説明

物体の3D位置の非接触式光学的測定方法及び測定装置

この発明は物体の3D位置、すなわち、ある幾何学的特性が公知の物体の3D位置及び3D配向の非接触式光学的決定のための方法及び装置に関する。前記発明の目的は単純な手段で、高測定速度、精度で、調査物体に関する完全な3D情報を調査することである。この目的のため、物体画像がカメラによって生成され、その生成画像に基づく物体の3D位置が、検出幾何学的特性に関する画像情報によって計算される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体の3D(3次元)位置の非接触式光学的決定のための方法及び装置であって、該3D位置の決定が、前記物体の3D位置及び3D配向の決定を有し、前記物体の幾何学的特性が公知である該方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造フローの自動化は工業製造において益々重要な役割を果たしている。
処理される構成部品の正確な位置決めが不可能な製造ラインの場合、該構成部品の完全な3D位置、すなわち空間内での3D位置及び3D配向を知ることは、ロボットを使用して該構成部品を把持し、処理することを可能にするために、特に重要である。
【0003】
さらに、3D位置の決定を、ロボットの調整のために使用することができる。
そのため幾何学的特性が公知の方法でロボットアームに配置され、あるいは調整ターゲットがロボットアームに取り付けられている。
ロボットアームが、固着されたカメラのレンズ有効範囲内で移動され、その後、ロボットアームの3D位置の決定が、その位置及び配向を調査及び/又は再調整するために実施される。
【0004】
他の用途は、取り付け状態での構成部品の3D位置の決定である。
例えば、基準部品の位置を決定することで、誤って取り付けられた構成部品を決定するために、装着部品の位置が基準部品の位置に一致しているかどうかを調査することが可能である。
【0005】
昨今では、3D位置を決定するための公知の装置が殆ど多カメラシステムであり、このシステムは2つ以上のカメラの使用のためにかなりのコストを伴う。
1つのカメラを使用する場合には、複数の構成部品を把持するための調整2D法のみがこれまで公知である。
すなわち、平面内の位置及び配向(3つの自由度)及び更に構成部品の高さについての高さ情報(1つ以上の自由度)が決定される。
しかし、この方法を使用して、構成部品の位置についてせいぜい2,5D情報しか得られず、その結果、例えば構成部品が傾斜位置にある場合に該構成部品を正確に把持することが不可能である。
【0006】
ロボットの調整は、6つの自由度全てを設定するための対応補助手段が欠けているため、当技術の現状によれば殆ど手動で実施されている。
この調整はかなり時間を要し、従って保守が長時間となる。
さらに、手動調整法は一般に比較的不正確である。
【0007】
今日、構成部品装着後の位置決定が多カメラシステムだけを使用して実施することも可能である。
また、1つの測定変量の感覚による解決法が公知であり、その解決法では、多センサー評価を使用して実際の全問題を解決する。
そのような感覚による多測定も時間を要し、3D位置の全体的評価に役に立つことが殆どないことが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、物体の3D位置の非接触式光学的決定のための方法及び装置を、単純な手段を使用して高測定速度及び測定精度で、調査すべき物体についての完全な3D情報を決定することが可能なように設計し、さらに改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この3D位置の非接触式光学的決定のための本発明方法は、請求項1の特徴により上記目的を達成する。
従って、その方法は、物体の画像がカメラによって生成され、前記物体の3D位置が、検出された幾何学的特性についての画像情報に基づく該カメラ画像から計算されることを特徴とする。
【0010】
この発明方法では、3D位置の決定のための幾つかのカメラの使用はコストの点で、またカメラの取り付けと調整に対しても極めて高価であることが先ず分かった。
公知の方法から外れると、物体の画像がカメラによって生成され、物体の3D位置が幾何学的特性に対して画像情報に基づくカメラ画像から計算される。
単純化及びコンパクト化のため、この発明方法の製造での動きのシーケンスに対する影響が実質的に低減した。
ロボットを調整する場合、この発明方法を利用して一般に不正確な手動設定を取り除くことが可能であり、従って、信頼性のある高度な手段を保証することができる。
さらに、これにより早期のロボット設定が可能となり、それにより保守時間が短縮される。
【0011】
この方法を特に高効率で達成する目的で、3D位置特定の完全な決定が、カメラを使用する1つの画像取り込みによって特に有利な方法で実施される。
3D位置を計算するための基礎として、カメラの実際の画像プロセスを数学モデルによりモデル化することができる。
画像プロセスの構成において、特に、調査すべき物体とカメラとの間の位置と配向、使用される光学素子の特性(焦点距離、歪など)、遠近法変換、そしてカメラ及び/又はコンピュータ内への画像の取り込み時の照度のデジタル化と停止を考慮することが可能である。
【0012】
このモデルに基づいて、幾何学的特性の公知3D位置及び対応する2次元画像情報の相関がなされる。
言い換えれば、複数式の系(通常、非線形)を準備することができ、その系に画像プロセスのパラメータを未知の変数として入力される。
例えば、2つの式が、物体に関する3D位置の、その物体の2D画像位置との相関から得られる。
従って、幾つかの特性を使用することで、画像プロセスの自由なパラメータ全ての式の系を挙げること、及び数学的方法を使用して未知の変数を決定することが可能である。
有利な方法では、自由なパラメータとして系内でモデル化される多くの式が使用される。
それで、そのような式の過決定系を解決するため、非線形最適化法を使用して最適化解決法を決定する。
【0013】
単純化の高度手段の確保を考慮して、カメラを固定保持することができる。
さらに、カメラの位置合わせも固定して予め決定することができる。
特定の用途により、複数位置、複数直線、複数アングル、複数円、複数楕円輪郭及び/円錐断面を物体に関して公知の位置特定に提供される幾何学的特性として使用することができる。
この場合唯一の重要な点は、これら幾何学的特性が一般に数学的に説明できる輪郭及び形状であり、これらは構成部品に関して公知であり、カメラ画像で十分に観察及び評価できる点である。
【0014】
幾何学的物体を、調整のため、及び位置決定のために使用することができる。
調整の枠内で、例えば内部カメラパラメータを決定するために幾何学的物体を使用することができる。
この調整を使用して、光学歪を補正することができ、特に、カメラ座標系と物体座標系との間の3D位置の関係を決定することができる。
物体の幾何学的特性の代わりに、別の調整ターゲットも調整に使用することができる。
【0015】
カメラ調整の使用と、それによる所謂外部カメラパラメータ(位置用の3つのパラメータ、回転用の3つのパラメータ)の評価によって、カメラ座標系に対して物体の3D位置を決定することができる。
また、他の任意の決定可能な固定座標系に対し物体の3D位置を決定することが、別の段取り工程を使用して決定できる例えば世界座標系と比較して、可能である。
基準マスター部品の運動測定値あるいは比較測定値の枠組み内で、物体の3D位置を動的座標系に対しても決定することができる。
【0016】
特定の実施形態では、1つ又は2つ以上の別のカメラが設けられ、それを使用して物体の画像を、好適には異なったカメラアングルで生成する。
別の画像の生成のために、幾つか固定の単一カメラあるいは1つ又は2つ以上の移動カメラを使用することができる。
他の画像を使用して、計算された3D位置を他の品質基準を使用して評価することができ、必要なら補正を実施することができる。
達成された結果は3D位置の更に改善された高精度の決定である。
【0017】
さらに、他の支持センサーを設けることが可能であり、それを使用して3D位置の決定での誤差を補償及び/又は補正することができる。
特に、例えばこれらセンサーは、周囲温度のばらつきを補償する温度センサーであり、それにより、3D位置を計算するときに、調査すべき物体の温度依存性膨張を考慮することが可能である。
【0018】
特に有利な方法では、追跡測定及び/又はキャンバー測定を、リムの幾何学的特性に基づいて自動車に関して実施することができる。
それによりリムに対するマーク付き位置が幾何学的特性として自動的に付与されることが可能である。
このマーク付き位置は例えばバルブ又はハブキャップとすることができる。
好ましい実施形態では、付与されたマーク付き位置がユーザーにより相互作用で受け入れられるか拒絶される。
リムに関する幾何学的形状を知っているため、結果としてホイールベースをその自由度全てでチェックすることが可能である。
従って、第一に、リムに関する突出パターンの要件が省略され、第二に、緩いサスペンション支柱の場合、正又は負の車軸キャンバーを決定することができる。
【0019】
この装置に関しては、上記目的が請求項21の特徴によって達成される。
従って、物体の3D位置の非接触式光学的決定のための装置は、物体の3D位置が、検出された幾何学的特性についての画像情報に基づいて該カメラ画像から計算される前記物体の画像を生成するカメラを特徴としている。
この発明に係る装置は、請求項1ないし請求項20のいずれか1項に記載の方法を実施するために機能し、その結果として、繰り返しを避けるために前の説明部分を参照する。
カメラ画像の早期評価と3D位置の即時計算に関して、この装置は、適当な画像処理ソフトウェアを備えた工業用パソコンを好適に備えている。
【0020】
本発明の教示を有利に設計し、そして更に改善する種々のオプションがある。
このために、第一に、請求項1に従属する複数の請求項と、第二に、図面に基づく以下の発明の好ましい実施形態の説明を参照する必要がある。
一般に、教示内容の好ましい設計形態と構成も、1つの図面に基づくこの発明の好ましい実施形態の説明に関連して説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図は、物体1の3D位置が軸、x、y、zを使用する空間固定座標系に対して測定される物体1の3D位置の非接触式光学的決定用装置を概略的に示している。
この目的のため、物体1の画像が物体1上方に配置されたカメラ2で生成される。
カメラ2の位置と位置合わせは、この空間固定座標系xyzに対して固定して予め設定される必要がある。
画像取り込み時に、カメラ2の近傍円周に配置された光源3が物体1を十分に照明することができる。
【0022】
このカメラデータはモニター5を備える工業用パソコン4に移される。
そこで2D画像情報と物体1に存在する幾何学的特徴の公知3D位置(図示せず)とを相互に関係づけることが行われる。
画像プロセスの全ての自由なパラメータに対して、非線形最適化プロセスの解決には複数式の過決定系が用意されている。
この複数式の系の解決後に、物体1の正確な3D位置を決定することができ、座標をロボット6に移すことができる。
物体1の位置と配向を知ることで、ロボット6が、対応する補正の後、物体1を把持及び/又は処理することができる。
最後に、上記実施形態は請求された教示内容を説明するためにのみ作用するが、この教示内容を前記実施形態に限定するものではないことを特に指摘する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】物体の3D位置の非接触式光学的決定のためのこの発明に係る装置の1つの実施形態の概略図である。
【符号の説明】
【0024】
1 物体
2 カメラ
3 光源
4 工業用パソコン
5 モニター
6 ロボット








【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の3D位置の非接触式光学的決定のための方法であって、該3D位置の決定が、前記物体の3D位置及び3D配向の決定を有し、前記物体の幾何学的特性が、公知である該方法において、
前記物体の画像が、カメラによって生成され、前記物体の3D位置が、検出された幾何学的特性についての画像情報に基づく該カメラ画像から計算されることを特徴とする物体の3D位置の非接触式光学的決定のための方法。
【請求項2】
前記3D位置の完全な決定が、前記カメラを使用する1つの画像取り込みによって実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記幾何学的特性の公知3D位置が、各々の場合において、対応する2次元画像情報に対応付けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
複数式の系が、画像プロセスの自由なパラメータ全てに備えられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
非線形最適化方法が、複数式の過決定系の解決に使用されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記カメラが、固定保持されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記カメラの位置合わせが、予め設定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の装方法。
【請求項8】
数学的に記載される一般的な輪郭と形状が、幾何学的特性として使用されることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
複数の点、複数の直線、複数のアングル、複数の円、複数の楕円形状及び/又は円錐断面が、幾何学的特性として使用されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カメラが、前記幾何学的特性を使用して調整されることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
内部のカメラパラメータが、調整の枠組み内で決定されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記物体の3D位置が、固定座標系に対して決定されることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記物体の3D位置が、カメラ座標系、物体座標系に対してあるいは世界座標系に対して決定されることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記物体の3D位置が、動的座標系に対して決定されることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記物体の画像が、1つ又は2つ以上の別なカメラを使用して好適には種々のカメラアングルから生成されることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記別の画像によって、前記物体の計算された3D位置の品質が決定され、必要であれば補正が行われることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記3D位置の決定での誤差が、センサーによって補償され及び/又は補正されることを特徴とする請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
追跡測定及び/又はキャンバー測定が、リムの幾何学的特性に基づいて自動車で実施されることを特徴とする請求項1ないし請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記リムに対して自動的にマーク付き場所が、幾何学的特性として設けられていることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記設けられたマーク付き場所が、ユーザーによって相互作用的に受け入れられるか拒絶されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
物体の3D位置の非接触式光学的決定のための装置であって、該3D位置の決定が、前記物体の3D位置及び3D配向の決定を有し、前記物体の幾何学的特性が公知であり、好適には請求項1ないし請求項20のいずれか1項に記載の方法を実施するための装置において、
前記物体の3D位置が、検出された幾何学的特性についての画像情報に基づいてカメラ画像から計算される前記物体の画像を生成するカメラを特徴とする物体の3D位置の非接触式光学的決定のための装置。
【請求項22】
前記カメラが、固定されていることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記カメラ画像を評価し、前記3D位置を計算するための少なくとも1つの工業用パソコンを特徴とする請求項21又は請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記工業用パソコン、が画像処理ソフトウェアを特徴とする請求項23に記載の装置。

















【公表番号】特表2007−533963(P2007−533963A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527269(P2006−527269)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/DE2004/002132
【国際公開番号】WO2005/031647
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(592093648)マイクロ−エプシロン・メステヒニク・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カー・ゲー (11)
【氏名又は名称原語表記】MICRO−EPSILON MESSTECHNIK GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG & COMPAGNIE KOMMANDITGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】