説明

液体有機原料の気化方法及び絶縁膜の成長方法

【課題】 有機モノマーを飽和蒸気圧の大きい高温で効率良く気化させるとともに得られた有機モノマーガスのプラズマ重合反応により有機高分子膜を高真空中で高速成長する。
【解決手段】 液体ジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテン(DVS−BCB)モノマーをキャリアガスと混合した後、高温に保持された減圧気化室に噴霧して有機モノマーの液体微粒子からなるエアロゾルを形成し、該エアロゾルを介してBCBモノマー(有機モノマー)を瞬時に気化させてBCBモノマーガス(有機モノマーガス)を発生させる。これによって、比表面積の大きいエアロゾルは気化面積が大きく、高温加熱しても重合反応が生じる前に気化が生じるため、飽和蒸気圧の大きい200℃での0.1g/min以上のBCBモノマーガスが可能となり、プラズマ重合BCB膜を従来の5倍以上の高速成膜が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液体有機原料の気化方法及び絶縁膜の成長方法に関し、特に、半導体集積回路の多層配線間を絶縁する機能性有機高分子膜の製造方法に関し、さらに詳しくは、機能性有機高分子膜の構成要素となる有機モノマー又は有機オリゴマーからなる液体有機原料の気化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体集積回路の設計ルールは縮小を続けており、それに伴い配線による遅延による性能劣化が顕在化している。つまり、半導体集積回路の配線信号遅延は配線CR時定数(C:配線容量、R:配線抵抗)によって決まるが、配線幅の減少による配線抵抗の増大と、配線間隔の減少による配線間容量の増大で配線CR時定数がトランジスタのスイッチング速度向上に追従できない状態が懸念されている。現在、半導体集積回路の配線材料にはアルミ合金が使用されているが、配線の低抵抗化のため銅配線や銀配線が検討されている。
【0003】一方、配線間容量を低減するために、現在のシリカ(SiO)系絶縁膜よりも誘電率の低い絶縁膜材料が検討されている。誘電率の低い絶縁膜としては、フッ素添加シリカ(SiOF)やポーラスシリカや有機高分子膜(有機絶縁膜)が知られている。フッ素添加シリカは膜中フッ素と水分あるいは水素との反応によるフッ酸で配線金属の腐食が発生や、フッ素が脱離することにより誘電率が増大といった課題がある。ポーラスシリカは比誘電率2以下が可能である点が期待されている。
【0004】しかしながら、微小空孔の中への水分凝縮で比誘電率が増大したり、絶縁耐圧が低下したりする場合がある。現在、半導体集積回路上の多層配線間を絶縁する層間絶縁膜として、耐熱性、耐吸湿性に優れた有機高分子膜の開発が急がれている。耐湿性に関しては、有機モノマー中に親水基が含まれないことが肝要であり、またその有機高分子膜の骨格たる有機モノマーからの重合反応中に水の縮重合反応を経ないことが望ましいとされている。ここで、有機モノマーとは、有機モノマーを構成単位として重合反応を生じ、有機高分子(有機ポリマー)を形成するものを指す。
【0005】このような機能性有機高分子膜の成長方法として、有機モノマーのスピンコーティング法がある(以下、第1の従来例と呼ぶ)。このスピンコーティング法は、有機高分子膜の成長に広く用いられている方法である。この場合、有機モノマーは溶媒に溶解されており、成膜過程では、溶媒を除去するとともに、有機モノマーの加熱により重合反応が進行する。この結果、2次元あるいは3次元の網目構造膜や、高分子膜が形成される。生成物である有機絶縁膜を構成する骨格となるのは、有機溶剤にとけていた有機モノマーの構造である。
【0006】例えば、“REAL-TIME FT-IR STUDIES OF THE REACTION KINETICS FORTHE POLYMERIZATION OF DIVINYL SILOXANE BIS BENZOCYCLO BUTENE MONOMERS”(Material Research Symposium Proceeding Vol.227 p.103,1991)T.M.Stokich, Jr., W.M.Lee, R.A.Peters(以下文献1という)には、スピン塗布法でジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテン高分子膜を形成することが方法が述べられている。
【0007】ここでは、図1に示すように、ジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテンモノマーをメシチレンに溶解させた溶解物をスピン塗布した後、温度100℃でベークして溶媒であるメシチレンを除去する。さらに、温度300℃〜350℃まで加熱して、ベンゾシクロブテン中の炭素4員環の熱開環反応とビニル基との重合反応で、下記化学式に示すジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテンモノマーを骨格とした3次元分子鎖からなる有機高分子膜(DVS−BCB高分子膜)を成長させている。
【0008】さらに、特開平11−17006号公報には機能性有機高分子膜の成長方法として、有機モノマーの蒸発法が提案されている(以下、第2の従来例と呼ぶ)。この方法は、有機モノマーを蒸発させて、気相中のモノマーを基板上で重合化して有機高分子膜を得る方法である。
【0009】図2に、有機モノマーの直接気化による有機膜成長装置を示す。ここでは、まず、タンク1中の有機モノマー5を減圧下で加熱して蒸発させる。ついで、プラズマ重合反応室26を排気ポンプ29により減圧し、気化原料配管9を通して蒸発した有機モノマーをプラズマ重合反応室26に送る。有機モノマー分子は半導体集積回路が形成された半導体基板24の表面に吸着し、基板加熱部25によって供給される熱エネルギーによって重合反応が進行し、架橋構造を形成し有機絶縁膜を形成する。
【0010】また、特開2000−12532号公報には、機能性有機高分子膜の成長方法として、キャリアガスを用いた有機モノマーの気化方式による高分子膜の成長方法が提案されている(以下、第3の従来例と呼ぶ)。ここでは、液体有機モノマーを気化制御器に供給する工程と、この気化制御器内で液体有機モノマーを加熱するとともにキャリアガスを供給し、該液体有機モノマーの分圧を飽和蒸気圧より低い状態に維持しながら有機モノマーを気化させる工程と、この気化した有機モノマーを含むキャリアガスを前記気化制御器から反応室に輸送し、さらに該有機モノマーをRFプラズマ中を通過させて活性化させ該反応室内に設置された基板表面に吹き付け、有機モノマーを骨格に含む高分子膜を成長させる工程とによって高分子膜の成長している。
【0011】図3に、第3の従来例によるところのキャリアガスを用いた有機モノマー気化方式を示す。この気化制御器は、シールド33cを挟んでヘッド33aとボディ33bのわずかな隙間空間を気化室33fとし、この気化室33fに、該ボディ33bのキャリアガス供給孔10からキャリアガスが、そして有機モノマー供給孔33eからDVS−BCBモノマー(有機モノマー1)が供給される構造となっている。
【0012】つまり、有機モノマーこの有機モノマー供給孔33eの周りとボディ33bの表面近傍を加熱するためのヒータ33gで有機モノマー5は所定温度に加熱される。この場合、ヘッド33aとボディ33bのわずかな隙間空間へと有機モノマー液体が液膜上に広がるので加熱効率はよい。そして、排気ポンプ29で減圧された反応室26とつながる気化原料配管16を介して気化室33fが減圧され、気化した有機モノマー14がキャリアガス6によって運び出される。モノマー供給孔33eの直上のヘッドにつけられたダイアフラムバルブ33dがピエゾ素子によって上下に駆動し、一定流量の有機モノマーが供給された後有機モノマー供給孔33eの開口部は閉じる。なお、液体の有機モノマー液膜の上下主面はそれぞれヘッド33aとボディイ33bに接しているため、この面領域からは気化できない。気化可能なのはその液膜端面のみである。
【0013】具体的な条件範囲は、全圧20Torr以下に保たれた気化制御器内にキャリアガスを100sccm〜3000sccm供給し、毎分0.1g〜0.01gのDVS−BCBモノマーを気化制御器に供給して100℃から175℃の温度範囲で加熱することで、該ジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテンを気化している。さらに、気化させた有機モノマーをプラズマガス雰囲気中に導入し、かかる有機モノマーの重合反応を促進させて、有機高分子膜の成長温度の低温化を図っている。プラズマを発生させることでベンゾシクロブテン骨格中の炭素四員環の開環反応をより低温で開始させ、DVS−BCBモノマーを骨格とした3次元分子鎖からなる高分子膜を得ている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の第1乃至第3の従来例では、次のような問題点がある。
【0015】まず、第1の従来例の場合、有機モノマーを溶剤に溶かし、この溶解物をスピン塗布するわけであるが、スピンコーティングの際に溶解物の90%程度は基板外に飛ばされるため出発原料の使用効率が悪い。
【0016】また、スピン塗布膜を加熱して、まず溶剤を除去した後、さらに、高温で加熱して有機モノマーの高分子化反応を生じさせて有機高分子膜を形成するわけであるが、ベーク炉中に酸素があると、酸素と有機モノマーの一部が反応して目的とした有機高分子膜にはならない場合もある。例えば、ジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテンモノマーをメシチレンに溶解させた溶解物をスピンコーティングした後、ベークする際の許容酸素濃度は100ppm以下である。このため、ベーク炉全体を窒素ガス置換する必要があり、低コストでの実現が難しい。
【0017】さらに、溶剤に溶け込んでいる溶存酸素と有機モノマーがベーク時に反応する場合もあるため厳密な雰囲気制御が必要とされるが、スピンコーティング法で行うことは困難である。
【0018】また、スピン塗布は局所排気されたスピン塗布室で行うが、この際、浮遊しているごみ粒子やスピン塗布室の内壁にこびりつき、乾燥固化した有機モノマーの微粒子がスピン塗布膜に混入して、膜質を劣化させる場合もある。
【0019】さらに、スピン塗布の場合、大量の有機溶剤を必要とし、環境負荷が大きいといった問題点もある。
【0020】第2の従来例の場合、スピンコーティング法と比較して出発原料の使用効率が非常に良いという点で優れているものの、有機モノマー液体全体を気液界面から気化させる方法を採用しているため、大容量の有機モノマーの高温加熱が必要である。一方で、有機モノマーは反応性をもつため、高温では重合反応も進行し、有機モノマーの気化が不安定になりやすいといった場合があり、この不安定性を改善する必要がある。
【0021】第3の従来例では、図3で説明したように、液体有機モノマーはモノマー供給孔を介して気化室に供給され液膜となり、かかる液体有機モノマーはヒータにより所定温度に加熱された後、気化室内でキャリアガスと接する。ところで、有機モノマーの蒸気圧は温度上昇とともに増加するため、気化効率上昇には有利となる。一方、有機モノマーは温度上昇とともにその重合速度が増大するため、過剰に温度が高くなると気化する前に重合固化してしまう。液体の有機モノマー液膜の上下主面はそれぞれヘッド33aとボディイ33bに接しているため、この面領域からは気化できない。気化可能なのはその液膜端面のみであるため、気化速度が遅い。このため、高温加熱時に気化底度が重合速度より小さくなり、十分な有機モノマーの気化を行えないという問題点がある。
【0022】例えば、図4に示すような、ジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテンモノマーの場合(以後、BCBモノマーと記す)、プラズマ酸化膜成長に用いるTEOS(テトラエチルオルソシリケイト)の飽和蒸気圧と比較して、その飽和蒸気圧は3〜4桁小さい。例えば、TEOSの場合室温での飽和蒸気圧は1Torrであるが、一方、BCBモノマーの場合、1Torr以上を得るには200℃の過熱を必要とする。
【0023】一方、図5に示すように、温度上昇によりBCBモノマーの重合速度も大きくなる。BCBモノマーを1分間加熱すると、温度150℃で加熱した場合、0.03%のモノマーが重合反応を生じた過ぎないが、温度170℃では、0.24%に増加し、温度180℃では1%以上にも達した。さらに、温度を上げると飽和蒸気圧が大きくなるので有利であるが、BCBモノマー液膜の端面のみからの気化では、気化速度が遅いため、有機モノマーの実用的加熱温度は150℃程度に制限されている。
【0024】有機モノマーを高温にすることなく十分な気化を行うには、キャリアガスの流量を多くすることである。しかしながら、狭い気化室へのキャリアガス流量を大きくすると、気化室の圧力損失により気化室内の圧力が増加してしまうという問題点がある。
【0025】本発明の目的は、液体有機原料を効率良く気化させることのできる液体有機原料の気化方法を提供することにある。
【0026】本発明の他の目的は、気化モノマーをプラズマ活性させ、基板上で重合反応を行わせて、有機モノマーを骨格とする有機高分子膜の成長方法を提供することにある。
【0027】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、有機高分子絶縁膜を形成し得る有機モノマー又は有機オリゴマーからなる液体有機原料を気化制御器に供給して気化させる方法において、前記液体有機原料の熱重合反応開始温度よりも低い温度でキャリアガスと混合して気液混合流体を形成する第1のステップと、該気液混合流体を気化減圧室に噴霧して前記液体有機原料のエアロゾルを形成して加熱する第2のステップと、前記エアロゾルを介して前記液体有機原料を気化させる第3のステップとを有することを特徴とする液体有機原料の気化方法が得られる。
【0028】前記エアロゾルは、例えば、100μmφ乃至1μmφであり、前記液体有機原料は、例えば、ジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテンモノマーである。具体的には、標準状態で毎分100ml〜500mlの前記キャリアガスと毎分0.1g〜0.5gの前記液体有機原料とからなる前記気液混合流体を、1.3kPa(10Torr)以下に保たれた前記気化減圧室に噴霧し、温度160℃から250℃の温度範囲で加熱して前記液体有機原料を気化させる。
【0029】さらに、本発明によれば、液体有機原料のエアロゾルを加熱して、該エアロゾルを介して前記液体有機原料を気化させて気化有機原料を生成する気化装置がプラズマ重合反応室に直結されており、該プラズマ重合反応室中のプラズマ中に前記気化有機原料を直接供給して、基板上に前記液体有機原料を骨格とする有機高分子膜を成長させるようにしたことを特徴とする絶縁膜の成長方法が得られる。
【0030】本発明においては、エアロゾルの直径は100μm以下であるため、液膜を加熱する従来の気化方法と比較して、比表面積が大きくなり、有機モノマーの気化断面積が大きくなり、加熱後瞬時に気化を生じさせることが可能となる。その結果、蒸気圧の大きい高温での有機モノマーの気化が可能となり、気化発生量を大きくできる。さらに、加熱後瞬時に気化を生じさせることが可能となることから、高温加熱による有機モノマーの重合固化といった有機モノマーの気化における特有の技術課題を解決できる。
【0031】この有機モノマーを含むキャリアガスをポンプにより排気されている密閉され、かつRFプラズマの印加された反応室内の基板上で有機モノマーの重合反応を進行させるため、有機モノマーが酸素等の反応性ガスと反応することはなく、得られる高分子膜の一部酸化による誘電率増加等の特性劣化が生じない。
【0032】
【発明の実施の形態】以下本発明について実施の形態に基づいて説明する。
【0033】図6に、本発明による有機高分子絶縁膜を形成し得る有機モノマー又は有機オリゴマーからなる液体有機原料の気化方法を説明するための模式図を示す。なお、以下の説明では、有機モノマーの気化を例にとって説明するが、有機オリゴマーであっても同様である。
【0034】図6を参照して、原料タンク1に貯蔵された液体の有機モノマー5は原料配管9に送られ、液体マスフローコントローラ7を介して所定速度で有機モノマー気化室2に送られる。一方、ガスマスフロコントローラ8を介してキャリアガス6‘もキャルアガス配管10より有機モノマー気化室2に送られる。実際には、キャリアガスおよび有機モノマーの供給は、気化室2とマスフローコントロータ8、9との間に存在する電磁弁(図示せず)により供給するタイミングが制御される。液体の有機モノマーとキャリアガスは有機モノマー気化室2内の混合ノズル部11で混合され、気液混合流体12となる。混合ノズル部11の径はキャリアガス配管10および原料配管9の径より小さく絞り込んであり、ここから気化減圧室13に噴霧される。この際、混合ノズル部11と気化減圧室13との急激な圧力損失により、気液混合流体12は減圧気化室13内では100μm以下の有機モノマーのエアロゾル4となる。エアロゾルの発生に関して、混合ノズル部の径とキャリアガスの流量の選択は極めて重要である。キャリアガス流量が50〜500sccmでは、混合ノズルの径は1mmφ〜0.2mmφである。この混合ノズル部付近にブロックヒータ15を介して、有機モノマーの重合開始温度より20℃程度低い温度まで気液混合流体を予備加熱してもよい。あるいは、キャリアガスを予備加熱しておいてもよい。
【0035】気化減圧室17には所定温度に過熱されたブロックヒータ3が設置されており、このブロックヒータ3を介して該有機モノマーのエアロゾル4を加熱する。かかるエアロゾル4は加熱により蒸発気化し、有機モノマーガス14となりキャリアガスと共に気化原料配管16より排出される。なお、エアロゾルの一部はブロックヒータ3の表面に付着するが、これらのエアロゾルも瞬時に気化して行く。発生した有機モノマーガス14は気化原料配管16を介して反応室に送られ、RFプラズマ中を通過して活性化された後、300℃〜420℃程度に加熱された基板上で重合反応を生じて有機高分子膜を成長する。なお、気化原料配管16には配管ヒータが巻かれ、減圧気化室での気化温度以下とならないようにし、有機モノマーガス14の再液化を防いでいる。
【0036】有機モノマーとしては、重合する反応性官能基を有する有機モノマーであれば、本発明の高分子膜の製造方法で用いることが可能である。有機モノマーの状態としては、気化制御器への供給しやすさを考慮すると、液体が好ましい。常温で液体のモノマーが最も好ましいが、常温で固体のモノマーについても、重合が顕著にならない温度(重合速度一例として半導体基板上に層間絶縁膜を形成する場合のジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテンモノマー(以下DVS−BCBモノマー)の高分子膜の成長方法として、本発明は非常に有効である。実施形態の一例として用いられるDVS−BCBモノマー常温で粘粘度75cPの液体であり、特に半導体基板上に低誘電率の層間絶縁膜を形成する際に用いられる有機モノマーである。
【0037】この際、有機モノマーのキャリアガスとしては、水素ガス、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガス等の有機モノマーに対して不活性なガスを適宜使用することができるが、特に有機モノマーとしてDVS−BCBモノマーを使用した場合、高熱導伝率を有するヘリウムガスを用いることで、高分子膜の成長安定性が増し、超高速の半導体集積回路を高歩留まりで製造することができ、好ましい。
【0038】本発明において用いられるモノマー及びオリゴマーは有機高分子絶縁膜を生膜し得るものである。これらのモノマー及びオリゴマーは重合に際して副生成物を発生しないものであることが好ましい。このようなモノマー及びオリゴマーとしては、DVS−BCBモノマー以外に、次のモノマー及びこれらから生成されたオリゴマーを例示することができる。
【0039】フッ化ナフタレン
【化2】


【0040】ナフタレン
【化3】


【0041】マレイミドベンゾシクロブテン
【化4】


【0042】パーフロロシクロブテンアロマティックエーテルPFCB
【化5】


【0043】フッ化ベンゾシクロブテンBCB−F8
【化6】


【0044】特に、好ましいモノマー及びオリゴマーとしては、ベンゾシクロブテンのベンゼン環上にビニル基のような不飽炭化水素基を有する化合物および以下に示すような、分子内に1個以上のベンゾシクロブテン構造を有するもの、又はその誘導体及びこれから生成されたオリゴマーを例示することができる。
【0045】
【化7】


(上記式において、Qは以下に示す基である。)
【0046】
【化8】


【0047】
【化9】


【0048】
【化10】


【0049】
【化11】


【0050】
【化12】


【0051】
【化13】


【0052】
【化14】


【0053】
【化15】


【0054】
【化16】


【0055】
【化17】


【0056】
【化18】


【0057】モノマーまたはオリゴマーは気相で基板表面まで送られる。送られた気化有機モノマー又は気化有機オリゴマーは基板表面に吸着され、プラズマと基板加熱により供給されるエネルギーにより熱重合され、基板表面に有機高分子膜が成膜される。モノマーまたはオリゴマーが液体の場合は、加熱または加熱および不活性気体の通気、あるいは減圧加熱または減圧加熱および不活性気体の通気などにより気化して基板表面に送られる。
【0058】本発明においては、これらのモノマーまたはオリゴマーの重合条件は、そのモノマーまたはオリゴマーによって異なるが、好ましくは重合温度200〜400℃、重合圧力1Torr〜10Torr、モノマーまたはオリゴマーの供給速度は0.1〜0.5g/minとするのが好ましい。成膜速度はモノマーまたはオリゴマーの供給速度および重合温度を選択することにより制御され得る。また、膜厚はモノマーまたはオリゴマーの供給速度、成膜温度、成膜時間を選択することにより精密に制御可能である。
【0059】
【実施例】以下、本発明の第1の実施例として、有機モノマーとしてジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテン(分子量390g/mol)の気化例について説明する。
【0060】ジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテン(分子量390g/mol、以後BCBモノマーという)は常温で75cPの粘度を持つ液体である。
【0061】図6に示す気化器2の気化減圧室の圧力(全圧)は、有機モノマー気化室2に供給されるキャリアガス流量とプラズマ重合反応室の圧力とプラズマ重合反応室に至る気化原料配管の圧損によって決まる。ここでは、プラズ案重合反応室の圧力を3Torrとし、キャリアガスにHeを用いた場合の実施例を示す。
【0062】図7に示すように、気化減圧室内の全圧はHeキャリアガス流量が多くなるに従って増加する。BCBモノマーの気化に対しては、気化減圧室内のBCBモノマーの分圧が、BCBモノマーの飽和蒸気圧よりも低いことが必要不可欠である。図中には、気化器2にBCBモノマーを所定量供給し、そのすべてが気化した場合の気化減圧室13内のBCBモノマー分圧も示してある。BCBモノマーの分圧はモノマー供給量の増加に従って大きくなる。BCBモノマーの分圧はキャリアガス流量に対して、大きな依存性を示さない。これは、キャリアガス流量が大きくなると気化減圧室内のBCBモノマーのモル分率は小さくなるが、全圧も大きくなるためBCBモノマーの分圧(=全圧×モル分率)は相殺されて大きな変化とならないためである。
【0063】BCBモノマーの飽和蒸気圧は温度に依存する。図8に、BCBモノマーの飽和蒸気圧と気化減圧室内のBCBモノマーの分圧との関係を示す。ここでは、Heキャリアガス流量を300sccm一定とした。図中には、図7より求めたBCBモノマーの分圧を示してある。BCBモノマーの供給量が0.01g/minと小さい場合、BCBモノマー分圧は0.012Torrであり、理論的には気化減圧室13をブロックヒータ3で130℃以上に加熱すれば気化が可能となる。一方、BCBモノマーの供給量は0.11g/minにまで増加させた場合、BCBモノマー分圧は0.133Torrとなり、170℃以上の加熱が必要となる。さらに、気化減圧室を200℃まで上昇させれば、理論的には0.5g/minのBCBモノマーの気化が可能となる。なお、理論気化可能領域はBCBモノマーの飽和蒸気圧曲線の下側である。
【0064】次に、実際に図6に示す有機モノマー気化器2を用いて、BCBモノマーの気化を行い、気化原料配管に冷却トラップを取り付け、気化したBCBモノマーをすべて再液化させて回収し、BCBモノマーの供給量に対する回収量から回収率を求めた。なお、ここでは冷却トラップに至るまでの気化原料配管16の温度は気化減圧室13内のブロックヒータの温度と同じとした。Heキャリアガスの供給量は300sccm一定とした。
【0065】図9に、気化減圧室内の温度と気化回収率を示す。BCBモノマーの供給量が0.04g/minの場合、気化減圧室内13の温度170℃で回収率は80%となり、190℃においてほぼ100%回収率を達成した。BCBモノマー供給量を0.11g/minの場合、170℃で回収率は40%程度まで低下するが、200℃まで加熱温度を上昇させることで回収率100%となった。本願発明によるBCBモノマーのエアロゾルを加熱蒸発させる方法の場合、比表面積が大きいため蒸発速度が速い。このため、200℃といった高温に加熱により重合反応が生じる前の瞬時に気化が生じたことによる。なお、250℃に加熱することで、0.5g/minの100%気化が可能であった。
【0066】このように、有機モノマーのエアロゾルを加熱して瞬時に気化させることにより、有機モノマー気化の際に過大となっていた重合反応を抑制することができることが確認された。
【0067】次に第2の実施例について説明する。第2の実施例では、本願発明の気化方式をBCB高分子膜成長に適用した場合について述べる。図10に、BCB高分子膜成長装置のブロック図を示す。BCB高分子膜成長装置は、液体有機モノマー原料供給系30、キャリアガス供給系31、有機モノマー気化室2、プラズマ重合反応室系32の4つの領域から構成される。
【0068】まず、液体有機モノマー原料供給系30について説明する。原料タンク1に貯蔵された液体の有機モノマーであるBCBモノマー5は原料配管9に送られ、液体マスフローコントローラ7を介して所定速度で有機モノマー気化室2に送られる。なお、原料供給配管9には電磁弁17a,b,cおよび真空引き用配管20が設置されており、原料交換時に真空引きできるよう配慮されている。
【0069】キャリアガス供給系31は、ガスマスフロコントローラ8を介してHeキャリアガス6はキャルアガス配管10より気化室9に送られる。実際には、Heキャリアガスは、気化室2とマスフローコントロータ8との間に存在する電磁弁17cにより供給するタイミングが制御される。キャリアガス配管10には、キャリアガス加熱フィルタ18と熱電対19と配管加熱ヒータ15が設置され、必要に応じてHeキャリアガス6を予備加熱する機能を有している。なお、Heキャリアガスを予備加熱しないこともできる。今実施例では、キャリアガスの加熱は行わなっていない。
【0070】有機モノマーであるBCBモノマー5とHeキャリアガス6は有機モノマー気化室2に送り込まれる。ここでは、混合ノズル部でBCBモノマーとHeキャリアガスが混合され気液混合流体12となる。混合ノズル部11の径はキャリアガス配管径10および原料配管9の径より小さく絞り込んであり、ここから気化減圧室13に噴霧される。この際、混合ノズル部11と気化減圧室17との急激な圧力損失により、気液混合流体12は減圧気化室13内では100μmφ以下のBCBモノマーのエアロゾル4となる。エアロゾルの発生に関して、混合ノズル部の径とキャリアガスの流量の選択は極めて重要である。キャリアガス流量が100〜500sccmでは、混合ノズルの径は1mmφ〜0.1mmφである。今回は、混合ノズル径を0.8mmφとした。気化減圧室13には、所定温度に過熱されたブロックヒータ3が設置されており、このブロックヒータを介して該BCBモノマーのエアロゾル4を加熱する。かかるエアロゾル4は蒸発気化し、BCBモノマーガス14となりキャリアガスと共に気化原料配管16より排出される。
【0071】さらに、BCBモノマーガス14は気化原料配管16を介してプラズマ重合反応室系32に送られる。プラズマ重合反応室26は、13.56MHzの高周波を印加できるシャワーヘッド23が設置され、該シャワーヘッド下に形成されるHeプラズマ中を通過し、300℃〜420℃程度に加熱された基板加熱ヒータ25上に置かれた基板24上で重合反応を生じてBCB高分子膜を成長する。RFパワーは50W〜100W(0.1〜0.2W/cm)である。
【0072】気化原料配管16、プラズマ重合反応室17、排気配管27にはヒータ15が巻かれ、有機モノマーガス14の再液化を防いでいる。ここでは、気化原料配管16は、気化減圧室13のでヒータ加熱温度と同じとした。例えば、BCBモノマーの気化温度を190℃とした場合、気化原料配管16が190℃とした。プラズマ重合反応室17はヒータ加熱温度の20℃程度低い温度、すなわち150℃〜170℃とした。排気配管27も150℃〜170℃とした。排気配管26は冷却トラップ28を介して排気ポンプ29に接続されている。また、プラズマ重合室26の内壁をクリーニングするため、クリーニングガス配管22よりクリーニングガスマスフローメータを介してクリーニングガスが導入される。クリーニングガスは、SF6と酸素あるいはオゾンの混合気体であり、RFパワーを印加した状態で導入される。クリーニングガスとして、CF4やC2F6といったフロロカーボンガスと酸素あるいはオゾンの混合気体でもよい。
【0073】プラズマ重合反応室系32には、3つの電磁弁17d,e,fが設置されている。BCB高分子膜成長における一連の電磁弁動作について説明する。まず、減圧気化室で気化されたBCBモノマーガスは気化原料配管16を介して排出される。最初、電磁弁17dのみが”開”となり、気化初期のBCBモノマーガスはプラズマ重合反応室26に導入されることなく排気される。この状態を通常5〜10秒程度続ける。これは、減圧気化室内の混合ノズル部11内に残存したBCBモノマーからの気化ガスを廃棄するためである。その後、電磁弁17fを”開”とし、電磁弁17dを閉じる。これにより、プラズマ重合反応室26にBCBモノマーガスが導入される。プラズマ重合反応室26にガス導入した初期においては圧力が不安定である。そのため、シャワーヘッド23にRFパワーを印加することなく、10秒程度BCBモノマーガスを流し続ける。
【0074】その後、RFパワーをオンして基板24上にプラズマ重合BCB高分子膜24を成長する。所定時間成長後RFパワーをオフし、その後電磁バルブ17hを閉じてBCBモノマーの減圧気化室13への供給を停止し、キャリアガス6のみを気化原料配管16を介して、プラズマ重合反応室に30秒程度供給する。その後、バルブ17cとバルブ17fを閉じ、10秒程度プラズマ重合反応室26の真空引きを行い、基板24を基板搬送チャンバ(図示せず)に取り出す。さらに、電磁弁17eを開きクリーニングガスを導入し、RFパワーをオンしてプラズマ重合反応室26の内壁をプラズマクリーニングする。その後、再び電磁弁17eを閉じてプラズマ重合反応室26の真空引きを行い、次の基板をセットする。
【0075】図11に、かかるBCB高分子膜成長装置を用いた場合のプラズマ重合BCB高分子膜の成長速度とBCBモノマーの気化発生量(気化能力)を示す。ここでは、基板加熱温度400℃、プラズマ重合反応室の圧力を3torr、RFパワー50W(0.1W/cm)とした。BCBモノマーのエアロゾルを瞬時に気化させる本発明の方法では、気化温度200℃が可能であり、0.1g/min以上のBCBモノマーの気化発生量が達成されている。その結果、8インチ基板上のプラズマ重合BCB膜の成長速度は4000A/min程度となり、実用上問題ないレベルを達成した。一方、図3に示した従来の気化方式の場合、BCBモノマー液膜を加熱して蒸発させるため気化速度が遅く、気化前のBCBモノマーの重合反応を回避するため、気化温度は150℃程度が上限であった。そのため、気化発生量は0.02g/minと小さく、プラズマ重合BCB高分子膜の成長速度も500〜700A/min程度であった。
【0076】図12に、本発明による有機モノマーの気化方式を用いた高分子膜成長装置により得られたプラズマ重合BCB高分子膜の赤外吸収スペクトルを示す。ここでは、プラズマ重合反応室の圧力を3Torrおよい3.3Torrとし、またRFパワーを50W(0.1W/cm)と75W(0.15W/cm)とした。いずれの場合もDVS−BCBを骨格とする高分子膜が得られていることが確認された。このプラズマ重合BCB高分子膜の比誘電率は2.5〜2.7であった。
【0077】さらに、第3の実施例について説明する。第3の実施例では、第2の実施例と同様に、本発明の気化方式をBCB高分子膜成長に適用した場合について述べるが、第2の実施例と異なり、有機モノマー気化室2とプラズマ重合反応室26が気化原料配管16のみを介して接続されていることが特徴である。このようにすることにより、有機モノマー気化室とプラズマ重合反応室を非常に近づけることができるようになる。実施例2に記載されているようなバルブ17fや長い気化原料配管の存在は圧力損失となるため、BCBモノマーのような低蒸気圧原料を用いる場合は制約が大きくなる。したがって、有機モノマー気化室とプラズマ重合反応室は許されるかぎり圧力損失を小さくなるように接続するのが好ましく、具体的には直近に設置するのが望ましい。
【0078】図13に、本実施例におけるBCB高分子膜成長装置のブロック図を示す。本実施例においても原料タンク1に貯蔵された液体の有機モノマーであるBCBモノマー5は原料配管9に送られ、液体マスフローコントローラ7bを介して所定速度で有機モノマー気化室2に送られる。なお、原料供給配管9には図示しないが実施例2同様、真空引き用配管が設置されており、原料交換時に真空引きできるよう配慮されている。
【0079】第2の実施例では図示しなかったが、本気化装置では、有機モノマー気化室2内の洗浄のために、洗浄溶剤を導入するバルブ17sも設置されている。配管洗浄実施時には、洗浄溶剤タンク41に貯蔵された溶剤42は溶剤配管43に送られ、液体マスフローコントローラ7a、バルブ17m、17sを介して所定速度で有機モノマー気化室に送られる。これにより、バルブ17s、17t、17h内部、およびそれらと気化減圧室13を接続する配管中の液体有機モノマーがパージされる。また、原料配管9も洗浄溶剤により洗浄が行えるようにバルブ17jを介して、原料配管側に洗浄溶剤を供給可能であるように配慮されている。また溶剤は移管43も原料配管9同様、図示しないが真空引き用配管が設置されている。
【0080】キャリアガスの供給に関しては第2の実施例と同様である。ただし、第2の実施例と異なり、有機モノマー気化室2をプラズマ重合反応室32の直近に配した関係上、クリーニングガス配管22はクリーニングガスマスフロコントローラ21を介してキャリアガス配管に接続されている。プラズマ重合反応室のクリーニングの際にはキャリアガス側のバルブ17qを閉じ、クリーニングガス側の17pのバルブを開け、クリーニングガスを導入する。クリーニングガスは実施例2と同様である。
【0081】また、BCBモノマーの気化とHeキャリアガスの供給、さらに、BCB高分子膜の形成に関しては気化原料配管16が非常に短いこと以外は第2の実施例と同様である。
【0082】本実施例におけるBCB高分子膜成長における一連の電磁弁動作について説明する。まず、減圧気化室で気化されたBCBモノマーガスは気化原料配管16を介してプラズマ重合反応室26に導入される。本実施例では第2の実施例と異なり、BCBモノマーの供給初期にもプラズマ重合反応室26に気化したBCBモノマーガスが供給される。減圧気化室内の混合ノズル部11に残存したBCBモノマーからの気化ガスの影響が懸念されるが、BCBモノマーを用いた場合には実施例に記載された基板温度においてはRFパワーが印加されない状態では成膜速度は無視できるほど小さいので影響はない。
【0083】その後、第2の実施例と同様にRFパワーを所定時間印加して、基板24上にプラズマ重合BCB高分子膜24を成長する。その後、RFパワーをオフし、その後電磁バルブ17hを閉じてBCBモノマーの減圧気化室13への供給を停止し、キャリアガス6のみを気化原料配管16を介して、プラズマ重合反応室に30秒程度供給する。
【0084】その後、バルブ17q、17cを閉じ、10秒程度プラズマ重合反応室26の真空引きを行い、基板24を基板搬送チャンバ(図示せず)に取り出す。さらに、バルブ17p、17cを開きクリーニングガスを導入し、RFパワーをオンしてプラズマ重合反応室26の内壁をプラズマクリーニングする。その後、再び電磁弁17q、17cを閉じてプラズマ重合反応室26の真空引きを行い、次の基板をセットする。
【0085】なお、本実施例において得られたプラズマ重合BCB高分子膜の特性は第2の実施例と同様であった。
【0086】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、半導体基板上に形成する有機高分子膜を構成する有機モノマーを低温でキャリアガスと混合させて噴霧し、液体モノマーの微粒子として比表面積を向上させることで気化効率を大きくしている。特に、有機モノマーの場合、飽和蒸気圧を大きくするため温度を上昇させると有機モノマーの重合反応が生じてしまうが、本発明では、有機モノマーを高温に加熱し、重合反応の生じる前に瞬時に気化させてしまうことが可能となり、気化有機モノマーをプラズマ重合させて高分子膜を成長する際の速度を向上できるといった効果がある。
【0087】さらには、本発明では、高真空中でのプラズマを介して高分子膜を成長しているため、絶縁性を劣化させ比誘電率の増大を導く高分子膜の部分酸化といった反応が生じることがなく、高品質の高分子膜を得ることができる。特に、酸化を極端に嫌う銅配線と組み合わせる低誘電率層間絶縁膜として用いる高分子膜の成長に極めて良好な効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の従来例によるDVS−BCBモノマーからDVS−BCB高分子膜の形成を説明するための反応経路図である。
【図2】第2の従来例による液体有機原料の気化方法を説明する概略図である。
【図3】第3の従来例による液体有機原料の気化方法を説明する概略図である。
【図4】DVS−BCBモノマーとTEOS(テトラエチルオルソシリケイト)の飽和蒸気圧と温度の関係図である。
【図5】DVS−BCBモノマーの加熱時間とモノマー未反応率の関係図である。
【図6】本発明による気化方法の一例を説明する概略図である。
【図7】本発明による気化方法をDVS−BCBモノマーの気化に適用した場合のキャリアガス流量と気化室内全圧およびBCBモノマーの分圧を示す説明図である。
【図8】本発明による気化方法をDVS−BCBモノマーの気化に適用した場合の、BCBモノマー供給量とBCBモノマー分圧とBCBモノマーの飽和蒸気圧の温度依存性を示す関係図である。
【図9】本発明による気化方法をDVS−BCBモノマーの気化に適用した場合の、BCBモノマー気化回収量と気化温度との関係を示す図である。
【図10】本発明による気化方法を用いたプラズマ重合高分子膜成長装置の概略図である。
【図11】本発明による気化方法を用いたプラズマ重合高分子膜成長装置による気化温度と気化可能BCBモノマー供給速度とプラズマ重合BCB膜の成長速度の関係図である。
【図12】本発明による気化方法を用いたプラズマ重合高分子膜成長装置によるプラズマ重合BCB膜のFTIRスペクトル図である。
【図13】本発明による気化方法を用いたプラズマ重合高分子膜成長装置の概略図である。
【符号の説明】
1 原料タンク
2 有機モノマー気化室
3 ブロックヒータ
4 エアロゾル
5 有機モノマー
6 キャリアガス
7 液体マスフローコントローラ
8 ガスマスフロコントローラ
9 気化原料配管
10 キャリアガス配管
11 混合ノズル
12 気液混合流体
13 気化減圧室
14 有機モノマーガス(BCBモノマーガス)
15 ヒータ
16 気化原料配管
17a〜17h、17j、17k、17m、17n、17p〜17t 電磁弁/バルブ
18 キャリアガス加熱フィルタ
19 熱電対
20 真空引き用配管
21 クリーニングガスマスフロコントローラ
22 クリーニングガス配管
23 シャワーヘッド
24 基板
25 基板加熱ヒータ
26 プラズマ重合反応室
27 排気配管
28 冷却トラップ
29 排気ポンプ
30 液体有機モノマー原料供給系
31 キャリアガス供給系
32 プラズマ重合反応室系
33a ヘッド
33b ボディ
33c シールド
33d ダイヤフラムバルブ
33e モノマー供給孔
33f 気化室
33g ヒータ
41 洗浄溶剤タンク
42 溶剤
43 溶剤配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機高分子絶縁膜を形成し得る有機モノマー又は有機オリゴマーからなる液体有機原料を気化制御器に供給して気化させる方法において、前記液体有機原料の熱重合反応開始温度よりも低い温度でキャリアガスと混合して気液混合流体を形成する第1のステップと、該気液混合流体を気化減圧室に噴霧して前記液体有機原料のエアロゾルを形成して加熱する第2のステップと、前記エアロゾルを介して前記液体有機原料を気化させる第3のステップとを有することを特徴とする液体有機原料の気化方法。
【請求項2】 請求項1に記載された液体有機原料の気化方法において、前記エアロゾルは100μmφ乃至1μmφであることを特徴とする液体有機原料の気化方法。
【請求項3】 請求項1又は2に記載された液体有機原料の気化方法において、前記液体有機原料は化1式で示すジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテンモノマーであることを特徴とする液体有機原料の気化方法。
【化1】


【請求項4】 請求項1乃至3のいずれかに記載された液体有機原料の気化方法において、標準状態で毎分100ml〜500mlの前記キャリアガスと毎分0.1g〜0.5gの前記液体有機原料とからなる前記気液混合流体を、1.3kPa(10Torr)以下に保たれた前記気化減圧室に噴霧し、温度160℃から250℃の温度範囲で加熱して前記液体有機原料を気化させるようにしたことを特徴とする液体有機原料の気化方法。
【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載された液体有機原料の気化方法を用いて基板上に前記液体有機原料を骨格とする有機高分子膜を成長させるようにしたことを特徴とする絶縁膜の成長方法。
【請求項6】 液体有機原料のエアロゾルを加熱して、該エアロゾルを介して前記液体有機原料を気化させて気化有機原料を生成する気化装置がプラズマ重合反応室に直結されており、該プラズマ重合反応室中のプラズマ中に前記気化有機原料を直接供給して、基板上に前記液体有機原料を骨格とする有機高分子膜を成長させるようにしたことを特徴とする絶縁膜の成長方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2001−308082(P2001−308082A)
【公開日】平成13年11月2日(2001.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−119023(P2000−119023)
【出願日】平成12年4月20日(2000.4.20)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(390014409)株式会社リンテック (7)
【Fターム(参考)】