説明

液処理方法、液処理装置、および記憶媒体

【課題】薬液を用いてハードマスクを除去する際に、薬液を回収して再利用することができる液処理方法を提供すること。
【解決手段】ウエハに形成された被エッチング膜を、所定パターンに形成されたハードマスク層をエッチングマスクとして用いてエッチングした後、ハードマスク層およびエッチングの際に付着したポリマーを薬液で除去する液処理方法は、ウエハを回転させながらウエハに薬液を供給してハードマスク層を除去し、処理後の薬液を廃棄する第1工程と、第1工程によりハードマスク層の残存量が、処理後の薬液を回収して再利用することが可能となる量となった際に、廃棄していた処理後の薬液を回収して当該液処理に供するように切り替える第2工程と、第2工程の後、ウエハを回転させながら、薬液を回収して再利用しつつ、薬液によりハードマスク層の残部およびポリマー、またはポリマーを除去する第3工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機系低誘電率膜(Low−k膜)のエッチングに用いられるハードマスク層を除去するための液処理を行う液処理方法、液処理装置、および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体デバイスの高速化、配線パターンの微細化、高集積化の要求に対応して、配線間の容量の低下ならびに配線の導電性向上およびエレクトロマイグレーション耐性の向上が求められており、それに対応した技術として、配線材料にアルミニウム(Al)やタングステン(W)よりも導電性が高くかつエレクトロマイグレーション耐性に優れている銅(Cu)を用い、層間絶縁膜として低誘電率膜(Low−k膜)を用いたCu多層配線技術が注目されている。
【0003】
このようなCu多層配線技術では、Low−k膜に埋込配線溝や孔を形成してその中にCuを埋め込むデュアルダマシン法が採用される。Low−k膜としては有機系のものが多用されており、このような有機系のLow−k膜をエッチングする場合には、同じ有機膜であるフォトレジストとの選択比が十分にとれないため、Ti膜やTiN膜のような無機系のハードマスク(HM)がエッチング用のマスクとして使用される。この場合には、フォトレジストをマスクとしてHMを所定パターンにエッチングし、パターン形成されたHMをマスクとしてLow−k膜がエッチングされる。
【0004】
エッチング後、残存したHMは除去する必要がある。このHMの除去は、枚葉式の洗浄装置によりHM除去専用の薬液を用いて行うことができる。通常、このような洗浄処理は被処理基板である半導体ウエハを回転させつつ、その中心に薬液を連続的に供給し、遠心力により薬液を半導体ウエハの全面に拡げながら行われる(例えば特許文献1)。
【0005】
ところで、このようなHM除去用の薬液は高価であるため、半導体ウエハに吐出されて洗浄処理に供された薬液をタンクに戻して再利用することが試みられている。しかしながら。洗浄処理後の薬液にはHMやデバイスの成分が混入しており、これらが蓄積されると薬液成分が分解されてしまうため、薬液を再利用することは実質的に困難である。したがって、現状ではHM除去用の薬液を再利用せずに棄てざるを得ず、多大なコストがかかってしまう。
【特許文献1】特開2004−146594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、薬液を用いてハードマスクを除去する際に、薬液を回収して再利用することができる液処理方法およびそのような液処理方法を実施するための液処理装置を提供することを目的とする。
また、そのような液処理方法を実行するためのプログラムが記憶された記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、基板に形成された被エッチング膜を、所定パターンに形成されたハードマスク層をエッチングマスクとして用いてエッチングした後、前記ハードマスク層およびエッチングの際に付着したポリマーを薬液で除去する液処理方法であって、基板を回転させながら基板に薬液を供給してハードマスク層を除去し、処理後の薬液を廃棄する第1工程と、前記第1工程によりハードマスク層の残存量が、処理後の薬液を回収して再利用することが可能となる量となった際に、廃棄していた処理後の薬液を回収して当該液処理に供するように切り替える第2工程と、第2工程の後、基板を回転させながら、薬液を回収して再利用しつつ、薬液によりハードマスク層の残部およびポリマー、またはポリマーを除去する第3工程とを含むことを特徴とする液処理方法を提供する。
【0008】
上記第1の観点において、前記第1工程は、基板を回転させながら基板に薬液を間欠的に供給し、薬液の供給を停止してから次の薬液供給までの間、基板表面が薬液で濡れた状態を保つようにして行われ、前記第3工程は、基板を回転させながら基板に薬液を連続的に供給するように行われるようにすることができる。この場合に、前記第1工程は、最初の薬液の供給により基板に液膜を形成し、その後、薬液停止および薬液供給を交互に繰り返すようにすることができる。また、前記第1工程は、薬液の供給を停止してから次の薬液供給までの間の薬液停止期間を10〜30秒間とし、薬液を停止した後に薬液を供給する薬液供給期間を1〜5秒間とすることができ、また、基板の回転数を50〜300rpmの範囲にして行うことができる。
【0009】
上記第1の観点において、前記第1工程および前記第3工程は、基板を回転させながら基板に薬液を連続的に供給することにより行い、かつ前記第1工程の際の薬液供給量が前記第3工程の際の薬液供給量よりも少なるようにして行うことができる。
【0010】
上記第1の観点において、第2工程の薬液回収への切り替えのタイミングは、ハードマスク層の除去割合が60〜100%の範囲の所定の割合となるのに要する時間を予め求めておき、その時間経過以降とすることができる。
【0011】
本発明の第2の観点では、基板に形成された被エッチング膜を、所定パターンに形成されたハードマスク層をエッチングマスクとして用いてエッチングした後、前記ハードマスク層およびエッチングの際に付着したポリマーを薬液で除去する液処理装置であって、基板を回転可能に保持する保持機構と、前記保持機構を回転させる回転機構と、前記保持機構に保持された基板の表面に薬液を供給する薬液供給機構と、前記保持機構に保持された基板の周縁部を囲繞し、基板から振り切られた処理後の薬液を受け止める排液カップと、前記排液カップに受け止められた処理後の薬液を排液する排液配管と、前記排液カップから排液された処理後の薬液を回収して再利用に供する回収機構と、前記処理後の薬液を前記排液配管を介して廃棄する廃棄側および前記回収機構により回収する回収側の間で切り替える切替機構と、前記回転機構、前記薬液供給機構、前記切替機構を制御する制御部とを具備し、前記制御部は、最初に、前記切替機構を廃棄側にさせて前記回転機構に基板を回転させながら、前記薬液供給機構に基板表面に薬液を供給させて、ハードマスク層を除去するとともに処理後の薬液を廃棄し、処理の進行にともなってハードマスク層の残存量が、処理後の薬液を回収して再利用することが可能となる量となった際に、前記切替機構を回収側に切り替えさせ、その状態で、前記回転機構に基板を回転させながら、薬液を回収して再利用しつつ、前記薬液供給機構に基板に薬液を供給させて、ハードマスク層の残部およびポリマー、またはポリマーを除去するように制御することを特徴とする液処理装置を提供する。
【0012】
上記第2の観点において、前記制御部は、最初の、ハードマスク層を除去するとともに処理後の薬液を廃棄する処理の際に、前記回転機構に基板を回転させながら、前記薬液供給機構に基板表面に薬液を間欠的に供給させ、かつ薬液の供給を停止してから次の薬液供給までの間、基板表面が薬液で濡れた状態を保つようにさせ、前記切替機構を回収側に切り替えた後の、ハードマスク層の残部およびポリマー、またはポリマーを除去するとともに処理後の薬液を回収する処理の際に、前記回転機構により基板を回転させながら、薬液を連続的に供給するように制御するように構成することができる。この場合に、前記制御部は、最初の、ハードマスク層を除去するとともに処理後の薬液を廃棄する処理の際に、最初の薬液の供給により基板に液膜を形成させ、その後、薬液停止および薬液供給を交互に繰り返させるようにすることが好ましい。
【0013】
また、前記制御部は、最初の、ハードマスク層を除去するとともに処理後の薬液を廃棄する処理の際、および、前記切替機構を回収側に切り替えた後の、ハードマスク層の残部およびポリマー、またはポリマーを除去するとともに処理後の薬液を回収する処理の際のいずれも、前記回転機構により基板を回転させながら、薬液を連続的に供給するように制御し、かつ、前記最初の処理の際の薬液供給量が前記切替機構を回収側に切り替えた後の薬液供給量よりも少なくなるように制御するように構成することもできる。
【0014】
上記第2の観点において、前記制御部は、ハードマスク層の除去割合が60〜100%の範囲の所定の割合となるのに要する時間が予め設定され、その時間経過以降に前記切替機構を回収側に切り替えさせることができる。
【0015】
本発明の第3の観点では、コンピュータ上で動作し、液処理装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記第1の観点の液処理方法が行われるようにコンピュータに処理装置を制御させることを特徴とする記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板を回転させながら基板に薬液を供給してハードマスク層を除去する際に、最初は処理後の薬液を廃棄し、処理が進行してハードマスク層の残存量が、処理後の薬液を回収して再利用することが可能となる量となった際に、廃棄していた処理後の薬液を回収して再利用するように切り替え、薬液によりハードマスク層の残部およびポリマー、またはポリマーを除去するようにしたので、従来廃棄していた処理後の薬液を再利用することができる。
【0017】
また、薬液を廃棄する最初の工程を、基板を回転させながら基板に薬液を間欠的に供給し、薬液の供給を停止してから次の薬液供給までの間、基板表面が薬液で濡れた状態を保つようにして行う、またはこの処理の際の薬液供給量をポリマー除去の際の薬液供給量よりも少なくして行うことにより、最初の工程の薬液使用量を極力少なくして廃棄する薬液の量を極力低減することができるので、薬液の回収割合を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る液処理装置の概略構成を示す断面図である。この液処理装置1は、被処理基板としての半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)の表面のハードマスク(HM)を薬液により除去する処理を行うものである。
【0019】
この液処理装置1は、チャンバ(図示せず)と、チャンバのベースとなるベースプレート2と、チャンバ内に設けられたスピンチャック3とを有している。スピンチャック3は、回転プレート11と、回転プレート11の中央部に接続された回転軸12とを有しており、回転プレート11の周縁には、ウエハWを保持する保持ピン13が3個等間隔で取り付けられている。保持ピン13は、ウエハWが回転プレート11から少し浮いた状態で水平にウエハWを保持するようになっており、ウエハWを保持する保持位置と後方に回動して保持を解除する解除位置との間で移動可能となっている。また、回転プレート11の周縁には、搬送アーム(図示せず)とスピンチャック3との間のウエハWの受け渡しの際にウエハWを支持するための支持ピン(図示せず)が3個等間隔で設けられている。回転軸12はベースプレート2を貫通して下方に延びており、モータ4により回転可能となっている。そして、モータ4により回転軸12を介して回転プレート11を回転させることにより、回転プレート11に保持されたウエハWが回転される。
【0020】
スピンチャック3の上方には、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面に処理液として、HMおよびポリマー除去のための薬液やリンス液である純水を吐出する処理液吐出ノズル5が設けられている。処理液吐出ノズル5はノズルアーム15の先端に取り付けられている。ノズルアーム15の内部には、処理液流路16が形成されており、処理液吐出ノズル5のノズル孔5aは処理液流路16に接続されている。ノズルアーム15は駆動機構18により旋回可能となっており、駆動機構18によりノズルアーム15を旋回させることにより処理液吐出ノズル5をウエハW中心直上の吐出位置とウエハWの外方の待機位置との間で移動可能となっている。
【0021】
ノズルアーム15の処理液流路16の他端には処理液供給配管21が接続されている。処理液供給配管21には開閉バルブ22、23が設けられている。処理液供給配管21の開閉バルブ22配置部分には配管24が接続されており、配管24の他端にはHMおよびポリマーを除去するための薬液を貯留する薬液タンク25が接続されている。処理液供給配管21の開閉バルブ23配置部分には配管26が接続されており、配管26の他端には純水(DIW)を供給するDIW供給源27が接続されている。そして、開閉バルブ22、23を操作することで、薬液タンク25およびDIW供給源27から、配管24、26、処理液供給配管21、処理液流路16を通って処理液吐出ノズル5へ薬液および純水を供給可能となっている。
【0022】
回転プレート11の外側には、回転プレート11に保持されたウエハWの周縁部を囲繞するように、ウエハWから飛散した処理液の排液を受け止める排液カップ6が設けられている。排液カップ6の底部には排液口6aが形成されており、排液口6aには下方に延びる排液配管31が接続されている。また、排液配管31の途中からは薬液を回収するための回収配管32が分岐している。そして、回収配管32は上記薬液タンク25に接続されており、回収配管32を経て薬液タンク25に薬液が回収されるようになっている。
【0023】
排液配管31の回収配管32が分岐する部分には開閉バルブ34が設けられており、また回収配管32の分岐部分近傍には開閉バルブ35が設けられている。そして、開閉バルブ34を開成し、開閉バルブ35を閉成した状態とすることにより、排液は排液配管31を経て排液処理設備に送られ、その後廃棄される。また、開閉バルブ34を閉成し、開閉バルブ35を開成した状態とすることにより、排液が回収配管32を経て薬液タンク25に送られる。すなわち、開閉バルブ34、35は、回収側と廃棄側とを切り替える切替機構として機能する。
【0024】
液処理装置1は制御部40を備えている。この制御部40は、図2のブロック図に示すように、コントローラ41と、ユーザーインターフェース42と、記憶部43とを有している。コントローラ41は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)からなり、液処理装置1の各構成部、例えば開閉バルブ22,23,34,35、モータ4、駆動機構18等を制御する。ユーザーインターフェース42はコントローラ41に接続され、オペレータが液処理装置1を管理するためにコマンド等の入力操作を行うキーボードや、液処理装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなる。記憶部43もコントローラ41に接続され、その中に液処理装置1の各構成部の制御対象を制御するための制御プログラムや、液処理装置1に所定の処理を行わせるためのプログラムすなわち処理レシピが格納されている。処理レシピは記憶部43の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクのような固定的なものであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。そして、コントローラ41は、必要に応じて、ユーザーインターフェース42からの指示等にて任意の処理レシピを記憶部43から呼び出して実行させることで、コントローラ41の制御下で、所定の処理が行われる。
【0025】
次に、このような液処理装置1によりウエハW上のハードマスク(HM)除去処理を行う処理動作について説明する。
ここでは、図3(a)に示す、有機系のLow−k膜101のエッチングに際し、Low−k膜101の上にハードマスク(HM)層102を形成し、その上にフォトレジスト膜103を形成してフォトリソグラフィ工程により所定のパターンにパターニングされた状態から、図3(b)に示すように、パターニングされたフォトレジスト膜103をマスクとしてHM層102をエッチングしてレジストパターンをHM層102に転写し、図3(c)に示すように、HM層102をマスクとしてLow−k膜101をエッチングして例えばホール105を形成する。このときホール105の内壁にはポリマー104が付着している。
【0026】
本実施形態では、この図3(c)の状態からHM層102とポリマー104を薬液処理により除去する。HM層102としては、通常用いられるTi膜およびTiN膜を好適に用いることができる。HM層102およびポリマー104を除去するための薬液としては、この種の薬液として一般に用いられているものを用いることができ、例えば、過酸化水素水をベースとしてさらに所定の有機成分を加えたものを挙げることができる。
【0027】
HM層102とポリマー104の除去は、まず、図3(c)の状態のホール105が形成されたLow−k膜101、HM層102を有するウエハWを液処理装置に搬入し、スピンチャック3に装着した状態で、図4のフローチャートに示す以下の手順で行われる。
【0028】
この状態で最初に、第1段階の液処理を行う(第1工程)。この第1工程においては、処理液供給ノズル5をウエハWの中心直上に位置させ、スピンチャック3によりウエハWを回転させながら、処理液供給ノズル5からウエハW表面にHMおよびポリマーを除去するための薬液を吐出し、HM層102の除去処理を行う。この際に薬液タンク25内の薬液は図示しないヒーターにより50〜80℃程度の温度に維持されており、ウエハW上の薬液は30℃以上に保持されている必要がある。この第1工程を行っている際には、図5に示すように、開閉バルブ34を開成し、開閉バルブ35を閉成して、ウエハWから振り切られて排液カップ6に受け止められた薬液を廃棄するようにする。すなわち、最初から薬液を回収すると、薬液タンク25に回収されるHMの量が非常に多いものとなってしまい、このような薬液は再利用に適さない。このため、第1工程では処理後の薬液を廃棄する。
【0029】
しかし、HM層102が除去処理されていくにつれ、HM層102の残存量が減少していき、所定時間経過後には、その残存量は、薬液により全て除去されて薬液とともに回収されて、薬液中に残存しても再利用に支障のない量となる。したがって、HM層102の残存量がそのような量になった時点以降の適切なタイミングで、図6に示すように、開閉バルブ34を閉成し、開閉バルブ35を開成して、排液カップ6に受け止められた薬液を回収配管32を介して薬液タンク25に回収可能な状態に切り替え(第2工程)、回収した薬液を再利用しつつ第2段階の液処理であるHM層102の残部とポリマー104の除去を行う(第3工程)。すなわち、第3工程の第2段階の液処理の際には、処理後の薬液は回収配管32を経て薬液タンク25に回収され薬液は循環使用される。
【0030】
第2工程の薬液回収への切り替えのタイミングは、HM層102の残存量が、それを全て薬液によりエッチング除去してもそれを含む薬液が循環使用可能となる量になるまでの時間を予め把握しておき、その時間経過以降とすることができる。HM層102の除去割合が60%以上、例えば80%除去された段階であれば残存するHM層102が薬液とともに回収されても循環使用するのに支障がないことが把握されているので、HM層102の厚さとエッチングレートから、HM層102が60〜100%の範囲の所定の割合、例えば80%除去されるのに要する時間を予め求めておき、その時間経過以降に薬液回収へ切り替えるようにすることができる。なお、HM層102のエッチングにおいては部位によりそのエッチングレートに多少のばらつきがあり、100%除去される時間の処理を行っても多少残存している。
【0031】
このような切り替え制御は、上記のようにして決定された切り替えタイミングを制御部40に設定しておき、そのタイミングに達した時点でコントローラ41から開閉バルブ34,35に指令を発することにより行われる。
【0032】
第1工程は、通常、図7(a)に示すように、HM層102が多少残存している状態まで行われるが、このときポリマー104は除去されにくいことから、第1工程終了時点ではほぼ残存している。ただし、第1工程でHM層102を全部除去するようにしてもよい。そして、第3工程では、HM膜102の残部とポリマー104、またはHM層102が全部除去されている際にはポリマー104のみが除去されて、図7(b)に示すように、エッチングされた有機系のLow−k膜101のみの状態となる。
【0033】
薬液の回収割合を高くする観点からは、薬液を廃棄する第1工程において、薬液の使用量を極力少なくすることが好ましい。このような観点から、第1工程において、ウエハWを回転させながら、薬液の間欠供給を行うことが好ましい。例えば、図8に示すように、ウエハWを低速で回転させたまま、最初、図中T1で示す1〜10sec程度、例えば5secの間薬液を供給して液膜を形成した後、図中T2で示す10〜30sec、好ましくは10〜15secの薬液の停止期間と、図中T3で示す1〜5sec、好ましくは1秒程度の薬液の供給期間とを交互に繰り返す。このとき、ウエハW表面が常に薬液で濡れた状態になるように、薬液の供給と停止のタイミングを設定する必要がある。ウエハWの表面が薬液に濡れていれば薬液とHM成分との反応が進行するが、乾燥してしまうとパーティクルが発生するとともに次にウエハW表面に液膜を形成する時間が必要となるといった不都合が生じる。また、薬液の供給を停止している時間が長いとウエハW上の薬液の温度が低下して反応速度が低下してしまうので、その点も考慮して薬液の供給を停止する時間を決定することが好ましい。このときの薬液の供給および停止は、コントローラ41からの指令により開閉バルブ22を開閉することにより行うことができる。また、このときのウエハWの回転数は、50〜300rpmの範囲が好ましい。300rpmを超えると、薬液が短時間に飛散してしまって薬液の使用量を低減する効果が小さくなってしまい、逆に50rpm未満では、ウエハW上に冷えた薬液が多量に残存し、薬液を間欠吐出してもウエハWの温度が上がらず、HM除去反応が遅くなってしまう。
【0034】
このように、薬液を間欠的に吐出することにより、薬液使用量を著しく低下させることができ、例えば、連続吐出で薬液を供給する場合の1/10以下に低減することができるので、回収する薬液の割合を極めて高くすることができる。また、このような間欠処理を行っても薬液の吐出間隔等を適切に調整することにより、連続吐出の場合と比べて、薬液温度があまり低下せず、処理速度も遜色のないものとすることができる。
【0035】
第3工程では、上述したように主にポリマー104の除去を行うが、薬液を回収して再利用に供するため、薬液の使用量低減の必要性は低い。また、ポリマーは極めて強固に付着しており、HMを除去する際よりも高い温度が必要となり、上記のような薬液を間欠吐出する手法では、反応に必要な薬液温度を十分に確保することができない。このため、第3工程では、薬液を連続吐出しながら処理を行うことが好ましい。このときのウエハWの回転数は200〜500rpmの範囲が好ましい。
【0036】
以上のことから、図9に示すように、間欠的に薬液を供給しながら第1工程を行い、その後第2工程の廃棄側から回収側への切り替えを行って、連続的に薬液を供給しながら第3工程を行うことが、回収される薬液の割合を上昇させる観点から好ましい。
【0037】
また、第1工程に使用する薬液の量を減少させて回収される薬液の割合を上昇させる他の手法としては、図10に示すように、第1工程および第3工程のいずれもウエハWを回転させながら連続的に薬液を供給して行い、第1工程の際の薬液供給量を第3工程の際の薬液供給量よりも少なくして行うことを挙げることができる。すなわち、ポリマー104を除去する第3工程では、薬液の温度が相対的に高いことが要求され、比較的薬液量が多いことが要求されるが、第1工程では第3工程よりも薬液温度が低くてもよく、そのため第3工程の際よりも薬液供給量を少なくすることができる。
【0038】
以上のようにしてHM層102およびポリマー104を除去してウエハWのLow−k膜101が図7(b)の状態となった後、ウエハWを100〜1000 rpm程度の回転数で回転しつつ、開閉バルブ22を閉成し、開閉バルブ23を開成して、純水供給源27からリンス液としての純水を処理液供給ノズル5からウエハWへ吐出してウエハWのリンス処理を行う。この際に、開閉バルブ35を閉成し、開閉バルブ34を開成して、ウエハWから振り切られたリンス液を廃棄する。
【0039】
このようなリンス処理を行った後、必要に応じて図示しない乾燥媒体供給機構により、IPA(イソプロピルアルコール)のような乾燥媒体をウエハWに供給して乾燥を促進させる処理を介在させて、最後にウエハWを高速回転させて振り切り乾燥を行う。
以上により、1枚のウエハの処理が終了する。
【0040】
以上のように、本実施形態によれば、ウエハWを回転させながらウエハWに薬液を供給してハードマスク層102を除去する第1工程では処理後の薬液は廃棄し、第2工程では、残存するHM層の量が少なくなって再利用が可能となった際に、廃棄していた処理後の薬液を回収して循環使用するように切り替え、第3工程では、その状態で薬液を回収して循環使用しつつハードマスク層102の残部およびポリマー104、またはポリマー104を除去するようにしたので、従来廃棄していた処理後の薬液を再利用することができる。
【0041】
また、薬液を廃棄する第1工程を、ウエハWを回転させながらウエハWに薬液を間欠的に供給し、薬液の供給を停止してから次の薬液供給までの間、ウエハW表面が薬液で濡れた状態を保つようにして行うことにより、第1工程の薬液使用量を少なくして廃棄する薬液の量を極力低減することができるので、薬液の回収割合を極めて高くすることができる。また、第1工程の薬液供給量を第3工程の薬液供給量よりも少なくすることにより、第1工程の薬液使用量を少なくして廃棄する薬液の量を極力低減することができるので、やはり薬液の回収割合を高くすることができる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、有機系のLow−k膜のエッチングの際に用いたハードマスクおよびポリマーの除去を例にとって説明したが、下地のエッチング対象膜は特に限定されることはない。また、上記実施形態では被処理基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、液晶表示装置(LCD)用のガラス基板に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板等、他の基板に適用可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】一実施形態に係る液処理装置の概略構成を示す断面図。
【図2】図1の液処理装置に設けられた制御部の構成を示すブロック図。
【図3】ハードマスクを用いて有機系のLow−k膜をエッチングする工程を説明するための工程断面図。
【図4】図3(c)に示す状態からハードマスク層とポリマーを除去する手順を示すフローチャート。
【図5】第1工程を行っている際の液処理装置の状態を説明するための図。
【図6】第2工程の廃棄側から回収側へ切り替えた状態を説明するための図。
【図7】第1工程および第3工程を説明するための工程断面図。
【図8】第1工程の薬液吐出の好ましい例を示すタイミングチャート。
【図9】ハードマスク層とポリマーを除去する好ましい方法における薬液供給タイミングおよび供給量を示す図。
【図10】ハードマスク層とポリマーを除去する他の好ましい方法における薬液供給量を示す図。
【符号の説明】
【0044】
1;液処理装置
2;ベースプレート
3;スピンチャック
4;モータ
5;処理液吐出ノズル
6;排液カップ
11;回転プレート
12;回転軸
13;保持ピン
15;ノズルアーム
18;駆動機構
21;処理液供給配管
22,23,34,35;開閉バルブ
24,26;配管
25;薬液タンク
27;純水供給源
31;排液配管
32;回収配管
38;濃度センサー
40;制御部
41;コントローラ
42;ユーザーインターフェース
43;記憶部
101;有機系Low−k膜
102;ハードマスク層
104;ポリマー
W;ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された被エッチング膜を、所定パターンに形成されたハードマスク層をエッチングマスクとして用いてエッチングした後、前記ハードマスク層およびエッチングの際に付着したポリマーを薬液で除去する液処理方法であって、
基板を回転させながら基板に薬液を供給してハードマスク層を除去し、処理後の薬液を廃棄する第1工程と、
前記第1工程によりハードマスク層の残存量が、処理後の薬液を回収して再利用することが可能となる量となった際に、廃棄していた処理後の薬液を回収して当該液処理に供するように切り替える第2工程と、
第2工程の後、基板を回転させながら、薬液を回収して再利用しつつ、薬液によりハードマスク層の残部およびポリマー、またはポリマーを除去する第3工程と
を含むことを特徴とする液処理方法。
【請求項2】
前記第1工程は、基板を回転させながら基板に薬液を間欠的に供給し、薬液の供給を停止してから次の薬液供給までの間、基板表面が薬液で濡れた状態を保つようにして行われ、前記第3工程は、基板を回転させながら基板に薬液を連続的に供給するように行われることを特徴とする請求項1に記載の液処理方法。
【請求項3】
前記第1工程は、最初の薬液の供給により基板に液膜を形成し、その後、薬液停止および薬液供給を交互に繰り返すことを特徴とする請求項2に記載の液処理方法。
【請求項4】
前記第1工程は、薬液の供給を停止してから次の薬液供給までの間の薬液停止期間が10〜30秒間であり、薬液を停止した後に薬液を供給する薬液供給期間が1〜5秒間であることを特徴とする請求項3に記載の液処理方法。
【請求項5】
前記第1工程は、基板の回転数を50〜300rpmの範囲にして行われることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の液処理方法。
【請求項6】
前記第1工程および前記第3工程は、いずれも基板を回転させながら基板に薬液を連続的に供給することにより行われ、かつ前記第1工程の際の薬液供給量が前記第3工程の際の薬液供給量よりも少なくなるようにして行われることを特徴とする請求項1に記載の液処理方法。
【請求項7】
前記第2工程の薬液回収への切り替えタイミングは、ハードマスク層の除去割合が60〜100%の範囲の所定の割合となるのに要する時間を予め求めておき、その時間経過以降とすることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液処理方法。
【請求項8】
基板に形成された被エッチング膜を、所定パターンに形成されたハードマスク層をエッチングマスクとして用いてエッチングした後、前記ハードマスク層およびエッチングの際に付着したポリマーを薬液で除去する液処理装置であって、
基板を回転可能に保持する保持機構と、
前記保持機構を回転させる回転機構と、
前記保持機構に保持された基板の表面に薬液を供給する薬液供給機構と、
前記保持機構に保持された基板の周縁部を囲繞し、基板から振り切られた処理後の薬液を受け止める排液カップと、
前記排液カップに受け止められた処理後の薬液を排液する排液配管と、
前記排液カップから排液された処理後の薬液を回収して再利用に供する回収機構と、
前記処理後の薬液を前記排液配管を介して廃棄する廃棄側および前記回収機構により回収する回収側の間で切り替える切替機構と、
前記回転機構、前記薬液供給機構、前記切替機構を制御する制御部と
を具備し、
前記制御部は、
最初に、前記切替機構を廃棄側にさせて前記回転機構に基板を回転させながら、前記薬液供給機構に基板表面に薬液を供給させて、ハードマスク層を除去するとともに処理後の薬液を廃棄し、
処理の進行にともなってハードマスク層の残存量が、処理後の薬液を回収して再利用することが可能となる量となった際に、前記切替機構を回収側に切り替えさせ、
その状態で、前記回転機構に基板を回転させながら、薬液を回収して再利用しつつ、前記薬液供給機構に基板に薬液を供給させて、ハードマスク層の残部およびポリマー、またはポリマーを除去するように制御することを特徴とする液処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、
最初の、ハードマスク層を除去するとともに処理後の薬液を廃棄する処理の際に、前記回転機構に基板を回転させながら、前記薬液供給機構に基板表面に薬液を間欠的に供給させ、かつ薬液の供給を停止してから次の薬液供給までの間、基板表面が薬液で濡れた状態を保つようにさせ、
前記切替機構を回収側に切り替えた後の、ハードマスク層の残部およびポリマー、またはポリマーを除去するとともに処理後の薬液を回収する処理の際に、前記回転機構により基板を回転させながら、薬液を連続的に供給するように制御することを特徴とする請求項8に記載の液処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、最初の、ハードマスク層を除去するとともに処理後の薬液を廃棄する処理の際に、最初の薬液の供給により基板に液膜を形成させ、その後、薬液停止および薬液供給を交互に繰り返させることを特徴とする請求項9に記載の液処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、
最初の、ハードマスク層を除去するとともに処理後の薬液を廃棄する処理の際、および、前記切替機構を回収側に切り替えた後の、ハードマスク層の残部およびポリマー、またはポリマーを除去するとともに処理後の薬液を回収する処理の際のいずれも、前記回転機構により基板を回転させながら、薬液を連続的に供給するように制御し、
かつ、前記最初の処理の際の薬液供給量が前記切替機構を回収側に切り替えた後の薬液供給量よりも少なくなるように制御することを特徴とする請求項8に記載の液処理装置。
【請求項12】
前記制御部は、ハードマスク層の除去割合が60〜100%の範囲の所定の割合となるのに要する時間が予め設定され、その時間経過以降に前記切替機構を回収側に切り替えさせることを特徴とする請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の液処理装置。
【請求項13】
コンピュータ上で動作し、液処理装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項7のいずれかの液処理方法が行われるようにコンピュータに処理装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−114210(P2010−114210A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284533(P2008−284533)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】