説明

産業用ロボット

【課題】ハンドの先端と周辺機器とが衝突したときの衝撃が大きい場合であっても、ハンドの損傷を軽減することが可能な産業用ロボットを提供する。
【解決手段】搬送対象物2を搬送する産業用ロボット1は、搬送対象物2が搭載されるハンド3と、産業用ロボット1の周辺機器にハンド3の先端が衝突したことを検知するための検知機構とを備えるとともに、ハンド3が所定方向を向いた状態で略直線状に移動するように構成されている。ハンド3は、ハンド3の先端部分を構成するとともに周辺機器にハンド3の先端が衝突したときにハンド3の基端側に向かって移動可能な衝撃吸収部材20を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の搬送対象物を搬送する産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ用のガラス基板等の大型基板を搬送する産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットは、ロボットアームと、このロボットアームに取り付けられるハンドとを備えている。ハンドは、ロボットアームの先端に装着される基台と、この基台に並列に取り付けられた一対の支持部材とを備えている。支持部材の先端には、流体が封入された膨縮自在な中空体が取り付けられている。また、基台および支持部材は、中空状に形成されており、中空体に封入された流体の圧力を検出する圧力センサが基台の内部に配置され、中空体と圧力センサとを繋ぐ配管が支持部材および基台の内部に配置されている。
【0003】
特許文献1に記載の産業用ロボットでは、何らかの原因で、ロボットの周辺機器にハンドの先端(すなわち、中空体の先端)が衝突すると、圧力センサによって中空体の内部の圧力変化が検出される。中空体の内部の圧力変化が検出されると、ハンドを直ちに停止させるための所定の制御が行われる。また、ハンドの先端と周辺機器との衝突時の衝撃は、中空体の変形で緩和される。そのため、この産業用ロボットでは、ハンドの損傷を軽減することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−60004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
産業用ロボットで搬送される液晶ディスプレイ用のガラス基板等の搬送対象物は、年々、大型化する傾向にある。一方で、搬送対象物の搬送速度は、従来と同様であるか、あるいは、従来よりも速くなっている。そのため、何らかの原因で、ハンドの先端と周辺機器とが衝突したときの衝撃は、年々、大きくなる傾向にある。
【0006】
上述のように、特許文献1に記載の産業用ロボットでは、中空体の内部の圧力変化が検出されると、ハンドを直ちに停止させるための制御が行われ、また、中空体を変形させることで、ハンドの先端と周辺機器との衝突時の衝撃を緩和している。しかしながら、特許文献1に記載の産業用ロボットでは、中空体の変形量が限られているため、ハンドの先端と周辺機器とが衝突したときの衝撃が大きくなると、中空体の内部の圧力変化が検出された直後にハンドを停止させるための制御を行っても、中空体を変形させるだけでは、ハンドの先端と周辺機器との衝突時の衝撃を十分に緩和できない状況が生じうる。その結果、この産業用ロボットでは、ハンドの先端と周辺機器とが衝突したときの衝撃が大きくなると、衝突時の衝撃で、ハンドの損傷度合が大きくなるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、ハンドの先端と周辺機器とが衝突したときの衝撃が大きい場合であっても、ハンドの損傷を軽減することが可能な産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、搬送対象物を搬送する産業用ロボットにおいて、搬送対象物が搭載されるハンドと、産業用ロボットの周辺機器にハンドの先端が衝突したことを検知するための検知機構とを備えるとともに、ハンドが所定方向を向いた状態で略直線状に移動するように構成され、ハンドは、ハンドの先端部分を構成するとともに周辺機器にハンドの先端が衝突したときにハンドの基端側に向かって移動可能な衝撃吸収部材を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明において、産業用ロボットは、たとえば、ハンドの基端側が連結されるアームと、アームを駆動するための駆動源とを備え、検知機構での検知結果に基づいて、周辺機器にハンドの先端が衝突したことが検知されると、駆動源にブレーキがかかる。
【0010】
本発明の産業用ロボットは、産業用ロボットの周辺機器にハンドの先端が衝突したことを検知するための検知機構を備えている。そのため、検知機構での検知結果に基づいて、所定方向を向いた状態で略直線状に移動するハンドの先端が周辺機器に衝突したことが検知されたときには、ハンドの基端側が連結されるアームを駆動するための駆動源にブレーキをかけることが可能になる。また、本発明では、ハンドは、ハンドの先端部分を構成するとともに周辺機器にハンドの先端が衝突したときにハンドの基端側に向かって移動可能な衝撃吸収部材を備えている。
【0011】
したがって、所定方向を向いた状態で略直線状に移動するハンドの先端が周辺機器に衝突したときにハンド等が有するエネルギーは、衝撃吸収部材がハンドの基端側に向かって移動している間にアーム等に作用するブレーキによって消費されるとともに、ハンドの基端側へ衝撃吸収部材が移動する際の摩擦抵抗等によって消費される。その結果、本発明では、ハンドの先端と周辺機器とが衝突したときの衝撃が大きい場合であっても、衝撃吸収部材が取り付けられるハンドの本体部分と周辺機器とが衝突する際の衝撃が緩和され、ハンドの本体部分の損傷を軽減することが可能になる。すなわち、本発明では、ハンドの先端と周辺機器とが衝突したときの衝撃が大きい場合であっても、ハンドの損傷を軽減することが可能になる。また、ハンドの先端が衝突する周辺機器の損傷を軽減することが可能になる。
【0012】
本発明において、ハンドは、ハンドの基端側からハンドの先端側に向かって延びるように形成され搬送対象物の少なくとも一部が搭載される複数の搭載部材を備え、搭載部材の少なくとも先端側は、中空状に形成され、衝撃吸収部材は、搭載部材の先端側に取り付けられ、衝撃吸収部材の少なくとも基端側は、周辺機器にハンドの先端が衝突したときに搭載部材の中に入ることが好ましい。このように構成すると、ハンドの基端側に向かって衝撃吸収部材が搭載部材の外側を移動するようにハンドが構成されている場合と比較して、衝撃吸収部材と他の部材との干渉を防止しやすくなる。したがって、衝撃吸収部材をハンドの基端側に向かって確実に移動させることが可能になる。また、ハンドの基端側に向かって衝撃吸収部材が搭載部材の外側を移動するようにハンドが構成されている場合と比較して、衝撃吸収部材が配置されるハンドの先端側を小型化することが可能になる。
【0013】
本発明において、検知機構は、搭載部材に対する衝撃吸収部材の相対移動を検知することで、周辺機器にハンドの先端が衝突したことを検知することが好ましい。このように構成すると、周辺機器に衝突する衝撃吸収部材の動きに基づいて、周辺機器にハンドの先端が衝突したことを検知することができるため、検知機構の検知精度を高めることが可能になる。
【0014】
本発明において、検知機構は、搭載部材にその一部が固定されるとともに、衝撃吸収部材に他の一部が固定される配線を備え、周辺機器にハンドの先端が衝突したときの搭載部材に対する衝撃吸収部材の相対移動によって、配線が切断可能となっており、検知機構は、配線が切断されると、搭載部材に対する衝撃吸収部材の相対移動を検知することが好ましい。このように構成すると、比較的簡易な構成で、周辺機器にハンドの先端が衝突したことを検知することが可能になる。
【0015】
本発明において、配線は、搭載部材に固定される固定側配線部と、衝撃吸収部材に固定される移動側配線部とを備え、固定側配線部と移動側配線部とは、半田付けされて接続されていることが好ましい。このように構成すると、周辺機器にハンドの先端が衝突したときに、固定側配線部と移動側配線部との境界部である半田付け部で配線が切断されやすくなる。したがって、周辺機器にハンドの先端が衝突したときにハンドの基端側に向かって移動した衝撃吸収部材を再びハンドの先端側へ移動させ、固定側配線部と移動側配線部とを再び半田付けすることで、ハンドおよび検知機構を比較的容易に復元することが可能になる。
【0016】
本発明において、衝撃吸収部材には、搬送対象物の一部が搭載されることが好ましい。このように構成すると、衝撃吸収部材に搬送対象物の搭載機能を持たせることができるため、搭載部材に搬送対象物の全体が搭載されるようにハンドが構成されている場合と比較して、ハンドを小型化することが可能になる。
【0017】
本発明において、衝撃吸収部材は、炭素繊維で形成された筒状部材であることが好ましい。このように構成すると、ハンドの先端部分の剛性を高めつつ、ハンドの先端部分の重量を軽減することが可能になる。また、比較的容易に衝撃吸収部材を形成することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の産業用ロボットでは、ハンドの先端と周辺機器とが衝突したときの衝撃が大きい場合であっても、ハンドの損傷を軽減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットおよびその周辺機器を示す平面図である。
【図2】図1のE−E方向から産業用ロボットおよびその周辺機器を示す側面図である。
【図3】図1に示すハンドの図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図4】図3のF部の構成を説明するための拡大図であり、(A)はハンドの先端が安全カバー等に衝突していないときの状態を示す図、(B)はハンドの先端が安全カバー等に衝突した直後の状態を示す図である。
【図5】図4(A)のG−G方向からハンドの先端側を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
(産業用ロボットの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1およびその周辺機器を示す平面図である。図2は、図1のE−E方向から産業用ロボット1およびその周辺機器を示す側面図である。
【0022】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、搬送対象物である液晶ディスプレイ用のガラス基板2(以下、「基板2」とする。)を搬送するための搬送用のロボットである。このロボット1は、特に大型の基板2の搬送に適した大型のロボットである。図1、図2に示すように、ロボット1は、基板2が搭載される2個のハンド3と、2個のハンド3のそれぞれが先端側に連結される2本のアーム4と、2本のアーム4を支持する本体部5と、本体部5を水平方向に移動可能に支持するベース部材6とを備えている。本体部5は、2本のアーム4の基端側を支持するとともに上下動可能な支持部材8と、支持部材8を上下方向に移動可能に支持する柱状部材9と、本体部5の下端部分を構成するとともにベース部材6に対して水平移動可能な基台10と、柱状部材9の下端が固定されるとともに基台10に対して旋回可能な旋回部材11とを備えている。
【0023】
ハンド3の基端は、アーム4の先端に回動可能に連結されている。アーム4は、2個の関節部を有し、本体部5に対して伸縮するように構成されている。具体的には、ハンド3が所定の方向を向いた状態で略直線状に移動するように、アーム4は本体部5に対して伸縮する。また、アーム4の基端は、支持部材8に固定されている。本形態では、2個のハンド3と2本のアーム4とが上下方向に重なるように配置されている。
【0024】
ロボット1は、たとえば、図1、図2に示すように、複数の基板処理装置13を備える基板処理システム14に組み込まれて使用される。基板処理システム14では、ロボット1は、安全カバー15によって、囲まれている。安全カバー15は、たとえば、金属製のフレームと、このフレームに固定されるポリ塩化ビニル等の樹脂製のカバー板とを備えており、カバー板が安全カバー15の側面を構成している。なお、安全カバー15の所定の箇所には、ハンド3が通過可能な開口部が形成されている。
【0025】
ロボット1では、柱状部材9に対して支持部材8がハンド3およびアーム4と一緒に上下動する。また、本体部5に対してアーム4が伸縮する。具体的には、ハンド3の先端が所定の方向を向いた状態でハンド3が直線状に移動するようにアーム4が伸縮する。より具体的には、たとえば、基板処理装置13にハンド3の先端を向けた状態で、ハンド3が基板処理装置13に対して直線状に移動して出入りするように、アーム4が伸縮する。さらに、ベース部材6に対して基台10が水平移動する。また、基台10に対して旋回部材11が旋回する。これらの動作の組合せによって、ロボット1は、基板処理装置13から基板2を搬出したり、基板処理装置13へ基板2を搬入する。
【0026】
(ハンドの構成)
図3は、図1に示すハンド3の図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。図4は、図3のF部の構成を説明するための拡大図であり、(A)はハンド3の先端が安全カバー15等に衝突していないときの状態を示す図、(B)はハンド3の先端が安全カバー15等に衝突した直後の状態を示す図である。図5は、図4(A)のG−G方向からハンド3の先端側を示す図である。
【0027】
ハンド3は、アーム4の先端側に連結される連結部材18と、基板2が搭載される搭載部材としての複数のフォーク19と、ハンド3の先端部分を構成する衝撃吸収部材20とを備えている。
【0028】
フォーク19は、ハンド3の基端部分を構成する連結部材18からハンド3の先端側に向かって延びるように形成されている。このフォーク19は、細長い略四角筒状に形成されている。すなわち、フォーク19は、中空状に形成されている。中空状に形成されるフォーク19の肉厚は、一定となっている。また、フォーク19は、高い剛性を確保するとともに軽量化を図るため、たとえば、炭素繊維と樹脂との複合材料で形成されている。なお、フォーク19は、先端側の肉厚が薄くなるように形成されても良い。また、本形態では、筒形状の炭素繊維に樹脂を含浸させることで炭素繊維と樹脂との複合材料からなるフォーク19が形成されているが、他の既存の方法でフォーク19が形成されても良いし、新規の方法でフォーク19が形成されても良い。
【0029】
フォーク19は、先端側に向かうにしたがって、その左右方向の幅がしだいに狭くなるように形成されている。また、図3(B)に示すように、フォーク19の上面19aは、水平面となっている。一方、フォーク19の下面19bは、フォーク19の先端側に向かってしたがって上方向へ傾斜する傾斜面となっている。すなわち、フォーク19は、先端側に向かうにしたがって、その上下方向の幅がしだいに狭くなるように形成されている。フォーク19の上面19aは、基板2が搭載される搭載面となっている。上述のように、上面19aは、水平面となっているため、本形態では、基板2をフォーク19に水平に搭載することが可能である。
【0030】
フォーク19の先端側には、図4、図5に示すように、衝撃吸収部材20を固定するための2個の固定ブロック21が固定されている。2個の固定ブロック21は、フォーク19の長手方向に所定の間隔をあけた状態でフォーク19の先端側に固定されている。固定ブロック21は、上下方向で2分割されるブロック片22、23によって構成されている。ブロック片22は、図5に示すように、フォーク19の上側面にネジ24によって固定され、ブロック片23は、ブロック片22の下面にネジ25によって固定されている。ブロック片22の下面の中心、および、ブロック片23の上面の中心には、衝撃吸収部材20を保持するための保持凹部22a、23aが上下方向の外側に向かって窪むように形成されている。保持凹部22a、23aは、ブロック片22にブロック片23が固定された状態で、フォーク19の長手方向から見たときに、保持凹部22a、23aによって形成される貫通孔の形状が略円形状となるように、略半円弧状に形成されている。
【0031】
衝撃吸収部材20は、たとえば、炭素繊維で形成された筒状部材である。具体的には、衝撃吸収部材20は、炭素繊維と樹脂との複合材料で形成されている。本形態の衝撃吸収部材20は、円筒状に形成されている。この衝撃吸収部材20は、複数のフォーク19のそれぞれの先端側に取り付けられている。具体的には、2個の固定ブロック21の保持凹部22a、23aに衝撃吸収部材20の基端側が保持されている。本形態では、ブロック片23を取り外した状態で、保持凹部22aの中に衝撃吸収部材20を配置し、その後、ブロック片22の下面にブロック片23を固定することで、フォーク19の先端側に衝撃吸収部材20が固定される。
【0032】
基板2は、図1に示すように、フォーク19および衝撃吸収部材20に搭載されている。すなわち、衝撃吸収部材20は、ハンド3に搭載される基板2を支持する機能を果たしている。なお、フォーク19の長さは、たとえば、3m程度であり、フォーク19の先端からの衝撃吸収部材20の突出量は、たとえば、500〜600mm程度である。
【0033】
2個の固定ブロック21のうちのフォーク19の基端側に配置される固定ブロック21には、図4に示すように、配線27の一部を固定するための2個の固定部材28が固定されている。2個の固定部材28は、保持凹部22a、23aに保持される衝撃吸収部材20の基端を挟むように配置されている。また、衝撃吸収部材20の基端には、配線27の一部を固定するための固定部材29が固定されている。固定部材29は、2個の固定部材28の間に配置されている。
【0034】
配線27は、たとえば、リード線である。この配線27は、固定部材28を介してフォーク19に固定される固定側配線部としての第1配線部30と、固定部材29を介して衝撃吸収部材29に固定される移動側配線部としての第2配線部31とに分割されている。第1配線部30と第2配線部31とは、半田付けされて互いに接続されている。すなわち、第1配線部30と第2配線部31との間には、図4(A)に示すように、半田付け部32が形成されている。配線27の端部は、たとえば、ロボット1の制御基板(図示省略)に接続されている。アーム4が伸縮してハンド3が移動するときには、この制御基板から配線27に電流が供給されている。
【0035】
本形態では、何らかの原因で、安全カバー15や基板処理装置13等のロボット1の周辺機器にハンド3の先端(すなわち、衝撃吸収部材20の先端)が衝突すると、固定ブロック21に保持された衝撃吸収部材20は、固定ブロック21の保持力に抗して、図4(B)に示すように、ハンド3の基端側に向かって移動する。具体的には、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突すると、衝撃吸収部材20がフォーク19に対してハンド3の基端側へ相対移動して、衝撃吸収部材20の基端側部分または全部が中空状のフォーク19の中へ入っていく。
【0036】
このとき、配線27は、フォーク19に対する衝撃吸収部材20の相対移動に伴って、図4(B)に示すように、切断される。具体的には、固定部材29に固定された第2配線部31が衝撃吸収部材20とともにハンド3の基端側へ移動するため、半田付け部32で配線27が切断される。上述のように、アーム4が伸縮してハンド3が移動するときには、制御基板から配線27に電流が供給されている。そのため、衝撃吸収部材20がハンド3の基端側へ移動して、配線27が切断されると、配線27に電流が流れなくなる。
【0037】
本形態では、ハンド3の移動時に配線27に電流が流れているか否かを検知することで、フォーク19に対して衝撃吸収部材20がハンド3の基端側へ相対移動したか否かを検知し、フォーク19に対して衝撃吸収部材20がハンド3の基端側へ相対移動したか否かを検知することで、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突したか否かを検知する。すなわち、本形態では、配線27が切断されると、フォーク19に対して衝撃吸収部材20がハンド3の基端側へ相対移動したことが検知され、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突したことが検知される。
【0038】
本形態では、配線27および配線27が接続される制御基板等によって、安全カバー15等の周辺機器にハンド3の先端が衝突したことを検知するための検知機構が構成されている。また、本形態では、この検知機構での検知結果に基づいて、安全カバー15等にハンド3の先端が衝突したことが検知されると、アーム4を伸縮させるための駆動用モータ(図示省略)にブレーキがかかる。具体的には、駆動用モータには、無励磁差動型ブレーキ(メカニカルブレーキ)、サーボブレーキおよびダイナミックブレーキがかかる。
【0039】
なお、本形態では、フォーク19の長手方向に所定の間隔をあけた状態で固定される2個の固定ブロック21に衝撃吸収部材20が保持されているため、アーム4およびハンド3の旋回時やアーム4の伸縮時に、衝撃吸収部材20に回転モーメントが作用しても、衝撃吸収部材20は、フォーク19の先端側から外れない。一方、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突して衝撃吸収部材20の長手方向に衝撃が加わると、その衝撃が比較的小さくても、衝撃吸収部材20は、フォーク19に対してハンド3の基端側へ相対移動する。
【0040】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突したときに、フォーク19に対してハンド3の基端側へ相対移動する衝撃吸収部材20がハンド3の先端側に取り付けられている。また、本形態では、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突したことが検知されると、アーム4を伸縮させるための駆動用モータにブレーキがかかる。そのため、安全カバー15等にハンド3の先端が衝突したときにハンド3およびアーム4が有するエネルギーは、衝撃吸収部材20がハンド3の基端側に向かって移動している間にアーム4等に作用するブレーキによって消費されるとともに、固定ブロック21の保持力に抗してハンド3の基端側へ衝撃吸収部材20が移動する際の摩擦抵抗や衝撃吸収部材20の変形等によって消費される。また、本形態では、衝撃吸収部材20がハンド3の基端側へ移動すると、配線27が切断されるため、配線27の切断時の抵抗によって、安全カバー15等にハンド3の先端が衝突したときにハンド3およびアーム4が有するエネルギーが消費される。
【0041】
したがって、本形態では、ハンド3の先端と安全カバー15等とが衝突したときの衝撃が大きい場合であっても、衝撃吸収部材20が取り付けられるフォーク19と安全カバー15等とが衝突する際の衝撃が緩和され、フォーク19の損傷を軽減することが可能になる。また、本形態は、ハンド3の先端が衝突する安全カバー15等の損傷を軽減することが可能になる。また、安全カバー15等の損傷を軽減することが可能になるため、基板処理システム14の周囲にいる作業者の安全を確保することが可能になる。
【0042】
また、本形態では、フォーク19に対してハンド3の基端側へ衝撃吸収部材20を相対移動させることができるため、ハンド3をロボット1から取り外さなくても、衝撃吸収部材20をフォーク19の中に配置した状態で、ロボット1を運搬することが可能になる。したがって、運搬時のコストを低減することが可能になる。また、運搬後には、衝撃吸収部材20をフォーク19の中から引き出して固定すれば、ロボット1を復元することができるため、ハンド3をロボット1から取り外してロボット1を運搬する場合と比較して、運搬後のロボット1の復元が容易になる。
【0043】
本形態では、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突すると、衝撃吸収部材20の基端側部分または全部が中空状のフォーク19の中へ入っていく。そのため、ハンド3の基端側に向かって衝撃吸収部材20がフォーク19の外側を移動するようにハンド3が構成されている場合と比較して、衝撃吸収部材20と他の部材との干渉を防止しやすくなる。したがって、衝撃吸収部材20をハンド3の基端側に向かって確実に移動させることが可能になる。また、ハンド3の基端側に向かって衝撃吸収部材20がフォーク19の外側を移動するようにハンド3が構成されている場合と比較して、衝撃吸収部材20が配置されるハンド3の先端側を小型化することが可能になる。
【0044】
本形態では、フォーク19に対して衝撃吸収部材20がハンド3の基端側へ相対移動したか否かを検知することで、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突したか否かを検知している。すなわち、安全カバー15等に衝突する衝撃吸収部材20の動きに基づいて、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突したか否かを検知している。そのため、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突したか否かを精度良く検知することが可能になる。
【0045】
本形態では、フォーク19に対する衝撃吸収部材20の相対移動に伴って切断される配線27等によって、安全カバー15等にハンド3の先端が衝突したことを検知するための検知機構が構成されており、検知機構は、配線27が切断されると、安全カバー15等にハンド3の先端が衝突したことを検知する。そのため、本形態では、比較的簡易な構成で、安全カバー15等にハンド3の先端が衝突したことを検知することが可能になる。
【0046】
本形態では、配線27は、第1配線部30と第2配線部31とを備えており、第1配線部30と第2配線部31とは、半田付けされて互いに接続されている。そのため、安全カバー15等にハンド3の先端が衝突すると、上述のように、半田付け部32で配線27が切断される。したがって、ハンド3の基端側へ移動した衝撃吸収部材20を再びハンド3の先端側へ移動させ、第1配線部30と第2配線部31とを再び半田付けすることによって、比較的容易にハンド3を復元することが可能になる。
【0047】
本形態では、衝撃吸収部材20は、ハンド3に搭載される基板2を支持する機能を果たしている。したがって、フォーク19によって基板2の全体が支持されるようにハンド3が構成されている場合と比較して、ハンド3を小型化することができる。
【0048】
本形態では、衝撃吸収部材20は、炭素繊維で形成されている。そのため、衝撃吸収部材20の剛性を高めることができる。したがって、ハンド3に搭載される基板2を衝撃吸収部材20によって適切に支持することが可能になる。また、衝撃吸収部材20は、炭素繊維で形成されるとともに筒状に形成されているため、ハンド3の先端部分の重量を軽減することが可能になる。また、比較的容易に衝撃吸収部材20を形成することが可能になる。
【0049】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0050】
上述した形態では、配線27が切断されたか否かによって、フォーク19に対して衝撃吸収部材20が相対移動したか否かを検知している。この他にもたとえば、発光素子と受光素子とを備える光学式のセンサによって、フォーク19に対して衝撃吸収部材20が相対移動したか否かを検知しても良いし、マイクロスイッチ等の機械式のセンサによって、フォーク19に対して衝撃吸収部材20が相対移動したか否かを検知しても良い。また、衝撃吸収部材20よりもハンド3の基端側に圧縮空気を流して、この圧縮空気の圧力変化を圧力計で検知することで、フォーク19に対して衝撃吸収部材20が相対移動したか否かを検知しても良い。
【0051】
上述した形態では、フォーク19に対して衝撃吸収部材20がハンド3の基端側へ相対移動したか否かを検知することで、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突したか否かを検知している。この他にもたとえば、衝撃吸収部材20の先端に圧力センサを取り付けて、この圧力センサでの検知結果に基づいて、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突したか否かを検知しても良い。また、ハンド3の基端側等に加速度センサを取り付けて、この加速度センサでの検知結果に基づいて、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突したか否かを検知しても良い。
【0052】
上述した形態では、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突すると、衝撃吸収部材20の基端側部分または全部が中空状のフォーク19の中へ入っていく。この他にもたとえば、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突したときに、ハンド3の基端側に向かって衝撃吸収部材20がフォーク19の外側を移動するようにハンド3が構成されても良い。
【0053】
上述した形態では、衝撃吸収部材20がフォーク19の先端側に取り付けられている。この他にもたとえば、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突したときに、衝撃吸収部材20に対してハンド3の基端側へ相対移動する第2の衝撃吸収部材が衝撃吸収部材20の先端側に取り付けられても良い。また、ハンド3の先端が安全カバー15等に衝突したときに、この第2の衝撃吸収部材に対してハンド3の基端側へ相対移動する第3の衝撃吸収部材が第2の衝撃吸収部材の先端側に取り付けられても良い。すなわち、フォーク19の先端側に、2段以上の衝撃吸収部材が取り付けられても良い。
【0054】
上述した形態では、衝撃吸収部材20は、円筒状に形成されているが、衝撃吸収部材20は、四角筒状等の多角筒状に形成されても良いし、円柱状や多角柱状に形成されても良い。また、衝撃吸収部材20は、平板状に形成されても良い。また、上述した形態では、衝撃吸収部材20は、炭素繊維で形成されているが、衝撃吸収部材20は、金属で形成されても良い。
【0055】
上述した形態では、配線27は、第1配線部30と第2配線部31とに分割されているが、配線27は、分割されていなくても良い。また、上述した形態では、衝撃吸収部材20は、ハンド3に搭載される基板2を支持する機能を果たしているが、フォーク19によって基板2の全体が支持されるようにハンド3が構成されても良い。
【0056】
上述した形態では、アーム4は、関節部を備えているが、アーム4は、関節部を備えていなくても良い。この場合には、たとえば、回転型のモータおよびボールネジ等によって、あるいは、リニアモータによって、ハンド3が直線状に移動するように、ハンド3の基端側がアームに連結される。
【0057】
上述した形態では、ロボット1は、2個のハンド3と2個のアーム4とを備えるいわゆるダブルアーム型のロボットであるが、ロボット1は、1個のハンド3と1個のアーム4とを備えるシングルアーム型のロボットであっても良い。また、上述した形態では、ロボット1によって搬送される搬送対象物は基板2であるが、ロボット1によって搬送される搬送対象物は、基板2以外の半導体ウエハ等であっても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 ロボット(産業用ロボット)
2 基板(ガラス基板、搬送対象物)
3 ハンド
4 アーム
13 基板処理装置(周辺機器)
15 安全カバー(周辺機器)
19 フォーク(搭載部材)
20 衝撃吸収部材
27 配線(検知機構の一部)
30 第1配線部(固定側配線部)
31 第2配線部(移動側配線部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を搬送する産業用ロボットにおいて、
前記搬送対象物が搭載されるハンドと、前記産業用ロボットの周辺機器に前記ハンドの先端が衝突したことを検知するための検知機構とを備えるとともに、前記ハンドが所定方向を向いた状態で略直線状に移動するように構成され、
前記ハンドは、前記ハンドの先端部分を構成するとともに前記周辺機器に前記ハンドの先端が衝突したときに前記ハンドの基端側に向かって移動可能な衝撃吸収部材を備えることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記ハンドの基端側が連結されるアームと、前記アームを駆動するための駆動源とを備え、
前記検知機構での検知結果に基づいて、前記周辺機器に前記ハンドの先端が衝突したことが検知されると、前記駆動源にブレーキがかかることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記ハンドは、前記ハンドの基端側から前記ハンドの先端側に向かって延びるように形成され前記搬送対象物の少なくとも一部が搭載される複数の搭載部材を備え、
前記搭載部材の少なくとも先端側は、中空状に形成され、
前記衝撃吸収部材は、前記搭載部材の先端側に取り付けられ、
前記衝撃吸収部材の少なくとも基端側は、前記周辺機器に前記ハンドの先端が衝突したときに前記搭載部材の中に入ることを特徴とする請求項1または2記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記検知機構は、前記搭載部材に対する前記衝撃吸収部材の相対移動を検知することで、前記周辺機器に前記ハンドの先端が衝突したことを検知することを特徴とする請求項3記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記検知機構は、前記搭載部材にその一部が固定されるとともに、前記衝撃吸収部材に他の一部が固定される配線を備え、
前記周辺機器に前記ハンドの先端が衝突したときの前記搭載部材に対する前記衝撃吸収部材の相対移動によって、前記配線が切断可能となっており、
前記検知機構は、前記配線が切断されると、前記搭載部材に対する前記衝撃吸収部材の相対移動を検知することを特徴とする請求項4記載の産業用ロボット。
【請求項6】
前記配線は、前記搭載部材に固定される固定側配線部と、前記衝撃吸収部材に固定される移動側配線部とを備え、
前記固定側配線部と前記移動側配線部とは、半田付けされて接続されていることを特徴とする請求項5記載の産業用ロボット。
【請求項7】
前記衝撃吸収部材には、前記搬送対象物の一部が搭載されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の産業用ロボット。
【請求項8】
前記衝撃吸収部材は、炭素繊維で形成された筒状部材であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の産業用ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−20360(P2012−20360A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159001(P2010−159001)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】