説明

炭化珪素基板、エピタキシャル層付き基板、半導体装置および炭化珪素基板の製造方法

【課題】オン抵抗の低減を図ることが可能な炭化珪素基板、エピタキシャル層付き基板、半導体装置および炭化珪素基板の製造方法を提供する。
【解決手段】炭化珪素基板10は、主表面を有する炭化珪素基板10であって、主表面の少なくとも一部に形成されたSiC単結晶基板1と、SiC単結晶基板1の周囲を囲むように配置されたベース部材20とを備える。ベース部材20は、境界領域11と下地領域12とを含む。境界領域11は、主表面に沿った方向においてSiC単結晶基板1に隣接し、内部に結晶粒界を有する。下地領域12は、主表面に対して垂直な方向においてSiC単結晶基板1に隣接し、SiC単結晶基板1における不純物濃度より高い不純物濃度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素基板、エピタキシャル層付き基板、半導体装置および炭化珪素基板の製造方法に関し、より特定的には、オン抵抗の低減が可能な炭化珪素基板、エピタキシャル層付き基板、半導体装置および炭化珪素基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化珪素(SiC)基板を用いた半導体装置が提案されている(たとえば、特開2007−141950号公報(特許文献1)および米国特許第6803243号明細書(特許文献2)参照)。たとえば、特開2007−141950号公報では、縦型の半導体装置において、炭化珪素基板の裏面側に非熱処理型のオーミック電極を形成している。また、米国特許第6803243号明細書においては、炭化珪素基板の表面にイオン注入を行なってから活性化アニールを実施し、その後当該イオン注入を行なった炭化珪素基板の表面にオーミック電極を形成する技術が開示されている。上述した文献では、炭化珪素基板において低抵抗なオーミックコンタクトを実現し、結果的に半導体装置のオン抵抗の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−141950号公報
【特許文献2】米国特許第6803243号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の半導体装置では、以下のような問題があった。すなわち、上述した従来の半導体装置では、炭化珪素基板に形成されたオーミック電極について接触抵抗を低減することで、結果的にオン抵抗の低減を図っているが、炭化珪素基板自体の抵抗を低減する対策が特になされていない。そのため、半導体装置(特に縦型の半導体装置)におけるオン抵抗を十分に低減することが難しかった。このような電気抵抗が相対的に大きな炭化珪素基板については、デバイスを作成した後に当該炭化珪素基板を研削して除去する、という対応も考えられるが、この場合、表面を保護して、裏面を削る必要があり、工程が複雑になる。また、研削後の炭化珪素基板表面にオーミック電極を形成する場合、すでにデバイスが形成されていることから熱処理などの温度に制限があり、当該オーミック電極を形成することが難しいという問題もあった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、オン抵抗の低減を図ることが可能な炭化珪素基板、エピタキシャル層付き基板、半導体装置および炭化珪素基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った炭化珪素基板は、主表面を有する炭化珪素基板であって、主表面の少なくとも一部に形成された単結晶部材と、単結晶部材の周囲を囲むように配置されたベース部材とを備える。ベース部材は、境界領域と下地領域とを含む。境界領域は、主表面に沿った方向において単結晶部材に隣接し、内部に結晶粒界を有する。下地領域は、主表面に対して垂直な方向において単結晶部材に隣接し、単結晶領域における不純物濃度より高い不純物濃度を有する。
【0007】
このようにすれば、炭化珪素基板の主表面には単結晶部材が配置されているため、当該主表面上に、良好な膜質の炭化珪素からなるエピタキシャル層を容易に形成することができる。一方で、当該炭化珪素基板を用いてたとえば縦型半導体装置を形成する場合、オン抵抗を低減するため炭化珪素基板の導電率を大きくする必要がある。そのため、単結晶部材における不純物濃度より高い不純物濃度を有する下地領域を配置することで、炭化珪素基板の厚み方向での(縦方向での)導電率を大きくできる(電気抵抗値を小さくできる)。このため、当該炭化珪素基板を用いた半導体装置における縦方向でのオン抵抗を低減することができる。
【0008】
また、炭化珪素基板の主表面上には基本的に高品位のエピタキシャル膜を形成するため、欠陥密度の低い(結晶性に優れた)単結晶部材を用いる。一方、ベース部材は主表面において一部(境界領域)しか露出しないため、欠陥密度などの満足すべきレベルは単結晶部材より低くしてもよい。このため、ベース部材として、欠陥の生成などに制限されることなく導電性不純物を高濃度でドープした(導電性を高めた)材料を用いることができる。さらに、このようなベース部材を、炭化珪素基板の機械的強度を維持するための補強部材としても利用できる。また、不純物濃度の高いベース部材には、容易にオーミック電極を形成することができる。
【0009】
また、上記のようなベース部材としては、上述のように結晶性についての要求レベルは高くはないため、ベース部材として低品位の(結晶性に劣る)材料(炭化珪素材料)を用いることができるので、炭化珪素基板全体を単結晶部材のような高品位の材料で構成する場合より、炭化珪素基板の製造コストを低減することができる。
【0010】
この発明に従ったエピタキシャル層付き基板は、上記炭化珪素基板と、当該炭化珪素基板の主表面上に形成された炭化珪素からなるエピタキシャル層とを備える。また、エピタキシャル層の不純物濃度は、単結晶部材における不純物濃度より低いことが好ましい。この場合、エピタキシャル層として結晶性の高い(欠陥の少ない)炭化珪素を用いることで、当該エピタキシャル層を利用して高品質の半導体装置を容易に製造できる。
【0011】
この発明に従った半導体装置は、上記炭化珪素基板を用いて構成されている。この場合、たとえば縦型の半導体装置を形成した場合には、炭化珪素基板の厚み方向における導電性を十分確保できることから、オン抵抗の低減された半導体装置を実現できる。
【0012】
この発明に従った炭化珪素基板の製造方法では、まず炭化珪素からなり、主面を有する単結晶部材を準備する工程を実施する。そして、単結晶部材の主面と、当該主面と連なり主面と交差する方向に延びる端面とを覆うように、単結晶部材より不純物濃度の高い炭化珪素からなるベース部材を形成する工程を実施する。次に、単結晶部材の主面と反対側から、単結晶部材とベース部材とを部分的に除去することにより、少なくとも単結晶部材の表面を平坦化する工程を実施する。
【0013】
このようにすれば、本発明による炭化珪素基板を容易に製造することができる。また、ベース部材として単結晶部材より結晶性の低い(たとえば欠陥密度の高い)材料(炭化珪素)を用いることができるので、炭化珪素基板の全体を、上述した単結晶部材のような高品質な炭化珪素により構成する場合より低コストで炭化珪素基板を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によればオン抵抗を低減することが可能な炭化珪素基板、エピタキシャル層付き基板、半導体装置および炭化珪素基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による炭化珪素基板を示す断面模式図である。
【図2】図1に示した炭化珪素基板の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】図2に示したフローチャートを説明するための模式図である。
【図4】図2に示したフローチャートを説明するための模式図である。
【図5】図2に示したフローチャートを説明するための模式図である。
【図6】図2に示したフローチャートを説明するための模式図である。
【図7】図2に示したフローチャートを説明するための模式図である。
【図8】図2に示したフローチャートを説明するための模式図である。
【図9】図1に示した炭化珪素基板を用いた半導体装置の例を示す断面模式図である。
【図10】図9に示した半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【図11】図9に示した半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【図12】図9に示した半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【図13】本発明による炭化珪素基板を用いた半導体装置の他の例を示す断面模式図である。
【図14】図1に示した本発明による炭化珪素基板の実施の形態1の変形例を示す断面模式図である。
【図15】図14に示した炭化珪素基板の製造方法を説明するための模式図である。
【図16】図14に示した炭化珪素基板の製造方法を説明するための模式図である。
【図17】本発明による炭化珪素基板の実施の形態2を示す断面模式図である。
【図18】本発明によるエピタキシャル層付き基板を示す断面模式図である。
【図19】図18に示したエピタキシャル層付き基板の変形例を示す断面模式図である。
【図20】図18に示したエピタキシャル層付き基板の変形例を示す断面模式図である。
【図21】本発明による炭化珪素基板の実施の形態4を示す断面模式図である。
【図22】本発明による半導体装置の実施例についてのドレイン電圧とドレイン電流との関係を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分については同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0017】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明による炭化珪素基板の実施の形態1を説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明による炭化珪素基板10は、単結晶部材としてのSiC単結晶基板1と、支持基材としてのベース部材20とからなる複合基板である。平面形状が円形状である炭化珪素基板10には、図1に示すように複数のSiC単結晶基板1が一方の主表面に露出するように配置されている。これらのSiC単結晶基板1は互いに間隔を隔てて配置されている。SiC単結晶基板は、たとえば(0−33−8)面を主面とする。そして、SiC単結晶基板1の間の空間を充填するとともに、SiC単結晶基板1の下面を覆うように、SiCからなるベース部材20が配置されている。異なる観点から言えば、ベース部材20の一方の主表面において、互いに間隔を隔ててSiC単結晶基板が複数個配置された(表面の一部が露出するように埋設された)状態となっている。SiC単結晶基板1の間におけるベース部材20の部分は、内部に結晶粒界を有する多結晶領域である境界領域11となっている。また、SiC単結晶基板1の下に位置するベース部材20の部分は単結晶からなる下地領域12となっている。下地領域12の不純物濃度は、SiC単結晶基板1の不純物濃度より高くなっている。なお、境界領域11の幅(炭化珪素基板10の主表面に沿った方向における幅)は、1μm以上、より好ましくは10μm以上1000μm以下とすることができる。このような数値範囲の決定理由は、以下のようなものである。すなわち、この境界領域11により欠陥の伝搬を抑制するため、伝搬する可能性がある転位のサイズから考えれば充分な大きなサイズである1μm以上が境界領域11の幅には必要である。一方、境界領域11はデバイス特性が得られない部分であるため、境界領域11の幅は1000μm以下であることが望ましい。
【0019】
このようにすれば、炭化珪素基板10の主表面にはSiC単結晶基板1が配置されているため、当該主表面上に、良好な膜質の炭化珪素からなるエピタキシャル層を容易に形成することができる。一方、下地領域12の不純物濃度は相対的に高くなっているため、炭化珪素基板10の厚み方向での(縦方向での)導電率を大きくできる(電気抵抗値を小さくできる)。このため、当該炭化珪素基板10を用いた半導体装置における縦方向でのオン抵抗を低減することができる。
【0020】
また、ベース部材20および境界領域11としては、SiC単結晶基板1より結晶性の低い(転位密度の高い)炭化珪素を用いることができるので、低コストで炭化珪素基板10を製造することができる。さらに、このようなベース部材20および境界領域11を、炭化珪素基板10の機械的強度を維持するための補強部材としても利用でき、さらに反り低減の効果もある。また、不純物濃度の高いベース部材20には、容易にオーミック電極を形成することができる。
【0021】
また、複数のSiC単結晶基板1がベース部材20の表面に間隔を隔てて配置されているので、SiC単結晶基板1内を伝搬する転位が上記境界領域11で吸収され、当該転位が炭化珪素基板10全体にわたって伝搬することを抑制できる。
【0022】
また、炭化珪素基板10では、境界領域11における不純物濃度は、SiC単結晶基板1における不純物濃度より高くなっていてもよい。この場合、SiC単結晶基板1の内部を伝搬する転移(たとえば基底面転移)を当該境界領域11でより効果的に吸収することができる。このため、当該転位が炭化珪素基板10全体に渡って伝搬することによる炭化珪素基板10の反りの発生を抑制できる。
【0023】
図2〜図8を参照して、図1に示した炭化珪素基板の製造方法を説明する。
図2に示すように、まず単結晶部材を準備する工程(S10)を実施する。具体的には、タイル基板としての単結晶部材であるSiC単結晶基板1(図1参照)を複数個準備する。これらのSiC単結晶基板1は、主面の結晶方位が揃っていることが好ましい。また、SiC単結晶基板1の主面の平面形状は任意の形状とすることができるが、たとえば四角形状や円形状としてもよい。
【0024】
次に、図2に示すように、ベース部材を形成する工程(S20)を実施する。具体的には、昇華法を用いて、炭化珪素からなるベース部材20(図5参照)を複数のSiC単結晶基板1の裏面側に形成する。この工程(S20)を、図3〜図5を参照してより詳しく説明する。
【0025】
工程(S20)においては、図3に示したような処理装置を用いる。図3を参照して、処理装置の一例である熱処理装置30は、チャンバ31と、当該チャンバ31の内部に積層するように配置されたベース円盤32と、このベース円盤32の間において、対向するように配置されたSiC単結晶基板1およびSiC体37の複数の組と、このベース円盤32の下方および側方を囲むように配置されたメインヒータ33および補助ヒータ34とを備える。ベース円盤32の平面形状は円形状であってもよい。このベース円盤32の上部表面には、所定の平面形状(たとえば円形状)の凹部が複数個形成されている。当該凹部の内部には炭素円盤35が配置されている。図4に示すように、炭素円盤35にの上部表面には、SiC単結晶基板1を配置するための、位置決め用の凹部が形成されている。この凹部の内部にSiC単結晶基板1が配置される。なお、図4および図5では、炭素円盤35からSiC単結晶基板1の一部がはみ出るように配置されている。そのため、ベース円盤32において炭素円盤35を配置するための凹部では、その外周部において当該SiC単結晶基板1の一部を保持するための他の凹部が形成されている。
【0026】
そして、炭素円盤35の上に所定の間隔を隔てて並べて配置された複数のSiC単結晶基板1の外周を覆うように、平面形状が円形状の筒状体36を配置する。この筒状体の上端における内周側には溝が形成されている。そして、この溝に嵌め込まれた状態で、SiC体37が配置されている。SiC体37の表面は被覆膜38によって覆われている。この被覆膜38は、後述する昇華工程においてSiC体37から昇華した炭化珪素が筒状体36の外部へ散逸することを防ぐために形成されている。
【0027】
このSiC体37から昇華法によりSiC単結晶基板1の表面を覆うようにベース部材20(図5参照)が形成される。具体的には、チャンバ31の内部を所定の雰囲気とした状態で、メインヒータ33および補助ヒータ34により装置全体(特にSiC体37)を加熱する。この結果、SiC体37から昇華した炭化珪素が、SiC体37と対向配置されたSiC単結晶基板1上に析出し、図5に示すように炭化珪素からなるベース部材20となる。このようにして、図5に示すように、複数のSiC単結晶基板1を繋ぐベース部材20が形成される。
【0028】
次に、図2に示すように後処理工程(S30)を実施する。具体的には、図6に示すように、上述した熱処理装置30(図3参照)から、SiC単結晶基板1とベース部材20と炭素円盤35との複合体を取出し、まずベース部材20の表面(SiC単結晶基板1と対向する側とは反対側の表面)を平坦化する。たとえば、図6に示すように、炭素円盤35の表面がステージ41と対向するように、当該複合体をステージ41上に配置する。そして、砥石42によってベース部材20の表面を研削することにより平坦化する。この結果、ベース部材の表面21は図7に示すように平坦な形状となる。
【0029】
この後、図8に示すように、ベース部材20の表面がステージ41と接触するように複合体を配置した上で、炭素円盤35を砥石42により研削することによって除去する。このとき、SiC単結晶基板1の表面と、隣接するSiC単結晶基板1の間に位置するベース部材20の一部とが、研削により除去される。その後、ベース部材20からステージ41を除去する。この結果、図1に示すように、平坦な主表面を有する炭化珪素基板10を得ることができる。
【0030】
次に、図9を参照して、本発明による半導体装置を説明する。
図9を参照して、本発明による半導体装置はショットキーバリアダイオード(SBD)であり、ベース部材20とSiC単結晶基板1とからなる炭化珪素基板10と、当該炭化珪素基板10上に形成された炭化珪素からなるエピタキシャル層51と、エピタキシャル層51の主表面上に形成されたショットキー電極52と、炭化珪素基板10の裏面側(エピタキシャル層51が形成された主表面とは反対側の表面)に形成されたオーミック電極55とを備える。オーミック電極55は、炭化珪素基板10の裏面全体を覆うように形成されている。一方、ショットキー電極52は、エピタキシャル層51の表面の一部を覆うように形成されている。たとえば、ショットキー電極52の平面形状を円形状としてもよい。
【0031】
そして、ショットキー電極52の表面の一部を露出させる開口部が形成された保護膜53が、エピタキシャル層51の表面上に形成されている。当該開口部の平面形状は円形状や四角形状など任意の形状とすることができる。保護膜53の開口部を介して、ショットキー電極52と接続するとともに、当該開口部の内部から保護膜53の上部表面上にまで延在するパッド電極54が形成されている。
【0032】
このような半導体装置では、本発明による炭化珪素基板10を用いているので、当該炭化珪素基板10での縦方向(厚み方向)での導電性を高めることができる。そのため、半導体装置のオン抵抗を低減することができる。
【0033】
次に、図10〜図12を参照して、図9に示した半導体装置の製造方法を説明する。
まず、図2に示した炭化珪素基板の製造方法を実施することにより、本発明による炭化珪素基板10を準備する。その後、図10に示すように、炭化珪素基板10の主表面上(SiC単結晶基板1が露出している主表面上)に、炭化珪素からなるエピタキシャル層51を形成する。
【0034】
次に、図11に示すように、エピタキシャル層51に対して導電性不純物を矢印56に示す方向からイオン注入する。イオン注入の条件としては、任意の条件を用いることができる。なお、エピタキシャル層51を形成するときに、当該エピタキシャル層51に所定の不純物を含有させることができる場合や、エピタキシャル層51を形成した後に当該エピタキシャル層51の不純物濃度を調整する必要がない場合には、上述したイオン注入工程は実施しなくてもよい。
【0035】
その後、図12に示すように、電極形成工程を実施する。具体的には、エピタキシャル層51の表面上にショットキー電極となるべき導電体層57を形成する。また、炭化珪素基板10の裏面上には、オーミック電極55を形成する。この後、リソグラフィ法などを用いて導電体層57を部分的に除去することにより、ショットキー電極52を形成する。なお、ショットキー電極52を形成する方法としては、いわゆるリフトオフ法を用いてもよい。具体的には、たとえばエピタキシャル層51上に、ショットキー電極52が形成されるべき部分に開口パターンを有するレジスト膜を形成する。そして、当該レジスト膜上および開口パターン内部にショットキー電極となるべき導電体膜を形成した後、レジスト膜およびレジスト膜上に形成された導電体膜の一部を除去する。この結果、受容器開口パターンの内部に位置していた上記導電体膜により、ショットキー電極が構成される。
【0036】
この後、上述のような構造を有する炭化珪素基板を個々のチップにダイシングなどによって分割することにより、図9に示したショットキーバリアダイオードである半導体装置を得ることができる。
【0037】
次に、図13を参照して、本発明による半導体装置の他の例を説明する。
図13を参照して、本発明による半導体の他の例は、縦型DiMOSFET(Double Implanted MOSFET)であって、炭化珪素基板10、耐圧保持層61、p領域62、n+領域63、ゲート絶縁膜64、ゲート電極65、絶縁膜66、ソース電極67およびドレイン電極68を備える。具体的には、たとえば導電型がn型のSiC単結晶基板1と、ベース部材20とからなる炭化珪素基板10の主表面上に、炭化珪素からなる耐圧保持層61が形成されている。この耐圧保持層61の表面には、導電型がp型であるp領域62が互いに間隔を隔てて形成されている。p領域62の内部においては、p領域62の表面層にn+領域63が形成されている。
【0038】
一方のp領域62におけるn+領域63上から、p領域62、2つのp領域62の間において露出する耐圧保持層61、他方のp領域62および当該他方のp領域62におけるn+領域63上にまで延在するように、酸化膜からなるゲート絶縁膜64が形成されている。ゲート絶縁膜64上にはゲート電極65が形成されている。このゲート電極65の端面および上部表面を覆うように絶縁膜66が形成されている。そして、n+領域63およびp領域62の一部と接続されるとともに、上記絶縁膜66を覆うようにソース電極67が形成されている。そして、炭化珪素基板10において耐圧保持層61が形成された側の表面とは反対側の面である裏面にドレイン電極68が形成されている。
【0039】
上述した図13に示した半導体装置は、本発明による炭化珪素基板10が用いられている。そして、炭化珪素基板10では、エピタキシャル層である耐圧保持層61を形成する側にはSiC単結晶基板1を配置する一方、裏面側には不純物濃度の高い(導電性の高い)ベース部材20を配置している。このため、図13に示した半導体装置は、炭化珪素基板10での厚み方向での導電性が向上されているため、結果的にオン抵抗が低減された半導体装置となっている。
【0040】
次に、図13に示した半導体装置の製造方法を簡単に説明する。
まず、図2などに示した炭化珪素基板の製造方法を用いて、図1に示した本発明による炭化珪素基板10を準備する。なお、炭化珪素基板10に含まれるSiC単結晶基板1としては、たとえば導電型がn型であり、基板抵抗が0.02Ωcmといった基板を用いてもよい。
【0041】
次に、エピタキシャル層を形成する工程を実施する。具体的には、炭化珪素基板10においてSiC単結晶基板1が形成された側の主表面上に耐圧保持層61を形成する。この耐圧保持層61としては、導電型がn型の炭化珪素からなる層をエピタキシャル成長法によって形成する。この耐圧保持層61の厚みとしては、たとえば15μmといった値を用いることができる。また、この耐圧保持層61におけるn型の導電性不純物の濃度としては、たとえば7.5×1015cm−3といった値を用いることができる。
【0042】
なお、耐圧保持層61と炭化珪素基板10との間に、バッファ層を形成してもよい。当該バッファ層としては、たとえば導電型がn型の炭化珪素からなり、たとえばその厚みが0.5μmのエピタキシャル層を形成してもよい。バッファ層における導電型不純物の濃度は、たとえば5×1017cm−3といった値を用いることができる。
【0043】
次に、半導体素子の構造を形成する工程を実施する。具体的には、まず注入工程を実施する。より具体的には、フォトリソグラフィおよびエッチングを用いて形成した酸化膜をマスクとして用いて、導電型がp型の不純物を耐圧保持層61に注入することにより、p領域62を形成する。また、用いた酸化膜を除去した後、再度新たなパターンを有する酸化膜を、フォトリソグラフィおよびエッチングを用いて形成する。そして、当該酸化膜をマスクとして、n型の導電性不純物を所定の領域に注入することにより、n+領域63を形成する。
【0044】
このような注入工程の後、活性化アニール処理を行なう。この活性化アニール処理としては、たとえばアルゴンガスを雰囲気ガスとして用いて、加熱温度1700℃、加熱時間30分といった条件を用いることができる。
【0045】
次に、ゲート絶縁膜形成工程を実施する。具体的には、耐圧保持層61、p領域62、n+領域62上を覆うように酸化膜からなるゲート絶縁膜64を形成する。このゲート絶縁膜64を形成するための条件としては、たとえばドライ酸化(熱酸化)を行なってもよい。このドライ酸化の条件としては、加熱温度を1200℃、加熱時間を30分といった条件を用いることができる。
【0046】
その後、窒素アニール工程を実施する。具体的には、雰囲気ガスを一酸化窒素(NO)として、アニール処理を行なう。アニール処理の温度条件としては、たとえば加熱温度を1100℃、加熱時間を120分とする。この結果、ゲート絶縁膜64と下層の耐圧保持層61、p領域62、n+領域63との間の界面近傍に窒素原子が導入される。また、この一酸化窒素を雰囲気ガスとして用いたアニール工程の後、さらに不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスを用いたアニールを行なってもよい。具体的には、アルゴンガスを雰囲気ガスとして用いて、加熱温度を1300℃、加熱時間を60分といった条件を用いてもよい。
【0047】
次に、電極形成工程を実施する。具体的には、ゲート絶縁膜64上にリフトオフ法を用いてゲート電極65を形成する。そして、ゲート電極65の上部表面および側面を覆う絶縁膜を形成する。さらに、絶縁膜66上にフォトリソグラフィ法を用いてパターンを有するレジスト膜を形成する。当該レジスト膜をマスクとして用いて、n+領域63上に位置するゲート絶縁膜64および絶縁膜の部分をエッチングにより除去する。この結果、ゲート電極65の上部表面および側面を覆う絶縁膜66が形成されるとともに、n+領域63およびp領域62の上部表面の一部が露出する。
【0048】
そして、n+領域63およびp領域62の露出した部分と接続されるソース電極67を、たとえばリフトオフ法を用いて形成する。なお、ソース電極67としては、たとえばニッケル(Ni)を用いることができる。なお、ここでアロイ化のための熱処理を行なうことが好ましい。具体的には、たとえば雰囲気ガスとして不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスを用い、加熱温度を950℃、加熱時間を2分といった熱処理(アロイ化処理)を行なう。その後、炭化珪素基板10の裏面側にドレイン電極68を形成する。このようにして、図13に示す半導体装置を得ることができる。つまり、半導体装置は、炭化珪素基板10の主表面上にエピタキシャル層および電極を形成することにより作製される。
【0049】
なお、上述した半導体装置においては、(0−33−8)面を主面とするSiC単結晶基板1上に動作層として機能するエピタキシャル層を形成して半導体装置が作製される場合について説明したが、上記主面として採用可能な結晶面はこれに限られず、(0001)面を含めて用途に応じた任意の結晶面を上記主面として採用することができる。
【0050】
次に、図14を参照して、本発明による炭化珪素基板の実施の形態1の変形例を説明する。
【0051】
図14に示した炭化珪素基板10は、基本的には図1に示した炭化珪素基板10と同様の構造を備えるが、SiC単結晶基板1の端部の構造が異なっている。具体的には、図14に示すように、複数のSiC単結晶基板1の端面13は、炭化珪素基板10の主表面に対して傾斜した端面となっている。このようにすれば、図1に示した炭化珪素基板と同様の効果を得られるとともに、炭化珪素基板10の主表面におけるSiC単結晶基板1の専有面積をより大きくすることができる。
【0052】
次に、図15および図16を参照して、図14に示した炭化珪素基板の製造方法を説明する。なお、図15および図16はそれぞれ図4および図5に対応する。
【0053】
図14に示した炭化珪素基板の製造方法は、基本的には図1に示した炭化珪素基板の製造方法と同様であるが、単結晶部材を準備する工程(S10)において準備するSiC単結晶基板1の形状が異なっている。具体的には、工程(S10)において準備するSiC単結晶基板1は、図15に示すようにその端面が傾斜した基板となっている。そして、このように端面の傾斜したSiC単結晶基板1を、図15に示すように熱処理装置の炭素円盤35上の凹部内に配置する。このとき、相対的に面積が広くなっているSiC単結晶基板1の主面側が炭素円盤35に接触するように、SiC単結晶基板1を配置する。なお、図15および図16に示した構造を含む熱処理装置の他の部分の構成は、図4に示した熱処理装置の構成と同様である。この後、図2に示した炭化珪素基板の製造方法と同様に熱処理装置における熱処理を実施することにより、SiC体37から昇華した炭化珪素をSiC単結晶基板1上に析出する。この結果、図16に示すように、SiC単結晶基板1の上に炭化珪素からなるベース部材20を形成することができる。
【0054】
この後、図2に示した後処理工程(S30)を実施することにより、図14に示した炭化珪素基板を得ることができる。
【0055】
(実施の形態2)
図17を参照して本発明による炭化珪素基板の実施の形態2を説明する。
【0056】
図17を参照して、本発明による炭化珪素基板10は、基本的には図1に示した炭化珪素基板10と同様の構造を備えるが、炭化珪素基板10に1つのSiC単結晶基板1が含まれているという点が、複数のSiC単結晶基板1を含む図1に示した炭化珪素基板10とは異なっている。このようにしても、図1に示した炭化珪素基板10と同様の効果を得ることができる。すなわち、炭化珪素基板10の機械的強度を維持するための補強部材として外周部が働き、反りの低減の効果もある。
【0057】
また、図17に示した炭化珪素基板10の製造方法は、基本的には図1に示した炭化珪素基板10の製造方法と同様であるが、図4および図5に示した熱処理装置における炭素円盤35上に1つのSiC単結晶基板1を配置して熱処理を行なうという点が異なる。そして、他の工程については基本的に図2に示した炭化珪素基板の製造方法と同様である。
【0058】
(実施の形態3)
図18を参照して、本発明によるエピタキシャル層付き基板を説明する。
【0059】
図18を参照して、本発明によるエピタキシャル層付き基板は、図1に示した本発明による炭化珪素基板10の主表面上に炭化珪素からなるエピタキシャル層2が形成された構造となっている。このようなエピタキシャル層付き基板を用いることにより、オン抵抗の低減された縦型の半導体装置を容易に製造することができる。
【0060】
図19および図20を参照して、図18に示した本発明によるエピタキシャル層付き基板の変形例を説明する。
【0061】
図19に示したエピタキシャル層付き基板は、図14に示した本発明による炭化珪素基板10の主表面上にエピタキシャル層2が形成された構造となっている。このような構造のエピタキシャル層付き基板によっても、図18に示したエピタキシャル層付き基板と同様の効果を得ることができる。また、図19に示したエピタキシャル層付き基板では、炭化珪素基板10の主表面においてSiC単結晶基板1の露出している面積の割合が図18に示したエピタキシャル層付き基板よりも相対的に高くなっているので、結晶性の優れた(たとえば欠陥密度の低い)領域の割合が大きくなったエピタキシャル層2を形成することができる。
【0062】
図20に示したエピタキシャル層付き基板は、基本的には図18に示したエピタキシャル層付き基板と同様の構造を備えるが、炭化珪素基板10の主表面において1つのSiC単結晶基板1が形成されているという点が異なる。このようにすれば、炭化珪素基板10の主表面においてSiC単結晶基板1の専有する面積の割合を、図18のように複数のSiC単結晶基板1が所定の間隔で配置されたような場合よりもより大きくすることができる。このため、エピタキシャル層2の膜質をより高めることができる。
【0063】
なお、上述した炭化珪素基板10のベース部材20の製造方法としては、上記のような昇華法を用いてもよいが、他の方法を用いてもよい。たとえば、CVD法を用いて炭化珪素からなるベース部材20を形成してもよい。この場合、ベース部材20のCVD法による形成条件としては、たとえばキャリアガスとしての水素の流量を150slm、基板温度(SiC単結晶基板1の加熱温度)を1650℃、雰囲気の圧力を100mbar、上述した水素ガスに対するSiHガスの流量比を0.6%、またSiHガスに対するHClガスの流量比を100%とする、といった条件を用いることができる。この場合、ベース部材20の成長速度は、たとえば110μm/h程度になる。このようなCVD法を用いてベース部材20を形成することにより、ベース部材20の不純物の濃度および厚みについての制御精度を向上させることができる。この結果、後工程での研削代などを考慮した必要最低限の厚みとなるように、ベース部材20の厚みを制御することができるので、研削工程での研削代を余分に確保する必要がない。このため、後工程における研削工程などの加工工程に要する時間を短縮することができる。
【0064】
(実施の形態4)
図21を参照して、本発明による炭化珪素基板の実施の形態4を説明する。
【0065】
図21を参照して、本発明による炭化珪素基板10は、基本的には図1に示した炭化珪素基板10と同様の構造を備えるが、ベース部材の構成が異なっている。すなわち、図1に示した炭化珪素基板10においては、昇華法により形成された炭化珪素からなるベース部材20を用いていたのに対して、図21に示した炭化珪素基板10においては、炭化珪素の焼結体からなるベース部材25が用いられている。このようにベース部材25を焼結体によって構成することで、炭化珪素基板10の製造コストをより低減することができる。
【0066】
ここで、上述したベース部材25を焼結により形成する工程としては、たとえば以下のような工程を用いることができる。すなわち、まずベース部材25を構成する原料を準備する。原料としては、たとえば粒径がミクロンオーダーのSiC粉末および珪素(Si)粉末、さらに粒径がサブミクロンオーダーの炭素粉末を準備する。そして、たとえば図4に示したようにSiC単結晶基板1を並べた上に、上記原料粉末を混合したものを配置し、プレス成型することにより、当該粉末の混合体とSiC単結晶基板1とからなる成形体を準備する。そして、当該成形体において粉末のみから構成される主表面上にSi粉末を載せた状態で、全体を1500℃まで加熱する。この結果、Si粉末が溶融し、溶融したSiが成形体の内部に含浸するとともに、成形体の内部で炭素粉末と反応しSiCとなる。そして、冷却後成形体を砥石などで研削加工することにより、図21に示したような炭化珪素基板10を得ることができる。
【0067】
なお、図21に示した炭化珪素基板10において、SiC単結晶基板1の構成を図14や図17に示したような炭化珪素基板10におけるSiC単結晶基板1の構成としてもよい。また、上記のような焼結体からなるベース部材25を、図18〜図20に示したエピタキシャル層付き基板の炭化珪素基板10に適用してもよい。
【0068】
(実施例1)
本発明の効果を確認するため、以下のような実験を行なった。
【0069】
(試料の作製)
SiC単結晶基板の準備:
まず、昇華法により成長した2インチ炭化珪素単結晶インゴットより、厚さ100μmでスライスしてタイル基板を作製する。上述した炭化珪素単結晶インゴットの不純物濃度は、9×1018cm-3である。なお、タイル基板の主表面の面方位は(0001)面とした。
【0070】
ここで、Noboru Ohtani et.al, " Investigation of heavily nitrogen-doped n+ 4H-SiC crystals grown by physical vapor transport", Journal of Crystal Growth 311 (2009), p.1475-1481などに記載されているように、9×1018cm-3以上の不純物濃度である場合、タイル基板においては表面にある欠陥が伝搬してSiC単結晶全体に欠陥が入ることが報告されている。そのため、当該インゴットの不純物濃度は9×1018cm-3以下にする必要がある。
【0071】
次に、タイル基板を22mm□(縦22mm×横22mmの四角形状)のSiC単結晶基板に成型する。このSiC単結晶基板からは、2.7mm□デバイス(縦2.7mm×横2.7mmの平面形状が四角形状のデバイス)を49個作成することができる。
【0072】
炭素円盤の準備:
次に、図3〜図5に示した熱処理装置での処理を行なうため、複数のザグリ(凹部)が形成された炭素円盤(図4参照)を準備する。具体的には、ザグリの平面形状は22mm□であってプラス公差であり、その深さは30μmである。炭素円盤では、当該ザグリ(凹部)が100μm間隔で設けられている。炭素円盤の直径は155mm、厚みは2mmとする。
【0073】
なお、厚みを2mmと比較的薄くしているのは、結晶成長によるストレスを炭素円盤によって吸収することで、SiC単結晶基板にかかるストレスを最小限にするためである。深さ30μmのザグリは、SiC単結晶基板の位置合わせのために複数形成されている。
【0074】
ベース円盤の準備:
直径650mm、厚さ20mmの大型炭素円盤であるベース円盤を準備する。当該ベース円盤には、直径Φ155mmでありプラス公差で深さが1.9mmのザグリが14個設けられる。
【0075】
そして、ベース円盤のザグリに上記炭素円盤を設置する。ベース円盤に炭素円盤を設置した状態で、炭素円盤の深さ30μmのザグリと連続するように、ベース円盤の表面にも深さ30μmのザグリを形成する。
【0076】
SiC単結晶基板の配置:
上述のようにベース円盤に炭素円盤を搭載した後、炭素円盤に形成された深さ30μmのザグリにSiC単結晶基板を設置する。そして、内径151mm、高さ5mmの円筒である筒状体を、炭素円盤と中心が一致するように設置する。筒状体の下部は、炭素円盤の外周部に接している。そして、筒状体の上部に被覆膜として炭素膜がコートされた炭化珪素の多結晶円柱であるSiC体を配置する。炭化珪素の多結晶円柱であるSiC体は、昇華法で作製した直径が152mm、厚みが30mmというサイズのものである。このとき、SiC体では炭素膜がコーティングされていない面が1面形成されており、当該面を筒状体の内部に向かうように(つまりSiC単結晶基板と対向するように)SiC体を配置する。なお、すでに述べたように炭素膜のコーティングは、SiC体からの炭化珪素の昇華を抑制するためである。
【0077】
多結晶円柱であるSiC体の表面とSiC単結晶基板の表面との距離は約5mmである。筒状体の上部には、SiC体の位置がずれないための合わせ込み部(溝部)と、14個の筒状体が互いにずれないようにするためのスペーサとしての鍔が形成されている。このSiC体は、昇華法、CVD法、あるいは高い窒素濃度雰囲気でのSiC粉末の焼結といった方法で作製できる。上述のような炭化珪素基板の処理セットを14個、ベース円盤の上に配置する。そして、このようなベース円盤を2段に積んで、計28個の上記処理セットをチャンバの内部に配置する。
【0078】
熱処理:
上記処理セットをチャンバの内部に保持した熱処理装置にて、以下の条件で熱処理を行なう。具体的には、チャンバ中の雰囲気を窒素雰囲気とし、その圧力を1Torrとする。また、加熱温度を2200℃、加熱時間を30分とする。この結果、厚み600μmの高不純物濃度の炭化珪素からなるベース部材20(図5参照)が成長する。
【0079】
後処理:
次に、高不純物濃度のベース部材で一体化したSiC単結晶基板の複合体を取出す。次に、図6に示すように、高不純物濃度の炭化珪素からなるベース部材を研削により平坦化すると同時に、複合体の外周加工も行なう。この結果、直径が6インチΦの一体化した図7に示すような複合体を得る。次に、図8に示すように炭素円盤も研削により除去する。その後、一体化した複合体における高不純物濃度のベース部材側を研磨盤(ステージ)に貼り合わせて、SiC単結晶基板側を研磨する。最後にSiC単結晶基板側に化学的機械研磨(CMP)を実施する。このようにして、直径が6インチの一体化した炭化珪素基板を得る。
【0080】
(炭化珪素基板での反りの測定および結果)
上記炭化珪素基板について、反りの測定を行なった。測定においては、レーザ干渉計を用いた。
【0081】
その結果、当該炭化珪素基板の反りの高さは、直径6インチ全体で10μm以下であった。これは、SiC単結晶基板間の境界の多結晶部である境界領域11(図1参照)が、基底面転移の伝搬を抑制した結果、炭化珪素基板の平坦性が維持されていると考えられる。
【0082】
(エピタキシャル層付き基板の作成)
直径が6インチの一体化した上記炭化珪素基板の主表面(SiC単結晶基板が露出している主表面)上に、CVD装置を用いて、厚みが15μm、キャリア濃度が7.5×1015cm-3であるエピタキシャル層を形成する。エピタキシャル成長条件としては、基板温度を1550℃、水素流量を150slm、SiH4流量を50sccm、C流量を50sccm、2ppm窒素を6sccmとし、成長時間を90分とした。
【0083】
(ショットキーバリアダイオードの作成)
上記のように形成したエピタキシャル層にアルミニウム(Al)をイオン注入した後、活性化アニールを実施することによりガードリングを形成する。そして、炭化珪素基板の裏面(ベース部材側)にTiAlSiからなる膜をスパッタリングにより形成して、900℃のアニールを行なうことにより裏面オーミック電極を形成する。
【0084】
一方、エピタキシャル層の表面には全面にTiを真空蒸着して、エッチングにより2.4mm□(縦2.4mm×横2.4mmの四角形状)のショットキー電極を形成する。そして、加熱温度が500℃のショットキーアニールを行なった後、SiOからなる保護膜(パッシベイション膜)を形成する。その後、ショットキー電極に接続され、Al/Siからなるパッド電極を形成した後、レーザーダイシングにより、チップ化してショットキーバリアダイオードを形成する。そして、当該ショットキーバリアダイオードを測定用のフレームに実装する。
【0085】
(ショットキーバリアダイオードでの測定および結果)
オン抵抗について:
上記ショットキーバリアダイオードについて、オン抵抗を測定した。測定には耐圧測定も行う必要があり、高耐圧プローバーを用いた。
【0086】
その結果、ショットキーダイオードのオン抵抗は0.5mΩcm2であった。このオン抵抗の値は、従来のSiC単結晶基板を用いて形成されたショットキーバリアダイオードにおけるオン抵抗と比べて大幅に低いものであった。これは、本発明による炭化珪素基板の電気抵抗値が、従来のSiC単結晶基板に比べて約1/10に低減されているためであると考えられる。
【0087】
オーミック電極に関する接触抵抗について:
また、本発明による炭化珪素基板は、高濃度不純物層(ベース部材)を含むため、裏面でのオーミック電極の形成が低温で可能となる。このことを確認するため、デバイス作製後に炭化珪素基板の裏面についてバックグラインドを実施した。そして、バックグラインドによるダメージ層を研磨により除去したあと、TiAlSiからなる電極を当該研磨面上に形成した。その後、加熱温度を400℃としたアニールを実施した。このようにして形成した電極と炭化珪素基板の裏面との接触抵抗を測定した。測定方法としては、TLM法を用いた。その結果、接触抵抗の値は0.1mΩcmとなり、十分に低い接触抵抗の値となっていた。
【0088】
(実施例2)
上記実施例1でのベース部材の形成工程において、昇華法に代えてCVD法を用いた。具体的には、キャリアガスとしての水素の流量を150slm、基板温度(SiC単結晶基板1の加熱温度)を1650℃、雰囲気の圧力を100mbar、上述した水素ガスに対するSiHガスの流量比を0.6%、またSiHガスに対するHClガスの流量比を100%とする。この場合、ベース部材20の成長速度は、たとえば110μm/h程度になる。
【0089】
このようにCVD法を用いてベース部材を形成しても、本発明による炭化珪素基板を製造することができた。
【0090】
(実施例3)
上記実施例1でのベース部材の形成工程において、昇華法に代えて焼結法を用いた。具体的には、まずベース部材を構成する原料を準備する。原料としては、たとえば粒径が約10μmのSiC粉末および粒径が約10μmの珪素(Si)粉末、さらに粒径が約0.5μmの炭素粉末を準備する。そして、上述した実施例1の場合と同様にタイル基板(SiC単結晶基板)を並べた上に、上記原料粉末を混合したものを配置し、プレス成型することにより、当該粉末の混合体とSiC単結晶基板とからなる成形体を準備する。なお、成形体のサイズは直径が155mm、厚みが1mmとする。そして、当該成形体において粉末のみから構成される主表面上にSi粉末を載せた状態で、全体を1500℃まで加熱する。この結果、Si粉末が溶融し、溶融したSiが成形体の内部に含浸するとともに、成形体の内部で炭素粉末と反応しSiCとなる。そして、冷却後成形体を砥石などで研削加工することにより、実施例1の炭化珪素基板と同様の形状を有する炭化珪素基板を得ることができる。
【0091】
(実施例4)
(炭化珪素基板およびエピタキシャル層付き基板の作成)
実施例1で説明した炭化珪素基板の製造方法において、タイル基板の主表面の面方位を(0−33−8)面とし、他の工程は実施例1での製造工程と同様の工程を実施することにより、炭化珪素基板を作成する。また、当該炭化珪素基板の主表面上に、実施例1の場合と同様にエピタキシャル層を形成し、エピタキシャル層付き基板を作成する。
【0092】
(縦型DiMOSFETの作成)
上述したエピタキシャル層付き基板を用いて、図13に示した縦型DiMOSFETと基本的に同様の構造を備える半導体装置を作成する。具体的には、上記エピタキシャル層に、SiO層をマスクとしてリンのイオン注入を行い、トランジスタのn+領域(ソース部)を形成する。次に、SiO2を用いたセルフアラインにより、Alイオン注入して、導電型がp型のボディ部であるp領域を形成する。そして、上述したn+領域に隣接し、上記p型のボディ部より高濃度の導電性不純物を含むp型のソース部とガードリングとをAlのイオン注入により形成する。その後、活性化アニールを行なう。
【0093】
次に犠牲酸化によりエピタキシャル層の最表面層を除去してから、熱酸化によりゲート絶縁膜(ゲート酸化膜)を形成する。その上にポリシリコンからなるゲート電極を形成する。さらに、TiAlSiからなるソース電極を形成する。そして、ソース電極上にSiNからなるバリア層を有するSiO2の層間絶縁膜を形成してから、Al/Siという構成の上層配線を形成する。さらに、ポリイミドからなる保護膜で上部表面の全体を覆う。また、裏面側には裏面電極(ドレイン電極)を形成する。
【0094】
このようにトランジスタの構造を形成した基板をダイシングにより分割し、縦型DiMOSFETのチップを得る。そして、当該チップを測定用のフレームに実装する。
【0095】
(測定及び結果)
オン抵抗について:
上記DiMOSFETについて、オン抵抗を測定した。測定方法としては、上述した実施例1におけるオン抵抗の測定方法と同様の方法を用いた。
【0096】
その結果、デバイスのオン抵抗は3mΩcm2であった。
電気的特性について:
また、上述した半導体装置について、ドレイン電圧とドレイン電流との関係を測定した。その結果を図22に示す。図22を参照して、グラフの横軸はドレイン電圧(V)であり、縦軸はドレイン電流(A)を示す。グラフAはゲート電圧VGを0Vとした場合のドレイン電圧とドレイン電流との関係を示し、グラフBは、ゲート電圧VGを5Vとした場合のドレイン電圧とドレイン電流との関係を示す。図22からわかるように、本発明による半導体装置では、十分なドレイン電流の値が得られることがわかる。すなわち、従来の半導体装置(主表面の面方位が(0001)面である半導体装置)に比べて、上記ドレイン電流の値は約3倍になっている。
【0097】
また、上述した半導体装置の移動度を測定した。移動度の測定方法としては、評価用横型MOSFETを試作して、実効移動度を測定した。この結果、タイル基板の主表面の面方位を(0−33−8)面とした炭化珪素基板を用いて形成された上記半導体装置では、従来の半導体装置(主表面の面方位が(0001)面である半導体装置)に比べて、約4倍の移動度が得られる。
【0098】
上述した実施の形態または実施例と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を以下に列挙する。
【0099】
この発明に従った炭化珪素基板10は、主表面を有する炭化珪素基板10であって、主表面の少なくとも一部に形成された単結晶部材としてのSiC単結晶基板1と、SiC単結晶基板1の周囲を囲むように配置されたベース部材20、25とを備える。ベース部材20、25は、境界領域11と下地領域12とを含む。境界領域11は、主表面に沿った方向においてSiC単結晶基板1に隣接し、内部に結晶粒界を有する。下地領域12は、主表面に対して垂直な方向においてSiC単結晶基板1に隣接し、SiC単結晶基板1における不純物濃度より高い不純物濃度を有する。また、図1に示したベース部材20における下地領域12は炭化珪素の単結晶からなる領域である。
【0100】
このようにすれば、炭化珪素基板10の主表面にはSiC単結晶基板1が配置されているため、当該主表面上に、良好な膜質の炭化珪素からなるエピタキシャル層2(図18〜図20参照)を容易に形成することができる。一方、当該炭化珪素基板10を用いてたとえば図9や図13に示すような縦型半導体装置を形成する場合、当該縦型半導体装置のオン抵抗を低減するために炭化珪素基板10の導電率を大きくする必要がある。そのため、SiC単結晶基板1における不純物濃度より高い不純物濃度を有する下地領域12を配置することで、炭化珪素基板10の厚み方向での(縦方向での)導電率を大きくできる(つまり炭化珪素基板10の厚み方向での電気抵抗値を小さくできる)。このため、当該炭化珪素基板10を用いた半導体装置(特に縦型の半導体装置)におけるオン抵抗を低減することができる。
【0101】
また、基本的に炭化珪素基板10の主表面上に高品位のエピタキシャル膜を形成するため、欠陥密度の低い(結晶性に優れた)SiC単結晶基板1を用いる。一方、ベース部材20、25は主表面において一部(境界領域11)しか露出しないため、欠陥密度などの満足すべきレベルはSiC単結晶基板1より低くしてもよい。このため、ベース部材20、25として、欠陥の生成などに制限されることなく導電性不純物を高濃度でドープした(導電性を高めた)材料を用いることができる。さらに、このようなベース部材20、25を、炭化珪素基板10の機械的強度を維持するための補強部材としても利用できる。また、不純物濃度の高いベース部材20、25には、容易にオーミック電極を形成することができる。
【0102】
また、上記のようなベース部材20、25としては、上述のように結晶性についての要求レベルは高くはないため、ベース部材20、25として低品位の(結晶性に劣る)材料(炭化珪素材料)を用いることができる。そのため、炭化珪素基板10全体をSiC単結晶基板1のような高品位の材料で構成する場合より、炭化珪素基板10の製造コストを低減することができる。
【0103】
上記炭化珪素基板10において、境界領域11における不純物濃度は、SiC単結晶基板1における不純物濃度より高くなっていてもよい。この場合、SiC単結晶基板1の内部を伝搬する転移(たとえば基底面転移)を当該境界領域11でより効果的に吸収することができる。このため、当該転位が炭化珪素基板10全体に渡って伝搬することによる炭化珪素基板10の反りの発生を抑制できる。
【0104】
上記炭化珪素基板10は、図1に示すように主表面の少なくとも一部に形成された別の単結晶部材であるSiC単結晶基板1をさらに備えていてもよい。SiC単結晶基板1と当該別のSiC単結晶基板1とは、境界領域11を介して配置されていてもよい。下地領域12は、主表面に対して垂直な方向において別のSiC単結晶基板1に隣接する部分を含んでいてもよい(つまり、下地領域12は、主表面に対して垂直な方向において1つのSiC単結晶基板1下から別のSiC単結晶基板1に隣接する位置にまで延在していてもよい)。
【0105】
この場合、複数のSiC単結晶基板1を組合わせることで、主表面の面積の大きな(大面積の)炭化珪素基板10を得ることができる。このため、一度の処理により炭化珪素基板10の主表面上に形成できる半導体装置の数を増やすことができる。この結果、半導体装置の製造コストを低減できる。
【0106】
上記炭化珪素基板10では、SiC単結晶基板1における不純物濃度が1×1017cm-3以上2×1019cm-3以下であってもよく、下地領域12における不純物濃度が2×1019cm-3以上5×1022cm-3以下であってもよい。
【0107】
この場合、炭化珪素基板10の主表面上に高品質なエピタキシャル層2を形成することができるとともに、炭化珪素基板10の縦方向での導電性を十分高めることができる。ここで、SiC単結晶基板1における不純物濃度の下限を上記のような値としたのは、以下のような理由による。すなわち、上記値(1×1017cm-3)を下回る不純物濃度では、SiC単結晶基板1における導電性を十分に確保することが難しくなるためである。
【0108】
また、SiC単結晶基板1における不純物濃度の上限を上記のような値としたのは、以下のような理由による。すなわち、上記値(2×1019cm-3)を超える不純物濃度では、SiC単結晶基板1において積層欠陥が発生する。そして、当該積層欠陥が発生したSiC単結晶基板1の表面上では、高品質のエピタキシャル層2を形成することが難しくなるためである。
【0109】
また、下地領域12における不純物濃度の下限を上記のような値としたのは、以下のような理由による。すなわち、上記値(2×1019cm-3)以上であれば、下地領域12における導電性を十分高くすることが可能である。
【0110】
また、下地領域12における不純物濃度の上限を上記のような値としたのは、以下のような理由による。すなわち、上記値(5×1022cm-3)を超える不純物濃度では、不純物のドープに起因する欠陥の密度が高くなりすぎて、下地領域12での結晶性を十分維持できなくなるためである。
【0111】
この発明に従ったエピタキシャル層付き基板は、図18〜図20に示すように、上記炭化珪素基板10と、当該炭化珪素基板10の主表面上に形成された炭化珪素からなるエピタキシャル層2とを備える。また、エピタキシャル層2の不純物濃度は、SiC単結晶基板1における不純物濃度より低いことが好ましい。この場合、エピタキシャル層2として結晶性の高い(欠陥の少ない)炭化珪素を用いることで、当該エピタキシャル層2を利用して高品質な半導体装置を容易に製造できる。
【0112】
上記エピタキシャル層付き基板では、エピタキシャル層2における不純物濃度は1×1014cm-3以上1×1017cm-3以下であってもよい。このような数値範囲としたのは、以下のような理由による。すなわち、エピタキシャル層付き基板を用いて製造される半導体装置に関して、当該エピタキシャル層2に要求される耐電圧のレベル(たとえば100V以上10万V以下)から考えると、当該エピタキシャル層2における不純物濃度は上記の数値範囲とすることが好ましい。
【0113】
この発明に従った半導体装置は、上記炭化珪素基板10を用いて構成されている。この場合、たとえば図9や図13示した縦型の半導体装置を形成した場合には、炭化珪素基板10の厚み方向における導電性を十分確保できることから、オン抵抗の低減された半導体装置を実現できる。
【0114】
上記半導体装置はたとえば図9や図13に示したような、炭化珪素基板10の厚み方向に電流が流れる縦型半導体装置であることが好ましい。すなわち、上記炭化珪素基板10の裏面(上記主表面と反対側の表面)に裏面電極(図9のオーミック電極55や図13のドレイン電極68)が形成され、上記主表面上に表面側電極(図9のショットキー電極52や図13のソース電極67)が形成されていることが好ましい。この場合、表面側電極と裏面電極との間の電気抵抗(オン抵抗)を十分低減した半導体装置を実現できる。
【0115】
この発明に従った炭化珪素基板の製造方法では、図2に示すように、まず炭化珪素からなり、主面を有する単結晶部材(SiC単結晶基板1)を準備する工程(図2の工程(S10))を実施する。そして、SiC単結晶基板1の主面と、当該主面と連なり主面と交差する方向に延びる端面とを覆うように、SiC単結晶基板1より不純物濃度の高い炭化珪素からなるベース部材20、25を形成する工程(図2の工程(S20))を実施する。次に、SiC単結晶基板1の主面と反対側から、SiC単結晶基板1とベース部材20、25とを部分的に除去することにより、少なくともSiC単結晶基板1の表面を平坦化する工程(図2の工程(S30))を実施する。
【0116】
このようにすれば、本発明による炭化珪素基板10を容易に製造することができる。また、ベース部材20、25としてSiC単結晶基板1より結晶性の低い(たとえば欠陥密度の高い)材料(炭化珪素)を用いることができるので、炭化珪素基板10の全体を、上述したSiC単結晶基板1のような高品質な炭化珪素の単結晶により構成する場合より低コストで炭化珪素基板10を製造することができる。また、複数のSiC単結晶基板1を用いれば、大面積の炭化珪素基板10を実現できる。
【0117】
上記炭化珪素基板の製造方法において、単結晶部材を準備する工程(S10)は、炭化珪素からなり、主面を有する別の単結晶部材(別のSiC単結晶基板1)を準備する工程を含んでいてもよい。ベース部材を形成する工程(S20)では、図4に示すようにSiC単結晶基板1と別のSiC単結晶基板1とを並べた状態として、図5に示すように別のSiC単結晶基板1の主面と、当該主面と連なり主面と交差する方向に延びる端面とを覆うようにベース部材20を形成してもよい。SiC単結晶基板1の表面を平坦化する工程は、別のSiC単結晶基板1とベース部材20、25とを部分的に除去することにより、別のSiC単結晶基板1の表面を平坦化する工程を含んでいてもよい。この場合、複数のSiC単結晶基板1を用いて大面積の単結晶基板を容易に製造することができる。
【0118】
上記炭化珪素基板の製造方法において、ベース部材を形成する工程(S20)では、ハイドライド気相成長法(HVPE法)および化学気相成長法(CVD法)のうちのいずれかを用いてもよい。この場合、ベース部材20における不純物濃度を高い精度で制御することができる。
【0119】
上記炭化珪素基板の製造方法において、ベース部材を形成する工程(S20)では、昇華法を用いてもよい。この場合、ベース部材20を相対的に低コストで形成することができるので、炭化珪素基板10の製造コストを低減できる。
【0120】
上記炭化珪素基板の製造方法において、ベース部材を形成する工程(S20)では、上述した実施の形態4で説明したように焼結法を用いてもよい。この場合、ベース部材25を相対的に低コストで形成することができるので、炭化珪素基板10の製造コストを低減できる。
【0121】
本発明によるエピタキシャル層付き基板の製造方法は、上記炭化珪素基板10を準備する工程と、上記炭化珪素基板10の主表面(SiC単結晶基板1の平坦化された表面が露出する主表面)上に、炭化珪素からなるエピタキシャル層2を形成する工程とを備える。この場合、本発明によるエピタキシャル層付き基板を容易に製造することができる。
【0122】
本発明による半導体装置の製造方法は、本発明による上記炭化珪素基板10を準備する工程と、炭化珪素基板10の主表面上に、炭化珪素からなるエピタキシャル層2を形成する工程と、当該エピタキシャル層2上と、炭化珪素基板10の上記エピタキシャル層2が形成された主表面と反対側の裏面上とに、電極を形成する工程とを備える。この場合、本発明に従った半導体装置(特に図9や図13に示した縦型の半導体装置)を容易に製造することができる。また、炭化珪素基板10の裏面側(ベース部材20、25側)は相対的に不純物濃度の高い下地領域12を含むため、当該下地領域12に接触するように電極を形成することで、容易にオーミック電極を形成することができる。
【0123】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、縦型デバイスを形成するために用いられる炭化珪素基板、エピタキシャル層付き基板、半導体装置および炭化珪素基板の製造方法に特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0125】
1 SiC単結晶基板、2,51 エピタキシャル層、10 炭化珪素基板、11 境界領域、12 下地領域、13 端面、20,25 ベース部材、21 ベース部材の表面、30 熱処理装置、31 チャンバ、32 ベース円盤、33 メインヒータ、34 補助ヒータ、35 炭素円盤、36 筒状体、37 SiC体、38 被覆膜、41 ステージ、42 砥石、52 ショットキー電極、53 保護膜、54 パッド電極、55 オーミック電極、56 矢印、57 導電体層、61 耐圧保持層、62 p領域、63 n領域、64 ゲート絶縁膜、65 ゲート電極、66 絶縁膜、67 ソース電極、68 ドレイン電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主表面を有する炭化珪素基板であって、
前記主表面の少なくとも一部に形成された単結晶部材と、
前記単結晶部材の周囲を囲むように配置されたベース部材とを備え、
前記ベース部材は、
前記主表面に沿った方向において前記単結晶部材に隣接し、内部に結晶粒界を有する境界領域と、
前記主表面に対して垂直な方向において前記単結晶部材に隣接し、前記単結晶領域における不純物濃度より高い不純物濃度を有する下地領域とを含む、炭化珪素基板。
【請求項2】
前記境界領域における不純物濃度は、前記単結晶部材における不純物濃度より高い、請求項1に記載の炭化珪素基板。
【請求項3】
前記主表面の少なくとも一部に形成された別の単結晶部材をさらに備え、
前記単結晶部材と前記別の単結晶部材とは、前記境界領域を介して配置され、
前記下地領域は、前記主表面に対して垂直な方向において前記別の単結晶部材に隣接する部分を含む、請求項1または2に記載の炭化珪素基板。
【請求項4】
前記単結晶部材における不純物濃度は1×1017cm-3以上2×1019cm-3以下であり、
前記下地領域における不純物濃度は2×1019cm-3以上5×1022cm-3以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化珪素基板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭化珪素基板と、
前記炭化珪素基板の前記主表面上に形成された炭化珪素からなるエピタキシャル層とを備える、エピタキシャル層付き基板。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭化珪素基板を用いた、半導体装置。
【請求項7】
炭化珪素からなり、主面を有する単結晶部材を準備する工程と、
前記単結晶部材の前記主面と、前記主面と連なり前記主面と交差する方向に延びる端面とを覆うように、前記単結晶部材より不純物濃度の高い炭化珪素からなるベース部材を形成する工程と、
前記単結晶部材の前記主面と反対側から、前記単結晶部材と前記ベース部材とを部分的に除去することにより、少なくとも前記単結晶部材の表面を平坦化する工程とを備える、炭化珪素基板の製造方法。
【請求項8】
前記単結晶部材を準備する工程は、炭化珪素からなり、主面を有する別の単結晶部材を準備する工程を含み、
前記ベース部材を形成する工程では、前記単結晶部材と前記別の単結晶部材とを並べた状態として、前記別の単結晶部材の前記主面と、前記主面と連なり前記主面と交差する方向に延びる端面とを覆うように前記ベース部材を形成し、
前記単結晶部材の表面を平坦化する工程は、前記別の単結晶部材と前記ベース部材とを部分的に除去することにより、前記別の単結晶部材の表面を平坦化する工程を含む、請求項7に記載の炭化珪素基板の製造方法。
【請求項9】
前記ベース部材を形成する工程では、ハイドライド気相成長法および化学気相成長法のうちのいずれかを用いる、請求項7または8に記載の炭化珪素基板の製造方法。
【請求項10】
前記ベース部材を形成する工程では、昇華法を用いる、請求項7または8に記載の炭化珪素基板の製造方法。
【請求項11】
前記ベース部材を形成する工程では、焼結法を用いる、請求項7または8に記載の炭化珪素基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−258768(P2011−258768A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132253(P2010−132253)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】