態によれば凹凸欠陥の検査に必要な光と異色欠陥の検査に必要な光とが同時に被検査物体に照射されるので、検査に要する時間をさらに短縮することができる。特に被検査物体の全面を複数領域に分けて検査する場合には、本実施の形態の欠陥検査装置を用いることで検査時間を短縮する効果が発揮される。
【0109】
[本実施の形態に係る欠陥検査処理の流れ]
図18は、本実施の形態に係る欠陥検査処理の流れを説明するフローチャートである。
【0110】
図18および図1を参照して、処理が開始されると、まずステップS1において、撮像制御部11は照射部1に対して指示を送り、照明を点灯させる。これにより照射光L1,LA1,LB1,LC1がワークWに対して照射される。
【0111】
ステップS2において、撮像制御部11は撮像装置3に撮像指示を送る。これにより撮像装置3はワークW(被検査物体)の表面を撮像する。
【0112】
ステップS3において、撮像装置3は反射光を分光して色成分を抽出する。これにより検査処理部12の内部において照明色(A色、B色、およびC色)ごとに画像データが生成される。
【0113】
ステップS4において、検査処理部12はA色画像、B色画像、およびC色画像を取得する。そして検査処理部12はまずA色画像データとB色画像データとを比較する。比較処理はたとえば以下のように行なわれる。検査処理部12は、A色画像データとB色画像データとで対応関係にある画素間の濃度値の差を求める。この濃度差の値を用いることにより、A色画像とB色画像との明度の差の度合を示す差分画像データが生成される。次に検査処理部12は所定の2値化しきい値を用いて、差分画像データから2値化画像を生成する。
【0114】
続いて検査処理部12は2値化画像にラベリング処理を施す。ここでラベリング処理とは、連結している画素に同じラベルを付加することで複数の領域をグループとして分類する処理であり、画像処理において広く用いられる。
【0115】
本実施の形態ではこのラベリング処理により、A色画像とB色画像とで明度差が生じている領域、すなわち複数の画素のうち同一のラベルが付加された画素によって形成される領域が特定される。
【0116】
ステップS5において、検査処理部12はA色画像とB色画像とで差異があるか否かを判定する。検査処理部12は同一のラベルが付加された複数の画素によって形成される領域毎に、その領域の面積を計測する。そして、検査処理部12は計測結果が所定値以上の大きさであれば、その領域はA色画像データとB色画像データとで相違する領域であると判定する。
【0117】
A色画像とB色画像とで差異がある場合(ステップS5においてYES)、ステップS6において検査処理部12はワークWの表面に凹凸欠陥が存在すると判定する。一方、A色画像とB色画像とで差異がない場合(ステップS5においてNO)、ステップS7において検査処理部12はA色画像データとC色画像データとを比較する。ステップS7の処理はステップS4における処理と同様である。
【0118】
ステップS8ではステップS4の処理と同様に、検査処理部12はA色画像とC色画像とで差異があるか否かを判定する。A色画像とC色画像とで差異がある場合(ステップS8においてYES)、ステップS9においてワークWの表面に異色欠陥が存在すると判定する。一方、A色画像とC色画像とで差異がない場合(ステップS8においてNO)、ステップS10においてワークWは良品であると判定する。
【0119】
ステップS11では検査処理部12は判定結果(検査結果)を出力する。検査結果は図2に示す表示装置32に表示される。ここで、ステップS6,S9の処理に続いてステップS11の処理が行なわれる場合にはワークWに欠陥が存在するという結果、すなわちワークWが不良品であるという判定結果が出力される。一方、ステップS10の処理に続いてステップS11の処理が行なわれる場合にはワークWが良品であるとの判定結果が出力される。ステップS11の処理が終了すると全体の処理が終了する。
【0120】
なお、本実施の形態の欠陥検査装置は、照射光L1,LA1の色と異なる色の光をワークWに照射することで良品画像と検査画像とを生成する。このため図1の欠陥検査装置100において照射光LB1と照射光LC1とは必ずしも同時に照射される必要はなく、照射タイミングを異ならせてもよい。
【0121】
具体的に説明すると、たとえば凹凸欠陥と異色欠陥とを順番に検査する場合、照射部1は、まず照射光L1,LA1を照射し、次に照射光LB1のみを照射し、最後に照射光LC1のみを照射してもよい。
【0122】
また、図1の照射部1をA色光およびB色光(すなわち照射光L1,LA1,LB1)のみ照射可能なように構成することで凹凸欠陥のみ検査可能な欠陥検査装置を構成してもよいし、照射部1をA色光およびC色光(すなわち照射光L1,LA1,LC1)のみ照射可能なように構成することで異色欠陥のみ検査可能な欠陥検査装置を構成してもよい。
【0123】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本実施の形態に係る欠陥検査装置の基本的構成を示す図である。
【図2】図1の制御装置4のブロック図である。
【図3】図1の光源1A,1Bの構成を示す斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】欠陥検査方法についての検討例を説明する図である。
【図6】被検査物体の撮像時に撮像領域がずれた場合を示す図である。
【図7】良品画像と位置ずれ発生時の検査画像とを用いた欠陥検査を説明する図である。
【図8】図7で示した問題点を解決する方法を説明する図である。
【図9】立体物表面を連続的に検査する例を説明する図である。
【図10】図9に示す立体物の撮像時に位置ずれが発生した状態を示す図である。
【図11】凹凸欠陥の検出原理を説明する図である。
【図12】異色欠陥の検出原理を説明する図である。
【図13】同色の同軸落射光と側斜光とを同時に照射した場合の撮像を示したものである。
【図14】同軸落射光の色と側射光の色との組み合わせの例を示した図である。
【図15】同軸落射光と側斜光を同時に照射した場合を示す図である。
【図16】本実施の形態による凹凸欠陥の検出方法について示す図である。
【図17】A色画像とC色画像を用いた異色欠陥の検出方法について示す図である。
【図18】本実施の形態に係る欠陥検査処理の流れを説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0125】
1 照射部、1A,1B 光源、3 撮像装置、4 制御装置、11 撮像制御部、12 検査処理部、21 光源制御部、22 カメラ制御部、23 CPU、24 メモリ、25 入力部、26 出力部、27 検査画像メモリ、28 パラメータ保存用メモリ、31 入力装置、32 表示装置、41 LED、42 ハーフミラー、43 透明板、45 回路基板、46 拡散板、100 欠陥検査装置、A1〜A3 撮像領域、a1〜a4,A,B,C 領域、D 欠陥、D1 凹凸欠陥、D2 異色欠陥、IMG1〜IMG8,IMG2A 画像、J 中心軸、L1,LA1,LB1,LC1 照射光、L2,LA2,LB2,LC2,L3 反射光、P1〜P6,P1A〜P6A 点、S1〜S10 ステップ、W ワーク、W1 良品、W2 被検査物体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物体の表面に対して互いに異なる方向から、第1および第2の照射光を照射する照射部と、
前記被検査物体の表面を撮像して、前記第1および第2の照射光が前記被検査物体の表面に照射された状態の前記被検査物体の表面の画像を第1の画像として生成するとともに、前記第2の照射光が前記被検査物体の表面に照射された状態の前記被検査物体の表面の画像を第2の画像として生成する撮像部と、
前記第1および第2の画像を比較して、前記被検査物体の表面における欠陥の有無を検査する検査処理部とを備える、欠陥検査装置。
【請求項2】
前記照射部は、前記第1および第2の照射光を同時に照射し、
前記第1の照射光は、第1の色成分を含み、
前記第2の照射光は、前記第1および第2の色成分を含み、
前記撮像部は、前記被検査物体の表面で前記第1および第2の照射光がそれぞれ反射することで生じた第1および第2の反射光を分光して、前記第1の色成分を有する前記第1の画像と、前記第2の色成分を有する前記第2の画像とを生成する、請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記撮像部は、前記第2の照射光の反射方向から前記第1および第2の反射光を受け、
前記検査処理部は、前記被検査物体の表面における凹状または凸状の欠陥の有無を検査する、請求項2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記撮像部は、前記第1の照射光の反射方向から前記第1および第2の反射光を受け、
前記検査処理部は、前記被検査物体の表面において周囲の色と異なる色を有する欠陥の有無を検査する、請求項2に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記第1の照射光は、第3の色成分をさらに含み、
前記撮像部は、前記第1の照射光の反射方向から前記第1および第2の反射光を受けて、前記第3の色成分を有する第3の画像をさらに生成し、
前記検査処理部は、前記第1および第3の画像を比較して、前記被検査物体の表面における凹状または凸状の欠陥の有無を検査し、前記第1および第2の画像を比較して前記被検査物体の表面において周囲と色が異なる欠陥の有無を検査する、請求項2に記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記照射部は、
前記第1の照射光を発する第1の光源と、
前記第2の照射光を発する第2の光源とを含み、
前記第1および第2の光源の各々は、
前記第1の色成分の光と、前記第2の色成分の光と、前記第3の色成分の光とを切換えて発光可能な複数の発光素子を有する、請求項5に記載の欠陥検査装置。
【請求項7】
前記照射部は、前記第1および第2の照射光の照射と、前記第2の照射光の照射とを異なるタイミングで実行し、
前記撮像部は、前記第1および第2の照射光の照射時に前記第1の画像を生成し、前記第2の照射光の照射時に前記第2の画像を生成する、請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項8】
被検査物体の表面に対して互いに異なる方向から、第1および第2の照射光を照射するステップと、
撮像装置を用いて前記被検査物体の表面を撮像して、前記第1および第2の照射光が前記被検査物体の表面に照射された状態の前記被検査物体の表面の画像を第1の画像として生成するとともに、前記第2の照射光が前記被検査物体の表面に照射された状態の前記被検査物体の表面の画像を第2の画像として生成するステップと、
前記第1および第2の画像を比較して、前記被検査物体の表面における欠陥の有無を検査するステップとを備える、欠陥検査方法。
【請求項9】
前記第1および第2の照射光は同時に照射され、
前記第1の照射光は、第1の色成分を含み、
前記第2の照射光は、前記第1および第2の色成分を含み、
前記撮像装置は、前記被検査物体の表面において前記第1および第2の照射光がそれぞれ反射することで生じた第1および第2の反射光を分光して、前記第1の色成分を有する前記第1の画像と、前記第2の色成分を有する前記第2の画像とを生成する、請求項8に記載の欠陥検査方法。
【請求項10】
前記撮像装置は、前記第2の照射光の反射方向から前記第1および第2の反射光を受け、
前記検査するステップにおいて、前記被検査物体の表面における凹状または凸状の欠陥の有無が判定される、請求項9に記載の欠陥検査方法。
【請求項11】
前記撮像装置は、前記第1の照射光の反射方向から前記第1および第2の反射光を受け、
前記検査するステップにおいて、前記被検査物体の表面において周囲の色と異なる色を有する欠陥の有無が判定される、請求項9に記載の欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−64715(P2008−64715A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245678(P2006−245678)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】