説明

温度上昇予測装置およびこれを備える経路案内システム並びにこれを搭載する車両、温度上昇予測方法、経路案内方法、熱負荷予測装置

【課題】モータからの動力を用いて走行する車両に搭載されるナビゲーションシステムにおいて、車両が目的地に到達するまでにモータの温度が所定温度を超えるか否かをより適正に予測する。
【解決手段】目的地が設定されて車両の現在位置から目的地までのルートを検索したときに(S200)、検索したルートについて各走行区間の路面勾配θと車重Mとに基づいて上昇温度Δtmを設定してこれを現在位置から目的地まで順に積算することにより温度積算値tmaddを計算し(S250,S260)、計算した温度積算値tmaddを所定温度trefと比較する(S270)。これにより、モータの温度が所定温度を超えるか否かを、路面勾配θだけに基づいて予測するものに比してより適正に予測することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度上昇予測装置およびこれを備える経路案内システム並びにこれを搭載する車両、温度上昇予測方法、経路案内方法、熱負荷予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の温度上昇予測装置としては、エンジンからの動力を用いて走行可能な車両に搭載されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、これから走行を予定する路面が上り勾配のときには、勾配に基づいてエンジンの冷却液の温度が予め設定された上限値を超えるか否かを予測演算している。そして、この装置を備える車両では、予測演算により冷却液の温度が上限値を超えると予測されたときには、予定される上り勾配の路面にさしかかる前に冷却液の温度を予め低くしておく予定制御を行なうことにより、冷却液の温度が上限値を超えるのを抑制している。
【特許文献1】特開2003−328756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした車両では、冷却液の温度が上限値を超えるとエンジンなどの保護のためにエンジンからの出力を制限する必要が生じるため、冷却液の温度が上限値をできるだけ超えないようにすることが望ましい。このため、冷却水の温度が上限値を超えるか否かの予測演算をより精度よく行なうことが望まれる。また、こうした車両では、冷却水の温度が上限値を超えるのが予測されるときでも、予定制御を行なうことなく、他の手法による運転者の利便性の向上が望まれる場合もある。
【0004】
本発明の温度上昇予測装置およびこれを備える経路案内システム並びこれを搭載する車両、温度上昇予測方法、経路案内方法は、目的地までの走行路を車両が目的地に到達するまでに動力源を含む動力系の温度が所定温度を超えるか否かをより適正に予測することを目的の一つとする。また、本発明の経路案内システムおよびこれを搭載する車両、経路案内方法は、操作者の利便性をより向上させることを目的の一つとする。さらに、本発明の熱負荷予測装置は、目的地までの走行路を車両が目的地に到達するまでの動力源を含む動力系の熱負荷をより適正に予測することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の温度上昇予測装置およびこれを搭載する車両並びに温度上昇予測方法、熱負荷予測装置は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の温度上昇予測装置は、
動力源からの動力により走行可能な車両に搭載され、該動力源を含む動力系の温度が所定温度を超えて上昇するか否かを予測する温度上昇予測装置であって、
道路に関する情報を含む地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、
車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
目的地が設定されたとき、前記記憶された地図情報を用いて所定の条件により前記検出された車両の現在位置から該目的地までの走行路として第1走行路を検索する走行路検索手段と、
前記車両の重量を検出する重量検出手段と、
前記記憶された地図情報と前記検出された車両の重量とに基づいて前記検索された第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を超えて上昇するか否かを予測する温度上昇予測手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の温度上昇予測装置では、目的地が設定されたときに道路に関する情報を含む地図情報を用いて所定の条件により車両の現在位置から目的地までの走行路として第1走行路を検索し、地図情報と車両の重量とに基づいて第1走行路を車両が目的地に到達するまでに動力系の温度が所定温度を超えて上昇するか否かを予測する。動力系の熱負荷は、登坂路や降坂路などの道路の状態だけでなく車両の重量にも依存する。したがって、第1走行路を車両が目的地に到達するまでに動力系の温度が所定温度を越えて上昇するか否かを地図情報と車両の重量とに基づいて予測することにより、地図情報だけに基づいて予測するものに比してより適正に予測することができる。ここで、「動力系」には、動力源の他に、動力源を駆動する駆動手段や、動力源からの動力を車軸側に伝達する伝達手段などが含まれるものとしてもよい。
【0008】
こうした本発明の温度上昇予測装置において、前記温度上昇予測手段は、前記記憶された地図情報のうちの路面勾配に関する情報と前記検出された車両の重量とに基づいて予測する手段であるものとすることもできる。こうすれば、動力系の温度が所定温度を越えて上昇するか否かを路面勾配と車両の重量とに基づいてより適正に予測することができる。
【0009】
本発明の経路案内システムは、
走行路の経路案内を行なう経路案内システムであって、
上述のいずれかの態様の温度上昇予測装置と、
前記温度上昇予測手段により前記検索された第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を越えて上昇するのが予測されたとき、該温度上昇予測手段により該車両が該目的地に到達するまでに該動力系の温度が該所定温度を超えて上昇しないのが予測される前記検出された車両の現在位置から該目的地までの走行路としての第2走行路を前記記憶された地図情報を用いて再検索する走行路再検索手段と、
前記検索された第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を超えて上昇しないのが予測されたときには該第1走行路を出力し、前記検索された第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を超えて上昇するのが予測されたときには該第1走行路と前記再検索された第2走行路とを選択可能に出力する走行路出力手段と、
前記出力された走行路に基づいて経路案内を行なう経路案内手段と、
を備えることを要旨とする。
【0010】
この本発明の経路案内システムでは、上述のいずれかの態様の本発明の温度上昇予測装置を搭載し、目的地が設定されたときに地図情報を用いて所定の条件により車両の現在位置から目的地までの走行路として第1走行路を検索し、地図情報と車両の重量とに基づいて第1走行路を車両が目的地に到達するまでに動力源を含む動力系の温度が所定温度を超えて上昇するか否かを予測し、動力系の温度が所定温度を超えて上昇するのが予測されたときには、車両が目的地に到達するまでに動力系の温度が所定温度を超えて上昇しないのが予測される車両の現在位置から目的地までの走行路としての第2の走行路を地図情報を用いて再検索する。そして、第1走行路を車両が目的地に到達するまでに動力系の温度が所定温度を超えて上昇しないのが予測されたときには第1走行路を出力し、第1走行路を車両が目的地に到達するまでに動力系の温度が所定温度を超えて上昇するのが予測されたときには第1走行路と第2走行路とを選択可能に出力し、出力した走行路に基づいて経路案内を行なう。これにより、本発明の温度上昇予測装置が奏する効果、例えば、第1走行路を車両が目的地に到達するまでに動力系の温度が所定温度を越えて上昇するか否かを地図情報だけに基づいて予測するものに比してより適正に予測することができる効果などと同様の効果を奏することができる。また、第1走行路を車両が目的地に到達するまでに動力系の温度が所定温度を越えて上昇するのが予測されたときには、操作者は第1走行路と第2走行路とのうちから選択することができるから、操作者の利便性を向上させることができる。
【0011】
こうした本発明の経路案内システムにおいて、前記経路案内手段は、前記第1走行路が出力されたときには該第1走行路の経路案内を行ない、前記第1走行路と前記第2走行路とが選択可能に出力されたときには該第1走行路と該第2走行路とのうち操作者により選択された走行路の経路案内を行なう手段であるものとすることもできる。こうすれば、前者の場合には第1走行路の経路案内を行なうことができ、後者の場合には第1走行路と第2走行路とのうち操作者により選択された走行路の経路案内を行なうことができる。
【0012】
また、本発明の経路案内システムにおいて、前記走行路出力手段は、前記目的地までの走行路を表示する表示手段を備え、前記検索された第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を超えて上昇するのが予測されたときには、該第1走行路のうち該動力系の温度が前記所定温度を越えて上昇しないのが予測される走行区間を第1表示形式により該表示手段に表示すると共に該第1走行路のうち該動力系の温度が前記所定温度を越えて上昇するのが予測される走行区間を該第1表示形式とは異なる第2表示形式により前記表示手段に表示し、前記再検索された第2走行路を該第1表示形式により表示する手段であるものとすることもできる。こうすれば、第1走行路のうち動力系の温度が所定温度を超えて上昇するのが予測される走行区間を操作者に認識させることができる。
【0013】
本発明の車両は、
動力源からの動力により走行可能な車両であって、
上述のいずれかの態様の経路案内システムと、
前記動力系の温度を検出する温度検出手段と、
前記検出された温度が前記所定温度以上のとき、前記動力源から出力される動力を制限する動力制限手段と、
を備えることを要旨とする。
【0014】
この本発明の車両では、上述のいずれかの態様の本発明の経路案内システムを備えるから、本発明の経路案内システムが奏する効果と同様の効果、例えば、第1走行路を車両が目的地に到達するまでに動力系の温度が所定温度を越えて上昇するか否かを地図情報だけに基づいて予測するものに比してより適正に予測することができる効果や操作者の利便性を向上させることができる効果などと同様の効果を奏することができる。しかも、動力系の温度が所定温度以上のときには、動力源から出力される動力を制限することにより、動力系の熱負荷を抑制し、動力系の過度の温度上昇を抑制することができる。
【0015】
こうした本発明の車両において、前記動力源は、電動機であるものとすることもできる。また、前記動力源は、内燃機関と、該内燃機関と車軸側とに接続され電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該車軸側に出力する電力動力入出力手段と、前記車軸側に動力を入出力可能な電動機と、を備えるものであるものとすることもできる。
【0016】
本発明の温度上昇予測方法は、
動力源からの動力により走行可能な車両に搭載され、該動力源を含む動力系の温度が所定温度を超えて上昇するか否かを予測する温度上昇予測方法であって、
(a)目的地が設定されたとき、道路に関する情報を含む地図情報を用いて所定の条件により前記車両の現在位置から該目的地までの走行路として第1走行路を検索し、
(b)前記地図情報と前記車両の重量とに基づいて前記検索された第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を超えて上昇するか否かを予測する、
温度上昇予測方法。
【0017】
この本発明の温度上昇予測方法では、目的地が設定されたときに道路に関する情報を含む地図情報を用いて所定の条件により車両の現在位置から目的地までの走行路として第1走行路を検索し、地図情報と車両の重量とに基づいて第1走行路を車両が目的地に到達するまでに動力系の温度が所定温度を超えて上昇するか否かを予測する。動力系の熱負荷は、登坂路や降坂路などの道路の状態だけでなく車両の重量にも依存する。したがって、第1走行路を車両が目的地に到達するまでの動力系の温度が所定温度を越えて上昇するか否かを地図情報と車両の重量とに基づいて予測することにより、地図情報だけに基づいて予測するものに比してより適正に予測することができる。ここで、「動力系」には、動力源の他に、動力源を駆動する駆動手段や、動力源からの動力を車軸側に伝達する伝達手段などが含まれるものとしてもよい。
【0018】
本発明の経路案内方法は、
動力源からの動力により走行可能な車両に搭載され、走行路の経路案内を行なう経路案内方法であって、
(a)目的地が設定されたとき、道路に関する情報を含む地図情報を用いて所定の条件により前記車両の現在位置から該目的地までの走行路として第1走行路を検索し、
(b)前記地図情報と前記車両の重量とに基づいて前記第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力源を含む動力系の温度が前記所定温度を超えて上昇するか否かを予測し、
(c)前記第1走行路を前記車両が前記目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を越えて上昇するのが予測されたときには、該車両が該目的地に到達するまでに該動力系の温度が該所定温度を超えて上昇しないのが予測される該車両の現在位置から該目的地までの走行路としての第2走行路を前記地図情報を用いて再検索し、
(d)前記検索された第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を超えて上昇しないのが予測されたときには該第1走行路を出力し、前記検索された第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を超えて上昇するのが予測されたときには該第1走行路と前記再検索された第2走行路とを選択可能に出力し、
(e)前記出力された走行路に基づいて経路案内を行なう
ことを特徴とする。
【0019】
この本発明の経路案内方法では、目的地が設定されたときに地図情報を用いて所定の条件により車両の現在位置から目的地までの走行路として第1走行路を検索し、地図情報と車両の重量とに基づいて第1走行路を車両が目的地に到達するまでに動力源を含む動力系の温度が所定温度を超えて上昇するか否かを予測し、動力系の温度が所定温度を超えて上昇するのが予測されたときには、車両が目的地に到達するまでに動力系の温度が所定温度を超えて上昇しないのが予測される車両の現在位置から目的地までの走行路としての第2の走行路を地図情報を用いて再検索する。そして、第1走行路を車両が目的地に到達するまでに動力系の温度が所定温度を超えて上昇しないのが予測されたときには第1走行路を出力し、第1走行路を車両が目的地に到達するまでに動力系の温度が所定温度を超えて上昇するのが予測されたときには第1走行路と第2走行路とを選択可能に出力し、出力した走行路に基づいて経路案内を行なう。これにより、第1走行路を車両が目的地に到達するまでに動力系の温度が所定温度を越えて上昇するか否かを地図情報だけに基づいて予測するものに比してより適正に予測することができる。また、第1走行路を車両が目的地に到達するまでに動力系の温度が所定温度を越えて上昇するのが予測されたときには、操作者は第1走行路と第2走行路とのうちから選択することができるから、操作者の利便性を向上させることができる。
【0020】
本発明の熱負荷予測装置は、
動力源からの動力により走行可能な車両に搭載され、該動力源を含む動力系の熱負荷を予測する熱負荷予測装置であって、
道路に関する情報を含む地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、
車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
目的地が設定されたとき、前記記憶された地図情報を用いて所定の条件により前記検出された車両の現在位置から該目的地までの走行路として第1走行路を検索する走行路検索手段と、
前記車両の重量を検出する重量検出手段と、
前記記憶された地図情報と前記検出された車両の重量とに基づいて前記検索された第1走行路を走行して前記車両が前記設定された目的地に到達するまでの前記動力系の熱負荷を予測する熱負荷予測手段と、
を備えることを要旨とする。
【0021】
この本発明の熱負荷予測装置では、目的地が設定されたときに道路に関する情報を含む地図情報を用いて所定の条件により車両の現在位置から目的地までの走行路として第1走行路を検索し、地図情報と車両の重量とに基づいて第1走行路を走行して車両が目的地に到達するまでの動力系の熱負荷を予測する。動力系の熱負荷は、登坂路や降坂路などの道路の状態だけでなく車両の重量にも依存する。したがって、第1走行路を車両が目的地に到達するまでに動力系の熱負荷を地図情報と車両の重量とに基づいて予測することにより、地図情報だけに基づいて予測するものに比してより適正に予測することができる。ここで、「動力系」には、動力源の他に、動力源を駆動する駆動手段や、動力源からの動力を車軸側に伝達する伝達手段などが含まれるものとしてもよい。また、「動力系の熱負荷」は、前述の「動力系の温度」を含む概念である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0023】
図1は、本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、図示するように、駆動輪30a,30bにデファレンシャルギヤ31を介して連結された駆動軸32に動力を入出力可能なモータ22と、モータ22を駆動するインバータ24を介してモータ22と電力のやりとりを行なうバッテリ26と、車両全体をコントロールする電子制御ユニット40と、電子制御ユニット40と通信を行なうナビゲーションシステム60とを備える。
【0024】
モータ22は、外周面に永久磁石が貼り付けられたロータと、三相コイルが巻回されたステータとを備えるPM型の同期発電電動機として構成されている。インバータ24は、6つのスイッチング素子により構成されており、バッテリ26から供給される直流電力を擬似的な三相交流電力に変換してモータ22に供給する。
【0025】
ナビゲーションシステム60は、地図情報63等が記憶されたハードディスクなどの記憶媒体や通信ポートなどを有する制御部とを内蔵する本体61と、車両の現在位置に関する情報を受信するGPSアンテナ65と、車両の現在位置に関する情報や目的地までの走行路などの各種情報を表示すると共に操作者による各種指示を入力可能なタッチパネル式のディスプレイ66と、を備え、操作者により目的地が設定されたときには地図情報63と車両の現在位置と目的地とに基づいて目的地までの走行ルートを検索すると共に検索した走行ルートをディスプレイ66に表示してルート案内を行なう。地図情報63には、サービス情報(観光情報や駐車場など)や予め定められている走行区間毎の道路情報などがデータベース化して記憶されており、道路情報には、距離情報や幅員情報,地域情報(市街地,郊外),種別情報(一般道路,高速道路),勾配情報(路面勾配θ),法定速度,信号機の数などが含まれる。ナビゲーションシステム60は、電子制御ユニット40と通信している。
【0026】
電子制御ユニット40は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU42の他に処理プログラムを記憶するROM44と、データを一時的に記憶するRAM46と、図示しない入出力ポートと通信ポートとを備える。電子制御ユニット40には、モータ22の温度を検出する温度センサ22aからのモータ温度tmやモータ22の回転数を検出する回転数センサ23からのモータ回転数Nm,バッテリ26の温度を検出する温度センサ26aからのバッテリ温度tb,イグニッションスイッチ50からのイグニッション信号,シフトレバー51の操作位置を検出するシフトポジションセンサ52からのシフトポジションSP,アクセルペダル53の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ54からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル55の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ56からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ58からの車速V,車重センサ59からの車重Mなどが入力ポートを介して入力されている。なお、車重センサ59は、実施例では、車両本体の重量だけではなく、乗員の重量や,積載物があるときや牽引物があるときには積載物や牽引物重量も含めた総重量として車重Mを検出することができるものを用いるものとした。この車重センサ59は、例えば、駆動輪30a,30bに取り付けられ車両本体の重量や乗員の重量,積載物の重量を検出する図示しないセンサと、牽引物の重量を検出する図示しないセンサとを備え、2つのセンサからの信号に基づいて車重Mを検出するものを用いるものとすることができる。電子制御ユニット40からは、モータ22を駆動制御するためのインバータ24のスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。電子制御ユニット40は、ナビゲーションシステム60と通信ポートを介して接続されており、ナビゲーションシステム60とデータのやりとりを行なっている。
【0027】
次に、こうして構成された電気自動車20の動作について説明する。図2は実施例の電子制御ユニット40により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートであり、図3はナビゲーションシステム60により実行されるルート出力ルーチンの一例を示すフローチャートである。以下、まず、図2の駆動制御ルーチンについて説明し、その後、図3のルート出力ルーチンについて説明する。図2の駆動制御ルーチンは、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。
【0028】
駆動制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット40のCPU42は、まず、アクセルペダルポジションセンサ54からのアクセル開度Accや車速センサ58からの車速V,回転数センサ23からのモータ回転数Nm,温度センサ22aからのモータ温度tm,温度センサ26aからのバッテリ温度tb,バッテリ26の残容量SOCなど制御に必要なデータを入力する(ステップS100)。ここで、バッテリ26の残容量SOCは、図示しない電流センサにより検出されたバッテリ26に充放電される充放電電流Ibの積算値に基づいて演算されRAM46の所定アドレスに書き込まれたものを読み込むことにより入力するものとした。
【0029】
こうしてデータを入力すると、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動輪30a,30bに連結された駆動軸32に出力すべき要求トルクTd*を設定する(ステップS110)。ここで、要求トルクTd*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTd*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM44に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTd*を導出して設定するものとした。要求トルク設定用マップの一例を図4に示す。
【0030】
続いて、バッテリ26の残容量SOCとバッテリ温度tbとに基づいてバッテリ26の出力制限をWoutを設定すると共に(ステップS120)、設定した出力制限Woutをモータ回転数Nmで除することによりバッテリ26の出力制限Woutに対するモータ22のトルク制限Tmax1を設定する(ステップS130)。ここで、出力制限Woutは、実施例では、バッテリ温度tbに基づいて出力制限の基本値Wouttmpを設定すると共にバッテリ26の残容量SOCに基づいて補正係数kを設定し、設定した出力制限の基本値Wouttmpに補正係数kを乗じることにより設定するものとした。
【0031】
そして、モータ温度tmとモータ回転数Nmとに基づいてモータ22の温度上昇に対するモータ22のトルク制限Tmax2を設定する(ステップS140)。ここで、トルク制限Tmax2は、実施例では、モータ温度tmが所定温度tmref以下のときにはそのときのモータ回転数Nmにおける最大トルクを設定するものとし、モータ温度tmが所定温度tmrefより高いときにはそのときのモータ回転数Nmにおける最大トルクの50%や60%などの値を設定するものとした。したがって、所定温度tmrefは、そのときのモータ回転数Nmにおける最大トルクでモータ22を駆動できる上限温度近傍の値としてモータ22の温度特性などにより定められる。
【0032】
こうしてトルク制限Tmax1とトルク制限Tmax2とを設定すると、要求トルクTd*とトルク制限Tmax1とトルク制限Tmax2とのうち最小値をモータ22のトルク指令Tm*として設定し(ステップS150)、設定したトルク指令Tm*でモータ22が駆動されるようインバータ24のスイッチング素子のスイッチング制御を行なって(ステップS160)、駆動制御ルーチンを終了する。このようにモータ22のトルク指令Tm*を設定することにより、駆動軸32に出力すべき要求トルクTd*を、バッテリ26の出力制限Woutおよびモータ22の温度tmに基づいて制限したトルクとして設定することができる。これにより、例えば、温度tmが所定温度tmrefより高いときには、要求トルクTd*をそのときのモータ回転数Nmにおける最大トルクの50%や60%などに制限することにより、モータ22の過度の温度上昇を抑制することができる。なお、このときには、モータ22からの出力が制限されることにより、車速Vも制限されることになる。
【0033】
以上、駆動制御ルーチンについて説明した。次に、ナビゲーションシステム60の動作について説明する。図3は、ナビゲーションシステム60により実行されるルート出力ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、操作者により目的地が設定されたときに実行される。
【0034】
ルート出力ルーチンが実行されると、ナビゲーションシステム60は、まず、地図情報63を用いて所定の条件により車両の現在位置から目的地までの走行ルートを検索する(ステップS200)。ここで、所定の条件としては、例えば、幅員が所定値(例えば5m)以上のルートで法定速度を考慮して走行時間が短くなるよう走行ルートを検索する推奨すべき条件、できる限り有料道路を走行するよう走行ルートを検索する有料道路優先の条件、有料道路を一切走行せずに一般道路のみで走行ルートを検索する一般道路優先の条件、最も走行距離が短くなるよう走行ルートを検索する距離優先の条件、法定速度から最も走行時間が短くなるよう走行ルートを検索する時間優先の条件などがある。実施例では、これらの条件のうち操作者の選択した条件により走行ルートの検索を行なうものとした。
【0035】
こうして車両の現在位置から目的地までの走行ルートを検索すると(以下、この走行ルートをルート1という)、車重センサ59からの車重Mを入力すると共に(ステップS210)、温度上昇予測判定フラグF1および別ルート再検索判定フラグF2を共に値0にリセットする(ステップS220)。ここで、温度上昇予測判定フラグF1は、初期値として値0が設定されると共に車両が目的地に到達するまでにモータ温度tmが所定温度tmrefを超えるのが予測されたときに値1が設定されるフラグである。また、別ルート再検索判定フラグF2は、初期値として値0が設定されると共にルート1とは異なる別ルートが再検索されたときに値1が設定されるフラグである。温度上昇予測判定フラグF1および別ルート再検索判定フラグF2について、詳細は後述する。
【0036】
続いて、車両の現在位置から目的地までの走行ルートを抽出する処理を実行する(ステップS230)。この処理は、このルーチンが実行されてから初めて実行されるときには、検索したルート1を抽出する処理となる。そして、抽出した走行ルート上の各走行区間における車両の現在位置から目的地に向けての次の走行区間の路面勾配θを入力し(ステップS240)、入力した路面勾配θと車重Mとに基づいてモータ22の上昇温度Δtmを設定すると共に(ステップS250)、前回の温度積算値tmaddに上昇温度Δtmを加えることにより温度積算値tmaddを計算する(ステップS260)。ここで、上昇温度Δtmは、車重Mの状態の車両が路面勾配θの走行区間を走行するときに推定されるモータ22の温度変化であり、モータ22の温度特性やモータ22などを冷却する冷却系の性能などに基づいて設定することができる。この上昇温度Δtmは、実施例では、路面勾配θと車重Mと上昇温度Δtmとの関係を予め実験などにより定めて上昇温度設定用マップとしてROM44に記憶しておき、路面勾配θと車重Mとが与えられると記憶したマップから対応する上昇温度Δtmを導出して設定するものとした。上昇温度設定用マップの一例を図5に示す。上昇温度Δtmは、図示するように、路面勾配θが大きいほど大きくなる傾向に設定するものとした。これは、車両が登坂路を走行する際には、モータ22の負荷が大きくなり、その発熱量も大きくなるためである。また、上昇温度Δtmは、車重Mが大きいほど大きくなる傾向に設定するものとした。これは、積載物がなく牽引物もない状態の1名乗車時に比して積載物があるときや牽引物があるとき,複数名乗車時にはモータ22の負荷が大きくなり、その発熱量も大きくなるためである。温度積算値tmaddは、車両が対象の走行区間を走行している際のモータ温度tmに相当するものであり、その初期値は、このルーチンが実行される際に温度センサ22aにより検出されたモータ温度tmを電子制御ユニット40を介して通信により入力して用いるものとした。
【0037】
次に、計算した温度積算値tmaddを所定温度tmrefと比較する(ステップS270)。ここで、所定温度tmrefは、前述したように、そのときのモータ回転数Nmにおける最大トルクでモータ22を駆動できる上限温度近傍の値として設定される。したがって、ステップS270の温度積算値tmaddと所定温度tmrefとの比較は、モータ22からの出力が大きく制限される(車速Vが制限される)と予測されるか否かを判定するものである。温度積算値tmaddが所定温度tmref以下のときには、次の走行区間があるか否か、即ち抽出した経路において車両の現在位置から目的地までのすべての走行区間について処理を終了したか否かを判定し(ステップS310)、次の走行区間があると判定されたときには、ステップS240に戻る。こうして各走行区間を車両の現在位置から目的地に向けて順に温度積算値tmaddを計算すると共にこれを所定温度tmrefと比較していく。そして、次の走行間がない、即ち全ての走行区間について処理を終了したと判定されたときには、別ルート再検索判定フラグF2の値を調べ(ステップS320)、別ルート再検索判定フラグF2が値0のときには、温度上昇予測判定フラグF1の値を調べる(ステップS330)。いま、ルート1対して温度積算値tmaddが一度も所定値tmlimを越えることなく全ての走行区間について処理を終了したときを考えれば、温度上昇予測判定フラグF1および別ルート再検索判定フラグF2は共に値0であるから、ルート1を通常の表示方法(例えば、点灯表示)によりディスプレイ66に出力して(ステップS370)、ルート出力ルーチンを終了する。そして、ディスプレイ66に出力された走行ルート(ルート1)の経路案内を行なう。
【0038】
ステップS270で温度積算値tmaddが所定温度tmrefより大きいときには、別ルート再検索判定フラグF2の値を調べる(ステップS280)。ステップS230でルート1を抽出したときを考えれば、未だ別ルートの再検索は行なわれていないから、別ルート再検索判定フラグF2は値0であり、温度上昇予測判定フラグF2に値1を設定すると共に(ステップS290)、現在の走行区間を記憶する(ステップS300)。そして、次の走行区間があるか否かを判定し(ステップS310)、次の走行区間があると判定されたときにはステップS240に戻り、次の走行区間がないと判定されたときには、別ルート再検索判定フラグF2の値を調べ(ステップS320)、別ルート再検索判定フラグF2が値0のときには、温度上昇予測判定フラグF1の値を調べる(ステップS330)。いまルート1に対して温度積算値tmaddが閾値tmaddを越えた走行区間があるときを考えれば、温度上昇予測判定フラグF1は値1であるから、地図情報63を用いて現在位置から目的地までの別の走行ルート(以下、この走行ルートをルート2という)を再検索し(ステップS340)、別の走行ルート(ルート2)があると判定されたときには(ステップS350)、別ルート再検索判定フラグF2に値1を設定して(ステップS360)、ステップ230に戻る。
【0039】
そして、車両の現在位置から目的地までの走行ルート(ルート2)を抽出し(ステップS230)、次の走行区間の路面勾配θと車重Mとに基づく上昇温度Δtmを積算した温度積算値tmaddを所定温度tmrefと比較し(ステップS240〜S270)、温度積算値tmaddが閾値tmref未満のときには、次の走行区間があるか否かを判定し(ステップS310)、次の走行区間があると判定されたときにはステップS240に戻り、次の走行区間がないと判定されたときには別ルート再検索判定フラグF2の値を調べ(ステップS320)、いま別ルート再検索判定フラグF2に値1が設定されているときを考えているから、ステップS300で記憶した走行区間、即ち温度積算値tmaddが所定温度tmrefを越えた走行区間が他の走行区間の表示方法(例えば、点灯表示)とは異なる表示方法(例えば、点滅表示)で表示されるようルート1をディスプレイ66に出力すると共にルート2をディスプレイ66に出力して(ステップS380)、ルート出力ルーチンを終了する。いま、例えば、操作者が距離優先の条件を選択したときを考える。このとき、ルート1は最も走行距離が短いものの車両が目的地に到達するまでにモータ温度tmが所定温度tmrefを越える走行区間があると予測される走行ルートであり、ルート2はルート1よりも走行距離が長くなるもののモータ温度tmが所定温度tmrefを超える走行区間はないと予測される走行ルートである。したがって、両ルートを共にディスプレイ66に出力することにより、操作者は、走行距離は最も短いものの目的地に到達するまでの間にモータ22の温度上昇に対するモータ22のトルク制限Tmax2によりモータ22からの出力が大きく制限される(車速Vが制限される)可能性があるルート1と、ルート1より走行距離は長いもののトルク制限Tmax2によりモータ22からの出力が大きく制限される可能性が低いルート2とを選択して走行することができる。これにより、操作者の利便性をより向上させることができる。しかも、ルート1について、温度積算値tmaddが所定温度tmrefを超えた走行区間について他の走行区間の表示方法とは異なる表示方法によりディスプレイ66に出力するものとすれば、その走行区間を運転者に認識させることができる。こうしてルート1とルート2とを出力した状態で操作者によりルート1またはルート2が選択されたときには、選択されたルートをディスプレイ66に出力して経路案内を行なう。なお、操作者によりルート1またはルート2が選択されないときには、ルート1とルート2とを共にディスプレイ66に出力し続けるものとしてもよい。
【0040】
ステップS270で温度積算値tmaddが閾値tmref以上のときには、別ルート再検索判定フラグF2の値を調べ(ステップS280)、いま別ルート再検索判定フラグF2が値1のときを考えているから、ステップS340以降の処理を実行する。この場合、再検索した別の走行ルートをルート2として更新して同様の処理を行なうことになる。このようにして温度積算値tmaddのピークが所定温度tmref以下となる走行ルート(ルート2)を再検索するのである。なお、ステップS340で別の走行ルートを検索した結果、ステップS350で別の走行ルート(ルート2)がないと判定されたときには、ステップS300で記憶した走行区間、即ち温度積算値tmaddが所定温度tmrefを越えた走行区間が他の走行区間が他の走行区間の表示方法(例えば、点灯表示)とは異なる表示方法(例えば、点滅表示)で表示されるようルート1をディスプレイ66に出力して(ステップS390)、ルート出力ルーチンを終了する。そして、ディスプレイ66に出力された走行ルート(ルート1)の経路案内を行なう。
【0041】
図6は、車両の現在位置から目的地までの各走行区間の路面勾配θと車重Mとに基づいて計算される温度積算値tmadd(モータ温度tm)の変化の様子の一例を示す説明図である。図中、丸印は目的地を示す。また、実線はルート1に対する温度積算地tmaddの変化の様子を示し、破線はルート2に対する温度積算地tmaddの変化の様子を示す。操作者により目的地が設定されると、車両の現在位置から目的地までの走行ルートとしてルート1を検索すると共に検索したルート1を抽出し(ステップS200,S230)、抽出したルート1における各走行区間について路面勾配θと車重Mとに基づいて上昇温度Δtmを設定してこれを現在位置から目的地まで順に積算することにより温度積算値tmaddを計算する(ステップS240〜S260)。図6の例では、ルート1の走行区間x〜走行区間(x+i)で温度積算値tmaddが所定温度tmrefを越えるから、ルート1に対して目的地まで順に温度積算値tmaddを計算した後に目的地までの別のルートとしてルート2を再検索すると共に再検索したルート2を抽出して(ステップS340,S230)、ルート1と同様に、上昇温度Δtmを現在位置から目的地まで順に積算することにより温度積算値tmaddを計算し(ステップS240〜S260)、ルート2に対して現在位置から目的地までの温度積算値tmaddが所定温度tmrefを越えることがなければ、即ちルート2の温度積算値tmaddのピークが所定温度tmref以下であれば、ルート1およびルート2を共にディスプレイ66に出力する(ステップS380)。このとき、ルート1について、走行区間x〜走行区間(x+i)については点滅表示など他の走行区間の表示方法(例えば、点灯表示)とは異なる表示方法により表示する。このときのディスプレイ66に表示される表示内容の一例を図7に示す。図中、丸印は操作者が設定した目的地を示し、四角印は車両の現在位置を示す。また、図中、実線および点線の経路ABCDEはルート1であり、一点鎖線の経路ABFGHDEはルート2である。なお、ルート1中の点線の走行路BCは温度積算値tmaddが所定温度tmrefを越える走行区間である。このようにルート1とルート2とを共にディスプレイ66に表示している状態で操作者によりルート1とルート2とのうちいずれかのルートが選択されたときには、選択されたルートだけを表示する。
【0042】
以上説明した実施例の電気自動車20によれば、目的地が設定されたときには、地図情報63を用いて所定の条件により現在位置から目的地までの走行ルートを検索し、路面勾配θと車重Mとに基づいて走行ルートを車両が目的地に到達するまでにモータ温度tmが所定温度tmrefを越えて上昇するか否か、即ちモータ温度tmが所定温度tmrefを超えて上昇する走行区間があるか否かを予測するから、この予測を路面勾配θだけに基づいて予測するものに比してより適正に予測することができる。
【0043】
また、実施例の電気自動車20によれば、目的地が設定されたときに地図情報に基づいて所定の条件により検索した車両の現在位置から目的地までの走行ルート(ルート1)に対して車両が目的地に到達するまでにモータ温度tmが所定温度tmrefを越えるのが予測されたときには、車両が目的地に到達するまでモータ温度tmが所定温度tmrefを越えないと予測される走行ルート(ルート2)を再検索し、ルート1およびルート2を共にディスプレイ66に出力するから、操作者はルート1とルート2とのうちから選択することができ、操作者の利便性を向上させることができる。しかも、この場合、ルート1について、モータ温度tmが所定温度tmrefを越えるのが予測される走行区間については他の走行区間とは異なる表示方法によりディスプレイ66に出力することにより、その走行区間を運転者に認識させることができる。
【0044】
実施例の電気自動車20では、目的地が設定されたときに地図情報に基づいて所定の条件により検索した車両の現在位置から目的地までの走行ルート(ルート1)に対して車両が目的地に到達するまでにモータ温度tmが所定温度tmrefを越えるのが予測されたときには、車両が目的地に到達するまでモータ温度tmが所定温度tmrefを越えないと予測される走行ルート(ルート2)を再検索するものとしたが、再検索しないものとしてもよい。この場合、ルート1について、モータ温度tmが所定温度tmrefを越えるのが予測される走行区間については他の走行区間とは異なる表示方法によりディスプレイ66に出力させれば、その走行区間を運転者に認識させることができ、その走行区間を回避して走行するか否かの選択を行なう余地を運転者に与えることができる。
【0045】
実施例の電気自動車20では、車両が目的地に到達するまでにモータ温度tmが所定温度tmrefを越えて上昇するか否かの予測を、目的地が設定されたときにだけ行なうものとしたが、目的地が設定されている間に亘って所定タイミング毎、例えば、所定時間毎(例えば、数百msec毎)や車両が停車する毎に繰り返し行なうものとしてもよい。
【0046】
実施例の電気自動車20では、車両の現在位置から目的地までの各走行区間の路面勾配θと車重Mとに基づいて車両が目的地に到達するまでにモータ温度tm(温度積算値tmadd)が所定温度tmrefを越えるか否かを予測するものとしたが、モータ温度tmに代えて、インバータ24の温度や、モータ22やインバータ24を冷却する冷却水の温度などを用いて予測するものとしてもよい。
【0047】
実施例の電気自動車20では、路面勾配θと車重Mとに基づく上昇温度Δtmを用いて温度積算値tmを計算するものとしたが、上昇温度Δtmは、路面勾配θと車重Mとに加えてまたは車重Mに加えて、走行区間の距離や地域情報(市街地,郊外),種別情報(一般道路,高速道路),渋滞情報などを考慮して設定するものとしてもよい。
【0048】
実施例の電気自動車20では、ルート1を車両が目的地に到達するまでにモータ温度tmが所定温度tmrefを越えて上昇するのが予測されたときには、ルート1について、モータ温度tmが所定温度tmrefを越えるのが予測される走行区間について他の走行区間とは異なる表示方法によりディスプレイ66に出力するものとしたが、その走行間を運転者に認識させることができるものであれば、音声などにより運転者に報知するものとしてもよい。
【0049】
実施例では、駆動軸32に動力を入出力可能なモータ22と、モータ22と電力をやりとりするバッテリ26とを備える電気自動車20について説明したが、モータ22やバッテリ26に加えて、図8の変形例の電気自動車120に例示するように、駆動軸32に遊星歯車機構126を介してエンジン122とモータ124とを接続した電気自動車120に適用するものとしてもよいし、図9の変形例の電気自動車220に例示するように、エンジンと222と、エンジン222のクランクシャフトに接続されたインナーロータ232と駆動輪30a,30bに連結された駆動軸32に接続されたアウターロータ234とを有しエンジン222の動力の一部を駆動軸32に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230とを備える電気自動車220に適用するものとしてもよい。また、実施例では、動力源としてのモータ22からの動力により走行可能な電気自動車20について説明したが、動力源としての内燃機関からの動力により走行可能な自動車に適用するものとしてもよい。
【0050】
実施例では、内燃機関や電動機など動力源からの動力を用いて走行可能であり、経路案内システムを備える自動車について説明したが、動力源からの動力を用いて走行可能な車両に搭載される経路案内システムの形態として用いるものとしてもよい。
【0051】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例の電子制御ユニット40により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】ルート出力ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】上昇温度設定用マップの一例を示す説明図である。
【図6】車両の現在位置から目的地までの各走行区間の路面勾配θと車重Mとに基づいて計算される温度積算値tmadd(モータ温度tm)の変化の様子の一例を示す説明図である。
【図7】ディスプレイ66に表示される表示内容の一例を示す説明図である。
【図8】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図9】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0053】
20 電気自動車、22 モータ、22a 温度センサ、23 回転数センサ、24 インバータ、26 バッテリ、26a 温度センサ、30a,30b 駆動輪、31 デファレンシャルギヤ、32 駆動軸、40 電子制御ユニット、42 CPU、44 ROM、46 RAM、51 シフトレバー、52 シフトポジションセンサ、53 アクセルペダル、54 アクセルペダルポジションセンサ、55 ブレーキペダル、56 ブレーキペダルポジションセンサ、58 車速センサ、59 車重センサ、60 ナビゲーションシステム、61 本体、63 地図情報、65 GPSアンテナ、66 ディスプレイ、120,220 ハイブリッド自動車、122,222 エンジン、124 モータ、126 遊星歯車機構、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ、234 アウターロータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源からの動力により走行可能な車両に搭載され、該動力源を含む動力系の温度が所定温度を超えて上昇するか否かを予測する温度上昇予測装置であって、
道路に関する情報を含む地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、
車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
目的地が設定されたとき、前記記憶された地図情報を用いて所定の条件により前記検出された車両の現在位置から該目的地までの走行路として第1走行路を検索する走行路検索手段と、
前記車両の重量を検出する重量検出手段と、
前記記憶された地図情報と前記検出された車両の重量とに基づいて前記検索された第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を超えて上昇するか否かを予測する温度上昇予測手段と、
を備える温度上昇予測装置。
【請求項2】
前記温度上昇予測手段は、前記記憶された地図情報のうちの路面勾配に関する情報と前記検出された車両の重量とに基づいて予測する手段である請求項1記載の温度上昇予測装置。
【請求項3】
走行路の経路案内を行なう経路案内システムであって、
請求項1または2記載の温度上昇予測装置と、
前記温度上昇予測手段により前記検索された第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を越えて上昇するのが予測されたとき、該温度上昇予測手段により該車両が該目的地に到達するまでに該動力系の温度が該所定温度を超えて上昇しないのが予測される前記検出された車両の現在位置から該目的地までの走行路としての第2走行路を前記記憶された地図情報を用いて再検索する走行路再検索手段と、
前記検索された第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を超えて上昇しないのが予測されたときには該第1走行路を出力し、前記検索された第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を超えて上昇するのが予測されたときには該第1走行路と前記再検索された第2走行路とを選択可能に出力する走行路出力手段と、
前記出力された走行路に基づいて経路案内を行なう経路案内手段と、
を備える経路案内システム。
【請求項4】
前記経路案内手段は、前記第1走行路が出力されたときには該第1走行路の経路案内を行ない、前記第1走行路と前記第2走行路とが選択可能に出力されたときには該第1走行路と該第2走行路とのうち操作者により選択された走行路の経路案内を行なう手段である請求項3記載の経路案内システム。
【請求項5】
前記走行路出力手段は、前記目的地までの走行路を表示する表示手段を備え、前記検索された第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を超えて上昇するのが予測されたときには、該第1走行路のうち該動力系の温度が前記所定温度を越えて上昇しないのが予測される走行区間を第1表示形式により該表示手段に表示すると共に該第1走行路のうち該動力系の温度が前記所定温度を越えて上昇するのが予測される走行区間を該第1表示形式とは異なる第2表示形式により前記表示手段に表示し、前記再検索された第2走行路を該第1表示形式により表示する手段である請求項3または4記載の経路案内システム。
【請求項6】
動力源からの動力により走行可能な車両であって、
請求項3ないし5いずれか記載の経路案内システムと、
前記動力系の温度を検出する温度検出手段と、
前記検出された温度が前記所定温度以上のとき、前記動力源から出力される動力を制限する動力制限手段と、
を備える車両。
【請求項7】
前記動力源は、電動機である請求項6記載の車両。
【請求項8】
前記動力源は、内燃機関と、該内燃機関と車軸側とに接続され電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該車軸側に出力する電力動力入出力手段と、前記車軸側に動力を入出力可能な電動機と、を備えるものである請求項6記載の車両。
【請求項9】
動力源からの動力により走行可能な車両に搭載され、該動力源を含む動力系の温度が所定温度を超えて上昇するか否かを予測する温度上昇予測方法であって、
(a)目的地が設定されたとき、道路に関する情報を含む地図情報を用いて所定の条件により前記車両の現在位置から該目的地までの走行路として第1走行路を検索し、
(b)前記地図情報と前記車両の重量とに基づいて前記検索された第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を超えて上昇するか否かを予測する、
ことを特徴とする温度上昇予測方法。
【請求項10】
動力源からの動力により走行可能な車両に搭載され、走行路の経路案内を行なう経路案内方法であって、
(a)目的地が設定されたとき、道路に関する情報を含む地図情報を用いて所定の条件により前記車両の現在位置から該目的地までの走行路として第1走行路を検索し、
(b)前記地図情報と前記車両の重量とに基づいて前記第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力源を含む動力系の温度が前記所定温度を超えて上昇するか否かを予測し、
(c)前記第1走行路を前記車両が前記目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を越えて上昇するのが予測されたときには、該車両が該目的地に到達するまでに該動力系の温度が該所定温度を超えて上昇しないのが予測される該車両の現在位置から該目的地までの走行路としての第2走行路を前記地図情報を用いて再検索し、
(d)前記検索された第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を超えて上昇しないのが予測されたときには該第1走行路を出力し、前記検索された第1走行路を前記車両が前記設定された目的地に到達するまでに前記動力系の温度が前記所定温度を超えて上昇するのが予測されたときには該第1走行路と前記再検索された第2走行路とを選択可能に出力し、
(e)前記出力された走行路に基づいて経路案内を行なう
経路案内方法。
【請求項11】
動力源からの動力により走行可能な車両に搭載され、該動力源を含む動力系の熱負荷を予測する熱負荷予測装置であって、
道路に関する情報を含む地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、
車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
目的地が設定されたとき、前記記憶された地図情報を用いて所定の条件により前記検出された車両の現在位置から該目的地までの走行路として第1走行路を検索する走行路検索手段と、
前記車両の重量を検出する重量検出手段と、
前記記憶された地図情報と前記検出された車両の重量とに基づいて前記検索された第1走行路を走行して前記車両が前記設定された目的地に到達するまでの前記動力系の熱負荷を予測する熱負荷予測手段と、
を備える熱負荷予測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−183205(P2007−183205A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2359(P2006−2359)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】